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JP2019135694A - 有機elディスプレイ用の反射アノード電極 - Google Patents

有機elディスプレイ用の反射アノード電極 Download PDF

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JP2019135694A JP2018018432A JP2018018432A JP2019135694A JP 2019135694 A JP2019135694 A JP 2019135694A JP 2018018432 A JP2018018432 A JP 2018018432A JP 2018018432 A JP2018018432 A JP 2018018432A JP 2019135694 A JP2019135694 A JP 2019135694A
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Abstract

【課題】Al合金反射膜をITOやIZOなどの酸化物導電膜と直接接触させても、低い接触抵抗と高い反射率を確保することができる、新規なAl合金反射膜を備えた有機ELディスプレイ用の反射アノード電極を提供する。【解決手段】Al−Ge系合金膜と、Al−Ge系合金膜に接触する酸化物導電膜とを備える積層構造からなり、これらの接触界面に酸化アルミニウムを主成分とする層が介在する有機ELディスプレイ用の反射アノード電極であって、Al−Ge系合金膜は、Geを0.1〜2.5原子%含有するとともに、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜との接触界面には、Ge濃化層およびGe含有析出物が形成されており、Al−Ge系合金膜における、酸化物導電膜側の表面から50nm以内の平均Ge濃度が、Al−Ge系合金膜中の平均Ge濃度の2倍以上であり、かつ、Ge含有析出物の平均直径が0.1μm以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、有機ELディスプレイ(特に、トップエミッション型)において使用される反射アノード電極、薄膜トランジスタ基板、有機ELディスプレイおよびスパッタリングターゲットに関する。
自発光型のフラットパネルディスプレイの1つである有機EL(有機エレクトロルミネッセンス;Organic Electro−Luminescence)ディスプレイは、ガラス板などの基板上に有機EL素子をマトリックス状に配列して形成した全固体型のフラットパネルディスプレイである。有機ELディスプレイでは、陽極(アノード)と陰極(カソード)とがストライプ状に形成されており、それらが交差する部分が画素(有機EL素子)にあたる。この有機EL素子に外部から数Vの電圧を印加して電流を流すことで、有機分子を励起状態に押し上げ、それが元の基底状態(安定状態)へ戻るときにその余分なエネルギーを光として放出する。この発光色は有機材料に固有のものである。
有機EL素子は、自己発光型および電流駆動型の素子であるが、その駆動方式にはパッシブ型とアクティブ型がある。パッシブ型は構造が簡単であるが、フルカラー化が困難である。一方、アクティブ型は大型化が可能であり、フルカラー化にも適しているが、アクティブ型には薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)基板が必要である。なお、このTFT基板には低温多結晶Si(p−Si)もしくはアモルファスSi(a−Si)などのTFTが使われている。
このアクティブ型の有機ELディスプレイの場合、複数のTFTや配線が障害となって、有機EL画素に使用できる面積が小さくなる。駆動回路が複雑となりTFTが増えてくると、さらにその影響は大きくなる。最近では、ガラス基板から光を取り出すのではなく、上面側から光を取り出す構造(トップエミッション)にすることで、開口率を改善する方法が注目されている。
トップエミッションでは、下面の陽極(アノード)には正孔注入に優れるITO(酸化インジウムスズ;Indium Tin Oxide)が用いられる。また、上面の陰極(カソード)にも透明導電膜を使う必要があるが、ITOは、仕事関数が大きく電子注入には適さない。さらにITOは、スパッタ法やイオンビーム蒸着法で成膜するため、成膜時のプラズマイオンや電子二次電子が電子輸送層(有機EL素子を構成する有機材料)にダメージを与えることが懸念される。そのため薄いMg層や銅フタロシアニン層を電子輸送層上に形成することで、ダメージの回避と電子注入改善が行われる。
このようなアクティブマトリックス型のトップエミッション有機ELディスプレイで用いられるアノード電極は、有機EL素子から放射された光を反射する目的を兼ねて、ITOやIZO(酸化インジウム亜鉛;Indium Zinc Oxide)に代表される透明酸化物導電膜と反射膜との積層構造とされる(反射アノード電極)。この反射アノード電極で用いられる反射膜は、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)や銀(Ag)などの反射性金属膜であることが多い。例えば、既に量産されているトップエミッション方式の有機ELディスプレイにおける反射アノード電極には、ITOとAg合金膜との積層構造が採用されている。
反射率を考慮すれば、AgまたはAgを主体として含むAg基合金は反射率が高いため、有用である。なお、Ag基合金は、耐食性に劣るという特有の課題を抱えているが、その上に積層されるITO膜で当該Ag基合金膜を被覆することにより、上記課題を解消することができる。しかし、Agは材料コストが高いうえ、成膜に必要なスパッタリングターゲットの大型化が難しいという問題があるため、Ag基合金膜を、大型テレビ向けにアクティブマトリックス型のトップエミッション有機ELディスプレイ反射膜に適用するのは困難である。
一方、反射率のみを考慮すれば、Alも反射膜として良好である。例えば特許文献1には、反射膜としてAl膜またはAl−Nd膜が開示されており、Al−Nd膜は反射率が優秀で望ましい旨が記載されている。
しかし、Al反射膜をITOやIZOなどの酸化物導電膜と直接接触させた場合は、接触抵抗(コンタクト抵抗)が高く、有機EL素子への正孔注入に充分な電流を供給することができない。それを回避するために、反射膜に、AlではなくMoやCrの高融点金属を採用したり、Al反射膜と酸化物導電膜との間にMoやCrの高融点金属をバリアメタルとして設けると、反射率が大幅に劣化し、ディスプレイ特性である発光輝度の低下を招いてしまう。
そこで特許文献2では、バリアメタルを省略できる反射電極(反射膜)として、Niを0.1〜2原子%含有するAl−Ni合金膜が提案されている。これによれば、純Al並みの高い反射率を有し、かつ、Al反射膜をITOやIZOなどの酸化物導電膜と直接接触させても低い接触抵抗を実現できる。
また特許文献2と同様に、バリアメタルを省略できる反射電極(反射膜)として、特許文献3では、Agを0.1〜6原子%含有するAl−Ag合金膜が提案されている。あるいは、特許文献4では、Geを0.05〜0.5原子%含有し、Gdおよび/またはLaを合計で0.05〜0.45原子%含有するAl−Ge−(Gd,La)合金膜が提案されている。
特開2005−259695号公報 特開2008−122941号公報 特開2011−108459号公報 特開2008−160058号公報
ところで、トップエミッション型の有機ELディスプレイにおいて、アノード電極としてAl合金を使用した場合、酸素存在雰囲気下で不可避的にAl合金表面に生成される絶縁性酸化膜(酸化アルミニウムを主成分とする層)が原因で、電流が流れにくくなるという問題がある。この場合、所定値以上の電流を流そうとすると、電流を流すのに必要な電圧値が高くなるため、同じ発光強度を維持する場合、消費電力が高くなってしまうという問題がある。
また、アノード電極に要求される特性として、アノード電極を構成するAl合金反射膜自体の電気抵抗率が低いことが挙げられる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、Al合金反射膜をITOやIZOなどの酸化物導電膜と直接接触させても、Al合金反射膜自体の電気抵抗率を低く抑えつつ、低い接触抵抗と高い反射率を確保することができる、新規なAl合金反射膜を備えた有機ELディスプレイ用の反射アノード電極を提供することにある。
上記課題を解決する本発明に係る有機ELディスプレイ用の反射アノード電極は、Al−Ge系合金膜と、前記Al−Ge系合金膜に接触する酸化物導電膜とを備える積層構造からなり、前記Al−Ge系合金膜と前記酸化物導電膜との接触界面に酸化アルミニウムを主成分とする層が介在する有機ELディスプレイ用の反射アノード電極であって、前記Al−Ge系合金膜は、Geを0.1〜2.5原子%含有するとともに、前記Al−Ge系合金膜と前記酸化物導電膜との接触界面には、Ge濃化層およびGe含有析出物が形成されており、前記Al−Ge系合金膜における、前記酸化物導電膜側の表面から50nm以内の平均Ge濃度が、前記Al−Ge系合金膜中の平均Ge濃度の2倍以上であり、かつ、前記Ge含有析出物の平均直径が0.1μm以上であることを特徴とする。
本発明の好ましい実施形態において、前記Al−Ge系合金膜は、Cu:0.05〜2.0原子%をさらに含有する。
本発明の好ましい実施形態において、前記Al−Ge系合金膜は、希土類元素:0.2〜0.5原子%をさらに含有する。
本発明の好ましい実施形態において、前記酸化物導電膜の膜厚が5〜30nmである。
本発明の好ましい実施形態において、前記Al−Ge系合金膜がスパッタリング法または真空蒸着法で形成される。
本発明の好ましい実施形態において、前記Al−Ge系合金膜が、薄膜トランジスタのソース・ドレイン電極に電気的に接続されている。
また本発明には、上記いずれかの反射アノード電極を備えた薄膜トランジスタ基板や、当該薄膜トランジスタを備えた有機ELディスプレイも含まれる。
更に本発明には、上記いずれか1つに記載のAl−Ge系合金膜を形成するためのスパッタリングターゲットであって、Geを0.1〜2.5原子%含有するか;または、Geを0.1〜2.5原子%含有し、かつ、Cu:0.05〜2.0原子%および希土類元素:0.2〜0.5原子%のうち少なくとも一方を含有するスパッタリングターゲットも含まれる。
本発明に係る有機ELディスプレイ用の反射アノード電極によれば、反射膜として所定量のGeを含有するAl−Ge系合金膜を用いるとともに、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜の接触界面にはGe濃化層およびGe含有析出物が形成されており、更に、Al−Ge系合金膜における、酸化物導電膜側の表面から50nm以内の平均Ge濃度、およびGe含有析出物の平均直径が所定の要件を満足するため、ITOやIZOなどの酸化物導電膜と直接接触させても、Al合金反射膜自体の電気抵抗率を低く抑えつつ、低い接触抵抗と高い反射率を確保することができる。
また、本発明に係る反射アノード電極を用いれば、有機発光層に効率よく電流を流すことができ、更に有機発光層から放射された光を反射膜で効率よく反射できるので、発光輝度に優れた有機ELディスプレイを実現することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る反射アノード電極を備えた有機ELディスプレイを示す概略図である。 図2は、Al合金反射膜と酸化物導電膜との接触抵抗測定に用いたケルビンパターンを示す図である。 図3Aは、実施例の試験No.6に係る反射アノード電極の電流−電圧特性を示すグラフである(導電が確保できた例:オーミック)。 図3Bは、実施例の試験No.2に係る反射アノード電極の電流−電圧特性を示すグラフである(導電が確保できなかった例:非オーミック)。 図4Aは、酸化物導電膜(透明導電膜)を構成するITO膜と、Al−0.6Ni−0.5Cu−0.35La−1.0Ge(単位:原子%)合金膜との接触界面に形成されたGe濃化層の例(実施例の試験No.6)を示す断面TEM写真である。 図4Bは、実施例の試験No.6のEDX半定量結果を示す図である(ポイントは、図4AのTEM写真中の各ポイントを示す)。 図5Aは、図4A中、ポイント1−1の化学組成をEDX分析した結果を示す図である。 図5Bは、図4A中、ポイント1−2の化学組成をEDX分析した結果を示す図である。 図5Cは、図4A中、ポイント1−3の化学組成をEDX分析した結果を示す図である。 図5Dは、図4A中、ポイント1−4の化学組成をEDX分析した結果を示す図である。 図5Eは、図4A中、ポイント1−5の化学組成をEDX分析した結果を示す図である。 図6は、XPS分析により、実施例の試験No.6における酸化物導電膜からAl合金反射膜までの深さ方向の組成分析を行った結果を示す図である。なお、図中の横軸はスパッタ深さ(nm)を示し、縦軸は原子濃度(原子%)を示す。 図7は、実施例の試験No.6における、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜との接触界面に形成されたGe含有析出物を示す平面SEM写真である。
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
(有機ELディスプレイ)
まず、図1を用いて、本実施形態の反射アノード電極を用いた有機ELディスプレイの概略を説明する。以下では、本実施形態に用いられるAl−Ge合金、Al−Ge−Cu合金、Al−Ge−X合金、Al−Ge−Cu−X合金(ただし、Xは、Niまたは希土類元素)をまとめて「Al−Ge系合金」で代表させる場合がある。
基板1上にTFT2およびパシベーション膜3が形成され、さらにその上に平坦化層4が形成される。TFT2上にはコンタクトホール5が形成され、コンタクトホール5を介してTFT2のソース・ドレイン電極(図示せず)とAl−Ge系合金膜6とが電気的に接続されている。
Al−Ge系合金膜は、好ましくはスパッタ法によって成膜することが好ましい。スパッタ法の好ましい成膜条件は以下の通りである。
基板温度:25℃以上、200℃以下(より好ましくは150℃以下)
Al−Ge系合金膜の膜厚:50nm以上(より好ましくは100nm以上)、300nm以下(より好ましくは200nm以下)
Al−Ge系合金膜6の直上に酸化物導電膜7が形成される。Al−Ge系合金膜6および酸化物導電膜7は、有機EL素子の反射電極として作用し、かつ、TFT2のソース・ドレイン電極に電気的に接続されており、アノード電極として働く。よって、Al−Ge系合金膜6および酸化物導電膜7が、本実施形態の反射アノード電極を構成する。
酸化物導電膜は、好ましくはスパッタ法によって成膜することが好ましい。スパッタ法の好ましい成膜条件は以下の通りである。
基板温度:25℃以上、150℃以下(より好ましくは100℃以下)
酸化物導電膜の膜厚:5nm以上(より好ましくは10nm以上)、30nm以下(より好ましくは20nm以下)
酸化物導電膜7の上に有機発光層8が形成され、更にその上にカソード電極9が形成される。このような有機ELディスプレイでは、有機発光層8から放射された光が本実施形態の反射アノード電極で効率よく反射されるので、優れた発光輝度を実現できる。なお、反射率は高いほどよく、一般的には75%以上、好ましくは80%以上の反射率が求められる。
ここで、反射膜であるAl−Ge系合金膜上に酸化物導電膜を直接接触させるに当たっては、以下の方法が好ましく用いられる。
Al−Ge系合金膜→酸化物導電膜を順次成膜した後に、真空または不活性ガス(例えば窒素)雰囲気下、150℃以上の温度で熱処理する。なお、本明細書では、酸化物導電膜形成後に、反射アノード電極(Al−Ge系合金膜+酸化物導電膜)を熱処理することを「ポストアニール」と呼ぶ場合がある。
これにより、酸化物導電膜の透明性が向上し、反射率が向上するとともに、以下で詳述するGe濃化層およびGe含有析出物の形成を促進することができる。すなわち、上記方法を用いることにより、電気抵抗率の低減化および反射率の増加が期待される。
なお、Al−Ge系合金膜上に酸化物導電膜を直接接触させるときの雰囲気は、接触前の雰囲気、すなわち、真空または不活性ガスの雰囲気に保ったまま、連続して成膜してもよい。
(反射アノード電極)
続いて、本実施形態の反射アノード電極について説明する。本発明者らは、反射膜をITOやIZOなどの酸化物導電膜と直接接触させても、Al合金反射膜自体の電気抵抗率を低く抑えつつ、低い接触抵抗と高い反射率を確保することができる、新規なAl合金反射膜を備えた有機ELディスプレイ用の反射アノード電極を提供するため、鋭意検討してきた。
その結果、Al−Ge系合金膜と、Al−Ge系合金膜に接触する酸化物導電膜とを備える積層構造からなり、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜との接触界面に酸化アルミニウム(Al)を主成分とする層が介在する有機ELディスプレイ用の反射アノード電極であって、Al−Ge系合金膜は、Geを0.1〜2.5原子%含有するとともに、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜との接触界面には、Ge濃化層およびGe含有析出物が形成されており、Al−Ge系合金膜における、酸化物導電膜側の表面から50nm以内の平均Ge濃度が、Al−Ge系合金膜中の平均Ge濃度の2倍以上であり、かつ、Ge含有析出物の平均直径が0.1μm以上である有機ELディスプレイ用の反射アノード電極を用いることにより、所期の目的が達成されることを見出した。
なお、本明細書において「Al合金反射膜自体の電気抵抗率が低い」とは、後述の実施例に記載の方法でAl合金反射膜自体の電気抵抗率を測定したとき、電気抵抗率が7.0μΩ・cm以下のものを意味する。
また、本明細書において「低い接触抵抗」とは、後述の実施例に記載の方法で接触抵抗を測定したとき(10μm角コンタクトホール)、電圧に対して電流が比例し、接触抵抗が略一定であるもの(オーミック)を意味する。
また、本明細書において「高い反射率」とは、後述の実施例に記載の方法で反射率を測定したとき、450nmでの反射率が75%以上のものを意味する。
上記のAl−Ge系合金を用いることによって良好な特性が得られる理由については、詳細には不明であるが、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜との接触界面に、Alの拡散を防止するGe濃化層およびGe含有析出物が形成され、これにより、Al合金反射膜自体の電気抵抗率を低く抑えつつ、接触抵抗の上昇や反射率の低下が抑制されるためと推測される。
ここで、「Ge濃化層」とは、Al−Ge系合金膜中の平均Ge濃度よりも高い平均Ge濃度を有する領域を意味する。また、「Ge含有析出物」とは、Geの一部または全部が析出した析出物を意味し、例えば、AlとGeとの金属間化合物などが挙げられる。
ここで、上記Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜との接触界面には、酸化アルミニウムを主成分とする層(絶縁物層)が介在している。Alは非常に酸化され易いことから、雰囲気中の酸素と結合してAl−Ge系合金膜表面に酸化アルミニウムが形成され易く、また、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜を接触させた場合には、酸化物導電膜からAlが酸素を奪い、その界面に酸化アルミニウムが形成され易い。この酸化アルミニウムを主成分とする層は絶縁性であるため、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜とのコンタクト抵抗の上昇を招くものであるが、本実施形態では、この他に、導電性を有するGe濃化層およびGe含有析出物も形成されるため、このGe濃化層やGe含有析出物を通じて大部分のコンタクト電流が流れるようになる。その結果、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜とは電気的に導通するようになり、接触抵抗の上昇が抑制される。なお、主成分とは最も多い成分をいい、通常含有量として70質量%以上であり、90質量%以上が好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。
上記接触抵抗の上昇を効果的に抑制するためには、Al−Ge系合金膜における、酸化物導電膜側の表面から50nm以内の平均Ge濃度は、Al−Ge系合金膜中(Al−Ge系合金膜の表面から50nmを超える部分)の平均Ge濃度の2倍以上であることが好ましく、2.5倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることが更に好ましい。
また同様に、上記接触抵抗の上昇を効果的に抑制するためには、Ge含有析出物の平均直径が0.1μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることが更に好ましい。
Ge濃化層の厚さは、5nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上80nm以下であることがより好ましい。
上記Ge濃化層中の厚さ、Al−Ge系合金膜の表面からの深さ、およびGe含有析出物の平均直径は、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜との接触界面の断面TEM(倍率:300,000倍)や平面SEM(倍率:30,000倍)などを行って測定することができる。また、「Al−Ge系合金膜の表面から50nm以内の平均Ge濃度」や「Al−Ge系合金膜中の平均Ge濃度」は、上記の断面TEM観察試料を用い、EDX(Energy Dispersive X−ray、KEVEV社製シグマ)による化学組成分析を行うことによって測定することができる。TEM観察は、日立製作所製「FE−TEM HF−2000」を用いて測定することができる。
上記のGe濃化層およびGe含有析出物は、成膜時や熱処理工程などにおいて、室温においてGeの固溶限がほぼ0であるAl−Ge系合金のGeがアルミニウム粒界に析出したり、その一部がアルミニウム表面に拡散濃縮したりするなどして形成されると考えられる。
例えば、上記のGe濃化層およびGe含有析出物は上述したように、Al−Ge系合金膜→酸化物導電膜を順次成膜した後に、真空または不活性ガス(例えば窒素)雰囲気下、150℃以上の温度で熱処理を行ったとき(ポストアニール)などに形成される。
前述したGe濃化層やGe含有析出物による、接触抵抗の低減化作用を効果的に発揮させるためには、Al−Ge系合金膜中のGe含有量は0.1原子%以上であることが必要である。Ge含有量が0.1原子%未満では、酸化物導電膜とのコンタクト抵抗を低減させる程度のGe濃化層やGe含有析出物が十分に得られず、上記作用が有効に発揮されないからである。
一方、Ge濃化層やGe含有析出物による、反射率の向上作用を効果的に発揮させるためには、Al−Ge系合金膜中のGe含有量は2.5原子%以下であることが必要である。Ge含有量が2.5原子%を超える場合には、Al合金反射膜自体の電気抵抗率を低く抑えることができなくなるからである。また、Ge濃化層やGe含有析出物が過剰に形成されることで反射率が低下し、上記作用が有効に発揮されないおそれがあるからである。また、熱処理後に表面に凸部(ヒロック)が生成してしまい、素子の短絡の原因となるからである。
上記Ge含有量は、好ましくは0.15原子%以上、より好ましくは0.20原子%以上であり、好ましくは1.5原子%以下、より好ましくは1.0原子%以下である。また、本実施形態のAl−Ge系合金膜は、Geを含み、残部:Alおよび不可避的不純物である。不純物元素として、具体的には、酸素、窒素、炭素または鉄等が挙げられる。これらの元素は、それぞれ0.01原子%以下に規制される。また、これらの元素は、この範囲内であれば、不可避不純物として含有される場合だけではなく、積極的に添加された場合であっても、本実施形態の効果を妨げない。
上記Al−Ge系合金膜は、更に、Cuを0.05〜2.0原子%含有してもよい。Cuを所定量含有することにより、CuおよびGeの析出物が形成されるが、この析出物上の酸化物層は、Al上に形成される酸化物層に比べ導電性が高いため、反射率の低下を抑制しつつ、コンタクト抵抗を低減することができる。Cu含有量が0.05原子%未満では、上記析出物の量が十分ではなく、上記作用が有効に発揮されず、また、Cu含有量が2.0原子%を超える場合には、上記析出物が過剰に形成されることで反射率が低下し、上記作用が有効に発揮されない。
また、上記Al−Ge系合金膜は、更に、Niおよび希土類元素(La、Ndなど)よりなる群(以下、X群と呼ぶ場合がある。)から選択される少なくとも1種の元素を合計で0.1〜2.0原子%含有しても良く、これにより、Al−Ge系合金膜の耐熱性が向上してヒロックの生成も有効に防止されるだけでなく、アルカリ溶液に対する耐食性も向上する。X群に属する元素は、単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。
X群に属する元素の含有量(単独の場合は単独の含有量であり、2種以上を併用する場合は合計量である。)が0.1原子%未満の場合、耐熱性向上作用および耐アルカリ腐食性向上作用の両方を、有効に発揮することができない。これらの特性を向上するという観点のみからすれば、X群に属する元素の含有量は多い程良いが、その量が2原子%を超えると、Al−Ge系合金膜自体の電気抵抗率が上昇してしまう。そこで、X群に属する元素の含有量は、好ましくは0.1原子%以上(より好ましくは0.2原子%以上)であり、好ましくは2原子%以下(より好ましくは0.8原子%以下)である。なお、X群に属する元素として希土類元素(特に、La)を用いる場合には、希土類元素の含有量は、0.2〜0.5原子%であることが好ましい。
また、X群に属する元素による上記作用を有効に発揮させるためには、当該元素の合計量が1原子%以上のとき、上記元素は析出物として存在していることが好ましい。
本実施形態に用いられる酸化物導電膜は特に限定されず、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの通常用いられるものが挙げられるが、好ましくは酸化インジウム錫である。
上記酸化物導電膜の好ましい膜厚は、5〜30nmである。上記酸化物導電膜の膜厚が5nm未満では、ITO膜にピンホールが発生し、ダークスポットの原因となることがあり、一方、上記酸化物導電膜の膜厚が30nmを超えると、反射率が低下する。上記酸化物導電膜のより好ましい膜厚は、5nm以上20nm以下である。
本実施形態の有機ELディスプレイ用の反射アノード電極は、低い接触抵抗および優れた反射率に加えて、酸化物透明導電膜との積層構造としたときの上層酸化物透明導電膜の仕事関数も、汎用のAg基合金を用いたときと同程度に制御され、好ましくは耐アルカリ腐食性および耐熱性にも優れているため、これを薄膜トランジスタ基板、さらには表示デバイス(特に、有機ELディスプレイ)に適用することが好ましい。
(スパッタリングターゲット)
上記Al−Ge系合金膜は、スパッタリング法または真空蒸着法で形成することが好ましく、特に、スパッタリング法にてスパッタリングターゲット(以下「ターゲット」ということがある)を用いて形成することがより好ましい。スパッタリング法によれば、イオンプレーティング法や電子ビーム蒸着法で形成された薄膜よりも、成分や膜厚の膜面内均一性に優れた薄膜を容易に形成できるからである。
上記スパッタリング法で上記Al−Ge系合金膜を形成するには、上記ターゲットとして、前述した元素(Geおよび、好ましくはCu、あるいはNiや希土類元素(La、Ndなど)のようなX群の元素)を含むものであって、所望のAl−Ge系合金膜と同一組成のAl合金スパッタリングターゲットを用いれば、組成ズレの恐れがなく、所望の成分組成のAl−Ge系合金膜を形成することができるのでよい。
従って、本実施形態には、前述したAl−Ge系合金膜と同じ組成のスパッタリングターゲットも本実施形態の範囲内に包含される。詳細には、上記ターゲットは、Geを0.1〜2.5原子%含有するか;または、Geを0.1〜2.5原子%含有し、かつ、Cu:0.05〜2.0原子%および希土類元素:0.2〜0.5原子%のうち少なくとも一方を含有し、残部Alおよび不可避不純物である。
上記ターゲットの形状は、スパッタリング装置の形状や構造に応じて任意の形状(角型プレート状、円形プレート状、ドーナツプレート状など)に加工したものが含まれる。
上記ターゲットの製造方法としては、溶解鋳造法や粉末焼結法、スプレイフォーミング法で、Al−Ge系合金からなるインゴットを製造して得る方法や、Al−Ge系合金からなるプリフォーム(最終的な緻密体を得る前の中間体)を製造した後、該プリフォームを緻密化手段により緻密化して得られる方法が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、その趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
本実施例では、種々のAl合金反射膜を用い、反射率(熱処理後)、Al合金反射膜と酸化物導電膜とのコンタクト抵抗、Al合金反射膜の電気抵抗率および耐熱性(ヒロックの有無)を測定した。
具体的には、無アルカリ硝子板(板厚:0.7mm)を基板として、その表面に反射膜であるAl−Ge系合金膜(膜厚:200nm)をスパッタ法によって製造した。Al−Ge系合金膜の化学組成は、表1に示す通りである。また、成膜条件は、基板温度:25℃、圧力:0.26MPaで、電源:直流、成膜パワー密度: 5〜20W/cmとした。比較のため、純Al膜(膜厚:約100nm)を同様にスパッタ法によって成膜した。反射膜の化学組成は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析で同定した。
上記のようにして成膜した各反射膜につき、ITO膜を成膜した。更に、ITO膜の成膜後に、窒素雰囲気下、250℃で60分間の熱処理(ポストアニール)を行った。
ここで、ITO膜の成膜に当たっては、Al−Ge系合金膜を成膜し、一旦大気開放を行った後、スパッタ法により膜厚10nmのITO膜を成膜し、反射アノード電極(反射膜+酸化物導電膜)を形成した。その成膜条件は、基板温度:25℃、圧力:0.8mTorr、DCパワー:150Wである。
上記のように作製した各反射アノード電極について、(1)反射率(熱処理後)、(2)Al合金反射膜と酸化物導電膜とのコンタクト抵抗、(3)Al合金反射膜の電気抵抗率および(4)耐熱性(ヒロックの有無)を、以下のようにして測定し、評価した。
(1)反射率(熱処理後、450nm)
反射率は、日本分光株式会社製の可視・紫外分光光度計「V−570」を用い、測定波長:1000〜250nmの範囲における分光反射率を測定した。具体的には、基準ミラーの反射光強度に対して、試料の反射光高度を測定した値を「反射率」とした。また、反射率は、上記熱処理(ポストアニール)後のものを測定した。450nmでの反射率が75%以上のものを良好、75%未満のものを不良と評価した。
(2)Al合金反射膜と酸化物導電膜とのコンタクト抵抗
コンタクト抵抗の評価には、図2に示すケルビンパターンを使用した。ケルビンパターンは、上記Al合金反射膜を成膜した後、続けてIn−Sn−O(Sn:10wt%)薄膜(ITO膜、膜厚:10nm)を積層し、配線パターンを形成した後、その表面にパシベーション膜であるSiN膜(膜厚:200nm)をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置によって成膜した。成膜条件は、基板温度:280℃、ガス比:SiH/NH/N=125/6/185、圧力:137MPa、RFパワー:100Wである。SiN膜をパターニングした後、更にその表面にMo膜(膜厚:100nm)をスパッタ法によって成膜し、更にMo膜をパターニングすることによって図2のケルビンパターンを得た。
コンタクト抵抗の測定法は、図2に示すケルビンパターン(コンタクトホールサイズ:10μm角)を作製し、4端子測定(Al\ITO−Mo合金に電流を流し、別の端子でAl\ITO−Mo合金間の電圧降下を測定する方法)を行った。具体的には、図2のI−I間に電流Iを流し、V−V間の電圧Vをモニターすることにより、接続部Cのコンタクト抵抗Rを[R=(V−V)/I]として求めた。電圧に対して電流が比例し、コンタクト抵抗が略一定であるものを、「オーミック」として良好(評価:○)とした。また、電圧に対して電流が比例しなかったものを、「非オーミック」として不良(評価:×)とした。なお、「オーミック」と判断した例として、図3Aにおいて実施例の試験No.6に係る反射アノード電極の電流−電圧特性を示すグラフを、また、「非オーミック」と判断した例として、図3Bにおいて実施例の試験No.2に係る反射アノード電極の電流−電圧特性を示すグラフを示す。
(3)Al合金反射膜の電気抵抗率
Al合金反射膜自体の電気抵抗率を、ケルビンパターンを用いて4端子法で測定した。電気抵抗率が7.0μΩ・cm以下のものを良好、7.0μΩ・cm超のものを不良と評価した。
(4)耐熱性(ヒロックの有無)
耐熱性は、上記熱処理後の反射アノード電極の表面を光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察することにより判断した。具体的には、任意の140μm×100μmエリア内において、直径1μm以上のヒロックが5個未満のものを「ヒロック無し」と判断し、良好であると評価した。また、同様の評価により、ヒロックが5個以上のものを「ヒロック有り」と判断し、不良であると評価した。
これらの結果を表1に示す。
Figure 2019135694
表1において、試験No.4〜7および9〜12が実施例、試験No.1〜3および8が比較例である。本発明の要件を満足するAl合金反射膜を用いた各実施例では、反射率、コンタクト抵抗、電気抵抗率および耐熱性の全ての項目において、良好な結果が得られたため、総合評価として良好(評価:○)とした。
一方、各比較例については、本発明で規定するいずれかの要件を満足しないものであり、反射膜の電気抵抗率またはコンタクト抵抗の性能を満足しなかったため、総合評価として不良(評価:×)とした。具体的には、試験No.1〜3についてはコンタクト抵抗が「評価×」であり、試験No.8については反射膜の電気抵抗率が「不良」であった。
続いて、実施例に対応する試験例について、Al合金反射膜と酸化物導電膜の接触界面にGe濃化層およびGe含有析出物が形成されていること、また、Al合金反射膜の表面から50nm以内の平均Ge濃度およびGe含有析出物の平均直径が上述した要件を満足していることの確認のため、断面TEM、EDX分析などの各種分析を行った。
例として、実施例に対応する試験No.6における、酸化物導電膜(透明導電膜)を構成するITO膜と、Al−0.6Ni−0.5Cu−0.35La−1.0Ge(単位:原子%)合金膜(Al合金反射膜)との接触界面に形成されたGe濃化層の例を示す断面TEM写真(倍率:300,000倍)を、図4Aに示す。また、図4A中の各ポイント「1−1」〜「1−5」における、EDX半定量結果(炭素Cは除外、各元素の濃度はat%)を図4Bに示し、各ポイントの組成をEDX分析した結果をそれぞれ図5A〜図5Eに示す(図5A〜図5E中の縦軸はcountsを、横軸はenergyを示している)。
図4Aにおいて、酸化物導電膜とAl合金反射膜との界面から深さ約50nmまでの領域がGe濃化層である。図4Bの結果に示すように、Ge濃化層に属するポイント1−1およびポイント1−2のGe濃度は、それぞれ2.7at%および3.0at%である(平均2.85at%)のに対し、Ge濃化層以外の領域(酸化物導電膜とAl合金反射膜との界面から深さ約50nmよりも深い、Al合金反射膜のバルク部分)に属するポイント1−3〜ポイント1−5のGe濃度は0.6〜1.0at%(平均0.8at%)であることが分かる。このことから、Al合金反射膜の表面から50nm以内の平均Ge濃度が、Al合金反射膜中の平均Ge濃度の2倍以上(2.85/0.8=約3.6倍)であることが理解される。
なお、図4Bの結果より、酸化物導電膜とAl合金反射膜との接触界面近傍であるポイント1−1のO(酸素)濃度は41.9at%と、他のポイントにおけるO濃度に比べ大きいことが読み取れる。このことから、Al合金反射膜と酸化物導電膜との接触界面に、数nm程度の酸化アルミニウムを主成分とする層が存在することが示唆される。
図6は、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)分析により、試験No.6における酸化物導電膜からAl合金反射膜までの深さ方向の組成分析を行った結果を示す図である。なお、同図中、横軸はSiOで換算されるスパッタ深さ(nm)を示し、縦軸は原子濃度(原子%)を示す。具体的な測定方法は次の通りである。まず、Physical Electronics社製X線光電子分光装置Quantera SXMを用い、最表面の広域光電子スペクトルによる定性分析を実施した。その後、Ar+スパッタにより表面から深さ方向にエッチングし、一定深さ毎に膜の構成元素と最表面で検出された元素の狭域光電子スペクトルを測定した。各深さで得られた狭域光電子スペクトルの面積強度比と相対感度係数から深さ方向組成分布(原子%)を算出した。
測定条件
・X線源:Al Kα(1486.6eV)
・X線出力:25W
・X線ビーム径:100μm
・光電子取り出し角:45°
・装置:Quantera SXM
Ar+スパッタ条件
・入射エネルギー:1keV
・ラスター:2mm×2mm
・スパッタ速度:1.83nm/分(SiO換算)
・スパッタ深さは全てSiO換算の深さとする。
図6において、スパッタ深さ5nm程度まではIn濃度が高いことから、酸化物導電膜(ITO膜)の領域であることが示唆される。そして、スパッタ深さ5nm〜約15nmにおいては、In濃度が低下する一方でAlの濃度が増加しており、酸化アルミニウムを主成分とする層の領域であると考えられる。また、スパッタ深さ約15nmより深い領域はAl合金反射膜であり、スパッタ深さ15nm〜20nmにおいてGe濃度が高くなっていることから、XPS分析の結果からもAl合金反射膜と酸化物導電膜の接触界面にGe濃化層およびGe含有析出物が形成されていることが示唆される。なお、図6中のスパッタ深さは、酸化物導電膜とAl合金反射膜との積層膜における膜方向の実際の厚さとは異なるものであり、これはスパッタ深さがSiO換算深さであることとスパッタリングクロスセクションに由来するものである。
図7は、試験No.6における、Al−Ge系合金膜と酸化物導電膜との接触界面に形成されたGe含有析出物を示す平面SEM写真(倍率:30,000倍)である。なお、図7は、図4Aにおけるポイント1−1やポイント1−2近傍を示している。図7に示すように、破線で囲まれた領域内に直径0.1μm以上のGe含有析出物を確認することができる。
以上のことから、試験No.6について、Al合金反射膜と酸化物導電膜の接触界面にGe濃化層およびGe含有析出物が形成されていること、また、Al合金反射膜の表面から50nm以内の平均Ge濃度および該Ge含有析出物の平均直径が上述した要件を満足しているが確認された。なお、試験No.6以外の実施例においても、試験No.6の結果と同様に、上記要件を満足することが確認された。
1 基板
2 TFT
3 パシベーション膜
4 平坦化層
5 コンタクトホール
6 Al−Ge系合金膜
7 酸化物導電膜
8 有機発光層
9 カソード電極

Claims (9)

  1. Al−Ge系合金膜と、前記Al−Ge系合金膜に接触する酸化物導電膜とを備える積層構造からなり、前記Al−Ge系合金膜と前記酸化物導電膜との接触界面に酸化アルミニウムを主成分とする層が介在する有機ELディスプレイ用の反射アノード電極であって、
    前記Al−Ge系合金膜は、Geを0.1〜2.5原子%含有するとともに、
    前記Al−Ge系合金膜と前記酸化物導電膜との接触界面には、Ge濃化層およびGe含有析出物が形成されており、
    前記Al−Ge系合金膜における、前記酸化物導電膜側の表面から50nm以内の平均Ge濃度が、前記Al−Ge系合金膜中の平均Ge濃度の2倍以上であり、かつ、前記Ge含有析出物の平均直径が0.1μm以上であることを特徴とする有機ELディスプレイ用の反射アノード電極。
  2. 前記Al−Ge系合金膜は、Cu:0.05〜2.0原子%をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の反射アノード電極。
  3. 前記Al−Ge系合金膜は、希土類元素:0.2〜0.5原子%をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の反射アノード電極。
  4. 前記酸化物導電膜の膜厚が5〜30nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射アノード電極。
  5. 前記Al−Ge系合金膜がスパッタリング法または真空蒸着法で形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の反射アノード電極。
  6. 前記Al−Ge系合金膜が、薄膜トランジスタのソース・ドレイン電極に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射アノード電極。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射アノード電極を備えた薄膜トランジスタ基板。
  8. 請求項7に記載の薄膜トランジスタ基板を備えた有機ELディスプレイ。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の前記Al−Ge系合金膜を形成するためのスパッタリングターゲットであって、
    Geを0.1〜2.5原子%含有するか;または、Geを0.1〜2.5原子%含有し、かつ、Cu:0.05〜2.0原子%および希土類元素:0.2〜0.5原子%のうち少なくとも一方を含有することを特徴とするスパッタリングターゲット。
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