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JP2019167038A - 車両の制御装置 - Google Patents

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JP2019167038A JP2018057725A JP2018057725A JP2019167038A JP 2019167038 A JP2019167038 A JP 2019167038A JP 2018057725 A JP2018057725 A JP 2018057725A JP 2018057725 A JP2018057725 A JP 2018057725A JP 2019167038 A JP2019167038 A JP 2019167038A
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Abstract

【課題】ヨーモーメントを車両に付加する車両ヨー制御を行う車両の制御装置において、車両が走行する路面の勾配を考慮して、それに適した車両ヨー制御を行う。【解決手段】車両の制御装置は、ステアリングホイール6などを含む操舵装置と、左右の車輪に異なる制動力を付与可能なブレーキ装置16と、プロセッサなどを含むPCM14と、を備える。このPCM14は、ステアリングホイール6の切り戻し操作に基づき、車両1に発生しているヨーレートとは逆回りのヨーモーメントを車両1に付加するようにブレーキ装置16を制御する車両ヨー制御を実行し、ステアリングホイール6の切り戻し操作時に車両1が降坂路を走行しているときには、そうでないときよりも車両ヨー制御を抑制するよう構成されている。【選択図】図6

Description

本発明は、車両の制御装置に係わり、特に、左右の車輪に異なる制動力を付与可能なブレーキ装置を備えた車両の制御装置に関する。
従来、スリップ等により車両の挙動が不安定になった場合に安全方向に車両の挙動を制御するもの(横滑り防止装置等)が知られている。具体的には、車両のコーナリング時等に、車両にアンダーステアやオーバーステアの挙動が生じたことを検出し、それらを抑制するように車輪に適切な減速度を付与するようにしたものが知られている。
また、上述したような車両の挙動が不安定になるような走行状態における安全性向上のための制御とは異なり、日常運転領域から稼動するハンドル操作に連係した加減速を自動的に行い、限界運転領域で横滑りを低減させるようにした車両の運動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特に、この特許文献1には、車両の前後方向の加減速を制御する第1のモードと、車両のヨーモーメントを制御する第2のモードと、を備えた車両の運動制御装置が開示されている。
特許5143103号公報
上述したように、特許文献1に開示された技術では、第2のモードにおいて、ヨーモーメントを車両に付加している。このヨーモーメントを車両に付加する制御は、典型的にはステアリングホイール(以下では単に「ステアリング」とも表記する。)が切り戻し操作されるときに実行される。すなわち、ステアリングが切り戻し操作されたときに、車両の旋回を抑えるべく、換言すると車両の直進方向への復帰を促進させるべく、車両に発生しているヨーレートとは逆回りのヨーモーメントが付加されるように、ブレーキ装置により旋回外輪に制動力が付与される。以下では、このようなヨーモーメントを車両に付加する制御を適宜「車両ヨー制御」と呼ぶ。
ところで、車両が降坂路を走行しているときには、車両が平坦路や登坂路を走行しているときよりも、前輪(旋回輪)に付与される荷重が大きいので、ステアリングの切り戻し操作に対する車両の応答性が良い、つまり旋回状態にある車両の直進方向への復帰が促進される傾向にある。これは、降坂路走行時には前輪に付与される荷重が比較的大きいので、当該前輪においては、タイヤの前後力(加速力)に応じたタイヤの復元力が大きいからである。そのため、降坂路走行時に平坦路走行時などと同様のヨーモーメントを車両ヨー制御により付与すると、制御介入の過剰な状態が発生し、ドライバに違和感を与えてしまう場合がある。
他方で、車両が登坂路を走行しているときには、車両が平坦路や降坂路を走行しているときよりも、前輪(旋回輪)に付与される荷重が小さいので、ステアリングの切り戻し操作に対する車両の応答性が悪くなる傾向にある。これは、登坂路走行時には前輪に付与される荷重が比較的小さいので、当該前輪においては、タイヤの前後力に応じたタイヤの復元力が小さいからである。そのため、登坂路走行時に平坦路走行時などと同様のヨーモーメントを車両ヨー制御により付与しても、車両ヨー制御による車両の応答性改善機能、つまりステアリング操作に応じた迅速な車両挙動の安定化機能を十分に得られない傾向にある。
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ヨーモーメントを車両に付加する車両ヨー制御を行う車両の制御装置において、車両が走行する路面の勾配を考慮して、それに適した車両ヨー制御を行うことを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、操舵装置と、左右の車輪に異なる制動力を付与可能なブレーキ装置と、制御器と、を有する車両の制御装置であって、制御器は、操舵装置の戻し操作に基づき、車両に発生しているヨーレートとは逆回りのヨーモーメントを車両に付加するようにブレーキ装置を制御する車両ヨー制御を実行し、操舵装置の戻し操作時に車両が降坂路を走行しているときには、そうでないときよりも車両ヨー制御を抑制するよう構成されている、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、操舵装置の戻し操作時に車両が降坂路を走行しているときに車両ヨー制御を抑制するので、このときに車両ヨー制御を実行することにより制御介入が過剰な状態になることを適切に抑制できる。すなわち、降坂路走行時には、前輪(旋回輪)に付与される荷重が比較的大きく当該前輪の復元モーメントが大きいため、旋回状態にある車両の直進方向への復帰が促進される傾向にあるので、本発明では、降坂路走行時に車両ヨー制御を抑制することで、当該制御によるヨーモーメントの付加によって車両の直進方向への復帰が過剰なものとなることを適切に抑制できる。
本発明において、好ましくは、制御器は、操舵装置の戻し操作に応じた値が所定の閾値以上となったときに車両ヨー制御を実行し、降坂路の路面勾配が大きいときには、そうでないときよりも閾値を大きくするよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、降坂路の路面勾配(下り勾配)が大きいときに、車両ヨー制御を実行するか否かを判定するための閾値を大きくするので、降坂路の路面勾配が比較的大きいときに車両ヨー制御を効果的に抑制することができる。
本発明において、好ましくは、制御器は、降坂路の路面勾配が大きいときには、そうでないときよりも車両ヨー制御により付加するヨーモーメントを小さくするよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、降坂路の路面勾配(下り勾配)が大きいときに、車両ヨー制御により付加するヨーモーメントを小さくするので、降坂路の路面勾配が比較的大きいときに車両ヨー制御を効果的に抑制することができる。
他の観点では、上記の目的を達成するために、本発明は、操舵装置と、左右の車輪に異なる制動力を付与可能なブレーキ装置と、制御器と、を有する車両の制御装置であって、制御器は、操舵装置の戻し操作に基づき、車両に発生しているヨーレートとは逆回りのヨーモーメントを車両に付加するようにブレーキ装置を制御する車両ヨー制御を実行し、操舵装置の戻し操作時に車両が登坂路を走行しているときには、そうでないときよりも車両ヨー制御を促進するよう構成されている、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、操舵装置の戻し操作時に車両が登坂路を走行しているときに車両ヨー制御を促進するので、このときに車両ヨー制御による車両の応答性改善機能、つまりステアリング操作に応じた迅速な車両挙動の安定化機能を、適切に確保できる。すなわち、登坂路走行時には、前輪(旋回輪)に付与される荷重が比較的小さく当該前輪の復元モーメントが小さいため、平坦路走行時などと同様のヨーモーメントを車両ヨー制御により付与しても当該制御による作用効果を十分に得られない傾向にあるので、本発明では、登坂路走行時に車両ヨー制御を促進するようにすることで、車両ヨー制御による車両の応答性改善機能を適切に確保できる。
本発明において、好ましくは、制御器は、操舵装置の戻し操作に応じた値が所定の閾値以上となったときに車両ヨー制御を実行し、登坂路の路面勾配が大きいときには、そうでないときよりも閾値を小さくするよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、登坂路の路面勾配(上り勾配)が大きいときに、車両ヨー制御を実行するか否かを判定するための閾値を小さくするので、登坂路の路面勾配が比較的大きいときに車両ヨー制御を効果的に促進することができる。
本発明において、好ましくは、制御器は、登坂路の路面勾配が大きいときには、そうでないときよりも車両ヨー制御により付加するヨーモーメントを大きくするよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、登坂路の路面勾配(上り勾配)が大きいときに、車両ヨー制御により付加するヨーモーメントを大きくするので、登坂路の路面勾配が比較的大きいときに車両ヨー制御を効果的に促進することができる。
また、本発明において、好ましくは、制御器は、操舵装置の操舵速度が所定の閾値以上となったときに、操舵速度及び車速に応じた目標横ジャークに基づきヨーモーメントを設定して、このヨーモーメントを車両に付加するように車両ヨー制御を実行するよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、ドライバのステアリング操作の速さに応じた大きさのヨーモーメントを車両の旋回を抑える方向に付与することができ、ドライバのステアリング操作に応じて素早く車両挙動を安定化させることができる。
また、本発明において、好ましくは、制御器は、操舵装置の操舵角及び車速に応じた目標ヨーレートと車両に実際に生じている実ヨーレートとの差の変化速度が所定の閾値以上となったときに、この変化速度に基づきヨーモーメントを設定して、このヨーモーメントを車両に付加するように車両ヨー制御を実行するよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、例えば圧雪路のような低μ路でステアリングホイールの操作を行った場合に、実ヨーレートの応答遅れに起因するヨーレート差の急激な変化に応じて直ちに旋回を抑える方向のヨーモーメントを車両に付与することができ、車両の挙動が不安定になる前の状況において、ドライバのステアリング操作に応じて素早く車両挙動を安定化させることができる。
本発明によれば、ヨーモーメントを車両に付加する車両ヨー制御を行う車両の制御装置において、車両が走行する路面の勾配を考慮して、それに適した車両ヨー制御を適切に行うことができる。
本発明の実施形態による車両の制御装置を搭載した車両の全体構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態による車両の制御装置の電気的構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態による姿勢制御処理のフローチャートである。 本発明の実施形態による付加減速度設定処理のフローチャートである。 本発明の実施形態による付加減速度と操舵速度との関係を示したマップである。 本発明の実施形態による目標ヨーモーメント設定処理のフローチャートである。 本発明の実施形態による目標ヨーモーメント設定処理において用いる閾値を示したマップである。 本発明の実施形態による目標ヨーモーメント設定処理において用いるゲインを示したマップである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両の制御装置を説明する。
<システム構成>
まず、図1により、本発明の実施形態による車両の制御装置を搭載した車両のシステム構成を説明する。図1は、本発明の実施形態による車両の制御装置を搭載した車両の全体構成を示すブロック図である。
図1において、符号1は、本実施形態による車両の制御装置を搭載した車両を示す。車両1の車体前部には、駆動輪(図1の例では左右の前輪2)を駆動する駆動源として、エンジン4が搭載されている。エンジン4は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃エンジンであり、本実施形態では点火プラグを有するガソリンエンジンである。
また、車両1は、主に、当該車両1を操舵するための操舵装置(ステアリングホイール6など)と、この操舵装置においてステアリングホイール6に連結されたステアリングコラム(図示せず)の回転角度としての操舵角を検出する操舵角センサ8と、車速を検出する車速センサ10と、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ12と、車両1が走行する路面の路面勾配(路面の傾斜)を検出する勾配センサ11と、車両1の前後方向の加速度(前後加速度)を検出する車両前後加速度センサ13と、を有する。これらの各センサは、それぞれの検出値をPCM(Power-train Control Module)14に出力する。
また、車両1は、各車輪に設けられたブレーキ装置16のホイールシリンダやブレーキキャリパにブレーキ液圧を供給するブレーキ制御システム18を備えている。ブレーキ制御システム18は、各車輪に設けられたブレーキ装置16において制動力を発生させるために必要なブレーキ液圧を生成する液圧ポンプ20を備えている。液圧ポンプ20は、例えばバッテリから供給される電力で駆動され、ブレーキペダルが踏み込まれていないときであっても、各ブレーキ装置16において制動力を発生させるために必要なブレーキ液圧を生成することが可能となっている。また、ブレーキ制御システム18は、各車輪のブレーキ装置16への液圧供給ラインに設けられた、液圧ポンプ20から各車輪のブレーキ装置16へ供給される液圧を制御するためのバルブユニット22(具体的にはソレノイド弁)を備えている。例えば、バッテリからバルブユニット22への電力供給量を調整することによりバルブユニット22の開度が変更される。また、ブレーキ制御システム18は、液圧ポンプ20から各車輪のブレーキ装置16へ供給される液圧を検出する液圧センサ24を備えている。液圧センサ24は、例えば各バルブユニット22とその下流側の液圧供給ラインとの接続部に配置され、各バルブユニット22の下流側の液圧を検出し、検出値をPCM(Power-train Control Module)14に出力する。
ブレーキ制御システム18は、PCM14から入力された制動力指令値や液圧センサ24の検出値に基づき、各車輪のホイールシリンダやブレーキキャリパのそれぞれに独立して供給する液圧を算出し、それらの液圧に応じて液圧ポンプ20の回転数やバルブユニット22の開度を制御する。
次に、図2により、本発明の実施形態による車両の制御装置の電気的構成を説明する。図2は、本発明の実施形態による車両の制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
本実施形態によるPCM14は、上述したセンサ8、10、11、12、13、24の検出信号の他、エンジン4の運転状態を検出する各種センサが出力した検出信号に基づいて、エンジン4の各部(典型的には点火プラグ26。その他には、スロットルバルブや、ターボ過給機や、可変バルブ機構や、燃料噴射弁や、EGR装置等)、及びブレーキ制御システム18に対する制御を行うべく、制御信号を出力する。
PCM14及びブレーキ制御システム18は、それぞれ、1つ以上のプロセッサ、当該プロセッサ上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。詳細は後述するが、PCM14及びブレーキ制御システム18は本発明における「制御器」に相当する。
<車両の姿勢制御>
次に、車両の制御装置が実行する具体的な制御内容を説明する。まず、図3により、本発明の実施形態において車両の制御装置が行う姿勢制御処理の全体的な流れを説明する。図3は、本発明の実施形態による姿勢制御処理のフローチャートである。
図3の姿勢制御処理は、車両1のイグニッションがオンにされ、PCM14などに電源が投入された場合に起動され、所定周期(例えば50ms)で繰り返し実行される。
姿勢制御処理が開始されると、図3に示すように、ステップS1において、PCM14は、車両1の各種情報を取得する。具体的には、PCM14は、操舵角センサ8が検出した操舵角、車速センサ10が検出した車速、ヨーレートセンサ12が検出したヨーレート、勾配センサ11が検出した路面勾配、車両前後加速度センサ13が検出した前後加速度等を含む、車両1の各種センサが出力した検出信号を取得する。
次に、ステップS2において、PCM14は、付加減速度設定処理を実行し、車両1に付加すべき付加減速度を設定する。
続いて、ステップS3において、PCM14は、目標ヨーモーメント設定処理を実行し、車両1に付与すべき目標ヨーモーメントを設定する。
次に、ステップS4において、PCM14は、ステップS2において設定された付加減速度を車両1に付加するようにエンジン2を制御する。この場合、PCM14は、設定された付加減速度を車両1に付加するように、エンジン2の出力トルクを減少させる。典型的には、PCM14は、エンジン4において点火時期を遅角させるように点火プラグ26を制御して、エンジン2の出力トルクを減少させる。
また、ステップS4において、ブレーキ制御システム18は、ステップS3において設定された目標ヨーモーメントを車両1に付与するようにブレーキ装置16を制御する。ブレーキ制御システム18は、ヨーモーメント指令値と液圧ポンプ20の回転数との関係を規定したマップを予め記憶しており、このマップを参照することにより、ステップS3の目標ヨーモーメント設定処理において設定されたヨーモーメント指令値に対応する回転数で液圧ポンプ20を作動させる(例えば、液圧ポンプ20への供給電力を上昇させることにより、制動力指令値に対応する回転数まで液圧ポンプ20の回転数を上昇させる)。
また、ブレーキ制御システム18は、例えば、ヨーモーメント指令値とバルブユニット22の開度との関係を規定したマップを予め記憶しており、このマップを参照することにより、ヨーモーメント指令値に対応する開度となるようにバルブユニット22を個々に制御し(例えば、ソレノイド弁への供給電力を上昇させることにより、制動力指令値に対応する開度までソレノイド弁の開度を増大させる)、各車輪の制動力を調整する。なお、ブレーキ制御システム18は、ステップS3において目標ヨーモーメントが設定されなかった場合には、上記のステップS4の制御を行わない。
以上述べたステップS4の後、PCM14は、姿勢制御処理を終了する。
次に、図4及び図5により、本発明の実施形態による付加減速度設定処理について説明する。図4は、本発明の実施形態による付加減速度設定処理のフローチャートであり、図5は、本発明の実施形態による付加減速度と操舵速度との関係を示したマップである。
図4に示すように、付加減速度設定処理が開始されると、ステップS11において、PCM14は、図3の挙動制御処理のステップS1において取得した操舵角に基づき操舵速度を算出する。
次に、ステップS12において、PCM14は、ステアリングホイール6の切り込み操作中(即ち操舵角(絶対値)が増大中)且つ操舵速度が所定の閾値S1以上であるか否かを判定する。
その結果、切り込み操作中且つ操舵速度が閾値S1以上である場合、ステップS13に進み、PCM14は、操舵速度に基づき付加減速度を設定する。この付加減速度は、ドライバの意図した車両挙動を正確に実現するために、ステアリング操作に応じて車両1に付加すべき減速度である。
具体的には、PCM14は、図5のマップに示した操舵速度と付加減速度との関係に基づき、ステップS11において算出した操舵速度に対応する付加減速度を設定する。
図5における横軸は操舵速度を示し、縦軸は付加減速度を示す。図5に示すように、操舵速度が閾値S1未満である場合、対応する付加減速度は0である。即ち、操舵速度が閾値S1未満である場合、PCM14は、ステアリング操作に基づき車両1に減速度を付加するための制御(具体的にはエンジン4の出力トルクの低減)を行わない。
一方、操舵速度が閾値S1以上である場合には、操舵速度が増大するに従って、この操舵速度に対応する付加減速度は、所定の上限値Dmaxに漸近する。即ち、操舵速度が増大するほど付加減速度は増大し、且つ、その増大量の増加割合は小さくなる。この上限値Dmaxは、ステアリング操作に応じて車両1に減速度を付加しても、制御介入があったとドライバが感じない程度の減速度に設定される(例えば0.5m/s2≒0.05G)。
さらに、操舵速度が閾値S1よりも大きい閾値S2以上の場合には、付加減速度は上限値Dmaxに維持される。
ステップS13の後、PCM14は付加減速度設定処理を終了し、メインルーチンに戻る。
また、ステップS12においてステアリングホイール6の切り込み操作中ではない(即ち操舵角が一定又は減少中)か、操舵速度が閾値S1未満である場合、PCM14は付加減速度設定処理を終了し、メインルーチンに戻る。
PCM14は、上述した付加減速度設定処理において操舵角の増大速度に基づき設定した付加減速度を実現するように、図3の姿勢制御処理のステップS4においてエンジン4の出力トルクを減少させる。このように、ステアリングホイール6の切り込み操作が行われた場合に、その操舵速度に基づきエンジン4の出力トルクを減少させることにより前輪2の垂直荷重を増大させ、ドライバによる切り込み操作に対して良好な応答性で車両1の挙動を制御することができる。
次に、図6乃至図8により、本発明の実施形態における目標ヨーモーメント設定処理について説明する。
図6は、本発明の実施形態による目標ヨーモーメント設定処理のフローチャートであり、図7は、本発明の実施形態による目標ヨーモーメント設定処理において用いる閾値を示したマップであり、図8は、本発明の実施形態による目標ヨーモーメント設定処理において用いるゲインを示したマップである。
図6に示すように、目標ヨーモーメント設定処理が開始されると、ステップS31において、PCM14は、図3の姿勢制御処理のステップS1において取得した操舵角及び車速に基づき目標ヨーレート及び目標横ジャークを算出する。具体的には、PCM14は、車速に応じた係数を操舵角に乗ずることにより目標ヨーレートを算出する。また、PCM14は、操舵速度及び車速に基づき目標横ジャークを算出する。
次に、ステップS32において、PCM14は、図3の姿勢制御処理のステップS1において取得したヨーレートセンサ12が検出したヨーレート(実ヨーレート)とステップS31で算出した目標ヨーレートとの差(ヨーレート差)Δγを算出する。
次に、ステップS33において、PCM14は、ステップS1において取得した路面勾配に応じて、以下の処理での判定において用いる閾値Y1及びS3を設定すると共に、以下の処理で目標ヨーモーメントを設定するために用いるゲインを設定する。
まず、図7を参照して、閾値Y1及びS3の設定について具体的に説明する。これらの閾値Y1及びS3は、後述するステップS34(S36も含む)とステップS37の異なる判定で用いられるものであるが、基本的には、ステアリングホイール6の切り戻し操作に応じた所定のパラメータが当該閾値Y1及びS3以上である場合に、車両に付与すべき目標ヨーモーメントを設定するように用いられる(つまり所定のパラメータが閾値Y1及びS3未満である場合には目標ヨーモーメントは設定されない)。なお、図7の説明においては、「閾値Y1」及び「閾値S3」のことを単に「閾値」と表記することがある。
図7は、本発明の実施形態において目標ヨーモーメントを設定するために用いられる閾値を規定したマップである。このマップは予め作成されメモリ等に記憶されている。図7は、横軸に路面勾配を示しており、縦軸に閾値を示している。図7の横軸に示す路面勾配では、「0」は平坦路を示しており、「0」よりも右側は登坂路(上り坂)における路面勾配(上り勾配)を示しており、「0」よりも左側は降坂路(下り坂)における路面勾配(下り勾配)を示している。詳しくは、登坂路においては、図の右側に進むほど路面勾配が大きくなる、つまり上り勾配の度合いが大きくなる。他方で、降坂路においては、図の左側に進むほど路面勾配(絶対値)が大きくなる、つまり下り勾配の度合いが大きくなる。なお、路面勾配は、原則的には、水平面に対する路面の角度(°)で表されるか、又は、所定の水平距離に対する垂直距離の割合(%)で表される。
図7に示すように、基本的には、降坂路では平坦路及び登坂路よりも閾値が大きくなるように、マップが規定されている。このような閾値を適用することで、降坂路走行時には、平坦路走行時や登坂路走行時よりも、ステアリングホイール6の切り戻し操作に応じた所定のパラメータ(換言すると車両1の旋回状態に応じた所定のパラメータ)が閾値以上であるという条件が成立しにくくなる。その結果、以下の処理において目標ヨーモーメントが設定される可能性が低くなる。すなわち、降坂路走行時には、実ヨーレートとは逆回りのヨーモーメントをブレーキ装置16により車両1に付与する制御(車両ヨー制御)が抑制されることとなる、換言すると車両ヨー制御が実行されにくくなる。これにより、降坂路走行時に車両ヨー制御を実行することにより制御介入が過剰な状態になることを適切に抑制できるようになる。
特に、降坂路では、全体的な傾向として、路面勾配(絶対値)が大きくなるにつれて閾値が大きくなるように、マップが規定されている。より詳しくは、降坂路においては、路面勾配(絶対値)が第1所定値(0.5〜2%程度)未満では平坦路と同一の閾値が適用され、路面勾配(絶対値)が第1所定値以上で第2所定値(5〜10%程度)未満では路面勾配(絶対値)が大きくなるにつれて閾値が大きくなり、路面勾配(絶対値)が第2所定値以上では比較的大きな閾値が一律で適用されるようになっている。これにより、降坂路走行時には、路面勾配(絶対値)が小さいときの車両ヨー制御の実行を確保しつつ、路面勾配(絶対値)が大きくなるにつれて車両ヨー制御を抑制する度合いを上げていくことができる。
他方で、図7に示すマップは、登坂路では平坦路及び降坂路よりも閾値が小さくなるように規定されている。このような閾値を適用することで、登坂路走行時には、平坦路走行時や降坂路走行時よりも、ステアリングホイール6の切り戻し操作に応じた所定のパラメータが閾値以上であるという条件が成立し易くなる。その結果、以下の処理において目標ヨーモーメントが設定される可能性が高くなる。すなわち、登坂路走行時には、車両ヨー制御が促進されることとなる、換言すると車両ヨー制御が実行され易くなる。これにより、登坂路走行時において、車両ヨー制御による車両1の応答性改善機能、つまりステアリング操作に応じた迅速な車両挙動の安定化機能を適切に確保できるようになる。
特に、登坂路では、全体的な傾向として、路面勾配が大きくなるにつれて閾値が小さくなるように、マップが規定されている。より詳しくは、登坂路においては、路面勾配が第3所定値(0.5〜2%程度)未満では平坦路と同一の閾値が適用され、路面勾配が第3所定値以上で第4所定値(5〜10%程度)未満では路面勾配が大きくなるにつれて閾値が小さくなり、路面勾配が第4所定値以上では比較的小さな閾値が一律で適用されるようになっている。これにより、登坂路走行時には、路面勾配が大きくなるにつれて車両ヨー制御を促進する度合いを上げていくことができる。
なお、図7は、路面勾配に応じた閾値Y1及びS3の両方の傾向を概略的に示したものであり、実際には、このような傾向に従って、路面勾配に応じて閾値Y1及びS3のそれぞれが別々に設定される。つまり、ステップS34(S36も含む)とステップS37の異なる判定で用いられる閾値Y1と閾値S3のそれぞれについて、路面勾配に応じたマップが規定されており、原則、閾値Y1と閾値S3とは異なる値に設定される。また、これら閾値Y1及びS3は、事前にシミュレーションや実験などを行うことで、車両ヨー制御を適用する車両1の特性などに応じた値が適合により設定される(後述するゲインも同様である)。
次に、図8を参照して、本発明の実施形態において目標ヨーモーメントを設定するために用いられるゲインについて具体的に説明する。図8は、本発明の実施形態によるゲインを規定したマップである。このマップは予め作成されメモリ等に記憶されている。図8は、横軸に路面勾配を示しており、縦軸にゲインを示している。このゲインは、路面勾配に応じた値に設定されており、後述する手法により算出された目標ヨーモーメントに対して乗算するよう用いられる。すなわち、ゲインを乗算して得られた値が、最終的に適用すべき目標ヨーモーメントとして用いられる。
図8に示すように、基本的には、降坂路では平坦路及び登坂路よりもゲインが小さくなるように(特にゲインが1以下になるように)、マップが規定されている。このようなゲインを適用することで、降坂路走行時には、平坦路走行時や登坂路走行時よりも、目標ヨーモーメントが小さくなる。その結果、降坂路走行時には車両ヨー制御が実質的に抑制されることとなる。これによっても、降坂路走行時に車両ヨー制御を実行することにより制御介入が過剰な状態になることを適切に抑制できるようになる。
特に、降坂路では、全体的な傾向として、路面勾配(絶対値)が大きくなるにつれてゲインが1から小さくなるように、マップが規定されている。より詳しくは、降坂路においては、路面勾配(絶対値)が第1所定値未満では平坦路と同一のゲインが適用され、路面勾配(絶対値)が第1所定値以上で第2所定値未満では路面勾配(絶対値)が大きくなるにつれてゲインが小さくなり、路面勾配(絶対値)が第2所定値以上では比較的小さなゲインが一律で適用されるようになっている。これにより、降坂路走行時には、路面勾配(絶対値)が小さいときの車両ヨー制御を確保しつつ、路面勾配(絶対値)が大きくなるにつれて車両ヨー制御を抑制する度合いを上げていくことができる。
他方で、図8に示すマップは、登坂路では平坦路及び降坂路よりもゲインが大きくなるように(特にゲインが1以上になるように)規定されている。このようなゲインを適用することで、登坂路走行時には、平坦路走行時や降坂路走行時よりも、目標ヨーモーメントが大きくなる。その結果、登坂路走行時には車両ヨー制御が実質的に促進されることとなる。これによっても、登坂路走行時に車両ヨー制御によるステアリング操作に応じた迅速な車両挙動の安定化機能を適切に確保できるようになる。
特に、登坂路では、全体的な傾向として、路面勾配が大きくなるにつれてゲインが1から大きくなるように、マップが規定されている。より詳しくは、登坂路においては、路面勾配が第3所定値未満では平坦路と同一のゲインが適用され、路面勾配が第3所定値以上で第4所定値未満では路面勾配が大きくなるにつれてゲインが大きくなり、路面勾配が第4所定値以上では比較的大きなゲインが一律で適用されるようになっている。これにより、登坂路走行時には、路面勾配が大きくなるにつれて車両ヨー制御を促進する度合いを上げていくことができる。
なお、後述する処理においては、異なるステップS35とステップS38において目標ヨーモーメントが別々に設定されるが、これら異なるステップS35、S38での目標ヨーモーメントの設定において異なる値のゲインが用いられるようにしてもよい。
また、ステアリングホイール6の切り戻し操作中に路面勾配の大きさが変化する可能性があるが、好適には、そのように変化する路面勾配に応じて適用する閾値及びゲインを変化させないようにするのがよい。すなわち、ステアリングホイール6の切り戻し操作に応じた所定のパラメータが閾値以上となって車両ヨー制御が開始された後は、路面勾配の変化に応じて閾値及びゲインを変更せずに、閾値及びゲインとして固定の値を適用するのがよい。特に、ステアリングホイール6の切り戻し操作が開始されたときの路面勾配に基づき閾値及びゲインを設定するようにし、車両ヨー制御の実行中には、路面勾配の変化に応じて閾値及びゲインを変更せずに、こうして設定された閾値及びゲインを一貫して適用するのがよい。
図6に戻って、ステップS34以降の処理について説明を再開する。ステップS34において、PCM14は、ステアリングホイール6の切り戻し操作中(即ち操舵角が減少中)であり、且つ、ヨーレート差Δγを時間微分することで得られるヨーレート差の変化速度Δγ′が閾値Y1以上であるか否かを判定する。PCM14は、この閾値Y1として、ステップS33で設定された値を用いる。
その結果、切り戻し操作中且つヨーレート差の変化速度Δγ′が閾値Y1以上である場合、ステップS35に進み、PCM14は、ヨーレート差の変化速度Δγ′と、ステップS33で設定されたゲインとに基づき、車両1の実ヨーレートとは逆回りのヨーモーメントを目標ヨーモーメントとして設定する。具体的には、PCM14は、所定の係数をヨーレート差の変化速度Δγ′に乗ずることにより、基準となる目標ヨーモーメントの大きさを算出し、この基準となる目標ヨーモーメントに対してゲインを更に乗ずることにより、車両1に適用すべき目標ヨーモーメントの大きさを算出する。
一方、ステップS34において、ステアリングホイール6の切り戻し操作中ではない(即ち操舵角が一定又は増大中である)場合、ステップS36に進み、PCM14は、ヨーレート差の変化速度Δγ′が実ヨーレートが目標ヨーレートより大きくなる方向(即ち車両1の挙動がオーバーステアとなる方向)であり且つヨーレート差の変化速度Δγ′が閾値Y1以上であるか否かを判定する。具体的には、PCM14は、目標ヨーレートが実ヨーレート以上の状況の下でヨーレート差が減少している場合や、目標ヨーレートが実ヨーレート未満の状況の下でヨーレート差が増大している場合に、ヨーレート差の変化速度Δγ′は実ヨーレートが目標ヨーレートより大きくなる方向であると判定する。
その結果、ヨーレート差の変化速度Δγ′が実ヨーレートが目標ヨーレートより大きくなる方向であり且つヨーレート差の変化速度Δγ′が閾値Y1以上である場合、ステップS35に進み、PCM14は、上記と同様にして、ヨーレート差の変化速度Δγ′とステップS33で設定されたゲインとに基づき、車両1の実ヨーレートとは逆回りのヨーモーメントを目標ヨーモーメントとして設定する。
ステップS35の後、又は、ステップS36においてヨーレート差の変化速度Δγ′が実ヨーレートが目標ヨーレートより大きくなる方向ではないかヨーレート差の変化速度Δγ′が閾値Y1未満である場合、ステップS37に進み、PCM14は、ステアリングホイール6の切り戻し操作中(即ち操舵角が減少中)であり、且つ、操舵速度が所定の閾値S3以上であるか否かを判定する。PCM14は、この閾値S3として、ステップS33で設定された値を用いる。
その結果、切り戻し中且つ操舵速度が閾値S3以上である場合、ステップS38に進み、PCM14は、ステップS31で算出した目標横ジャークと、ステップS33で設定されたゲインとに基づき、車両1の実ヨーレートとは逆回りのヨーモーメントを第2の目標ヨーモーメントとして設定する。具体的には、PCM14は、所定の係数を目標横ジャークに乗ずることにより、基準となる第2の目標ヨーモーメントの大きさを算出し、この基準となる第2の目標ヨーモーメントに対してゲインを更に乗ずることにより、車両1に適用すべき第2の目標ヨーモーメントの大きさを算出する。
ステップS38の後、又は、ステップS37においてステアリングホイール6の切り戻し操作中ではない(即ち操舵角が一定又は増大中である)か操舵速度が閾値S3未満である場合、ステップS39に進み、PCM14は、ステップS35で設定した目標ヨーモーメントとステップS38で設定した第2の目標ヨーモーメントとの内、大きい方をヨーモーメント指令値に設定する。なお、ステップS35及びステップS38の両方において目標ヨーモーメントが設定されなかった場合(つまりステップS35、S38の処理が両方とも実行されなかった場合)、PCM14は、ステップS39においてヨーモーメント指令値を設定しない。ステップS39の後、PCM14は目標ヨーモーメント設定処理を終了し、メインルーチンに戻る。
<作用効果>
次に、本発明の実施形態による車両の制御装置の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、PCM14は、ステアリングホイール6の切り戻し操作時に車両1が降坂路を走行しているときには、そうでないときよりも車両ヨー制御を抑制する。これにより、降坂路走行時に車両ヨー制御を実行することにより制御介入が過剰な状態になることを適切に抑制できる。すなわち、降坂路走行時には、前輪2(旋回輪)に付与される荷重が比較的大きく当該前輪2の復元モーメントが大きいため、旋回状態にある車両の直進方向への復帰が促進される傾向にあるので、本実施形態では、降坂路走行時に車両ヨー制御を抑制することで、当該制御によるヨーモーメントの付加によって車両1の直進方向への復帰が過剰なものとなることを適切に抑制できる。
また、本実施形態によれば、PCM14は、ステアリングホイール6の切り戻し操作に応じた値(ヨーレート差の変化速度Δγ′又は操舵速度)が所定の閾値(閾値Y1又はS3)以上となったときに車両ヨー制御を実行し、降坂路の路面勾配(下り勾配)が大きいときに当該閾値を大きくするので、降坂路の路面勾配が比較的大きいときに車両ヨー制御を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態によれば、PCM14は、降坂路の路面勾配(下り勾配)が大きいときに、車両ヨー制御により付加するヨーモーメントをゲインによって小さくするので、降坂路の路面勾配が比較的大きいときに車両ヨー制御を効果的に抑制することができる。
他方で、本実施形態によれば、PCM14は、ステアリングホイール6の切り戻し操作時に車両1が登坂路を走行しているときには、そうでないときよりも車両ヨー制御を促進する。これにより、登坂路走行時において、車両ヨー制御による車両1の応答性改善機能、つまりステアリング操作に応じた迅速な車両挙動の安定化機能を適切に確保できる。すなわち、登坂路走行時には、前輪2(旋回輪)に付与される荷重が比較的小さく当該前輪2の復元モーメントが小さいため、平坦路走行時などと同様のヨーモーメントを車両ヨー制御により付与しても当該制御による作用効果を十分に得られない傾向にあるので、本実施形態では、登坂路走行時に車両ヨー制御を促進するようにすることで、車両ヨー制御による車両1の応答性改善機能を適切に確保できる。
また、本実施形態によれば、PCM14は、ステアリングホイール6の切り戻し操作に応じた値(ヨーレート差の変化速度Δγ′又は操舵速度)が所定の閾値(閾値Y1又はS3)以上となったときに車両ヨー制御を実行し、登坂路の路面勾配(上り勾配)が大きいときに当該閾値を小さくするので、登坂路の路面勾配が比較的大きいときに車両ヨー制御を効果的に促進することができる。
また、本実施形態によれば、PCM14は、登坂路の路面勾配(上り勾配)が大きいときに、車両ヨー制御により付加するヨーモーメントをゲインによって大きくするので、登坂路の路面勾配が比較的大きいときに車両ヨー制御を効果的に促進することができる。
一方で、本実施形態によれば、PCM14は、操舵角センサ8の検出値に基づき取得した操舵速度が閾値S3以上となったときに、操舵速度及び車速に基づき目標横ジャークを設定し、当該目標横ジャークに基づき車両ヨー制御において適用するヨーモーメントを設定する。これにより、ドライバのステアリング操作の速さに応じた大きさのヨーモーメントを車両1の旋回を抑える方向に付与することができ、ドライバのステアリング操作に応じて素早く車両挙動を安定化させることができる。
加えて、本実施形態によれば、PCM14は、車両1に実際に生じている実ヨーレートと操舵角センサ8の検出値に基づき設定された目標ヨーレートとの差の変化速度が閾値Y1以上となったときに、当該変化速度に基づき車両ヨー制御において適用するヨーモーメントを設定する。これにより、例えば圧雪路のような低μ路でステアリングホイールの操作を行った場合に、実ヨーレートの応答遅れに起因するヨーレート差の急激な変化に応じて直ちに旋回を抑える方向のヨーモーメントを車両1に付与することができ、車両1の挙動が不安定になる前の状況において、ドライバのステアリング操作に応じて素早く車両挙動を安定化させることができる。
<変形例>
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下では示す複数の変形例は、互いに適宜組み合わせて実施可能である。
(変形例1)
上記した実施形態では、路面勾配の大きさに応じて閾値及びゲインを段階的に変化させていたが(図7及び図8参照)、変形例では、路面勾配の全域において、閾値及びゲインを連続的に変化させてもよい。この変形例においては、降坂路では、路面勾配の全域に渡って、路面勾配(絶対値)が大きくなるにつれて閾値を大きくすると共にゲインを小さくし、また、登坂路では、路面勾配の全域に渡って、路面勾配が大きくなるにつれて閾値を小さくすると共にゲインを大きくすればよい。
(変形例2)
上記した実施形態では、車両ヨー制御を実行するか否かを判定するための閾値と、車両ヨー制御により付加するヨーモーメントの両方を変更することで(ゲインにより変更)、車両ヨー制御を抑制するようにしていたが、変形例では、これら閾値及びヨーモーメントの一方のみを変更することで、車両ヨー制御を抑制又は促進してもよい。
(変形例3)
上記した実施形態では、勾配センサ11を用いて路面勾配を直接取得していたが、変形例では、勾配センサ11の代わりに車両前後加速度センサ13を用いて路面勾配を求めてもよい。この場合、アクセル開度(アクセルペダル踏込量)や車速などから求まる目標加速度と、車両前後加速度センサ13により検出された前後加速度(実加速度)との差に基づいて、路面勾配を求めることができる。具体的には、実加速度が目標加速度よりも小さい場合には登坂路であると判断でき、また、実加速度が目標加速度よりも大きい場合には降坂路であると判断でき、そして、実加速度と目標加速度との差に基づき登坂路又は降坂路の路面勾配(上り降坂又は下り勾配)の値を求めることができる。
(変形例4)
上記した実施形態では、ヨーレート差の変化速度Δγ′に基づく目標ヨーモーメントの設定と(図6のステップS35)、目標横ジャークに基づく目標ヨーモーメントの設定(図6のステップS38)の両方を実行していたが、変形例では、これら2つの目標ヨーモーメントの設定のうちのいずれか一方のみを実行してもよい。
(変形例5)
上記した実施形態では、ステアリングホイール6に連結されたステアリングコラムの回転角度(操舵角センサ8により検出される角度)を車両1の操舵角として用いる例を示したが、変形例では、ステアリングコラムの回転角度の代わりに又はステアリングコラムの回転角度と共に、操舵系における各種状態量(アシストトルクを付与するモータの回転角や、ラックアンドピニオンにおけるラックの変位等)を車両1の操舵角として用いてもよい。
1 車両
2 前輪
4 エンジン
6 ステアリングホイール
8 操舵角センサ
10 車速センサ
11 勾配センサ
12 ヨーレートセンサ
13 車両前後加速度センサ
14 PCM
16 ブレーキ装置
18 ブレーキ制御システム

Claims (8)

  1. 操舵装置と、左右の車輪に異なる制動力を付与可能なブレーキ装置と、制御器と、を有する車両の制御装置であって、
    前記制御器は、
    前記操舵装置の戻し操作に基づき、前記車両に発生しているヨーレートとは逆回りのヨーモーメントを前記車両に付加するように前記ブレーキ装置を制御する車両ヨー制御を実行し、
    前記操舵装置の戻し操作時に前記車両が降坂路を走行しているときには、そうでないときよりも前記車両ヨー制御を抑制するよう構成されている、ことを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記制御器は、前記操舵装置の戻し操作に応じた値が所定の閾値以上となったときに前記車両ヨー制御を実行し、前記降坂路の路面勾配が大きいときには、そうでないときよりも前記閾値を大きくするよう構成されている、請求項1に記載の車両の制御装置。
  3. 前記制御器は、前記降坂路の路面勾配が大きいときには、そうでないときよりも前記車両ヨー制御により付加するヨーモーメントを小さくするよう構成されている、請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
  4. 操舵装置と、左右の車輪に異なる制動力を付与可能なブレーキ装置と、制御器と、を有する車両の制御装置であって、
    前記制御器は、
    前記操舵装置の戻し操作に基づき、前記車両に発生しているヨーレートとは逆回りのヨーモーメントを前記車両に付加するように前記ブレーキ装置を制御する車両ヨー制御を実行し、
    前記操舵装置の戻し操作時に前記車両が登坂路を走行しているときには、そうでないときよりも前記車両ヨー制御を促進するよう構成されている、ことを特徴とする車両の制御装置。
  5. 前記制御器は、前記操舵装置の戻し操作に応じた値が所定の閾値以上となったときに前記車両ヨー制御を実行し、前記登坂路の路面勾配が大きいときには、そうでないときよりも前記閾値を小さくするよう構成されている、請求項4に記載の車両の制御装置。
  6. 前記制御器は、前記登坂路の路面勾配が大きいときには、そうでないときよりも前記車両ヨー制御により付加するヨーモーメントを大きくするよう構成されている、請求項4又は5に記載の車両の制御装置。
  7. 前記制御器は、前記操舵装置の操舵速度が所定の閾値以上となったときに、前記操舵速度及び車速に応じた目標横ジャークに基づき前記ヨーモーメントを設定して、このヨーモーメントを前記車両に付加するように前記車両ヨー制御を実行するよう構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
  8. 前記制御器は、前記操舵装置の操舵角及び車速に応じた目標ヨーレートと前記車両に実際に生じている実ヨーレートとの差の変化速度が所定の閾値以上となったときに、この変化速度に基づき前記ヨーモーメントを設定して、このヨーモーメントを前記車両に付加するように前記車両ヨー制御を実行するよう構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
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