以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
[1.樹脂組成物の概要]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)比表面積が15m2/g以上の無機充填材、(D)下記式(1)で表される化合物、及び、(E)ホスファゼン化合物を含む。
(X−Ra)sSi(ORb)t (1)
(式(1)において、
Xは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアミノ基を表し、Raは、置換基を有していてもよい炭素原子数4以上の2価の脂肪族炭化水素基を表し、Rbは、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素原子数1〜3の1価の脂肪族炭化水素基を表し、s及びtは、1≦s≦3、1≦t≦3、且つ、s+t=4を満たす整数を表す。)
この樹脂組成物を用いることにより、絶縁性に優れ且つハローイング現象を抑制できる薄い絶縁層を得ることができる。
[2.(A)成分:エポキシ樹脂]
(A)成分としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることで、樹脂組成物の可撓性を向上させたり、樹脂組成物の硬化物の破断強度を向上させたりできる。
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系の液状エポキシ樹脂がより好ましい。ここで、「芳香族系」のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びシクロヘキサン型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びビスフェノールAF型エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200HH」、「HP−7200H」、「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」及び「YX7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:1〜1:20、より好ましくは1:2〜1:15、特に好ましくは1:5〜1:13である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にある場合、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得ることができる。また、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性及び十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.〜5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.〜3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.〜2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.〜1000g/eq.である。エポキシ当量がこの範囲にある場合、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。具体的には、重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の量は、良好な機械強度及び絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
[3.(B)成分:硬化剤]
樹脂組成物は、(B)硬化剤を含む。(B)硬化剤は、通常、(A)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。
(B)成分としての硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが挙げられる。また、(B)硬化剤は1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000」、「HPC−8000H」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L」、「EXB−8000L−65TM」、「EXB−8150−65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「EXB9416−70BK」、「EXB−8150−65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN−495V」「SN375」、「SN−395」;DIC社製の「TD−2090」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018−50P」、「EXB−9500」;等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ−OP100D」、「ODA−BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL−950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられる。中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C−200S」、「KAYABOND C−100」、「カヤハードA−A」、「カヤハードA−B」、「カヤハードA−S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA−100」、「MH−700」等が挙げられる。
上述した中でも、(B)硬化剤としては、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤が好ましく、活性エステル系硬化剤及びフェノール系硬化剤が更に好ましく、活性エステル系硬化剤が特に好ましい。活性エステル系硬化剤を用いる場合、(B)硬化剤100質量%に対する活性エステル系硬化剤の含有率は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、さらに好ましくは94質量%以下である。
樹脂組成物における(B)硬化剤の量は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(B)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1以下である。ここで、「(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(B)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合の(B)硬化剤の活性基数が前記範囲にあることにより、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得ることができ、更に通常は、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
[4.(C)成分:無機充填材]
樹脂組成物は、(C)成分として、比表面積が15m2/g以上の無機充填材を含む。この(C)無機充填材を含む樹脂組成物の硬化物により、絶縁性に優れ、且つ、ハローイング現象を抑制できる薄い絶縁層を得ることができる。また、通常は、(C)無機充填材によって樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数を小さくできるので、リフロー反りを抑制できる。
(C)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)無機充填材の比表面積は、通常15m2/g以上、好ましくは20m2/g以上、特に好ましくは30m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製「Macsorb HM−1210」)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することで得ることができる。(C)無機充填材の比表面積は、(D)成分等の表面処理剤による表面処理によって変化する場合がありうる。その場合、前記の(C)無機充填材の比表面積の範囲は、通常、表面処理をされていない状態での(C)無機充填材の比表面積の範囲を表す。一般に、適切な温度で焼成することによって表面処理剤は(C)無機充填材から除去できる。よって、表面処理された(C)無機充填材を試料として入手した場合には、通常、その(C)無機充填材を焼成した後に比表面積を測定することにより、表面処理をされていない状態での(C)無機充填材の比表面積を測定できる。
また、表面処理によって(C)無機充填材の比表面積が変化する場合でも、通常は、その変化は小さい。よって、表面処理された(C)無機充填材の比表面積は、上述した表面処理をされていない状態での(C)無機充填材の比表面積の範囲に収まりうる。
上述した範囲の比表面積を有する(C)無機充填材を用いることにより、絶縁性に優れ、且つ、ハローイング現象を抑制できる薄い絶縁層を得ることができる。また、上述した範囲の比表面積を有する(C)無機充填材を用いた場合、通常は、絶縁層を薄くすることができる。さらに、通常は、ビアホールの形状のコントロールを容易にして、良好な形状のビアホールを形成することができる。
前記のように大きい比表面積を有する(C)無機充填材としては、例えば、電気化学工業社製「UFP−30」、「UFP−40」等が挙げられる。
(C)無機充填材の平均粒径は、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは0.8μm以下、特に好ましくは0.4μm以下である。このように平均粒径が小さい(C)無機充填材を用いることにより、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得ることができる。更に、通常は、絶縁層を薄くしたり、良好な形状のビアホールを形成したりできる。該平均粒径の下限は、特に限定されないが、好ましくは50nm以上、60nm以上、又は、70nm以上である。
(C)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定できる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定できる。測定サンプルは、無機充填材を超音波によりメチルエチルケトン中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA−960」を使用できる。このレーザー回折散乱式粒径分布測定装置を使用する場合、使用光源波長を青色および赤色とし、フローセル方式で測定することが可能である。
樹脂組成物における(C)無機充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、中でも好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上である。(C)無機充填材の量が前記の範囲にある場合、絶縁層の絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得ることができる。また、通常は、絶縁層の誘誘電正接を低くしたり、絶縁層の熱膨張係数を小さくしたりできる。(C)無機充填材の量の上限は、絶縁層の機械強度を高める観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。
[5.(D)成分:式(1)で表される化合物]
樹脂組成物は、(D)成分として、式(1)で表される化合物を含む。この(D)成分を含む樹脂組成物の硬化物により、絶縁性に優れ、且つ、ハローイング現象を抑制できる薄い絶縁層を得ることができる。
(X−Ra)sSi(ORb)t (1)
式(1)において、Xは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアミノ基を表す。アミノ基が有する置換基の数は、任意であり、1個でもよく、2個でもよい。よって、Xは、水素原子が置換されていない無置換のアミノ基であってもよく、アミノ基の水素原子1つが置換された1級アミノ基であってもよく、アミノ基の水素原子2つが置換された2級アミノ基であってもよい。また、2級アミノ基が有する置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、絶縁層の絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、Xは、アミノ基の水素原子1つが置換された1級アミノ基であることが好ましい。
Xに含まれうる置換基としては、炭化水素基が好ましい。炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられ、芳香族炭化水素基が好ましい。中でも、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。また、前記の炭化水素基の水素原子は、二次置換基で置換されていてもよい。二次置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基、などが挙げられる。中でも、前記の炭化水素基は、二次置換基を有さない無置換の炭化水素基が好ましい。Xに含まれうる置換基の炭素原子数は、好ましくは1以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは14以下、より好ましくは10以下である。このような置換基を用いることにより、絶縁層の絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得ることができる。
式(1)におけるXの好ましい例としては、例えば、1級アルキルアミノ基、2級アルキルアミノ基、および3級アルキルアミノ基等のアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基等のアリールアミノ基等が挙げられる。中でも、Xとしては、アリールアミノ基が好ましく、フェニルアミノ基が特に好ましい。
式(1)で表される化合物が1分子中にXを複数含む場合、それらのXは、同じでもよく、異なっていてもよい。
式(1)において、Raは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数4以上の2価の脂肪族炭化水素基を表す。2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、通常4以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、特に好ましくは7以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、特に好ましくは12以下である。中でも、2価の脂肪族炭化水素に含有される炭素鎖のうち、式(1)に表示されたSi原子とXのアミノ基のN原子とを連結する炭素鎖(以下、「主鎖」ということがある。)の炭素原子数が、前記の範囲に収まることが好ましい。このような範囲の炭素原子数を有する2価の脂肪族炭化水素基をRaが有する場合に、絶縁性に優れ、且つ、ハローイング現象を抑制できる薄い絶縁層を得ることができる。
2価の脂肪族炭化水素基は、環状構造を有していてもよく、鎖状構造を有していてもよい。また、2価の脂肪族炭化水素基は、アルキレン基等の飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、アルケニレン基及びアルキニレン基等の不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。中でも、2価の脂肪族炭化水素基は、鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基が特に好ましい。
アルキレン基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、中でも直鎖状のアルキレン基が好ましい。アルキレン基の好ましい例を挙げると、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。
アルケニレン基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、中でも直鎖状のアルケニレン基が好ましい。アルケニレン基の好ましい例を挙げると、例えば、ブテニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、ノネニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセニレン基等が挙げられる。
アルキニレン基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、中でも直鎖状のアルキニレン基が好ましい。アルキニレン基の好ましい例を挙げると、例えば、ブチニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、及びオクチニレン基が挙げられる。
Raの2価の脂肪族炭化水素基が有しうる置換基としては、例えば、Xが含みうる二次置換基と同じ例が挙げられる。ただし、絶縁層の絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、Raは、置換基を有さない無置換の2価の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
式(1)で表される化合物が1分子中にRaを複数含む場合、それらのRaは、同じでもよく、異なっていてもよい。
式(1)において、Rbは、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素原子数1〜3の1価の脂肪族炭化水素基を表す。Rbにおける1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基等の1価の飽和脂肪族炭化水素基などが挙げられる。また、前記の脂肪族炭化水素基は、環状構造を有していてもよく、鎖状構造を有していてもよい。さらに、脂肪族炭化水素基が鎖状構造を有する場合、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。Rbの炭素原子数は、通常1〜3であり、好ましくは1〜2、より好ましくは1である。1価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基が挙げられる。
式(1)で表される化合物が1分子中に基Rbを複数含む場合、それらのRbは、同じでもよく、異なっていてもよい。
式(1)において、s及びtは、1≦s≦3、1≦t≦3、且つ、s+t=4を満たす整数を表す。中でも、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、sは1〜2が好ましく、tは2〜3が好ましい。
式(1)で表される化合物の例としては、8−アミノオクチル−トリメトキシシラン、8−アミノオクチル−トリエトキシシラン等の、無置換のアミノトリアルコシシシラン;N−フェニル−4−アミノブチル−トリメトキシシラン、N−フェニル−5−アミノペンチル−トリメトキシシラン、N−フェニル−6−アミノヘキシル−トリメトキシシラン、N−フェニル−7−アミノヘプチル−トリメトキシシラン、N−フェニル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン、N−フェニル−9−アミノノニル−トリメトキシシラン、N−フェニル−10−アミノデシル−トリメトキシシラン、N−フェニル−8−アミノオクチル−トリエトキシシラン、N−ナフチル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン等の、N−アリールアミノトリアルコキシシラン;N,N−ジフェニル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン、N,N−ジフェニル−8−アミノオクチル−トリエトキシシラン等の、N,N−ジアリールアミノトリアルコキシシラン;などが挙げられる。中でも、N−アリールアミノトリアルコキシシランが好ましく、N−アリール−8−アミノオクチル−トリアルコキシシランが特に好ましい。
(D)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組合わせて用いてもよい。
(D)成分の分子量は、好ましくは193以上、より好ましくは270以上、特に好ましくは300以上であり、好ましくは550以下、より好ましくは500以下、より好ましくは450以下である。(D)成分の分子量が前記範囲にある場合、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物において、(D)成分は、(C)成分としての無機充填材から離れて樹脂成分中に遊離していてもよい。ここで、樹脂組成物の樹脂成分とは、樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、無機充填材を除いた成分をいう。ただし、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、(D)成分は、(C)無機充填材の表面にあることが好ましい。よって、(C)無機充填材は、(D)成分によって表面処理されていることが好ましい。また、(C)無機充填材の表面に(D)成分がある場合、(D)成分が表面処理剤として機能することによって、通常は、絶縁層の耐湿性及び分散性を高めることができる。
樹脂組成物における(D)成分の量は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
樹脂組成物における(D)成分の量は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、(C)無機充填材100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、特に好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。(C)無機充填材が前記の量の(D)成分で表面処理されていると、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得ることができる。
また、(C)無機充填材が(D)成分によって表面処理されている場合、(D)成分による表面処理の程度は、(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましく、また、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。さらに、カーボン量が前記範囲の下限値以上である場合、通常は、(C)無機充填材の分散性を向上させることができ、また、前記範囲の上限値以下である場合、通常は、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制することができる。
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA−320V」等を使用することができる。
(C)無機充填材の表面積1m2当たりの(D)成分の量は、好ましくは0.05mg以上、より好ましくは0.1mg以上、特に好ましくは0.5mg以上であり、好ましくは500mg以下、より好ましくは100mg以下、特に好ましくは10mg以下である。(C)無機充填材の表面積は、(C)無機充填材の比表面積と(C)無機充填材の質量との積として求められる。(C)無機充填材の表面積1m2当たりの(D)成分の量が前記範囲にある場合、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得ることができる。
[6.(E)成分:ホスファゼン化合物]
樹脂組成物は、(E)成分として、ホスファゼン化合物を含む。この(E)ホスファゼン化合物を含む樹脂組成物の硬化物により、絶縁性に優れ、且つ、ハローイング現象を抑制できる薄い絶縁層を得ることができる。
(E)ホスファゼン化合物とは、−P=N−で表される構造単位を含む化合物をいう。ホスファゼン化合物としては、例えば、−P=N−で表される構造単位からなる環状構造を有するシクロホスファゼン化合物、−P=N−で表される構造単位からなる鎖状構造を有するポリホスファゼン化合物等が挙げられる。(E)ホスファゼン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
中でも、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、(E)ホスファゼン化合物としては、−P=N−で表される構造単位からなる環状構造を有するシクロホスファゼン化合物が好ましい。さらには、(E)ホスファゼン化合物としては、下記式(2)で表されるホスファゼン化合物が、特に好ましい。
(式(2)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基を示し、nは、1〜23の整数を示す。)
式(2)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基を示す。好ましくは、R1及びR2は、それぞれ独立して、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、及び−X1−R3(X1は、単結合、−(アルキレン基)−、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NHCO−、−CONH−、−OCO−、又は−COO−を示し、R3は、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表される基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基を示す。
(E)ホスファゼン化合物は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂又は(B)硬化剤と反応できる官能基を含まないことが好ましい。このような官能基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。したがって、R1及びR2は、より好ましくは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、及び−X1−R4(X1は、単結合、−(アルキレン基)−、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NHCO−、−CONH−、−OCO−、又は−COO−を示し、R4は、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基を示す。)で表される基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基を示す。R1及びR2は、さらに好ましくは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基を示す。R1及びR2は、特に好ましくは、それぞれ独立して、無置換のアリール基である。
一実施形態では、好ましくは、R1が、無置換のアリール基であり、かつR2が、それぞれ独立して、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、及び−X1−R3で表される基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基である。より好ましくは、R1が、無置換のアリール基であり、かつR2が、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、及び−X1−R4で表される基からなる群から選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基である。
式(2)において、アリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜14、より好ましくは6〜10である。このアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられ、好ましくは、フェニル基である。
式(2)において、アルキル基は、直鎖状でもよく、分枝鎖状でもよい。また、式(2)において、アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
式(2)において、アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3である。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
式(2)において、アルキレン基は、直鎖状でもよく、分枝鎖状でもよい。また、式(2)において、アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3である。このアルキレン基としては、例えば、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH(CH3)−、−CH(CH3)−CH2−、−C(CH3)2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH(CH3)−、−CH2−CH(CH3)−CH2−、−CH(CH3)−CH2−CH2−、−CH2−C(CH3)2−、−C(CH3)2−CH2−等が挙げられる。
式(2)において、nは、通常1〜23の整数を示し、好ましくは、1〜13の整数を示し、より好ましくは、1〜8の整数を示し、さらに好ましくは1又は2を示し、特に好ましくは1を示す。
(E)ホスファゼン化合物の具体例としては、例えば、下記式(2−1)〜(2−8)で表される化合物が挙げられる。下記式(2−1)〜(2−8)において、nは、上記と同様である。
(E)ホスファゼン化合物は市販品を用いてもよい。例えば、大塚化学社製、「SPH−100」(上記式(2−6)で表される化合物)、「SPS−100」(上記式(2−1)で表される化合物)、「SPB−100」、「SPE−100」;伏見製薬所社製の「FP−100」(上記式(2−1)で表される化合物)、「FP−110」、「FP−300」(上記式(2−2)で表される化合物)、「FP−390」(上記式(2−3)で表される化合物)、「FP−400」;等が挙げられる。
(E)ホスファゼン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物における(E)ホスファゼン化合物の量は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
樹脂組成物における(E)ホスファゼン化合物の量は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、(C)無機充填材100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、特に好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。
(C)無機充填材の表面積1m2当たりの(E)ホスファゼン化合物の量は、好ましくは0.01mg以上、より好ましくは0.05mg以上、特に好ましくは0.1mg以上であり、好ましくは50mg以下、より好ましくは10mg以下、特に好ましくは2mg以下である。(C)無機充填材の表面積1m2当たりの(E)ホスファゼン化合物の量が前記範囲にある場合、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得ることができる。
[7.(F)成分:硬化促進剤]
樹脂組成物は、上述した成分に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。例えば、樹脂組成物は、任意の成分として(F)硬化促進剤を含んでいてもよい。
(F)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200−H50」等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
(F)硬化促進剤を使用する場合、樹脂組成物における(F)硬化促進剤の量は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。
[8.(G)成分:熱可塑性樹脂]
樹脂組成物は、任意の成分として(G)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
(G)成分としての熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点、並びに、表面粗さが小さく導体層との密着性に特に優れる絶縁層を得る観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000−2」、「電化ブチラール5000−A」、「電化ブチラール6000−C」、「電化ブチラール6000−EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX−5Z)、KSシリーズ(例えばKS−1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE−2St 1200」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
(G)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは70,000以下、より好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
(G)熱可塑性樹脂を使用する場合、樹脂組成物における(G)熱可塑性樹脂の量は、絶縁性の向上、及び、ハローイング現象の抑制といった効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
[9.(H)成分:他の任意の成分]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;難燃剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤等の樹脂添加剤;などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
[10.樹脂組成物の製造方法]
上述した樹脂組成物は、例えば、配合成分を、回転ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌し、均一に分散させることにより製造できる。
[11.樹脂組成物の特性]
上述した樹脂組成物の硬化物によって絶縁層を形成した場合、その絶縁層は、絶縁性に優れ、且つ、ハローイング現象を抑制できる。また、これらの作用は、絶縁層が薄くても、発揮できる。したがって、上述した樹脂組成物によれば、絶縁性に優れ且つハローイング現象を抑制できる薄い絶縁層を得ることができる。
絶縁性に優れる点に関して、具体的には、樹脂組成物の硬化物によって絶縁層を形成した場合に、その絶縁層の抵抗を大きくできる。一実施形態においては、樹脂組成物を130℃で30分間加熱し、次いで170℃で30分間加熱して硬化させて得られる絶縁層の表面に粗化処理を行った場合、その絶縁層は高い絶縁抵抗値を示すことができる。例えば、導体層間の絶縁層の厚みが4.0μm以上5.0μm以下の絶縁層の絶縁抵抗値は、好ましくは1.0×107Ω以上、より好ましくは1.0×108Ω以上、更に好ましくは1.0×109Ω以上、特に好ましくは1.0×1010Ω以上である。絶縁抵抗値は、後述する実施例([I.導体層間の絶縁層の厚み及び絶縁層の絶縁信頼性の測定]を参照)に記載の方法で測定できる。
図1は、両側に第1の導体層1及び第2の導体層2が設けられた絶縁層3の一例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、前記の「導体層間の絶縁層の厚み」とは、絶縁層3の両側に設けられた導体層(図1では、第1の導体層1及び第2の導体層2)の間の絶縁層3の厚みt1を表す。すなわち、「導体層間の絶縁層の厚み」は、第1の導体層1の主面11と第2の導体層2の主面21間の絶縁層3の厚みt1を表す。ここで、第1の導体層1及び第2の導体層2は、絶縁層3を介して隣り合う導体層であり、主面11及び主面21は互いに向き合っている。
ハローイング現象を抑制できる点に関して、具体的には、樹脂組成物の硬化物によって形成された絶縁層にビアホールを形成し、粗化処理を施した場合に、ハローイング現象を抑制することができる。以下、図面を示して、ハローイング現象の抑制を更に詳細に説明する。
図2は、一例としての樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層100を、内層基板200と共に模式的に示す断面図である。この図2においては、ビアホール110のボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、絶縁層100を切断した断面を示す。
図2に示すように、この例に係る絶縁層100は、導体層210を含む内層基板200上に樹脂組成物の硬化物で形成されている。また、絶縁層100には、ビアホール110が形成されている。ビアホール110は、一般に、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uに近いほど径が大きく、導体層210に近いほど径が小さい順テーパ状に形成され、理想的には、絶縁層100の厚み方向において一定の径を有する柱状に形成される。このビアホール110は、通常、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uにレーザー光を照射して、絶縁層100の一部を除去することで、形成される。
前記のビアホール110の導体層210側のボトムを、適宜「ビアボトム」と呼び、符号120で示す。また、ビアホール110の導体層210とは反対側に形成された開口を、適宜「ビアトップ」と呼び、符号130で示す。通常、ビアボトム120及びビアトップ130は、絶縁層100の厚み方向から見た平面形状が円形状に形成されるが、楕円形状であってもよい。
図3は、一例としての樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層100の、導体層210(図3では図示せず。)とは反対側の面100Uを模式的に示す平面図である。
図3に示すように、ビアホール110を形成された絶縁層100を見ると、このビアホール110の周囲に、絶縁層100が変色した変色部140が観察されることがある。この変色部140は、ビアホール110の形成時に形成されうるもので、通常、ビアホール110から連続して形成される。また、多くの場合、変色部140は、白化部分となっている。
図4は、一例としての樹脂組成物の硬化物で形成された、粗化処理後の絶縁層100を、内層基板200と共に模式的に示す断面図である。この図4においては、ビアホール110のビアボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、絶縁層100を切断した断面を示す。
図4に示すように、ビアホール110が形成された絶縁層100に粗化処理を施すと、ハローイング現象が生じて、変色部140の絶縁層100が導体層210から剥離し、ビアボトム120のエッジ150から連続した間隙部160が形成されることがある。この間隙部160は、通常、粗化処理の際に変色部140が浸食されて形成される。
上述した樹脂組成物を用いることにより、前記のハローイング現象を抑制できる。そのため、導体層210からの絶縁層100の剥離を抑制することができるので、間隙部160のサイズを小さくできる。
ビアボトム120のエッジ150は、間隙部160の内周側の縁部に相当する。よって、ビアボトム120のエッジ150から、間隙部160の外周側の端部(即ち、ビアボトム120の中心120Cから遠い側の端部)170までの距離Wbは、間隙部160の面内方向のサイズに相当する。ここで、面内方向とは、絶縁層100の厚み方向に垂直な方向をいう。また、以下の説明において、前記の距離Wbを、ビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbということがある。このビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbにより、ハローイング現象の抑制の程度を評価できる。具体的には、ビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbが小さいほど、ハローイング現象を効果的に抑制できたと評価できる。
一実施形態において、樹脂組成物を130℃で30分間加熱し、次いで170℃で30分間加熱して硬化させて得た厚み10μmの絶縁層100に、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)の条件でCO2レーザー光を照射して、トップ径Ltが30μm±2μmのビアホール110を形成する。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、粗化液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で30分間乾燥する。上述した樹脂組成物を用いれば、このようにして得られた絶縁層100のビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbを、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下、特に好ましくは2μm以下にできる。
ビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbは、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層100を、当該絶縁層100の厚み方向に平行で且つビアボトム120の中心120Cを通る断面が現れるように削り出した後、その断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定できる。
さらに、本発明者らの検討によれば、一般に、ビアホール110の径が大きいほど、変色部140のサイズが大きくなり易いので、間隙部160のサイズも大きくなり易い傾向があることが判明している。よって、ビアホール110の径に対する間隙部160のサイズの比率によって、ハローイング現象の抑制の程度を評価できる。例えば、ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbにより、評価ができる。ここで、ビアホール110のボトム半径Lb/2とは、ビアホール110のビアボトム120の半径をいい、通常、ビアホール110のボトム径Lbの半分の寸法を表す。また、ビアホール110のボトム径Lbとは、ビアホール110のビアボトム120の径をいう。さらに、ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbとは、ビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbを、ビアホール110のボトム半径Lb/2で割って得られる比率である。ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbが小さいほど、ハローイング現象を効果的に抑制できたことを表す。
一実施形態において、樹脂組成物を130℃で30分間加熱し、次いで170℃で30分間加熱して硬化させて得た厚み10μmの絶縁層100に、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)の条件でCO2レーザー光を照射して、トップ径Ltが30μm±2μmのビアホール110を形成する。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、粗化液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で30分間乾燥する。上述した樹脂組成物を用いれば、このようにして得られた絶縁層100のビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbを、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下にできる。
ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbは、ビアホール110のボトム径Lb、及び、ビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbから計算できる。
前記のように優れた効果が得られる仕組みを、本発明者らは、下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記に説明する仕組みによって制限されない。
まず、絶縁性について説明する。無機充填材を含む樹脂組成物及び絶縁層においては、一般に、無機充填材と樹脂成分との界面に応力が集中しやすい。また、プリント配線板の製造方法において、樹脂組成物を硬化させる工程、絶縁層にビアホールを形成する工程、及び、絶縁層上に導体層を形成する工程では、樹脂組成物及び絶縁層に応力が生じ易い。また、プリント配線板の製造後に、プリント配線板が高温度又は高湿度の環境に置かれると、これによっても絶縁層に応力が生じることがある。よって、従来は、無機充填材と樹脂成分との界面に応力が集中して、前記界面で剥離が生じ、無機充填材が脱離することがありえた。仮に無機充填材が脱離すると、絶縁層に脱離跡としての孔が形成されうる。この孔が絶縁層を貫通していると、この孔を通じた導通が可能となり、絶縁層の絶縁性を低下させることが考えられる。
これに対し、上述した樹脂組成物は、(D)成分と(E)ホスファゼン化合物とを含む。(D)成分の一部又は全部は、(C)無機充填材の表面にあることができるので、(C)無機充填材と樹脂成分との界面に存在できる。また、(D)成分は、式(1)のRaで表されるように、2価の脂肪族炭化水素基を有する。この脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が大きいことから分かるように、自由に動ける範囲が大きく、柔軟である。よって、(D)成分は、(C)無機充填材と樹脂成分との界面において応力を吸収できる。
さらに、(E)ホスファゼン化合物の一部又は全部は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との結合によって形成される架橋構造から自由でありうる。よって、(E)ホスファゼン化合物は応力を緩和するように樹脂成分中の位置を変化させられるので、(E)ホスファゼン化合物によっても応力を吸収できる。
そうすると、(D)成分及び(E)ホスファゼン化合物の組み合わせによって応力を効果的に吸収できるから、応力による(C)無機充填材の脱離を抑制できる。さらに、比表面積が大きい(C)無機充填材は、一般に粒子径が小さい。よって、仮に(C)無機充填材の脱離が生じても、絶縁層を貫通する大きい孔は形成され難い。したがって、上述した樹脂組成物を用いることにより、優れた絶縁性を有する絶縁層を実現できる。
次に、ハローイング現象の抑制について説明する。通常、ビアホールを形成する際には、絶縁層のビアホールを形成しようとする部分に熱、光等のエネルギーが与えられる。この際に与えられたエネルギーの一部は、ビアホールを形成しようとする部分の周囲に伝わり、応力を発生させることがありえる。仮にこのような応力によって無機充填材と樹脂成分との界面が剥離して間隙が形成されると、この間隙に膨潤液及び粗化液等の液体が容易に進入し、絶縁層の浸食が促進されうる。そして、絶縁層の浸食が進むと、その浸食された部分でハローイング現象が生じて、導体層からの絶縁層が剥離しうる。
これに対し、上述した樹脂組成物は、前記のように、(D)成分及び(E)ホスファゼン化合物の組み合わせによって応力を効果的に吸収できる。よって、(C)無機充填材と樹脂成分との界面の剥離を抑制できるので、絶縁層の浸食を抑制できる。特に、(C)無機充填材が大きな比表面積を有するので、(C)無機充填材と樹脂成分との界面の剥離を抑制できる前記の作用は、絶縁層の浸食の抑制に効果的である。よって、上述した樹脂組成物を用いることにより、ハローイング現象を抑制することができる。
特に、本発明者らの検討によれば、(C)無機充填材と樹脂成分との界面の剥離を抑制できる前記の作用は、(D)成分及び(E)ホスファゼン化合物をそれぞれ別々に用いるよりも、(D)成分及び(E)ホスファゼン化合物を組み合わせて用いる方が、顕著であることが判明している。
図4に示すように、上述した樹脂組成物を用いた場合、通常は、ビアホール110の形状を容易に制御することが可能である。よって、ビアホール110の形状を良好にできる。ここで、ビアホール110の形状が良好であるとは、ビアホール110のボトム径Lbをトップ径Ltで割って得られるテーパー率Lb/Lt(%)が100%に近いことをいう。ビアホール110のトップ径Ltとは、ビアホール110のビアトップ130の径をいう。ビアボトム120及びビアトップ130の平面形状が楕円形状である場合、そのボトム径Lb及びトップ径Ltは、それぞれ、前記の楕円形状の長径を表す。
一実施形態において、樹脂組成物を130℃で30分間加熱し、次いで170℃で30分間加熱して硬化させて得た厚み10μmの絶縁層100に、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)の条件でCO2レーザー光を照射して、トップ径Ltが30μm±2μmのビアホール110を形成する。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、粗化液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で30分間乾燥する。上述した樹脂組成物を用いれば、このようにして得られた絶縁層100のビアホール110のテーパー率Lb/Ltを、好ましくは60%〜100%、より好ましくは70%〜100%、特に好ましくは80%〜100%にできる。
ビアホール110のテーパー率Lb/Ltは、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltから計算できる。また、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltは、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層100を、当該絶縁層100の厚み方向に平行で且つビアボトム120の中心120Cを通る断面が現れるように削り出した後、その断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定できる。
上述した樹脂組成物を用いることにより、通常は、ビアホール110の形成時の変色部140の形成を抑制できる。そのため、図3に示すように、変色部140のサイズを小さくでき、理想的には変色部140を無くすことができる。変色部140のサイズは、ビアホール110のビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtによって評価できる。
ビアトップ130のエッジ180は、変色部140の内周側の縁部に相当する。ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtとは、ビアトップ130のエッジ180から、変色部140の外周側の縁部190までの距離を表す。ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtが小さいほど、変色部140の形成を効果的に抑制できたと評価できる。
プリント配線板の製造過程において、ビアホール110は、通常、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uに別の導体層(図示せず)が設けられていない状態で、形成される。そのため、プリント配線板の製造過程が分かれば、導体層210側にビアボトム120があり、導体層210とは反対側にビアトップ130が開口している構造が、明確に認識できる。しかし、完成したプリント配線板では、絶縁層100の両側に導体層が設けられている場合がありうる。この場合、導体層との位置関係によってビアボトム120とビアトップ130とを区別することが難しいことがありえる。しかし、通常、ビアトップ130のトップ径Ltは、ビアボトム120のボトム径Lb以上の大きさである。したがって、前記の場合、径が大きさによって、ビアボトム120とビアトップ130とを区別することが可能である。
上述した樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層には、メッキ導体層を形成できる。この場合、通常は、絶縁層とメッキ導体層とのピール強度を高くできる。一実施形態において、樹脂組成物を130℃で30分間加熱し、次いで170℃で30分間加熱して硬化させる。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、粗化液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で30分間乾燥する。上述した樹脂組成物を用いれば、このようにして得られた絶縁層の表面に形成されたメッキ導体層との間のピール強度を高くできる。具体的なピール強度は、例えば、好ましくは0.30kgf/cm以上、より好ましくは0.40kgf/cm以上、さらに好ましくは0.45kgf/cm以上でありうる。ピール強度の上限値は特に限定されないが、5kgf/cm以下等とし得る。前記のピール強度の評価は、後述する実施例([メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定]を参照。)に記載の方法に従って測定できる。
[12.樹脂組成物の用途]
上述した樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。中でも、上述した樹脂組成物は、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層形成用の樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。また、上述した樹脂組成物は、絶縁層上に導体層(再配線層を含む。)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層の形成用の樹脂組成物)として用いてもよい。
特に、ハローイング現象を抑制できるという利点を有効に活用する観点から、上述した樹脂組成物は、ビアホールを有する絶縁層を形成するための樹脂組成物(ビアホールを有する絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適であり、中でも、トップ径35μm以下のビアホールを有する絶縁層形成用の樹脂組成物として特に好適である。
さらに、薄い絶縁層であっても絶縁性の改善及びハローイング現象の抑制が可能であるとの利点を有効に活用する観点から、上述した樹脂組成物は、薄い絶縁層を形成するための樹脂組成物として用いることが好ましく、例えば厚み15μm以下の絶縁層を形成するための樹脂組成物層として好適である。
[13.樹脂シート]
本発明の一実施形態に係る樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、上述した樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む。
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点、並びに、薄くても絶縁性及びハローイング現象の抑制に優れた絶縁層を提供できるという観点から、好ましくは15μm以下、より好ましくは14μm以下、さらに好ましくは12μm以下、特に好ましくは10μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、任意であり、例えば1μm以上、3μm以上などでありうる。
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。)、ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種類以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
樹脂シートは、例えば、有機溶剤及び樹脂組成物を含む樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより、製造することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種類単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の方法により実施してよい。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常は、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
[14.プリント配線板]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板は、上述した樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む。この絶縁層は、薄くても、ハローイング現象を抑制でき、且つ、絶縁性が良好である。よって、このプリント配線板によれば、ハローイング現象又は絶縁不良による性能の低下を抑制しながら、プリント配線板の薄型化を達成することができる。
プリント配線板の絶縁層には、ビアホールが形成されていてもよい。ビアホールは、通常、当該ビアホールを有する絶縁層の両側に設けられた導体層を導通させるために設けられる。よって、プリント配線板は、第1の導体層、第2の導体層、及び、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された絶縁層を含みうる。そして、絶縁層にビアホールが形成され、そのビアホールを通じて第1の導体層と第2の導体層とが導通しうる。
以下、図面を示して、好ましいプリント配線板の例について説明する。図5は、一例としてのプリント配線板300の模式的な断面図である。この図5においては、ビアホール110のビアボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、プリント配線板300を切断した断面を示す。また、図5においては、図2〜図4に記載された要素に相当する部位は、図2〜図4で用いたのと同様の符号を付して示す。
図5に示すように、本例に係るプリント配線板300は、第1の導体層210、第2の導体層220、及び、第1の導体層210と第2の導体層220との間に形成された絶縁層100を含む。絶縁層100には、ビアホール110が形成されている。また、通常、第2の導体層220は、ビアホール110が形成された後で設けられたものである。よって、第2の導体層220は、通常、絶縁層100の面100Uだけでなく、ビアホール110内にも形成され、このビアホール110を通して第1の導体層210と第2の導体層220とが導通している。
プリント配線板300が含む絶縁層100の導体層間の厚みTは、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下、更に好ましくは10μm以下である。厚みTは、特に好ましくは、6.0μm以下、5.5μm以下、5.0μm以下などでありうる。プリント配線板300がこのように薄い絶縁層100を有する場合、プリント配線板300自体の薄型化を達成できる。厚みTの下限は、絶縁層100の絶縁性能を高くする観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上である。ここで、絶縁層100の導体層間の厚みTとは、第1の導体層210と第2の導体層220との間の絶縁層100の寸法を表し、図1における厚みt1に相当する。この厚みTは、通常、ビアホール110の深さに一致する。
なお、第1の導体層210及び第2の導体層220の間以外の部分における絶縁層100の厚み(図1の厚みt2に相当。)は、任意である。この厚みは、好ましくは15μm以下、より好ましくは13μm以下、さらに好ましくは10μm以下であり、また、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上、更に好ましくは2μm以上でありうる。
プリント配線板300が含む絶縁層100に形成されたビアホール110のトップ径Ltは、好ましくは35μm以下、より好ましくは33μm以下、更に好ましくは32μm以下である。プリント配線板300が、このようにトップ径Ltが小さいビアホール110を有する絶縁層100を含む場合、第1の導体層210及び第2の導体層220を含む配線の微細化を促進できる。ビアホール110のトップ径Ltの下限は、ビアホール110の形成を容易に行う観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上である。
プリント配線板300が含む絶縁層100に形成されたビアホール110のテーパー率Lb/Lt(%)は、好ましくは60%〜100%、より好ましくは70%〜100%、特に好ましくは80%〜100%にできる。プリント配線板300が、このようにテーパー率Lb/Ltが高い良好な形状のビアホール110を有する絶縁層100を備える場合、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を効果的に高めることができる。
プリント配線板300が含む絶縁層100に形成されたビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbは、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下、特に好ましくは2μm以下である。プリント配線板300が、このハローイング距離Wbで表されるように、第1の導体層210からの絶縁層100の剥離が小さい場合、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を効果的に高めることができる。
プリント配線板300が含む絶縁層100に形成されたビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbは、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。プリント配線板300が、このハローイング比Hbで表されるように、第1の導体層210からの絶縁層100の剥離が小さい場合、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を効果的に高めることができる。ボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbの下限は、理想的にはゼロであるが、通常は5%以上である。
プリント配線板300が含む絶縁層100に形成されたビアホール110の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。
前記の例に係るプリント配線板300は、上述した樹脂組成物の硬化物によって絶縁層100を形成することにより、実現できる。この際、絶縁層100に形成されるビアホール110のビアボトム120及びビアトップ130の平面形状は任意であるが、通常は円形状又は楕円形状であり、好ましくは円形状である。
プリント配線板の製造方法に制限は無い。プリント配線板は、例えば、樹脂シートを用いて、下記の工程(I)及び工程(II)を含む製造方法を行うことにより、製造できる。
(I)内層基板上に、樹脂組成物層が内層基板と接合するように、樹脂シートを積層する工程。
(II)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材である。内層基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。通常、内層基板としては、その片面又は両面に、導体層を有しているものを用いる。そして、この導体層上に、絶縁層を形成する。この導体層は、例えば回路として機能させるために、パターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に回路として導体層が形成された内層基板は、「内層回路基板」ということがある。また、プリント配線板を製造する際に更に絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
内層基板と樹脂シートとの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより、内層基板に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
内層基板と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
積層の後に、常圧下(大気圧下)で、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
工程(I)の後で、工程(II)を行う。工程(II)においては、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して採用される条件を任意に使用してよい。
樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なりうる。硬化温度は、好ましくは120℃〜240℃、より好ましくは150℃〜220℃、さらに好ましくは170℃〜200℃でありうる。硬化時間は、好ましくは5分間〜120分間、より好ましくは10分間〜100分間、さらに好ましくは15分間〜90分間でありうる。
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を、硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上150℃未満(好ましくは60℃以上140℃以下、より好ましくは70℃以上130℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間、さらに好ましくは15分間〜100分間)予備加熱してもよい。
プリント配線板の製造方法は、更に、下記の工程(III)、工程(IV)及び工程(V)を含んでいてもよい。
(III)絶縁層にビアホールを形成する工程。
(IV)絶縁層に粗化処理を施す工程。
(V)導体層を形成する工程。
なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間のいずれの時点で実施してよい。中でも、抉れ部の発生をより抑制する観点から、絶縁層にビアホールを形成する工程(III)の後に、支持体を除去することが好ましい。例えば、レーザー光の照射によって絶縁層にビアホールを形成した後に支持体を剥離すると、良好な形状のビアホールを形成し易い。
工程(III)においては、絶縁層にビアホールを形成する。ビアホールの形成方法としては、レーザー光の照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、一般にハローイング現象が生じ易いので、ハローイング現象の抑制という効果を有効に活用する観点から、レーザー光の照射が好ましい。
このレーザー光の照射は、例えば、光源として、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等のレーザー光源を有するレーザー加工機を用いて行うことができる。用いられ得るレーザー加工機としては、例えば、ビアメカニクス社製CO2レーザー加工機「LC−2k212/2C」、三菱電機社製の605GTWIII(−P)、松下溶接システム社製のレーザー加工機、などが挙げられる。
工程(IV)において、絶縁層に粗化処理を施す。工程(IV)では、例えば、膨潤液による膨潤処理、粗化液としての酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に実施して、絶縁層を粗化処理することができる。
膨潤液としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液が挙げられる。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。また、膨潤液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃〜80℃の膨潤液に絶縁層を5分間〜15分間浸漬させることが好ましい。
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、酸化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「コンセントレート・コンパクトP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。また、中和液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃〜70℃の中和液に5分間〜20分間浸漬する方法が好ましい。
工程(V)は、導体層を形成する工程である。導体層に使用する導体材料は、特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種類以上の金属を含む。導体層は、単金属層であってもよく、合金層であってもよい。合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種類以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層;又は、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層;が好ましい。さらには、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層;又はニッケル・クロム合金の合金層;がより好ましく、銅の単金属層が特に好ましい。
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層を2層以上含む複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚みは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。中でも、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。
以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
また、必要に応じて、工程(I)〜工程(V)による絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層プリント配線板を製造してもよい。
[15.半導体装置]
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、前記のプリント配線板を含む。この半導体装置は、プリント配線板を用いて製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
半導体装置は、例えば、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは、半導体を材料とする電気回路素子を任意に用いることができる。
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されない。実装方法の例としては、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
[処理充填材1]
球形シリカ(デンカ社製「UFP−30」、比表面積30.7m2/g、平均粒径0.3μm)を、N−フェニル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン(信越化学工業社製、分子量325.2)で表面処理した粒子を、処理充填材1として用意した。前記の処理充填材1は、球形シリカ100部に対して、N−フェニル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン3部で処理した粒子である。
[処理充填材2]
球形シリカ(デンカ社製「UFP−30」、比表面積30.7m2/g、平均粒径0.3μm)を、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理した粒子を、処理充填材2として用意した。前記の処理充填材2は、球形シリカ100部に対して、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン2部で処理した粒子である。
[処理充填材3]
球形シリカ(アドマテックス社製「SO−C2」、比表面積5.9m2/g、平均粒径0.5μm)を、N−フェニル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン(信越化学工業社製、分子量325.2)で表面処理した粒子を、処理充填材3として用意した。前記の処理充填材3は、球形シリカ100部に対して、N−フェニル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン1部で処理した粒子である。
[無機充填材の平均粒径の測定方法]
前記の無機充填材の平均粒径は、下記の方法で測定した。
前記の無機充填材100mg、及びメチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散した。レーザー回折式粒径分布測定装置(堀場製作所社製「LA−960」)を使用して、使用光源波長を青色および赤色とし、フローセル方式で無機充填材の粒径分布を体積基準で測定した。得られた粒径分布から、メディアン径として、無機充填材の平均粒径を算出した。
[無機充填材の比表面積の測定方法]
前記の無機充填材の比表面積は、下記の方法で測定した。
BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製「Macsorb HM−1210」)を使用して、無機充填材に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出した。
[実施例1:樹脂組成物1の作製]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828US」、エポキシ当量約180)5部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7760」、エポキシ当量約238)20部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量約190)25部、ホスファゼン樹脂(大塚化学社製「SPS−100」)3部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部を、MEK60部に撹拌しながら加熱溶解させた。
室温にまで冷却した後、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、固形分65質量%のトルエン溶液)70部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA−3018−50P」、活性基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)6部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)6部、処理充填材1(N−フェニル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン(信越化学工業社製、分子量325.2)で表面処理された球形シリカ(デンカ社製「UFP−30」、比表面積30.7m2/g、平均粒径0.3μm))180部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した。その後、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物1を作製した。
[実施例2:樹脂組成物2の作製]
実施例1において、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7760」、エポキシ当量約238)を、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約271)に変更した。また、ホスファゼン樹脂(大塚化学社製「SPS−100」)を、ホスファゼン樹脂(大塚化学社製「SPH−100」)に変更した。さらに、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA−3018−50P」、活性基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)の量を、6部から3部に変更した。また、樹脂組成物に、更にカルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V−03」、活性基当量約216、固形分50質量%のトルエン溶液)を6部加えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物2を作製した。
[実施例3:樹脂組成物3の作製]
実施例1において、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7760」、エポキシ当量約238)を、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約271)に変更した。また、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、固形分65質量%のトルエン溶液)70部を、活性エステル型硬化剤(DIC社製「EXB9416−70BK」、活性基当量約330の不揮発分70質量%のメチルイソブチルケトン溶液)50部に変更した。さらに、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA−3018−50P」、活性基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)の量を、6部から12部に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物3を作製した。
[比較例1:樹脂組成物4の作製]
実施例1において、ホスファゼン樹脂(大塚化学社製「SPS−100」)3部を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物4を作製した。
[比較例2:樹脂組成物5の作製]
実施例1において、処理充填材1(N−フェニル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン(信越化学工業社製、分子量325.2)で表面処理された球形シリカ(デンカ社製「UFP−30」、比表面積30.7m2/g、平均粒径0.078μm))を、処理充填材2(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(デンカ社製「UFP−30」、比表面積30.7m2/g、平均粒径0.3μm))に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物5を作製した。
[比較例3:樹脂組成物6の作製]
実施例1において、処理充填材1(N−フェニル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン(信越化学工業社製、分子量325.2)で表面処理された球形シリカ(デンカ社製「UFP−30」、比表面積30.7m2/g、平均粒径0.3μm))を、処理充填材3(N−フェニル−8−アミノオクチル−トリメトキシシラン(信越化学工業社製、分子量325.2)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO−C2」、比表面積5.9m2/g、平均粒径0.5μm))に変更した。また、濾過に用いるカートリッジフィルターを、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP100」)からカートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)に変更した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物6を作製した。
[評価方法]
前記の実施例及び比較例で得た樹脂組成物を、それぞれ、以下に説明する方法で評価した。
[樹脂シートの作製]
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃)を用意した。
(樹脂シートAの作製)
各樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが6μmとなるよう、支持体上にダイコーターにて均一に塗布した。塗布された樹脂組成物を80℃で1分間乾燥することにより、支持体上に樹脂組成物層を得た。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてのポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA−411」、厚み15μm)の粗面を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、支持体、樹脂組成物層、及び保護フィルムをこの順に備える「樹脂シートA」を得た。
(樹脂シートBの作製)
各樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが10μmとなるよう、支持体上にダイコーターにて均一に塗布した。塗布された樹脂組成物を80℃で2分間乾燥することにより、支持体上に樹脂組成物層を得た。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてのポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA−411」、厚み15μm)の粗面を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、支持体、樹脂組成物層、及び保護フィルムをこの順で備える「樹脂シートB」を得た。
[I.導体層間の絶縁層の厚み及び絶縁層の絶縁信頼性の測定]
(評価用基板の調製)
(1)内層回路基板の下地処理:
内層回路基板として、L/S(ライン/スペース)=2μm/2μmの配線パターンにて形成された回路導体(銅)を両面に有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ3μm、基板厚み0.15mm、三菱ガス化学社製「HL832NSF LCA」、255×340mmサイズ)を用意した。該内層回路基板の両面を、メック社製「FlatBOND−FT」にて処理して、銅表面の有機被膜処理を行った。
(2)樹脂シートのラミネート:
樹脂シートAから保護フィルムを剥がし、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接するように、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、130℃、圧力0.74MPaにて45秒間圧着させることにより、実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて75秒間熱プレスを行った。
(3)樹脂組成物層の熱硬化:
ラミネートされた樹脂シート及び内層回路基板を、130℃のオーブンに投入後30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えた後30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化して、厚みが5μmの絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離した。これにより、絶縁層、内層回路基板及び絶縁層をこの順で備える「基板A」を得た。
(4)ビアホールの形成:
レーザー加工機を使用して、内層回路基板の回路導体上に開口するように、基板Aの絶縁層にビアホールを形成した。
(5)粗化処理を行う工程:
基板Aの絶縁層に、粗化処理としてのデスミア処理を行った。このデスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
湿式デスミア処理:
膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間浸漬した。次いで酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で10分間浸漬した。その後で中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後、80℃で15分間乾燥した。この湿式デスミア処理を施された後の基板Aを、「粗化基板A」と呼ぶ。
(6)導体層を形成する工程:
(6−1)無電解めっき工程:
上記粗化基板Aの絶縁層の表面に、下記1〜6の工程を含むめっき工程(アトテックジャパン社製の薬液を使用した銅めっき工程)を行って、導体層を形成した。
1.アルカリクリーニング(ビアホールが設けられた絶縁層の表面の洗浄と電荷調整):
粗化基板Aの表面を、Cleaning Cleaner Securiganth 902(商品名)を用いて60℃で5分間洗浄した。
2.ソフトエッチング(ビアホール内の洗浄):
粗化基板Aの表面を、硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃で1分間処理した。
3.プレディップ(Pd付与のための絶縁層の表面の電荷の調整):
粗化基板Aの表面を、Pre. Dip Neoganth B(商品名)を用い、室温で1分間処理した。
4.アクティヴェーター付与(絶縁層の表面へのPdの付与):
粗化基板Aの表面を、Activator Neoganth 834(商品名)を用い、35℃で5分間処理した。
5.還元(絶縁層に付与されたPdを還元):
粗化基板Aの表面を、Reducer Neoganth WA(商品名)とReducer Acceralator 810 mod.(商品名)との混合液を用い、30℃で5分間処理した。
6.無電解銅めっき工程(Cuを絶縁層の表面(Pd表面)に析出):
粗化基板Aの表面を、Basic Solution Printganth MSK−DK(商品名)と、Copper solution Printganth MSK(商品名)と、Stabilizer Printganth MSK−DK(商品名)と、Reducer Cu(商品名)との混合液を用いて、35℃で20分間処理した。これにより、絶縁層の表面に無電解銅めっき層(厚さ0.8μm)が形成された。
(6−2)電解めっき工程:
次いで、アトテックジャパン社製の薬液を使用して、ビアホール内に銅が充填される条件で、電解銅めっき工程を行った。その後に、エッチングによるパターニングのためのレジストパターンとして、ビアホールを通して下層導体(即ち、内層回路基板の回路導体)に導通された直径1mmのランドを形成するためのパターン(ランドパターン)、及び、前記下層導体とは接続されていない直径10mmの円形導体を形成するためのパターン(円形導体パターン)を用いて、絶縁層の表面にランド及び円形導体を有する導体層(厚さ10μm)を形成した。次に、アニール処理を200℃にて90分間行った。こうして得られた基板を「評価用基板B」と呼ぶ。
[導体層間の絶縁層の厚みの測定]
評価用基板Bを、FIB−SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、導体層の表面に垂直な断面をFIB(集束イオンビーム)により削り出し、その断面を撮影した。得られた断面SEM画像から、導体層間の絶縁層の厚みを測定した。各サンプルにつき、無作為に選んだ5箇所の断面SEM画像を観察し、その平均値を導体層間の絶縁層の厚み(μm)とし、下記表に示した。
[絶縁層の絶縁信頼性の評価]
上記において得られた評価用基板Bの直径10mmの円形導体側を+電極とし、直径1mmのランドと接続された内層回路基板の格子導体(銅)側を−電極として、高度加速寿命試験装置(ETAC社製「PM422」)を使用し、130℃、85%相対湿度、3.3V直流電圧印加の条件で200時間経過させた。その後、絶縁抵抗値を、エレクトロケミカルマイグレーションテスター(J−RAS社製「ECM−100」)にて測定した。
前記の測定を、各実施例及び比較例でそれぞれ6個の評価用基板Bについて行った。6個の評価用基板Bの全てにおいて、その抵抗値が1×107Ω以上の場合を「○」とし、1つでも1×107Ω未満の場合は「×」とした。評価結果を、絶縁抵抗値とともに下記表に示した。下記表に記載の絶縁抵抗値は、6個の試験用基板Bの絶縁抵抗値の最低値である。
[II.ハローイングの評価]
(1)内層回路基板の下地処理:
内層回路基板として、内層回路(銅)を両面に有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。該内層回路基板の両面を、メック社製「CZ8101」にて1μmエッチングして、銅表面の粗化処理を行った。
(2)樹脂シートのラミネート:
樹脂シートBから保護フィルムを剥がし、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接するように、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、130℃、圧力0.74MPaにて45秒間圧着させることにより、実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて75秒間熱プレスを行った。
(3)樹脂組成物の硬化:
ラミネートされた樹脂シート及び内層回路基板を、130℃で30分加熱し、次いで170℃で30分加熱して、樹脂組成物層を硬化して、厚みが10μmの絶縁層を形成した。ハローイングの評価試験では、この厚み10μmが、後述する評価基板Dにおける導体層間の絶縁層の厚みに相当する。
(4)ビアホール形成:
CO2レーザー加工機(三菱電機社製「605GTWIII(−P)」)を使用して、絶縁層にレーザー光を照射して、絶縁層に、トップ径(直径)が約30μmの複数個のビアホールを形成した。レーザー光の照射条件は、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)であった。その後、支持体を剥離して、絶縁層、内層回路基板及び絶縁層をこの順で備える「粗化前基板C」を得た。
(5)粗化処理:
粗化前基板Cを、膨潤液(アトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガントP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液))に60℃で10分間浸漬した。次に、基板Cを、粗化液(アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液))に80℃で20分間浸漬した。その後で、基板Cを、中和液(アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(硫酸の水溶液))に40℃で5分間浸漬した。その後、基板Cを、80℃で30分乾燥して、「評価基板D」を得た。
(6)セミアディティブ工法によるメッキ:
評価基板Dを、PdCl2を含む無電解メッキ用溶液に40℃で5分間浸漬した。次に、無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。その後、150℃にて30分間加熱して、アニール処理を行った。その後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成を行った。その後に、硫酸銅電解メッキを行い、20μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を200℃にて60分間行って、「評価基板E」を得た。
[粗化処理後のビアホールの寸法、及び、ハローイング距離の測定]
評価基板Dについて、FIB−SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層を、当該絶縁層の厚み方向に平行で且つビアホールのビアボトムの中心を通る断面が現れるように削り出した。この断面をSEMによって観察した。観察された画像から、ビアホールのボトム径及びトップ径を測定した。また、SEMによって観察された画像には、ビアボトムのエッジから連続して、絶縁層が内層基板の銅箔層から剥離して形成された間隙部が見られた。そこで、観察された画像から、ビアボトムの中心からビアボトムのエッジまでの距離(間隙部の内周半径に相当)r3と、ビアボトムの中心から前記間隙部の遠い側の端部までの距離(間隙部の外周半径に相当)r4とを測定し、これら距離r3と距離r4との差r4−r3を、その測定地点のビアボトムのエッジからのハローイング距離として算出した。
前記の測定を、無作為に選んだ5か所のビアホールで行った。そして、測定された5箇所のビアホールのトップ径の平均を、そのサンプルの粗化処理後のトップ径Ltとして採用した。また、測定された5箇所のビアホールのボトム径の平均を、そのサンプルの粗化処理後のボトム径Lbとして採用した。さらに、測定された5箇所のビアホールのハローイング距離の平均を、そのサンプルのビアボトムのエッジからのハローイング距離Wbとして採用した。
前記の測定結果から、テーパー率(ビアホールのトップ径Ltとボトム径Lbとの比「Lb/Lt」)と、ハローイング比Hb(粗化処理後のビアボトムのエッジからのハローイング距離Wbと、粗化処理後のビアホールのビアボトムの半径(Lb/2)との比「Wb/(Lb/2)」)を算出した。ハローイング比Hbが35%以下であれば「〇」と判定し、ハローイング比Htが35%より大きければ「×」と判定した。
[メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定]
評価基板Eの導体層に、幅10mm、長さ100mmの矩形部分を囲む切込みをいれた。前記矩形部分の一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製のオートコム型試験機「AC−50C−SL」)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に引き剥がした。35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を、ピール強度として測定した。
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、樹脂組成物の調製に用いた成分の欄の数値は、各成分の配合量(不揮発分換算)を表す。