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JP2020148209A - すべり軸受 - Google Patents

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JP2020148209A
JP2020148209A JP2019043311A JP2019043311A JP2020148209A JP 2020148209 A JP2020148209 A JP 2020148209A JP 2019043311 A JP2019043311 A JP 2019043311A JP 2019043311 A JP2019043311 A JP 2019043311A JP 2020148209 A JP2020148209 A JP 2020148209A
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英二 下平
Eiji Shimodaira
英二 下平
和之 矢追
Kazuyuki Yaoi
和之 矢追
秀実 荻原
Hidemi Ogiwara
秀実 荻原
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Abstract

【課題】従来のすべり軸受では、低粘度潤滑油下における摺動部のフリクションのさらなる低減が望まれていた。【解決手段】軸体Jを回転自在に保持する軸穴2を有し、軸穴2の内周面における幅方向の両端部に、多数の微細凹部を形成したテクスチャ領域TAを有するすべり軸受1とし、低粘度潤滑油下であっても、摺動面のフリクション低減及び耐摩耗性のさらなる向上を同時に実現した。【選択図】図1

Description

本発明は、すべり軸受に関し、例えば、内燃機関のクランクシャフトを保持するのに好適なすべり軸受に関するものである。
従来におけるすべり軸受としては、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載のすべり軸受は、外側の裏金材と内側のベアリングメタルとを積層し、軸方向両端部の厚さが中央部よりも厚くなるように曲面加工してあると共に、ベアリングメタルの表面(内周面)に、円周方向の条痕が多数形成してある。このすべり軸受は、条痕により軸受全面積に渡って高い油膜圧力を保持し、ベアリングの潤滑性能を向上させると共に、ベアリング打音を低減する。
特開平5−256320号公報
ところで、近年では、内燃機関、とくに自動車のエンジンにおいて、省燃費や省資源の観点から潤滑油の低粘度化が進められている。このため、自動車のエンジンでは、各摺動部の油膜厚さが薄くなり、油膜を通して局部的に金属同士の接触が生じる境界潤滑状態に移行し易いことから、低粘度潤滑油下であっても、摺動部のフリクション低減と耐摩耗性の向上を図るための改善が望まれていた。
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたものであり、低粘度潤滑油下であっても、軸体との摺動面のフリクション低減と耐摩耗性の向上を同時に図ることができるすべり軸受を提供することを目的としている。
本発明に係わるすべり軸受は、軸体を回転自在に保持する軸穴を有し、軸穴の内周面における幅方向の両端部に、多数の微細凹部を形成したテクスチャ領域を有することを特徴としている。
本発明に係わるすべり軸受は、上記構成を採用したことにより、低粘度潤滑油下であっても、軸体との摺動面のフリクション低減と耐摩耗性の向上を同時に図ることができる。
本発明に係わるすべり軸受の第1実施形態を説明するクランクシャフトの要部の断面図(A)、及びすべり軸受の正面図(B)である。 図1に示すすべり軸受を構成するアッパメーメタルの内側の平面図(A)、及びロアメタルの内側の平面図(B)である。 テクスチャ領域の断面図(A)、及び微細凹部の深さに関するすきま比と負荷容量係数との関係を示すグラフ(B)である。 テクスチャ領域の拡大図を含むすべり軸受の内側の平面図である。 本発明に係わるすべり軸受の第2実施形態を説明する図であって、テクスチャ領域の拡大図を含むすべり軸受の内側の平面図である。 本発明に係わるすべり軸受の第3実施形態を説明する側面図(A)、及び図A中のX−X線矢視に基づく断面図(B)である。
〈第1実施形態〉
図1(A)に示すすべり軸受1は、自動車のエンジン等の内燃機関において、クランクケースCCとクランクシャフトCSのジャーナル部Jとの間に介装してあり、潤滑油が存在する軸受空間部を介してクランクシャフトCSを回転自在に保持する。この実施形態のすべり軸受は、クランクケースCCに装着する都合上、図1(B)に示すように、180度の円弧を成すアッパーメタル1Aとロアメタル1Bに2分割してある。
上記のすべり軸受1は、アッパーメタル1A及びロアメタル1BをクランクケースCCに取り付けた状態において、クランクシャフトCSの一部であるジャーナル部Jを回転自在に保持する軸穴2を形成する。よって、この実施形態の軸体はジャーナル部Jである。また、すべり軸受1のアッパーメタル1Aは、図2(A)に示すように、内周面における幅方向の中央に、潤滑油の供給溝3が全周に渡って形成してあり、供給溝3には、外部からの潤滑油の供給を行うための2つの流通孔4,5が形成してある。他方、ロアメタル1Bは、図2(B)に示すように、凹凸のない滑らかな内周面を有している。
そして、すべり軸受1のロアメタル1Bは、軸穴2の内周面における幅方向(図2中で上下方向)の両端部に、多数の微細凹部を形成したテクスチャ領域TAを有している。この実施形態では、アッパーメタル1Aにも、軸穴2の内周面における幅方向(図2中で上下方向)の両端部に、同様のテクスチャ領域TAを有している。
テクスチャ領域TAは、より望ましい実施形態として、軸穴2の下部中心、すなわち、すべり軸受1のロアメタル1Bの下部中心から周方向における±50度の範囲θtに形成することができる。また、テクスチャ領域TAは、周方向に渡って一定の幅寸法Wtを有しており、より望ましい実施形態として、軸穴2の幅方向の端部から、幅寸法Whの1/3〜1/10の範囲に形成し、且つ軸受端部にテクスチャ未形成部を形成することができる。このテクスチャ未形成部は、後述する微細凹部の未形成領域Ntである。
各微細凹部は、より望ましい実施形態として、ジャーナル部Jの回転方向Rjを先端とする先細り形状を有する。なお、この実施形態の軸体は、クランクシャフトCSのジャーナル部Jであるから、その回転方向Rjは一方向である。また、各微細凹部は、より望ましい実施形態として、図3に示すように、その深さDgを、境界潤滑条件下で形成される油膜厚さToと微細凹部の底面からジャーナル部Jの表面までの距離CLとの比が1.2倍〜5倍となるように設定することができる。
境界潤滑条件は、摺動面の油膜厚さが軸穴2の表面粗さ程度以下に薄くなり、油膜を通して局部的に金属接触が生じているような潤滑状態であり、一般的には、油膜厚さと表面粗さの比であるλ値が3以下の状態である。そこで、すべり軸受1では、動圧効果を発揮する微細凹部の深さDgとして、境界潤滑条件下で形成される油膜厚さToと微細凹部の底面からジャーナル部Jの表面までの距離CLとの比が1.2倍〜5倍となるように設定している。
この実施形態のすべり軸受1は、図4に示すように、テクスチャ領域TAの各微細凹部が、平面視でV形状を成す多数の溝Gであると共に、2本の線分の交点Aをジャーナル部Jの回転方向Rjに向けて所定間隔で配置してある。これらの溝Gは、成形する方法が限定されるものではないが、例えば、レーザ加工やプレス等の塑性加工により形成することが可能である。
V形状の溝Gは、2本の線分の成す角度がとくに限定されるものではないが、潤滑油の動圧効果をより高めるうえで、例えば、45〜120度の範囲、より望ましくは60〜120度の範囲にするのが良い。本願発明における微細凹部は、上記のような溝Gや各種形状のディンプル等を採用することができ、上記溝Gが成すV形状も、ジャーナル部J(軸体)の回転方向Rjを先端とする先細り形状に含まれる。
また、すべり軸受1は、より望ましい実施形態として、微細凹部である溝G,G同士の間隔Pgを、溝の幅寸法Wgの1/5〜5倍とすることができる。さらに、すべり軸受1は、より望ましい実施形態として、微細凹部である溝の幅寸法Wgを、10〜100μmとすることができる。
さらに、すべり軸受1は、より望ましい実施形態として、軸穴2の内周面における幅方向の端部に、微細凹部の未形成領域Ntを有する。この未形成領域Ntは、周方向に一定の幅寸法Wnを有しており、より望ましい実施形態として、その幅寸法Wnをテクスチャ領域TAの幅寸法Wtの1/10以下にすることができる。
さらに、すべり軸受1は、より好ましい実施形態として、軸穴2の内周面において、テクスチャ領域TA以外の表面粗さRaを、0.01μm〜0.1μmにすることができ、また、表面に硬質炭素被膜を有する軸体と組み合わせることができる。この実施形態では、ジャーナル部Jの表面に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の硬質炭素被膜を形成する。さらに、すべり軸受1は、より好ましい実施形態として、軸穴2の内周面の材質がアルミニウム合金であるものとすることができる。
ところで、自動車のエンジンは、ピストンの上下運動をクランクシャフトCSの回転運動に変換するのであるが、とくに、燃焼室で生じた燃焼圧力によってピストンが下降した際、コネクティングロッドを介してクランクシャフトCSに下向きの負荷が加わる。このとき、クランクシャフトCSは、ジャーナル部Jの部分で保持され、主に下向きの負荷に伴ってクランクシャフトCSが撓み、ジャーナル部Jの片側若しくは両側の端部に負荷が加わり、潤滑状態が悪化し、摩擦係数及び摩耗の増大につながる。
これにより、自動車のエンジンでは、クランクシャフトCSのジャーナル部Jが、すべり軸受1に片当たりする状態になる。この片当たりの状態は、摺動面の摩耗やフリクションを増大させる原因になる。その一方で、自動車のエンジンでは、省燃費や省資源の観点から潤滑油の低粘度化が進められており、この場合、摺動部の油膜厚さが小さくなり、油膜を通して局部的に金属同士の接触が生じる境界潤滑状態に移行し易くなる。
これに対して、この実施形態のすべり軸受1は、軸穴2の内周面における幅方向の両端部に、多数の微細凹部を形成したテクスチャ領域TA,TAを有するので、テクスチャ領域TAを形成する微細凹部がいわゆる油溜まりとして機能し、潤滑油の動圧効果を高めるのに伴って油膜反力を増大させることで、潤滑領域を拡大させ、境界潤滑状態への移行を抑制する。これにより、すべり軸受1は、低粘度潤滑油下であっても、ジャーナル部Jとの摺動面のフリクションと摩耗を低減することができる。
また、上記のすべり軸受1は、とくに、クランクシャフトCSのジャーナル部Jを回転自在に保持するものであって、軸穴2の下部中心から周方向における±50度の範囲にテクスチャ領域TAが形成してある。このようなすべり軸受1は、先述したジャーナル部Jの片当たりに極めて有効である。しかも、このすべり軸受1は、テクスチャ領域TAの加工範囲を最小限にして摺動面のフリクションの低減効果を実現し得るので、加工時間の短縮化や製造コストの低減などに貢献することができる。
ここで、硬質部材と軟質部材との摺動面では、硬質部材側にテクスチャ領域を形成して、摺動による微細凹部の摩耗消失を抑制するのが一般的である。しかし、この実施形態のクランクシャフトCSとすべり軸受1との組合せにおいては、硬質部材側であるジャーナル材にテクスチャ領域を形成すると、このテクスチャ領域がやすりのように作用して軟質部材側である軸受材の摩耗が加速する懸念がある。
また、上記のすべり軸受1は、より好ましい実施形態として、軸穴2の内周面の材質をアルミニウム合金とし、表面に硬質炭素被膜を有するジャーナル部Jと組み合わされるものとしている。これにより、すべり軸受1は、上記したテクスチャ領域TAの作用効果と硬質炭素被膜による作用効果とが相俟って、摺動面のフリクションの低減を実現することができる。
さらに、上記のすべり軸受1は、軸穴2の幅方向の端部から、幅寸法Hwの1/3〜1/10の範囲にテクスチャ領域TAを形成したことにより、先述したジャーナル部Jの片当たりに極めて有効である。しかも、このすべり軸受1は、テクスチャ領域TAの加工範囲を最小限にして摺動面のフリクションの低減効果を実現し得るので、加工時間の短縮化や製造コストの低減などに貢献することができる。
さらに、上記のすべり軸受1は、テクスチャ領域TAの微細凹部を、ジャーナル部Jの回転方向Rjを先端とする先細り形状にすることで、ジャーナル部Jの回転に伴って潤滑油が先細りの先端側に集められる状態になり、これにより潤滑油の動圧効果が増すと共に、油膜反力も増大して境界潤滑状態への移行を抑制し、摺動面のフリクションのさらなる低減を実現する。
さらに、上記のすべり軸受1は、微細凹部の深さDgを境界潤滑条件下で形成される油膜厚さToと微細凹部である溝Gの底面からジャーナル部Jの表面までの距離CLとの比が1.2倍〜5倍となるように設定することで、潤滑油の動圧効果を充分に確保し、摺動面のフリクションのさらなる低減を実現する。ここで、図3において、すべり軸受1における微細凹部の深さDgは、微細凹部の底面とジャーナル部J(軸体)との距離CLから決定される。
図3(B)は、無限幅傾斜平板すべり軸受において、微細凹部の深さDgに関するすきま比mと負荷容量係数Kwとの関係を示すグラフである。すきま比mは、微細凹部の深さDgを1としたときの前記距離CLの比率である。負荷容量係数Kwは、グラフから明らかなように、すきま比mは2付近にピークが見られる。そこで、前記距離CLは、微細凹部の深さDgに対して、2前後の範囲で設定するのが望ましい。なお、すべり軸受1は、上記の如く境界潤滑条件下で形成される油膜厚さToと微細凹部である溝Gの底面からジャーナル部Jの表面までの距離CLとの比から微細凹部の深さDgが決まるので、微細凹部が溝Gである場合、ジャーナル部Jの片当たりを考慮すると、軸穴2の端部に向かうほど溝Gの深さDgが漸次減少する構成にしても良い。
さらに、上記のすべり軸受1は、微細凹部が、平面視でV形状を成す多数の溝Gであると共に、2本の線分の交点Aをジャーナル部J(軸体)の回転方向Rjに向けて配置してある。このような溝Gを有するすべり軸受1は、ジャーナル部Jの回転に伴って、潤滑油が溝Gの交点Aに向けて集められる状態になる。これにより、すべり軸受1は、潤滑油の動圧効果を充分に確保し、油膜反力を高めて境界潤滑状態への移行を抑制し、摺動面のフリクション及び摩耗の低減を実現する。
さらに、上記のすべり軸受1は、微細凹部である溝G同士の間隔Pgを溝Gの幅寸法Wgの1/5〜5倍にし、また、溝Gの幅寸法Wgを10〜100μmにすることにより、テクスチャ領域TAにおける潤滑油の動圧効果を充分に確保し、油膜反力を高めて境界潤滑状態への移行を抑制し、摺動面のフリクション及び摩耗の低減を実現する。
さらに、上記のすべり軸受1は、軸穴2の内周面における幅方向の端部に、微細凹部の未形成領域Ntを有するので、軸穴2の幅方向の両端部から潤滑油が過度に流出するのを抑制して、油膜保持性のさらなる向上を実現する。
さらに、上記のすべり軸受1は、微細凹部の未形成領域Ntの幅寸法Wnをテクスチャ領域TAの幅寸法Wtの1/10以下にすることで、テクスチャ領域TAによる摺動面のフリクションの低減効果と未形成領域Ntによる油膜の保持効果とを両立させることができる。
さらに、上記のすべり軸受1は、軸穴2の内周面において、テクスチャ領域以外の表面粗さRaを0.01μm〜0.1μmにすることで、より一層の摩擦低減効果を得ることができる。
〈第2実施形態〉
図5は、本発明のすべり軸受の第2実施形態を説明する図である。なお、以下の各実施形態において、第1実施形態と同一の部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図5に示すすべり軸受1は、軸穴の内周面における幅方向の両端部に、微細凹部としての多数のディンプルDを形成したテクスチャ領域TAを有している。図示例のディンプルDは、概略として鏃状を成していて、中央の先細り部分Sdを有し、この先細り部分Sdをジャーナル部Jの回転方向Rjに向けて、所定間隔で縦横に配列してある。なお、これらのディンプルDは、縦横配列に限らず、例えば千鳥状に配置しても良い。
上記構成を備えたすべり軸受1は、先の実施形態と同様に、テクスチャ領域TAのディンプルDが油溜まりとして機能する。そして、すべり軸受1は、ジャーナル部Jの回転に伴って、潤滑油が各ディンプルDの先細り部分Sdに集められる状態となる。これにより、すべり軸受1は、テクスチャ領域TAにおいて、潤滑油の動圧効果を高めるとともに油膜反力を増大させることで、潤滑領域を拡大させ、境界潤滑状態への移行を抑制する。このようにして、すべり軸受1は、低粘度潤滑油下であっても、ジャーナル部Jとの摺動面のフリクション及び摩耗を低減することができる。
なお、上述した第1及び第2の実施形態のように、クランクシャフトCSを保持するすべり軸受1では、ロアメタル1Bにテクスチャ領域TAを設けることにより、低粘度潤滑油下におけるジャーナル部Jとの摺動面のフリクション及び摩耗を低減し得るのであるが、他の二分割型のすべり軸受では、軸体との配置関係などに応じて、2つの半円形メタルのいずれか一方若しくは両方にテクスチャ領域を設けることができる。
〈第3実施形態〉
図6(A)及び(B)に示すすべり軸受1は、一般的なリング型であって、その内周面に供給溝や流通孔が無く、幅方向の両端部にテクスチャ領域TAを有している。図示のテクスチャ領域TAは、円周方向における一部の範囲θtに設けてあるが、その範囲θtは先の実施形態で説明した±50度の範囲に限定されるものではなく、それ以上の範囲に設けることも可能であるし、全周にわたって設けても構わない。この実施形態のすべ軸受1にあっても、先の実施形態と同様の効果を得ることができ、低粘度潤滑油下において、図示しない軸体との摺動面のフリクション及び摩耗を低減し得る。
〈実施例〉
本発明に係わるすべり軸受の効果を確認するため、単体軸受試験機を用いて摩耗試験及び摩擦試験を行った。摩耗試験においては、高回転、高荷重、高油温での長時間耐久試験を行い、摩擦試験においては、燃費測定運転条件での摩擦評価を行った。
摩耗試験の具体的条件を表1に示す。この摩耗試験において、比較例1のすべり軸受は、一般的に使用されている軸受であり、軸穴の内周面全域に、円周方向に連続する条痕を形成したものである。比較例2のすべり軸受は、軸穴の内周面全域に、軸線方向に連続する多数の溝を互いに平行に形成したものである。
実施例1〜5のすべり軸受は、軸穴の内周面に、平面視でV形状の多数の溝を有するテクスチャ領域(図4参照)を形成し、V形状の角度、溝幅及び溝深さを夫々異ならせたものである。これらのうち、実施例4のすべり軸受は、軸穴の幅方向の端部に、テクスチャ領域の未形成領域を形成したものである。摩耗試験の結果を表1に示す。
Figure 2020148209
表1から明らかなように、比較例1及び2のすべり軸受については、いずれも軸穴の内周面の幅方向両端部付近に形成した条痕や溝が摩耗により消失していることを確認した。これに対して、実施例1〜3のすべり軸受については、いずれも軸穴の内周面の幅方向両端部付近に軽微な摺動痕が認められたが、テクスチャ領域を維持することができた。また、実施例4及び5のすべり軸受については、いずれも軸穴の内周面の幅方向両端部付近に明確な摺動痕を観察することができず、充分なテクスチャ領域を維持することができた。実施例1〜5の結果により、本発明のすべり軸受は、テクスチャ領域により、明らかな耐摩耗性向上効果が得られることを確認した。
摩擦試験の具体的条件を表2に示す。この摩擦試験における比較例1及び2、並びに実施例1〜5のすべり軸受は、摩耗試験と同じものである。摩擦試験の結果を表2に示す。なお、試験結果である相対摩擦力は、比較例1を100とした。
Figure 2020148209
表2から明らかなように、比較例1の相対摩擦力が100であるのに対して、比較例2の相対摩擦力は120であった。これに対して、実施例1〜5のすべり軸受は、実施例3の相対摩擦力が55であるのを最高値として、いずれも相対摩擦力が低いものとなり、テクスチャ領域により、顕著なフリクションの低減効果が得られることを確認した。
以上の各試験結果から、本発明に係わるすべり軸受は、省燃費型ガソリンエンジンにおけるクランクシャフトの軸受として、顕著な摩擦低減効果のみならず、耐摩耗性の向上によるさらなる省燃費化やエンジン騒音の低減などに非常に有効であることを確認した。
なお、本発明に係わるすべり軸受は、その構成が上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更することができ、例えば、テクスチャ領域に形成する微細凹部の形状、大きさ、配置などを適宜選択することが可能である。
1 すべり軸受
2 軸穴
A 溝における線分の交点
D ディンプル(微細凹部)
G 溝(微細凹部)
J ジャーナル部(軸体)
Nt 未形成領域
Sd 先細り部分
TA テクスチャ領域

Claims (13)

  1. 軸体を回転自在に保持する軸穴を有し、
    軸穴の内周面における幅方向の両端部に、多数の微細凹部を形成したテクスチャ領域を有することを特徴とするすべり軸受。
  2. 内燃機関のクランクシャフトのジャーナル部を軸体として回転自在に保持するすべり軸受であって、
    テクスチャ領域が、軸穴の下部中心から周方向における±50度の範囲に形成してあることを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
  3. テクスチャ領域が、軸穴の幅方向の端部から、幅寸法の1/3〜1/10の範囲に形成してあることを特徴とする請求項1又は2に記載のすべり軸受。
  4. 微細凹部が、軸体の回転方向を先端とする先細り形状を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のすべり軸受。
  5. 微細凹部の深さに関し、境界潤滑条件下で形成される油膜厚さと微細凹部の底面から軸体の表面までの距離との比が1.2倍〜5倍であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のすべり軸受。
  6. 微細凹部が、平面視でV形状を成す溝であると共に、2本の線分の交点を軸体の回転方向に向けて配置してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のすべり軸受。
  7. 微細凹部である溝同士の間隔が、溝の幅寸法の1/5〜5倍であることを特徴とする請求項6に記載のすべり軸受。
  8. 微細凹部である溝の幅寸法が、10〜100μmであることを特徴とする請求項6又は7に記載のすべり軸受。
  9. 軸穴の内周面における幅方向の端部に、微細凹部の未形成領域を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のすべり軸受。
  10. 微細凹部の未形成領域の幅寸法が、テクスチャ領域の幅寸法の1/10以下であることを特徴とする請求項9に記載のすべり軸受。
  11. 軸穴の内周面は、テクスチャ領域以外の表面粗さRaが、0.01μm〜0.1μmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のすべり軸受。
  12. 表面に硬質炭素被膜を有する軸体と組み合わされることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のすべり軸受。
  13. 軸穴の内周面の材質が、アルミニウム合金であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のすべり軸受。
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