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JP2019008980A - 非水電解質二次電池用炭素質材料、非水電解質二次電池用負極材および非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用炭素質材料、非水電解質二次電池用負極材および非水電解質二次電池 Download PDF

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JP2019008980A
JP2019008980A JP2017123465A JP2017123465A JP2019008980A JP 2019008980 A JP2019008980 A JP 2019008980A JP 2017123465 A JP2017123465 A JP 2017123465A JP 2017123465 A JP2017123465 A JP 2017123465A JP 2019008980 A JP2019008980 A JP 2019008980A
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carbonaceous material
electrolyte secondary
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祐輝 長谷中
Yuki Hasenaka
祐輝 長谷中
隆文 伊澤
Takafumi Izawa
隆文 伊澤
奥野 壮敏
Taketoshi Okuno
壮敏 奥野
岩崎 秀治
Hideji Iwasaki
秀治 岩崎
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

【課題】高い出力特性および高いサイクル安定性をもたらす非水電解質二次電池用炭素質材料を提供すること。【解決手段】植物由来の非水電解質二次電池用炭素質材料であって、窒素元素含有量が当該炭素質材料の総質量に基づいて0.4質量%より大きく5質量%以下であり、かつラマンスペクトルにおける炭素のDバンドの半値幅が175cm−1〜240cm−1である、炭素質材料。【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)の負極材として適した炭素質材料、非水電解質二次電池用負極材および非水電解質二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、携帯電話またはノートパソコンのような小型携帯機器に広く用いられている。リチウムイオン二次電池用負極材としては、例えば、黒鉛の理論容量372mAh/gを超える量のリチウムのドープ(充電)および脱ドープ(放電)が可能な難黒鉛化炭素質材料が開発され、使用されている。
難黒鉛化炭素質材料は、例えば石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂または植物を炭素源として得ることができる。これらの炭素源の中でも、植物は栽培することによって持続して安定的に供給可能な原料であり、安価に入手できるため注目されている(例えば特許文献1)。
特許文献2には、非水電解質二次電池の高容量化および耐酸化劣化性向上を目的として、窒素元素含有量および酸素元素含有量の低減処理、並びに細孔調整処理を施して得た、非水電解質二次電池用炭素質材料が開示されている。当該文献においては、炭素質材料が含む窒素元素含有量が多すぎると、リチウムイオンの利用効率を低下させるだけでなく、保存中に空気中の酸素と反応することがあるため、窒素元素含有量は少ないほどよいとされている。
国際公開第2013/118757号 特開2016−152225号公報
近年、リチウムイオン二次電池の車載用途などへの適用が検討され、リチウムイオン二次電池のさらなる高容量化が求められている。
リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池には、用途によっては、高い放電容量だけでなく、高い出力特性が求められる。また、出力特性およびサイクル安定性のさらなる向上が求められる。
従って、本発明は、高い出力特性および高いサイクル安定性をもたらす非水電解質二次電池用炭素質材料を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、意外なことに、先行技術では少ないほどよいとされていた窒素元素含有量が特定の量であり、ラマンスペクトルにおける炭素のDバンドの半値幅が特定の値である、植物由来の炭素質材料により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕植物由来の非水電解質二次電池用炭素質材料であって、窒素元素含有量が当該炭素質材料の総質量に基づいて0.4質量%より大きく5質量%以下であり、かつラマンスペクトルにおける炭素のDバンドの半値幅が175cm−1〜240cm−1である、炭素質材料。
〔2〕窒素元素含有量に対する酸素元素含有量の質量比が1.0以下である、上記〔1〕に記載の炭素質材料。
〔3〕電気化学的にリチウムをドープし、−90℃および10kHzのマジック角回転(MAS)条件下にてリチウム原子核の固体NMRスペクトルを測定したときに、基準物質であるLiCoOの共鳴ピークに対して15ppm低磁場シフトした位置の強度を、100ppm低磁場シフトした位置の強度で除した強度比が0.8以上である、上記〔1〕または〔2〕に記載の炭素質材料。
〔4〕ヘリウム真密度が1.8g/cm以上である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔5〕比表面積が1m/g〜30m/gである、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔6〕炭素質材料は椰子殻に由来する、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の炭素質材料。
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の炭素質材料を含んでなる非水電解質二次電池用負極材。
〔8〕上記〔7〕に記載の非水電解質二次電池用負極材を含んでなる非水電解質二次電池。
窒素元素含有量が特定の量であり、ラマンスペクトルにおける炭素のDバンドの半値幅が特定の値である、植物由来の本発明の非水電解質二次電池用炭素質材料を負極材に用いた非水電解質二次電池は、高い出力特性および高いサイクル安定性を示す。
以下は本発明の実施形態を例示する説明であって、本発明を以下の実施形態に限定することは意図されていない。なお、本明細書において、常温とは25℃を指す。
[非水電解質二次電池用炭素質材料]
本実施形態の非水電解質二次電池用炭素質材料は、植物原料に由来する。
上記炭素質材料は、後述するように、例えば、植物原料を、仮焼成して酸処理した後または酸処理して仮焼成した後、得られた植物由来のチャーに窒素を導入して予備焼成および本焼成することにより得られる。
本実施形態において、植物原料とは、炭化を行う前の植物由来物質を意味する。また、植物原料を炭化させた炭素材を、植物由来のチャーと称することがある。なお、チャーとは、一般的には、石炭を加熱した際に得られる溶融軟化しない炭素分に富む粉末状の固体を示すが、ここでは有機物を加熱して得られる溶融軟化しない炭素分に富む粉末状の固体も示す。
植物原料として用いることのできる植物は、特に限定されない。例えば、椰子殻、珈琲豆、茶葉、サトウキビ、果実(例えば、みかんまたはバナナ)、藁、籾殻、広葉樹、針葉樹および竹を例示できる。この例示は、本来の用途に供した後の廃棄物(例えば、使用済みの茶葉)、および植物原料の一部(例えば、バナナまたはみかんの皮)を包含する。これらの植物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの植物の中でも、大量入手が容易な椰子殻が好ましい。
椰子殻は、特に限定されるものではなく、例えば、パームヤシ(アブラヤシ)、ココヤシ、サラクまたはオオミヤシの椰子殻を例示できる。これらの椰子殻は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。食品、洗剤原料またはバイオディーゼル油原料などとして利用され、大量に発生するバイオマス廃棄物である、ココヤシおよびパームヤシの椰子殻が特に好ましい。
植物原料からチャーを製造する方法は特に限定されるものではないが、例えば植物原料を、300℃以上の不活性ガス雰囲気中で熱処理(以下、「仮焼成」と称することがある)することによって製造することができる。
また、チャー(例えば、椰子殻チャー)の形態で入手することも可能である。
〔酸処理〕
一般に、植物原料および植物由来のチャーは、アルカリ金属元素(例えば、カリウムおよびナトリウム)、アルカリ土類金属元素(例えば、マグネシウムおよびカルシウム)、遷移金属元素(例えば、鉄および銅)並びに非金属元素(例えばリン)などを多く含んでいる。このような金属元素および非金属元素を多く含んだ炭素質材料を負極材として用いると、非水電解質二次電池の電気化学的な特性および安全性に好ましくない影響を与えることがある。
従って、本実施形態における炭素質材料の製造方法では、植物原料および植物由来のチャーに含まれているこのような灰分(アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素およびその他の元素類)を減少させるために、植物原料または植物由来のチャーを酸処理することが好ましい。ここで、酸処理により上記灰分を減少させることを、以下、脱灰とも称する。
酸処理の方法、即ち、脱灰の方法は、特に限定されない。例えば、塩酸または硫酸などの鉱酸、或いは酢酸またはギ酸などの有機酸などを含む酸性水を用いて灰分を抽出脱灰する方法(液相脱灰)、または塩化水素などのハロゲン化合物を含有した高温の気相に暴露させて脱灰する方法(気相脱灰)を用いることができる。
<液相脱灰>
液相脱灰としては、植物原料または植物由来のチャーを有機酸水溶液中に浸漬し、植物原料または植物由来のチャーから、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素および/または非金属元素を溶出させて除去することが好ましい。
これらの金属元素を含んだ植物原料を炭化すると、炭化時に、必要な炭素質が分解される場合がある。また、リンなどの非金属元素は酸化し易いため、炭化物の表面の酸化度が変化し、炭化物の性状が大きく変化するので、そのような非金属元素の存在は好ましくない。さらに、植物原料を炭化した後に液相脱灰を行うと、リン、カルシウムおよびマグネシウムについては十分に除去することができない場合がある。また、炭化物中の金属元素および/または非金属元素の含有量によって、液相脱灰実施時間や液相脱灰後の炭化物中の金属元素および/または非金属元素の残存量が大きく異なり得る。従って、植物原料中の金属元素および/または非金属元素の含有量を、炭化前に十分に除去しておくことが好ましい。即ち、液相脱灰では、炭化前の植物原料を使用することが好ましい。
植物原料の灰分を除去することにより、炭化時および/または焼成時に炭素質の分解が抑制され、より高密度な炭素質材料を得ることができる。本実施形態により調製した炭素質材料の表面官能基は少ないため、当該炭素質材料を用いて製造した非水電解質二次電池において、リチウムイオンのドープおよび脱ドープ時に起こる副反応が抑制され、その結果、高い充放電効率および良好なサイクル安定性が得られる。
液相脱灰において使用される有機酸は、リン、硫黄およびハロゲンなどの不純物源となる元素を含まないことが好ましい。有機酸がリン、硫黄およびハロゲンなどの元素を含まない場合、液相脱灰後の水洗を省略し、有機酸が残存する植物原料を炭化した場合であっても、炭素材として好適に用いることできる炭化物が得られるため有利である。また、使用後の有機酸の廃液処理を特別な装置を用いることなく比較的容易に行うことができるため有利である。
有機酸の例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、酒石酸およびクエン酸などの飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和カルボン酸、並びに例えば安息香酸、フタル酸およびナフトエン酸などの芳香族カルボン酸が挙げられる。入手可能性、酸性度による腐食、および人体への影響の観点から、酢酸、シュウ酸およびクエン酸が好ましい。
本実施形態では、溶出する金属化合物の溶解度、廃棄物の処理、および環境適合性などの観点から、有機酸は、水性溶液と混合して有機酸水溶液として用いることが好ましい。水性溶液としては、例えば、水、または水と水溶性有機溶媒との混合物などが挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロピレングリコールおよびエチレングリコールなどのアルコールが挙げられる。
有機酸水溶液中の酸の濃度は、特に限定されない。用いる酸の種類に応じて濃度を調節して用いることができる。本実施形態では、通常、有機酸水溶液の総質量に基づいて0.001質量%〜20質量%、より好ましくは0.01質量%〜18質量%、特に好ましくは0.02質量%〜15質量%の範囲の酸濃度の有機酸水溶液を用いる。酸濃度が上記範囲内であれば、適切な金属元素および/または非金属元素の溶出速度が得られやすいため実用的な時間で液相脱灰が行われやすい。また、植物原料における酸の残留量が少なくなりやすいので、その後の製品への影響も少なくなりやすい。
有機酸水溶液のpHは、好ましくは3.5以下、より好ましくは3以下である。有機酸水溶液のpHが上記の値以下である場合には、金属元素および/または非金属元素の有機酸水溶液への溶解速度が低下しにくく、金属元素および/または非金属元素の除去が効率的に行われやすい。
植物原料を浸漬する際の有機酸水溶液の温度は、特に限定されない。好ましくは45℃〜120℃、より好ましくは50℃〜110℃、特に好ましくは60℃〜100℃の範囲である。植物原料を浸漬する際の有機酸水溶液の温度が上記範囲内であれば、使用する酸の分解が抑制されやすく、実用的な時間での液相脱灰の実施が可能となる金属元素の溶出速度が得られやすいため好ましい。また、特殊な装置を用いずに液相脱灰を行うことができるため好ましい。
植物原料を有機酸水溶液に浸漬する時間は、用いる酸に応じて適宜調節することができる。本実施形態では、浸漬する時間は、経済性および脱灰効率の観点から、通常1〜100時間、好ましくは2〜80時間、より好ましくは2.5〜50時間の範囲である。
有機酸水溶液の質量に対する浸漬する植物原料または植物由来のチャーの質量の割合は、用いる有機酸水溶液の種類、濃度および温度などに応じて適宜調節することが可能であり、通常0.1質量%〜200質量%、好ましくは1質量%〜150質量%、より好ましくは1.5質量%〜120質量%の範囲である。上記範囲内であれば、有機酸水溶液に溶出した金属元素および/または非金属元素が有機酸水溶液から析出しにくく、植物原料または植物由来のチャーへの再付着が抑制されやすいため好ましい。また、上記範囲内であれば、容積効率が適切となりやすいため経済的観点から好ましい。
液相脱灰を行う雰囲気は、特に限定されず、浸漬に使用する方法に応じて異なっていてよい。本実施形態では、液相脱灰は、通常、大気雰囲気中で実施する。
液相脱灰は、1回〜6回行うことが好ましく、2回〜5回繰り返して行うことがより好ましい。
本実施形態では、液相脱灰後、必要に応じて洗浄工程および/または乾燥工程を行うことができる。
<気相脱灰>
気相脱灰としては、植物原料または植物由来のチャーを、ハロゲン化合物を含む気相中で熱処理することが好ましい。気相脱灰では、熱処理時に植物原料の急激な熱分解反応を伴うと、熱分解成分の発生により気相脱灰効率が低下するとともに、発生した熱分解成分により熱処理装置内が汚染され、安定運転に支障が生じることがある。これらの観点から、植物由来のチャーを気相脱灰することが好ましい。
気相脱灰で使用されるハロゲン化合物は特に限定されない。例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、臭化ヨウ素、フッ化塩素(ClF)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、塩化臭素(BrCl)およびそれらの混合物を使用することができる。熱分解によりこれらのハロゲン化合物を発生する化合物、またはそれらの混合物を用いることもできる。供給安定性および使用するハロゲン化合物の安定性の観点から、塩化水素を使用することが好ましい。
気相脱灰では、ハロゲン化合物と不活性ガスとを混合して使用してもよい。不活性ガスは、植物原料を構成する炭素成分と反応しないガスであれば特に限定されない。例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、またはそれらの混合ガスを使用することができる。供給安定性および経済性の観点から、窒素を使用することが好ましい。
気相脱灰において、ハロゲン化合物と不活性ガスとの混合比は、十分な脱灰が達成できる限り、特に限定されない。例えば、安全性、経済性、および炭素中への残留性の観点から、不活性ガスに対するハロゲン化合物の量は、好ましくは0.01〜10.0体積%、より好ましくは0.05〜8.0体積%、特に好ましくは0.1〜5.0体積%である。
気相脱灰の温度は、脱灰の対象である植物原料に応じて変えてよいが、所望の酸素元素含有量および比表面積を得る観点から、例えば500〜1200℃、好ましくは650〜1200℃、より好ましくは850〜1200℃で実施することができる。脱灰温度が上記範囲内であると、良好な脱灰効率が得られやすく、十分に脱灰されやすい。
気相脱灰の時間は、特に限定されない。反応設備の経済効率、および炭素分の構造保持性の観点から、例えば5〜300分であり、好ましくは10〜200分であり、より好ましくは20〜150分である。
気相脱灰の対象となる植物由来のチャーの粒子径は、特に限定されない。粒子径が小さすぎると、除去されたカリウムなどを含む気相と、植物由来のチャーとを分離することが困難になり得ることから、粒子径の平均値の下限は100μmが好ましく、300μmがより好ましく、500μmが特に好ましい。また、粒子径の平均値の上限は、混合ガス気流中での流動性の観点から、10000μmが好ましく、8000μmがより好ましく、5000μmが特に好ましい。ここで、粒子径の測定方法は、後述の実施例に記載する通りである。
気相脱灰に用いる装置は、植物由来のチャーとハロゲン化合物を含む気相とを混合しながら加熱できる装置であれば、特に限定されない。例えば、流動炉を用い、流動床などによる連続式またはバッチ式の層内流通方式を用いることができる。気相の供給量(流動量)も特に限定されない。混合ガス気流中での流動性の観点から、例えば植物由来のチャー1g当たり好ましくは1mL/分以上、より好ましくは5mL/分以上、特に好ましくは10mL/分以上の気相を供給する。
気相脱灰においては、ハロゲン化合物を含む不活性ガス雰囲気中での熱処理(以下において「ハロゲン熱処理」と称することがある)の後に、さらにハロゲン化合物非存在下での熱処理(以下において「気相脱酸処理」と称することがある)を行うことが好ましい。上記ハロゲン熱処理により、ハロゲンが植物由来のチャーに含まれるため、気相脱酸処理によりチャーに含まれているハロゲンを除去することが好ましい。具体的には、気相脱酸処理は、ハロゲン化合物を含まない不活性ガス雰囲気中で通常は500〜1200℃、好ましくは650〜1200℃、より好ましくは850〜1200℃で熱処理することによって行う。この熱処理の温度は、先行のハロゲン熱処理の温度と同じか、またはそれよりも高い温度で行うことが好ましい。例えば、ハロゲン熱処理後に、ハロゲン化合物の供給を遮断して熱処理を行うことにより、気相脱酸処理を行うことができる。また、気相脱酸処理の時間も特に限定されない。好ましくは5分〜300分であり、より好ましくは10分〜200分であり、特に好ましくは10分〜100分である。
本実施形態における酸処理は、植物原料または植物由来のチャーに含まれているカリウムおよび鉄などの灰分を除去(脱灰)するものである。酸処理後に得られる植物原料または植物由来のチャーに含まれるカリウム元素含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.03質量%以下に低減される。とりわけ好ましくは、カリウム元素含有量は、炭素質材料が実質的に含有しない程度まで低減される。また、酸処理後に得られる植物原料または植物由来のチャーに含まれる鉄元素含有量は、好ましくは0.02質量%以下、より好ましくは0.015質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下に低減される。とりわけ好ましくは、鉄元素含有量は、炭素質材料が実質的に含有しない程度まで低減される。ここで、実質的に含有しないとは、蛍光X線分析(例えば島津製作所製「LAB CENTER XRF-1700」を用いた分析)の検出限界値以下であることを意味する。カリウム元素含有量および鉄元素含有量が上記の値以下であると、先に記載した通り、非水電解質二次電池の十分な電気化学的な特性(例えば、十分な脱ドープ容量および非脱ドープ容量)が得られやすく、非水電解質二次電池の安全性の問題が回避されやすい。
本実施形態において、酸処理は少なくとも1回行う。同じまたは異なる酸を用いて2回以上酸処理を行ってもよい。
気相脱灰により、植物原料または植物由来のチャーにハロゲン化合物の付加反応および脱離反応が繰り返される。その際、炭素−炭素結合の形成が促進され、炭素質材料の結晶性をより高めることができる。本実施形態により、炭素質材料のエッジや表面官能基が低減されるため、当該炭素質材料を用いて製造した非水電解質二次電池において、電池のサイクル特性を向上させることができる。
炭化前の植物原料に対して酸処理を施した場合は、次いで、炭化処理を行う。炭化処理の方法は、先に記載したように、特に限定されない。例えば、酸処理された炭化前の植物原料を、300℃以上の不活性ガス雰囲気中で熱処理(仮焼成)することによって行うことができる。
植物原料または植物由来のチャーは、必要に応じて粉砕および分級され、その平均粒子径が調整される。粉砕工程および分級工程は、酸処理の後、実施することが好ましい。
〔粉砕〕
粉砕工程では、植物由来のチャーを、後述する焼成工程の後の平均粒子径が例えば2〜30μmの範囲になるように粉砕することが、電極調製時の塗工性の観点から好ましい。即ち、本実施形態の炭素質材料の平均粒子径(Dv50)を、例えば2〜30μmの範囲になるように調整する。
本実施形態の炭素質材料の平均粒子径(Dv50)は、例えば2μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上である。炭素質材料の平均粒子径が前記下限値以上であると、微粉が増加して比表面積が増加し、電解液との反応性が高くなって充電しても放電しない容量である不可逆容量が増加し、正極の容量が無駄になる割合が増加する傾向を抑制しやすい。また、得られた炭素質材料を用いて負極材を製造した際、炭素質材料の間に形成される空隙が十分確保されやすく、電解液中のリチウムイオンの良好な移動が確保されやすい。
一方、炭素質材料の平均粒子径は例えば30μm以下、好ましくは19μm以下、より好ましくは17μm以下、より好ましくは16μm以下、特に好ましくは15μm以下である。平均粒子径が前記上限値以下であると、粒子内でのリチウムイオンの拡散自由行程が少なくなりやすく、急速な充放電が可能となりやすいため好ましい。さらに、リチウムイオン二次電池では、入出力特性の向上には電極面積を大きくすることが重要であり、そのため電極調製時に集電板への活物質(炭素質材料)の塗工厚みを薄くする必要がある。塗工厚みを薄くするには、活物質の粒子径を小さくする必要がある。このような観点からも、平均粒子径が前記上限値以下であることが好ましい。
植物由来のチャーは、後述する焼成工程を実施しても溶解しないため、粉砕工程の順番は特に限定されない。酸処理におけるチャーの回収率(収率)を考慮すると、酸処理後に粉砕することが好ましく、炭素質材料の比表面積を十分に低減させる観点からは、焼成工程の前に粉砕することが好ましい。しかしながら、酸処理前または焼成工程後に粉砕工程を実施することも排除されない。
粉砕工程に用いる粉砕機は特に限定されない。例えば、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、ビーズミルまたはロッドミルなどを使用することができる。微粉の発生が少ない観点からは、分級機能を備えたジェットミルが好ましい。ボールミル、ハンマーミルまたはロッドミルなどを用いる場合は、粉砕工程後に分級を行うことで微粉を取り除くことができる。
〔分級〕
分級工程によって、炭素質材料の平均粒子径をより正確に調整することが可能となる。例えば、粒子径が1μm以下の粒子を除くことが可能となる。
分級によって粒子径1μm以下の粒子を除く場合、本実施形態の炭素質材料において、粒子径1μm以下の粒子を含有量が15体積%以下となるようにすることが好ましい。粒子径1μm以下の粒子の除去は、粉砕後であれば特に限定されないが、分級と同時に行うことが好ましい。本実施形態の炭素質材料において、粒子径1μm以下の粒子の含有量は、比表面積を低下させ、不可逆容量を低下させやすい観点から、10体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましい。
分級方法は、特に限定されない。例えば、篩を用いた分級、湿式分級および乾式分級を挙げることができる。湿式分級機としては、例えば、重力分級、慣性分級、水力分級または遠心分級などの原理を利用した分級機を挙げることができる。乾式分級機としては、沈降分級、機械的分級または遠心分級などの原理を利用した分級機を挙げることができる。
粉砕工程と分級工程は、1つの装置を用いて実施することもできる。例えば、乾式の分級機能を備えたジェットミルを用いて、粉砕工程および分級工程を実施することができる。また、粉砕機と分級機とが独立した装置を用いることもできる。この場合、粉砕と分級とを連続して行うこともできるが、粉砕と分級とを不連続に行うこともできる。
〔焼成〕
場合により粉砕および分級されていてよい、酸処理および炭化処理を施した植物由来のチャーを焼成することにより、本実施形態の炭素質材料を製造することができる。焼成工程は、室温から所定の焼成温度まで昇温した後に、焼成温度で焼成を行う工程である。上記チャーを(a)例えば1100〜1400℃で焼成してもよいし(本焼成)、または上記チャーを(b)例えば350〜1100℃未満で焼成(予備焼成)した後、さらに1100〜1400℃で焼成(本焼成)してもよい。以下に、予備焼成および本焼成の手順の一例を順に説明する。
<予備焼成>
本実施形態の炭素質材料の製造方法における予備焼成工程は、例えば酸処理および炭化処理を施した植物由来のチャーを例えば350〜1100℃未満の温度で焼成することによって行うことができる。予備焼成により揮発分(例えば、CO、CO、CHおよびHなど)並びにタール分を除去することによって、本焼成雰囲気中におけるそれらの発生を低減させ、焼成器の負担を軽減することができる。予備焼成温度は、通常は350〜1100℃未満、好ましくは400〜1100℃未満である。予備焼成は、通常の予備焼成の手順に従って行うことができる。具体的には、予備焼成は、不活性ガス雰囲気中で行うことができ、不活性ガスとしては、窒素またはアルゴンなどを挙げることができる。また、予備焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば10KPa以下で行うことができる。予備焼成の時間は特に限定されるものではなく、通常は0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
<本焼成>
本実施形態の炭素質材料の製造方法における本焼成工程は、通常の本焼成の手順に従って行うことができ、本焼成後に炭素質材料が得られる。
本焼成温度は、通常は1100〜1400℃であり、好ましくは1150〜1380℃であり、より好ましくは1250〜1350℃である。本焼成は、不活性ガス雰囲気中で行うことができ、不活性ガスとしては、窒素またはアルゴンなどを挙げることができる。また、ハロゲンガスを含有する不活性ガスの雰囲気中で本焼成を行うことも可能である。さらに、本焼成は、減圧下で、例えば10KPa以下で行うことも可能である。本焼成の時間は特に限定されるものではなく、例えば0.05〜10時間、好ましくは0.05〜8時間、より好ましくは0.05〜6時間である。
〔炭素質材料への窒素の導入〕
本実施形態の炭素質材料の窒素元素含有量は、炭素質材料の総質量に基づいて0.4質量%より大きく5質量%以下である。
本実施形態の炭素質材料へ窒素を導入する方法としては、植物原料または植物由来のチャーに固体状態の含窒素化合物を添加する方法(固体混合)、植物原料または植物由来のチャーに含窒素化合物の溶液を含浸する方法(含浸添着)、および含窒素化合物を含むガス気流の雰囲気中で植物由来のチャーまたは炭素質材料を熱処理する方法(CVD)などが挙げられる。その原料、および窒素の導入方法は特に限定されるものではないが、工業生産性の観点から、原料としては仮焼成後のチャーを用い、窒素の導入方法としては含浸添着を用いることが好ましい。
含窒素化合物としては、例えばポリ(アクリロニトリル)、ポリ(アクリルアミド)、ポリアミドおよびポリイミドなどの熱可塑性樹脂、例えば尿素樹脂およびメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂、並びに炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩、メラミン、尿素、ピリジンおよびアンモニアなどの低分子化合物を挙げることができる。窒素の導入方法として固体混合または含浸添着を用いる場合は、残炭率向上の観点から、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。ポリ(アクリロニトリル)は250〜300℃での熱処理により不融化し、それによって焼成時に残炭率を向上させることができるため、本焼成前にポリ(アクリロニトリル)の不融化処理を行うことが好ましい。
植物原料または植物由来のチャーに対する含窒素化合物の量は、炭素質材料の窒素元素含有量が炭素質材料の総質量に基づいて0.4質量%より大きく5質量%以下となるように選択され、使用する植物原料、植物由来のチャー、または含窒素化合物に依存する。植物原料または植物由来のチャーの質量100質量部に対する含窒素化合物の量は、通常は3〜100質量部、好ましくは5〜60質量部、より好ましくは7〜50質量部である。
〔窒素元素含有量〕
本実施形態の炭素質材料に含まれる窒素元素は、炭素質材料の総質量に基づいて0.4質量%より大きく5質量%以下である。このように炭素質材料中により多くの窒素元素を含むことにより、炭素質材料中に含まれる炭素構造に欠陥または乱れを多く導入することができ、また窒素によってもリチウムイオンが捕捉されるため、リチウムイオンをドープする際の吸蔵サイトを増大させることができる。窒素元素含有量は、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下、特に好ましくは1.7質量%以下である。窒素元素含有量は、好ましくは0.42質量%より大きく、より好ましくは0.44質量%より大きく、特に好ましくは0.46質量%以上である。窒素元素含有量が5質量%を超えると、炭素質材料のミクログラファイト構造を維持できず、リチウムイオン吸蔵サイトが大きく減少するため、そのような炭素質材料を用いても所望の放電容量を有する非水電解質二次電池が得られない。また、窒素元素含有量が0.4質量%以下であると、窒素元素を多く含むことによる効果が得られない。ここで、窒素元素含有量の測定方法は、後述の実施例に記載する通りである。
窒素元素含有量は、使用する植物原料または植物由来のチャーに対する含窒素化合物の量、焼成温度または焼成時間を調整することにより、上記範囲内に調整することができる。
〔ラマンスペクトルにおける炭素のDバンドの半値幅〕
炭素質材料のラマンスペクトルにおける炭素のDバンドの半値幅は、175〜240cm−1である。Dバンドの半値幅が175cm−1より小さいと、炭素構造の欠陥または乱れが少なすぎて所望の高い出力特性およびサイクル特性が得られない。Dバンドの半値幅が240cm−1より大きいと、炭素構造の欠陥または乱れが多すぎて炭素質材料中の構造未発達の部分が多くなり、電気化学的に活性なエッジ面が増加し、充放電時にリチウムイオンとの副反応が多くなるため、所望の高い充放電効率が得られない。半値幅の下限は、好ましくは180cm−1であり、より好ましくは185cm−1である。Dバンドの半値幅の上限は、好ましくは220cm−1であり、より好ましくは210cm−1であり、特に好ましくは200cm−1である。上記範囲においてDバンドの半値幅が大きいほど、炭素構造の欠陥または乱れが増大し、エッジ面での炭素層間距離が広がるため、リチウムイオン脱挿入時の抵抗が低減される。また、炭素構造中に価電子数の異なる窒素原子が混在することで、炭素構造の欠陥または乱れが助長され、結果として電池の出力特性およびサイクル特性が向上する。ここで、ラマンスペクトルにおける炭素のDバンドの半値幅の測定方法は、後述の実施例に記載する通りである。
Dバンドの半値幅を上記範囲に調整する方法は何ら限定されないが、例えば、椰子殻チップを先に述べたような条件下で液相脱灰し、椰子殻チップに含まれる灰分を除去した後、先に述べたような条件下で熱処理(仮焼成)することにより植物由来のチャーを調製し、このチャーに、炭素質材料における窒素元素含有量が特定の値となるよう含浸添着により窒素を導入し、先に述べたような条件下で予備焼成および本焼成する方法を用いることができる。
〔窒素元素含有量に対する酸素元素含有量の質量比〕
本実施形態の炭素質材料において、窒素元素含有量に対する酸素元素含有量の質量比は、好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.9以下であり、特に好ましくは0.8以下である。炭素質材料に含まれる酸素元素含有量は少ないほど好ましい。窒素元素含有量に対する酸素元素含有量の質量比が上記の値以下であると、リチウムイオンと酸素との反応によりリチウムイオンが消費されることによるリチウムイオンの利用効率の低下、および酸素が空気中水分を誘引して水が吸着され、容易に脱離しないことによるリチウムイオンの利用効率の低下が抑制されやすい。ここで、酸素元素含有量の測定方法は、後述の実施例に記載する通りである。
酸素元素含有量をより少ない量に調整する方法は何ら限定されないが、例えば、植物原料を先に記載した条件下で液相脱灰および熱処理(仮焼成)するか、または植物由来のチャーを先に記載した条件下で気相脱灰して、先に述べたような条件下で予備焼成および本焼成する方法を用いることができる。
先に記載した方法により窒素元素含有量を特定の範囲に調整し、上記方法により酸素元素含有量をより少ない量に調整することにより、窒素元素含有量に対する酸素元素含有量の質量比を前記上限値以下に調整することができる。
〔Li強度比〕
本実施形態の炭素質材料は、電気化学的にリチウムをドープし、−90℃および10kHzのマジック角回転(Magic Angle Spinning:以下において、「MAS」と称することもある)条件下にてリチウム原子核の固体NMRスペクトルを測定したときに、基準物質であるLiCoOの共鳴ピークに対して10〜40ppm低磁場シフトした位置のピークと、40〜300ppm低磁場シフトしたピークとを示す。
本実施形態において、LiCoOの共鳴ピークに対して15ppm低磁場シフトした位置の強度を、100ppm低磁場シフトした位置の強度で除した強度比(以下において、「Li強度比」と称することもある)は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上である。強度比が前記下限値以上であるということは、−90℃の低温においても、より炭素層間にリチウムイオンが吸蔵されやすいことを意味しており、このことは、低温状態でもリチウムが金属クラスター状に変化せず、イオンのままでより多く吸蔵されやすいことを意味する。そのため、運動性の大きなリチウムイオンが豊富に存在しやすく、これにより高速放電に対応しやすくなる。また、炭素質材料に窒素をドープすることにより、炭素構造の欠陥または乱れが助長され、ミクログラファイトのエッジ部分の面間隔が広がるため、好ましいことに、微細孔との境界部などにもリチウムをイオン状態で多く吸蔵しやすくなる。ここで、Li強度比の求め方は、後述の実施例に記載する通りである。
Li強度比を前記下限値以上に調整する方法は何ら限定されないが、例えば、椰子殻チップを先に述べたような条件下で液相脱灰し、椰子殻チップに含まれる灰分を除去した後、先に述べたような条件下で熱処理(仮焼成)することにより植物由来のチャーを調製し、このチャーに、炭素質材料における窒素元素含有量が特定の値となるよう含浸添着により窒素を導入し、先に述べたような条件下で予備焼成および本焼成する方法を用いることができる。
〔ヘリウム真密度(ρHe)〕
ヘリウムガスを置換媒体として測定した真密度(ρHe)は、ヘリウムガス拡散性の指標であり、この値が大きく黒鉛状炭素の理論密度2.27g/cmに近い値を示すことは、ヘリウムが侵入できる細孔が多く存在することを意味する。つまり開孔が豊富にあることを意味する。一方、ヘリウムは非常に小さな原子径(0.26nm)を有することからヘリウム原子径以下の細孔は閉孔であると考えることができ、ヘリウムガス拡散性が低いということは閉孔が多いということを意味する。
本実施形態の炭素質材料のρHeは、限定されるものではないが、1.8g/cm以上であることが好ましく、2.0g/cm以上であることがより好ましい。ヘリウム真密度が前記下限値以上であると、炭素構造が未発達で閉孔が多く存在するためにリチウムイオン脱挿入時に副反応の起点となる部分が多く、その結果、サイクル特性が悪化するという可能性が低減されやすい。ヘリウム真密度の上限値は、限定されるものではないが、通常は2.3g/cm、好ましくは2.2g/cmである。ここで、ヘリウム真密度の測定方法は、後述の実施例に記載する通りである。
ヘリウム真密度を上記範囲に調整する方法は何ら限定されないが、例えば、焼成温度または焼成時間を調整する方法を用いることができる。
〔比表面積〕
本実施形態の炭素質材料の比表面積は、好ましくは1m/g〜30m/gである。比表面積の上限値は、より好ましくは27m/g、より好ましくは25m/g、より好ましくは15m/g、特に好ましくは10m/gである。比表面積の下限値は、より好ましくは1.5m/gであり、特に好ましくは3m/gである。比表面積が上記範囲内であると、高すぎる比表面積に起因して、電解液との反応が増加して不可逆容量が増加し、それにより電池性能が低下する可能性、および低すぎる比表面積に起因して、電極塗工時に活物質が脱落する可能性が低減されやすい。ここで、比表面積の測定方法は、後述の実施例に記載する通りである。
比表面積を上記範囲に調整する方法は何ら限定されないが、例えば、焼成温度または焼成時間を調整する方法、或いは炭素質材料の粉砕強度を調節し粒子径を制御する方法を用いることができる。
[非水電解質二次電池用負極材]
本実施形態はまた、上記した非水電解質二次電池用炭素質材料を含んでなる非水電解質二次電池用負極材に関する。
以下において、本実施形態の非水電解質二次電池用負極材の製造方法の例を具体的に説明する。
本実施形態の負極材は、本実施形態の炭素質材料に結合剤(バインダー)を添加し、適当な溶媒を適量添加し、得られた混合物(スラリー)を混合して電極合剤とした後に、金属板などからなる集電板に電極合剤を塗布し、乾燥させ、加圧成形することにより製造することができる。
本実施形態の炭素質材料を用いることにより、導電助剤を添加しなくても高い導電性を有する電極を製造することができる。さらに高い導電性を付与することを目的として、必要に応じて電極合剤の調製時に、導電助剤を添加することができる。導電助剤としては、導電性のカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)またはナノチューブなどを用いることができる。導電助剤の添加量は、使用する導電助剤の種類によっても異なるが、添加する量が少なすぎると期待する導電性が得られないことがあり、多すぎると電極合剤中の分散が悪くなることがある。このような観点から、添加する導電助剤の好ましい割合は0.5〜10質量%〔ここで、活物質(炭素質材料)量+バインダー量+導電助剤量=100質量%とする〕であり、より好ましくは0.5〜7質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%である。
バインダーは、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、およびSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)とCMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物などの電解液と反応しないものであれば特に限定されない。中でもPVDFは、活物質表面に付着したPVDFがリチウムイオン移動を阻害することが少なく、良好な入出力特性が得られやすいため好ましい。バインダーおよび炭素質材料を含むスラリーを形成するために、PVDFを溶解するN−メチルピロリドン(NMP)などの極性溶媒が好ましく用いられる。しかし、SBRなどの水性エマルジョン、またはCMCの水溶液を用いることもできる。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の抵抗が大きくなるため、電池の内部抵抗が大きくなり、電池特性が低下する。また、結合剤の添加量が少なすぎると、負極材材料の粒子相互間の結合および粒子と集電板材料との結合が不十分となる。結合剤の好ましい添加量は、使用するバインダーの種類によっても異なるが、例えばPVDF系のバインダーでは、好ましくは3〜13質量%であり、より好ましくは3〜10質量%である。一方、溶媒として水を使用するバインダーでは、SBRとCMCとの混合物など、複数のバインダーを混合して使用することが多く、使用する全バインダーの総量は好ましくは0.5〜5質量%であり、より好ましくは1〜4質量%である。
電極活物質層は、集電板の両面に形成されることが基本であるが、必要に応じて片面に形成されてもよい。電極活物質層が厚いほど、集電板やセパレータなどが少なくて済むため、高容量化には好ましい。しかし、対極と対向する電極面積が広いほど入出力特性の向上に有利なため、電極活物質層が厚すぎると入出力特性が低下することがある。好ましい活物質層(片面当たり)の厚みは、電池放電時の出力の観点から、10〜80μmであり、より好ましくは20〜75μm、特に好ましくは20〜60μmである。
[非水電解質二次電池]
本実施形態はまた、上記した非水電解質二次電池用負極材を含んでなる非水電解質二次電池に関する。本発明の非水電解質二次電池は、例えばリチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、リチウム硫黄電池、全固体電池および有機ラジカル電池などを含む。
以下において、本実施形態の非水電解質二次電池の製造方法の例を具体的に説明する。本実施形態の非水電解質二次電池は、高い出力特性および高いサイクル安定性を示す。
本実施形態の炭素質材料を用いて、非水電解質二次電池用の負極材を調製した場合、正極材、セパレータおよび電解液などの電池を構成する他の材料は特に限定されず、非水電解質二次電池において従来使用され、または提案されている種々の材料を使用することができる。
例えば、正極材を調製するための正極材材料としては、層状酸化物系(LiMOと表されるもの〔ここで、Mは金属元素を意味する〕、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、またはLiNiCoMo〔ここで、x、yおよびzは組成比を表わす〕)、オリビン系(LiMPOと表されるもの〔ここで、Mは金属元素を意味する〕、例えばLiFePOなど)、スピネル系(LiMと表されるもの〔ここで、Mは金属元素を意味する〕、例えばLiMnなど)の複合金属カルコゲン化合物が好ましい。これらのカルコゲン化合物を必要に応じて混合してもよい。これらの正極材材料を適当なバインダーと電極に導電性を付与するための炭素材料とともに成形して、導電性の集電材上に層形成することにより正極材が調製される。
正極材および負極材と組み合わせて用いられる非水溶媒型電解液は、一般に非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される。非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、または1,3−ジオキソランなどの有機溶媒を、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、電解質としては、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiAsF、LiCl、LiBr、LiB(C、またはLiN(SOCFなどが用いられる。
非水電解質二次電池は、一般に、上記のようにして調製した正極材と負極材とを、必要に応じて不織布、またはその他の多孔質材料などからなる透液性セパレータを介して対向させ、電解液中に浸漬させることにより、製造される。セパレータとしては、非水電解質二次電池に通常用いられる不織布、またはその他の多孔質材料からなる透過性セパレータを用いることができる。或いはセパレータに代えて、若しくはセパレータと一緒に、電解液を含浸させたポリマーゲルからなる固体電解質を用いることもできる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、以下に非水電解質二次電池用炭素質材料の物性値の測定方法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
[元素分析]
株式会社堀場製作所製「酸素・窒素・水素分析装置EMGA-930」を用いて元素分析を行った。
当該装置の検出方法は、酸素:不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法(NDIR)、窒素:不活性ガス融解−熱伝導度法(TCD)、水素:不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法(NDIR)である。校正は、TiH(H標準試料)、SS−3(N、O標準試料)、およびSiN(N標準試料)を用いて行い、前処理として250℃で約10分間脱水処理を施した試料20mgを、Snカプセルに量り取り、上記分析装置内で30秒間脱ガスした。3検体を分析し、その平均値を分析値とした。
[ラマン分光測定]
株式会社堀場製作所製「LabRAM ARAMIS」を用い、レーザー波長532nmの光源を用いて、ラマンスペクトルを測定した。各試料において無作為に5箇所の粒子をサンプリングし、測定を実施した。測定条件は、波長範囲50〜2000cm−1、積算回数1000回であり、5箇所の平均値を計測値として算出した。
半値幅は、上記測定条件にて得られたスペクトルに対し、Dバンド(1360cm−1付近)とGバンド(1590cm−1付近)とのピーク分離を、ガウス関数でフィッティングして実施した後、測定した。
[ヘリウム真密度の測定]
株式会社カンタクローム製「Ultrapyc 1200e」を用い、ヘリウムを置換媒体とするヘリウム真密度の測定を行った。
測定装置は試料室および膨張室を具備し、試料室は室内の圧力を測定するための圧力計を備えている。試料室と膨張室は、バルブを備える連結管により接続されている。試料室にはストップバルブを備えるヘリウムガス導入管が接続され、膨張室にはストップバルブを備えるヘリウムガス排出管が接続されている。
測定は以下のようにして行った。試料室の容積(vcell)および膨張室の容積(vadded)を、標準球を用いて予め測定しておいた。試料室に試料を入れ、試料室のヘリウムガス導入管、連結管、および膨張室のヘリウムガス排出管を通してヘリウムガスを1時間流すことにより、装置内をヘリウムガスで置換した。次に、試料室と膨張室との間のバルブ、および膨張室からのヘリウムガス排出管のバルブを閉じ(膨張室には周囲圧力と同じ圧力のヘリウムガスが残る)、試料室のヘリウムガス導入管からヘリウムガスを134kPaになるまで導入した後、ヘリウムガス導入管のストップバルブを閉じた。ストップバルブを閉じてから5分後の試料室の圧力(P)を測定した。次に試料室と膨張室との間のバルブを開いて、ヘリウムガスを膨張室に移送し、そのときの圧力(P)を測定した。
試料の体積(vsamp)は次式で計算した。
Figure 2019008980
従って、試料の質量をwsampとすると、ヘリウム真密度はρHe=wsamp/vsampにより求められた。
[窒素吸着BET多点法による比表面積測定]
以下に、BETの式から誘導された近似式を記す。
Figure 2019008980
液体窒素温度における窒素吸着による多点法により測定した所定の相対圧(p/p)における実測吸着量(v)を上記近似式に代入してvを求め、次式により試料の比表面積を計算した。
Figure 2019008980
上記式において、vは試料表面に単分子層を形成するに必要な吸着量(cm/g)、vは実測された吸着量(cm/g)、pは飽和蒸気圧、pは絶対圧、cは定数(吸着熱を反映)、Nはアボガドロ数6.022×1023、a(nm)は吸着質分子が試料表面で占める面積(分子占有断面積)である。
具体的には、カンタクローム社製「Autosorb-iQ-MP」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における試料への窒素の吸着量を測定した。試料を試料管に充填し、試料管を−196℃に冷却した状態で、一旦減圧し、その後所望の相対圧にて試料に窒素(純度99.999%)を吸着させた。各所望の相対圧にて平衡圧に達したときの試料に吸着した窒素元素含有量を吸着ガス量vとした。
[レーザー散乱法による平均粒子径の測定]
植物由来のチャーおよび炭素質材料の平均粒子径(粒度分布)は、下記方法により測定した。試料を、界面活性剤(和光純薬工業株式会社製「Toriton X-100」)が0.3質量%含まれた水溶液中に分散させた。この分散液を用いて粒度分布を測定した。粒度分布測定は、粒子径・粒度分布測定器(日機装株式会社製「マイクロトラックM T3000」)を用いて行った。d50は、累積体積が50%となる粒子径であり、この値を平均粒子径として用いた。
[金属含有量の測定]
カリウム元素含有量および鉄元素含有量は、下記方法により測定した。予め所定のカリウム元素および鉄元素を含有する炭素試料を調製し、蛍光X線分析装置を用いて、カリウムKα線の強度とカリウム元素含有量との関係、および鉄Kα線の強度と鉄元素含有量との関係に関する検量線を作成した。次いで、試料について、蛍光X線分析におけるカリウムKα線および鉄Kα線の強度を測定し、先に作成した検量線よりカリウム元素含有量および鉄元素含有量を求めた。蛍光X線分析は、株式会社島津製作所製「LAB CENTER XRF-1700」を用いて、下記条件で行った。上部照射方式用ホルダーを用い、試料測定面積を直径20mmの円周内とした。内径25mmのポリエチレン製容器の中に被測定試料を0.5g入れ、裏をプランクトンネットで押さえ、測定表面をポリプロピレン製フィルムで覆い、測定を行った。X線源は40kVおよび60mAに設定した。カリウムについては、分光結晶にLiF(200)、検出器にガスフロー型比例係数管を使用し、2θが90〜140°の範囲を、走査速度8°/分で測定した。鉄については、分光結晶にLiF(200)、検出器にシンチレーションカウンターを使用し、2θが56〜60°の範囲を、走査速度8°/分で測定した。
[植物由来のチャーの調製]
約5mm角の椰子殻チップ100gを0.77質量%クエン酸水溶液150gに浸漬し、90℃に加温し、4時間加熱した後、室温まで冷却し、ろ過により脱液することにより脱灰を行った。この脱灰操作を5回繰り返した。脱灰した椰子殻を80℃で24時間乾燥した。このようにして精製した椰子殻チップを、窒素雰囲気中、750℃で30分間熱処理することにより炭化させ、チャー(1)を得た。
実施例1
ポリ(アクリロニトリル)樹脂0.51gを、溶媒としてのDMFに加熱溶解し、溶液を得た。これにチャー(1)5.1gを混合し、溶媒を減圧留去した。得られた混合固体5.6gを、炉において窒素雰囲気中、10℃/分で270℃に加熱し、40分間保持した。その後、10℃/分で1000℃に加熱し、30分間保持した(予備焼成)後に放冷した。これをさらに窒素雰囲気中、15℃/分で1292℃に加熱し、30分間保持した(本焼成)後、3.5℃/分で冷却した。炉内温度が100℃以下に低下したことを確認した後、炉内から炭素質材料(1)を取り出した。回収された炭素質材料(1)の質量は4.8gであり、チャー(1)に対する回収率は85%であった。得られた炭素質材料(1)の物性を表1に示す。
実施例2
メラミン樹脂オリゴマー(日本カーバイド社製「MX-035」)の水溶液(固形分0.45g)を水で希釈し、チャー(1)4.5gを添加混合して溶媒を乾固した。得られた混合固体を、炉において窒素雰囲気中、10℃/分で1000℃に加熱し、30分間保持した後に放冷した。これをさらに窒素雰囲気中、15℃/分で1290℃に加熱し、30分間保持した後、3.5℃/分で冷却した。炉内温度が100℃以下に低下したことを確認し、炉内から炭素質材料(2)を取り出した。回収された炭素質材料(2)の質量は4.3gであり、チャー(1)に対する回収率は86%であった。得られた炭素質材料(2)の物性を表1に示す。
実施例3
チャー(1)を4.6gの量で用い、メラミン樹脂オリゴマーを固形分として0.18g用いたこと以外は実施例2と同様にして、炭素質材料(3)を得た。回収された炭素質材料(3)の質量は4.4gであり、チャー(1)に対する回収率は92%であった。得られた炭素質材料(3)の物性を表1に示す。
実施例4
塩化アンモニウム1.8gを、溶媒としての水に溶解し、溶液を得た。これにチャー(1)3.2gを混合し、溶媒を減圧留去した。得られた混合固体5.0gを、炉において窒素雰囲気中、10℃/分で400℃に加熱し、30分間保持した後に放冷した。これをさらに窒素雰囲気中、15℃/分で1150℃に加熱し、30分間保持した後、3.5℃/分で冷却した。炉内温度が100℃以下に低下したことを確認し、炉内から炭素質材料(4)を取り出した。回収された炭素質材料(4)の質量は2.9gであり、チャー(1)に対する回収率は91%であった。得られた炭素質材料(4)の物性を表1に示す。
実施例5
チャー(1)を5.0gの量で用い、含窒素化合物としてのメラミン樹脂オリゴマーを用いず、本焼成温度を1100℃に変更したこと以外は実施例2と同様にして、4.8gの炭素質材料を得た。これをさらに窒素雰囲気中、10℃/分で800℃に加熱し、4.0gのアンモニアガスを窒素ガスで希釈し、30分間導入した。さらに窒素雰囲気中、800℃で30分間保持した後に放冷した。炉内温度が100℃以下に低下したことを確認し、炉内から炭素質材料(5)を取り出した。回収された炭素質材料(5)の質量は4.8gであり、チャー(1)に対する回収率は96%であった。得られた炭素質材料(5)の物性を表1に示す。
比較例1
チャー(1)を5.2gの量で用い、含窒素化合物としてのメラミン樹脂オリゴマーを用いなかったこと以外は実施例2と同様にして、炭素質材料(6)を得た。回収された炭素質材料(6)の質量は4.8gであり、チャー(1)に対する回収率は93%であった。得られた炭素質材料(6)の物性を表1に示す。
比較例2
本焼成を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、炭素質材料(7)を得た。即ち、実施例1における予備焼成の後に放冷し、炉内温度が100℃以下に低下したことを確認し、炉内から炭素質材料(7)を取り出した。回収された炭素質材料(7)の質量は5.2gであり、チャー(1)に対する回収率は92%であった。得られた炭素質材料(7)の物性を表1に示す。
[負極材の作製]
実施例1〜5および比較例1〜2で得た炭素質材料(1)〜(7)をそれぞれ用いて、下記手順に従って負極材(1)〜(7)を作製した。
炭素質材料(1)〜(7)のいずれか94質量部、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)6質量部およびNMP(N−メチルピロリドン)85質量部を混合し、スラリーを得た。厚さ18μmの銅箔の片面に、得られたスラリーを塗布し、乾燥後プレスして、φ14mmの円盤状に打ち抜き、厚さ90μmの負極材(1)〜(7)を作製した。ここで、負極材(1)〜(7)は、炭素質材料として炭素質材料(1)〜(7)をそれぞれ使用して作製した負極材である。得られた負極材(1)〜(7)の密度は、0.8〜1.0g/cmであった。
[リチウムイオンの電気化学的ドープ]
上記の作製した負極材(1)〜(7)のいずれかを作用極とし、金属リチウムを対極および参照極として使用した。溶媒として、プロピレンカーボネートとジメトキシエタンとの混合物(体積比1:1)を用いた。この溶媒に、LiClOを濃度1mol/Lとなるよう溶解し、LiClOを電解質として用いた。セパレータには多孔質ポリプロピレンフィルムを使用した。アルゴン雰囲気中のグローブボックス内でコインセル(1)〜(7)をそれぞれ作製した。ここで、コインセル(1)〜(7)は、作用極として負極材(1)〜(7)をそれぞれ使用して作製したコインセルである。
上記構成のコインセル(1)〜(7)のそれぞれについて、充放電試験装置(東洋システム株式会社製「TOSCAT」)を用いてリチウムをドープした。ドーピングは活物質(炭素質材料)の質量に対して0.77mAの速度で行い、リチウム電位に対して0Vになるまでドーピングした。さらにリチウム電位に対して0Vの定電圧を印加し、電流値が20μAとなったところでドーピングを終了した。
Li核−固体NMR分析]
上記方法によりリチウムイオンが電気化学的にドープされた負極材をセルから取り出し、電解液を拭き取った負極材を全てNMR用サンプル管に充填した。Li核−固体NMR分析は、JEOL製「核磁気共鳴装置ECA400WB」を用いて行った。測定に際して、LiCoOを基準物質として、これを0ppmに設定した。−90℃および10kHzのMAS条件下にてリチウム原子核の固体NMRスペクトルを測定し、15ppm低磁場シフトした位置の強度IAと、100ppm低磁場シフトした位置の強度IBとの比(IA/IB)をLi強度比として求めた。結果を表1に示す。
Figure 2019008980
[初期放電容量の測定]
上記の作製したコインセル(1)〜(7)のそれぞれについて、充放電試験装置(東洋システム株式会社製「TOSCAT」)を用いて充放電試験を行った。リチウムのドーピングは、活物質の質量に対して0.77mAの速度で行い、リチウム電位に対して0Vになるまでドーピングした。さらにリチウム電位に対して0Vの定電圧を印加し、電流値が20μAとなったところでドーピング(定電圧ドーピング)を終了した。このときの容量(mAh/g)を充電容量とした。次いで、活物質の質量に対して0.77mAの速度で、リチウム電位に対して1.5Vになるまで脱ドーピングを行い、このとき放電した容量を初期放電容量とした。結果を表2に示す。
[5C放電時容量維持率およびサイクル試験後放電容量維持率の測定]
上記構成のリチウムイオン二次電池の出力特性およびサイクル特性を、下記条件で評価した。
〔出力特性〕
まず、電極安定化のために、上記した初期放電容量の測定における手順と同様に、0.77mAでのリチウムドーピングおよび0Vの定電圧ドーピングの後、0.77mAの速度で脱ドーピングを行った。この操作を3回繰り返し、3サイクル目の放電容量を「0.2C放電容量」とした。
次に、ドーピングは上記と同様に行い、脱ドーピング速度を変化(1.925、3.85、7.7、11.55、19.25または38.5mA)させて充放電試験を行った。所定の速度で脱ドーピングした後、活物質内に残存したリチウムイオンを完全に脱ドープさせるため、0.77mAでさらに脱ドーピングを行った。19.25mAの速度で脱ドーピングしたときの放電容量を「5C放電容量」とした。
0.2C放電容量に対する5C放電容量の比を「5C放電時容量維持率」とした。結果を表2に示す。
〔サイクル特性〕
上記した初期放電容量の測定における充放電試験と同様の試験を、20サイクル分行った。1サイクル目の放電容量に対する20サイクル目の放電容量の比を「サイクル試験後放電容量維持率」とした。結果を表2に示す。
Figure 2019008980
表2より、実施例1〜5で得られた炭素質材料を用いて作製したリチウムイオン二次電池は、高い5C放電時容量維持率に加えて、高いサイクル試験後放電容量維持率を有することが分かる。このことから、本実施形態の炭素質材料を含んでなる負極材を含んでなる非水電解質二次電池は、高い出力特性および高いサイクル安定性を示すことが明らかである。
本発明の炭素質材料を用いた非水電解質二次電池は、高い出力特性および高いサイクル安定性を有する。従って、例えばハイブリッド自動車(HEV)および電気自動車(EV)などの車載用途に特に用いることができる。

Claims (8)

  1. 植物由来の非水電解質二次電池用炭素質材料であって、窒素元素含有量が当該炭素質材料の総質量に基づいて0.4質量%より大きく5質量%以下であり、かつラマンスペクトルにおける炭素のDバンドの半値幅が175cm−1〜240cm−1である、炭素質材料。
  2. 窒素元素含有量に対する酸素元素含有量の質量比が1.0以下である、請求項1に記載の炭素質材料。
  3. 電気化学的にリチウムをドープし、−90℃および10kHzのマジック角回転(MAS)条件下にてリチウム原子核の固体NMRスペクトルを測定したときに、基準物質であるLiCoOの共鳴ピークに対して15ppm低磁場シフトした位置の強度を、100ppm低磁場シフトした位置の強度で除した強度比が0.8以上である、請求項1または2に記載の炭素質材料。
  4. ヘリウム真密度が1.8g/cm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素質材料。
  5. 比表面積が1m/g〜30m/gである、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素質材料。
  6. 炭素質材料は椰子殻に由来する、請求項1〜5のいずれかに記載の炭素質材料。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の炭素質材料を含んでなる非水電解質二次電池用負極材。
  8. 請求項7に記載の非水電解質二次電池用負極材を含んでなる非水電解質二次電池。
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