JP2019183374A - 可染性ポリオレフィン繊維およびそれからなる繊維構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量性に優れるポリオレフィン繊維へ鮮やかで深みのある発色性を付与し、さらには、タンブラー乾燥時の酸化分解や長期保管時の黄変を抑制し、繊維構造体として好適に採用できる可染性ポリオレフィン繊維を提供する。【解決手段】ポリオレフィン(A)が海成分、少なくとも直鎖脂肪族ジカルボン酸(B1)と芳香族ジカルボン酸(B2)を構成成分とする共重合ポリエステル(B)が島成分である海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、共重合ポリエステル(B)の中間点ガラス転移温度が40〜75℃であることを特徴とする可染性ポリオレフィン繊維。【選択図】なし
Description
本発明は、可染性ポリオレフィン繊維に関するものである。より詳しくは、軽量性に優れるポリオレフィン繊維へ鮮やかで深みのある発色性が付与されており、さらには、タンブラー乾燥時の酸化分解や長期保管時の黄変が抑制されているため、繊維構造体として好適に採用できる可染性ポリオレフィン繊維に関するものである。
ポリオレフィン系繊維の一種であるポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維は、軽量性や耐薬品性に優れるものの、極性官能基を有さないため染色することが困難であるという欠点を有している。そのため、衣料用途には適さず、現状ではタイルカーペット、家庭用敷物、自動車用マットなどのインテリア用途や、ロープ、養生ネット、ろ過布、細幅テープ、組紐、椅子張りなどの資材用途などの限られた用途において利用されている。
ポリオレフィン系繊維の簡便な染色方法として、顔料の添加が挙げられる。しかし、顔料では染料のような鮮明な発色性や淡い色合いを安定して発現させることが難しく、また、顔料を用いた場合には繊維が硬くなる傾向があり、柔軟性が損なわれるという欠点があった。
顔料に代わる染色方法として、ポリオレフィン系繊維の表面改質が提案されている。例えば、特許文献1では、オゾン処理や紫外線照射によるビニル化合物のグラフト共重合によって、ポリオレフィン系繊維の表面改質を行い、染色性の改善を試みている。
また、染色性の低いポリオレフィンに対して、染色可能なポリマーを複合化する技術が提案されている。例えば、特許文献2では、染色可能なポリマーとしてポリエステルまたはポリアミドをポリオレフィンへブレンドした可染性ポリオレフィン繊維が提案されている。
さらに、特許文献3、特許文献4では、ポリオレフィンへブレンドする染色可能なポリマーを非晶性とすることで、発色性の向上を試みている。具体的には、特許文献3ではシクロヘキサンジメタノールを共重合した共重合ポリエステル、特許文献4ではイソフタル酸とシクロヘキサンジメタノールを共重合した共重合ポリエステルを染色可能な非晶性ポリマーとして、ポリオレフィンへブレンドした可染性ポリオレフィン繊維が提案されている。
しかしながら、上記特許文献1記載の方法では、オゾン処理や紫外線照射に長時間を要するため、生産性が低く、工業化への障壁が高いものであった。
また、特許文献2の方法では、染色可能なポリマーによりポリオレフィン繊維へ発色性を付与することはできるものの、染色可能なポリマーが結晶性のため、発色性は不十分であり、鮮やかさや深みに欠けるものであった。特許文献3、4の方法では、染色可能なポリマーを非晶性にすることにより、発色性は向上するものの、鮮やかさや深みは未だ不十分であった。
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、軽量性に優れるポリオレフィン繊維へ鮮やかで深みのある発色性を付与し、さらには、タンブラー乾燥時の酸化分解や長期保管時の黄変を抑制し、繊維構造体として好適に採用できる可染性ポリオレフィン繊維を提供することにある。
上記の本発明の課題は、ポリオレフィン(A)が海成分、少なくとも直鎖脂肪族ジカルボン酸(B1)と芳香族ジカルボン酸(B2)を構成成分とする共重合ポリエステル(B)が島成分である海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、共重合ポリエステル(B)の中間点ガラス転移温度が40〜75℃であることを特徴とする可染性ポリオレフィン繊維によって解決することができる。
また、共重合ポリエステル(B)の融解ピーク温度が120〜200℃であることが好ましい。
さらには、相溶化剤(C)を含有することが好適に採用できる。
前記可染性ポリオレフィン繊維は、ポリオレフィン(A)、共重合ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の合計100重量部に対し、共重合ポリエステル(B)を3.0〜20.0重量部含有することが好ましく、相溶化剤(C)を0.1〜10.0重量部含有することが好ましい。
また、前記可染性ポリオレフィン繊維は、酸化防止剤を含有すること、前記酸化防止剤が、フェノール系化合物、リン系化合物、ヒンダードアミン系化合物から選ばれる少なくとも一種であり、前記ヒンダードアミン系化合物が、アミノエーテル型ヒンダードアミン系化合物であることが好適に採用できる。
また、上記の可染性ポリオレフィン繊維を少なくとも一部に用いることを特徴とする繊維構造体に好適に採用できる。
本発明によれば、軽量性に優れるポリオレフィン繊維でありながら、鮮やかで深みのある発色性を有するとともに、タンブラー乾燥時の酸化分解や長期保管時の黄変が抑制された可染性ポリオレフィン繊維を提供することができる。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、ポリオレフィン(A)が海成分、少なくとも直鎖脂肪族ジカルボン酸(B1)と芳香族ジカルボン酸(B2)を構成成分とする共重合ポリエステル(B)が島成分である海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、共重合ポリエステル(B)の中間点ガラス転移温度が40〜75℃である。
ポリオレフィン(A)中に、共重合ポリエステル(B)を染色可能なポリマーとして島に配置することで、ポリオレフィン(A)に発色性を付与することができる。また、染色可能なポリマーを芯鞘複合繊維の芯に配置した場合や、海島複合繊維の島に配置した場合と異なり、ポリマーアロイ繊維では、島成分の染色可能なポリマーが繊維表面に露出しているため、より発色性の高い繊維を得ることができ、さらには、島成分へ到達した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色を実現することができる。
本発明におけるポリマーアロイ繊維とは、島成分が不連続に分散して存在する繊維のことである。ここで、島成分が不連続とは、島成分が適度な長さを有しており、同一単糸内の任意の間隔において、繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面における海島構造の形状が異なる状態である。島成分が不連続に分散して存在する場合、島成分は紡錘形であるため、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮明性が向上し、深みのある発色が得られる。以上より、本発明におけるポリマーアロイ繊維は、1つの島が繊維軸方向に連続かつ同一形状に形成される芯鞘複合繊維や、複数の島が繊維軸方向に連続かつ同一形状に形成される海島複合繊維とは本質的に異なるものである。かかるポリマーアロイ繊維は、例えば、溶融紡糸が完結する以前の任意の段階において、ポリオレフィン(A)と、共重合ポリエステル(B)を混練して形成したポリマーアロイ組成物から成形することで得ることができる。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の海島構造を構成する海成分は、ポリオレフィン(A)である。ポリオレフィンは低比重のため、軽量性に優れた繊維を得ることができる。ポリオレフィン(A)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリメチルペンテンなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリプロピレンは溶融紡糸性が良好であり、機械的特性に優れるため好ましく、ポリメチルペンテンは融点が高く、耐熱性に優れるとともに、ポリオレフィンの中で最も低比重であり、軽量性に優れるため好ましい。衣料用途においては、ポリプロピレンが特に好適に採用できる。
本発明のポリオレフィン(A)は、単独重合体であっても、他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。他のα−オレフィン(以下、単にα−オレフィンと称する場合もある)は、1種または2種以上を共重合してもよい。
α−オレフィンの炭素数は2〜20であることが好ましく、α−オレフィンの分子鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。α−オレフィンの具体例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ヘキセンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
α−オレフィンの共重合率は20mol%以下であることが好ましい。α−オレフィンの共重合率が20mol%以下であれば、機械的特性や耐熱性が良好な可染性ポリオレフィン繊維が得られるため好ましい。α−オレフィンの共重合率は15mol%以下であることがより好ましく、10mol%以下であることが更に好ましい。
本発明の共重合ポリエステル(B)は、構成する主成分であるジカルボン酸とジオールのうち、ジカルボン酸について、少なくとも直鎖脂肪族ジカルボン酸(B1)と芳香族ジカルボン酸(B2)を用いている。直鎖脂肪族ジカルボン酸(B1)の具体例として、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、などが挙げられるが、これらに限定されず、また直鎖脂肪族ジカルボン酸(B1)を複数種類用いてもよい。直鎖脂肪族ジカルボン酸(B1)として、少なくともアジピン酸を使用していることがより好ましい。芳香族ジカルボン酸(B2)の具体例として、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されず、また芳香族ジカルボン酸(B2)を複数種類用いてもよい。
ジオールについては、具体例として、カテコール、ナフタレンジオール、ビスフェノールなどの芳香族ジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールなどが挙げられるが、これらに限定されず、またジオールを複数種類用いてもよい。
本発明におけるポリマーアロイ繊維の発色性を向上させるには、共重合成分の導入により共重合ポリエステル(B)の中間点ガラス転移温度が40〜75℃であることが重要である。共重合ポリエステル(B)の中間点ガラス転移温度が40℃以上であれば、日光、洗濯、摩擦等の外的条件に対する色落ち、色移りが発生しにくく、染色堅ろう度が優れ好ましい。一方、共重合ポリエステル(B)の中間点ガラス転移温度が75℃以下であれば、染色時に染料吸尽量が多く、より深い色に染まるため好ましい。共重合ポリエステル(B)の中間点ガラス転移温度は65℃以下であることがより好ましく、60℃以下が更に好ましい。
本発明における共重合ポリエステル(B)は、ポリオレフィン(A)中により微分散化させるために融解ピーク温度が120〜200℃であることが好ましい。共重合ポリエステル(B)の融解ピーク温度が200℃以下であれば、溶融混練時に相溶性が上がり、共重合ポリエステル(B)がより分散するため好ましい。共重合ポリエステル(B)の融解ピーク温度は180℃以下であることがより好ましく、170℃以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、海成分のポリオレフィン(A)への島成分の共重合ポリエステル(B)の分散性を向上、分散状態を制御することで、染料化合物の凝集を抑制して単分散に近づけ、発色効率を向上、鮮やかで深みのある発色を得ることを目的として、必要に応じて相溶化剤(C)を添加してもよい。また、溶融紡糸によって海島構造を形成させる際には、口金直下においてバラス効果による膨らみが発生し、繊維の細化変形が不安定になる傾向があるため、この膨らみに伴う糸切れの抑制などの製糸操業性の改善や、繊度斑が小さく、繊維長手方向の均一性に優れる高品位の繊維を得ることを目的として、相溶化剤(C)を用いてもよい。
本発明における相溶化剤(C)は、共重合ポリエステル(B)の共重合成分と共重合率、海成分のポリオレフィン(A)と島成分の共重合ポリエステル(B)との複合比率などに応じて適宜選択することができる。なお、相溶化剤(C)は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明における相溶化剤(C)は、疎水性が高い海成分のポリオレフィン(A)と親和性の高い疎水性成分と、島成分の共重合ポリエステル(B)と親和性の高い官能基が、両方とも単一分子内に含まれている化合物が好ましい。または、疎水性が高い海成分のポリオレフィン(A)に親和性の高い疎水性成分と、島成分の共重合ポリエステル(B)と反応しうる官能基が、両方とも単一分子内に含まれている化合物を相溶化剤(C)として好適に採用できる。
相溶化剤(C)を構成する疎水性成分の具体例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、プロピレン−ブチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体などの共役ジエン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
相溶化剤(C)を構成する、共重合ポリエステル(B)と親和性の高い官能基、または共重合ポリエステル(B)と反応しうる官能基の具体例として、酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびイミノ基などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、アミノ基、イミノ基は、共重合ポリエステル(B)との反応性が高いため好ましい。
相溶化剤(C)の具体例として、マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリメチルペンテン、エポキシ変性ポリプロピレン、エポキシ変性ポリスチレン、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、アミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、イミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、アミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、イミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明における相溶化剤(C)は、共重合ポリエステル(B)との反応性が高く、また、ポリオレフィン(A)への共重合ポリエステル(B)の分散性を向上させる効果が高いため、島成分をより分散させることができ、当該島成分の共重合ポリエステル(B)を染色することによって、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色を得ることができる。この観点から相溶化剤(C)は、アミノ基およびイミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有する、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂または共役ジエン系樹脂から選択される1種以上の化合物であることが好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、ポリオレフィン(A)、共重合ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の合計100重量部に対し、共重合ポリエステル(B)を3.0〜20.0重量部含有することが好ましい。共重合ポリエステル(B)の含有量が3.0重量部以上であれば、屈折率が低く、発色性の高い共重合ポリエステル(B)が、屈折率の低いポリオレフィン(A)に散在しているため、鮮やかで深みのある発色を実現できるため好ましい。共重合ポリエステル(B)の含有量は、3.5重量部以上であることがより好ましく、4.0重量部以上であることが更に好ましい。一方、共重合ポリエステル(B)の含有量が20.0重量部以下であれば、海成分に対して多数存在する島成分を染色することによって、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。また、ポリオレフィン(A)の軽量性を損なわないため好ましい。共重合ポリエステル(B)の含有量は、17.0重量部以下であることがより好ましく、15.0重量部以下であることが更に好ましい。
相溶化剤(C)を添加する場合、本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、ポリオレフィン(A)、共重合ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の合計100重量部に対し、相溶化剤(C)を0.1〜10.0重量部含有することが好ましい。相溶化剤(C)の含有量が0.1重量部以上であれば、ポリオレフィン(A)と共重合ポリエステル(B)との相溶化効果が得られるため、島成分の分散径が小さくなり、染料化合物の凝集を抑制して単分散に近づけることができ、発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。また、糸切れの抑制など製糸操業性が改善されるとともに、繊度斑が小さく、繊維長手方向の均一性に優れる高品位の繊維を得ることができるため好ましい。相溶化剤(C)の含有量は、0.3重量部以上であることがより好ましく、0.5重量部以上であることが更に好ましい。一方、相溶化剤(C)の含有量が10.0重量部以下であれば、可染性ポリオレフィン繊維を構成するポリオレフィン(A)や共重合ポリエステル(B)に由来する繊維特性や外観、風合いを維持することができるため好ましい。また、過度の相溶化剤による製糸操業性の不安定化を抑制できるため好ましい。相溶化剤(C)の含有量は、7.0重量部以下であることがより好ましく、5.0重量部以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、酸化防止剤を含有していることが好ましい。ポリオレフィンは光や熱によって容易に酸化分解するため、酸化防止剤を含有することにより、長期保管やタンブラー乾燥によるポリオレフィンの酸化分解を抑制するだけではなく、機械的特性などの繊維特性の耐久性が向上するため好ましい。一方で、酸化防止剤の種類、組み合わせ、含有量によっては、長期保管時における窒素酸化物ガスやフェノール性化合物に起因する繊維の黄変(フェノール性黄変)を引き起こすため、ポリオレフィンの酸化分解の抑制と、繊維の黄変の抑制を両立可能な酸化防止剤の種類、組み合わせ、含有量を選択することが好ましい。ここで、フェノール性黄変とは、ビニール袋などの梱包剤に酸化防止剤として含有されているフェノール性化合物のBHT(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン)(以下、単にBHTと称する場合もある)に起因する繊維の黄変である。従来のポリオレフィン繊維は、染料による染色が困難であるため、顔料を用いた染色が行われる。顔料による染色は、一般に濃色のため、繊維自身の黄変が、染色後の色調へ与える影響は小さいものである。これに対し、本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、染料による染色が可能である。染料による染色は、淡色から濃色まで幅広く、特に淡色の場合には繊維自身の黄変が、染色後の色調へ与える影響が大きいため、酸化防止剤によって引き起こされる繊維の黄変が抑制されていることが好ましい。
本発明における酸化防止剤は、フェノール系化合物、リン系化合物、ヒンダードアミン系化合物のいずれかであることが好ましい。これらの酸化防止剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明におけるフェノール系化合物は、フェノール構造を有したラジカル連鎖反応禁止剤であり、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(例えば、BASF製Irganox1010)、2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)メシチレン(例えば、ADEKA製アデカスタブ(登録商標)AO−330)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン(例えば、住友化学製スミライザーGA−80、ADEKA製アデカスタブ(登録商標)AO−80)、1,3,5−トリス[[4−(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(例えば、東京化成工業製THANOX1790、CYTEC製CYANOX1790)は、酸化分解抑制効果が高いため、好適に採用できる。なかでも、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン(例えば、住友化学製スミライザーGA−80、ADEKA製アデカスタブ(登録商標)AO−80)、1,3,5−トリス[[4−(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(例えば、東京化成工業製THANOX1790、CYTEC製CYANOX1790)は、窒素酸化物ガスに暴露された場合に、フェノール系化合物自身が、黄変の原因物質であるキノン系化合物に変化しにくいため、長期保管時における窒素酸化物ガスに起因する繊維の黄変を抑制することができ、特に好適に採用できる。
本発明におけるリン系化合物は、ラジカルを発生させずに過酸化物を還元し、自身が酸化されるリン系酸化防止剤であり、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(例えば、BASF製Irgafos(登録商標)168)、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(例えば、ADEKA製アデカスタブ(登録商標)PEP−36)は、酸化分解抑制効果が高いため、好適に採用できる。
本発明におけるヒンダードアミン系化合物は、紫外線や熱により生成したラジカルの捕捉や、酸化防止剤として機能して失活したフェノール系酸化防止剤を再生する効果があるヒンダードアミン系酸化防止剤であり、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、アミノエーテル型ヒンダードアミン系化合物、もしくは分子量1000以上の高分子量型ヒンダードアミン系化合物を好適に採用できる。ヒンダードアミン系化合物の中でも、アミノエーテル型ヒンダードアミン系化合物は、塩基性が低いものである。本発明者らは、窒素酸化物ガスやフェノール性化合物に起因する繊維の黄変について鋭意検討した結果、ヒンダードアミン系化合物の塩基性が低いほど、酸化防止剤であるフェノール系化合物や、梱包剤に含有されているフェノール性化合物が、黄変の原因物質であるキノン系化合物に変化するのを抑制することを見出した。すなわち、アミノエーテル型ヒンダードアミン系化合物は、長期保管時における窒素酸化物ガスやフェノール性化合物に起因する繊維の黄変を抑制できるため好ましい。アミノエーテル型ヒンダードアミン系化合物の具体例として、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート(例えば、ADEKA製アデカスタブ(登録商標)LA−81)、デカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル](例えば、BASF製Tinuvin(登録商標)PA123)などが挙げられるが、これらに限定されない。アミノエーテル型ヒンダードアミン系化合物の他に、塩基性が低いヒンダードアミン系化合物の具体例として、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールと3,5,5−トリメチルヘキサン酸のエステル(例えば、BASF製Tinuvin249)などが挙げられるが、これに限定されない。分子量1000以上の高分子量型ヒンダードアミン系化合物は、洗濯や有機溶剤を使用したクリーニングによる繊維内部からの溶出を抑制でき、酸化分解抑制効果の耐久性に優れるため好ましい。分子量1000以上の高分子量型ヒンダードアミン系化合物の具体例として、N−N’−N’’−N’’’−テトラキス(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン)(例えば、SABO製SABOSTAB UV119)、ポリ((6−((1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ)−1,6−ヘキサンジイル(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ))(例えば、BASF製CHIMASSORB(登録商標)944)、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(例えば、BASF製CHIMASSORB(登録商標)2020)などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維における酸化防止剤の含有量は、ポリオレフィン(A)、共重合ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の合計100重量部に対し、0.1〜5.0重量部であることが好ましい。酸化防止剤の含有量が0.1重量部以上であれば、酸化分解抑制効果を繊維へ付与できるため好ましい。酸化防止剤の含有量は0.3重量部以上であることがより好ましい。一方、酸化防止剤の含有量が5.0重量部以下であれば、繊維の色調が悪化せず、機械的特性も損なうことがないため好ましい。酸化防止剤の含有量は4.0重量部以下であることがより好ましく、3.0重量部以下であることが更に好ましく、2.0重量部以下であることが特に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、副次的添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。副次的添加剤の具体例として、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
次に、本発明の可染性ポリオレフィン繊維について説明する。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維のマルチフィラメントとしての繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10〜3000dtexであることが好ましい。本発明における繊度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。可染性ポリオレフィン繊維の繊度が10dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の繊度は、30dtex以上であることがより好ましく、50dtex以上であることが更に好ましい。一方、可染性ポリオレフィン繊維の繊度が3000dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の繊度は、2500dtex以下であることがより好ましく、2000dtex以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の単糸繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.5〜20dtexであることが好ましい。本発明における単糸繊度とは、実施例記載の方法で測定される繊度を単糸数で除した値を指す。可染性ポリオレフィン繊維の単糸繊度が0.5dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の単糸繊度は、0.6dtex以上であることがより好ましく、0.8dtex以上であることが更に好ましい。一方、可染性ポリオレフィン繊維の単糸繊度が20dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の単糸繊度は、15dtex以下であることがより好ましく、12dtex以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の強度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、機械的特性の観点から1.0〜6.0cN/dtexであることが好ましい。本発明における強度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。可染性ポリオレフィン繊維の強度が1.0cN/dtex以上であれば、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の強度は1.5cN/dtex以上であることがより好ましく、2.0cN/dtex以上であることが更に好ましい。一方、可染性ポリオレフィン繊維の強度が6.0cN/dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の伸度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、耐久性の観点から10〜60%であることが好ましい。本発明における伸度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。可染性ポリオレフィン繊維の伸度が10%以上であれば、繊維ならびに繊維構造体の耐摩耗性が良好となり、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性が良好となるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の伸度は15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。一方、可染性ポリオレフィン繊維の伸度が60%以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の寸法安定性が良好となるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の伸度は55%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の繊度変動値U%(hi)は、0.1〜1.5%であることが好ましい。本発明における繊度変動値U%(hi)とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。繊度変動値U%(hi)は繊維長手方向における太さ斑の指標であり、繊度変動値U%(hi)が小さいほど、繊維の長手方向における太さ斑が小さいことを示す。繊度変動値U%(hi)は、工程通過性や品位の観点から小さければ小さいほど好ましいが、製造可能な範囲として0.1%が下限である。一方、可染性ポリオレフィン繊維の繊度変動値U%(hi)が1.5%以下であれば、繊維長手方向の均一性が優れており、毛羽や糸切れが発生しにくく、また、染色した際に染め斑や染め筋などの欠点が発生しにくく、高品位の繊維構造体を得ることができるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の繊度変動値U%(hi)は1.2%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましく、0.9%以下であることが特に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の繊維横断面における島成分の分散径は、30〜1000nmが好ましい。本発明において、繊維横断面における島成分の分散径とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。繊維横断面における島成分の分散径が30nm以上であれば、島成分の共重合ポリエステル(B)に染料がしっかりと取り込まれ、島成分へ到達した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色を実現することができる。一方、繊維横断面における島成分の分散径が1000nm以下であれば、海島界面の比界面積を十分大きくすることができるため、界面剥離やこれに起因した摩耗を抑制することができ、品位に優れるとともに、染色した場合に摩擦堅牢度が良好となる。また、島成分の分散径が小さければ小さいほど、染料化合物の凝集を抑制して単分散に近づけることができ、発色効率が向上するとともに、染色した場合に耐光堅牢度、洗濯堅牢度が良好となる。そのため、繊維横断面における島成分の分散径は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の比重は、0.83〜1.0であることが好ましい。本発明における比重とは、実施例記載の方法で測定される値を指し、真比重である。なお、繊維が中空部を有する場合、真比重は同等であっても、見掛け比重は小さくなり、見掛け比重の値は中空率に応じて変化する。ポリオレフィンは低比重であり、一例として、ポリメチルペンテンの比重は0.83、ポリプロピレンの比重は0.91である。ポリオレフィンを単独で繊維化した場合、軽量性に優れた繊維を得ることができるものの染色することができないという欠点がある。本発明では、低比重のポリオレフィンと、染色可能な共重合ポリエステルからなるポリマーアロイ繊維とすることによって、軽量性に優れるポリオレフィン繊維へ発色性を付与することができる。可染性ポリオレフィン繊維の比重は、ポリオレフィン(A)へ複合する共重合ポリエステル(B)の比重や、ポリオレフィン(A)と共重合ポリエステル(B)との複合比率などに応じて変化する。可染性ポリオレフィン繊維の比重は、軽量性の観点から小さければ小さいほど好ましく、1.0以下であることが好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の比重が1.0以下であれば、ポリオレフィン(A)による軽量性と、共重合ポリエステル(B)による発色性を両立することができるため好ましい。可染性ポリオレフィン繊維の比重は0.97以下であることがより好ましく、0.95以下であることが更に好ましい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形、C字形、H字形、S字形、T字形、W字形、X字形、Y字形、田字形、井桁形、中空形などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、繊維の形態に関して特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルなどのいずれの形態であってもよい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、一般の繊維と同様に仮撚や撚糸などの加工が可能であり、製織や製編についても一般の繊維と同様に扱うことができる。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維からなる繊維構造体の形態は、特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛、不織布や紡績糸、詰め綿などにすることができる。また、本発明の可染性ポリオレフィン繊維からなる繊維構造体は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはこれらの変化編などが好適に採用できる。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、繊維構造体にする際に交織や交編などによって他の繊維と組み合わせてもよいし、他の繊維との混繊糸とした後に繊維構造体としてもよい。
次に、本発明の可染性ポリオレフィン繊維の製造方法を以下に示す。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の製造方法として、公知の溶融紡糸方法、延伸方法を採用することができる。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維の製造方法として、公知の溶融紡糸方法、延伸方法を採用することができる。
本発明では、溶融紡糸を行う前にポリオレフィン(A)、共重合ポリエステル(B)、相溶化剤(C)を乾燥させ、含水率を0.3重量%以下としておくことが好ましい。含水率が0.3重量%以下であれば、溶融紡糸の際に水分によって発泡することがなく、安定して紡糸を行うことが可能となるため好ましい。また、加水分解による機械的特性の低下や色調の悪化が抑制されるため好ましい。含水率は0.2重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが更に好ましい。
ポリマーアロイ型紡糸を行う場合には、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法として、以下に示す例が挙げられるが、これらに限定されない。第一の例として、海成分と島成分をエクストルーダーなどで事前に溶融混練して複合化したチップを必要に応じて乾燥した後、溶融紡糸機へチップを供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。第二の例として、必要に応じてチップを乾燥し、チップの状態で海成分と島成分を混合した後、溶融紡糸機へ混合したチップを供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。
紡糸口金から吐出された繊維糸条は、冷却装置によって冷却固化し、第1ゴデットローラーで引き取り、第2ゴデットローラーを介してワインダーで巻き取り、巻取糸とする。なお、製糸操業性、生産性、繊維の機械的特性を向上させるために、必要に応じて紡糸口金下部に2〜20cmの長さの加熱筒や保温筒を設置してもよい。また、給油装置を用いて繊維糸条へ給油してもよく、交絡装置を用いて繊維糸条へ交絡を付与してもよい。
溶融紡糸における紡糸温度は、ポリオレフィン(A)、共重合ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の融点や耐熱性などに応じて適宜選択することができるが、220〜320℃であることが好ましい。紡糸温度が220℃以上であれば、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため吐出が安定し、さらには、紡糸張力が過度に高くならず、糸切れを抑制することができるため好ましい。紡糸温度は230℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることが更に好ましい。一方、紡糸温度が320℃以下であれば、紡糸時の熱分解を抑制することができ、得られる可染性ポリオレフィン繊維の機械的特性の低下や着色を抑制できるため好ましい。紡糸温度は300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることが更に好ましい。
溶融紡糸における紡糸速度は、ポリオレフィン(A)と共重合ポリエステル(B)との複合比率、紡糸温度などに応じて適宜選択することができるが、500〜6000m/分であることが好ましい。紡糸速度が500m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れを抑制することができるため好ましい。二工程法の場合の紡糸速度は1000m/分以上であることがより好ましく、1500m/分以上であることが更に好ましい。一方、紡糸速度が6000m/分以下であれば、紡糸張力の抑制により糸切れなく、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。二工程法の場合の紡糸速度は4500m/分以下であることがより好ましく、4000m/分以下であることが更に好ましい。また、一旦巻き取ることなく紡糸と延伸を同時に行う一工程法の場合の紡糸速度は、低速ローラーを500〜5000m/分、高速ローラーを2500〜6000m/分とすることが好ましい。低速ローラーおよび高速ローラーが上記の範囲内であれば、走行糸条が安定するとともに、糸切れを抑制することができ、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。一工程法の場合の紡糸速度は低速ローラーを1000〜4500m/分、高速ローラーを3500〜5500m/分とすることがより好ましく、低速ローラーを1500〜4000m/分、高速ローラーを4000〜5000m/分とすることが更に好ましい。
一工程法または二工程法により延伸を行う場合には、一段延伸法または二段以上の多段延伸法のいずれの方法によってもよい。延伸における加熱方法としては、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱できる装置であれば、特に限定されない。加熱方法の具体例として、加熱ローラー、熱ピン、熱板、温水、熱水などの液体浴、熱空、スチームなどの気体浴、レーザーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの加熱方法は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。加熱方法としては、加熱温度の制御、走行糸条への均一な加熱、装置が複雑にならない観点から、加熱ローラーとの接触、熱ピンとの接触、熱板との接触、液体浴への浸漬を好適に採用できる。
延伸を行う場合の延伸温度は、ポリオレフィン(A)、共重合ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の融点や、延伸後の繊維の強度、伸度などに応じて適宜選択することができるが、10〜150℃であることが好ましい。延伸温度が10℃以上であれば、延伸に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸時の熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制することができ、繊維長手方向の均一性に優れる高品位の繊維を得ることができるため好ましい。延伸温度が150℃以下であれば、加熱ローラーとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解を抑制することができ、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。また、延伸ローラーに対する繊維の滑り性が良好となるため、糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸温度は145℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることが更に好ましい。また、必要に応じて60〜150℃の熱セットを行ってもよい。
延伸を行う場合の延伸倍率は、延伸前の繊維の伸度や、延伸後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.02〜7.0倍であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。延伸倍率は、1.2倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましい。一方、延伸倍率が7.0倍以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸倍率は6.0倍以下であることがより好ましく、5.0倍以下であることが更に好ましい。
延伸を行う場合の延伸速度は、延伸方法が一工程法または二工程法のいずれであるかなどに応じて適宜選択することができる。一工程法の場合には、上記紡糸速度の高速ローラーの速度が延伸速度に相当する。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は、30〜1000m/分であることが好ましい。延伸速度が30m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は50m/分以上であることがより好ましく、100m/分以上であることが更に好ましい。一方、延伸速度が1000m/分以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は900m/分以下であることがより好ましく、800m/分以下であることが更に好ましい。
本発明では、必要に応じて、繊維または繊維構造体のいずれの状態において染色してもよい。本発明では、染料として分散染料を好適に採用することができる。可染性ポリオレフィン繊維を構成する海成分のポリオレフィン(A)はほとんど染色されることはないが、島成分の共重合ポリエステル(B)が染色されることによって、鮮やかで深みのある発色性を有する繊維ならびに繊維構造体を得ることが可能となる。
本発明における染色方法は、特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。
本発明では、染料濃度や染色温度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。また、必要に応じて、染色加工前に精練を行ってもよく、染色加工後に還元洗浄を行ってもよい。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維、およびそれからなる繊維構造体は、軽量性に優れるポリオレフィン繊維へ鮮やかで深みのある発色性が付与されたものである。そのため、従来のポリオレフィン系繊維が使用されている用途に加えて、衣料用途ならびに軽量性や発色性が要求される用途への展開が可能である。従来のポリオレフィン系繊維が使用されている用途として、タイルカーペット、家庭用敷物、自動車用マットなどのインテリア用途、ふとん用詰め綿、枕の充填材などの寝具、ロープ、養生ネット、ろ過布、細幅テープ、組紐、椅子張りなどの資材用途などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明によって拡張される用途として、婦人服、紳士服、裏地、インナー、ミッドレイヤー、フリース、ダウン、ベスト、アウターなどの一般衣料、ウインドブレーカー、アウトドアウェア、スキーウェア、ゴルフウェア、水着などのスポーツ衣料、ふとん用側地、ふとんカバー、毛布、毛布用側地、毛布カバー、枕カバー、シーツなどの寝具、テーブルクロス、カーテンなどのインテリア、ベルト、かばん、縫糸、寝袋、テントなどの資材などの用途が挙げられるが、これらに限定されない。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めたものである。
A.中間点ガラス転移温度
島成分(B)のポリマーを試料とし、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、中間点ガラス転移温度を測定した。始めに、窒素雰囲気下で試料約5mgを0℃から280℃まで昇温速度50℃/分で昇温後、280℃で5分間保持して試料の熱履歴を取り除いた。その後、280℃から0℃まで急冷した後、再度0℃から280℃まで昇温速度3℃/分、温度変調振幅±1℃、温度変調周期60秒で昇温し、TMDSC測定を行った。JIS K7121:1987(プラスチックの転移温度測定方法)9.3に準じて、2回目の昇温過程中に観測されたガラス転移挙動より中間点ガラス転移温度を算出した 。測定は1試料につき3回行い、その平均値を中間点ガラス転移温度 とした。
島成分(B)のポリマーを試料とし、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、中間点ガラス転移温度を測定した。始めに、窒素雰囲気下で試料約5mgを0℃から280℃まで昇温速度50℃/分で昇温後、280℃で5分間保持して試料の熱履歴を取り除いた。その後、280℃から0℃まで急冷した後、再度0℃から280℃まで昇温速度3℃/分、温度変調振幅±1℃、温度変調周期60秒で昇温し、TMDSC測定を行った。JIS K7121:1987(プラスチックの転移温度測定方法)9.3に準じて、2回目の昇温過程中に観測されたガラス転移挙動より中間点ガラス転移温度を算出した 。測定は1試料につき3回行い、その平均値を中間点ガラス転移温度 とした。
B.融解ピーク温度
上記Aに記載のTMDSC測定方法と同様の方法でTMDSC測定を行い、融解ピーク温度を測定した。JIS K7121:1987(プラスチックの転移温度測定方法)9.1に準じて、2回目の昇温過程中に観測された融解ピークより融解ピーク温度を算出した。測定は1試料につき3回行い、その平均値を融解ピーク温度とした。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も低温側の融解ピークから融解ピーク温度を算出した。
上記Aに記載のTMDSC測定方法と同様の方法でTMDSC測定を行い、融解ピーク温度を測定した。JIS K7121:1987(プラスチックの転移温度測定方法)9.1に準じて、2回目の昇温過程中に観測された融解ピークより融解ピーク温度を算出した。測定は1試料につき3回行い、その平均値を融解ピーク温度とした。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も低温側の融解ピークから融解ピーク温度を算出した。
C.屈折率
事前に真空乾燥した海成分(A)または島成分(B)のポリマー1gを試料とし、ゴンノ油圧機製作所製15TON 4本柱単動上昇式プレス機を用いて、プレスフィルムを作製した。試料および厚さ50μmのスペーサーを不融性のポリイミドフィルム(東レ・デュポン製カプトン(登録商標)200H)に挟んだ状態でプレス機へ挿入し、230℃で2分間溶融させた後、2MPaの圧力で1分間プレスし、プレス機から速やかに取り出して20℃の水中で急冷して、厚さ50μmのプレスフィルムを得た。続いて、JIS K0062:1992(化学製品の屈折率測定方法)6.に記載のフィルム試料の測定方法に準じて、プレスフィルムの屈折率を測定した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、エルマ製アッベ屈折計ER−1型、中間液としてモノブロモナフタレン(nD=1.66)、ガラス片としてテストピース(nD=1.74)を用いて、1試料につき3回の測定を行い、その平均値を屈折率とした。
事前に真空乾燥した海成分(A)または島成分(B)のポリマー1gを試料とし、ゴンノ油圧機製作所製15TON 4本柱単動上昇式プレス機を用いて、プレスフィルムを作製した。試料および厚さ50μmのスペーサーを不融性のポリイミドフィルム(東レ・デュポン製カプトン(登録商標)200H)に挟んだ状態でプレス機へ挿入し、230℃で2分間溶融させた後、2MPaの圧力で1分間プレスし、プレス機から速やかに取り出して20℃の水中で急冷して、厚さ50μmのプレスフィルムを得た。続いて、JIS K0062:1992(化学製品の屈折率測定方法)6.に記載のフィルム試料の測定方法に準じて、プレスフィルムの屈折率を測定した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、エルマ製アッベ屈折計ER−1型、中間液としてモノブロモナフタレン(nD=1.66)、ガラス片としてテストピース(nD=1.74)を用いて、1試料につき3回の測定を行い、その平均値を屈折率とした。
なお、比較例1の島成分(B)のポリマーは溶融温度を270℃、実施例25〜29の海成分(A)のポリマーおよび実施例1、2、25、比較例4の島成分(B)のポリマーは溶融温度を250℃に変更して、プレスフィルムを作製した。
D.複合比率
可染性ポリオレフィン繊維の原料として用いた海成分(A)、島成分(B)、相溶化剤(C)の合計を100重量部とし、複合比率として海成分(A)/島成分(B)/相溶化剤(C)[重量部]を算出した。
可染性ポリオレフィン繊維の原料として用いた海成分(A)、島成分(B)、相溶化剤(C)の合計を100重量部とし、複合比率として海成分(A)/島成分(B)/相溶化剤(C)[重量部]を算出した。
E.繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例によって得られた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式を用いて繊度(dtex)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100 。
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例によって得られた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式を用いて繊度(dtex)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100 。
F.強度、伸度
強度および伸度は、実施例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック社製テンシロンUTM−III−100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式によって伸度(%)を算出した。なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
伸度(%)={(L1−L0)/L0}×100 。
強度および伸度は、実施例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック社製テンシロンUTM−III−100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式によって伸度(%)を算出した。なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
伸度(%)={(L1−L0)/L0}×100 。
G.繊度変動値U%(hi)
繊度変動値U%(hi)は、実施例によって得られた繊維を試料とし、ツェルベガーウースター製ウースターテスター4−CXを用いて、測定速度200m/分、測定時間2.5分、測定繊維長500m、撚り数12000/m(S撚り)の条件で、U%(half inert)を測定した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度変動値U%(hi)とした。
繊度変動値U%(hi)は、実施例によって得られた繊維を試料とし、ツェルベガーウースター製ウースターテスター4−CXを用いて、測定速度200m/分、測定時間2.5分、測定繊維長500m、撚り数12000/m(S撚り)の条件で、U%(half inert)を測定した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度変動値U%(hi)とした。
H.島成分の分散径、島成分の不連続性
実施例によって得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋した後、LKB製ウルトラミクロトームLKB−2088を用いてエポキシ樹脂ごと、繊維軸に対して垂直方向に繊維を切断し、厚さ約100nmの超薄切片を得た。得られた超薄切片を固体の四酸化ルテニウムの気相中に常温で約4時間保持して染色した後、染色された面をウルトラミクロトームで切断し、四酸化ルテニウムで染色された超薄切片を作製した。染色された超薄切片について、日立製透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA型を用いて、加速電圧100kVの条件で繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面を観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。観察は300倍、500倍、1000倍、3000倍、5000倍、10000倍、30000倍、50000倍の各倍率で行い、顕微鏡写真を撮影する際には100個以上の島成分が観察できる最も低い倍率を選択した。撮影された写真について、同一の写真から無作為に抽出した100個の島成分の直径を画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)で測定し、その平均値を島成分の分散径(nm)とした。繊維横断面に存在する島成分は必ずしも真円とは限らないため、真円ではない場合には外接円の直径を島成分の分散径として採用した。
実施例によって得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋した後、LKB製ウルトラミクロトームLKB−2088を用いてエポキシ樹脂ごと、繊維軸に対して垂直方向に繊維を切断し、厚さ約100nmの超薄切片を得た。得られた超薄切片を固体の四酸化ルテニウムの気相中に常温で約4時間保持して染色した後、染色された面をウルトラミクロトームで切断し、四酸化ルテニウムで染色された超薄切片を作製した。染色された超薄切片について、日立製透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA型を用いて、加速電圧100kVの条件で繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面を観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。観察は300倍、500倍、1000倍、3000倍、5000倍、10000倍、30000倍、50000倍の各倍率で行い、顕微鏡写真を撮影する際には100個以上の島成分が観察できる最も低い倍率を選択した。撮影された写真について、同一の写真から無作為に抽出した100個の島成分の直径を画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)で測定し、その平均値を島成分の分散径(nm)とした。繊維横断面に存在する島成分は必ずしも真円とは限らないため、真円ではない場合には外接円の直径を島成分の分散径として採用した。
単糸の繊維横断面に存在する島成分が100個未満の場合には、同条件で製造した複数の単糸を試料として繊維横断面を観察した。顕微鏡写真を撮影する際には単糸の全体像が観察できる最も高い倍率を選択した。撮影された写真について、各単糸の繊維横断面に存在する島成分の分散径を測定し、合計100個の島成分の分散径の平均値を島成分の分散径とした。
島成分の不連続性については、同一単糸内において単糸直径の少なくとも10000倍以上の任意の間隔で、繊維横断面の顕微鏡写真を5枚撮影し、それぞれの繊維横断面における島成分の数および海島構造の形状が異なる場合、島成分が不連続であるとし、島成分が不連続である場合を「○」、島成分が不連続でない場合を「×」とした。
I.比重
比重は、実施例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:1999(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.17の浮沈法に準じて算出した。重液には水を用い、軽液にはエチルアルコールを用いて比重測定液を調製した。温度20±0.1℃の恒温槽中において、試料約0.1gを比重測定液に30分間放置した後、試料の浮沈状態を観察した。浮沈状態に応じて重液または軽液を添加して、さらに30分間放置した後に試料が浮沈平衡状態となったのを確認して、比重測定液の比重を測定し、試料の比重を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を比重とした。
比重は、実施例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:1999(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.17の浮沈法に準じて算出した。重液には水を用い、軽液にはエチルアルコールを用いて比重測定液を調製した。温度20±0.1℃の恒温槽中において、試料約0.1gを比重測定液に30分間放置した後、試料の浮沈状態を観察した。浮沈状態に応じて重液または軽液を添加して、さらに30分間放置した後に試料が浮沈平衡状態となったのを確認して、比重測定液の比重を測定し、試料の比重を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を比重とした。
J.L*値(発色性)
実施例によって得られた繊維を試料とし、英光産業製丸編機NCR−BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約2gを作製した後、炭酸ナトリウム1.5g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS−20 0.5g/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。精練後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、乾熱セット後の筒編みに対して、分散染料としてHuntsman製TERATOP Blue NFBを3.0重量%加え、pHを5.0に調整した染色液中、浴比1:30、130℃で45分間染色後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。染色後の筒編みを、水酸化ナトリウム2g/L、亜ジチオン酸ナトリウム2g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS−20 0.5g/Lを含む水溶液中、浴比1:30、80℃で20分間還元洗浄後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。還元洗浄後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、仕上げセットを行った。仕上げセット後の筒編みを試料とし、ミノルタ製分光測色計CM−3700d型を用いてD65光源、視野角度10°、光学条件をSCE(正反射光除去法)としてL*値を測定した。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値をL*値とした。
実施例によって得られた繊維を試料とし、英光産業製丸編機NCR−BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約2gを作製した後、炭酸ナトリウム1.5g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS−20 0.5g/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。精練後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、乾熱セット後の筒編みに対して、分散染料としてHuntsman製TERATOP Blue NFBを3.0重量%加え、pHを5.0に調整した染色液中、浴比1:30、130℃で45分間染色後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。染色後の筒編みを、水酸化ナトリウム2g/L、亜ジチオン酸ナトリウム2g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS−20 0.5g/Lを含む水溶液中、浴比1:30、80℃で20分間還元洗浄後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。還元洗浄後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、仕上げセットを行った。仕上げセット後の筒編みを試料とし、ミノルタ製分光測色計CM−3700d型を用いてD65光源、視野角度10°、光学条件をSCE(正反射光除去法)としてL*値を測定した。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値をL*値とした。
ここで、平均値のL*値が小さいほど発色性は良好である。
K.耐光堅牢度
耐光堅牢度の評価は、JIS L0843:2006(キセノンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法)A法に準じて行った。上記Jで作製した仕上げセット後の筒編みを試料として、スガ試験機製
キセノンウェザーメーターX25を用いてキセノンアーク灯光照射を行い、試料の変退色の度合いをJIS L0804:2004に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定することによって、耐光堅牢度を評価した。
耐光堅牢度の評価は、JIS L0843:2006(キセノンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法)A法に準じて行った。上記Jで作製した仕上げセット後の筒編みを試料として、スガ試験機製
キセノンウェザーメーターX25を用いてキセノンアーク灯光照射を行い、試料の変退色の度合いをJIS L0804:2004に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定することによって、耐光堅牢度を評価した。
L.洗濯堅牢度
洗濯堅牢度の評価は、JIS L0844:2011(洗濯に対する染色堅ろう度試験方法)A−2号に準じて行った。上記Jで作製した仕上げセット後の筒編みを試料として、大栄科学製作所製ラウンダメーターを用いて、JIS L0803:2011に規定の添付白布(綿3−1号、ナイロン7−1号)とともに試料を洗濯処理した後、試料の変退色の度合いをJIS L0804:2004に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定することによって、洗濯堅牢度を評価した。
洗濯堅牢度の評価は、JIS L0844:2011(洗濯に対する染色堅ろう度試験方法)A−2号に準じて行った。上記Jで作製した仕上げセット後の筒編みを試料として、大栄科学製作所製ラウンダメーターを用いて、JIS L0803:2011に規定の添付白布(綿3−1号、ナイロン7−1号)とともに試料を洗濯処理した後、試料の変退色の度合いをJIS L0804:2004に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定することによって、洗濯堅牢度を評価した。
M.摩擦堅牢度
摩擦堅牢度の評価は、JIS L0849:2013(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)9.2
摩擦試験機II形(学振形)法の乾燥試験に準じて行った。上記Jで作製した仕上げセット後の筒編みを試料として、大栄科学精機製学振型摩擦試験機RT−200を用いて、JIS L0803:2011に規定の白綿布(綿3−1号)で試料へ摩擦処理を施した後、白綿布の汚染の度合いをJIS L0805:2005に規定の汚染用グレースケールを用いて級判定することによって、摩擦堅牢度を評価した。
摩擦堅牢度の評価は、JIS L0849:2013(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)9.2
摩擦試験機II形(学振形)法の乾燥試験に準じて行った。上記Jで作製した仕上げセット後の筒編みを試料として、大栄科学精機製学振型摩擦試験機RT−200を用いて、JIS L0803:2011に規定の白綿布(綿3−1号)で試料へ摩擦処理を施した後、白綿布の汚染の度合いをJIS L0805:2005に規定の汚染用グレースケールを用いて級判定することによって、摩擦堅牢度を評価した。
N.酸化発熱試験における試料の最高温度[発熱試験最高温度]
日本化学繊維協会によるポリプロピレン繊維の酸化発熱試験方法(加速法)に準じて行った。実施例によって得られた繊維を試料とし、英光産業製丸編機NCR−BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編みを作製し、洗濯およびタンブラー乾燥による前処理を行った。洗濯は、JIS L0217:1995(繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法)103法に準じて行い、洗剤として花王製アタック、漂白剤として花王製ハイター(2.3ml/L)を加え、10回洗濯後に60℃のタンブラー乾燥機で30分間乾燥した。洗濯10回とタンブラー乾燥1回を1セットとし、計10セット繰り返して前処理を行った。
日本化学繊維協会によるポリプロピレン繊維の酸化発熱試験方法(加速法)に準じて行った。実施例によって得られた繊維を試料とし、英光産業製丸編機NCR−BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編みを作製し、洗濯およびタンブラー乾燥による前処理を行った。洗濯は、JIS L0217:1995(繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法)103法に準じて行い、洗剤として花王製アタック、漂白剤として花王製ハイター(2.3ml/L)を加え、10回洗濯後に60℃のタンブラー乾燥機で30分間乾燥した。洗濯10回とタンブラー乾燥1回を1セットとし、計10セット繰り返して前処理を行った。
前処理後の筒編みを直径50mmの円形にカットし、円筒形容器の深さの半分(25mm)まで充填した後、その中央に熱電対を設置し、さらに前処理後の筒編みを円筒形容器に隙間無く充填した。なお、円筒形容器は内径51mm、深さ50mmであり、蓋および底に直径5mmの穴が25ケ所、側壁に直径5mmの穴が140ヶ所空いているものを使用した。
前処理後の筒編みを充填した円筒形容器を、150℃に設定した恒温乾燥機中に入れ、円筒形容器の中央に設置した熱電対の温度(試料温度に相当)が150℃に到達した時間を0分として、100時間の温度変化を記録し、試料の最高温度を測定した。なお、測定は1試料につき2回行い、その平均値を酸化発熱試験における試料の最高温度とした。
O.軽量性
実施例によって得られた繊維について、上記Iで測定した繊維の比重を軽量性の指標として、○、×の2段階で評価した。評価は、○が良く、×が最も劣ることを示す。繊維の比重が「1.0未満」を○、「1.0以上」を×とし、「1.0未満」の○を合格とした。
実施例によって得られた繊維について、上記Iで測定した繊維の比重を軽量性の指標として、○、×の2段階で評価した。評価は、○が良く、×が最も劣ることを示す。繊維の比重が「1.0未満」を○、「1.0以上」を×とし、「1.0未満」の○を合格とした。
P.均一染色性
上記Jで作製した仕上げセット後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって◎、○、△、×の4段階で評価した。評価は、◎が最も良く、○、△の順に悪くなり、×が最も劣ることを示す。「非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない」を◎、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」を○、「ほとんど均一に染色されておらず、うっすらと染め斑が認められる」を△、「均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる」を×とし、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」の○以上を合格とした。
上記Jで作製した仕上げセット後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって◎、○、△、×の4段階で評価した。評価は、◎が最も良く、○、△の順に悪くなり、×が最も劣ることを示す。「非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない」を◎、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」を○、「ほとんど均一に染色されておらず、うっすらと染め斑が認められる」を△、「均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる」を×とし、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」の○以上を合格とした。
実施例1
ポリプロピレン(PP)(台湾プラスチックス製1352F、MFR35g/10分)を90.0重量%、イソフタル酸を15mol%、アジピン酸を12mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを10.0重量%の配合比とし、酸化防止剤として、フェノール系化合物である3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン(ADEKA製アデカスタブ(登録商標)AO−80)を0.5重量部、リン系化合物である亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(BASF製Irgafos(登録商標)168)を0.1重量部、ヒンダードアミン系化合物であるビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート(ADEKA製アデカスタブ(登録商標)LA−81)を0.05重量部添加して、二軸エクストルーダーを用いて混練温度230℃で混練を行った。二軸エクストルーダーより吐出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーにて5mm長程度にカットして、ペレットを得た。得られたペレットを80℃で12時間真空乾燥した後、エクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度250℃、吐出量13.1g/分で紡糸口金(吐出孔径0.18mm、吐出孔長0.23mm、孔数36、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た。この紡出糸条を風温20℃、風速25m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、1250m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って105dtex−36fの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を第1ホットローラー温度20℃、第2ホットローラー温度130℃、延伸倍率2.1倍の条件で延伸し、50dtex−36fの延伸糸を得た。
ポリプロピレン(PP)(台湾プラスチックス製1352F、MFR35g/10分)を90.0重量%、イソフタル酸を15mol%、アジピン酸を12mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを10.0重量%の配合比とし、酸化防止剤として、フェノール系化合物である3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン(ADEKA製アデカスタブ(登録商標)AO−80)を0.5重量部、リン系化合物である亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(BASF製Irgafos(登録商標)168)を0.1重量部、ヒンダードアミン系化合物であるビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート(ADEKA製アデカスタブ(登録商標)LA−81)を0.05重量部添加して、二軸エクストルーダーを用いて混練温度230℃で混練を行った。二軸エクストルーダーより吐出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーにて5mm長程度にカットして、ペレットを得た。得られたペレットを80℃で12時間真空乾燥した後、エクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度250℃、吐出量13.1g/分で紡糸口金(吐出孔径0.18mm、吐出孔長0.23mm、孔数36、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た。この紡出糸条を風温20℃、風速25m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、1250m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って105dtex−36fの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を第1ホットローラー温度20℃、第2ホットローラー温度130℃、延伸倍率2.1倍の条件で延伸し、50dtex−36fの延伸糸を得た。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。得られた可染性ポリオレフィン繊維の比重は0.95であり、軽量性に優れていた。また、屈折率の低いポリプロピレンからなる海成分の中に、屈折率が低く、発色性の高い共重合ポリエチレンテレフタレートが島成分として微分散しているため、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性は合格レベルであった。さらには、耐光堅牢度、洗濯堅牢度、摩擦堅牢度のいずれの染色堅牢度も良好であるとともに、布帛全体が均一に染まっており、均一染色性も良好であった。酸化発熱試験の結果より、酸化発熱は抑制されていた。
実施例2〜6
イソフタル酸、アジピン酸の共重合率を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
イソフタル酸、アジピン酸の共重合率を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。イソフタル酸の共重合率が高くなるにつれ、L*値が低下し、発色性は向上した。アジピン酸の共重合率も高くなるにつれ、L*値が低下し、発色性は向上した。いずれの実施例においても鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、品位ともに優れるものであった。
比較例1
イソフタル酸、アジピン酸の共重合率を表3に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
イソフタル酸、アジピン酸の共重合率を表3に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表4に示す。中間点ガラス転移温度が低いことに伴い、耐光堅牢度、洗濯堅牢度、摩擦堅牢度が劣るものであった。
比較例2
ポリプロピレン(PP)を90.0重量%、アジピン酸を20mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを10.0重量%の配合比とした以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
ポリプロピレン(PP)を90.0重量%、アジピン酸を20mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを10.0重量%の配合比とした以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表4に示す。中間点ガラス転移温度が低いことに伴い、耐光堅牢度、洗濯堅牢度、摩擦堅牢度が劣るものであった。
比較例3
ポリプロピレン(PP)を90.0重量%、ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製T701T、融解ピーク温度257℃)を10.0重量%の複合比率とし、混練温度を280℃、紡糸温度を285℃に変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
ポリプロピレン(PP)を90.0重量%、ポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ製T701T、融解ピーク温度257℃)を10.0重量%の複合比率とし、混練温度を280℃、紡糸温度を285℃に変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表4に示す。島成分のポリエチレンテレフタレートが染料によって染色されているものの、ポリエチレンテレフタレートは結晶性が高いため、染料の吸尽が不十分であり、鮮やかで深みのある発色は得られず、発色性は不十分であり、品位も不合格レベルであった。また、繊度変動値U%(hi)が高く、繊維長手方向の均一性が不十分であるため、均一染色性も劣るものであった。
比較例4
ポリプロピレンをエクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度240℃で紡出糸条を得た以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
ポリプロピレンをエクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度240℃で紡出糸条を得た以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表4に示す。ポリプロピレンのみからなる繊維であり、ポリプロピレンは極性官能基を有さないため、染料によってほとんど染色されず、極めて発色性に劣るものであった。
実施例7〜11
ポリプロピレンと共重合ポリエチレンテレフタレートの複合比率を表3、表5に示すとおり変更した以外は、実施例2と同様に延伸糸を作製した。
ポリプロピレンと共重合ポリエチレンテレフタレートの複合比率を表3、表5に示すとおり変更した以外は、実施例2と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表4、表6に示す。実施例7〜10において、いずれの複合比率の場合も軽量性、発色性、均一染色性、品位ともに合格レベルであった。実施例11では、共重合ポリエチレンテレフタレートの複合比率が高いため、比重が高く、軽量性に劣るものであった。
実施例12、13
共重合ポリエチレンテレフタレートの共重合成分として、実施例12ではイソフタル酸の代わりに5−ナトリウムスルホイソフタル酸を、実施例13ではアジピン酸の代わりにセバシン酸を用いた以外は、実施例2と同様に延伸糸を作製した。得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表6に示す。いずれの共重合ポリエステルの場合も、軽量性、発色性、均一染色性、品位ともに合格レベルであった。
共重合ポリエチレンテレフタレートの共重合成分として、実施例12ではイソフタル酸の代わりに5−ナトリウムスルホイソフタル酸を、実施例13ではアジピン酸の代わりにセバシン酸を用いた以外は、実施例2と同様に延伸糸を作製した。得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表6に示す。いずれの共重合ポリエステルの場合も、軽量性、発色性、均一染色性、品位ともに合格レベルであった。
実施例14〜19
相溶化剤として、実施例14では無水マレイン酸変性ポリプロピレン(addivant製POLYBOND(登録商標)3200)、実施例15では無水マレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ製タフテック(登録商標)M1943)、実施例16ではアミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(JSR製ダイナロン(登録商標)8660P)、実施例17ではイミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、実施例18ではアミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ製タフテック(登録商標)MP10)、実施例19ではイミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体を用い、ポリプロピレン、共重合ポリエチレンテレフタレート、相溶化剤の複合比率を表5、表7に示すとおりとした以外は、実施例2と同様に延伸糸を作製した。
相溶化剤として、実施例14では無水マレイン酸変性ポリプロピレン(addivant製POLYBOND(登録商標)3200)、実施例15では無水マレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ製タフテック(登録商標)M1943)、実施例16ではアミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(JSR製ダイナロン(登録商標)8660P)、実施例17ではイミン変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、実施例18ではアミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ製タフテック(登録商標)MP10)、実施例19ではイミン変性スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体を用い、ポリプロピレン、共重合ポリエチレンテレフタレート、相溶化剤の複合比率を表5、表7に示すとおりとした以外は、実施例2と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表6、表8に示す。いずれの相溶化剤を用いた場合も、相溶化効果により島成分の分散径が小さくなり、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、品位ともに極めて優れるものであった。また、相溶化効果により、繊度変動値U%(hi)が低く、繊維長手方向の均一性が良好であるため、均一染色性にも極めて優れていた。
実施例20〜24
ポリプロピレン、共重合ポリエチレンテレフタレート、相溶化剤の複合比率を表7、表9に示すとおり変更した以外は、実施例16と同様に延伸糸を作製した。
ポリプロピレン、共重合ポリエチレンテレフタレート、相溶化剤の複合比率を表7、表9に示すとおり変更した以外は、実施例16と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表8、表10に示す。実施例20〜23では、いずれの複合比率の場合も、軽量性、発色性、均一染色性、品位ともに合格レベルであった。実施例24では、発色性、均一染色性は不合格レベルであった。
実施例25〜29
ポリプロピレン、共重合ポリエチレンテレフタレート、相溶化剤の複合比率を表9、表11に示すとおり変更した以外は、実施例18と同様に延伸糸を作製した。
ポリプロピレン、共重合ポリエチレンテレフタレート、相溶化剤の複合比率を表9、表11に示すとおり変更した以外は、実施例18と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表10、表12に示す。実施例25〜28では、いずれの複合比率の場合も、軽量性、発色性、均一染色性、品位ともに合格レベルであった。実施例29では、発色性、均一染色性は不合格レベルであった。
実施例30〜33
実施例2、15、16、18において、ポリプロピレンをポリメチルペンテン(PMP)(三井化学製DX820、融解ピーク温度232℃、MFR180g/10分)に変更し、混練温度を260℃、紡糸温度を260℃に変更した以外は、表11、13に条件を示す通り実施例2、15、16、18と同様に延伸糸を作製した。
実施例2、15、16、18において、ポリプロピレンをポリメチルペンテン(PMP)(三井化学製DX820、融解ピーク温度232℃、MFR180g/10分)に変更し、混練温度を260℃、紡糸温度を260℃に変更した以外は、表11、13に条件を示す通り実施例2、15、16、18と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表12、14に示す。ポリオレフィンとして、ポリメチルペンテンを用いた場合も、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、品位ともに良好であった。また、軽量性、均一染色性についても合格レベルであった。
実施例34〜40
酸化防止剤の種類、量を表13、表15に示すとおり変更した以外は、実施例16と同様に延伸糸を作製した。酸化防止剤について、実施例35ではフェノール系化合物としてペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(BASF製Irganox(登録商標)1010)、実施例36ではヒンダードアミン系化合物としてN−N’−N’’−N’’’−テトラキス(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン)(SABO製SABOSTAB UV119)、実施例37ではヒンダードアミン系化合物としてジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(BASF製CHIMASSORB(登録商標)2020)、実施例38ではリン系化合物として3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(ADEKA製アデカスタブ(登録商標)PEP−36)を添加した。
酸化防止剤の種類、量を表13、表15に示すとおり変更した以外は、実施例16と同様に延伸糸を作製した。酸化防止剤について、実施例35ではフェノール系化合物としてペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(BASF製Irganox(登録商標)1010)、実施例36ではヒンダードアミン系化合物としてN−N’−N’’−N’’’−テトラキス(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン)(SABO製SABOSTAB UV119)、実施例37ではヒンダードアミン系化合物としてジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(BASF製CHIMASSORB(登録商標)2020)、実施例38ではリン系化合物として3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(ADEKA製アデカスタブ(登録商標)PEP−36)を添加した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表14、表16に示す。実施例34〜38について、酸化防止剤の種類、量、組み合わせを変更した場合も、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、均一染色性、品位ともに極めて優れるものであった。実施例39では、酸化防止剤無添加では酸化発熱が観測された。実施例40では、フェノール系酸化防止剤のみの添加としたが、酸化発熱が観測された。
実施例41〜45
酸化防止剤の種類、量を表15に示すとおり変更した以外は、実施例18と同様に延伸糸を作製した。得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表16に示す。実施例41〜45について、酸化防止剤の種類、量、組み合わせを変更した場合も、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、均一染色性、品位ともに極めて優れるものであった。
酸化防止剤の種類、量を表15に示すとおり変更した以外は、実施例18と同様に延伸糸を作製した。得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表16に示す。実施例41〜45について、酸化防止剤の種類、量、組み合わせを変更した場合も、鮮やかで深みのある発色を得ることができ、発色性、均一染色性、品位ともに極めて優れるものであった。
本発明の可染性ポリオレフィン繊維は、軽量性に優れるポリオレフィン繊維へ鮮やかで深みのある発色性が付与されており、さらには、タンブラー乾燥時の酸化分解や長期保管時の黄変が抑制されたものであり、繊維構造体として好適に用いることができる。
Claims (9)
- ポリオレフィン(A)が海成分、少なくとも直鎖脂肪族ジカルボン酸(B1)と芳香族ジカルボン酸(B2)を構成成分とする共重合ポリエステル(B)が島成分である海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、共重合ポリエステル(B)の中間点ガラス転移温度が40〜75℃であることを特徴とする可染性ポリオレフィン繊維。
- 共重合ポリエステル(B)の融解ピーク温度が120〜200℃であることを特徴とする請求項1記載の可染性ポリオレフィン繊維。
- 直鎖脂肪族ジカルボン酸(B1)が、アジピン酸であることを特徴とする請求項1または2記載の可染性ポリオレフィン繊維。
- 相溶化剤(C)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の可染性ポリオレフィン繊維。
- ポリオレフィン(A)、共重合ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の合計100重量部に対し、共重合ポリエステル(B)を3.0〜20.0重量部含有することを特徴とする請求項4記載の可染性ポリオレフィン繊維。
- ポリオレフィン(A)、共重合ポリエステル(B)、相溶化剤(C)の合計100重量部に対し、相溶化剤(C)を0.1〜10.0重量部含有することを特徴とする請求項4または5記載の可染性ポリオレフィン繊維。
- 酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の可染性ポリオレフィン繊維。
- 酸化防止剤が、フェノール系化合物、リン系化合物、ヒンダードアミン系化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項7記載の可染性ポリオレフィン繊維。
- 請求項1〜8のいずれか一項記載の可染性ポリオレフィン繊維を少なくとも一部に用いることを特徴とする繊維構造体。
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Cited By (2)
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-
2019
- 2019-04-01 JP JP2019070105A patent/JP2019183374A/ja active Pending
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