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JP2020096253A - 多段増幅器 - Google Patents

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Abstract

【課題】2次相互変調歪あるいはその高調波による混変調を十分に低減することで出力信号の品質を向上させること。【解決手段】多段増幅器1は、2つの搬送波周波数f1,f2を含む信号を増幅するn段(nは2以上の自然数)の増幅器M1〜Mnが順次直列に接続された多段増幅器であって、第i段(iは、1≦i≦n−1を満たす自然数)の増幅器Miと第i+1段の増幅器Mi+1との間に挿入された抽出回路9を備え、抽出回路9は、第i段の増幅器Miの出力から、差分周波数(f2−f1)の整数倍の周波数成分IM2を抽出するフィルタ回路11と、互いに直列に接続された、周波数成分IM2の位相を調整する移送器13、及び周波数成分IM2の強度を調整する利得調整回路15と、を有し、抽出回路9の出力が、第i+1段の増幅器Mi+1の出力もしくは入力のいずれか一方と合波される。【選択図】図1

Description

本発明は、搬送波周波数を含む信号を増幅する多段増幅器に関するものである。
従来から、携帯電話システムを構成する基地局等の設備においては、複数の搬送波周波数を含むマルチキャリア信号を増幅する増幅器が用いられ、その増幅器には増幅器で発生する歪を補償する手段が備えられている。例えば、下記特許文献1には、増幅器の出力の歪成分を最小とする構成が開示されている。また、下記特許文献2には、増幅器の出力側に、マルチキャリア信号との変調積として発生する雑音のレベルを低減させるパッシブなフィルタ回路を付加した構成が開示されている。また、下記特許文献3には、増幅器の入力側に異なる次数の歪補償信号を出力する信号発生回路を複数設けた構成が開示されている。同様に、下記特許文献4には、増幅器の入力側に異なる歪補償信号を出力する信号発生回路を複数設け、これらの発生回路で奇数次の歪を発生させる構成が開示されている。
特開平1−302901号公報 特開2000−252765号公報 特開2008−48032号公報 特開2008−271289号公報
しかしながら、上述した従来の増幅器の構成においては、2次相互変調歪あるいはその高調波による混変調を十分に低減することができず出力信号の品質が低下する傾向にある。特に、マルチキャリア信号の帯域が広い場合には、比較的低次の高調波歪がその帯域に入り込んで出力信号の品質が低下する場合がある。
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、2次相互変調歪あるいはその高調波による混変調を十分に低減することで出力信号の品質を向上させることが可能な多段増幅器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一側面に係る多段増幅器は、少なくとも第1の搬送波周波数と第2の搬送波周波数を含む信号を増幅する第1〜第n段(nは2以上の自然数)の増幅器が順次直列に接続された多段増幅器であって、第i段(iは、1≦i≦n−1を満たす自然数)の増幅器と第i+1段の増幅器との間に挿入された抽出回路を備え、抽出回路は、第i段の増幅器の出力から、第1の搬送波周波数と第2の搬送波周波数との差分に相当する差分周波数の整数倍の周波数成分を抽出するフィルタ回路と、互いに直列に接続された、周波数成分の位相を調整する位相シフタ、及び周波数成分の強度を調整する調整回路と、を有し、抽出回路の出力が、第i+1段の増幅器の出力、もしくは第i+1段の増幅器の入力のいずれか一方と合波される。
本発明によれば、2次相互変調歪あるいはその高調波による混変調を十分に低減することで出力信号の品質を向上させることができる。
実施形態に係る多段増幅器1の概略構成を示すブロック図である。 図1の多段増幅器1における増幅器M〜Mの段間の接続構成及び入力側及び出力側の接続構成を示す回路図である。 歪補償手段を用いることなく多段増幅器で増幅されたマルチキャリア信号の周波数スペクトルを示したグラフである。 歪補償手段を用いることなく多段増幅器で増幅されたマルチキャリア信号の周波数スペクトルを示したグラフである。 歪補償手段を備えない多段増幅器で増幅されたマルチキャリア信号の周波数スペクトルの実際の波形を示す図である。 抽出回路9における信号の抽出のための回路構成の一例を示す図である。 図6の構成における信号伝送特性の計算例を示すグラフである。 抽出回路9における信号の合波のための回路構成の一例を示す図である。 図8の構成における信号伝送特性の計算例を示すグラフである。 抽出回路9における信号の合波のための回路構成の一例を示す図である。 図10の構成における信号伝送特性の計算例を示すグラフである。 変形例に係る多段増幅器1Aの概略構成を示すブロック図である。 抽出回路9における信号の合波のための回路構成の一例を示す図である。 図13の構成における信号伝送特性の計算例を示すグラフである。 抽出回路9における信号の合波のための回路構成の一例を示す図である。 図15の構成における信号伝送特性の計算例を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
[多段増幅器の構成]
図1は、実施形態に係る多段増幅器1の構成を示すブロック図である。多段増幅器1は、携帯電話システムを構成する基地局等の設備において複数の搬送波周波数を含むアナログ信号(マルチキャリア信号)を増幅するのに用いられる。例えば、多段増幅器1の処理対象とするマルチキャリア信号は、少なくとも第1の搬送波周波数fの信号と第2の搬送波周波数fの信号とを含む信号である。第1の搬送波周波数f及び第2の搬送波周波数fは特定の値には限定されないが、例えば、2GHz帯の周波数であるf=1810MHz、f=2160MHzである。
図1に示すように、多段増幅器1は、マルチキャリア信号が入力される入力端子PINと、増幅後のマルチキャリア信号を出力する出力端子POUTと、入力端子PINと出力端子POUTとの間で順次直列に接続された第1〜第n段(nは2以上の自然数)の増幅器M,M,…Mn−1,Mとを含んで構成されている。増幅器Mは、入力端子PINから入力されたマルチキャリア信号を増幅して増幅したマルチキャリア信号を後段の増幅器Mに対して出力する。増幅器M,…Mn−1は、それぞれ、前段の増幅器M,…Mn−2から入力されたマルチキャリア信号を更に増幅し、増幅したマルチキャリア信号を後段の増幅器M,…Mに向けて出力する。最終段の増幅器Mは、前段の増幅器Mn−1から入力されたマルチキャリア信号を更に増幅し、増幅したマルチキャリア信号を出力端子POUTを介して外部に出力する。このような多段構成により、多段増幅器1は、高い増幅率で効率的にマルチキャリア信号を増幅することができる。
図2には、多段増幅器1における増幅器M〜Mの段間の接続構成及び入力側及び出力側の接続構成を示している。各増幅器M〜Mの出力には、インダクタL1及びキャパシタC1のペアによって構成される直流バイアス供給回路3が接続される。それぞれのペアにおいて、インダクタL1及びキャパシタC1の一端にバイアス電圧Vが印加され、インダクタL1の他端がそれぞれの増幅器M〜Mの出力に接続され、キャパシタC1の他端は接地される。この直流バイアス供給回路3は、それぞれの増幅器M〜Mに対して、直流バイアスを供給する。入力端子PINと初段の増幅器Mの入力との間には、キャパシタC2及びインダクタL2によって構成される入力整合回路5が接続され、最終段の増幅器Mと出力端子POUTとの間には、キャパシタC3,C4及びインダクタL3によって構成される出力整合回路7が接続される。入力整合回路5において、キャパシタC2の一端に入力端子PINが接続され、キャパシタC2の他端及びインダクタL2の一端が初段の増幅器Mの入力に接続され、インダクタL2の他端が接地される。出力整合回路7において、キャパシタC3の一端及びインダクタL3の一端が最終段の増幅器Mの出力に接続され、インダクタL3の他端及びキャパシタC4の一端が出力端子POUTに接続され、キャパシタC3,C4の他端が接地される。
図1に戻って、多段増幅器1は、第n−1段の増幅器Mn−1の出力と最終段の増幅器Mの出力との間に挿入された抽出回路9をさらに含んで構成される。抽出回路9は、フィルタ回路11、移送器(位相シフタ)13、及び利得調整回路15がこの順で直列に接続されて構成される。フィルタ回路11は、その入力が第n−1段の増幅器Mn−1の出力と最終段の増幅器Mとの間の伝送路に分岐して接続され、第n−1段の増幅器Mn−1から出力されたマルチキャリア信号から、第1の搬送波周波数f及び第2の搬送波周波数fの基本波成分を除去して、第1の搬送波周波数f及び第2の搬送波周波数fの差分に相当する差分周波数(f−f)の周波数成分を抽出する。このフィルタ回路11は、例えば、差分周波数(f−f)の周波数成分を抽出するローパスフィルタである。移送器13は、フィルタ回路11から出力された差分周波数(f−f)の周波数成分の信号の位相を調整する。利得調整回路15は、可変利得増幅器あるいは可変減衰器によって構成され、その入力が移送器13の出力と接続され、その出力が最終段の増幅器Mの出力と合波される。利得調整回路15は、移送器13から出力された差分周波数(f−f)の周波数成分の信号の振幅(強度)を調整し、調整後の信号を出力する。
上記構成の抽出回路9は、位相および振幅を調整して、最終段の増幅器Mの出力における差分周波数(f−f)の成分を最小とする。すなわち、移送器13が位相を調整し、及び利得調整回路15が振幅を調整し、差分周波数(f−f)の周波数成分を最小とする。このように構成されることにより、多段増幅器1の出力における差分周波数(f−f)の周波数成分による混変調のみならず、その高調波による混変調、それらに起因した相互変調歪による混変調も防止できる。
ここで、第1の搬送波周波数fの信号と第2の搬送波周波数fの信号とを含むマルチキャリア信号を、歪補償手段を用いることなく多段増幅器で増幅した場合に生じる混変調の概要について示した後に、本実施形態の多段増幅器1の作用効果について説明する。
図3及び図4には、歪補償手段を用いることなく多段増幅器で増幅されたマルチキャリア信号の周波数スペクトルのイメージを示している。図3に示すように、マルチキャリア信号を多段増幅器に入力すると、その出力には周波数f、f以外にも相互変調によって生じる周波数±k・f±k・f(k,kは自然数)の信号も現れる。k+kは相互変調(IM:intermodulation)の次数である。また、図4に示すように、多段増幅器の出力には、図3に示す相互変調歪だけでなく、周波数f、fの基本波あるいは相互変調歪の整数倍の周波数成分を有する高調波歪が発生する。
図5には、歪補償手段を備えない多段増幅器で増幅されたマルチキャリア信号の周波数スペクトルの実際の波形を示している。ここでは、第1の搬送波周波数f=1810MHz、第2の搬送波周波数f=2160MHzの成分を含むマルチキャリア信号を処理対象とした。このように、増幅後の出力信号には以下の周波数成分が含まれることが分かる。
・基本波の周波数成分f、f
・3次相互変調歪の周波数成分IM3_low:2f−f
・3次相互変調歪の周波数成分IM3_high:2f−f
・5次相互変調歪の周波数成分IM5_low:3f−2f
・5次相互変調歪の周波数成分IM5_high:3f−2f
・7次相互変調歪の周波数成分IM7_low:4f−3f
・7次相互変調歪の周波数成分IM7_high:4f−3f
・2次相補変調歪の周波数成分IM2:f−f
・周波数成分IM2の2次高調波、2次相互変調歪、及びその他の相互変調歪の周波数成分:2×(f−f)
・周波数成分IM2の3次高調波、2次相互変調歪、及びその他の相互変調歪の周波数成分:3×(f−f)
・周波数成分IM2の4次高調波、2次相互変調歪、及びその他の相互変調歪の周波数成分:4×(f−f)
・周波数成分IM2の5次高調波、2次相互変調歪、及びその他の相互変調歪の周波数成分:5×(f−f)
・周波数成分IM2の6次高調波、2次相互変調歪、及びその他の相互変調歪の周波数成分:6×(f−f)
・周波数成分IM2の7次高調波、2次相互変調歪、及びその他の相互変調歪の周波数成分:7×(f−f)
・基本波の2次高調波の周波数成分:2×f、2×f
このような出力信号においては、有意な信号の帯域は2GHzを中心とした640MHzの幅の帯域であるため、信号品質に影響を与える歪として次の歪の成分(A1)〜(A4)が問題となる。
(A1)周波数成分IM2の5次高調波、2次相互変調歪、及びその他の相互変調歪の周波数成分:5×(f−f)、
(A2)周波数成分IM2の6次高調波、2次相互変調歪、及びその他の相互変調歪の周波数成分:6×(f−f)、
(A3)周波数成分fと周波数成分5×(f−f)との間の3次相互変調歪の周波数成分IM3(5×(f−f)&f
(A4)周波数成分fと周波数成分6×(f−f)との間の3次相互変調歪の周波数成分IM3(6×(f−f)&f
このように、2つの搬送波周波数を含むマルチキャリア信号を増幅対象とする場合には、2次相互変調歪の周波数成分IM2の周波数が高くなり、比較的小さな次数の高調波が帯域に入り込んでしまう。また、その周波数成分IM2の整数倍の高調波が基本波との間に3次相互変調歪を発生させ、そのひずみが帯域に入り込んでしまう。その結果、マルチキャリア信号の品質の規格を満たさなくなるという事態も生じうる。
このような歪成分を補償するために従来のデジタル歪補償システム(DPD:Digital Pre-Distortion)を用いることも考えられるが、このシステムによっては、歪の周波数がシステムでカバー可能な周波数帯域内に存在していなければ補償が不可能となり、マルチキャリア信号の歪補償が困難となる。例えば、上記(A1)の場合、相互変調歪の発生源となる周波数5f、5fを受信するために2GHzの5倍の10GHzの帯域が必要となる。また、周波数成分IM2の5次高調波を補償する場合でも、発生源となる周波数f−f=2160MHz−1810MHz=350MHzを受信する必要があり、この場合も2GHz近くの帯域2000−350MHzが必要で、基地局等の通信機システムのDPDの帯域としては実現不可能である。DPDとしては、2GHz(2つの搬送波の中心周波数)に対して、350MHz小さい周波数成分まで処理する必要がある。すなわち、DPDは、増幅器を構成するFETへの入力信号に対して歪を与える必要があり、結果として広い帯域での動作が必要となってしまう。
一方、本実施形態の多段増幅器1によれば、抽出回路9によって第1の搬送波周波数fと第2の搬送波周波数fとの差分に相当する差分周波数(f−f)の周波数成分IM2が、n−1段の増幅器Mn−1の出力から抽出され、その周波数成分が、位相および強度が調整された後に最終段の増幅器Mの出力に合波される。これにより、最終段の出力において、2つの基本波の成分に基づいた2次相互変調歪あるいはその高調波による混変調を十分に低減することができ、結果として、出力信号における品質を向上させることができる。具体的には、2次相互変調歪の周波数成分IM2を低減できる結果、周波数成分IM2を基にした高調波及び相互変調歪も低減できるので、出力信号における上述した歪成分(A1)〜(A4)を効率よく低減することができる。特に、多段増幅器1においては、移送器13及び利得調整回路15が出力信号に含まれる周波数成分IM2を最小に設定するので、2次相互変調歪あるいはその高調波による混変調を確実に低減することができ、出力信号における品質を十分に向上させることができる。
歪を補償するための構成としては、特開2000−252765号公報に記載のように、受動的なフィルタ回路を用いて歪を減衰させる構成も考えられる。このような構成では、増幅器デバイスの外側にフィルタ回路を付加する必要があり、その回路の途中に抵抗成分が発生し、フィルタ回路自体にも寄生抵抗が存在するために、2次相互変調歪の成分を減衰させると基本波の成分(搬送波周波数の成分)も減衰してしまう場合がある。本実施形態では、第n−1段の増幅器Mn−1の出力を分岐させて処理し、処理後の信号を最終段の増幅器Mの出力に合波しているので、そのような恐れもない。
また、別の構成として、歪をキャンセルさせるために、増幅デバイスの端部でデバイスが発生させると予測される周波数成分IM2の高調波と同振幅かつ逆位相となるような信号を回路に注入させるような構成も考えられる。この場合は、新たな信号源が必要になり、信号源の発生した信号を増幅器の生成する信号と同期させる必要もあり構成が複雑となる。本実施形態では、そのような信号源は不要であり、同期させるための機構も不要であり、簡易な構成によって実現され小型化も容易となる。
次に、多段増幅器1の抽出回路9におけるマルチキャリア信号からの周波数成分IM2の抽出及び合波のための回路構成の一例を示す。
図6は、抽出回路9における信号の抽出のための構成の一例を示している。抽出回路9は、第n−1段目の増幅器Mn−1の出力と最終段の増幅器Mの入力との間に形成された伝送路TPの途中から分岐して接続されたインダクタL及びキャパシタCの直列回路を経由して、ポートPort1から信号を抽出する構成を有する。この直列回路は、第n−1段目の増幅器Mn−1の出力から周波数成分IM2を抽出するバンドパスフィルタであり、フィルタ回路11の一例である。この直列回路は、周波数成分IM2は通過させるが基本波成分f,fを遮断し、伝送路TPにおける搬送波周波数f,fでの伝送特性に影響を及ぼさない。
図7には、図6の構成における信号伝送特性の計算例を示し、伝送特性Aは、第n−1段目の増幅器Mn−1の出力から最終段の増幅器Mの入力までの特性を示し、伝送特性Bは、第n−1段目の増幅器Mn−1の出力からポートPort1までの特性を示す。ここでは、インダクタLのインダクタンス39nH、キャパシタCのキャパシタンス4.7pFに設計されている。このように、伝送特性Aにおいては、搬送波周波数の付近の2GHzを含む帯域で損失が約0.1dBで十分に低減され、伝送特性Bにおいては、周波数成分IM2の周波数350MHzでの損失が最も小さくされる一方で、搬送波の周波数2GHzの付近では損失が十分大きくされている。
図8は、抽出回路9における周波数成分IM2の信号の合波のための構成の一例を示している。抽出回路9は、最終段の増幅器Mの出力と出力端子POUTとの間に形成された伝送路の途中から分岐して形成されたバイアス電圧印加用の伝送路を経由して周波数成分IM2の信号を合波する構成を有する。すなわち、最終段の増幅器Mの出力と出力端子POUTとの間には、2つの伝送路TP,TPが直線状に形成され、2つの伝送路TP,TPは直流遮断用のキャパシタC14によって連結されている。また、伝送路TPと接地パターンGNDとの間には、3つの出力整合回路用のキャパシタC11,C12,C13が接続され、伝送路TPの途中からバイアス電圧印加用のポートPort2までの間には伝送路TPが分岐して形成され、伝送路TPと接地パターンGNDとの間には、バイパスコンデンサC15,C16,C17,C18が接続されている。このポートPort2及び伝送路TPが、周波数成分IM2の信号の合波のための回路としても共用される。この回路において、伝送路TPの分岐点からバイパスコンデンサC15までの伝送路長l及びバイパスコンデンサC15,C16,C17,C18のキャパシタンスを、増幅器Mの出力とポートPort2との間の伝送特性が、周波数成分IM2は通過させるが基本波成分f,fは遮断し、伝送路TPにおける搬送波周波数f,fでの伝送特性に影響を及ぼさない値にそれぞれ設定する。
図9には、図8の構成における信号伝送特性の計算例を示し、伝送特性Cは、最終段の増幅器Mの出力から出力端子POUTまでの特性を示し、伝送特性Dは、最終段の増幅器Mの出力からポートPort2までの特性を示す。このように、伝送特性Cにおいては、搬送波周波数の付近の2GHzを含む帯域で損失が約0.3dBで十分に低減され、伝送特性Dにおいては、周波数成分IM2の周波数350MHzでの損失が最も小さくされる一方で、搬送波の周波数2GHzの付近では、損失を十分大きくして搬送波周波数の成分をバイアス印加用の回路に流れ込ませない。
図10は、抽出回路9における周波数成分IM2の信号の合波のための他の構成を示している。図10に示す構成においては、信号合波のための回路がバイアス印加用の回路と別に設けられている。すなわち、伝送路TPの途中から信号合波用のポートPort3までの間にはインダクタL及びキャパシタCによって構成される直列回路が分岐して接続されている。この直列回路は、ポートPort3から伝送路TPに向けて周波数成分IM2の信号を通過させるバンドパスフィルタである。この直列回路では、インダクタLのインダクタンス及びキャパシタCのキャパシタンスが、周波数成分IM2は通過するが基本波成分f,fは遮断し、伝送路TPにおける搬送波周波数f,fでの伝送特性に影響を及ぼさない値に設定される。
図11には、図10の構成における信号伝送特性の計算例を示し、伝送特性Eは、最終段の増幅器Mの出力から出力端子POUTまでの特性を示し、伝送特性Fは、最終段の増幅器Mの出力からポートPort3までの特性を示す。ここでは、インダクタLのインダクタンス15nH、キャパシタCのキャパシタンス12pFに設計されている。このように、伝送特性Eにおいては、搬送波周波数の付近の2GHzを含む帯域で損失が約0.4dBで十分に低減され、伝送特性Fにおいては、周波数成分IM2の周波数350MHzでの損失が最も小さくされる一方で、搬送波の周波数2GHzの付近では、十分大きな損失を与え、搬送波周波数の成分を信号合波用の回路に流れ込ませない。
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
上記実施形態では、周波数成分IM2の信号を最終段の増幅器Mの出力に合波しているが、図12に示す変形例に係る多段増幅器1Aのように、周波数成分IM2の信号を最終段の増幅器Mの入力に合波させてもよい。詳細には、多段増幅器1Aにおいては、抽出回路9の出力が最終段の増幅器Mの入力に接続され、抽出回路9の出力が最終段の増幅器Mnの入力に合波される。
図13は、多段増幅器1Aが備える抽出回路9における周波数成分IM2の信号の合波のための構成の一例を示している。抽出回路9は、第n−1段の増幅器Mn−1の出力と最終段の増幅器Mの入力との間に形成された伝送路の途中から分岐して形成されたバイアス電圧印加用の伝送路を経由して周波数成分IM2の信号を合波する構成を有する。すなわち、第n−1段の増幅器Mn−1の出力に繋がるポートPort4と最終段の増幅器Mの入力との間には、3つの伝送路TP,TP,TPが直線状に形成され、伝送路TP,TPはハイパスフィルタを構成する抵抗素子R1及びキャパシタC21によって連結され、伝送路TP,TPは直流遮断用のキャパシタC22によって連結されている。また、伝送路TPと接地パターンGNDとの間には、2つの整合用のキャパシタC23,C24が接続され、伝送路TPの途中からバイアス電圧印加用のポートPort5までの間には伝送路TPが分岐して形成され、伝送路TPと接地パターンGNDとの間には、バイパスコンデンサC25,C26,C27,C28が接続されている。このポートPort5及び伝送路TPが、周波数成分IM2の信号の合波のための回路としても共用される。この回路において、増幅器Mの入力とポートPort5との伝送特性は、伝送路TPの分岐点からバイパスコンデンサC25までの伝送路長l及びバイパスコンデンサC25,C26,C27,C28のキャパシタンスにより、周波数成分IM2を通過させ基本波成分f,fを遮断し、伝送路TPにおける搬送波周波数f,fでの伝送特性に影響を及ぼさない。
図14には、図13の構成における信号伝送特性の計算例を示し、伝送特性Gは、最終段の増幅器Mの入力とポートPort4との間の特性を示し、伝送特性Hは、最終段の増幅器Mの入力とポートPort5との間の特性を示す。このように、伝送特性Gにおいては、搬送波周波数の付近の2GHzを含む帯域で損失が約0.2dBで十分に低減され、伝送特性Hにおいては、周波数成分IM2の周波数350MHzでの損失が最も小さくされる一方で、搬送波の周波数2GHzの付近では、損失を十分大きくして搬送波周波数の成分をバイアス印加用の回路に流れ込ませない。
図15は、多段増幅器1Aが備える抽出回路9における周波数成分IM2の信号の合波のための他の構成を示している。図15に示す構成においては、信号合波のための回路がバイアス印加用の回路と別に設けられている。すなわち、伝送路TPの途中から信号合波用のポートPort6までの間にはインダクタL及びキャパシタCによって構成される直列回路が分岐して接続されている。この直列回路は、ポートPort6から伝送路TPに向けて周波数成分IM2の信号を通過させるバンドパスフィルタである。この直列回路は、インダクタLのインダクタンス及びキャパシタCのキャパシタンスにより、周波数成分IM2を通過させ基本波成分f,fを遮断し、伝送路TPにおける搬送波周波数f,fでの伝送特性に影響を及ぼさない。
図16には、図15の構成における信号伝送特性の計算例を示し、伝送特性Iは、最終段の増幅器Mの入力とポートPort4との間の特性を示し、伝送特性Jは、最終段の増幅器Mの入力とポートPort6との間の特性を示す。ここでは、インダクタLのインダクタンス39nH、キャパシタCのキャパシタンス4.7pFに設計されている。このように、伝送特性Iにおいては、搬送波周波数の付近の2GHzを含む帯域で損失が約0.4dBで十分に低減され、伝送特性Jにおいては、周波数成分IM2の周波数350MHzでの損失が最も小さくされる一方で、搬送波の周波数2GHzの付近では、損失を十分大きくして搬送波周波数の成分を信号合波用の回路に流れ込ませない。
上述した多段増幅器1,1Aにおいては、第n−1段の増幅器Mn−1の出力と、最終段の増幅器Mの入力あるいは出力の間に抽出回路9が配置される構成には限定されず、第i段(iは、i≦i≦n−1を満たす自然数)の増幅器Mの出力と、第i+1段の増幅器Mi+1の入力あるいは出力の間に抽出回路9が配置されていてもよい。このような構成においても、第i+1段の出力において、2つの基本波の成分に基づいた2次相互変調歪あるいはその高調波による混変調を十分に低減することができ、結果として、最終段の出力信号における品質を向上させることができる。
また、抽出回路9のフィルタ回路11は、マルチキャリア信号から第1の搬送波周波数f及び第2の搬送波周波数fの差分に相当する差分周波数(f−f)の周波数成分IM2を抽出していたが、差分周波数(f−f)のm倍(2≦m≦5を満たす整数)の周波数成分を抽出してもよい。この場合でも、2次相互変調歪の高調波による混変調を十分に低減することができ、出力信号における品質を向上させることができる。この構成においては、移送器13における位相調整、及び利得調整回路15における振幅調整により、最終段の出力信号における差分周波数(f−f)の5倍の周波数成分を最小とする。これにより、抽出回路9によって注入された周波数成分IM2のm倍の歪成分と、周波数成分IM2の(5−m)次高調波との相互変調歪を発生させて、周波数成分IM2の5次高調波のキャンセルが可能となり、信号品質に影響を与える上述の歪成分(A1),(A3)を効率よく低減することができ、出力信号における品質を十分に向上させることができる。
特に、抽出回路9のフィルタ回路11は、マルチキャリア信号から差分周波数(f−f)の5倍の周波数成分を抽出し、移送器13における位相調整、及び利得調整回路15における振幅調整により、最終段の出力信号における差分周波数(f−f)の5倍の周波数成分を最小に設定されることが好適である。この場合、信号品質に影響を与える上述の歪成分(A1),(A3)を効率よく低減することができ、出力信号における品質を十分に向上させることができる。
,M,…,M…増幅器、PIN…入力端子、POUT…出力端子、1,1A…多段増幅器、9…抽出回路、11…フィルタ回路、13…移送器(位相シフタ)、15…利得調整回路。

Claims (7)

  1. 少なくとも第1の搬送波周波数と第2の搬送波周波数を含む信号を増幅する第1〜第n段(nは2以上の自然数)の増幅器が順次直列に接続された多段増幅器であって、
    第i段(iは、1≦i≦n−1を満たす自然数)の増幅器と第i+1段の増幅器との間に挿入された抽出回路を備え、
    前記抽出回路は、
    前記第i段の増幅器の出力から、前記第1の搬送波周波数と前記第2の搬送波周波数との差分に相当する差分周波数の整数倍の周波数成分を抽出するフィルタ回路と、
    互いに直列に接続された、前記周波数成分の位相を調整する位相シフタ、及び前記周波数成分の強度を調整する調整回路と、
    を有し、
    前記抽出回路の出力が、前記第i+1段の増幅器の出力、もしくは前記第i+1段の増幅器の入力のいずれか一方と合波される、
    多段増幅器。
  2. 前記位相シフタ及び前記調整回路は、前記多段増幅器の出力に含まれる前記差分周波数の整数倍の周波数成分を最小にする、
    請求項1記載の多段増幅器。
  3. 前記フィルタ回路は、前記差分周波数の1倍の周波数成分を抽出する、
    請求項1又は2記載の多段増幅器。
  4. 前記フィルタ回路は、前記差分周波数の5倍の周波数成分を抽出する、
    請求項1又は2記載の多段増幅器。
  5. 前記抽出回路の出力を前記第i+1段の増幅器の出力に合波する、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の多段増幅器。
  6. 前記抽出回路の出力を前記第i+1段の増幅器の入力に合波する、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の多段増幅器。
  7. 前記第i+1段の増幅器は第n段の増幅器であり、前記i段の増幅器は第n−1段の増幅器である、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の多段増幅器。
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