ところで、上記特許文献1に記載された構成では、電気系統の不具合等によりソレノイドに通電がなされない状態では、スプールの回転がロックされてしまい、ベルトの再装着を妨げること等が考えられる。
また、上記特許文献2に記載された構成では、第1ロック手段が作動されなかった場合においても、第2ロック手段によってスプールの回転をロックすることができるが、第1ロック手段及び第2ロック手段の両方を設ける必要があり、ウェビング巻取装置の体格の小型化を図る及び構成部品の点数を削減する、という点で改善の余地がある。
さらに、上記特許文献1及び特許文献2に記載されたスプールの回転をロックするための機構は、車両の継続使用により繰返し作動されることが想定される。そのため、スプールの回転をロックするための機構の耐久性を向上させることが重要である。
上記事実を考慮し、スプールの回転の不要なロックを抑制するという課題、体格の小型化を図るという課題、構成部品の点数を削減するという課題、及びスプールの回転をロックするための機構の耐久性を向上させるという課題のうち、少なくともスプールの回転の不要なロックを抑制するという課題を解決することを本発明の目的とする。
請求項1記載のウェビング巻取装置は、乗員に装着されるウェビングが巻取られ、該ウェビングが引出されることで引出方向へ回転されるスプールと、前記スプールと一体回転可能に設けられていると共に該スプールの回転径方向に変位可能に設けられた回転ロック部と、前記回転ロック部に対して前記スプールの回転径方向外側に設けられ、前記回転ロック部が係合されることで、前記スプールの引出方向への回転がロックされる固定ロック部と、前記回転ロック部の前記固定ロック部側への変位を制限する制限部と、車両の緊急時に作動されることで、前記制限部による前記回転ロック部の変位の制限に抗して該回転ロック部を前記固定ロック部側へ変位させる変位部と、を備え、前記変位部の非作動時かつ前記スプールが引出方向へ所定の角加速度を超える角加速度で回転された際に、前記回転ロック部がそれ自体の回転中心に対して自転する慣性力によって該回転ロック部が前記固定ロック部側へ変位するように前記制限部による前記回転ロック部の制限力が調節されている。
請求項1記載のウェビング巻取装置によれば、ウェビングがスプールから引出されることで、ウェビングが乗員に装着される。また、車両の緊急時に変位部が作動されると、回転ロック部が、制限部による変位の制限に抗して固定ロック部側へ変位して当該固定ロック部に係合する。これにより、スプールの引出方向への回転がロックされて、ウェビングのスプールからの引出しが制限される。
ここで、変位部の非作動時かつスプールが引出方向へ所定の角加速度を超える角加速度で回転されると、回転ロック部がそれ自体の回転中心に対して自転する慣性力によって当該回転ロック部が固定ロック部側へ変位する。すなわち、回転ロック部が、制限部による変位の制限に抗して固定ロック部側へ変位して当該固定ロック部に係合する。これにより、スプールの引出方向への回転がロックされて、ウェビングのスプールからの引出しが制限される。このように、スプールが引出方向へ所定の角加速度を超える角加速度で回転される際において、すなわち、車両の緊急時が想定されるウェビングがスプールから急激に引き出された際において、変位部が作動されなかったとしても、スプールの引出方向への回転がロックされて、ウェビングのスプールからの引出しを制限することができる。
ここで、車両の緊急時を除く通常時には、回転ロック部の固定ロック部側への変位が制限部によって制限されている。これにより、回転ロック部の固定ロック部への不要な係合が抑制され、スプールの回転の不要なロックを抑制することができる。
請求項2記載のウェビング巻取装置は、請求項1記載のウェビング巻取装置において、前記制限部及び前記変位部は、前記回転ロック部に固定された永久磁石と、磁性材料を用いて形成され、前記永久磁石と対向して配置された芯部と、前記芯部の周りに配置されたコイル部と、を有する電磁石と、を含んで構成され、前記永久磁石が前記芯部を引き寄せる磁力によって、前記回転ロック部の前記固定ロック部側への変位が制限され、前記コイル部へ一方向への通電がなされて、前記永久磁石と反発する磁力が前記芯部に生じることで、前記回転ロック部が前記固定ロック部側へ変位される。
請求項2記載のウェビング巻取装置によれば、車両の緊急時にコイル部へ一方向への通電がなされると、永久磁石と反発する磁力が芯部に生じる。これにより、永久磁石が固定された回転ロック部が固定ロック部側へ変位して当該固定ロック部に係合する。これにより、スプールの引出方向への回転がロックされて、ウェビングのスプールからの引出しが制限される。
また、電磁石の非作動時かつスプールが引出方向へ所定の角加速度を超える角加速度で回転されると、回転ロック部がそれ自体の回転中心に対して自転する慣性力によって当該回転ロック部が固定ロック部側へ変位する。すなわち、回転ロック部が、永久磁石が芯部を引き寄せる磁力に抗して固定ロック部側へ変位して当該固定ロック部に係合する。これにより、スプールの引出方向への回転がロックされて、ウェビングのスプールからの引出しが制限される。 ここで、車両の緊急時を除く通常時には、回転ロック部の固定ロック部側への変位が、永久磁石が芯部を引き寄せる磁力によって制限されている。これにより、回転ロック部の固定ロック部への不要な係合が抑制され、スプールの回転の不要なロックを抑制することができる。
請求項3記載のウェビング巻取装置は、請求項2記載のウェビング巻取装置において、前記コイル部へ他方向への通電がなされて、前記永久磁石と引合う磁力が前記芯部に生じることで、前記回転ロック部の前記固定ロック部側への変位が制限される。
請求項3記載のウェビング巻取装置によれば、コイル部へ他方向への通電がなされると、永久磁石と引合う磁力が芯部に生じる。これにより、コイルへ他方向への通電を行わない場合と比べて、回転ロック部の固定ロック部側への変位をより強固に制限することができる。
請求項4記載のウェビング巻取装置は、請求項3記載のウェビング巻取装置において、乗員が前記ウェビングを装着しようとして前記ウェビングを前記スプールから引出す際に、前記コイル部へ他方向への通電がなされ、前記ウェビングが乗員に装着された状態では、前記コイル部への通電が停止されている。
請求項4記載のウェビング巻取装置によれば、乗員がウェビングをスプールから引出す際に、コイル部へ他方向への通電がなされる。これにより、回転ロック部の固定ロック部側への変位をより強固に制限することができる。その結果、乗員は、ウェビングをスプールから速やかに引出すことができ、ウェビングを速やかに装着することができる。
また、ウェビングが乗員に装着された状態では、コイル部への通電が停止されている。これにより、コイル部への通電に伴う電力の消費を抑制することができる。
請求項5記載のウェビング巻取装置は、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のウェビング巻取装置において、前記芯部は、前記スプールの回転軸上に配置された軸上部を有し、かつ前記スプールと一体回転可能に設けられ、前記コイル部は、前記軸上部の周りに配置されている。
請求項5記載のウェビング巻取装置によれば、スプールと一体に回転する芯部の軸上部がスプールの回転軸上に配置されていると共に、コイル部が芯部の軸上部の周りに配置されている。これにより、コイル部への配線経路が複雑化することを抑制することができる。その結果、ウェビング巻取装置の構成の複雑化を抑制することができる。また、コイル部がスプールと共に回転されない構成とすることにより、ウェビング巻取装置の構成部品の点数を削減することができる。
請求項6記載のウェビング巻取装置は、請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載のウェビング巻取装置において、前記コイル部へ一方向への通電がなされた際に、前記回転ロック部が前記固定ロック部と当接可能な位置まで変位され、前記回転ロック部と前記固定ロック部とが当接した状態で、前記スプールが引出方向へ回転されることで前記回転ロック部と前記固定ロック部との係合が完了する。
請求項6記載のウェビング巻取装置によれば、電磁石のコイル部へ一方向への通電がなされると、回転ロック部が固定ロック部と当接可能な位置まで変位される。そして、回転ロック部と固定ロック部とが当接した状態で、スプールが引出方向へ回転されることで回転ロック部と固定ロック部との係合が完了する。このように、回転ロック部と固定ロック部との係合が完了する位置まで回転ロック部を電磁石によって変位させない構成とすることで、電磁石の体格の大型化(電磁石の高出力化)を抑制することができる。その結果、ウェビング巻取装置の体格の小型化を図ることができる。
請求項7記載のウェビング巻取装置は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のウェビング巻取装置において、前記固定ロック部は、前記スプールの回転径方向内側の部分において前記回転ロック部と当接する先端部と、前記スプールの回転径方向外側の部分において前記回転ロック部と当接する終端部と、を含んで構成され、前記先端部の硬度が前記終端部の硬度よりも低く設定されている。
請求項7記載のウェビング巻取装置によれば、変位部が作動されて、回転ロック部が固定ロック部側へ変位すると、回転ロック部は固定ロック部の先端部に当接した後に終端部に当接する。ここで、回転ロック部の先端部の硬度が終端部の硬度よりも低く設定されている。これにより、回転ロック部が固定ロック部へ係合する際の初期の衝撃を緩和することができる。その結果、回転ロック部及び固定ロック部の破損が抑制され、スプールの回転をロックするための機構の耐久性を向上させることができる。
請求項8記載のウェビング巻取装置は、請求項7記載のウェビング巻取装置において、前記固定ロック部は、前記スプールの回転軸方向に隣り合って配置された第1固定ロック部及び第2固定ロック部を含んで構成され、前記終端部が、前記第1固定ロック部に設けられ、前記先端部が、前記第2固定ロック部に設けられている。
請求項8記載のウェビング巻取装置によれば、固定ロック部は、第1固定ロック部及び第2固定ロック部の材質を選択することにより、回転ロック部の先端部の硬度と終端部の硬度とを容易に調節することができる。
請求項9記載のウェビング巻取装置は、請求項1記載のウェビング巻取装置において、前記制限部は、前記回転ロック部を前記固定ロック部とは反対側へ付勢する付勢部材を含んで構成され、前記変位部は、コイル部を有する電磁石と、前記コイル部へ通電されることで移動する移動部材と、を含んで構成され、前記コイル部へ一方向への通電がなされて、前記移動部材が移動することで、前記回転ロック部が前記移動部材によって直接又は間接的に押圧されて、前記回転ロック部が前記固定ロック部側へ変位される。
請求項9記載のウェビング巻取装置によれば、車両の緊急時にコイル部へ一方向への通電がなされると、移動部材が移動する。移動部材が移動すると、移動部材が回転ロック部を直接又は間接的に押圧する。これにより、回転ロック部が固定ロック部側へ変位して当該固定ロック部に係合する。その結果、スプールの引出方向への回転がロックされて、ウェビングのスプールからの引出しが制限される。
また、電磁石の非作動時かつスプールが引出方向へ所定の角加速度を超える角加速度で回転されると、回転ロック部がそれ自体の回転中心に対して自転する慣性力によって当該回転ロック部が固定ロック部側へ変位する。すなわち、回転ロック部が、付勢部材の付勢力に抗して固定ロック部側へ変位して当該固定ロック部に係合する。これにより、スプールの引出方向への回転がロックされて、ウェビングのスプールからの引出しが制限される。
ここで、車両の緊急時を除く通常時には、回転ロック部の固定ロック部側への変位が、付勢部材の付勢力によって制限されている。これにより、回転ロック部の固定ロック部への不要な係合が抑制され、スプールの回転の不要なロックを抑制することができる。
請求項10記載のウェビング巻取装置は、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のウェビング巻取装置において、前記回転ロック部は、第1回転ロック部と、該第1回転ロック部と前記スプールの回転軸方向に沿って隣り合って配置された第2回転ロック部と、を含んで構成され、前記第2回転ロック部は、前記第1回転ロック部に対して前記スプールの回転径方向外側へ変位可能にされ、前記第2回転ロック部が前記第1回転ロック部に対して前記スプールの回転径方向外側へ変位して、前記第2回転ロック部が前記第1回転ロック部よりも先に前記固定ロック部に係合する。
請求項10記載のウェビング巻取装置によれば、第2回転ロック部が第1回転ロック部に対してスプールの回転径方向外側へ変位して、第2回転ロック部が第1回転ロック部よりも先に固定ロック部に係合する。これにより、回転ロック部(第1回転ロック部及び第2回転ロック部)が固定ロック部に係合する際の衝撃を、第1回転ロック部及び第2回転ロック部に分散させることができる。
本発明に係るウェビング巻取装置は、スプールの回転の不要なロックを抑制することができる、という優れた効果を有する。
図1〜図8を用いて本発明の実施形態に係るウェビング巻取装置について説明する。なお、図中に適宜示す矢印Z方向、矢印R方向及び矢印C方向は、スプールの回転軸方向、回転径方向及び回転周方向をそれぞれ示すものとする。また以下、単に軸方向、径方向、周方向を示す場合は、特に断りのない限り、スプールの回転軸方向、回転径方向、回転周方向を示すものとする。
図1に示されるように、本実施形態のウェビング巻取装置10は、乗員に装着されるウェビング12が巻取られるスプール14と、車体や車両用シートに固定されるフレーム16と、車両の緊急時にスプール14の引出方向(矢印C方向)への回転をロックするロック機構18と、を備えている。
スプール14は、ウェビングが巻取られる巻取部14Aを備えている。このスプール14が図示しないスプリングの付勢力によって巻取方向(矢印Cとは反対方向)へ回転されることで、ウェビング12がスプール14の巻取部14Aに巻取られるようになっている。また、ウェビング12がスプール14から引出されることで、スプール14が引出方向へ回転されるようになっている。
フレーム16は、軸方向に互いに間隔をあけて配置された一対の側壁16Aと、一対の側壁16Aの一方側の端部どうしを繋ぐ基壁16Bと、を備えている。一対の側壁16Aの間には、スプール14が配置されている。また、基壁16Bが車体や車両用シートに固定されることで、ウェビング巻取装置10が車体や車両用シートに固定されるようになっている。
ロック機構18は、スプール14と一体回転可能に設けられていると共に当該スプール14の回転径方向に傾動(変位)可能に設けられた回転ロック部20と、回転ロック部20が係合されることで、スプール14の引出方向への回転がロックされる固定ロック部22と、を備えている。また、ロック機構18は、回転ロック部20に固定された制限部及び変位部としての永久磁石24と、作動されることで回転ロック部20を傾動させる又は回転ロック部20の傾動を規制する制限部及び変位部としての電磁石26と、を備えている。
図2に示されるように、回転ロック部20は、金属材料を用いて形成されている。この回転ロック部20は、軸方向から見て略半月状に形成されている。この回転ロック部20の重心を含む中心部には、軸方向に貫通された円形の支持孔20Aが形成されている。この支持孔20Aに挿入された支持ピン28を介して、回転ロック部20がスプール14の軸方向一方側の端部におけるスプール14の回転軸(回転中心)に対して径方向外側の部分に固定されている。また、回転ロック部20の周方向一方側(引出方向側)の端部の外周部には、後述する固定ロック部22に係合する2つのメイン係合歯20Bが形成されている。支持ピン28に近い側のメイン係合歯20Bにおける軸方向他方側(矢印Zとは反対側)には、サブ係合歯20Cが形成されている。このサブ係合歯20Cにおける周方向一方側の部分は、支持ピン28に近い側のメイン係合歯20Bに対して周方向一方側に向けて突出している。本実施形態では、メイン係合歯20Bの厚み(軸方向への寸法)がサブ係合歯20Cの厚み(軸方向への寸法)よりも厚く設定されている。また、回転ロック部20の周方向一方側(引出方向側)の端部の内周部には、直方体状に形成された永久磁石24が固定されている。
固定ロック部22は、スプール14の回転軸方向に隣り合って配置された第1固定ロック部30及び第2固定ロック部32を含んで構成されている。これらの第1固定ロック部30及び第2固定ロック部32は、回転ロック部20に対して径方向外側に配置された状態でフレームの側壁16A等(図1参照)に固定されている。
第1固定ロック部30は、回転ロック部20と同様に金属材料を用いて形成されており、スプール14の回転軸と同軸上に配置された環状に形成されている。第1固定ロック部30の内周部には、回転ロック部20のメイン係合歯20Bが係合する複数のメイン被係合歯30Aが形成されている。この複数のメイン被係合歯30Aは、周方向に等間隔に配置されている。
第2固定ロック部32は、第1固定ロック部30に対して軸方向他方側に配置されている。この第2固定ロック部32は、第1固定ロック部30及び回転ロック部20を形成する金属材料よりも硬度の低い樹脂材料を用いて形成されており、スプール14の回転軸と同軸上に配置された環状に形成されている。第2固定ロック部32の内周部には、回転ロック部20のサブ係合歯20Cが係合する複数のサブ被係合歯32Aが形成されている。この複数のサブ被係合歯32Aは、周方向に等間隔に配置されている。本実施形態では、メイン被係合歯30Aの厚み(軸方向への寸法)がサブ被係合歯32Aの厚み(軸方向への寸法)よりも厚く設定されている。
図3に示されるように、軸方向から見て、第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bは、第1固定ロック部30のメイン被係合歯30Aの先端部30Bよりも径方向内側へ突出している。また、第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bにおける周方向他方側の面32Dは、第1固定ロック部30のメイン被係合歯30Aの先端部30Bにおける周方向他方側の面30Dよりも周方向他方側に位置している。また、第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの終端部32C(周方向に隣合うサブ被係合歯32Aの間)は、第1固定ロック部30のメイン被係合歯30Aの終端部30C(周方向に隣合うメイン被係合歯30Aの間)よりも径方向外側へ窪んでいる。
図1に示されるように、電磁石26は磁性材料を用いて形成された芯部34と、芯部34の周りに配置されたコイル部36と、を含んで構成されている。
芯部34は、丸形断面の棒状の部材がL字状に曲げられることによって形成されており、図示しない支持部材を介してスプール14に一体回転可能に取付けられている。この芯部34は、スプール14の回転軸上に配置された軸上部34Aと、軸上部34Aのスプール14側の端部から径方向外側へ向けて屈曲してのびる対向部34Bと、を備えている。対向部34Bの径方向外側の面は、回転ロック部20に固定された永久磁石24と径方向に対向している。
コイル部36は、導電性の巻線が所定の形状に巻回されること等により筒状に形成されている。このコイル部36の軸芯部には、芯部34の軸上部34Aが挿入されている。またコイル部36は、図示しない支持部材を介してフレーム16等に支持されている。また、コイル部36には、図示しない配線を介して通電がなされるようになっている。
図1及び図2に示されるように、コイル部36に通電がなされていない状態では、永久磁石24が芯部34を引き寄せる磁力によって、当該永久磁石24が芯部34の対向部34Bに接触している。これにより、永久磁石24が固定された回転ロック部20の固定ロック部22側への傾動が制限されている。ここで、ウェビング12がスプール14から急激に引出されると、スプール14が引出方向に急激に回転する。すると、回転ロック部20がそれ自体の回転中心に対して自転する慣性力によって当該回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動しようとする。この慣性力が永久磁石24が芯部34を引き寄せる磁力を上回ると、回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動して、回転ロック部20(メイン係合歯20B及びサブ係合歯20C)が固定ロック部22(第1固定ロック部30のメイン被係合歯30A及び第2固定ロック部32のサブ被係合歯32A)に係合する。そして、本実施形態では、コイル部36に通電がなされていない状態で、ウェビング12がスプール14から車両の衝突や急減速が想定される速度で引出されて、スプール14が引出方向へ所定の角加速度を超える角加速度で回転された際に、回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動ように、永久磁石24の磁力等が設定されている。
また、コイル部36へ一方向への通電がなされて、永久磁石24と反発する磁力が芯部34に生じると、図3において二点鎖線で示されるように、回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動される。ここで、本実施形態では、コイル部36へ一方向への通電がなされた際に、回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向にオーバーラップする位置まで回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動されるように、電磁石26の出力が設定されている。すなわち、回転ロック部20と固定ロック部22との係合が完了する位置まで回転ロック部20を電磁石26によって変位させないようになっている。
また、コイル部36へ他方向への通電がなされて、永久磁石24と引合う磁力が芯部34に生じると、コイル部36へ通電がなされていない場合よりもより強固に永久磁石24が芯部34の対向部34Bに接触する(永久磁石24と芯部34とが互いに引合う)。これにより、永久磁石24が固定された回転ロック部20の固定ロック部22側への傾動がより強固に制限される。
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図1及び図2に示されるように、本実施形態のウェビング巻取装置10によれば、ウェビング12がスプール14から引出されることで、ウェビング12が乗員に装着される。ここで、本実施形態では、車両のイグニッションがONとされた状態で、かつ乗員がウェビング12を装着していない状態では、コイル部36へ他方向への通電がなされる。これにより、永久磁石24と引合う磁力が芯部34に生じて、コイル部36へ通電がなされていない場合よりもより強固に永久磁石24が芯部34の対向部34Bに接触する。これにより、ウェビング12をスプール14から速やかに引出したとしても、回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動しないため、乗員はウェビング12を速やかに装着することができる。そして、ウェビング12が乗員に装着されたことがバックルスイッチ等で検出されると、コイル部36への通電が停止される。
また、乗員がウェビング12を外したことがバックルスイッチ等で検出されると、コイル部36へ他方向への通電がなされる。これにより、永久磁石24と引合う磁力が芯部34に生じて、コイル部36へ通電がなされていない場合よりもより強固に永久磁石24が芯部34の対向部34Bに接触する。これにより、ウェビング12がスプール14へ巻取られると共にスプール14の回転が急激に停止されたとしても、回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動し難い。これにより、回転ロック部20の固定ロック部22への不要な係合が抑制され、スプール14の回転の不要なロックを抑制することができる。
また、ウェビング12が乗員に装着された状態でかつ車両の通常時(車両の緊急時ではない時)においては、コイル部36への通電はなされない。これにより、車両の通常時における電力の消費が抑制されている。
また、車両の緊急時には、コイル部36へ一方向への通電がなされる。これにより、永久磁石24と反発する磁力が芯部34に生じ、永久磁石24が固定された回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動する。ここで、車両の緊急時とは、車両が衝突、横転、転落等した場合や衝突等が予測される場合等のように、乗員を車両用シートに拘束することが必要と判断される場合のことである。車両の緊急時の判断基準は、乗員の傷害値の基準等を考慮して適宜設定すればよい。例えば、所定値以上の車両前後方向及び左右方向の加速度が車両に作用した場合を車両の緊急時の判断基準としてもよい。また、車両に作用する重力と慣性力の合力の方向が車両の基準軸に対して所定の角度以上ずれた場合を車両の緊急時の判断基準としてもよい。本実施形態では、「車両の緊急時」と判断されてから「車両の通常時」と判断されるまで、コイル部36への一方向への通電が継続されるようになっている。そして、「車両の緊急時」と判断された後に「車両の通常時」と判断されると、コイル部36へ他方向への通電がなされる。これにより、永久磁石24と芯部34とが引き合う磁力によって、回転ロック部20が固定ロック部22と係合しない位置まで速やかに戻る(傾動する)。
コイル部36へ一方向への通電がなされることにより、回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動すると、回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向にオーバーラップする。この状態で、ウェビング12を装着した乗員が車両用シートに対して前方側へ移動することにより、ウェビング12がスプール14から引き出されると、スプール14が引出方向へ回転される。すると、図3において二点鎖線で示されるように、回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向に接触する。
回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向に接触した後に、ウェビング12がスプール14からさらに引き出されると、スプール14が引出方向へさらに回転される。すると、図4及び図5に示されるように、回転ロック部20のサブ係合歯20Cが第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aに沿って移動する。これにより、回転ロック部20が固定ロック部22側へさらに傾動して、回転ロック部20のメイン係合歯20Bが第1固定ロック部30のメイン被係合歯30Aの終端部30Cに向けて移動する。また、ウェビング12がスプール14からさらに引き出されると、スプール14が引出方向へさらに回転されて、図6〜図8に示されるように、回転ロック部20のメイン係合歯20Bが第1固定ロック部30のメイン被係合歯30Aの終端部30Cに接触する。この状態では、スプール14の引出方向への回転がロックされて、ウェビング12のスプール14からの引出しが制限される。これにより、乗員の身体がウェビング12によって拘束される。
ここで、コイル部36へ通電できないような故障が生じた場合やイグニッションがOFFとされた状態(コイル部36へ通電されない場合)において、ウェビング12がスプール14から急激に引き出されると、回転ロック部20がそれ自体の回転中心に対して自転する慣性力によって当該回転ロック部20が固定ロック部22側へ変位する。そして、ウェビング12がスプール14からさらに引出されることで、回転ロック部20(メイン係合歯20B及びサブ係合歯20C)が固定ロック部22(第1固定ロック部30のメイン被係合歯30A及び第2固定ロック部32のサブ被係合歯32A)に係合する。これにより、スプール14の引出方向への回転がロックされて、ウェビング12のスプール14からの引出しが制限される。その結果、乗員の身体がウェビング12によって拘束される。このように、本実施形態では、コイル部36へ通電できないような故障が生じた場合やイグニッションがOFFとされた状態で、車両の緊急時が想定されるウェビング12がスプール14から急激に引き出された際においても乗員の身体をウェビング12によって拘束することができる。なお、乗員の身体がウェビング12によって拘束された後に、ウェビング12に弛みが生じると、永久磁石24が芯部34を引き寄せる磁力によって、回転ロック部20が固定ロック部22と係合しない位置まで戻る(傾動する)。
また、本実施形態では、車両の緊急時を除く通常時には、回転ロック部20の固定ロック部22側への傾動が、永久磁石24が芯部34を引き寄せる磁力によって制限されている。これにより、回転ロック部20の固定ロック部22への不要な係合が抑制され、スプール14の回転の不要なロックを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、スプール14と一体に回転する芯部34の軸上部34Aがスプール14の回転軸上に配置されていると共に、コイル部36が芯部34の軸上部34Aの周りに配置されている。これにより、コイル部36への配線経路が複雑化することを抑制することができる。その結果、ウェビング巻取装置10の構成の複雑化を抑制することができる。また、コイル部36がスプール14と共に回転されない構成とすることにより、ウェビング巻取装置10の構成部品の点数を削減することができる。
また、本実施形態では、回転ロック部20と固定ロック部22との係合が完了する位置まで回転ロック部20を電磁石26によって変位させない構成となっている。これにより、電磁石26の体格の大型化(電磁石の高出力化)を抑制することができる。その結果、ウェビング巻取装置10の体格の小型化を図ることができる。
さらに、図3に示されるように、本実施形態では、回転ロック部20が固定ロック部22に係合する際に、先ず、回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが接触する。このように、金属製の回転ロック部20のサブ係合歯20Cと樹脂製の第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが最初に接触する構成とすることにより、回転ロック部20が固定ロック部22へ係合する際の初期の衝撃を緩和することができる。その結果、回転ロック部20及び固定ロック部22の破損が抑制され、スプール14の回転をロックするためのロック機構18の耐久性を向上させることができる。
また、本実施形態では、固定ロック部22が、第1固定ロック部30及び第2固定ロック部32による分割構造とされている。これにより、第1固定ロック部30及び第2固定ロック部32の材質を選択することにより、各々の硬度や強度を容易に調節することができる。
(他の形態のロック機構)
次に、図9〜図10を用いて他の形態のロック機構38について説明する。なお、他の形態のロック機構38において前述のロック機構18と対応する部材及び部分には、前述のロック機構18と対応する部材及び部分と同一の符号を付してその説明を省略することがある。
図9(A)及び図9(B)に示されるように、ロック機構38は、回転ロック部20と、回転ロック部20が係合されることで、スプール14の引出方向への回転がロックされる固定ロック部22と、を備えている。また、ロック機構38は、回転ロック部20を固定ロック部22とは反対側へ付勢する制限部及び付勢部材としてのリターンスプリング40を備えている。さらに、ロック機構38は、コイル部36を有する電磁石26と、コイル部36へ通電されることで軸方向一方側へ移動する移動部材42と、移動部材42を軸方向他方側へ付勢するリターンスプリング44と、を有するアクチュエータ46を備えている。
回転ロック部20の周方向他方側の端部には、支持孔20Aが形成されている。この支持孔20Aに挿入された支持ピン28を介して、回転ロック部20がスプール14の軸方向一方側の端部におけるスプール14の回転軸(回転中心)に対して径方向外側の部分に固定されている。また、回転ロック部20の周方向一方側(引出方向側)の端部の内周部には、軸方向から見て略U字状に形成された荷重伝達部48が固定されている。さらに、回転ロック部20の周方向の中間部には、リターンスプリング40の一方側の端部が係止されている。また、リターンスプリング40の他方側の端部は、スプール14の軸方向一方側の端部に係止されている。
アクチュエータ46の一部を構成する移動部材42は、スプール14の回転軸と同軸上に配置された棒状に形成されている。この移動部材42の一部には、当該移動部材42の軸芯部側へ向けて窪んだ係合溝42Aが周方向の全周にわたって形成されている。
そして、回転ロック部20に固定された荷重伝達部48が移動部材42の係合溝42A内に配置されている状態では、回転ロック部20は、当該回転ロック部20(メイン係合歯20B及びサブ係合歯20C)が固定ロック部22(第1固定ロック部30のメイン被係合歯30A及び第2固定ロック部32のサブ被係合歯32A)に係合しない位置に位置している。
図10(A)及び(B)に示されるように、コイル部36へ通電されることで、移動部材42が軸方向一方側へ移動すると、荷重伝達部48が移動部材42の係合溝42Aから抜け出す。これにより、回転ロック部20が荷重伝達部48を介して押圧されて径方向外側へ移動する。その結果、回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向にオーバーラップする位置まで回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動される。
(本実施形態のロック機構38の作用並びに効果)
次に、本実施形態のロック機構38の作用並びに効果について説明する。
本実施形態のロック機構38を備えたウェビング巻取装置では、車両の緊急時には、コイル部36へ一方向への通電がなされる。これにより、図10(A)及び(B)に示されるように、移動部材42が軸方向一方側へ移動して、荷重伝達部48が移動部材42の係合溝42Aから抜け出す。その結果、回転ロック部20が荷重伝達部48を介して押圧されて径方向外側へ移動する。これにより、回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向にオーバーラップする位置まで回転ロック部20が固定ロック部22側へ傾動される。なお、「車両の緊急時」と判断された後にウェビング12がスプール14から引き出されないまま「車両の通常時」と判断されると、コイル部36への通電が遮断される。その結果、移動部材42がリターンスプリング44の付勢力によって軸方向他方側へ戻ると共に、リターンスプリング40の付勢力によって、回転ロック部20が固定ロック部22と係合しない位置まで戻る(荷重伝達部48が移動部材42の係合溝42Aに係合する位置まで戻る)。
回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向にオーバーラップした状態で、ウェビング12を装着した乗員が車両用シートに対して前方側へ移動することにより、ウェビング12がスプール14から引き出されると、スプール14が引出方向へ回転される。すると、回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向に接触する。なお、図10(A)においては、回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向に接触した状態を示している。
回転ロック部20のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向に接触した後に、ウェビング12がスプール14からさらに引き出されると、スプール14が引出方向へさらに回転される。すると、図11(A)及び(B)に示されるように、回転ロック部20が固定ロック部22側へさらに傾動して、回転ロック部20のメイン係合歯20Bが第1固定ロック部30のメイン被係合歯30Aの終端部30Cに接触する。この状態では、スプール14の引出方向への回転がロックされて、ウェビング12のスプール14からの引出しが制限される。これにより、乗員の身体がウェビング12によって拘束される。
ここで、コイル部36へ通電できないような故障が生じた場合やイグニッションがOFFとされた状態(コイル部36へ通電されない場合)において、ウェビング12がスプール14から急激に引き出されると、回転ロック部20がそれ自体の回転中心に対して自転する慣性力及び回転ロック部20に作用する遠心力によって当該回転ロック部20が固定ロック部22側へ変位する。そして、ウェビング12がスプール14からさらに引出されることで、回転ロック部20(メイン係合歯20B及びサブ係合歯20C)が固定ロック部22(第1固定ロック部30のメイン被係合歯30A及び第2固定ロック部32のサブ被係合歯32A)に係合する。これにより、スプール14の引出方向への回転がロックされて、ウェビング12のスプール14からの引出しが制限される。その結果、乗員の身体がウェビング12によって拘束される。このように、本実施形態では、コイル部36へ通電できないような故障が生じた場合やイグニッションがOFFとされた状態で、車両の緊急時が想定されるウェビング12がスプール14から急激に引き出された際においても乗員の身体をウェビング12によって拘束することができる。なお、乗員の身体がウェビング12によって拘束された後に、ウェビング12に弛みが生じると、リターンスプリング40の付勢力によって、回転ロック部20が固定ロック部22と係合しない位置まで戻る(傾動する)。
また、本実施形態では、車両の緊急時を除く通常時には、回転ロック部20の固定ロック部22側への傾動が、リターンスプリング40の付勢力によって制限されている。これにより、回転ロック部20の固定ロック部22への不要な係合が抑制され、スプール14の回転の不要なロックを抑制することができる。
また、本実施形態では、回転ロック部20と固定ロック部22との係合が完了する位置まで回転ロック部20を電磁石26、移動部材42及び荷重伝達部48によって変位させない構成となっている。これにより、電磁石26及び移動部材42の体格の大型化(電磁石の高出力化)を抑制することができる。その結果、本実施形態のロック機構38を備えたウェビング巻取装置の体格の小型化を図ることができる。なお、荷重伝達部48を設けずに、移動部材42が回転ロック部20を直接押圧するように構成してもよい。
また、前述のロック機構18の構成の一部と本実施形態のロック機構38の構成の一部とを適宜組み合わせることによりロック機構を構成してもよい。
(他の形態のロック機構)
次に、図12〜図19を用いて他の形態のロック機構50について説明する。なお、他の形態のロック機構50において前述のロック機構18、38と対応する部材及び部分には、前述のロック機構18、38と対応する部材及び部分と同一の符号を付してその説明を省略することがある。
図12及び図13に示されるように、本実施形態のロック機構50は、前述の回転ロック部20(図2参照)に代えて第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54を備えていることに特徴がある。
図13に示されるように、第1回転ロック部52の構成は、サブ係合歯20C(図2参照)を備えていないこと及び係合孔52Aが形成されていることを除いては、前述の回転ロック部20と同様に構成されている。この第1回転ロック部52においてメイン係合歯20Bが形成された側とは反対側には、軸方向に貫通された係合孔52Aが形成されている。この係合孔52Aは、軸方向から見て径方向へ長孔状に形成されている。
図12に示されるように、第2回転ロック部54は、軸方向から見て略半月状に形成されている。第2回転ロック部54は、樹脂材料を用いて形成されていることにより、第1回転ロック部52よりも軽量となっている。また、第2回転ロック部54の中心部には、軸方向に貫通された円形の支持孔20Aが形成されている。この支持孔20Aに挿入された支持ピン28を介して、第2回転ロック部54が第1回転ロック部52と共にスプール14に固定されている。また、第2回転ロック部54の周方向一方側(引出方向側)の端部には、第2固定ロック部32に係合するサブ係合歯20Cが形成されている。このサブ係合歯20Cは、軸方向から見てその先端が第1回転ロック部52のメイン係合歯20Bよりも鋭利に尖った形状に形成されている。また、第2回転ロック部54においてサブ係合歯20Cが形成された側には、永久磁石24が埋設されている。なお、本実施形態では、永久磁石24の一部が、電磁石26の芯部34側に露出している。また、第2回転ロック部54においてサブ係合歯20Cが形成された側とは反対側には、第1回転ロック部52側へ向けて突出すると共に第1回転ロック部52に形成された係合孔52A内に配置される円柱状の係合突起部54Aが形成されている。この係合突起部54Aが、係合孔52A内において当該係合孔52Aの長手方向に移動可能とされることで、第2回転ロック部54が第1回転ロック部52に対して支持ピン28まわりに所定の角度だけ傾動(変位)することが可能となっている。また、第2回転ロック部54が第1回転ロック部52に対して傾動することで、第2回転ロック部54のサブ係合歯20Cが第1回転ロック部52においてメイン係合歯20Bが形成された部分に対して径方向外側へ突出するようになっている。
(本実施形態のロック機構50の作用並びに効果)
次に、本実施形態のロック機構50の作用並びに効果について説明する。
以上説明したロック機構50では、車両の緊急時には、コイル部36へ一方向への通電がなされる。コイル部36へ一方向への通電がなされると、永久磁石24と反発する磁力が芯部34に生じる。これにより、図14に示されるように、永久磁石24が固定された第2回転ロック部54が第1回転ロック部52に対して傾動して、第2回転ロック部54のサブ係合歯20Cが第1回転ロック部52においてメイン係合歯20Bが形成された部分に対して径方向外側へ突出する。ここで、本実施形態では、第2回転ロック部54の係合突起部54Aが第1回転ロック部52の係合孔52Aの径方向内側の端部52Bに当接する位置まで、第2回転ロック部54が第1回転ロック部52に対して傾動する。
第2回転ロック部54が第1回転ロック部52に対して傾動すると、第2回転ロック部54のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向にオーバーラップする。この状態で、ウェビング12(図1参照)を装着した乗員が車両用シートに対して前方側へ移動することにより、ウェビング12がスプール14(図1参照)から引き出されると、スプール14が引出方向へ回転される。すると、図15に示されるように、第2回転ロック部54のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向に接触する。
第2回転ロック部54のサブ係合歯20Cと第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aの先端部32Bとが周方向に接触した後に、ウェビング12がスプール14からさらに引き出されると、スプール14が引出方向へさらに回転される。すると、図16〜17に示されるように、第2回転ロック部54のサブ係合歯20Cが第2固定ロック部32のサブ被係合歯32Aに沿って移動する。これにより、第2回転ロック部54が第1回転ロック部52と共に固定ロック部22側へさらに傾動して、第1回転ロック部52のメイン係合歯20Bが第1固定ロック部30のメイン被係合歯30Aの終端部30Cに向けて移動する。
また、ウェビング12がスプール14からさらに引き出されると、スプール14が引出方向へさらに回転されて、図19に示されるように、第1回転ロック部52のメイン係合歯20Bが第1固定ロック部30のメイン被係合歯30Aの終端部30Cに接触する。この状態では、スプール14の引出方向への回転がロックされて、ウェビング12のスプール14からの引出しが制限される。これにより、乗員の身体がウェビング12によって拘束される。
ここで、本実施形態では、第2回転ロック部54が第1回転ロック部52に対して傾動して、第2回転ロック部54のサブ係合歯20Cが第1回転ロック部52のメイン係合歯20Bよりも先に固定ロック部22(第2固定ロック部32)に係合する。これにより、回転ロック部(第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54)が固定ロック部22に係合する際の衝撃を、第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54に分散させることができる。これにより、回転ロック部(第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54)が固定ロック部22へ係合する際の初期の衝撃を緩和することができる。その結果、回転ロック部(第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54)及び固定ロック部22の破損が抑制され、スプール14の回転をロックするためのロック機構50の耐久性を向上させることができる。
また、回転ロック部が第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54による分割構造とされていることにより、前述の回転ロック部20(図2参照)と比べて、第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54の各々の重量を小さくすることができる。これにより、スプール14が回転される際の第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54の各々の運動エネルギを小さくすることができる。その結果、第2回転ロック部54が第2固定ロック部32に係合される際の衝撃を緩和することができると共に、第1回転ロック部52が第1固定ロック部30に係合される際の衝撃を緩和することができる。
また、回転ロック部(第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54)が固定ロック部22に係合する際の衝撃を緩和できることにより、第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54の各々の係合歯(メイン係合歯20B及びサブ係合歯20C)をより尖った形状にすることができる。これにより、各々の係合歯(メイン係合歯20B及びサブ係合歯20C)の刃先が接触することによる各々の係合歯の跳ね返りを抑制することができる。その結果、各々の係合歯(メイン係合歯20B及びサブ係合歯20C)を固定ロック部22(第1固定ロック部30及び第2固定ロック部32)にスムーズに係合させることができる。
また、本実施形態では、第1回転ロック部52よりも軽量な第2回転ロック部54のみを電磁石26によって変位させる構成となっている。これにより、電磁石26の体格の大型化(電磁石の高出力化)を抑制することができる。その結果、ウェビング巻取装置10の体格の小型化を図ることができる。
また、本実施形態では、回転ロック部が、第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54による分割構造とされている。これにより、第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54の材質や軸方向への厚み等の寸法を適宜設定することにより、各々の重量や強度を容易に調節することができる。また、第1回転ロック部52及び第2回転ロック部54がそれぞれ係合する第1固定ロック部30及び第2固定ロック部32についても同様に、当該第1固定ロック部30及び第2固定ロック部32の材質を選択することにより、各々の重量や強度を容易に調節することができる。なお、第1固定ロック部30及び第2固定ロック部32を一体構造としてもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。