JP2019214814A - 紡績糸および織編物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、堅牢度と審美性に優れ、デニム本来の自然な着古し感を表現可能な機能性デニム調織編物を提供する。【解決手段】 2種類以上の短繊維からなる芯鞘構造で、芯部は、熱水収縮率が10%以上のポリエステル系短繊維aと熱水収縮率が10%未満の短繊維bを、鞘部は前記短繊維bをそれぞれ含み、ポリエステル系短繊維aと短繊維bの質量比は10:90〜90:10であり、かつ芯鞘の芯部と鞘部の質量比が10:90〜70:30である紡績糸および前記紡績糸を用いて製編織されており、かつ該紡績糸の芯部の一部に鞘部と異なる色で染色された短繊維が含まれている織編物。【選択図】なし
Description
本発明は紡績糸および織編物に関する。
一般的にジーンズと呼ばれるデニム織編物の糸は、綿に代表される天然繊維の紡績糸をインディゴ染料でロープ染色することで得られるが、染色された紡績糸は、外層は濃く染着するが、芯部は薄く染着するのが通常である。
縫製品の2次加工や着用および家庭洗濯をすることで、濃く染着した外層に含まれる原綿が脱落し、芯部が薄く染着された、あるいは染着していない芯部の原綿が表に露出してデニム独特の自然なムラ感が表現される。
一方で上記のように外層に含まれる原綿に染着した染料が脱落しやすいことから、摩擦堅牢度に課題があり、濃色デニムは乳幼児やキッズ向けに展開が制限される問題があった。カラーデニムも同様で、カラーデニムに用いられる紡績糸は、硫化染料を用いたロープ染色により染色されるのが通常である。この染色により得られる紡績糸も外層は濃く染着するが、芯部は薄く染着する。したがって、カラーデニムにより多彩なカラー展開が可能であるが、同様に摩擦堅牢度に問題があった。
そのため、例えば合繊デニムとして特許文献1には、ナイロン中空短繊維からなる紡績糸で製織された織物が開示されている。また、特許文献2には、芯部に中空繊維、鞘部にセルロース繊維を配置した二層構造紡績糸を経糸に用いた織物が開示されている。特許文献3には、合成繊維からなる芯糸と天然繊維からなる鞘糸からなる異色染め芯鞘糸の織物が開示されている。さらに特許文献4にはアクリル繊維とポリエステル繊維を含有する特定の沸水収縮率を有する複合糸を含む,特定の織編物が開示され、沸水収縮率の高いアクリル繊維を混綿することで、複合糸を湿熱処理した際に、複合糸中の高収縮性のアクリル繊維が熱収縮して集合し、複合糸がアクリル繊維主体の芯部、ポリエステル繊維主体の鞘部となる芯鞘構造になりやすいことが開示されている。
しかしながら特許文献1に開示された織物に用いられた紡績糸に用いられた原綿は、単一素材で構成され、従来デニムの自然なムラ感を表現するものではない。また特許文献2または特許文献3に開示された芯鞘構造に混紡した紡績糸は、芯鞘構造とはいえ、完全な芯鞘構造体を得ることが難しく、部分的に芯部(芯成分)の繊維が外層に現れることから、芯部を構成する繊維と外層を構成する繊維の間で染色性の違いにより色差を有する場合には、露出した芯部の繊維の色が露出して表面欠点となることがあった。特許文献4記載の複合糸においても芯部の高収縮率のアクリル繊維を熱収縮させて混綿するのみではやはり局所的に芯部の繊維が表面に露出して、当該芯部の繊維の色が外層の原綿の色と異なる場合には、表面欠点が出現してしまうものであった。
本発明は、上記課題を解決し、芯鞘構造とする紡績糸であって、芯糸が均一に分散した状態でほどよく表面露出することで審美性を損ねないデニム調の織編物を得ることを課題とする。
上記課題を解決する本発明は、下記の構成からなる。
(1)2種類以上の短繊維からなる芯鞘構造で、芯部は、熱水収縮率が10%以上のポリエステル系短繊維aと熱水収縮率が10%未満の短繊維bを、鞘部は前記短繊維bをそれぞれ含み、ポリエステル系短繊維aと短繊維bの質量比は10:90〜90:10であり、かつ芯鞘の芯部と鞘部の質量比が10:90〜70:30である紡績糸。
(2)前記ポリエステル系短繊維aと短繊維bとは染色性が異なるものである(1)に記載の紡績糸。
(3)鞘部を構成する短繊維bとして、芯部に含まれる短繊維bと同じ素材で構成される繊維を含む(1)または(2)に記載の紡績糸。
(4)芯部を構成する短繊維のうち最も高い熱水収縮率を示す1種の短繊維の熱水収縮率をA(%)とし、鞘部を構成する短繊維のうち最も小さい熱水収縮率を示す短繊維の熱水収縮率をB(%)としたとき、A,Bが以下の関係にある(1)〜(3)のいずれかに記載の紡績糸。
A≧B+5
A≧B+5
(5)前記ポリエステル系短繊維aがサイドバイサイド型の潜在捲縮性を有するポリエステル系短繊維を含む(1)〜(4)のいずれかに記載の紡績糸。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の紡績糸を用いて製編織されており、かつ該紡績糸の芯部の一部に鞘部と異なる色で染色された短繊維が含まれている織編物。
(7)経緯方向の少なくとも一方の伸長回復率が15%以上である(5)に記載の織編物。
(8)摩擦堅牢度が乾条件および湿条件ともに3級以上である(6)または(7)に記載の織編物。
(9)天然繊維の混率が50質量%以下である(6)〜(8)のいずれかに記載の織編物。
(10)滴下法による吸水時間が10秒以下で、かつカケン法による拡散性残留水分率が30%以下である(6)〜(9)のいずれかに記載の織編物。
(11)W&W性が3.0級以上であるシャツ、ジャケット、スカート、パンツから選択される衣料を製造するためのデニム調織編物またはカラーデニム調織編物として用いる(6)〜(10)のいずれかに記載の織編物。
(12)(6)〜(11)のいずれかに記載の織編物をその一部に含む、シャツ、ジャケット、スカート、パンツから選択される衣料。
(13)W&W性が3.0級以上である(12)記載の衣料。
本発明の紡績糸によりデニム調布帛が得られる。また2種以上の原綿を用い、芯鞘構造の紡績糸とすることにより従来ロープ染色でしか得られなかった効果をパッケージ染色やピースダイで得られるようになった。審美性と機能性と染色性に優れ、皺になりにくく寸法安定性や摩擦堅牢度など一般物性堅牢度が良好な素材を得ることができる。
本発明の紡績糸は、2種類以上の短繊維からなる芯鞘構造で、芯部は、熱水収縮率が10%以上のポリエステル系短繊維aと熱水収縮率が10%未満の短繊維bを、鞘部は前記短繊維bをそれぞれ含むものである。
上記熱水収縮性が10%以上であるポリエステル系短繊維としては、高収縮のポリエステル系ポリマーからなる短繊維またはサイドバイサイド型の潜在捲縮性を有するポリエステル系短繊維が好適である。
高収縮のポリエステルポリマーとしては、繊維としたときに沸水収縮率が本発明で規定する範囲にあれば特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレートを主骨格とし、イソフタル酸及び2,2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン等の共重合成分を共重合することで、熱水収縮率を高めたポリエステル等が好ましく挙げられる。また、カチオン可染型のポリエステルであっても良く、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル成分及びアジピン酸成分などを共重合することでカチオン染料に可染のポリエステルが得られ、またさらに共重合成分としてイソフタル酸及び2,2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン等を共重合することで熱水収縮率を高めたカチオン可染ポリエステル等が好ましく挙げられる。
このような高収縮率のポリエステル系短繊維を芯部に用いると、その紡績糸を熱水処理することによって収縮が発現し、紡績糸の芯部のより芯部に取り込まれる形態をとることから表面露出がほどよく抑えられ、自然な色あせが発現することで、審美性の向上を成し得るものである。
また、サイドバイサイド型の潜在捲縮性を有するポリエステル系短繊維としては、収縮率差または粘度差を有する2種のポリエステル系ポリマーを複合紡糸でサイドバイサイド型に貼り合わせして得られる複合糸の短繊維を使用しても構わない。
このようなサイドバイサイド型のポリエステル系短繊維を芯部に用いると、その紡績糸を熱水処理することによって捲縮を発現し、紡績糸の芯部のより芯部に取り込まれる形態をとることからほどよく表面露出が抑えられ、自然な色あせが発現することで、審美性の向上を成し得るものである。
ここでいうサイドバイサイド型のポリエステル系短繊維としては、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリマーあるいは共重合ポリエステルから選択される2種のポリマーを貼り合わせした断面形態を有するものである。
また、サイドバイサイド型で貼り合わせた一方の側が、他方の側の成分の薄皮をまとった形態を呈する態様、いわゆる偏心芯鞘型断面であっても潜在捲縮性を発現するので、このような偏心芯鞘型の断面を有するポリエステル系短繊維を使用してもよい。
上記繊維の熱水収縮率は、共重合ポリエステルの共重合種、あるいは、共重合割合を変更することで調整が可能である。また、サイドバイサイド型の潜在捲縮性を有するサイドバイサイド型の短繊維においては、用いるポリマーの種類、粘度差を適宜設定することで調整が可能である。
ポリエステル系短繊維aの熱水収縮率としては、上記のとおり10%以上であるが、染色後に芯成分を構成するポリエステル系短繊維aが芯部のより芯部に取り込まれるようにする点から15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。上限としては特に制限はないが、工業的な観点で実用可能な点から40%程度である。
芯部および鞘部に用いる短繊維bの熱水収縮率は、10%未満であるが、ポリエステル系短繊維aとの熱水収縮差が大きいほど短繊維aがより紡績糸内部に取り込まれることから、8%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。好ましい下限としては糸剛性およびタフネスの点から2%である。
短繊維bとしては、天然繊維または合成繊維、あるいは半合成繊維の中から任意に選択が可能である。
上記のような熱水収縮率が10%以上のポリエステル系短繊維aと熱水収縮率が10%未満の短繊維bとは、通常染色性が異なる。特にポリエステル系短繊維aの熱水収縮率を高くすべく、共重合成分を共重合したり、サイドバイサイド型の短繊維とすることで、繊維を構成するポリマーと共重合組成や繊維構造、使用するポリマー種を短繊維bとは異にすることが通常であり、それにより染色性も異なってくるためである。
本発明において染色性が異なるとは、異種の繊維を、少なくとも一種の繊維が染色可能な染色条件で染色したときに、繊維種間で色差が発現することをいう。
本発明においては、芯部、鞘部の両方に使用する短繊維bを染色可能な条件で芯鞘構造の紡績糸を染色したとき、当該染色可能な短繊維bとポリエステル系短繊維a間で色差が発現することが好ましい。なかでもポリエステル系短繊維aよりも短繊維bの方が濃染可能とすることが好ましい。それにより、織編物としたときにより自然なデニム調を発現することができる。ここでいう色差とは自然光の下で製品から抜き取った紡績糸を単糸に分解した状態で観察したときに、目視で色差が認められる状態にあることをいう。
芯部を構成する短繊維のうち熱水収縮率が最も高い短繊維の熱水収縮率をA(%)とし、鞘部を構成する短繊維のうち、最も低い熱収縮率を有する短繊維の熱水収縮率をB(%)としたとき、AおよびBの関係がA≧B+5であることが好ましい。こうすることで、糸または生地状態で熱水処理をした場合、芯成分を構成する高収縮ポリエステル系原綿が収縮して紡績糸内部に取り込まれ、表面露出を抑制できる。より表面ムラの少ない形態とするためには、A≧B+10であることがさらに好ましい。
本発明において、芯部を構成するポリエステル系短繊維aと短繊維bの比率(ポリエステル系短繊維a:短繊維b)は、質量基準で10:90〜90:10の範囲であり、よりいっそう審美性を高めるためには30:70〜70:30であることが好ましい。
また、芯鞘の芯部と鞘部の比率(芯部:鞘部)は質量基準で10:90〜70:30とすることで芯鞘構造を容易に維持することができる。さらにデニム調の外観と審美性をより顕著に付与するためには20:80〜60:40であることが好ましい。
本発明においては、上記のような短繊維を上記比率で使用することで、織編物とした後に生地染めを行う場合に芯成分の一部であるポリエステル系短繊維aと鞘成分とを互いに異なる色に染め分け、自然なデニム調を表現することが可能となる。
本発明において芯部は、熱水収縮率が10%以上のポリエステル系短繊維aと熱水収縮率が10%未満の短繊維bを、鞘部は前記短繊維bをそれぞれ含むが、芯部は熱水収縮率が異なることで染色性の異なる2種以上の短繊維を含むことになる。これにより紡績糸の表面に芯部の短繊維が露出したとしても露出した芯部は、ポリエステル系短繊維aと短繊維bの混紡であるから、同一原綿の集合体で構成される芯部が表面に露出する場合に比較してポリエステル系短繊維aの露出が小さくなることから、審美性の低下を抑制することが可能となる。なお、上記趣旨に鑑み、芯部に用いる短繊維bと鞘部に用いる短繊維bとしては、染色性が実質的に同じであればよく、繊度、繊維長、または断面形態等が互いに異なっていても構わない。なお、繊維を構成する素材が実質的に同じであれば、染色性も簡便に実質的に同じにできることから、芯部に用いる短繊維bと鞘部に用いる短繊維bとは実質的に同じ素材で構成されていることが好ましく、同じ素材で構成することがより好ましい。ここで染色性が実質的に同じとは、紡績糸断面を電子顕微鏡で観察し、鞘部を形成する短繊維が芯部を形成する短繊維bの断面形態または繊維直径として異なっていても、同一色に染色されている場合は共に短繊維bであるとみなすことができるものとする。
本発明において芯鞘構造を有する紡績糸を得るためには、少なくともポリエステル系短繊維aと短繊維bとを混綿してなる芯部用スライバ−と、少なくとも短繊維bを用いた鞘部用スライバーを用い、練条工程で両スライバーを用いて芯鞘構造にする方法、およびサイロ紡績、MVS、空気精紡などから任意に手法選択が可能で、上記を組合せた手法であっても構わない。また、スラブ加工を施していても構わない。
芯部用スライバーを調整する場合には、ポリエステル系短繊維aと短繊維bが前記比率となるよう混綿すればよく、芯部と鞘部の比率を調整するには、両スライバ-を用いて紡績する際に上記比率となるよう調整すればよい。
かくして得られる紡績糸は、芯部の少なくとも一部の短繊維が鞘部と異なる色となるよう染色できるので、デニム調の自然な風合いを有し、審美性に優れた織編物を与える。言い換えると上記紡績糸を用いて製編織された織編物中の紡績糸は、該紡績糸の芯部の一部に鞘部と異なる色で染色された繊維が含まれることになるので当該織編物は、デニム調の自然な風合いを有し、審美性に優れた織編物となる。特に芯部を鞘部と同じ色と異なる色の混色で構成することができるので、鞘部を構成する短繊維bが脱落しても、露出する芯部には短繊維bも混じるので、摩耗も目立たず、ポリエステル系短繊維aが相応に露出するので、織編物に優れたデニム調の風合いを付与することができる。
すなわち、本発明の織編物は上記紡績糸を含む織編物である。
なかでもイージーケア性と着用快適性を付与するため、紡績糸として少なくとも合成繊維を10質量%以上含むことが好ましく、さらに好ましくは20質量%以上であることが好ましい。
また織編物として良好な寸法安定性を付与するには天然繊維の混率を50質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは40質量%以下である。
合成繊維の混率を増加させると織編物は染色加工段階の熱処理でセット性が付与され、その後の家庭洗濯や乾燥時に生地が収縮する問題を抑制することが可能となることから、洗濯後の防シワ性も付与される。
防シワ性はW&W(ウォッシュアンドウェア)性の指標で表すことができ、上記の設計とすることで上記織編物により得られる衣料(例えばシャツ、ジャケット、スカートまたはパンツ)において、W&W性を3.0級以上とすることが可能となる。
天然繊維の混率を50質量%以下とする場合には、素材に吸汗速乾性を付与することが可能となり、吸汗性は滴下法による吸水時間の指標で表される吸水性として10秒以下を達成できる。またカケン法による拡散性残留水分率の指標で表わされる速乾性は30%以下を達成しうるものである。
製織工程は、通常のスパン織物と同様の工程で行うことができる。例えば使用できる織機としては、エアジェット織機、レピア織機などの革新織機や通常織機などに十分対応、使用することが可能である。
本発明の織編物は、上記紡績糸を経糸および/または緯糸に用いることができる。前記紡績糸を経糸又は緯糸の一方で用いる場合、他方の糸として用いる糸に特に制限はないが本発明の紡績糸の鞘部を成す鞘成分と異なる染色性を持つ糸を選択することでより自然なデニム調の表情を出すことが可能であるためより好ましい形態となる。
また緯糸にストレッチ性を有する合成繊維またはウレタン弾性糸を用いることで着用性に優れた織物を得ることができる。
ここでいうストレッチ性を有する合繊繊維としては、例えばポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートから選択される2種をサイドバイサイド型に複合した長繊維、またはナイロン6とナイロン610をサイドバイサイド型に複合した長繊維が挙げられるがこれらの組合せに限ったものではなく、仮撚り加工を施した高捲縮を有する合成繊維であっても良い。また、ウレタン弾性糸は紡績糸との複合や合成繊維フィラメントとの複合糸であっても良い。
本発明の編物素材は組織に限定されるものではなく、シングル丸編み、ダブル丸編み、トリコット、ダブルラッセルから任意に選択される組織で良い。
本発明の芯鞘紡績糸と他の糸を併用して編物とすることも可能である。前記他の糸を交編した組織として、少なくとも片面は基本的に本芯鞘紡績糸のみが表れる組織とすることが好ましい。他の糸が露出した場合、デニムの見え方とは異なるため、シングル丸編みの場合はプレーティングや、ウェルト、タックを用いた組織、ダブル丸編みはタックやリバーシブル組織が好ましく挙げられる。トリコットやダブルラッセルについても同様で、片面に本芯鞘紡績糸のみが表れる組織であれば限定はなく2重経編組織が好適に用いられる。
上記に用いる他方の糸としては特に制限はないが、紡績糸の鞘成分と異なる染色性を持つ糸を使用することでよりいっそう自然なデニム調の表情を出すことが可能であるためより好ましい形態である。
また他方の糸にストレッチ性を有する合成繊維またはウレタン弾性糸を用いることで着用性に優れた高ストレッチ性編物を得ることができる。ここでいうストレッチ性を有する合繊繊維は、例えばポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートから選択される2種をサイドバイサイド型に複合した長繊維、またはナイロン6とナイロン610をサイドバイサイド型に複合した長繊維が挙げられるがこれらの組合せに限ったものではない。ウレタン弾性糸は紡績糸との複合や合成繊維フィラメントとの複合糸であっても良いし単独でベア挿入しても構わない。
本発明の織編物は一般的な加工工程を通すことが可能である。紡績糸の鞘成分に合成繊維を使用する場合は毛焼工程を追加することが好ましい。合成繊維は天然繊維と比較して強度が高く紡績糸の毛羽が多いと製品としてピリングの問題が発生しやすくなる。ピリングの課題を解決するためには毛焼工程を追加することで紡績糸の毛羽を除去することが可能であり、鞘成分にポリエステル原綿を使用する場合は毛焼後にアルカリ減量を行うことで風合いの硬化を防ぐことも可能である。
染色は加工コストを考慮すると織編物の生機を得た後に染色加工を実施することが好ましい。生機を得た後に染色加工する場合、染色設備は缶内で実施する液流染色、気流染色、ビーム染色、ジッガー染色が主に挙げられ、連続で実施する連続染色の設備を任意に選択することが可能である。芯鞘紡績糸の鞘成分を染色することでデニム調の色合いを再現することが可能である。芯成分は染色しなくても構わないが、デニム調の自然な色ムラ感を得るために淡色で染色を行うことも可能である。染色仕上げ加工は任意に選択が可能である。具体的には吸水加工または撥水加工、柔軟剤加工など種々の機能加工を行ってもよいが、本発明の構成として吸水加工を行うのがより好ましい。
本発明の織編物は縫製品にした後、さらに2次加工を施しても構わない。デニム素材は一般的に製品洗いやブリーチ加工、レーザー加工またはサンディング加工などによって色目や風合い調整を行うことが多く、同様の2次加工を実施することが可能である。特にサンディング加工は物理的に芯成分を露出させることが可能となり部分的に自然なムラ感(着用ユーズド感)を得ることができるためより好ましい形態である。製品洗い時に任意の各種浴中加工を実施することが可能である。例えば吸水速乾加工など任意の後加工薬剤を選択可能である。
本発明の織編物は経緯方向の少なくとも一方に、ストレッチ性の指標である伸長回復率として15%以上を有することが着用快適性の点から好ましく、20%以上であることがより好ましい。上限としては、着用時の地厚感と製造コストの点から50%程度である。織編物に上記のようなストレッチ性を付与するためには、織物の場合は緯糸に潜在捲縮性を有する糸および/またはウレタン弾性糸が挿入された糸を使用することが好ましい。また、編物の場合、経方向、緯方向はそれぞれ編地のウェル方向とコース方向を意味するが、ストレッチ性を有する方向はウェル方向とコース方向のどちらでもよく、潜在捲縮性を有する糸および/またはウレタン弾性糸が挿入された糸を交編することで上記のようなストレッチ性を付与することができる。
本発明の織編物の摩擦堅牢度は、乾条件および湿条件ともに3級以上であることが好ましく、乾条件の摩擦堅牢度(乾摩擦堅牢度)は3−4級以上とすることがより好ましい。摩擦堅牢度は上記の範囲に調整するには、染色する繊維の素材と所望の仕上がりに応じて、摩擦堅牢度が比較的良い、分散染料、カチオン染料、酸性染料、反応染料、直接染料から任意に染料を選択し、また適正なフィックス剤を通常の範囲で加工することで達成されるものである。
さらに本発明の織編物は、着用時の汗処理の点から滴下法による吸水時間が10秒以下であることが好ましく、5秒以下であることがより好ましい。下限としては特になく、限りなく0秒に近くてもよい。
このような織編み物を得るには、染色後に一般的な吸水加工をすればよい。
本発明の織編物は、カケン法による拡散性残留水分率が30%以下であることが、着用時の汗処理および洗濯後の速乾の点から好ましく、20%以下であることがより好ましい。下限としては特になく、限りなく0%に近くてもよい。
このような織編み物を得るには紡績糸として少なくとも合成繊維を10質量%以上含むことが好ましく、さらに好ましくは20質量%以上であることが好ましい。上限は特になく、100質量%であってもよい。
また織編物として天然繊維の混率を50質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは40質量%以下とすればよい。
本発明の織編物はイージーケア性に優れる。合成繊維を一部に使用することで織編物の形態安定性が保たれ家庭洗濯後のシワ発生が抑えられ消費者の取り扱いがより容易になる。ウォッシュアンドウェア性の指標であるW&Wは3.0級以上あれば家庭洗濯後にシワで問題になることが少ない。より好ましくは3.3級以上である。
さらに本発明においては、天然繊維の混率が50質量%以下であることが好ましい。さらにW&W性を向上させるためには天然繊維の混率を30質量%以下にすることが更に好ましい。
かくして得られる本発明の織編物は、デニム調の外観を有するものであるため、シャツまたはジャケットまたはスカートまたはパンツ等のデニムまたはカラーデニムとして好ましい。
上記でいうデニム調という場合は、いわゆるインディゴによって染色された綿糸からなる経糸と、染色加工をしていない綿糸からなる緯糸を綾織りした織布(デニム)様の外観を呈するものを指し、デニム調とは、インディゴで染色された綿糸と類似の色を呈する糸と、染色加工をしていない(または非常に低濃度で染色した)糸を組合せた、デニム様の外観を呈する織編物をいう。カラーデニムは、前記デニムで用いた染料とは異なる染料(主に硫化染料)で染色加工された糸と染色されない糸を組合せた織物であるが、カラーデニム調とは硫化染料を使用せずデニムと異なる色を呈する織編物をいう。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限され
るものではない。
るものではない。
以下の試験により、得られた織物の物性を評価した。
(1)伸長回復率(ストレッチ性)
織物および製品の伸長率はJIS L 1096(2010年)「一般織物試験方法」の織物の定荷重法(B−1法)に準じて測定する。生地の緯方向の伸長回復率を測定するため、生地の経方向50mm×緯方向300mmまたは経方向50mm×緯方向600mmの試験片をそれぞれ3枚採取し、試験片の一端を上部クランプで固定し、他端に試験片の幅で1mの長さにかかる重力に相当する荷重(N)(整数位までの値)の初荷重を加える。200mmまたは500mm間隔に印を付け、静かに14.7Nの荷重を加え、1時間保持後の印間の長さを測る。次に荷重を取り除き、30秒後または1時間後に初荷重を加えて再び印間の長さを測り、次の式により伸長回復率SB(%)を求め3枚の平均で表した。
伸長回復率SB(%)=[(SB1−SB2)/(SB1−SB)]×100
SB2:荷重を取り除いた後1時間後に初荷重を加えたときの印間の長さ(mm)
SB1:14.7Nの荷重を1時間加えた後の印間の長さ(mm)
SB :初荷重を加えたときの印間の長さ(200mmまたは500mm)
織物および製品の伸長率はJIS L 1096(2010年)「一般織物試験方法」の織物の定荷重法(B−1法)に準じて測定する。生地の緯方向の伸長回復率を測定するため、生地の経方向50mm×緯方向300mmまたは経方向50mm×緯方向600mmの試験片をそれぞれ3枚採取し、試験片の一端を上部クランプで固定し、他端に試験片の幅で1mの長さにかかる重力に相当する荷重(N)(整数位までの値)の初荷重を加える。200mmまたは500mm間隔に印を付け、静かに14.7Nの荷重を加え、1時間保持後の印間の長さを測る。次に荷重を取り除き、30秒後または1時間後に初荷重を加えて再び印間の長さを測り、次の式により伸長回復率SB(%)を求め3枚の平均で表した。
伸長回復率SB(%)=[(SB1−SB2)/(SB1−SB)]×100
SB2:荷重を取り除いた後1時間後に初荷重を加えたときの印間の長さ(mm)
SB1:14.7Nの荷重を1時間加えた後の印間の長さ(mm)
SB :初荷重を加えたときの印間の長さ(200mmまたは500mm)
(2)摩擦堅牢度(乾条件、湿条件)
JIS L 0849(2013年) II型(学振型)乾摩擦および湿潤摩擦の級判定により乾条件、湿潤条件(湿条件)における摩擦堅牢度を測定した。
JIS L 0849(2013年) II型(学振型)乾摩擦および湿潤摩擦の級判定により乾条件、湿潤条件(湿条件)における摩擦堅牢度を測定した。
(3)吸水性(滴下法)
JIS L 1907(2010年)に準じて測定する。試験片の表面から高さ10mmの位置から水を1滴滴下させ、水滴が試験片の表面に達した時から完全に吸収するまでの時間を測定する。
JIS L 1907(2010年)に準じて測定する。試験片の表面から高さ10mmの位置から水を1滴滴下させ、水滴が試験片の表面に達した時から完全に吸収するまでの時間を測定する。
(4)拡散性残留水分率(カケン法)
20℃×65%RH下の雰囲気中で12時間以上静置した後、20cm×20cmの試験片の質量(W0)を測定する。試験片に0.3gの純水を滴下し、20℃×65%RH下の雰囲気中で60分間静置後、試験片の質量(W1)を測定する。残留水分率を下記式より算出し、同様の操作を3回実施した各測定値の平均値を整数に丸め、その値を拡散性残留水分率(%)とする。
残留水分率(%)=(W1−W0)÷0.3×100
20℃×65%RH下の雰囲気中で12時間以上静置した後、20cm×20cmの試験片の質量(W0)を測定する。試験片に0.3gの純水を滴下し、20℃×65%RH下の雰囲気中で60分間静置後、試験片の質量(W1)を測定する。残留水分率を下記式より算出し、同様の操作を3回実施した各測定値の平均値を整数に丸め、その値を拡散性残留水分率(%)とする。
残留水分率(%)=(W1−W0)÷0.3×100
(5)W&W性
JIS L 1096:A法でタンブル乾燥後のシワの状態を官能評価する。 具体的には、JIS L 0217(1995年) 103法による洗濯を10回繰り返した後、一回のタンブル乾燥を行い、サンプルを20℃、65%RHの室内に一晩放置した後、AATCC124−1984の5段階レプリカ法(5級(良好)〜1級(不良))に基づき判定した。
JIS L 1096:A法でタンブル乾燥後のシワの状態を官能評価する。 具体的には、JIS L 0217(1995年) 103法による洗濯を10回繰り返した後、一回のタンブル乾燥を行い、サンプルを20℃、65%RHの室内に一晩放置した後、AATCC124−1984の5段階レプリカ法(5級(良好)〜1級(不良))に基づき判定した。
(6)熱水収縮率
紡績糸1mを測長し張力がかからない状態で98℃の沸騰水中に30分間浸漬する。その後,張力がかからない状態で自然乾燥させた後,分繊針を用いて絡み部を解き,紡績糸を短繊維aと短繊維bに分解し、次に各々について2.2mg/dtexの荷重下でその長さを測定する。また、沸騰水処理前の糸についても同様に、張力がかからない状態で自然乾燥させた後,分繊針を用いて絡み部を解き,紡績糸を短繊維aと短繊維bに分解し、次に各々について5.4g/dtexの荷重下でその長さを測定する。沸騰水処理前と処理後の各々の長さから短繊維aと短繊維bの熱水収縮率を測定する。
熱水収縮率(%)=[沸騰水処理前の短繊維長さ(mm)−沸騰水処理後の短繊維長さ(mm)]÷沸騰水処理前の短繊維長さ(mm)×100
紡績糸1mを測長し張力がかからない状態で98℃の沸騰水中に30分間浸漬する。その後,張力がかからない状態で自然乾燥させた後,分繊針を用いて絡み部を解き,紡績糸を短繊維aと短繊維bに分解し、次に各々について2.2mg/dtexの荷重下でその長さを測定する。また、沸騰水処理前の糸についても同様に、張力がかからない状態で自然乾燥させた後,分繊針を用いて絡み部を解き,紡績糸を短繊維aと短繊維bに分解し、次に各々について5.4g/dtexの荷重下でその長さを測定する。沸騰水処理前と処理後の各々の長さから短繊維aと短繊維bの熱水収縮率を測定する。
熱水収縮率(%)=[沸騰水処理前の短繊維長さ(mm)−沸騰水処理後の短繊維長さ(mm)]÷沸騰水処理前の短繊維長さ(mm)×100
(7)審美性
染色した紡績糸の鞘糸に対して染色性の異なる芯の短繊維aが露出する形態を判定した。染色性の異なる短繊維aが紡績糸表面へ実質的に露出しない、または均一に分散した状態で露出する場合は審美性が「良好」と判定し、短繊維aが紡績糸表面に局所的に露出または経筋状に部分的に露出する欠点が有する場合は「不良」と判定した。
染色した紡績糸の鞘糸に対して染色性の異なる芯の短繊維aが露出する形態を判定した。染色性の異なる短繊維aが紡績糸表面へ実質的に露出しない、または均一に分散した状態で露出する場合は審美性が「良好」と判定し、短繊維aが紡績糸表面に局所的に露出または経筋状に部分的に露出する欠点が有する場合は「不良」と判定した。
[実施例1]
熱水収縮率が20%である共重合ポリエステルの短繊維の原綿と、熱水収縮率が6%である綿100%の原綿を質量比B50:50で混打綿により混紡してスライバーAを得た。その後に熱水収縮率が6%である綿100%の原綿のスライバーBを得たあとに、スライバーAが内層でスライバーBが鞘部となるよう芯鞘構造体として練条工程で形成させ、その原綿の各配合比率を質量基準で50:50とした。粗紡工程でスライバーに甘撚りをかけ、精紡工程でロービングをドラフトしながら英式綿番手16番の紡績糸を得た。経糸に得られた紡績糸を、緯糸に330デシテックスのサイドバイサイド型のポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを複合紡糸した糸をそれぞれ用い、経密度65本/インチ(2.54cm)、緯密度55本/インチ(2.54cm)として3/1ツイルで製織した。
熱水収縮率が20%である共重合ポリエステルの短繊維の原綿と、熱水収縮率が6%である綿100%の原綿を質量比B50:50で混打綿により混紡してスライバーAを得た。その後に熱水収縮率が6%である綿100%の原綿のスライバーBを得たあとに、スライバーAが内層でスライバーBが鞘部となるよう芯鞘構造体として練条工程で形成させ、その原綿の各配合比率を質量基準で50:50とした。粗紡工程でスライバーに甘撚りをかけ、精紡工程でロービングをドラフトしながら英式綿番手16番の紡績糸を得た。経糸に得られた紡績糸を、緯糸に330デシテックスのサイドバイサイド型のポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを複合紡糸した糸をそれぞれ用い、経密度65本/インチ(2.54cm)、緯密度55本/インチ(2.54cm)として3/1ツイルで製織した。
得られた生機は、連続精練/シルケット/中間セット工程を通し、染色工程として液流染色機でブルー系のカチオン染色を実施した。仕上げ工程はパティング吸水加工による熱セットを実施した結果、デニム調の表面感を有し、ストレッチと各物性を満たす素材を得た。経糸に用いた紡績糸の染色状態を確認したところ、鞘部および芯部に使用した綿は染色されていたが、芯部に用いた共重合ポリエステル原綿を構成していた繊維は殆ど染色されていなかった。該素材でデニムパンツを縫製し、二次加工としてサンドペーパー240番を用いて表面研磨を実施したところ経糸紡績糸の染色されていないポリエステル糸が表面にほどよく露出しデニムとしての自然なムラ感が表現できた。
[実施例2]
熱水収縮率が25%であるサイドバイサイド型の潜在捲縮ポリエステル原綿と、熱水収縮率が8%であるカチオン可染型ポリエステルの原綿を50:50で混打綿により混紡してスライバーAを得た。その後に熱水収縮率が8%であるカチオン可染型ポリエステル原綿100%のスライバーBを得たあとに、スライバーAが内層でスライバーBが鞘部となるよう芯鞘構造体として練条工程で形成させ、その原綿の各配合比率を質量基準で50:50とした。粗紡工程でスライバーに甘撚りをかけ、精紡工程でロービングをドラフトしながら英式綿番手16番の紡績糸を得た。経糸に得られた紡績糸を、緯糸に330デシテックスのサイドバイサイド型のポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを複合紡糸した糸をそれぞれ用い、経密度65本/インチ(2.54cm)、緯密度55本/インチ(2.54cm)として3/1ツイルで製織した。得られた生機は、連続精練/シルケット/中間セット工程を通し、染色工程として液流染色機でブルー系のカチオン染色を実施した。経糸に用いた紡績糸の染色状態を確認したところ、鞘部および芯部に使用した可染型ポリエステルの原綿を構成していた繊維は染色されていたが、芯部に用いた潜在捲縮ポリエステル原綿を構成していた繊維は殆ど染色されていなかった。仕上げ工程はパティング吸水加工による熱セットを実施した結果、デニム調の表面感を有し、ストレッチと各物性を満たす素材を得た。該素材でデニムパンツを縫製し、二次加工としてサンドペーパー240番を用いて表面研磨を実施したところ経糸紡績糸の染色されていないポリエステル糸がほどよく表面に露出しデニムとしての自然なムラ感が表現できた。
熱水収縮率が25%であるサイドバイサイド型の潜在捲縮ポリエステル原綿と、熱水収縮率が8%であるカチオン可染型ポリエステルの原綿を50:50で混打綿により混紡してスライバーAを得た。その後に熱水収縮率が8%であるカチオン可染型ポリエステル原綿100%のスライバーBを得たあとに、スライバーAが内層でスライバーBが鞘部となるよう芯鞘構造体として練条工程で形成させ、その原綿の各配合比率を質量基準で50:50とした。粗紡工程でスライバーに甘撚りをかけ、精紡工程でロービングをドラフトしながら英式綿番手16番の紡績糸を得た。経糸に得られた紡績糸を、緯糸に330デシテックスのサイドバイサイド型のポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを複合紡糸した糸をそれぞれ用い、経密度65本/インチ(2.54cm)、緯密度55本/インチ(2.54cm)として3/1ツイルで製織した。得られた生機は、連続精練/シルケット/中間セット工程を通し、染色工程として液流染色機でブルー系のカチオン染色を実施した。経糸に用いた紡績糸の染色状態を確認したところ、鞘部および芯部に使用した可染型ポリエステルの原綿を構成していた繊維は染色されていたが、芯部に用いた潜在捲縮ポリエステル原綿を構成していた繊維は殆ど染色されていなかった。仕上げ工程はパティング吸水加工による熱セットを実施した結果、デニム調の表面感を有し、ストレッチと各物性を満たす素材を得た。該素材でデニムパンツを縫製し、二次加工としてサンドペーパー240番を用いて表面研磨を実施したところ経糸紡績糸の染色されていないポリエステル糸がほどよく表面に露出しデニムとしての自然なムラ感が表現できた。
[実施例3]
熱水収縮率が25%であるサイドバイサイド型の潜在捲縮ポリエステル原綿と、熱水収縮率が8%であるカチオン可染型ポリエステルの原綿を、質量比50:50で混打綿により混紡してスライバーAを得た。その後に熱水収縮率が8%であるカチオン可染型ポリエステル原綿100%のスライバーBを得たあとに、スライバーAが芯部でスライバーBが鞘部となるよう芯鞘構造体として練条工程で形成させ、その原綿の各配合比率を質量比で50:50とした。粗紡工程でスライバーに甘撚りをかけ、精紡工程でロービングをドラフトしながら英式綿番手20番の紡績糸を得た。
熱水収縮率が25%であるサイドバイサイド型の潜在捲縮ポリエステル原綿と、熱水収縮率が8%であるカチオン可染型ポリエステルの原綿を、質量比50:50で混打綿により混紡してスライバーAを得た。その後に熱水収縮率が8%であるカチオン可染型ポリエステル原綿100%のスライバーBを得たあとに、スライバーAが芯部でスライバーBが鞘部となるよう芯鞘構造体として練条工程で形成させ、その原綿の各配合比率を質量比で50:50とした。粗紡工程でスライバーに甘撚りをかけ、精紡工程でロービングをドラフトしながら英式綿番手20番の紡績糸を得た。
得られた紡績糸と、84デシテックスのポリエステルフィラメントの77デシテックスのウレタン弾性糸を3.0倍ドラフト延伸したカバーリング糸を丸編20Gで1:1配列として交編し、紡績糸はニットとウェルトを組合せた組織でツイル調の編成生機を得た。得られた生機は、生機セット/液流精練工程を通し、その後の染色工程は液流染色機でブルー系のカチオン染色を実施した。紡績糸の染色状態を確認したところ、鞘部および芯部に使用したカチオン可染ポリエステル原綿を構成していた繊維は染色されていたが、芯部に用いた潜在捲縮ポリエステル原綿を構成していた繊維は殆ど染色されていなかった。仕上げ工程はパティング吸水加工による熱セットを実施した結果、デニム調の表面感を有し、ストレッチと各物性を満たす素材を得た。該素材でデニムパンツを縫製し、二次加工としてサンドペーパー240番を用いて表面研磨を実施したところ経糸紡績糸の染色されていないポリエステル糸がほどよく表面に露出しデニムとしての自然なムラ感が表現できた。
[比較例1]
熱水収縮率が25%であるサイドバイサイド型の潜在捲縮ポリエステル原綿と、熱水収縮率が6%である綿100%の原綿を、綿が鞘部となるよう芯鞘構造体として練条工程で形成させ、その原綿の各配合比率を質量基準で10:90とした。粗紡工程でスライバーに甘撚りをかけ、精紡工程でロービングをドラフトしながら英式綿番手16番の紡績糸を得た。経糸に得られた紡績糸を緯糸に330デシテックスのサイドバイサイド型のポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを複合紡糸した糸をそれぞれ用い、経密度65本/インチ(2.54cm)、緯密度55本/インチ(2.54cm)として3/1ツイルで製織した。得られた生機は、連続精練/シルケット/中間セット工程を通し、染色工程として連続染色機でブルー系の反応染色を実施した。経糸に用いた紡績糸の染色状態を確認したところ、鞘部に使用した綿は染色されていたが、芯部に用いたサイドバイサイド型の潜在捲縮ポリエステル原綿を構成していた繊維は染色されていなかった。仕上げ工程はパティング吸水加工による熱セットを実施した結果、経糸の芯部を構成する繊維は、潜在捲縮ポリエステル原綿を構成していた繊維のみであり、この繊維の紡績糸の表面への局所的な露出が目につき、審美性の悪いものとなった。
熱水収縮率が25%であるサイドバイサイド型の潜在捲縮ポリエステル原綿と、熱水収縮率が6%である綿100%の原綿を、綿が鞘部となるよう芯鞘構造体として練条工程で形成させ、その原綿の各配合比率を質量基準で10:90とした。粗紡工程でスライバーに甘撚りをかけ、精紡工程でロービングをドラフトしながら英式綿番手16番の紡績糸を得た。経糸に得られた紡績糸を緯糸に330デシテックスのサイドバイサイド型のポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを複合紡糸した糸をそれぞれ用い、経密度65本/インチ(2.54cm)、緯密度55本/インチ(2.54cm)として3/1ツイルで製織した。得られた生機は、連続精練/シルケット/中間セット工程を通し、染色工程として連続染色機でブルー系の反応染色を実施した。経糸に用いた紡績糸の染色状態を確認したところ、鞘部に使用した綿は染色されていたが、芯部に用いたサイドバイサイド型の潜在捲縮ポリエステル原綿を構成していた繊維は染色されていなかった。仕上げ工程はパティング吸水加工による熱セットを実施した結果、経糸の芯部を構成する繊維は、潜在捲縮ポリエステル原綿を構成していた繊維のみであり、この繊維の紡績糸の表面への局所的な露出が目につき、審美性の悪いものとなった。
[比較例2]
熱水収縮率が6%である分散可染型ポリエステル原綿と、熱水収縮率が8%であるカチオン可染型ポリエステルの原綿をスライバーで、カチオン可染型ポリエステルが鞘部となるよう芯鞘構造体として練条工程で形成させ、その原綿の各配合比率を質量基準で30:70とした。粗紡工程でスライバーに甘撚りをかけ、精紡工程でロービングをドラフトしながら英式綿番手16番の紡績糸を得た。経糸に得られた紡績糸を、緯糸に330デシテックスのサイドバイサイド型のポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを複合紡糸した糸をそれぞれ用い、経密度65本/インチ(2.54cm)、緯密度55本/インチ(2.54cm)として3/1ツイルで製織した。得られた生機は、連続精練/シルケット/中間セット工程を通し、染色工程として液流染色機でブルー系のカチオン染色を実施した。経糸に用いた紡績糸の染色状態を確認したところ、鞘部に使用したカチオン可染型ポリエステルの原綿は染色されていたが、芯部に用いた分散可染型ポリエステル原綿を構成していた繊維は染色されていなかった。仕上げ工程はパティング吸水加工による熱セットを実施した結果、経糸の芯部を構成する繊維は、分散可染型ポリエステルのみであり、この繊維の紡績糸の表面への局所的な露出が目につき、審美性が悪いものとなった。
熱水収縮率が6%である分散可染型ポリエステル原綿と、熱水収縮率が8%であるカチオン可染型ポリエステルの原綿をスライバーで、カチオン可染型ポリエステルが鞘部となるよう芯鞘構造体として練条工程で形成させ、その原綿の各配合比率を質量基準で30:70とした。粗紡工程でスライバーに甘撚りをかけ、精紡工程でロービングをドラフトしながら英式綿番手16番の紡績糸を得た。経糸に得られた紡績糸を、緯糸に330デシテックスのサイドバイサイド型のポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを複合紡糸した糸をそれぞれ用い、経密度65本/インチ(2.54cm)、緯密度55本/インチ(2.54cm)として3/1ツイルで製織した。得られた生機は、連続精練/シルケット/中間セット工程を通し、染色工程として液流染色機でブルー系のカチオン染色を実施した。経糸に用いた紡績糸の染色状態を確認したところ、鞘部に使用したカチオン可染型ポリエステルの原綿は染色されていたが、芯部に用いた分散可染型ポリエステル原綿を構成していた繊維は染色されていなかった。仕上げ工程はパティング吸水加工による熱セットを実施した結果、経糸の芯部を構成する繊維は、分散可染型ポリエステルのみであり、この繊維の紡績糸の表面への局所的な露出が目につき、審美性が悪いものとなった。
Claims (13)
- 2種類以上の短繊維からなる芯鞘構造で、芯部は、熱水収縮率が10%以上のポリエステル系短繊維aと熱水収縮率が10%未満の短繊維bを、鞘部は前記短繊維bをそれぞれ含み、ポリエステル系短繊維aと短繊維bの質量比は10:90〜90:10であり、かつ芯鞘の芯部と鞘部の質量比が10:90〜70:30である紡績糸。
- 前記ポリエステル系短繊維aと短繊維bとは染色性が異なるものである請求項1に記載の紡績糸。
- 前記鞘部を構成する短繊維bとして、前記芯部に含まれる短繊維bと同じ素材で構成される繊維を含む請求項1または2に記載の紡績糸。
- 前記芯部を構成する短繊維のうち最も高い熱水収縮率を示す1種の短繊維の熱水収縮率をA(%)とし、鞘部を構成する短繊維のうち最も小さい熱水収縮率を示す短繊維の熱水収縮率をB(%)としたとき、A,Bが以下の関係にある請求項1〜3のいずれかに記載の紡績糸。
A≧B+5 - 前記ポリエステル系短繊維aがサイドバイサイド型の潜在捲縮性を有するポリエステル系短繊維を含む請求項1〜4のいずれかに記載の紡績糸。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の紡績糸を用いて製編織されており、かつ該紡績糸の芯部の一部に鞘部と異なる色で染色された短繊維が含まれていることを特徴とする織編物。
- 経緯方向の少なくとも一方の伸長回復率が15%以上である請求項5に記載の織編物。
- 摩擦堅牢度が乾条件および湿条件ともに3級以上である請求項6または7に記載の織編物。
- 天然繊維の混率が50質量%以下である請求項6〜8のいずれかに記載の織編物。
- 滴下法による吸水時間が10秒以下で、
かつカケン法による拡散性残留水分率が30%以下である請求項6〜9のいずれかに記載の織編物。 - W&W性が3.0級以上であるシャツ、ジャケット、スカートおよびパンツから選択される衣料に用いられるデニム調織編物またはカラーデニム調織編物として用いる請求項6〜10のいずれかに記載の織編物。
- 請求項6〜11のいずれかに記載の織編物をその一部に含む、シャツ、ジャケット、スカートおよびパンツから選択される衣料。
- W&W性が3.0級以上である請求項12記載の衣料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018113541A JP2019214814A (ja) | 2018-06-14 | 2018-06-14 | 紡績糸および織編物 |
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JP2018113541A Pending JP2019214814A (ja) | 2018-06-14 | 2018-06-14 | 紡績糸および織編物 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2022054413A1 (ja) * | 2020-09-09 | 2022-03-17 | ユニチカトレーディング株式会社 | 二層構造紡績糸及び織編物 |
-
2018
- 2018-06-14 JP JP2018113541A patent/JP2019214814A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2022054413A1 (ja) * | 2020-09-09 | 2022-03-17 | ユニチカトレーディング株式会社 | 二層構造紡績糸及び織編物 |
JP7100220B1 (ja) * | 2020-09-09 | 2022-07-12 | ユニチカトレーディング株式会社 | 二層構造紡績糸及び織編物 |
CN116113734A (zh) * | 2020-09-09 | 2023-05-12 | 尤尼吉可贸易有限公司 | 双层结构纺织纱线和编织品 |
CN116113734B (zh) * | 2020-09-09 | 2024-04-05 | 尤尼吉可贸易有限公司 | 双层结构纺织纱线和编织品 |
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