JP2020006594A - 冊子用情報記録シート - Google Patents
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しかしながら、冊子は、使用者がズボンのポケットに入れて携帯することもあり、想定を超える曲げ変形を生じてしまうことがあり得る。さらには、鞄などに入れている場合にも、他の物品などにより大きな曲げ変形を生じてしまうことや、局所的に大きく屈曲してしまうこと等もあり得る。このように大きな曲げ変形を生じた際に、破断歪みを超えると、合成樹脂製のシートが割れてしまい、落としたり、割れた部分でケガする虞もある。特に、パスポートの個人情報を記録したページの場合には、割れて落としてしまうと、該個人情報が不正に使用される虞がある。こうしたことから、破断歪みを超える曲げ変形を生じて割れてしまった場合であっても、冊子から分離しない構成が求められる。
したがって、本構成によれば、パスポート等に使用された場合に、割れた部位を落とすことで情報が不正使用されてしまうことを、可及的に抑制でき、セキュリティ性を飛躍的に向上できる。さらに、パスポートに限らず、割れた破片が分離しないことから、分離した破片により使用者がケガするという事故を、可及的に抑制できるという優れた利点もある。
一方、綴じ代部における網目の開口率が小さいことから、該綴じ代部を高強度化できる。これにより、綴じ代部を綴じ合わせて冊子を構成した場合に、該綴じ代部での破損を防止する効果が向上する。
詳述すると、介装部と綴じ代部とは横方向で並設されることから、縦糸が、該介装部と綴じ代部とに夫々配される。介装部と綴じ代部とで縦糸の本数を変えることは比較的容易である一方、横糸は、介装部と綴じ代部とに跨がって配されることから、両者で本数を変えることが難しい。また、横糸は、横方向の引張強度と曲げ強度とを支えるものであることから、介装部と綴じ代部とに跨がって配することにより、該綴じ代部における引張強度と曲げ強度とを安定して発揮できる。そのため、冊子とした状態で、綴じ代部における所望の強度が発揮され得る。こうしたことから、介装部の縦糸の本数を少なくすることにより、綴じ代部が所望の強度を保ちつつ、該介装部の開口率を綴じ代部に比して大きくする構成となる。尚、縦糸の本数を調整することにより、介装部と綴じ代部との夫々で所望の開口率を設定することも可能である。
さらに、液晶ポリマー糸は高い強度を有することから、該液晶ポリマー糸を横糸に配することにより、網状シート層の横方向の強度(引張強度と曲げ強度)を向上できる。これにより、冊子とした場合に、綴じ代部での破損を抑制する効果が向上する。
また、耐熱PET−Gからなる矩形状基体シート層は、UV蛍光インキによる印刷、マイクロ文字印刷、OVIインキによる印刷、昇華カラープリントを比較的容易かつ安定して実施可能である。さらには、マスク方式を用いた部分透明化も実施可能である。このように本構成によれば、高セキュリティ化のための様々な手法を容易に適用できる。
さらに、網状シート層により曲げ変形における破断歪みを向上できることから、高い屈曲性を有し、曲げ変形による破断を防止する効果が向上するため、前記割れの発生を一層防止できる。
本実施例の冊子用情報記録シート1は、図1に示すように、表面(及び裏面)に所望の情報が印刷される矩形状のページ主体2と、該ページ主体2の一側縁に連成された帯状の綴じ代3とを備えてなる。本実施例では、冊子用情報記録シート1を、個人情報57を印刷するパスポートのページに適用するシートとして例示する(図5参照)。すなわち、冊子用情報記録シート1を、他のページのシートと重ね合わせて、夫々の綴じ代部を綴じ合わせることにより、パスポートとなる(図示せず)。
また、前記のUV蛍光インキによる印刷、マイクロ文字印刷、OVI印刷、および昇華カラープリントは、従来から公知のものを適用できることから、詳細については省略する。
ここで、レーザー光は、位相が揃い易く収束性に優れていることから、狭い面積に高密度のエネルギーを集中させて照射できる。そのため、比較的細かい文字や図柄を精度良く印すことができると共に、レーザー記録層13の、レーザー光の照射部位が、その厚み方向で全体的に炭化されることから、該照射部位と非照射部位とのコントラストが高く、文字や図柄を鮮明に印すことができる。特に、レーザー記録層13は、レーザー光により炭化し易い発色フィルムにより構成されることから、該レーザー光の照射により高精度かつ鮮明な文字や図柄を印すことができる。尚、レーザー光には、イットリウム・アルミニウム・ガーネットを用いた固体レーザー(YAGレーザー)を用いており、ネオジムをドープしたNd:YAGレーザーを適用している。
さらに、網状シートは、図2,3に示すように、表裏の基体シート層12間に介装される前記介装部21と、該基体シート層12の一側縁から延出する前記綴じ代部22とを備えており、介装部21と綴じ代部22とにおける網目45の開口率が相互に異なる編物構造となっている(図4参照)。
冊子用情報記録シート1の製造は、主に、基体シートに予め前記セキュリティ図柄51〜53などを印す印刷工程と、前記したプレス加工を行うプレス工程と、所定のサイズに整える裁断工程とを順次行う。印刷工程では、前述したように、基体シートの表面(外表面)に所定のデザインやセキュリティ情報(セキュリティ図柄51〜53)を印刷する。裁断工程は、プレス加工後に、パスポートに合わせた所定サイズに切断する。こうした印刷工程と裁断工程とは、従来と同様の工程を適用できることから、詳細を省略する。
こうしたプレス加工によって、網状シートからなる網状シート層11と、表裏の基体シートからなる基体シート層12,12と、発色フィルムからなるレーザー記録層13,13と、保護フィルムからなる保護層14,14とが形成される。尚、このプレス加工後に前記した裁断工程を行うことにより、ページ主体2の所望サイズに整えられると共に、網状シートの綴じ代部22を所定サイズに切断することにより、綴じ代3が所望サイズに整えられる。
本実施例の冊子用情報記録シート1にあっては、前述したように、柔軟性を有する網状シート層11の表裏に、基体シート層12,12と、レーザー記録層13,13と、保護層14,14とを重ね合わせたものであり、これら各層が積層されたページ主体2と網状シート層11の綴じ代部22からなる綴じ代3とを備えてなる。そして、ページ主体2は、基体シート層12、レーザー記録層13、および保護層14が極薄厚の樹脂製であることから、曲げ変形可能な硬性シートであり、冊子に必要な所望の屈曲性(曲げ変形可能な性能)を有している。さらに、綴じ代3は、柔軟性を有する網状シート層11の綴じ代部22により構成されていることから、ページを捲り易いという冊子のページに必要な性能を有している。
さらに、網状シート層11の耐熱温度が基体シート層12よりも高いことから、基体シート層12の熱融着後も、介装部21の平織り構造が保たれ得る。こうした網状シート層11の介装部21によって、ページ主体2は、曲げ変形による破断歪みが向上する。そのため、本実施例の冊子用情報記録シート1をパスポートの1ページとした際に、該パスポートをポケットに入れた状態で比較的大きく曲げ変形した場合や、鞄などに入れた状態で局所的に曲げ変形した場合などでも、割れ等の破壊を抑制する効果が向上する。
さらにまた、前記のように、熱融着後も介装部21の平織り構造が保たれることから、ページ主体2を構成する基体シート層12が割れてしまった場合に、該介装部21が切断されずに残り易く、割れた破片が分離してしまうことを、該介装部21によって防止でき得る。そして、分離の防止によって、破片を落としてしまうことを防止できる。ここで、本実施例の冊子用情報記録シート1は、パスポートの個人情報57を記録するページに使用するものであることから、パスポートで使用中にページ主体2が割れた場合にも、割れた破片が分離せずにパスポートと繋がった状態で保たれ得る。これにより、割れた破片を落とすことで、該破片に記録された個人情報が紛失してしまうことを防止できる。さらに、破片が分離しないことから、割れた部位に触れることでケガをしてしまうことも可及的に抑制できる。
このように本実施例の冊子用情報記録シート1は、剥離の発生と曲げ変形による割れの発生とを可及的に抑制することができることに加えて、曲げ変形により割れを生じた場合に、割れた破片が分離してしまうことを防止でき、該破片の落下による個人情報の紛失を可及的に抑制できる。
尚、液晶ポリマー糸とPA融着糸(熱融着糸)との割合は1:5〜5:1の範囲とすることが好適であり、この範囲とすることによって、前記した作用効果を発揮し得る。液晶ポリマー糸の割合がこの範囲よりも低くなると強度が不足する一方、熱融着糸の割合がこの範囲よりも低くなると、目寄れが生じて網状シートの形状を保ち難くなる。
同様に、保護層14は、一枚の樹脂フィルムからなるものに限らず、複数枚の樹脂フィルムからなるものであっても良い。
同様に、保護層14を構成する保護フィルムが、PET−G製の極薄フィルムとPC製の極薄フィルムとを積層して一体化してなるものであっても良い。例えば、三菱ケミカル株式会社のもの(製品番号:PG−MCT)を適用することも可能である。
さらに、縦糸の単位幅当りの本数や、横糸の単位幅当りの本数は、適宜変更して設定することができる。これら縦糸や横糸の本数は、所望の開口率に合わせて設定変更することが好適である。すなわち、介装部と綴じ代部との各開口率も、適宜変更した設定することが可能である。ここで、単位幅当りの本数としては、介装部で20本以上かつ60本以下とし、綴じ代部で30本以上かつ90本以下とすると共に、該介装部よりも綴じ代部の本数を多くすることが好適である。線径や開口率にもよるが、単位幅当りの本数が前記本数より多くなると、基体シート層が剥離し易くなり、前記本数より少なくなると、網状シートの強度が低下する傾向にある。
さらにまた、熱融着糸の線径は開口率などに合わせて適宜変更して設定することができるが、該線径が50μm以上かつ200μm以下のものが好適に用い得る。ここで、開口率にもよるが、線径が50μm未満であると、強度が低くなり、200μmより大きいと、基体シート同士を熱融着し難く、熱融着しても剥離し易くなる。
11 網状シート層
12 基体シート層(矩形状基体シート層)
13 レーザー記録層
14 保護層
21 介装部
22 綴じ代部
41a,41b PA融着糸(熱融着糸)
42 液晶ポリマー糸
45 網目
Claims (5)
- 表裏に開口する網目を有する軟性の網状シート層と、
前記網状シート層を表裏から挟むように重ね合わされて、該網状シート層の網目を介して相互に熱融着される、該網状シート層よりも耐熱温度の低い合成樹脂からなる表裏一対の矩形状基体シート層と、
表裏の前記矩形状基体シート層の表面に夫々設けられ、レーザー光の照射により所望の情報を記録可能なレーザー記録層と、
前記レーザー記録層を覆うように、表裏の前記矩形状基体シート層の各表面上に夫々設けられる保護層と
を備え、
前記網状シート層は、重ね合わされる前記表裏の矩形状基体シート層の略全域に亘って介装される介装部と、該矩形状基体シート層の一側縁から外方に延出される帯状の綴じ代部とを備えてなるものであることを特徴とする冊子用情報記録シート。 - 網状シート層は、介装部における網目の開口率が、綴じ代部における網目の開口率に比して大きいものであることを特徴とする請求項1に記載の冊子用情報記録シート。
- 網状シート層は、綴じ代部を延出した側縁に沿った縦方向の縦糸と、該縦方向と略直交する方向の横糸とからなる織物であって、
介装部は、単位幅当りの前記縦糸の本数が、綴じ代部に比して少ないものであることを特徴とする請求項2に記載の冊子用情報記録シート。 - 網状シート層を構成する縦糸が熱融着糸であると共に、該網状シート層を構成する横糸が、所定割合で配した熱融着糸と液晶ポリマー糸とであることを特徴とする請求項3に記載に冊子用情報記録シート。
- 矩形状基体シート層が、PET−Gとポリカーボネートとを含む耐熱PET−Gからなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の冊子用情報記録シート。
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