以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
以下では、本発明の一実施形態に係る検査装置1及び検査方法について説明する。
検査装置1及び検査方法は、検査対象物に生じた欠損部を検査するためのものである。なお、本実施形態に係る検査対象物は、建物の基礎Aであるものとする。本実施形態に係る基礎Aは、平面状に形成される壁面A1と、当該壁面A1において経年劣化等により生じた裂け目(クラック)や凹み等の欠損部と、を有する。本実施形態に係る欠損部は、クラックA2であるものとする(図4参照)。
まず、検査装置1の構成について説明する。
図1及び図2に示す検査装置1は、移動装置10及び制御装置50を具備する。
移動装置10は、基礎A(壁面A1)を撮像可能であると共に、撮像結果を後述する制御装置50に送信可能とされたものである。移動装置10は、建物の床下等を走行可能とされている。移動装置10は、建物の床下等を走行可能なサイズに形成される。また、移動装置10は、人が持ち運びできる程度のサイズに形成される。移動装置10は、移動体11、点検部14、上下駆動部18、左右駆動部19及び回動部20を具備する。
移動体11は、後述する点検部14及び回動部20を支持するためのものである。移動体11は、ボディ12及び走行部13を具備する。
ボディ12は、略箱状に形成され、後述する走行部13に支持されるものである。ボディ12には、移動装置10が備える制御系の機器に用いられる制御系バッテリーや、移動装置10が備えるモータ等の駆動系の機器に用いられる駆動系バッテリー、温度センサ、湿度センサ等が収容される。
走行部13は、ボディ12の左部及び右部を支持するクローラによって構成される。左右の走行部13は、それぞれ異なるモータ(不図示)からの動力によって独立して駆動される。左右の走行部13は、当該モータの駆動を制御することで、直線走行(前進及び後退)やカーブ走行やその場での旋回を行うことができる。具体的には、左右の走行部13のモータを、それぞれ正回転方向又は逆回転方向に駆動させることで、移動装置10の前進又は後退が可能となる。また、左右の走行部13のモータのうち、一方のモータの出力が他方のモータの出力よりも大きくなるように、当該左右の走行部13のモータを駆動させることで、移動装置10のカーブ走行が可能となる。また、左右の走行部13のモータのうち、一方のモータを正回転方向に駆動させ、他方のモータを逆回転方向に駆動させることで、移動装置10の旋回が可能となる。
点検部14は、クラックA2を点検するために、検査対象物(基礎A)から種々の情報を取得するものである。点検部14は、後述する上下駆動部18及び左右駆動部19を介して、上下左右に回動自在にボディ12に支持される。図1及び図2では、点検部14を、当該点検部14(後述する筐体14a)の前面が前方に向くような位置としている。なお、以下では、図1及び図2に示した状態を基準として、点検部14の構成を説明する。点検部14は、筐体14aと、レーザ距離計15、点検用カメラ16及び照明部17を具備する。
図2に示す筐体14aは、点検部14の外郭を構成するものである。筐体14aは、後述するレーザ距離計15、点検用カメラ16及び照明部17を内部に収容する。
レーザ距離計15は、対向する物にレーザ光を照射することで対向する物までの距離を測定するためのものである。レーザ距離計15は、対向する物に当たって反射したレーザ光を受光し、当該受光したレーザ光に基づいて対向する物までの距離を測定する。レーザ距離計15は、筐体14aの前面からレーザ光を照射可能なように設けられる。また、レーザ距離計15は、筐体14aの右側部分に設けられる。
点検用カメラ16は、動画を撮像するためのものである。点検用カメラ16は、筐体14aの前面から外部に露出するレンズを備えている。これにより、点検用カメラ16は、点検部14の前方を撮像する。本実施形態に係る点検用カメラ16は、ズーム機能を有する。点検用カメラ16は、筐体14aの左右方向中央部に設けられる。
照明部17は、点検部14の前方に光を照射するものである。照明部17は、LED等の光源と筐体14aの前面から外部に露出するレンズとを備えている。照明部17は、筐体14aの左側部分に設けられる。
上下駆動部18は、点検部14の上下方向における向きを変更するためのものである。上下駆動部18は、点検部14を上下に回動可能に支持する。また、上下駆動部18は、後述する左右駆動部19を介して、左右に回動自在にボディ12に支持される。上下駆動部18は、点検部14の後方において、軸線方向を左右方向に向けて配置される軸部(不図示)と、点検部14を上記軸部の軸回りに回動させるモータ(不図示)と、を備えている。上下駆動部18は、上記モータを回動させることで、点検部14の上下方向の向きの調整を可能とする。
左右駆動部19は、点検部14の左右方向における向きを変更するためのものである。左右駆動部19は、点検部14及び上下駆動部18を左右に回動可能に支持する。また、左右駆動部19は、ボディ12に支持される。左右駆動部19は、軸線方向を上下方向に向けて配置される軸部(不図示)及び上下駆動部18を上記軸部の軸回りに回動させるモータ(不図示)と、を備えている。左右駆動部19は、上記モータを回動させることで、点検部14の左右方向の向きの調整を可能とする。
回動部20は、移動装置10に対して上下に回動するものである。回動部20は、略板状に形成される。回動部20は、図1に示すように、当該回動部20の基端部がボディ12の後端部に対して上下に回動可能に連結されるように構成される。上記回動部20の基端部は、後述する軸部24を介して、ボディ12の後端部に連結される。図1及び図2では、回動部20を、基端部から先端部にかけて、上方に向かうに従って斜め後方に延びるような回動位置としている。なお、以下では、図1及び図2に示した状態を基準として、回動部20の構成を説明する。回動部20は、移動用カメラ21、照明部22、走行補助部23、軸部24及びモータ25を具備している。
軸部24は、回動部20の回動中心となる軸である。軸部24は、軸線方向を左右方向に向けて配置される。軸部24は、ボディ12の後端部において支持される。また、軸部24は、回動部20の基端部を左右方向に貫通するように配置される。これにより、回動部20の基端部及びボディ12の後端部は、軸部24を介して互いに連結される。
モータ25は、回動部20を軸部24の軸回りに駆動させるものである。モータ25は、回動部20の回動における角度を制御可能とされている。モータ25は、回動部20が、所定角度(例えば15度)刻みで段階的に回動するように制御される。また、本実施形態では、回動部20は、回動角度の上限(例えば、移動体11に対して±75度)が設定されている。この場合、モータ25は、回動部20が上記回動角度の上限を超えて回動しないように制御される。なお、図1及び図2に示した例では、回動部20の回動角度を上限まで上方に回動させた例を示している。
移動用カメラ21は、動画を撮像するためのものである。移動用カメラ21は、回動部20の前面において、左右方向中央部に設けられる。また、移動用カメラ21は、回動部20の先端部(上端部)に、レンズを外部に露出するように設けられている。これにより、移動用カメラ21は、回動部20(移動装置10)の前方を撮像する。
また、図1及び図2に示した例では、移動用カメラ21を、移動体11及び点検部14よりも後方側であって、かつ移動体11及び点検部14よりも上方側に位置させている。これにより、移動用カメラ21は、移動装置10の前方に加えて、移動体11の一部や点検部14についても撮像することが可能となる(図4参照)。
照明部22は、回動部20の前方に光を照射するものである。照明部22は、回動部20の前面において、左右方向両側に設けられる。照明部22は、点検部14の照明部17と同様、LED等の光源と回動部20の前側面から外部に露出するレンズとを備えている。なお、図2に示す例では、照明部22を、上下に複数(図例では3つ)設けている。
走行補助部23は、回動部20の下方への回動に伴い、接地することで移動装置10の走行を補助可能なものである。走行補助部23は、回動部20の先端部において、左右方向両側に設けられる一対のタイヤ状の部材である。走行補助部23は、軸線方向を左右方向に向けて配置される軸部(不図示)の軸回りに回動自在に設けられている。
制御装置50は、種々の演算処理等を行うものである。制御装置50は、バスで相互に接続された中央処理装置(CPU)、記憶装置(RAM及びROMのような主記憶装置やSSD及びHDDのようなストレージ)等を具備する。制御装置50は、記憶装置に記憶されるOSやプログラムを中央処理装置が呼び出して実行することで、種々の機能を提供する。本実施形態に係る制御装置50は、市販のパーソナルコンピュータによって構成される。制御装置50は、移動装置10に搭載された適宜の送信手段や受信手段を介して、移動体11、点検部14、上下駆動部18、左右駆動部19及び回動部20等と電気的に接続される。制御装置50は、例えば、無線LANによって、移動体11、点検部14、上下駆動部18、左右駆動部19及び回動部20等と接続される。
制御装置50は、移動体11の走行部13を駆動させる前記モータの駆動及び停止に関する信号を、移動装置10の受信手段に送信可能に構成される。走行部13は、上記信号に基づいて、走行の制御が行われる。
また、制御装置50は、上下駆動部18の前記モータ及び左右駆動部19の前記モータの駆動及び停止に関する信号を、移動装置10の受信手段に送信可能に構成される。点検部14は、上記信号に基づいて、上下方向及び左右方向の向きの制御が行われる。
制御装置50は、移動装置10の送信手段や受信手段を介して、点検部14の点検用カメラ16との間で信号を送受信可能に構成される。制御装置50は、点検用カメラ16にズーム倍率を変更するための信号を送信する。点検用カメラ16は、上記信号に基づいてズーム倍率が変更される。また、制御装置50は、移動用カメラ21からの撮像結果(以下、「移動用撮像結果60」と称する)や、点検用カメラ16からの撮像結果(以下、「点検用撮像結果61」と称する)及び撮像時のズーム倍率に関する信号を受信する。また、制御装置50は、点検用カメラ16のズーム倍率と水平方向における画角とを関連付けた情報を予め記憶装置に記憶させている。
制御装置50は、移動装置10の送信手段や受信手段を介して、点検部14のレーザ距離計15との間で信号を送受信可能に構成される。制御装置50は、レーザ距離計15で測定を行うための信号を送信する。また、制御装置50は、レーザ距離計15から距離を測定した結果に関する信号を受信する。
また、制御装置50は、点検部14の照明部17及び回動部20の照明部22の照射及び停止に関する信号を移動装置10の受信手段に送信可能に構成される。照明部17及び照明部22は、上記信号に基づいて、照射及び停止の制御が行われる。
また、制御装置50は、回動部20のモータ25の駆動及び停止に関する信号を、移動装置10の受信手段に送信可能に構成される。モータ25は、上記信号に基づいて、駆動及び停止の制御が行われる。
このように構成される制御装置50は、表示部51及び操作部52を具備する。
表示部51は、移動用撮像結果60及び点検用撮像結果61や、制御装置50で行われる処理(後述するスケール画像表示処理や識別画像表示処理)の結果等を表示するためのものである。表示部51は、液晶ディスプレイによって構成される。
操作部52は、制御装置50に対する操作をするためのものである。操作部52は、キーボード52a、マウス52b及びコントローラ52cによって構成される。
キーボード52a及びマウス52bは、表示部51に表示される後述する所定のボタン(例えば、モード切替ボタン63等)等を操作するためのものである。
コントローラ52cは、移動体11、点検部14、上下駆動部18、左右駆動部19及び回動部20を操作するためのものである。コントローラ52cは、移動体11、点検部14、上下駆動部18、左右駆動部19及び回動部20を操作するためのボタン等を有する。コントローラ52cは、前記ボタンの操作に応じた信号を無線LANを介して移動体11、点検部14、上下駆動部18、左右駆動部19及び回動部20に送信する。これにより、コントローラ52cは、遠隔で移動装置10を走行させたり、点検用カメラ16のズーム倍率を変更したり、レーザ距離計15で距離を測定したり、点検部14の向きを変えたり、回動部20を回動させることができる。
以下では、図3を参照して、制御装置50によって実行可能なモードについて説明する。制御装置50は、移動モード及び点検モードを実行可能である。
移動モードは、移動装置10の移動に適した操作が可能な状態(モード)である。移動モードにおいては、表示部51に、後述する移動モード画面(図4参照)が表示される。移動モードにおいては、作業者は、上記移動モード画面における移動用撮像結果60を視認しながら、操作部52による移動装置10の移動のための操作(以下では、「移動操作」と称する)を行うことが可能となる。また、移動モードにおいては、作業者は、上記移動モード画面における点検用撮像結果61を視認することで、クラックA2の有無の確認が可能となる。
点検モードは、検査対象物(基礎A)の点検に適した操作が可能な状態(モード)である。点検モードにおいては、表示部51に後述する点検モード画面(図5参照)が表示される。点検モードにおいては、作業者は、上記点検モード画面における点検用撮像結果61を視認することで、クラックA2の詳細な点検を行うことが可能となる。
本実施形態では、検査装置1は、図3に示すように、移動モードと点検モードとを切り替え可能とされている。上記移動モードと点検モードとの切り替えは、作業者の操作部52の操作(後述するモード切替ボタン63に対する操作)によって実行される。
また、検査装置1は、図3に示すように、点検モードが実行されている状態で、クラックスケールモード及び深さ測定モードを実行可能である。すなわち、点検モードには、下位のモードであるクラックスケールモード及び深さ測定モードが含まれており、当該点検モードが実行されている状態で、下位のモードに移行することが可能とされている。上記クラックスケールモード及び深さ測定モードは、作業者の操作部52の操作(後述するクラックスケールボタン77及び深さ測定ボタン78に対する操作)によって実行される。なお、以下では、点検モードが実行されている状態であって、クラックスケールモードや深さ測定モードが実行されていない状態を、必要に応じて「通常の点検モード」と称する。
クラックスケールモードは、点検用撮像結果61における検査対象物のクラックA2の寸法を確認するためのスケール画像(幅スケール画像B1、長さスケール画像B2)を、点検用撮像結果61に重ね合わせて表示部51に表示可能な状態(モード)である。クラックスケールモードにおいては、表示部51において、後述するクラックスケールモード画面(図6参照)が表示される。
また、検査装置1は、図3に示すように、クラックスケールモードにおいて、クラック解析モードを実行可能である。すなわち、クラックスケールモードには、下位のモードであるクラック解析モードが含まれており、当該クラックスケールモードが実行されている状態で、下位のモードに移行することが可能とされている。上記クラック解析モードは、作業者の操作部52の操作(後述するクラック解析ボタン79に対する操作)によって実行される。
クラック解析モードは、操作部52による操作(後述する解析開始ボタン80に対する操作)によって、検査対象物(基礎A)のクラックA2の幅寸法を計測し、幅寸法の計測結果に応じた識別表示処理を実行可能な状態(モード)である。クラック解析モードにおいては、表示部51において、後述するクラック解析モード画面(図7参照)が表示される。
また、上述したように点検モードにおいて実行される深さ測定モードは、クラックA2の深さの測定が可能な状態(モード)である。深さ測定モードにおいては、表示部51に後述する深さ測定モード画面(図8参照)が表示される。
以下では、制御装置50によって表示部51に表示される画面の構成を説明する。制御装置50は、図3に示すように、移動モード画面、点検モード画面、クラックスケールモード画面、クラック解析モード画面、深さ測定モード画面、撮影画像プレビュー画面、設定メニュー画面、カメラ設定画面、アスペクト比変更画面及び移動装置再起動画面を、表示部51に表示可能である。
図4に示す移動モード画面は、移動モードが実行された場合に、表示部51に表示される画面である。移動モード画面には、移動用撮像結果60及び点検用撮像結果61が表示される。移動モード画面においては、移動用撮像結果60が点検用撮像結果61よりも大きく表示される。すなわち、移動モード画面においては、移動用撮像結果60の面積が点検用撮像結果61の面積よりも大きくなるように表示される。本実施形態では、移動モード画面において、移動用撮像結果60が表示部51の全画面に表示されると共に、点検用撮像結果61が、表示部51の左右方向中央における下部分に、移動用撮像結果60に重なるように表示される。なお、図例では、点検用撮像結果61の上下寸法及び左右寸法を、移動用撮像結果60(表示部51の全画面)の上下寸法及び左右寸法のそれぞれ3分の1程度としている。
また、表示部51には、左右両端部に、後述する各ボタン及び情報表示が表示される左端側領域51aと右端側領域51bとが形成されている。左端側領域51a及び右端側領域51bは、表示部51の左右両端部において、上下方向全体に形成され、左右方向に所定の幅を有する領域である。
移動用撮像結果60には、図4に示すように、移動装置10の前方や移動体11の一部、点検部14が表示される。このことから、当該移動用撮像結果60は、移動装置10の周囲に対する移動体11や点検部14の位置関係を把握し易いものであり、移動操作に適した撮像画像であると言える。移動モード画面においては、移動用撮像結果60が点検用撮像結果61よりも大きく表示されるので、移動操作における視認性を向上させることができる。また、図例では、移動用撮像結果60において、移動体11の前側部分の左右両端部が表示されていることから、移動体11の車幅を把握することができる。また、図例では、移動用撮像結果60において、点検部14の上端部が表示されていることから、移動装置10(移動体11及び点検部14)の高さを把握することができる。
制御装置50は、移動モードが実行されれば、車幅画像Dを、移動用撮像結果60に重ね合わせて表示部51に表示させる車幅画像表示処理を実行する。これにより、移動モード画面においては、図4に示すように、車幅画像Dが表示される。
車幅画像Dは、移動用撮像結果60において、移動体11が通過可能な幅を示す画像である。車幅画像Dは、移動用撮像結果60に表示される移動体11の幅寸法に基づいて作成される。図例では、車幅画像Dを、移動体11の左右方向両側部に沿う線状の画像とした例を示している。図例では、車幅画像Dは、移動体11の前方に延びる二点鎖線として示している。
また、図4に示すように、点検用撮像結果61は、移動用撮像結果60に表示される移動体11及び点検部14と重なるように配置されている。なお、点検用撮像結果61の上下寸法及び左右寸法は、移動用撮像結果60に表示される移動装置10(移動体11及び点検部14)の上下寸法(高さ寸法)及び左右寸法(幅寸法)よりも小さい寸法とされている。図例では、点検用撮像結果61の略全体を、移動用撮像結果60に表示される移動体11及び点検部14に重なるように表示させている。これにより、点検用撮像結果61を視認しやすい位置に配置としながらも、移動装置10(移動体11及び点検部14)の車幅及び高さを把握することができる。また、移動用撮像結果60における移動装置10の前方の視界を確保することができる。また、作業者は、点検モードにおいて、操作部52を介した操作によって点検用撮像結果61を静止画として保存することが可能である。
また、移動モード画面には、図4に示すように、点検用撮像結果61として撮像された映像のうち静止画として保存された画像(以下では、「撮像結果記録画面62」と称する)が表示される。撮像結果記録画面62は、表示部51の右端側領域51bにおける下部分に移動用カメラ21の撮像結果に重なるように表示される。図例では、撮像結果記録画面62の略全体が、右端側領域51bと重なるように配置した例を示している。
また、移動モード画面には、移動モードにおいて実行可能な処理を実行するための所定のボタンが表示される。具体的には、移動モード画面には、モード切替ボタン63、設定ボタン64及び終了ボタン65が表示される。上記各ボタンは、マウス52b等によって操作される。
モード切替ボタン63は、移動モードと点検モードとを切り替えるボタンである。設定ボタン64は、検査装置1の各種設定を行う画面に移行可能なボタンである。終了ボタン65は、検査装置1の動作を終了するボタンである。
また、移動モード画面には、移動装置10の状態を示す数値やアイコン等の所定の情報表示が表示される。具体的には、移動モード画面には、上記情報表示として、点検時間表示66、温度表示67、湿度表示68、制御系電池残量表示69、駆動系電池残量装置70、照明調光表示71、走行部出力表示72、回動部角度表示73、カメラ方向表示74、距離表示75及び倍率表示76が表示される。
点検時間表示66は、検査装置1の起動時から現在までの時間を表示するものである。温度表示67は、移動装置10に搭載した温度センサによって検出した温度を表示するものである。湿度表示68は、移動装置10に搭載した湿度センサによって検出した湿度を表示するものである。制御系電池残量表示69は、移動装置10に搭載した制御系バッテリーの電池残量を段階的に表示するものである。駆動系電池残量装置70は、移動装置10に搭載した駆動系バッテリーの電池残量を段階的に表示するものである。また、照明調光表示71は、照明部17及び照明部22の照度を段階的に表示するものである。
走行部出力表示72は、走行部13のモータの出力を段階的に表示するものである。走行部出力表示72は、図9(a)、(b)に示すように、平面視した移動装置10を模式的に示す本体表示72aと、当該本体表示72aの左右両側に配置された、左右の走行部13のモータの出力を段階的に示す出力表示部72bと、からなる。本体表示72aは、移動装置10の進行方向(前方)を示す矢印が付されている。
出力表示部72bは、左右の走行部13のモータの出力を、上下に複数段のマス状の表示によって段階的に示す。出力表示部72bは、図9(b)に示すように、上記マスの一部の色を変えることで、走行部13のモータの出力を表示する。出力表示部72bは、複数段のマスのうち、上半分が走行部13のモータの正回転方向(前進方向)の出力を示し、下半分が走行部13のモータの逆回転方向(後退方向)の出力を示す。また、出力表示部72bは、表示するマスの数によって走行部13のモータの出力の程度(回転数)を示す。図9(a)は、移動装置10が停止している状態(初期状態)を示している。この状態では、出力表示部72bには、走行部13のモータの出力の表示がされない。図9(b)は、移動装置10が前進している状態の一例を示している。図例では、左右の走行部13のモータを、それぞれ正回転方向に4マス分の出力で駆動させた状態を示している。なお、出力表示部72bは、移動装置10が後退している状態では、左右の走行部13のモータの逆回転方向の出力を表示する。また、出力表示部72bは、移動装置10が旋回している状態では、左右の走行部13のモータのうち、一方のモータの正回転方向の出力を表示し、他方のモータの逆回転方向の出力を表示する。
回動部角度表示73は、回動部20の角度を段階的に表示するものである。回動部角度表示73は、図9(c)、(d)に示すように、側面視した移動装置10を模式的に示したものである。回動部角度表示73は、回動部20を示す回動表示部73aと、移動装置10における回動部20以外の部分を示す本体表示73bと、からなる。回動部角度表示73は、回動表示部73aの角度を変化させることで、回動部20の回動角度を段階的に表示する。図9(c)は、回動部20の回動角度が、移動体11に対して+75度である状態を示している。また、図9(c)は、回動部20の回動角度が、移動体11に対して−30度である状態を示している。
カメラ方向表示74は、点検用カメラ16の左右方向の角度(点検用カメラ16が向いている方向を示す角度)を段階的に表示するものである。カメラ方向表示74は、図9(e)、(f)に示すように、平面視した移動装置10を模式的に示す本体表示74aと、点検用カメラ16の左右方向の角度を段階的に示す扇状のカメラ角度表示部74bと、からなる。図例では、カメラ角度表示部74bにおいて太線で示す方向によって点検用カメラ16の角度を示している。図9(e)は、点検用カメラ16が前方を向いている状態を示している。図9(f)は、点検用カメラ16が左方(前方に対して左に90度の方向)を向いている状態を示している。
距離表示75は、レーザ距離計15の値を表示するものである。倍率表示76は、点検用カメラ16のズームの倍率を表示するものである。
図4に示すように、表示部51の左端側領域51aには、モード切替ボタン63、設定ボタン64、点検時間表示66、温度表示67、湿度表示68、制御系電池残量表示69、駆動系電池残量装置70及び照明調光表示71が表示される。左端側領域51aには、移動装置10及び当該移動装置10の周囲の環境のコンディションに関する情報が表示される。また、右端側領域51bには、終了ボタン65、走行部出力表示72、回動部角度表示73、カメラ方向表示74、距離表示75及び倍率表示76が表示される。右端側領域51bには、移動装置10における走行部13、左右駆動部19及び回動部20の駆動状態に関する情報が表示される。
図5に示す点検モード画面は、点検モードが実行された場合に、表示部51に表示される画面である。点検モードは、移動モード画面において、モード切替ボタン63を操作することで実行される。点検モード画面には、移動用撮像結果60及び点検用撮像結果61が表示される。点検モード画面においては、点検用撮像結果61が移動用撮像結果60よりも大きく表示される。すなわち、点検モード画面においては、点検用撮像結果61の面積が移動用撮像結果60の面積よりも大きくなるように表示される。本実施形態では、点検モード画面において、点検用撮像結果61が表示部51の全画面に表示されると共に、移動用撮像結果60が、表示部51の左端側領域51aにおける下部分に、点検用撮像結果61の撮像結果に重なるように表示される。図例では、移動用撮像結果60の略全体が、左端側領域51aと重なるように配置した例を示している。これにより、表示部51に移動用撮像結果60を表示させながらも、点検用撮像結果61によるクラックA2の視認を阻害し難いものとすることができる。なお、図例では、移動用撮像結果60の上下寸法及び左右寸法を、点検用撮像結果61(表示部51の全画面)の上下寸法及び左右寸法のそれぞれ7分の1程度としている。
点検用撮像結果61は、上下左右の向きの変更やズーム倍率の変更が可能な点検用カメラ16による撮像結果であるので、クラックA2に対する詳細な点検のための操作(以下では、「詳細点検操作」と称する。)に適した撮像結果であると言える。点検モード画面においては、点検用撮像結果61が移動用撮像結果60よりも大きく表示されるので、詳細点検操作における視認性を向上させることができる。
点検モード画面においては、移動モード画面に表示される各ボタン及び情報表示に加えて、クラックスケールボタン77及び深さ測定ボタン78が表示される。
クラックスケールボタン77は、クラックスケールモードを実行するボタンである。また、深さ測定ボタン78は、深さ測定モードを実行するボタンである。
図6に示すクラックスケールモード画面は、クラックスケールモードが実行された場合に、表示部51に表示される画面である。クラックスケールモードは、点検モード画面において、クラックスケールボタン77を操作することで実行される。
制御装置50は、クラックスケールモードが実行されれば、幅スケール画像B1及び長さスケール画像B2を、点検用撮像結果61に重ね合わせて表示部51に表示させるスケール画像表示処理を実行する。これにより、クラックスケールモード画面においては、幅スケール画像B1及び長さスケール画像B2が表示される。また、クラックスケールモード画面においては、点検用撮像結果61は、表示部51の全画面に表示されるのではなく、表示部51に表示される各ボタンや情報表示、移動用撮像結果60、撮像結果記録画面62と重なり合わない大きさで、表示部51の中央に表示される。
幅スケール画像B1は、クラックA2の幅寸法を確認するための画像である。ここで、クラックA2の幅寸法とは、点検用撮像結果61のクラックA2において、当該クラックA2の長さ方向に直交する方向の寸法である。幅スケール画像B1は、点検用撮像結果61において表示された画像において、実際の寸法を示すものである。幅スケール画像B1は、点検用撮像結果61の寸法尺度(点検用撮像結果61に表示される寸法と実際の寸法との関係)に基づいて作成される。幅スケール画像B1は、それぞれ幅寸法の異なる複数(図例では3本)の直線状の画像とされており、上記直線の幅が寸法を示すものとされている。図例では、幅スケール画像B1のそれぞれの直線の幅を、0.1mm、0.3mm、0.5mmの幅寸法を示すものとしている。また、図例では、上記直線状の画像の下方に、それぞれの幅寸法を示す数字を示している。
長さスケール画像B2は、クラックA2の長さ寸法を確認するための画像である。長さスケール画像B2は、点検用撮像結果61の尺度に対応した目盛りを有する直線状の画像である。
クラックスケールモード画面においては、点検モード画面の深さ測定ボタン78に代えて、クラック解析ボタン79が表示される。クラック解析ボタン79は、クラック解析モードを実行するボタンである。
また、クラックスケールモード画面において、クラックスケールボタン77が操作されれば、クラックスケールモードが終了し、通常の点検モードが実行される。
図7に示すクラック解析モード画面は、クラック解析モードが実行された場合に、表示部51に表示される画面である。クラック解析モードは、クラックスケールモード画面において、クラック解析ボタン79を操作することで実行される。
クラック解析モード画面においては、クラックスケールモード画面のクラックスケールボタン77及びクラック解析ボタン79に代えて、解析開始ボタン80及び保存ボタン81が表示される。また、クラック解析モード画面においては、モード切替ボタン63に代えて、現在表示されている画面がクラック解析モード画面であることを示す表示(図例では「クラック解析」という文字)が表示される。また、クラック解析モード画面においては、終了ボタン65に代えて、閉じるボタン82が表示される。
解析開始ボタン80は、後述する識別表示処理を実行するボタンである。また、保存ボタン81は、識別表示処理における解析結果を保存するボタンである。また、閉じるボタン82は、現在表示されている画面(クラック解析モード画面)を終了させるボタンである。上記クラック解析モード画面が終了されれば、クラック解析モードが終了し、クラックスケールモードが実行される。
図8に示す深さ測定モード画面は、深さ測定モードが実行された場合に、表示部51に表示される画面である。深さ測定モードは、図5に示す点検モード画面において、深さ測定ボタン78を操作することで実行される。
深さ測定モード画面においては、点検モード画面の設定ボタン64、クラックスケールボタン77及び深さ測定ボタン78に代えて、保存ボタン83及びやり直しボタン84が表示される。また、深さ測定モード画面においては、モード切替ボタン63に代えて、現在表示されている画面が深さ測定モード画面であることを示す表示(図例では「深さ測定」という文字)が表示される。また、図例では、深さ測定モード画面において、右端側に、後述する深さ測定モードにおける測定手順(「基準面を指定」、「測定点を指定」、「測定完了」との表示)を表示した例を示している。
保存ボタン83は、深さ測定モードにおける測定結果を保存するボタンである。やり直しボタン84は、深さ測定モードの後述する測定手順において、実行された手順をリセットする(前の手順に戻す)ボタンである。
撮影画像プレビュー画面(不図示)は、点検モード画面が表示されている状態で、所定の操作が行われることで保存された画像(例えば、上述した保存ボタン81や保存ボタン83が操作されることで保存された画像)をプレビューする画面である。撮影画像プレビュー画面は、点検モード画面が表示されている状態で所定の操作が行われることで表示される。
設定メニュー画面(不図示)は、検査装置1に各種設定が可能な画面である。設定メニュー画面は、点検モード画面において、設定ボタン64を操作することで表示される。設定メニュー画面には、カメラ設定ボタン、アスペクト比変更ボタン、移動装置再起動ボタン、回動部制限解除ボタン及び閉じるボタンが表示される。
回動部制限解除ボタンは、回動部20の回動角度の上限の設定を解除するボタンである。また、閉じるボタンは、設定メニュー画面を終了させるボタンである。
カメラ設定画面(不図示)は、点検用カメラ16の各種設定を行う画面である。カメラ設定画面は、設定メニュー画面において、カメラ設定ボタンを操作することで表示される。
アスペクト比変更画面(不図示)は、表示部51のアスペクト比を所定の値に変更する画面である。アスペクト比変更画面は、設定メニュー画面において、アスペクト比変更ボタンを操作することで表示される。
移動装置再起動画面(不図示)は、移動装置10を再起動する画面である。移動装置再起動画面は、設定メニュー画面において、移動装置再起動ボタンを操作することで表示される。
次に、検査装置1が用いられて行われる検査方法による検査の手順について説明する。上記検査は、クラックA2の幅についての検査(クラック幅検査)と、クラックA2の深さについての検査(クラック深さ検査)と、を含む。
以下では、クラック幅検査について図10から図12までを参照して説明する。クラック幅検査の実施に際して、移動装置10は、建物の床下空間に配置される。また、制御装置50は、建物の床上空間等、上記床下空間に近い場所(現地)に配置される。
まず、図10のフローチャートに示すように、移動装置10を移動させる工程が行われる(ステップS10)。このとき、検査装置1は、移動モードが実行されている。移動装置10の移動用カメラ21及び点検用カメラ16は、床下空間を撮像する。移動用カメラ21及び点検用カメラ16は、移動用撮像結果60、点検用撮像結果61及びズーム倍率を制御装置50に送信する。
制御装置50は、送信された移動用撮像結果60及び点検用撮像結果61を、移動モード画面が表示された表示部51に表示させる。この状態では、移動用撮像結果60が点検用撮像結果61よりも大きく表示される。作業者は、図4に示すように、表示部51に表示された移動モード画面の移動用撮像結果60を視認しながら、コントローラ52cを用いて移動装置10を走行させる。このとき、移動用撮像結果60には車幅画像Dが表示されるので、作業者は、床下空間において移動体11が通過可能なスペースがあるか否かを容易に判断することができる。また、作業者は、移動モード画面の点検用撮像結果61を視認しながら、コントローラ52cを用いて点検部14(点検用カメラ16)の向きを変更する。これによって、作業者は、基礎Aに生じたクラックA2の有無を検査する。
クラックA2を発見した場合、作業者は、移動モード画面のモード切替ボタン63を操作することで、検査装置1を移動モードから点検モードに切り替える(ステップS11)。これにより、図5に示すように、表示部51には、点検モード画面が表示される。この状態では、点検用撮像結果61が移動用撮像結果60よりも大きく表示される。
次に、作業者は、点検用撮像結果61において、好適にクラックA2の点検が可能なように、点検用カメラ16の位置を調節する(ステップS12)。具体的には、作業者は、上下駆動部18及び左右駆動部19を操作することで、点検部14(点検用カメラ16)の上下左右方向における向きを調節する。これにより、点検部14の向きを、クラックA2の点検に際して好適な向きとする(例えば、点検用カメラ16の向きを、壁面A1に対して垂直方向とする)ことができる。また、作業者は、点検用カメラ16のズーム倍率を変更することが可能である。また、作業者は、移動体11を移動させることで、点検用カメラ16の位置を調節することも可能である。
次に、作業者は、点検モード画面のクラックスケールボタン77を操作することで、クラックスケールモードを実行する(ステップS13)。これにより、図6に示すように、表示部51には、クラックスケールモード画面が表示される。クラックスケールモードにおいては、後述するスケール画像表示処理が実行される。
以下では、スケール画像表示処理において実行される制御について、図11のフローチャートを用いて説明する。スケール画像表示処理において、制御装置50は、例えば、点検用カメラ16から受信したズーム倍率を確認し、当該ズーム倍率に対応する水平方向における画角を制御装置50の記憶装置から取得する。また、制御装置50は、レーザ距離計15によって点検部14から壁面A1までの距離を取得する(ステップS20)。
そして、制御装置50は、上記取得した画角と、上記取得した距離と、に基づいて点検用撮像結果61において表示される範囲の左右方向幅を算出する。そして、制御装置50は、算出した左右方向幅に基づいて、点検用撮像結果61の寸法尺度(点検用撮像結果61に表示される寸法と実際の寸法との関係)を算出する(ステップS21)。
そして、制御装置50は、上記点検用撮像結果61の寸法尺度に対応した幅スケール画像B1及び長さスケール画像B2を生成する(ステップS22)。
そして、制御装置50は、図6に示すように、点検用撮像結果61に幅スケール画像B1及び長さスケール画像B2を重ね合わせて表示部51に表示させる(ステップS23)。
作業者は、幅スケール画像B1及び長さスケール画像B2を参照することで、おおまかなクラックA2の寸法を把握し、クラック解析モードを実行することによる、より詳細な解析(後述する識別表示処理)が必要であるか否かの判断をすることができる。なお、幅スケール画像B1及び長さスケール画像B2は、マウス52b等を用いて点検用撮像結果61における所定の位置に移動させることができる。
次に、作業者は、クラックA2に対してより詳細な解析が必要であると判断した場合には、図10に示すように、クラックスケールモード画面のクラック解析ボタン79を操作することで、クラック解析モードを実行する(ステップS14)。これにより、図7に示すように、表示部51には、クラック解析モード画面が表示される。また、作業者は、クラック解析モード画面の解析開始ボタン80を、操作部52によって操作することで、後述する識別表示処理を実行することができる。
以下では、識別表示処理において実行される制御について、図12のフローチャートを用いて説明する。まず、識別表示処理において、制御装置50は、点検用撮像結果61の壁面A1においてクラックA2を抽出する(ステップS30)。具体的には、制御装置50は、例えば、点検用撮像結果61における壁面A1の輝度(明暗)を測定し、壁面A1に対して暗い部分をクラックA2と把握し、抽出する。
そして、制御装置50は、点検用撮像結果61において抽出したクラックA2の幅寸法を計測する(ステップS31)。この場合、制御装置50は、スケール画像表示処理において算出した尺度を用いてクラックA2の幅寸法を計測することが可能である。
そして、制御装置50は、点検用撮像結果61において抽出したクラックA2の形状と同一な形状の識別画像Cを生成する。また、制御装置50は、上記クラックA2の幅寸法の計測結果に応じて、識別画像Cの色を決定する(ステップS32)。
識別画像Cの色は、クラックA2の幅寸法の計測結果に応じて、複数のパターンの色から一の色が選択される。上記識別画像Cの色としては、例えば、0.1mmから0.2mmまでを青、0.3mmから0.4mmまでを黄、0.5mm以上を赤とすることが考えられる。
そして、制御装置50は、色が決定された識別画像Cを、点検用撮像結果61のクラックA2に重ね合わせて表示部51に表示させる(ステップS33)。これにより、制御装置50は、点検用撮像結果61におけるクラックA2に識別画像Cを付すことができる。これによって、作業者は、表示部51に表示されるクラックA2の欠損の程度を把握することができる。
なお、識別画像Cとしては、一つのクラックA2の最大幅寸法に応じて選択された一の色の識別画像Cを、点検用撮像結果61のクラックA2に重ね合わせて表示させるような態様とすることが考えられる。また、識別画像Cは、上述した態様に限られず、一のクラックA2において幅寸法が異なる部分がある場合、当該幅寸法が異なる部分ごとに幅寸法に応じて選択された色が付された識別画像Cを、クラックA2に重ね合わせて表示させるような態様としてもよい。
また、クラック解析モード画面において、保存ボタン81を操作することで、上述した識別表示処理の解析結果(識別画像Cが表示された点検用撮像結果61)を画像として保存することができる。
以上、図10から図12までに示すクラック幅検査における検査の手順について説明した。また、以下では、クラック深さ検査における検査の手順について説明する。
作業者は、上述した点検モード画面において、深さ測定ボタン78を操作することで、深さ測定モードを実行可能である。これにより、図8に示すように、表示部51には、深さ測定モード画面が表示される。以下では、深さ測定モードの操作手順について説明する。
まず、作業者は、図8に示す測定モード画面の点検用撮像結果61において、壁面A1の任意の位置を基準点として指定する。次に、作業者は、点検用撮像結果61において、クラックA2の任意の位置を測定点として指定する。上記基準点及び上記測定点が指定されれば、制御装置50は、例えば、レーザ距離計15によって測定した基準点までの距離及び測定点までの距離を基に、クラックA2の深さを測定し、表示部51に表示させる。
以上、検査装置1を用いた検査方法による検査の手順について説明した。また、以下では、上記検査の手順に加えて、検査装置1が可能な動作について説明する。
制御装置50は、移動モードにおいて、移動装置10に段差を乗り越えさせる段差乗り越え動作を実行可能である。段差乗り越え動作は、操作部52による所定の操作を契機として、自動で段差を乗り越えるように移動装置10を移動させるものである。
以下では、段差乗り越え動作が実行された場合の移動装置10の動作について、図13から図15までを用いて説明する。
図13(a)は、移動装置10が段差を乗り越える前の状態を示す図である。この状態において、作業者が操作部52による操作を行うことで、段差乗り越え動作が実行される。段差乗り越え動作が実行されれば、制御装置50は、移動装置10に所定の動作を実行させる。まず、制御装置50は、走行部13を駆動させ、移動装置10を段差に向かって前進させる。制御装置50は、移動装置10を段差に近接させると共に、更に走行部13を駆動させ、段差に対して移動装置10を乗り上げさせる。図13(b)は、段差乗り越え動作において、段差に対して移動装置10を乗り上げさせた状態を示している。
次に、図14(a)に示すように、制御装置50は、回動部20を下方に回動させ、走行補助部23を地面に接地させる。また、図14(b)に示すように、制御装置50は、回動部20を更に下方に回動させ、移動装置10を押し上げる。このように、回動部20による段差への乗り上げの補助が行われることで、移動装置10は、段差に対して前進が可能となる。また、上述のように、走行補助部23が地面に接地されることで、移動装置10の転倒が抑制される。
本実施形態では、回動部20を下方に回動させた際には、表示部51の回動部角度表示73に回動部20の角度が表示される。これにより、作業者は、回動部20の回動位置を確認することができる。また、作業者は、回動部20に設けられた移動用カメラ21による移動用撮像結果60を視認することによっても、回動部20の回動位置を確認することができる。
図15(a)は、移動装置10が完全に段差に乗り上げた状態を示している。制御装置50は、移動装置10を段差から降ろす際に、移動用カメラ21やモータ25等の回動部20に関する機器への通電を停止させる。この場合、回動部20のモータ25は駆動が停止され、回動部20は、図15(a)に示すように、自重で下方へ回動する。また、制御装置50は、移動用カメラ21による撮像等についても停止する。上記制御により、回動部20に関する機器の故障を抑制することができる。すなわち、回動部20に関する機器が通電されている場合には、移動装置10が段差から降りる際の衝撃により、上記機器が故障する可能性があるが、上記機器への通電を停止させることで、当該機器の故障を抑制することができる。
次に、図15(b)に示すように、制御装置50は、移動装置10を段差から降ろすために、当該移動装置10を前進させる動作を実行する。図例では、移動装置10の走行部13の前端部が地面に接地し、走行部13の後端部が段差の上面に接地している例を示している。この状態では、回動部20のモータ25は駆動が停止されている。図例では、回動部20の走行補助部23が段差の上面に接地している例を示している。
図15(c)は、移動装置10が段差から完全に降りた状態を示すものである。制御装置50は、移動装置10が段差から完全に降りた状態で、移動用カメラ21やモータ25等の回動部20に関する機器への通電を行う。これにより、移動用カメラ21による撮像や回動部20のモータ25は駆動が可能となる。また、制御装置50は、回動部20のモータ25の駆動が可能となれば、図15(c)に示すように、回動部20を、回動角度が上限となるように上方に回動させる。
以上の如く、本実施形態に係る検査装置1は、移動可能な移動体11と、
前記移動体11に設けられ、基礎A(検査対象物)を撮像する点検用カメラ16(撮像手段)と、
前記点検用カメラ16の点検用撮像結果61(撮像結果)を表示可能な表示部51(表示手段)と、
作業者が操作可能な操作部52(操作手段)と、
前記点検用撮像結果61における前記基礎Aの点検が可能な点検モードを実行可能な制御装置50(制御手段)と、
を具備し、
前記点検モードにおいては、
前記点検用カメラ16の位置調整が可能であり(ステップS12)、
前記基礎AのクラックA2(欠損部)の幅寸法を計測し、前記幅寸法の計測結果に応じて、複数のパターンの識別画像C(識別表示)のうち所定の識別画像Cを前記点検用撮像結果61における前記クラックA2に付し、当該点検用撮像結果61を前記表示部51に表示させる識別表示処理を、前記操作部52の操作によって実行可能であるものである。
このように構成することにより、現地で、クラックA2の欠損の程度を客観的に判定し易いものとすることができる。すなわち、作業者が、移動体11の点検用カメラ16を介して壁面A1(基礎A)におけるクラックA2の確認作業を行う際に、点検用撮像結果61に対して識別表示処理を実行することで、クラックA2の欠損の程度についての判定結果を表示させることができる。また、制御装置50は、操作部の操作によって、点検モードにおいて識別表示処理を実行する構成としているので、常時、クラックA2の幅寸法を計測し、計測結果に応じた処理を実行させる場合と比べて、制御装置50が実行する処理の負担を軽減することができる。
また、前記識別画像Cは、
前記クラックA2の幅寸法の程度を色を用いて示したものである。
このように構成することにより、クラックA2の欠損の程度についての判定結果をより分かり易く表示させることができる。
また、前記制御装置50は、
前記点検モードにおいて、前記点検用撮像結果61における前記基礎AのクラックA2の寸法を確認するための幅スケール画像B1及び長さスケール画像B2(スケール画像)を、前記点検用撮像結果61に重ね合わせて前記表示部51に表示させるスケール画像表示処理を実行可能である。
このように構成することにより、作業者は、幅スケール画像B1及び長さスケール画像B2を参照することで、おおまかなクラックA2の寸法を把握し、識別表示処理によるより詳細な解析が必要であるか否かの判断をすることができる。
また、前記制御装置50は、
前記操作部52の操作によって前記移動体11を移動させることが可能な移動モードを実行可能であり、
前記移動モードが実行された場合には、当該移動モードで用いられる移動モード画面を前記表示部51に表示させ、前記点検モードが実行された場合には、当該点検モードで用いられる点検モード画面を前記表示部51に表示させるものである。
このように構成することにより、操作性を向上させることができる。すなわち、各モード(移動モード及び点検モード)にそれぞれ対応する画面が表示部51表示されるので、各モードのうち、いずれかのモードが実行されているかを作業者が認識し易いものとすることができ、操作性を向上させることができる。これにより、本実施形態のように、各モード画面において配置されるボタンが異なる場合、ボタンの操作ミスを抑制することができる。
また、本実施形態に係る検査方法は、点検用カメラ16が設けられた移動体11を移動させる工程(ステップS10)と、
基礎Aの点検が可能な点検モードを制御装置50に実行させる工程(ステップS11)と、
前記点検モードにおいて、前記点検用カメラ16を位置調整する工程(ステップS12)と、
前記点検モードにおいて、前記基礎Aを撮像する工程と、
前記点検モードにおいて、作業者が操作可能な操作部52の操作によって、前記基礎AのクラックA2の幅寸法を計測し、前記幅寸法の計測結果に応じて、複数のパターンの識別画像Cのうち所定の識別画像Cを前記点検用カメラ16の点検用撮像結果61における前記クラックA2に付し、当該点検用撮像結果61を表示部51に表示させる工程(ステップS14)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、現地で、クラックA2の欠損の程度を客観的に判定し易いものとすることができる。
なお、本実施形態に係る点検用カメラ16は、本発明に係る撮像手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御装置50は、本発明に係る制御手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る表示部51は、本発明に係る表示手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る操作部52は、本発明に係る操作手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る点検用撮像結果61は、本発明に係る撮像結果の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る幅スケール画像B1及び長さスケール画像B2は、本発明に係るスケール画像の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る識別画像Cは、本発明に係る識別表示の実施の一形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、基礎A(建物の床下)を検査するものとしたが、本発明に係る検査対象物は、基礎Aに限定されるものではない。本発明に係る検査対象物は、建物の天井裏の梁等であってもよい。また、本発明に係る検査対象物は、建物の構成要素に限定されるものではなく、ダムや橋梁等であってもよい。
また、本実施形態に係る移動体11、点検部14、上下駆動部18、左右駆動部19及び回動部20と制御装置50とは、無線LANによって接続されるものとしたが、これに限定されるものではなく、USBケーブル等で接続されるものであってもよい。
また、本実施形態に係る移動体11は、クローラによって走行するものとしたが、本発明に係る移動体11の構成は、これに限定されるものではない。本発明に係る移動体11は、例えば、前輪及び後輪によって移動するものであってもよい。
また、本実施形態においては、移動用カメラ21を回動部20に設けた構成としているが、このような構成に限られず、移動用カメラ21を、移動体11の任意の位置に設けるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、移動装置10に、移動用カメラ21及び点検用カメラ16を搭載させた構成としているが、このような構成に限られず、点検用カメラ16のみを搭載させた構成としてもよい。この場合は、移動モードにおいて、点検用撮像結果61を視認しながら移動装置10を移動操作することが考えられる。
また、本実施形態においては、クラックスケールモードにおいて、クラック解析モードを実行可能な構成としているが、このような構成に限られず、点検モード画面において、クラック解析モードを実行可能な構成としてもよい。また、クラックスケールモードを実行不能な構成としてもよい。
また、本実施形態においては、識別表示処理における識別画像Cを、点検用撮像結果61におけるクラックA2の形状と同一な形状としたが、このような構成に限られず、識別画像Cは種々の形状を採用可能である。例えば、識別画像Cの幅寸法を、点検用撮像結果61におけるクラックA2の幅寸法よりも、大きく又は小さくしてもよい。
また、本実施形態においては、識別表示処理における識別表示を、クラックA2の幅寸法の程度を色を用いて示した識別画像Cとしたが、このような構成に限られず、識別表示としては、種々の態様を採用可能である。例えば、点検用撮像結果61におけるクラックA2の近傍に、クラックA2の幅寸法の程度を示すアイコンや数値等を表示させるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、移動用撮像結果60に、車幅画像Dを表示させた構成としているが、このような車幅画像Dを移動用撮像結果60に表示させなくてもよい。