以下、各図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<医療器具セット>
図1は、本実施形態に係る医療器具セット(カテーテルセット)10を示す。
図1に示すように、医療器具セット10は、医療用長尺体100と、カテーテル200と、を有している。
カテーテル200は、血管等の生体管腔の治療や診断を行う際に、生体管腔に挿入される医療デバイス(例えば、バルーンカテーテル、ステントデリバリーデバイス等の治療デバイスや血管内超音波診断用カテーテル、血管内光診断用カテーテル等の診断デバイス)を狭窄部等の病変部まで送達する、いわゆるガイディングカテーテルとして構成している。カテーテル200は、一般的に、親カテーテルとも称される。
医療用長尺体100は、カテーテル200を介して狭窄部等の病変部付近まで送達した医療デバイスを、病変部内に挿入したり、病変部を通過させたりする処置に用いられる、いわゆるサポートカテーテルとして構成している。医療用長尺体100は、一般的に、子カテーテルとも称される。
<カテーテル>
図1に示すように、カテーテル200は、ガイドワイヤ、医療デバイス、医療用長尺体100等を挿入可能な内腔211が形成されたカテーテル本体部210と、カテーテル本体部210の基端部に配置されたハブ220と、を有している。
カテーテル本体部210は、可撓性を備える中空の管状部材で形成している。カテーテル本体部210の先端には、カテーテル本体部210の内腔211に連通する先端開口部211aが形成されている。カテーテル本体部210は、例えば、公知の樹脂材料で形成できる。
カテーテル200のハブ220は、医療分野において公知のルアーテーパー型のコネクタ(Yコネクタ)221を有している。コネクタ221は、造影剤やプライミング用の液体が流通可能なチューブと接続されるサイドブランチ223と、ハブ220の内部に配置された弁体224と、弁体224の開閉を操作するためのオープナー225と、を有している。また、ハブ220の基端側には、医療用長尺体100のシャフト部110や先端部材120をハブ220内に出し入れするための基端ポート(図示省略)を設けている。
術者等は、医療用長尺体100を使用した処置を行う際、カテーテル200のハブ220に設けられた基端ポートを介して、ハブ220内およびカテーテル本体部210内に医療用長尺体100の先端側(シャフト部110および先端部材120)を挿入する。術者等は、カテーテル200のカテーテル本体部210内に医療用長尺体100の先端側を挿入した状態で、サイドブランチ223から造影剤を供給することにより、カテーテル本体部210の先端側へ造影剤を吐出できる。この際、術者等は、ハブ220の弁体224を閉じる操作を行うことにより、ハブ220の基端ポートから造影剤が流出するのを抑制できる。
<医療用長尺体>
図1および図2に示すように、医療用長尺体100は、線状体からなるシャフト部110と、シャフト部110の先端側に形成された先端部材120と、シャフト部110の基端側に配置され、術者等の手指により把持可能な把持部180と、を有している。
図1および図2に示すように、先端部材120は、先端側から順番にそれぞれ配置された、第1領域120Aと、第2領域120Bと、第3領域120Cと、を有している。図2には、先端部材120の構造を概略的に表すために、各領域120A、120B、120Cには、各領域を形成する主たる部材の部材番号を付している。
図3および図7(A)に示すように、先端部材120の第1領域120Aは、樹脂材料からなる内層130と、樹脂材料からなる外層140と、を有している。
内層130および外層140は、先端部材120の軸方向(図3の左右方向)に延在する中空の管状部材で形成している。
図3に示すように、内層130は、その内側に形成されたルーメン133を有している。内層130のルーメン133は、外層140の基端部(外層140の第3領域120Cに配置された部分)144の内腔146と連通している。内層130のルーメン133と外層140の基端部144の内腔146は、ガイドワイヤや医療デバイス等を先端部材120の内部に挿通させる内腔125を形成する。
図3に示すように、先端部材120の先端側には、医療用長尺体100の先端が生体管腔(血管の内壁等)に接触した際に生体器官に損傷が生じるのを抑制する先端チップ170を設けている。
先端チップ170は、先端に開口する先端開口部171を有している。また、先端チップ170は、内層130において外層140が被覆されていない部分に被せた状態で内層130と固定(融着等)している。
図5に示すように、先端部材120の外層140は、第2領域120Bの先端から先端側に向かって外径が小さくなる傾斜部143を有している。傾斜部143は、基端側から先端側に向けて緩やかに湾曲した断面形状を有している。
第1領域120Aの外層140の外径(第1領域120Aの外径D1)は、例えば、1.4mm〜1.8mmに形成できる。また、第2領域120Bの外層140の外径(第2領域120Bの外径D2)は、例えば、1.7mm〜2.1mmに形成できる。
図5に示すように、傾斜部143よりも先端側の第1領域120Aの外層140の肉厚t1は、先端部材120の軸直交断面において、第2領域120Bの外層140の肉厚t2と略同一である。この略同一の範囲には、製造公差に基づく寸法の相違等が含まれる。
傾斜部143の最大肉厚t3は、第1領域120Aの肉厚t1および第2領域120Bの肉厚t2よりも大きく形成している。傾斜部143の肉厚は、第2領域120Bの先端付近で最大となり、第1領域120Aの基端付近で最小となるように遷移する。
外層140は、例えば、第1領域120Aを形成する樹脂製のチューブと、第2領域120Bを形成する樹脂製のチューブを接合して形成できる。この場合、第1領域120Aを形成する樹脂製のチューブに、第2領域120Bを形成する樹脂製のチューブを被せた状態で、チューブ同士に熱を付与することで融着できる。またこの際、両チューブ部材の外径差の分だけ、両チューブが重なった部分の肉厚が増える。この肉厚が増えた部分の外径を図5に示すように先端側に向けて小さくなるように調整することで、所定の肉厚をそれぞれ備える第1領域120A、傾斜部143、第2領域120Bを一体的に形成できる。
第1領域120Aの肉厚t1は、例えば、0.04mm〜0.25mmに形成できる。また、第2領域120Bの肉厚t2は、例えば、0.10mm〜0.30mmに形成できる。また、傾斜部143の最大肉厚t3は、例えば、0.04mm〜0.40mmに形成できる。
図3および図7(B)に示すように、先端部材120の第2領域120Bは、内層130と、外層140と、内層130と外層140との間に配置された金属材料からなるチューブ部材150と、を有している。
第2領域120Bを形成するチューブ部材150は、チューブ部材150の基端側に延びるシャフト部110と一体的に構成している。ただし、チューブ部材150は、シャフト部110と別体であってもよい。
チューブ部材150は、図4、図7(B)、図8(A)および図8(B)に示すように、中空の管構造を有している。チューブ部材150は、第2領域120Bよりも基端側に形成された第3領域120Cにおいて、シャフト部110に向かって傾斜した傾斜領域155を有している。傾斜領域155には、基端側に開口した基端開口部155aを形成している。
チューブ部材150は、図9(A)および図9(B)に示すように、当該チューブ部材150の長軸方向と直交する断面における周長(CL)に対する金属材料の周方向長さ(L)の比率Δ(=L/CL)が第1領域120Aの側の先端に向かって漸減する軟化領域150Aを有している。チューブ部材150は、軟化領域150Aにおいて、金属量が第1領域120Aの側の先端に向かうにつれて小さくなる。その結果、チューブ部材150は、剛性が第1領域120Aの側の先端に向かうにつれて小さくなる。このため、医療用長尺体100は、第1領域120Aと第2領域120Bとの間の境界部分(物性変化領域)における物性移行が滑らかになる。
図示した軟化領域150Aは、図9(B)に示すように、比率Δ(=L/CL)が第1領域120Aの側の先端に向かって連続的に漸減する。このため、医療用長尺体100は、第1領域120Aと第2領域120Bとの間の境界部分(物性変化領域)における物性移行が一層滑らかになる。「連続的に漸減」とは、比率Δ(=L/CL)が第1領域120Aの側の先端に向かって徐々に滑らかに減少していることを意味する。軟化領域150Aの部分を構成する金属材料の縁辺は、放物線の形状を有している(図9(A)の左縁辺を参照)。
ただし、本発明は、比率Δ(=L/CL)が第1領域120Aの側の先端に向かって段階的に漸減する軟化領域150Aとすることを除外するものではない。ここに「段階的に漸減」とは、比率Δ(=L/CL)が第1領域120Aの側の先端に向かって段差をもって減少していることを意味する。軟化領域150Aの部分を構成する金属材料の縁辺は、階段形状あるいはギザギザの形状を有している。
図4に示すように、チューブ部材150は、傾斜領域155よりも基端側でシャフト部110と繋がって一体化している。
シャフト部110の先端側は、図4および図7(C)に示すように、軸直交断面の形状が略半円の円弧形状に形成されている。シャフト部110の内面111は、凹状に湾曲した断面形状を有している。シャフト部110は、上記のように略半円の円弧形状に形成されているため、シャフト部110がカテーテル200のカテーテル本体部210を挿通する際、カテーテル本体部210との間で作用する摺動抵抗を低減できる。
図2に示すように、シャフト部110は、把持部180が配置された基端側まで略半円の円弧形状で延在している。把持部180は、シャフト部110の基端側に固定している。
図3、図7(A)、および図7(B)に示すように、先端部材120は、第1領域120Aから第2領域120Bに亘って、内層130と外層140の間に形成される金属材料を含む補強層160を有している。
図7(B)に示すように、補強層160は、先端部材120の第2領域120Bにおいて、チューブ部材150の内側に配置している。
図6に示すように、補強層160は、金属材料から形成された補強部材161と、補強部材161に形成された間隙部163と、を有している。
補強部材161の間隙部163は、内層130と外層140の間に配置された状態で、内層130と外層140を繋いでいる。この繋ぐとは、内層130と外層140が物理的に接触している状態、または、内層130と外層140が溶融固化している状態を意味する。
補強層160の補強部材161は、金属材料で形成している。補強層160は、金属材料で形成された線材を編組して形成した管構造を有している。編組された線材部分は、補強部材161を形成し、補強部材161により形作られる網目部分は、間隙部163を形成している。
補強部材161の断面形状は、特に限定されないが、例えば、長方形や円形に形成できる。また、補強部材161の編組の構造は、例えば、補強部材161同士が交互に交差する1オーバー1アンダーの構造を採用できる。
補強層160は、例えば、長軸方向に沿って螺旋形状に形状付けされたコイルで形成してもよい。
図4、図8(A)および図8(B)に示すように、チューブ部材150は、螺旋状の隙間を形成するスリット部153を有している。
チューブ部材150のスリット部153は、チューブ部材150を肉厚方向(径方向)に貫通する孔である。
図4および図7(B)に示すように、外層140は、第2領域120Bにおいて、補強層160の間隙部163とチューブ部材150のスリット部153とにより形成される隙間に介入して、内層130と融着している。
間隙部163およびスリット部153は、両者を介して内層130と外層140とを融着できるようにするために、両者の少なくとも一部同士が長軸方向および周方向に重なるように配置できる。間隙部163とスリット部153とが長軸方向および周方向に重なった部分には、上記の隙間が形成される。
図4、図8(A)および図8(B)に示すように、チューブ部材150のスリット部153は、チューブ部材150に螺旋状に形成している。また、スリット部153のピッチP(隣接するスリット部153の間の長軸方向の距離)は、チューブ部材150の基端から先端に向かって小さくなるように形成している。
図6に示すように、チューブ部材150は、スリット部153が形成された領域よりも基端側に複数の開口部154を有している。これにより、外層140は、先端部材120に挿入される医療デバイスと接触しやすいチューブ部材150の基端部において、開口部154に介入して、確実に内層130と融着される。スリット部153と開口部154は実際には部材が存在しない孔(空間)であるが、図6では、両者の位置関係を明瞭に示すために、スリット部153および開口部154を白塗りで図示している。
開口部154は、チューブ部材150を肉厚方向に貫通する孔である。開口部154の具体的な形状や個数等は特に限定されない。
チューブ部材150のスリット部153のピッチPがチューブ部材150の基端から先端に向かって小さくなるように形成している場合、チューブ部材150は、チューブ部材150の基端側においてスリット部153が少ないため、補強層160の間隙部163とチューブ部材150のスリット部153とにより隙間が形成しにくく、内層130と外層140とを融着しにくい。このような場合、チューブ部材150は、スリット部153が形成された領域よりも基端側に開口部154を設けることで、内層130と外層140とをより好適に融着することができるため、特に好ましい。
図5に示すように、チューブ部材150の先端部151は、先端側に向けて外径が小さくなるテーパー形状に形成している。チューブ部材150の先端部151の端面の形状は、図示するように先端側に緩やかに湾曲する形状(R加工された形状)に限定されず、例えば、先端面が長軸方向と直交するように交差する直線形状等であってもよい。
また、チューブ部材150は、チューブ部材150の内径および外径が先端側に向けて段階的にまたは連続的に縮径する形状であってもよい。例えば、チューブ部材150を補強層160に被覆した状態で、スエージ加工等によりチューブ部材150を補強層160に対して固定することで、上記のような形状にチューブ部材150を形成できる。
図4に示すように、先端部材120の第3領域120Cには、チューブ部材150よりも柔軟な材料で形成されるとともに、チューブ部材150の傾斜領域155の先端側から基端側に向かって外径が大きくなる基端開口部145が形成されている。
第3領域120Cに形成された基端開口部145は、外層140の基端側に形成している。外層140の基端部144の内腔146は、基端側に向けて徐々に広がる形状を有しており、その基端に基端開口部145が形成されている。
図4に示すように、チューブ部材150は、チューブ部材150の傾斜領域155の先端付近では、円筒形状の管構造を有している。このチューブ部材150の円筒形状の部分では、チューブ部材150と、その内側に配置される補強層160が周方向において重なっている。そして、チューブ部材150の形状は、傾斜領域155の先端側から基端側へ向けて徐々に円筒形状からシャフト部110の形状(半円の円弧状)に移行している。
第3領域120Cに形成された基端開口部145の最大外径D3は、例えば、カテーテル200のカテーテル本体部210の内径(内腔211の径)d1(図11を参照)と略同一または大きくなるように形成できる。この略同一の範囲には、製造公差に基づく寸法の相違が含まれる。
基端開口部145の最大外径D3は、例えば、カテーテル200のカテーテル本体部210の内径d1が1.4mm〜2.2mmである場合、1.4mm〜2.2mmが好ましく、1.7〜1.9mmがより好ましい。
医療用長尺体100において、先端部材120およびシャフト部110を含めた部分の長軸方向に沿う長さは、カテーテル200とともに医療用長尺体100を使用した際に所望の長さだけカテーテル本体部210から医療用長尺体100を突出できれば特に制限はないが、例えば、800mm〜1300mmに形成できる。また、先端部材120の長軸方向に沿う長さは、例えば、100mm〜300mmに形成できる。また、先端部材120の第2領域120Bの長軸方向に沿う長さは、例えば、10mm〜100mmに形成できる。また、先端部材120の第3領域120Cの長軸方向に沿う長さは、例えば、5mm〜50mmに形成できる。
次に、医療用長尺体100の構成材料について説明する。
先端部材120の内層130および外層140は、チューブ部材150よりも柔軟な樹脂材料で形成することが好ましい。内層130および外層140は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマー、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリアミド、結晶性ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン等の結晶性プラスチックで形成できる。
先端チップ170は、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、或いはこれら二種以上の混合物等)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料或いはこれらの混合物、或いは上記2種以上の高分子材料の多層チューブ等で形成できる。先端チップ170は、内層130および外層140を形成する材料よりも柔軟な材料で形成することが好ましい。
シャフト部110およびチューブ部材150は、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti系合金、Ni−Al径合金、Cu−Zn径合金等の超弾性合金等の金属材料で形成できる。
補強層160の補強部材161は、例えば、上記のシャフト部110およびチューブ部材150の材料として例示したものと同様のもので形成できる。
次に、医療器具セット10(医療用長尺体100およびカテーテル200)の使用例を説明する。
例えば、冠動脈に形成された狭窄部等の病変部Nに対して、バルーンカテーテルやステントデリバリーデバイス等の医療デバイス(図示省略)による処置を行う際、術者等は、カテーテル200の先端を冠動脈の入り口付近に配置し、カテーテル200内に挿入される医療デバイスの病変部送達をサポートできるようにする。しかしながら、狭窄部等の病変部Nが冠動脈の入り口付近から離れている場合、医療デバイスは、カテーテル200の先端を冠動脈の入り口付近に配置しても、カテーテル200内に挿入される際に十分なサポート力を得られないことがある。このような場合、術者等は、冠動脈のより奥側(病変部N側)までカテーテル200を挿入し、医療デバイスがより大きなサポート力を得た状態で、病変部Nへの医療デバイスの送達を試みる。
この際、カテーテル200が比較的大径なものであると、カテーテル200は、虚血等を発生させる可能性がある。そのため、術者等は、図10に示すように、カテーテル200を介して、より細径な医療用長尺体100をカテーテル200の先端側へ送達する。具体的には、術者等は、狭窄部等の病変部Nが冠動脈の入り口付近から離れている場合、医療デバイスを挿入する前、又は、医療デバイスをカテーテル200から一旦抜去した後、医療用長尺体100を挿入する。
術者等は、図11に示すように、医療デバイスを送達する際にカテーテル200内に挿通したガイドワイヤ300に沿わせて医療用長尺体100を所望の位置まで送達する。そして、術者等は、医療用長尺体100の先端部材120の先端側をカテーテル200から所定の長さだけ突出させた状態にし、所望のサポート力を得た状態で医療用長尺体100を介して医療デバイスを送達する。
医療用長尺体100は、図11に示すように、カテーテル200を介して送達される際、外層140の基端部144をカテーテル200のカテーテル本体部210の内面に接触させる。この際、外層140の基端部144は、カテーテル本体部210の内面に沿って柔軟に変形し、カテーテル本体部210の内面との間のクリアランスを小さくする。これにより、術者等は、カテーテル200に沿わせて医療用長尺体100を円滑に移動させることができる。また、術者等は、外層140の基端部144とカテーテル本体部210の内面との間のクリアランスが小さくなることにより、外層140の基端開口部145から先端部材120の内腔125へ挿入される医療デバイスが上記クリアランスに引っ掛かるのを抑制できる。これにより、術者等は、医療デバイスを先端部材120の内腔125へ円滑に挿入できる。
さらに、術者等は、カテーテル200のサイドブランチ223から造影剤を供給する際、外層140の基端部144とカテーテル本体部210の内面との間のクリアランスへ造影剤が流れ込み、そのままカテーテル本体部210の先端開口部211aから造影剤が吐出されるのを抑制できる(図1を参照)。つまり、術者等は、カテーテル200の先端側に突出された医療用長尺体100の先端側へ造影剤を送り込むことができ、治療対象となる病変部およびその周辺部に向けて造影剤を吐出できる。これにより、術者等は、所望の造影画像を取得できる。
次に、本実施形態に係る医療用長尺体100の作用を説明する。
医療用長尺体100は、内腔125を有する先端部材120を有している。先端部材120は、樹脂材料からなる内層130および樹脂材料からなる外層140を有する第1領域120Aと、内層130、外層140、および内層130と外層140との間に配置された金属材料からなるチューブ部材150を有する第2領域120Bと、を有している。チューブ部材150は、当該チューブ部材150の長軸方向と直交する断面における周長(CL)に対する金属材料が存在している周方向長さ(L)の比率Δ(=L/CL)が第1領域120Aの側の先端に向かって漸減する軟化領域150Aを有する。
上記のように構成した医療用長尺体100におけるチューブ部材150は、当該チューブ部材150の長軸方向と直交する断面における周長(CL)に対する金属材料が存在している周方向長さ(L)の比率Δ(=L/CL)が第1領域120Aの側の先端に向かって漸減する軟化領域150Aを有している。このため、医療用長尺体100は、第1領域120Aと第2領域120Bとの間の境界部分(物性変化領域)の物性段差を小さく抑えることができ、境界部分においてキンクが発生することを抑制できる。
実施形態に係る軟化領域150Aは、比率Δ(=L/CL)が第1領域120Aの側の先端に向かって連続的に漸減する。このため、医療用長尺体100は、第1領域120Aと第2領域120Bとの間の境界部分(物性変化領域)における物性移行が一層滑らかになり、境界部分においてキンクが発生することを一層抑制できる。
実施形態に係るチューブ部材150は、螺旋状の隙間を形成するスリット部153を有している。スリット部153のピッチPは、チューブ部材150の基端から先端に向かって小さくなっている。このため、医療用長尺体100は、第2領域120Bの先端側(チューブ部材150の先端側)の柔軟性が向上するため、生体管腔への第2領域120Bの挿入性が向上する。
実施形態に係る医療用長尺体100は、線状体からなるシャフト部110をさらに有している。先端部材120は、シャフト部110の先端側に形成され、第2領域120Bを形成するチューブ部材150は、シャフト部110と一体的に構成されている。このため、医療用長尺体100は、シャフト部110とチューブ部材150との境界部分(物性変化領域)の物性段差を小さく抑えることができ、キンクが発生するのを抑制できる。
本実施形態に係る医療用長尺体100の他の作用、および医療器具セット10の作用を説明する。
実施形態に係る先端部材120は、第1領域120Aから第2領域120Bに亘って、内層130と外層140の間に形成される金属材料を含む補強層160を有している。さらに、補強層160は、第2領域120Bにおいてチューブ部材150の内側に配置されており、第1領域120Aの外径は、第2領域120Bの外径よりも小さく形成されている。
上記のように構成した医療用長尺体100は、第2領域120Bを形成するチューブ部材150と、第2領域120Bにおいてチューブ部材150の内側に配置された金属材料を含む補強層160とにより、第2領域120Bの造影性を高めることができる。このため、医療用長尺体100は、第2領域120Bの基端部付近を示すための造影マーカー(造影リング)を別途設ける必要がないため、簡便な構成で第2領域120Bの造影性を高めることができ、かつ、造影マーカーの設置に伴う物性段差が発生するのを抑制できる。
また、上記のように構成した医療用長尺体100は、先端部材120の第1領域120Aの外径が第2領域120Bの外径よりも小さいため、生体管腔への挿入性が良好に高められる。
実施形態に係る先端部材120の外層140は、第2領域120Bの先端から先端側に向かって外径が小さくなる傾斜部143を有する。このため、医療用長尺体100は、第2領域120Bがカテーテル200や生体管腔などに引っ掛かるなどして挿入性が低下するのを抑制できる。これにより、術者等は、医療用長尺体100を生体管腔に挿入する際、第1領域120Aに引き続いて第2領域120Bを生体管腔へ円滑に挿入できる。
また、実施形態に係る医療用長尺体100は、傾斜部143よりも先端側の第1領域120Aの外層140の肉厚t1が、先端部材120の長軸方向と直交する断面において、第2領域120Bの外層140の肉厚と略同一である。このため、第1領域120Aと第2領域120Bの境界部分の物性段差を小さく抑えることができ、キンクの発生を抑制できる。
また、実施形態に係る補強層160は、金属材料から形成された補強部材161と、補強部材161に形成されるとともに内層130および外層140を繋ぐ間隙部163と、を有している。また、チューブ部材150は、スリット部153を有している。そして、外層140は、第2領域120Bにおいて、補強層160の間隙部163とチューブ部材150のスリット部153とにより形成される隙間に介入して、内層130と融着している。このため、医療用長尺体100は、金属材料で形成された補強部材161および金属材料で形成されたチューブ部材150を間に挟んで配置された内層130と外層140を好適に融着できる。
また、実施形態に係るチューブ部材150は、チューブ部材150においてスリット部153が形成された領域よりも基端側に複数の開口部154を有するため、開口部154を介してチューブ部材150の基端側で内層130と外層140を好適に融着できる。
また、実施形態に係る先端部材120は、第2領域120Bよりも基端側に第3領域120Cを有し、チューブ部材150は、第3領域120Cにおいて、シャフト部110に向かって傾斜する傾斜領域155を有している。そして、第3領域120Cには、チューブ部材150よりも柔軟な材料で形成されるとともに傾斜領域155の先端側から基端側に向かって外径が大きくなる基端開口部145が形成されている。このため、医療用長尺体100は、医療用長尺体100がカテーテル200のカテーテル本体部210に挿入された際、カテーテル本体部210との間のクリアランスを小さくでき、カテーテル200に対する医療用長尺体100の移動が円滑なものとなる。さらに、医療用長尺体100は、医療用長尺体100の内腔125への医療デバイスの挿入性が向上するとともに、生体管腔内における適切な位置への造影剤の吐出が可能になる。
また、本実施形態に係る医療器具セット10は、医療用長尺体100と、医療用長尺体100が挿入可能な内腔211が形成されたカテーテル本体部210を有するカテーテル200と、を備えている。そして、医療用長尺体100の基端開口部145の最大外径は、カテーテル本体部210の内径と略同一または大きい。このため、医療器具セット10は、医療用長尺体100およびカテーテル200を使用した手技において、医療用長尺体100および医療デバイスを生体管腔内の所望の位置へ円滑に送達できるとともに、生体管腔の所望の位置へ造影剤を適切に吐出できる。
<チューブ部材の変形例>
図12(A)および図12(B)は、変形例に係るチューブ部材190を示す側面図および斜視図である。図13(A)は、図12(A)(B)に示されるチューブ部材190を長軸方向に切って展開した状態の要部を示す図、図13(B)は、チューブ部材190の周長(CL)に対する金属材料の周方向長さ(L)の比率Δ(=L/CL)の変化を示す図である。金属材料の周方向長さ(L)は、チューブ部材190の長軸方向と直交する断面における金属材料が存在している部分の周方向長さの合計である。実施形態における部材と共通する部材には同一の符号を付している。
実施形態のチューブ部材150における軟化領域150Aは、長軸方向に沿って伸びている1つの凸部が形成された形状を有している(図8(A)、図8(B)および図9(A)を参照)。軟化領域150Aは、比率Δ(=L/CL)が第1領域120Aの側の先端に向かって漸減する限り、形状は限定されるものではない。
変形例に係るチューブ部材190は、図12(A)、図12(B)、および図13(A)に示すように、軟化領域150Aが、長軸方向に沿って伸びている複数の凸部(第1凸部191、第2凸部192)が周方向に配列された波形形状を有している。
複数の凸部は、第1頂部191aを備える第1凸部191と、第1頂部191aよりも第1領域120Aの側に位置する第2頂部192aを備える第2凸部192と、を含んでいる。
第1凸部191と第2凸部192とは、周方向に交互に配列されている。ただし、第1凸部191と第2凸部192とは、周方向に交互に配置されていなくてもよい。
上記のように構成した変形例に係るチューブ部材190は、図13(B)に示すように、比率Δ(=L/CL)が第1領域120Aの側の先端に向かって漸減する軟化領域150Aを有している。このため、実施形態と同様に、医療用長尺体100は、第1領域120Aと第2領域120Bとの間の境界部分(物性変化領域)の物性段差を小さく抑えることができ、境界部分においてキンクが発生することを抑制できる。
また、第1凸部191および第2凸部192は、第1頂部191aと第2頂部192aとの長軸方向位置を異ならせている。このため、図13(B)に示すように、軟化領域150Aにおいて、比率Δ(=L/CL)の変化量(傾き)を異ならせることができる。その結果、第1領域120Aと第2領域120Bとの間の境界部分(物性変化領域)における物性移行を所望のパターンに設定することができる。頂部の長軸方向位置が異なる凸部は2つの凸部(第1凸部191および第2凸部192)に限定されない。頂部の長軸方向位置が異なる3種類以上の凸部を備えてもよい。
また、第1凸部191と第2凸部192とは、周方向に交互に配列されている。このため、軟化領域150Aにおける長軸方向への物性移行は、周方向に同等となる。その結果、変形例に係るチューブ部材190を適用した医療用長尺体100は、周方向の特定の方位に対するキンクの発生を抑制するのではなく、周方向の全方位にわたってキンクの発生を抑制できる。ここに「方位」は、チューブ部材190の軸線を中心としている。
変形例のようにチューブ部材19の軟化領域150Aに複数の凸部を備える場合、周方向に隣り合う凸部間の間隔は等しくてもよいし、異ならせてもよい。間隔が等しい場合には、軟化領域150Aにおける長軸方向への物性移行は、周方向に同等となる。一方、間隔が異なる場合には、軟化領域150Aにおける長軸方向への物性移行を周方向に異ならせることができる。このようにすれば、医療用長尺体100が可動する方向に合わせてキンクの発生を抑制することができる。
以上、実施形態および他の実施形態を通じて本発明に係る医療用長尺体を説明したが、本発明は実施形態および他の実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
例えば、医療用長尺体の先端部材は、少なくとも第1領域および第2領域を有していればよく、第3領域を有していなくてもよい。
また、医療用長尺体のシャフト部の断面形状は、図示により示した形状(半円の円弧状)に限定されず、適宜変更できる。
また、実施形態において説明したカテーテルは一例に過ぎず、医療用長尺体の挿入および送達が可能な限り、その構成は特に限定されない。
また、医療用長尺体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置き換えることができる。また、医療用長尺体は、明細書内において特に説明のなかった任意の構成物(部材)等が適宜付加されてもよい。