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JP2020171315A - 反応処理容器、反応処理容器の製造方法および反応処理方法 - Google Patents

反応処理容器、反応処理容器の製造方法および反応処理方法 Download PDF

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JP2020171315A JP2020117813A JP2020117813A JP2020171315A JP 2020171315 A JP2020171315 A JP 2020171315A JP 2020117813 A JP2020117813 A JP 2020117813A JP 2020117813 A JP2020117813 A JP 2020117813A JP 2020171315 A JP2020171315 A JP 2020171315A
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Abstract

【課題】成形時の不適当なウェルドラインの発生を抑制することで、試料が流路内をスムースに移動することのできる反応処理容器を提供する。【解決手段】反応処理容器は、樹脂から成る基板と、基板の主面に形成された溝状の流路と、を備える。流路は、底面62および側面64を含む。試料に所定の反応を起こさせるための反応流路60において、底面62と側面64とが曲面66により接続される。【選択図】図5

Description

本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)に使用される反応処理容器に関する。
遺伝子検査は、各種医学分野における検査、農作物や病原性微生物の同定、食品の安全性評価、さらには病原性ウィルスや各種感染症の検査にも広く活用されている。微小量のDNAを高感度に検出するために、DNAの一部を増幅して得られたものを分析する方法が知られている。中でもPCRを用いた方法は、生体等から採取されたごく微量のDNAのある部分を選択的に増幅する注目の技術である。
PCRは、DNAを含む生体サンプルと、プライマーや酵素などからなるPCR試薬とを混合した試料に、所定のサーマルサイクルを与え、変性、アニーリングおよび伸長反応を繰り返し起こさせて、DNAの特定の部分を選択的に増幅させるものである。
PCRにおいては、対象の試料をPCRチューブまたは複数の穴が形成されたマイクロプレート(マイクロウェル)などの反応処理容器に所定量入れて行うことが一般的であるが、近年、基板に形成された微細な流路を備える反応処理容器(反応処理チップとも呼ばれる)を用いて行うことが実用化されてきている(例えば特許文献1〜3)。
特開2009−232700号公報 特開2007−51881号公報 特開2007−285777号公報
上記のような微細な流路が形成された基板から成る反応処理容器は、射出成形により製造することが工業的に有利である。しかしながら、本発明者は、このような反応処理容器を射出成形で製造する際に、以下のような課題があることを認識した。
流路の断面は幅、深さともに1mm前後もしくは1mm未満であり、曲線や直線から構成された流路である。特に、外部からのヒータなどにより所定の温度水準(例えば約95℃や55℃)に設定される流路の領域(適宜「反応領域」と呼ぶ)では、試料を効率よく加熱するために、複数のターンを含む直線状流路と曲線状流路が組み合わされた形態とすることが有利である。
射出成形方法においては、このような流路に対応した形状の金型に樹脂を流し込んで基板が成形されていくが、直線状流路と曲線状流路が組み合わされたような凹凸構造が連続する流路に対応する複雑な部分では、金型の内部において、樹脂の充填やエアの排除に大きく時間差が生じたりするなど高速の樹脂の流れが複雑になる。そのような部位に対応する基板の部分には、いわゆるウェルドラインが生じる場合がある。このようなウェルドラインが基板の流路近傍に発生すると、ウェルドラインと流路とが接続または触れ合う部分に「ピット」と呼ばれる深さ数μmから数十μmの凹部が生じる可能性がある。流路にこのようなピットが存在すると、試料の移動が妨げられ、試料の停止もしくは滞留や残留が生じるおそれがある。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、成形時の不適当なウェルドラインの発生を抑制することで、試料が流路内をスムースに移動することのできる反応処理容器を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の反応処理容器は、樹脂から成る基板と、基板の主面に形成された溝状の流路と、を備える。流路は、底面および側面を含む。流路の一部において、底面と側面とが曲面により接続される。
流路は、当該流路内を流れる試料に所定の反応を起こさせるための反応流路を備え、反応流路において、底面と側面とが曲面により接続されてもよい。
反応流路は、曲線状の流路と直線状の流路とを組み合わせた蛇行状の流路を含んでもよい。
反応流路の開口幅は、0.6mm〜1.1mmであり、反応流路における曲面の曲率半径は、0.2mm〜0.38mmであってもよい。
反応流路の深さは、0.55mm〜0.95mmであり、反応流路のテーパ角は、10°〜30°であってもよい。
流路は、当該流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける検出流路を備え、検出流路における底面は、基板の主面と平行な平面に形成されてもよい。
検出流路は、直線状の流路に形成されてもよい。
基板は、検出流路の近傍にゲートを備えてもよい。
基板は、検出流路に垂直な仮定垂直線と基板の端部との交点近傍にゲートを備えてもよい。
基板は、直線状の検出流路を延長した仮定平行線と基板の端部との交点近傍にゲートを備えてもよい。
検出流路の底面幅は、0.5mm〜0.8mmであってもよい。
検出流路の深さは、0.8mm〜1.25mmであり、検出流路のテーパ角は、10°〜30°であってもよい。
本発明によれば、成形時の不適当なウェルドラインの発生を抑制することで、試料が流路内をスムースに移動することのできる反応処理容器を提供できる。
本発明の実施形態に係る反応処理容器が備える基板の平面図である。 本発明の実施形態に係る反応処理容器の断面構造を説明するための図である。 反応処理容器を利用可能な反応処理装置を説明するための模式図である。 従来の反応処理容器の基板に生じたウェルドラインの一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る反応流路の断面の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る反応流路の断面の別の例を示す図である。 図7(a)および(b)は、金型における樹脂の流れを説明するための図である。 検出流路の断面の一例を示す図である。 本発明の別の実施形態に係る反応処理容器が備える基板の平面図である。 本発明の実施形態に係る反応処理容器の基板の流路近傍の拡大図である。
以下、本発明の実施形態に係る反応処理容器について説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
本発明の実施形態に係る反応処理容器は、基板と、該基板に貼り付けられた封止フィルムと、フィルタと、から成る。図1は、反応処理容器が備える基板の平面図である。図2は、反応処理容器の断面構造を説明するための図である。図2は、基板に形成される流路、フィルムおよびフィルタとの位置関係を説明するための図であり、実施の反応処理容器の断面図とは異なる点に留意されたい。
反応処理容器10は、上面14aに溝状の流路12が形成された樹脂製の基板14と、基板14の上面14a上に貼られた流路封止フィルム16、第1封止フィルム18および第2封止フィルム19と、基板14の下面14b上に貼られた第3封止フィルム20、第4封止フィルム21および第5フィルム(図示せず)と、基板14内に配置された第1フィルタ28および第2フィルタ30とを備える。
基板14は、温度変化に対して安定で、使用される試料溶液に対して侵されにくい材質から形成されることが好ましい。さらに、基板14は、成形性がよく、透明性やバリア性が良好で、且つ、低い自家蛍光性を有する材質から形成されることが好ましい。このような材質としては、アクリル、ポリプロピレン、シリコーンなどの樹脂、中でも環状ポリオレフィン樹脂が好適である。
基板14の上面14aには溝状の流路12が形成されている。反応処理容器10において、流路12の大部分は基板14の上面14aに露出した溝状に形成されている。金型を用いた射出成形により容易に成形できるようにするためである。この溝を封止して流路として活用するために、基板14の上面14a上に流路封止フィルム16が貼られる。流路12の寸法の一例は、幅0.7mm、深さ0.7mmである。また射出成型法により基板を工業的により有利に生産するために、流路の構造は、いわゆる「抜きテーパ」と称する、基板の主面に対して一定の角度を備える側面を含みうる。
流路封止フィルム16は、一方の主面が粘着性を備えていてもよいし、押圧や紫外線などのエネルギー照射、加熱等により粘着性や接着性を発揮する機能層が一方の主面に形成されていてもよく、容易に基板14の上面14aと密着して一体化できる機能を備える。流路封止フィルム16は、粘着剤も含めて低い自家蛍光性を有する材質から形成されることが望ましい。この点でシクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはアクリルなどの樹脂からなる透明フィルムが適しているが、これらに限定されない。また、流路封止フィルム16は、板状のガラスや樹脂から形成されてもよい。この場合はリジッド性が期待できることから、反応処理容器10の反りや変形防止に役立つ。
流路12の一端12aには、第1フィルタ28が設けられている。流路12の他端12bには、第2フィルタ30が設けられている。流路12の両端に設けられた一対の第1フィルタ28および第2フィルタ30は、PCRによって目的のDNAの増幅やその検出を妨げないように、または目的のDNAの品質が劣化しないように、コンタミネーションを防止する。第1フィルタ28および第2フィルタ30の寸法は、基板14に形成されたフィルタ設置スペースに隙間なく収まるような寸法に形成される。
基板14には、空気導入路29および第1フィルタ28を介して流路12の一端12aに通じる第1空気連通口24が形成されている。同様に基板14には、空気導入路31および第2フィルタ30を介して流路12の他端12bに通じる第2空気連通口26が形成されている。一対の第1空気連通口24および第2空気連通口26は、基板14の上面14aに露出するように形成されている。
本実施形態においては、第1フィルタ28および第2フィルタ30として、低不純物特性が良好であり、且つ通気性および撥水性もしくは撥油性を有するものが用いられる。第1フィルタ28および第2フィルタ30としては、例えば多孔性樹脂や樹脂の焼結体などが好ましく、これらに限られないが、フッ素含有樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー)などが例示できる。さらにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製フィルタとしては、これらに限られないが、PF020(いずれもアドバンテックグループ社製)等を用いることができる。さらに、第1フィルタ28および第2フィルタ30としては、フッ素含有樹脂でコーティングして表面を撥水処理したものも使用することができる。その他フィルタの材料としては、ポリエチレン、ポリアミド、ポリプロピレンなどが挙げられ、PCRに供される試料のコンタミネーション防止をすることができ、PCRに支障の生じないものであればよく、空気を通過させることができ、液体を通過させないような性状を備えていればなおよく、求められる性能に対してこれらのいくつかの要求を満たすものであればその性能や材質は問わない。
流路12は、一対の第1フィルタ28および第2フィルタ30の間に、後述する反応処理装置により複数水準の温度の制御が可能な反応領域を備える。複数水準の温度が維持された反応領域を連続的に往復するように試料を移動させることにより、試料にサーマルサイクルを与えることができる。
本実施形態において、反応領域は、高温領域36と、中温領域38とを含む。後述の反応処理装置に反応処理容器10が搭載された際に、高温領域36は比較的高温(例えば約95℃)に維持され、中温領域38は、高温領域36よりも低温(例えば約62℃)に維持される。高温領域36の一端は、第2フィルタ30および空気導入路31を介して第2空気連通口26に連通し、他端は接続流路40を介して中温領域38に連通している。中温領域38の一端は接続流路40を介して高温領域36に連通し、他端は緩衝流路(予備流路)39に連通している。緩衝流路39の一端は中温領域38に連通し、他端は第1フィルタ28および空気導入路29を介して第1空気連通口24に連通している。
高温領域36および中温領域38はそれぞれ、曲線状流路と直線状流路とを組み合わせた連続的に折り返す蛇行状の流路を含んでいる。このように蛇行状の流路とした場合、後述の温度制御システムを構成するヒータ等の限られた実効面積を有効に使うことができ、反応領域内での温度のばらつきを低減することが容易であるとともに、反応処理容器の実体的な大きさを小さくでき、反応処理装置の小型化に貢献できるという利点がある。また、緩衝流路39も蛇行状の流路となっている。一方、高温領域36と中温領域38の間の接続流路40は、直線状の流路となっている。接続流路40には、後述の反応処理装置に反応処理容器10が搭載された際に、流路内を流れる試料から蛍光を検出するために励起光の照射を受ける領域(「蛍光検出領域」と称する)86が設定される。
緩衝流路39の一部には分岐点が設けられており、該分岐点から分岐流路42が分岐している。分岐流路42の先端には、基板14の下面14bに露出するように試料導入口44が形成されている。緩衝流路39は、試料導入口44から所定量の試料が投入された後に、反応処理容器10の反応処理装置への導入を行う際の一時的な試料の待機流路として用いることができる。
図2に示すように、第1封止フィルム18は、第1空気連通口24を封止するように基板14の上面14aに貼り付けられる。第2封止フィルム19は、第2空気連通口26を封止するように基板14の上面14aに貼り付けられる。第3封止フィルム20は、空気導入路29および第1フィルタ28を封止するように基板14の下面14bに貼り付けられる。第4封止フィルム21は、空気導入路31および第2フィルタ30を封止するように基板14の下面14bに貼り付けられる。第5封止フィルム(図示せず)は、試料導入口44を封止するように基板14の下面14bに貼り付けられる。これらの封止フィルムとしては、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはアクリルなどの樹脂を基材とする透明フィルムを用いることができる。流路封止フィルム16を含む全ての封止フィルムを貼った状態では、全流路は閉空間となっている。
反応処理容器10に後述する送液システムを接続する際には、第1空気連通口24、第2空気連通口26を封止している第1封止フィルム18、第2封止フィルム19を剥がし、送液システムに備わったチューブを第1空気連通口24、第2空気連通口26に接続する。あるいは、送液システムに備わった中空のニードル(先端がとがった注射針)で第1封止フィルム18、第2封止フィルム19に穿孔することにより行ってもよい。この場合、第1封止フィルム18、第2封止フィルム19は、ニードルによる穿孔が容易な材質や厚みから成るフィルムが好ましい。
試料導入口44を通じての試料の流路12内への導入は、第5封止フィルムを一旦、基板14から剥がして行い、所定量の試料の導入後に第5封止フィルムを再び基板14の下面14bに戻し貼り付ける。このとき、試料の導入によって流路内部の空気が押されるので、その空気を逃がすために、事前に第2封止フィルムを剥がしておいてもよい。そのため、第5封止フィルムとしては、数サイクルの貼り付け/剥がしに耐久するような粘着性を備えるフィルムが望ましい。また第5封止フィルムは、試料導入後に新しいフィルムを貼り付ける態様であってもよく、この場合は繰り返しの貼り付け/剥がしに関する特性の重要性は緩和されうる。
試料導入口44への試料の導入の方法は特に限定されないが、例えばピペットやスポイト、シリンジ等で試料導入口44から適量の試料を直接導入してもよい。あるいは、多孔質のPTFEやポリエチレンからなるフィルタが内蔵してあるニードルチップを介してコンタミネーションを防止しながらの導入方法であってもよい。このようなニードルチップは一般的に数多くの種類のものが販売され容易に入手でき、ピペットやスポイト、シリンジ等の先端に取り付けて使用することが可能である。さらにピペットやスポイト、シリンジ等による試料の吐出、導入後、さらに加圧して推すことにより流路12の所定の場所まで試料を移動させてもよい。
試料としては、例えば、一または二以上の種類のDNAを含む混合物に、PCR試薬として、耐熱性酵素および4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を添加したものがあげられる。さらに反応処理対象のDNAに特異的に反応するプライマー、さらに、場合によってはTaqMan等の蛍光プローブ(TaqMan/タックマンはロシュ ダイアグノスティックスゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの登録商標)もしくはSYBR Green(SYBRはモレキュラープローブス インコーポレイテッドの登録商標)を混合する。市販されているリアルタイムPCR用試薬キット等も使用することができる。
図3は、反応処理容器10を利用可能な反応処理装置100を説明するための模式図であり、特に反応処理容器10に直接関連する部分のみを概念的に抜粋したものである。
反応処理装置100は、反応処理容器10が設置される容器設置部(図示せず)と、流路12の高温領域36を加熱するための高温用ヒータ104と、流路12の中温領域38を加熱するための中温用ヒータ106と、各温度領域の実温度を計測するための例えば熱電対等の温度センサ(図示せず)を備える。各ヒータは例えば抵抗加熱素子やペルチェ素子等であってよい。これらのヒータ、適切なヒータドライバ(図示せず)およびマイクロコンピュータなどの制御装置(図示せず)によって、反応処理容器10の流路12における高温領域36が約95℃、中温領域38が約62℃に維持され、サーマルサイクル領域の各温度領域の温度が設定される。
反応処理装置100は、さらに、蛍光検出器140を備える。上述したように、試料Sには所定の蛍光プローブが添加されている。DNAの増幅が進むにつれ試料Sから発せられる蛍光信号の強度が増加するので、その蛍光信号の強度値をPCRの進捗やその終結の判定材料としての指標とすることができる。
蛍光検出器140としては、非常にコンパクトな光学系で、迅速に測定でき、かつ明るい場所か暗い場所かにもかかわらず、蛍光を検出することができる日本板硝子株式会社製の光ファイバ型蛍光検出器FLE−510を使用することができる。この光ファイバ型蛍光検出器は、その励起光/蛍光の波長特性を試料Sの発する蛍光特性に適するようにチューニングしておくことができ、様々な特性を有する試料について最適な光学・検出系を提供することが可能であり、さらに光ファイバ型蛍光検出器によってもたらされる光線の径の小ささから、流路などの小さいまたは細い領域に存在する試料からの蛍光を検出するのに適しており応答スピードも優れている。
光ファイバ型の蛍光検出器140は、光学ヘッド142と、蛍光検出器ドライバ144と、光学ヘッド142と蛍光検出器ドライバ144とを接続する光ファイバ146とを備える。蛍光検出器ドライバ144には励起光用光源(LED、レーザその他特定の波長を出射するように調整された光源)、光ファイバ型合分波器および光電変換素子(PD,APD又はフォトマル等の光検出器)(いずれも図示せず)等が含まれており、これらを制御するためのドライバ等からなる。光学ヘッド142はレンズ等の光学系からなり、励起光の試料への指向性照射と試料から発せられる蛍光の集光の機能を担う。集光された蛍光は光ファイバ146を通じて蛍光検出器ドライバ144内の光ファイバ型合分波器により励起光と分けられ、光電変換素子によって電気信号に変換される。光ファイバ型の蛍光検出器としては、特開2010−271060号に記載のものを使用することができる。光ファイバ型蛍光検出器は、さらに単一または複数の光学ヘッドを用いて同軸式に複数波長に係る検出が可能なようにモディファイすることもできる。複数波長に係る蛍光検出器とその信号処理については、国際公開第2014/003714号に記載の発明を活用することができる。
反応処理装置100においては、高温領域36と中温領域38とを接続する接続流路40における蛍光検出領域86内の試料Sからの蛍光を検出することができるように光学ヘッド142が配置される。試料Sは流路内を繰り返し往復移動させられることで反応が進み、試料Sに含まれる所定のDNAが増幅するので、検出された蛍光信号の強度値の変動をモニタリングすることで、DNAの増幅の進度をリアルタイムで知ることができる。また、反応処理装置100においては、蛍光検出器140からの出力値を利用して、試料Sの移動制御に活用する。例えば蛍光検出器140からの出力値を制御装置に送信して、後述の送液システムの制御をする際のパラメータとして利用してもよい。蛍光検出器は、試料からの蛍光を検出する機能を発揮するものであれば光ファイバ型蛍光検出器に限定されない。
反応処理装置100は、さらに、試料Sを反応処理容器10の流路12内で移動および停止させるための送液システム(図示せず)を備える。送液システムは、これに限られるものではないが、第1空気連通口24または第2空気連通口26を通じて、いずれか一方から空気を送り込む(送風する)ことによって、試料Sを流路12内で一方向に移動させることができる。さらに、送液システムは、流路への送風を止める、または流路12内の試料Sの両側の圧力を等しくすることにより所定の位置で停止させることができる。
送液システムのうち、送風や加圧機能を備える手段(送風手段)として、シリンジポンプやダイアフラムポンプ、ブロアなどを用いることができる。また試料Sを所定の位置で停止させる機能を備えるものとして、送風手段と三方弁(3ポートバルブ)などを組み合わせたものを用いることができる。例えば、第1および第2の三方弁を備え、第1の三方弁を、その第1のポート(コモンポート)を第1の空気連通口に接続し、第2のポートを上記の送風手段に接続し、第三のポートを大気圧に開放されるように各ポートの接続をし、第2の三方弁を、その第1のポート(コモンポート)を第2の空気連通口に接続し、第2のポートを上記の送風手段に接続し、第三のポートを大気圧に開放されるように各ポートの接続をした態様が考えられる。これらの具体的態様は、例えば、特開平4−325080号や特開2007−285777号に記載がある。例えば、いずれか一方の空気連通口に接続されている三方弁を操作して、送風手段とその空気連通口とが連通するような状態にして、かつ、もう一方の空気連通口に接続されている三方弁を操作して、その空気連通口が大気圧に通じるような状態にすることにより、試料Sを一方向に移動させる。続いて両方の三方弁を操作して、両方の空気連通口が大気圧に通じるような状態にすることにより、試料Sを停止させる。
また、三方弁や送液手段の操作は、適切なドライバを通じて、制御装置によって行わせることが可能である。特に、先述のように配置された蛍光検出器140が、得られた蛍光信号に基づく出力値を制御装置に送信することにより、流路12中の試料Sの位置やその通過を、制御装置に認識させることによって、三方弁や送液手段からなる送液システムの制御を行わせる。
従って、流路12の両側に接続された三方弁を順次に、かつ、連続的に操作することにより、試料Sを流路12内で、高温領域36と中温領域38の間を連続して往復移動させて、それによって試料Sに適切なサーマルサイクルを与えることが可能となる。
図4は、従来の反応処理容器の基板に生じたウェルドラインの一例を示す。本実施形態に係る反応処理容器10は、射出成形法により製造される。射出成形法においては、溝状の流路12に対応した凸形状を有する金型に樹脂を流し込んで基板14が成形されていくが、高温領域36や中温領域38などのように、直線状流路と曲線状流路が組み合わされたような凹凸構造が連続する流路に対応する複雑な部分では、金型の内部において、樹脂の充填やエアの排除に大きく時間差が生じたりするなど高速の樹脂の流れが複雑になる。そのような部位に対応する基板の部分には、異なる方向から流れてきた樹脂同士の接触や衝突、または、ある位置への樹脂の到達時間の差異によって、いわゆるウェルドラインが生じる場合がある。
図4には、実際に基板14に生じたウェルドライン50が示されている。図4に示す例では、ウェルドライン50が基板14の流路12の近傍に顕著に発生しており、ウェルドライン50と流路12とが接続する部分にピット52(深さ数十μmの凹部)が生じている。流路12にこのようなピット52が存在すると、試料の移動が妨げられ、試料の停止もしくは滞留が生じるおそれがある。また、ピット52が生じた流路12の領域を試料が通過する際にエア(泡)を巻き込むおそれもある。数十回に及ぶ試料の移動の間に試料の巻き込んだエアがその体積を増大させて、最終的には試料が寸断されて流路12内を試料が移動することができなくなってしまい、PCR反応を継続できなくなるおそれがある。また、試料の一部がピット52にトラップされてしまい、それが再び流路中に放出されることもあり、この場合にも試料の寸断が生じるおそれがある。特に高温領域36に属する流路12に生じたピットは、経験上、エアの巻き込みの原因となる可能性が高い。そこで、本実施形態に係る反応処理容器10では、ウェルドラインの発生を抑制できる流路12の構造を採用する。
図5は、高温領域や中温領域などの反応領域に属する流路(以下「反応流路」と呼ぶ)の断面の一例を示す。図5に示す反応流路60は、一部が平面状の底面62と、底面62の両側に位置する側面64とを含む。反応流路60においては、図5に示すように、底面62と側面64とが曲面66により接続されている。すなわち、底面62と側面64の接続部が曲面状となっている。反応流路60の形状・寸法を規定するパラメータとしては、流路の開口幅W、流路の深さD、側面64のテーパ角Ta、曲面66の曲率半径Rがある。先述のとおり、反応流路60はその開口部が基板14の主面14aに露出している。開口幅Wは主面14aにおける流路の幅である。流路の深さDは主面14aからの流路の最大の深さである。曲面66の曲率半径Rは底面62と側面64の接続部を構成する曲面の断面を円で近似したときの半径である。テーパ角Taは側面64のなす角である。側面64のテーパは、射出成型法によって基板を成形する場合において、抜きテーパとして作用することができ、工業的な生産に際して有利である。流路の深さDは、0.55mm〜0.95mmであり、流路の開口幅Wは、0.6mm〜1.1mmである。流路のこれらの寸法は実際の試料について、サーマルサイクルを行うにあたって経験上適切な寸法の範囲である。流路の深さDは、0.65mm〜0.85mmが好ましく、流路の開口幅Wは0.65mm〜0.9mmが好ましい。テーパ角Taは、10°〜30°である。テーパ角Taがこの範囲にあるとき、射出成型方法によって基板14を製造するときに適切な抜き角となる。テーパ角Taは、15°〜25°が好ましい。
図6は、反応流路の断面の別の例を示す。図6に示す反応流路70は、曲面状の底面72と、底面72の両側に位置する側面74とを含む。反応流路70は、断面が略U字形状の流路であり、図6に示すように、底面72と側面74とが曲面76により接続されている。本例においても、底面72と側面74の接続部が曲面状となっている。本例では、底面72の曲率半径と曲面76の曲率半径Rは同じであるが、異なってもよい。反応流路70の形状・寸法を規定するパラメータとその範囲は、図5に示した反応流路60に準ずる。
図7(a)および(b)は、射出成型法における金型内部の樹脂の流れを説明するための図である。樹脂が流れる方向に流路に対応する金型の凸部が横断するような部分であって、流路の断面を表す方向からの概略図を示す。図7(a)は、本実施形態に係る反応処理容器10の基板を成形するための金型80に樹脂が流れる様子を示す。金型80は、反応処理容器10の基板の反応流路を成形するための凸部82を備える。この凸部82は、流路の底面と側面の接続部が曲面状となっていることにより、それに対応する部分においてなだらかに変化する形状となっている。したがって、樹脂の流れもそれに沿うように途切れることなく連続的に流れが生じ、その結果、反応流路近傍における樹脂の充填も抵抗が少なくスムースなものとなるので、好ましくないウェルドラインの生じる確率を低減できる、もしくは先述のピットのような凹部を伴った顕著もしくは明確なウェルドラインの生じる確率を低減できる。曲面の曲率半径Rは、0.2mm〜0.38mmであり、0.3mm〜0.35mmが好ましく、曲面の曲率半径Rは、これらの範囲内で流路の幅と深さを鑑みて、底面と側面との間で急峻な屈曲部のないことが好ましい。
さらに、反応流路60は、図1に示すように直線状流路と曲線状流路とからなる蛇行状流路である。ここで曲線状流路の曲率半径は小さすぎないことも重要である。曲線状流路の曲率半径が過剰に小さい場合も、基板14の射出成型の際、そのような小さい曲線に囲まれた部分への樹脂の充填がスムースにいかなくなる。曲線状流路の曲率半径は、反応流路60における開口幅Wに対して1倍以上である。曲線状流路の曲率半径は、流路の幅方向の中心を通る流路中心線の曲率半径である。
また、図1に示すように、高温領域36や中温領域38の中心から離れるに従って、反応流路60における曲線状流路の曲率半径が変化してもよいし、あるいは同じでもよい。例えば、図1に示す反応流路60において、曲線状流路の曲率半径を内側から外側にかけてR1、R2、R3、R4としたとき、R1<R2<R3<R4となるように曲線状流路を構成してもよい。R1〜R4については、反応流路60における開口幅Wに対して1〜6倍であってもよい。反応流路60におけるR1〜R4で示された曲線状流路以外の曲線状流路の曲率半径は、R1〜R4のいずれかの曲率半径に等しくてもよい。曲線状流路の曲率半径を開口幅に対して適宜大きくすることは、上記のように射出成型の際の樹脂充填の観点から有利であるとともに、試料を流路内で移動させているときでも、曲線状流路のような屈曲部において試料の減速を抑制でき、試料の移動スピードを一定に保つことができる。一方で、曲線状流路の曲率半径は、大きすぎると反応領域における流路の容積が減少し、所定量の試料を含ませることができない。例えば、反応流路60の開口幅Wに対して、R1〜R4は、すべてまたは一部が等しく、1×W〜6×Wであってもよく、R1=1×W〜3×W、R2=1.5×W〜3.5×W、R3=2.5×W〜4.5×W、R4=4×W〜6×Wであってもよい。さらにR1〜R4の差を明確にして、R1=1×W〜2×W、R2=2×W〜3×W、R3=3×W〜4×W、R4=4.5×W〜5×Wであってもよい。このような場合、基板14の明確なウェルドラインの抑制することができ、試料の反応流路60を移動するときの移動スピードを略一定にすることが期待されるとともに、PCRやその後の診断に必要な量の試料を含ませることができる。
一方、図7(b)は、比較例に係る反応処理容器の基板を成形するための金型85に樹脂が流れる様子を示す。この比較例に係る反応処理容器の基板は、断面が台形状の反応流路を備えるものである。金型85は、台形状の反応流路を成形するための凸部88を備える。この凸部88は、流路の底面と側面の接続部が角張った形状となっていることにより、それに対応する部分において急峻に変化する形状となっている。したがって、レイノルズ数の急激な変動により、樹脂の充填時の流速の変化が生じて乱流となり、反応流路近傍に好ましくないウェルドラインの発生する確率が高くなるものと示唆される。
このように、本実施形態に係る反応処理容器10によれば、反応流路において底面と側面との接続部を曲面状としたことにより、金型に樹脂を流し込む際に、反応流路近傍における樹脂の充填がスムースになる。その結果、反応流路近傍において好ましくないウェルドラインの発生する確率を低減できるので、反応流路内に面した部分にピットなどの凹部が生じるのを防ぐことができ、試料が反応流路内をスムースに移動可能な反応処理容器を実現できる。
また、本実施形態に係る反応処理容器10によれば、反応領域にピットが生じるのを防ぐことができるので、ピットを試料が通過する際のエアの巻き込みを回避することができ、好適にPCR反応を行うことができる。
図8は、蛍光検出領域に属する流路(以下「検出流路」と呼ぶ)の断面の一例を示す。検出流路90は、平面状の底面92と、底面92の両側に位置する側面94とを含む。側面はテーパ角を有していてもよい。検出流路90における底面92は、基板14の主面(上面14a、下面14b)と平行な平面に形成される。また、反応処理容器10を、反応処理装置100に導入したときに、蛍光検出器140の光学ヘッド142は、その光軸が底面92や基板14の主面と略垂直になるように配置される。このように配置することにより、光学ヘッド142から試料に照射される励起光または試料から出射される蛍光の好ましくない屈折や反射等を抑制することができ、安定した蛍光強度の検出が可能となる。
さらに、検出流路90においては、平面状の底面92と側面94とが直接に接続されている。すなわち、底面92と側面94との接続部95が曲面状になっておらず、角張った形状となっている。試料から出射して検出に係る蛍光の強度は、流路の深さが深くなるほど大きくなるので、接続部95や底面92の一部が曲面状である場合、実質的に流路の深さが一定でないことになるので、検出に係る蛍光強度が、反応処理容器10の個体間において、ばらつきが生じるおそれがある。一方で、検出流路の断面積は、先述の反応流路の断面積と同じであってもよいし異なっていてもよい。断面積は流路(の溝)の幅と深さによって決まる。試料の移動速さは、流路の断面積によって異なるので、この作用を用いて、反応流路を移動するときの試料の速さを、検出流路を移動するときの試料の速さより大きくしてもよいし、その逆も可能である。
検出流路90の形状・寸法を規定するパラメータとしては、開口幅W1、流路の深さDb、底面幅W2、側面94のテーパ角Tbがある。開口幅W1は主面14aにおける流路の幅である。流路の深さDbは主面14aからの流路の最大の深さである。底面幅W2は、底面92の幅である。テーパ角Tbは側面94のなす角である。開口幅W1は、0.8mm〜1.2mmである。この寸法は実際の試料について、サーマルサイクルを行うにあたって経験上適切な寸法の範囲である。検出流路90の開口幅W1は、0.9mm〜1.1mmが好ましい。検出流路90の深さDbは、0.8mm〜1.25mmである。この寸法は実際の試料について、サーマルサイクルを行うにあたって経験上適切な寸法の範囲であるとともに、検出に係る蛍光強度の値について、十分に大きく、S/Nの向上が図ることができる。検出流路90の深さDbは、0.9mm〜1.1mmが好ましい。検出流路90の底面幅W2は、0.5mm〜0.8mmである。この寸法は実際の試料について、サーマルサイクルを行うにあたって経験上適切な寸法の範囲である。検出流路90の底面幅W2は、0.55mm〜0.7mmが好ましい。検出流路90のテーパ角Tbは、10°〜30°である。テーパ角Tbがこの範囲にあるとき、射出成型方法によって基板14を製造するときに適切な抜き角となる。検出流路90のテーパ角Tbは、15°〜25°が好ましい。
検出流路90は、直線状の流路に形成されることが好ましい。直線状の流路とすることにより、金型に樹脂を流し込む際に、反応流路のような蛇行状の流路の場合よりも樹脂の充填がスムースとなるので、検出流路90の近傍でのウェルドラインの発生が抑制され、検出流路90にピットが発生するのを防ぐことができる。
図1に戻るが、反応処理容器10の基板14は、検出流路90の近傍にゲート17を備える。「ゲート」とは、基板を射出成形法によって作製する場合の、金型への樹脂の注入口であり、この種の方法で樹脂製品を得る場合に必須の構造体である。図1に示すように、ゲート17は、ゲート17と検出流路90との間に他の流路が存在しないように配置されることが望ましい。このようにゲート17を配置することにより、ゲート17から注入された樹脂が、検出流路に対応する部分に到達するまでに、凹凸構造体が連続した部分の通過を要することなく、比較的短時間(または短距離)で検出流路90もしくはその近傍まで到達することができるので、樹脂の流れの複雑性を回避でき、検出流路90の近傍でのウェルドラインの発生をさらに抑制することができる。
図1において、ゲート17は検出流路90の直上であり紙面上の基板の上辺近傍に形成されている。より詳細には、直線状の検出流路90に垂直な「仮定垂直線V−V」を仮定した場合に、ゲート17は、仮定垂直線V−Vと基板14の上端部との交点P1近傍に形成されている。あるいは、ゲート17は、検出流路90の直下であり紙面上の基板の下辺近傍に形成されてもよい。より詳細には、仮定垂直線V−Vと基板14の下端部との交点P2近傍にゲート17(破線で示す)が形成されてもよい。このような位置に形成することにより、上記のように比較的短時間(または短距離)で検出流路90もしくはその近傍まで到達することができるので、効果的にウェルドラインの発生を抑制することができる。なお図1では、ゲート17は基板14の主面上に位置しているが、ゲート17は基板14の端面に位置してもよい。
図9は、本発明の別の実施形態に係る反応処理容器110が備える基板14の平面図である。図9に示すように、直線状の検出流路90を延長した「仮定平行線H−H」を仮定したときに、その仮定平行線H−Hと基板14の左端部との交点P3近傍にゲート17が形成されてもよい。あるいは、仮定平行線H−Hと基板14の右端部との交点P4近傍にゲート17(破線で示す)が形成されてもよい。これらの場合は、射出成型の際に、ゲートから注入される樹脂の充填に向かう方向と、直線状の検出流路90の方向とが略一致するので、樹脂が検出流路90に対応する金型の凸部を横断することがない。その結果、樹脂は直線状の検出流路90の方向に沿って充填されていくので、ウェルドラインの生じる確率を低減できる。
ここで、基板14の射出成形時における樹脂の流動性の解析結果について説明する。樹脂の流動を解析するにあたり、ソフトウェアはMoldflow(Autodesk社製)を用いた。図6に示すような底面と側面とが曲面で接続された形状の流路を実施例とし、使用する樹脂を環状ポリオレフィン樹脂とした。ゲートは、図1に示す位置に設定した。また、流路の深さDを0.75mm、テーパ角Taを20°、開口幅Wを0.81mm、曲面の曲率半径Rを0.325mmに設定した。さらに、比較例として、図8に示すような、台形状の流路についても解析を行った。比較例の流路は、深さDを0.7mm、テーパ角Taを20°、開口幅W1を0.75mm、底面幅W2を0.50mmに設定した。
樹脂の流動解析の結果、実施例および比較例ともに基板全体を充填することが可能であるが、反応流路近傍の部位の樹脂の充填時間に差異が見られた。実施例においては、反応流路近傍の部位への樹脂の充填がスムースで、反応流路近傍の部位全体を充填するのにそれほど時間を要しなかった。また、ウェルドラインの原因となるボイドやエア溜まりの発生も抑制されていた。
一方で、比較例においては、反応流路近傍の部位に樹脂が到達した当初から、一部にボイドやエア溜まりの形成が見られた。充填時間の経過とともにそれが小さくなり、反応流路近傍の部位全体を充填するのに、比較的時間を要することが判明した。また比較例では、上記ボイド等と、充填がすすむ樹脂との境界線が明確に観測され、これがウェルドラインとなりうることが判明した。本解析結果から、実施例に係る流路形状の優位性を確認できた。
図10は、本実施形態に係る反応処理容器10の基板14の流路12近傍を顕微鏡で拡大して観察した図である。わずかにウェルドライン50が生じているのが確認できるが、図4に示す従来の基板に生じたような明確なウェルドラインではなく、流路12の側面に生じていたピットのような凹部の発生も抑制することができた。本実施形態に係る反応処理容器10の基板14においては明らかに改善の効果が現れた。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
10、110 反応処理容器、 12 流路、 14 基板、 16 流路封止フィルム、 17 ゲート、 18 第1封止フィルム、 19 第2封止フィルム、 20 第3封止フィルム、 21 第4封止フィルム、 24 第1空気連通口、 26 第2空気連通口、 28 第1フィルタ、 29、31 空気導入路、 40 接続流路、 30 第2フィルタ、 36 高温領域、 38 中温領域、 39 緩衝流路、 42 分岐流路、 44 試料導入口、 50 ウェルドライン、 52 ピット、 60、70 反応流路、 62、72、92 底面、 64、74、94 側面、 66、76 曲面、 80、85 金型、 82、88 凸部、 86 蛍光検出領域、 90 検出流路、 95 接続部、 100 反応処理装置、 104 高温用ヒータ、 106 中温用ヒータ、 140 蛍光検出器、 142 光学ヘッド、 144 蛍光検出器ドライバ、 146 光ファイバ。

Claims (14)

  1. 樹脂から成る基板と、
    前記基板の主面に形成された溝状の流路と、
    前記基板の主面上に形成されたゲートと、
    を備えることを特徴とする反応処理容器。
  2. 前記基板は、少なくとも一辺を含み、
    前記ゲートは、前記基板の一辺近傍に形成されることを特徴とする請求項1に記載の反応処理容器。
  3. 前記流路に通じる一対の空気連通口が前記基板に形成されており、
    前記ゲートは、前記一対の空気連通口の間に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の反応処理容器。
  4. 前記流路は、直線状の流路を含み、
    前記ゲートは、前記直線状の流路に垂直な仮定垂直線と前記基板の一辺との交点近傍に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の反応処理容器。
  5. 前記直線状の流路の底面は、前記基板の主面と平行な平面に形成されることを特徴とする請求項4に記載の反応処理容器。
  6. 前記流路は、試料を繰り返し往復移動することにより前記試料にサーマルサイクルが付与されて前記試料に所定の反応を生じさせる反応流路を含み、
    前記反応流路は、互いに異なる温度に維持される第1領域および第2領域を含み、
    前記第1領域と前記第2領域は、前記直線状の流路により接続されることを特徴とする請求項4または5に記載の反応処理容器。
  7. 前記基板は、前記反応流路の近傍にウェルドラインを有することを特徴とする請求項6に記載の反応処理容器。
  8. 前記反応流路は、曲線状の流路と直線状の流路とを組み合わせた流路を含み、
    前記ウェルドラインと前記反応流路の一部とが交差していることを特徴とする請求項7に記載の反応処理容器。
  9. 前記ウェルドラインと前記反応流路の一部との交点近傍の前記反応流路内に凹部を備えないことを特徴とする請求項8に記載の反応処理容器。
  10. 前記反応流路の深さは、0.55mm〜0.95mmであり、前記反応流路のテーパ角は、10°〜30°であることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の反応処理容器。
  11. 前記直線状の流路の底面幅は、0.5mm〜0.8mmであることを特徴とする請求項4から10のいずれかに記載の反応処理容器。
  12. 前記直線状の流路の深さは、0.8mm〜1.25mmであり、前記直線状の流路のテーパ角は、10°〜30°であることを特徴とする請求項11に記載の反応処理容器。
  13. 請求項1から12のいずれかに記載された反応処理容器の製造方法であって、
    前記溝状の流路に対応する凸形状を有する金型に前記ゲートから樹脂を注入する工程を備えることを特徴とする反応処理容器の製造方法。
  14. 請求項1から12のいずれかに記載された反応処理容器を用いることを特徴とする反応処理方法。
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