以下、本発明の一実施形態を図1〜図18に基づいて説明する。
本発明の複合熱源型のヒートポンプ装置を適用した、本実施形態のヒートポンプ装置1の主要なユニットの外観構成を図1に示す。図1において、本実施形態のヒートポンプ装置1は、地中熱ヒートポンプユニット4と、空気熱ヒートポンプユニット5と、熱交換端末36に循環液L(例えば、水や不凍液)を循環させる、負荷側回路としての端末循環回路30と、地中熱循環回路20とを有している。
本実施形態のヒートポンプ装置1全体の回路構成を図2に示す。図2に示すように、前記ヒートポンプ装置1は、前記地中熱ヒートポンプユニット4に備えられ、地中熱源を利用して前記熱交換端末36側の循環液Lを加熱または冷却可能な第1ヒートポンプ回路としての地中熱ヒートポンプ回路40と、前記空気熱ヒートポンプユニット5に備えられ、空気熱源を利用して前記熱交換端末36側の循環液Lを加熱または冷却可能な第2ヒートポンプ回路としての空気熱ヒートポンプ回路50と、前記端末循環回路30と、前記地中熱循環回路20とを有している。
図2において、地中熱ヒートポンプ回路40は、能力可変の第1圧縮機43と、第1負荷側熱交換器としての第1熱交換器41と、第1膨張弁44と、第1熱源側熱交換器としての地中熱源熱交換器45とが、第1冷媒配管42によって環状に接続されている。この第1冷媒配管42には、前記地中熱ヒートポンプ回路40における第1冷媒C1(後述の図3及び図4参照)の流れ方向を切り換える四方弁46が設けられている。
前記第1熱交換器41及び前記地中熱源熱交換器45は、例えばプレート式熱交換器で構成されている。このプレート式熱交換器は、複数の伝熱プレートが積層され、第1冷媒C1を流通させる冷媒流路と熱媒である前記循環液L(または熱媒H1。後述の図3等参照)を流通させる流体流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されているものである。
また、第1圧縮機43から吐出された第1冷媒C1の温度は、第1冷媒吐出温度センサ42aによって検出される。同様に、第1熱交換器41から第1膨張弁44を介して地中熱源熱交換器45に至るまでの第1冷媒配管42に設けられた冷媒温度センサ42c,42bのうち、第1膨張弁44から地中熱源熱交換器45までの第1冷媒配管42に設けられた冷媒温度検出手段としての第1冷媒温度センサ42bによって、低圧側(暖房運転時)または高圧側(冷房運転時)の第1冷媒C1の温度が検出される。前記第1冷媒吐出温度センサ42a及び前記第1冷媒温度センサ42bの検出結果は、地中熱制御装置61へ入力される。
空気熱ヒートポンプ回路50は、能力可変の第2圧縮機53と、第2負荷側熱交換器としての第2熱交換器51と、第2膨張弁54と、第2熱源側熱交換器としての空気熱源熱交換器55とが、第2冷媒配管52によって環状に接続されている。この第2冷媒配管52には、前記空気熱ヒートポンプ回路50における第2冷媒C2(後述の図3及び図4参照)の流れ方向を切り換える四方弁58が設けられている。
前記第2熱交換器51は、前述と同様、例えばプレート式熱交換器で構成されており、前記第2冷媒C2を流通させる冷媒流路と前記循環液Lを流通させる流体流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されているものである。
また、第2圧縮機53から吐出された第2冷媒C2の温度は、第2冷媒吐出温度センサ52aによって検出される。また、外気の温度が、外気温度センサ57によって検出される。前記第2冷媒吐出温度センサ52a及び前記外気温度センサ57の検出結果は、空気熱制御装置62へ入力される。また、前記外気温度センサ57の検出結果は、前記地中熱制御装置61にも入力される。なお、地中熱制御装置61は、前記外気温度センサ57に直接接続されず、前記空気熱制御装置62を介して前記外気温度センサ57の検出結果を取得する構成でもよい。
なお、前記地中熱ヒートポンプ回路40の前記第1冷媒C1、および、前記空気熱ヒートポンプ回路50の前記第2冷媒C2としては、例えばR410AやR32等のHFC冷媒や二酸化炭素冷媒等の任意の冷媒を用いることができる。
地中熱循環回路20は、回転速度(単位時間当たりの回転数)可変の地中熱循環ポンプ22と、地中熱源熱交換器45と、前記地中熱源熱交換器45を流通する前記第1冷媒C1と熱交換する熱源として(この例では地中に)設置された地中熱交換器23とが、熱媒配管としての地中熱配管21によって環状に接続されている。この地中熱配管21には、前記地中熱循環ポンプ22によって、エチレングリコールやプロピレングリコール等を添加した不凍液が熱媒H1(後述の図3及び図4参照)として循環されるとともに、前記熱媒H1を貯留し地中熱循環回路20の圧力を調整する地中用シスターン24が設けられている。なお、地中熱交換器23は、地中に設けられるのには限られず、例えば湖沼、貯水池、井戸等の、比較的大容量で熱移動の少ない水源中に設けられ、それらから採放熱するようにしてもよい。
端末循環回路30は、前記第1熱交換器41と、前記第2熱交換器51と、ファンコイルや床暖房パネルやパネルコンベクタ等の負荷端末としての熱交換端末36とが、循環液配管としての負荷配管31によって上流側から順に環状に接続されている。前記負荷配管31には、端末循環回路30に前記循環液Lを循環させる循環液循環ポンプ32と、循環液Lを貯留し端末循環回路30の圧力を調整する冷暖房用シスターン35とが設けられている。前記循環液循環ポンプ32は、この例では、定速(一定回転数)にて回転するように構成されている。また、前記熱交換端末36は、特に図示しない端末用リモコンによって運転と停止の切り替え操作が可能であり、運転中には当該熱交換端末36の内部に循環液Lが流通する一方、運転停止中には当該熱交換端末36の内部に循環液Lが流通しない。なお、熱交換端末36は、図2では1台のみ設けられているが、複数設けられてもよく、数量や仕様が特に限定されるものではない。
このとき、端末循環回路30においては、前記第1熱交換器41と前記第2熱交換器51とが直列に接続されており、かつ、前記したように、端末循環回路30を循環する循環液Lの流れに対して、前記第1熱交換器41が前記第2熱交換器51よりも上流側に配設されている。すなわち、前記ヒートポンプ装置1は、地中熱源を利用して熱交換端末36側の循環液Lを加熱または冷却する地中熱ヒートポンプ回路40の第1熱交換器41と、空気熱源を利用して熱交換端末36側の循環液Lを加熱または冷却する空気熱ヒートポンプ回路50の第2熱交換器51とが、端末循環回路30に対して直列に接続された、複合熱源ヒートポンプ装置となっているものである。
なお、負荷配管31には、熱交換端末36から第1熱交換器41に流入する循環液Lの温度を検出する、戻り液温度センサ34が設けられており、その検出結果は、前記地中熱制御装置61及び前記空気熱制御装置62へ入力される。なお、空気熱制御装置62は、戻り液温度センサ34に直接接続されず、前記地中熱制御装置61を介して戻り液温度センサ34の検出結果を取得する構成でもよい。
ここで、前記ヒートポンプ装置1は、前記の四方弁46,58の切替によって暖房運転を行う暖房装置、若しくは、冷房運転を行う冷房装置、として選択的に機能させることができる。次に、図3及び図4を用いてこの暖房運転及び冷房運転について説明する。
図3に、暖房運転時の状態を示す。なお、図示の煩雑を防止するために、図2に示していた各種の信号線は省略している。この図3に示す暖房運転時においては、前記地中熱ヒートポンプ回路40では、図示のように前記四方弁46が切り替えられることで、第1圧縮機43から吐出された第1冷媒C1を、第1熱交換器41、第1膨張弁44、地中熱源熱交換器45の順に流通させた後、第1圧縮機43に戻す流路を形成する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の第1冷媒C1が前記第1圧縮機43で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する前記第1熱交換器41において、前記端末循環回路30を流れる循環液Lと熱交換を行って前記循環液Lに熱を放出し加熱しながら高圧の液体に変化する。こうして液体となった第1冷媒C1は前記第1膨張弁44において減圧されて低圧の液体となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する前記地中熱源熱交換器45において、前記地中熱循環回路20を流れる熱媒H1と熱交換を行って蒸発してガスに変化することで吸熱し、低温・低圧のガスとして再び前記第1圧縮機43へと戻る。
一方、前記空気熱ヒートポンプ回路50では、図示のように前記四方弁58が切り替えられることで、第2圧縮機53から吐出された第2冷媒C2を、第2熱交換器51、第2膨張弁54、空気熱源熱交換器55の順に流通させた後、第2圧縮機53に戻す流路を形成する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の第2冷媒C2が前記第2圧縮機53で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する前記第2熱交換器51において、前記端末循環回路30を流れる循環液Lとの熱交換を行って前記循環液Lに熱を放出し加熱しながら高圧の液体に変化する。こうして液体となった第2冷媒C2は第2膨張弁54において減圧されて低圧の液体となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する前記空気熱源熱交換器55において、送風ファン56の作動により送られる空気と熱交換を行って蒸発してガスに変化することで吸熱し、低温・低圧のガスとして再び前記第2圧縮機53へと戻る。
また、地中熱循環回路20では、地中熱交換器23によって地中から地中熱が採熱され、その熱を帯びた前記熱媒H1が地中熱循環ポンプ22により地中熱源熱交換器45に供給される。そして、蒸発器として機能する前記地中熱源熱交換器45において、地中熱源熱交換器45の冷媒流路を流通する前記第1冷媒C1と、地中熱源熱交換器45の流体流路を流通する前記熱媒H1とで熱交換が行われ、地中熱交換器23にて採熱された地中熱が第1冷媒C1側に汲み上げられ前記のように第1冷媒C1が加熱される。
また、端末循環回路30では、循環液循環ポンプ32により前記第1熱交換器41に流入した循環液Lは、凝縮器として機能する前記第1熱交換器41において、地中熱循環回路20の熱媒H1と熱交換し前記のように加熱された前記第1冷媒C1との熱交換を行って加熱された後、凝縮器として機能する前記第2熱交換器51において、前記空気熱源熱交換器55で外気と熱交換し前記のように加熱された前記第2冷媒C2との熱交換を行ってさらに加熱される。こうして加熱された前記循環液Lは、その後、前記熱交換端末36に供給されて被空調空間を加熱する。
なお、前記においては、地中熱ヒートポンプユニット4および空気熱ヒートポンプユニット5の両方を動作させた暖房運転時の状態を図3に示して説明したが、これに限られない。すなわち、地中熱ヒートポンプユニット4単体のみを動作させての暖房運転や、空気熱ヒートポンプユニット5単体のみを動作させての暖房運転も可能なものである。
図4に、冷房運転時の状態を示す。なお、図示の煩雑を防止するために、図2に示していた各種の信号線は省略している。この図4に示す冷房運転時においては、前記地中熱ヒートポンプ回路40では、図示のように前記四方弁46が切り替えられることで、第1圧縮機43から吐出された第1冷媒C1を、地中熱源熱交換器45、第1膨張弁44、第1熱交換器41の順に流通させた後、第1圧縮機43に戻す流路を形成する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の第1冷媒C1が前記第1圧縮機43で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する前記地中熱源熱交換器45において、前記地中熱循環回路20を流れる熱媒H1と熱交換を行って前記熱媒H1に熱を放出しながら高圧の液体に変化する。こうして液体となった第1冷媒C1は前記第1膨張弁44において減圧されて低圧の液体となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する前記第1熱交換器41において、前記端末循環回路30を流れる循環液Lと熱交換を行って蒸発してガスに変化することで吸熱し前記循環液Lを冷却した後、低温・低圧のガスとして再び前記第1圧縮機43へと戻る。
一方、前記空気熱ヒートポンプ回路50では、図示のように前記四方弁58が切り替えられることで、第2圧縮機53から吐出された第2冷媒C2を、空気熱源熱交換器55、第2膨張弁54、第2熱交換器51の順に流通させた後、第2圧縮機53に戻す流路を形成する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の第2冷媒C2が前記第2圧縮機53で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する前記空気熱源熱交換器55において、送風ファン56の作動により送られる空気との熱交換を行って外気へ熱を放出しながら高圧の液体に変化する。こうして液体となった第2冷媒C2は前記第2膨張弁54において減圧されて低圧の液体となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する前記第2熱交換器51において、前記端末循環回路30を流れる循環液Lと熱交換を行って蒸発してガスに変化することで吸熱し前記循環液Lを冷却した後、低温・低圧のガスとして再び前記第2圧縮機53へと戻る。
また、地中熱循環回路20では、前記熱媒H1が地中熱循環ポンプ22により地中熱源熱交換器45に供給される。そして、凝縮器として機能する前記地中熱源熱交換器45において、地中熱源熱交換器45の冷媒流路を流通する前記第1冷媒C1と、地中熱源熱交換器45の流体流路を流通する前記熱媒H1とが対向して流れて熱交換が行われ、高温となっている第1冷媒C1の熱が熱媒H1側に放熱されて第1冷媒C1が冷却された後、熱媒H1の熱は地中熱交換器23によって地中へと放熱される。
また、端末循環回路30では、循環液循環ポンプ32により第1熱交換器41に流入した循環液Lは、蒸発器として機能する前記第1熱交換器41において、地中熱循環回路20の熱媒H1と熱交換し前記のように冷却された前記第1冷媒C1との熱交換を行って冷却された後、蒸発器として機能する前記第2熱交換器51において、前記空気熱源熱交換器55で外気と熱交換し前記のように冷却された前記第2冷媒C2との熱交換を行ってさらに冷却される。こうして冷却された循環液Lは、その後、前記熱交換端末36に供給されて被空調空間を冷却する。
なお、前記においては、地中熱ヒートポンプユニット4および空気熱ヒートポンプユニット5の両方を動作させた冷房運転時の状態を図4に示して説明したが、これに限られない。すなわち、地中熱ヒートポンプユニット4単体のみを動作させての冷房運転や、空気熱ヒートポンプユニット5単体のみを動作させての冷房運転も可能なものである。
次に、地中熱制御装置61及び空気熱制御装置62について説明する。前記地中熱制御装置61及び前記空気熱制御装置62は、詳細な図示を省略するが、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部(図5及び図6では地中熱制御装置61の記憶部61Eのみ図示)と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。まず、暖房運転時における、前記地中熱制御装置61及び前記空気熱制御装置62の機能的構成を図5により説明する。
図5に示すように、前記地中熱制御装置61は、圧縮機制御手段としての圧縮機制御部61Aと、膨張弁制御部61Bと、ポンプ制御部61Cと、制御ゾーン決定手段としての制御ゾーン決定部61Dとを機能的に備えている。また、地中熱制御装置61は、後述するデータテーブルを記憶する第1記憶手段又は第2記憶手段としての前記記憶部61E(例えばメモリやハードディスク等)を備えている。また、地中熱制御装置61は、熱交換端末36に備えられた端末制御装置36a及び熱交換端末36を操作可能なメインリモコン60aに対し、通信可能に接続されている(図2参照)。
圧縮機制御部61Aは、切替制御部61pを備えており、前記戻り液温度センサ34により検出された循環液L(温水)の温度(以下適宜、「戻り温水温度」という。図3参照)に応じて、前記第1圧縮機43の回転数を制御する。特にこの例では、圧縮機制御部61Aは、前記戻り液温度センサ34により検出される循環液Lの前記戻り温水温度が、例えば前記メインリモコン60aの操作に対応した所望の目標戻り温水温度(以下適宜、「目標温度」という)となるように、前記第1圧縮機43の回転数を制御する。
膨張弁制御部61Bは、第1冷媒吐出温度センサ42aにより検出される第1冷媒C1の冷媒吐出温度に応じて、前記第1膨張弁44の弁開度を制御する。特にこの例では、膨張弁制御部61Bは、第1冷媒吐出温度センサ42aにより検出される第1冷媒C1の冷媒吐出温度が、例えば前記メインリモコン60aの操作に対応した制御上の目標温度となるように、前記第1膨張弁44の弁開度を制御する。
ポンプ制御部61Cは、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出された第1冷媒C1の温度(このとき地中熱源熱交換器45は蒸発器として機能することから、以下適宜、「蒸発器入口冷媒温度」という)に応じて、前記地中熱循環ポンプ22の前記回転数を制御する(図2も参照)。特にこの例では、前記ポンプ制御部61Cは、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出される前記第1冷媒C1の蒸発器入口冷媒温度が略一定値となるように、前記地中熱循環ポンプ22の前記回転数を制御する。
制御ゾーン決定部61Dは、前記地中熱交換器23における吸熱能力を表す吸熱能力情報を取得し、当該取得した吸熱能力情報に応じて、前記第1冷媒温度センサ42bが検出した前記第1冷媒C1の蒸発器入口冷媒温度と、前記第1圧縮機43の複数の制御ゾーンのうちいずれか1つとを、可変に対応づける(詳細は後述)。前記圧縮機制御部61Aは、前記蒸発器入口冷媒温度に対して前記制御ゾーン決定部61Dが対応づけた1つの前記制御ゾーンに基づき、前記第1圧縮機43の回転数を制御する(詳細は後述)。
前記吸熱能力情報は、前記地中熱交換器23の管路長情報(管路長の大小。あるいは具体的な長さ寸法でもよい)や、前記熱交換端末36において暖房運転を行うか冷房運転を行うかの運転情報を含む。なお、前記地中熱交換器23の近傍周囲における地中の熱容量や地下水の有無、水温等、前記地中熱交換器23の吸熱能力を表す情報であれば上記以外の情報を含んでもよい。
前記吸熱能力情報は、前記メインリモコン60aや前記端末用リモコン(図示省略)において、例えば「短採熱管モード」あるいは「長採熱管モード」等のモードとして設定入力される。また、例えば「複合熱源ヒートポンプ」(管路長が短い)又は「地中熱専用ヒートポンプ」(管路長が長い)等の機種として設定入力されてもよい。あるいは、上記以外の態様で設定入力されてもよい。なお、前記吸熱能力情報は、前記リモコン以外にも、例えば地中熱制御装置61が備える回路基板上に実装されたディップスイッチ等により設定入力されてもよい。
また、前記空気熱制御装置62は、圧縮機制御部62Aと、膨張弁制御部62Bと、ファン制御部62Cとを機能的に備えている。また空気熱制御装置62は、前記地中熱制御装置61に対し、通信可能に接続されている(図2参照)。
圧縮機制御部62Aは、切替制御部62pを備えており、前記戻り液温度センサ34により検出された前記戻り温水温度(図3参照)に応じて、前記第2圧縮機53の回転数を制御する。特にこの例では、圧縮機制御部62Aは、前記戻り液温度センサ34により検出される戻り温水温度が、例えば前記メインリモコン60aの操作に対応した所望の目標戻り温水温度となるように、前記第2圧縮機53の回転数を制御する。なお、この空気熱制御装置62の圧縮機制御部62Aと前記地中熱制御装置61の前記圧縮機制御部61Aとは、必要に応じて互いに連携しつつ、対象となる第1圧縮機43または第2圧縮機53の制御を行う。
膨張弁制御部62Bは、第2冷媒吐出温度センサ52aにより検出される第2冷媒C2の冷媒吐出温度に応じて、前記第2膨張弁54の弁開度を制御する。特にこの例では、膨張弁制御部62Bは、第2冷媒吐出温度センサ52aにより検出される第2冷媒C2の冷媒吐出温度が、例えば前記メインリモコン60aの操作に対応した制御上の目標温度となるように、前記第2膨張弁54の弁開度を制御する。なお、この空気熱制御装置62の膨張弁制御部62Bと前記地中熱制御装置61の前記膨張弁制御部61Bとは、必要に応じて互いに連携しつつ、対象となる第1膨張弁44または第2膨張弁54の制御を行う。
ファン制御部62Cは、前記外気温度センサ57により検出された外気の温度に応じて、前記送風ファン56の回転数を制御する(図2も参照)。
なお、図5を参照した以上の説明においては、暖房運転時における情報の入出力に基づいて説明したが、冷房運転時には図6に示すように地中熱制御装置61及び空気熱制御装置62の構成はそのままで入出力する情報の内容が異なる。すなわち、戻り液温度センサ34が検出する循環液Lの温度はいわゆる冷水の温度(以下適宜、「戻り冷水温度」という。図4参照)であり、この戻り冷水温度が各圧縮機制御部61A,62Aに入力される。また、圧縮機制御部61A,62Aは、前記戻り液温度センサ34により検出される戻り冷水温度が、例えば前記メインリモコン60aの操作に対応した所望の目標戻り冷水温度となるように、前記第1圧縮機43及び前記第2圧縮機53の回転数を制御する。さらに、第1冷媒温度センサ42bが検出する第1冷媒C1の温度、すなわち凝縮器出口冷媒温度(このとき地中熱源熱交換器45は凝縮器として機能している)が、ポンプ制御部61C及び制御ゾーン決定部61Dに入力される。
冷房運転時には、前記制御ゾーン決定部61Dは、前記地中熱交換器23における放熱能力を表す放熱能力情報を取得し、当該取得した放熱能力情報に応じて、前記第1冷媒温度センサ42bが検出した前記第1冷媒C1の凝縮器出口冷媒温度と、前記第1圧縮機43の複数の制御ゾーンのうちいずれか1つとを、可変に対応づける(詳細は後述)。前記圧縮機制御部61Aは、前記凝縮器出口冷媒温度に対して前記制御ゾーン決定部61Dが対応づけた1つの前記制御ゾーンに基づき、前記第1圧縮機43の回転数を制御する(詳細は後述)。
前記放熱能力情報は、前記吸熱能力情報と同様に、前記地中熱交換器23の管路長情報(管路長の大小。あるいは具体的な長さ寸法でもよい)や、前記熱交換端末36において暖房運転を行うか冷房運転を行うかの運転情報を含む。なお、前記地中熱交換器23の近傍周囲における地中の熱容量や地下水の有無、水温等、前記地中熱交換器23の放熱能力を表す情報であれば上記以外の情報を含んでもよい。
前記放熱能力情報は、前記吸熱能力情報と同様に、前記メインリモコン60aや前記端末用リモコン(図示省略)において、例えば「短放熱管モード」あるいは「長放熱管モード」等のモードとして設定入力される。また、例えば「複合熱源ヒートポンプ」(管路長が短い)又は「地中熱専用ヒートポンプ」(管路長が長い)等の機種として設定入力されてもよい。あるいは、上記以外の態様で設定入力されてもよい。なお、前記放熱能力情報は、前記リモコン以外にも、例えば地中熱制御装置61が備える回路基板上に実装されたディップスイッチ等により設定入力されてもよい。
なお以下では、前記吸熱能力情報と前記放熱能力情報とを特に区別しないときには、適宜「吸放熱能力情報」と記載する。
ここで、本実施形態のヒートポンプ装置1は、上述したように地中熱源と空気熱源の2つの熱源を複合的に利用しているが、これら異なる熱源をいかに効率的に組み合わせて利用するか(言い替えれば、地中熱源と空気熱源との切り替えや組み合わせをどのように決定するか)が重要である。しかし、流体(気相)である室外空気と、固体(固相)である地中の土とでは、それらの間で熱源としての特性や取り扱い方が大きく相違する。例えば、室外空気は夏期と冬期の温度変化が大きい一方、地中では通年を通して温度の変化が小さい。また、いずれの熱源も全体の熱容量は大きいものの、室外空気の場合は熱伝達速度が高くまたファンで送風することにより循環可能である一方、地中の土の場合は熱伝達速度が低くまた固定化されて循環できない。このため、室外空気は外気全体での温度検出が容易であるが、地中の土は局部的に温度分布が偏りやすいため地中全体での温度検出が困難である。
以上のことから、本実施形態では、外気温度を基準として空気熱源と地中熱源の切り替えや組み合わせを決定する。つまり、外気温度センサ57により検出される外気温度に基づき(図5及び図6参照)、各圧縮機制御部61A,62Aがそれぞれ備える切替制御部61p,62pが連携して、第1熱交換器41での熱交換と第2熱交換器51での熱交換との両方が実行可能な端末循環回路30において、いずれの熱交換を主としいずれの熱交換を補助とするかを切り替える。
例えば冷房運転時には、図7(a)に示すように、春期や秋期などで前記外気温度があまり高くない場合(この例では30[℃]以下の場合)には、外気への大きな放熱を期待できることから空気熱源を利用する前記第2圧縮機53が主動力源として優先的に駆動され、地中熱源を利用する前記第1圧縮機43は補助動力源として駆動される。
逆に夏期などで前記外気温度が比較的高い場合(この例では30[℃]より高い場合)には、外気への放熱をあまり期待できないことから地中熱源を利用する前記第1圧縮機43が主動力源として優先的に駆動され、空気熱源を利用する前記第2圧縮機53は補助動力源として駆動される。
すなわち、本実施形態では、冷房運転を開始する際に、まず、外気温度が基準温度としての30[℃]以下であれば、空気熱ヒートポンプ回路50の第2圧縮機53を主動力源とすると共に、地中熱ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43を補助動力源として、冷房運転を開始させる。また、外気温度が基準温度としての30[℃]より高ければ、地中熱ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43を主動力源とすると共に、空気熱ヒートポンプ回路50の第2圧縮機53を補助動力源として、冷房運転を開始させる。
また例えば暖房運転時には、図7(b)に示すように、冬期などで前記外気温度が比較的低い場合(この例では2[℃]未満の場合)には、外気から吸熱することにより空気熱源熱交換器55が着霜する問題があることから前記第1圧縮機43が主動力源として優先的に駆動され、前記第2圧縮機53は補助動力源として駆動される。
逆に秋期や春期などで前記外気温度があまり低くない場合(この例では2[℃]以上の場合)には、外気から吸熱しても空気熱源熱交換器55が着霜しにくいことから前記第2圧縮機53が主動力源として優先的に駆動され、前記第1圧縮機43は補助動力源として駆動される。
すなわち、本実施形態では、暖房運転を開始する際に、まず、外気温度が基準温度としての2[℃]未満であれば、地中熱ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43を主動力源とすると共に、空気熱ヒートポンプ回路50の第2圧縮機53を補助動力源として、暖房運転を開始させる。また、外気温度が基準温度としての2[℃]以上であれば、空気熱ヒートポンプ回路50の第2圧縮機53を主動力源とすると共に、地中熱ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43を補助動力源として、暖房運転を開始させる。
以上の基本構成及び作動であるヒートポンプ装置1において、本実施形態の要部は、地中熱制御装置61に新たに設けた前記制御ゾーン決定部61Dによる制御内容(前記吸放熱能力情報に応じて、前記第1冷媒温度センサ42bが検出する第1冷媒C1の温度と前記第1圧縮機43の複数の制御ゾーンのうちいずれか1つとを可変に対応づける制御)にある。以下、その詳細を順を追って説明する。
一般に、地中からの吸熱による熱交換端末36の暖房運転が行われる際、例えば当初想定したよりも地中熱交換器23の管路長が短い、あるいは、地中の熱容量が小さい等によって地中熱交換器23の吸熱能力が低い場合、これに対応した適切な制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御が行われないと、地中からの吸熱(採熱)過剰となる場合がある。この場合、地中温度が過度に低下し、時間がたっても温度回復できない状態(いわゆる熱枯れ状態)となるおそれがある。逆に例えば当初想定したよりも地中熱交換器23の管路長が長い、あるいは、地中の熱容量が大きい等によって地中熱交換器23の吸熱能力が高い場合、これに対応した適切な制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御が行われないと、地中からの十分な採熱ができず、地中熱の有効活用ができないおそれがある。
同様に、地中への放熱による熱交換端末36の冷房運転が行われる際にも、例えば当初想定したよりも地中熱交換器23の管路長が短い、あるいは、地中の熱容量が小さい等によって地中熱交換器23の放熱能力が低い場合、これに対応した適切な制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御が行われないと、地中への放熱過剰となる場合がある。この場合、地中温度が過度に上昇し、時間がたっても温度回復できない状態(いわゆる熱飽和状態)となるおそれがある。逆に例えば当初想定したよりも地中熱交換器23の管路長が長い、あるいは、地中の熱容量が大きい等によって地中熱交換器23の放熱能力が高い場合、これに対応した適切な制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御が行われないと、地中への十分な放熱ができず、地中の熱容量の有効活用ができないおそれがある。
そこで、本実施形態によれば、圧縮機制御部61Aが設けられ、圧縮機制御のために設定される制御ゾーンに基づき、第1圧縮機43の回転数を制御する。前記制御ゾーンは、制御ゾーン決定部61Dによって、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出される前記第1冷媒C1の蒸発器入口冷媒温度(凝縮器出口冷媒温度)に基づき決定される。このとき特に、制御ゾーン決定部61Dによって、前記地中熱交換器23における前記吸放熱能力情報が取得される。そして、前記制御ゾーンの決定において、制御ゾーン決定部61Dは、前記取得された吸放熱能力情報に応じて、前記冷媒温度と1つの制御ゾーンとを可変に対応づける。
具体的には、前記記憶部61Eには、前記吸放熱能力情報の内容ごとに、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出される前記第1冷媒C1の温度と、対応する前記制御ゾーンとの相関を表す第1相関としての第1データテーブルが記憶されている。また、前記記憶部61Eには、複数の前記制御ゾーンと、各制御ゾーンに対応した前記第1圧縮機43の回転数の上限値との相関を表す第2相関としての第2データテーブルが記憶されている。そして、前記制御ゾーン決定部61Dは、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出される前記第1冷媒C1の温度に対し、取得した前記吸放熱能力情報に対応する前記第1データテーブルを参照して、対応する1つの前記制御ゾーンを決定する。また、前記圧縮機制御部61Aは、前記制御ゾーン決定部61Dが決定した前記1つの制御ゾーンに対し、前記第2データテーブルを参照して、対応する前記第1圧縮機43の回転数の上限値を取得すると共に、取得した上限値を超えないように前記第1圧縮機43の回転数を制御する。
図8〜図11に、前記第1データテーブル及び前記第2データテーブルの具体例を示す。なお、図8〜図11では、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出される蒸発器入口冷媒温度(凝縮器出口冷媒温度)を「熱交TH[℃]」と表記する。
図8(a)及び図8(b)はそれぞれ、前記「短採熱管モード」が設定された場合の暖房運転用の第1データテーブル及び第2データテーブルである。図8(a)に示すように、前記第1データテーブルは、前記熱交TH[℃]に係わる複数の温度区分を備えている。具体的には、図8(a)において矢印で示すように、前記熱交TH[℃]の低下方向では、前記温度区分の区切りとなる基準温度をそれぞれ−7[℃]、−9[℃]、−11[℃]とする。すなわち、−7[℃]≦THでは制御ゾーン1、−9[℃]≦TH<−7[℃]では制御ゾーン2、−11[℃]≦TH<−9[℃]では制御ゾーン3、TH<−11[℃]では制御ゾーン4となる。
一方、前記熱交TH[℃]の上昇方向では、前記温度区分の区切りとなる基準温度をそれぞれ−5[℃]、−7[℃]、−9[℃]とする。すなわち、−5[℃]≦THでは制御ゾーン1、−7[℃]≦TH<−5[℃]では制御ゾーン2、−9[℃]≦TH<−7[℃]では制御ゾーン3、TH<−9[℃]では制御ゾーン4となる。このように、前記熱交TH[℃]の低下方向と上昇方向とで前記制御ゾーンの切り替え挙動にヒステリシスを持たせることで、チャタリング防止を図っている。
前記制御ゾーン決定部61Dは、前記熱交TH[℃]が1つの前記温度区分に属した状態が所定期間(例えば10分)継続したときに、当該温度区分に対応する前記1つの制御ゾーンを、前記検出された熱交TH[℃]に対応する制御ゾーンとして決定する(図8(b)参照)。また、図8(b)に示すように、前記第2データテーブルは、複数の制御ゾーン1,2,3,4と、各制御ゾーンに対応した前記第1圧縮機43の回転数の上限値との相関を規定する。
以上により、例えば前記熱交TH[℃]が−7[℃]以上の状態から−10[℃]に低下し、その状態が10分以上継続した場合、制御ゾーンが1から3に変更され、前記第1圧縮機43の回転数の上限値が制限なし(例えば最大回転数90[rps])から35[rps]に変更される。その後、例えば前記熱交TH[℃]が−10[℃]の状態から−6[℃]に上昇し、その状態が10分以上継続した場合、制御ゾーンが3から2に変更され、前記第1圧縮機43の回転数の上限値が35[rps]から40[rps]に変更される。
図9(a)及び図9(b)はそれぞれ、前記「長採熱管モード」が設定された場合の暖房運転用の第1データテーブル及び第2データテーブルである。図9(a)に示すように、前記第1データテーブルは、前記熱交TH[℃]に係わる複数の温度区分を備えている。具体的には、図9(a)において矢印で示すように、前記熱交TH[℃]の低下方向では、前記温度区分の区切りとなる基準温度をそれぞれ−13[℃]、−15[℃]、−17[℃]とする。すなわち、−13[℃]≦THでは制御ゾーン1、−15[℃]≦TH<−13[℃]では制御ゾーン2、−17[℃]≦TH<−15[℃]では制御ゾーン3、TH<−17[℃]では制御ゾーン4となる。
一方、前記熱交TH[℃]の上昇方向では、前記温度区分の区切りとなる基準温度をそれぞれ−11[℃]、−13[℃]、−15[℃]とする。すなわち、−11[℃]≦THでは制御ゾーン1、−13[℃]≦TH<−11[℃]では制御ゾーン2、−15[℃]≦TH<−13[℃]では制御ゾーン3、TH<−15[℃]では制御ゾーン4となる。このように、前記熱交TH[℃]の低下方向と上昇方向とで前記制御ゾーンの切り替え挙動にヒステリシスを持たせることで、チャタリング防止を図っている。
前記制御ゾーン決定部61Dは、前記熱交TH[℃]が1つの前記温度区分に属した状態が所定期間(例えば10分)継続したときに、当該温度区分に対応する前記1つの制御ゾーンを、前記検出された熱交TH[℃]に対応する制御ゾーンとして決定する(図9(b)参照)。また、図9(b)に示すように、前記第2データテーブルは、複数の制御ゾーン1,2,3,4と、各制御ゾーンに対応した前記第1圧縮機43の回転数の上限値との相関を規定する。
以上により、例えば前記熱交TH[℃]が−13[℃]以上の状態から−16[℃]に低下し、その状態が10分以上継続した場合、制御ゾーンが1から3に変更され、前記第1圧縮機43の回転数の上限値が制限なし(例えば最大回転数90[rps])から35[rps]に変更される。その後、例えば前記熱交TH[℃]が−16[℃]の状態から−12[℃]に上昇し、その状態が10分以上継続した場合、制御ゾーンが3から2に変更され、前記第1圧縮機43の回転数の上限値が35[rps]から40[rps]に変更される。
以上により、暖房運転が行われる際、地中熱交換器23の管路長が短い等によって地中熱交換器23の吸熱能力が低い場合には、温度区分を高めに設定して制御ゾーンを比較的高めの温度で切り替え、第1圧縮機43の回転数の上限値を比較的高めの温度域で制限することにより、地中からの過剰吸熱(採熱)による熱枯れ状態を防止できる。一方、地中熱交換器23の管路長が長い等によって地中熱交換器23の吸熱能力が高い場合には、温度区分を低めに設定して制御ゾーンを比較的低めの温度で切り替え、第1圧縮機43の回転数の上限値を比較的低めの温度域で制限する(すなわち、高めの温度域では制限しないか制限を少なくする)ことにより、地中から十分な吸熱(採熱)を行い地中熱を有効活用することができる。
図10(a)及び図10(b)はそれぞれ、前記「短放熱管モード」が設定された場合の冷房運転用の第1データテーブル及び第2データテーブルである。図10(a)に示すように、前記第1データテーブルは、前記熱交TH[℃]に係わる複数の温度区分を備えている。具体的には、図10(a)において矢印で示すように、前記熱交TH[℃]の上昇方向では、前記温度区分の区切りとなる基準温度をそれぞれ32[℃]、34[℃]、36[℃]とする。すなわち、TH<32[℃]では制御ゾーン1、32[℃]≦TH<34[℃]では制御ゾーン2、34[℃]≦TH<36[℃]では制御ゾーン3、36[℃]≦THでは制御ゾーン4となる。
一方、前記熱交TH[℃]の低下方向では、前記温度区分の区切りとなる基準温度をそれぞれ30[℃]、32[℃]、34[℃]とする。すなわち、TH<30[℃]では制御ゾーン1、30[℃]≦TH<32[℃]では制御ゾーン2、32[℃]≦TH<34[℃]では制御ゾーン3、34[℃]≦THでは制御ゾーン4となる。このように、前記熱交TH[℃]の上昇方向と低下方向とで前記制御ゾーンの切り替え挙動にヒステリシスを持たせることで、チャタリング防止を図っている。
前記制御ゾーン決定部61Dは、前記熱交TH[℃]が1つの前記温度区分に属した状態が所定期間(例えば10分)継続したときに、当該温度区分に対応する前記1つの制御ゾーンを、前記検出された熱交TH[℃]に対応する制御ゾーンとして決定する(図10(b)参照)。また、図10(b)に示すように、前記第2データテーブルは、複数の制御ゾーン1,2,3,4と、各制御ゾーンに対応した前記第1圧縮機43の回転数の上限値との相関を規定する。
以上により、例えば前記熱交TH[℃]が32[℃]未満の状態から35[℃]に上昇し、その状態が10分以上継続した場合、制御ゾーンが1から3に変更され、前記第1圧縮機43の回転数の上限値が制限なし(例えば最大回転数90[rps])から35[rps]に変更される。その後、例えば前記熱交TH[℃]が35[℃]の状態から31[℃]に低下し、その状態が10分以上継続した場合、制御ゾーンが3から2に変更され、前記第1圧縮機43の回転数の上限値が35[rps]から40[rps]に変更される。
図11(a)及び図11(b)はそれぞれ、前記「長放熱管モード」が設定された場合の冷房運転用の第1データテーブル及び第2データテーブルである。図11(a)に示すように、前記第1データテーブルは、前記熱交TH[℃]に係わる複数の温度区分を備えている。具体的には、図11(a)において矢印で示すように、前記熱交TH[℃]の上昇方向では、前記温度区分の区切りとなる基準温度をそれぞれ35[℃]、37[℃]、39[℃]とする。すなわち、TH<35[℃]では制御ゾーン1、35[℃]≦TH<37[℃]では制御ゾーン2、37[℃]≦TH<39[℃]では制御ゾーン3、39[℃]≦THでは制御ゾーン4となる。
一方、前記熱交TH[℃]の低下方向では、前記温度区分の区切りとなる基準温度をそれぞれ33[℃]、35[℃]、37[℃]とする。すなわち、TH<33[℃]では制御ゾーン1、33[℃]≦TH<35[℃]では制御ゾーン2、35[℃]≦TH<37[℃]では制御ゾーン3、37[℃]≦THでは制御ゾーン4となる。このように、前記熱交TH[℃]の上昇方向と低下方向とで前記制御ゾーンの切り替え挙動にヒステリシスを持たせることで、チャタリング防止を図っている。
前記制御ゾーン決定部61Dは、前記熱交TH[℃]が1つの前記温度区分に属した状態が所定期間(例えば10分)継続したときに、当該温度区分に対応する前記1つの制御ゾーンを、前記検出された熱交TH[℃]に対応する制御ゾーンとして決定する(図11(b)参照)。また、図11(b)に示すように、前記第2データテーブルは、複数の制御ゾーン1,2,3,4と、各制御ゾーンに対応した前記第1圧縮機43の回転数の上限値との相関を規定する。
以上により、例えば前記熱交TH[℃]が35[℃]未満の状態から38[℃]に上昇し、その状態が10分以上継続した場合、制御ゾーンが1から3に変更され、前記第1圧縮機43の回転数の上限値が制限なし(例えば最大回転数90[rps])から35[rps]に変更される。その後、例えば前記熱交TH[℃]が38[℃]の状態から34[℃]に低下し、その状態が10分以上継続した場合、制御ゾーンが3から2に変更され、前記第1圧縮機43の回転数の上限値が35[rps]から40[rps]に変更される。
以上により、冷房運転が行われる際、地中熱交換器23の管路長が短い等によって地中熱交換器23の放熱能力が低い場合には、温度区分を低めに設定して制御ゾーンを比較的低めの温度で切り替え、第1圧縮機43の回転数の上限値を比較的低めの温度域で制限することにより、地中への放熱過剰による熱飽和状態を防止できる。一方、地中熱交換器23の管路長が長い等によって地中熱交換器23の放熱能力が高い場合には、温度区分を高めに設定して制御ゾーンを比較的高めの温度で切り替え、第1圧縮機43の回転数の上限値を比較的高めの温度域で制限する(すなわち、低めの温度域では制限しないか制限を少なくする)ことにより、地中へ十分な放熱を行い地中の熱容量を有効活用することができる。
以上説明した本実施形態の効果について、図12〜図15を参照しつつ、比較例と対比して説明する。なお、図12〜図15では、地中初期温度が例えば15[℃]である場合について説明する。
図12に、比較例における暖房運転時の地中温度[℃]の経時推移を示す。この比較例では、例えば前記地中熱交換器23が前記「短採熱管モード」に対応した比較的短めの管路長を備えており、且つ、前記「長採熱管モード」に対応した第1データテーブル及び第2データテーブルを用いて制御ゾーン及び第1圧縮機43の回転数の上限値が決定される。すなわち、この比較例では地中熱交換器23の吸熱能力に対して適切でない(過剰な吸熱(採熱)が行われる)制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御が行われる。
この場合、図12に示すように、地中からの吸熱(採熱)量に対して熱回復量が少なく、地中温度が過度に低下してしまう(図12に示す例では−20[℃]以下まで低下)。その結果、時間がたっても温度回復できない状態(いわゆる熱枯れ状態)となっている。
図13に、実施形態における暖房運転時の地中温度[℃]の経時推移を示す。本実施形態では、例えば前記地中熱交換器23が前記「短採熱管モード」に対応した比較的短めの管路長を備えており、且つ、前記「短採熱管モード」に対応した第1データテーブル及び第2データテーブルを用いて制御ゾーン及び第1圧縮機43の回転数の上限値が決定される。すなわち、本実施形態では地中熱交換器23の吸熱能力に対して適切な制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御が行われる。
この場合、図13に示すように、前記比較例に比べて熱回復量が多くなるので、地中温度がある程度低下したところで吸熱(採熱)量と熱回復量とが平衡し、地中温度が過度に低下することを防止できる(図13に示す例では−5[℃]前後で維持される)。その結果、地中からの過剰吸熱(採熱)による熱枯れ状態を防止できる。また、地中熱配管21の熱媒H1の凍結や、当該凍結による地中熱源熱交換器45の凍結・破損等を防止できる。
図14に、前記比較例における冷房運転時の地中温度[℃]の経時推移を示す。この比較例では、例えば前記地中熱交換器23が前記「短放熱管モード」に対応した比較的短めの管路長を備えており、且つ、前記「長放熱管モード」に対応した第1データテーブル及び第2データテーブルを用いて制御ゾーン及び第1圧縮機43の回転数の上限値が決定される。すなわち、この比較例では地中熱交換器23の放熱能力に対して適切でない(過剰な放熱が行われる)制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御が行われる。
この場合、図14に示すように、地中への放熱量に対して熱回復量が少なく、地中温度が過度に上昇してしまう(図14に示す例では50[℃]以上まで上昇)。その結果、時間がたっても温度回復できない状態(いわゆる熱飽和状態)となっている。
図15に、実施形態における冷房運転時の地中温度[℃]の経時推移を示す。本実施形態では、例えば前記地中熱交換器23が前記「短放熱管モード」に対応した比較的短めの管路長を備えており、且つ、前記「短放熱管モード」に対応した第1データテーブル及び第2データテーブルを用いて制御ゾーン及び第1圧縮機43の回転数の上限値が決定される。すなわち、本実施形態では地中熱交換器23の放熱能力に対して適切な制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御が行われる。
この場合、図15に示すように、前記比較例に比べて熱回復量が多くなるので、地中温度がある程度上昇したところで放熱量と熱回復量とが平衡し、地中温度が過度に上昇することを防止できる(図15に示す例では32[℃]前後で維持される)。その結果、地中への過剰放熱による熱飽和状態を防止できる。
なお、以上の効果に基づき、モードの初期設定(工場出荷時等)は前記「短採熱管モード」又は「短放熱管モード」とすることが好ましい。これにより、例えば前記地中熱交換器23が比較的短めの管路長を備える場合には、当該地中熱交換器23の吸放熱能力に対して適切な制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御が行われることになる。一方、例えば前記地中熱交換器23が比較的長めの管路長を備える場合には、地中熱や地中の熱容量の有効活用の度合いは低下するが、少なくとも前述した暖房運転時における地中からの過剰吸熱(採熱)による熱枯れ状態や冷房運転時における地中への過剰放熱による熱飽和状態を防止できる。
次に、以上の手法を実現するために、圧縮機制御部61A,61Bが協働して実行する制御手順及び制御ゾーン決定部61Dが実行する制御手順を図16及び図17のフローチャートにより説明する。
まず、暖房運転時の制御手順を図16に示す。図16において、まずステップS5で、圧縮機制御部61A,61Bの切替制御部61p,62pは、ヒートポンプ装置1が運転開始状態となったか否かを判定する。具体的には、運転開始状態とは、例えば、操作者による適宜のヒートポンプ装置1の運転開始操作がなされることで停止状態から起動される場合、若しくは、運転停止後から再起動してヒートポンプ装置1の運転が再び開始される場合である。運転開始状態となるまではステップS5の判定が満たされず(S5:NO)ループ待機し、運転開始状態となるとステップS5の判定が満たされ(S5:YES)、ステップS10に移る。
ステップS10では、切替制御部61p,62pは、暖房運転を開始する際の、地中熱ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43、及び、空気熱ヒートポンプ回路50の第2圧縮機53のいずれを主動力源とし、いずれを補助動力源とするかの設定を行う。すなわち、前記外気温度センサ57によって検出された外気温度が前記基準温度(前述の例では2[℃])未満であれば、前記第1圧縮機43を主動力源とすると共に前記第2圧縮機53を補助動力源として、暖房運転を開始する。外気温度が前記基準温度(2[℃])以上であれば、前記第2圧縮機53を主動力源とすると共に前記第1圧縮機43を補助動力源として、暖房運転を開始する。その後、ステップS15に移る。
ステップS15では、切替制御部61p,62pは、ヒートポンプ装置1が運転終了状態となったか否かを判定する。すなわち、後述のような回転数の制御の下で暖房運転を行って暖房負荷が小さくなると、ヒートポンプ装置1を動作させずとも、前記端末循環回路30の前記戻り液温度センサ34で検出される循環液Lの前記戻り温水温度が前記目標戻り温水温度以上に達する場合がある。この場合は、前記地中熱制御装置61及び前記空気熱制御装置62による公知の制御によりヒートポンプ装置1が停止され、待機状態となる(すなわち、いったんヒートポンプ装置1の運転が終了される)。ステップS15では、切替制御部61p,62pは、ヒートポンプ装置1がこの待機状態となったか否かを判定するものである。運転終了状態(すなわち待機状態)となっていた場合はステップS15の判定が満たされ(S15:YES)、このフローを終了する。一方、運転終了状態(すなわち待機状態)となっていない間はステップS15の判定は満たされず(S15:NO)、ステップS20に移る。
ステップS20では、切替制御部61p,62pは、この時点で戻り液温度センサ34から検出された前記戻り温水温度が前記目標戻り温水温度を下回っているか否かを判定する。戻り温水温度が目標戻り温水温度を下回っている場合、判定が満たされ(S20:YES)、ステップS25に移る。
ステップS25では、切替制御部61p,62pは、この時点の主動力源となっている圧縮機の回転数を増大する。なお、主動力源の圧縮機の回転数の増大だけに限らず、適宜、補助動力源の圧縮機の回転数も増大させてもよい。その後、後述のステップS35に移る。
一方、前記ステップS20の判定において、前記戻り温水温度が前記目標戻り温水温度以上である場合、判定は満たされず(S20:NO)、ステップS30に移る。
ステップS30では、切替制御部61p,62pは、この時点の主動力源となっている圧縮機の回転数を低減する。なお、主動力源の圧縮機の回転数の低減だけに限らず、適宜、補助動力源の圧縮機の回転数も低減させてもよい。その後、ステップS35に移る。
ステップS35では、地中熱制御装置61の制御ゾーン決定部61Dは、前記地中熱交換器23における吸熱能力を表す吸熱能力情報を例えばメインリモコン60aから取得する。なお、このステップS35が吸放熱能力情報を取得する情報取得手段に相当する。その後、ステップS40に移る。
ステップS40では、制御ゾーン決定部61Dは、制御ゾーンの変更が必要か否かを判定する。具体的には、前記ステップS35で取得した吸熱能力情報に対応する前記第1データテーブルを参照し(図8及び図9参照)、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出された熱交TH[℃]が現状とは異なる温度区分に移行したか否かを判定する。前記熱交TH[℃]が現状とは異なる温度区分に移行していない場合、判定は満たされず(S40:NO)、前記ステップS15に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、前記熱交TH[℃]が現状とは異なる温度区分に移行した場合、判定が満たされ(S40:YES)、ステップS45に移る。
ステップS45では、制御ゾーン決定部61Dは、前記ステップS35で取得した吸熱能力情報に対応する前記第1データテーブルを参照し、当該第1データテーブルにおいて、前記熱交TH[℃]がどの温度区分に属すか、すなわち前記熱交TH[℃]がどの制御ゾーンに対応するかを判定する。その後、ステップS50に移る。
ステップS50では、制御ゾーン決定部61Dは、前記熱交TH[℃]が前記ステップS45において判定した1つの温度区分に属した状態が所定期間継続したか否かを判定する。なお、前記所定期間は、前記ステップS35で取得した吸熱能力情報が前記「短採熱管モード」である場合は10分、前記「長採熱管モード」である場合は10分である。前記状態が前記所定期間継続しなかった場合、判定は満たされず(S50:NO)、前記ステップS15に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、前記状態が前記所定期間継続した場合、判定が満たされ(S50:YES)、ステップS55に移る。
ステップS55では、制御ゾーン決定部61Dは、前記ステップS45において前記熱交TH[℃]が属すると判定した温度区分に対応する前記制御ゾーンを、検出された前記熱交TH[℃]に対応する制御ゾーンとして決定する。その後、ステップS60に移る。
ステップS60では、圧縮機制御部61Aは、前記ステップS55で決定した制御ゾーンに基づき、前記ステップS35で取得した吸熱能力情報に対応する前記第2データテーブルを参照して(図8及び図9参照)、対応する第1圧縮機43の回転数の上限値を取得する。その後、ステップS65に移る。
ステップS65では、圧縮機制御部61Aは、前記ステップS60で取得した上限値を超えないように前記第1圧縮機43の回転数を制御する。その後、前記ステップS15に戻り、同様の手順を繰り返す。
以上のようにして、ステップS20、ステップS25、及びステップS30の処理により、前記戻り温水温度が前記目標戻り温水温度に一致するよう主動力源の圧縮機(及び、必要に応じて補助動力源の圧縮機)の回転数を制御する通常の前記戻り温水温度制御が行われる。また、ステップS35〜ステップS65の処理により、前記吸熱能力情報に応じて、前記第1冷媒温度センサ42bが検出する前記熱交TH[℃]と前記第1圧縮機43の複数の制御ゾーンのうちいずれか1つとを可変に対応づけ、当該制御ゾーンに基づいて前記第1圧縮機43の回転数を制御する能力制限制御が行われる。
次に、冷房運転時の制御手順を図17に示す。図17において、まずステップS105で、圧縮機制御部61A,61Bの切替制御部61p,62pは、前記図16の前記ステップS5と同様、ヒートポンプ装置1が前記運転開始状態となったか否かを判定する。運転開始状態となるまではステップS105の判定が満たされず(S105:NO)ループ待機し、運転開始状態となるとステップS105の判定が満たされ(S105:YES)、ステップS110に移る。
ステップS110では、切替制御部61p,62pは、冷房運転を開始する際の、地中熱ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43、及び、空気熱ヒートポンプ回路50の第2圧縮機53のいずれを主動力源とし、いずれを補助動力源とするかの設定を行う。すなわち、前記外気温度センサ57によって検出された外気温度が前記基準温度(前述の例では30[℃])以上であれば、前記第1圧縮機43を主動力源とすると共に前記第2圧縮機53を補助動力源として、冷房運転を開始する。外気温度が前記基準温度(30[℃])未満であれば、前記第2圧縮機53を主動力源とすると共に前記第1圧縮機43を補助動力源として、冷房運転を開始する。その後、ステップS115に移る。
ステップS115では、切替制御部61p,62pは、前記図16の前記ステップS15と同様、ヒートポンプ装置1が運転終了状態となったか否かを判定する。すなわち、後述のような回転数の制御の下で冷房運転を行って冷房負荷が小さくなると、ヒートポンプ装置1を動作させずとも、前記端末循環回路30の前記戻り液温度センサ34で検出される循環液Lの前記戻り冷水温度が前記目標戻り冷水温度以下となる場合がある。この場合は、前記地中熱制御装置61及び前記空気熱制御装置62による公知の制御によりヒートポンプ装置1が停止され、待機状態となる(すなわち、いったんヒートポンプ装置1の運転が終了される)。ステップS115では、切替制御部61p,62pは、ヒートポンプ装置1がこの待機状態となったか否かを判定するものである。運転終了状態となっていた場合はステップS115の判定が満たされ(S115:YES)、このフローを終了する。一方、運転終了状態となっていない間はステップS115の判定は満たされず(S115:NO)、ステップS120に移る。
ステップS120では、切替制御部61p,62pは、この時点で戻り液温度センサ34から検出された前記戻り冷水温度が前記目標戻り冷水温度を超えているか否かを判定する。戻り冷水温度が目標戻り冷水温度を超えている場合、判定が満たされ(S120:YES)、ステップS125に移る。
ステップS125では、切替制御部61p,62pは、前記図16の前記ステップS25と同様、この時点の主動力源となっている圧縮機の回転数を増大する。なお、前記と同様、主動力源の圧縮機の回転数の増大だけに限らず、適宜、補助動力源の圧縮機の回転数も増大させてもよい。その後、後述のステップS135に移る。
一方、前記ステップS120の判定において、前記戻り冷水温度が前記目標戻り冷水温度以下である場合、判定は満たされず(S120:NO)、ステップS130に移る。
ステップS130では、切替制御部61p,62pは、前記図16の前記ステップS30と同様、この時点の主動力源となっている圧縮機の回転数を低減する。なお、主動力源の圧縮機の回転数の低減だけに限らず、適宜、補助動力源の圧縮機の回転数も低減させてもよい。その後、ステップS135に移る。
ステップS135では、前記図16の前記ステップS35と同様、地中熱制御装置61の制御ゾーン決定部61Dは、前記地中熱交換器23における放熱能力を表す放熱能力情報を例えばメインリモコン60aから取得する。なお、このステップS135が吸放熱能力情報を取得する情報取得手段に相当する。その後、ステップS140に移る。
ステップS140では、前記図16の前記ステップS40と同様、制御ゾーン決定部61Dは、制御ゾーンの変更が必要か否かを判定する。具体的には、前記ステップS135で取得した放熱能力情報に対応する前記第1データテーブルを参照し(図10及び図11参照)、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出された熱交TH[℃]が現状とは異なる温度区分に移行したか否かを判定する。前記熱交TH[℃]が現状とは異なる温度区分に移行していない場合、判定は満たされず(S140:NO)、前記ステップS115に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、前記熱交TH[℃]が現状とは異なる温度区分に移行した場合、判定が満たされ(S140:YES)、ステップS145に移る。
ステップS145では、前記図16の前記ステップS45と同様、制御ゾーン決定部61Dは、前記ステップS135で取得した放熱能力情報に対応する前記第1データテーブルを参照し、当該第1データテーブルにおいて、前記熱交TH[℃]がどの温度区分に属すか、すなわち前記熱交TH[℃]がどの制御ゾーンに対応するかを判定する。その後、ステップS150に移る。
ステップS150では、前記図16の前記ステップS50と同様、制御ゾーン決定部61Dは、前記熱交TH[℃]が前記ステップS145において判定した1つの温度区分に属した状態が所定期間継続したか否かを判定する。なお、前記所定期間は、前記ステップS135で取得した放熱能力情報が前記「短放熱管モード」である場合は10分、前記「長放熱管モード」である場合は10分である。前記状態が前記所定期間継続しなかった場合、判定は満たされず(S150:NO)、前記ステップS115に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、前記状態が前記所定期間継続した場合、判定が満たされ(S150:YES)、ステップS155に移る。
ステップS155では、前記図16の前記ステップS55と同様、制御ゾーン決定部61Dは、前記ステップS145において前記熱交TH[℃]が属すると判定した温度区分に対応する前記制御ゾーンを、検出された前記熱交TH[℃]に対応する制御ゾーンとして決定する。その後、ステップS160に移る。
ステップS160では、前記図16の前記ステップS60と同様、圧縮機制御部61Aは、前記ステップS155で決定した制御ゾーンに基づき、前記ステップS135で取得した放熱能力情報に対応する前記第2データテーブルを参照して(図10及び図11参照)、対応する第1圧縮機43の回転数の上限値を取得する。その後、ステップS165に移る。
ステップS165では、前記図16の前記ステップS65と同様、圧縮機制御部61Aは、前記ステップS160で取得した上限値を超えないように前記第1圧縮機43の回転数を制御する。その後、前記ステップS115に戻り、同様の手順を繰り返す。
以上のようにして、ステップS120、ステップS125、及びステップS130の処理により、前記戻り冷水温度が前記目標戻り冷水温度に一致するよう主動力源の圧縮機(及び、必要に応じて補助動力源の圧縮機)の回転数を制御する通常の前記戻り冷水温度制御が行われる。また、ステップS135〜ステップS165の処理により、前記放熱能力情報に応じて、前記第1冷媒温度センサ42bが検出する前記熱交TH[℃]と前記第1圧縮機43の複数の制御ゾーンのうちいずれか1つとを可変に対応づけ、当該制御ゾーンに基づいて前記第1圧縮機43の回転数を制御する能力制限制御が行われる。
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ装置1によれば、地中熱制御装置61に圧縮機制御部61Aが設けられ、圧縮機制御のために設定される制御ゾーンに基づき、第1圧縮機43の回転数を制御する。前記制御ゾーンは、制御ゾーン決定部61Dによって、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出される前記第1冷媒C1の蒸発器入口冷媒温度(凝縮器出口冷媒温度)に基づき決定される。このとき特に、制御ゾーン決定部61Dによって、前記地中熱交換器23における前記吸放熱能力情報が取得される。そして、前記制御ゾーンの決定において、制御ゾーン決定部61Dは、前記取得された吸放熱能力情報に応じて、前記冷媒温度と1つの制御ゾーンとを可変に対応づける。これにより、同一の前記冷媒温度であったとしても、前記吸放熱能力情報によって、互いに異なる制御ゾーンとすることができる。
以上のようにして、本実施形態によれば、前記吸放熱能力情報によって前記地中熱交換器23の吸熱能力・放熱能力を正しく把握し、これに対応した適切な制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御を行うことができる。この結果、前述のような暖房運転時における地中からの吸熱過剰・地中熱の活用不足や冷房運転時における地中への放熱過剰・地中熱容量の活用不足を防止して、地中に対する最適な吸熱・放熱処理を実現することができる。
また、本実施形態では特に、予め用意され前記記憶部61Eに記憶されていた前記第1データテーブルを利用して、前記制御ゾーン決定部61Dが前記第1冷媒C1の温度に対応した1つの制御ゾーンを決定する。そして、予め用意され前記記憶部61Eに記憶されていた第2データテーブルを利用して、圧縮機制御部61Aが前記制御ゾーンに対応した第1圧縮機43の回転数の上限値を取得し、第1圧縮機43を制御する。これにより、簡素な演算で確実かつ迅速な圧縮機回転数制御を実行することができる。
また、本実施形態では特に、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出された前記第1冷媒C1の温度が1つの温度区分に所定期間とどまるのを待ってから、前記の制御ゾーンの決定及びこれに対応する前記第1圧縮機43の制御を行う。これにより、圧縮機回転数制御の精度向上及び安定化向上を図ることができる。
また、本実施形態では特に、前記制御ゾーン決定部61Dが取得する前記吸放熱能力情報は、前記地中熱交換器23の管路長を含んでいる。これにより、前記地中熱交換器23の管路長の長・短に伴う当該地中熱交換器23の吸熱能力・放熱能力の大小を正しく把握し、これに対応した適切な制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御を行うことができる。
また、本実施形態では特に、前記制御ゾーン決定部61Dが取得する前記吸放熱能力情報は、前記熱交換端末36において暖房運転を行うか冷房運転を行うかの運転情報を含んでいる。これにより、暖房運転のために吸熱を行う必要があるのか、冷房運転のために放熱を行う必要があるのかを正しく把握し、これに対応した適切な制御ゾーンにより第1圧縮機43の回転数制御を行うことができる。
また、本実施形態では特に、前記ヒートポンプ装置1は、地中熱源を利用して熱交換端末36側の循環液Lを加熱または冷却する地中熱ヒートポンプ回路40の第1熱交換器41と、空気熱源を利用して熱交換端末36側の循環液Lを加熱または冷却する空気熱ヒートポンプ回路50の第2熱交換器51とが、端末循環回路30に対して直列に接続された、複合熱源ヒートポンプ装置である。これにより、地中熱交換器23での吸熱・放熱を活用した地中熱ヒートポンプ回路40に対し第1熱交換器41において循環液配管内の循環液Lと熱交換を行うのみならず、前記空気熱源熱交換器55における外気に対する吸熱・放熱を活用した空気熱ヒートポンプ回路50に対し第2熱交換器51においても循環液配管内の循環液Lと熱交換を行うことができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、前記地中熱交換器23における吸熱能力又は放熱能力を表す吸放熱能力情報が、前記メインリモコン60a、前記端末用リモコン(図示省略)、又はディップスイッチ等により手動で設定入力され、前記ステップS35又は前記ステップS135において、制御ゾーン決定部61Dがそれら設定入力された吸放熱能力情報を取得するようにしたが、これに限られない。すなわち、前記ステップS35又は前記ステップS135の代わりに、ヒートポンプ装置1の運転開始後所定の時間が経過するまでの間、前記第1冷媒温度センサ42bの検出温度の低下度合い又は上昇度合いを検知する処理を設け、当該検知結果に基づいて土壌の性能を把握(学習)し、自動で前記吸放熱能力情報を取得するようにしてもよい。
図18に、前記の処理を行う場合における前記第1冷媒温度センサ42bの検出温度の経時推移を示す。なお、図18では暖房運転時の検出温度の経時推移を実線で、冷房運転時の検出温度の経時推移を破線で示す。また、前記第1冷媒温度センサ42bにより検出される蒸発器入口冷媒温度(凝縮器出口冷媒温度)を「熱交TH[℃]」と表記する。
図18に示すように、暖房運転時の検知時間t1[h]及び冷房運転時の検知時間t2[h]が予め定められており、運転開始から当該検知時間t1,t2が経過するまでの間の熱交TH[℃]の温度低下ΔT1及び温度上昇ΔT2を検知する。そして、これらの温度低下ΔT1又は温度上昇ΔT2が所定のしきい値未満の場合には吸熱(採熱)能力又は放熱能力が高いと判断し、これに対応する前記第1データテーブル及び前記第2データテーブル(例えば前記「長採熱管モード」又は「長放熱管モード」に対応したデータテーブル)に基づき前記第1圧縮機43の回転数を制御する。反対に、これらの温度低下ΔT1又は温度上昇ΔT2が所定のしきい値以上の場合には吸熱(採熱)能力又は放熱能力が低いと判断し、これに対応する前記第1データテーブル及び前記第2データテーブル(例えば前記「短採熱管モード」又は「短放熱管モード」に対応したデータテーブル)に基づき前記第1圧縮機43の回転数を制御する。このような処理を行うことで、実際の土壌の性能により適合させた最適な制御ゾーンにより前記第1圧縮機43の回転数を制御することができる。
なお、前記地中熱交換器23から前記地中熱源熱交換器45に至るまでの地中熱配管21に熱媒H1の温度を検出する熱媒温度センサ(図示省略)を設けておき、前記第1冷媒温度センサ42bの検出温度の代わりに、前記熱媒温度センサの検出温度の低下度合い又は上昇度合いを検知してもよい。図18では、当該熱媒温度センサの検出温度を「地中戻り[℃]」と表記する。
また例えば、上記実施形態では、地中熱を用いた地中熱ヒートポンプ回路40と空気熱を用いた空気熱ヒートポンプ回路50とを備えた複合熱源型のヒートポンプ装置に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、本発明は1又は複数の地中熱ヒートポンプ回路40のみを備えた地中熱ヒートポンプ装置に適用してもよい。また、複合熱源型のヒートポンプ装置とする場合には、地中熱ヒートポンプ回路40と空気熱ヒートポンプ回路50を含み3つ以上のヒートポンプ回路を備えた複合熱源型のヒートポンプ装置に適用してもよい。この場合には、1つのヒートポンプ回路の圧縮機だけを主動力源とし、それ以外の他のヒートポンプ回路の圧縮機を補助動力源としてもよい。
また例えば、上記実施形態では、端末循環回路30において、循環する循環液Lの流れに対して前記第1熱交換器41が前記第2熱交換器51よりも上流側に配設されている場合を例にとって説明したが、これに限られず、反対に前記第2熱交換器51が前記第1熱交換器41よりも上流側に配設されてもよい。さらには、端末循環回路30において前記第1熱交換器41と前記第2熱交換器51とが並列に接続されてもよい。
また例えば、上記実施形態では、地中熱交換器23を1本だけ地中に設けた場合を例にとって説明しているが、これに限られず、地中熱交換器23は地中に複数設けられていてもよい。その場合、それら複数の地中熱交換器23は互いに並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよい。