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JP2019202648A - 車両用制動制御装置 - Google Patents

車両用制動制御装置 Download PDF

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JP2019202648A
JP2019202648A JP2018098925A JP2018098925A JP2019202648A JP 2019202648 A JP2019202648 A JP 2019202648A JP 2018098925 A JP2018098925 A JP 2018098925A JP 2018098925 A JP2018098925 A JP 2018098925A JP 2019202648 A JP2019202648 A JP 2019202648A
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和広 黒住
Kazuhiro Kurozumi
和広 黒住
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Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】ABS制御が実行されない場合の制動制御によって、車輪に大きな制動力を発生させ且つ車輪の横摩擦係数を大きくすることが可能な車両用制動制御装置を提供する。【解決手段】油圧調整手段が、スリップ率が所定の固定値であるABS判定用閾値より大きくなったときに、スリップ率が所定の目標スリップ率となるように、油圧式制動装置を作動させるための作動油の油圧を制御するアンチスキッド制御を実行可能であり、且つ、アンチスキッド制御を実行していないときにスリップ率速度が所定の油圧変化率制限閾値より大きくなり且つ所定条件が成立した場合に、油圧変化率を小さくするように油圧を調整してスリップ率速度を小さくするように構成される。【選択図】図3

Description

本発明はアンチスキッド制御を実行可能な車両用制動制御装置に関する。
特許文献1はアンチスキッド制御(以下、ABS制御と称することがある)を実行可能な車両用制動制御装置を開示している。
この制動制御装置は、ブレーキペダルが踏み込まれたときに動作する油圧式の制動装置を具備している。制動装置が作動すると、制動装置から車両の各車輪に制動力が付与される。
この制動制御装置はABS制御を実行可能である。ABS制御は、車輪のスリップ率が所定のABS判定用閾値より大きくなることにより車輪にスリップが発生したと判定されたときに、スリップ率が所定範囲のスリップ率である目標スリップ率となるように制動装置に供給する作動油の油圧(即ち、上記制動力)を増減する制御である。
特開平7−101327号公報
車輪の摩擦係数(車輪と路面との間の摩擦係数。なお、本明細書では、単に「摩擦係数」と表現した場合は、車輪の回転方向の摩擦係数を意味する)が大きいときに制動装置が制動動作を実行すると車輪が大きな制動力を発生する。従って、ABS制御が実行されていない状態で摩擦係数が大きいときに制動動作が実行されると、この制動動作によって車両が十分に減速される。そのため、その後にABS制御を行なうと、ABS制御を実行したときの制動距離が短くなる。
ところで、車輪の摩擦係数は車輪のスリップ率に応じて変化することが従来から知られている。しかしながら発明者は、実験により、摩擦係数がスリップ率のみならずスリップ率速度の大きさの影響も受けることを発見した。ここでスリップ率速度とは、スリップ率の単位時間当たりの変化量である。
さらに近年、ブレーキペダルの踏込み動作に対する制動装置の応答性を向上させるために、ブレーキペダルが踏み込まれたときの作動油の油圧の単位時間当たりの変化量である油圧変化率が大きくなるように制動装置の油圧系が設計されている。そして油圧変化率とスリップ率速度とは互いに実質的に比例する。即ち、油圧変化率が正の値の場合(油圧が上昇する場合)は、油圧変化率が大きくなるほどスリップ率速度が高くなり且つ油圧変化率が小さくなるほどスリップ率速度が低くなる。さらに油圧変化率が負の値の場合(油圧が低下する場合)は、油圧変化率が小さくなるほど(即ち、油圧変化率の絶対値が大きくなるほど)スリップ率速度が低くなり且つ油圧変化率が大きくなるほど(即ち、油圧変化率の絶対値が小さくなるほど)スリップ率速度が高くなる。そのため近年の車両においては、ブレーキペダルが踏み込まれたときにスリップ率速度が高くなり易い。
しかし特許文献1では、摩擦係数がスリップ率速度の大きさの影響を受ける点、及び、上記のように油圧系が設計されている点が考慮されていない。そのため、ABS制御が実行される直前のスリップ率速度が高い場合は、ABS制御が実行される直前の制動制御によって車輪が発生する制動力が小さくなるおそれがある。そのため、その後にABS制御を行なうと、ABS制御を実行したときの制動距離が長くなってしまう。
さらに、ABS判定用閾値の設定方法によっては、ABS制御が実行される直前の制動制御において車輪の横摩擦係数(車輪と路面との間の横摩擦係数)が小さくなる。すると車輪が発生する横力が小さくなるので、車両の操舵性及び方向安定性が低下するおそれがある。
本発明は上述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、ABS制御が実行されない場合の制動制御によって、車輪に大きな制動力を発生させ且つ車輪の横摩擦係数を大きくすることが可能な車両用制動制御装置を提供することにある。
本発明の車両用制動制御装置は、
車輪に制動力を及ぼす油圧式制動装置を作動させるための作動油の油圧を調整することにより前記制動力を調整する油圧調整手段(13)と、
前記油圧の単位時間当たりの変化量である油圧変化率(rp)を演算する油圧変化率演算手段(11)と、
前記車輪のスリップ率(Rslip)及び前記スリップ率の単位時間当たりの変化量であるスリップ率速度(ΔRslip)を演算するスリップ関連値演算手段(11)と、
を備え、
前記油圧調整手段が、
前記スリップ率が所定の固定値であるABS判定用閾値(ThABS)より大きくなったときに、前記スリップ率が所定の目標スリップ率(TgRslip)となるように、前記油圧を制御するアンチスキッド制御を実行可能であり、且つ、前記アンチスキッド制御を実行していないときに前記スリップ率速度が所定の油圧変化率制限閾値(ThΔRslip)より大きくなり且つ所定条件(Rslip<ThRslip)が成立した場合に、前記油圧変化率を小さくするように前記油圧を調整して前記スリップ率速度を小さくするように構成される。
発明者は、一般的な傾向として、スリップ率速度が高い場合はスリップ率が低いときの摩擦係数が小さく、一方、スリップ率速度が低い場合はスリップ率が低いときの摩擦係数が大きいことを発見した。
そのため本発明の油圧調整手段は、アンチスキッド制御(ABS制御)を実行していないときにスリップ率速度が所定の油圧変化率制限閾値より大きくなり且つ所定条件が成立した場合に、油圧変化率を小さくするように作動油の油圧を調整してスリップ率速度を小さくする。
ABS判定用閾値を小さい値に設定すれば、ABS制御が実行されていないときのスリップ率(ABS判定用閾値以下のスリップ率)は低い値になるので、ABS制御が実行されていないときはスリップ率速度が低い場合に車輪の摩擦係数が大きくなる。従って、本発明によれば、ABS制御を実行する前に実行される制動制御によって車輪が大きな制動力を発生するので、車両が十分に減速され易い。そのため、その後にABS制御を行なうと、ABS制御を実行したときの制動距離が短くなる。
さらに、仮にABS判定用閾値を、スリップ率速度が高くなるほど大きくなる可変値とした場合は、ABS制御が実行されておらず且つスリップ率速度が高いときに高いスリップ率で制動制御が実行されるおそれがある。そしてスリップ率が高い場合は、車輪の横摩擦係数が小さくなり車輪が発生する横力が小さくなるので、車両の操舵性及び方向安定性が低下し易い。
これに対して本発明ではABS判定用閾値が固定値なので、ABS判定用閾値を小さい値に設定すれば、ABS制御が実行されていないときに高いスリップ率で制動制御が実行されることはない。従って、ABS制御が実行されていないときに、車輪の横摩擦係数が高い状態で制動制御が実行されるので、車両の操舵性及び方向安定性が低下し難い。
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置の全体構成を示す図である。 制動制御が実行されたときの時間tとホイールシリンダに供給される作動油の油圧Pとの関係を示すグラフである。 ABS制御用マップ(ルックアップテーブル)に記録された車輪のスリップ率Rslip、スリップ率速度ΔRslip、及び車輪の摩擦係数μの間の関係を示すグラフである。 スリップ率Rslipと摩擦係数μとの関係を示すグラフである。 油圧変化率制限値用マップ(ルックアップテーブル)に記録されたスリップ率Rslip、スリップ率速度ΔRslip、及び油圧変化率制限値Lmrpの間の関係を示すグラフである。 スリップ率速度ΔRslipと油圧変化率制限値Lmrpとの関係を示すグラフである。 スリップ率Rslipと油圧変化率制限値Lmrpとの関係を示すグラフである。 制動制御が実行されたときの時間tとスリップ率Rslipとの関係を示すグラフである。 制動制御が実行されたときのスリップ率Rslipと横摩擦係数μLとの関係を示すグラフである。 ブレーキECUが実行する油圧変化率制限制御のルーチンを示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。本実施形態の車両用制動制御装置10(以下、制動制御装置10と称する。図1参照)が搭載された車両は、左右の前輪及び左右の後輪(いずれも図示略)を備えている。さらに制動制御装置10はブレーキECU11、車輪速度センサ12、ブレーキアクチュエータ13、油圧センサ14、及び前後加速度センサ15を備えている(図1参照)。
ブレーキECU11は各車輪に対応する複数の車輪速度センサ12、油圧センサ14、及び前後加速度センサ15と接続され、これらのセンサの検出信号(検出値)を所定時間が経過する毎に受信する。ECUは、エレクトリックコントロールユニットの略称であり、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクションを実行することにより後述する各種機能を実現する。
各車輪速度センサ12は、所定時間が経過する毎に、対応する車輪の回転速度(車輪回転速度)に応じたパルス信号を出力する。ブレーキECU11は、このパルス信号に基づいて、所定時間が経過する毎に、各車輪の回転速度を検出する。さらにブレーキECU11は、所定時間が経過する毎に、各車輪の回転速度の平均値を演算し、この平均値を車両の車速(自車速)として取得する。なお、ブレーキECU11は、所定時間が経過する毎に車輪用の駆動軸の回転速度を車速として検出し且つ検出結果を出力する車速センサに接続されてもよい。
さらにブレーキECU11はブレーキアクチュエータ13と接続されている。ブレーキアクチュエータ13は油圧制御アクチュエータである。ブレーキアクチュエータ13は、ブレーキペダルの踏力によって作動油を加圧するマスタシリンダと、各車輪に設けられる周知のホイールシリンダを含む摩擦ブレーキ装置と、の間の油圧回路(いずれも図示略)に配設される。ブレーキアクチュエータ13はホイールシリンダに供給する作動油の油圧を調整する。
この油圧回路には、マスタシリンダを流れる作動油の油圧を検出する油圧センサ14が設けられている。油圧センサ14の検出値は所定時間が経過する毎にブレーキECU11に送信され、ブレーキECU11は受信した検出値に基づいて、所定時間が経過する毎に各摩擦ブレーキ装置が対応する各車輪に付与すべき制動力を演算する。換言すると、ブレーキECU11は、ホイールシリンダに供給すべき作動油の油圧P(MPa)(図2参照)を演算する。そしてブレーキECU11は、ホイールシリンダに供給される作動油の油圧が演算した油圧Pと一致するように、ブレーキアクチュエータ13を制御する。その結果、各摩擦ブレーキ装置から対応する車輪に付与される制動力の大きさが調整されるので、各車輪と路面との間で発生する制動力Fbの大きさが変化する。なお、この制動力Fbは、車輪と路面との間でスリップが発生していない場合に、車輪が理論上発生可能な制動力である。さらに周知のように、後述する摩擦係数μが同一の場合は油圧Pが大きくなるほど制動力Fbが大きくなる。
さらにブレーキECU11は、所定時間が経過する毎に、油圧Pを時間で微分した油圧変化率rpを演算する。即ち、油圧変化率rpは、油圧Pの単位時間当たりの変化量である。なお本実施形態では、ブレーキペダルの踏込み動作に対するホイールシリンダの応答性が良好である。換言すると、ブレーキペダルに対する踏み込力を大きくすることにより油圧Pが上昇したときの油圧変化率rpの絶対値、及び、ブレーキペダルに対する踏み込力を小さくすることにより油圧Pが低下したときの油圧変化率rpの絶対値が共に大きくなるように制動制御装置10の油圧系が設計されている。
さらにブレーキECU11は、所定時間が経過する毎に、車輪速度及び車速に基づいて車両のスリップ率Rslip=(車速−車輪速度)/車輪速度を演算する。
前後加速度センサ15は車両の前後方向の加速度Gfrを検出し、所定時間が経過する毎に、検出結果をブレーキECU11へ送信する。
ブレーキECU11のROMにはABS制御用マップ20(図3及び図4参照)、油圧変化率制限値用マップ21(図5乃至図7参照)、並びに前後加速度閾値ThGfrが記録されている。さらにABS制御用マップ20にはABS判定用閾値ThABSが含まれており(図4及び図8参照)、且つ、油圧変化率制限値用マップ21には油圧変化率制限閾値ThΔRslip(図5及び図6参照)並びに制限値変化閾値ThRslip(図7及び図8参照)が含まれている。ABS判定用閾値ThABS、油圧変化率制限閾値ThΔRslip、及び前後加速度閾値ThGfrはいずれも固定値である。
本実施形態の車輪の摩擦係数μ(車輪と路面との間の摩擦係数)、車輪のスリップ率Rslip、及びスリップ率速度ΔRslipの間の関係は実験により予め求められている。ABS制御用マップ20は、この実験結果に基づいて作成した、摩擦係数μ、スリップ率Rslip、及びスリップ率速度ΔRslipの間の関係を表したルックアップテーブルである。スリップ率速度ΔRslipとは、スリップ率Rslipの単位時間当たりの変化量であり、所定時間が経過する毎にブレーキECU11がスリップ率Rslipを時間で微分することにより演算する。なお、上述のように、スリップ率速度ΔRslipと油圧変化率rpとは互いに実質的に比例する。
グラフGLΔRslip・min(図3及び図4参照)は、スリップ率速度ΔRslipがABS制御用マップ20の中で最も遅いスリップ率速度ΔRslip・minの場合の摩擦係数μとスリップ率Rslipとの関係を表している。グラフGLΔRslip・max(図3及び図4参照)は、スリップ率速度ΔRslipがABS制御用マップ20の中で最も速いスリップ率速度ΔRslip・maxの場合の摩擦係数μとスリップ率Rslipとの関係を表している。
スリップ率速度ΔRslip・minよりある程度速いスリップ率速度ΔRslipをスリップ率速度ΔRslip・Aとするとき(図3参照)、スリップ率速度ΔRslip・Aにおける摩擦係数μとスリップ率Rslipとの関係はグラフGLΔRslip・Aによって表される。さらに、スリップ率速度ΔRslip・minとスリップ率速度ΔRslip・Aとの間の全てのスリップ率速度をまとめてスリップ率速度ΔRslip・lowと称する場合がある(図3及び図6参照)。スリップ率速度ΔRslip・lowの場合のスリップ率Rslipと摩擦係数μとの関係はグラフGLΔRslip・lowによって表される(図4参照)。即ち、グラフGLΔRslip・lowはグラフGLΔRslip・minと同一である。
グラフGLΔRslip・maxの摩擦係数μの最大値(ピーク値)はグラフGLΔRslip・lowの最大値より大きく、且つ、グラフGLΔRslip・maxの摩擦係数μの最大値に対応するスリップ率RslipはグラフGLΔRslip・lowの摩擦係数μの最大値に対応するスリップ率Rslipより大きい(図3及び図4参照)。さらに、スリップ率速度ΔRslip・lowより僅かに大きいスリップ率速度とスリップ率速度ΔRslip・maxとの間の全てのスリップ率速度をまとめてスリップ率速度ΔRslip・highと称する(図3及び図6参照)。この場合、スリップ率速度ΔRslip・highに含まれる各スリップ率速度ΔRslipに対応する摩擦係数μとスリップ率Rslipとの関係を表す複数のグラフが得られる(図示略)。そしてこの複数のグラフにおいては、一部の例外を除いて全般的な傾向として、スリップ率速度ΔRslipが高くなるほど摩擦係数μの最大値が大きくなり、且つ、スリップ率速度ΔRslipが高くなるほど摩擦係数μの最大値に対応するスリップ率Rslipが大きくなる。
油圧変化率制限値用マップ21(図5乃至図7参照)は、スリップ率Rslip、スリップ率速度ΔRslip、及び油圧変化率制限値Lmrpの間の関係を表している。油圧変化率制限値Lmrpは油圧変化率rpの上限値を定める値である。換言すると、油圧変化率制限値Lmrpは油圧変化率rpの補正値である。
制動制御装置10はABS制御を実行可能である。即ち、ブレーキECU11が演算したスリップ率RslipがABS判定用閾値ThABSより大きくなると、ブレーキECU11がABS制御用マップ20を用いて、そのときのスリップ率速度ΔRslipに対応する目標スリップ率TgRslipを演算する。即ち、スリップ率速度ΔRslipが変化すると目標スリップ率TgRslipも変化する。周知のように目標スリップ率TgRslipとは、摩擦係数μ及び横摩擦係数μL(車輪と路面との間の横摩擦係数)がそれぞれ所定範囲の大きさになる場合の所定範囲の大きさのスリップ率Rslipである。なお、スリップ率速度ΔRslipがいかなる大きさであっても、目標スリップ率TgRslipに対応する摩擦係数μはある程度の大きさになる。さらに、周知のように、横摩擦係数μLはスリップ率Rslipが小さいほど大きくなり且つスリップ率Rslipが大きいほど小さくなる(図9参照)。そして、スリップ率速度ΔRslipがいかなる大きさであっても、目標スリップ率TgRslipの値(スリップ率)は比較的小さいので、目標スリップ率TgRslipに対応する横摩擦係数μLはある程度の大きさになる。
そしてブレーキECU11は、ブレーキアクチュエータを制御することにより、作動油の油圧Pの大きさを調整する。すると、スリップ率Rslipが目標スリップ率TgRslipとなるように、摩擦ブレーキ装置が車輪に対して制動力をその大きさを調整しながら付与する。
このようにブレーキECU11は、スリップ率速度ΔRslipの値に応じて大きさが異なる目標スリップ率TgRslipを演算する。そのため、ABS制御が実行されると、スリップ率速度ΔRslipがいかなる大きさの場合であっても、スリップが発生した車輪が大きな制動力Fb及び大きな横力を発揮する。そしてブレーキECU11は、スリップ率RslipがABS判定用閾値ThABS以下になるとABS制御を終了する。
続いて、車両が走行しているとき(即ち、各車輪が回転しているとき)にブレーキECU11が行う処理について図10のフローチャートを参照しながら説明する。
まずブレーキECU11はステップS1001において、制動制御装置10がABS制御を実行中か否かを判定する。
ステップS1001でYesと判定したとき、ブレーキECU11は本フローチャートの処理を一旦終了する。
一方、ステップS1001でNoと判定したとき、ブレーキECU11はステップS1002に進み、前後加速度センサ15が検出した前後加速度Gfrが前後加速度閾値ThGfrより大きいか否かを判定する。
ステップS1002でNoと判定したとき、ブレーキECU11は本フローチャートの処理を一旦終了する。なお、この場合は、車両が走行中の路面がドライ面及びウェット面のいずれでもないと考えらえる。なお、一般的に、ドライ面の場合の前後加速度Gfrは1.0G以上となり、且つ、ウェット面の場合の前後加速度Gfrは0.8以上となる。そのため、例えば、前後加速度閾値ThGfrとして0.8(G)を利用可能である。
一方、ステップS1002でYesと判定したとき、ブレーキECU11はステップS1003に進む。この場合は、車両が走行中の路面がドライ面又はウェット面であると考えられる。
ステップS1003に進んだブレーキECU11は、現在時刻のスリップ率速度ΔRslip(即ち、ブレーキECU11によって演算されたスリップ率速度ΔRslipの中で最新のスリップ率速度ΔRslip)が油圧変化率制限閾値ThΔRslipより大きいか否かを判定する。
ここで、例えば、運転者が時刻t=0でブレーキペダルを踏み始めた結果、グラフ1に示す態様で油圧Pが変化する場合を想定する(図2参照)。このグラフ1は直線である。即ち、この場合の油圧Pの油圧変化率rpは時刻t=0から時刻t3まで一定である。そして、この場合の油圧変化率rpは小さいので、このときにブレーキECU11が演算したスリップ率速度ΔRslipは小さい値となる。即ち、例えば、この場合のスリップ率速度ΔRslipはスリップ率速度ΔRslip・minとなる。スリップ率速度ΔRslip・minは油圧変化率制限閾値ThΔRslip以下である(図6参照)。そのため、ブレーキECU11はステップS1003でNoと判定して本フローチャートの処理を一旦終了する。
スリップ率速度ΔRslipがスリップ率速度ΔRslip・minの場合は、油圧変化率制限値Lmrpは存在しない(図6参照)。換言すると、この場合の油圧変化率制限値Lmrpの大きさは無限大である。即ち、この場合、ブレーキECU11は現在時刻の油圧Pの油圧変化率rp(即ち、ブレーキECU11によって演算された油圧変化率rpの中で最新の油圧変化率rp)を調整しない。従って、油圧変化率rpは時刻t=0から時刻t3までグラス1に示す大きさの一定値となる。
さらにこの場合は、ブレーキECU11が演算したスリップ率RslipがABS判定用閾値ThABS以下になる。そのため、スリップ率Rslipの大きさに拘らず、グラフGLΔRslip・minの摩擦係数μの値は(スリップ率速度ΔRslip・high(グラフGLΔRslip・max)の場合と比べて)大きい(図4参照)。
ところで、車輪の接地荷重がWの場合に以下の式(1)が成立すると、理論上、車輪にスリップが発生する。

Fb>μ×W・・・式(1)

従って、摩擦係数μの値が大きい場合は、制動力Fbの値がある程度の大きさになっても、車両にはABS制御が実行される程度の大きさのスリップは発生しない。従って、時刻t3において油圧Pが10.0MpaになるまでABS制御は実行されない(図2参照)。即ち、この場合は、時刻t3においてスリップ率RslipがABS判定用閾値ThABSより大きくなりABS制御が開始される。
このように油圧Pが10.0Mpaになるまで通常の制動制御(換言すると、ABS制御ではない制動制御)が実行されると、ABS制御を実行する前に車両が十分に減速される。そのため、その後にABS制御を行なうと、ABS制御を実行したときの制動距離が短くなる。
さらにABS判定用閾値ThABSが小さい値の固定値であるため、この場合の通常の制動制御は低いスリップ率Rslip(即ち、図4のABS判定用閾値ThABS以下の値)で実行される。上述のように、車輪の横摩擦係数μLはスリップ率Rslipが小さいほど大きくなり且つスリップ率Rslipが大きいほど小さくなる(図9参照)。そのため、この場合の通常の制動制御は横摩擦係数μLが大きい状態で実行される。従って、各車輪が大きな横力を発生するので、車両の操舵性及び方向安定性が低下し難い。
一方、ブレーキECU11がステップS1003に進んだときに、運転者が図2の時刻t1においてブレーキペダルに付与する踏力を増大させた場合を想定する。この場合は時刻t1以降において油圧Pの油圧変化率rpがグラフ1より高くなる。その結果、例えば、時刻t1において、ブレーキECU11が演算したスリップ率速度ΔRslipがスリップ率速度ΔRslip・maxとなる。スリップ率速度ΔRslip・maxは油圧変化率制限閾値ThΔRslipより大きい(図6参照)。そのためこの場合、ブレーキECU11はステップS1003でYesと判定してステップS1004へ進み、油圧変化率制限制御を実行する。
この場合は油圧変化率制限値Lmrpによって油圧変化率rpが制限される。即ち、ブレーキECU11がブレーキアクチュエータ13を制御することにより、油圧変化率rpが油圧変化率RrpB(図6参照)となるように補正される(小さくなる)。なお、スリップ率速度ΔRslipがスリップ率速度ΔRslip・highの最小値の場合は、ブレーキECU11がブレーキアクチュエータ13を制御することにより、油圧変化率rpが油圧変化率RrpA(図6参照)となるように補正される(小さくなる)。なお、図6はスリップ率Rslipが油圧変化率制限値用マップ21において最小値となった場合のスリップ率速度ΔRslipと油圧変化率制限値Lmrpとの関係を表している。さらにスリップ率Rslipが油圧変化率制限値用マップ21上の如何なる大きさであっても、図6と同様に、スリップ率速度ΔRslipが大きくなるほど油圧変化率制限値Lmrpは小さくなる。
その結果、時刻t1以降において図2のグラフ2に示す態様で油圧Pが変化する。即ち、油圧変化率制限制御前よりも小さい油圧変化率rpで油圧Pが変化する。この場合の油圧Pの油圧変化率rpは時刻t1から時刻t2まで一定である。
このグラフ2の場合のスリップ率速度ΔRslipは、例えばスリップ率速度ΔRslip・Aとなる。上述のように、この場合の摩擦係数μとスリップ率Rslipとは図4のグラフGLΔRslip・lowに示す関係になる。そして、スリップ率RslipがABS判定用閾値ThABS以下のいかなる大きさであっても、グラフGLΔRslip・lowの摩擦係数μの値は(スリップ率速度ΔRslip・high(グラフGLΔRslip・max)の場合と比べて)大きい。従って、式(1)から明らかなように、この場合は、制動力Fbの値がある程度の大きさになっても、車両にはABS制御が実行される程度の大きさのスリップは発生しない。そのため、時刻t2において油圧Pが10.0MpaになるまでABS制御は実行されない(図2参照)。即ち、この場合は、時刻t2においてスリップ率RslipがABS判定用閾値ThABSより大きくなりABS制御が開始される。従って、ABS制御を実行する前に車両が十分に減速されるので、その後にABS制御を行なうと、ABS制御を実行したときの制動距離が短くなる。
さらにABS判定用閾値ThABSが小さい値の固定値であるため、この場合の通常の制動制御も低いスリップ率Rslipで実行される。そのため、この場合も通常の制動制御が車輪の横摩擦係数μLが大きい状態で実行されるので、車両の操舵性及び方向安定性が低下し難い。
ところで、図7はスリップ率速度ΔRslipが油圧変化率制限閾値ThΔRslipを僅かに超えた値となった場合のスリップ率Rslipと油圧変化率制限値Lmrpとの関係を表している。なお、図5から明らかなように、スリップ率速度ΔRslipが油圧変化率制限閾値ThΔRslipより大きい場合は、スリップ率速度ΔRslipが如何なる大きさであっても、スリップ率Rslipと油圧変化率制限値Lmrpとの関係は図7と類似した関係になる。
スリップ率速度ΔRslipが油圧変化率制限閾値ThΔRslipより大きい場合は、スリップ率Rslipが制限値変化閾値ThRslip以上となったときに、スリップ率Rslipが大きくなるにつれて油圧変化率制限値Lmrpが急激に上昇する(図5及び図7参照)。そのため、スリップ率Rslipが制限値変化閾値ThRslip以上となった場合は、ブレーキECU11は油圧変化率rpを油圧変化率制限値Lmrpを用いて補正しない(小さくしない)。
そのため、運転者が時刻t=0でブレーキペダルを踏み始め且つ時刻taでスリップ率Rslipが制限値変化閾値ThRslip以上となると、スリップ率Rslipがさらに上昇し、時刻tbと時刻tcとの間においてスリップ率RslipがABS判定用閾値ThABSより大きくなりABS制御が実行される(図8参照)。その結果、時刻tcを経過するとスリップ率Rslipが急降下する。即ち、このようにスリップ率Rslipがある程度の大きさ以上になった場合は、油圧変化率制限制御において敢えて油圧変化率rpを油圧変化率制限値Lmrpを用いて補正しないことにより、スリップ率Rslipを急激に小さくすることが可能になる。即ち、短時間のうちに車両の挙動を安定させることが可能になる。
なお仮にスリップ率Rslipが制限値変化閾値ThRslip以上となったときに、スリップ率Rslipが大きくなっても油圧変化率制限値Lmrpの値がほぼ一定の場合は、図8の時刻ta以降において油圧変化率rpが油圧変化率制限値Lmrpによって補正される。そのため、スリップ率RslipがABS判定用閾値ThABSより僅かに小さい値に長時間に渡って保持されるおそれがある(図8の仮想線参照)。この場合は、長時間に渡って車両の挙動が不安定になるおそれがある。
ところで、通常の制動制御が実行されている状態で運転者が図2の時刻t1においてブレーキペダルに付与する踏力を増大させたときにブレーキECU11が油圧変化率制限制御を実行しない場合を想定する。この場合は図2のグラフ3に示すように、時刻t1以降において油圧Pの油圧変化率rpがグラフ2より大幅に高くなる。即ち、例えば、スリップ率速度ΔRslipが時刻t1以降の所定時間に渡ってスリップ率速度ΔRslip・maxに保持される。
この場合はスリップ率RslipがABS判定用閾値ThABS以下なので、スリップ率Rslipの大きさに拘らずグラフGLΔRslip・maxの摩擦係数μの値は(グラフGLΔRslip・lowと比べて)小さくなる(図4参照)。従って、上記式(1)から明らかなように、制動力Fbの値がある程度の大きさになると、車両にはABS制御が実行される程度の大きさのスリップが発生する。従って、時刻t2aにおいて油圧Pが7.0MpaになったときにABS制御が開始される(図2参照)。
このように油圧Pが7.0Mpaになった時点で通常の制動制御が終了する場合は、本実施形態とは異なり、ABS制御を実行する前に車両が十分に減速されない。そのため、その後にABS制御を行なうと、ABS制御を実行したときの制動距離が長くなってしまう。
なお、ブレーキECU11が油圧変化率制限値Lmrpを用いた油圧変化率制限制御を実行せず且つABS判定用閾値ThABSをスリップ率速度ΔRslipが大きくなるにつれて大きくなる可変値にすることが考えられる。例えば、スリップ率速度ΔRslip・maxのときのABS判定用閾値をThABS−C(図4参照)にした場合を想定する。この場合は、グラフGLΔRslip・maxの摩擦係数μの値が高いときに通常の制動制御を実行可能である。例えば、スリップ率Rslipがスリップ率RslipXのときに通常の制動制御を実行可能である。しかしスリップ率RslipXは高い値であるため、この場合は横摩擦係数μLが小さい状態で通常の制動制御が実行される。そのため、この場合は、本実施形態とは異なり車両の操舵性及び方向安定性が低下し易い。
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、図10のフローチャートからステップS1002を省略してもよい。
10・・・車両用制動制御装置、11・・・ブレーキECU、12・・・車輪速度センサ、13・・・ブレーキアクチュエータ、14・・・油圧センサ、15・・・前後加速度センサ、20・・・ABS制御用マップ(ルックアップテーブル)、21・・・油圧変化率制限値用マップ(ルックアップテーブル)、ThABS・・・ABS判定用閾値、Rslip・・・スリップ率、TgRslip・・・目標スリップ率、ThRslip・・・制限値変化閾値、ΔRslip・・・スリップ率速度、Fb・・・制動力、ThΔRslip・・・油圧変化率制限閾値、rp・・・油圧変化率、Lmrp・・・油圧変化率制限値、μ・・・摩擦係数、μL・・・横摩擦係数、Gfr・・・前後加速度、ThGfr・・・前後加速度閾値。

Claims (1)

  1. 車輪に制動力を及ぼす油圧式制動装置を作動させるための作動油の油圧を調整することにより前記制動力を調整する油圧調整手段と、
    前記油圧の単位時間当たりの変化量である油圧変化率を演算する油圧変化率演算手段と、
    前記車輪のスリップ率及び前記スリップ率の単位時間当たりの変化量であるスリップ率速度を演算するスリップ関連値演算手段と、
    を備え、
    前記油圧調整手段が、
    前記スリップ率が所定の固定値であるABS判定用閾値より大きくなったときに、前記スリップ率が所定の目標スリップ率となるように、前記油圧を制御するアンチスキッド制御を実行可能であり、且つ、前記アンチスキッド制御を実行していないときに前記スリップ率速度が所定の油圧変化率制限閾値より大きくなり且つ所定条件が成立した場合に、前記油圧変化率を小さくするように前記油圧を調整して前記スリップ率速度を小さくするように構成された、
    車両用制動制御装置。
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