JP2019188407A - レーザ溶接継手及びレーザ溶接継手の製造方法 - Google Patents
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Description
前記複数の鋼板が重ね合わされた重ね合せ部は、最上段の前記鋼板の表面から最下段の前記鋼板の裏面まで貫通した溶接ビードを有し、
前記溶接ビードの最低ビッカース硬さが350Hv以上であるとともに、
前記溶接ビードにおける溶接金属の成分組成が、質量%で、
C :0.05〜0.35%、
Si:0.01〜2.5%、
Mn:0.5〜5.0%、
P :0.05%以下、
S :0.01%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、下記式(1)を満足し、
かつ、前記溶接ビードにおける表ビード幅WS及び裏ビード幅WBが、下記式(2)を満足することを特徴とする。
C+Si/5≦0.4 ・・・(1)
(式(1)において、C及びSiの単位はそれぞれ質量%である。)
WS+WB≦3.5 ・・・(2)
(式(2)において、WS及びWBの単位はそれぞれmmである。)
前記複数の鋼板が重ね合わされた重ね合せ部にレーザを照射して、最上段の前記鋼板の表面から最下段の前記鋼板の裏面まで貫通した溶接ビードを形成する工程を含み、
前記溶接ビードの最低ビッカース硬さが350Hv以上であるとともに、
前記溶接ビードにおける溶接金属の成分組成が、質量%で、
C :0.05〜0.35%、
Si:0.01〜2.5%、
Mn:0.5〜5.0%、
P :0.05%以下、
S :0.01%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、下記式(1)を満足し、
かつ、前記溶接ビードにおける表ビード幅WS及び裏ビード幅WBが、下記式(2)を満足することを特徴とする。
C+Si/5≦0.4 ・・・(1)
(式(1)において、C及びSiの単位はそれぞれ質量%である。)
WS+WB≦3.5 ・・・(2)
(式(2)において、WS及びWBの単位はそれぞれmmである。)
これにより、レーザ溶接される鋼板の表面に防錆油などの油が塗布され、溶接ビードにおける溶接金属中に多量の拡散性水素が侵入する過酷な条件下においても、重ね合わせ継手における構造上の制約やコストアップを招くことなく、溶接後に遅れ割れの発生を抑制することができる。
また、高張力鋼板1、2の板厚tは、0.5〜3.0mmとしている。
Cは、鋼の母材強度向上に寄与する元素であるため、高張力鋼板には必須な元素である。そのため、C含有量は0.05%以上とすることが好ましい。一方、過剰に添加すると、溶接ビード及びHAZの硬度が高くなり、遅れ割れの発生が抑制できないおそれがある。そのため、C含有量の上限は、好ましくは0.35%以下、より好ましくは0.20%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。
Siは、脱酸に寄与する元素である。そのため、Si含有量の下限は0.01%以上とすることが好ましい。一方、過剰に添加すると、焼戻し軟化抵抗が高くなり、溶融凝固部及び圧接部の硬度が高くなる。加えて、Siは材料の靭性を低下させるため、遅れ割れの発生が抑制できないおそれがある。そのため、Si含有量の上限は、好ましくは2.5%以下、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは0.5%以下とする。
Mnは、焼入れ性向上に寄与する元素であり、マルテンサイトなど硬質組織を生成するために必須の元素である。そのため、Mn含有量の下限は0.5%以上とすることが好ましい。一方、過剰に添加すると、溶接ビード及びHAZの硬度が高くなり、遅れ割れの発生が抑制できないおそれがある。そのため、Mn含有量の上限は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2.0%以下とする。
Pは、不可避的に鋼中へ混入する元素であるが、粒内及び粒界へ偏析しやすく、溶接ビード及びHAZの靭性を低下させるため、極力低減することが望ましい。そのため、P含有量の上限は、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.04%以下、更に好ましくは0.02%以下とする。
Sは、Pと同様、不可避的に鋼中へ混入する元素であるが、粒内及び粒界へ偏析しやすく、溶接ビード及びHAZの靭性を低下させるため、極力低減することが望ましい。そのため、S含有量の上限は、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.008%以下、更に好ましくは0.006%以下とする。
上記C、Si、Mn、P及びS以外の金属元素は、
Al:1.0%以下(0%を含む)、
Zr:0.1%以下(0%を含む)、
Cu、Ni、Cr及びMoの合計で2.0%以下(0%を含む)、
Mg、Ca、REMの合計で0.01%以下(0%を含む)であることが好ましい。
例えば、不可避的不純物として、N、O等が挙げられる。
Nは、固溶状態では溶接ビード及びHAZの靭性を低下させるため、極力低減することが望ましい。そのため、不可避不純物として含有することが許容されるNの含有量としては、0.01%以下、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下である。
また、Oであれば0.01%未満が、不可避不純物として含有することが許容される。
C+Si/5≦0.4 ・・・(1)
(式(1)において、C及びSiの単位はそれぞれ質量%である。)
なお、C含有量は極端に多くなると、溶接ビード及びHAZが極端に硬質化し、靱性が低下しやすいため、遅れ割れを発生しやすい傾向にある。また、SiもCと同様に、材料を脆化させる元素であるため、C含有量とSi含有量の合計添加量を所定の範囲に制限することで、遅れ割れを抑制することができる。なお、C+Si/5の上限は、より好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.3以下である。
Tiは、本実施形態における溶接金属に必須の元素ではないが、CやNと化合物を形成することで、組織微細化及びN低減を実現し、靭性向上に寄与する。また、この化合物が水素のトラップサイトとなるため、拡散性水素の低減にも寄与する。そのため、Tiを0.005%以上添加することが好ましく、より好ましくは0.015%以上、更に好ましくは0.030%以上である。
一方、過剰に添加すると、化合物が粗大化し、靭性が向上できないおそれがある。そのため、Tiの含有量の上限は、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.05%以下、更に好ましくは0.03%以下とする。
Bは、本実施形態における溶接金属に必須の元素ではないが、Ti、Nb、Vと比較して高温でも安定なNとの化合物を形成することで、溶接金属部における固溶Nを低減し、靭性向上に寄与する。そのため、Bを0.0005%以上添加することが好ましく、より好ましくは0.0015%以上、更に好ましくは0.003%以上である。
一方、過剰に添加すると、焼入れ性が高くなり、溶接部の硬度が過剰に高まるおそれがある。そのため、B含有量の上限は、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.008%以下、更に好ましくは0.006%以下とする。
なお、本実施形態における「溶接ビード11の最低ビッカース硬さ」は、溶接ビード11をビッカース硬度計により、重ね合わされた鋼板の板厚垂直方向に測定して得られる硬さ分布の中で最低の硬度のものとする。硬さの測定方法は上記方法のみに限定されず、ナノインデンターなど、他の測定方法を用いて硬さを測定後、ビッカース硬さに変換しても差し支えない。
WS+WB≦3.5 ・・・(2)
(式(2)において、WS及びWBの単位はそれぞれmmである。)
なお、表ビード幅WS及び裏ビード幅WBは、図1における溶接線Cに対して直交方向の面を断面観察することで測定される。なお、図1では、溶接線Cに対して直交方向の面として、溶接ビード11の終端部付近の断面を選択しているが、本実施形態においては、溶接ビード11の終端部付近の断面に限らず、溶接ビード11上の任意の場所における断面を観察すればよい。また、式(2)の左辺のパラメータは、3.0以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。
ただし、本実施形態のレーザ溶接継手は、溶接長DLが30mm以下のものに限定されるものではない。また、溶接長DLが短いほど遅れ割れの課題が顕著になることを踏まえ、遅れ割れを抑制する観点からは、溶接長DLは5mm以上であることが好ましく、10mm以上がより好ましく、15mm以上が更に好ましい。
また、本実施形態の溶接ビード11は、上記の実施形態で示す直線状ビードに限定されず、一筆書きのように連続で形成されるビード形状であればよい。例えば、図3に示すようなC字状に溶接ビード11を形成してもよいし、ジグザグ状の線状ビードなどであってもよい。
[1]引張強度が780MPa以上である少なくとも1枚の高張力鋼板を含む、板厚が0.5〜3.0mmであり、表面に油が塗布された複数の鋼板が重ね合わされてレーザ溶接されるレーザ溶接継手であって、
前記複数の鋼板が重ね合わされた重ね合せ部は、最上段の前記鋼板の表面から最下段の前記鋼板の裏面まで貫通した溶接ビードを有し、
前記溶接ビードの最低ビッカース硬さが350Hv以上であるとともに、
前記溶接ビードにおける溶接金属の成分組成が、質量%で、
C :0.05〜0.35%、
Si:0.01〜2.5%、
Mn:0.5〜5.0%、
P :0.05%以下、
S :0.01%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、下記式(1)を満足し、
かつ、前記溶接ビードにおける表ビード幅WS及び裏ビード幅WBが、下記式(2)を満足することを特徴とするレーザ溶接継手。
C+Si/5≦0.4 ・・・(1)
(式(1)において、C及びSiの単位はそれぞれ質量%である。)
WS+WB≦3.5 ・・・(2)
(式(2)において、WS及びWBの単位はそれぞれmmである。)
Ti:0.005〜0.1%を更に含有することを特徴とする上記[1]に記載のレーザ溶接継手。
B:0.0005〜0.01%を更に含有することを特徴とする上記[1]または[2]に記載のレーザ溶接継手。
前記複数の鋼板が重ね合わされた重ね合せ部にレーザを照射して、最上段の前記鋼板の表面から最下段の前記鋼板の裏面まで貫通した溶接ビードを形成する工程を含み、
前記溶接ビードの最低ビッカース硬さが350Hv以上であるとともに、
前記溶接ビードにおける溶接金属の成分組成が、質量%で、
C :0.05〜0.35%、
Si:0.01〜2.5%、
Mn:0.5〜5.0%、
P :0.05%以下、
S :0.01%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、下記式(1)を満足し、
かつ、前記溶接ビードにおける表ビード幅WS及び裏ビード幅WBが、下記式(2)を満足することを特徴とするレーザ溶接継手の製造方法。
C+Si/5≦0.4 ・・・(1)
(式(1)において、C及びSiの単位はそれぞれ質量%である。)
WS+WB≦3.5 ・・・(2)
(式(2)において、WS及びWBの単位はそれぞれmmである。)
Ti:0.005〜0.1%を更に含有することを特徴とする上記[5]に記載のレーザ溶接継手の製造方法。
B:0.0005〜0.01%を更に含有することを特徴とする上記[5]または[6]に記載のレーザ溶接継手の製造方法。
なお、すべての実施例及び比較例において、重ね合わされた2枚の鋼板のうち、一方の鋼板の表面から他方の鋼板の裏面まで貫通した溶接ビードを形成した。なお、供試鋼板A〜Gの表裏面には、いずれも0.01mg/mm2の鉱油系の防錆油を塗布した。
また、得られたレーザ溶接継手の表ビード幅WS(mm)、ビード幅WB(mm)及び遅れ割れの評価は、溶接部の外観観察、及び断面マクロ観察により判断した。なお、得られた溶接ビードの最低ビッカース硬さを、ビッカース硬度計により上述した手法により測定した所、すべての試験例において350Hv以上であることを確認した。
そして、試験例ごとに重ねレーザ溶接を5回ずつ実施(n5で実施)し、5回すべてにおいて遅れ割れが発生したものを評価「×」、5回中、1回〜4回の間で遅れ割れが認められたものを評価「△」、5回すべてにおいて遅れ割れが認められなかったものを評価「○」とした。
2 第2の鋼板(高張力鋼板)
10 レーザ溶接継手
11 溶接ビード
C 溶接ビードの溶接線
DL 溶接ビードの溶接長
L レーザ
t 鋼板の板厚
WS 溶接ビードの表ビード幅
WB 溶接ビードの裏ビード幅
Claims (8)
- 引張強度が780MPa級以上である少なくとも1枚の高張力鋼板を含む、板厚が0.5〜3.0mmであり、表面に油が塗布された複数の鋼板が重ね合わされてレーザ溶接されるレーザ溶接継手であって、
前記複数の鋼板が重ね合わされた重ね合せ部は、最上段の前記鋼板の表面から最下段の前記鋼板の裏面まで貫通した溶接ビードを有し、
前記溶接ビードの最低ビッカース硬さが350Hv以上であるとともに、
前記溶接ビードにおける溶接金属の成分組成が、質量%で、
C :0.05〜0.35%、
Si:0.01〜2.5%、
Mn:0.5〜5.0%、
P :0.05%以下、
S :0.01%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、下記式(1)を満足し、
かつ、前記溶接ビードにおける表ビード幅WS及び裏ビード幅WBが、下記式(2)を満足することを特徴とするレーザ溶接継手。
C+Si/5≦0.4 ・・・(1)
(式(1)において、C及びSiの単位はそれぞれ質量%である。)
WS+WB≦3.5 ・・・(2)
(式(2)において、WS及びWBの単位はそれぞれmmである。) - 前記溶接金属は、質量%で、
Ti:0.005〜0.1%を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接継手。 - 前記溶接金属は、質量%で、
B:0.0005〜0.01%を更に含有することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ溶接継手。 - 前記溶接ビードの溶接長が5mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ溶接継手。
- 引張強度が780MPa級以上である少なくとも1枚の高張力鋼板を含む、板厚が0.5〜3.0mmであり、表面に油が塗布された複数の鋼板が重ね合わされてレーザ溶接されるレーザ溶接継手の製造方法であって、
前記複数の鋼板が重ね合わされた重ね合せ部にレーザを照射して、最上段の前記鋼板の表面から最下段の前記鋼板の裏面まで貫通した溶接ビードを形成する工程を含み、
前記溶接ビードの最低ビッカース硬さが350Hv以上であるとともに、
前記溶接ビードにおける溶接金属の成分組成が、質量%で、
C :0.05〜0.35%、
Si:0.01〜2.5%、
Mn:0.5〜5.0%、
P :0.05%以下、
S :0.01%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、下記式(1)を満足し、
かつ、前記溶接ビードにおける表ビード幅WS及び裏ビード幅WBが、下記式(2)を満足することを特徴とするレーザ溶接継手の製造方法。
C+Si/5≦0.4 ・・・(1)
(式(1)において、C及びSiの単位はそれぞれ質量%である。)
WS+WB≦3.5 ・・・(2)
(式(2)において、WS及びWBの単位はそれぞれmmである。) - 前記溶接金属は、質量%で、
Ti:0.005〜0.1%を更に含有することを特徴とする請求項5に記載のレーザ溶接継手の製造方法。 - 前記溶接金属は、質量%で、
B:0.0005〜0.01%を更に含有することを特徴とする請求項5または6に記載のレーザ溶接継手の製造方法。 - 前記溶接ビードの溶接長が5mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のレーザ溶接継手の製造方法。
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