<一実施形態>
図1〜図2を参照して、本発明の光透過性導電フィルム1の一実施形態を説明する。
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向、第1方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側、第1方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側、第1方向他方側)である。また、紙面左右方向および奥行き方向は、上下方向に直交する面方向である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
1.光透過性導電フィルム
光透過性導電フィルム1は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有し、厚み方向と直交する所定方向(面方向)に延び、平坦な上面および平坦な下面を有する。光透過性導電フィルム1は、例えば、画像表示装置に備えられるタッチパネル用基材などの一部品であり、つまり、画像表示装置ではない。すなわち、光透過性導電フィルム1は、画像表示装置などを作製するための部品であり、LCDモジュールなどの画像表示素子を含まず、後述する透明基材2とハードコート層3と光学調整層4と非晶質光透過性導電層5とを含み、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
具体的には、図1に示すように、光透過性導電フィルム1は、透明基材2と、透明基材2の上面(厚み方向一方面)に配置されるハードコート層3と、ハードコート層3の上面に配置される光学調整層4と、光学調整層4の上面に配置される非晶質光透過性導電層5を備える。より具体的には、光透過性導電フィルム1は、透明基材2と、ハードコート層3と、光学調整層4と、非晶質光透過性導電層5とをこの順に備える。光透過性導電フィルム1は、好ましくは、透明基材2、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質光透過性導電層5からなる。また、光透過性導電フィルム1は、透明導電性フィルムである。
2.透明基材
透明基材2は、光透過性導電フィルム1の機械強度を確保するための透明な基材である。すなわち、透明基材2は、非晶質光透過性導電層5を、ハードコート層3および光学調整層4とともに支持している。
透明基材2は、光透過性導電フィルム1の最下層であって、フィルム形状を有する。透明基材2は、ハードコート層3の下面全面に、ハードコート層3の下面と接触するように配置されている。
透明基材2としては、例えば、高分子フィルム、無機板(ガラス板など)が挙げられ、透明性および可撓性を併有する観点から、好ましくは、高分子フィルムが挙げられる。
高分子フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーなどのオレフィン樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これら高分子フィルムは、単独使用または2種以上併用することができる。
透明基材2は、透明性、可撓性、機械的強度などの観点から、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムが挙げられる。
透明基材2の全光線透過率(JIS K 7375−2008)は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上である。
透明基材2の厚みは、機械的強度、光透過性導電フィルム1をタッチパネル用フィルムとした際の打点特性などの観点から、例えば、2μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、150μm以下である。透明基材2の厚みは、例えば、マイクロゲージ式厚み計を用いて測定することができる。
透明基材2の下面には、セパレータなどが設けられていてもよい。
3.ハードコート層
ハードコート層3は、光透過性導電フィルム1を製造する際に、透明基材2に傷が発生することを抑制するための保護層である。また、複数の光透過性導電フィルム1を積層した場合に、非晶質光透過性導電層5に擦り傷が発生することを抑制するための耐擦傷層である。
ハードコート層3は、フィルム形状を有する。ハードコート層3は、透明基材2の上面全面に、透明基材2の上面に接触するように、配置されている。より具体的には、ハードコート層3は、透明基材2と光学調整層4との間に、透明基材2の上面および光学調整層4の下面に接触するように、配置されている。
ハードコート層3は、ハードコート組成物から形成されている。ハードコート組成物は、樹脂を含有し、好ましくは、樹脂からなる。
樹脂としては、例えば、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン樹脂)などが挙げられ、好ましくは、硬化性樹脂が挙げられる。
硬化性樹脂としては、例えば、活性エネルギー線(具体的には、紫外線、電子線など)の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、例えば、加熱により硬化する熱硬化性樹脂などが挙げられ、好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、分子中に重合性炭素−炭素二重結合を有する官能基を有するポリマーが挙げられる。そのような官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基(メタクリロイル基および/またはアクリロイル基)などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどの(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂以外の硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
ハードコート組成物は、粒子を含有することもできる。これにより、ハードコート層3を、耐ブロッキング特性を有するアンチブロッキング層とすることができる。
粒子としては、無機粒子、有機粒子などが挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫などからなる金属酸化物粒子、例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩粒子などが挙げられる。有機粒子としては、例えば、架橋アクリル樹脂粒子などが挙げられる。粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
ハードコート組成物は、さらに、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を含有することができる。
ハードコート層3の厚みは、耐擦傷性の観点から、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、3μm以下である。ハードコート層3の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて、断面観察により測定することができる。
4.光学調整層
光学調整層4は、非晶質光透過性導電層5のパターンの視認を抑制しつつ、光透過性導電フィルム1に優れた透明性を確保するために、光透過性導電フィルム1の光学物性(例えば、屈折率)を調整する層である。
光学調整層4は、フィルム形状を有する。光学調整層4は、ハードコート層3の上面全面に、ハードコート層3の上面に接触するように、配置されている。より具体的には、光学調整層4は、ハードコート層3と非晶質光透過性導電層5との間に、ハードコート層3の上面および非晶質光透過性導電層5の下面に接触するように、配置されている。
光学調整層4は、光学調整組成物から形成されている。光学調整組成物は、樹脂を含有し、好ましくは、樹脂および粒子を含有する。
樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ハードコート組成物で例示した樹脂が挙げられる。好ましくは、硬化性樹脂、より好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂、さらに好ましくは、(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
樹脂の含有割合は、光学調整組成物に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、25質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
粒子としては、光学調整層の求める屈折率に応じて好適な材料を選択することができ、例えば、ハードコート組成物で例示した粒子が挙げられる。屈折率の観点から、好ましくは、無機粒子、より好ましくは、金属酸化物粒子、さらに好ましくは、酸化ジルコニウム粒子(ZrO2)が挙げられる。
粒子の含有割合は、光学調整組成物に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、75質量%以下である。
光学調整組成物は、さらに、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を含有することができる。
光学調整層4の屈折率は、例えば、1.40以上、好ましくは、1.55以上であり、また、例えば、1.80以下、好ましくは、1.70以下である。屈折率は、例えば、アッベ屈折率計により測定することができる。
光学調整層4の厚みは、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、200nm以下、好ましくは、100nm以下である。光学調整層4の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて、断面観察により測定することができる。
5.光透過性導電層
非晶質光透過性導電層5は、エッチングによって、所望のパターン(例えば、電極パターンや配線パターン)に形成するための透明導電層である。
非晶質光透過性導電層5は、光透過性導電フィルム1の最上層であって、フィルム形状を有する。非晶質光透過性導電層5は、光学調整層4の上面全面に、光学調整層4の上面に接触するように、配置されている。
非晶質光透過性導電層5の材料としては、例えば、インジウム系無機酸化物、アンチモン系無機酸化物などが挙げられ、好ましくは、インジウム系無機酸化物が挙げられる。
非晶質光透過性導電層5の材料には、好ましくは、Sn、Zn、Ga、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、W、Fe、Pb、Ni、Nb、Crからなる群より選択される少なくとも1種の不純物無機元素が含まれて(ドープされて)いる。不純無機元素としては、好ましくは、Snが挙げられる。
不純無機元素を含有する無機酸化物としては、例えば、インジウム系無機酸化物の場合は、インジウムスズ複合酸化物(ITO)が挙げられ、例えば、アンチモン無機酸化物の場合は、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)が挙げられる。好ましくは、ITOが挙げられる。
非晶質光透過性導電層5がITOから形成されている場合、非晶質光透過性導電層5全体において、酸化スズ(SnO2)含有量は、酸化スズおよび酸化インジウム(In2O3)の合計量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、13質量%以下である。
非晶質光透過性導電層5は、単層から構成されていてもよく、または、複数の層(厚み方向領域)から構成されていてもよい。層数は限定的でなく、例えば、2層以上、5層以下が挙げられ、好ましくは、2層が挙げられる。
非晶質光透過性導電層5が、複数の層から構成されている場合、好ましくは、図1の仮想線が示すように、非晶質光透過性導電層5は、第1層(第1領域)5aと、第1層5aの上側に配置される第2層(第2領域)5bとを備える。
第1層5aおよび第2層5bは、好ましくは、ともに、不純無機元素を含有する無機酸化物から形成されており、好ましくは、ともに、不純無機元素を含有するインジウム系無機酸化物から形成されており、さらに好ましくは、ともに、ITOから形成されている。
また、この場合、透明基材2から最も離れている層(すなわち、第2層5b)のインジウムに対する不純無機元素(好ましくは、Sn)の質量比が、非晶質光透過性導電層5を構成する複数の層(すなわち、第1層5aおよび第2層5b)の中で、好ましくは、最大ではなく、より好ましくは、最小である。すなわち、非晶質光透過性導電層5が、第1層5aおよび第2層5bからなる場合、第2層5bのインジウムに対する不純無機元素の質量比は、第1層5aのインジウムに対する不純無機元素の質量比よりも小さい。
具体的には、第1層5aは、好ましくは、インジウムに対する不純無機元素の質量比が0.05以上であり、第2層5bは、好ましくは、インジウムに対する不純無機元素の質量比が0.05未満である。これによって、より確実に短時間で、非晶質光透過性導電層5の結晶化を可能にすることができる。
より具体的には、第1層5aが、ITOから形成されている場合、第1層5aにおいて、酸化スズ(SnO2)含有量は、酸化スズおよび酸化インジウム(In2O3)の合計量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、8質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、13質量%以下である。第1層5aの酸化スズの含有量が、透明性や表面抵抗の安定性を向上させることができる。
第2層5bが、ITOから形成されている場合、第2層5bにおいて、酸化スズ(SnO2)含有量は、酸化スズおよび酸化インジウム(In2O3)の合計量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、また、例えば、8質量%未満、好ましくは、5質量%未満である。第2層5bの酸化スズの含有量が上記範囲内であれば、非晶質光透過性導電層5の結晶化を容易にして、導電性を確実に向上させることができる。
非晶質光透過性導電層5における、第1層5aの厚み方向の割合は、例えば、75%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、99%以下、好ましくは、98%以下、より好ましくは、97%以下である。具体的には、第1層5aの厚みは、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上、より好ましくは、20nm以上であり、また、例えば、200nm以下、好ましくは、150nm以下、より好ましくは、50nm以下である。
非晶質光透過性導電層5における、第2層5bの厚み方向の割合は、例えば、25%以下、好ましくは、20%以下、より好ましくは、10%以下であり、例えば、1%以上、好ましくは、2%以上、より好ましくは、3%以上である。また、具体的には、第2層5bの厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、1.5nm以上、より好ましくは、2nm以上であり、また、例えば、40nm以下、好ましくは、20nm以下、より好ましくは、10nm以下である。
非晶質光透過性導電層5の総厚みは、40nmを超過し、例えば、300nm以下である。加熱時の結晶化速度および抵抗値の観点からは、好ましくは、41nm以上、より好ましくは、45nm以上、さらに好ましくは、50nm超、特に好ましくは、60nm以上であり、また、好ましくは、250nm以下、より好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは、160nm以下、特に好ましくは、90nm以下である。また、保存時の結晶化抑制、および、加熱後の導電性の観点からは、好ましくは、100nm以上、180nm以下である。
非晶質光透過性導電層5の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて、断面観察により測定することができる。
非晶質光透過性導電層5は、非晶質であって、結晶質への転化(結晶化)が可能である。結晶質への転化は、後述する加熱により実施される。
光透過性導電層が非晶質か結晶質かは、例えば、光透過性導電層がITO層である場合は、20℃の塩酸(濃度5質量%)に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、15mm程度の間の端子間抵抗を測定することで判断できる。本明細書においては、塩酸(20℃、濃度:5質量%)への浸漬・水洗・乾燥後に、15mm間の端子間抵抗が10kΩを超過する場合、ITO層が非晶質とし、15mm間の端子間抵抗が10kΩ以下である場合、ITO層が結晶質とする。
6.光透過性導電フィルムの製造方法
光透過性導電フィルム1を製造する方法を説明する。光透過性導電フィルム1を製造するには、例えば、透明基材2の上面(厚み方向一方面)に、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質光透過性導電層5をこの順に設ける。以下、詳述する。
まず、公知または市販の透明基材2を用意する。
その後、必要に応じて、透明基材2とハードコート層3との密着性の観点から、透明基材2に、例えば、スパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を実施することができる。また、溶剤洗浄、超音波洗浄などにより透明基材2を除塵、清浄化することができる。
次いで、透明基材2の上面に、ハードコート層3を設ける。例えば、透明基材2の上面にハードコート組成物を湿式塗工することにより、透明基材2の下面にハードコート層3を形成する。
具体的には、例えば、ハードコート組成物を溶媒で希釈した溶液(ワニス)を調製し、続いて、ハードコート組成物溶液を透明基材2の上面に塗布して、乾燥する。
溶媒としては、例えば、有機溶媒、水系溶媒(具体的には、水)などが挙げられ、好ましくは、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール化合物、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン化合物、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル化合物、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物などが挙げられる。これら溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
ハードコート組成物溶液における固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
塗布方法は、ハードコート組成物溶液および透明基材2に応じて適宜選択することができる。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
乾燥温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、100℃以下である。
乾燥時間は、例えば、0.5分以上、好ましくは、1分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、20分以下である。
その後、ハードコート組成物が活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する場合は、ハードコート組成物溶液の乾燥後に、活性エネルギー線を照射することにより、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる。
なお、ハードコート組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合は、この乾燥工程により、溶媒の乾燥とともに、熱硬化性樹脂を熱硬化することができる。
次いで、ハードコート層3の上面に、光学調整層4を設ける。例えば、ハードコート層3の上面に光学調整組成物を湿式塗工することにより、ハードコート層3の上面に光学調整層4を形成する。
具体的には、例えば、光学調整組成物を溶媒で希釈した溶液(ワニス)を調製し、続いて、光学調整組成物溶液をハードコート層3の上面に塗布して、乾燥する。
光学調整組成物の調製、塗布、乾燥などの条件は、ハードコート組成物で例示した調製、塗布、乾燥などの条件と同様にすることができる。
また、光学調整組成物が活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する場合は、光学調整組成物溶液の乾燥後に、活性エネルギー線を照射することにより、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる。
なお、光学調整組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合は、この乾燥工程により、溶媒の乾燥とともに、熱硬化性樹脂を熱硬化することができる。
次いで、光学調整層4の上面に、非晶質光透過性導電層5を設ける。例えば、乾式方法により、光学調整層4の上面に非晶質光透過性導電層5を形成する。
乾式方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。好ましくは、スパッタリング法が挙げられる。この方法によって薄膜の非晶質光透過性導電層5を形成することができる。
スパッタリング法としては、例えば、2極スパッタリング法、ECR(電子サイクロトロン共鳴)スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などが挙げられる。好ましくは、マグネトロンスパッタリング法が挙げられる。
スパッタリング法に用いる電源は、例えば、直流(DC)電源、交流中周波(AC/MF)電源、高周波(RF)電源、直流電源を重畳した高周波電源のいずれであってもよい。
スパッタリング法を採用する場合、ターゲット材としては、非晶質光透過性導電層5を構成する上述の無機物が挙げられ、好ましくは、ITOが挙げられる。ITOの酸化スズ濃度は、ITO層の耐久性、結晶化などの観点から、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、13質量%以下である。
スパッタガスとしては、例えば、Arなどの不活性ガスが挙げられる。また、好ましくは、酸素ガスなどの反応性ガスを併用する。反応性ガスを併用する場合において、不活性ガスに対する反応性ガスの流量比は、例えば、0.0010以上、0.0100以下である。
スパッタリング法は、真空下で実施される。具体的には、スパッタリング時の気圧は、スパッタリングレートの低下抑制、放電安定性などの観点から、例えば、1Pa以下、好ましくは、0.7Pa以下であり、また、例えば、0.1Pa以上である。
水の分圧は、結晶化の速度を向上させる観点から、例えば、10×10−4Pa以下、好ましくは、5×10−4Pa以下である。
また、所望の非晶質光透過性導電層5を形成するために、ターゲット材やスパッタリングの条件などを適宜設定して複数回スパッタリングを実施してもよい。
特に、本発明では、例えば、酸素の導入量や非晶質光透過性導電層5の厚みを調整して、厚み40nmを超過する非晶質光透過性導電層5を形成することにより、所望の非晶質光透過性導電層5を備える光透過性導電フィルム1を好適に製造することができる。
詳しくは、スパッタリング法により、非晶質光透過性導電層5としてITO層を形成する場合を一例として挙げると、スパッタリング法により得られるITO層は、一般的に、非晶質ITO層として成膜される。そして、成膜雰囲気の酸素量を少なくして、ITO層に酸素欠損部を生じさせることにより、加熱によって結晶化可能なITO層が得られる。この際、その酸素量を、ITO層が結晶可能な程度にやや不足気味にする。
より具体的には、例えば、水平磁場強度を50mT以上、200mT以下(好ましくは、80mT以上、120mT以下)の高磁場強度とし、直流電源を採用した場合は、次の通りである。第1層5aの形成時において、酸化スズ濃度が高いITOターゲットを用いて、Arガスに対する酸素ガスの流量比(O2/Ar)を、例えば、0.0050以上、0.0120以下、好ましくは、0.0060以上、0.0080以下に設定し、また、ITO厚み(nm)に対する流量比「(O2/Ar)/(ITO厚み)」を、例えば、0.00003以上、0.00020以下に設定し、必要に応じて第2層5bを形成する場合には同様に流量比を適宜設定する。
なお、ITO成膜環境下で、酸素が適した割合(やや不足した酸素量)で導入されているか否かは、例えば、酸素供給量(sccm)(X軸)と、その酸素供給量によって得られるITOの表面抵抗(Ω/□)(Y軸)とをグラフにプロットして、そのグラフから判断することができる。すなわち、そのグラフの極小近傍領域(ボトム領域)が、最も表面抵抗が小さく、ITOが化学量論組成となっているため、その極小近傍領域よりも僅かに原点側に近いX軸の値が、本発明における非晶質光透過性導電層5を作製するのに適した酸素供給量と判断できる。
これにより、透明基材2、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質光透過性導電層5を厚み方向にこの順に備える光透過性導電フィルム1を得る。
なお、上記製造方法では、ロールトゥロール方式にて、透明基材2を搬送させながら、その透明基材2に、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質光透過性導電層5を形成してもよく、また、これらの層の一部または全部をバッチ方式(枚葉方式)にて形成してもよい。生産性の観点から、好ましくは、ロールトゥロール方式にて、透明基材2を搬送させながら、透明基材2に各層を形成する。
このようにして得られる光透過性導電フィルム(非晶質光透過性導電フィルム)1は、以下の特性を備える。
非晶質光透過性導電層5におけるキャリア密度は、40×1019/cm3以上、好ましくは、42×1019/cm3以上、より好ましくは、52×1019/cm3以上であり、また、例えば、170×1019/cm3以下、好ましくは、100×1019/cm3以下である。キャリア密度が上記下限以上であれば、保存時の結晶化を抑制しつつ、加熱における結晶化速度を向上させることができる。
非晶質光透過性導電層5におけるホール移動度は、例えば、5cm2/V・s以上、好ましくは、10cm2/V・s以上、より好ましくは、20cm2/V・s以上であり、また、例えば、40cm2/V・s以下、好ましくは、30cm2/V・s以下である。
非晶質光透過性導電層5の比抵抗は、例えば、10×10−4Ω・cm以下、好ましくは、5×10−4Ω・cm以下であり、また、例えば、0.1×10−4Ω・cm以上である。比抵抗が上記上限以下であれば、抵抗値が小さく、導電性に優れる。比抵抗は、4端子法により測定することができる。
光透過性導電フィルム1の全光線透過率(JIS K 7375−2008)は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上である。
光透過性導電フィルム1の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
光透過性導電フィルム1は、例えば、光学装置に備えられる。光学装置としては、例えば、画像表示装置、調光装置などが挙げられ、好ましくは、画像表示装置が挙げられる。光透過性導電フィルム1を画像表示装置(具体的には、LCDモジュールなどの画像表示素子を有する画像表示装置)に備える場合には、光透過性導電フィルム1は、例えば、タッチパネル用基材として用いられる。タッチパネルの形式としては、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などの各種方式が挙げられ、特に静電容量方式のタッチパネルに好適に用いられる。
特に、光透過性導電フィルム1をタッチパネル用基材に用いる場合では、好ましくは、光透過性導電フィルム1に対して、加熱処理を実施する。
加熱処理では、例えば、光透過性導電フィルム1を大気下で加熱する。
加熱処理は、例えば、赤外線ヒーター、オーブンなどを用いて実施することができる。
加熱温度は、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上であり、また、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。
加熱時間は、加熱温度に応じて適宜決定されるが、例えば、5分以上、好ましくは、10分以上であり、また、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
これにより、非晶質光透過性導電層5が結晶化されて、導電性が向上した結晶質光透過性導電層6が形成される。すなわち、図2に示すように、透明基材2、ハードコート層3、光学調整層4および結晶質光透過性導電層6を厚み方向にこの順に備える結晶質光透過性導電フィルム7が得られる。
結晶質光透過性導電層6の表面抵抗は、例えば、60Ω/□以下、好ましくは、40Ω/□以下であり、また、例えば、1Ω/□以上である。表面抵抗は、4端子法により測定することができる。これにより、導電性に優れる。
なお、必要に応じて、光透過性導電フィルム1(または結晶質光透過性導電フィルム7)に対して、パターニング処理を実施してもよい。
パターニング処理では、公知のエッチング方法を採用することができる。エッチング方法としては、ウェットエッチングおよびドライエッチングのいずれであってもよいが、生産効率の観点からウェットエッチングが挙げられる。
非晶質光透過性導電層5(または結晶質光透過性導電層6)のパターンの形状は、例えば、ストライプ形状を有する電極パターンや配線パターンなどが挙げられる。
そして、この光透過性導電フィルム1では、非晶質光透過性導電層5の厚みが、40nmを超過し、非晶質光透過性導電層5におけるキャリア密度が、40×1019/cm3以上である。このため、加熱時の結晶化速度と保存性とが両立することができる。すなわち、光透過性導電フィルム1を加熱して非晶質光透過性導電層5を結晶質光透過性導電層6に転化させる際に、その速度が良好である。そのため、短時間で結晶質光透過性導電フィルム7を得ることができる。また、加熱前の低温環境(例えば、80℃以下)での保存時において、非晶質光透過性導電層5の自然結晶化を抑制することができ、非晶質光透過性導電層5の部分的な結晶化を抑制することができる。そのため、保存後の加熱時(結晶化)において、保存時で生じ得る結晶質部分と非晶質部分との境界に起因するクラックが抑制することができる。
したがって、光透過性導電フィルム1は、一定時間保存した後であっても、光透過性導電層5のクラックを抑制しながら短時間で結晶化でき、結晶質光透過性導電フィルム7の生産性に優れる。さらには、加熱による結晶化後において、結晶質光透過性導電フィルム7の低抵抗化を図ることができ、導電性を良好にすることができる。
<変形例>
上記した一実施形態では、光透過性導電フィルム1は、透明基材2、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質光透過性導電層5を備えているが、光透過性導電フィルム1は、これら以外の層をさらに備えていてもよい。
例えば、一実施形態は、透明基材2の下面が露出されているが、例えば、光透過性導電フィルム1は、透明基材2の下面に、アンチブロッキング層などの他の機能層をさらに備えていてもよい。
また、一実施形態の光透過性導電フィルム1は、透明基材2、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質光透過性導電層5を備えているが、例えば、ハードコート層3および光学調整層4の少なくとも一方を備えていなくてもよい。好ましくは、耐擦傷性、非晶質光透過性導電層5におけるパターンの視認抑制性などの観点から、ハードコート層3および光学調整層4を備える。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
(実施例1)
透明基材として、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(ゼオン社製、商品名「ゼオノア」、厚み40μm)を用意した。透明基材の上面に、アクリル樹脂からなる紫外線硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線を照射して、ハードコート層(厚み1μm)を形成した。続いて、ハードコート層の上面に、ジルコニア粒子含有紫外線硬化型組成物を塗布し、紫外線を照射して、光学調整層(厚み90nm、屈折率1.62)を形成した。これにより、透明基材、ハードコート層および光学調整層を備える積層体を得た。
真空スパッタ装置を用いて、積層体の光学調整層の上面に、インジウムスズ複合酸化物(ITO)層からなる第1層(厚み43nm)を形成した。具体的には、真空スパッタ装置内を、水の分圧が2.0×10−4Pa以下となるまで排気し、その後、アルゴンガスと酸素との混合ガス(流量比:O2/Ar=0.00763、(O2/Ar)/ITO厚み比:0.000178)を導入して、圧力0.4Paの雰囲気下で、DCマグネトロンスパッタリング法を積層体に対して実施した。ターゲットとしては、酸化スズ10質量%/酸化インジウム90質量%の焼結体を用いた。また、ターゲット表面の水平磁場を100mTに設定した。
続いて、ターゲットを、酸化スズ3質量%/酸化インジウム97質量%の焼結体に変更し、アルゴンガスと酸素との混合ガスの流量比を、O2/Ar=0.00160にした以外は上記と同様にして、スパッタリングをさらに実施して、第1層の上面に第2層(厚み2nm)を形成した。これにより、総厚み45nmの非晶質光透過性導電層(非晶質透明導電層)を光学調整層の上面に形成した。
このようにして、実施例1の光透過性導電フィルム(透明導電性フィルム)を製造した。
(実施例2〜5および比較例1〜4)
第1層および第2層の形成において、各層の厚みやガスの流量比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、光透過性導電フィルムを製造した。なお、実施例4、5および比較例2、4においては、透明基材として、ポチエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み23μm)を使用した。
(1)厚みの測定
ハードコート層、光学調整層、第1層および第2層の厚みを、透過型電子顕微鏡(日立製作所社製、「H−7650」)を用いて、断面観察により測定した。透明基材の厚みを、膜厚計(Peacock社製、「デジタルダイアルゲージDG−205」)を用いて、測定した。
(2)キャリア密度・ホール移動度の測定
ホール効果測定システム(バイオラッド社製、「HL5500PC」)を用いて、非晶質光透過性導電層のホール移動度を測定した。キャリア密度は、非晶質光透過性導電層の総厚みを用いて、算出した。
(3)比抵抗の測定
非晶質光透過性導電層の非抵抗を4端子法により測定した。結果を表1に示す。
(4)加熱における結晶化速度の評価
各実施例および各比較例の光透過性導電フィルムを、140℃の熱風オーブンで、30分または60分加熱して、サンプルを作製した。このサンプルを、濃度5wt%、35℃の塩酸に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、その都度、15mm間の端子間抵抗を、テスタを用いて測定した。このとき、端子間抵抗が、10kΩ以下である場合、非晶質光透過性導電層の結晶化が完了したと判断した。
結晶化完了の時間が30分以下であった場合を◎と評価し、結晶化完了の時間が30分を超過し、60分以下であった場合を○と評価し、結晶化完了の時間が60分を超過した場合を×と評価した。結果を表1に示す。
(5)保存性(放置時における結晶化抑制)の評価
各実施例および各比較例の光透過性導電フィルムに対して、50℃で15時間放置したサンプル1と、80℃で6時間放置したサンプル2とをそれぞれ用意した。これらサンプルをさらに150℃の熱風オーブンで90分間加熱することにより結晶化させた。この結晶化させたサンプルの光透過性導電層の表面を光学顕微鏡(倍率100倍、観察面積2cm角)で観察し、クラックの有無を確認した。
サンプル1およびサンプル2ともに、クラックが確認されなかった場合を◎と評価し、サンプル1のみ、クラックが確認されなかった場合を○と評価し、サンプル1およびサンプル2ともに、クラックが確認された場合を×と評価した。結果を表1に示す。
(6)結晶化後の導電性の評価
各実施例および各比較例の光透過性導電フィルムを、140℃の熱風オーブンで、120分加熱して、非晶質光透過性導電層を結晶化させた。この結晶化サンプルの光透過性導電フィルムの表面抵抗を、4端子法により測定した。表面抵抗が40Ω/□以下である場合を◎と評価し、表面抵抗が40Ω/□を超過し、60Ω/□以下である場合を〇と評価し、表面抵抗が60Ω/□を超過する場合を×と評価した。結果を表1に示す。