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JP2020037635A - 手袋用ディップ組成物、手袋の製造方法、及び手袋 - Google Patents

手袋用ディップ組成物、手袋の製造方法、及び手袋 Download PDF

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JP2020037635A JP2018164734A JP2018164734A JP2020037635A JP 2020037635 A JP2020037635 A JP 2020037635A JP 2018164734 A JP2018164734 A JP 2018164734A JP 2018164734 A JP2018164734 A JP 2018164734A JP 2020037635 A JP2020037635 A JP 2020037635A
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憲秀 榎本
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Taichi Ogawa
太一 小川
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Abstract

【課題】薄肉化及び軽量化しても製膜性を低下させることなく手袋を製造することにより、引張強度の大きい手袋を製造することができる手袋用ディップ組成物を提供することを課題とする。【解決手段】エラストマー、及び手袋用ディップ組成物を凝固させるためのケイ素含有有機凝固剤を含む、手袋用ディップ組成物により解決する。【選択図】図2

Description

本発明は、手袋用ディップ組成物、手袋の製造方法、及び手袋に関する。
食品産業、電子部品製造業、製薬業などの種々の工業分野や産業分野、一般家庭での作業等において幅広く使用される一般的なゴム手袋は、エラストマーを含むラテックスのディップ成形で製造される。
近年、手袋の原価コストを低減させるために、手袋の薄肉化及び軽量化が図られている。しかし、一般的に、手袋の薄肉化及び軽量化を図った場合、手袋の引張強度が低減してしまうことが問題となる。
手袋の分野において、従来から引張強度をはじめとした機械的特性を向上させるための開発は進められており、例えば、特許文献1には、エラストマーとして不飽和カルボン酸を含むカルボキシル化アクリロニトリルブタジエンを使用し、不飽和カルボン酸による自己架橋と無機凝固剤による金属架橋とからなる2段階架橋を利用して機械的特性を向上させたゴム手袋が開示されている。
また、特許文献2には、上記特許文献1と同様のエラストマーを使用し、ポリカルボジイミドによる多点架橋を利用して機械的特性を向上させたゴム手袋が開示されている。
国際公開第2012/043893号公報 国際公開第2018/117109号公報
上記の特許文献1及び2に開示された発明は、特定の構造を有するエラストマーを用いて、当該構造での架橋に係る結合の強さを向上させることにより、引張強度を向上させるものである。これらの発明において、薄肉化及び軽量化を図ろうとした場合、ラテックス中のエラストマーや凝固剤等の濃度を減少させることが必要となる。しかし、これらの原料の減少により製膜性が低下するため、結果的に、引張強度が低下してしまうという問題がある。
そこで、本発明は、薄肉化及び軽量化しても製膜性を低下させることなく手袋を製造することができ、かつ、引張強度が大きい手袋を製造することができる手袋用ディップ組成物を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エラストマーを含む手袋用ディップ組成物に、当該手袋用ディップ組成物を凝固させるためのケイ素含有有機凝固剤を少量添加することにより、引張強度が大きく、さらに、製膜性に優れるゴム手袋を製造することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下[1]〜[8]に示す具体的態様を提供する。
[1] エラストマー、及び手袋用ディップ組成物を凝固させるためのケイ素含有有機凝固剤を含む、手袋用ディップ組成物。
[2] 前記手袋用ディップ組成物の固形分全量に対して、ケイ素含有有機凝固剤の含有
量が、0.1〜3.0重量%である、[1]に記載の手袋用ディップ組成物。
[3] 前記ケイ素含有有機凝固剤がシリコーンオイルである、[1]又は[2]に記載の手袋用ディップ組成物。
[4] 前記シリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイルである、[3]に記載の手袋用ディップ組成物。
[5] 前記ポリエーテル変性シリコーンオイルが、下記式(1)で表される、[4]に記載の手袋用ディップ組成物。
Figure 2020037635
(式(1)において、0.1mol%≦x≦1.0mol%、0.5mol%≦y≦1.2mol%、45mol%≦m≦56mol%、及び42mol%≦n≦55mol%である。)
[6] [1]〜[5]の何れかに記載の手袋用ディップ組成物を撹拌しながら放置する撹拌工程、及び
手袋成形型を、前記手袋用ディップ組成物に浸漬するディッピング工程、
を含む、手袋の製造方法。
[7] 前記ディッピング工程の前に、手袋成形型を、カルシウムイオン含有無機凝固剤を含む凝固剤液中に浸して、該凝固剤を手袋成形型に付着させる無機凝固剤付着工程、を含む、[6]に記載の手袋の製造方法。
[8] エラストマーを含み、かつ、ケイ素含有量が0.0005〜0.3重量%である手袋。
本発明によれば、薄肉化及び軽量化しても製膜性を低下させることなく手袋を製造することにより、引張強度の大きい手袋を製造することができる手袋用ディップ組成物を提供することができる。
さらに、通常のゴム手袋の場合、手袋の厚みの減少に伴い、引張試験における伸び率が減少する傾向にあるが、本発明によれば、手袋の厚みを減少させても伸び率が減少し難い手袋を製造することのできる手袋用ディップ組成物を提供することができる。
疲労耐久性試験装置の一例を模式的に示した断面図である。 架橋剤としてポリカルボジイミドを用いて作製した硬化フィルムにおける、フィルム厚とFABとの関係を示す図である。 架橋剤としてエポキシ基含有化合物を用いて作製した硬化フィルムにおける、フィルム厚とFABとの関係を示す図である。 架橋剤としてポリカルボジイミドを用いて作製した硬化フィルムにおける、フィルム厚と疲労耐久性との関係を示す図である。 架橋剤としてエポキシ基含有化合物を用いて作製した硬化フィルムにおける、フィルム厚と疲労耐久性との関係を示す図である。 架橋剤としてポリカルボジイミドを用いて作製した硬化フィルムにおける、フィルム厚と引張伸び率との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
また、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
<1.手袋用ディップ組成物>
本発明の実施形態にかかる手袋は、以下の組成を有する手袋用ディップ組成物(以下、単に「手袋用ディップ組成物」又は「ディップ組成物」とも称する)を用いて、後述する製造方法により成形して得られるものである。
ディップ組成物:エラストマー、及び手袋用ディップ組成物を凝固させるためのケイ素含有有機凝固剤を含む。
<1−1.ケイ素含有有機凝固剤>
ケイ素含有有機凝固剤は、特定の条件下で凝固(例えば、ゲル化等)する物質であり、例えば、感熱凝固剤は特定の温度以上とすることで凝固する物質である。当該凝固剤をディップ組成物中に分散させ、凝固剤を凝固させることにより、凝固剤を含有せずに凝固させた場合よりも引張強度の大きい手袋を得ることができる。
凝固剤には、硝酸カルシウム等の無機系のものが存在するが、無機凝固剤は凝集体を形成し、均一に分散し難い傾向がある。一方で、有機凝固剤は、無機凝固剤と比較して、エラストマーとの親和性が高いことから、ディップ組成物に均一に分散しやすい。よって、ラテックス中に均一に分散した状態で凝固するため、得られる手袋の引張強度が均一になるだけでなく、最終的に得られる硬化フィルムの製膜性が向上する。
なお、ゴム手袋の製造で一般的に用いられる無機系の凝固剤であるカルシウム等の元素を含む金属塩は、エラストマー中のカルボキシル基等の極性基とイオン結合することにより架橋を形成し、得られる手袋の引張強度等の機械的特性を向上させるものである。つまり、凝固剤としての効果は、架橋反応の種類によって異なる。一方で、ケイ素含有有機凝固剤は、凝固剤自体がゲル化して凝固することにより引張強度等の機械的特性を向上させるものである。よって、エラストマーや架橋剤等の種類によらず、安定して凝固剤としての効果を発揮することができる。ただし、架橋剤の種類によってはケイ素含有有機凝固剤が架橋反応に影響を与える可能性があるため、エラストマーや架橋剤等の種類によって引張強度に対する影響の程度は変化する。
ケイ素含有有機凝固剤の種類は、特に限定されず、例えば、感熱凝固剤であるシリコーンオイルを用いることができる。
シリコーンオイルを用いる場合、その種類は限定されず、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル、アミド変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、又はハイドロジェン変性シリコーンオイル等を用いることができる。これらの中でも、安定的に凝固剤としての効果を発揮できる観点から、非反応性シリコーンオイルである、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル、アミド変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルが好ましく、特に、離形性と促完成の観点から、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、例えば、下記式(1)で表される構造を有するものを用いることができる。
Figure 2020037635
上記の構造は、下記の条件で核磁気共鳴スペクトル分析を行うことにより分析することができる。
測定機種:AL400型(日本電子社製)
測定核:Hおよび29Si
測定溶媒:D
前処理:試料をNガス流通下で、室温で、一晩乾燥した後、DOに溶解させた
パルスディレイタイム:2秒
測定温度:25℃
上記式(1)において、引張強度の向上の観点から、xは、0.1mol%≦x≦1.0mol%であることが好ましく、0.2mol%≦x≦0.6mol%であることがより好ましく、yは、0.5mol%≦y≦1.2mol%であることが好ましく、0.6mol%≦y≦1.0mol%であることがより好ましく、mは、45mol%≦m≦56mol%であることが好ましく、50mol%≦m≦56mol%であることがより好ましく、さらに、nは、42mol%≦n≦55mol%であることが好ましく、43mol%≦n≦50mol%であることがより好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンオイルの主鎖の構造を特定するx及びyが上記範囲内にあると、シリコーンオイル特有の低い表面張力が十分に発現され、高撥水性、高離型性、高消泡性が発現される。
一方で、水溶性を有する共重合側鎖の構造を特定する、ポリエチレングリコール(PEG)部分のm、及びポリプロピレングリコール(PPG)部のnが上記範囲内にあると、側鎖の構造自体の曇点が40〜70℃となる傾向がある。この側鎖の構造は、40〜80℃を下回ると水に溶解するが、この温度範囲では、脱水和反応が起こりゲル化による分離・析出が生じやすく、凝固機能に優れる。
また、本発明者らは、ポリエーテル変性シリコーンオイルの分子量が大きく、かつPEG/PPG比が小さい場合(PPGリッチな場合)、最終的に得られる成型体の引張強度を大幅に増加させることができることを見出した。一方で、ポリエーテル変性シリコーンオイルの分子量が小さく、かつPEG/PPG比が大きい場合(PEGリッチな場合)、最終的に得られる成型体の人工汗液中での破壊時間を増大させることができることを見出した。
ケイ素含有有機凝固剤中のケイ素の含有量は、0.5重量%以上であることが好ましく、0.7重量%以上であることがより好ましく、1.0重量%以上であることがさらに好ましく、また、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが特に好ましい。
上記範囲の上限を上回ると、最終的に得られる手袋が硬くなり過すぎてしまい、また、上記範囲の下限を下回ると、要求される製膜性及び引張強度を下回ってしまう。
ケイ素含有有機凝固剤中のケイ素の含有量は、ICP発光分光分析法により測定することができる。例えば、分析機種としてICPE−9820型(島津製作所製)を用いて、分析試料として分解容器に試料と酸を入れて密閉し、マイクロ波を照射して加熱分解後、超純水で定容して検液としたものを用いて測定することができる。
ディップ組成物の固形分全量に対して、ケイ素含有有機凝固剤の含有量は、0.1重量%以上であることが好ましく、0.2重量%以上であることがより好ましく、0.3重量%以上であることがさらに好ましく、0.4重量%以上であることが特に好ましく、また、5重量%以下であることが好ましく、4重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが特に好ましい。
上記範囲の上限を上回ると、最終的に得られる手袋が硬くなり過すぎてしまい、また、上記範囲の下限を下回ると、要求される製膜性及び引張強度を下回ってしまう。
<1−2.エラストマー>
上述したように、ケイ素含有有機凝固剤の引張強度向上の効果は、効果の程度に相違はあり得るものの、エラストマーの種類によらず発現する。よって、エラストマーの種類は、ゴム手袋の原料として通常用い得るものであれば特に限定されない。エラストマーを構成する構造単位として、例えば、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エポキシ化天然ゴム、アクリレートブタジエンゴム等の合成ゴム及びこれら合成ゴム又は天然ゴムの分子鎖末端が変性されたもの等に由来する構造単位を選定することができ、これらのうち1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、エラストマー中の構造単位の比率は、簡便には、本発明の実施形態で用いるエラストマーを製造するための使用原料の重量比率(固形分比率)から求めることができる。
ブタジエン由来の構造単位を有するエラストマーを用いる場合、その構造単位の種類は特に限定されないが、1,3−ブタジエン由来の構造単位であることが好ましい。ブタジエン由来の構造単位は、ゴム手袋に柔軟性を持たせるために用いられる場合がある。
ブタジエン由来の構造単位の比率、すなわちブタジエン残基の比率は、引張強度及び柔軟性を向上させる観点から、エラストマー100重量%に対して、通常50重量%以上、好ましくは53重量%以上、特に好ましくは55重量%以上であり、また、通常80重量%以下であり、好ましくは75重量%以下であり、特に好ましくは70重量%以下である。
さらに、主にゴム手袋に強度を与える要素となる(メタ)アクリロニトリル由来の構造単位を含んでいてもよい。(メタ)アクリロニトリル由来の構造単位は、引張強度及び耐薬品性に優れるが、含有量が多すぎると硬くなりすぎる。(メタ)アクリロニトリル由来の構造単位の比率、すなわち(メタ)アクリロニトリル残基の比率は、引張強度及び耐薬品性を向上させ、硬くなりすぎることを防止する観点から、エラストマー100重量%に対して、通常20重量%以上、好ましくは25重量%以上、特に好ましくは30重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは45重量%以下であり、特に好ましくは40重量%以下である。
さらに、引張強度を向上させる観点から、架橋点となり得るカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸由来の構造単位を含んでいてもよい。不飽和カルボン酸由来の構造単位を形成する不飽和カルボン酸としては、特に限定はされず、分子中にカルボニル基を1個有するモノカルボン酸でも、カルボニル基を2個以上有するポリカルボン酸でもよい。より具体的には、不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。なかでも、アクリル酸及び/又はメタクリル酸が好ましく使用され、より好ましくはメタクリル酸が使用される。
エラストマーは、複数種の不飽和カルボン酸由来の構造単位を任意の組み合わせで含んでいてもよい。不飽和カルボン酸として、不飽和ジカルボン酸をその一部又は全部とすることにより、不飽和カルボン酸の重量比に対し多量のカルボキシル基を導入できるので、
エラストマーの架橋密度の調節が容易となる。
不飽和カルボン酸由来の構造単位の比率、すなわち不飽和カルボン酸残基の比率は、引張強度を向上させる観点から、エラストマー100重量%に対して、通常2重量%以上、好ましくは3重量%以上、特に好ましくは4重量%以上であり、また、通常10重量%以下であり、好ましくは9重量%以下である。
エラストマーとして、上記のブタジエン由来の構造単位、(メタ)アクリロニトリル由来の構造単位、不飽和カルボン酸由来の構造単位を有するものを用いた場合、さらに別の重合性モノマーに由来する構造単位を含んでいてもよく、その他の重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸アミド;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸;及び酢酸ビニル等が挙げられる。これらは、いずれか1種、又は複数種を組み合わせて、任意に用いることができる。
その他の重合性モノマー由来の構造単位は、エラストマー中に30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることがさらに好ましい。
以上の通り、エラストマーは、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン又はブタジエン−不飽和カルボン酸の共重合体エラストマーや、アクリロニトリル−ブタジエン−不飽和カルボン酸エステルの三元共重合体エラストマーでもよいし、さらにその他の重合性化合物を含む四元共重合体エラストマーを使用することもできる。
アクリロニトリル−ブタジエン−不飽和カルボン酸エステルの三元共重合体エラストマーを用いる場合、例えば、国際公開第2018/117109号公報に開示されるエラストマーの態様で用いることができる。
前記手袋用ディップ組成物の固形分全量に対して、エラストマーの含有量は、手袋に要求される引張強度を確保するため、0.1重量%以上であることが好ましく、0.2重量%以上であることがより好ましく、0.3重量%以上であることがさらに好ましく、0.4重量%以上であることが特に好ましく、また、5重量%以下であることが好ましく、4重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることがさらに好ましい。
<1−3.架橋剤、架橋促進剤>
ディップ組成物は、架橋剤及び/又は架橋促進剤を含んでもよい。この場合、上述したように、ケイ素含有有機凝固剤の引張強度向上の効果は、効果の程度に相違はあり得るものの、架橋剤等の種類によらず発現する。よって、ディップ組成物に含まれ得る架橋剤の種類は、ゴム手袋の原料として通常用い得るものであれば特に限定されない。
<1−3−1.ジエンゴム由来の構造単位による架橋>
エラストマーとして、ブタジエンゴム等のジエンゴム由来の構造単位を有するものを用いる場合、架橋剤として硫黄系架橋剤を用いることができる。なお、本願では、硫黄元素で架橋を行う場合、架橋を「加硫」と表す場合もある。硫黄系架橋剤としては、例えば、粉末硫黄、オイル処理粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等の硫黄や、あるいはテトラメチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物等の1種または2種以上を用いることができる。
また、架橋剤として硫黄を用いた場合には、架橋促進剤を添加することもでき、例えば、ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフフェンアミド等のスルフェンアミ
ド系促進剤;テトラメテルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤;ジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系;チオウレア系促進剤等の1種または2種以上を用いることができる。
しかし、硫黄系の架橋促進剤は、アレルギー性の症状である接触皮膚炎である遅延型のIV型過敏症を発症させるおそれがある。よって、この観点から架橋剤として硫黄系架橋剤を用いることは好ましくない。
<1−3−2.不飽和カルボン酸由来の構造単位による架橋>
また、エラストマーとして、不飽和カルボン酸由来の構造単位を有するものを用いる場合、架橋剤として、ポリカルボジイミド架橋剤、エポキシ架橋剤(本願において、「エポキシ基含有架化合物」とも称す)、ポリオキサゾリン架橋剤、ポリイソシアネート架橋剤、ブロックイソシアネート架橋剤、ポリシロキサン架橋剤、アジリジン架橋剤、アルキル化メラミン等の尿素樹脂系架橋剤、ヒドラジド系架橋剤等が挙げられ、使用中に汗で濡れたときの耐久性(疲労耐久性、測定法は後述)に優れているとの観点から、ポリカルボジイミド架橋剤、エポキシ架橋剤を用いることが好ましい。以下、架橋剤としてポリカルボジイミド架橋剤、エポキシ架橋剤を用いる場合の具体的態様の例を示す。
なお、エラストマー中に、例えばアミド基やアミン基等のカルボキシル基と反応し得る官能基が存在する場合、これらの官能基と不飽和カルボン酸の有するカルボキシル基とで結合させて架橋(以下、「自己架橋」とも称する)させることができる。すなわち、自己架橋を利用すれば、架橋剤を用いずにエラストマーの分子鎖間で架橋を生じさせることができる。自己架橋の具体的な態様として、例えば、国際公開2012/043893号公報に開示される第一段階の架橋のような態様が挙げられる。
<1−3−2−1.ポリカルボジイミド架橋剤>
ポリカルボジイミドとしては、不飽和カルボン酸由来の構造単位中のカルボキシル基との架橋反応を行う中心部分と、その端部に付加した親水性セグメントからなるものを用いることができる。また、一部の端部は封止剤で封止されていてもよい。
以下、ポリカルボジイミドの具体的態様を示すが、この態様に限定されず、例えば、国際公開第2017/217542号公報や、国際公開第2018/117109号公報に開示される態様で用いてもよい。
(ポリカルボジイミドの中心部分)
ポリカルボジイミドの中心部分の化学式を以下に示す。
NCO−(R−(N=C=N)−)m−ROCN (2)
上記式(2)の−N=C=N−はカルボジイミド基でありカルボキシル基と反応する。
は低級アルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキレン、ポリアルキレン又はオキシアルキレン基である。低級アルキル基の炭素数は6以下であることが好ましく、入手性の観点から4以下であることが好ましい。上記(1)で示されるジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩を使用することができ、特に、2−ジメチルアミノエタノールの四級塩が好適である。この場合、ポリカルボジイミドのイオン性は、カチオンタイプとなる。
mは、4〜20の整数であり、重合度を示す。
mを4以上とすることにより、エラストマーのカルボキシル基間を多点架橋することができ、このためエラストマーを大きくまとめられることによって従来の2点架橋の架橋剤に比べ、非常に良好な疲労耐久性が得られる要因になっていると考えられる。
ポリカルボジイミドの上記中心部分は、通常ジイソシアネートの脱炭酸縮合により生じたものであり、両末端にイソシアネート残基を有する。なお、上記式(2)では両末端をイソシアネート基として示している。ジイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシ
アネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、又はこれらの混合物を挙げることができる。具体的には1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが例示される。耐候性の観点より、脂肪族または脂環族ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応により生成するポリカルボジイミドを配合することが好適である。ジイソシアネートの種類の代表的なものはジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートである。
(親水性セグメント)
カルボジイミド基は、水と反応しやすいため手袋用ディップ組成物中では、エラストマーとの反応力を失わないよう水から保護する目的で、ポリカルボジイミドの一部には、親水性セグメントを末端(イソシアネート基)に付加しているものが必須である。
親水性セグメントの構造を下式(3)に示す。
−O−(CH−CHR−O−)−H (3)
上記式(3)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基であり、mは5〜30の整数である。
親水性セグメントは、手袋用ディップ組成物(ディップ液)中(水中)においては、水と反応しやすいポリカルボジイミドの中心部分を取り巻いてカルボジイミド基を保護する機能を持つ(シェル/コア構造)。
一方、乾燥すると親水性セグメントが開いてカルボジイミド基が現れ反応できる状態になる。そのため、ディップ成形による手袋製造においては、塗料と異なり、複雑な工程において、最後の加熱架橋(キュアリング)工程まで乾燥させないようにし、水との反応を避けることが重要である。この目的で、後述する保湿剤を手袋用ディップ組成物に加えることも有効である。
なお、親水性セグメントは、中心部分の両端にあってもよいし片方にあってもよい。また親水性セグメントを有するものと有しないものの混合物でもよい。
親水性セグメントを付加していない端部は、封止剤で封止されている。
封止剤の式は以下の式(4)で示される。
(R−N−R−OH (4)
上記式(4)中、Rは炭素数が6以下のアルキル基であり、入手性の観点から、4以下のアルキル基であることが好ましい。Rは炭素数1〜10のアルキレン、ポリアルキレン又はオキシアルキレン基である。
(重合度、分子量、当量)
ポリカルボジイミドの平均重合度(数平均分子量/カルボジイミド当量)は3.8以上、好ましくは4以上、より好ましくは9以上である。これは本発明の実施形態にかかる手袋の特徴である多点架橋の構造を適切に形成し、高い疲労耐久性を手袋に持たせるために必要である。
ポリカルボジイミドの分子量は、数平均分子量で500〜5000が好ましく、1000〜4000であればなおよい。
数平均分子量の測定は、GPC法(ポリスチレン換算により算出)により次のように行うことができる。
RI検出器:RID−6A(島津製作所製)
カラム:KF−806、KF−804L、KF−804L(昭和電工株式会社製)
展開溶媒:THF 1ml/min.
カルボジイミド当量についてはポリカルボジイミドの添加量を3重量%とした場合には、当量260〜600の範囲で疲労耐久性が1500分を超える。しかし、1重量%添加の場合は、当量が440を超えると疲労耐久性が100分以下と極端に低くなる。このことから、カルボジイミド当量は260〜440の範囲が好ましい。なお、下限値は製品が存在する範囲である。
カルボジイミド当量は、シュウ酸を用いた逆滴定法により定量されたカルボジイミド基濃度から次式(5)で算出される値である。
カルボジイミド当量=カルボジイミド基の式数(40)×100/カルボジイミド基濃度(%) (5)
手袋用ディップ組成物における、ポリカルボジイミドの添加量は、手袋用ディップ組成物中の固形分に対して、0.1〜4.0重量%を挙げることができ、0.1〜2.5重量%であることが好ましく、0.3〜2.0重量%であることがより好ましい。含有量の範囲については、7.0重量部を超えると疲労耐久性が低下するのに対し、0.5重量部という比較的少ない添加量でも他の硫黄系手袋を超える高い疲労耐久性を持たせることができることを検証している。
<1−3−2−2.エポキシ架橋剤>
エポキシ架橋剤(エポキシ基含有化合物)は、分子中のエポキシ基が架橋形成時に加水分解により開環し、生じたヒドロキシル基がカルボキシル基と反応するために、不飽和カルボン酸の架橋剤として用いることができる。
エポキシ基含有化合物としては、1分子中にエポキシ基が2個以上存在するものであれば、特に限定されない。
以下、エポキシ基含有化合物の具体的態様を示すが、この態様に限定されない。
ディップ成形物の作製に用いるエポキシ基含有化合物として、具体的にはエーテル結合を介して1分子中にエポキシ基を有するポリグリシジルエーテルと、それ以外にもポリグリジシルアミン、ポリグリシジルエステル、又はエポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族若しくは脂肪族エポキサイド等を挙げることができる。
また、エポキシ基含有化合物は、1種類を単独で用いてもよく、また、複数種を併用してもよい。
ポリグリシジルエーテルの具体例としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、キシリトールポリグリシジルエーテル、エリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の脂肪族ポリグリシジルエーテル;クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、トリスヒドロキシフェニルメタンポリグリシジルエーテル等の芳香族ポリグリシジルエーテル;を挙げることができる。
ポリグリセロールポリグリシジルエーテルの具体例として、トリグリセロールヘキサグリシジルエーテル、トリグリセロールペンタグリシジルエーテル、トリグリセロールテトラグリシジルエーテル、トリグリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリセロールジグリシジルエーテル、テトラグリセロールオクタグリシジルエーテル、テトラグリセロールヘプタグリシジルエーテル、テトラグリセロールヘキサグリシジルエーテル、テトラグリセロールペンタグリシジルエーテル、テトラグリセロールテトラグリシジルエーテル、テトラグリセロールトリグリシジルエーテルを挙げることができる。
グリセロールポリグリシジルエーテルの具体例として、グリセロールトリグリシジルエ
ーテルを挙げることができる。
ソルビトールポリグリシジルエーテルの具体例として、ソルビトールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールペンタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテルを挙げることができる。
トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルの具体例としては、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを挙げることができる。
ジグリセロールポリグリシジルエーテルの具体例として、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテルを挙げることができる。
上記で挙げた中でも、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールトリグリシジルエーテル及びソルビトールテトラグリシジルエーテルから選択されるいずれか一つを少なくとも含むエポキシ基含有化合物を用いることが好ましく、グリセロールトリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの少なくとも一つを含むエポキシ基含有化合物を用いることがさらに好ましい。
1分子のエポキシ基含有化合物中に存在するエポキシ基の数は、下記の観点から、2個であるよりも、3個以上であることが好ましい。
国際公開第2017/126660号公報に開示されるような1分子中に存在する2個のエポキシ基が分子の両端にしか存在しない化合物は、ディップ成形用組成物に存在するヒドロキシイオンによる攻撃を受けやすく、一方のエポキシ基が失活しやすい。そしてそのようなエポキシ基含有化合物を架橋剤として用いると、そのエポキシ基含有化合物の1個のエポキシ基が失活した場合、失活していないもう一個のエポキシ基のみが、エラストマー中に存在する不飽和カルボン酸に由来するカルボキシル基と結合する。その場合には、エラストマーの子内での架橋が十分に形成されないことになる。
これに対して、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する化合物を含むエポキシ架橋剤を用いた場合には、仮にエポキシ基含有化合物の一つのエポキシ基が失活したとしても、残りの2個以上のエポキシ基が、エラストマー中に存在する不飽和カルボン酸に由来するカルボキシル基と結合できる状態を維持できる。もちろんいずれのエポキシ基も失活しない場合には、エラストマーの分子内での架橋点が多く形成されることになるため、引張強度は良好なものになる。なお、エポキシ基の数の上限値は、特に限定されない。
1分子中のエポキシ基の数とともに、エポキシ基含有架橋剤に含まれるエポキシ基の数に関して「エポキシ当量」で表すことができる。そのエポキシ当量は、エラストマーの多点架橋を行わせ、ディップ成形物の良好な疲労耐久性を得る観点から、50g/eq以上300g/eq以下であることが好ましく、80g/eq以上250g/eq以下であることがより好ましく、100g/eq以上200g/eq以下であることが特に好ましい。
エポキシ当量は、エポキシ基含有化合物の分子量を官能基数で除した値である。
また、エポキシ基含有に含まれるエポキシ基の数については、例えばエポキシ基含有化合物の平均エポキシ基数としても表すことができる。エポキシ基含有化合物は、その中に含まれる平均エポキシ基数が2を超えるものであることが好ましく、平均エポキシ基数が2.20以上であることがより好ましく、2.25以上であることがさらに好ましい。平均エポキシ基数は、エポキシ基含有化合物に含まれる、それぞれの化合物の1分子中のエポキシ基の数に該化合物のモル数を乗じて得たエポキシ基数を各エポキシ基含有化合物について求め、それらの合計値を、エポキシ基含有化合物に含まれる全てのエポキシ基含有化合物の合計モル数で割って得られる物である。
<2.その他の成分>
ディップ組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分は、特に限定されず、例えば、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤、pH調整剤、保湿剤、充填剤、分散剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、スリップ剤、増粘剤、消泡剤、及び可塑剤等が挙げられる。以下、これらのうちのいくつかの成分の具体的態様を示す。
(乳化剤)
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエステル、等のカチオン性界面活性剤;及び両性界面活性剤が挙げられ、好ましくは、アニオン性界面活性剤が使用される。
(重合開始剤)
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等を挙げることができる。
(分子量調整剤)
分子量調整剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素が挙げられ、t−ドデシルメルカプタン;n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類が好ましい。
(pH調整剤)
架橋反応として酸−塩基反応を利用する場合、例えば、不飽和カルボン酸のカルボキシル基による架橋反応では、ディップ組成物のpHが架橋反応に影響するため、pH調整剤によるpH調整を行うことが好ましい。pH調整剤は一般的なものを使用でき、その種類に特に限定はない。
例えば、不飽和カルボン酸のカルボキシル基による反応では、ディップ組成物のpHを9〜11.5に調整することが好ましく、pH調整剤として、アンモニア、水酸化アンモニウムのようなアンモニウム化合物、アミン化合物、又は水酸化カリウムを使用することが好ましい。
pH調整剤の使用量は、通常、手袋用ディップ組成物中の手袋用ディップ組成物の全固形分に対して0.1〜5.0重量%程度である。
(保湿剤)
保湿剤が手袋用ディップ組成物に含まれていると、ディップ成形による手袋製造における乾燥工程(例えば、後述するプリキュア工程)よりも前の段階で、乾燥が進みすぎることによりポリカルボジイミドの親水性セグメントが開いてしまうことを防ぐことができる。
保湿剤としては、ポリオールを挙げることができ、その中でも2価又は3価の化合物を用いることが好ましい。具体的には、2価のものとしてエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどを挙げることができる。3価のものとしてグリセリンを
挙げることができる。これらの中でも、グリセリンを保湿剤として含むことが好ましい。
保湿剤の使用量は、手袋用ディップ組成物中のエラストマー100重量部に対し1.0〜5.0重量部程度である態様を挙げることができ、1.5〜3.0重量部であることがより好ましい。
<3.手袋の製造方法>
本発明の別の実施形態である手袋の製造方法は、上述した手袋用ディップ組成物を撹拌しながら放置する撹拌工程、及び手袋成形型を、当該手袋用ディップ組成物に浸漬するディッピング工程、を含む、手袋の製造方法である。
手袋の製造方法は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の工程以外の種々の工程を含んでいてもよく、例えば、国際公開第2018/117109号公報に記載の方法で手袋を製造することができる。
以下、手袋の製造方法を例示して説明するが、当該製造方法に限定されるものではない。
手袋は、以下の製造方法により製造することができる。
(1)上述した手袋用ディップ組成物を撹拌しながら放置する撹拌工程、
(2)手袋成形型を、前記手袋用ディップ組成物に浸漬するディッピング工程、
(3)前記ディップ成形用添え遺物が付着した手袋成形型を放置し、手袋成形型上に硬化フィルム前駆体を成形するゲリング工程、
(4)前記効果フィルム前駆体から不純物を除去するリーチング工程、
(5)前記リーチング工程の後に、手袋の袖口部分に巻きを作るビーディング工程、
(6)前記ビーディング工程を経た硬化フィルム前駆体を加熱及び乾燥するプリキュア工程、
(7)前記硬化フィルム前駆体を加熱して硬化フィルムを得るキュアリング工程、
を含み、上記(1)〜(7)の工程を上記の順序で行う手袋の製造方法。
以下、架橋剤として、ポリカルボキシルやエポキシ基含有化合物等の不飽和カルボン酸と反応し得る化合物を用いた場合における、特にエポキシ基含有化合物を用いた場合に好適である、上記の手袋の製造方法についてより詳細に説明する。上記化合物以外の架橋剤を用いた場合、pH調整等の処理は不要である。
なお、本明細書において、硬化フィルム前駆体とは、エラストマーのカルボキシル基が露出していない状態であり、エラストマーのカルボキシル基と、エポキシ基含有化合物のエポキシ基が架橋していないものである。
(1)撹拌工程
上述した手袋用ディップ組成物は、pH調整剤により、pHを10〜10.5程度になるよう調整する。
架橋剤等を分散させるための分散剤を分散させた混合液を得る際には、架橋剤等と分散剤との混合液を別途準備しておくことが好ましい。
架橋剤と架橋剤の分散剤の混合液が添加されたディップ成形用組成物を、撹拌する。架橋剤と、架橋剤の分散剤の混合液における、それぞれの重量比は、4:1〜1:1であることが好ましい。
架橋剤と架橋剤の分散剤との混合液が添加されたディップ成形用組成物を、撹拌する。
本工程は熟成工程ともいう。この熟成を行わせることで、ディップ成形用組成物が不均一になることを防ぐことができ、得られる手袋の均一な仕上がりに寄与する。
また、この熟成については、5時間以上行うことを挙げることができ、150時間以内で行うことが好ましい。
(2)ディッピング工程
手袋成形型を、上記のディップ成形用組成物中に、例えば、1〜60秒間、25〜60℃の温度条件下に浸す工程であり、凝固剤が付着した手袋成形型に、ディップ成形用組成
物を付着させる、これがディッピング工程である。このディッピング工程では、ディップ成形用組成物におけるエラストマーを手袋成形型の表面に膜を形成させる。
このディッピング工程の前に、手袋成形型を、カルシウムイオン含有無機凝固剤含有凝固剤液中に浸して、該凝固剤を手袋成形型に付着させる無機凝固剤付着工程を含んでいてもよい。この工程により、ディッピング工程では、凝固剤に含まれるカルシウムイオンにより、ディップ成形用組成物におけるエラストマーを手袋成形型の表面に凝集させて膜を形成させやすくすることができる。
上述のとおり、ディップ成形用組成物は、水酸化カリウム等のpH調整剤によりpHが9以上に調整されている。アンモニア等ではなく、水酸化カリウムのような不揮発性の塩基をpH調整剤として用いた場合には、塩基が揮発しないことにより、カルボキシラートとエポキシ基含有化合物との反応性が低下しない。
(カルシウムイオン含有無機凝固剤)
カルシウムイオン含有無機凝固剤の種類は特に限定されず、硝酸カルシウムや塩化カルシウム等を用いることができ、汎用性の観点から硝酸カルシウムであることが好ましい。当該凝固剤に含まれるカルシウムイオン(Ca2+)は、エラストマー中のカルボキシル基等の極性基とイオン結合を形成するため、手袋の引張強度を向上させることができる。
カルシウム含有無機凝固剤含有凝固液中の固形分全量に対して、カルシウムイオン含有無機凝固剤の含有量は、0.4重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、0.6重量%以上であることがさらに好ましく、また、1.5重量%以下であることが好ましく、1.4重量%以下であることがより好ましく、1.3重量%以下であることがさらに好ましく、1.2重量%以下であることが特に好ましい。
また、フィルムの強度特性に影響を与える亜鉛金属イオン架橋を形成する亜鉛含有量を含んでいてもよく、手袋用ディップ組成物の固形分全量に対して、亜鉛含有無機凝固剤の含有量は、0.4重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、0.6重量%以上であることがさらに好ましく、また、1.5重量%以下であることが好ましく、1.2重量%以下であることがより好ましく、1.0重量%以下であることがさらに好ましい。
上記範囲の上限を上回ると、最終的に得られる手袋が硬くなり過すぎてしまい、また、上記範囲の下限を下回ると、要求される製膜性及び引張強度を下回ってしまう。
(3)ゲリング工程
前記ディッピング工程でディップ成形用組成物が付着した手袋成形型を、以下で例示する条件で放置することで、後のリーチング工程でエラストマーが溶出しないようにする、これがゲリング工程である。前記無機凝固剤を用いた場合、このゲリング工程を行わせることで、手袋成形型の表面に集まっているだけであったディップ成形用組成物に含まれるエラストマーにおいて、無機凝固剤に含まれるカルシウムイオンがそのエラストマー中に浸潤して架橋構造が形成されることで、後のリーチング工程でエラストマーが溶出しなくなる。
本発明の実施形態におけるゲリング工程の条件としては、以下の態様を挙げることができる。
ゲリング工程の条件としては、室温(15〜25℃、より具体的には23℃)で20秒〜20分放置する態様を挙げることができ、30秒〜10分放置する態様を好ましく挙げることができる。
他方で、室温以上の温度(25℃を超える温度)でゲリング工程を行うこともできる。その場合の放置時間としては、例えば20秒以上〜20分程度を挙げることができる。また、ゲリング工程の温度が50〜90℃の場合でも20秒以上、7分未満放置する態様を挙げることができ、30秒〜5分放置する態様を挙げることもできる。
ここで、ゲリング工程において「放置する」とは、ディップ成形用組成物が付着した手袋成形型に対して、何らかの物質を添加したりするなどの操作を行わないという意味であり、静置している状態の他に、通常の工場において静置せずに製造ライン上を手袋成形型が移動している状態も含むものである。
上記のいずれの条件についても、基本的には、手袋の製造時の周囲温度(室温)で放置する、つまり加熱は行わない条件下で行うことが好ましい。手袋の製造については、その工場の立地条件により、周囲温度(室温)が23℃前後であったり、50℃程度、90℃程度、さらに高温の例では110℃になったりすることがある。上記で挙げた温度の範囲は、そのような工場の立地条件を考慮したものであり、例えば50℃前後で放置するといっても、その温度にまで加熱して温度を上昇させるということは基本的には想定されない。
なお、上記のゲリング工程は、40〜60%RHの条件下で行わせる態様を挙げることができる。
(4)リーチング工程
前記ゲリング工程の後、エラストマーが付着したモールド又はフォーマを水洗して、薬剤を除去する、これがリーチング工程である。ここで、部分的に乾燥させたエラストマーでコーティングされた手袋成形型を、熱水又は温水(30〜70℃)中で60秒〜10分間、好ましくは60秒〜6分程度、水洗(リーチング)する。
このリーチングを行わせることで、pH調整剤に起因する成分や、カルシウムイオン及び硝酸イオン等の凝固剤に起因する成分を除去する。これにより、過剰なゲリングを抑止できる。
(5)ビーディング工程
前記リーチング工程が終了した後に手袋の袖口部分にビーディング(袖巻き)処理を実施する、これがビーディング工程である。
(6)プリキュア工程
前記ビーディング工程の後、前記手袋成形型を、60〜80℃、より好ましくは65〜75℃で、30秒〜5分間、炉内乾燥する、これがプリキュア工程である。このプリキュア工程が存在することで、後のキュアリング工程において急激に水分が減少することにより生じうる手袋の部分的な膨張を防ぐことができる。
(7)キュアリング工程
前記プリキュア工程で乾燥した後の手袋成形型を、エラストマーのカルボキシル基と架橋剤の基とが反応するのに十分な温度と時間で加熱する、これがキュアリング工程である。
より具体的には、例えば、表面温度が110〜130℃となるように、20〜30分間加熱して、エラストマーを架橋硬化する工程である。なお、架橋剤としてポリカルボジイミドを用いた場合、上記の条件において、例えば70〜110℃、10〜30分の条件を適用することもできる。
このキュアリング工程において、エラストマーの架橋が行われ、これにより分子鎖が形成されて、手袋に対し好ましい各種特性を与えることができる。
<4.ディップ成形物(手袋)>
本発明の別の実施形態であるディップ成形物である手袋は、エラストマーを含み、かつ、ケイ素含有量が0.0005〜0.3重量%である手袋であり、上記の製造方法により作製することができる。
手袋中のケイ素含有量は、0.0005〜0.3重量%であり、好ましくは0.0008〜0.1重量%であり、より好ましくは0.001〜0.05重量%であり、さらに好
ましくは0.0011〜0.049重量%である。
上記範囲の上限を上回ると、最終的に得られる手袋が硬くなり過すぎてしまい、また、上記範囲の下限を下回ると、要求される製膜性及び引張強度を下回ってしまう。
手袋中のケイ素含有量は、ICP−AES分析装置で定量されたケイ素含有有機凝固剤中のSi量、及びフィルム作製時に用いるケイ素含有有機凝固剤の添加量から算出することができる。
(FAB)
本発明では、引張強度を示す指標として、FAB(Force at Break)を用いる。
手袋を形成するフィルムの引張試験において、フィルム厚0.045mmのFAB(EN規格)は、6N以上であることが好ましく、6.5N以上であることがより好ましく、特に上限値は限定されない。
特に、従来のゴム手袋において、厚さ0.045mmの条件におけるFABは、高くても4.8〜5.0N程度であり、6.0N以上のゴム手袋を製造することは困難であった。よって、本実施形態では、厚さ0.045mmの条件で6.0N以上であれば、従来品よりも格段に強度に優れる手袋であることを示している。
FABは、例えば、試験機STA−1225(A&D社製)を使用し、試験速度500mm/分、チャック間距離75mmとし、EN455−2:2009規格の方法に従って測定することができる。
(疲労耐久性)
手袋を形成するフィルムのPalm法による疲労試験において、疲労耐久性は、150分以上であることが好ましく、200分以上であることが好ましく、特に上限値は限定されない。
特に、ゴム手袋では、厚さ0.045mmの条件における疲労耐久性234分(Crotch法で90分に相当)を超えることが望ましい。
この疲労耐久性が350分以上であれば、ほぼ終日の着用が可能であるために好ましく、従来品よりも格段に耐久性の高い手袋であることを示している。
ここで、疲労耐久性は、以下の手順で求める。
長さ120mmで所定の厚み(薄手の手袋の場合、例えば0.04〜0.07mm)のJIS K6251の1号ダンベル試験片を硬化フィルムから作成し、その下部を固定して長さ60mmまで人工汗液に浸漬した状態で試験片の上部を引張り、長さ方向に最大195mm、最小147mmの間で、伸長と緩和を繰り返して、試験片が破れるまでの時間で示されるものが疲労耐久性である。伸長(195mm)と緩和(147mm)は、緩和状態で11秒間保持したのち、1.5秒間で195mmに伸長させて147mmに戻す、というサイクル(1サイクル12.5秒)を繰り返すことにより行うことができる。
疲労耐久性は、硬化フィルムの厚みが厚くなれば向上するものであるが、本発明の実施形態にかかる手袋の場合、特に薄手(厚さが0.04〜0.07mm)のものであっても、下記のような良好な疲労耐久性を有する。
より詳細には、ゴム製品の引張試験等を実施する場合と同様にダンベル形状の試験片を用いて、図1に示すような装置を用いて疲労耐久性試験を行うことができる。図1(a)に示すとおり、試験片の下端部をクランプで固定して、60mmまでを人工汗液に浸漬する。試験片の上端部を挟み、空気圧ピストンを用いて図1(b)の緩和状態→図1(c)の伸長状態→図1(b)の緩和状態となるように上下に伸縮させ、この図1(b)→図1(c)→図1(b)の伸び縮みを1サイクルとして、破れるまでのサイクル数と時間を測定することにより評価する。試験片が破れると、光電センサーが反応して装置が止まる仕
組みになっている。
人工汗液としては、1リットル中に塩化ナトリウム20g、塩化アンモニウム17.5g、乳酸17.05g、酢酸5.01gを含み、水酸化ナトリウム水溶液でpHを4.7に調整した水溶液を用いることができる。
(引張伸び率)
手袋を形成するフィルムの引張試験において、フィルム厚0.045mmの引張伸び率は、450%〜750%であることが好ましく、500%〜700%であることがより好ましい。
FABは、例えば、試験機STA−1225(A&D社製)を使用し、試験速度500mm/分、チャック間距離65mmとし、EN 455−2:2009+A2:2013の規格に従って測定することができる。
引張伸び率は、例えば、引張伸び率の測定は、引張試験機STA−1225(A&D社製)を使用し、試験速度500mm/分、チャック間距離75mmとし、日本工業規格の方法(JIS K 6251:1993 加硫ゴムの引張り試験方法)に従い、下記の式(6)に基づいて算出することができる。
引張伸び率(%)=100×(引張試験での破断時の標線間距離−標線間距離)/標線間距離 (6)
(架橋密度)
手袋の架橋密度は、特に限定されないが、通常1.0×10−4〜2.0×10−3mol/cmであり、2.0×10−4〜1.0×10−3mol/cmであることが
好ましい。上記範囲の上限を上回ると、最終的に得られる手袋が硬くなり過すぎてしまい、また、上記範囲の下限を下回ると、要求される引張強度を下回ってしまう。架橋密度は、エラストマー中の架橋点の数や、架橋温度、架橋時間を制御することにより調整することができる。
架橋密度は、例えば、Flory−Rehnerの式(7)に従い、試験片を常温でトルエン中に72時間浸漬したときの試験片重量等を測定することにより算出することもできる。
Figure 2020037635
上記式(8)において、n:膨潤前試料の架橋密度、Vgom:試料中のゴム容積分率、V:溶媒の分子容、Vr:膨潤ゲル中のゴム容積分率、μ:コム溶媒相互作用定数(=0.350)
(架橋点間分子量)
手袋の架橋点間分子量Nは、特に限定されないが、手袋に要求される引張強度及び柔軟性を維持する観点から、通常500〜10000g/cmであり、1000〜5000g/cmであることが好ましい。架橋点間分子量は、架橋剤の分子量を制御することにより調整することができる。
架橋密度nを、下記式(8)に代入することにより架橋点間分子量Nを算出することが
できる。
N=1/n (8)
手袋は、アレルギーリスクを抑えるために、架橋剤である硫黄及び加硫促進剤である硫
黄化合物を、どちらも含まないことが好ましく、燃焼ガスの中和滴定法により検出される硫黄元素の含有量が、手袋重量の1重量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る手袋は、薄手の手袋としても充分な引張強度(強度と剛性)を有するものである。そこで、手袋の厚みは、特に限定はされないが、0.04〜0.35mmであることが好ましく、0.04〜0.3mmであることがさらに好ましい。
本実施形態に係る手袋は、薄手の手袋とする場合には、0.04〜0.15mm、より薄手では0.04〜0.07mmとすることが好ましく、厚手の手袋とする場合には0.15mm超〜0.4mmとすることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき、より詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「重量%」であり、「部」は「重量部」である。
[実験I]
<ディップ組成物の製造>
(エラストマーの準備)
エラストマーの溶液として、商品名NL128(LG Chem社製)のカルボキシル化アクリロニトリルブタジエン共重合体(XNBR)を用いた。このエラストマーは下記の特性を有する。
ムーニ―粘度(ML(1+4)100℃):102
MEK不溶解分量:1.8重量%
MMA(COOH)量:5.2重量%
AN量:31重量%
固形分:45%
(ケイ素含有有機凝固剤の準備)
ケイ素含有有機凝固剤1として、商品名INDUSIL139(Momentive Performance Materials Inc.製、固形分量35.4重量%)のシリコーンオイルを用いた。このシリコーンオイルは下記の特性を有する。なお、ケイ素含有有機凝固剤の構造については、上述した核磁気共鳴スペクトルにより分析を行った。
比重(20℃):1.03g/ml
粘度(25℃):45cSt
曇点:36℃
pH:8.0
構造:
Figure 2020037635
上記式(1)において、mol比で、x=0.2、y=0.8、m=55.7、及びn=43.3
Si含有量:0.4wt%(固形分量基準:1.6重量%)
ケイ素含有有機凝固剤2として、商品名TPA4380(Momentive Per
formance Materials Inc.製、固形分量34.5重量%)のシリコーンオイルを用いた。このシリコーンオイルは下記の特性を有する。
比重(25℃):1.04g/ml
粘度(25℃):100cSt
曇点:38℃
pH:7.0
構造:
Figure 2020037635
上記式(1)において、mol比で、x=0.5、y=1.0、m=50.2、及びn=48.3
Si含有量:0.57wt%(固形分量基準:1.2重量%)
(架橋剤の準備)
架橋剤1として、商品名カルボジライトV−02−L2(日清紡社製)のポリカルボジイミドを用いた。カルボジライトV−02−L2の情報を以下に示す。
親水性セグメントの構造:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEGME)
ポリカルボジイミドの構造(有機ジイソシアネートの種類):ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(DCHM)
数平均分子量(測定値):3600
平均重合度=数平均分子量/当量(計算値):9.4
当量=分子量/重合度(日清紡ケミカル社カタログ):385
架橋剤2として、商品名EX−321(ナガセケムテックス社製)のエポキシ基含有化合物を用いた。EX−321の情報を以下に示す。
水溶率:27%
エポキシ当量:140g/eq.
平均エポキシ基数:2.65
主成分:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル
(ディップ組成物の製造)
[ディップ組成物1]
上記のエラストマーのXNBR溶液(固形分45%)170gを1Lビーカー(アズワン社製, 胴径105mm×高さ150mm)に入れ、イオン交換水100gを加えて希釈し、撹拌を開始した。アンモニアを使用してpHを10になるように調整した。さらに、ラテックス固形分に対して、上記の架橋剤1 0.5phr、酸化亜鉛(商品名「CHEMSPERSEC ZnO−50」、Farben Technique(M)Sdn Bhd社製) 1.0phr、酸化チタン(商品名「FARSPERSE WHITE PW601」、Farben Technique(M)Sdn Bhd社製) 1.0phr、及び酸化防止剤(商品名「CHEMSPERSE CVOX−50」、Farben Technique(M)Sdn Bhd社製) 0.2phrを計量し、イオン交換水150g加えて希釈し、イオン交換水で洗い流しながらラテックスに加えた(工程X)。その後、全体の固形分濃度(TSC)が16%となるようにさらにイオン交換水を80g加え一晩撹拌を行い、ディップ組成物1を得た。
[ディップ組成物2]
上記工程Xで、上記のケイ素含有有機凝固剤1 0.5phrをさらに加えたことを除き、ディップ組成物1と同様の製造条件でディップ組成物2を得た。
[ディップ組成物3]
上記工程Xで、上記のケイ素含有有機凝固剤2 0.5phrをさらに加えたことを除き、ディップ組成物1と同様の製造条件でディップ組成物3を得た。
[ディップ組成物4]
上記のエラストマーのXNBR溶液(固形分45%)190gを1Lビーカー(アズワン社製、胴径105mm×高さ150mm)に入れ、イオン交換水100gを加えて希釈し、撹拌を開始した。5%KOH溶液を使用してpHを9.2になるように調整した。さらに、ラテックス固形分に対して、上記の架橋剤2 0.7phr、酸化亜鉛(商品名「CHEMSPERSE CZnO−50」、Farben Technique(M)Sdn Bhd社製) 1.0phr、酸化チタン(商品名「FARSPERSE WHITE PW601」、Farben Technique(M)Sdn Bhd社製) 1.5phr、及び酸化防止剤(商品名「CHEMSPERSE CVOX−50」、Farben Technique(M)Sdn Bhd社製) 0.2phrを計量し、イオン交換水150g加えて希釈し、イオン交換水で洗い流しながらラテックスに加えた(工程X)。この際、架橋剤は、ジエチレングリコール(DEG、商品名「ジエチレングリコール」、関東化学社製)で洗い流しながらラテックスに添加した。その後、5%KOH溶液でpH10.0になるように調整し、全体の固形分濃度(TSC)が18%となるようにさらにイオン交換水を27g加え一晩撹拌を行い、ディップ組成物4を得た。
[ディップ組成物5]
上記工程Xで、上記のケイ素含有有機凝固剤1 0.5phrをさらに加えたことを除き、ディップ組成物4と同様の製造条件でディップ組成物5を得た。
[ディップ組成物6]
上記工程Xで、上記のケイ素含有有機凝固剤2 0.5phrをさらに加えたことを除き、ディップ組成物4と同様の製造条件でディップ組成物6を得た。
<凝固液の製造>
ハンツマン社(Huntsman Corporation)製の界面活性剤「Teric 320」(商品名)0.56gを水42.0gに溶解した液に、離型剤としてCRESTAGE INDUSTRY社製「S−9」(商品名、固形分濃度25.46%)19.6gを、あらかじめ計量しておいた水30gの一部を用いて約2倍に希釈した後にゆっくり加えた。容器に残ったS−9を残った水で洗い流しながら全量を加え、3〜4時間撹拌した。別に、最終的に得られる凝固液の硝酸カルシウム四水和物濃度(本明細書において、「Ca(NO濃度」と表す)が5%、7%、9%、11%となるような硝酸カルシウム四水和物をそれぞれ用意し、水196.2gを入れた1Lビーカー(アズワン社製, 胴径105mm×高さ150mm)中に、上記のそれぞれの硝酸カルシウム四水和物を入れ、4種類の溶液を得た。これらの4種類の溶液を撹拌しながら、先に調製したS−9分散液を硝酸カルシウム水溶液に加えた。5%アンモニア水でpHを8.5〜9.5に調整し、S−9が1.0%の固形分濃度となるように水を加え、4種類の凝固液500g得た。得られた凝固液は、使用するまで1Lビーカーで撹拌を継続した。
以下、最終的に得られたCa(NO濃度5%、7%、9%、11%の凝固液を、それぞれ、凝固液5%、凝固液7%、凝固液9%、凝固液11%と称する。異なるCa(NO濃度の凝固液を用いることにより、最終的に、厚さの異なる硬化フィルムを得
ることができる。
<硬化フィルムの製造>
[比較例I−1〜I−4、実施例I−1〜I−8]
上記得られた凝固液5%を撹拌しながら50℃に加温し、200メッシュのナイロンフィルターでろ過した後、浸漬用容器に入れ、洗浄後60℃に温めた陶製の板(200×80×3mm、以下「陶板」と記す。)を浸漬した。具体的には、陶板の先端が凝固液の液面に接触してから、陶板の先端から18cmの位置までを4秒かけて浸漬させ、浸漬したまま4秒保持し、3秒間かけて抜き取った。速やかに陶板表面に付着した凝固液を振り落し、陶板表面を乾燥させた。乾燥後の陶板は、ディップ組成物1の浸漬に備えて、再び60℃まで温めた。
上記ディップ組成物1を、室温のまま200メッシュナイロンフィルターでろ過した後、浸漬用容器に入れ、上記の凝固液を付着させた60℃の陶板を浸漬した。具体的には、陶板を6秒かけて浸漬し、4秒間保持し、3秒かけて抜き取った。ディップ組成物が垂れなくなってから30秒間空中で保持し、先端に付着したラテックス滴を軽く振り落した。
その後、ディップ組成物1に浸漬したそれぞれの陶板を、室温(23℃)で1分間放置した後(ゲリング)、50℃のイオン交換水で3分間リーチングした。その後70℃で5分間乾燥させ(プリキュア)、130℃で30分間、熱硬化させた(キュアリング)。
得られた硬化フィルムを陶板からきれいに剥がし、薄紙に挟み、物性試験に供するまで、温度23℃±2℃、湿度50%±10%の環境で保管し、比較例I−1の硬化フィルムを得た。
上記の凝固液5%を、凝固液7%、9%、11%に変更し、それ以外は上記の比較例I−1と同様の方法で硬化フィルムを作製し、比較例I−2〜I−4の硬化フィルムを得た。
さらに、上記のディップ組成物1を、ディップ組成物2、3に変更し、それ以外は上記の比較例I−1〜I−4と同様の方法で硬化フィルムを作製し、実施例I−1〜I−4、及びI−5〜I−8の硬化フィルムを得た。
[比較例I−5〜I−8、実施例I−9〜I−16]
上記で得られた凝固液5%を撹拌しながら50℃に加温し、200メッシュのナイロンフィルターでろ過した後、浸漬用容器に入れ、洗浄後60℃に温めた陶製の板(200×80×3mm、以下「陶板」と記す。)を浸漬した。具体的には、陶板の先端が凝固液の液面に接触してから、陶板の先端から18cmの位置までを4秒かけて浸漬させ、浸漬したまま4秒保持し、3秒間かけて抜き取った。速やかに陶板表面に付着した凝固液を振り落し、陶板表面を乾燥させた。乾燥後の陶板は、ディップ組成物4の浸漬に備えて、再び60℃まで温めた。
上記ディップ組成物4を、室温のまま200メッシュナイロンフィルターでろ過した後、浸漬用容器に入れ、上記の凝固液を付着させた60℃の陶板を浸漬した。具体的には、陶板を6秒かけて浸漬し、4秒間保持し、3秒かけて抜き取った。ディップ組成物が垂れなくなってから70℃で2分間乾燥させた。
その後、ディップ組成物4に浸漬したそれぞれの陶板を、室温(23℃)で1分間放置した後(ゲリング)、50℃のイオン交換水で2分間リーチングした。その後90℃で5分間乾燥させ(プリキュア)、130℃で30分間、熱硬化させた(キュアリング)。
得られた硬化フィルムを陶板からきれいに剥がし、薄紙に挟み、物性試験に供するまで、23℃±2℃、湿度50%±10%の環境で保管し、比較例I−5の硬化フィルムを得た。
上記の凝固液5%を、凝固液7%、9%、11%に変更し、それ以外は上記の比較例I−5と同様の方法で硬化フィルムを作製し、比較例I−6〜I−8の硬化フィルムを得た。
さらに、上記のディップ組成物4を、ディップ組成物5、6に変更し、それ以外は上記
の比較例I−5〜I−8と同様の方法で硬化フィルムを作製し、実施例I−9〜I〜12、及びI−13〜I−16の硬化フィルムを得た。
<硬化フィルムの評価>
(外観)
得られた硬化フィルムの表面を目視で観察したところ、実施例I−1〜I−16の方が、比較例I−1〜I−8よりも、表面の凹凸が小さく、均一なフィルムが得られた。
これは、ケイ素含有有機凝固剤の添加により、凝集体となり得る無機凝固液中の硝酸カルシウムが分散しやすくなったためであると考えられる。
(FAB)
作製後7日以上経過した硬化フィルムから、試験片としてEN規格に則した抜き型を使用し、試験片を打ち抜き、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で一晩(16時間以上)保管した。その後、中心に25mmの標線印をつけ、標線間の3点の厚さを測定し、試験片の平均厚さを算出した。FABの測定は、引張試験機STA−1225(A&D社製)を使用し、試験速度500mm/分、チャック間距離75mmとし、EN455−2:2009規格の方法に従って行った。
比較例I−1〜I−4及び実施例I−1〜I−8を用いたFABの測定の結果を下記の表1に示し、また、比較例I−5〜I−8及び実施例I−9〜I−16を用いたFABの測定の結果を下記の表2に示す。さらに、横軸をフィルム厚、縦軸をFABとして表1の測定結果をプロットしたものを図1に示し、また、表2の測定結果をプロットしたものを図2に示す。
(架橋密度)
手袋の架橋密度は、下記のFlory−Rehnerの式(7)に従い、試験片を常温でトルエン中に72時間浸漬したときの試験片重量等を測定することにより算出した。
Figure 2020037635
上記式(7)において、n:膨潤前試料の架橋密度、Vgom:試料中のゴム容積分率、
V:溶媒の分子容、Vr:膨潤ゲル中のゴム容積分率、μ:コム溶媒相互作用定数(=0.350)
(架橋点間分子量)
架橋点間分子量Nは、架橋密度nを、下記式(8)に代入することにより算出した。
N=1/n (8)
Figure 2020037635
Figure 2020037635
上記の表1、2及び図2、3から、本発明の実施形態に属するディップ組成物を用いて作製した硬化フィルムは、属さないフィルムと比較してFABが大きいことが分かる。これは、ケイ素含有有機凝固剤がディップ組成物中に均一に分散した状態で硬化し、製膜性が向上したためであると考えられる。また、当該凝固剤自体が硬化フィルム中で膜を形成し、強度を向上させたと考えられる。
また、架橋剤1を用いた場合の方が、架橋剤2を用いた場合よりも、ケイ素含有有機凝固剤の添加によるFABの増加効果が大きくなった。つまり、エポキシ基含有化合物による架橋よりも、ポリカルボジイミドによる架橋の方が、ケイ素含有有機凝固剤の添加の影響を受けやすいことが分かる。
(疲労耐久性)
硬化フィルムからJIS K6251の1号ダンベル試験片を切り出し、これを、人工
汗液(1リットル中に塩化ナトリウム20g、塩化アンモニウム17.5g、乳酸17.05g、酢酸5.01gを含み、水酸化ナトリウム水溶液によりpH4.7に調整)中に浸漬して、上述の耐久性試験装置を用いて疲労耐久性を評価した。
すなわち、長さ120mmのダンベル試験片の2端部からそれぞれ15mmの箇所を固定チャック及び可動チャックで挟み、固定チャック側の試験片の下から60mmまでを人工汗液中に浸漬した。可動チャックを、147mm(123%)となるミニマムポジション(緩和状態)に移動させて11秒間保持したのち、試験片の長さが195mm(163%)となるマックスポジション(伸長状態)と、再びミニマムポジション(緩和状態)に1.5秒かけて移動させ、これを1サイクルとしてサイクル試験を行った。1サイクルの時間は12.5秒であり、試験片が破れるまでのサイクル数を乗じて、疲労耐久性の時間(分)を得た。
比較例I−1〜I−8及び実施例I−1〜I−4、I−9〜I−12を用いた疲労耐久性の測定の結果を下記の表3に示す。さらに、横軸をフィルム厚、縦軸を疲労耐久性として、表3の測定結果をプロットしたものを、比較例I−1〜I−4及び実施例I−1〜I−4については図4に、比較例I−5〜I−8及び実施例I−9〜I−12については図5にそれぞれ示す。図4、5のグラフ中の点線は、疲労耐久性が234分を表す。
Figure 2020037635
上記の表3及び図4、5から、架橋剤の種類に関係なく、ケイ素含有有機凝固剤を添加することにより、疲労耐久性が向上することが分かる。
これは、ケイ素含有有機凝固剤中のソフトセグメントである−CH−CH−O−鎖の可塑化効果によるためであると考えられる。
(引張伸び率)
作製後7日以上経過した硬化フィルムから、試験片としてJIS K6251の5号ダンベル試験片の抜き型を使用し、試験片を打ち抜き、温度23℃±2℃、湿度50%±10%の環境で一晩保管した。その後、中心に25mmの標線印をつけ、標線間の3点の厚さを測定し、試験片の平均厚さを算出した。引張伸び率の測定は、引張試験機STA−1225(A&D社製)を使用し、試験速度500mm/分、チャック間距離75mmとし、日本工業規格の方法(JIS K 6251:1993 加硫ゴムの引張り試験方法)に従って行った。
比較例I−1〜I−4及び実施例I−1〜I−8を用いた引張伸び率の測定の結果を下記の表4に示す。さらに、横軸をフィルム厚、縦軸を引張伸び率として表4の測定結果をプロットしたものを図6に示す。
引張伸び率は、以下の式(7)に基づき求めた。
引張伸び率(%)=100×(引張試験での破断時の標線間距離−標線間距離)/標線間距離 (7)
Figure 2020037635
上記の表4及び図6から、本発明の実施形態に属さない比較例I−1〜I−3は、フィルム厚の減少に伴い、引張伸び率が減少することが分かる。これは、一般的なエラストマーの挙動である。一方で、本発明の実施形態に属する実施例I−1〜I−4及びI−5〜I−8は、上記の比較例のような挙動はみられず、フィルム厚が減少しても引張伸び率は減少しなかった。
よって、本発明の実施形態に属するディップ組成物を用いることにより、薄肉化及び軽量化がなされた場合においても、引張伸び率に優れる手袋を作製することができる。
[実験II]
<架橋剤の準備>
架橋剤3として、商品名カルボジライトV−04(日清紡社製)のポリカルボジイミドを用いた。カルボジライトV−04の情報を以下に示す。
親水性セグメントの構造:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PEGME)
ポリカルボジイミドの構造(有機ジイソシアネートの種類):m−テトラメチルキシリレンジシソシアネート(TMX)
数平均分子量(測定値):1900
平均重合度=数平均分子量/当量(計算値):5.7
当量=分子量/重合度(日清紡ケミカル社カタログ):335
<ディップ組成物の製造>
[ディップ組成物7]
上記のエラストマーのXNBR溶液(固形分45%)170gを1Lビーカー(アズワン社製, 胴径105mm×高さ150mm)に入れ、イオン交換水100gを加えて希釈し、撹拌を開始した。アンモニアを使用してpHを10になるように調整した。さらに、ラテックス固形分に対して、上記の架橋剤3 0.7phr、酸化亜鉛(商品名「CHEMSPERSEC ZnO−50」、Farben Technique(M)Sdn Bhd社製) 1.0phr、酸化チタン(商品名「FARSPERSE WHITE PW601」、Farben Technique(M)Sdn Bhd社製) 1.5phr、及び酸化防止剤(商品名「CHEMSPERSE CVOX−50」、Farben Technique(M)Sdn Bhd社製) 0.2phrを計量し、イオン交換水150g加えて希釈し、イオン交換水で洗い流しながらラテックスに加えた(工程X)。その後、全体の固形分濃度(TSC)が18%となるようにさらにイオン交換水を80g加え一晩撹拌を行い、ディップ組成物1を得た。
[ディップ組成物8]
上記工程Xで、上記のケイ素含有有機凝固剤2 0.46重量%をさらに加えたことを除き、ディップ組成物7と同様の製造条件でディップ組成物8を得た。
[ディップ組成物9]
上記工程Xで、上記のケイ素含有有機凝固剤2 0.93重量%をさらに加えたことを除き、ディップ組成物7と同様の製造条件でディップ組成物9を得た。
[ディップ組成物10]
上記工程Xで、上記のケイ素含有有機凝固剤2 1.38重量%をさらに加えたことを除き、ディップ組成物7と同様の製造条件でディップ組成物10を得た。
<凝固液Aの製造>
ハンツマン社(Huntsman Corporation)製の界面活性剤「Teric 320」(商品名)0.56gを水42.0gに溶解した液に、離型剤としてCRESTAGE INDUSTRY社製「S−9」(商品名、固形分濃度25.46%)19.6gを、あらかじめ計量しておいた水30gの一部を用いて約2倍に希釈した後にゆっくり加えた。容器に残ったS−9を残った水で洗い流しながら全量を加え、3〜4時間撹拌した。別に、最終的に得られる凝固液の硝酸カルシウム四水和物濃度(本明細書において、「Ca(NO濃度」と表す)が7%となるような硝酸カルシウム四水和物をそれぞれ用意し、水196.2gを入れた1Lビーカー(アズワン社製, 胴径105mm×高さ150mm)中に、上記のそれぞれの硝酸カルシウム四水和物を入れ、4種類の溶液を得た。これらの4種類の溶液を撹拌しながら、先に調製したS−9分散液を硝酸カルシウム水溶液に加えた。5%アンモニア水でpHを8.5〜9.5に調整し、S−9が1.0%の固形分濃度となるように水を加え、4種類の凝固液500g得た。得られた凝固液Aは、使用するまで1Lビーカーで撹拌を継続した。
<硬化フィルムの製造>
[比較例II−1、実施例II−1〜II−3]
上記得られた凝固液Aを撹拌しながら50℃に加温し、200メッシュのナイロンフィルターでろ過した後、浸漬用容器に入れ、洗浄後60℃に温めた陶製の板(200×80×3mm、以下「陶板」と記す。)を浸漬した。具体的には、陶板の先端が凝固液の液面に接触してから、陶板の先端から18cmの位置までを4秒かけて浸漬させ、浸漬したまま4秒保持し、3秒間かけて抜き取った。速やかに陶板表面に付着した凝固液を振り落し、陶板表面を乾燥させた。乾燥後の陶板は、ディップ組成物7の浸漬に備えて、再び60℃まで温めた。
上記ディップ組成物7を、室温のまま200メッシュナイロンフィルターでろ過した後、浸漬用容器に入れ、上記の凝固液を付着させた60℃の陶板を浸漬した。具体的には、陶板を6秒かけて浸漬し、4秒間保持し、3秒かけて抜き取った。ディップ組成物が垂れなくなってから30秒間空中で保持し、先端に付着したラテックス滴を軽く振り落した。
その後、ディップ組成物7に浸漬したそれぞれの陶板を、室温(23℃)で1分間放置した後(ゲリング)、50℃のイオン交換水で3分間リーチングした。その後70℃で5分間乾燥させ(プリキュア)、130℃で30分間、熱硬化させた(キュアリング)。
得られた硬化フィルムを陶板からきれいに剥がし、薄紙に挟み、物性試験に供するまで、温度23℃±2℃、湿度50%±10%の環境で保管し、比較例II−1の硬化フィルムを得た。
上記のディップ組成物7を、ディップ組成物8、9、10に変更し、それ以外は上記の比較例II−1と同様の方法で硬化フィルムを作製し、実施例II−1〜II−3の硬化フィルムを得た。
比較例II−1及び実施例II−1〜II−3のフィルム厚は、いずれも0.041〜0.050であった。
<FAB>
実験Iと同様の条件でFABを測定した。
比較例II−1及び実施例II−1〜II−3を用いたFABの測定の結果を下記の表5に示す。
Figure 2020037635
上記の表5から、ケイ素含有有機凝固剤の添加によりFABが増加すること、及びケイ素含有有機凝固剤の添加量を変更してもFABの増加効果が維持されていることが分かる。
本発明の実施形態によれば、エラストマー、及び手袋用ディップ組成物を凝固させるためのケイ素含有有機凝固剤を含む、手袋用ディップ組成物を調製したときに、薄肉化及び軽量化しても製膜性を低下させることなく手袋を製造することができ、かつ、引張強度の大きい手袋を作製することができる手袋用ディップ組成物を提供できる。

Claims (8)

  1. エラストマー、及び手袋用ディップ組成物を凝固させるためのケイ素含有有機凝固剤を含む、手袋用ディップ組成物。
  2. 前記手袋用ディップ組成物の固形分全量に対して、ケイ素含有有機凝固剤の含有量が、0.1〜3.0重量%である、請求項1に記載の手袋用ディップ組成物。
  3. 前記ケイ素含有有機凝固剤がシリコーンオイルである、請求項1又は2に記載の手袋用ディップ組成物。
  4. 前記シリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイルである、請求項3に記載の手袋用ディップ組成物。
  5. 前記ポリエーテル変性シリコーンオイルが、下記式(1)で表される、請求項4に記載の手袋用ディップ組成物。
    Figure 2020037635
    (式(1)において、0.1mol%≦x≦1.0mol%、0.5mol%≦y≦1.2mol%、45mol%≦m≦56mol%、及び42mol%≦n≦55mol%である。)
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の手袋用ディップ組成物を撹拌しながら放置する撹拌工程、及び
    手袋成形型を、前記手袋用ディップ組成物に浸漬するディッピング工程、
    を含む、手袋の製造方法。
  7. 前記ディッピング工程の前に、手袋成形型を、カルシウムイオン含有無機凝固剤を含む凝固剤液中に浸して、該凝固剤を手袋成形型に付着させる無機凝固剤付着工程、を含む、請求項6に記載の手袋の製造方法。
  8. エラストマーを含み、かつ、ケイ素含有量が0.0005〜0.3重量%である手袋。
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