JP2020055697A - デラフォサイト型Cu系複合酸化物膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
基板を用意する工程と、
前記基板上にデラフォサイト型Cu系複合酸化物の種結晶層を形成する工程と、
前記種結晶層を、Cuのイオンと、Al、Ga、Fe、Cr及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素のイオンとを含有する原料水溶液に浸漬して水熱処理を施し、それによりCuXO2(式中、XはAl、Ga、Fe、Cr及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素である)の一般式で表される組成を有するデラフォサイト型Cu系複合酸化物膜を形成する工程と、
を含む、方法が提供される。
本発明は、デラフォサイト型Cu系複合酸化物膜の製造方法に関する。本発明の方法により製造されるデラフォサイト型Cu系複合酸化物膜は、CuXO2(式中、XはAl、Ga、Fe、Cr及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素である)の一般式で表される組成を有する。この組成がデラフォサイト型結晶構造をもたらし、p型性能の発現に寄与する。上記一般式におけるXの例としては、Al、Ga、Fe、Cr、Mn及びそれらの組合せが挙げられ、好ましくはAl、Ga、Cr、及びそれらの組合せ、より好ましくはAl、Ga、及びそれらの組合せ、さらに好ましくはGaが挙げられる。Xは2種又はそれ以上の元素であってもよく、例えばAl及びGaの組合せであってもよい。この場合は、2種類のデラフォサイト型結晶相(例えばCuAlO2相及びCuGaO2相)が混在していてもよく、混晶であってもよい。
本発明の方法においては、まず、基板を用意する。基板は、その上にデラフォサイト型Cu系複合酸化物の種結晶層を形成可能なものであれば特に限定されないが、加熱に伴う基板からの種結晶層の剥がれを防止する観点から、基板の25〜1000℃の温度範囲における面内方向の平均熱膨張係数が7.0×10−6〜10.0×10−6/Kであるのが好ましく、より好ましくは7.5×10−6〜9.5×10−6/Kである。そのような基板の例としては、サファイア基板、配向多結晶アルミナ基板、及びMgAl2O4基板が挙げられ、特に好ましくはサファイア基板及び配向多結晶アルミナ基板である。c面サファイア基板の25〜1000℃の温度範囲における平均熱膨張係数は8.3×10−6/Kである。配向多結晶アルミナ基板の25〜1000℃の温度範囲における平均熱膨張係数が8.3×10−6/Kである。基板の25〜1000℃の温度範囲における平均熱膨張係数は、押し棒式膨張計を用いてJIS R 1618に記載の方法により測定することができる。
次に、基板上にデラフォサイト型Cu系複合酸化物の種結晶層を形成する。種結晶層は、CuX’O2(式中、X’はAl、Ga、Fe、Cr及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素である)の一般式で表される組成を有するのが好ましい。上記組成が種結晶層上におけるデラフォサイト型Cu系複合酸化物膜の望ましい形成を可能とし、高いp型性能を呈するデラフォサイト型Cu系複合酸化物膜の実現に寄与する。上記一般式におけるX’の例としては、Al、Ga、Fe、Cr、Mn及びそれらの組合せが挙げられ、好ましくはAl、Ga、Cr、及びそれらの組合せ、より好ましくはAl、Ga、及びそれらの組合せ、さらに好ましくはGaが挙げられる。Xは2種又はそれ以上の元素であってもよく、例えばAl及びGaの組合せであってもよい。種結晶層は、水熱処理により合成されるデラフォサイト型Cu系複合酸化物膜と同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
続いて、種結晶層を原料水溶液に浸漬して水熱処理を施し、それによりCuXO2(式中、XはAl、Ga、Fe、Cr及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素である)の一般式で表される組成を有するデラフォサイト型Cu系複合酸化物膜を形成する。原料水溶液はCuXO2を生成するための前駆体を含む溶液であり、具体的には、Cuのイオンと、Al、Ga、Fe、Cr及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素のイオンとを含有する。これらの金属のイオンは、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の金属塩の形態で供されるのが好ましい。Cuイオンを与える塩の好ましい例としては、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅、及びそれらの水和物が挙げられ、特に好ましくは硝酸銅又はその水和物である。Alイオンを与える塩の好ましい例としては、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、及びそれらの水和物が挙げられ、特に好ましくは硝酸アルミニウム又はその水和物である。Gaイオンを与える塩の好ましい例としては、硝酸ガリウム、硫酸ガリウム、酢酸ガリウム、及びそれらの水和物が挙げられ、特に好ましくは硝酸ガリウム又はその水和物である。Feイオンを与える塩の好ましい例としては、硝酸鉄、硫酸鉄、酢酸鉄、及びそれらの水和物が挙げられ、特に好ましくは硝酸鉄又はその水和物である。Crイオンを与える塩の好ましい例としては、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、及びそれらの水和物が挙げられ、特に好ましくは硝酸クロム又はその水和物である。Mnイオンを与える塩の好ましい例としては、硝酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガン、及びそれらの水和物が挙げられ、特に好ましくは硝酸マンガン又はその水和物である。原料水溶液の好ましいpHは6.0〜11.0であり、より好ましくは7.0〜10.0、さらに好ましくは8.0〜10.0である。原料水溶液のpH調整は水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液の滴下により行うのが好ましい。また、金属イオンを還元するために、エチレングリコール等の還元剤を添加してもよい。例えば、2価のCuイオン(Cu2+)を用いる場合、エチレングリコール等の還元剤を添加することで1価に還元することができる。
(1)基板上への種結晶層の形成
直径2インチ(5.08cm)のc面サファイア基板(並木精密宝石株式会社製)に、スパッタリングにより、厚さ500nmのCuAlO2層を形成した。
<スパッタリング条件>
・ターゲット:CuAlO2(株式会社豊島製作所製、純度4N)
・スパッタリング方式:RFマグネトロン
・成膜時圧力:1.0Pa
・成膜時導入ガス種:Ar+O2(流量比Ar:O2=3:2)
・基板温度:加熱なし
硝酸ガリウム八水和物(キシダ化学株式会社製)2.460g、硝酸銅2.5水和物(シグマアルドリッチ社製)1.450g、milli−Q水36mL、エチレングリコール(キシダ化学株式会社製)30mLをビーカーに入れ、マグネットスターラーにて10分間攪拌して原料溶液を調製した。別途用意した0.5MのKOH水溶液を上記原料溶液に滴下してpHを8.8とした。その後、原料溶液を攪拌したまま30分保持した。上記(1)で作製した10mm角のCuAlO2層付きサファイア基板を、内径10mm、長さ約10mmのシリコーンチューブに差し、基板を立てた状態とした。これを内容積50mLのオートクレーブ内にセットし、上記pH調整済み原料溶液を35mL入れ、190℃で24時間水熱処理を行って水熱合成膜を形成させた。室温まで冷却後、基板をオートクレーブから取り出し、milli−Q水にて洗浄した。こうして、基板上に種結晶層(厚さ500nm)及び水熱合成膜(厚さ0.2μm)を備えた複合材料を得た。
水熱処理後の複合材料の種結晶層上の水熱合成膜に対し、以下の各種評価を行った。
水熱合成膜に対し、X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス製、D8 ADVANCE)を用いて膜の定性分析を行ったところ、デラフォサイト型のCuAlO2及びCuGaO2が検出された。CuAlO2は種結晶層に由来する組成であり、CuGaO2は水熱合成膜に由来する組成である。
水熱合成膜の表面を光学顕微鏡で観察して、図1に示される画像を取得した。取得された光学顕微鏡像に基づいて単結晶ドメインサイズを以下の手順で測定した。光学顕微鏡像より、多数の粒子が膜面方向に互いに結合していることが観察される。各粒子(ドメイン)が単結晶(結晶方位が同一)であることは、別途EBSDやラマン分光等の手法を用いることで確認可能である。視野範囲は、視野の上下端に平行な直線を引いた場合に、いずれの直線も5個から15個の粒子と交わるような直線が引けるような視野範囲とした。平行に引いた3本の直線において、直線が交わる全ての粒子に対し、個々の粒子の内側の線分の長さを平均したものに1.5を乗じた値をドメインサイズとした。本例でのドメインサイズは72μmであった。また、種結晶層の単結晶ドメインサイズも同程度であった。
水熱処理後の複合材料の断面をSEMで観察して、図2に示される断面SEM像を取得した。図2に示されるように、スパッタリングにより形成されたCuAlO2種結晶層と、その上に水熱処理により形成されたCuGaO2層とが確認された。この膜に対し、TOF−SIMSによりCuGaO2層部分の不純物濃度を測定した。この測定は、エッチングイオン種:Cs+、エッチングイオン加速電圧:2kV、一次イオン種:Bi+、一次イオン加速電圧:25kV、二次イオン極性:Negativeの条件で行った。その結果、CuGaO2層中に、Hが5×1020atoms/cm3、Cが3×1020atoms/cm3の濃度で検出された。
水熱合成膜表面に対し、走査型静電容量顕微鏡(SCM)(ブルカー・エイエックス社製、NanoScope IV)を用いて、水熱合成膜のp型強度の測定を行った。この測定は、探針としてPtIrコートされたシリコンカンチレバーを用い、変調電圧8.0V、DCバイアス電圧0Vにて行った。その結果、図3に示されるSCM像が得られた。図3に示されるSCM像に示されるように、強いp型のdC/dV信号が検出された。
本例は、例1において作製したCuAlO2層付きサファイア基板(その上に水熱合成膜を作成していないもの)に対して評価を行った例であり、水熱処理による水熱合成膜の形成を行わなかったこと以外は例1と同様の製造手順を行った比較例に相当する。例1で作製したCuAlO2層付きサファイア基板に対し、TOF−SIMSによりCuAlO2種結晶層中の不純物濃度の測定を試みたところ、H濃度及びC濃度共に検出限界以下であった。また、走査型静電容量顕微鏡(SCM)(ブルカー・エイエックス社製、NanoScope IV)を用いてCuAlO2種結晶層の評価を行ったところ、図4に示されるSCM像が得られた。図4に示されるように、弱いp型のdC/dV信号が検出された。
種結晶層の形成においてスパッタリングターゲットとしてCuGaO2ターゲットを用いたこと以外は、例1と同様にして、水熱合成膜の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであり、SCM像において強いp型のdC/dV信号が検出された。
種結晶層の形成においてアニール条件を1050℃で15秒間としたこと以外は例1と同様にして、水熱合成膜の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであり、単結晶ドメインサイズはやや小さくなったが、SCM像において強いp型のdC/dV信号が検出された。
種結晶層の形成においてアニール条件を1150℃で2分間としたこと以外は例1と同様にして、水熱合成膜の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであり、単結晶ドメインサイズはやや大きくなったが、SCM像において強いp型のdC/dV信号が検出された。
水熱処理における原料溶液のpHを6.5としたこと以外は例1と同様にして、水熱合成膜の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであり、SCM像において強いp型のdC/dV信号が検出された。
水熱処理の温度を120℃としたこと以外は例1と同様にして、水熱合成膜の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであり、SCM像において強いp型のdC/dV信号が検出された。
水熱処理の温度を220℃としたこと以外は例1と同様にして、水熱合成膜の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであり、SCM像において強いp型のdC/dV信号が検出された。
水熱処理における原料溶液のpHを10.5としたこと以外は例1と同様にして、水熱合成膜の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであり、SCM像において強いp型のdC/dV信号が検出された。
c面サファイア基板の代わりに以下に示される手順で作製された配向多結晶アルミナ基板を用いたこと以外は例1と同様にして、水熱合成膜の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであり、SCM像において強いp型のdC/dV信号が検出された。
(1)板状アルミナ粒子の作製
高純度γ−アルミナ粉末(TM−300D、大明化学工業株式会社製)96重量部と、高純度AlF3粉末(関東化学株式会社製、鹿特級)4重量部と、種結晶としての高純度α−アルミナ粉末(TM−DAR、大明化学工業株式会社製、D50:1μm)0.17重量部とを、溶媒としてのIPA(イソプロピルアルコール)とともに、直径2mmのアルミナボールを用いて5時間ポットミルで混合した。ポットミル混合後、IPAをエバポレータにて留去して混合粉末を得た。得られた混合粉末300gを高純度アルミナ製の鞘(純度99.5重量%、容積750cm3)に入れ、高純度アルミナ製(純度99.5重量%)の蓋をして電気炉内でエアフロー中、900℃で3時間熱処理した。エアーの流量は25000cc/minとした。熱処理後の粉末を大気中、1150℃で42.5時間アニール処理した後、直径2mmのアルミナボールを用いて4時間粉砕して、平均粒径2μm、厚み0.3μm、アスペクト比約7の板状アルミナ粒子からなる粉末を得た。
上記(1)で作製した板状アルミナ粒子1.5重量部と、平均粒径がこの板状アルミナ粒子の厚みより小さい微細アルミナ粒子(TM−DAR、平均粒径0.1μm、大明化学工業株式会社製)98.5重量部とを混合した。この混合アルミナ粉末100重量部に対し、酸化マグネシウム(500A、宇部マテリアルズ株式会社製)0.025重量部と、バインダーとしてポリビニルブチラール(品番BM−2、積水化学工業株式会社製)7.8重量部と、可塑剤としてジ(2−エチルヘキシル)フタレート(黒金化成株式会社製)3.9重量部と、分散剤としてトリオレイン酸ソルビタン(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部と、分散媒として2−エチルヘキサノールとを加えて混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。このようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によってPETフィルムの上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにシート状に成形した。得られたシート(テープ)を直径50.8mm(2インチ)の円形シート片に切断した後、シート片150枚を積層した。得られた積層体を厚さ10mmのAl板の上に載置した後、パッケージに入れて内部を真空にすることで真空パックとした。この真空パックを85℃の温水中で100kgf/cm2の圧力にて静水圧プレスを行い、円板状の成形体を得た。
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を、黒鉛製の型を用いたホットプレスにより窒素中1975℃で4時間、面圧200kgf/cm2の条件で焼成し、その後降温した。降温の際、1200℃になった時点で面圧を開放し、直径50.8mmのアルミナ焼結体を得た。
得られたアルミナ焼結体の表裏両面に対し、ダイヤモンド砥粒で鏡面研磨して厚さ0.5mmとした。こうして研磨した焼結体(試料)をアセトン、エタノール及びイオン交換水の順でそれぞれ10分間洗浄し、配向多結晶アルミナ基板を完成させた。
水熱処理における原料溶液の調製時に、硝酸クロム九水和物0.520gを更に加えたこと以外は例1と同様にして、水熱合成膜の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであり、SCM像において強いp型のdC/dV信号が検出された。
Claims (7)
- デラフォサイト型Cu系複合酸化物膜の製造方法であって、
基板を用意する工程と、
前記基板上にデラフォサイト型Cu系複合酸化物の種結晶層を形成する工程と、
前記種結晶層を、Cuのイオンと、Al、Ga、Fe、Cr及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素のイオンとを含有する原料水溶液に浸漬して水熱処理を施し、それによりCuXO2(式中、XはAl、Ga、Fe、Cr及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素である)の一般式で表される組成を有するデラフォサイト型Cu系複合酸化物膜を形成する工程と、
を含む、方法。 - 前記水熱処理が150〜250℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
- 前記水熱処理がオートクレーブ中で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記原料水溶液が6.0〜11.0のpHを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記基板の25〜1000℃の温度範囲における平均熱膨張係数が7.0×10−6〜10.0×10−6/Kである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記基板がサファイア基板又は配向多結晶アルミナ基板である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記種結晶層が、CuX’O2(式中、X’はAl、Ga、Fe、Cr及びMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素である)の一般式で表される組成を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
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