以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された車両10の概略構成を説明する図である。図1において、車両10は、動力源として機能するエンジン12の動力を駆動輪14に伝達する車両用動力伝達装置16(以下、動力伝達装置16と称す)を備えている。
動力伝達装置16は、エンジン12と駆動輪14との間に設けられている。動力伝達装置16は、非回転部材としてのケース18内において、エンジン12に連結された流体式伝動装置としての公知のトルクコンバータ20と、トルクコンバータ20に連結された入力軸22と、入力軸22に連結されたベルト式の無段変速機24と、同じく入力軸22に連結された前後進切替装置26と、前後進切替装置26を介して入力軸22に連結されて無段変速機24と並列に設けられたギヤ機構28と、無段変速機24およびギヤ機構28の共通の出力回転部材である出力軸30と、カウンタ軸32と、出力軸30およびカウンタ軸32に各々相対回転不能に設けられて噛み合う一対のギヤから成る減速歯車装置34と、カウンタ軸32に相対回転不能に設けられているギヤ36と、ギヤ36に動力伝達可能に連結されたデファレンシャル装置38と、デファレンシャル装置38と左右の駆動輪14との間を連結する左右一対の車軸40とを、備えている。
このように構成された動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力が、トルクコンバータ20、前後進切替装置26、ギヤ機構28、減速歯車装置34、デファレンシャル装置38、車軸40等を順次介して、左右の駆動輪14へ伝達される。或いは、動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力が、トルクコンバータ20、無段変速機24、減速歯車装置34、デファレンシャル装置38、車軸40等を順次介して、左右の駆動輪14へ伝達される。前記動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。
動力伝達装置16は、入力軸22と出力軸30との間に並列に設けられた、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2とを、備えている。第1動力伝達経路PT1および第2動力伝達経路PT2は、エンジン12の動力を入力軸22から出力軸30へ各々伝達する。第1動力伝達経路PT1は、ギヤ機構28を含んで構成され、第2動力伝達経路PT2は、無段変速機24を含んで構成されている。このように、動力伝達装置16は、第1動力伝達経路PT1および第2動力伝達経路PT2の2つ(複数)の動力伝達経路PTを、入力軸22と出力軸30との間で並列に備えている。
第1動力伝達経路PT1は、第1クラッチC1および第1ブレーキB1を含んで構成される前後進切替装置26、ギヤ機構28、および副クラッチとして機能するツーウェイクラッチTWCを備え、エンジン12の動力を入力軸22からギヤ機構28を経由して駆動輪14へ伝達する動力伝達経路である。第1動力伝達経路PT1において、エンジン12から駆動輪14に向かって、前後進切替装置26、ギヤ機構28、ツーウェイクラッチTWCの順番で配置されている。これより、ツーウェイクラッチTWCは、第1動力伝達経路PT1において第1クラッチC1と出力軸30との間に設けられている。すなわち、ツーウェイクラッチTWCは、第1動力伝達経路PT1において第1クラッチC1よりも駆動輪14側に配置されている。なお、ツーウェイクラッチTWCが、本発明の副クラッチに対応している。
第2動力伝達経路PT2は、無段変速機24および第2クラッチC2を備え、エンジン12の動力を入力軸22から無段変速機24を経由して駆動輪14へ伝達する動力伝達経路である。第2動力伝達経路PT2において、エンジン12から駆動輪14に向かって、無段変速機24、第2クラッチC2の順番で配置されている。
第2動力伝達経路PT2を構成する無段変速機24は、入力軸22と同軸心上に設けられて入力軸22と一体的に連結されたプライマリ軸58と、プライマリ軸58に連結された有効径が可変のプライマリプーリ60と、出力軸30と同軸心上に設けられたセカンダリ軸62と、セカンダリ軸62に連結された有効径が可変のセカンダリプーリ64と、それら各プーリ60、64の間に巻き掛けられた伝達要素としての伝動ベルト66とを、備えている。無段変速機24は、各プーリ60、64と伝動ベルト66との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる公知のベルト式の無段変速機である。
また、ギヤ機構28を有する第1動力伝達経路PT1における入力軸22と出力軸30との間のギヤ比EL(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)は、第2動力伝達経路PT2における入力軸22と出力軸30との間の最大変速比である無段変速機24の最ロー側変速比γmaxよりも大きな値に設定されている。すなわち、ギヤ比ELは、最ロー側変速比γmaxよりもロー側の変速比に設定されている。これより、第2動力伝達経路PT2は、第1動力伝達経路PT1よりもハイ側の変速比が形成される。なお、入力軸回転速度Ninは入力軸22の回転速度であり、出力軸回転速度Noutは出力軸30の回転速度である。
動力伝達装置16では、エンジン12の動力を駆動輪14へ伝達する動力伝達経路PTが、車両10の走行状態に応じて、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2との間で適宜切り替えられる。そのため、動力伝達装置16は、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2とを選択的に形成する複数個の係合装置を備えている。複数個の係合装置は、第1クラッチC1、第1ブレーキB1、第2クラッチC2、ツーウェイクラッチTWCに対応している。
第1クラッチC1は、第1動力伝達経路PT1上に設けられ、第1動力伝達経路PT1を選択的に断接する係合装置であって、係合されることで、第1動力伝達経路PT1が車両前進方向に作用する動力を伝達する動力伝達状態に切り替えられる係合装置である。第1ブレーキB1は、第1動力伝達経路PT1に設けられ、第1動力伝達経路PT1を選択的に断接する係合装置であって、係合されることで、第1動力伝達経路PT1が車両後進方向に作用する動力を伝達する動力伝達状態に切り替えられる係合装置である。なお、第1クラッチC1が、本発明の第1係合装置に対応している。
第2クラッチC2は、第2動力伝達経路PT2上に設けられ、第2動力伝達経路PT2を選択的に断接する係合装置であって、係合されることで、第2動力伝達経路PT2が車両前進方向に作用する動力を伝達する動力伝達状態に切り替えられる係合装置である。なお、第2クラッチC2が、本発明の第2係合装置に対応している。
第1クラッチC1、第1ブレーキB1、第2クラッチC2は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる公知の油圧式の湿式摩擦係合装置である。第1クラッチC1および第1ブレーキB1は、それぞれ前後進切替装置26を構成する要素の1つである。
ツーウェイクラッチTWCは、第1動力伝達経路PT1上に設けられ、前進走行中における車両10の駆動状態において動力を伝達する一方、前進走行中における車両10の被駆動状態において動力を遮断するワンウェイモードと、車両10の駆動状態および被駆動状態において動力を伝達するロックモードとに、切替可能に構成されている。例えば、第1クラッチC1が係合され、且つ、ツーウェイクラッチTWCがワンウェイモードに切り替えられた状態では、エンジン12の動力によって前進走行される車両10の駆動状態において、ツーウェイクラッチTWCは動力伝達可能となる。すなわち、前進走行中においてエンジン12の動力が、第1動力伝達経路PT1を経由して駆動輪14側に伝達される。一方、前進走行時における惰性走行など、車両10の被駆動状態では、第1クラッチC1が係合されていても、駆動輪14側から伝達される回転がツーウェイクラッチTWCによって遮断される。なお、車両10の駆動状態とは、入力軸22のトルクが進行方向を基準とした場合の正の値となる状態、実質的には、エンジン12の動力によって車両10が駆動させられる状態に対応している。また、車両10の被駆動状態とは、入力軸22のトルクが進行方向を基準とした場合の負の値となる状態、実質的には、車両10の慣性によって走行させられ、駆動輪14側から伝達される回転によって入力軸22およびエンジン12が連れ回される状態に対応している。
また、第1クラッチC1が係合され、且つ、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられた状態では、ツーウェイクラッチTWCが車両10の駆動状態および被駆動状態において動力伝達が可能になり、エンジン12の動力が、第1動力伝達経路PT1を経由して駆動輪14側に伝達されるとともに、惰性走行中(被駆動状態)には、駆動輪14側から伝達される回転が、第1動力伝達経路PT1を経由してエンジン12側に伝達されることで、エンジン12が連れ回されることによりエンジンブレーキを発生させることができる。また、第1ブレーキB1が係合され、且つ、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられた状態では、エンジン12側から伝達される車両後進方向に作用する動力が、ツーウェイクラッチTWCを経由して駆動輪14に伝達され、第1動力伝達経路PT1を経由した後進走行が可能になる。なお、ツーウェイクラッチTWCの構造については後述する。
エンジン12は、電子スロットル装置や燃料噴射装置や点火装置などのエンジン12の出力制御に必要な種々の機器を有するエンジン制御装置42を備えている。エンジン12は、電子制御装置120によって、運転者による車両10に対する駆動要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量θaccに応じてエンジン制御装置42が制御されることで、エンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
トルクコンバータ20は、エンジン12と無段変速機24との間に設けられ、エンジン12に連結されたポンプ翼車20p、および入力軸22に連結されたタービン翼車20tを備えている。トルクコンバータ20は、エンジン12の動力を入力軸22へ伝達する流体伝動装置である。トルクコンバータ20は、ポンプ翼車20pとタービン翼車20tとの間すなわちトルクコンバータ20の入出力回転部材間を直結可能な公知のロックアップクラッチLUを備えている。ロックアップクラッチLUは、車両の走行状態に応じてポンプ翼車20pとタービン翼車20tとの間(すなわちエンジン12と入力軸22との間)を直結する。例えば、比較的高車速領域において、ロックアップクラッチLUによってエンジン12と入力軸22とが直結される。
動力伝達装置16は、ポンプ翼車20pに連結された機械式のオイルポンプ44を備えている。オイルポンプ44は、エンジン12により回転駆動されることにより、無段変速機24を変速制御したり、無段変速機24におけるベルト挟圧力を発生させたり、前記複数の係合装置の各々の係合や解放などの作動状態を切り替えたり、ロックアップクラッチLUの作動状態を切り替えたりするための作動油圧の元圧を、車両10に備えられた油圧制御回路46(図5参照)へ供給する。
前後進切替装置26は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置26p、第1クラッチC1、および第1ブレーキB1を備えている。遊星歯車装置26pは、入力要素としてのキャリヤ26cと、出力要素としてのサンギヤ26sと、反力要素としてのリングギヤ26rとの3つの回転要素を有する差動機構である。キャリヤ26cは、入力軸22に連結されている。リングギヤ26rは、第1ブレーキB1を介してケース18に選択的に連結される。サンギヤ26sは、入力軸22の外周側に配置され、その入力軸22に対して相対回転可能に設けられた小径ギヤ48に連結されている。キャリヤ26cとサンギヤ26sとは、第1クラッチC1を介して選択的に連結される。
ギヤ機構28は、小径ギヤ48と、カウンタ軸50と、カウンタ軸50に相対回転可能に設けられ、小径ギヤ48と噛み合う大径ギヤ52とを備えている。また、カウンタ軸50には、出力軸30に設けられている出力ギヤ56と噛み合うカウンタギヤ54が、カウンタ軸50に対して相対回転不能に設けられている。
カウンタ軸50の軸方向で、大径ギヤ52とカウンタギヤ54との間には、これらの間を断接可能なツーウェイクラッチTWCが設けられている。ツーウェイクラッチTWCは、第1動力伝達経路PT1において、第1クラッチC1およびギヤ機構28よりも駆動輪14側に設けられている。ツーウェイクラッチTWCは、油圧式の油圧アクチュエータ41によって、ワンウェイモードおよびロックモードの一方に切替可能に構成されている。
図2および図3は、ワンウェイモードおよびロックモードへのモードの切替を可能にするツーウェイクラッチTWCの構造を簡略的に示す図であって、ツーウェイクラッチTWCの周方向の一部を切断した断面図である。図2は、ツーウェイクラッチTWCがワンウェイモードに切り替えられた状態を示し、図3は、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられた状態を示している。なお、図2および図3の紙面上下方向が回転方向に対応し、紙面上方が車両後進方向(後進回転方向)に対応し、紙面下方が車両前進方向(前進回転方向)に対応している。また、図2および図3の紙面左右方向が、カウンタ軸50の軸方向(以下、特に言及しない限り、軸方向はカウンタ軸50の軸方向に対応する)に対応し、紙面右側が図1の大径ギヤ52側に対応し、紙面左側が図1のカウンタギヤ54側に対応している。
ツーウェイクラッチTWCは、円盤状に形成され、カウンタ軸50の外周側に配置されている。ツーウェイクラッチTWCは、入力側回転部材68と、軸方向で入力側回転部材68と隣り合う位置に配置されている第1出力側回転部材70aおよび第2出力側回転部材70bと、軸方向で入力側回転部材68と第1出力側回転部材70aとの間に介挿されている複数個の第1ストラット72aおよび複数個の捩りコイルバネ73aと、軸方向で入力側回転部材68と第2出力側回転部材70bとの間に介挿されている複数個の第2ストラット72bおよび複数個の捩りコイルバネ73bとを、含んで構成されている。なお、第1出力側回転部材70aおよび第2出力側回転部材70bが、本発明の出力側回転部材に対応している。
入力側回転部材68は、円盤状に形成され、カウンタ軸50の軸心を中心にしてカウンタ軸50に対して相対回転可能に配置されている。入力側回転部材68は、軸方向において第1出力側回転部材70aと第2出力側回転部材70bとの間に挟まれるようにして配置されている。また、入力側回転部材68の外周側には、大径ギヤ52の噛合歯が一体的に形成されているる。すなわち、入力側回転部材68と大径ギヤ52とが一体成形されている。入力側回転部材68は、ギヤ機構28、前後進切替装置26等を介して、エンジン12に動力伝達可能に連結されている。
入力側回転部材68の軸方向で第1出力側回転部材70aと対向する面には、第1ストラット72aおよび捩りコイルバネ73aが収容される第1収容部76aが形成されている。第1収容部76aは、周方向で等角度間隔に複数個形成されている。また、入力側回転部材68の軸方向で第2出力側回転部材70bと対向する面には、第2ストラット72bおよび捩りコイルバネ73bが収容される第2収容部76bが形成されている。第2収容部76bは、周方向で等角度間隔に複数個形成されている。第1収容部76aおよび第2収容部76bは、入力側回転部材68の径方向で同じ位置に形成されている。
第1出力側回転部材70aは、円盤状に形成され、カウンタ軸50の軸心を中心にして回転可能に配置されている。第1出力側回転部材70aは、カウンタ軸50に相対回転不能に設けられることで、カウンタ軸50と一体的に回転する。これに関連して、第1出力側回転部材70aは、カウンタ軸50、カウンタギヤ54、出力軸30、デファレンシャル装置38等を介して駆動輪14に動力伝達可能に連結されている。
第1出力側回転部材70aの軸方向で入力側回転部材68と対向する面には、入力側回転部材68から離れる方向に凹む、第1凹部78aが形成されている。第1凹部78aは、第1収容部76aと同じ数だけ形成され、周方向で等角度間隔に配置されている。また、第1凹部78aは、第1出力側回転部材70aの径方向で、入力側回転部材68に形成されている第1収容部76aと同じ位置に形成されている。従って、第1収容部76aと第1凹部78aとの回転位置が一致すると、各第1収容部76aと各第1凹部78aとが、それぞれ軸方向で互いに隣接した状態となる。第1凹部78aは、第1ストラット72aの一端を収容可能な形状となっている。また、第1凹部78aの周方向の一端には、エンジン12の動力によって入力側回転部材68が車両前進方向(図2、図3において紙面下方)に回転した場合において、第1ストラット72aの一端と当接する第1壁面80aが形成されている。
第2出力側回転部材70bは、円盤状に形成され、カウンタ軸50の軸心を中心にして回転可能に配置されている。第2出力側回転部材70bは、カウンタ軸50に相対回転不能に設けられることで、カウンタ軸50と一体的に回転する。これに関連して、第2出力側回転部材70bは、カウンタ軸50、カウンタギヤ54、出力軸30、デファレンシャル装置38等を介して駆動輪14に動力伝達可能に連結されている。
第2出力側回転部材70bの軸方向で入力側回転部材68と対向する面には、入力側回転部材68から離れる方向に凹む、第2凹部78bが形成されている。第2凹部78bは、第2収容部76bと同じ数だけ形成され、周方向で等角度間隔に配置されている。また、第2凹部78bは、第2出力側回転部材70bの径方向で、入力側回転部材68に形成されている第2収容部76bと同じ位置に形成されている。従って、第2収容部76bと第2凹部78bとの回転位置が一致すると、各第2収容部76bと各第2凹部78bとが、それぞれ軸方向で互いに隣接した状態となる。第2凹部78bは、第2ストラット72bの一端を収容可能な形状となっている。また、第2凹部78bの周方向の一端には、図3に示すツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられた状態において、エンジン12の動力によって入力側回転部材68が車両後進方向(図2、図3において紙面上方)に回転した場合、および、車両前進走行中に惰性走行された場合に、第2ストラット72bの一端と当接する第2壁面80bが形成されている。
第1ストラット72aは、所定の厚みを有する板状の部材からなり、図2および図3の断面で示すように、回転方向(紙面上下方向)に沿って長手状に形成されている。また、第1ストラット72aは、図2および図3において紙面に対して垂直な方向に所定の寸法を有している。
第1ストラット72aの長手方向の一端は、捩りコイルバネ73aによって第1出力側回転部材70a側に付勢されている。また、第1ストラット72aの長手方向の他端は、第1収容部76aに形成されている第1段付部82aに当接させられている。第1ストラット72aは、第1段付部82aと当接する他端を中心にして回動可能となっている。捩りコイルバネ73aは、第1ストラット72aと入力側回転部材68との間に介在され、第1ストラット72aの一端を第1出力側回転部材70aに向かって付勢している。
上記のように構成されることで、第1ストラット72aは、ツーウェイクラッチTWCがワンウェイモードおよびロックモードに切り替えられた状態において、エンジン12側から車両前進方向に作用する動力が伝達されると、第1ストラット72aの一端が第1出力側回転部材70aの第1壁面80aに当接させられるとともに、第1ストラット72aの他端が入力側回転部材68の第1段付部82aに当接させられる。この状態において、入力側回転部材68と第1出力側回転部材70aとの相対回転が阻止され、車両前進方向に作用する動力がツーウェイクラッチTWCを介して駆動輪14側に伝達される。上記第1ストラット72a、捩りコイルバネ73a、第1収容部76a、および第1凹部78a(第1壁面80a)によって、前進走行中における車両10の駆動状態において動力を伝達する一方、前進走行中における車両10の被駆動状態において動力を遮断するワンウェイクラッチが構成される。
第2ストラット72bは、所定の厚みを有する板状の部材からなり、図2および図3の断面で示すように、回転方向(紙面上下方向)に沿って長手状に形成されている。また、第2ストラット72bは、図2および図3において紙面に対して垂直な方向に所定の寸法を有している。
第2ストラット72bの長手方向の一端は、捩りコイルバネ73bによって第2出力側回転部材70b側に付勢されている。また、第2ストラット72bの長手方向の他端は、第2収容部76bに形成されている第2段付部82bに当接させられている。第2ストラット72bは、第2段付部82bと当接する他端を中心にして回動可能となっている。捩りコイルバネ73bは、第2ストラット72bと入力側回転部材68との間に介在され、第2ストラット72bの一端を第2出力側回転部材70bに向かって付勢している。
上記のように構成されることで、第2ストラット72bは、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられた状態において、エンジン12側から車両後進方向に作用する動力が伝達されると、第2ストラット72bの一端が第2出力側回転部材70bの第2壁面80bに当接させられるとともに、第2ストラット72bの他端が入力側回転部材68の第2段付部82bと当接させられる。また、前進走行中に惰性走行された場合においても、第2ストラット72bの一端が第2出力側回転部材70bの第2壁面80bに当接させられるとともに、第2ストラット72bの他端が入力側回転部材68の第2段付部82bと当接させられる。この状態において、入力側回転部材68と第2出力側回転部材70bとの相対回転が阻止され、車両後進方向に作用する動力がツーウェイクラッチTWCを介して駆動輪14に伝達される。また、惰性走行中に駆動輪14側から伝達される回転が、ツーウェイクラッチTWCを介してエンジン12側に伝達される。上記第2ストラット72b、捩りコイルバネ73b、第2収容部76b、および第2凹部78b(第2壁面80b)によって、車両後進方向に作用する動力を駆動輪14に伝達する一方で、車両前進方向に作用する動力を遮断するワンウェイクラッチが構成される。
また、第2出力側回転部材70bには、その第2出力側回転部材70bを軸方向に貫通する複数個の貫通穴88が形成されている。各貫通穴88は、カウンタ軸50の軸方向から見て各第2凹部78bと重なる位置に形成されている。従って、各貫通穴88の一端は、第2凹部78bにそれぞれ連通している。各貫通穴88には、それぞれピン90が挿し通されている。ピン90は、円柱状に形成され、貫通穴88内を摺動可能となっている。ピン90の一端は、油圧アクチュエータ41を構成する押圧プレート74に当接させられているとともに、ピン90の他端は、周方向の一部が第2凹部78bを通る円環状のリング86に当接させられている。
リング86は、第2出力側回転部材70bに形成されるとともに周方向で隣り合う第2凹部78bを繋ぐように形成されている複数個の円弧状の溝84に嵌合し、第2出力側回転部材70bに対する軸方向の相対移動が許容されている。
油圧アクチュエータ41は、ツーウェイクラッチTWCと同じカウンタ軸50上であって、カウンタ軸50の軸方向において第2出力側回転部材70bと隣接する位置に配置されている。油圧アクチュエータ41は、押圧プレート74と、軸方向でカウンタギヤ54と押圧プレート74との間に介挿されている複数個のコイルスプリング92と、作動油が供給されることで押圧プレート74を軸方向でカウンタギヤ54側に移動させる推力を発生させる図示しない油圧室とを、備えている。
押圧プレート74は、円板状に形成され、カウンタ軸50に対して軸方向への相対移動可能に配置されている。スプリング92は、押圧プレート74を軸方向で第2出力側回転部材70b側に付勢している。従って、油圧アクチュエータ41の前記油圧室に作動油が供給されない状態では、図2に示すように、スプリング92の付勢力によって押圧プレート74が軸方向で第2出力側回転部材70b側に移動させられ、押圧プレート74が第2出力側回転部材70bに接触させられる。このとき、図2に示すように、ピン90、リング86、および第2ストラット72bの一端が、軸方向で入力側回転部材68側に移動させられることで、ツーウェイクラッチTWCがワンウェイモードに切り替えられる。
また、油圧アクチュエータ41の前記油圧室に作動油が供給された場合には、スプリング92の付勢力に抗って押圧プレート74が軸方向でカウンタギヤ54側に移動させられ、押圧プレート74が第2出力側回転部材70bから離れた状態となる。このとき、図3に示すように、ピン90、リング86、および第2ストラット72bの一端が、捩りコイルバネ73bの付勢力によって、軸方向でカウンタギヤ54側に移動させられることで、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられる。
図2に示すツーウェイクラッチTWCがワンウェイモードの状態では、押圧プレート74が、スプリング92の付勢力によって第2出力側回転部材70bに当接させられる。このとき、ピン90が押圧プレート74に押されて軸方向で入力側回転部材68側に移動させられるとともに、リング86についてもピン90に押されて軸方向で入力側回転部材68側に移動させられる。結果として、第2ストラット72bの一端が、リング86に押し付けられて入力側回転部材68側に移動させられることで、第2ストラット72bの一端と第2壁面80bとの当接が阻止される。このとき、入力側回転部材68と第2出力側回転部材70bとの相対回転が許容され、第2ストラット72bがワンウェイクラッチとして機能しなくなる。一方、第1ストラット72aの一端は、捩りコイルバネ73aによって第1出力側回転部材70a側に付勢されることで、第1凹部78aの第1壁面80aと当接可能になることから、第1ストラット72aは、車両前進方向に作用する駆動力を伝達するワンウェイクラッチとして機能する。すなわち、第1ストラット72aが、前進走行中における車両10の駆動状態において動力を伝達する一方、前進走行中における車両10の被駆動状態において動力を遮断するワンウェイクラッチとして機能する。
図2に示すツーウェイクラッチTWCがワンウェイモードの状態において、第1ストラット72aの一端が第1出力側回転部材70aの第1壁面80aに当接可能になることから、エンジン12からツーウェイクラッチTWCに車両前進方向に作用する動力が伝達される車両10の駆動状態になると、図2に示すように、第1ストラット72aの一端と第1壁面80aとが当接するとともに、第1ストラット72aの他端と第1段付部82aとが当接することで、入力側回転部材68と第1出力側回転部材70aとの間で車両前進方向への相対回転が阻止され、エンジン12の動力がツーウェイクラッチTWCを介して駆動輪14に伝達される。一方、前進走行中に惰性走行されることで車両10が被駆動状態になった場合には、第1ストラット72aの一端と第1出力側回転部材70aの第1壁面80aとが当接することはなく、入力側回転部材68と第1出力側回転部材70aとの相対回転が許容されることから、ツーウェイクラッチTWCを介した動力伝達が遮断される。よって、ツーウェイクラッチTWCがワンウェイモードの状態では、第1ストラット72aがワンウェイクラッチとして機能し、エンジン12から車両前進方向に作用する動力が伝達される車両10の駆動状態において動力が伝達される一方、前進走行中に惰性走行される車両10の被駆動状態において動力が遮断される。
図3に示すツーウェイクラッチTWCがロックモードの状態では、油圧アクチュエータ41の油圧室に作動油が供給されることで、スプリング92の付勢力に抗って、押圧プレート74が第2出力側回転部材70bから離れる方向に移動させられる。このとき、第2ストラット72bの一端が、捩りコイルバネ73bの付勢力によって、第2出力側回転部材70bの第2凹部78b側に移動させられ、第2壁面80bと当接可能になる。また、第1ストラット72aについては、図2のワンウェイモードと同様に、その一端が出力側回転部材70bの第1壁面80aに当接可能となっている。
図3に示すツーウェイクラッチTWCがロックモードの状態において、車両前進方向に作用する動力が伝達されると、第1ストラット72aの一端が第1出力側回転部材70aの第1壁面80aに当接するとともに、第1ストラット72aの他端が第1段付部82aと当接することで、入力側回転部材68と第1出力側回転部材70aとの間の車両前進方向への相対回転が阻止される。さらに、ツーウェイクラッチTWCがロックモードの状態において、車両後進方向に作用する動力が伝達されると、図3に示すように、第2ストラット72bの一端が第2出力側回転部材70bの第2壁面80bと当接するとともに、第2ストラット72bの他端が第2段付部82bと当接することで、入力側回転部材68と第2出力側回転部材70bとの間で車両後進方向への相対回転が阻止される。よって、ツーウェイクラッチTWCがロックモードの状態では、第1ストラット72aおよび第2ストラット72bがそれぞれワンウェイクラッチとして機能し、ツーウェイクラッチTWCにおいて、車両前進方向および車両後進方向に作用する動力を駆動輪14に伝達可能になる。従って、車両後進時において、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられることで後進走行が可能になる。また、車両前進走行中に惰性走行される車両10の被駆動状態において、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられることで、駆動輪14側から伝達される回転がツーウェイクラッチTWCを経由してエンジン12側に伝達されることで、エンジン12が連れ回されることによるエンジンブレーキを発生させることができる。よって、ツーウェイクラッチTWCがロックモードの状態では、第1ストラット72aおよび第2ストラット72bがワンウェイクラッチとして機能し、車両10の駆動状態および被駆動状態において動力が伝達される。
図4は、車両10に備えられたシフト切替装置としての不図示のシフトレバー98によって選択される操作ポジションPOSsh毎の各係合装置の係合状態を示す係合作動表である。図4において、「C1」が第1クラッチC1、「C2」が第2クラッチC2、「B1」が第1ブレーキB1、「TWC」がツーウェイクラッチTWCにそれぞれ対応している。また、「P(Pポジション)」、「R(Rポジション)」、「N(Nポジション)」、「D(Dポジション)」、および「M(Mポジション)」は、シフトレバー98によって選択される各操作ポジションPOSshを示している。また、図4中の「○」は各係合装置の係合を示し、空欄は解放を示している。なお、ツーウェイクラッチTWCに対応する「TWC」にあっては、「○」がツーウェイクラッチTWCのロックモードへの切替を示し、空欄がツーウェイクラッチTWCのワンウェイモードへの切替を示している。
例えば、シフトレバー98の操作ポジションPOSshが、車両停止ポジションであるPポジション、または、動力伝達遮断ポジションであるNポジションに切り替えられた場合には、図4に示すように、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および第1ブレーキB1が解放される。このとき、第1動力伝達経路PT1および第2動力伝達経路PT2の何れにおいても動力伝達されないニュートラル状態となる。
また、シフトレバー98の操作ポジションPOSshが、後進走行ポジションであるRポジションに切り替えられると、図4に示すように、第1ブレーキB1が係合されるとともに、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられる。第1ブレーキB1が係合されることで、エンジン12側から後進方向に作用する動力がギヤ機構28に伝達される。このとき、ツーウェイクラッチTWCがワンウェイモードにあると、その動力がツーウェイクラッチTWCによって遮断されるために後進走行できない。そこで、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられることで、車両後進方向に作用する動力がツーウェイクラッチTWCを介して出力軸30側に伝達されるため、後進走行可能となる。よって、操作ポジションPOSshがRポジションに切り替えられると、第1ブレーキB1が係合されるとともに、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられることで、第1動力伝達経路PT1(ギヤ機構28)を経由して車両後進方向の動力が伝達される、後進用ギヤ段が形成される。
また、シフトレバー98の操作ポジションPOSshが、前進走行ポジションであるDポジションに切り替えられると、図4に示すように、第1クラッチC1が係合されるか、あるいは、第2クラッチC2が係合される。図4に示す「D1(D1ポジション)」および「D2(D2ポジション)」は、制御上設定される仮想の操作ポジションであって、操作ポジションPOSshがDポジションに切り替えられると、車両10の走行状態に応じて、D1ポジションまたはD2ポジションに自動で切り替えられる。D1ポジションは、車両停止時を含む比較的低車速領域において切り替えられる。D2ポジションは、中車速領域を含む比較的高車速領域において切り替えられる。例えば、Dポジションで走行中において、車両10の走行状態が、例えば低車速領域から高車速領域に移動した場合には、D1ポジションからD2ポジションに自動で切り替えられる。
例えば、操作ポジションPOSshがDポジションに切り替えられたとき、車両10の走行状態がD1ポジションに対応する走行領域にある場合には、第1クラッチC1が係合されるとともに第2クラッチC2が解放される。このとき、エンジン12側から車両前進方向に作用する動力が、第1動力伝達経路PT1(ギヤ機構28)を経由して駆動輪14に伝達される前進用ギヤ段が形成される。以下、前進用ギヤ段が形成された状態での走行をギヤ走行モードと称する。なお、ツーウェイクラッチTWCは、ワンウェイモードに切り替えられているため、車両前進方向に作用する動力を駆動輪14に伝達することができる。
また、操作ポジションPOSshが、Dポジションに切り替えられたとき、車両10の走行状態がD2ポジションに対応する走行領域にある場合には、第1クラッチC1が解放されるとともに第2クラッチC2が係合される。このとき、エンジン12側から前進方向に作用する動力が、第2動力伝達経路PT2(無段変速機24)を経由して駆動輪14に伝達される前進用無段変速段が形成される。以下、前進用無段変速段が形成された状態での走行をベルト走行モードと称する。前進用無段変速段が形成されると、無段変速機24の変速を伴う走行が可能になる。このように、操作ポジションPOSshがDポジションに切り替えられると、動力伝達経路PTが、車両10の走行状態に応じて、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2との間で切り替えられる。
また、シフトレバー98の操作ポジションPOSshが、Mポジションに切り替えられると、運転者の手動操作によってアップシフトおよびダウンシフトに切り替えることが可能となる。すなわち、Mポジションは、運転者の手動操作による変速が可能なマニュアルシフトポジションとなる。例えば、操作ポジションPOSshがMポジションに切り替えられた状態で、運転者よってダウンシフト側に手動操作されると、第1クラッチC1が係合されるとともに、ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられる前進用ギヤ段が形成される。ツーウェイクラッチTWCがロックモードに切り替えられることで、ツーウェイクラッチTWCにおいて、車両10の駆動状態および被駆動状態の両方で動力伝達が可能となる。例えば惰性走行中は、駆動輪14側から回転が伝達される被駆動状態となるが、このときMポジションにおいてダウンシフト側に手動操作されると、駆動輪14側から伝達される回転が、ツーウェイクラッチTWCを経由してエンジン12側に伝達されることで、エンジン12が連れ回されることによるエンジンブレーキを発生させることができる。このように、操作ポジションPOSshがMポジションにおいてダウンシフトされると、第1動力伝達経路PT1(ギヤ機構28)を経由して駆動輪14に動力が伝達されるとともに、惰性走行中には、駆動輪14側から伝達される回転が第1動力伝達経路PT1を経由してエンジン12側に伝達されることでエンジンブレーキを発生させることができる、前進用ギヤ段が形成される。
また、シフトレバー98の操作ポジションPOSshが、Mポジションに切り替えられた状態で、運転者によってアップシフト側に手動操作されると、第2クラッチC2が係合される。このとき、第2動力伝達経路PT2(無段変速機24)を経由して駆動輪14に動力が伝達される前進用無段変速段が形成される。このように、操作ポジションPOSshがMポジションに切り替えられると、運転者の手動操作によって、第1動力伝達経路PT1を経由して動力が伝達される前進用ギヤ段、および、第2動力伝達経路PT2を経由して動力が伝達される前進用無段変速段の一方に切り替えられるマニュアルシフトが可能となる。なお、操作ポジションPOSshがMポジションにおいてダウンシフトされた場合が、図4のM1ポジションに対応し、操作ポジションPOSshがMポジションにおいてアップシフトされた場合が、図4のM2ポジションに対応している。また、これらM1ポジションおよびM2ポジションは、見かけ上は存在しないものの、操作ポジションPOSshがMポジションにおいてダウンシフト側に手動操作された場合には、M1ポジションに対応する係合状態に切り替えられ、操作ポジションPOSshがMポジションでアップシフト側に手動操作された場合には、M2ポジションに対応する係合状態に切り替えられる。
図4に示すように、第1クラッチC1は、第1動力伝達経路PT1を経由して動力が伝達される前進用ギヤ段(図4においてD1ポジションおよびM1ポジションに対応)を形成するギヤ走行モードにのみ係合される。言い換えれば、第1クラッチC1は、前進用ギヤ段以外の変速段を形成するときには係合されない。
図5は、図1の無段変速機24および動力伝達装置16の作動状態を制御する油圧制御回路46を概略的に示す図である。図5において、無段変速機24を構成するプライマリプーリ60は、プライマリ軸58に連結された固定シーブ60aと、固定シーブ60aに対してプライマリ軸58の軸心回りの相対回転不能且つ軸心方向の移動可能に設けられた可動シーブ60bと、可動シーブ60bに対してプライマリ推力Wpriを付与する油圧アクチュエータ60cとを備えている。プライマリ推力Wpriは、固定シーブ60aと可動シーブ60bとの間のV溝幅を変更するためのプライマリプーリ60の推力(=プライマリ圧Ppri×受圧面積)である。プライマリ圧Ppriは、油圧制御回路46によって油圧アクチュエータ60cへ供給される油圧である。
また、セカンダリプーリ64は、セカンダリ軸62に連結された固定シーブ64aと、固定シーブ64aに対してセカンダリ軸62の軸心回りの相対回転不能且つ軸心方向の移動可能に設けられた可動シーブ64bと、可動シーブ64bに対してセカンダリ推力Wsecを付与する油圧アクチュエータ64cとを備えている。セカンダリ推力Wsecは、固定シーブ64aと可動シーブ64bとの間のV溝幅を変更するためのセカンダリプーリ64の推力(=セカンダリ圧Psec×受圧面積)である。セカンダリ圧Psecは、油圧制御回路46によって油圧アクチュエータ64cへ供給される油圧である。
無段変速機24では、油圧制御回路46によってプライマリ圧Ppriおよびセカンダリ圧Psecが各々調圧されることにより、プライマリ推力Wpriおよびセカンダリ推力Wsecが各々制御される。これにより、無段変速機24では、各プーリ60、64のV溝幅が変化して伝動ベルト66の掛かり径(=有効径)が変更され、変速比γcvt(=プライマリ回転速度Npri/セカンダリ回転速度Nsec)が変化させられると共に、伝動ベルト66が滑りを生じないようにベルト挟圧力が制御される。つまり、プライマリ推力Wpriおよびセカンダリ推力Wsecが各々制御されることで、伝動ベルト66の滑りであるベルト滑りが防止されつつ無段変速機24の変速比γcvtが目標変速比γcvttgtに向かって変速される。なお、プライマリ回転速度Npriは、プライマリ軸58、入力軸22、およびプライマリプーリ60の回転速度であり、セカンダリ回転速度Nsecは、セカンダリ軸62およびセカンダリプーリ64の回転速度である。
油圧制御回路46は、複数個のソレノイドバルブ(電磁弁)および複数個の制御弁などを備えて構成されている。また、複数個のソレノイドバルブとして、第1クラッチC1の油圧アクチュエータC1aの供給油圧であるC1制御圧Pc1を制御するためのオンオフソレノイドバルブ91と、第2クラッチC2の油圧アクチュエータC2aの供給油圧であるC2制御圧Pc2を制御するためのリニアソレノイドバルブ94とを、含んでいる。なお、オンオフソレノイドバルブ91およびリニアソレノイドバルブ94は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
また、図5では省略されているが、油圧制御回路46は、第1ブレーキB1の油圧アクチュエータB1aに供給される供給油圧であるB1制御圧Pb1、ツーウェイクラッチTWCのモードを切り替えるための油圧アクチュエータ41に供給される供給油圧であるTWC油圧Ptwc、プライマリプーリ60の油圧アクチュエータ60cに供給されるプライマリ圧Ppri、セカンダリプーリ64の油圧アクチュエータ64cに供給されるセカンダリ圧Psec、およびロックアップクラッチLUを制御するLU圧Pluを、直接または間接的に制御するための複数個のソレノイドバルブを備えている。本実施例では、これらの油圧を制御するソレノイドバルブは、何れもリニアソレノイドバルブから構成されているものとする。
上述したように、第1クラッチC1の油圧アクチュエータC1aに供給されるC1制御圧Pc1は、オンオフソレノイドバルブ91によって制御される。オンオフソレノイドバルブ91は、図示しないモジュレータバルブによって調圧されたモジュレータ圧PMを元圧として、油圧アクチュエータC1aに供給されるC1制御圧Pc1を出力する。例えば、オンオフソレノイドバルブ91がオン側に切り替えられることでC1制御圧Pc1としてモジュレータ圧PMが出力され、オンオフソレノイドバルブ91がオフ側に切り替えられることで、油圧アクチュエータC1aの作動油が排出されてC1制御圧Pc1がゼロになる。すなわち、オンオフソレノイドバルブ91は、C1制御圧Pc1を、モジュレータ圧PMまたはゼロの何れかに制御する一方で、その間の油圧については精緻に制御することができない。なお、油圧制御回路46において、オンオフソレノイドバルブ91は、第1クラッチC1以外の係合装置の油圧アクチュエータには接続されないように油路が構成されている。
第2クラッチC2の油圧アクチュエータC2aに供給されるC2制御圧Pc2は、リニアソレノイドバルブ94によって制御される。リニアソレノイドバルブ94は、モジュレータバルブPMを元圧し、リニアソレノイドバルブ94に出力される電気信号(指示電流)に基づいて、油圧アクチュエータC2aに供給されるC2制御圧Pc2を精緻に制御することができる。
図1に戻り、車両10は、動力伝達装置16の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置100を備えている。電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置100は、エンジン12の出力制御、無段変速機24の変速制御やベルト挟圧力制御、前記複数個の係合装置(C1、B1、C2、TWC)の各々の作動状態を切り替える油圧制御等を実行する。電子制御装置100は、必要に応じてエンジン制御用、油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置100には、車両10に備えられた各種センサ等(例えば各種回転速度センサ102、104、106、108、109、アクセル操作量センサ110、スロットル開度センサ112、シフトポジションセンサ114、油温センサ116など)による各種検出信号等(例えばエンジン回転速度Ne、入力軸回転速度Ninと同値となるプライマリ回転速度Npri、セカンダリ回転速度Nsec、車速Vに対応する出力軸回転速度Nout、ツーウェイクラッチTWCを構成する入力側回転部材68の入力回転速度Ntwcin、運転者の加速操作の大きさを表すアクセルペダル45のアクセル操作量θacc、スロットル開度tap、車両10に備えられたシフト切替装置としてのシフトレバー98の操作ポジションPOSsh、油圧制御回路46内の作動油の温度である作動油温THoilなど)が、それぞれ供給される。なお、入力軸回転速度Nin(=プライマリ回転速度Npri)は、タービン回転速度NTでもある。また、電子制御装置100は、プライマリ回転速度Npriとセカンダリ回転速度Nsecとに基づいて無段変速機24の実際の変速比γcvtである実変速比γcvt(=Npri/Nsec)を算出する。また、電子制御装置100は、出力軸回転速度Noutに基づいて、ツーウェイクラッチTWCを構成する第1出力側回転部材70aおよび第2出力側回転部材70b(以下、特に区別しない場合には出力側回転部材70と称す)の出力回転速度Ntwcoutを算出する。
電子制御装置100からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置42、油圧制御回路46など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御するためのエンジン制御指令信号Se、無段変速機24の変速やベルト挟圧力等を制御するための油圧制御指令信号Scvt、前記複数個の係合装置の各々の作動状態を制御するための油圧制御指令信号Scbd、ロックアップクラッチLUの作動状態を制御するための油圧制御指令信号Sluなど)が、それぞれ出力される。
これら各種指令信号を受けて、油圧制御回路46から、第1クラッチC1の油圧アクチュエータC1aに供給される供給油圧であるC1制御圧Pc1、第1ブレーキB1の油圧アクチュエータB1aに供給される供給油圧であるB1制御圧Pb1、第2クラッチC2の油圧アクチュエータC2aに供給される供給油圧であるC2制御圧Pc2、ツーウェイクラッチTWCのモードを切り替える油圧アクチュエータ41に供給される供給油圧であるTWC油圧Ptwc、プライマリプーリ60の油圧アクチュエータ60cに供給されるプライマリ圧Ppri、セカンダリプーリ64の油圧アクチュエータ64cに供給されるセカンダリ圧Psec、ロックアップクラッチLUを制御するLU圧Pluなどが出力される。
電子制御装置100は、車両10における各種制御を実現するために、エンジン制御手段として機能するエンジン制御部120と、変速制御手段として機能する変速制御部122と、ニュートラル制御手段として機能するニュートラル制御部126とを、機能的に備えている。
エンジン制御部120は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である例えば駆動力マップにアクセル操作量θaccおよび車速Vを適用することで要求駆動力Fdemを算出する。エンジン制御部120は、その要求駆動力Fdemが得られる目標エンジントルクTetを設定し、その目標エンジントルクTetが得られるようにエンジン12を制御する指令をエンジン制御装置42へ出力する。
変速制御部122は、例えば、車両停止状態または低車速状態において、操作ポジションPOSshがNポジションから例えばDポジションに切り替えられたとき、第1クラッチC1を係合状態に切り替える指令を油圧制御回路46へ出力する。これにより、動力伝達装置16において前進用ギヤ段が形成され、第1動力伝達経路PT1を経由して動力を伝達することによる前進走行が可能となる前進用ギヤ走行モードに切り替えられる。また、変速制御部122は、車両停止状態において、操作ポジションPOSshがNポジションからRポジションに切り替えられたとき、第1ブレーキB1を係合状態に切り替えるとともに、ツーウェイクラッチTWCをロックモードに切り替える指令を油圧制御回路46へ出力する。これにより、動力伝達装置16において後進用ギヤ段が形成され、第1動力伝達経路PT1を経由して動力を伝達することにより後進走行が可能となる後進用ギヤ走行モードに切り替えられる。
また、変速制御部122は、例えば第2動力伝達経路PT2を経由して動力を伝達するベルト走行モードで走行中において、アクセル開度θacc、車速Vなどに基づいて算出される目標ギヤ比γtgtとなるように無段変速機24のギヤ比γを制御する指令を油圧制御回路46へ出力する。具体的には、変速制御部122は、無段変速機24のベルト挟圧を最適な値に調整しつつ、エンジン12の動作点が所定の最適ライン(例えばエンジン最適燃費線)上となる無段変速機24の目標ギヤ比γtgtを達成する予め定められた関係(例えば変速マップ)を記憶しており、その関係からアクセル操作量θaccおよび車速Vなどに基づいて、プライマリプーリ60の油圧アクチュエータ60cに供給されるプライマリ圧Ppriの指令値としてのプライマリ指示圧Ppritgtと、セカンダリプーリ64の油圧アクチュエータ64cに供給されるセカンダリ圧Psecの指令値としてのセカンダリ指示圧Psectgtとを決定し、プライマリ指示圧Ppritgtおよびセカンダリ指示圧Psectgtとなるようにプライマリ圧Ppriおよびセカンダリ圧Psecを制御する指令を、油圧制御回路46へ出力して無段変速機24の変速を実行する。なお、無段変速機24の変速制御については公知の技術であるため、詳細な説明を省略する。
また、変速制御部122は、操作ポジションPOSshがDポジションである場合には、第1動力伝達経路PT1を経由して動力が伝達されるギヤ走行モードと、第2動力伝達経路PT2を経由して動力が伝達されるベルト走行モードとの間で走行モードを切り替える切替制御を実行する。すなわち、変速制御部122は、動力伝達経路PTを、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2との間で切り替える切替制御を実行する。変速制御部122は、ギヤ走行モードにおけるギヤ機構28のギヤ比ELに対応する第1速変速段と、ベルト走行モードにおける無段変速機24の最ロー側変速比γmaxに対応する第2速変速段との間で変速するための予め定められた関係である変速マップを記憶している。変速マップは、車速Vおよびアクセル操作量θaccなどから構成され、変速マップ上には、第2速変速段へのアップシフトすなわちベルト走行モードへの切替を判断するためのアップシフト線、および、第1速変速段へのダウンシフトすなわちギヤ走行モードへの切替を判断するためのダウンシフト線が設定されている。変速制御部122は、変速マップに実際の車速Vおよびアクセル操作量θaccを適用することで変速の要否を判断し、その判断結果に基づいて変速(すなわち走行モードの切替)を実行する。例えば、ベルト走行モードで走行中に、ダウンシフト線を跨いだ場合には、第1速変速段(ギヤ走行モード)へのダウンシフトが判断され(ダウンシフト要求)、ギヤ走行モードで走行中に、アップシフト線を跨いだ場合には、第2速変速段(ベルト走行モード)へのアップシフトが判断される(アップシフト要求)。なお、ギヤ走行モードが、図4のD1ポジションに対応し、ベルト走行モードが、図4のD2ポジションに対応している。
例えば、変速制御部122は、操作ポジションPOSshがDポジションにおけるギヤ走行モード(図4のD1ポジション、第1速変速段に対応)で走行中に、ベルト走行モード(図4のD2ポジション、第2速変速段に対応)に切り替えるアップシフト要求が成立すると、第1クラッチC1を解放させるとともに第2クラッチC2を係合させる指令を油圧制御回路46へ出力する。これにより、動力伝達経路PTが、第1動力伝達経路PT1から第2動力伝達経路PT2に切り替えられることで、ギヤ走行モードからベルト走行モードに切り替えられる。
ニュートラル制御部126は、シフトレバー98の操作ポジションPOSshがDポジションの状態、具体的にはギヤ走行モード(第1変速段)の状態で車両10が停止したとき、所定の条件(作動油の作動油温THoilが所定範囲内など)を満たすとニュートラル制御を実行する。ニュートラル制御とは、車両10の停止時に係合される係合装置(本実施例では第1クラッチC1)をスリップ係合(半係合)させるスリップ制御を実行することで、車両停止中にエンジン12に係る負荷を低減して、車両停止時における燃費の向上をはかるものである。ここで、第1クラッチC1のC1制御圧Pc1がリニアソレノイドバルブによって制御される場合には、第1クラッチC1のスリップ制御を実行することによるニュートラル制御を実行することができる。しかしながら、本実施例では、第1クラッチC1のC1制御圧Pc1がオンオフソレノイドバルブ91によって制御されるため、第1クラッチC1のスリップ制御を実行することができない。従って、第1クラッチC1のスリップ制御によるニュートラル制御を実行することができない。
そこで、ニュートラル制御部126は、第1クラッチC1に代わって、第2クラッチC2のスリップ制御を実行することによるニュートラル制御を実行する。第2クラッチC2は、リニアソレノイドバルブ94によってC2制御圧Pc2を精緻に制御することができることから、第2クラッチC2のスリップ制御を実行することができる。ここで、車両10が停止した直後は、第1クラッチC1が係合された状態となるため、第2クラッチC2のスリップ制御によるニュートラル制御を実行する場合には、第1クラッチC1を解放する必要がある。そこで、車両10が停止した直後に第1クラッチC1を解放すると、動力伝達装置16がニュートラル状態に切り替わることでエンジン12にかかる負荷がなくなるため、エンジン回転速度Neの吹き上がりが発生する虞がある。
このエンジン回転速度Neの吹き上がりを防止するため、ニュートラル制御部126は、車両10が停止すると、第1クラッチC1が係合された状態で、第2クラッチC2のC2制御圧Pc2を予め設定されている待機圧Pc2stに制御し、その待機圧Pc2stで一時的に待機させる。待機圧Pc2stは、スリップ制御を開始する時点において予め設定されている第2クラッチC2のスリップ開始トルク容量が確保される油圧Pc2slipに、所定圧αを加算した値(Pc2slip+α)に設定されている。なお、所定値αは、第2クラッチC2のスリップ制御に速やかに移行できる範囲に設定されている。第2クラッチC2のC2制御圧Pc2が待機圧Pc2stに制御されると、第2クラッチC2において所定容量βのトルク容量が確保されるように設定されている。この所定容量βは、予め実験的または設計的に設定され、第2クラッチC2のトルク容量が所定容量βの状態で第1クラッチC1が解放された場合において、エンジン回転速度Neの吹き上がりが防止される値に設定されている。
ニュートラル制御部126は、第2クラッチC2のC2制御圧Pc2を待機圧Pc2stで待機させた後、すなわち第2クラッチC2のトルク容量を所定容量βとした後に、第1クラッチC1を解放させる。このとき、第2クラッチC2のトルク容量が所定容量βとされた状態であるため、第1クラッチC1が解放される過渡期においてエンジン回転速度Neの吹き上がりが防止される。ニュートラル制御部126は、第1クラッチC1が解放されると、第2クラッチC2によるニュートラル制御を開始する。具体的には、ニュートラル制御部126は、第2クラッチC2のC2制御圧Pc2を、スリップ制御が開始されるスリップ開始トルク容量が確保される油圧Pc2slipに向けて漸減させる。また、ニュートラル制御部126は、C2制御圧Pc2が油圧Pc2slipに到達すると、第2クラッチC2のスリップ量が予め設定されている所定値となるようにC2制御圧Pc2を制御する。
このように、ニュートラル制御を実行する場合には、第2クラッチC2のC2制御圧Pc2を予め待機圧Pc2stに制御した後、第1クラッチC1を解放することで、エンジン回転速度Neの吹き上がりを防止しつつ、第2クラッチC2によるニュートラル制御が可能になる。なお、第2クラッチC2のC2制御圧Pc2が待機圧Pc2stになると、第1クラッチC1および第2クラッチC2が同時にトルク容量を持つ状態となるが、このときツーウェイクラッチTWCが遮断されることで第1動力伝達経路PT1が遮断される。従って、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2とが互いに干渉することも防止される。
図6は、電子制御装置100の制御作動の要部、すなわち、シフトレバー98の操作ポジションPOSshがDポジションで車両10が停止したときに実行されるニュートラル制御の制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、車両10の走行中において繰り返し実行される。なお、後述するステップST1からステップST5は、何れもニュートラル制御部126の制御機能に対応している。
まず、ステップST1(以下、ステップを省略)において、車両10が、第1クラッチC1の係合される第1速変速段すなわちギヤ走行モードで停止したかが判定される。ST1が否定される場合、本ルーチンが終了させられる。ST1が肯定される場合、ST2において、ニュートラル制御の実行が許容される作動条件が成立しているかが判定される。この作動条件は、例えば作動油の作動油温THoilが所定範囲であることや、路面の勾配が所定値以下などである。ST2が否定される場合、ニュートラル制御が実行されないため、本ルーチンが終了させられる。
ST2が肯定される場合、ST3において、第2クラッチC2のC2制御圧Pc2が、待機圧Pc2st(油圧Pc2slip+所定圧α)に制御され、その待機圧Pc2stで一時的に待機される。次いで、ST4において、第1クラッチC1が解放される。そして、ST5において、第2クラッチC2のC2制御圧Pc2が低下させられ、第2クラッチC2のスリップ量が予め設定されている値となるように制御される。
図7は、図6のフローチャートに基づく作動結果を示すタイムチャートである。具体的には、車両10が停止してニュートラル制御が実行されるまでの作動状態を示すタイムチャートである。図7において縦軸は、上から順番に、タービン回転速度NTに対応する入力軸回転速度Nin、第1クラッチC1のC1制御圧Pc1(指示圧)、第2クラッチC2のC2制御圧Pc2(指示圧)を、それぞれ示している。
図7に示すように、t1時点以前において、ギヤ走行モードで走行中に車両10を停止させるために減速されている。これに関連して、t1時点以前において、入力軸回転速度Ninが低下している。また、車両10がギヤ走行モードの状態であるため、t1時点以前において第1クラッチC1が係合されている。t1時点において、車両10が停止すると、第1クラッチC1が係合されていることから、入力軸回転速度Ninがゼロになる。また、t1時点において、第2クラッチC2のC2制御圧Pc2(指示圧)が待機圧Pc2stに設定され、C2制御圧Pc2(実圧)がその待機圧Pc2となるように制御される。t1時点から所定時間経過したt2時点において、第1クラッチC1を解放するため、C1制御圧Pc1(指示圧)がゼロに設定されている。これより、第1クラッチC1が解放される。なお、t1時点とt2時点の間で設定される所定時間は、少なくともC2制御圧Pc2の実圧が、待機圧Pc2stとなる値に設定されている。そして、第1クラッチC1が解放されると、ニュートラル制御を実行するため、C2制御圧Pc2が油圧Pc2slipに向かって漸減させられ、その後は、第2クラッチC2のスリップ量が予め設定されている値となるように制御される。上記のように制御されることで、第1クラッチC1を解放する時点で、第2クラッチC2のトルク容量が所定容量βで保持されるため、エンジン回転速度Neの吹き上がりを生じさせることなく、第2クラッチC2のスリップ制御によるニュートラル制御を実施することができる。これに関連して、第1クラッチC1のC1制御圧Pc1が、オンオフソレノイドバルブ91によって制御される場合であっても、ニュートラル制御を実施できるため、燃費を向上させることもできる。
上述のように、本実施例によれば、第1クラッチC1のC1制御圧Pc1がオンオフソレノイドバルブ91によって制御されることから、第1クラッチC1のスリップ制御によるニュートラル制御は実施できない。そこで、車両停止中は、リニアソレノイドバルブ94によってC2制御圧Pc2が制御される第2クラッチC2をスリップ制御することによるニュートラル制御が実行される。ここで、車両停止直後は、第1クラッチC1が係合された状態となるが、この状態から第2クラッチC2のトルク容量が所定容量となる待機圧Pc2に制御されることで、その後の第1クラッチC1の解放過渡期においてエンジン回転速度Ninの吹き上がりが防止される。また、第1クラッチC1の解放後は、第2クラッチC2によるスリップ制御(ニュートラル制御)が可能になる。また、第1クラッチC1のC1制御圧Pc1がオンオフソレノイドバルブ91によって制御されることから、第1クラッチC1のC1制御圧Pc1がリニアソレノイドバルブによって制御される場合に比べて製造コストが低減される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、動力伝達装置16は、入力軸22と出力軸30との間に、第1クラッチC1およびツーウェイクラッチTWCを備える第1動力伝達経路PT1と、無段変速機24および第2クラッチC2を備える第2動力伝達経路PT2とを、並列に備えて構成されていたが、本発明は、必ずしも上記構成に限定されない。本発明は、複数の動力伝達経路と、各々の動力伝達経路に設けられる係合装置を備えた構成であれば、適宜適用され得る。
例えば、車両用動力伝達装置が、複数個の遊星歯車装置と複数個の係合装置とを備えて構成される有段の自動変速機から構成されるものであっても、本発明を適用することができる。有段の自動変速機にあっては、係合装置の係合状態に応じて複数の変速段に変速される。また、各変速段に変速されると、それぞれ異なる動力伝達経路が形成されることから、自動変速機は、変速段数と同じ数の動力伝達経路を備えることとなる。ここで、車両発進時に形成される動力伝達経路において、この動力伝達経路上に係合装置(発進用係合装置)および副クラッチ(ワンウェイクラッチ)が直列に配置され、且つ、この発進用係合装置の供給油圧がオンオフソレノイドバルブによって制御されるように構成される。また、車両の停止後にニュートラル制御を実行する場合には、リニアソレノイドバルブによって係合油圧が制御される係合装置をスリップ制御させることでニュートラル制御が実行される。このように構成される場合であっても、ニュートラル制御を実行する場合には、リニアソレノイドバルブによって供給油圧が制御される係合装置のトルク容量を所定容量だけ確保した状態で、発進用係合装置を解放することで、エンジン回転速度Neの吹き上がりを防止しつつ、ニュートラル制御を実行することができる。
また、前述の実施例では、ツーウェイクラッチTWCは、車両の駆動状態において動力を伝達する一方で車両の被駆動状態において動力を遮断するワンウェイモードと、車両の駆動状態および車両の被駆動状態において動力を伝達するロックモードに切替可能に構成されていたが、本発明は、必ずしも本実施例のツーウェイクラッチTWCに限定されない。本発明は、車両の駆動状態において動力を伝達する一方で車両の被駆動状態において動力を遮断する、従来のワンウェイクラッチであっても適用することができる。また、ツーウェイクラッチTWCの構造は、必ずしも本発明に限定されるものではなく、適宜変更されても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。