JP2019193532A - モータシステム、モータ制御装置およびモータの回転速度検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転角度センサで回転角度が検出され、ベクトル制御によって制御されるモータを対象とするモータ制御装置において、モータの回転速度を検出する際の速度リップルを低減する。【解決手段】テーブル作成部TBLGは、実使用前の準備段階において、モータを定常回転させた状態で、回転角度センサからの回転角度θが複数の基準回転角度θ[r]のそれぞれに到達した時点をトリガとして、モータ電圧方程式を用いてdq軸とγδ軸との軸誤差Δθを演算することで、補正値を定めるための補正テーブルCTBLを作成する。補正値算出部CCALは、実使用段階において、回転角度θを受けて、補正テーブルCTBLに基づいて当該回転角度θに対応する補正値(速度補正値ΔωC)を定める。モータの補正前の回転速度は、当該補正値で補正される。【選択図】図4
Description
本発明は、モータシステム、モータ制御装置およびモータの回転速度検出方法に関し、例えば、回転角度センサを用いたモータの回転速度の検出技術に関する。
特許文献1には、モータ制御装置において、外乱オブザーバを用いて拡張誘起電圧方程式の演算を行うことで、モータに付加された回転検出部からの位相角の誤差角度を推定し、当該推定された誤差角度で当該位相角を補正する方式が示される。非特許文献1には、埋込磁石同期モータ(IPMSM)の位置・速度センサレス制御を行う際に用いる外乱オブザーバに関し、拡張誘電電圧方程式のモデルについて記載されている。
森本、他2名、"推定位置誤差情報を利用したIPMSMの位置・速度センサレス制御」、電学論D、Vol.122、No.7、2002年、p.722−729
モータの制御方式として、特許文献1等に示されるように、レゾルバ等の回転角度センサを用いてモータの回転角度および回転速度を検出し、当該検出された回転角度および回転速度に基づいてベクトル制御を行う方式が知られている。一方、回転角度センサからの回転角度には、角度誤差が含まれる場合がある。このような角度誤差は、回転速度の速度リップル等を招く。そこで、特許文献1に示されるように、外乱オブザーバを用いて角度誤差を推定することで、回転角度センサからの回転角度を補正する方式が考えられる。
しかし、このような外乱オブザーバを用いる方式では、特に極対数が多いモータを制御対象とする場合に、応答性の問題により角度誤差の推定精度が低下し、速度リップルを十分に低減できない恐れがある。速度リップルが生じると、モータの速度制御に際しての精度や応答性を高めることが困難となり得る。
後述する実施の形態は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
一実施の形態によるモータ制御装置は、回転角度センサで回転角度が検出され、ベクトル制御によって制御されるモータを対象に第1および第2の処理を実行する。第1の処理として、モータ制御装置は、実使用前の準備段階において、モータを定常回転させた状態で、回転角度センサからの回転角度が所定の角度間隔で異なる複数の基準回転角度のそれぞれに到達した時点をトリガとして、モータ電圧方程式を用いてモータのdq軸と回転角度センサの検出結果に基づくγδ軸との軸誤差を演算する。そして、モータ制御装置は、当該演算結果に基づいて複数の基準回転角度毎の補正値を定めるための補正テーブルを作成する。第2の処理として、モータ制御装置は、実使用段階において、回転角度センサからの回転角度を受けて、補正テーブルに基づいて当該回転角度に対応する補正値を定め、当該補正値を反映してモータの補正後の回転速度を算出する。
前記一実施の形態によれば、回転角度センサを用いてモータの回転速度を検出する際に、速度リップルを低減することが可能になる。
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
《モータシステム(実施の形態1)の概略》
図1は、本発明の実施の形態1によるモータシステムの構成例を示す概略図である。図2は、図1におけるモータの構造例を示す概略図である。図3は、図2のモータにおける電気角上の等価回路および座標軸を示す模式図である。図1に示すモータシステムは、モータ制御装置MCDと、インバータINVと、電流センサISENと、モータMTと、回転角度センサRSENとを備える。
《モータシステム(実施の形態1)の概略》
図1は、本発明の実施の形態1によるモータシステムの構成例を示す概略図である。図2は、図1におけるモータの構造例を示す概略図である。図3は、図2のモータにおける電気角上の等価回路および座標軸を示す模式図である。図1に示すモータシステムは、モータ制御装置MCDと、インバータINVと、電流センサISENと、モータMTと、回転角度センサRSENとを備える。
モータMTは、例えば、図2に示されるように、ロータRTおよびステータSTを備える3相(u相、v相、w相)の同期モータ(言い換えればブラシレスDCモータ)等である。この例では、ロータRTは、14極(極対数(P)は7)の永久磁石で構成され、ステータSTは、それぞれコイルが巻かれる12個のスロットを備える。このように極対数(P)が7のモータMTの場合、機械角θの1回転(360°)は、電気角θeの7回転(7×360°)に対応し、電気角θeは機械角θのP倍となる。
このようなモータMTは、固定座標となる3相軸(u軸、v軸、w軸)で見た場合、3相の抵抗成分Ru,Rv,Rw、インダクタンス成分Lu,Lv,Lwおよび誘起電圧Eu,Ev,Ewで表される。u相を例とすると、抵抗成分Ru、インダクタンス成分Luおよび誘起電圧Euは、ロータRTを中点として、当該中点とu相駆動端子PNuとの間に直列に結合される。u軸、v軸、w軸は、それぞれ、u相、v相、w相の通電方向(電流方向)に配置され、ロータRTの回転方向に対して電気角120°間隔で順に配置される。
一方、当該固定座標(3相軸)は、回転座標となる2相軸(d軸、q軸)に変換することができる。d軸は、ロータRTの磁束方向に配置され、q軸は、d軸に対して直交する方向に配置される。回転角度(電気角)θeは、通常、u軸とd軸の角度を表し、3相(u相、v相、w相)とロータRTとの位置関係を表す情報となる。回転座標となる2相軸で見た場合、モータMTは、抵抗成分Raと、d軸インダクタンス成分Ldおよびq軸インダクタンス成分Lqと、d軸誘起電圧Edおよびq軸誘起電圧Eqとで表される。ただし、d軸誘起電圧Edは、ゼロとなる。3相の電流のベクトル合成によってq軸方向に電流(q軸電流Iq)が流れると、ロータRTに対して回転方向のトルクが発生する。
ここで、モータMT(具体的にはロータRT)の構造として、Lq=LdとなるSPM(Surface Permanent Magnet)構造(非突極構造)と、Lq≠LdとなるIPM(Interior Permanent Magnet)構造(突極構造)とが知られている。SPM構造の場合、d軸方向の電流(d軸電流Id)は、トルクには寄与しない。IPM構造の場合、d軸電流Idによってもトルク(リアクタンストルク)が発生する。また、抵抗成分Raは、SPM構造およびIPM構造を問わず、d軸とq軸で同一値となる。
図1に戻り、インバータINVは、モータドライバとして機能し、モータMTの3相の駆動端子PN(u,v,w)にPWM(Pulse Width Modulation)信号PWMu,PWMv,PWMwに基づく駆動電圧Vu,Vv,Vwをそれぞれ印加する。インバータINVは、図示は省略するが、3相の駆動端子PN(u,v,w)と高電位側電源電圧との間にそれぞれ設けられる3相のハイサイドスイッチング素子と、3相の外部端子PN(u,v,w)と低電位側電源電圧との間にそれぞれ設けられる3相のロウサイドスイッチング素子とを備える。
電流センサISENは、モータMTの3相の駆動電流Iu,Iv(およびIw)を検出する。この例では、2相(u相,v相)の駆動電流Iu,Ivが検出され、残りの1相(w相)の駆動電流Iwは、“Iu+Iv+Iw=0”の関係に基づき算出される。具体的な電流検出方式は、様々な方式が知られており、そのいずれを適用してもよい。代表的には、インバータINV内の各相の電流経路にシャント抵抗を挿入する方式や、インバータINV内にセンス用トランジスタを設ける方式や、インバータINVからの各相の出力経路にカレントトランスを挿入する方式等が挙げられる。
回転角度センサRSENは、例えば、モータMTの回転軸に設置される極対数が1のレゾルバ等であり、モータMTの回転角度(機械角)θを検出する。レゾルバを用いる場合、回転角度センサRSENの中には、リゾルバ・デジタル・コンバータ(RDC)も含まれ、回転角度(機械角)θは、ディジタル値で得られる。なお、回転角度センサRSENは、必ずしもレゾルバに限らず、ロータリエンコーダや、ロータリポテンショメータや、ホール素子やMR素子等の磁気センサであってもよい。
モータ制御装置MCDは、例えば、プロセッサ、アナログ・ディジタル変換器およびPWM変調器(PWM生成用タイマ)等を搭載したマイクロコントローラ等によって構成され、ベクトル制御によってモータMTを制御する。モータ制御装置MCDは、PWM信号生成部PWMGと、3相/2相変換部(電流座標変換部)AXCCと、回転速度算出部RSCALと、誤差補正部ERCと、速度制御器RSCTと、電流制御器ICTとを備える。
誤差補正部ERCは、詳細は後述するが、実使用前の準備段階において、所定の角度間隔で異なる複数の基準回転角度毎の補正値を定めるための補正テーブルを作成する。また、誤差補正部ERCは、実使用段階において、回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θを受けて、当該補正テーブルに基づいて当該回転角度(機械角)θに対応する補正値(ここでは、速度補正値ΔωC)を出力する。
回転速度算出部RSCALは、誤差補正部ERCからの補正値(速度補正値ΔωC)を受けて、当該速度補正値ΔωCを反映してモータMTの補正後の回転速度ωCを算出する。具体的には、回転速度算出部RSCALは、まず、回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θの微分演算に基づいて補正前の回転速度ωを算出する。次いで、回転速度算出部RSCALは、当該補正前の回転速度ωを誤差補正部ERCからの速度補正値ΔωCで補正し(具体的には、減算器SBcを用いて“ω−ΔωC”を算出し)、補正後の回転速度ωC(=ω−ΔωC)を出力する。また、回転速度算出部RSCALは、回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θを受けて回転角度(電気角)θeを生成する。例えば、図2のモータMTの場合、回転角度(電気角)θeは、回転角度(機械角)θを7倍することで生成される。
3相/2相変換部(電流座標変換部)AXCCは、電流センサISENで検出された各相電流をd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換する。具体的には、3相/2相変換部AXCCは、電流センサISENからの2相(u相、v相)の駆動電流Iu,Ivをアナログ・ディジタル変換器を用いてディジタル変換し、残りの1相(w相)の駆動電流Iwをディジタル演算によって算出する。3相/2相変換部AXCCは、このようにして得られた固定座標(u,v,w座標)の駆動電流Iu,Iv,Iwを、回転速度算出部RSCALからの回転角度(電気角)θeを用いて回転座標(dq座標)のd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換する。
速度制御器RSCTは、モータMTの目標回転速度ω*と回転速度算出部RSCALからの補正後の回転速度ωCとの誤差に応じてq軸目標電流Iq*を定める。具体的には、速度制御器RSCTは、減算器SBrs、速度PI制御器PICrsおよびトルク定数乗算器TQMを備える。減算器SBrsは、目標回転速度ω*と補正後の回転速度ωCとの誤差を算出する。速度PI制御器PICrsは、当該誤差をゼロに近づけるために必要なトルク値(操作量)をPI制御(比例・積分制御)を用いて算出する。トルク定数乗算器TQMは、速度PI制御器PICrsからのトルク値に“1/Kt(Ktはトルク定数)”を乗算することで、当該トルク値を得るために必要なq軸目標電流Iq*を定める。
電流制御器ICTは、速度制御器RSCTからのq軸目標電流Iq*および予め定めたd軸目標電流Id*(この例ではゼロ)と3相/2相変換部AXCCからのd軸電流Idおよびq軸電流Iqとの誤差に応じてd軸目標電圧Vd*およびq軸目標電圧Vq*を定める。電流制御器ICTは、具体的には、減算器SBid,SBiqおよび電流PI制御器PICid,PICiqを備える。
減算器SBidは、d軸目標電流Id*と3相/2相変換部AXCCからのd軸電流Idとの誤差を算出し、電流PI制御器PICidは、当該誤差をゼロに近づけるために必要なd軸目標電圧Vd*をPI制御を用いて算出する。同様に、減算器SBiqは、q軸目標電流Iq*と3相/2相変換部AXCCからのq軸電流Iqとの誤差を算出し、電流PI制御器PICiqは、当該誤差をゼロに近づけるために必要なq軸目標電圧Vq*をPI制御を用いて算出する。
PWM信号生成部PWMGは、電流制御器ICTからのd軸目標電圧Vd*およびq軸目標電圧Vq*に基づきモータMTの3相に対するPWM信号PWMu,PWMv,PWMwを生成する。PWM信号生成部PWMGは、具体的には、2相/3相変換部AXCRおよびPWM変調器PWMMDを備える。2相/3相変換器AXCRは、回転速度算出部RSCALからの回転角度(電気角)θeを用いて回転座標(dq座標)から固定座標(u,v,w座標)への変換を行い、d軸目標電圧Vd*およびq軸目標電圧Vq*をu相目標電圧Vu*、v相目標電圧Vv*およびw相目標電圧Vw*に変換する。PWM変調器PWMMDは、3相の目標電圧(Vu*,Vv*,Vw*)に応じたデューティ比をそれぞれ備える3相のPWM信号PWMu,PWMv,PWMwを生成する。
なお、具体例として、モータMTの定常回転時の目標回転速度ω*は60Hz(3600rpm)等である。回転速度算出部RSCALは、例えば5kHzといった所定の速度制御周期(サンプリング周期)で補正後の回転速度ωCおよび回転角度(電気角)θeを更新し、これに伴い、誤差補正部ERCも所定の速度制御周期で速度補正値ΔωCを出力する。速度制御器RSCTは、所定の速度制御周期で動作し、その制御帯域(PI制御の帯域)は、数十Hz程度に設定される。電流制御器ICTは、例えば10kHzといった所定の電流制御周期で動作し、その制御帯域(PI制御の帯域)は、数百Hz程度に設定される。3相/2相変換部AXCCは、所定の電流制御周期で動作し、PWM信号生成部PWMGは、例えば20kHzといった所定のPWM制御周期で動作する。
また、ここでは、モータ制御装置MCDを構成する各部は、主に、マイクロコントローラ内のプロセッサによるプログラム処理によって実装されるものとしたが、勿論、これに限定されず、一部や全部を専用のハードウェアによって実装することも可能である。さらに、図1のモータシステムは、速度制御ループをメジャーループ、その内側の電流制御ループをマイナーループとして速度制御を行ったが、例えば、当該速度制御ループをマイナーループ、その外側に設けた位置制御ループをメジャーループとして位置制御を行うような構成であってもよい。
《モータシステム(比較例)の概略および問題点》
図16は、本発明の比較例となるモータシステムの構成例を示す概略図である。図17は、モータの定常回転時に、回転角度センサから出力される回転角度(機械角)の時間的推移の一例を示す図である。図16に示すモータシステムと図1のモータシステムとの相違点は、モータ制御装置MCD’が図1の誤差補正部ERCの代わりに外乱オブザーバDOBSおよび微分演算部DCALを備える点と、図1とは異なる回転速度算出部RSCAL’を備える点である。
図16は、本発明の比較例となるモータシステムの構成例を示す概略図である。図17は、モータの定常回転時に、回転角度センサから出力される回転角度(機械角)の時間的推移の一例を示す図である。図16に示すモータシステムと図1のモータシステムとの相違点は、モータ制御装置MCD’が図1の誤差補正部ERCの代わりに外乱オブザーバDOBSおよび微分演算部DCALを備える点と、図1とは異なる回転速度算出部RSCAL’を備える点である。
まず、図17に示されるように、モータMTの定常回転時、回転角度センサRSENから出力される回転角度(機械角)θは、理想的には、理想特性ISPに示されるように時間と共に一定の傾きで変化する。しかし、実際に出力される回転角度(機械角)θは、回転角度センサRSENの製造ばらつきやモータMTに対する設置ばらつき等に伴い、実際の特性RSPに示されるように、理想特性ISPを基準として角度誤差Δθを含んだ値となる。このような角度誤差Δθが生じると、回転角度(機械角)θの微分演算によって得られる回転速度に速度リップルが生じる。
そこで、図16の微分演算部DCALは、回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θを微分演算することで補正前の回転速度ωを算出する。外乱オブザーバDOBSは、この補正前の回転速度ωを含んだ各種パラメータ(Vd*,Vq*,Id,Iq,ω)を用いて角度誤差Δθを逐次推定する。回転速度算出部RSCAL’は、減算器SBc’を用いて回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θを外乱オブザーバDOBSからの角度誤差Δθで補正し、この補正後の回転角度θCを微分することで補正後の回転速度ωCを算出する。ここで、外乱オブザーバDOBSは、非特許文献1等に示されるように、例えば、拡張誘起電圧方程式を反映したフィードバック回路を用いて外乱とみなした拡張誘起電圧を推定し、当該推定した拡張誘起電圧に基づいて角度誤差Δθを算出するような回路で構成される。
外乱オブザーバDOBSを構成するフィードバック回路の制御帯域は、高精度な補正値(角度誤差Δθ)を得るため、通常、電気角θeの周波数の数倍以上の大きさに設定する必要がある。例えば、図2のような極対数=7のモータMTを用い、機械角θの周波数が60Hzの場合、電気角θeの周波数は420Hzとなる。しかし、実際には、制御系の発振防止等の観点から制御帯域の上限は例えば1kHz程度に制限される。その結果、電気角θeの周波数が高くなるほど(モータの極対数が多くなるほど)、また、回転速度が速くなるほど制御帯域が不足し、結果として角度誤差Δθの推定精度は低下する。
角度誤差Δθの推定精度が低下すると、補正後の回転速度ωCに、ある程度大きい速度リップルが残存する恐れがある。その結果、モータMTの速度制御に際しての精度や応答性を高めることも困難となり得る。具体的には、例えば、速度制御の応答性を高めるため速度制御器RSCTの制御ゲイン(比例ゲイン、積分ゲイン等)を大きくすると、速度リップルも増幅されてしまうため、応答性を高め難くなる。
一方、回転速度算出部RSCAL’の出力にリップル除去用のフィルタを設けることで速度リップルを低減する方式も考えられる。しかし、速度リップルの周波数は低い場合が多く、速度制御器RSCTの制御帯域に含まれる場合が多いため、効果が得られ難い。さらに、リップル除去用のフィルタを設けると、回転速度算出部RSCAL’からの補正後の回転速度ωCに遅延が生じるため、応答性の低下を招き得る。そこで、図1の誤差補正部ERC等を用いることが有益となる。
《誤差補正部周りの詳細》
図4は、図1における誤差補正部の構成例を示す概略図である。図4に示す誤差補正部ERCは、テーブル作成部TBLGと、補正値算出部CCALとを備える。テーブル作成部TBLGは、実使用前の準備段階において、モータMTを定常回転させた状態で軸誤差演算部ECALを用いて補正テーブルCTBLを作成する。実使用前の準備段階とは、図1のようなモータシステムを構築した(言い換えれば組み立てた)後の段階であり、実際にモータMTを使用した所定のアクチュエータ制御等を行う前(すなわち実使用前)の段階である。補正テーブルCTBLは、例えば、マイクロコントローラ内の不揮発性メモリ等に実装され、一度作成されればモータシステムの仕様を変更しない限り継続的に使用可能なものである。
図4は、図1における誤差補正部の構成例を示す概略図である。図4に示す誤差補正部ERCは、テーブル作成部TBLGと、補正値算出部CCALとを備える。テーブル作成部TBLGは、実使用前の準備段階において、モータMTを定常回転させた状態で軸誤差演算部ECALを用いて補正テーブルCTBLを作成する。実使用前の準備段階とは、図1のようなモータシステムを構築した(言い換えれば組み立てた)後の段階であり、実際にモータMTを使用した所定のアクチュエータ制御等を行う前(すなわち実使用前)の段階である。補正テーブルCTBLは、例えば、マイクロコントローラ内の不揮発性メモリ等に実装され、一度作成されればモータシステムの仕様を変更しない限り継続的に使用可能なものである。
補正テーブルCTBLは、所定の角度間隔(この例では4.5°)で異なる複数の基準回転角度θr[n]毎の補正値を定めるためのものであり、この例では、複数の基準回転角度θr[n]毎の角度誤差Δθ[n]を保持する。軸誤差演算部ECALは、回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θが複数の基準回転角度θr[n]のそれぞれに到達した時点をトリガとして、モータ電圧方程式を用いてモータのdq軸と回転角度センサRSENの検出結果に基づくモータ制御上のγδ軸との軸誤差を演算する。そして、軸誤差演算部ECALは、当該演算によって得られた軸誤差を角度誤差Δθ[n]とみなして補正テーブルCTBLに登録する。
補正値算出部CCALは、実使用段階において、補正テーブルCTBLに基づき、回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θに対応する角度誤差Δθ[n]を認識し、その微分演算によって速度補正値ΔωCを算出および出力する。具体的には、補正値算出部CCALは、回転角度(機械角)θに応じて、複数の基準回転角度θr[n]の中から隣接関係となる2個の基準回転角度θr[k],θr[k−1]を定める。そして、補正値算出部CCALは、当該2個の基準回転角度θr[k],θr[k−1]にそれぞれ対応する2個の軸誤差(角度誤差)Δθ[k],Δθ[k−1]の差分値を、所定の速度制御周期(例えば5kHzの周期(200μs))Tsで除算することで速度補正値ΔωCを算出する。
図5は、図4の誤差補正部の動作例を説明する模式図である。図5には、モータMTの定常回転時に回転角度(言い換えれば時間)の変化に伴う角度誤差Δθの変化の一例が示される。回転角度センサRSENでは、実際の特性RSPに示されるように、回転角度(機械角)θに対して角度誤差Δθが生じ得る。これに伴い、当該角度誤差Δθの微分演算によって速度誤差Δω(=d(Δθ)/dt)も生じ得る。そこで、補正値算出部CCALは、図5に示されるように、回転角度(機械角)θに対応する2個の基準回転角度θr[k],θr[k−1]を定め、それに対応する2個の軸誤差(角度誤差)Δθ[k],Δθ[k−1]の差分値に基づいて速度誤差Δωを打ち消すための速度補正値ΔωCを算出する。
2個の基準回転角度θr[k],θr[k−1]は、様々な方式で定めることができる。例えば、“θr[k−1]<θ≦θr[k]”の場合に、当該“θr[k],θr[k−1]”を2個の基準回転角度とする方式等が挙げられる。この場合、図4の補正テーブルCTBLにおいて、例えば、“4.5°<θ≦9.0°”に対して2個の基準回転角度“θr[2](=9.0°),θr[1](=4.5°)”が選択され、対応する角度誤差Δθ[2],Δθ[1]の差分値(dt2−dt1)に基づいて速度補正値ΔωCが算出される。
なお、この例では、補正テーブルCTBLは、複数の基準回転角度θr[n]毎の角度誤差(軸誤差)Δθ[n]を保持した。ただし、速度制御周期Tsが一定ならば、基準回転角度θr[k],θr[k−1]に対して速度補正値ΔωCが一義的に定まることから、補正テーブルCTBLは、場合によっては、複数の基準回転角度θr[n]毎の速度補正値(ΔωC[n])を保持することも可能である。
図6は、図4の補正テーブルにおける基準回転角度の取得数について説明する図である。図6に示すように、角度誤差Δθを一次関数で近似できる場合には、例えば、90°毎に少なくとも10点程度の取得数があれば、角度誤差Δθを再現できる。この場合の取得数(Nmax)は、例えば、40点程度(=10点×4×1次)となる。また、角度誤差Δθを二次関数で近似できる場合の取得数(Nmax)は、例えば、80点程度(=10点×4×2次)となる。
図4の補正テーブルCTBLの例では、基準回転角度の取得数(Nmax)は80点であり、隣接する基準回転角度の角度間隔θcalc(図6)は4.5°である。補正テーブルCTBLのサイズ(必要な記憶容量)は、例えば“4バイト(浮動小数点)×取得数”となり、80点であれば320バイトとなる。なお、ここでは、角度誤差Δθの次数に基づいて取得数を定めたが、回転角度センサRSENが1回転した時の速度リップル波形の次数を基づいて取得数を定めてもよい。また、必要な記憶容量を確保できれば、取得数が多いほど角度誤差Δθの再現性が高まるため、取得数を更に増やしてもよい。
図7は、図4におけるテーブル作成部の処理内容の一例を示すフロー図である。当該フローは、実使用前の準備段階において、例えばプログラム処理等によって実行される。テーブル作成部TBLGは、まず、図1の速度制御器RSCTの制御帯域を実使用段階よりも下げた状態で図1の速度制御ループおよび電流制御ループを用いてモータMTを定常回転させる(ステップS101)。具体的には、速度制御器RSCTの実使用段階での制御帯域は、例えば、数十Hz等であるが、それを半分以下(望ましくは1/10程度)に下げた状態で、モータMTを実使用段階における定常回転時の目標回転速度ω*で回転させる。
これにより、速度制御器RSCTの制御動作に起因するモータMTの回転速度の変動(ひいては、回転角度(機械角)θの揺らぎ要素)を抑制できるため、回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θは、純粋に、回転角度センサRSENに起因する角度誤差Δθを反映した値となる。なお、速度制御器RSCTの制御帯域は、速度PI制御器PICrsの制御ゲイン(比例ゲイン、積分ゲイン)によって定められる。速度PI制御器PICrsは、当該制御ゲインが可変設定可能に構成される。
次いで、テーブル作成部TBLGは、n=0とし(ステップS102)、基準回転角度θr[n]を、図6に示した角度間隔θcalcを用いて“θcalc×n”に定める(ステップS103)。続いて、テーブル作成部TBLGは、回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θがステップS103で定めた基準回転角度θr[n]に到達するのを待つ(ステップS104,S105)。回転角度(機械角)θが基準回転角度θr[n]に到達すると、テーブル作成部TBLGは、その時点をトリガとして、軸誤差演算部ECALを用いて、モータのdq軸と回転角度センサRSENの検出結果に基づくモータ制御上のγδ軸との軸誤差を演算する(ステップS106)。これによって得られる軸誤差は、回転角度センサRSENの当該基準回転角度θr[n]における角度誤差Δθ[n]とみなすことができる。
そこで、テーブル作成部TBLGは、ステップS106で得られた基準回転角度θr[n]と角度誤差Δθ[n]との対応関係を補正テーブルCTBLに登録し(ステップS107)、nをインクリメントする(ステップS108)。その後、テーブル作成部TBLGは、nが予め定めた最大値(取得数)Nmax(例えば79等)を超えるまでステップS103〜S108のループ処理を繰り返す(ステップS109)。これにより、図4に示したような補正テーブルCTBLが作成される。
ここで、ステップS106における軸誤差演算部ECALの処理内容について具体的に説明する。まず、モータMTのd軸およびq軸の電圧方程式は、図3に示した等価回路に基づき式(1)および式(2)となる。
Vd*=(Ra+s×Ld)×Id−ω×Lq×Iq+Eγ …(1)
Vq*=(Ra+s×Lq)×Iq+ω×Ld×Id+Eδ …(2)
“Vd*”および“Vq*”は、電流制御器ICTからのd軸およびq軸目標電圧であり、“Id”および“Iq”は、3相/2相変換部AXCCからのd軸およびq軸電流である。“Ra”、“Ld”および“Lq”は、モータMTの抵抗成分、d軸およびq軸インダクタンス成分であり、予め手動で又は公知のパラメータ同定器等を用いて設定される。“ω”は、回転速度算出部RSCALにおける補正前の回転速度である。図7のフローを実行する際には、速度補正値ΔωCはゼロに設定され、“ωC=ω”となる。“s”は微分演算子である。“Eγ”は、d軸(モータの実軸)に対応するγ軸(モータの制御軸)上のγ軸誘起電圧であり、“Eδ”は、q軸(モータの実軸)に対応するδ軸(モータの制御軸)上のδ軸誘起電圧である。
Vq*=(Ra+s×Lq)×Iq+ω×Ld×Id+Eδ …(2)
“Vd*”および“Vq*”は、電流制御器ICTからのd軸およびq軸目標電圧であり、“Id”および“Iq”は、3相/2相変換部AXCCからのd軸およびq軸電流である。“Ra”、“Ld”および“Lq”は、モータMTの抵抗成分、d軸およびq軸インダクタンス成分であり、予め手動で又は公知のパラメータ同定器等を用いて設定される。“ω”は、回転速度算出部RSCALにおける補正前の回転速度である。図7のフローを実行する際には、速度補正値ΔωCはゼロに設定され、“ωC=ω”となる。“s”は微分演算子である。“Eγ”は、d軸(モータの実軸)に対応するγ軸(モータの制御軸)上のγ軸誘起電圧であり、“Eδ”は、q軸(モータの実軸)に対応するδ軸(モータの制御軸)上のδ軸誘起電圧である。
ここで、モータMTが定常回転状態であり、回転角度センサRSENからの回転角度θに角度誤差Δθが含まれない場合、回転角度センサRSENの検出結果に基づくモータ制御上のγδ軸は、モータMTのdq軸と一致する。この場合、式(1)によって算出されるγ軸誘起電圧Eγはd軸誘起電圧Edと同じゼロとなる。一方、回転角度θに角度誤差Δθが含まれる場合、それが補正前の回転速度ωに反映され、式(1)によって算出されるγ軸誘起電圧Eγはd軸誘起電圧Edに一致しない(すなわち非ゼロとなる)。その結果、図8に示されるように、dq軸とγδ軸との間に角度誤差Δθに応じた軸誤差が発生する。
図8は、モータの実軸となるdq軸とモータの制御軸となるγδ軸との関係を示す図である。図8に示されるように、γ軸誘起電圧Eγが非ゼロの場合、γ軸誘起電圧Eγとδ軸誘起電圧Eδとのベクトル合成値がq軸誘起電圧Eqと一致するように、dq軸とγδ軸との間に軸誤差(Δθ)が発生する。当該軸誤差(Δθ)は、式(3)で定められ、回転角度センサRSENの角度誤差Δθとみなすことができる。
Δθ=tan−1(Eγ/Eδ) …(3)
ここで、式(3)の角度誤差(軸誤差)Δθを演算する際に必要となるγ軸誘起電圧Eγおよびδ軸誘起電圧Eδには、式(1)および式(2)に示されるように微分演算子“s”が含まれる。このため、式(3)の演算を行うためには、通常、フィードバック回路からなる外乱オブザーバが必要とされる。しかし、外乱オブザーバを用いると、図16の場合と同様に制御帯域の問題が生じる結果、補正テーブルCTBLを高精度に作成することが困難となる恐れがある。
ここで、式(3)の角度誤差(軸誤差)Δθを演算する際に必要となるγ軸誘起電圧Eγおよびδ軸誘起電圧Eδには、式(1)および式(2)に示されるように微分演算子“s”が含まれる。このため、式(3)の演算を行うためには、通常、フィードバック回路からなる外乱オブザーバが必要とされる。しかし、外乱オブザーバを用いると、図16の場合と同様に制御帯域の問題が生じる結果、補正テーブルCTBLを高精度に作成することが困難となる恐れがある。
一方、特に、高速回転が求められるモータMTでは、式(1)および式(2)における抵抗成分“Ra”および各インダクタンス成分“Ld”,“Lq”は共に小さいため、右辺第1項を無視しても、実用上十分な精度でγ軸誘起電圧Eγおよびδ軸誘起電圧Eδを演算することができる。そこで、軸誤差演算部ECALは、式(4)によって角度誤差(軸誤差)Δθを演算する。これによって、軸誤差演算部ECALは、単純な数式演算処理によって角度誤差Δθを演算することができるため、制御帯域の問題が解消される。なお、式(4)における各パラメータ(Vd*,Vq*,Id,Iq)は、所定の電流制御周期(10kHzの周期等)で更新される。このため、軸誤差演算部ECALも、所定の電流制御周期で式(4)の角度誤差Δθを演算する。
Δθ=tan−1((Vd*+ω×Lq×Iq)/(Vq*−ω×Ld×Id)) …(4)
図9は、図4における補正値算出部の処理内容の一例を示すフロー図である。当該フローは、実使用段階において、例えばプログラム処理等によって実行される。補正値算出部CCALは、所定の速度制御周期(5kHzの周期等)で回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θを取得する(ステップS201)。次いで、補正値算出部CCALは、図4および図5で述べたように、取得した回転角度(機械角)θに対応する基準回転角度θr[k],θr[k−1]を定め、補正テーブルCTBLから対応する角度誤差Δθ[k],Δθ[k−1]を取得する(ステップS202)。続いて、補正値算出部CCALは、所定の速度制御周期Tsを用いて、式(5)によって速度補正値ΔωCを算出および出力する(ステップS203)。
図9は、図4における補正値算出部の処理内容の一例を示すフロー図である。当該フローは、実使用段階において、例えばプログラム処理等によって実行される。補正値算出部CCALは、所定の速度制御周期(5kHzの周期等)で回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θを取得する(ステップS201)。次いで、補正値算出部CCALは、図4および図5で述べたように、取得した回転角度(機械角)θに対応する基準回転角度θr[k],θr[k−1]を定め、補正テーブルCTBLから対応する角度誤差Δθ[k],Δθ[k−1]を取得する(ステップS202)。続いて、補正値算出部CCALは、所定の速度制御周期Tsを用いて、式(5)によって速度補正値ΔωCを算出および出力する(ステップS203)。
ΔωC=(Δθ[k]−Δθ[k−1])/Ts …(5)
以上、図1のモータシステムを用いることで、図16のような外乱オブザーバDOBSを用いることなく角度誤差Δθを推定できるようになる。これにより、例えば図2のような極対数が多いモータMTを用いる場合であっても、角度誤差Δθを高精度に推定できるようになり、その結果として、回転速度の速度リップルを低減することが可能になる。速度リップルを低減できると、モータMTの速度制御に際しての精度や応答性を高めることも可能になる。また、図16で述べたようなリップル除去用のフィルタも不要であるため、遅延の問題も生じず、十分な応答性を維持できる。
以上、図1のモータシステムを用いることで、図16のような外乱オブザーバDOBSを用いることなく角度誤差Δθを推定できるようになる。これにより、例えば図2のような極対数が多いモータMTを用いる場合であっても、角度誤差Δθを高精度に推定できるようになり、その結果として、回転速度の速度リップルを低減することが可能になる。速度リップルを低減できると、モータMTの速度制御に際しての精度や応答性を高めることも可能になる。また、図16で述べたようなリップル除去用のフィルタも不要であるため、遅延の問題も生じず、十分な応答性を維持できる。
《誤差補正部周り(変形例)の詳細》
図10は、図1のモータシステムの変形例であり、図1とは異なる誤差補正部周りの構成例を示す概略図である。図10に示す誤差補正部ERCaは、図4に示したテーブル作成部TBLGを備える。当該誤差補正部ERCaは、実使用段階において、図1および図4に示した誤差補正部ERCと異なり、回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θを受け、補正テーブルCTBLに基づき、対応する角度誤差Δθを角度補正値として出力する。すなわち、図1および図4の誤差補正部ERCが速度補正値ΔωCを出力するのに対して、図10の誤差補正部ERCaは、角度補正値(Δθ)を出力する。
図10は、図1のモータシステムの変形例であり、図1とは異なる誤差補正部周りの構成例を示す概略図である。図10に示す誤差補正部ERCaは、図4に示したテーブル作成部TBLGを備える。当該誤差補正部ERCaは、実使用段階において、図1および図4に示した誤差補正部ERCと異なり、回転角度センサRSENからの回転角度(機械角)θを受け、補正テーブルCTBLに基づき、対応する角度誤差Δθを角度補正値として出力する。すなわち、図1および図4の誤差補正部ERCが速度補正値ΔωCを出力するのに対して、図10の誤差補正部ERCaは、角度補正値(Δθ)を出力する。
回転速度算出部RSCAL’は、図16の場合と同様に、減算器SBc’を用いて回転角度(機械角)θを角度補正値(Δθ)で補正し、この補正後の回転角度θCを微分することで補正後の回転速度ωCを算出する。なお、補正テーブルCTBLを作成する際には、角度補正値(Δθ)はゼロに設定され、これに伴い補正後の回転速度ωCは補正前の回転速度ωに等しくなる。
図10のような構成例を用いた場合も、図1の場合と同様に、図16のような外乱オブザーバを用いることなく角度誤差Δθを推定できる。このため、例えば極対数が多いモータMTを用いる場合であっても速度リップルを低減できる。ただし、図10の構成例を用いた場合、回転速度算出部RSCAL’が補正後の回転角度θCを微分することで補正後の回転速度ωCを算出することになるため、当該微分演算に伴い補正精度が低下する恐れがある。
すなわち、図10の構成例では、実質的に、角度補正値(Δθ)ではなく、角度補正値(Δθ)に対して微分演算に伴う量子化誤差を重畳した値で回転速度を補正することになる。一方、図1の構成例は、速度補正値ΔωCで回転速度を直接補正する方式であり、速度補正値ΔωCには、微分演算に伴う量子化誤差は重畳しない。このため、補正精度の観点では、図10の構成例よりも図1の構成例を用いる方が望ましい。
また、図1の構成例を用いる場合、速度補正値ΔωCによる補正対象となる補正前の回転速度ωを微分演算を用いない方式で算出すれば、補正前の回転速度ωに含まれ得る量子化誤差の影響も排除できるため、補正精度をより高めることができる。図11(a)、図11(b)および図11(c)は、微分演算を用いない回転速度検出方式の一例を示す図である。
図11(a)には、回転角度センサRSENを構成するものの一例となるレゾルバRSVの等価回路が示される。レゾルバRSVは、図1のモータ制御装置MCDから励磁周波数finの励磁信号Vinが供給されると、それを回転角度(機械角)θのサイン成分(sinθ)で変調した位置信号Vo1と、回転角度(機械角)θのコサイン成分(cosθ)で変調した位置信号Vo2とを出力する。回転角度センサRSENに含まれるRDC(リゾルバ・デジタル・コンバータ)は、これら位置信号Vo1およびVo2を合成して、RDC出力信号Voを得る。このため、レゾルバRSVの回転速度(回転周波数)をfrとすると、RDC出力信号Voの周波数は、変調に伴い“fin±fr”となる。
モータMT(レゾルバRSV)が静止状態の場合、図11(b)に示されるように、位置信号Vo1およびVo2に基づくRDC出力信号Voの周波数は、励磁信号Vinの励磁周波数finに等しくなる。一方、モータMT(レゾルバRSV)が回転状態の場合、図11(c)に示されるように、位置信号Vo1およびVo2に基づくRDC出力信号Voの周波数と励磁信号Vinの励磁周波数finとの間には、回転周波数frに等しい周波数差が生じる。そこで、図1のモータ制御装置MCDは、例えば、励磁信号VinとRDC出力信号Voとの位相差を監視することで、回転周波数fr(ひいては補正前の回転角度θ)を検出することができる。
《実施の形態1の主要な効果》
以上、実施の形態1のモータシステムを用いることで、代表的には、回転角度センサRSENを用いてモータMTの回転速度を検出する際に、速度リップルを低減することが可能になる。また、高精度(ひいては高価)な回転角度センサRSENを用いずとも速度リップルを低減できるため、モータシステムのコストを低減できる。
以上、実施の形態1のモータシステムを用いることで、代表的には、回転角度センサRSENを用いてモータMTの回転速度を検出する際に、速度リップルを低減することが可能になる。また、高精度(ひいては高価)な回転角度センサRSENを用いずとも速度リップルを低減できるため、モータシステムのコストを低減できる。
(実施の形態2)
《前提となる問題点》
図12は、本発明の実施の形態2によるモータシステムにおいて、前提となる問題点を説明する図である。実施の形態1で述べたように、図4の補正テーブルCTBLには、複数の基準回転角度θr[n]毎の角度誤差Δθ[n]が登録される。当該各角度誤差Δθ[n]は、ディジタル値であり、実際には、各種ディジタル化に伴う量子化誤差を含んだ値となる。具体的には、例えば、図1において、各相電流(Iu,Iv)をディジタル化する際の量子化誤差や、回転角度センサRSENの回転角度(本来はアナログ値)をディジタル化する際の量子化誤差等が挙げられる。
《前提となる問題点》
図12は、本発明の実施の形態2によるモータシステムにおいて、前提となる問題点を説明する図である。実施の形態1で述べたように、図4の補正テーブルCTBLには、複数の基準回転角度θr[n]毎の角度誤差Δθ[n]が登録される。当該各角度誤差Δθ[n]は、ディジタル値であり、実際には、各種ディジタル化に伴う量子化誤差を含んだ値となる。具体的には、例えば、図1において、各相電流(Iu,Iv)をディジタル化する際の量子化誤差や、回転角度センサRSENの回転角度(本来はアナログ値)をディジタル化する際の量子化誤差等が挙げられる。
図12の例では、基準回転角度θr[i]に対応する角度誤差Δθ[i]に量子化誤差ΔQ[i]が含まれ、基準回転角度θr[i+2]に対応する角度誤差Δθ[i+2]に量子化誤差ΔQ[i+2]が含まれる。このような量子化誤差が含まれると、補正後の回転速度ωCに高次の速度リップルが重畳され得る。
《テーブル作成部(実施の形態2)の詳細》
図13は、本発明の実施の形態2によるモータシステムにおいて、図1の誤差補正部に含まれるテーブル作成部の構成例および動作例を示す概略図である。図13のテーブル作成部TBLGbは、図4に示した軸誤差演算部ECALに加えて、移動平均処理部MAVを備える。当該テーブル作成部TBLGbは、実使用前の準備段階において、複数の基準回転角度θr[n]毎の軸誤差Δθr[n](すなわち図4の補正テーブルCTBL)に対して更に移動平均処理を行うことで補正テーブルCTBLbを作成する。図4に示した補正値算出部CCALは、当該補正テーブルCTBLbに基づいて速度補正値ΔωCを算出および出力する。
図13は、本発明の実施の形態2によるモータシステムにおいて、図1の誤差補正部に含まれるテーブル作成部の構成例および動作例を示す概略図である。図13のテーブル作成部TBLGbは、図4に示した軸誤差演算部ECALに加えて、移動平均処理部MAVを備える。当該テーブル作成部TBLGbは、実使用前の準備段階において、複数の基準回転角度θr[n]毎の軸誤差Δθr[n](すなわち図4の補正テーブルCTBL)に対して更に移動平均処理を行うことで補正テーブルCTBLbを作成する。図4に示した補正値算出部CCALは、当該補正テーブルCTBLbに基づいて速度補正値ΔωCを算出および出力する。
移動平均処理部MAVは、この例では、基準回転角度θr[n]の角度誤差Δθ[n]を対象に、降順側に位置するj個の角度誤差Δθ[n−j]〜Δθ[n−1]と、昇順側に位置するj個の角度誤差Δθ[n+1]〜Δθ[n+j]とを用いて移動平均処理(すなわち加算して平均化する)を行っている。そして、移動平均処理部MAVは、その結果得られる角度誤差Δθa[n]を基準回転角度θr[n]に対応付けて補正テーブルCTBLbに登録する。なお、この際に、n=79の後は、n=0とみなされる。また、例えば、“j=5”等である。
《実施の形態2の主要な効果》
以上、実施の形態2のモータシステムを用いることで、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。この際には、高次の速度リップルを含めて低減することが可能になる。
以上、実施の形態2のモータシステムを用いることで、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。この際には、高次の速度リップルを含めて低減することが可能になる。
(実施の形態3)
《誤差補正部(実施の形態3)の詳細》
図14は、本発明の実施の形態3によるモータシステムにおいて、図1の誤差補正部の構成例を示す概略図である。図14に示す誤差補正部ERCcは、図4に示した誤差補正部ERCと比較して、テーブル作成部TBLGc内に、図4の軸誤差演算部ECALの代わりに外乱オブザーバDOBSが設けられる点が異なっている。外乱オブザーバDOBSは、図16の場合と同様に、フィードバック回路によって軸誤差Δθを推定し、図4の場合と同様に、当該軸誤差Δθを補正テーブルCTBLに登録する。
《誤差補正部(実施の形態3)の詳細》
図14は、本発明の実施の形態3によるモータシステムにおいて、図1の誤差補正部の構成例を示す概略図である。図14に示す誤差補正部ERCcは、図4に示した誤差補正部ERCと比較して、テーブル作成部TBLGc内に、図4の軸誤差演算部ECALの代わりに外乱オブザーバDOBSが設けられる点が異なっている。外乱オブザーバDOBSは、図16の場合と同様に、フィードバック回路によって軸誤差Δθを推定し、図4の場合と同様に、当該軸誤差Δθを補正テーブルCTBLに登録する。
具体的には、外乱オブザーバDOBSは、例えば、前述した式(1)のγ軸誘起電圧Eγおよび式(2)のδ軸誘起電圧Eδに基づき式(3)の軸誤差(Δθ)を推定するフィードバック回路である。このような外乱オブザーバDOBSを用いると、図4の誤差補正部ERCのように式(4)を用いて軸誤差(Δθ)を推定する場合と比較して、推定精度をより高められる場合がある。ただし、前述したように、モータMTの電気角θeの周波数に対して外乱オブザーバDOBSの制御帯域が十分に確保できることが前提となる。
そこで、テーブル作成部TBLGcは、実使用前の準備段階において、モータMTを実使用段階での回転速度よりも低い回転速度で定常回転させた状態で外乱オブザーバDOBSを用いて軸誤差Δθを演算する。具体的には、テーブル作成部TBLGcは、図7のステップS101においてモータMTを定常回転させる際に、目標回転速度ω*を実使用段階の数分の1程度の値等に設定する。
これにより、モータMTの電気角θeの周波数に対して外乱オブザーバDOBSの制御帯域を十分に確保することができ、軸誤差Δθを高精度に推定することが可能になる。この際に、回転角度センサRSENの角度誤差(軸誤差)Δθは、原理上、回転速度には依存しないため、このように回転速度を下げた状態で演算を行っても特に問題は生じない。また、実使用段階では、外乱オブザーバDOBSは動作しないため、制御帯域の問題も特に生じない。
《実施の形態3の主要な効果》
以上、実施の形態3のモータシステムを用いることで、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。さらに、実施の形態1の場合と比較して回転速度の補正精度をより高められる(ひいては、速度リップルをより低減できる)場合がある。なお、実施の形態3の方式は、実施の形態2の方式と組み合わせることも可能である。
以上、実施の形態3のモータシステムを用いることで、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。さらに、実施の形態1の場合と比較して回転速度の補正精度をより高められる(ひいては、速度リップルをより低減できる)場合がある。なお、実施の形態3の方式は、実施の形態2の方式と組み合わせることも可能である。
(実施の形態4)
《モータシステム(実施の形態4)の概略》
図15は、本発明の実施の形態4によるモータシステムの構成例を示す概略図である。図15に示すモータシステムは、図16の構成例と比較して、外乱オブザーバDOBSの代わりに図4に示したような軸誤差演算部ECALが設けられる点が異なっている。ただし、軸誤差演算部ECALは、図4の場合と異なり、実使用段階において、前述した式(4)を用いて角度誤差(軸誤差)Δθを演算する。図16で述べたように、実使用段階で外乱オブザーバDOBSを用いると、制御帯域の問題が生じ得るが、軸誤差演算部ECALを用いることで制御帯域の問題を解決できる。
《モータシステム(実施の形態4)の概略》
図15は、本発明の実施の形態4によるモータシステムの構成例を示す概略図である。図15に示すモータシステムは、図16の構成例と比較して、外乱オブザーバDOBSの代わりに図4に示したような軸誤差演算部ECALが設けられる点が異なっている。ただし、軸誤差演算部ECALは、図4の場合と異なり、実使用段階において、前述した式(4)を用いて角度誤差(軸誤差)Δθを演算する。図16で述べたように、実使用段階で外乱オブザーバDOBSを用いると、制御帯域の問題が生じ得るが、軸誤差演算部ECALを用いることで制御帯域の問題を解決できる。
《実施の形態4の主要な効果》
以上、実施の形態4のモータシステムを用いることで、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。ただし、図15の構成例では、図10の場合と同様に、角度補正値(Δθ)に対して微分演算に伴う量子化誤差が重畳する恐れがあり、また、図13で述べたような移動平均処理を加えることも困難となり得る。したがって、このような観点では、実施の形態1等のように補正テーブルCTBLを用いる方式が望ましい。
以上、実施の形態4のモータシステムを用いることで、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。ただし、図15の構成例では、図10の場合と同様に、角度補正値(Δθ)に対して微分演算に伴う量子化誤差が重畳する恐れがあり、また、図13で述べたような移動平均処理を加えることも困難となり得る。したがって、このような観点では、実施の形態1等のように補正テーブルCTBLを用いる方式が望ましい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
《付記》
(1)回転角度センサで回転角度が検出され、ベクトル制御によって制御されるモータを対象に、モータ制御装置を用いて前記モータの回転速度を検出する方法であって、
前記モータ制御装置は、前記回転角度センサからの前記回転角度を受け、前記モータの補正前の回転速度を“ω”、d軸目標電圧を“Vd*”、q軸目標電圧を“Vq*”、d軸電流を“Id”、q軸電流を“Iq”、d軸インダクタンス成分およびq軸インダクタンス成分を“Ld”および“Lq”、dq軸と前記回転角度センサの検出結果に基づくγδ軸との軸誤差を“Δθ”として、
Δθ=tan−1((Vd*+ω×Lq×Iq)/(Vq*−ω×Ld×Id))
を演算し、当該軸誤差を反映して前記モータの補正後の回転速度を算出する、
モータの回転速度検出方法。
(1)回転角度センサで回転角度が検出され、ベクトル制御によって制御されるモータを対象に、モータ制御装置を用いて前記モータの回転速度を検出する方法であって、
前記モータ制御装置は、前記回転角度センサからの前記回転角度を受け、前記モータの補正前の回転速度を“ω”、d軸目標電圧を“Vd*”、q軸目標電圧を“Vq*”、d軸電流を“Id”、q軸電流を“Iq”、d軸インダクタンス成分およびq軸インダクタンス成分を“Ld”および“Lq”、dq軸と前記回転角度センサの検出結果に基づくγδ軸との軸誤差を“Δθ”として、
Δθ=tan−1((Vd*+ω×Lq×Iq)/(Vq*−ω×Ld×Id))
を演算し、当該軸誤差を反映して前記モータの補正後の回転速度を算出する、
モータの回転速度検出方法。
AXCC 3相/2相変換部(電流座標変換部)
CCAL 補正値算出部
CTBL 補正テーブル
DOBS 外乱オブザーバ
ECAL 軸誤差演算部
ERC 誤差補正部
ICT 電流制御器
INV インバータ
ISEN 電流センサ
Id d軸電流
Iq q軸電流
Ld d軸インダクタンス成分
Lq q軸インダクタンス成分
MAV 移動平均処理部
MCD モータ制御装置
MT モータ
PWMG PWM信号生成部
RSCAL 回転速度算出部
RSCT 速度制御器
RSEN 回転角度センサ
RSV レゾルバ
TBLG テーブル作成部
Ts 速度制御周期
Vd* d軸目標電圧
Vq* q軸目標電圧
Δθ 角度誤差(軸誤差)
ΔωC 速度補正値
θ 回転角度(機械角)
θcalc 角度間隔
θe 回転角度(電気角)
θr 基準回転角度
ω 補正前の回転速度
ω* 目標回転速度
ωC 補正後の回転速度
CCAL 補正値算出部
CTBL 補正テーブル
DOBS 外乱オブザーバ
ECAL 軸誤差演算部
ERC 誤差補正部
ICT 電流制御器
INV インバータ
ISEN 電流センサ
Id d軸電流
Iq q軸電流
Ld d軸インダクタンス成分
Lq q軸インダクタンス成分
MAV 移動平均処理部
MCD モータ制御装置
MT モータ
PWMG PWM信号生成部
RSCAL 回転速度算出部
RSCT 速度制御器
RSEN 回転角度センサ
RSV レゾルバ
TBLG テーブル作成部
Ts 速度制御周期
Vd* d軸目標電圧
Vq* q軸目標電圧
Δθ 角度誤差(軸誤差)
ΔωC 速度補正値
θ 回転角度(機械角)
θcalc 角度間隔
θe 回転角度(電気角)
θr 基準回転角度
ω 補正前の回転速度
ω* 目標回転速度
ωC 補正後の回転速度
Claims (20)
- ベクトル制御によって制御されるモータと、
前記モータの回転角度を検出する回転角度センサと、
前記モータの各相電流を検出する電流センサと、
前記電流センサで検出された前記各相電流をd軸電流およびq軸電流に変換する電流座標変換部と、
実使用前の準備段階において、所定の角度間隔で異なる複数の基準回転角度毎の補正値を定めるための補正テーブルを作成し、実使用段階において、前記回転角度センサからの前記回転角度を受けて、前記補正テーブルに基づいて当該回転角度に対応する補正値を出力する誤差補正部と、
前記誤差補正部からの前記補正値を受けて、前記補正値を反映して前記モータの補正後の回転速度を算出する回転速度算出部と、
前記モータの目標回転速度と前記回転速度算出部からの前記補正後の回転速度との誤差に応じて目標電流を定める速度制御器と、
前記速度制御器からの前記目標電流と前記電流座標変換部からの前記d軸電流および前記q軸電流との誤差に応じてd軸目標電圧およびq軸目標電圧を定める電流制御器と、
前記電流制御器からの前記d軸目標電圧および前記q軸目標電圧に基づき前記モータの各相に対するPWM信号を生成するPWM信号生成部と、
を有し、
前記誤差補正部は、前記準備段階において、前記モータを定常回転させた状態で、前記回転角度センサからの前記回転角度が前記複数の基準回転角度のそれぞれに到達した時点をトリガとして、前記モータの補正前の回転速度、前記d軸目標電圧、前記q軸目標電圧、前記d軸電流および前記q軸電流をパラメータとするモータ電圧方程式を用いて前記モータのdq軸と前記回転角度センサの検出結果に基づくγδ軸との軸誤差を演算し、前記複数の基準回転角度毎の前記軸誤差の演算結果に基づいて前記補正テーブルを作成する、
モータシステム。 - 請求項1記載のモータシステムにおいて、
前記誤差補正部は、前記実使用段階において、前記回転角度センサからの前記回転角度に対応する速度補正値を出力し、
前記回転速度算出部は、前記実使用段階において、前記モータの前記補正前の回転速度を前記速度補正値で補正する、
モータシステム。 - 請求項2記載のモータシステムにおいて、
前記回転速度算出部は、前記回転角度センサからの前記回転角度の微分演算に基づいて前記補正前の回転速度を算出する、
モータシステム。 - 請求項2記載のモータシステムにおいて、
前記誤差補正部は、前記回転角度センサからの前記回転角度に応じて前記複数の基準回転角度の中から隣接関係となる2個の基準回転角度を定め、当該2個の基準回転角度にそれぞれ対応する2個の前記軸誤差の差分値を、所定の制御周期で除算することで前記速度補正値を算出する、
モータシステム。 - 請求項1記載のモータシステムにおいて、
前記速度制御器は、制御帯域が可変設定可能に構成され、
前記誤差補正部は、前記準備段階において、前記速度制御器の前記制御帯域を前記実使用段階よりも下げた状態で前記軸誤差の演算を行う、
モータシステム。 - 請求項1記載のモータシステムにおいて、
前記誤差補正部は、前記補正前の回転速度を“ω”、前記d軸目標電圧を“Vd*”、前記q軸目標電圧を“Vq*”、前記d軸電流を“Id”、前記q軸電流を“Iq”、前記モータのd軸インダクタンス成分およびq軸インダクタンス成分を“Ld”および“Lq”、前記軸誤差を“Δθ”として、
Δθ=tan−1((Vd*+ω×Lq×Iq)/(Vq*−ω×Ld×Id))
を演算する、
モータシステム。 - 請求項1記載のモータシステムにおいて、
前記誤差補正部は、フィードバック回路によって前記軸誤差を推定する外乱オブザーバを備え、前記準備段階において、前記モータを前記実使用段階での回転速度よりも低い回転速度で定常回転させた状態で前記外乱オブザーバを用いて前記軸誤差を演算する、
モータシステム。 - 請求項1記載のモータシステムにおいて、
前記誤差補正部は、前記準備段階において、前記複数の基準回転角度毎の前記軸誤差に対して更に移動平均処理を行うことで前記補正テーブルを作成する、
モータシステム。 - 請求項1記載のモータシステムにおいて、
前記回転角度センサは、レゾルバである、
モータシステム。 - 回転角度センサで回転角度が検出されるモータをベクトル制御によって制御するモータ制御装置であって、
前記モータの各相電流をd軸電流およびq軸電流に変換する電流座標変換部と、
実使用前の準備段階において、所定の角度間隔で異なる複数の基準回転角度毎の補正値を定めるための補正テーブルを作成し、実使用段階において、前記回転角度センサからの前記回転角度を受けて、前記補正テーブルに基づいて当該回転角度に対応する補正値を出力する誤差補正部と、
前記誤差補正部からの前記補正値を受けて、前記補正値を反映して前記モータの補正後の回転速度を算出する回転速度算出部と、
前記モータの目標回転速度と前記回転速度算出部からの前記補正後の回転速度との誤差に応じて目標電流を定める速度制御器と、
前記速度制御器からの前記目標電流と前記電流座標変換部からの前記d軸電流および前記q軸電流との誤差に応じてd軸目標電圧およびq軸目標電圧を定める電流制御器と、
前記電流制御器からの前記d軸目標電圧および前記q軸目標電圧に基づき前記モータの各相に対するPWM信号を生成するPWM信号生成部と、
を有し、
前記誤差補正部は、前記準備段階において、前記モータを定常回転させた状態で、前記回転角度センサからの前記回転角度が前記複数の基準回転角度のそれぞれに到達した時点をトリガとして、前記モータの補正前の回転速度、前記d軸目標電圧、前記q軸目標電圧、前記d軸電流および前記q軸電流をパラメータとするモータ電圧方程式を用いて前記モータのdq軸と前記回転角度センサの検出結果に基づくγδ軸との軸誤差を演算し、前記複数の基準回転角度毎の前記軸誤差の演算結果に基づいて前記補正テーブルを作成する、
モータ制御装置。 - 請求項10記載のモータ制御装置において、
前記誤差補正部は、前記実使用段階において、前記回転角度センサからの前記回転角度に対応する速度補正値を出力し、
前記回転速度算出部は、前記実使用段階において、前記モータの前記補正前の回転速度を前記速度補正値で補正する、
モータ制御装置。 - 請求項11記載のモータ制御装置において、
前記回転速度算出部は、前記回転角度センサからの前記回転角度の微分演算に基づいて前記補正前の回転速度を算出する、
モータ制御装置。 - 請求項11記載のモータ制御装置において、
前記誤差補正部は、前記回転角度センサからの前記回転角度に応じて前記複数の基準回転角度の中から隣接関係となる2個の基準回転角度を定め、当該2個の基準回転角度にそれぞれ対応する2個の前記軸誤差の差分値を、所定の制御周期で除算することで前記速度補正値を算出する、
モータ制御装置。 - 請求項10記載のモータ制御装置において、
前記速度制御器は、制御帯域が可変設定可能に構成され、
前記誤差補正部は、前記準備段階において、前記速度制御器の前記制御帯域を前記実使用段階よりも下げた状態で前記軸誤差の演算を行う、
モータ制御装置。 - 請求項10記載のモータ制御装置において、
前記誤差補正部は、前記補正前の回転速度を“ω”、前記d軸目標電圧を“Vd*”、前記q軸目標電圧を“Vq*”、前記d軸電流を“Id”、前記q軸電流を“Iq”、前記モータのd軸インダクタンス成分およびq軸インダクタンス成分を“Ld”および“Lq”、前記軸誤差を“Δθ”として、
Δθ=tan−1((Vd*+ω×Lq×Iq)/(Vq*−ω×Ld×Id))
を演算する、
モータ制御装置。 - 請求項10記載のモータ制御装置において、
前記誤差補正部は、フィードバック回路によって前記軸誤差を推定する外乱オブザーバを備え、前記準備段階において、前記モータを前記実使用段階での回転速度よりも低い回転速度で定常回転させた状態で前記外乱オブザーバを用いて前記軸誤差を演算する、
モータ制御装置。 - 請求項10記載のモータ制御装置において、
前記誤差補正部は、前記準備段階において、前記複数の基準回転角度毎の前記軸誤差に対して更に移動平均処理を行うことで前記補正テーブルを作成する、
モータ制御装置。 - 回転角度センサで回転角度が検出され、ベクトル制御によって制御されるモータを対象に、モータ制御装置を用いて前記モータの回転速度を検出する方法であって、
前記モータ制御装置は、
実使用前の準備段階において、前記モータを定常回転させた状態で、前記回転角度センサからの前記回転角度が所定の角度間隔で異なる複数の基準回転角度のそれぞれに到達した時点をトリガとして、前記モータの補正前の回転速度、d軸目標電圧、q軸目標電圧、d軸電流およびq軸電流をパラメータとするモータ電圧方程式を用いて前記モータのdq軸と前記回転角度センサの検出結果に基づくγδ軸との軸誤差を演算し、当該演算結果に基づいて前記複数の基準回転角度毎の補正値を定めるための補正テーブルを作成する第1の処理と、
実使用段階において、前記回転角度センサからの前記回転角度を受けて、前記補正テーブルに基づいて当該回転角度に対応する補正値を定め、当該補正値を反映して前記モータの補正後の回転速度を算出する第2の処理と、
を実行する、
モータの回転速度検出方法。 - 請求項18記載のモータの回転速度検出方法において、
前記モータ制御装置は、前記第2の処理において、前記補正テーブルに基づいて前記回転角度センサからの前記回転角度に対応する速度補正値を定め、前記モータの前記補正前の回転速度を前記速度補正値で補正する、
モータの回転速度検出方法。 - 請求項19記載のモータの回転速度検出方法において、
前記モータ制御装置は、前記回転角度センサからの前記回転角度に応じて前記複数の基準回転角度の中から隣接関係となる2個の基準回転角度を定め、当該2個の基準回転角度にそれぞれ対応する2個の前記軸誤差の差分値を、所定の制御周期で除算することで前記速度補正値を算出する、
モータの回転速度検出方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018087482A JP2019193532A (ja) | 2018-04-27 | 2018-04-27 | モータシステム、モータ制御装置およびモータの回転速度検出方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018087482A JP2019193532A (ja) | 2018-04-27 | 2018-04-27 | モータシステム、モータ制御装置およびモータの回転速度検出方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2019193532A true JP2019193532A (ja) | 2019-10-31 |
Family
ID=68391196
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2018087482A Pending JP2019193532A (ja) | 2018-04-27 | 2018-04-27 | モータシステム、モータ制御装置およびモータの回転速度検出方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2019193532A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113557661A (zh) * | 2020-02-13 | 2021-10-26 | 日本精工株式会社 | 相位调整方法、校正值计算装置、马达控制装置、电动致动器产品以及电动助力转向装置 |
WO2024009657A1 (ja) * | 2022-07-08 | 2024-01-11 | 株式会社日立製作所 | モータ制御装置、モータ制御方法及びエレベーター装置 |
WO2024203648A1 (ja) * | 2023-03-31 | 2024-10-03 | ローム株式会社 | モータのコントローラ回路 |
-
2018
- 2018-04-27 JP JP2018087482A patent/JP2019193532A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN113557661A (zh) * | 2020-02-13 | 2021-10-26 | 日本精工株式会社 | 相位调整方法、校正值计算装置、马达控制装置、电动致动器产品以及电动助力转向装置 |
CN113557661B (zh) * | 2020-02-13 | 2024-05-28 | 日本精工株式会社 | 相位调整方法、校正值计算装置、马达控制装置、电动致动器产品以及电动助力转向装置 |
WO2024009657A1 (ja) * | 2022-07-08 | 2024-01-11 | 株式会社日立製作所 | モータ制御装置、モータ制御方法及びエレベーター装置 |
WO2024203648A1 (ja) * | 2023-03-31 | 2024-10-03 | ローム株式会社 | モータのコントローラ回路 |
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