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JP2019157653A - ローラーポンプ及びその制御方法 - Google Patents

ローラーポンプ及びその制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】圧力が一定範囲を超えた場合にも、ローラーポンプを駆動させた状態で、圧力の変化に対応可能なローラーポンプを実現できるようにする。【解決手段】ローラーポンプ10は、血液回路を構成するチューブを取り付け可能なポンプスリーブ70と、ポンプスリーブ70の内側において第1の軸に対して回転可能に支持されたローターユニット20と、第1の軸との距離を変更可能にローターユニット20に設けられたローラー40と、ローターユニット20を回転させるポンプモーター50と、チューブ内腔の圧力が所定の範囲から逸脱した際に、ローラー40の第1の軸との距離を調整する制御部80とを備えている。【選択図】図3

Description

本発明は、ローラーポンプ及びその制御方法に関する。
ローラーポンプは、流体を流通可能なチューブを回転するローラーによってしごくことにより流体を送り出すポンプであり、従来から医療分野、特に人工心肺装置や人工透析等の体外循環回路において、コストや取扱いの容易性から送脱血を行うための血液ポンプとして使用されている。
ローラーポンプを用いる際には、ポンプスリーブとローラーとの間でチューブを挟み込み、一定程度締め付ける必要がある。特に人工心肺分野においては、ローラーポンプの使用前に適度な締め付けの度合い(圧閉度)を設定する、いわゆるオクルージョン調整を行う必要がある。オクルージョン調整の具体的な方法としては、公知の「人工心肺装置の標準的接続方法及びそれに応じた安全教育等に関するガイドライン」等に記載されている輸液セットを用いた方法や血液回路の液面降下を用いる方法、圧力低下の速度を測定する方法などが存在する。
オクルージョン調整は医療従事者が手作業で行っている。例えばローラーに設けられたオクルージョン調整ノブとそのロック機構とを一体的に設け、オクルージョン調整とロックとを一連の動作で行えるようにすることが試みられている(例えば、特許文献1を参照。)。
ところで、体外循環回路においては血液チューブの曲り・折れや不適切な鉗子操作によって、術中に体外循環回路の一部が閉塞してしまう場合がある。特に、ローラーポンプが駆動されている状態において、ローラーポンプの下流側で血液回路が閉塞すると、過剰な量の血液が回路内へ送出され回路内の圧力が急激に上昇する。これにより、血液チューブと各デバイスとの接続が解除されたり、人工肺や透析器の中空糸が破損(爆裂)したりするおそれがある。
また、人体(術野内)から体外循環回路へ血液を脱血する脱血カニューレや、手術野から血液を吸引する吸引血用カニューレの脱血孔が陰圧によって血管壁等の体内組織に張り付いて閉塞される場合もある。このようなローラーポンプの上流側で血液回路が閉塞した場合にローラーポンプが駆動され続けると、体外循環回路への血液流入が少ないか、全く無い状態であるにも関わらず回路内の血液が送出され続ける。これにより、回路内の陰圧が増大し、吸引用カニューレの脱血孔がより強力に体内組織に張り付いて組織を損傷させたり、回路内の陰圧によって溶血が発生したりするおそれがある。
上述の事情から、ローラーポンプは、送血用体外循環回路内の圧力が一定値を超えた際に自動的に駆動停止するように設定されている。医療従事者はローラーポンプが駆動停止した後、体外循環回路の閉塞を取り除きローラーポンプを再駆動させる必要がある。ローラーポンプが停止すると一時的とはいえ体外循環が途絶するため、患者に負担をかけないようにローラーポンプを速やかに再駆動させることが求められる。しかし、ローラーポンプを再駆動させる際には各種操作や再調整が必要であり、ローラーポンプの再駆動には大きな労力を要し、短時間での再開は困難である。
さらに、外科手術や透析においては、施術中に患者の後負荷が変動することがある。「後負荷」とは、ポンプが患者の体内へ血液を送出する際にかかる抵抗のことをいう。従来のローラーポンプは、駆動前にオクルージョン調整を完了し、術中にこれを調整することは困難である。このため、患者の末梢血管等の収縮や血液粘度が術中に変化して後負荷が上昇しても、一定の回転数で定常流の血液を送出せざるを得ない。このような状態は、血液がポンプから送出される際の圧力を増大させ、患者に大きな負担を強いることになる。
特開2000−80988号公報
本開示の課題は、圧力が一定範囲を超えた場合にも、ローラーポンプを駆動させた状態で、圧力の変化に対応可能なローラーポンプを実現できるようにすることである。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、当然ながら可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本開示のローラーポンプの一態様は、血液回路を構成するチューブを取り付け可能なポンプスリーブと、ポンプスリーブの内側において第1の軸に対して回転可能に支持されたローターユニットと、第1の軸との距離を変更可能にローターユニットに設けられたローラーと、ローターユニットを回転させるポンプモーターと、チューブ内腔の圧力が所定の範囲から逸脱した際に、ローラーの第1の軸との距離を調整する制御部とを備えている。
ローラーポンプの一態様によれば、血液回路を構成するチューブ内腔の圧力に基づいて圧閉度を調整することが可能となる。従って、体外循環回路が閉塞して圧力が異常に上昇した場合においても、ローラーによるチューブの締め付けを解消することで血液の過剰な送出を停止することができ、意図しないチューブとデバイスとの接続解除や人工肺、透析器等の中空糸の破損を防ぐことができる。
加えて、従来のローラーポンプにおいては手作業にて圧閉度を調整していたため、体外循環回路が閉塞して圧力が異常に上昇した場合には一度ローラーポンプを停止させる必要があった。しかし、自動的に圧閉度が調整されてローラーポンプが空回り状態となることにより、ポンプを停止させることなくチューブとデバイスとの接続解除や人工肺、透析器等の中空糸の破損を防ぐことが可能となる。体外循環回路の閉塞が解消されれば、回路内の圧力が下がると共に自動的に適切な圧閉度が調整される。この間もポンプは駆動され続けているため、圧閉度の調整からタイムラグ無く体外循環を再開することができる。さらに、一連のスキームを全て自動的に行うことができるため、医療従事者の負担を低減できる。
ローラーポンプの一態様において、制御部は、チューブ内腔の圧力が100mmHg以上上昇した際に、ローラーを第1の軸に接近させ、チューブ内腔の圧力がローラーを第1の軸に接近させた際の圧力から50mmHg以上低下した際に、ローラーを第1の軸から離間させるようにできる。
このようにすれば、体外循環回路が閉塞して圧力が一定以上の水準まで上昇した場合に、チューブの締め付けを解消することでチューブとデバイスとの接続解除や人工肺、透析器等の中空糸の破損を防ぐことができる。また、体外循環回路の閉塞が解消され体外循環回路内の圧力が適切な水準となると、自動的に適切な圧閉度を設定し体外循環を再開することができる。
ローラーポンプの一態様において、制御部は、チューブ内腔の圧力が50mmHg以上低下した際にローラーを第1の軸に接近させ、チューブ内腔の圧力がローラーを第1の軸から離間させた際の圧力から50mmHg以上上昇した際に、ローラーを第1の軸から離間させるようにすることもできる。
このようにすれば、体外循環回路が閉塞して圧力が一定以下の水準まで下降した場合に、チューブの締め付けを解消することで体外循環回路内の異常な圧力減少や陰圧発生に伴う溶血等を抑制することが可能となる。また、体外循環回路の閉塞が解消され体外循環回路内の圧力が適切な水準となると、自動的に適切な圧閉度を設定し体外循環を再開することができる。
ローラーポンプの一態様は、ローラーを第1の軸に接近又は離間させるための調整ねじと、調整ねじを回転させる調整モーターと、調整モーターから調整ねじへ力を伝達する直径が互いに異なる少なくとも2つの歯車とを有する調整ユニットをさらに備えていてもよい。
このようにすれば、歯車の歯数差によって生じるトルクにより精密なオクルージョン調整が可能となる。
この場合において、少なくとも2つの歯車は、調整モーターに取り付けられたモーター側歯車と、調整ねじに取り付けられたねじ側歯車とを有し、モーター側歯車は、ねじ側歯車よりも直径が小さくすることができる。
このようにすれば、調整モーターから調整ねじへ動力を伝える際にモーター1回転当りのローラー移動距離が小さくなり、さらに精密なオクルージョン調整が可能になる。また、調整ねじに伝わるトルクも大きくなるため、より確実なオクルージョン調整が可能となる。
本開示のローラーポンプの制御方法の一態様は、血液回路を構成するチューブを取り付け可能なポンプスリーブと、ポンプスリーブの内側において第1の軸に対して回転可能に支持されたローターユニットと、第1の軸との距離を変更可能にローターユニットに設けられたローラーと、ローターユニットを回転させるポンプモーターとを備えたローラーポンプにおいて、チューブ内腔の圧力が所定の範囲から逸脱した際に、ポンプモーターを停止させることなく、ローラーの位置を変更するステップを備えている。
ローラーポンプの制御方法の一態様によれば、血液回路を構成するチューブ内腔の圧力に基づいて圧閉度を調整することが可能となる。従って、体外循環回路が閉塞して圧力が異常に上昇した場合においても、ローラーによるチューブの締め付けを解消することで血液の過剰な送出を停止することができ、意図しないチューブとデバイスとの接続解除や人工肺、透析器等の中空糸の破損を防ぐことができる。
ローラーポンプの制御方法の一態様において、ローラーの位置を変更するステップは、チューブ内腔の圧力が100mmHg以上上昇した場合にローラーを第1の軸に接近させる第1のステップと、第1のステップの後にチューブ内腔の圧力が第1のステップを行った際の圧力から50mmHg以上低下した場合にローラーを第1の軸から離間させる第2のステップとを含んでいてもよい。
このようにすれば、体外循環回路が閉塞して圧力が一定以上の水準まで上昇した場合に、チューブの締め付けを解消することでチューブとデバイスとの接続解除や人工肺、透析器等の中空糸の破損を防ぐことができる。また、体外循環回路の閉塞が解消され体外循環回路内の圧力が適切な水準となると、自動的に適切な圧閉度を設定し体外循環を再開することができる。
ローラーポンプの制御方法の一態様において、ローラーの位置を変更するステップは、チューブ内腔の圧力が50mmHg以上低下した場合にローラーを第1の軸に接近させる第1のステップと、第1のステップの後にチューブ内腔の圧力が第1のステップを行った際の圧力から50mmHg以上上昇した場合にローラーを第1の軸から離間させる第2のステップとを含んでいてもよい。
このようにすれば、体外循環回路が閉塞して圧力が一定以下の水準まで下降した場合に、チューブの締め付けを解消することで体外循環回路内の異常な圧力減少や陰圧発生に伴う溶血等を抑制することが可能となる。また、体外循環回路の閉塞が解消され体外循環回路内の圧力が適切な水準となると、自動的に適切な圧閉度を設定し体外循環を再開することができる。
本開示のローラーポンプによれば、ローラーポンプを駆動したまま体外循環回路内の圧力変化に対応することができる。
一実施形態に係るロ−ラーポンプが適用される血液回路を示す模式図である。 一実施形態に係るローラーポンプを示す全体図である。 図2に示すローラーポンプのII−II線における断面図である。 一実施形態に係るローターユニットを示す斜視図である。 一実施形態に係るローターユニットの各構成を示す斜視図である。 一実施形態に係るローターユニットを示す背面斜視図である。 本一実施形態に係る切替ユニットの第1状態を示す図である。 一実施形態に係る切替ユニットの第2状態を示す図である。
一実施形態に係るローラーポンプについて、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
図1は、本実施態様に係るローラーポンプを組み込んだ血液回路の一例を示す。体外循環回路1は、心臓等の外科手術に適用できる。患者の体内から取り出された血液は採血ライン4を流通してリザーバ2に導入される。この血液はローラーポンプ10によってリザーバ1から導出され、人工肺3を通って酸素加された後、送血ライン5を流通して再び患者の体内へと戻される。また、採血ライン4と送血ライン5にはそれぞれ圧力検出手段6が設けられており、検出された圧力情報が電気信号に変換され、ローラーポンプ10の制御部80へと入力される。
図2及び図3には、一実施形態に係るローラーポンプ10を示している。ローラーポンプ10は、ポンプスリーブ70と、ポンプスリーブ70内に第1の軸を中心軸として回転可能に支持されたローターユニット20と、ローターユニットを回転させるポンプモーター50と、ポンプモーター50へ電力を供給する給電・通信ユニット60と、ローラーポンプ10を制御する制御部80とを備えている。
ローラーポンプ10のローターユニット20とポンプスリーブ70との間には、体外循環回路を構成する可撓性チューブを略U字状として挟み込んで取り付ける。給電・通信ユニット60を介してポンプモーター50へ電力が供給されると、ローターユニット20が、第1の軸を中心軸として回転してチューブをしごき血液を送出す。なお、以下の説明において、第1の軸とはポンプモーター50のシャフトの延長線であり、図3、図5及び図6においてX−Xで示される。先端側とは第1の軸における給電・通信ユニット60が設けられている側、すなわち図3の上方向を示し、基端側とは第1の軸におけるポンプモーター50が設けられている側、すなわち図3の下方向を示す。
ローターユニット20は、調整ユニット30と、ローラー40と、調整つまみ42と、ローターベース44とを有している。ローターベース44は、基端側でポンプモーター50と連結されており、ポンプモーター50の駆動に伴い、ポンプモーター50の回転をローターユニット20へ伝達するようにされている。また、ローターユニット20、ローターベース44及びポンプモーター50は第1の軸を中心軸として任意の方向に回転可能とされている。
図4及び図5には本実施形態に係るローターユニット20を示す。ローターユニット20は、ポンプスリーブ70の内側で第1の軸に対して回転可能に支持されており、可撓性チューブに当接して締め付けると共にローターユニット20の回転に伴い可撓性チューブをしごいて血液を送出するローラー40を備える。ローラー40は、調整モーター32を含む調整ユニット30によって、径方向に第1の軸に接近したり、離間したりすることが可能となっている。
調整ユニット30は、調整ねじ31と、調整モーター32と、ローラーアーム33と、スライダー34A、34Bとを有している。調整モーター32は、給電・通信ユニットから供給される電力によって任意に正逆方向へ回転可能である。調整モーター32は、直径が異なる複数の歯車を介して調整ねじ31を第1の軸を中心として回転させ、ローラー40を第1の軸に接近させたり、離間させたりできる。調整ねじ31は、長手方向が第1の軸に沿うように配置され、両端部にはねじ切り部が設けられている。さらに、調整ねじ31の一方の端部に設けられたねじ切り部は、他方の端部とは逆方向にねじ切りされていると共に中央部が両端部よりも太い。
一対のスライダー34A、34Bは、調整ねじ31の両端側のねじ切り部と嵌合すると共に、調整ねじ31の回転に伴い、第1の軸に沿って先端側、基端側へ移動可能である。本実施形態における一対のスライダー34A、34Bは、調整ねじ31の中央部に向かって細くなる略テーパー形状である。
本実施形態においては、調整ねじ31の一方の端部におけるねじ切りが他方の端部とは逆方向にされているため、調整ねじ31の回転に伴ってスライダー34A、34Bを第1の軸に沿って互いに接近させたり、離間させたりすることができる。また、調整ねじ31の中央部がねじ切りされた両端部よりも太いため、スライダー34A、34Bが互いに一定の距離まで接近すると、調整ねじ31の中央部に当接する。そのため、スライダー34A、34Bが過度に接近して、ローラーアーム33との接触が解消されることを防ぐことができる。
ローラーアーム33は、ローラー40を支持すると共にスライダー34A、34Bと少なくとも一部が接触するようにされている。図3に示すように、本実施形態においてローラーアーム33は、スライダー34A、34Bのテーパー面と接触するように構成され、スライダー34A、34Bが互いに接近・離間すると、これに合わせてローラーアーム33は径方向に第1の軸に接近・離間する。
本実施形態においては、調整モーター32の回転は3つの歯車を介して調整ねじ31へ伝達されるように構成されている。第1の歯車35は調整モーター32に組み付けられたモーター側歯車であり、第2の歯車36と噛み合うようにされている。第2の歯車36は切替プレート91上に設けられ、第1の歯車35及び第3の歯車37と噛み合うようにされている。第3の歯車37は調整ねじ31の先端側に組み付けられたねじ側歯車であり、第2の歯車36と噛み合うようにされている。ここで、第1の歯車35は第2の歯車36よりも小径とされ、第2の歯車36は第3の歯車37よりも小径とされている。
本実施形態によれば、歯車の径と歯数を適宜調整することで、調整モーター32の回転数に対する調整ねじ31の回転数を任意に決定することが可能となる。すなわち、調整モーター32の回転数に対するローラーアーム40の接近・離間距離を任意に決定することが可能となる。加えて、調整ねじ31の回転数が調整モーター32の回転数に比して減少するため、調整ねじ31が回転する際には減少比に反比例したトルクを得ることができ、より精密かつ安定なオクルージョン調整が可能となる。
さらに、本実施形態においては、自動的なオクルージョン調整と、手動によるオクルージョン調整とが切替え可能である。ローターユニット20は、自動的なオクルージョン調整が可能な第1の状態と、手動によるオクルージョン調整が可能な第2の状態とを切替えるための切替ユニット90を有している。切替ユニット90は、切替プレート91と、切替レバー92とを含む。略円盤状の切替プレート91は、ローラーアーム33よりも先端側に設けられており、調整モーター32の軸及び調整ねじ31を挿通するための開口を有すると共に、外縁部には切替レバー92と係合する切り欠き93が設けられている。切替レバー92には切り欠き93と係合する係合部が設けられており、第1の状態では両者が係合して切替プレート91は周方向に回転不能となり、第2の状態においては両者の係合が外れ切替プレート91が周方向に回転可能となる。
図7に示すように、第1の状態においては、第1の歯車35、第2の歯車36及び第3の歯車37が互いに噛み合っており、調整モーター32の駆動力が第1〜第3の歯車を介して調整ねじへ供給され、自動的なオクルージョン調整が可能となる。切替レバー92を操作して切り欠き93との係合を解除し、切替プレート91を周方向に回転させると、第1の歯車35と第2の歯車36との噛み合いが解除され、図8に示す第2の状態となる。第2の状態において、第2の歯車36は、第3の歯車37及び調整つまみ42の内周面に設けられた内周歯車43と噛み合う。医療従事者は、調整つまみ42を任意の方向に回転操作することにより第2の歯車36及び第3の歯車37を介して調整ねじ31を回転させ、手動によるオクルージョン調整を行うことができる。
調整つまみ42は切替プレート91よりも先端側に設けられており、その内周面には、第2の状態において第2の歯車36と噛み合う内周歯車43が設けられている。このような態様の場合、第2の状態において調整つまみ42を回転させると第2の歯車36も回転する。これにより、第3の歯車37を介して調整ねじ31が回転するため、医療従事者は所望の量だけ調整つまみを回転させることで適切な圧閉度を得ることができる。
また、本実施形態において、ローラーポンプ10は、制御部80及び調整モーター32に電力を供給し、調整モーター32を制御する制御部80へ信号を送達する給電・通信ユニット60を有している。ここで、給電・通信ユニット60は給電コイル61と、受電コイル62と、信号通信63A、63Bとを有している。給電コイル61と受電コイル62との電磁誘導等を用いて、非接触で調整モーター32へ電力が供給できる。また、制御部80から発せられた信号は信号経路63A、63Bの間でやりとりされる。
制御部80は、圧力検出手段6によって測定された体外循環回路のチューブ内腔の圧力に基づいて調整ユニット30を制御する。制御部80には、圧力検出手段6により測定されたチューブ内腔の圧力が入力され、当該圧力が定められた範囲を逸脱した際には信号経路63A、63Bを介して調整ユニット30を制御することで、ローラー40を第1の軸に接近又は離間させる。これにより、ポンプモーター50を駆動させた状態を維持しつつ、チューブ内腔の圧力を定められた範囲内に維持できる。
制御部80による制御の具体例を挙げると、体外循環回路の閉塞等が原因でチューブ内腔の圧力、特にローラーポンプ10の下流側におけるチューブ内腔の圧力が、異常に上昇した場合、第1のステップとしてローラー40を第1の軸に接近させる。
体外循環回路が閉塞した状態でポンプモーター50を駆動し続けることにより、体外循環回路内の圧力、特にローラーポンプ10の下流側の圧力が異常に上昇すると、自動的にローラー40によるチューブの締め付けが緩んで圧閉が解放され、ローラーポンプ10は、それ以上血液が送出されない空回り状態となる。従って、ポンプモーター50を停止させることなく、体外循環回路内の異常な圧力上昇が抑制され、意図しないチューブと各デバイスとの接続解除や、人工肺、透析器等の中空糸破損を防ぐことが可能となる。
第1のステップの実行後、第1のステップのトリガとなった圧力よりも圧力が低下して正常値となった場合、第2のステップとしてローラー40を第1の軸から離間させる。このようにすれば、異常な圧力上昇が解消され、チューブ内腔の圧力が通常の範囲に戻った際に直ちに適切な圧閉度に再調整し、体外循環を再開することができる。
第1のステップの起動トリガとなるチューブ内腔の圧力上昇は、好ましくは100mmHg以上、より好ましくは200mmHg、さらに好ましくは300mmHg以上の任意の値とすることができ、例えば100mmHg、200mmHg又は300mmHgとすることができる。第2のステップの起動トリガは、第1のステップの起動トリガとなった圧力からの低下として、好ましくは50mmHg以上の任意の値とすることができ、例えば50mmHgとすることができる。なお、第1のステップの起動トリガとなる圧力上昇は、オクルージョン調整を行ってローターポンプ10の駆動を開始した際のチューブ内腔の圧力を基準とし、基準から上昇した値である。
第1のステップにおけるローラー40の移動量の具体的な数値は、種々のパラメータを考慮して決定することができるが、例えば、ローラー40とポンプスリーブ70との距離がオクルージョン調整された状態と比較して0.08mm以上拡がるように、ローラー40を第1の軸に接近させることができる。
制御部80に、適切な圧閉度を得るための各種パラメータを記録させることができる。このような態様とすれば、第2のステップにおけるローラー40の位置の再調整が容易となる。例えば、制御部80に記録された適切なオクルージョン調整時における調整モーター32の電流値、電気抵抗値等を参照し、対応する値になるまでローラー40を第1の軸に対してローターユニット20の径方向に離間させることにより、適切な圧閉度へ再調整することができる。
本実施形態のローラーポンプ10は、ローラー40の再調整の間もポンプモーター50が停止していないため、ポンプモーター50を再起動するタイムラグなしに、体外循環を再開することができる。さらに、一連のスキームを全て自動的に行うことができるため、医療従事者の負担を大幅に軽減できる。
なお、第1のステップの起動トリガとなるチューブ内腔の圧力、つまりローラー40によるチューブの締め付けを緩めて圧閉を解放する際のチューブ内腔の圧力の値は、体外循環技士等の医療従事者が適宜設定できるようにしてもよい。例えば、10mmHg〜500mmHgの範囲で圧閉を解放するタイミングを適宜設定することができる。但し、チューブ内腔の圧力が、ゲージ圧で300mmHg以上となると、チューブとデバイスとの接続解除や人工肺、透析器等の中空糸が破損するリスクが生じる。このため、少なくとも300mmHgとなった際にはチューブの締め付けを緩めて圧を解放する構成とすることが好ましい。また、第2のステップの起動トリガとなるチューブ内腔の圧力についても、体外循環技士等の医療従事者が適宜設定できるようにしてよい。
一方、人体から体外循環回路へ血液を吸引する脱血カニューレや、手術野から血液を吸引する吸引血用カニューレの脱血孔が吸引時の陰圧によって血管壁等の体内組織に張り付いた際には、体外循環回路内の圧力、特にローラーポンプ10の上流側の圧力が異常に低くなるおそれがある。この場合においても、制御部80によりローラー40の位置を調整することにより、ポンプモーター50を停止させることなくチューブ内腔の圧力を定められた範囲内に維持できる。
圧力が異常に低くなった場合においても、第1のステップとしてローラー40を第1の軸に接近させる。これにより、ローラーポンプ10は、それ以上血液が送出されない空回り状態となり、体外循環回路内の異常な圧力減少や陰圧発生に伴う溶血等を抑制することが可能となる。第1ステップを行った後、第1ステップの起動トリガとなった圧力よりも圧力が上昇し、正常値になると、第2ステップとしてローラー40を第1の軸から離間させる。これにより血液循環を直ちに再開することができる。
第1のステップの起動トリガとなるチューブ内腔の圧力低下は、例えば50mmHg以上の任意の値に設定することができ、第2のステップの起動トリガとなるチューブ内腔の圧力上昇は、例えば50mmHg以上の任意の値に設定することができる。なお、第1のステップの起動トリガとなる圧力低下は、オクルージョン調整を行ってローターポンプ10の駆動を開始した際のチューブ内腔の圧力を基準とし、基準から低下した値である。
また、ゲージ圧で−90mmHgを越える陰圧になると、赤血球の溶血が生じることが知られている。このため、溶血を避ける観点から、第1のステップの起動トリガをゲージ圧で、例えば−50mmHg、−70mmHg又は−90mmHgといった値に設定することもできる。
第1のステップにおけるローラー40の移動量は、例えばローラー40とポンプスリーブ70との距離がオクルージョン調整された状態と比較して0.02mm以上離間されるようにすることができる。
また、以下のように制御することも可能である。体外循環回路のチューブ内腔の圧力が50mmHg低下した場合に、第1のステップのサブステップ1として制御部80は、調整ねじ31に嵌合されたスライダー34A、34Bが互いに離間するよう調整モーター32を駆動させ、ローターユニット20の径方向においてローラー40を第1の軸に接近させる。この後、チューブ内腔の圧力がさらに20mmHg低下(初期値から70mmHg低下)した場合に、第1のステップのサブステップ2として、サブステップ1と同様の制御を行う。さらに、チューブ内腔の圧力がさらに20mmHg低下(初期値から90mmHg低下)した場合に、第1のステップのサブステップ3として、引き続きサブステップ1と同様の制御を行う。
サブステップ1におけるローラー40の移動量は、例えば、ローラー40とポンプスリーブ70との距離がオクルージョン調整された状態と比較して0.02mm以上離間されるようにすることができる。サブステップ2においては、ローラー40とポンプスリーブ70との距離がサブステップ1からさらに0.02mm以上離間されるように制御し、サブステップ3において、ローラー40とポンプスリーブ70との距離がサブステップ2からさらに0.02mm以上離間されるようにすることができる。
なお、トリガとなる圧力の変化値、ローラー40の移動量等は、必要に応じて適宜変更することができる。また、3つのサブステップではなく、2つのサブステップとしたり、4つ以上のサブステップとしたりすることもできる。
このような制御により、脱血カニューレの脱血孔が吸引時の陰圧によって血管壁等の体内組織に張り付いてローラーポンプ10の上流側の圧力が異常に低くなった等の場合に、自動的にローラー40によるチューブの締め付けが緩んで圧閉が解放されローラーポンプ10を空回り状態にできる。従って、体外循環回路内の異常な圧力減少や陰圧発生に伴う溶血等を抑制することが可能となる。
異常が解消された際におけるローター40の位置の調整は、例えば、制御部80に記録された適切なオクルージョン調整時における調整モーター32の電流値、電気抵抗値等を参照して行うことができる。このようにすれば、圧閉度の再調整をポンプモーター50を駆動した状態で自動的に行うことができ、圧閉度の再調整だけで体外循環を再開することができる。また、一連のスキームを全て自動的に行うことができ、医療従事者をポンプを再駆動させるための煩雑な作業から解放できる。
また、本実施形態のローラーポンプ10は、手術中の患者の末梢血管等の収縮や血液粘度の上昇に起因する後負荷によってチューブ内腔の圧力が上昇した場合にも対応することができる。あらかじめ、制御部80により調整ユニット30を制御することで、ポンプモーター50を駆動させたままチューブ内腔の圧力を定められた範囲かつ定められた送出量に維持しつつ、後負荷に応じた血液の送出量を得ることが可能となる。
具体的には、例えば、体外循環回路のチューブ内腔の圧力が150mmHg、送出量が4000L/minになるように、第1のステップとして制御部80はローラー40を第1の軸に接近させ、ポンプモーター50を駆動させる。より具体的には、ローラー40とポンプスリーブ70との距離がオクルージョン調整された状態と比較して0.01mm以上離間されるようにローラー40を第1の軸に対してローターユニット20の径方向に接近させるのが好ましい。この場合、オクルージョン調整された状態と比較してチューブ内腔の断面積が5%〜10%程度大きくなるため、ローラーポンプ10から送出される血液は定常流ではなく、後負荷の大きさに応じて適切な送出量となり、ポンプモーター50を調整することで送出量を調整することが可能である。後負荷の変動中にポンプモーター50を調整しなければ、後負荷が除去された場合に定められた送出量に戻る。但し、後負荷の変動中にポンプモーター50の調整をし、後負荷が除去された場合に再調整をすることも可能である。
本実施形態において、調整ユニット30の調整ねじ31の一方の端部に設けられたねじ切り部と他方の端部とが逆方向にねじ切りされている例を示したが、このような態様に限定されない。調整ユニット30は、ローターユニット20に設けられたローラー40を第1の軸に対して径方向に接近及び離間可能とするように構成されていればよく、例えばローラーアーム33に第1の軸に対して径方向に接近・離間する方向へ付勢されたバネ部材等が設けられた構成とすることができる。
また、一対のスライダー34A、34Bが調整ねじ31の中央部に向かって細くなる略テーパー形状である例を示したが、このような態様に限定されない。一対のスライダー34A、34Bは、調整ねじ31が回転すると、これに合わせてローラーアーム33は第1の軸に対して径方向に接近・離間するように構成されていればよい。
さらに、調整モーター32から調整ねじ31への駆動力の伝達を3つの歯車により行う例を示したが、このような態様に限定されない。調整モーター32から調整ねじ31への駆動力の伝達は、少なくとも2つの直径が異なる歯車を介して行うことができる。調整モーター32と連結した歯車及び調整ねじ31と連結した歯車の2つを用いることも、4つ以上の歯車を用いることもできる。
1:血液回路、10:ローラーポンプ、20:ローターユニット、30:調整ユニット、40:ローラー、50:ポンプモーター、60:給電・通信ユニット、70:ポンプスリーブ、80:制御部、90:切替ユニット

Claims (8)

  1. 血液回路を構成するチューブを取り付け可能なポンプスリーブと、
    前記ポンプスリーブの内側において第1の軸に対して回転可能に支持されたローターユニットと、
    前記第1の軸との距離を変更可能に前記ローターユニットに設けられたローラーと、
    前記ローターユニットを回転させるポンプモーターと、
    チューブ内腔の圧力が所定の範囲から逸脱した際に、前記ローラーの前記第1の軸との距離を調整する制御部とを備えている、ローラーポンプ。
  2. 前記制御部は、前記チューブ内腔の圧力が100mmHg以上上昇した際に、前記ローラーを前記第1の軸に接近させ、前記チューブ内腔の圧力が前記ローラーを前記第1の軸に接近させた際の圧力から50mmHg以上低下した際に、前記ローラーを前記第1の軸から離間させる、請求項1に記載のローラーポンプ。
  3. 前記制御部は、前記チューブ内腔の圧力が50mmHg以上低下した際に前記ローラーを前記第1の軸に接近させ、前記チューブ内腔の圧力が前記ローラーを前記第1の軸から離間させた際の圧力から50mmHg以上上昇した際に、前記ローラーを前記第1の軸から離間させる、請求項1に記載のローラーポンプ。
  4. 前記ローラーを前記第1の軸に接近又は離間させるための調整ねじと、前記調整ねじを回転させる調整モーターと、調整モーターから調整ねじへ力を伝達する直径が互いに異なる少なくとも2つの歯車とを有する調整ユニットをさらに備えている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のローラーポンプ。
  5. 前記少なくとも2つの歯車は、前記調整モーターに取り付けられたモーター側歯車と、前記調整ねじに取り付けられたねじ側歯車とを有し、
    前記モーター側歯車は、前記ねじ側歯車よりも直径が小さい、請求項4に記載のローラーポンプ。
  6. 血液回路を構成するチューブを取り付け可能なポンプスリーブと、前記ポンプスリーブの内側において第1の軸に対して回転可能に支持されたローターユニットと、前記第1の軸との距離を変更可能に前記ローターユニットに設けられたローラーと、前記ローターユニットを回転させるポンプモーターとを備えたローラーポンプにおいて、チューブ内腔の圧力が所定の範囲から逸脱した際に、前記ポンプモーターを停止させることなく、前記ローラーの位置を変更するステップを備えている、ローラーポンプの制御方法。
  7. 前記ローラーの位置を変更するステップは、
    前記チューブ内腔の圧力が100mmHg以上上昇した場合に前記ローラーを前記第1の軸に接近させる第1のステップと、
    前記第1のステップの後に前記チューブ内腔の圧力が前記第1のステップを行った際の圧力から50mmHg以上低下した場合に前記ローラーを前記第1の軸から離間させる第2のステップとを含む、請求項6に記載のローラーポンプの制御方法。
  8. 前記ローラーの位置を変更するステップは、
    前記チューブ内腔の圧力が50mmHg以上低下した場合に前記ローラーを前記第1の軸に接近させる第1のステップと、
    前記第1のステップの後に前記チューブ内腔の圧力が前記第1のステップを行った際の圧力から50mmHg以上上昇した場合に前記ローラーを前記第1の軸から離間させる第2のステップとを含む、請求項6に記載のローラーポンプの制御方法。
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