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JP2019142073A - 成形構造体およびその製造方法 - Google Patents

成形構造体およびその製造方法 Download PDF

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JP2019142073A JP2018027515A JP2018027515A JP2019142073A JP 2019142073 A JP2019142073 A JP 2019142073A JP 2018027515 A JP2018027515 A JP 2018027515A JP 2018027515 A JP2018027515 A JP 2018027515A JP 2019142073 A JP2019142073 A JP 2019142073A
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thermoplastic resin
preboard
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molding
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勇介 林
Yusuke Hayashi
勇介 林
雅人 大保
Masato Oyasu
雅人 大保
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Toyota Boshoku Corp
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Toyota Boshoku Corp
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Abstract

【課題】更なる剛性向上を実現可能な成形構造体およびその製造方法を提供する。【解決手段】少なくとも繊維と熱可塑性樹脂とにより構成される本体部材20と、少なくとも熱可塑性樹脂により構成され、本体部材20に接合した成形部材30と、を備える成形構造体10であって、本体部材20は、その表面20Aと裏面20Bとの間に、成形部材30から連なる樹脂層であって、熱可塑性樹脂が成形部材30から含浸して形成される含浸樹脂層33を有する構成とされている。【選択図】図7

Description

本発明は、成形構造体およびその製造方法に関する。
従来、成形構造体およびその製造方法として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の成形構造体およびその製造方法では、熱可塑性樹脂を含む基材と、基材上に溶融樹脂を射出することで、基材と接合された状態で成形された成形体と、を備えた成形構造体であって、基材において、成形体との接合部の周囲に位置する第1周囲部は、第1周囲部の周囲に位置する第2周囲部に比して密度が高い高密度部とされることが開示されている。そしてこのような構成により、基材上(接合部)に溶融樹脂を射出して成形体を成形する際には、第1周囲部に溶融樹脂が浸み込みにくくなり、第1周囲部の表面に溶融樹脂が染み出すことがない。従って、基材と成形体との接合面積が増加する事態を抑制でき、成形体の熱収縮に起因して基材における接合部との反対側に凹凸が生じる事態を抑制できる、と記載されている。
特許第5803572号公報
特許文献1に開示の構成では、下型において、中心に向かうにつれて突出量が大きくなる断面視略台形状をなした突出部を設け、これによりプレボードを圧縮することにより、高密度部を有する基材を成形していた。すると、高密度部は、板厚が薄く他の部分に比して剛性が低くなりがちであり、当該部分における剛性向上が望まれる。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、更なる剛性向上を実現可能な成形構造体およびその製造方法を提供することを目的の一つとする。
本発明は、少なくとも繊維と熱可塑性樹脂とにより構成される本体部材と、少なくとも熱可塑性樹脂により構成され、前記本体部材に接合した成形部材と、を備える成形構造体であって、前記本体部材は、その表面と裏面との間に、前記成形部材から連なる樹脂層であって、熱可塑性樹脂が前記成形部材から含浸して形成される含浸樹脂層を有することに特徴を有する。
このような成形構造体によると、本体部材の中に成形部材と連なる含浸樹脂層が形成されることで、本体部材と成形部材との接合力が補強され、両者の境界面で破断する等の不具合が生じにくいものとなる。
上記構成において、前記本体部材は、前記成形部材との接合部の周囲に位置する第1周囲部と、前記第1周囲部の周囲に位置し、前記第1周囲部よりも厚みが大きい第2周囲部と、を有し、前記含浸樹脂層は、前記接合部から前記第2周囲部まで拡がって形成されていることとすることができる。このような成形構造体によると、第1周囲部は第2周囲部よりも板厚が小さくされ、高密度化が図られる一方、接合部の周囲の第1周囲部は、板厚が小さい分、他の部分(第2周囲部)に比して剛性が低くなりがちである。しかしながら、上記構成では、本体部材において、板厚が小さい第1周囲部だけではなく、板厚が大きい第2周囲部まで拡がって形成される含浸樹脂層を有するため、含浸樹脂層によって本体部材の第1周囲部の剛性を高めることができ、板厚の小さい第1周囲部で破断することを抑制することができる。
また、本発明は、少なくとも繊維と熱可塑性樹脂とにより構成される本体部材と、少なくとも熱可塑性樹脂により構成され、前記本体部材に接合した成形部材と、を備える成形構造体の製造方法であって、前記本体部材を形成するためのプレボードを成形するプレボード成形工程と、前記プレボードを上型と下型とでプレスしつつ、前記成形部材を構成する熱可塑性樹脂を前記上型又は前記下型の少なくとも一方から射出して、前記プレボードに前記成形部材が接合された形の成形構造体を形成する本成形工程と、を備え、前記本成形工程は、熱可塑性樹脂の融点以上に前記プレボードを加熱する工程と、前記上型と前記下型との間に前記プレボードを配置し、前記上型および前記下型を閉じて所定時間保持することで、前記プレボードの表裏面を冷却固化する工程と、前記上型又は前記下型の少なくとも一方に設けられ、前記成形部材の形状に倣って連通した空間に熱可塑性樹脂を射出する工程と、を含むことに特徴を有する。
このような成形構造体の製造方法によると、熱可塑性樹脂の融点以上にプレボードを加熱することで、繊維によりプレボードの形状を保ちつつ熱可塑性樹脂が溶融する。そして、プレボードの表裏を冷却固化する工程において、上型および下型を閉じて所定時間保持することで、加熱されたプレボードの表面と裏面とが上型および下型によって冷却される。すると、表裏面に近い熱可塑性樹脂を固化させることができる。一方、表裏面近くの固化した熱可塑性樹脂の間に存在する熱可塑性樹脂は、溶融したままの状態となっている。このとき、第2成形空間に熱可塑性樹脂を射出すれば、熱可塑性樹脂は、第2成形空間を充満し、さらに第2成形空間から形成される成形部材とプレボードの界面からプレボードの内部へ浸透する。このとき、本体部材の表裏面は固化されているため、含浸する熱可塑性樹脂が本体部材の表裏面を突き抜けて漏れることがない。これを冷却すれば、本体部材の中に成形部材と連なる含浸樹脂層を形成することができる。
上記構成において、前記プレボードは、発泡材を含有することとすることができる。このような成形構造体の製造方法によると、プレボードを加熱して発泡材が膨張することで、通常よりも厚みのあるプレボードを作成することができる。すると、発泡材が混合されていないプレボードから成形した本体部材に比して、プレスする際、板厚に大きく差をつけた本体部材を作成することが可能となる。従って、軽量かつ剛性の強い成形構造体を提供することが可能となる。
本発明によれば、引張荷重に耐えて破断しにくい成形構造体およびその製造方法を提供することが可能となる。
本発明の実施形態1に係る成形構造体の正面透過図 成形構造体を示す拡大斜視図 本成形工程(プレス前)を示す断面図(図2のII−II線断面に対応) 本成形工程(プレス後)を示す断面図 熱可塑性樹脂を射出する工程を示す断面図 熱可塑性樹脂が第1周囲部まで含浸する態様を示す断面図 熱可塑性樹脂が第2周囲部まで含浸する態様を示す断面図
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図7によって説明する。なお、図3における左側を左方とするとともに右側を右方とし、上側を上方とするとともに下側を下方として説明する。
ドアトリム10(成形構造体)は、車両用ドアに取り付けられるもので、図1に示すように、トリムボード20(本体部材)にクリップ座などのブラケット30(成形部材)が接合されることにより形成されている。トリムボード20は平板状をなし、繊維にポリプロピレン(熱可塑性樹脂)を含浸させることで構成されている。トリムボード20は、マット状のプレボードP1(図3参照)をプレス成形することで圧縮(板厚を小さく)し、プレボードP1よりも密度が高い状態とすることにより形成される。なお、トリムボード20に用いられる繊維としては、例えば、木材等を解織して得た木質繊維やケナフ等の靭皮植物繊維などが用いられるが、繊維の種類はこれに限定されない。トリムボード20において、ポリプロピレンは繊維を繋ぐバインダーとしての役割を果たしている。またトリムボード20をポリエチレンテレフタレート等のポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂と繊維との混合物にて形成してもよい。
ブラケット30は、例えば、ポリプロピレンによって形成され、図1および図2に示すように、トリムボード20の裏面(車室外側の面)20Bから突出する形で成形されている。ブラケット30の先端面部31は、壁部32に対して折れ曲がっている。なお、先端面部31には、例えば、クリップ(図示せず)が取り付け可能な取付孔34が形成されており、このクリップを介してブラケット30ひいてはトリムボード20がドアインナパネル(図示せず)に対して取り付けられる構成となっている。ブラケット30を構成する熱可塑性樹脂は、ブラケット30の基端部39からトリムボード20の中に含浸し、これにより、トリムボード20の中にはブラケット30と連なった含浸樹脂層33が形成される(詳細は後述する)。
ブラケット30は、図3ないし図7に示すように、プレボードP1を成形型にセットした状態で、プレボードP1(トリムボード20)上に溶融樹脂を射出することで成形される(詳細は後述する)。つまり、ブラケット30は、成形と同時にプレボードP1への接合が行われるものとされる。
トリムボード20におけるブラケット30との接合部21は、その接合部21の周囲(後述する第1周囲部22)よりも密度(本実施形態では、単位体積当たりの熱可塑性樹脂及び繊維の重さ)が低い低密度部とされる。これは、後述する成形装置40によってプレボードP1をプレス成形する際に、接合部21は、上型42及び下型41の型閉じによって圧縮されない(又は圧縮の度合が小さい)部分となるためである。
この低密度部は、接合部21からトリムボード20の表面20Aに至るまで(言い換えると、板厚方向のほぼ全長に亘って)形成されている。そして、トリムボード20において、接合部21の周囲に位置する第1周囲部22の板厚は、第1周囲部22の周囲に位置する第2周囲部23の板厚よりも小さいものとされる。第1周囲部22は、接合部21を取り囲む形で形成され、第2周囲部23は、第1周囲部22を取り囲む形で形成されている。また、第2周囲部23は第1周囲部22に対して接合部21とは反対側に配される箇所と言うこともできる。
図3に示すように、トリムボード20を形成する前のプレボードP1は、その板厚及び密度が、例えば、その全面に亘って一様なものとされる。そして、図4に示すように、このプレボードP1を、下型41と、突出部50を有する上型42とでプレス成形することでトリムボード20が成形される。このため、第1周囲部22は第2周囲部23よりも凹み量が大きい部分とされる。
また、トリムボード20の板厚は、第2周囲部23から接合部21に向かうにつれて次第に小さくなっている。より具体的には、トリムボード20における第1周囲部22の裏面20B(ブラケット30の成形面)は傾斜面20B1とされる。このため、トリムボード20の密度は、第1周囲部22において、第2周囲部23から接合部21に向かうにつれて次第に(例えば線形的に)高くなっている。また、トリムボード20における表面20A(ブラケット30の成形面とは反対側の面)は、例えば、平面状をなし、意匠面側の面とされる。
トリムボード20は、図2、図6及び図7に示すように、その表面(表面から所定の厚み分を構成する表面層若しくは表面部)20Aと裏面(裏面から所定の厚み分を構成する裏面層若しくは裏面部)20Bとの間に、ブラケット30から連なる樹脂層であって、熱可塑性樹脂がブラケット30から含浸し、接合部21から第1周囲部22まで、もしくは、接合部21から第2周囲部23まで拡がって形成された含浸樹脂層33を有する。
次に、ドアトリム10を製造する成形装置40について説明する。本実施形態における成形装置40は、図3ないし図7に示すように、射出成形装置とされ、互いに対向配置された上型42と下型41とからなる成形型と、射出装置45とを備えている。射出装置45は、例えば、スクリュウタイプのものとされ、本実施形態では上型42に設けられている(他の実施形態として、下型41に射出装置45が設けられていてもよい)。上型42の内部には、溶融樹脂を通過させるゲート48が配索されている。上型42には、ブラケット30の形状に倣って連通した空間の第2成形空間S2(キャビティ)が形成され、ゲート48は第2成形空間S2の上側(ブラケット30の先端面部31に対応する位置)に連通されている。これにより、ゲート48を通じて射出装置45から第2成形空間S2内に溶融樹脂を射出可能な構成となっている。
上型42は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダなど)によって、下型41に対して移動が可能な可動型とされる。上型42を下型41に対して接近離間させることで成形型の型閉じ及び型開きが可能な構成となっている。以下の説明では、図3に示す上型42及び下型41(成形型)が型開きされた状態を開状態、図4ないし図7に示す上型42及び下型41が型閉じされた状態を閉状態と呼ぶものとする。
開状態において上型42と下型41との間には、図3に示すように、上型42における下型41との対向面42Aと、下型41における上型42との対向面41Aと、に倣ってトリムボード20を成形するための空間が形成される構成となっている。これにより、上型42及び下型41で、プレボードP1をプレスすると、図4に示すように、プレボードP1が各対向面41A、42Aの形状に対応する形で圧縮され、その結果、トリムボード20が成形される。また、上述した第2成形空間S2は、開口部49を介して第1成形空間S1と連通されており、その連通部分が、トリムボード20における接合部21に対応している。
上型42における下型41との対向面42Aには、下型41に向かって突出する突出部50が形成されている。この突出部50は、トリムボード20における第1周囲部22(第2周囲部23よりも板厚が小さく、密度が高い箇所)を成形するためのもので、その中心に向かうにつれて突出量が大きくなる形状をなしている。突出部50の先端において、第1成形空間S1と第2成形空間S2とが開口部49を介して連通される構成となっている。
また、上型42の一部は、上型42の本体部47(上型42におけるスライド型43以外の部分)に対してスライド移動可能なスライド型43とされる。スライド型43が図示しない駆動装置によって、スライド移動することで、ブラケット30においてアンダーカット部となる先端面部31が存在しつつも、上型42の型抜きを行うことが可能となっている。また、スライド型43は、第2成形空間S2の一部及び上述した突出部50の一部を構成している。なお、スライド型43の構成は、図3に示すものに限定されず、適宜変更可能である。
次に、成形装置40によるドアトリム10の製造方法について、図3ないし図7の図面を参照しながら説明する。本実施形態におけるドアトリム10の製造方法は、大別すると、プレボードP1を成形するプレボード成形工程と、プレボードP1をプレスすると同時に熱可塑性樹脂を射出してドアトリム10を成形する本成形工程と、を備える。そして、本成形工程は、プレボードP1を加熱する工程と、プレボードP1の表裏面20A,20Bを冷却固化する工程と、熱可塑性樹脂を第2成形空間S2に射出する工程と、を含む。
<プレボード成形工程>
プレボード成形工程では、繊維とポリプロピレン(熱可塑性樹脂)と発泡材とが混合されたマット材を加熱してプレス成形し、これを所定長さ(例えば、成形後のトリムボード20の長さ寸法よりも長めの寸法)で切断することによりプレボードP1を成形する(図示せず)。加熱前のマット材は、繊維とポリプロピレンに加えて発泡材を含んでいるため、これを加熱すると、発泡材が膨張し、マット材の厚みが通常よりも大きくなる。
<本成形工程>
まず、図3に示すように、プレボード成形工程によって成形されたプレボードP1を再度熱可塑性樹脂が溶融軟化する程度に加熱する(熱可塑性樹脂の融点以上にプレボードを加熱する工程)。これにより、繊維によりプレボードP1の形状を保ちつつ熱可塑性樹脂が軟化(溶融)した状態となる。
続いて、熱可塑性樹脂が軟化した状態のプレボードP1を、上型42と下型41の間に配置する(もしくは、下型41に置くようにセットしてもよい)。その後、図4に示すように、上型42及び下型41を型閉じして所定時間保持する。これにより、成形型によってプレボードP1がプレス成形されトリムボード20が成形されるとともに、閉状態を所定時間保持することで、プレボードP1の表面20Aから所定厚み分の熱可塑性樹脂62、および裏面20Bから所定厚み分の熱可塑性樹脂61が、下型41および上型42にそれぞれ熱を奪われることで、冷却されて固化する(プレボードの表裏面を冷却固化する工程)。一方、固化した熱可塑性樹脂よりも内部の熱可塑性樹脂63は、上下の型42,41によっては熱が奪われておらず、軟化したままの状態である。
このプレス成形時において、プレボードP1のうち第2成形空間S2に対向する部分は、成形型によって圧縮されない(または圧縮量が他の部分より小さい)ため、開口部49に侵入して相対的に周囲よりも盛り上がった状態(厚さが大きい状態)となる。この盛り上がった箇所は、トリムボード20におけるブラケット30との接合部21となる。
また、本実施形態においては、上型42に突出部50が形成されている。このため、トリムボード20において突出部50に対向する箇所(すなわち、接合部21の周囲である第1周囲部22)は、突出部50の周囲に対向する箇所(第2周囲部23)に比して、その板厚が小さくなるようにプレス成形される。これにより、第1周囲部22の密度は、第2周囲部23の密度より高くなる。つまり、第1周囲部22が高密度部となる。また、接合部21の密度は、例えば、第2周囲部23よりも低いものとされる。
また、突出部50は、その中心に向かうにつれて突出量が大きくなる形状をなしているため、トリムボード20の板厚は、第1周囲部22において、第2周囲部23から接合部21に向かうにつれて次第に小さくなる形(徐変する形)で成形され、裏面20Bにおいて傾斜した面の傾斜面20B1を形成する。
次に、図5に示すように、上型42と下型41とによってトリムボード20(プレボードP1)をプレスしつつ、溶融した熱可塑性樹脂を上型42に設けられた射出装置45によりゲート48を介して第2成形空間S2内へ射出する(熱可塑性樹脂を射出する工程)。射出された溶融樹脂は、第2成形空間S2を充満してブラケット30を形成するとともに、接合部21周辺の軟化した熱可塑性樹脂を下方へ押し込みつつ、さらにトリムボード20の内部へと浸透する(当然、内部の密度は上昇する)。なお、射出装置45から射出される熱可塑性樹脂と、トリムボード20に含まれる熱可塑性樹脂は、同一のものでも異なるものでもよく、加熱したときにお互いに混ざり合う程度のものであればよい。
トリムボード20の表裏面20A,20Bは、冷却固化されているので、トリムボード20の内部に浸透した熱可塑性樹脂は、トリムボード20の表裏面20A,20Bを突き抜けて漏れだすことはない。すなわち、冷却固化されている表裏面の間の軟化部分において熱可塑性樹脂が含浸する。すると、トリムボード20の内部に浸透した熱可塑性樹脂は、上下方向の移動は規制されるものの、軟化した熱可塑性樹脂が広がる左右前後方向に浸透して拡がっていく(含浸していく)。これにより、トリムボード20は、トリムボード20の表面20Aと裏面20Bとの間に、ブラケット30から連なる樹脂層であって、熱可塑性樹脂がブラケット30から含浸して形成される層(含浸樹脂層)33を形成する。図6では、含浸樹脂層33が、接合部21から第1周囲部22まで拡がって形成されている態様を示し、図7では、含浸樹脂層33が、接合部21から第2周囲部23まで拡がって形成されている態様を示している。これらは、射出装置45から射出する熱可塑性樹脂の量や速さによって調整することができる。
トリムボード20の内部に浸透し、含浸樹脂層33を形成した熱可塑性樹脂は、トリムボード20内部の軟化した熱可塑性樹脂と混ざり合う(混融される)。こうして、第2成形空間S2内に熱可塑性樹脂を充填させ、熱可塑性樹脂を冷却することで、ブラケット30がトリムボード20と接合された状態で成形される。この後、両型41,42の型開き、およびスライド型43の移動を行うことにより、図1および図2に示すようなブラケット30が一体的に接合された状態で成形されたトリムボード20を脱型することができ、ドアトリム10の製造が完了する。
続いて、本実施形態の効果について説明する。本発明は、少なくとも繊維と熱可塑性樹脂とにより構成される本体部材20と、少なくとも熱可塑性樹脂により構成され、本体部材20に接合した成形部材30と、を備える成形構造体10であって、本体部材20は、その表面20Aと裏面20Bとの間に、成形部材30から連なる樹脂層であって、熱可塑性樹脂が成形部材30から含浸して形成される含浸樹脂層33を有する構成とされている。このような成形構造体10によると、本体部材20の中に成形部材30と連なる含浸樹脂層33が形成されることで、本体部材20と成形部材30との接合力が補強され、両者の境界面で破断する等の不具合が生じにくいものとなる。
上記構成において、本体部材20は、成形部材30との接合部21の周囲に位置する第1周囲部22と、第1周囲部22の周囲に位置し、第1周囲部22よりも厚みが大きい第2周囲部23と、を有し、含浸樹脂層33は、接合部21から第2周囲部23まで拡がって形成されていることとすることができる。このような成形構造体10によると、第1周囲部22は第2周囲部23よりも板厚が小さくされ、高密度化が図られる一方、接合部21の周囲の第1周囲部22は、板厚が小さい分、他の部分(第2周囲部23)に比して剛性が低くなりがちである。しかしながら、上記構成では、本体部材20において、板厚が小さい第1周囲部22だけではなく、板厚が大きい第2周囲部23まで拡がって形成される含浸樹脂層33を有するため、含浸樹脂層33によって本体部材20の第1周囲部22の剛性を高めることができ、板厚の小さい第1周囲部22で破断することを抑制することができる。
また、本発明は、少なくとも繊維と熱可塑性樹脂とにより構成される本体部材20と、少なくとも熱可塑性樹脂により構成され、本体部材20に接合した成形部材30と、を備える成形構造体10の製造方法であって、本体部材20を形成するためのプレボードP1を成形するプレボードP1成形工程と、プレボードP1を上型42と下型41とでプレスしつつ、成形部材30を構成する熱可塑性樹脂を上型42又は下型41の少なくとも一方から射出して、プレボードP1に成形部材30が接合された形の成形構造体10を形成する本成形工程と、を備え、本成形工程は、熱可塑性樹脂の融点以上にプレボードP1を加熱する工程と、上型42と下型41との間にプレボードP1を配置し、上型42および下型41を閉じて所定時間保持することで、プレボードP1の表裏面20A,20Bを冷却固化する工程と、上型42又は下型41の少なくとも一方に設けられ、成形部材30の形状に倣って連通した空間(第2成形空間S2)に熱可塑性樹脂を射出する工程と、を含むことに特徴を有する。このような成形構造体10の製造方法によると、熱可塑性樹脂の融点以上にプレボードP1を加熱することで、繊維によりプレボードP1の形状を保ちつつ熱可塑性樹脂が溶融する。そして、プレボードP1の表裏面20A,20Bを冷却固化する工程において、上型42および下型41を閉じて所定時間保持することで、加熱されたプレボードP1の表面20Aと裏面20Bとが上型42および下型41によって冷却される。すると、表裏面20A,20Bに近い熱可塑性樹脂を固化させることができる。一方、表裏面20A,20B近くの固化した熱可塑性樹脂の間に存在する熱可塑性樹脂は、溶融したままの状態となっている。このとき、第2成形空間S2に熱可塑性樹脂を射出すれば、熱可塑性樹脂は、第2成形空間S2を充満し、さらに第2成形空間S2から形成される成形部材30とプレボードP1の界面からプレボードP1の内部へ浸透する。このとき、本体部材20の表裏面20A,20Bは固化されているため、含浸する熱可塑性樹脂が本体部材20の表裏面20A,20Bを突き抜けて漏れることがない。これを冷却すれば、本体部材20の中に成形部材30と連なる含浸樹脂層33を形成することができる。
上記構成において、プレボードP1は、発泡材を含有することとすることができる。このような成形構造体10の製造方法によると、プレボードP1を加熱して発泡材が膨張することで、通常よりも厚みのあるプレボードP1を作成することができる。すると、発泡材が混合されていないプレボードから成形した本体部材20に比して、プレスする際、板厚に大きく差をつけた本体部材20を作成することが可能となる。従って、軽量かつ剛性の強い成形構造体10を提供することが可能となる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態以外にも、射出装置とゲートを設ける位置は適宜変更可能である。本実施形態では、上型であってブラケットの先端面部に対応する位置にゲートを配索し、これにつなげるようにして射出装置を配したが、これに限られない。例えば、開口部付近にゲートを配索し、これにつなげるようにして射出装置を配してもよい。このような構成によると、射出された熱可塑性樹脂が第2成形空間を満たす前、すなわち、加熱されたプレボードが内部まで完全に冷める前までに、射出された熱可塑性樹脂をトリムボードの内部へ含浸させることができる。
(2)上記実施形態において、第1周囲部は、接合部の全周を取り囲んでいない構成であってもよい。また、第2周囲部は、第1周囲部の全周を取り囲んでいない構成であってもよい。
(3)上記実施形態では、成形構造体としてドアトリムを、本体部材としてトリムボードを、成形部材としてブラケットを例示したが、これに限定されない。成形構造体としては、シートのバックボードなどの熱可塑性樹脂を含む本体部材に対して溶融樹脂を射出成形することで成形部材を成形すると同時に、本体部材と成形部材を接合させることで成形されるものであってもよい。
(4)上記各実施形態で例示した成形構造体は、車両用に提供されるもの限られず、種々の乗物において提供されるものであってもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記成形構造体を適用することができる。
10…ドアトリム(成形構造体)、20…トリムボード(本体部材)、20A…表面、20B1…傾斜面、20B…裏面、21…接合部、22…第1周囲部、23…第2周囲部、30…ブラケット(成形部材)、31…先端面部、32…基端壁部、33…含浸樹脂層、34…取付孔、39…基端部、40…成形装置、41…下型、41A…対向面、42…上型、42A…対向面、43…スライド型、45…射出装置、47…本体部、48…ゲート、49…開口部、50…突出部、P1…プレボード、S1…第1成形空間、S2…第2成形空間

Claims (4)

  1. 少なくとも繊維と熱可塑性樹脂とにより構成される本体部材と、
    少なくとも熱可塑性樹脂により構成され、前記本体部材に接合した成形部材と、を備える成形構造体であって、
    前記本体部材は、その表面と裏面との間に、前記成形部材から連なる樹脂層であって、熱可塑性樹脂が前記成形部材から含浸して形成される含浸樹脂層を有することを特徴とする成形構造体。
  2. 前記本体部材は、
    前記成形部材との接合部の周囲に位置する第1周囲部と、
    前記第1周囲部の周囲に位置し、前記第1周囲部よりも厚みが大きい第2周囲部と、を有し、
    前記含浸樹脂層は、前記接合部から前記第2周囲部まで拡がって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成形構造体。
  3. 少なくとも繊維と熱可塑性樹脂とにより構成される本体部材と、
    少なくとも熱可塑性樹脂により構成され、前記本体部材に接合した成形部材と、を備える成形構造体の製造方法であって、
    前記本体部材を形成するためのプレボードを成形するプレボード成形工程と、
    前記プレボードを上型と下型とでプレスしつつ、前記成形部材を構成する熱可塑性樹脂を前記上型又は前記下型の少なくとも一方から射出して、前記プレボードに前記成形部材が接合された形の成形構造体を形成する本成形工程と、を備え、
    前記本成形工程は、
    熱可塑性樹脂の融点以上に前記プレボードを加熱する工程と、
    前記上型と前記下型との間に前記プレボードを配置し、前記上型および前記下型を閉じて所定時間保持することで、前記プレボードの表裏面を冷却固化する工程と、
    前記上型又は前記下型の少なくとも一方に設けられ、前記成形部材の形状に倣って連通した空間に熱可塑性樹脂を射出する工程と、を含むことを特徴とする成形構造体の製造方法。
  4. 前記プレボードは、発泡材を含有することを特徴とする請求項3に記載の成形構造体の製造方法。
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