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JP2019103416A - セルロース系バイオマスを原料とする酵素法による糖化液製造方法 - Google Patents

セルロース系バイオマスを原料とする酵素法による糖化液製造方法 Download PDF

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JP2019103416A JP2017236922A JP2017236922A JP2019103416A JP 2019103416 A JP2019103416 A JP 2019103416A JP 2017236922 A JP2017236922 A JP 2017236922A JP 2017236922 A JP2017236922 A JP 2017236922A JP 2019103416 A JP2019103416 A JP 2019103416A
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毅 西野
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Noriaki Izumi
憲明 和泉
浩範 田尻
Hironori Tajiri
浩範 田尻
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明日香 小田
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明日香 小田
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Abstract

【課題】セルロース系バイオマスに含有されるセルロースを酵素加水分解して可溶化する際に、反応容器内の固形物濃度を高く維持しながら、早期にバイオマスを可溶化してスラリー状とし得る、糖化液製造方法を提供すること。【解決手段】内部に邪魔板を有しない反応容器内で粉砕されたバイオマスとセルロース分解酵素とを含有する水溶液と混合し、撹拌しながらセルロース系バイオマスを可溶化する。その後、内部に邪魔板を有する別の反応容器に内容物を移送し、セルロースの酵素分解を継続させる。反応容器内の固形物濃度は、15質量%以上30質量%以下とすることが好ましい。セルロールを酵素分解する際の撹拌効果を向上させることにより、糖生成量を増加することが可能となる。【選択図】図4

Description

本発明は、アルコール発酵又は乳酸発酵のような発酵手段によって、糖類からエタノール(バイオエタノール)又はポリ乳酸のようなバイオケミカルを製造するために利用される、セルロース系バイオマスを加水分解酵素によって加水分解して糖化液を製造する方法に関する。
バイオマスエネルギー利用の一環として、植物の主成分であるセルロース又はヘミセルロースを分解して糖化液を製造し、糖をアルコール発酵させることによってエタノールを得ようとする試みがある。そこでは、得られたエタノールは、燃料用として主として自動車燃料に一部混入させたり、ガソリンの代替燃料として利用したりすることが計画されている。
さらに近年では、セルロース又はヘミセルロースを分解して得られた糖化液を乳酸発酵に供してL-乳酸を製造し、これを重合させてバイオベースポリマーの一種であるポリ乳酸を製造することも工業的に行われるようになっている。ポリ乳酸は、生分解性プラスチックとして注目されている。
植物の主な成分には、セルロース(炭素6個から構成されるC6単糖であるグルコースの重合物)、ヘミセルロース(炭素5個から構成されるC5単糖とC6単糖の重合物)、リグニン、デンプンが含まれるが、エタノールはC5単糖、C6単糖、それらの複合体であるオリゴ糖のような糖類を原料として、酵母菌のような微生物の発酵作用によって生成される。
セルロース又はヘミセルロースのようなセルロース系バイオマスを糖類に分解するには、1)硫酸など強酸の酸化力により加水分解する方法、2)酵素により分解する方法、3)超臨界水又は亜臨界水の酸化力を利用する方法、の3種類が工業的に利用されようとしている。このうち、2)の酵素分解法は、分解時間は他の分解方法よりも長いという欠点はあるが、製造設備コスト及びランニングコストが低く、常温常圧処理が可能であり、糖の過分解が起こりにくいという利点を有する。
特許文献1は、リグニン除去又は膨潤化処理後のリグノセルロース系バイオマスを搬送用容器等により酵素糖化反応用の反応槽に移送すると、リグノセルロース系バイオマスを搬送用容器に移す際等に、リグノセルロース系バイオマスに雑菌が混入し、雑菌が混入したリグノセルロース系バイオマスを酵素糖化反応させると、生成した糖が混入した雑菌により消費されてしまうことを開示している。
そして、特許文献1は、こうした問題を解決するために、リグノセルロース系バイオマスを1つの反応槽で前処理した後、他の反応槽に移送して酵素糖化させて糖液を得るリグノセルロース系バイオマスの処理方法において、リグノセルロース系バイオマスを第1の反応槽内で前処理して該リグノセルロース系バイオマスからリグニンを解離し、又は該リグノセルロース系バイオマスを膨潤させて第1の処理物を得る前処理工程と、該前処理工程により得られた第1の処理物を第2の反応槽内で部分的に酵素糖化反応させて流動可能な第2の処理物を得る第1糖化処理工程と、該第1糖化処理工程により得られた第2の処理物を外気に非接触の状態で第3の反応槽に移送する移送工程と、該移送工程により移送された第2の処理物を第3の反応槽内で酵素糖化反応させて糖液を得る第2糖化処理工程とを備えることを特徴とする、リグノセルロース系バイオマスの処理方法を開示している。
一方、特許文献2は、せん断を必要とせず、セルロースを非常に短時間で加水分解する方法として、
A)乾燥含有物と水とを有するバイオマスを含むリグノセルロース原料を、水溶性加水分解種を含む溶媒の少なくとも一部分と接触させるステップであって、水溶性加水分解種の少なくともいくらかが、原料中のバイオマスの加水分解から得ることができる水溶性加水分解種と同じであるステップと、
B)原料流れの原料と溶媒との接触を、20℃〜200℃の範囲の温度に5分〜72時間の範囲の時間維持して、原料中のバイオマスから加水分解生成物を創出するステップとを含む、リグノセルロースバイオマスを加水分解する方法を開示している。
また、特許文献3は、少量の酵素により酵素糖化反応を行っても、グルコースを主成分とする糖類の生成量を増大させ得る方法として、
セルロース及び/又はヘミセルロースを、セルロース分解酵素で分解してグルコースを主成分とする糖類を製造する方法であって、
セルロース及び/又はヘミセルロースと、セルロース分解酵素の酵素水溶液とを混合させた後、反応槽内にて、前記セルロース及び/又はヘミセルロースと、前記酵素水溶液の混合物に加える攪拌動力Y(W/m3)と、前記酵素水溶液に対するセルロース及び/又はヘミセルロースの添加率X(w/v%)が式(Y≦-0.0125X2+1.195X+23.25)の関係を満たすように、前記混合物を攪拌して混合しながら、前記セルロース分解酵素によって、前記セルロースおよび/またはヘミセルロースを糖化する酵素糖化反応を行うことを特徴とするグルコースを主成分とする糖類の製造方法を開示している。
セルラーゼのような加水分解酵素によってセルロース系バイオマスのセルロースを加水分解する場合、できるだけ高濃度のセルロース含有水溶液を調製して加水分解し、高濃度の糖化液を製造することが理想的である。しかし、セルロースの加水分解を開始する当初に容器内の固形物濃度(バイオマス濃度)を高くすると、反応容器内容物の粘度が高いために撹拌が困難となる。一方、撹拌動力が大きな撹拌装置を使用すると、設置費用及び運転費用が高くなってしまう。
そのような課題を解決するための手段として、特許文献4は、セルロース系バイオマスに含有されるセルロースを酵素加水分解して可溶化する当初に、反応容器内の固形物濃度を高く維持しながら、早期にセルロース系バイオマスを可溶化してスラリー状とし得る糖化液製造方法として、反応容器内で粉砕されたセルロース系バイオマスとセルロース分解酵素を含有する水溶液とを混合する当初において、反応容器内に水溶液を注入した後、粉砕されたセルロース系バイオマスを段階的に、撹拌しながら供給する製造方法を開示している。
国際公開公報第2011/142290号 特表2012−521778号公報 特開2012−139144号公報 特開2017−139973号公報
上述したように、セルラーゼのような加水分解酵素によってセルロース系バイオマスに含有されているセルロースを加水分解する場合、できるだけ高濃度のセルロース含有水溶液を調製して加水分解し、高濃度の糖化液を製造することが理想的であるが、反応容器内容物の粘度が高いために撹拌が困難となってしまう。反応容器内容物の撹拌が不十分な場合、セルロース系バイオマスに含有されるセルロースの一部を加水分解し、セルロース系バイオマスを可溶化するために要する時間が長期化する。
特許文献1〜3には、セルロースの酵素加水分解を開始する当初におけるセルロース系バイオマスの可溶化に対する処置については、何ら触れられていない。また、特許文献4は、反応容器の種類については特に触れられていない。
本発明は、セルロース系バイオマスに含有されるセルロースを酵素加水分解して可溶化する際に、反応容器内の固形物濃度を高く維持しながら、セルロース系バイオマスの酵素加水分解効率を向上して、糖生成量を増加させ得る、糖化液製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、反応容器内で粉砕されたセルロース系バイオマスとセルロース分解酵素を含有する水溶液とを混合して、セルロース系バイオマスを可溶化処理する際には、内部に邪魔板(バッフル)を有しない反応容器を使用し、可溶化が進んで内容物の粘度が低下した後は、内部に邪魔板を有する反応容器へと内容物を移送することを試みた。その結果、内容物の粘度が低下した可溶化処理後においては、反応容器内部に邪魔板を設けることにより、特別な撹拌装置を使用しなくても、反応容器内容物の撹拌を促進し、セルロースの加水分解効率も向上させ得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的に、本発明は、
セルロース系バイオマスを酵素加水分解して糖化液を得る糖化液製造方法であって、
セルロース系バイオマスに含有されるヘミセルロースを熱水処理又はヘミセルロース加水分解酵素によって分解する工程Aと、
ヘミセルロースが除去された固形残渣を、第一反応容器内でセルロース加水分解酵素を含有する水溶液と混合し、固形物濃度が15質量%以上30質量%以下となるように調整した後、前記第一反応容器内に設けられた第一撹拌装置によって撹拌し、ヘミセルロースが除去された固形残渣を可溶化する工程Bと、
前記工程Bが終了した後、前記第一反応容器内の内容物を、第二反応容器へと移送し、前記第二反応容器内に設けられた第二撹拌装置によって内容物を撹拌しながら加水分解反応を継続する工程Cと、
前記第二反応容器から加水分解反応後のスラリーを取り出す工程Dとを有し、
前記第一反応容器は、内部に邪魔板を有さず、
前記第二反応容器は、内部に邪魔板を有する、
ことを特徴とする糖化液製造方法に関する。
前記工程Bは、前記第一反応容器内の内容物を20℃以上90℃以下で、5分以上24時間以下の時間継続させることが好ましい。また、前記工程Cは、前記第二反応容器内の内容物を20℃以上90℃以下で、5分以上120時間以下の時間継続させることが好ましい。
前記第一撹拌装置は、少なくとも内部に複数の撹拌翼を有することが好ましく、前記第二撹拌装置は、少なくとも内部に1つの撹拌翼を有することが好ましい。
前記第一撹拌装置及び前記第二撹拌装置の撹拌翼は、ヘリカルリボン、ダブルヘリカルリボン、マックスブレンド、傾斜パドル翼及びアンカー翼からなる群より選択され、
前記第一撹拌装置の前記撹拌翼の回転速度は、周速として0.5m/秒以上5.0m/秒以下であることが好ましい。
本発明の糖化液製造方法は、
前記工程Bの前に、セルロース系バイオマスに含有されているリグニンを除去する工程A1をさらに有してもよい。
本発明の糖化液製造方法によれば、粉砕されたバイオマスに含有されているセルロースの加水分解処理を効率よく行い得る。
酵素法によるセルロース系バイオマスからの糖化液製造工程の基本フローを示す。 第一反応容器の概略構成図の一例を示す。 第二反応容器の概略構成図の一例を示す。 実験例における撹拌時間と糖化液の糖濃度との関係をプロットしたグラフを示す。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。図1は、酵素法によるセルロース系バイオマスからの糖化液製造工程の基本フローを示す。
<前処理工程>
まず、サトウキビバガスのようなセルロース系バイオマス(以下、「バイオマス」と表示する)は、破砕機又は粉砕機によって粗粉砕される。このとき、平均径10〜100mm以下の小片とされることが好ましい。粗粉砕されたバイオマスは、水酸化ナトリウムのような金属水酸化物の水溶液を用いて蒸解処理してもよい。蒸解処理する場合には、バガスに含有されているリグニンの一部が除去され、セルロース及びヘミセルロースと酵素との反応性が向上する。この場合、蒸解処理後のバイオマスは、酸を用いて中和される。
金属水酸化物の水溶液を用いて蒸解処理する代わりに、爆砕装置を使用して水蒸気による爆砕処理(200〜240℃、1.5〜4MPa、1〜15min;好ましくは225〜230℃、2.5〜3Mpa、1〜5min)を行い、バイオマス中のヘミセルロース成分の糖化とリグニンの一部除去を行ってもよい。爆砕装置で処理されたバイオマス(爆砕処理物)には、ヘミセルロースに由来するC5系糖化液、リグニン溶解物及び固形残渣が含まれる。C5糖化液をC6糖化液とは別にヘミセルロース糖発酵させる場合、この爆砕処理物をフィルタープレス等によって固液分離し、爆砕処理液と固形残渣に分ける。固形残渣は、さらに水で適宜洗浄することにより、固形残渣に含まれる糖類を回収し得る。なお、C5糖発酵とC6糖発酵とを同時に行う場合には、固液分離の実行は任意である。
爆砕処理を行う場合、爆砕処理によって得られた固形残渣は、水洗浄されて糖類及びリグニン溶解物が除去された後、エタノール濃度30%以上、好ましくは50%以上のエタノール水に常温で0.5時間以上48時間以下、好ましくは1時間以上24時間以下の時間浸漬され、セルロースを被覆しているリグニンを溶解及び除去してもよい。エタノール浸漬後、固形残渣を機械的に脱エタノール処理するか、加熱又は減圧加熱等により脱エタノール処理を行う。高濃度エタノール水を用いる場合には、一旦水洗浄した後に脱エタノール処理してもよい。
<ヘミセルロース加水分解(糖化)>
セルロース系バイオマスに含有されているヘミセルロースは、ヘミセルラーゼのようなヘミセルロース加水分解酵素によって分解されるが、高温高圧水によって加水分解(熱水処理)することも可能である。高温高圧水によって加水分解する場合には、140℃以上180℃以下であれば、ヘミセルロースを糖類(主にC5単糖)に分解することができる。ヘミセルロース含量の多いバイオマスの場合には、高温で処理するとC5単糖が有機酸等にまで過分解してしまうため、比較的温和な条件で分解処理を行うことが好ましい。
なお、高温高圧水によってヘミセルロースを加水分解する場合、リン酸又は塩酸のような酸を触媒として添加することも好ましいとされている。また、ヘミセルロース加水分解酵素によってヘミセルロースを加水分解する場合、市販の酵素を使用してもよく、ヘミセルラーゼを生成する微生物等を使用してもよい。
<固液分離1>
ヘミセルロースの加水分解が終了した後、固液分離1によって固形残渣1と糖化液1(C5糖化液)が分離される。
<C5糖発酵>
糖化液1には、酵母が添加され、ヘミセルロース糖発酵によってアルコール(発酵液1)が得られる。
<セルロース加水分解(糖化)>
固形残渣1は、水及びセルラーゼのようなセルロース加水分解酵素が添加され、固形残渣1に含有されているセルロースが加水分解される。セルロースをセルロース加水分解酵素によって加水分解する場合、市販の酵素を使用してもよく、セルラーゼを生成する微生物等を使用してもよい。
<固液分離2>
セルロースの加水分解が終了した後、固液分離2によって固形残渣2と糖化液2(C6糖化液)が分離される。固形残渣は、必要に応じて水で洗浄され、C6糖が回収された後、廃棄される。
<C6糖発酵>
糖化液2には、酵母が添加され、セルロース糖発酵によってアルコール(発酵液2)が得られる。
図1においては、C5糖発酵とC6糖発酵とを独立して実行しているが、糖化液1及び糖化液2を混合し、混合された糖化液についてC5糖発酵とC6糖発酵とを同時に実行してもよい。
<蒸留及び無水化>
C5糖化液及びC6糖化液をアルコール発酵させることによって得られたアルコール発酵液(発酵液1及び発酵液2)は、蒸留装置へと供給され、蒸留によってエタノールが得られる。このエタノールは、公知のエタノール無水化剤又はエタノール無水化装置によって無水化され、製品(バイオエタノール)として出荷される。
図1において、固液分離1又は固液分離2を省略し、固形残渣が混入している状態のまま、ヘミセルロース糖発酵及びセルロース糖発酵を行うことも可能である。
(工程A)
次に、本発明の糖化液製造方法の各工程について説明する。まず、セルロース系バイオマスを粗粉砕した後、含有されるヘミセルロースを熱水処理又はヘミセルロース加水分解酵素によって分解する。工程A終了後、C5糖化液と固形残渣とを固液分離装置によって固液分離する。
(工程B)
次に、ヘミセルロースが除去された固形残渣を、第一反応容器内でセルロース加水分解酵素を含有する水溶液と混合する。第一反応容器は、内部に邪魔板が設けられていない。第一反応容器は、底面がフラット、コーン状又は鏡板状であってよく、その材質又は寸法等は、処理するセルロース系バイオマスの量に応じて適宜選択し得る。
第一反応容器内部には、撹拌装置として少なくとも内容物と接触する部分に複数の撹拌翼が設けられている。第一反応容器の内径に対する撹拌翼の回転直径は大きい方が好ましい。撹拌装置の撹拌翼は、ヘリカルリボン、ダブルヘリカルリボン、マックスブレンド、傾斜パドル翼又はアンカー翼であることが好ましい。撹拌装置は、同じ種類の撹拌翼を複数有していてもよく、異なる種類の撹拌翼を有してもよい。撹拌翼の回転速度は、周速として0.5m/秒以上5.0m/秒以下であることが好ましい。
図2は、工程Bの実行に適した第一反応容器の概略構成図の一例を示す。図2(a)に示される第一反応容器1は、撹拌翼3及び4を備えており、底面5は鏡板状である。底面5は、フラット状(平板)であってもよい。回転軸6は、反応容器1の上面に設けられたモータMによって回転する。
図2(b)に示される第一反応容器11は、撹拌翼13a、13b及び14を備えており、撹拌翼13a及び13bは同じ種類の撹拌翼である。第一反応容器11の底面15はコーン状である。回転軸16は、反応容器11の上面に設けられたモータMによって回転する。
第一反応容器には、セルロース加水分解酵素を含有する水溶液と、ヘミセルロースが除去された固形残渣とを供給する。このとき、必要量の水を供給した後、セルロース加水分解酵素を添加及び混合し、セルロース加水分解酵素水溶液を調製してもよい。反応容器内の固形物濃度は、最終濃度が15質量%以上30質量%以下となるように調整した後、撹拌装置の撹拌翼によって5分以上24時間以下撹拌する。このような処理を行うことにより、ヘミセルロースが除去された固形残渣(セルロース系バイオマス)が可溶化される。
工程Bは、第一反応容器内の内容物が、遠心ポンプで送液できる程度の流動性のある状態(一般的には粘度300cp以下)となるまで継続されることが好ましい。工程の終了後、第一反応容器内の内容物は、第一反応容器と配管によって接続されている、内部に邪魔板を有する第二反応容器へとポンプ又はエア圧送等によって移送される。第二反応容器は内部に邪魔板を有し、少なくとも1つの撹拌翼を有すること以外、第一反応容器と同様の構造でよい。
なお、工程Bの前に、ヘミセルロースが除去された固形残渣に対して、上述した蒸解処理又は水蒸気を用いる爆砕処理を行い、固形残渣からリグニンを除去する工程A1を実行することが好ましい。工程A1は、工程Aの前であってもよく、工程Aの後で工程Bの前であってもよい。
(工程C)
第二反応容器内の内容物(ヘミセルロースが除去された固形残渣とセルロース加水分解酵素を含有する水溶液との混合物)に含有されるセルロースの大部分がグルコースとなるまで(換言すれば、反応容器内の内容物のセルロース加水分解反応が完了するまで)、撹拌装置によって撹拌しながら加水分解反応を継続させる。工程Cにおいては、反応容器内の内容物を20℃以上90℃以下となるように調整しながら、5分以上120時間以下の時間撹拌させる。工程Cにより、固形残渣に含有されるセルロースが加水分解され、反応容器内の内容物がスラリー状となる。
図3は、第二反応容器の概略構成図の一例を示す。図3(a)に示される第二反応容器21の内壁には、邪魔板27a及び27bが設けられているが、第二反応容器21の内部であって、撹拌時に内容物と接触し得る位置であれば、他の場所に設置されてもよい。邪魔板の設置数は、複数枚とすることが好ましいが、内容物の撹拌効果を向上できるのであれば1枚でもよい。邪魔板の寸法は、化学工学協会編「化学工学便覧」に記載されているような、反応容器にとって標準的な寸法であればよい。
第二反応容器が有する邪魔板の形状は、反応容器における一般的な邪魔板と同様に、例えば、反応容器の内径の1/12〜1/10倍程度の幅、及び機械的強度の観点から6mm以上の厚さを有していれば、その寸法又は材質等は特に限定されない。
図3(b)に示される第二反応容器31は、上面37から邪魔板38が懸下されている。邪魔板38は、第二反応容器31の内壁には接していない。図3(b)においては、図中左側にのみ邪魔板38が設けられているが、図中右側の対称位置にも邪魔板を設けてもよく、3枚以上の邪魔板を設けてもよい。
工程Cにおいては、内容物の粘度が300cp以下であり、工程Bと比較して低値となっている。工程Bを行う第一反応容器内部に邪魔板を設置した場合、固形物が邪魔板に堆積しやすいため、内容物の流動が邪魔板によって阻害され、却って内容物の撹拌効果が低下する。一方、工程Cを行う第二反応容器は、内部に邪魔板を設置することにより、乱流状態である低撹拌レイノズル数領域で撹拌を行うことにより、内容物には水平方向の旋回流だけでなく、上下方向の液対流も発生し、内容物の撹拌効果が高くできる。その結果、セルロースの酵素加水分解反応率の低下を防止し得る。
(工程D)
工程Cが終了した後、第二反応容器からスラリーを取り出す。取り出されたスラリーは、必要に応じて固液分離され、固形残渣とC6糖化液とに分離される。C6糖化液は、独立して、又はC5糖化液と混合された後、エタノール発酵又は乳酸発酵等に供給され、バイオエタノール又はバイオ乳酸等の原料として利用される。
[実験例]
含水率10%の粉砕バガス167gと水333gを圧力容器に投入し、pHが3となるようリン酸で調整した。1.1MPaG、180℃で10分間熱水処理後、この熱水処理残渣を、濾紙及びアスピレータを用いて脱水し、含水率30%に調整した。湿重量として25gの脱水熱水処理残渣に、0.05Mのクエン酸バッファ20g、市販のセルラーゼ水溶液1g(最終濾紙分解活性単位15 FPU/mg-バイオマス)、及び水4gを添加し、総量が50gとなるように、全容100mLのネジ付き瓶に投入した。
その後、50℃に調整された振とう恒温槽にネジ付き瓶を入れ、72h反応させた。このとき、ネジ付き瓶内の内容物は、工程Cにおける第二反応容器内の内容物に相当する。振とう速度は、固形物が目視で均一に撹拌される状態(150rpm;邪魔板ありに相当)と、固形物が底部に沈殿している状態(75rpm;邪魔板なしに相当)の2パターンで比較試験を実施した。
図4は、撹拌時間と糖化液(ネジ付き瓶内の内容物)の糖濃度との関係をプロットしたグラフを示す。撹拌時間72hの時点で、150rpmでは75rpmよりも糖濃度が約40%増加することが確認された。
このように、工程Cにおいて、反応容器内に邪魔板を設置して内容物の撹拌効果を向上させることにより、高価な装置を要さず、ランニングコストも上昇させることなく、糖生成量を顕著に向上させ得ることが確認された。
本発明の糖化液製造方法は、バイオエタノール又はバイオ乳酸のようなバイオケミカル分野における糖化液製造方法として有用である。
1,11:第一反応容器
2:第一反応容器の内容物
3:撹拌翼(上部撹拌翼)
4:撹拌翼(下部撹拌翼)
5:鏡板状の底面
6:第一撹拌装置の回転軸
13a:第一撹拌装置の撹拌翼(上部撹拌翼)
13b:第一撹拌装置の撹拌翼(中央部撹拌翼)
14:第一撹拌装置の撹拌翼(下部撹拌翼)
15:コーン状の底面
21,31:第二反応容器
22:第二反応容器の内容物
26:第二撹拌装置の回転軸
27a,27b,38:邪魔板
33a:第二撹拌装置の撹拌翼(上部撹拌翼)
33b:第二撹拌装置の撹拌翼(中央部撹拌翼)
34:第二撹拌装置の撹拌翼(下部撹拌翼)
37:第二反応容器の上面
M:モータ

Claims (4)

  1. セルロース系バイオマスを酵素加水分解して糖化液を得る糖化液製造方法であって、
    セルロース系バイオマスに含有されるヘミセルロースを熱水処理又はヘミセルロース加水分解酵素によって分解する工程Aと、
    ヘミセルロースが除去された固形残渣を、第一反応容器内でセルロース加水分解酵素を含有する水溶液と混合し、固形物濃度が15質量%以上30質量%以下となるように調整した後、前記第一反応容器内に設けられた第一撹拌装置によって撹拌し、ヘミセルロースが除去された固形残渣を可溶化する工程Bと、
    前記工程Bが終了した後、前記第一反応容器内の内容物を、第二反応容器へと移送し、前記第二反応容器内に設けられた第二撹拌装置によって内容物を撹拌しながら加水分解反応を継続する工程Cと、
    前記第二反応容器から加水分解反応後のスラリーを取り出す工程Dとを有し、
    前記第一反応容器は、内部に邪魔板を有さず、
    前記第二反応容器は、内部に邪魔板を有する、
    ことを特徴とする糖化液製造方法。
  2. 前記第一撹拌装置は、少なくとも内部に複数の撹拌翼を有し、
    前記第二撹拌装置は、少なくとも内部に1つの撹拌翼を有する、
    請求項1に記載の糖化液製造方法。
  3. 前記第一撹拌装置及び前記第二撹拌装置の撹拌翼がヘリカルリボン、ダブルヘリカルリボン、マックスブレンド、傾斜パドル翼及びアンカー翼からなる群より選択され、
    前記第一撹拌装置の前記撹拌翼の回転速度が周速として0.5m/秒以上5.0m/秒以下である、
    請求項1又は2に記載の糖化液製造方法。
  4. 前記工程Bの前に、セルロース系バイオマスに含有されているリグニンを除去する工程A1をさらに有する、
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の糖化液製造方法。
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