以下、本発明による成形装置及び成形方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
<成形装置の構成>
図1は、成形装置の概略構成図である。図1に示されるように、金属パイプを成形する成形装置10は、互いに対となる上型(金型)12及び下型(金型)11を有する成形金型(成形部)13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内にガス(気体)を供給するための気体供給ユニット60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14の内部に気体供給ユニット60からの気体を供給するための一対の気体供給部40,40と、成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給ユニット60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備える。なお以下では、金属パイプは、成形装置10にて成形完了後の中空物品を指し、金属パイプ材料14は、成形装置10にて成形完了前の中空物品を指す。
成形金型13は、金属パイプ材料14を金属パイプに成形するために用いられる型である。このため、成形金型13に含まれる下型11及び上型12のそれぞれには、金属パイプ材料14が収容されるキャビティ(凹部)が設けられる(詳細は後述する)。
下型11は、大きな基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面にキャビティ16を備える。下型11には冷却水通路19が形成されている。また、下型11は、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。熱電対21は、スプリング22により上下移動自在に支持されている。熱電対21は測温手段の一例を示したに過ぎず、輻射温度計又は光温度計のような非接触型温度センサであってもよい。通電時間と温度との相関が得られれば、測温手段は省いてもよい。
下型11の左右端(図1における左右端)近傍には、電極収納スペース11aが設けられている。電極収納スペース11a内には、上下に進退動可能に構成された電極(下側電極)17,18が設けられる。下型11と下側電極17との間及び下側電極17の下部、並びに下型11と下側電極18との間及び下側電極18の下部には、通電を防ぐための絶縁材91がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材91は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド95に固定されている。このアクチュエータは、下側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、下型11と共に基台15側に保持されている。
下側電極17,18の上面には、金属パイプ材料14の下側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aがそれぞれ形成されている(図2(c)を参照)。このため、下型11側に位置する一対の下側電極17,18は、パイプ保持機構30の一部を構成しており、金属パイプ材料14を上型12と下型11との間で昇降可能に支えることができる。下側電極17,18にて支持される金属パイプ材料14は、例えば凹溝17a,18aにて嵌め込まれ載置される。下側電極17,18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17a,18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17b,18bが形成されている。なお、絶縁材91には、上記凹溝17a,18aに連通すると共に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。
上型12は、下型11と同様に大きな鋼鉄製ブロックによって構成されており、駆動機構80を構成するスライド81(詳細は後述)に固定されている。上型12の下面にはキャビティ24が形成されている。キャビティ24は、下型11のキャビティ16に対向する位置に設けられている。上型12の内部には、冷却水通路25が設けられている。
上型12の左右端(図1における左右端)近傍には、下型11と同様な電極収納スペース12aが設けられている。電極収納スペース12a内には、下型11と同じく、上下に進退動可能に構成された電極(上側電極)17,18が設けられる。上型12と上側電極17との間及び上側電極17の上部、並びに上型12と上側電極18との間及び上側電極18の上部には、通電を防ぐための絶縁材101がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材101は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド96に固定されている。このアクチュエータは、上側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、上型12と共に駆動機構80側に保持されている。
上側電極17,18の下面には、金属パイプ材料14の上側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aがそれぞれ形成されている(図2(c)を参照)。このため、上側電極17,18は、パイプ保持機構30の他の一部を構成している。上下一対の電極17,18で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、金属パイプ材料14の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができる。上側電極17,18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17a,18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17b,18bが形成されている。なお、絶縁材101には、上記凹溝17a,18aに連通すると共に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。
図3は、成形金型13の概略断面図である。図3に示されるように、下型11の上面には、下型11の中央のキャビティ16表面を基準ラインLV2とすると、キャビティ16の一方側(図3において右側、図1において紙面奥側)に第1突起11bが形成されており、キャビティ16の他方側(図3において左側、図1において紙面手前側)に第2突起11cが形成されている。第1突起11b及び第2突起11cにおいて基準ラインLV2からの突出量は略同一である。一方、上型12の下面には、上型12の中央のキャビティ24表面を基準ラインLV1とすると、キャビティ24の一方側(図3において右側)に第1突起12bが形成されており、キャビティ24の他方側(図3において左側)に第2突起12cが形成されている。第1突起12b及び第2突起12cにおいて基準ラインLV1からの突出量は略同一である。
図1に戻って、駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド81と、スライド81を移動させるための駆動力を発生するシャフト82と、該シャフト82で発生した駆動力をスライド81に伝達するためのコネクティングロッド83とを備えている。シャフト82は、スライド81上方にて左右方向に延在していると共に回転自在に支持されており、その軸心から離間した位置にて左右端から突出して左右方向に延在する偏心クランク82aを有している。この偏心クランク82aと、スライド81の上部に設けられると共に左右方向に延在している回転軸81aとは、コネクティングロッド83によって連結されている。駆動機構80では、制御部70によってシャフト82の回転を制御することにより偏心クランク82aの上下方向の高さを変化させ、この偏心クランク82aの位置変化をコネクティングロッド83を介してスライド81に伝達することにより、スライド81の上下動を制御できる。ここで、偏心クランク82aの位置変化をスライド81に伝達する際に発生するコネクティングロッド83の揺動(回転運動)は、回転軸81aによって吸収される。なお、シャフト82は、例えば制御部70によって制御されるモータ等の駆動に応じて回転又は停止する。
加熱機構(電力供給部)50は、電力供給源55、及び、電力供給源55と電極17,18とを電気的に接続する電力供給ライン52を備える。電力供給源55は、直流電源及びスイッチを含み、電力供給ライン52、電極17,18を介して金属パイプ材料14に通電可能になっている。本実施形態では、電力供給ライン52は、下側電極17,18に接続されているが、これに限られない。制御部70は、上記加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を焼入れ温度(例えば、AC3変態点温度以上)まで加熱することができる。
一対の気体供給部40の各々は、ブロック41を介して基台15上に載置固定されるシリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43の先端に連結された気体供給ノズル(ノズル)44とを有する。気体供給部40の構成の詳細については、後述する。
気体供給ユニット60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを貯留するアキュムレータ(ガス貯留部)62と、このアキュムレータ62から気体供給部40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62から気体供給部40の気体供給ノズル44まで延びている第2チューブ(配管)67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69と、を有する。圧力制御弁64は、気体供給ノズル44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内でガスが逆流することを防止する役割を果たす。
圧力制御弁68は、制御部70の制御により、第2チューブ67内の圧力を調節するバルブである。例えば、金属パイプ材料14を仮膨張させるための作動圧力(以下、第1到達圧力とする)を有するガス(以下、低圧ガスとする)と、金属パイプを成形するための作動圧力(以下、第2到達圧力とする)を有するガス(以下、高圧ガスとする)とを、第2チューブ67内に供給する役割を果たす。これにより、第2チューブ67に接続される気体供給ノズル44に低圧ガス及び高圧ガスを供給できる。なお、高圧ガスの圧力は、例えば低圧ガスの約2倍〜5倍である。
また、制御部70は、図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、加熱機構50及び駆動機構80を制御する。水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とを備える。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
次に、図1に加えて図4を用いて気体供給部40の構成を詳細に説明する。図1及び図4に示されるように、シリンダユニット42は、シリンダロッド43を介して気体供給ノズル44を金属パイプ材料14に対して進退駆動させる部分である。シリンダユニット42には内部空間が形成され、当該内部空間は、シリンダロッド43に接続された仕切部43aによって区切られている。また、区切られた内部空間の一方(気体供給ノズル44側)は、第1チューブ63の分岐チューブ63aに接続され、内部空間の他方は第1チューブ63の分岐チューブ63bに接続されている。このため、シリンダユニット42を押し出す場合は、分岐チューブ63bから気体が供給され、シリンダユニット42を引く場合は、分岐チューブ63aから気体が供給される。
気体供給ノズル44は、パイプ保持機構30にて保持された金属パイプ材料14の内部に連通可能に構成されている部分であり、上記内部に膨張成形のための気体供給を実施する。気体供給ノズル44は、互いに一体化した先端部44A及び基体部44Bと、先端部44Aの先端が先細になるように設けられるテーパー面45と、先端部44A及び基体部44Bの内部に設けられるガス通路46と、基体部44Bに設けられるガス通路46の出口に位置する開閉弁47とを備える。先端部44Aにおいてテーパー面45が設けられる部分は、電極17,18のテーパー凹面17b,18bに丁度嵌合当接することができる形状に構成されている(図2(b)を参照)。テーパー面45は、絶縁材によって構成されてもよい。基体部44Bには、シリンダロッド43が取り付けられている。なお、先端部44A及び基体部44Bの少なくともいずれかには、ガス通路46内のガスを排出するための出口が設けられてもよい。
ガス通路46は、シリンダユニット42側から先端部44Aに向かって延在しており、開閉弁47を介して気体供給ユニット60の第2チューブ67(図1を参照)に接続される。このため、ガス通路46には、気体供給ユニット60から供給されたガスが供給される。開閉弁47は、気体供給ノズル44の外側(より具体的には、基体部44Bの外側)に直接取り付けられており、気体供給ユニット60からガス通路46への気体供給を制御する。また、開閉弁47は、第2チューブ67におけるガス通路46側の先端に接続される。このため、開閉弁47が閉塞しているとき、第2チューブ67の全体にガスを貯留できる。すなわち、開閉弁47を閉塞すると共に圧力制御弁68を制御することによって、ガス源61から第2チューブ67にガスを供給してその内部圧力を予め昇圧できる。したがって、開閉弁47が開放された後、ガス通路46内の圧力を瞬時に昇圧できる。よって、ガス通路46に連通する金属パイプ材料14の内部の圧力も、瞬時に昇圧できる。なお、開閉弁47の開閉は、図1に示される(B)を介して制御部70によって制御される。
<成形装置を用いた金属パイプの成形方法>
次に、成形装置10を用いた金属パイプの成形方法について図5を用いながら説明する。図5は、金属パイプの成形方法を示すフローチャートである。最初に、焼入れ可能な鋼種の円筒状の金属パイプ材料14を準備する。この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下側電極17,18上に載置(投入)する。下側電極17,18には凹溝17a,18aが形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。
次に、制御部70による駆動機構80及びパイプ保持機構30の制御によって、パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる(ステップS1)。ステップS1では、駆動機構80の駆動によりスライド81側に保持されている上型12及び上側電極17,18等が下型11側に移動すると共に、パイプ保持機構30に含まれる上側電極17,18等及び下側電極17,18等を進退動可能としているアクチュエータを作動させることによって、金属パイプ材料14の両方の端部付近を上下からパイプ保持機構30により挟持する。この挟持は、電極17,18に形成される凹溝17a,18a、及び絶縁材91,101に形成される凹溝の存在によって、金属パイプ材料14の両端部付近の全周に渡って密着するような態様で実施される。
このとき、図2(a)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりも気体供給ノズル44側に突出している。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりも気体供給ノズル44側に突出している。また、上側電極17,18の下面と下側電極17,18の上面とは、それぞれ互いに接触している。ただし、金属パイプ材料14の両端部全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に電極17,18が当接するような構成であってもよい。
次に、制御部70による加熱機構50の制御によって、金属パイプ材料14を通電加熱する(ステップS2)。ステップS2では、制御部70が電力供給部として機能する加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14に電力を供給する。すると、電力供給ライン52を介して下側電極17,18に伝達される電力が、金属パイプ材料14を挟持している上側電極17,18及び金属パイプ材料14に供給される。そして、金属パイプ材料14自身の電気抵抗により、金属パイプ材料14自体がジュール熱によって発熱する。ステップS2では、熱電対21の測定値が常に監視され、この結果に基づいて通電が制御されてもよい。なお、金属パイプ材料14を通電加熱する前等に、上型12を下型11側に近づけてもよい。
次に、気体供給部40のシリンダユニット42を作動させることによって、気体供給ノズル44を前進させ、金属パイプ材料14の両端に気体供給ノズル44を挿入する(ステップS3)。ステップS3では、各気体供給ノズル44の先端部44Aを金属パイプ材料14の両端に挿入してシールする。これにより、金属パイプ材料14の内部と、ガス通路46とが、気密性よく連通する。ステップS3では、図2(b)に示されるように、金属パイプ材料14において電極17,18から気体供給ノズル44に向かって突出している端部に対して、気体供給ノズル44が押し付けられる。これにより、上記端部が、テーパー凹面17b,18bに沿うように漏斗状に変形する。同様に、金属パイプ材料14における上記端部と反対側の端部もまた、漏斗状に変形する。
次に、制御部70による気体供給ユニット60、駆動機構80、及び開閉弁47の制御によって、加熱後の金属パイプ材料14を成形金型13によって膨張成形する(ステップS4)。ステップS4では、成形金型13を閉じると共に、ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込む。これにより、加熱により軟化した金属パイプ材料14が膨張して成形金型13と接触する。そして、金属パイプ材料14は、成形金型13のキャビティ部の形状に沿うように成形される(具体的な金属パイプ材料14の成形方法については後述する)。
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されることによって、金属パイプ材料14の焼き入れが実施される。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイト等)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を例えばキャビティ24内に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却し、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
次に、図6、図7(a),(b)及び図8(a),(b)を参照して、上記ステップS4において成形金型13による具体的な成形の様子の一例について詳細に説明する。図6は、本実施形態に係る金属パイプの成形工程のタイミングチャートである。図6において、縦軸は金属パイプ材料内もしくは金属パイプ内の圧力を示し、横軸は時間を示す。
図6に示される期間T1にて、パイプ保持機構30にて保持された金属パイプ材料14を、上型12のキャビティ24と下型11のキャビティ16との間に準備する。続いて、駆動機構80によって上型12を下型11側に移動させることによって、成形金型13と金属パイプ材料14との位置関係を調整する(図7(a)を参照)。このとき、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間の距離は、D1である。続いて、金属パイプ材料14を通電加熱することによって、金属パイプ材料14を軟化させる。そして、気体供給ノズル44を金属パイプ材料14の端部に挿入する。
また、期間T1の終了間際にて、駆動機構80によって上型12を下型11側にさらに移動させる。これにより、図7(b)に示されるように、上型12と下型11とを完全に閉じず、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間の距離をD2(D2<D1)にする。このとき、金属パイプ材料14の一部は、上型12と下型11とに接触して圧縮する。これにより、下型11の第1突起11bと上型12の第1突起12bとの間、及び、下型11の第2突起11cと上型12の第2突起12cとの間に、金属パイプ材料14の一部14b,14cが張り出す。金属パイプ材料14の一部14b,14cは、後にフランジ部になる部分である。なお、期間T1の終了間際とは、例えば期間T2の開始時の1秒前から数秒前である。
期間T1においては、開閉弁47は閉塞されており、圧力制御弁68は一部開放される。このため、ガス源61及びアキュムレータ62から低圧ガスが第2チューブ67に供給される。よって期間T1においては、第2チューブ67内に低圧ガスが貯留されることによって、第2チューブ67内の圧力は第1到達圧力まで昇圧される。
次に、図6に示される期間T2にて、開閉弁47を開放する。これにより、第2チューブ67内に予め貯留された低圧ガスを、ガス通路46を介して金属パイプ材料14内に供給する。このような低圧ガスの供給により、金属パイプ材料14の本体部14aは、キャビティ16,24によって囲まれた空間にて迅速に膨張する。また、金属パイプ材料14の一部14b,14cも膨張する(図8(a)を参照)。
次に、図6に示される期間T3にて、開閉弁47を閉塞する。これにより、ガス通路46内への低圧ガスの供給を停止する。また、期間T3では、圧力制御弁68をさらに開放する。これにより、ガス源61及びアキュムレータ62から高圧ガスが第2チューブ67に供給される。よって期間T3においては、第2チューブ67内には高圧ガスが貯留されることによって、第2チューブ67内の圧力は、第1到達圧力よりも高い第2到達圧力まで昇圧される。
また、期間T3の終了間際にて、駆動機構80によって上型12を下型11側にさらに移動させる。これにより、下型11の第1突起11bと上型12の第1突起12bとの間に位置する金属パイプ材料14の一部14a、及び、下型11の第2突起11cと上型12の第2突起12cとの間に位置する金属パイプ材料14の一部14aが押圧される。そして、金属パイプ100のフランジ部100b,100c(図8(b)を参照)が成形される。フランジ部100b,100cは、金属パイプ材料14の長手方向に沿って、金属パイプ材料14の一部が折り畳まれて成形された部分である。なお、期間T3の終了間際とは、例えば期間T4の開始時の1秒前から数秒前である。
次に、図6に示される期間T4にて、開閉弁47を開放する。これにより、第2チューブ67内に予め貯留された高圧ガスを、ガス通路46を介して金属パイプ材料14内に供給する。このような高圧ガスの供給により、金属パイプ材料14の本体部14aは、キャビティ16,24によって囲まれた空間にて瞬時に膨張する。このため、金属パイプ材料14が十分に膨張してメインキャビティ部MCの隅々まで行きわたる。そして、図8(b)に示されるように、金属パイプ100のパイプ部100aが成形される。パイプ部100aは、上型12及び下型11によって画成されるメインキャビティ部MCの形状に沿ったものになる。
次に、図6に示される期間T5にて、開閉弁47を閉塞する。これにより、ガス通路46内への高圧ガスの供給を停止する。開閉弁47を閉塞後、下型11及び上型12等の状態を保持することによって、パイプ部100a及びフランジ部100b,100cに対して焼き入れを実施する。このとき、パイプ部100a及びその内部のガスが冷却されるので、パイプ部100aの内部圧力が減少する。そして図6に示される期間T6にて、パイプ部100a内と、ガス通路46内とのガスを排気する。
以上に説明した期間T1〜T6を経ることによって、パイプ部100a及びフランジ部100b,100cを有する金属パイプ100を仕上げることができる。これら金属パイプ材料14のブロー成形から金属パイプ100の成形完了までに至るまでの時間は、金属パイプ材料14の種類にもよるが、概ね数秒から数十秒程度である。なお、図8(b)に示す例では、キャビティ16,24は断面矩形状に構成されているため、金属パイプ材料14は当該形状に合わせてブロー成形されることにより、パイプ部100aは矩形筒状に成形される。ただし、キャビティ16,24の形状を変更することによって、断面円形、断面楕円形、断面多角形等あらゆる形状を呈するパイプ部を成形してもよい。
<作用効果>
次に、本実施形態に係る成形装置10の作用効果について、下記に示す比較例を用いながら説明する。比較例に係る成形装置は、気体供給部が開閉弁を備えないことを除いて、本実施形態と同様の構成を備える。このため比較例においては、気体供給部を介した金属パイプ材料14の内部への気体供給は、制御部70と、気体供給ユニット60の圧力制御弁68とによって制御される。
図9は、比較例に係る金属パイプの成形工程のタイミングチャートである。図9において、縦軸は金属パイプ材料内の圧力を示し、横軸は時間を示し、期間T11〜T16は、図6における期間T1〜T6にそれぞれ対応する。図9に示されるように、比較例の期間T11は本実施形態の期間T1と同一である一方で、比較例の期間T12は本実施形態の期間T2よりも長くなっている。同様に、比較例の期間T14は、本実施形態の期間T4よりも長くなっている。これは、比較例においては気体供給部に開閉弁が設けられていないので、第2チューブ67内に予め低圧/高圧ガスを供給することができないからである。
これに対して本実施形態に係る成形装置10によれば、気体供給部40の開閉弁47を閉塞した状態にて、ガス源61及びアキュムレータ62から第2チューブ67にガスを供給することによって、例えば第2チューブ67内を予め低圧ガスに対応する第1到達圧力まで昇圧した状態に設定できる。この状態にて開閉弁47を開放することによって、気体供給部40のガス通路46と、気体供給ノズル44に連通する金属パイプ材料14の内部とを、第1到達圧力まで迅速に昇圧することができる。また本実施形態では、開閉弁47を一端閉塞させることによって、第2チューブ67内を予め高圧ガスに対応する第2到達圧力まで昇圧した状態に設定できる。この状態にて開閉弁47を再度開放することによって、ガス通路46と、気体供給ノズル44に連通する金属パイプ材料14の内部とを、第2到達圧力まで迅速に昇圧することができる。このため、本実施形態における金属パイプ材料14の内部が第1到達圧力及び第2到達圧力まで昇圧されるまでの時間は、比較例よりも顕著に短縮されている。したがって本実施形態によれば、金属パイプ100の成形時間を短縮することができるので、金属パイプ100の生産性向上が可能になる。
また従来では、上記特許文献1に記載されるような成形装置にて金型の形状に良好に沿った金属パイプを成形するためには、金属パイプ材料の内部に高圧ガスをある程度の期間連続供給することが肝要であると考えられていた。このため従来では、比較例の期間T15に示されるように、金属パイプ材料14の内部圧力は、第2到達圧力に維持されている。すなわち、比較例の期間T15では、高圧ガスが金属パイプ材料14の内部に連続供給されている。しかしながら、さらに検討を進めることによって、成形された金属パイプの形状は、金属パイプ材料の内部圧力が第2到達圧力まで昇圧するために要する時間に依存することが見出された。この理由について、以下にて説明する。
上記成形装置では、成形金型内にて金属パイプ材料を膨張成形するとき、金属パイプ材料にて成形金型に密着した部分は焼き入れされる。金属パイプ材料の内部における圧力上昇が緩やかである場合、金属パイプ材料の膨張もまた緩やかになる傾向にある。金属パイプ材料の膨張が緩やかであるほど、金属パイプ材料と成形金型とが接触するタイミングは、金属パイプ材料の部位毎に異なる傾向にある。これにより、金属パイプ材料が成形金型の形状に沿って完全に膨張する前に冷却されてしまうことによって、パイプ部において成形金型に接触しない箇所が設けられることがある。この場合、金型の形状に良好に沿った金属パイプを得ることができなくなるので、均一な形状を呈する金属パイプを量産することが困難になってしまう。
一方、本実施形態に係る成形装置10によれば、金属パイプ材料14の内部が第2到達圧力に昇圧されるまで要する期間T4は、比較例の期間T14よりも明らかに短縮されている。このため、上述したように金属パイプ材料14を瞬時に膨張することができるので、金属パイプ材料14の本体部14aの全体を、期間T4において同時もしくはほぼ同時に成形金型13に接触させることができる。したがって、本実施形態に係る成形装置10を用いることによって、金型の形状に良好に沿った金属パイプ100を生産性よく量産できる。
本実施形態では、開閉弁47は、気体供給ノズル44の外側に直接取り付けられている。このため、開閉弁47を開放することによって、第2チューブ67から気体供給ノズル44のガス通路46に瞬時にガスを供給できるので、金属パイプ100の成形時間をより短縮できる。
また、本実施形態の期間T5では、開閉弁47を閉塞することによって、ガス通路46へのガス供給を停止する。これにより、上記比較例と比較して、金属パイプ100を成形する際に必要なガスの量を低減できる。加えて、本実施形態の期間T6においては、金属パイプ100内のガス及びガス通路46内のガスを排気すればよいが、上記比較例の期間T16においては、金属パイプ内のガス及びガス通路内のガスに加えて、第2チューブ67内のガスを排気する必要がある。このため本実施形態においては、金属パイプ100の成形後に排気させなければならない空気量を低減できるので、金属パイプ材料14の成形にて用いる高圧ガスの量を低減できる。さらには、本実施形態によれば期間T6を上記比較例の期間T16よりも短縮できるので、金属パイプ100のさらなる生産性向上が可能である。
<変形例>
以下では、上記実施形態の変形例に係る成形装置について説明する。当該変形例の説明において上記実施形態と重複する記載は省略し、上記実施形態と異なる部分を記載する。
図10は、実施形態の変形例に係る成形装置の概略構成図であり、図11は、実施形態の変形例に係る成形金型の概略断面図である。図10,11に示されるように、変形例に係る成形装置10Aは、キャビティ吸気装置(吸気部)200を備える点と、キャビティ吸気装置200に接続される吸気孔211〜214が成形金型13Aに設けられる点で、上記実施形態の成形装置10と相違している。
キャビティ吸気装置200は、下型11Aのキャビティ16内と、上型12Aのキャビティ24内との気体を吸引する装置であり、例えば真空ポンプ等である。キャビティ吸気装置200は、吸気孔211〜214のそれぞれに接続されており、吸気孔211〜214を介して上型12Aのキャビティ24内と、下型11Aのキャビティ16内との気体を吸気する。例えば上記実施形態における期間T1〜T4(図6を参照)の少なくともいずれかにおいて、キャビティ吸気装置200は、下型11Aと金属パイプ材料14とによって画成されるキャビティ16内の空間、及び、上型12Aと金属パイプ材料14とによって画成されるキャビティ24内の空間を吸気する。キャビティ吸気装置200と、吸気孔211〜214とは、例えばチューブ等によって連結されている。
吸気孔211,212は、下型11Aに設けられており、且つ、キャビティ16に連通している。吸気孔211,212のそれぞれは、キャビティ16において、金属パイプ材料14から最も遠い箇所もしくはその近傍に連通している。本変形例では、吸気孔211は、下型11A内部であって第1突起11bに重なる箇所に設けられており、キャビティ16における第1突起11b側の入隅部に連通している。吸気孔212は、下型11A内部であって第2突起11cに重なる箇所に設けられており、キャビティ16における第2突起11c側の入隅部に連通している。吸気孔211,212は、例えば金属パイプ材料14の延在方向に沿って延在している。
吸気孔213,214は、上型12Aに設けられており、且つ、キャビティ24に連通している。吸気孔213,214のそれぞれは、キャビティ24において、金属パイプ材料14から最も遠い箇所もしくはその近傍に連通している。本変形例では、吸気孔213は、上型12A内部であって第1突起12bに重なる箇所に設けられており、キャビティ24における第1突起12b側の入隅部に連通している。吸気孔214は、上型12A内部であって第2突起12cに重なる箇所に設けられており、キャビティ24における第2突起12c側の入隅部に連通している。吸気孔213,214は、吸気孔211,212と同様に、例えば金属パイプ材料14の延在方向に沿って延在している。
以上に説明した上記実施形態の変形例では、下型11Aと金属パイプ材料14とによって画成されるキャビティ16内の空間内、及び、上型12Aと金属パイプ材料14とによって画成されるキャビティ24内の空間内の気体を、キャビティ吸気装置200によって予め吸気しておくことができる。これにより、金属パイプ材料14の内部を第2到達圧力まで昇圧する際に、金属パイプ材料が上記空間内に膨張しやすくなる。したがって、キャビティ16,24の形状に沿った金属パイプ100を良好に成形できる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態及び上記変形例に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態における成形装置は加熱機構を必ずしも有していなくてもよく、金属パイプ材料はすでに加熱されていてもよい。
上記実施形態及び上記変形例では、駆動機構は、上型のみを移動させているが、上型に加えて、または上型に代えて下型が移動するものであってもよい。下型が移動する場合、当該下型は基台に固定されず、駆動機構に取り付けられる。
上記実施形態及び上記変形例では、ガス源は、高圧ガスを供給するための高圧ガス源と、低圧ガスを供給するための低圧ガス源との両方を有してもよい。また、開閉弁は気体供給ノズルの外側に直接設けられなくてもよい。
上記変形例では、合計4つの吸気孔が設けられているが、これに限られない。吸気孔の数は1つでもよい。また、吸気孔は、上型及び下型のいずれか一方のみに設けられてもよい。