以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。なお、本明細書において、序数は、部品や、部位、位置、方向等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
また、各図中には、便宜上、方向を示す矢印が示されている。矢印Xは、車両前後方向の前方、矢印Yは、車幅方向の右方、また、矢印Zは、車両上下方向の上方を示している。なお、右方は、車両の前進方向を見た場合の右方である。
[シートの構成および動作]
図1〜3は、車両に設けられるシート10の側面図であって、図1は、スライドモードでのシート10の動作を示す図、図2は、リクライニングモードでのシート10の動作を示す図、また、図3はウォークインモードでのシート10の動作を示す図である。
図1に示されるように、車両用のシート10は、前方位置Psfと後方位置Psbとの間でスライド可能に構成されるとともに、前方位置Psfと後方位置Psbとの間の複数の位置のうちのいずれかに固定可能に構成されている。本実施形態では、シート10は、車両前後方向に沿って延びたロワレール13(レール)に沿って移動可能に支持されている。スライドロック機構(図1〜3には不図示)は、シート10をスライド不能とするロック状態と、シート10をスライド可能とするアンロック状態との間で、切り替わる。なお、以下では、スライドロック機構のロック状態をスライドロック状態と称し、スライドロック機構のアンロック状態をスライドアンロック状態と称する。
シート10は、シートクッション11とシートバック12とを有する。図2に示されるように、シートバック12は、前傾位置Pifと後傾位置Pibとの間で移動可能に構成されるとともに、前傾位置Pifと後傾位置Pibとの間の複数の位置のうちのいずれかに固定可能に構成されている。前傾位置Pifは折り畳み位置とも称され、後傾位置Pibは展開位置とも称されうる。本実施形態では、シートバック12は、当該シートバック12の下部に位置され車幅方向に沿って延びた回動中心Ax回りに回動可能に設けられ、シートバック12の傾斜角度が、可変に設定されうる。リクライニングロック機構(図1〜3には不図示)は、シートバック12をシートクッション11に対して移動不能とするロック状態と、シートバック12をシートクッション11に対して移動可能とするアンロック状態との間で、切り替わる。なお、以下では、リクライニングロック機構のロック状態をリクライニングロック状態と称し、リクライニングロック機構のアンロック状態をリクライニングアンロック状態と称する。
本実施形態では、シート10は、シート10のスライドおよびリクライニングに関する以下の三つのモードで作動することができる。
[スライドモード:図1]
スライドモードでは、シート10はロワレール13に沿ってスライドする。例えばシートクッション11の下方かつ前方に設けられたスライドリリースレバー(不図示)の乗員による操作に応じて、スライドロック機構は、スライドロック状態からスライドアンロック状態に切り替わる。また、乗員によるスライドリリースレバーの操作の解除に応じて、スライドロック機構は、スライドアンロック状態からスライドロック状態に切り替わる。
[リクライニングモード:図2]
リクライニングモードでは、シートバック12は回動中心Ax回りに回動する。例えば、シートクッション11の側方に設けられた第一操作アーム(図1〜3には不図示)の乗員による所定操作(例えば、手による引き上げ操作)に応じて、リクライニングロック機構は、リクライニングロック状態からリクライニングアンロック状態に切り替わる。また、乗員による第一操作アームの所定操作の解除に応じて、リクライニングロック機構は、リクライニングアンロック状態からリクライニングロック状態に切り替わる。
[ウォークインモード:図3]
ウォークインモードでは、シートバック12が所定角度で前傾した状態で、シート10が車両前方にスライドする。第二操作アーム(図3には不図示)の乗員による所定操作(例えば、足や手による押し下げ操作)に応じて、リクライニングロック機構は、リクライニングロック状態からリクライニングアンロック状態に切り替わるとともに、スライドロック機構は、スライドロック状態からスライドアンロック状態に切り替わる。スライドアンロック状態では、シート10は、付勢部材(不図示)による付勢力あるいは入力された外力によって、車両前後方向に移動することができる。例えば、シート10の前傾状態での前方への移動により、車両への人の乗降経路がより広く確保されうる。
[シート可動装置]
図4は、上記三つのモードを実現するシート可動装置100の概略構造を示す斜視図であり、図5は、図4とは異なる方向から見たシート可動装置100の斜視図である。
図4,5に示されるように、二本のロワレール13は、車両前後方向に延びており、互いに平行である。ロワレール13は、アッパレール14を車両前後方向にスライド可能に支持している。アッパレール14は、シートクッション11の骨格部材であるクッションベース15を支持している。また、シートバック12は、クッションベース15に、回動中心Ax回りに回動可能に支持されている。したがって、アッパレール14がロワレール13に沿って車両前後方向に移動するのに伴って、シートクッション11およびシートバック12、すなわちシート10が車両前後方向に移動する。ロワレール13は、単にレールとも称され、アッパレール14は、スライダとも称されうる。
アッパレール14には、それぞれ、スライドロック解除装置60が設けられている。スライドロック解除装置60は、アッパレール14ひいてはシート10をロワレール13にロックするスライドロック機構40のステータスを、アッパレール14がロワレール13にロックされたスライドロック状態から、アッパレール14のロワレール13に対するロックが解除されたスライドアンロック状態に切り替える。スライドロック機構40およびスライドロック解除装置60については後述する。
左右二つのクッションベース15L,15Rには、それぞれサポート16L,16Rが固定されている。図4に示されるように、右側のクッションベース15Rに固定されたサポート16Rには、リクライニングロック機構20R(20)と、リクライニングロック解除装置30とが、設けられている。また、図5に示されるように、左側のクッションベース15Lに固定されたサポート16Lには、リクライニングロック機構20L(20)と、リンク機構50とが、設けられている。クッションベース15L,15Rおよびサポート16L,16Rは、シートクッション11の構成部品である。すなわち、クッションベース15L,15Rおよびサポート16L,16Rは、シートクッション11の一例である。
リクライニングロック解除装置30は、リリースレバー32の操作に基づいて、リクライニングロック機構20L,20R(20)によるロックを解除する。また、リンク機構50は、シートバック12の前傾に基づいて、スライドロック解除装置60を作動させるケーブル(図4,5には不図示)を引く。
[リクライニングロック機構およびリクライニングロック解除装置]
図6は、リクライニングロック機構20Rおよびリクライニングロック解除装置30の車幅方向右方から見た正面図、図7は、リクライニングロック機構20Rおよびリクライニングロック解除装置30の分解斜視図である。
図6,7に示されるように、リクライニングロック機構20R(20)およびリクライニングロック解除装置30は、いずれもサポート16Rに取り付けられている。
サポート16Rは、壁16aを有している。壁16aは、車幅方向と交差し、車両前後方向および車両上下方向に沿って延びている。壁16aには、貫通孔16bが設けられている。貫通孔16bの縁には、リクライニングロック機構20Rを位置決めする凹凸形状が設けられている。
リクライニングロック機構20R(20)は、サポート16Rの車幅方向の内方に接した状態で、サポート16Rに固定されている。リクライニングロック機構20Rは、ベース部21、回動部22、結合部(不図示)、操作部23、および作動機構(不図示)を有する。ベース部21は、サポート16Rひいてはシートクッション11と固定されている。回動部22は、回動中心Ax回りに回動可能に設けられ、シートバック12と固定されている。結合部は、回動部22をベース部21に結合する結合位置とベース部21から遮断する遮断位置との間で移動する。操作部23は、回動中心Ax回りに回動可能に設けられている。作動機構は、例えばカム機構や付勢部材等(不図示)を含んでおり、操作部23が回動中心Ax回りに方向R11に回動された場合にあっては結合部を遮断位置に動かし、操作部23が方向R12に回動された場合にあっては結合部を結合位置に動かす。結合部によって回動部22がベース部21と結合された状態が、リクライニングロック機構20のリクライニングロック状態であり、結合部によって回動部22がベース部21と結合されていない状態、すなわち、回動部22が回動中心Ax回りに回動可能な状態が、リクライニングロック機構20のリクライニングアンロック状態である。方向R11は、解除方向と称され、操作方向の一例である。方向R12は、ロック方向と称され、操作方向の反対方向の一例である。
リクライニングロック解除装置30は、サポート16Rに支持される構成として、シャフト31、リリースレバー32、リターンスプリング33、および突壁34を有している。リクライニングロック解除装置30は、シャフト31の一部を除き、サポート16Rよりも車幅方向の右方に位置されている。
シャフト31は、リクライニングロック機構20Rを貫通し、リクライニングロック機構20Rの操作部23と一体に回動する。リリースレバー32は、シャフト31と固定されている。よって、リリースレバー32は、シャフト31を介して操作部23と接続されている。シャフト31およびリリースレバー32は、操作部23と一体に、回動中心Ax回りを回転する。リターンスプリング33は、シャフト31、リリースレバー32、および操作部23を、初期位置に戻す方向、すなわち回動中心Ax回りに方向R12に、付勢している。シャフト31の車幅方向外方の先端部分には、リターンスプリング33を引っ掛ける切欠を有した引掛部31aが設けられている。リターンスプリング33は、付勢部材の一例である。
突壁34は、サポート16Rに固定されている。突壁34は、回動中心Ax回りに周方向に沿って延びた部分円筒状の周壁34aを有している。周壁34aの外周面は、シートバック12(図1〜3参照)を回動中心Ax回りに前傾方向に付勢するスパイラルスプリングのガイドとして機能している。周壁34aには、当該スパイラルスプリングを引っ掛ける切欠を有した引掛部34bが設けられている。また、突壁34には、リターンスプリング33の一端を引っ掛ける切欠を有した引掛部34cが設けられている。
リリースレバー32の形状は板状であり、リリースレバー32は、車幅方向と交差して広がっている。リリースレバー32は、ベース32aと、第一操作アーム32bと、第二操作アーム32cと、錘アーム32dと、を有している。リリースレバー32は、操作レバーの一例である。
ベース32aには、シャフト31が貫通する貫通孔32eが設けられている。貫通孔32eの縁には、例えば直線部分や凹凸部分のようなシャフト31に対する回動中心Ax回りの取付角度を定めるとともにシャフト31とリリースレバー32とを方向R11および方向R12で連動させる位置決め形状(不図示)が設けられうる。
第一操作アーム32bは、回動中心Axよりも下方で、屈曲しながら、ベース32aから前方に延びている。第一操作アーム32bに対する入力操作は、シート10(図1〜3参照)に着座した乗員による引き上げであり、当該引き上げ操作により、リリースレバー32は、方向R11へ回動する。第一操作アーム32bは、引き上げアームやリクライニングアームとも称されうる。
第二操作アーム32cは、回動中心Axよりも下方で、ベース32aから後方に延びている。第二操作アーム32cに対する入力操作は、当該リクライニングロック解除装置30が設けられたシート10には着座していない人の足による押し下げであり、当該押し下げ操作により、リリースレバー32は、方向R11へ回動する。第二操作アーム32cは、押し下げアームやウォークインアームとも称されうる。
錘アーム32dは、ベース32aの前方かつ上方の端部から上方に向けて突出している。錘アーム32dは、回動中心Axの周方向に沿って円弧状に延びた円弧部32d1を有している。錘アーム32d(円弧部32d1)とベース32aとの間には、回動中心Axの周方向に沿って延びた円弧状の切欠32fが設けられている。この切欠32fを、突壁34の周壁34aが車幅方向に貫通している。言い換えると、切欠32fには、周壁34aが収容されている。錘アーム32dは、錘の一例である。また、切欠32fは、隙間の一例であり、開口部とも称されうる。
図8,9は、図6と同じ方向から見たリクライニングロック解除装置30の一部の正面図であって、図8は、リリースレバー32が初期位置P1iに位置された状態を示す図であり、図9は、リリースレバー32が制限位置P1eに位置された状態を示す図である。
第一操作アーム32bの引き上げ、あるいは第二操作アーム32cの押し下げにより、リリースレバー32は、図8の初期位置P1iから方向R11へ所定角度回動することができる。リリースレバー32の方向R11への回動により、シャフト31および操作部23(図7参照)が方向R11へ回動する。
リリースレバー32は、図9の制限位置P1eに位置された状態まで、方向R11へ回動することができる。制限位置P1eにおいて、切欠32fの方向R12の端部32f1(縁)は、突壁34の方向R12の端部34d(図7も参照)と当接している。言い換えると、端部34dは、端部32f1と当接することにより、リリースレバー32の方向R11への回動を制限している。すなわち、端部34dは、リリースレバー32の方向R11への回動範囲を制限するストッパとして機能する。端部34dは、ストッパの一例である。
リクライニングロック機構20Rは、リリースレバー32が、方向R11へ回動し、初期位置P1i(図8参照)と制限位置P1e(図9参照)との間のリクライニングロック解除位置(不図示)に位置されたときに、リクライニングロック状態からリクライニングアンロック状態へ遷移する。リリースレバー32への方向R11への操作力が解除されると、リターンスプリング33の付勢力によってリリースレバー32は、方向R12へ回動し(戻り)、これにより、リクライニングロック機構20Rは、リクライニングアンロック状態からリクライニングロック状態へ遷移する(戻る)。
なお、図4,5に示されるように、シャフト31は、連結シャフト37を介してシャフト35と連結されている。よって、リリースレバー32の回動は、シャフト31、連結シャフト37、およびシャフト35を介して、もう一つのリクライニングロック機構20Lにも伝達される。すなわち、リクライニングロック機構20Lはリクライニングロック機構20Rと連動して作動する。
ここで、本実施形態のリリースレバー32(操作レバー)では、少なくとも初期位置P1iにおいて、錘アーム32d(錘)がベース32aから上方に突出し、錘アーム32dの少なくとも一部が回動中心Axよりも上方に位置している。上述したように、第一操作アーム32bおよび第二操作アーム32cは、回動中心Axよりも下方に位置している。このため、仮にリリースレバー32が錘アーム32dを有さない構成であるとすると、リリースレバー32の重心が、回動中心Axから下方により大きく離れてしまう。このような構成にあっては、第一操作アーム32bおよび第二操作アーム32cが操作されていない状態(初期位置P1i)でリリースレバー32の重心に前方または後方への加速度が生じると、第一操作アーム32bおよび第二操作アーム32cが操作されていない状態であるにも拘わらず、リリースレバー32が当該加速度(慣性力)によって回動しやすくなる。そのような場合には、例えば、リリースレバー32の回動摩擦抵抗を増大させるような対策が施される。しかしながら、当該対策を施した構成では、人が操作する際に抵抗が増大するため、操作トルクが増大し、操作性が悪化する。
この点、本実施形態のリクライニングロック解除装置30では、リリースレバー32には、ベース32aから上方に突出した錘アーム32dが設けられている。本実施形態によれば、錘アーム32dが設けられた分、リリースレバー32の重心がより上方、すなわちより回動中心Axの近くに位置するため、リリースレバー32は、錘アーム32dが無い場合に比べて加速度(慣性力)によって回動し難くなる。よって、本実施形態によれば、例えば、リリースレバー32が作用する加速度によって不本意に回動するのを、抑制することができる。また、本実施形態によれば、例えば、比較的簡素な構成によって、操作力が増大するような不都合を回避しながら、リリースレバー32が非作動中に作用する加速度によって不本意に回動するのを、抑制することができる。すなわち、本実施形態によれば、例えば、通常時の操作性の確保と、加速度による不本意な回動の抑制とを、比較的簡素な構成によって両立することが可能となる。
また、本実施形態では、錘アーム32dは、回動中心Axの周方向に沿って延びた円弧部32d1を含む。よって、本実施形態によれば、例えば、錘アーム32dひいてはリリースレバー32が径方向に大型化するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、突壁34は、サポート16Rに固定され、リリースレバー32のベース32aと錘アーム32dとの間の切欠32f(隙間)を軸方向に貫通している。また、突壁34の端部34dは、リリースレバー32の方向R11への回動範囲を制限するストッパとして機能している。よって、本実施形態によれば、例えば、切欠32fを利用して、ストッパを設けることができるので、切欠32fとは別の位置にストッパを設けた構成に比べて、リクライニングロック解除装置30をよりコンパクトにあるいはより簡素に構成することができる。
また、本実施形態では、突壁34は、リターンスプリング33を引っ掛ける引掛部34cを有している。よって、本実施形態によれば、例えば、突壁34を利用して、引掛部34cを設けることができるので、突壁34とは別の位置に引掛部を設けた構成に比べて、リクライニングロック解除装置30をよりコンパクトにあるいはより簡素に構成することができる。
また、本実施形態では、突壁34は、周方向に沿った周壁34aを有している。よって、本実施形態によれば、例えば、真っ直ぐに構成された場合に比較して、周壁34aの曲げ剛性や捩り剛性をより高くすることができる。また、本実施形態によれば、例えば、周壁34aが、当該周壁34aの径方向外方に配置されたスパイラルスプリング(不図示)の、ガイド、位置決め部、あるいは他の部品との干渉を抑制する障壁として、機能しうる。また、本実施形態によれば、例えば、周壁34aが錘アーム32dの円弧部32d1に沿って延びることにより、錘アーム32dおよび周壁34aを、よりコンパクトに配置することができる。
また、本実施形態では、錘アーム32dは、回動中心Axから車両前後方向に離れた位置においてベース32aから上方に突出している。よって、本実施形態によれば、例えば、錘アーム32dのほぼ全域が、リリースレバー32の重心を上方に位置されるのに資する。
[リンク機構]
図10は、リクライニングロック機構20Lおよびリンク機構50の車幅方向左方から見た正面図、図11は、リクライニングロック機構20Lおよびリンク機構50の分解斜視図である。
図10,11に示されるように、リクライニングロック機構20L(20)およびリンク機構50は、いずれもサポート16Lに取り付けられている。
サポート16Lは、壁16aを有している。壁16aは、車幅方向と交差し、車両前後方向および車両上下方向に沿って延びている。壁16aには、貫通孔16bが設けられている。貫通孔16bの縁には、リクライニングロック機構20Lを位置決めする凹凸形状が設けられている。壁16aは、立壁の一例である。
リクライニングロック機構20L(20)は、サポート16Lの車幅方向の内方に接した状態で、サポート16Lに固定されている。リクライニングロック機構20Lは、リクライニングロック機構20Rと同様、操作部23が回動中心Ax回りに方向R11に回動された場合にあっては結合部を遮断位置に動かし、操作部23が方向R12に回動された場合にあっては結合部を結合位置に動かす。この場合、リクライニングロック機構20Lの構造とリクライニングロック機構20Rの構造とは、例えば、鏡像関係にある。
リクライニングロック解除装置30は、サポート16Lに支持される構成として、シャフト35、リターンスプリング36、および突壁53(引掛部53c)を有している。リクライニングロック解除装置30は、シャフト35の一部を除き、サポート16Lよりも車幅方向の左方に位置されている。
シャフト35は、リクライニングロック機構20Lを貫通し、リクライニングロック機構20Lの操作部23と一体に回動する。シャフト35は、操作部23と一体に、回動中心Ax回りを回動する。リターンスプリング36は、シャフト35および操作部23を、初期位置に戻す方向、すなわち回動中心Ax回りに方向R12に、付勢している。シャフト35の車幅方向外方の先端部分には、リターンスプリング36を引っ掛ける切欠を有した引掛部35aが設けられている。リターンスプリング36は、付勢部材の一例である。
ここで、シャフト35は、図4,5に示されるように、連結シャフト37を介してシャフト31と連結されている。よって、シャフト35および操作部23は、リリースレバー32の操作によって、連結シャフト37を介して回動中心Ax回りに方向R11に回動するとともに、リターンスプリング36(およびシャフト31を付勢しているリターンスプリング33)の付勢力によって、回動中心Ax回りに方向R12に回動する。すなわち、連結シャフト37によってシャフト31,35が連結されているため、リクライニングロック機構20Lは、リクライニングロック機構20Rと連動して作動する。
リンク機構50は、リンク部材51、リターンスプリング52、突壁53、及びブラケット54を有している。リンク機構50は、サポート16Lよりも車幅方向の左方に位置されている。
リンク部材51は、シャフト35により、回動中心Ax回りに回動可能に支持されている。リンク部材51は、シートバック12(図1〜3参照)が所定角度以上前傾した場合に、当該シートバック12と固定された押圧部材12a(図10参照)によって前傾方向に押されることによって、回動する。ここで、回動中心Ax回りのシートバック12の前傾方向は、方向R12である。よって、リンク部材51は、押圧部材12aに押されて方向R12へ回動する。
シートバック12の所定角度以上の前傾は、シート10に乗員が着座していない状態において、リリースレバー32の第二操作アーム32c(ウォークインアーム)の人の足や手による押し下げ操作に伴って、リクライニングロック機構20がリクライニングアンロック状態となり、シートバック12がスパイラルスプリングによって前傾方向に付勢されることによって、生じる。すなわち、リンク部材51は、上述したウォークインモードにおいて、回動する。リンク部材51は、このようなシートバック12の前傾に伴って、スライドロック解除装置60に繋がるケーブル70のインナワイヤ71を引っ張る。スライドロック解除装置60は、リンク部材51によるインナワイヤ71の牽引によって、スライドロック状態からスライドアンロック状態に遷移する。すなわち、リンク機構50は、上述したウォークインモードにおけるシート10の前傾に基づいて、シート10の前後方向への移動を許可する機構である。
突壁53は、サポート16Lに固定されている。突壁53は、回動中心Ax回りに周方向に沿って延びた部分円筒状の周壁53aを有している。周壁53aの外周面は、シートバック12を回動中心Ax回りに前傾方向に付勢するスパイラルスプリングのガイドとして機能している。周壁53aには、当該スパイラルスプリングを引っ掛ける切欠を有した引掛部53bが設けられている。突壁53には、リターンスプリング36を引っ掛ける切欠を有した引掛部53cが設けられている。また、周壁53aには、リターンスプリング52を引っ掛ける切欠を有した引掛部53dが設けられている。
ブラケット54は、サポート16Lに固定され、サポート16Lから後方に突出している。ブラケット54には、ケーブル70のアウタチューブ72を引っ掛ける切欠を有した引掛部54aが設けられている。なお、ブラケット54は、突壁53と一体に設けられてもよい。
図12は、リンク部材51の軸方向から見た正面図、図13は、リンク部材51の斜視図、図14は、リンク部材51およびサポート16Lの一部の平面図である。図10,11に示されるように、リンク部材51は、車幅方向と交差して広がっている。また、図12,13に示されるように、リンク部材51の形状は板状である。リンク部材51は、ベース51aと、出力アーム51bと、入力アーム51cと、を有している。
ベース51aには、シャフト35が貫通する貫通孔51dが設けられている。リンク部材51とシャフト35とは連動せず、それぞれ独立して回動する。
出力アーム51bは、第一延部51b1と、第一突出部51b2と、を有している。第一延部51b1および第一突出部51b2は、いずれも車幅方向と交差して広がっている(延びている)。第一延部51b1は、ベース51aの下部から後方に向けて延びている。すなわち、第一延部51b1は、回動中心Axから離れる方向に延びている。出力アーム51bは、第一延部51b1の先端(後端)に位置され回動中心Axから離れた屈曲部51b3で略90°上方に湾曲し、第一突出部51b2は、上方に向けて延びている。屈曲部51b3において、上方は、方向R12に略沿っている。すなわち、出力アーム51bは、屈曲部51b3において方向R12に屈曲し、第一突出部51b2は、第一延部51b1の回動中心Axから離れた位置から当該方向R12に向けて突出している。なお、第一延部51b1の延びる方向は、回動中心Axから離れる方向であればよく、後方には限定されない。また、第一突出部51b2の突出する方向は、方向R12に略沿っていればよく、上方には限定されない。
このような出力アーム51bの屈曲形状により、ベース51aと出力アーム51bとの間には、略U字状の切欠51e1が設けられている。
第一突出部51b2には、軸方向に貫通する貫通孔51b4が設けられている。貫通孔51b4は、開口部とも称されうる。図11に示されるように、貫通孔51b4の縁51b5(本実施形態では下縁)には、ケーブル70のインナワイヤ71の先端に設けられたフック71aが引っ掛けられる。縁51b5は、引掛部の一例である。フック71aは、端部の一例である。縁51b5に引っ掛けられたフック71aおよびインナワイヤ71は、方向R11へ延びている。
上述したように、本実施形態では、屈曲部51b3から方向R12へ突出した第一突出部51b2に、貫通孔51b4が設けられている。よって、図10から明らかとなるように、屈曲部51b3および第一突出部51b2の一部(図10中に破線Gで示す領域)は、貫通孔51b4と方向R11に隣接して位置し、貫通孔51b4の縁51b5に引っ掛かったフック71aと軸方向に重なり、当該フック71aのガイドとして機能することができる。すなわち、屈曲部51b3および第一突出部51b2の一部は、ガイド部の一例である。また、本実施形態では、第一突出部51b2から屈曲部51b3にかけて、フック71aと面した平面51b6が設けられている。平面51b6は、軸方向と交差して広がっている。このような構成により、フック71aは、リンク部材51の移動に伴い、平面51b6に沿って移動することができる。平面51b6は、ガイド面や摺動面と称されうる。
図13,14に示されるように、出力アーム51bの、第一延部51b1と屈曲部51b3および第一突出部51b2との間には、段差51b7が設けられている。このような出力アーム51bの段差形状により、屈曲部51b3および第一突出部51b2は、第一延部51b1よりも、サポート16Lの壁16aから離れて位置されている。言い換えると、屈曲部51b3および第一突出部51b2と壁16aとの間の隙間は、第一延部51b1と壁16aとの間の隙間よりも大きい。
図12〜14に示されるように、出力アーム51bには、第一延部51b1から屈曲部51b3に至る補強部51f1が設けられている。補強部51f1は、例えば出力アーム51bの幅方向の略中央部で軸方向に凸に突出した部位であって、出力アーム51bの長手方向に沿って延びた部位である。ただし、補強部51f1は、出力アーム51bの幅方向の端縁が軸方向に折り曲げられたような構成であってもよい。補強部51f1は、段差51b7を跨いで設けられている。なお、段差51b7および補強部51f1を除き、第一延部51b1、屈曲部51b3、および第一突出部51b2は、いずれも、軸方向と交差(直交)している。補強部51f1は、第一補強部の一例である。
また、図13,14に示されるように、第一突出部51b2における、貫通孔51b4の縁51b5は、その全周に渡って、平面51b6から凹むとともに、サポート16Lの壁16aに近付く方向に突出している。仮に、貫通孔51b4の縁51b5が平面51b6から突出していると、フック71aが平面51b6に沿い難くなる。この点、本実施形態では、貫通孔51b4の縁51b5は、平面51b6において凹んでいるため、フック71aが平面51b6により安定的に接することができる。また、縁51b5が平面51b6の反対側に突出していることにより、フック71aのがたつきが減るという利点もある。
図12,13に示されるように、入力アーム51cは、第二延部51c1と、第二突出部51c2と、を有している。第二延部51c1および第二突出部51c2は、いずれも車幅方向と交差して広がっている(延びている)。第二延部51c1は、ベース51aの下部から前方に向けて延びている。すなわち、第二延部51c1は、出力アーム51bの第一延部51b1とは反対側に向けて延びている。第一延部51b1と第二延部51c1とは、略一直線上に並んでいる。入力アーム51cは、第二延部51c1の先端(前端)に位置され回動中心Axから離れた屈曲部51c3で略90°上方に湾曲され、第二突出部51c2は、上方に向けて延びている。屈曲部51c3において、上方は、方向R11に略沿っている。すなわち、入力アーム51cは、屈曲部51c3において方向R11に屈曲し、第二突出部51c2は、第二延部51c1の回動中心Axから離れた位置から当該方向R11に向けて突出している。なお、第二延部51c1の延びる方向は、回動中心Axから離れる方向であって第一延部51b1の延びる方向とは異なる方向であればよく、第一延部51b1の延びる方向の反対方向や前方には限定されない。また、第二突出部51c2の突出する方向は、方向R11に略沿っていればよく、上方には限定されない。
このような入力アーム51cの屈曲形状により、ベース51aと入力アーム51cとの間には、略U字状の切欠51e2が設けられている。
第二突出部51c2には、径方向に延びた端部51c4が設けられている。端部51c4は、押圧部材12a(図10参照)によって押圧される。言い換えると、第二突出部51c2は、前傾したシートバック12と当接する。端部51c4は、被押圧部あるいは入力部と称されうる。
また、入力アーム51cには、第二延部51c1から屈曲部51c3を経て第二突出部51c2に至る補強部51f2が設けられている。補強部51f2は、例えば入力アーム51cの幅方向の略中央部で軸方向に凸に突出した部位であって、入力アーム51cの長手方向に沿って延びた部位である。ただし、補強部51f2は、入力アーム51cの幅方向の端縁が軸方向に折り曲げられたような構成であってもよい。なお、第二延部51c1、屈曲部51c3、および第二突出部51c2は、いずれも、軸方向と交差(直交)している。補強部51f2は、第二補強部の一例である。
また、リンク部材51には、リターンスプリング52を引っ掛ける切欠を有した引掛部51gが設けられている。
図15,16は、図10と同じ方向から見たリンク機構50の一部の正面図であって、図15は、リンク部材51が初期位置P2iに位置された状態を示す図であり、図16は、リンク部材51が制限位置P2eに位置された状態を示す図である。
シートバック12の前傾に伴い、押圧部材12a(図10,16参照)から端部51c4が押圧されることにより、リンク部材51は、初期位置P2iから方向R12へ所定角度回動することができる。リンク部材51の方向R12への回動により、貫通孔51b4の縁51b5に引っ掛けられたインナワイヤ71は、上方へ引かれる。
リンク部材51は、図16の制限位置P2eに位置された状態まで、方向R12へ回動することができる。制限位置P2eにおいて、押圧部材12aは、サポート16Lの上方かつ前方の端部16c(図10,16参照)と当接している。リンク部材51は、インナワイヤ71に牽引されることにより、方向R11へ付勢されている。よって、端部16cは、押圧部材12aと当接することにより、リンク部材51の方向R12への回動範囲を制限する間接的なストッパとして機能している。なお、リンク部材51は、リターンスプリング52によって方向R12に付勢されている。これにより、インナワイヤ71の弛みが解消されるとともに、フック71aが貫通孔51b4の縁51b5の方向R11の端部に引っ掛かった状態が維持される。
スライドロック解除装置60(図4,5参照)は、リンク部材51によるインナワイヤ71の牽引に応じて、スライドロック機構40をスライドロック状態からスライドアンロック状態に遷移させる。リンク部材51が初期位置P2i(図15参照)と制限位置P2e(図16参照)との間のスライドロック解除位置(不図示)に位置されたときに、スライドロック機構40は、スライドロック状態からスライドアンロック状態へ遷移する。
シートバック12への外部からの入力によりシートバック12がスパイラルスプリング(不図示)の付勢力に抗って後傾し、押圧部材12aの端部16cとの当接が解消され、押圧部材12aが端部16cから離間すると、リンク部材51は、インナワイヤ71に牽引されることにより、方向R11へ回動し、初期位置P2i(図15参照)へ戻る。この際、スライドロック機構40は、スライドアンロック状態からスライドロック状態へ遷移する(戻る)。
また、図15に示されるように、突壁53の周壁53aの方向R12の端部53eは、初期位置P2iに位置したリンク部材51の入力アーム51cと隙間をあけて面している。よって、端部53eは、何らかの原因によってリンク部材51が初期位置P2iを超えて方向R11へ回動した場合にあっては、入力アーム51cと当接し、当該当接した位置を超えた方向R11への回動を制限する予備ストッパとして機能することができる。また、端部53eは、入力アーム51cのうち補強部51f2が設けられた部位と面しており、当該補強部51f2が設けられた部位と当接する。よって、端部53eとの当接によって入力アーム51cが変形するのを抑制することができる。端部53eは、ストッパの一例である。
また、図16に示されるように、突壁53の引掛部53cの方向R11の端部53fは、制限位置P2eに位置したリンク部材51の出力アーム51bと隙間をあけて面している。よって、端部53fは、何らかの原因によってリンク部材51が制限位置P2eを超えて方向R12へ回動した場合にあっては、出力アーム51bと当接し、当該当接した位置を超えた方向R12への回動を制限する予備ストッパとして機能することができる。また、端部53fは、出力アーム51bのうち補強部51f1が設けられた部位に面しており、当該補強部51f1が設けられた部位と当接する。よって、端部53fとの当接によって出力アーム51bが変形するのを抑制することができる。端部53fは、ストッパの一例である。
以上、説明したように、本実施形態では、出力アーム51bの第一延部51b1は、回動中心Axから離れる方向に延び、屈曲部51b3は、第一延部51b1から方向R12(第一回動方向)に湾曲し、第一突出部51b2は、屈曲部51b3から方向R12に突出し、第一突出部51b2に設けられた貫通孔51b4の縁51b5(引掛部)に、インナワイヤ71(ケーブル70)のフック71aが引っ掛けられ、屈曲部51b3および第一突出部51b2の一部のうち縁51b5に対して方向R11(第二回動方向)に隣接する部位が、ケーブル70のガイドとして機能している。よって、本実施形態によれば、例えば、リンク部材51によってケーブル70をより安定的に支持することができる。なお、ガイド部は、屈曲部51b3および第一突出部51b2のうち少なくとも一方に設けられればよい。
また、本実施形態では、出力アーム51bの屈曲部51b3は、段差51b7を介して第一延部51b1と接続され、第一延部51b1よりも壁16a(立壁)から軸方向に離間した位置で、軸方向と交差して延びている。よって、本実施形態によれば、例えば、屈曲部51b3と壁16aとの間にフック71aを収容する隙間を確保しやすくなり、フック71aが壁16aと干渉するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、補強部51f1(第一補強部)は、第一延部51b1から当該第一延部51b1に沿い、段差51b7を跨いで少なくとも屈曲部51b3まで延びている。よって、本実施形態によれば、例えば、出力アーム51bが段差51b7において変形しやすくなるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、補強部51f2(第二補強部)は、第二延部51c1から第二突出部51c2まで延びている。よって、本実施形態によれば、例えば、入力アーム51cが第二延部51c1と第二突出部51c2との間において変形しやすくなるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、突壁53の端部53e,53fは、リンク部材51の回動範囲を制限するストッパとして機能している。よって、本実施形態によれば、例えば、突壁53とは別の部材にストッパを設けた構成に比べて、リンク機構50をよりコンパクトにあるいはより簡素に構成することができる。
また、本実施形態では、突壁53は、スパイラルスプリング(不図示)およびリターンスプリング36,52を引っ掛ける引掛部53b,53c,53dを有している。よって、本実施形態によれば、例えば、突壁53を利用して、引掛部53b,53c,53dを設けることができるので、突壁53とは別の部材に引掛部を設けた構成に比べて、リンク機構50をよりコンパクトにあるいはより簡素に構成することができる。
また、本実施形態では、突壁53は、周方向に沿った周壁53aを有している。よって、本実施形態によれば、例えば、真っ直ぐに構成された場合に比較して、周壁53aの曲げ剛性や捩り剛性をより高くすることができる。また、本実施形態によれば、例えば、周壁53aが、当該周壁53aの径方向外方に配置されたスパイラルスプリング(不図示)の、ガイド、位置決め部、あるいは他の部品との干渉を抑制する障壁として、機能しうる。
[スライドロック機構およびスライドロック解除装置]
図4,5に示されるように、フロアには、車幅方向に互いに離間し車両前後方向に沿って延びた二本のロワレール13が互いに平行に配置され、各ロワレール13にアッパレール14がスライド可能に取り付けられている。アッパレール14も、車両前後方向に沿って所定の長さで延びている。シートクッション11(シート10)は、二本のアッパレール14を上方から跨ぐ状態で、当該二本のアッパレール14に固定されている。ロワレール13は、レールの一例であり、アッパレール14は、スライダの一例である。
図17,18は、スライドロック機構40の側面図であって、図17はスライドロック状態を示し、図18はスライドアンロック状態を示している。図17に示されるように、ロワレール13内で、付勢部材42は、ロック部材41を下から上に持ち上げるように付勢し、ロワレール13の内側フランジ13aに下から押し当てることができる。ロック部材41は付勢部材42の一端に固定されており、付勢部材42の他端(不図示)はアッパレール14に固定されている。よって、図18のスライドアンロック状態にあっては、付勢部材42およびロック部材41は、アッパレール14とともに車両前後方向にスライドすることができる。付勢部材42は、例えば板ばねである。
アッパレール14に取り付けられたロック部材41とロワレール13の内側フランジ13aとの噛み合いにより、ロック部材41が内側フランジ13aにすなわちロワレール13にロックされる。内側フランジ13aは、それぞれ、車両上下方向および車両前後方向に沿って延びている。なお、内側フランジ13aの形状等のスペックは、この例には限定されない。
内側フランジ13aには、図17,18に示されるように、車両前後方向に一定のピッチ(間隔)で複数の切欠13c(凹部)が設けられている。切欠13cは、内側フランジ13aの下縁において、車両下方に向けて開口している。なお、図17,18には、二つの内側フランジ13aのうち一つのみが示されている。
他方、ロック部材41は、例えば、車両前後方向および車幅方向に略沿った略四角形の板状に構成され、ロック部材41の車幅方向の縁のそれぞれには、車両前後方向に一定のピッチ(間隔)で、複数の突起41a(爪)が設けられている。切欠13cのピッチは、突起41aのピッチと同じである。なお、ロック部材41および付勢部材42の構成や配置等のスペックは、この例には限定されない。
図17に示されるように、ロック部材41が付勢部材42によって持ち上げられ、ロック位置Plkに位置した状態では、ロック部材41の複数の突起41aが内側フランジ13aの複数の切欠13c内に収容される。これにより、ロック部材41ひいてはアッパレール14が、ロワレール13にロックされる(スライドロック状態)。
他方、図18に示されるように、ロック部材41が、後述するスライドロック解除装置60の作動部材62の突起62c1(図19参照)により、付勢部材42の上方への付勢力(弾性反発力)に抗して下方に押されると、突起41aが切欠13cから下方へ離脱し、ロック部材41が内側フランジ13aの下縁よりも下方のロック解除位置Prlに位置される。これにより、ロック部材41ひいてはアッパレール14が、ロワレール13に対して車両前後方向にスライド可能な状態が得られる(スライドアンロック状態)。
詳しくは後述するが、リンク部材51の動作に連動して、作動部材62の突起62c1は、ロック部材41を下方へ押圧する。他方、突起62c1によるロック部材41の押し下げが解除されると、付勢部材42は、ロック部材41を下から上に持ち上げ、ロック部材41が内側フランジ13aにロックされる。このような構成により、スライドロック機構40は、内側フランジ13aが設けられている範囲内の複数の前後位置(任意の位置)で、ロック部材41を内側フランジ13aにロックすることができる。言い換えると、スライドロック機構40は、アッパレール14をロワレール13の複数の前後位置(任意の位置)に位置決めすることができる。
図19は、ロワレール13、アッパレール14、およびスライドロック解除装置60の斜視図、図20は、ロワレール13、アッパレール14、およびスライドロック解除装置60の平面図、図21は、ロワレール13、アッパレール14、およびスライドロック解除装置60の正面図である。なお、図19〜21には、一例として、平行な二本のロワレール13のうち進行方向に向かって右側のロワレール13に取り付けられたスライドロック解除装置60について説明する。よってスライドロック解除装置60に関する以下の説明において、車幅方向左方は、もう一つのロワレール13に近付く方向であり、車幅方向右方は、もう一つのロワレール13から遠ざかる方向である。
図19〜21に示されるように、スライドロック解除装置60は、支持部材61と、作動部材62と、シャフト63と、リターンスプリング64と、を有している。
支持部材61は、底壁61aと、立壁61bと、垂下壁61cと、を備えている。
底壁61aは、アッパレール14の天面14a上に重ねられた状態で、当該アッパレール14に、例えばねじ等の結合具によって固定されている。底壁61aは、車両上下方向と交差し、車両前後方向および車幅方向に沿って広がっている。
底壁61aには、リターンスプリング64の一端を挿入する貫通孔61a3が設けられている。リターンスプリング64の一端は貫通孔61a3を下方へ貫通し、底壁61aの貫通孔61a3の周辺部に引っ掛けられている。
立壁61bは、底壁61aの前部の車幅方向左方の端部からロワレール13の左側の側壁13bのほぼ上方となる位置で上方に突出している。立壁61bは、車幅方向と交差し、車両前後方向および車両上下方向に沿って広がっている。
図20に示されるように、立壁61bには、貫通孔61dが設けられている。シャフト63は、貫通孔61dを車幅方向に貫通した状態で、立壁61bに固定されている。シャフト63は、立壁61bから車幅方向左方に突出した円柱部63aを構成している。
垂下壁61cは、立壁61bよりも後方に離れて位置され、底壁61aの後部の車幅方向左方の端部からロワレール13の左側の側壁13bよりもさらに左側となる位置で、下方に突出している。垂下壁61cは、車両前後方向と交差し、車幅方向および車両上下方向に沿って広がっている。
図19,21に示されるように、垂下壁61cには、切欠が設けられた保持部61eが設けられている。この保持部61eに、ケーブル70のアウタチューブ72が固定される。
作動部材62は、中央壁62aと、入力壁62bと、出力壁62cと、を有している。
中央壁62aは、立壁61bの車幅方向左方に隣接して配置されている。中央壁62aは、車幅方向と交差し、車両前後方向および車両上下方向に沿って広がっている。
図20に示されるように、中央壁62aには、貫通孔62a1が設けられている。シャフト63は、貫通孔62a1を車幅方向に貫通している。シャフト63の外周に沿って中央壁62aが揺動できるよう、貫通孔62a1とシャフト63の外周とのクリアランスは比較的小さく設定されている。すなわち、シャフト63は、中央壁62aを、車幅方向に沿った回動中心Ax2回りに回動可能に支持している。回動中心Ax2は、シャフト63の中心である。
図19,20に示されるように、中央壁62aの後端には、後方に向けて突出した突起62a2が設けられている。また、中央壁62aの前部62a3には、リターンスプリング64の他端が引っ掛けられている。中央壁62aの前部62a3は、付勢部位Puの一例である。
図19,21に示されるように、入力壁62bは、中央壁62aの下部から左方に向けてクランク状に屈曲しながら下方に延びた状態に設けられている。入力壁62bは、ロワレール13の左側の側壁13bよりもさらに左側となる位置で下方に突出している。入力壁62bは、車幅方向と交差し、車両前後方向および車両上下方向に沿って広がっている。
図19に示されるように、入力壁62bには、貫通孔62b1が設けられている。貫通孔62b1の縁62b2には、インナワイヤ71のフック71bが引っ掛けられる。また、入力壁62bの後端には、上方に向けて突出した突起62b3が設けられている。
図19,21に示されるように、出力壁62cは、中央壁62aの前部から右方に向けてクランク状に屈曲しながら下方に延びた状態に設けられている。出力壁62cは、アッパレール14に設けられた貫通孔14bを下方に貫通し、ロック部材41(図17,18参照)の上面に接している。出力壁62cの下端には、斜め後方に向けて突出した突起62c1が設けられている。
図22,23は、スライドロック解除装置60の一部の側面図であって、図22は、作動部材62が初期位置P3iに位置された状態を示す図であり、図23は、作動部材62が最大回動位置P3eに位置された状態を示す図である。
上述したように、リターンスプリング64の一端は、支持部材61の底壁61aに引っ掛かり、リターンスプリング64の他端は、中央壁62aの前部62a3に引っ掛かっている。このような構成により、リターンスプリング64は、作動部材62を、方向R22に付勢している。
よって、図22の初期位置P3iにあっては、作動部材62の中央壁62aの後端に設けられた突起62a2の下端が、底壁61aの上面61a1と当接している。底壁61aの上面61a1は、作動部材62の方向R22への回動を制限するストッパとして機能している。中央壁62aの突起62a2の下端は、第二当接部位Pc2の一例である。底壁61aは、壁の一例である。
インナワイヤ71によって入力壁62bが後方に引かれると、作動部材62は、方向R21へ回動し、最大回動位置P3eまで回動することができる。最大回動位置P3eの角度(姿勢)は、インナワイヤ71による牽引量、ひいては、リンク部材51の回動量、すなわち、ウォークインモードにおけるシートバック12の前傾量(角度)によって定まる。
作動部材62の方向R21への回動により、出力壁62cの突起62c1がロック部材41(図17,18参照)を下方へ押圧し、これにより、スライドロック機構40は、スライドロック状態からスライドアンロック状態へ遷移する。ここで、図22,23に示されるように、突起62c1の先端の形状は、曲面状(円筒状)である。このため、作動部材62が方向R21へ回動して、突起62c1がロック部材41を押す際、突起62c1は、回動角度によらず作動部材62に線接触する。インナワイヤ71による牽引が解除されると、作動部材62は、リターンスプリング64によって方向R22へ付勢され、初期位置P3iに戻る。これにより、スライドロック機構40は、スライドアンロック状態からスライドロック状態へ遷移する(戻る)。
また、図23に示されるように、底壁61aの下面61a2は、最大回動位置P3eに位置した作動部材62の突起62b3と隙間をあけて面している。よって、底壁61aの下面61a2は、何らかの原因によって作動部材62が最大回動位置P3eを超えて方向R21へ回動した場合にあっては、突起62b3と当接し、当該当接した位置を超えた方向R21への回動を制限する予備ストッパとして機能することができる。突起62b3の先端は、第一当接部位Pc1の一例である。
上述したように、スライドロック解除装置60にあっては、作動部材62の中央壁62aに設けられた貫通孔62a1の縁が、シャフト63によって回動可能に支持されている。よって、図22に示される支持部位Psにおいて、作動部材62は、支持部材61によって回動可能に支持されている。また、作動部材62の入力壁62bの貫通孔62b1の縁62b2が、インナワイヤ71から牽引される。よって、図22に示される牽引部位Pdにおいて、作動部材62は、インナワイヤ71(ケーブル70)から牽引されている。また、作動部材62の出力壁62cの突起62c1が、ロック部材41を押圧する。よって、図22に示される押圧部位Ppにおいて、作動部材62は、ロック部材41を押圧する。インナワイヤ71(ケーブル70)は、入力部材の一例である。なお、入力部材は、インナワイヤ71(ケーブル70)には限定されない。
図21から明らかとなるように、本実施形態では、牽引部位Pdおよび押圧部位Ppが、支持部位Psから車幅方向に互いに反対側にずれている。よって、本実施形態では、例えば、牽引部位Pdおよび押圧部位Ppが、支持部位Psから車幅方向に同じ側にずれている場合に比べて、支持部位Psに対する作動部材62の車幅方向のバランスが確保されやすい。よって、本実施形態によれば、例えば、支持部材61が作動部材62から受けた力によって車幅方向に傾いたり撓んだりするのを抑制することができる。
また、本実施形態では、図19から明らかとなるように、第一当接部位Pc1および牽引部位Pdが、いずれも入力壁62bに設けられている。よって、第一当接部位Pc1と牽引部位Pdとが、例えば、上方あるいは前方から見た場合に、回動中心Ax2と交差した方向(第一方向)に並んでいる。すなわち、第一当接部位Pc1と牽引部位Pdとが、回動中心Ax2の軸方向(車幅方向)にずれていない。仮に、第一当接部位Pc1と牽引部位Pdとが回動中心Ax2の軸方向にずれていると、牽引部位Pdから力が入力される部位と、第一当接部位Pc1から反力を受ける部位とが回動中心Ax2の軸方向にずれるため、作動部材62に回動中心Ax2の軸方向に傾く力(回転モーメント)が生じ、作動部材62が回動中心Ax2の軸方向に傾いたり撓んだり座屈したりしやすくなる。この点、本実施形態によれば、第一当接部位Pc1と牽引部位Pdとが、回動中心Ax2の軸方向にずれていないので、例えば、作動部材62が回動中心Ax2の軸方向に傾いたり撓んだり座屈したりするのを抑制することができる。
また、本実施形態では、図19から明らかとなるように、第二当接部位Pc2および付勢部位Puが、いずれも中央壁62aに設けられている。よって、第二当接部位Pc2と付勢部位Puとが、例えば、上方あるいは前方から見た場合に、回動中心Ax2と交差した方向(第二方向)に並んでいる。すなわち、第二当接部位Pc2と付勢部位Puとが、回動中心Ax2の軸方向(車幅方向)にずれていない。仮に、第二当接部位Pc2と付勢部位Puとが回動中心Ax2の軸方向にずれていると、付勢部位Puから力が入力される部位と、第二当接部位Pc2から反力を受ける部位とが回動中心Ax2の軸方向にずれるため、作動部材62に回動中心Ax2の軸方向に傾く力(回転モーメント)が生じ、作動部材62が回動中心Ax2の軸方向に傾いたり撓んだり座屈したりしやすくなる。この点、本実施形態によれば、第二当接部位Pc2と付勢部位Puとが、回動中心Ax2の軸方向にずれていないので、例えば、作動部材62が回動中心Ax2の軸方向に傾いたり撓んだり座屈したりするのを抑制することができる。
また、本実施形態では、図22,23から明らかとなるように、作動部材62の第一当接部位Pc1および第二当接部位Pc2が、支持部材61の底壁61aの下面61a2および上面61a1と当接可能となるよう、構成されている。よって、底壁61aが、第一当接部位Pc1および第二当接部位Pc2の双方のストッパとして機能するため、例えば、それぞれ別個にストッパを設けた構成に比べて、スライドロック解除装置60を、よりコンパクトにあるいはより簡素に構成することができる。
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら様々な形態や変形された形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、部位、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。