以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の実施形態による両頭式筆記具1の斜視図であり、図2は、図1の両頭式筆記具1のキャップ30を外した状態の斜視図であり、図3は、図1の両頭式筆記具1の縦断面図であり、図4は、図1の両頭式筆記具の別の縦断面図である。
両頭式筆記具1は、一端に筆記部3を備えた筆記体である2つのリフィル2と、側面にクリップ11を備えた軸筒10と、2つの取付部材20と、2つのキャップ30とを有している。軸筒10内において、2つのリフィル2の各々は並列に配置されている。両頭式筆記具1は、2つの取付部材20を軸筒10の各々の端部に対して嵌合させて、筆記部3、具体的にはリフィル2を軸筒10に対して取り付けている。嵌合した取付部材20を含めて軸筒10と称してもよい。
「軸線」又は「中心軸線」とは、特に断りのない限り、両頭式筆記具1の中心軸線を意味する。両頭式筆記具1又は軸筒10の軸線方向において、クリップ11が設けられている側とは反対側の端部を第1端部Aと称し、クリップ11が設けられている側の端部を第2端部Bと称する。なお、リフィル2については、筆記部3側を「前」側と規定し、筆記部3とは反対側を「後」側と規定する。
図5は、軸筒10の縦断面図である。軸筒10は、筒状に形成されている。軸筒10の横断面形状は、全体として楕円形状又は扁平形状であるが、矩形であってもよい。軸筒10の横断方向において、クリップ11が設けられている側の側面を第1側面12と称し、クリップ11が設けられている側とは反対側の側面を第2側面13と称する。第1側面12及び第2側面13は、軸線方向に延びる曲面又は複数の平坦面からなり、第1側面12と第2側面13とは、平行に配置された2つの平坦面14によって接続される(図1乃至図4)。クリップ11が対向する第1側面12の部分には、軸線方向に延びる貫通孔15が形成されている。
第1端部Aの開口端近傍の内面には、第1側面12側に第1凹部16が形成され、第2側面13側に第2凹部17が形成されている。第2端部Bの開口端近傍の内面には、第2側面13側に第3凹部18が形成されている。平坦面14の各々の内面には、軸線方向中央よりも第2端部B側の部分において、係合突起19が対向して形成されている。
図6は、取付部材20の斜視図であり、図7は、取付部材20の縦断面図である。取付部材20は、全体として中空の部材であり、軸筒10の内部に挿入されて嵌合する挿入部21と、軸筒10に嵌合した状態で軸筒10の外部に露出する保持部22とを有している。
挿入部21において、取付部材20を軸筒10に取り付けた状態で、軸筒10の係合突起19に対応する位置、すなわち取付部材20の開口端近傍の外面に、幅広の係合凹部23が形成されている。また、挿入部21において、取付部材20を軸筒10に取り付けた状態で、軸筒10の第1凹部16に対応する位置に第1凸部24が形成され、軸筒10の第2凹部17に対応する位置に第2凸部25が形成されている。
保持部22は、先端部26を有している。先端部26は、両頭式筆記具ではない一般的な筆記具の先端と同様の形状をしている。したがって、先端部26は、円筒状の部分に続く截頭円錐状の部分を有し、頂部にリフィル2の筆記部3を突出させるための開口を有している。先端部26の円筒状の部分の外周面には、環状突起27が形成されている。
先端部26は、取付部材20を軸筒10に取り付けた状態で、第1側面12側又は第2側面13側の一方に偏って形成され、対応する第1側面12側又は第2側面13側の他方には、斜面28が形成されている。保持部22の内面には、軸線方向に延びる複数のリブ29が形成されている。保持部22の内面において、先端部26側に形成されたリブ29は、先端部26側に配置されたリフィル2の前端部を保持し、斜面28側に形成されたリブ29は、斜面28側に配置されたリフィル2の後端部を保持する。
図8は、キャップ30の斜視図であり、図9は、キャップ30の縦断面図である。キャップ30は、リフィル2の筆記部3を保護するために覆う部材であり、軸対称形状である。軸対称形状であることにより、キャップ30が外周方向に180°回転を行った状態にしても軸筒10への取り付けをすることができる。キャップ30の一端は開口し、キャップ30の他端は通気口31を除き閉鎖している。キャップ30の開口端は、全体として非円形に形成されている。軸筒10の平坦面14に対応するキャップ30の開口端には、2つの切り欠き部32が形成され、それに続くキャップ30の外面には、滑り止めとして、複数の溝からなる把持部33が形成されている。キャップ30の開口端近傍から離間した内面には、対向する2つの分離壁34が形成されている。分離壁34を含む、略同一横断面状には、複数の微小突起35が形成されている。通気孔31は、幼児等がキャップ30を誤って飲み込んだ際に通気する構造が好適である。リフィル2に収容されたインクが、揮発し易いものである場合は、インクの乾燥を防止するために通気孔31を設けなくてもよい。
次に、両頭式筆記具1の組み立てについて説明する。図3に示されるように、軸筒10内において、一方のリフィル2は、第1側面12側に配置され、その筆記部3は、第1端部Aから外方へ突出している。他方のリフィル2は、第2側面13側に配置され、その筆記部3は、第2端部Bから外方へ突出している。したがって、両頭式筆記具1において、いずれのリフィル2、すなわちいずれの筆記部3も、軸筒10の中心軸線から離間した位置に配置され、中心軸線とは一致していない。なお、軸筒10内において、第1側面12側に配置されたリフィル2の筆記部3を第2端部Bから外方へ突出させ、第2側面13側に配置されたリフィル2の筆記部3を第1端部Aから外方へ突出させるように構成してもよい。
リフィル2は、2つの取付部材20によって保持されることによって、軸筒10内に固定される。すなわち、図3において、第1側面12側に配置されたリフィル2において、前端部が軸筒10の第1端部Aに嵌合する取付部材20の先端部26側のリブ29によって保持され、且つ、後端部が軸筒10の第2端部Bに嵌合する取付部材20の斜面28側のリブ29によって保持される。他方、第2側面13側に配置されたリフィル2において、前端部が軸筒10の第2端部Bに嵌合する取付部材20の先端部26側のリブ29によって保持され、且つ、後端部が軸筒10の第1端部Aに嵌合する取付部材20の斜面28側のリブ29によって保持される。
キャップ30は、取付部材20の先端部26と嵌合する。詳細には、キャップ30の微小突起35が、先端部26の環状突起27を乗り越えて係合することによって取付部材20とキャップ30とが嵌合する。キャップ30の微小突起35は、キャップ30の開口端近傍から離間した内側に形成されている。言い換えると、キャップ30と、取付部材20、すなわち軸筒10との嵌合位置が、キャップ30の開口端近から離間している。そのため、仮にキャップ30の開口端が変形したとしても、開口端よりも内側の微小突起35が配置されているキャップ30の部分は変形しない。したがって、キャップ30の開口端の変形は、取付部材20の先端部26とキャップ30との嵌合に影響を与えることはなく、キャップ30を軸筒10に対してしっかりと嵌合させることができる。
嵌合位置が、キャップ30の開口端近から離間しているとは、嵌合位置が、キャップ30の嵌合位置近傍が変形しない程度に開口端又は開口端近傍から離間している、例えば筆記部3近傍又は筆記部3寄りにあることをいう。よって、嵌合位置が、キャップ30の開口端近から離間している限りにおいて、突起の構成及び配置は任意に採用しうる。
キャップ30は、軸筒10の両方の端部、すなわち両方の端部に嵌合した取付部材20の各々に嵌合可能である。キャップ30が取付部材20と嵌合した状態では、リフィル2及び対応する先端部26は、キャップ30内において、分離壁34に隔てられた一方の側に配置される。キャップ30と取付部材20との間で画成される内部空間は、1200mm2未満であることが好ましい。
図10は、図3におけるX部、すなわち第1端部Aの拡大図である。図10に示されるように、軸筒10の第1凹部16は、開口端近傍に形成された凹部16aと、凹部16aよりも軸筒10の内部に形成された係合突起16bとを有している。軸筒10の第2凹部17は、開口端近傍に形成された凹部17aと、凹部17aよりも軸筒10の内部に形成された係合突起17bとを有している。第1凹部16の凹部16aは、第2凹部17の凹部17aと比べて、軸線方向長さがより短くなるように形成されている。なお、第3凹部18にも、第1凹部16と同様の凹部18aが開口端近傍に形成されている(図5)。
取付部材20の第1凸部24は、第1凹部16の凹部16aと相補的に形成された突起24aと、突起24aよりも開口端側に形成された係合突起24bとを有している。取付部材20の第2凸部25は、第2凹部17の凹部17aと相補的に形成された突起25aと、突起25aよりも開口端側に形成された係合突起25bとを有している。
図10に示されるように、取付部材20を軸筒10に取り付けた状態では、軸筒10の第1側面12側において軸筒10の係合突起16bと取付部材20の係合突起24bとが係合し、且つ、軸筒10の第2側面13側において軸筒10の係合突起17bと取付部材20の係合突起25bとが係合している。それによって、第1端部Aに嵌合した取付部材20は軸筒10から容易には抜けないように構成される。取付部材20の係合突起24b及び係合突起25bは、軸筒10と係合する第1係合部を構成する。
取付部材20を、中心軸線回りに180度回転させた状態では、例えば、第1端部Aの取付部材20の先端部26が第2側面13側に配置された状態では、取付部材20を軸筒10に対して嵌合させることができない。すなわち、図10に示されるように、第1凹部16の凹部16aは、第2凹部17の凹部17aと比べて、軸線方向長さがより短くなるように形成されている。したがって、この状態で取付部材20を軸筒10内に挿入しようとしたとしても、第2凸部25の突起25aが、第1凹部16の凹部16aの壁面と当接し、取付部材20の挿入が阻止される。
同様に、取付部材20を軸筒10の第2端部Bに対して嵌合させる場合、取付部材20の第1凸部24が軸筒10の第3凹部18側に配置される状態だと嵌合可能であるが、取付部材20の第2凸部25が、軸筒10の第3凹部18側に配置される状態だと、嵌合させることができない。したがって、取付部材20が、軸筒10の中心軸線回りにおいて、所定の位置でのみ軸筒10に対して嵌合するように形成されている。その結果、軸筒10に対する取付部材20の誤った向きの嵌合を防止し、取付部材20を意図した向きに嵌合させることができる。
図11は、図4におけるY部の拡大図である。上述したように、平坦面14の各々の内面には、軸線方向中央よりも第2端部B側の部分において、係合突起19が対向して形成されている。このため、図11に示されるように、第2端部Bに挿入された取付部材20は、係合凹部23と軸筒10の係合突起19とが係合する。それによって、第2端部Bに嵌合した取付部材20は軸筒10から容易には抜けないように構成される。取付部材20の係合凹部23は、軸筒10と係合する第2係合部を構成する。なお、第1端部Aに挿入された取付部材20は、対応する軸筒10の内面に係合突起19が形成されていないため、係合凹部23と軸筒10とが係合することはない。
以上より、取付部材20が、第1係合部と第2係合部とを有し、取付部材20の一方が第1係合部によって軸筒10と係合し、取付部材20の他方が第2係合部によって軸筒10と係合している。そのため、取付部材20の各々に製造時の寸法のばらつきがあったとしても、軸筒10との係合位置が互いに異なることから、その影響を最小限に抑えることが可能となる。その結果、取付部材20と軸筒10との間のがたつきがないという効果を奏する。また、こうした効果を奏する限りにおいて、同一の形状を有する2つの取付部材20において、第1係合部と第2係合部の構成及び配置は任意に採用しうる。上述した実施形態において、第1係合部と第2係合部とは、軸線方向において離間して配置されている。
図1に示されるように、軸筒10に対してキャップ30を嵌合させた状態で、キャップ30の切り欠き部32から取付部材20の一部が露出している。このため、取付部材20を、取付部材20が保持するリフィル2に収容されたインクと同色とすることによって、軸筒10に対してキャップ30を嵌合させた状態であっても、キャップ30によって覆われている筆記部3のインク色を知ることが可能となる。図3に示されるように、両頭式筆記具1は、2つのリフィル2が、軸線方向の大部分に亘り、並列した状態で軸筒10内に配置されている。したがって、両頭式筆記具1は、軸筒内に1本のリフィルを収容する通常の筆記具と同一のリフィルを使用しながら、略同一の全長で構成することができる。
2つのリフィル2を並列させることによって、軸筒10の外面に、通常の筆記具の軸筒よりも広い面積を有する平坦面14を形成することができる。その結果、平坦面14に様々なデザインを施すことが可能となる。平坦面14には、例えば贈答用に名入れを施してもよい。また、宣伝広告等の目的のため、会社名称や会社のロゴ等を施してもよい。なお、図1及び図2に示されるように、軸筒10の貫通孔15から取付部材20の外面が露出している。この露出する取付部材20の外面に、さらにデザインを施してもよい。さらに、両頭式筆記具1を複数のセットとすることによって、一連一体となるデザインを施してもよい。
図12は、両頭式筆記具セット100の正面図である。両頭式筆記具セット100には、複数の両頭式筆記具1の各々の軸筒10、具体的には平坦面14に、同一配向で隣接配置すると一連一体となるデザイン101が施されている。ここでデザインとは、文字、記号、絵、形状(立体形状含む。)、模様若しくは色彩又はこれらの結合等をいう。両頭式筆記具セット100は、3つの両頭式筆記具1から構成されるが、2つ又は4つ以上の両頭式筆記具1から構成されるようにしてもよい。デザイン101の例として、図12には、アルファベットの「NA」が示されている。
両頭式筆記具セット100の複数の両頭式筆記具1の各々に、それ単体で完成するような異なるデザインを設けてもよい。例えば、2つの両頭式筆記具1を備えた両頭式筆記具セット100において、一方の両頭式筆記具1の軸筒10に男の子の絵を配置し、他方の両頭式筆記具1の軸筒10に女の子の絵を配置し、これらを並べると、男の子と女の子とが仲良く並んでいるようなデザインにしてもよい。また、複数の両頭式筆記具1の各々にアルファベット1文字を配置し、これらを隣接配置することによって自分の名前となるようにしてもよい。
デザイン101は、例えば、フィルムの転写によって施される。転写フィルムを、白色ベタ層を有しないインクジェット方式で像形成することによって、優れた装飾性を備えたノベルティー効果の高い両頭式筆記具セット100とすることができる。デザイン101を、塗装や刻印等によって施してもよい。
両頭式筆記具セット100をより綺麗に配列し且つ店頭に陳列するため、両頭式筆記具セット100を筆記具ケースに収容してもよい。筆記具ケースは、一連一体となったデザイン101が視認可能なように、少なくとも正面が透明な箱形状のケースであってもよい。なお、筆記具ケースは、その一部を透明にしてデザイン101を視認可能とする限りにおいて、箱形状ではなく、封筒のような矩形の袋状であってもよく、その他形状であってもよい。
筆記具ケースに用いる材料は、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の樹脂材料やガラス材料から構成されるものであり、可視光線透過率が50%以上、より好ましくは80%以上となる材料から構成されることが望ましい。可視光線透過率は、多光源測色計を用いて反射率を測定することで求めることができる。さらに、紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物などを含ませることによって、印刷されたデザイン101への変色、退色を防ぐことができる。
両頭式筆記具セット100によれば、複数の両頭式筆記具1を隣接配置したときにデザインに一体感があり、ユーザーに両頭式筆記具1を複数本セットにして購入したいという意欲を生じさせる効果を奏する。
リフィル2として、ボールペン用リフィル、マーキングペン、タッチペン、消しゴム又は摩擦体等のその他種類のリフィルとしてもよい。2つのリフィル2は、互いに異なる色、互いに異なる筆跡幅(ボール径)等を組み合わせてもよい。また、キャップ30を両頭式筆記具1による筆跡を消去するための消去部材としてもよい。
リフィル2の少なくとも1つを、熱変色性色材を含有する熱変色性インクを収容したリフィルとしてもよい。この場合、両頭式筆記具1は熱変色性筆記具であり、キャップ30を消去部材としての摩擦体としてもよい。両頭式筆記具1による筆跡は、キャップ30によって擦過した際に生じる摩擦熱等によって、熱変色可能である。
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば−5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた両頭式筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
熱変色性色材となる熱変色性マイクロカプセル顔料としては、摩擦熱等の熱により変色するもの、例えば、有色から無色、有色から有色、無色から有色などとなる機能を有するものであれば、特に限定されず、種々のものを用いることができ、少なくともロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、マイクロカプセル化したものが挙げられる。
用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という。)用いることができる。
具体的には、6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−エチルイソアミルアミノフルオラン、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(N−フェニル−N-−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3’−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、3−メトキシ−4−ドデコキシスチリノキノリン、などが挙げられる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
用いることができる顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化合物、固体酸系化合物等が挙げられる。
具体的には、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス( 4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどの少なくとも1種が挙げられる。
用いる顕色剤の使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、上述したロイコ色素1質量部に対して、0.1〜100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
用いることができる変色温度調整剤は、上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
より具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C7H15)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C11H23)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C13H27)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C13H27)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C15H30)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C21H43)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C13H27)等の少なくとも1種が挙げられる。
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して、1〜100質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
熱変色性マイクロカプセル顔料は、少なくとも上記ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、平均粒子径が0.2〜5μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、イソシアネート系樹脂溶液などを徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
これらのロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、当該色素1に対して、質量比で顕色剤0.1〜100、変色温度調整剤1〜100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1〜1である。
熱変色性マイクロカプセル顔料は、上記ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度(例えば、0℃以上で発色)、消色温度(例えば、50℃以上で消色)を好適な温度に設定することができ、摩擦熱等の熱により有色から無色となることが好ましい。
熱変色性マイクロカプセル顔料では、描線濃度、保存安定性、筆記性の更なる向上の点から、壁膜がウレタン樹脂、ウレア/ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアミノ樹脂で形成されることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネートとポリオールとの化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアミンの化合物が挙げられる。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。マイクロカプセル色材の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性、インク中での流動性の点、並びに、筆記性への悪影響を抑制、後述する光変色性マイクロカプセル顔料との相用性などの点から、好ましくは、0.2〜5μm、さらに好ましくは、0.3〜3μmである。なお、ここで規定する「平均粒子径」は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320−X100(日機装社製)〕にて、平均粒子径(50%径)を測定(屈折率1.8)した値である。
この平均粒子径が0.2μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、5μmを越えると、筆記性の劣化、熱変色性マイクロカプセル顔料の分散安定性の低下、振動によるインクバックが発生しやすくなり好ましくない。さらには90%径が8μm以下、好ましくは6μm以下である。径が大きい粒子が一定割合以上存在すると、上述した影響がより顕著になる傾向がみられる。なお、上述した平均粒子径の範囲(0.2〜5μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
熱変色性マイクロカプセル顔料の比重は、0.9〜1.3、好ましくは1.0〜1.2の範囲である。比重がこの範囲外であると、マイクロカプセル顔料の分散安定性が低下しやすい。また、比重が1.3を超えるマイクロカプセル顔料は、振動によってインクバックが発生しやすい。
筆記具用水性インク組成物において、上記熱変色性マイクロカプセル顔料の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、その効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、単独或いは混合して使用することができる。
これらのうち、インクバックによる筆記部でのインク固化を抑制する目的として、グリセリンを用いることが好ましく、その添加量はインク全量に対して1〜10質量%であることが好ましい。グリセリンによる作用のメカニズムは不明だが、乾燥状態における顔料及びインク成分との凝集力を低下させる効果があるものと推察される。
用いることができる増粘剤としては、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
これらのうち、多糖類を使用することが好ましい。多糖類はそのレオロジー特性から、振動による流動性への影響を受けにくい傾向があり、インクバックに起因する筆記不良等の不具合が生じにくい。特にキサンタンガムは、筆記具インクに要求されるその他の特性とのバランスに優れており好ましい。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類などが挙げられる。防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
この筆記具用水性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記熱変色性、光変色性マイクロカプセル顔料の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。さらに必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
筆記具用水性インク組成物の粘度値は、25℃、剪断速度3.83/sにおいて、500〜2000mPa・s、剪断速度383/sにおいて20〜100mPa・sであることが好ましい。上記粘度範囲に設定することによって、筆記性と経時安定性に優れたインクとすることができる。さらに、S=αDn(但し、1>n>0)(Sは剪断応力(dyn/cm2)、Dは剪断速度(s-1)、αは非ニュートン粘性係数)で示される粘性式で求められる非ニュートン粘性指数nが、0.2〜0.6であることが好ましい。上記粘度範囲に加えて非ニュートン粘性指数nを上記範囲とすることで、振動に対するインクの流動性を適切に設定することが可能となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
筆記具用水性インク組成物の表面張力は、25〜45mN/m、さらには30〜40mN/mであることが好ましい。この範囲内であれば、ペン先内部とインクの濡れ性のバランスが適切となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
リフィル内においては、インクのすぐ後方にインク追従体を配置してもよい。追従体を構成する材料としては、少なくとも、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、増粘剤とにより構成することができる。インク追従体に使用する不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、インク追従体の基油として用いるものであり、例えば、流動パラフィンが用いられる。流動パラフィンには、鉱物油、化学合成油が用いられ、化学合成油としては、ポリブテン、ポリα−オレフィン、エチレンα−オレフィンオリゴマーなどを用いることができる。
用いることができる具体的な鉱物油としては、例えば、市販品のダイアナプロセスオイルNS−100、PW−32、PW−90、NR−68、AH−58(出光興産社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なポリブテンとしては、例えば、市販品のニッサンポリブテン200N、ポリブテン30N、ポリブテン10N、ポリブテン5N、ポリブテン3N、ポリブテン015N、ポリブテン06N、ポリブテン0N(以上、日本油脂社製)、ポリブテンHV−15(日本石油化学社製)、35R(出光興産社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なポリα−オレフィンとしては、例えば、市販品のバーレルプロセス油P−26、P−46,P−56、P−150,P−350,P−1500、P−2200、(P−10000、P−37500)(松村石油社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なエチレンα−オレフィンオリゴマーとしては、例えば、市販品のルーカント HC−10、HC−20、HC−100、HC−150、(HC−600、HC−2000)(以上、三井化学社製)などが挙げられる。
これらの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができる。
インク追従体に使用する増粘剤としては、例えば、リン酸エステルのカルシウム塩、微粒子シリカ、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマー、水添スチレン−ブタジエンラバー、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー及びアセトアルコキシアルミニウムジアルキレートなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上用いることができる。
用いることができるリン酸エステルのカルシウム塩の好ましい市販品としては、CrodaxDP−301LA(クローダジャパン社製)等が挙げられる。用いることができる微粒子シリカは、親水性微粒子シリカと疎水性微粒子シリカがあり、親水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL−300、AEROSIL−380(日本アエロジル社製)等が挙げられ、また、疎水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL−974D、AEROSIL−972(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
また、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGFG−1901X、クレイトンGG−1650(以上、シェルジャパン社製)、セプトン8007、セプトン8004(以上、クラレ社製)などが挙げられる。さらに、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGG−1730(シェルジャパン社製)、セプトン2006、セプトン2063(以上、クラレ社製)などが挙げられる。
水添スチレン−ブタジエンラバーの好ましい市販品としては、DYNARON1320P、DYNARON1321P(以上、JSR社製)、タフテックHl041、タフテックHl141(以上、旭化成工業社製)などが挙げられる。
スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON4600P(JSR社製)等が挙げられ、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON6200P、DYNARON6201B(JSR社製)等が挙げられる。
アセトアルコキシアルミニウムジアルキレートの好ましい市販品としては、プレンアクトAL−M(味の素ファインテクノ社製)などが挙げられる。
これらの増粘剤の中で、本発明の効果をさらに発揮させる点から、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーなどの熱可塑性オレフィン系エラストマーの使用が好ましい。
さらに、インクバックの発生を防止するインク追従体を得る点から、周波数領域1〜63rad/sで指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることが好ましく、1.7〜3.4とすることがさらに好ましい。
ここで、tanδは、損失弾性率/貯蔵弾性率を意味する値であり、従来では、周波数領域「1〜63rad/s」で指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以下のものが好ましいことが知られていた。本発明では、上記1〜63rad/sで各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることにより、振動を吸収してインクバックの発生を防止することが可能となる。
熱変色性インクを変色させる摩擦体を形成する材料として、ポリアセタールやポリプロピレン等の合成樹脂、ゴム弾性材料と上記合成樹脂との混合物を用いることができ、これを、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)で荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS−17でのテーバー摩耗量が25mg未満となるように構成し、摩擦体を形成する。
また、摩擦体の表面は、JIS K 7215−1986に規定されたデュロメータD硬度が50以上、80未満であることが好ましい。それによって、軸筒に嵌合して筆記部を保護するというキャップの機能、及び、筆跡を変色させる摩擦体の機能に適した硬さが確保でき、より安定した擦過動作が可能となる。なお、摩擦体は、タッチペン、スタイラスペンとしても適用可能であり、導電性を付与してもよい。
また、摩擦体は、リフィルに収容された熱変色性インクの色よりも明度値が低い色で着色されていることが好ましい。すなわち、摩擦体の使用時に熱変色性インクが変色することなく摩擦体の表面に転写した場合に、熱変色性インクの転写を目立たなくすることができる。特に、摩擦体の色を黒色又は明度値が2.5以下とすることによって、摩擦体の使用に伴う表面の汚れも目立たなくすることができる。
明度値は汎用型色差計(TC−8600A、東京電色株式会社製)等の測定装置を用いてマンセル表色系を使用し、摩擦体の明度値は表面を測定し、熱変色性インクの明度値は、紙面(旧JIS P3201;化学パルプ100%を原料に抄造された上質紙、坪量範囲40〜157g/m2、白色度75.0%以上)上に筆記速度4.5m/min、ピッチ間隔0.1mmで筆記した描線上のインクを測定することによって求められる。
また、上述した実施形態におけるリフィル2の少なくとも1つを、鉛筆芯又は消しゴム消去性インクを収容するリフィルとし、残りのリフィル2を、熱変色性インクを収容したリフィルとしてもよい。この場合、キャップ30を、プラスチック字消し又は消しゴムとすることによって、シャープペンシル芯、鉛筆芯又は消しゴム消去性インクによる筆跡が消去可能となる。さらに、プラスチック字消し又は消しゴムを用いて熱変色性インクによる筆跡を擦過し、摩擦熱を生じさせることによって筆跡を熱変色させることもできる。
したがって、プラスチック字消し又は消しゴムは、異なる種類の筆跡のための消去部材として使用可能、すなわち、鉛筆芯又は消しゴム消去性インクによる筆跡を消去する消去部材、及び、熱変色性インクの筆跡を熱変色させる(消去する)摩擦体として使用可能である。なお、ここでいう、プラスチック字消し又は消しゴムを用いて筆跡を消去可能とは、プラスチック字消し又は消しゴムで筆跡を擦過することによって、筆跡の周囲の紙面等を汚すことなく筆跡を消去可能であることをいう。
鉛筆芯は、例えば、焼成前の配合組成物として無機顔料、有機顔料、染料から選ばれる少なくとも1種の微粒子(但し、ガラス粉体を除く)を分散又は内包させた平均厚さ0.1〜2μm、アスペクト比5〜150であり、且つ、平面度が200nm以下のフレーク状であるガラス粉体又は平均粒径0.1〜50μm、真球度0.1〜50μmの粒状であるガラス粉体を鉛筆芯全量に対して、3〜80重量%含有することが好ましい。
消しゴム消去性インクは、平均粒子径が2〜20μmであり、且つ、非熱可塑性である着色樹脂粒子をインク組成物全量に対して5〜30重量%と、ガラス転移点が0℃未満である非着色粒子とを少なくとも含有することが好ましい。なお、ここで規定する「平均粒子径」は、上述したように、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320−X100(日機装社製)〕にて、平均粒子径(50%径)を測定(屈折率1.8)した値である。
この場合、摩擦体は、前述の摩擦体に加え、ガラス転移温度(Tg)の比較的高いシェルと、該シェルよりガラス転移温度(Tg)の比較的低いコアで構成されている一次粒径が20〜80μmであるアクリル系熱可塑性樹脂粉末、可塑剤及び無機粉体と熱可塑性樹脂を含有し、その熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂又はその共重合体であり、無機粉体が炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムであるものが、熱変色性インクの筆跡と消去可能なインクの筆跡を共に擦過により作用させることができるので好ましい。なお、「ガラス転移温度(Tg)」とは、アクリル樹脂粉末の非結晶部分の運動性が大きくなりゴム状態になる境目の温度をいう。