唾液腺の分泌は、副交感神経及び交感神経線維により提供される神経支配で、自律神経系により調節される。主要な唾液腺は耳下腺、顎下腺、及び舌下腺である。顎下腺は、口腔底の下に位置して、混合された希薄な及び粘液質の分泌を産生する。この分泌は、刺激されていない条件下で唾液体積の約70%を占める。
顎下腺は、上頸神経節(SCG)からの交感神経の神経節後の神経支配を受ける(図1を参照されたい)。SCGは、内頸動脈及び外頸動脈及び後頭動脈への共通の頸動脈の三叉で頸動脈小体に近接して存在する左右相称の構造である。SCG及び顎下腺は、一緒に、頸部交感神経幹顎下腺(CST-SMG)軸(頸部交感神経鎖SMG軸、又はCSC-SMGとしても知られている)と呼ばれる神経内分泌軸を形成している。SMGの神経節前ニューロンは、頸部交感神経幹又は鎖(CST/CSC)を、SMGを神経支配するSCGの神経節後ニューロンの細胞体を含有するSCGと共に形成している。唾液腺、特に顎下腺からの外分泌腺及び内分泌腺の分泌の重要性を考慮すれば、この神経内分泌軸は、全身性ホメオスタシスにおいて基本的な役割を果たす。
SMGは、その放出が自律神経系、特にSCGにより活動に制御される、全身性に活性な免疫を調節する及び抗炎症性因子の重要な供給源である[Mathison et al., 2012,. Biestock J (ed): Allergy and the Nervous System. Chem Immunol Allergy 98: 176-195、参照により本明細書に組み込まれる]。CSC-SMG軸の1つの生物学的役割の構成要素は、顎下ラット1タンパク質(submandibular rat-1 protein)(SMR1)である、数種の異なるペプチドを生み出すプロホルモンの合成、プロセシング及び放出である(SMR1のアミノ酸配列の例を図7Aに示す(配列番号1)SMR1の他の認識される配列は、Rosinski-Chupin I & Rougeon F. DNA Cell Biol. 1990 Oct; 9 (8): 553-9、及びUniProtデータベース登録P13432で提供され、それらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)。これらのペプチドは、アレルギー及び喘息(IgEに媒介されるアレルギー反応)及びIgEに媒介されない数通りの炎症性状態の強い阻害剤であるトリペプチドフラグメントのフェニルアラニン-グルタミン酸-グリシン(FEG)及びその代謝的に安定な異性体feGを含む[Dery et al., 2001, Int Arch Allegy Immunol. 124: 201-204; Dery et al., 2004, Eur J Immunol. 34: 3315-3325; Morris et al., 2009, Am J Physiol Cell Physiol. 296: C514-C524; Mathison et al., 2009, Open Inflam J. 2: 9-21; Mathison et al 2010 J Inflamm. 7: 49; Mathison et al. 2012, supra; Laurent et al., 2015, Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 308: R569-R575、それらの各々は参照により本明細書に組み込まれる]。SMR1から誘導される別の非常に重要なアミノ酸配列は、SMR1のNH2末端付近に位置するQHNPR(シアロルフィン)である。このペプチドは、鎮痛活性を有する[Rougerot et al., 2003, Proc Natl Acad Sci USA 100:8549-8554、参照により本明細書に組み込まれる]。精子細胞特異的カルシウム結合タンパク質1(Calcium-binding protein spermatid-specific 1)(CABS1)は、SMR1のヒト相同体である。CABS1は、ヒトでは唾液腺及び導管中に見出され、SMR1と同様なアミノ酸配列を有し、SMR1タンパク質及びペプチドと同様な生物学的活性及び官能的役割を有し得る[Laurent et al, 2015、前出]。シアロルフィンは、ヒト唾液中に存在するオピオルフィンペプチドと同様である。
本開示は、SCGを刺激して唾液産生(例えば、体積又は分泌)を増加させることにより、及び/又は、例えば、唾液中における抗炎症性ペプチドの増加したレベルの産生させることにより唾液の品質を改善する装置又はシステム及び方法に関する。そのような装置又はシステム及び方法は、口腔乾燥症、例えば、シェーグレン症候群(SS)と関連する口腔乾燥症等の処置のために有用である。
本明細書において使用する用語には、下で特に断りのない限り、当業者により理解される当技術分野におけるそれらの従来の定義が与えられる。何らかの不一致又は疑義の場合には、本明細書で提供される定義が優先すべきである。
本明細書において使用するシグナルの印加は、シグナルの意図される効果を実施するために適当な形態でエネルギーの移動を等しくすることができる。即ち、ニューロン、1つ又は複数の神経へのシグナルの印加は、意図される効果を実施するための、ニューロン又は神経への(又は、からの)エネルギーの移動を等しくすることができる。例えば、移動されるエネルギーは、電気的、機械的(超音波等の音響学的を含む)、電磁的(例えば光学的)、磁性又は熱的エネルギーであってもよい。本明細書において使用するシグナルの印加は、薬学的介入を含まないことを指摘しておく。
本明細書において使用する「神経インターフェイス素子」又は「トランスデューサー」は、シグナルをニューロン又は神経又は網状組織に印加する任意の素子、例えば、電極、ダイオード、ペルティエ素子又は超音波トランスデューサーを意味すると解釈される。
本明細書において使用する「非破壊的シグナル」は、印加されたときに、基礎をなす神経のシグナル伝導性能を不可逆的に損傷しない、上で定義されたシグナルである。即ち、非破壊的シグナルの印加は、たとえ非破壊的シグナルの印加の結果として伝導が実際に阻害又は遮断されたとしても、シグナルの印加が終わったときに、ニューロン、1つ又は複数の神経(又はそれらの線維)の活動電位を伝える能力を維持する。神経の少なくとも一部の切除及び焼灼が破壊的シグナルの例である。
本明細書において使用する、ニューロン又は神経の「神経活動」は、ニューロン又は神経のシグナル活動、例えば、ニューロン又は神経の活動電位の振幅、周波数及び/又はパターンを意味すると解釈される。
本明細書において使用する神経活動の刺激は、全神経の全シグナル活動の増加、又は神経のニューロン又は神経線維のサブセットの全シグナル活動が神経のその部分におけるベースラインの神経活動と比較して増加していることであってもよい。
ニューロン又は神経の神経活動は、活動電位のパターンにおける変化を引き起こさせるように調整することもできる。活動電位のパターンは、周波数又は振幅の全体を必ずしも変化させずに、調整することができることは認識されると予想される。例えば、神経活動の調整は、活動電位のパターンが、疾患状態よりもむしろ健常状態に、より酷似するように変えられるようなものである。
神経活動の調整は、種々の他のやり方、例えば、神経活動の特定の部分を増加させるかもしくは阻害すること、及び/又は特定のパターンにより、活動の新しい要素、例えば、特に時間間隔、特に周波数帯を刺激すること等で、神経活動を変化させることを含むことができる。神経活動のそのような変化は、例えば、ベースラインの活動に関して、増加及び/又は減少の両方を表すことができる。
神経活動の刺激は、あるニューロン又は神経線維に対して選択的であることがある。本明細書において使用する「選択的刺激」は、シグナルが、ニューロン又は神経線維の目標のクラスにおける神経活動を、ニューロン又は神経線維の他のクラスに対して優先的に増加させることを意味するために使用される。そのような選択的刺激は、目標のニューロン又は神経線維の神経活動の増加を示す比率の、他のクラスの神経線維の神経活動の増加を示す比率と比較した増加により特徴づけられる。実質的に選択的な刺激は、神経活動が非目標ニューロン又は神経線維の10%以下で増加する場合に、神経活動が目標のニューロン又は神経線維の少なくとも70%で増加することにより特徴づけられる。
神経活動の刺激は、一時的であり得る。本明細書において使用する「一時的」は、刺激された神経活動が永続性でないことを意味すると解釈される。即ち、シグナルの中止後の神経活動が、シグナルが印加される前、即ち刺激前の神経活動と実質的に同じである。
神経活動の刺激は、持続性であり得る。本明細書において使用する「持続性」は、神経活動の刺激が長引く効果を有することを意味すると解釈される。即ち、シグナルの中止時に、神経における神経活動が、シグナルが印加されたときと実質的に同じままである、即ち刺激中及び後の神経活動は実質的に同じである。
神経活動の刺激は、矯正的であり得る。本明細書において使用する「矯正的」は、刺激された神経活動が健常個体における神経活動のパターンの方向に変化することを意味すると解釈される。即ち、シグナルの中止時に、ニューロン又は神経における神経活動が、刺激前よりも、健常対象で観察されるニューロン又は神経活動電位のパターンに、より酷似する、健常対象で観察されるニューロン又は神経における活動電位のパターンに好ましくは実質的に完全に類似する。
例えば、シグナルの印加は、神経活動の刺激を生ずることができて、シグナルの中止時に、ニューロン又は神経における活動電位のパターンが、健常対象で観察される活動電位のパターンに類似する。
本明細書において使用する用語「上頸神経節」(SCGと略される)は、交感神経神経系の一部を形成する3つの頸部神経節の最大のものを指す。SCGは、頭頸部を神経支配する交感神経神経系中の唯一の神経節である。
SCGは、中間外側の柱状部内の脊髄の毛様体脊髄の中心(したがって、これらは、SCGの「神経節前ニューロン」と称される)及び細胞体がSCG中に位置して、SCGのくちばしの末端から突き出て頭部の目標器官を神経支配するニューロン(SCGの「神経節後ニューロン」と称される)とのシナプスにより神経支配される。
SCGは、上部気道(例えば、喉頭)、舌、及び唾液腺(例えば、顎下腺)に加えて、種々の構造(例えば、視床下部)に突き出た交感神経のニューロンの細胞体を含有する。神経節後ニューロンの線維は、内頸動脈神経及び外頸動脈神経を通してSCGから出る。SCGから出る線維を有する神経節後ニューロンは、頭頸部における多くの器官、腺及び頸動脈系の部分を神経支配することを引き受ける。目標箇所に依存して異なるタイプの神経節後ニューロンがあり、低閾値から高閾値のニューロンに及ぶ。閾値が低いニューロンは、より速い活動電位の発火速度を有するが、一方、高閾値のニューロンは発火速度が遅い。神経節後ニューロンのタイプ間の区別は、免疫染色によって行うことができて、そこで、SCGのニューロンは、神経ペプチドY(NPY)について陽性又は陰性のいずれかに分類され得る。低閾値、NPY陰性のニューロンは、分泌促進性のニューロンであり、唾液腺を神経支配する。
本明細書において使用する用語「唾液腺」は、口腔域及びその周辺に所在する耳下腺、顎下腺及び舌下腺を包含する。
本明細書において使用する「頸部交感神経幹顎下腺軸」又は「CST-SMG軸」(頸部交感神経鎖顎下腺軸又はCSC-SMG軸とも称する)は、口腔底の下のSCG(上で定義された)と顎下腺間の交感神経のシグナル送信の結果として形成された神経内分泌シグナル送信軸を記載するために使用される用語である。本明細書において使用する、「CSC」又は「CST」のニューロンは、SMGの神経節前及び/又は神経節後ニューロン、例えばSMGを神経支配するニューロン等を指して、本明細書では互換的に使用される。
本明細書において使用する「口腔乾燥症」は、典型的には、唾液産生の欠損及び/又は唾液流の低下もしくは不在により引き起こされた口腔の持続性乾燥を意味する。シェーグレン症候群の患者は口腔乾燥症を呈するが、口腔乾燥症は、上で詳細に説明した他の底流にある疾患又は状態により引き起こされた可能性もある。口腔乾燥症は、ある薬物療法及び癌の化学療法及び放射線療法を含む処置の副作用でもある。
本明細書において使用する「シェーグレン症候群」(SSと略する)は、外分泌腺、例えば涙腺及び唾液腺等に影響する、慢性のゆっくり進行する自己免疫疾患を意味する。SSの患者は、種々の徴候及び症状を呈し、最も頻繁なのは、涙腺及び唾液腺に対する損傷から生じる眼及び口の乾燥である。SSの患者は、全身性炎症並びに/又は口腔周辺の(口腔の炎症)局所的炎症及び/もしくは眼の周辺の局所的炎症(眼の炎症)を呈することもある。SSの患者に起こる口腔の乾燥又は口腔乾燥症は、高度の炎症を伴い、それはこの疾患を有する患者により経験される症状を助長し得る。
口腔乾燥症又は口の乾燥は、患者により決定されても医師により決定されてもよい。口腔乾燥症又は口の乾燥は、唾液流測定(例えば無刺激の全サリオメトリー(UWS)、又は刺激全サリオメトリー(SWS)を使用して決定することもできる。例えば、口腔乾燥症は、0.1ml/分以下のUWSの結果により、又は0.3ml/分以下のSWSの結果により示され得る。口腔乾燥症又は口の乾燥は、耳下腺のシンチグラフィーにより決定することもできて、例えば、その場合、対象は、トレーサーの遅れる飲み込み、低下した濃度及び/又は遅れる排泄を示す。口腔乾燥症又は口の乾燥は、唾液腺造影法により決定することもできて、例えば、瀰漫性唾液管拡張(主要な導管の閉塞はない)により示され得る。
眼の乾燥は、染色による眼の表面アセスメントにより決定することができる。例えば、眼の乾燥は、両方の眼における4以上のvan Bijsterveldスコア、オクスフォードスケールで2以上の等級、及び/又は3以上の乾燥-OSSスコアにより示すことができる。眼の乾燥は、涙の分泌のアセスメントにより決定することもできる。例えば、眼の乾燥は、5分後の紙の5mm未満が眼の乾燥を示すSchimer I試験を使用して、又は紙の5分後の10mm未満が眼の乾燥を示すSchimer II試験により決定してもよい。眼の乾燥は、涙のクレアランスアセスメント、例えば、フルオレセインクレアランス試験等により決定することもできる。例えば、フルオレセインクレアランス試験における10分間隔で3mm未満の加湿長さは、眼の乾燥を示すことができる。眼の乾燥は、涙膜安定性を評価することにより決定することもできる。例えば、10秒未満の涙の裂け目時間及び/又は40秒未満の非侵襲的涙の裂け目時間は、眼の乾燥を示すことができる。
SSの結果としても口腔周辺の炎症(口の炎症)は、対象による又は医師による視覚的検査により、例えば、1つ以上の唾液腺の膨潤の観察により決定することができる。口の炎症は、限局性のリンパ球性唾液腺炎(FLS)により特徴づけることもできる。FLSは、1つ以上の唾液腺(例えば、耳下腺、SMG、舌下腺、及び小さい唾液腺、例えば唇の唾液腺(LSG)等)の炎症であり、例えば、生検組織のヘマトキシリン及びエオシン染色により検出可能である。FLSは、管周囲の又は血管周囲の位置における少なくとも50個の単核細胞の増殖巣の存在により特徴づけることができる。病変部に浸潤した単核細胞は、主にT及びB細胞である。口の炎症は、免疫調整サイトカイン(例えばTNFa、IL-6、IL-1、IL-18及びIL-22)の上昇したレベルを発現している病変部周囲の上皮細胞によっても特徴づけることができる(Kyriakidis et al., J Autoimmunity 2014 51:67-74; Boumba et al Br J Rheumatol. 1995 Apr; 34 (4): 326-33、それらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)。口の炎症は、1つ以上の唾液腺におけるリンホトキシン(LT)及び/又はリンパケモカインCXCL13、CCL19、CCL21及びCXCL12の正規の場所外の発現によっても特徴づけることができる(Bombardieri M and Pitzalis C. Curr Pharm Biotechnol. 2012 Aug; 13 (10): 1989-96、この文献は参照により本明細書に組み込まれる)。サイトカイン又はケモカインのレベルは、従来の技法、例えば、フローサイトメトリー、qPCR及びマイクロアレイ等により決定することができる。
SSと関連する全身性炎症は、唾液腺以外の外分泌腺におけるリンパ球浸潤、及び/又は循環する自己抗体により特徴づけることができる。そのような自己抗体の例には、抗Ro(例えば抗Ro52、抗Ro60)抗体、抗La抗体、抗U1RNP、リウマチ因子/抗Fc抗体、抗クリオグロビン、AMA(抗ミトコンドリアの抗体)、抗CCP抗体、抗ムスカリン様3受容体の抗体、及び抗炭酸脱水酵素抗体が含まれる。そのような自己抗体は、例えば、ウェスタンブロット又はELISAによって測定することができる。
SSと関連する全身性炎症の他の兆候には、正色素性貧血、正球性貧血、白血球減少、リンパ球減少、好中球減少、血小板減少、上昇した赤血球沈降速度(ESR)、高ガンマグロブリン血、上昇した血清IgG、ベータ-2-ミクログロブリンの上昇したレベル、免疫グロブリンの遊離軽鎖、血清モノクローナル帯、抗核抗体、及び低補体血症が含まれる。
本明細書において使用する、健常個体のニューロンにおける神経活動とは、口腔乾燥症又はシェーグレン症候群を患っていない患者により示される神経活動である。
本明細書において使用する「測定可能な生理学的パラメーターにおける改善」は、任意の与えられた生理学的パラメーターについて、改善は、対象におけるその値にとっての正常値又は正常範囲に向かう、即ち健常個体で予想される値に向かう、そのパラメーターの値における変化であることを意味すると解釈される。
例として、口腔乾燥症を患う対象において、測定可能なパラメーターにおける改善は、全身性な交感神経の緊張の減少、唾液の体積の増加、唾液のタンパク質/ペプチド濃度の増加(例えば、全タンパク質濃度の増加及び/又は抗炎症性タンパク質もしくはペプチド(例えばSMR1、CABS1、FEG、feG、シアロルフィン、オピオルフィンもしくはそれらの相同体)の増加)、唾液腺からの分泌の増加、及び/又は顎下腺からの分泌の増加であってもよい。
さらなる例として、シェーグレン症候群を患う対象において、測定可能なパラメーターにおける改善は、全身性な交感神経の緊張の減少、唾液の体積の増加、唾液のタンパク質/ペプチド濃度の増加(例えば、全タンパク質濃度の増加及び/又は抗炎症性タンパク質もしくはペプチド(例えばSMR1、CABS1、FEG、feG、シアロルフィン、オピオルフィンもしくはそれらの相同体)の増加)、唾液腺からの分泌の増加、及び/又は顎下腺からの分泌の増加であってもよい。SSにおいて、測定可能なパラメーターにおける改善は、炎症、例えば、口の及び/又は全身性炎症における減少であってもよく、場合により上で挙げた1つ以上のパラメーターにおける改善を伴う。
これらのパラメーターを測定する技法は、当業者によく知られていると予想される。例えば、全身性な交感神経の緊張は、交感神経神経活動の直接測定により、尿中のカテコールアミンのレベル測定により、心拍数変動性による交感神経-迷走神経のバランスの測定(より低い心拍数の変動性は、交感神経の緊張における減少を示す)により決定することができ、唾液の体積は、唾液流測定(例えばUWS、SWS)を使用して決定することができ、タンパク質/ペプチド濃度は、ウェスタンブロット又はELISAにより決定することができ、口の及び/又は全身性炎症は、上で記載された前記炎症の指標の1つ以上を測定することにより決定することができる。
生理学的パラメーターは、対象のニューロン又は神経における活動電位又は活動電位のパターンを含むこともできる。そのようなパラメーターにおける改善は、健常個体により示される、介入前よりも酷似するニューロン又は神経における活動電位又は活動電位のパターンにより特徴づけられる。
本明細書において使用する生理学的パラメーターは、パラメーターが、調整の結果として、介入が実施されなかった対象又は患者により示されるそのパラメーターの平均値から変化しないならば、神経活動の調整により影響されない。即ちそれは、そのパラメーターのベースライン値から離れない。
当業者は、個体における任意の神経活動又は生理学的パラメーターのベースラインは、固定される又は特異的値である必要はなくて、むしろ正常範囲内で変動することができるか又は関連する誤差及び信頼区間を有する平均値であってもよいことを認識すると予想される。ベースラインの値を決定する適当な方法は当業者に周知であろう。
本明細書において使用する測定可能な生理学的パラメーターは、検出時に対象により示されたそのパラメーターに対する値が決定されたときに、対象で検出される。検出器はそのような決定を行うことができる任意の素子である。
生理学的パラメーターのために「予め定められた閾値」は、介入が適用される前に、その値又はそれを超える値が対象又は患者により示されなければならないそのパラメーターの値である。任意の与えられたパラメーターについて、閾値は、口腔乾燥症又はシェーグレン症候群を示す値であることができる。そのような予め定められた閾値の例は、健常個体におけるよりも低い頸部交感神経シグナル伝達、健常個体におけるよりも低い唾液産生、健常個体におけるよりも低い唾液腺分泌、健常個体におけるよりも低い顎下腺分泌、健常個体におけるよりも低い唾液のペプチド/タンパク質濃度を含む。任意の与えられたパラメーターについて適当な値は、当業者により簡単に決定されるであろう。
与えられた生理学的パラメーターについてのそのような閾値は、対象により示された値が閾値を超えていれば、超えられたものである。即ち、示された値は、そのパラメーターについての正常又は健常値から、予め定められた閾値よりも大きく出ている。
本明細書において使用する口腔乾燥症の処置は、予防的であっても治療的であってもよい。予防的処置は、症状即ち口の乾燥の発症に先立つ投与であってもよい。治療的処置は、口の乾燥を示す対象、例えば、口腔乾燥症を生ずる薬物療法を受けた又はすでに口腔乾燥症と関連する疾患、例えば、シェーグレン症候群を患う対象、又はそのような疾患を有すると前に診断された対象における症状の軽減により特徴づけることもできる。
本明細書において使用するシェーグレン症候群の処置は、予防的であっても治療的であってもよい。予防的処置は、症状即ち口の乾燥の発症に先立つ投与であってもよい。SSを患う対象において、治療的処置は、口の乾燥の軽減及び/又は炎症、例えば、口の及び/又は全身性炎症における減少により特徴づけることができる。口の及び/又は全身性炎症における減少は、上で記載された前記炎症の指標の1つ以上における減少により特徴づけることができる。
本明細書において使用する「神経調整装置」又は「神経調整デバイス」(互換的に使用される)は、ニューロン又は神経の神経活動を調整するように構成された装置である。本明細書に記載された神経調整装置は、シグナルをニューロン又は神経に効果的に印加することができる少なくとも1つのトランスデューサーを含む。神経調整装置が対象に少なくとも部分的に埋め込まれる実施形態では、対象に埋め込まれる装置の素子は、それらが、そのような埋め込みに適しているように構築される。そのような適切な構築物は、当業者に周知であると予想される。実際、種々の完全に埋め込み可能な神経調整装置は、例えば、関節リウマチの処置のために臨床開発中のSetPoint Medicalの迷走神経刺激器(Arthritis & Rheumatism, Volume 64, No. 10 (Supplement), page S195 (Abstract No. 451), October 2012. "Pilot Study of Stimulation of the Cholinergic Anti-Inflammatory Pathway with an Implantable Vagus Nerve Stimulation Device in Patients with Rheumatoid Arthritis", Frieda A. Koopman et al)、及びINTERSTIM(商標)デバイス(Medtronic, Inc)、過活動膀胱の処置で仙骨神経調整のために利用される完全に埋め込み可能なデバイス等が現在利用可能である。
本明細書において使用する「埋め込まれる」は、対象の体内に少なくとも部分的に位置に置かれることを意味するものと解釈される。部分的埋め込みは、装置の一部だけが埋め込まれる、即ち、デバイスの一部だけが、対象の体内に、対象の体外の他の素子と共に位置に置かれることを意味する。完全に埋め込まれるとは、装置の全体が対象の体内に位置に置かれることを意味する。疑義を避けるために、装置が「完全に埋め込まれる」は、装置と独立であるが、その機能性(例えば、遠隔無線の充填ユニット又は遠隔無線の用手切り替えユニット)にとって実際に有用で、独立して形成されて対象の体外にある、追加の素子を排除しない。
本開示は、上頸神経節(SCG)における神経活動の刺激により、口腔乾燥症、特にシェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症を、処置及び/又は予防するシステム及び方法を提供する。SCGの神経節後ニューロンは、頸部交感神経幹顎下腺(CST-SMG)軸を通して顎下腺を神経支配して、それによりこれらの腺による唾液産生を調節する。唾液腺を神経支配する神経節後ニューロン、例えば、顎下腺を神経支配する神経節後ニューロンの選択的刺激は、例えば、唾液分泌を増加させることによる口腔乾燥症の処置のために有用である。同様に、SCG神経節前ニューロン(CSC)の刺激は、SMGを神経支配するこれらの神経節後ニューロンの下流の刺激から生ずる同じ効果に基づいて有用であることもできる。
シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症を処置するために、又は炎症等のSSの他の症状を処置するために、SCGにおける神経活動を刺激することは、特に有利である。顎下腺は、プロホルモンの顎下ラット1タンパク質(SMR1)を分泌し、それは、シアロルフィン、顎下腺ペプチド-T(SGP-T)及びトリペプチドFEGを含む数種の異なる生体に作用するペプチドの前駆体である。FEG及びその代謝的に安定なD-異性体のペプチドfeGは、炎症の強い阻害剤である。ヒトタンパク質CABS1は、構造がSMR1と同様であり、同様な抗炎症効果を有すると考えられる。それ故、CST-SMG軸の刺激は、この疾患に特徴的な調節不全の免疫機能を含むシェーグレン症候群病状の複数の態様を処置するために使用することができる。特に、CST-SMG軸の刺激は、唾液産生を増加させて口の乾燥を軽減することにより、及び/又は局所的抗炎症性ペプチドの分泌を増加させて炎症を減少させることにより、SSを処置することができる。
上頸神経節及び/又はその神経節前及び/又は神経節後ニューロンにおける神経活動を刺激する神経調整装置は、口腔乾燥症、特にシェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症のために効果的な処置を提供するであろう。そのような神経調整装置は、唾液産生を増加させることにより、及び/又は顎下腺における抗炎症性ペプチド及び/又は唾液産生を増加させることにより、SSの効果的な処置も提供する。
そのような装置は、唾液代用物、唾液刺激剤及び/又はコリン作動性副交感神経模倣剤、例えばピロカルピン等を含むが、これらに限定されない、口腔乾燥症の処置のために知られている薬物療法と共に有利に使用することができる。市販の唾液代用物には:カルボキシメチル又はヒドロキシエチルセルロース溶液、Entertainer's Secret(登録商標)(KLI Corp)、Glandosane(登録商標)(Kenwood/Bradley)、Moi-Stir(登録商標)(KingswoodLabs)、Moi-Stir(登録商標) Oral Swabsticks(Kingswood Labs)、Optimoist(登録商標)(Colgate-Palmolive)、Saliva Substitute(登録商標)(RoxaneLabs)、Salivart(登録商標)(Gebauer)防腐剤フリーエアロゾル、Salix(登録商標)(Scandinavian Natural Health & Beauty)錠剤、V. A. Oralube(登録商標)(Oral Dis. Res. Lab)ナトリウムフリー液体、Xero-Lube(登録商標) Artificial Saliva(Scherer)ナトリウムフリースプレー、ムコ多糖溶液、Mouth Kote(登録商標)(Parnell)スプレーが含まれるが、これらに限定されない。
装置は、シェーグレン症候群と関連する全身性炎症又は状態の処置のために知られている薬物療法、例えば、モノクローナル抗体(例えば、ベリムマブ、リツキシマブ)等の免疫抑制剤又はメトトレキセート等の薬剤と共に有利に使用することもできる。
本発明による装置又はシステム及び方法は、口腔乾燥症の症状及び/又はシェーグレン症候群の他の症状、例えば炎症を軽減するために薬物療法を長期間使用している対象者により使用され得る。本発明の装置又は方法を使用することにより、薬物療法の投与の量及び/又は頻度を減少させることができて、それにより対象の服薬遵守を改善すること、及び存在する薬物療法と関連する任意の負の副作用を最小化することが期待される。
本開示は、対象の上頸神経節(SCG)における神経活動を刺激する装置又はシステムを教示し、該装置は、シグナルを対象のSCG並びに/又はその神経節前及び/もしくは神経節後ニューロンの1つ以上に印加するように構成されたトランスデューサーを含む、1つ以上の神経インターフェイス素子、1つ以上の神経インターフェイス素子と作動的に結合した制御器を含む。該制御器は、1つ以上のトランスデューサーの各々により印加されるべきシグナルを、該シグナルがSCGの神経活動を刺激して、対象における生理学的応答を生じさせるように制御する。そのような装置又はシステムは、口腔乾燥症、例えば、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症等の処置のために、都合よく使用される。そのような装置は、シェーグレン症候群の他の症状、例えば、炎症(例えば、口の炎症、全身性炎症)を処置するために使用することもできる。
ある実施形態で、シグナルは、唾液腺を神経支配するニューロンにおける、好ましくは顎下腺を神経支配するニューロンにおける神経活動を選択的に刺激する。ある実施形態では、シグナルは、SCG、例えば、CST-SMG軸の一部を形成する神経節前及び/又は神経節後ニューロンにおける神経活動を、選択的に刺激する。ある実施形態では、シグナルは、上頸神経節の低閾値の分泌促進性の神経節後ニューロンにおける神経活動を選択的に刺激する。
あるそのような実施形態では、1つ以上の神経インターフェイス素子により印加されるシグナルは、電気シグナル、電磁シグナル、光シグナル、機械的シグナル、超音波シグナル、又は熱的シグナルである。装置が少なくとも2つのトランスデューサーを有するこれらの実施形態で、トランスデューサーの各々が印加するように構成されたシグナルは、電気シグナル、光シグナル、超音波シグナル、及び熱的シグナルから独立して選択される。即ち、各トランスデューサーは、異なるシグナルを印加するように構成され得る。あるいは、ある実施形態では、各トランスデューサーは、同じシグナルを印加するように構成されている。
ある実施形態では、1つ以上のトランスデューサーの各々は、1つ以上の電極、1つ以上の光子供給源、1つ以上の超音波トランスデューサー、もう1つの熱源、又はシグナルが効果を発揮するように構成された1つ以上の他のタイプのトランスデューサーを含むことができる。
ある実施形態では、1つ以上のトランスデューサーにより印加される1つ又は複数のシグナルは、電気シグナル、例えば、電圧又は電流である。そのような実施形態では、電気シグナルを印加するように構成された1つ以上のトランスデューサーは、電極、例えば、ワイヤ電極又はカフ電極である。あるそのような実施形態では、印加されるシグナルは、直流(DC)波形、例えば、電荷をバランスさせたDC波形、又は交流(AC)波形、又はDC及びAC波形の両方を含む。
ある実施形態では、DC波形又はAC波形は、矩形波、正弦波、三角波又は複合的な波形であってもよい。DC波形は、あるいは定常振幅波形であってもよい。ある実施形態では、電気シグナルは、変化する電圧のDCの矩形波である。
ある実施形態では、シグナルは、1Hz〜1kHzの範囲、場合により1〜500Hz、場合により1〜200Hz、場合により1〜100Hz、場合により1〜50Hz、場合により1〜20Hz、場合により1〜10Hz、場合により5〜10Hz、場合により5Hz又は7.5Hzの周波数を有するAC又はDC波形を含む。ある好ましい実施形態では、シグナルは、50〜150Hzの周波数を有するDC波形を含む。ある好ましい実施形態では、シグナルは、100Hzの周波数を有するDC波形を含む。そのような範囲の下限及び上限は、シグナルが、少なくとも1Hz、又は少なくとも5Hz、又は少なくとも25Hz、又は少なくとも50Hz、又は少なくとも100Hzの周波数を有することができるように、独立して変化することができることは、当業者により認識されると予想される。そのようなシグナルは、1kHz、又は500Hz、又は200Hz、又は100Hz、又は50Hz又は20Hz、又は10Hzを超えない周波数を有することができる。
意図される刺激を達成するために必要な印加される電気シグナルの電流振幅が、電極の位置取り及び関連する電気生理学的特性(例えばインピーダンス)に依存することは、当業者により認識されると予想される。与えられた対象で、意図される刺激を達成するために適当な電流振幅を決定することは、当業者の能力の内である。例えば、当業者は、ニューロン又は神経の刺激により誘導された神経活動プロファイルをモニターする適当な方法に通じている。
ある実施形態では、電気シグナルは、10〜2000μA、場合により20〜1000μA、場合により10〜2000μA、場合により20〜1000μA、場合により50〜1000μA、場合により100〜1000μA、場合により500〜1000μA、場合により500〜800μA、場合により800μA、場合により20〜500μA、場合により50〜250μAの電流を有するDC波形及び/又はAC波形を含む。ある実施形態では、電気シグナルは、少なくとも10μA、少なくとも20μA、少なくとも50μA、少なくとも60μA、少なくとも70μA、少なくとも80μA、少なくとも90μA、少なくとも100μA、少なくとも110μA、少なくとも150μA、少なくとも180μA、少なくとも200μA、少なくとも220μA、少なくとも250μA、少なくとも300μA、少なくとも400μA、少なくとも500μA、少なくとも600μA、少なくとも700μA、少なくとも800μAの電流を有する。これらの範囲は例示的であり、当業者は、下限及び上限が独立して変化し得ることを認識すると予想される。
ある実施形態では、電気シグナルは、0.001〜5ms、0.01〜5ms、0.1〜5ms、1〜5ms、1〜2ms、場合により2msの持続時間のパルス持続時間を有するDC波形及び/又はAC波形を含む。ある実施形態では、パルス持続時間は、0.005〜0.1ms、場合により0.01〜0.05、場合により0.01〜0.04ms、場合により0.01〜0.03ms、場合により0.01〜0.02ms、場合により0.01又は0.02ms、又は0.04msである。
あるそのような実施形態では、全てのトランスデューサーは、電気シグナル、場合により同じ電気シグナルを印加するように構成された電極である。
1つ以上のトランスデューサーにより印加されるシグナルが熱的シグナルである、ある実施形態では、シグナルはニューロン又は神経の温度を低下させる(即ち、ニューロン又は神経を冷却する)。ある代替的実施形態では、シグナルはニューロン又は神経の温度を上昇させる(即ち、神経を加熱する)。ある実施形態では、シグナルはニューロン又は神経の加熱及び冷却の両方を行う。
1つ以上のトランスデューサーにより印加されるシグナルが熱的シグナルである、これらの実施形態では、1つ以上のトランスデューサーの少なくとも1つが、熱的シグナルを印加するように構成されたトランスデューサーである。あるそのような実施形態では、全てのトランスデューサーが、熱的シグナル、場合により同じ熱的シグナルを印加するように構成されている。
ある実施形態では、1つ以上のトランスデューサーが、熱的シグナルを印加するように構成されたペルティエ素子を含み、場合により1つ以上のトランスデューサーの全てがペルティエ素子を含む。ある実施形態では、1つ以上のトランスデューサーが、熱的シグナルを印加するように構成されたレーザーダイオードを含み、場合により、1つ以上のトランスデューサーの全てが、熱的シグナルを印加するように構成されたレーザーダイオードを含む。ある実施形態では、1つ以上のトランスデューサーが、熱的シグナルを印加するように構成された電気抵抗素子を含み、場合により、1つ以上のトランスデューサーの全てが熱的シグナルを印加するように構成された電気抵抗素子を含む。
ある実施形態では、1つ以上のトランスデューサーにより印加されるシグナルは、機械的シグナル、場合により超音波シグナルである。ある代替的実施形態では、1つ以上のトランスデューサーにより印加される機械的シグナルは圧力シグナルである。
ある実施形態では、1つ以上のトランスデューサーにより印加されるシグナルは、電磁シグナル、場合により光シグナルである。あるそのような実施形態では、1つ以上のトランスデューサーは、光シグナルを印加するように構成されたレーザー及び/又は発光ダイオードを含む。
ある実施形態では、シグナルにより引き起こされた刺激の結果として対象で生ずる生理学的応答は、口腔乾燥症の処置、シェーグレン症候群の処置;唾液産生の増加、唾液腺からの分泌の増加、顎下腺からの分泌の増加、顎下腺による合計ペプチド産生の増加、顎下腺による抗炎症性ペプチド産生の増加、プロホルモン 顎下ラット1タンパク質(SMR1)(又はそのヒト相同体)産生の増加、及び/又はシアロルフィン、SGP-T、FEG(又はそれらのヒト相同体)を含むが、これらに限定されない、それらから誘導されたペプチドの増加、CABS1、オピオルフィンの産生の増加、及び/又はそれらから誘導されたペプチドにおける増加、健常個体により示されるパターンに、シグナルの印加の前よりもさらに酷似する、上頸神経節の神経節後ニューロンにおける活動電位又は活動電位のパターンの変化の1つ以上である。
ある実施形態では、装置は、対象で1種以上の生理学的パラメーターを検出する検出素子をさらに含む。そのような検出素子は、1種以上の生理学的パラメーターを検出するように構成され得る。即ち、そのような実施形態では、各検出器は、1種以上の生理学的パラメーター、例えば、2、3、4種又は全ての検出された生理学的パラメーターを検出することができる。あるいは、そのような実施形態では、1つ以上の検出素子の各々は、1種以上の検出される生理学的パラメーターと別のパラメーターを検出するように構成されている。
あるそのような実施形態で、制御器は、1種以上の生理学的パラメーターを検出するように構成された検出素子と結合されて、生理学的パラメーターが、予め定められた閾値と一致するか又はそれを超えることが検出されたときに、1つ又は複数のトランスデューサーにシグナルを印加させる。
ある実施形態では、1種以上の検出された生理学的パラメーターが、全身性な交感神経の緊張、唾液の体積、唾液の全タンパク質/ペプチド濃度、唾液の抗炎症性タンパク質/ペプチド濃度、唾液腺からの分泌、顎下腺からの分泌から選択される。
ある実施形態では、1種以上の検出された生理学的パラメーターが、対象のニューロン又は神経において、活動電位又は活動電位のパターンを含み、該活動電位又は活動電位のパターンは、口腔乾燥症を有する対象、場合により、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症を有する対象と関連する。ある実施形態では、1種以上の検出された生理学的パラメーターは、対象のニューロン又は神経において、活動電位又は活動電位のパターンを含み、該活動電位又は活動電位のパターンは、シェーグレン症候群を有する対象と関連する。
任意の2種以上の示された生理学的パラメーターが、平行して又は引き続いて検出され得ることは認識されると予想される。例えば、ある実施形態では、制御器は、上頸神経節(例えばその神経節後線維)の活動電位のパターンを、対象の唾液産生及び/又は分泌も検出するように構成された1つ又は複数の検出器と結合されている。
口腔乾燥症及びシェーグレン症候群は、交感神経頸部神経節における神経活動を刺激することにより、即ち、唾液腺を神経支配するニューロン、特に顎下腺を神経支配するニューロンにおける神経活動を刺激することにより、和らげる、及び/又は予防することができることが確認されている。
ある実施形態では、シグナルは、対象により調節される(例えば「要求に基づいて」)制御器に応答して印加される。そのような場合には、対象が、口腔乾燥症の認知に応答してシグナルを活性化することができることが有利である。
シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症の処置のために及び/又はシェーグレン症候群と関連する炎症の処置のために、顎下腺を神経支配する神経節後ニューロンの神経活動を刺激することが特に有利である。特に、顎下腺からの分泌は、病状の複数の態様に影響し得るペプチド、特に抗炎症性ペプチドを含む。さらに、顎下腺を神経支配するニューロンの神経活動を刺激することにより、口腔乾燥症を越えるシェーグレン症候群の症状を軽減することもできる。あるいは、又はそれに加えて、顎下腺を神経支配するニューロンの神経活動を刺激することにより、複数の経路により、例えば、唾液産生/分泌を増加させることにより、及び抗炎症性ペプチド産生を増加させることにより、SSと関連する口腔乾燥症を軽減することもできる。
シグナルを印加した結果としての神経活動の刺激により、シグナルが印加されるニューロン又は神経における神経活動が増加する。ある実施形態では、シグナルは、1つ又は複数の神経に印加することができて、その結果、少なくとも幾つかのニューロン(例えば、ニューロンの特異的クラス)における神経活動は、神経のその部分におけるベースラインの神経活動と比較して増加する。神経活動の刺激は、1つ又は複数の神経全体にわたって均等であることができて、その場合、神経活動は、神経全体を通じて、全てのニューロンで増加するであろう。
ある実施形態では、シグナルは、唾液腺を神経支配するSCGの神経節後ニューロンで、神経活動を刺激し、好ましくは選択的に刺激する。ある好ましい実施形態では、シグナルは、顎下腺を神経支配する神経節後ニューロン、即ち、CST-SMG軸を形成する神経節後ニューロンにおいて、神経活動を刺激し、好ましくは、神経活動を選択的に刺激する。ある実施形態では、シグナルは、上頸神経節の神経節後ニューロンで神経活動を選択的に刺激し、前記神経節後ニューロンは、低閾値の分泌促進性のニューロンである。
ある実施形態では、シグナルは、対象の左側の特定のニューロン、対象の右側の特定のニューロン、又は両方に印加される。即ち、ある実施形態では、シグナルは、片側だけに、あるいは、左右相称に印加される。
ある実施形態では、ニューロン、1つ又は複数の神経に対するシグナルの印加は、神経活動に調整をもたらして、それは、ニューロン、1つ又は複数の神経の全て又は一部において、活動電位のパターンに対する変更である。あるそのような実施形態では、神経活動は、ニューロン、1つ又は複数の神経で生じた活動電位のパターンが、健常対象で観察されるニューロン、1つ又は複数の神経における活動電位のパターンと類似するように、調整される。
神経活動の調整は、種々の他のやり方、例えば、活動の特定の部分を増加又は阻害すること、及び特定のパターンにより、活動の新しい要素、例えば、特に時間間隔、特に周波数帯を刺激すること等で、神経活動を変化させることを含み得る。神経活動のそのような変化は、例えば、ベースライン活動に関して増加及び/又は減少の両方を表すことができる。
ある実施形態では、制御器は、シグナルを間欠的に印加させる。あるそのような実施形態では、制御器は、シグナルを、第1の時間帯の間には印加させ、次に第2の時間帯の間には停止させ、次に第3の時間帯の間には再び印加させて、次に第4の時間帯の間には停止させる。そのような実施形態では、第1、第2、第3の及び第4の期間が順次及び引き続いて継続する。第1、第2、第3の及び第4の期間のシリーズが1印加サイクルになる。あるそのような実施形態では、シグナルが周期で印加されて、その周期と周期の間にはシグナルが印加されないように、複数の印加サイクルが引き続いて継続することができる。
ある実施形態では、印加サイクルが、隣接して連続することはない。あるそのような実施形態では、印加サイクルは、1〜60分、5〜30分、10〜20分、場合により15分の期間により分離される。
そのような実施形態では、第1、第2、第3及び第4の時間帯の持続時間は、独立して選択される。即ち、各時間帯の持続時間は、同じであっても任意の他の時間帯と異なってもよい。あるそのような実施形態では、第1、第2、第3及び第4の時間帯の各々の持続時間は、5秒から24時間、30秒から12時間、1分から12時間、5分から8時間、5分から6時間、10分から6時間、10分から4時間、30分から4時間、1時間から4時間の任意の時間である。ある実施形態では、第1、第2、第3及び第4の時間帯の各々の持続時間は、5秒、10秒、30秒、60秒、2分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間である。
ある実施形態では、引き続く印加サイクルは、作動期間の間印加される。即ち、作動期間は、引き続く印加サイクルが作動中の期間である。そのような実施形態では、作動期間の直後に、非作動期間が続く。ある実施形態では、作動及び非作動期間は、1〜60分、5〜30分、10〜20分、場合により15分から独立して選択される持続時間を有する。ある実施形態では、作動及び非作動期間は、1〜24時間、1〜12時間、1〜6時間、場合により1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間から独立して選択される持続時間を有する。
制御器がシグナルを間欠的に印加させる、ある実施形態では、シグナルは、1日当たり特定の長さの時間印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、1日当たり10分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、特定の長さの時間連続的に印加される。ある代替的なそのような実施形態では、シグナルは、1日を通じて不連続的に印加されてもよく、但し、印加の合計時間は、特定の時間になる。
制御器がシグナルを間欠的に印加させる、ある実施形態では、シグナルは、対象が特定の生理学的状態にあるときにのみ、印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、対象が口腔乾燥症を示すか又はシェーグレン症候群を有すると同定されたときにのみ、印加される。
あるそのような実施形態では、装置は、それにより対象の状態(例えば、彼らが口腔乾燥症を経験していること)が、対象又は医師により示され得る通信素子又は入力素子をさらに含む。代替的実施形態において、装置は、対象の状態を検出するように構成された検出器をさらに含み、その場合、シグナルは、検出器が、対象が特定の状態にあることを検出したときにのみ印加される。
ある代替的実施形態では、制御器は、シグナルを永久的に印加させる。即ち、一旦始まると、シグナルは、ニューロン、1つ又は複数の神経に、連続的に印加される。シグナルがパルスのシリーズである実施形態では、パルス間のギャップは、シグナルが連続的でなく印加されることを意味しないことは認識されると予想される。
装置のある実施形態では、シグナルの印加により引き起こされる神経活動の調整は一時的である。即ち、シグナルが中止されたときに、ニューロン、1つ又は複数の神経における神経活動は、1〜60秒以内、又は1〜60分以内、又は1〜24時間以内、場合により1〜12時間、場合により1〜6時間、場合により1〜4時間、場合により1〜2時間以内に、実質的にベースラインの神経活動に戻る。あるそのような実施形態では、神経活動は、実質的に完全にベースラインの神経活動に戻る。即ち、シグナルの中止後の神経活動は、シグナルが印加される前、即ち調整前の神経活動と実質的に同じである。例えば、シグナルは、制御器にシグナルを印加するように示す、対象による操作に応答して、所定の時間帯の間印加され得る。
ある代替的実施形態では、1つ又は複数のシグナルの印加により引き起こされる神経活動における調整は、実質的に持続性である。即ち、シグナルが中止されたときに、ニューロン、1つ又は複数の神経における神経活動は、シグナルが印加されていたときと実質的に同じままであり、即ち調整中及びその後の神経活動は実質的に同じである。
ある実施形態では、シグナルの印加により引き起こされる神経活動における調整は、部分的に矯正的、好ましくは実質的に矯正的である。即ち、シグナルが中止されたときに、ニューロン、1つ又は複数の神経における神経活動は、健常対象で観察される神経における活動電位のパターンに、調整前よりも、さらに酷似して、好ましくは、健常対象で観察される神経における活動電位のパターンに実質的に完全に類似する。そのような実施形態では、シグナルにより引き起こされる調整は、本明細書で定義された任意の調整であることができる。例えば、シグナルの印加は、神経活動の刺激を生じさせて、シグナルが中止されたときには、ニューロン、1つ又は複数の神経における活動電位のパターンは、健常個体で観察される活動電位のパターンと類似する。そのような矯正の効果は、正のフィードバックループの結果であり、即ち、例えば、シェーグレン症候群の結果としての口腔乾燥症の底流にある原因又は素因は、装置及び特許請求された方法の結果として処置されると仮定される。
ある実施形態では、装置は、対象中に少なくとも部分的埋め込みに適している。あるそのような実施形態では、装置は、対象中に完全に埋め込まれるのに適している。
ある実施形態では、装置は、1個以上の電力供給素子、例えばバッテリー、及び/又は1個以上の通信素子をさらに含む。
別の態様において、本発明は、対象における口腔乾燥症、例えば、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症を処置する方法であって、上で記載された装置を埋め込むステップ、装置の少なくとも1つのトランスデューサーを、対象の上頸神経節(SCG)のニューロンと接触させて配置するステップ、及び装置を起動するステップを含む方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、対象におけるシェーグレン症候群を処置する方法であって、上で記載された装置を埋め込むステップ、装置の少なくとも1つのトランスデューサーを、対象の上頸神経節(SCG)のニューロンと接触させて配置するステップ、及び装置を起動するステップを含む方法を提供する。そのような態様では、トランスデューサーは、シグナルがニューロンに効果的に印加され得るようにトランスデューサーが配置されたときに、ニューロンとシグナル伝達接触している。装置が作動状態にあり、場合により対象による操作に応答して、制御器により決定されたようにシグナルが印加されることになるとき、装置は起動されている。
あるそのような実施形態では、第1のトランスデューサーは、前記対象の左上頸神経節のニューロンとシグナル伝達接触して配置され、対象における前記左上頸神経節の前記ニューロンにおける神経活動を刺激し、第2のトランスデューサーは、前記対象における右上頸神経節のニューロンとシグナル伝達接触して配置され、対象における前記右上頸神経節の前記ニューロンにおける神経活動を刺激する。あるそのような実施形態では、第1及び第2のトランスデューサーは、上の記載による1つの装置又はシステムの一部である。代替的実施形態において、第1及び第2のトランスデューサーは、別の装置又はシステムの一部である。
ある実施形態では、ニューロンは、唾液腺、好ましくは顎下腺を神経支配するSCGの神経節後ニューロンである。ある実施形態では、神経節後ニューロンは、CST-SMG神経内分泌軸の一部を形成している。
ある実施形態では、該方法は、唾液代用物、唾液刺激薬、コリン作動性副交感神経模倣薬剤、及び/又は本明細書の他の場所で記載されている免疫抑制剤の投与をさらに含む。
本発明の全ての態様の実施(上及び下の両方で論じた)は、図2A〜2Cを参照することによりさらに認識されると予想される。
図2A〜2Cは、本明細書に記載された任意の種々の方法を実施するために、本発明が、対象に埋め込まれ、置かれ、又は他のように配された、1つ以上の神経調整装置を使用して、どのようにして効果を上げるかを示す。このようにして、1つ以上の神経調整装置/デバイスは、上頸神経節のニューロン、例えば、顎下腺を神経支配する神経節前ニューロン又は神経節後ニューロン、即ちCST-SMG軸の一部を形成しているニューロンにおける神経活動を刺激することにより、対象におけるシェーグレン症候群又は口腔乾燥症、例えば、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症を処置するために使用することができる。
図2B〜2Cの各々で、別々の神経調整装置100が、左及び右上頸神経節の各々に関して提供されるが、本明細書で論じたように、装置は、左及び右上頸神経節の一方にのみ提供して使用することができた。そのような各神経調整装置は、対象に完全に又は部分的に埋め込まれてもよく、又はそれぞれのニューロンの神経を調整するように、他のように配されてもよい。左及び右神経調整装置100の各々は、独立して作動することもでき、又は互いに通信して作動することもできる。
図2Aも、埋め込まれた神経調整装置100の素子を図式的に示し、そこで、装置は、数個の素子を含み、素子又は機能は一緒に単一のユニットにグループ化されて対象に埋め込まれる。第1のそのような素子は、トランスデューサー102であり、それは、対象90の上頸神経節の神経節後ニューロンに隣接して示されている。トランスデューサー102は、制御素子104により作動され得る。上記装置は、1個以上のさらに素子、例えば、通信素子106、検出素子108、電力供給素子110等々を備えることもできる。
各神経調整装置100は、要求される神経調整(即ち刺激)を、独立して、又は1つ以上の制御シグナルに応答して実施することができる。そのような制御シグナルは、1個以上の検出素子108の出力に応答して、及び/又は通信素子を使用して受けた1つ以上の外部の出所からの通信に応答して、アルゴリズムに従って、制御素子104により提供され得る。ここで論じたように、検出素子は、種々の異なった生理学的パラメーターに応答性であることができた。
図2Bは、図2Aの装置が異なってそれぞれの場所に置かれ得る幾つかのやり方を例示する。例えば、図2Bでは、神経調整装置100は、上頸神経節90の神経節後ニューロンに隣接して埋め込まれたトランスデューサー102を含むが、他の素子、例えば、制御素子104、通信素子106及び電力供給素子110等は、対象に埋め込まれているか又は携帯されていてもよい別の制御ユニット130に実装されている。別の制御ユニット130は、次に、例えば、シグナル及び/又は電力をトランスデューサーに送達する電線及び/又は光ファイバーを備えることができる結線132を通して、両方の神経調整装置中のトランスデューサーを制御する。
図2Bの配置中で、1個以上の検出素子108は、別の制御ユニット130と別に設置されているが、1個以上のそのような検出素子は、やはり別の制御ユニット130内、及び/又はそうではなく神経調整装置100の一方又は両方の内に設置されることができた。検出素子は、対象の1種以上の生理学的パラメーターを検出するために使用することができて、制御素子又は制御ユニットは、次に検出されたパラメーターに応答して、例えば、検出された生理学的パラメーターが予め定められた閾値と一致するか又はそれを超える場合にのみ、トランスデューサーにシグナルを印加させる。そのような目的で検出することができた生理学的パラメーターは、全身性な交感神経の緊張、唾液の体積、唾液の全タンパク質/ペプチド濃度、唾液の抗炎症性タンパク質/ペプチド濃度、唾液腺からの分泌、顎下腺からの分泌を含む。
種々の機能素子を設置して神経調整装置及び別の制御ユニット130及び他の場所中でグループ化することができた種々の他のやり方は、言うまでもなく可能である。例えば、図2Bの1個以上のセンサーは、図2A又は2Cの配列又は他の配列で使用することができた。
図2Cは、図2A又は2Bの装置の幾つかの機能性が、対象に埋め込まれずに提供される幾つかのやり方を例示する。例えば、図2Cでは、当業者によく知られているやり方で、電力を装置の埋め込まれた素子に提供することができる外部電力供給装置140が提供されて、外部制御器150は、制御素子104の機能性の一部又は全てを提供し、及び/又は制御器の他の態様を提供し、及び/又は提供する装置からのデータ読み出しを提供し、及び/又はデータ入力施設152を提供する。データ入力施設は、対象又は他の操作員により、例えば、対象の状態に関係するデータ(例えば、彼らが口腔乾燥症を経験していれば)を入力する種々のやり方で、使用され得る。
各神経調整装置は、典型的には、シグナルを上頸神経節の神経節後ニューロンに印加することを含む操作の1つ以上の物理的様式を使用して、必要とされる神経調整(即ち刺激、例えば、選択的刺激)を実施するために適合されていてもよく、そのようなシグナルは、典型的には、エネルギーを、ニューロンに(又は、ニューロンから)移動することを含む。すでに論じたように、そのような様式は、電気シグナル、光シグナル、超音波又は他の機械的シグナル、熱的シグナル、磁性又は電磁シグナル、又はエネルギーの幾つかの他の使用を使用して、ニューロン、1つ又は複数の神経を刺激して、要求される調整を実施することを含むことができる。そのようなシグナルは、非破壊的シグナルであり得る。この目的のために、図2Aに例示されたトランスデューサー102は、要求される神経調整(即ち、神経活動の刺激)に効果を発揮させるために配列された1個以上の電極、1個以上の光子供給源、1個以上の超音波トランスデューサー、もう1つの熱源、又は1個以上の他のタイプのトランスデューサーを含むことができる。好ましくは、装置は、電気シグナルを印加するように構成された1個以上の電極、例えば、ワイヤ電極又はカフ電極を含む。
神経調整デバイス又は装置は、上頸神経節のニューロンにおける神経活動を、トランスデューサーを使用することにより刺激して、電圧又は電流、例えば、直流(DC)波形、例えば、電荷をバランスさせた直流、又はAC波形、又は両方を印加するように配列することもできる。
ある実施形態では、DC波形又はAC波形は、矩形波、正弦波、三角波又は複合的な波形であってもよい。DC波形は、あるいは、定常振幅波形であってもよい。ある実施形態では、電気シグナルは、変化するDC電圧の矩形波形である。
ある実施形態では、シグナルは、1Hz〜1kHzの範囲、場合により1〜500Hz、場合により1〜200Hz、1〜100Hz、1〜50Hz、1〜20Hz、1〜10Hz、5〜10Hz、場合により5Hz又は7.5Hzの周波数を有するAC又はDC波形を含む。ある好ましい実施形態では、シグナルは、50〜150Hzの周波数を有するDC波形を含む。ある好ましい実施形態では、シグナルは、100Hzの周波数を有するDC波形を含む。そのような範囲の下限及び上限は、シグナルが、少なくとも1Hz、又は少なくとも5Hz、又は少なくとも25Hz、又は少なくとも50Hz、又は少なくとも100Hzの周波数を有することができるように、独立して変化することができることは、当業者により認識されると予想される。そのようなシグナルは、1kHz、又は500Hz、又は200Hz、又は100Hz、又は50Hz、又は10Hz、又は8Hzを超えない周波数を有することができる。
意図される刺激を達成するために必要な印加される電気シグナルの電流振幅が、電極の位置取り及び関連する電気生理学的特性(例えばインピーダンス)に依存することは、当業者により認識されると予想される。与えられた対象で、意図される刺激を達成するために適当な電流振幅を決定することは、当業者の能力の内である。例えば、当業者は、ニューロン又は神経の刺激により誘発された神経活動プロファイルをモニターする適当な方法に通じている。
ある実施形態では、電気シグナルは、10〜2000μA、場合により20〜1000μA、50〜1000μA、100〜1000μA、500〜1000μA、500〜800μA、場合により800μAの電流を有するDC波形及び/又はAC波形を含む。ある実施形態では、電気シグナルは、20〜500μA、場合により50〜250μAの電流を有する。ある実施形態では、電気シグナルは、少なくとも10μA、少なくとも20μA、少なくとも50μA、少なくとも60μA、少なくとも70μA、少なくとも80μA、少なくとも90μA、少なくとも100μA、少なくとも110μA、少なくとも150μA、少なくとも180μA、少なくとも200μA、少なくとも220μA、少なくとも250μA、少なくとも300μA、少なくとも400μA、少なくとも500μA、少なくとも600μA、少なくとも700μA、少なくとも800μAの電流を有する。これらの範囲は例示的であり、当業者は、下限及び上限が独立して変化し得ることを認識すると予想される。
ある実施形態では、電気シグナルは、0.001〜5ms、0.01〜5ms、0.1〜5ms、1〜5ms、1〜2ms、場合により2msの接続時間のパルス持続時間を有するDC波形及び/又はAC波形を含む。ある実施形態では、パルス持続時間は、0.005〜0.1ms、場合により0.01〜0.05、場合により0.01〜0.04ms、場合により0.01〜0.03ms、場合により0.01〜0.02ms、場合により0.01又は0.02ms、又は0.04msである。
光遺伝学は、細胞を遺伝的に改変して感光性の特徴を発現させる技法であり、それは、次に光で活性化されて細胞機能を調整することができる。神経発火を調整するために使用することができる多くの異なる光遺伝学の手法が開発されている。神経調整の機械的形態は、埋め込まれた超音波トランスデューサーの代わりに外部を使用して簡便に実施することができる超音波の使用を含むことができる。機械的神経調整の他の形態は、圧力の使用を含む(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Robert Fern and P. J. Harrison Br.j. Anaesth. (1975), 47, 1123による"The effects of compression upon conduction in myelinated axons of the isolated frog sciatic nerve"を参照されたい)。
上で論じた技法は、原理的に、ニューロンの活動の刺激に関係する。神経活動の阻害もしくは遮断による調整又は種々のやり方で他のように活動を改変することが必要とされる場合、当業者により認識されると予想されるように、ニューロン、神経又は神経の特定の部分と隣接するか又は接触する電極が、種々のやり方で活動を阻害する電気シグナルを与えるために使用され得る。
別の態様において、本発明は、対象における口腔乾燥症、例えば、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症を処置する方法であって、シグナルを前記対象の上頸神経節のニューロンに印加して、対象における前記ニューロンにおける神経活動を刺激するステップを含む、方法を提供する。ある実施形態では、シグナルは、唾液腺、好ましくは顎下腺を神経支配する神経節前ニューロン及び/又は神経節後ニューロンに印加される。
さらなる態様において、本発明は、対象におけるシェーグレン症候群を処置する方法であって、シグナルを前記対象の上頸神経節のニューロンに印加して、対象における前記ニューロンにおける神経活動を刺激するステップを含む、方法を提供する。ある実施形態では、シグナルは、唾液腺、好ましくは顎下腺を神経支配する神経節前ニューロン及び/又は神経節後ニューロンに印加される。
ある実施形態では、シグナルは、シグナルを印加するように構成された1つ以上のトランスデューサーを含む神経調整装置により印加される。ある好ましい実施形態では、神経調整装置は、対象に少なくとも部分的に埋め込まれる。ある好ましい実施形態では、神経調整装置は、対象に完全に埋め込まれる。
ある実施形態では、口腔乾燥症の処置は予防的処置である。即ち、例えば、前記対象が、副作用として口腔乾燥症を有することが知られている薬物療法を処方されている場合、本発明の方法は、対象が口腔乾燥症を発症する確度を低下させる。本発明の方法は、平均的集団のリスクと比較して、この疾患を発症するリスクがより高いと同定された対象者で、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症を予防するために使用することもできる。
ある実施形態では、口腔乾燥症の処置は治療的処置である。即ち、本発明の方法は、例えば、処置の副作用として又は別の疾患、特にシェーグレン症候群の症状としての口の乾燥を示す対象者における口腔乾燥症の重症度を、少なくとも部分的に和らげ又は軽減する。SSと関連する口腔乾燥症を処置するために使用される本発明の方法において、口の乾燥の軽減は、炎症、例えば、口の炎症及び/又は全身性炎症の減少を伴うこともある。
ある実施形態では、口腔乾燥症、例えば、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症の処置は、測定可能な生理学的パラメーターにおける改善、例えば、全身性な交感神経の緊張の減少、唾液の体積の増加、唾液のタンパク質/ペプチド濃度の増加(例えば、全タンパク質濃度の増加及び/又は抗炎症性タンパク質もしくはペプチド(例えばSMR1、CABS1、FEG、feG、シアロルフィン、オピオルフィンもしくはそれらの相同体)の増加)、唾液腺からの分泌の増加、及び/又は顎下腺からの分泌の増加により示される。SSにおいて、測定可能なパラメーターにおける改善は、炎症、例えば、口の炎症及び/又は全身性炎症の減少であってもよく、場合により上で挙げた1種以上のパラメーターにおける改善を伴う。
ある実施形態では、シェーグレン症候群の処置は予防的処置である。即ち、本発明の方法は、シェーグレン症候群の患者がシェーグレン症候群の1つ以上の症状、例えば、口腔乾燥症、眼の乾燥、又は口の炎症を発症する確度を低下させる。
ある実施形態では、シェーグレン症候群の処置は治療的である。即ち、本発明の方法は、シェーグレン症候群の1つ以上の症状、例えば、口の乾燥、口の炎症、全身性炎症を、少なくとも部分的に和らげ又は軽減する。
ある実施形態では、口腔乾燥症、例えば、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症の処置は、測定可能な生理学的パラメーターにおける改善、例えば、全身性な交感神経の緊張の減少、唾液の体積の増加、唾液のタンパク質/ペプチド濃度の増加(例えば、全タンパク質濃度の増加及び/又は抗炎症性タンパク質もしくはペプチド(例えばSMR1、CABS1、FEG、feG、シアロルフィン、オピオルフィンもしくはそれらの相同体)の増加)、唾液腺からの分泌の増加、及び/又は顎下腺からの分泌の増加により示される。SSにおいて、測定可能なパラメーターにおける改善は、炎症、例えば、口の炎症及び/又は全身性炎症の減少であってもよく、場合により上で挙げた1種以上のパラメーターにおける改善を伴う。
任意の与えられたパラメーターについて値を決定する適切な方法は、当業者により認識されており、上に記載されている。
ある実施形態では、状態の処置は、シグナルが印加されるニューロン、1つ又は複数の神経における神経活動のプロファイルにおける改善により示される。即ち、状態の処置は、健常個体の神経活動に近づくニューロン又は神経における神経活動、即ち、健常個体により示されるパターンに、介入前より、より酷似するような神経における活動電位のパターンによって示される。
シグナルを印加した結果としての神経活動の刺激は、シグナルが印加されたニューロン又は1つもしくは複数の神経における神経活動の増加である。ある実施形態では、シグナルが、神経に印加された結果、少なくとも幾つかのニューロン(例えば、特定のクラスのニューロン)における神経活動が、神経のその部分におけるベースラインの神経活動と比較して増加することがある。神経活動の刺激は、神経全体にわたって均等であることができて、その場合には神経活動は1つ又は複数の神経全体にわたって全てのニューロンで増加するであろう。
ある実施形態では、シグナルは、唾液腺を神経支配するSCGの神経節後ニューロンにおける神経活動を刺激し、好ましくは選択的に刺激する。ある好ましい実施形態では、シグナルは、顎下腺を神経支配する神経節後ニューロン、即ちCST-SMG軸を形成する神経節後ニューロンにおける神経活動を刺激し、好ましくは選択的に刺激する。ある実施形態では、シグナルは、上頸神経節の神経節後ニューロンにおける神経活動を選択的に刺激し、前記神経節後ニューロンは、低閾値の分泌促進性のニューロンである。
ある実施形態では、シグナルは、対象の左側の特定のニューロンもしくは神経、対象の右側の特定のニューロンもしくは神経、又は両方に印加される。即ち、ある実施形態では、シグナルは、片側だけに、あるいは、左右相称に印加される。
ある実施形態では、シグナルは間欠的に印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、第1の時間帯に印加されて、次に第2の時間帯に停止され、次に第3の時間帯に再び印加されて、次に第4の時間帯に停止される。そのような実施形態では、第1、第2、第3の及び第4の時間帯は、順次及び引き続いて継続する。第1、第2、第3の及び第4の時間帯のシリーズが、1印加サイクルになる。あるそのような実施形態では、シグナルが周期で印加されて、複数の印加サイクルが、その周期と周期の間ではシグナルが印加されないように、引き続いて継続することができる。
ある実施形態では、印加サイクルが、隣接して連続することはない。あるそのような実施形態では、印加サイクルは、1〜60分、5〜30分、10〜20分、場合により15分の期間により分離される。
そのような実施形態では、第1、第2、第3の及び第4の時間帯の持続時間は、独立して選択される。即ち、各時間帯の持続時間は、同じであっても任意の他の時間帯と異なってもよい。あるそのような実施形態では、第1、第2、第3の及び第4の時間帯の各々の持続時間は、5秒から24時間、30秒から12時間、1分から12時間、5分から8時間、5分から6時間、10分から6時間、10分から4時間、30分から4時間、1時間から4時間の任意の時間である。ある実施形態では、第1、第2、第3の及び第4の時間帯の各々の持続時間は、5秒、10秒、30秒、60秒、2分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間である。
ある実施形態では、引き続く印加サイクルは、作動期間の間印加される。即ち、作動期間は、引き続く印加サイクルが作動中の期間である。そのような実施形態では、作動期間の直後に、非作動期間が続く。ある実施形態では、作動及び非作動期間は、1〜60分、5〜30分、10〜20分、場合により15分から独立して選択される持続時間を有する。ある実施形態では、作動及び非作動期間は、1〜24時間、1〜12時間、1〜6時間、場合により1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間から独立して選択される持続時間を有する。
シグナルが間欠的に印加されるある実施形態では、シグナルは、1日当たり特定の長さの時間で印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、1日当たり10分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、特定の長さの時間連続的に印加される。ある代替的なそのような実施形態では、シグナルは、1日を通じて不連続的にされてもよく、但し、印加の合計時間は、特定の時間になる。
シグナルが間欠的に印加されるある実施形態では、シグナルは、対象が特定の状態にある場合にのみ印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、対象が口腔乾燥症を示す場合にのみ印加される。そのような実施形態では、対象の状態(例えば、彼らが口腔乾燥症を経験している場合)は、対象が示すことができる。そのような場合には、対象は、シグナルをSCGに印加する制御器を制御することができる。代替的なそのような実施形態では、対象の状態は、対象からの任意の入力から独立して検出することができる。シグナルが神経調整装置により印加されるある実施形態では、装置は、対象の状態を検出するように構成された検出器をさらに含み、シグナルは、検出器が、対象が特定の状態にあることを検出したときにのみ印加される。
本発明による方法のある実施形態では、方法は、対象の1種以上の生理学的パラメーターを検出するステップをさらに含み、該方法では、シグナルは、検出された生理学的パラメーターが、予め定められた閾値と一致するか又はそれを超える場合にのみ印加される。1種以上の生理学的パラメーターが検出される、そのような実施形態では、シグナルは、検出されたパラメーターのいずれか1つがその閾値と一致するか又はそれを超える場合に、あるいは検出されたパラメーターの全てがそれらの閾値と一致するか又はそれを超える場合にのみ、印加することができる。シグナルが神経調整装置により印加される、ある実施形態では、装置は、1種以上の生理学的パラメーターを検出するように構成された、少なくとも1個の検出素子をさらに含む。
ある実施形態では、1種以上の検出された生理学的パラメーターは、全身性な交感神経の緊張、唾液の体積、唾液の全タンパク質/ペプチド濃度、唾液の抗炎症性タンパク質/ペプチド濃度、唾液腺からの分泌、顎下腺からの分泌から選択される。
同様に、ある実施形態では、検出された生理学的パラメーターは、対象のニューロン又は神経、例えば、上頸神経節の神経節後ニューロンにおいて、口腔乾燥症及び/又はシェーグレン症候群と関連する、活動電位又は活動電位のパターンであることができる。
任意の2種以上の示された生理学的パラメーターが、平行して又は引き続いて検出され得ることは認識されると予想される。例えば、ある実施形態では、上頸神経節の神経節後ニューロンにおける活動電位のパターンは、唾液腺、好ましくは顎下腺による分泌と同時に検出することができる。
ある実施形態では、対象は、制御器を通して、例えば、生理学的パラメーターの認知に応答して、シグナルを活性化する。
ある実施形態では、シグナルは永久的に印加される。即ち、一旦始まると、シグナルは、ニューロン、1つ又は複数の神経に、連続的に印加される。シグナルがパルスのシリーズである実施形態では、パルス間のギャップは、シグナルが連続的でなく印加されることを意味しないことは認識されると予想される。
方法のある実施形態では、シグナルの印加により引き起こされる神経活動の刺激は一時的である。即ち、シグナルが中止されたときに、1つ又は複数の神経における神経活動は、1〜60秒以内、又は1〜60分以内、又は1〜24時間以内、場合により1〜12時間、場合により1〜6時間、場合により1〜4時間、場合により1〜2時間以内に、実質的にベースラインの神経活動に戻る。あるそのような実施形態では、神経活動は、実質的に完全にベースラインの神経活動に戻る。即ち、シグナルの中止後の神経活動は、シグナルが印加される前、即ち調整前の神経活動と実質的に同じである。
ある代替的実施形態では、1つ又は複数のシグナルの印加により引き起こされる神経活動の刺激は、実質的に持続性である。即ち、シグナルが中止されたときに、ニューロン、1つ又は複数の神経における神経活動は、シグナルが印加されていたときと実質的に同じままであり、即ち、刺激中及びその後の神経活動は実質的に同じである。
ある実施形態では、シグナルの印加により引き起こされる神経活動の刺激は、部分的に矯正的、好ましくは実質的に矯正的である。即ち、シグナルが中止されたときに、ニューロン、1つ又は複数の神経における神経活動は、刺激の前よりも、健常対象で観察される活動電位のパターンに、より酷似して、健常対象で観察される活動電位のパターンに、好ましくは実質的に完全に類似する。例えば、シグナルの印加は神経活動を刺激して、シグナルが中止されたときに、ニューロン、1つ又は複数の神経における活動電位のパターンは、健常対象で観察される活動電位のパターンと類似する。そのような矯正の効果は、正のフィードバックループの結果であると仮定される。
あるそのような実施形態では、最初に印加されると、シグナルは、上の実施形態で記載されたように、間欠的に又は永久的に印加され得る。
ある実施形態では、シグナルは、上頸神経節の1つの神経節後ニューロンに印加される。ある実施形態では、シグナルは、CST-SMG軸の神経節後ニューロンを選択的に刺激する。ある実施形態では、シグナルは、上頸神経節の神経節後ニューロンにおける神経活動を選択的に刺激し、ここで、前記神経節後ニューロンは、低閾値の分泌促進性のニューロンである。
ある実施形態では、シグナルは左右相称に印加される。即ち、そのような実施形態では、シグナルは、対象の左及び右側の両方のニューロンに印加されて、その結果、神経活動は、シグナルが印加されたニューロンで刺激される。即ち、刺激は左右相称である。そのような実施形態では、右及び左のSCGに印加されるシグナルは、それ故、刺激の程度は、独立して選択される。ある実施形態では、右側のニューロン印加されるシグナルは、左側のニューロン印加されるシグナルと同じである。ある代替的実施形態では、右側のニューロンに印加されるシグナルは、左側のニューロンに印加されるシグナルと異なる。
調整が左右相称である、ある実施形態では、各シグナルは、シグナルを印加する1つ以上のトランスデューサーを含む神経調整装置により印加される。あるそのような実施形態では、全てのシグナルは、同じ神経調整装置により印加されて、その装置は少なくとも2個のトランスデューサーを有し、1つは左側ニューロンにシグナルを印加し、1つは右側ニューロンにシグナルを印加する。ある代替的実施形態では、各シグナルは、別の神経調整装置により印加される。
ある実施形態では、印加されるシグナルは非破壊的シグナルである。
本発明による方法のある実施形態では、印加されるシグナルは、電気シグナル、電磁シグナル(場合により光シグナル)、機械的(場合により超音波)シグナル、熱的シグナル、磁性シグナル又は任意の他のタイプのシグナルである。
1種以上のシグナルが印加され得る、あるそのような実施形態では、例えば、調整が左右相称である場合各、シグナルは、電気シグナル、光シグナル、超音波シグナル、及び熱的シグナルから独立して選択することができる。2つのシグナルが1個の調整装置により印加される、そのような実施形態では、2つのシグナルは、電気シグナル、光シグナル、超音波シグナル、及び熱的シグナルから独立して選択される、同じタイプのシグナルであることもあり、又は異なるタイプのシグナルであることもある。2つのシグナルが、各々別の神経調整装置により印加されるこれらの実施形態では、2つのシグナルは、電気シグナル、光シグナル、超音波シグナル、及び熱的シグナルから独立して選択される、同じタイプのシグナルであることもあり、異なるタイプのシグナルであることもある。
シグナルが少なくとも1つのトランスデューサーを含む神経調整装置により印加される、ある実施形態では、トランスデューサーは、シグナルが効果を発揮できるように配列された、1つ以上の電極、1つ以上の光子供給源、1つ以上の超音波トランスデューサー、もう1つの熱源、又は1つ以上の他のタイプのトランスデューサーを含むこともできる。
ある実施形態では、シグナルは、電気シグナル、例えば、電圧又は電流であり、トランスデューサーは、電極、例えば、ワイヤ電極又はカフ電極である。あるそのような実施形態では、シグナルは、直流(DC)波形、例えば、電荷をバランスさせたDC波形、又は交流(AC)波形、又はDC及びAC波形の両方を含む。
ある実施形態では、DC波形又はAC波形は、矩形波、正弦波、三角波又は複合的な波形であってもよい。DC波形は、あるいは、定常振幅波形であってもよい。ある実施形態では、電気シグナルは、変化する電圧のDCの矩形波形である。
ある実施形態では、電気シグナルは、1Hz〜1kHzの範囲、場合により1〜500Hz、場合により1〜200Hz、1〜100Hz、1〜50Hz、1〜20Hz、1〜10Hz、5〜10Hz、場合により5Hz又は7.5Hz、場合により50〜150Hz、場合により100Hzの周波数、又は記載された下限及び上限内の任意の代替的周波数を有するAC波形又はDC波形を含む。
意図される刺激を達成するために必要な印加される電気シグナルの電流振幅が、電極の位置取り及び関連する電気生理学的特性(例えばインピーダンス)に依存することは、当業者により認識されると予想される。与えられた対象で、意図される刺激を達成するために適当な電流振幅を決定することは、当業者の能力の内である。例えば、当業者は、ニューロン又は神経の刺激により誘発される神経活動プロファイルをモニターする適当な方法に通じている。
ある実施形態では、電気シグナルは、10〜2000μA、場合により20〜1000μA、50〜1000μA、100〜1000μA、500〜1000μA、500〜800μA、場合により800μAの電流を有するDC波形及び/又はAC波形を含む。ある実施形態では、電気シグナルは、20〜500μA、場合により50〜250μAの電流を有する。ある実施形態では、電気シグナルは、少なくとも10μA、少なくとも20μA、少なくとも50μA、少なくとも60μA、少なくとも70μA、少なくとも80μA、少なくとも90μA、少なくとも100μA、少なくとも110μA、少なくとも150μA、少なくとも180μA、少なくとも200μA、少なくとも220μA、少なくとも250μA、少なくとも300μA、少なくとも400μA、少なくとも500μA、少なくとも600μA、少なくとも700μA、少なくとも800μAの電流を有する。これらの範囲は例示的であり、当業者は、下限及び上限が独立して変化し得ることを認識すると予想される。
ある実施形態では、電気シグナルは、0.001〜5ms、0.01〜5ms、0.1〜5ms、1〜5ms、1〜2ms、場合により2msの持続時間のパルス持続時間を有するDC波形及び/又はAC波形を含む。ある実施形態では、パルス持続時間は、0.005〜0.1ms、場合により0.01〜0.05、場合により0.01〜0.04ms、場合により0.01〜0.03ms、場合により0.01〜0.02ms、場合により0.01又は0.02ms、又は0.04msである。
シグナルが熱的シグナルである、ある実施形態では、該シグナルはニューロン又は神経の温度を低下させる(即ち、ニューロン又は神経を冷却する)。ある代替的実施形態では、シグナルはニューロン又は神経の温度を上昇させる(即ち、ニューロン又は神経を加熱する)。ある実施形態では、シグナルはニューロン又は神経の加熱及び冷却の両方を行う。
シグナルが機械的シグナルである、ある実施形態では、シグナルは、超音波シグナルである。ある代替的実施形態では、機械的シグナルは圧力シグナルである。
ある実施形態では、方法は、対象への唾液代用物又は唾液刺激薬の投与をさらに含む。
別の態様において、本発明は、対象における口腔乾燥症を処置する方法で使用するための唾液代用物又は唾液刺激薬であって、該方法は、
i.シグナルを前記対象の上頸神経節に印加して、SCGのニューロンにおける神経活動を刺激するステップ、及び
ii.対象に、唾液代用物又は唾液刺激薬を投与するステップ
を含む、唾液代用物又は唾液刺激薬を提供する。
別の態様において、本発明は、対象におけるシェーグレン症候群を処置する方法で使用するための唾液代用物又は唾液刺激薬であって、該方法は、
i.シグナルを前記対象の上頸神経節(SCG)に印加して、前記SCGにおける神経活動を刺激するステップ、及び
ii.対象に、唾液代用物又は唾液刺激薬を投与するステップ
を含む、唾液代用物又は唾液刺激薬を提供する。
両方のそのような態様のある実施形態では、ステップ(i)及びステップ(ii)は、実質的に引き続いて適用され、又は、あるいは、両ステップが同時に適用される。ある実施形態では、ステップ(i)が実施された後に、ステップ(ii)が実施される。ある実施形態では、ステップ(ii)が実施された後に、ステップ(i)が実施される。
ある実施形態では、シグナルは、唾液腺、好ましくは顎下腺を神経支配する神経節前ニューロン及び/又は神経節後ニューロンに印加される。ある実施形態では、シグナルは、CST-SMG軸の神経節後ニューロンに印加される。ある実施形態では、シグナルは、上頸神経節の神経節後ニューロンに印加され、ここで、前記神経節後ニューロンは、低閾値の分泌促進性のニューロンである。
ある実施形態では、シグナルは、シグナルを印加するように構成された1つ以上のトランスデューサーを含む神経調整装置により印加される。ある好ましい実施形態では、神経調整装置は、対象に少なくとも部分的に埋め込まれる。ある好ましい実施形態では、神経調整装置は、対象に完全に埋め込まれる。
さらなる態様において、本発明は、対象における口腔乾燥症を処置する方法で使用するための唾液代用物又は唾液刺激薬であって、該方法は、対象に、唾液代用物又は唾液刺激薬を投与するステップを含み、対象は、神経インターフェイス素子が対象の上頸神経節(SCG)とシグナル伝達接触して配置されるようにして本発明の第1態様による装置が埋め込まれている、唾液代用物又は唾液刺激薬を提供する。
さらなる態様において、本発明は、対象におけるシェーグレン症候群を処置する方法で使用するための唾液代用物又は唾液刺激薬であって、該方法は、対象に、唾液代用物又は唾液刺激薬を投与するステップを含み、対象は、神経インターフェイス素子が対象の上頸神経節(SCG)とシグナル伝達接触して配置されるようにして本発明の第1態様による装置が埋め込まれている、唾液代用物又は唾液刺激薬を提供する。
以下の実施形態は、他に指示された場合を除いて、対象における口腔乾燥症又はシェーグレン症候群を処置する方法で使用するための、本発明のこれらの態様に、均等に及び独立して関係する。
ある実施形態では、口腔乾燥症の処置は予防的処置である。即ち、本発明の方法は、例えば、前記対象が副作用として口腔乾燥症を有することが知られている薬物療法を処方されている場合に、対象が口腔乾燥症を発症する確度を低下させる。本発明の方法は、平均的集団のリスクと比較してこの疾患を発症する、より高いリスクにあると同定された対象者で、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症を予防するために使用することもできる。
ある実施形態では、口腔乾燥症の処置は治療的処置である。即ち、本発明の方法は、例えば、処置の副作用として又は別の疾患、特にシェーグレン症候群の症状として口の乾燥を示す対象者における口腔乾燥症の重症度を、少なくとも部分的に和らげ又は軽減する。SSと関連する口腔乾燥症を処置するために使用される本発明の方法では、口の乾燥の軽減は、炎症、特に口の炎症における減少を伴うこともある。
ある実施形態では、口腔乾燥症、例えば、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症の処置は、測定可能な生理学的パラメーターにおける改善、例えば、全身性な交感神経の緊張、唾液の体積、唾液の全タンパク質/ペプチド濃度、唾液の抗炎症性タンパク質/ペプチド濃度、唾液腺からの分泌、顎下腺からの分泌、口の炎症のレベル、シグナルが印加される神経における神経活動のプロファイルの1つ以上における改善により示される。例えば、全身性な交感神経の緊張の減少、唾液の体積の増加、唾液のタンパク質/ペプチド濃度の増加(例えば、全タンパク質濃度の増加及び/又は抗炎症性タンパク質もしくはペプチド(例えばSMR1、CABS1、FEG、feG、シアロルフィン、オピオルフィンもしくはそれらの相同体)の増加)、唾液腺からの分泌の増加、及び/又は顎下腺からの分泌の増加により示される。SSにおいて、測定可能なパラメーターにおける改善は、炎症、例えば、口の炎症及び/又は全身性炎症の減少であってもよく、場合により上で挙げた1種以上のパラメーターにおける改善を伴う。
ある実施形態では、シェーグレン症候群の処置は予防的処置である。即ち、本発明の方法は、シェーグレン症候群の患者がシェーグレン症候群の1つ以上の症状、例えば、口腔乾燥症、眼の乾燥、又は口の炎症を発症する確度を低下させる。
ある実施形態では、シェーグレン症候群の処置は治療的である。即ち、本発明の方法は、シェーグレン症候群の1つ以上の症状、例えば、口の乾燥、口の炎症、全身性炎症を、少なくとも部分的に和らげ又は軽減する。
ある実施形態では、シェーグレン症候群の処置は、測定可能な生理学的パラメーターにおける改善、例えば、全身性な交感神経の緊張、唾液の体積、唾液の全タンパク質/ペプチド濃度、唾液の抗炎症性タンパク質/ペプチド濃度、唾液腺からの分泌、顎下腺からの分泌、口の炎症のレベル、シグナルが印加される神経における神経活動のプロファイルの1つ以上における改善により示される。関連する生理学的パラメーターにおけるそのような改善の例は、上記したとおりである。
任意の与えられたパラメーターについて、値を決定する適切な方法は、当業者により認識されていると予想される。
ある実施形態では、状態の処置は、シグナルが印加されたニューロン、1つ又は複数の神経における神経活動のプロファイルにおける改善により示される。即ち、状態の処置は、健常個体の神経活動に近づくニューロン又は神経における神経活動、即ち、健常個体により示されるパターンに、介入前より、より酷似するような神経における活動電位のパターンによって示される。
シグナルを印加した結果としての神経活動の刺激は、シグナルが印加されたニューロン又は1つ又は複数の神経における神経活動の増加である。ある実施形態では、シグナルは、神経に印加されて、少なくとも幾つかのクラスのニューロン(例えば、特定のクラスのニューロン)における神経活動が、神経のその部分におけるベースラインの神経活動を増加させる結果を生じさせることができる。神経活動の刺激は、神経全体にわたって均等であることができて、その場合には、神経活動は、全てのニューロンについて1つ又は複数の神経全体にわたって増加するであろう。
疑義を避けるために、本明細書において使用する神経活動の刺激は、示されたニューロン、神経線維におけるシグナル活動における機能の増加を意味すると解釈される。
ある実施形態では、シグナルは、対象の左側の特定のニューロン、対象の右側の特定のニューロン、又は両方に印加される。即ち、ある実施形態では、シグナルは、片側だけに、あるいは、左右相称に印加される。
ある実施形態では、シグナルは間欠的に印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、第1の時間帯に印加されて、次に第2の時間帯に停止され、次に第3の時間帯に再び印加されて、次に第4の時間帯に停止される。そのような実施形態では、第1、第2、第3の及び第4の時間帯は、順次及び引き続いて継続する。第1、第2、第3の及び第4の時間帯のシリーズが、1印加サイクルになる。あるそのような実施形態では、シグナルが周期で印加されて、複数の印加サイクルが、その周期と周期の間ではシグナルが印加されないように、引き続いて継続することができる。
ある実施形態では、印加サイクルが、隣接して連続することはない。あるそのような実施形態では、印加サイクルは、1〜60分、5〜30分、10〜20分、場合により15分の期間により分離される。
そのような実施形態では、第1、第2、第3の及び第4の時間帯の持続時間は、独立して選択される。即ち、各時間帯の持続時間は、同じであっても任意の他の時間帯と異なってもよい。あるそのような実施形態では、第1、第2、第3の及び第4の時間帯の各々の持続時間は、5秒から24時間、30秒から12時間、1分から12時間、5分から8時間、5分から6時間、10分から6時間、10分から4時間、30分から4時間、1時間から4時間の任意の時間である。ある実施形態では、第1、第2、第3の及び第4の時間帯の各々の持続時間は、5秒、10秒、30秒、60秒、2分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間である。
ある実施形態では、引き続く印加サイクルは、作動期間の間印加される。即ち、作動期間は、引き続く印加サイクルが作動中の期間である。そのような実施形態では、作動期間の直後に、非作動期間が続く。ある実施形態では、作動及び非作動期間は、1〜60分、5〜30分、10〜20分、場合により15分から独立して選択される持続時間を有する。ある実施形態では、作動及び非作動期間は、1〜24時間、1〜12時間、1〜6時間、場合により1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間から独立して選択される持続時間を有する。
シグナルが間欠的に印加されるある実施形態では、シグナルは、1日当たり特定の長さの時間で印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、1日当たり10分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、特定の長さの時間連続的に印加される。ある代替的なそのような実施形態では、シグナルは、1日を通じて不連続的に印加されてもよく、但し、印加の合計時間は、特定の時間になる。
シグナルが間欠的に印加されるある実施形態では、シグナルは、対象が特定の状態にある場合にのみ印加される。あるそのような実施形態では、シグナルは、対象が口腔乾燥症の状態である場合にのみ印加される。そのような実施形態では、対象の状態(例えば、彼らが口腔乾燥症を経験している場合)は、対象が示すことができる。代替的なそのような実施形態では、対象の状態は、対象からの任意の入力から独立して検出することができる。シグナルが神経調整装置により印加されるある実施形態では、装置は、対象の状態を検出するように構成された検出器をさらに含み、シグナルは、検出器が、対象が特定の状態にあることを検出したときにのみ印加される。
i)シグナルを前記対象の上頸神経節(SCG)に印加して、前記SCGにおける神経活動を刺激するステップ、及びii)対象に、唾液代用物又は唾液刺激薬を投与するステップを含む処置の方法で使用するための唾液代用物又は唾液刺激薬に関係する本発明の態様のある実施形態では、方法は、対象の1種以上の生理学的パラメーターを検出するステップをさらに含み、シグナルは、検出された生理学的パラメーターが予め定められた閾値と一致するか又はそれを超えた場合にのみ印加される。1種以上の生理学的パラメーターが検出される、そのような実施形態では、シグナルは、検出されたパラメーターのいずれか1つがその閾値と一致するか又はそれを超えた場合に、あるいは検出されたパラメーターの全てが、その閾値と一致するか又はそれを超えた場合にのみ、印加することができる。シグナルが神経調整装置により印加される、ある実施形態では、装置は、1種以上の生理学的パラメーターを検出するように構成された、少なくとも1個の検出素子をさらに含む。
ある実施形態では、1種以上の検出された生理学的パラメーターは、全身性な交感神経の緊張、唾液の体積、唾液の全タンパク質/ペプチド濃度、唾液の抗炎症性タンパク質/ペプチド濃度、唾液腺からの分泌、顎下腺からの分泌から選択される。
同様に、ある実施形態では、検出された生理学的パラメーターは、対象の神経節後ニューロン、特に上頸神経節の神経節後ニューロンにおける活動電位又は活動電位のパターンであることができて、活動電位又は活動電位のパターンは、口腔乾燥症又はシェーグレン症候群と関連する。
示された生理学的パラメーターの任意の2種以上が、平行して又は引き続いて検出され得ることは認識されると予想される。例えば、ある実施形態では、上頸神経節の神経節後ニューロンにおける活動電位のパターンは、唾液腺、好ましくは顎下腺による分泌として同時に検出され得る。
ある実施形態では、シグナルは永久的に印加される。即ち、一旦始まると、シグナルは、ニューロン、1つ又は複数の神経に、連続的に印加される。シグナルがパルスのシリーズである実施形態では、パルス間のギャップは、シグナルが連続的でなく印加されることを意味しないことは認識されると予想される。
ある実施形態では、シグナルの印加により引き起こされる神経活動における刺激は一時的である。即ち、シグナルが中止されたときに、ニューロン、1つ又は複数の神経における神経活動は、1〜60秒以内、又は1〜60分以内、又は1〜24時間以内、場合により1〜12時間、場合により1〜6時間、場合により1〜4時間、場合により1〜2時間で、実質的にベースラインの神経活動に戻る。あるそのような実施形態では、神経活動は、実質的に完全にベースラインの神経活動に戻る。即ち、シグナルの中止後の神経活動は、シグナルが印加される前-即ち調整前の神経活動と実質的に同じである。
ある代替的実施形態では、シグナルの印加により引き起こされる神経活動の刺激は、実質的に持続性である。即ち、シグナルが中止されたときに、ニューロン、1つ又は複数の神経における神経活動は、シグナルが印加されていたときと実質的に同じままであり、即ち、刺激中及びその後の神経活動は、実質的に同じである。
ある実施形態では、シグナルの印加により引き起こされる神経活動の刺激は、部分的に矯正的、好ましくは実質的に矯正的である。即ち、シグナルが中止されたときに、ニューロン、1つ又は複数の神経における神経活動は、刺激の前よりも、健常対象で観察される活動電位のパターンに、より酷似して、健常対象で観察される活動電位のパターンに、好ましくは実質的に完全に類似する。例えば、シグナルの印加は神経活動を刺激して、シグナルが中止されたときに、ニューロン、1つ又は複数の神経における活動電位のパターンは、健常対象で観察される活動電位のパターンに類似する。そのような矯正の効果は、正のフィードバックループの結果であると仮定される。
あるそのような実施形態では、最初に印加されると、シグナルは、上の実施形態で記載されたように、間欠的に又は永久的に印加され得る。
ある実施形態では、シグナルは、上頸神経節の1つの神経節後ニューロンに印加される。ある実施形態では、シグナルは、CST-SMG軸の神経節後ニューロンを選択的に刺激する。ある実施形態では、シグナルは、上頸神経節の、低閾値の分泌促進性のニューロンである神経節後ニューロンにおける神経活動を選択的に刺激する。
場合により、シグナルは、対象の選択又は要求で調節下に印加される。
ある実施形態では、シグナルは左右相称に印加される。即ち、そのような実施形態では、シグナルは、対象の左及び右側の両方のニューロンに印加されて、その結果、神経活動は、シグナルが印加されたニューロンで刺激される。即ち、刺激は左右相称である。そのような実施形態では、右及び左のSCGに印加されるシグナルは、それ故、刺激の程度は、独立して選択される。ある実施形態では、右側のSCGに印加されるシグナルは、左側のSCGに印加されるシグナルと同じである。ある代替的実施形態では、右側のSCGに印加されるシグナルは左側のSCGに印加されるシグナルと異なる。
調整が左右相称である、ある実施形態では、各シグナルは、シグナルを印加する1つ以上のトランスデューサーを含む神経調整装置により印加される。あるそのような実施形態では、全てのシグナルは、同じ神経調整装置により印加されて、その装置は少なくとも2つのトランスデューサーを有し、1つは左側ニューロンにシグナルを印加し、1つは右側のニューロンにシグナルを印加する。ある代替的実施形態では、各シグナルは、別の神経調整装置により印加される。
ある実施形態では、印加されるシグナルは、非破壊的シグナルである。
ある実施形態では、印加されるシグナルは、電気シグナル、電磁シグナル(場合により光シグナル)、機械的(場合により超音波)シグナル、熱的シグナル、磁性シグナル又は任意の他のタイプのシグナルである。
1種以上のシグナルが印加され得る、あるそのような実施形態では、例えば、調整が左右相称である場合、各シグナルは、電気シグナル、光シグナル、超音波シグナル、及び熱的シグナルから独立して選択することができる。2つのシグナルが1つの調整装置により印加される、そのような実施形態では、2つのシグナルは、電気シグナル、光シグナル、超音波シグナル、及び熱的シグナルから独立して選択される、同じタイプのシグナルであることもあり、又は異なるタイプのシグナルであることもある。2つのシグナルが、各々別の神経調整装置により印加されるこれらの実施形態では、2つのシグナルは、電気シグナル、光シグナル、超音波シグナル、及び熱的シグナルから独立して選択される、同じタイプのシグナルであることもあり、又は異なるタイプのシグナルであることもある。
シグナルが、少なくとも1つのトランスデューサーを含む神経調整装置により印加される、ある実施形態では、トランスデューサーは、シグナルが効果を発揮できるように配列された1つ以上の電極、1つ以上の光子供給源、1つ以上の超音波トランスデューサー、もう1つの熱源、又は1つ以上の他のタイプのトランスデューサーを含むことができる。
ある実施形態では、シグナルは、電気シグナル、例えば、電圧又は電流であり、トランスデューサーは、電極、例えば、ワイヤ電極又はカフ電極である。あるそのような実施形態では、シグナルは、直流(DC)波形、例えば、電荷をバランスさせたDC波形、又は交流(AC)波形、又はDC及びAC波形の両方を含む。
ある実施形態では、DC波形又はAC波形は、矩形波、正弦波、三角波又は複合的な波形であってもよい。DC波形は、あるいは、定常振幅波形であってもよい。ある実施形態では、電気シグナルは、変化する電圧のDCの矩形波形である。
ある実施形態では、電気シグナルは、1Hz〜1kHzの範囲、場合により1〜500Hz、場合により1〜200Hz、1〜100Hz、1〜50Hz、1〜20Hz、1〜10Hz、5〜10Hz、場合により5Hz又は7.5Hz、場合により50〜150Hz、場合により100Hz、又は記載された上限及び下限の間の任意の間隔内の周波数を有するDC又はAC波形である。
シグナルが電気シグナルである、ある実施形態では、電気シグナルは、0.001〜5ms、0.01〜5ms、0.1〜5ms、1〜5ms、1〜2ms、場合により2msのパルス持続時間を有する。ある実施形態では、シグナルは、0.005〜0.1msec、場合により0.01〜0.06ms、場合により0.01〜0.05msec、場合により0.01〜0.04msのパルス持続時間を有する。ある好ましい実施形態では、シグナルは、0.01〜0.03msec、より好ましくは0.01〜0.02msecのパルス持続時間を有する。
シグナルが電気シグナルである、ある実施形態では、シグナルは、0.1msec以下、場合により0.06msec以下、場合により0.05msec以下、場合により0.04msec以下、場合により0.03msec以下、場合により0.02msec以下、場合により0.01ms以下のパルス持続時間を有する。ある好ましい実施形態では、シグナルは、0.01msec又は0.02msec又は0.04msecのパルス持続時間を有する。
ある実施形態では、電気シグナルは、10〜2000μA、場合により20〜1000μA、50〜1000μA、100〜1000μA、500〜1000μA、500〜800μA、場合により800μAの電流を有するDC波形及び/又はAC波形を含む。ある実施形態では、シグナルは、20〜500μA、場合により50〜250μAの電流を有する。ある実施形態では、電気シグナルは、少なくとも10μA、少なくとも20μA、少なくとも50μA、少なくとも60μA、少なくとも70μA、少なくとも80μA、少なくとも90μA、少なくとも100μA、少なくとも110μA、少なくとも150μA、少なくとも180μA、少なくとも200μA、少なくとも220μA、少なくとも250μA、少なくとも300μA、少なくとも400μA、少なくとも500μA、少なくとも600μA、少なくとも700μA、少なくとも800μAの電流を有する。これらの範囲は例示的であり、当業者は、下限及び上限が独立して変化し得ることを認識すると予想される。
全ての態様のある好ましい実施形態では、シグナルは、5Hz〜7.5HzのDC又はAC矩形波形、2msecのパルス持続時間、0.8mAの電流を含む。
意図される刺激を達成するために必要な印加される電気シグナルの電流振幅が、電極の位置取り及び関連する電気生理学的特性(例えばインピーダンス)に依存することは、当業者により認識されると予想される。与えられた対象で、意図される刺激を達成するために適当な電流振幅を決定することは、当業者の能力の内である。例えば、当業者は、神経刺激により誘発された神経活動プロファイルをモニターする適当な方法に通じている。
別の態様において、本発明は、対象における口腔乾燥症、例えば、シェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症の処置に使用するための神経調整電気波形であって、1〜1000Hzの周波数を有する交流又は直流(DC)波形であり、例えば、対象の上頸神経節のニューロンに印加されたときに、ニューロンにおける神経シグナル伝達を刺激し、好ましくは顎下腺を神経支配する神経節後ニューロンにおける神経活動を選択的に刺激する、神経調整電気波形を提供する。ある実施形態では、上記波形は、ニューロンに印加されたときに、口腔乾燥症を和らげるか又は予防する。
別の態様において、本発明は、対象におけるシェーグレン症候群の処置に使用するための神経調整電気波形であって、1〜1000Hzの周波数を有する交流又は直流(DC)波形であり、対象の上頸神経節のニューロンに印加されたときに、ニューロンで神経シグナル伝達を刺激し、好ましくは顎下腺を神経支配する神経節後ニューロンにおける神経活動を選択的に刺激する、神経調整電気波形を提供する。ある実施形態では、波形は、ニューロンに印加されたときに、口腔乾燥症を和らげるか又は予防する。
別の態様において、本発明は、対象における口腔乾燥症、特にシェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症を、対象の上頸神経節のニューロン、好ましくは顎下腺を神経支配する神経節後ニューロンにおける神経活動を刺激することにより処置するための神経調整装置の使用を提供する。
別の態様において、本発明は、シェーグレン症候群、特に対象におけるシェーグレン症候群と関連する口腔乾燥症を、対象の上頸神経節のニューロン、好ましくは顎下腺を神経支配する神経節後ニューロンにおける神経活動を刺激することにより、処置するための神経調整装置の使用を提供する。
本発明の全ての態様の好ましい実施形態において、対象又は患者は、哺乳類、より好ましくはヒト、例えば、口腔乾燥症を経験している患者(例えば、シェーグレン症候群による患者)又はシェーグレン症候群を有する患者等である。
本発明の全ての態様の好ましい実施形態において、1つ又は複数のシグナルは、特定のニューロン又は神経に実質的に排他的に印加されて、他のニューロン又は神経には印加されない。
前述の詳細な説明は、説明及び例示の手段として提供されたもので、添付の請求項の範囲を限定することは意図されない。本明細書においてここで例示された好ましい実施形態における多くの変形は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある。
[実施例1]
(1)上頸神経節(SCG)中に位置する神経節後細胞体を神経支配する神経節前神経線維を含有する頸部交感神経鎖(CSC)、及び(2)SCGの神経節後神経幹、即ち、内部(ICN)及び外部(ECN)頸動脈の神経の、ラット及びマウスの顎下腺(SMG)内における動脈の血流及び静脈の抵抗を調節する上での役割を確立するために、実験を実施した。この実験は、左及び右のSMGにおける血流の変化を、レーザードップラーにより、及び(1)同じ側のCSC、ICN及びECNの直接の電気刺激、(2)同じ側のCSC、ICN及びECNの離断、及び(3)痛みを与える刺激のチャレンジによるSMGへのCSC-SCGの入力の生理学的活性化、及び無呼吸の症状の発現により惹起される動脈の血液化学における変化を模倣する低酸素-炭酸過剰ガス(10%O2、5%CO2、85%N2)チャレンジにより誘発される電磁流量精査により、CSC、ICN又はECNを左右相称に離断する前及び後でモニターすることを含む。
ウレタンで麻酔したマウスにおける予備的研究の実験の詳細
研究は、ウレタンで麻酔したC57BL6マウスで実施した。レーザードップラーは、左顎下腺(SMG)と直接接触させて置いた。後足を圧迫して、交感神経神経及び特に頸部交感神経鎖-上頸神経節(CSC-SCG、CST-SCGとしても知られる)のSMGへの入力を活性化した。SMGの血流における心肺の導入性媒介効果を活性化するために、上気道閉塞を実施した。最終的に、CSCは、該神経鎖に直接双極性電極の設置することにより電気的に刺激された。図3は、レーザードップラーシグナル(図3A)及びマウスで観察されたシグナルのパターンの略図に示す。ウレタンで麻酔したマウスの心拍数は、約600拍/分である。レーザードップラーのパルスは、3.8±0.6パルス/秒=228±36パルス/分であり、それはこれらのマウスについての平均拍/分と一致する(図3B)。
図4Aで示したように、後足の圧迫(6秒)はSMG内における顕著な血流の増加を惹起した(同じ応答が各パネルで、ただ異なる時間尺度で示されることに留意されたい)。
後足圧迫のより短い症状の発現と異なって、12秒中止の症状発現は、血流の即時の回復と関連しなかった(図4B)。
気道閉塞もSMGで血流を増加させる。このことは、図5で5〜20秒の期間で見ることができる。
電気刺激
右CSCの電気刺激(0.8mA、5Hz)は、右SMGで血流を増加させる(図6A)。血流の増加は、刺激の結果としての活性な神経支配の血管拡張を示唆する。同じ側の(右)ICN及びECNの離断は、右CSCの電気刺激(0.8mA、5Hz)により惹起される応答を著しく減少させる(図6B)。
まとめ
これらのデータは、マウスSMGの微小血管中における血流は、呼吸器の調整下にあり、痛みを与える刺激のチャレンジ及び気道の閉塞に応答することを示す。チャレンジの開始及び終了と関連して血流の変化が突然開始及び終了するので、血流の変化は、おそらくCSC-SCG入力における変化の基づくと思われる。
それに加えて、マウスSMGにおける血流は、CSCの電気刺激に応答する。これらの応答は、同じ側のICN及びECNの組み合わされた離断により大きく消去される(-86±7.9%、n=8)。
[実施例2]
ラットのSMGにおける抗炎症プロホルモンSMR1のレベル(図7A)を、ウェスタンブロットにより測定した。結果のデータ(図7B)は、以前に報告されたデータ(Morris et al、前出)と対応する。
電気刺激
3匹の雄ラットのCSCを、0.8mA、7.5Hz、2msのシグナルで30秒間刺激した。ラットに、β-アドレナリン受容体のアゴニストであるイソプロテレノールも投与した(25mg/kg i.p)。唾液を、刺激前のベースライン、刺激中、イソプロテレノール投与後、及びイソプロテレノール投与及びそれに続く電気刺激の両方の後に捕集した。捕集された唾液におけるSMR1のレベルを、ウェスタンブロットにより測定した(1レーン当たりに等しい全タンパク質の負荷)。ラット#1及びラット#2について、結果を図8Aに示す(ラット#1では刺激前の唾液について測定を集めなかった)。ラット#3及びラット#2について、結果を図8Bに示し、相対SMR1量を下に示す。
見てわかるように、電気刺激は、唾液中のSMR1レベルを、刺激前のベースラインレベルと比較して増加させた(図8)。それに加えて、電気刺激は、交感神経アゴニスト処置をすでに受けたラットにおけるSMR1のレベルをさらに増加させることができた(図8中におけるiso対iso/stim)。これらのデータは、電気刺激が唾液中におけるSMR1産生の増加に効果的であることを示す。
唾液の体積も3匹のラットから捕集した。図9は、電気刺激が、捕集された唾液の体積及び捕集された唾液中のタンパク質の合計含有率を増加させることもできることを示す。番号1、5及び9は刺激前、2、6及び10は刺激後、3、7及び11はイソプロテレノール処置後、及び4、8及び12は刺激後及びイソプロテレノールの、ラット#1、#2、及び#3それぞれの試料である。
追加の実験を、2匹のSprague-Dawley雄ラット(12週齢)を使用して実施し、唾液産生における電気刺激の効果を確認した。SCGに隣接する頸部交感神経鎖(CSC)を、0.8mA、7.5Hz、2ms、30秒オン、30秒オフを使用して15分間電気的に刺激した。各ラットは、合計4回の刺激を、2回は左側で、2回は右側で受けた。唾液を、刺激前に30分間(#1、#9)、刺激中に20分間(偶数番号)、及び刺激の合間に15〜20分間(奇数番号)阻害剤を含有するチューブに捕集した。タンパク質濃度をBicinchoninic Acid (BCA)タンパク質アッセイにより決定した。ウェスタンブロットはSMR1について調べた(216)。
各点で捕集した全唾液の体積及び捕集された唾液中の全タンパク質濃度を図10に示す(それぞれ、上の2つのパネル及び下の2つのパネル)。各ラットにおける最初の刺激は、刺激中に唾液の体積の増加を生じさせた。両方のラットで、中間の刺激は、唾液の体積が変化し得る効果を有した。理論により束縛されることは望まず、これは、分泌腺が、刺激間に完全に補充する機会を有しないことに基づくと思われる。それにも拘わらず、刺激サイクルの終了時に、両方のラットが、任意の刺激前の各ラットと比較して、より多い唾液体積の捕集を示した(図10中のカラム1対カラム8、上の2つのパネル)。
捕集された唾液中の全タンパク質濃度も決定した(図10、下のパネル)。両方のラットで、刺激中に捕集された唾液中のタンパク質のレベル(mg/ml)が劇的に増加していた。
各刺激に従って唾液中におけるSMR1のレベルも増加した。図11は、ラット1及びラット2の両方について各刺激中に採取された唾液のウェスタンブロットを示す(1レーン当たり等しい全タンパク質を負荷した)。各刺激の結果、SMR1のレベルは順に増加した。ウェスタンブロットでは等しい全タンパク質が負荷されたので、このことは、全タンパク質含有率における増加に加えて図10で示されている。したがって、CSCの電気刺激は、唾液の産生を増加させることに加えて、全タンパク質含有率及び抗炎症性ペプチドSMR1のレベルを増加させる。