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JP2019062471A - 画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム - Google Patents

画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 複数の記録走査ごとに、より分散性の高いドットパターンを出力可能な画像データを生成する。【解決手段】 記録媒体の同一領域に対してn(≧2)回の記録を重ねることで画像を形成するための画像処理装置であって、閾値マトリクスを用いてディザ処理した場合に得られる各階調のドットパターンの分散性を示す閾値マトリクス特性を保持する保持手段と、前記閾値マトリクス特性に基づいて、画像データを前記n回の記録走査に分割することにより、前記n回の記録走査ごとの記録データを設定する設定手段と、前記n回の記録それぞれの記録データに対して、前記閾値マトリクスを用いてディザ処理するハーフトーン処理手段と、を有することを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、画像データに基づいて記録媒体上に画像を形成するため画像処理技術に関する。
近年、パソコンにより処理した画像データを印刷することが一般的に行われている。パソコンが扱う画像データの階調数に比べて、プリンタなどの画像形成装置が表現可能な画素あたりの階調数は少ない場合が多い。このような場合、入力画像データの階調数を画像形成装置が表現可能な階調数に変換するハーフトーン処理が必要である。ハーフトーン処理の1つとして、ディザ法が知られている。ディザ法は、入力された画像データにおける画素値と閾値マトリクスにおける画素に対応した閾値とを比較することで、各画素の出力値を決定する手法である。
特許文献1は、画像を複数の記録走査に分割し、各記録走査の記録データに対してブルーノイズ型の閾値マトリクスを用いてディザ処理する方法を開示している。特に、各記録走査を累積して得られるドットパターンの分散性を考慮して、各記録走査のハーフトーン画像データを生成している。
特開2013−38643号公報
しかしながらディザ処理は、閾値マトリクスの特性により、必ずしも全ての階調の画像を分散性の高いドットパターンに変換できない。そのため従来は、画像データを各記録走査に分割して得られる記録データの階調によって、各記録走査のドットパターンは分散性の高いドットパターンにならない場合があった。
本発明の目的は、複数の記録走査ごとに、分散性の高いドットパターンを出力可能な画像データを生成することである。
上記課題を解決するため本発明は、記録媒体の同一領域に対してn(≧2)回の記録を重ねることで画像を形成するための画像処理装置であって、閾値マトリクスを用いてディザ処理した場合に得られる各階調のドットパターンの分散性を示す閾値マトリクス特性を保持する保持手段と、前記閾値マトリクス特性に基づいて、画像データを前記n回の記録走査に分割することにより、前記n回の記録走査ごとの記録量を表す記録データを設定する設定手段と、前記n回の記録それぞれの記録データに対して、前記閾値マトリクスを用いてディザ処理するハーフトーン処理手段と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、ディザ処理に用いる閾値マトリクスの特性を考慮して画像を複数の記録走査に分割することにより、複数の記録走査ごとに、分散性の高いドットパターンを出力可能な画像データを生成することができる。
画像処理装置および画像形成装置の構成を示すブロック図 記録ヘッド201の構成例を示す図 画像処理と印刷の流れを示す図 走査番号に応じたヘッドと画像形成領域の関係を示す図 閾値マトリクスの特性を示す図 記録データ設定処理のフローチャート 記録データ更新処理のフローチャート ハーフトーン処理のフローチャート 記録データの更新による効果を説明するための図 閾値マトリクスの特性を示す図 閾値マトリクスの生成の流れを示すフローチャート ドットパターン生成処理のフローチャート ドットパターン生成処理の概要を示す概念図 閾値決定処理のフローチャート 閾値マトリクスの特性を示す図 記録データ設定処理のフローチャート
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は本発明を必ずしも限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。
<実施形態1>
実施形態1では、画像データに基づいて、インクジェット方式の画像形成装置が出力可能な印刷データを生成する。インクジェット方式の画像形成装置は、記録媒体における同一領域に対して、n(≧2)回の記録走査を行うことでn回画像を重ねて最終的な画像を形成するマルチパス印刷を行うものとする。
(装置構成)
図1は、実施形態1に適用可能な画像処理装置、および画像形成装置の構成を示したブロック図である。図1(a)において、画像処理装置1と画像形成装置2はインタフェース又は回路によって接続されている。画像処理装置1は、プリンタドライバがインストールされたパーソナルコンピュータに相当する。この場合、以下に説明する画像処理装置1内の各部は、コンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。
図1(b)は、画像処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。画像処理装置1は、CPU1001、ROM1003、RAM1004、外部記憶装置1005、汎用インタフェース1002を有する。CPU1001は、入力されたデータや後述のRAM1003やROM1004に格納されているコンピュータプログラムを用いて、画像形成システム全体の動作を制御する。なお、ここではCPU1001が画像処理装置全体を制御する場合を例に説明するが、複数のハードウェアが処理を分担することにより、装置全体を制御するようにしてもよい。RAM1004は、外部記憶装置1005から読み取ったコンピュータプログラムやデータ、後述の汎用インタフェース部1002を介して外部から受信したデータを一時的に記憶する記憶領域を有する。またRAM1004は、CPU1001が各種の処理を実行するために用いる記憶領域やCPU1001が画像処理を実施する際に用いる記憶領域として使用される。すなわちRAM1004は、各種の記憶領域を適宜提供することができる。ROM1003には、画像処理装置における各部の設定を行う設定パタメータやブートプログラムなどが格納されている。外部記憶装置1005は、CPU1001が各種の処理を実行するために必要な各種データや各種情報等を記憶する記憶装置であり、例えばHDD等である。汎用インタフェース1002は、外部装置(ここでは、画像形成装置2)と通信するためのインタフェースであり、例えばUSBインタフェース等である。
図1(a)には、画像処理装置1の論理構成を示す。画像処理装置1は、入力端子101から入力された印刷対象のカラーの画像データ(以下、入力画像データ)を入力画像バッファ102に格納する。入力画像データは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3つの色成分により構成されている。
色分解処理部103は、各色の入力画像データを画像形成装置2が備える色材色に対応した画像データへ分解する。色分解処理部103は、色分解用ルックアップテーブル(LUT)104を参照する。本実施形態では、RGB各色の入力画像データを、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類の色材色に対応した画像データへ分解する。
記録データ設定部105は、色分解処理部103から得られる各色材色に対応する色分解処理後の画像データを各記録走査に分割することにより、記録走査毎の記録量を表す記録データへ変換する。本実施形態における記録データは、各走査によって印字されるインク量を示す。記録データ設定部105は、閾値マトリクス特性LUT106を用いる。閾値マトリクス特性LUT106は、ハーフトーン処理部107が用いる閾値マトリクス108における各階調に対するドットパターンの分散性を対応付けて保持したLUTである。記録データ設定処理および閾値マトリクス特性LUTの詳細については、後述する。
ハーフトーン処理部107は、記録データ設定部105によって得られる各色の走査ごと記録データにディザ処理を実行し、記録データをより階調数の少ないハーフトーン画像データに変換する。ハーフトーン処理部107は、閾値マトリクス108を用いてディザ処理を実行する。閾値マトリクス108は、ブルーノイズ特性を有する。ディザ処理の詳細については後述する。ハーフトーン画像データは、ハーフトーン画像格納バッファ109に格納された後、出力端子110より画像形成装置2へ出力される。
画像形成装置2は、画像処理装置1から受信した各色のハーフトーン画像データに基づいて、記録ヘッド201を記録媒体202に対して相対的に縦横に移動することにより、記録媒体上に画像を形成する。記録ヘッド201はインクジェット方式のものであり、一つ以上の記録素子(ノズル)を有する。
図2は、記録ヘッド201の構成例を示す図である。本実施形態では前述の通り、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類のインクを記録ヘッド201に搭載する。ヘッド制御部204は移動部203を制御し、記録ヘッド201を移動させる。また搬送部205は、ヘッド制御部204の制御下で、記録媒体202を搬送する。
図4は、画像形成装置2が行うマルチパス印刷を説明する図である。図4は、ある1色のノイズ列を示している。ノズル列は16個のノズルを具備している。走査番号k=1では、ノズル下端1/4の4ノズルが領域Aに記録する。記録ヘッドが走査方向に移動しながら記録すると、記録ヘッドの走査方向と直交する方向にノズル長さ1/4分紙送りする。次に走査番号k=2において領域Aに対して4ノズルが記録し、記録媒体が移動する。この動作を繰り返すことにより、領域Aに対して、4回の走査で画像を形成させている。本実施形態では、このような4パス印字を一例として説明する。
インク色選択部206は、画像処理装置1により形成された各色に対応する走査ごとのハーフトーン画像データに基づいて、記録ヘッド201に搭載されるインクの中から、印字するハーフトーン画像データに対応するインクを選択する。
次に、上述した機能構成を備えた本実施形態に適用可能な画像処理装置1および画像形成処理2が実行する処理について、説明する。
図3は、入力された画像データに基づいて画像を印刷するまでの動作全体の流れを示す。なお、以下の説明においては、各ステップを「S」と表すこととする。まず、S301において、入力端子101より入力された各色入力画像データを、入力画像バッファ102に格納する。ここで入力画像データは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3つの色成分のデータである。また、各入力画像データは8bitのデータであり、入力画像データが表す画像を構成する各画素には、0〜255のいずれかの画素値が格納されている。
S302において色分解処理部103は、色分解用LUT104を用いて、入力画像データが示すRGBからCMYKの色ごとに分解する。本実施形態では、色分解処理後の画像データを8ビットとして扱うが、それ以上の階調数への変換を行っても構わない。本実施形態における記録ヘッド201は、CMYKの合計4種類の各インクを保有する。そのため、RGB各色の入力画像データは、CMYK計4つの画像データへ変換される。
S303において、記録データ設定部105は、閾値マトリクス特性LUT106を取得する。閾値マトリクス特性LUTの詳細は後述する。
S304において、記録データ設定部105は、走査番号kを初期化する。本実施形態において、走査番号kの初期値は1であり、処理ループ毎に1ずつインクリメントされる。
以下のS305からS310は、CMYKの色ごとに処理を行う。ここでは、シアン(C)の例について説明するが、他の3種類の色材マゼンタ(M)、ブラック(K)、イエロー(Y)に対しても同様の処理を行う。
S305において、記録データ設定部105は、色分解後の画像データ切り出し位置としてのY座標を示すYcut(k)を設定する。Ycut(k)は、走査番号kにおける色分解後画像データ切り出し位置であり、ノズル上端座標に相当する。図4を用いて色分解後画像データ切り出し位置Y座標Ycut(k)の設定法を説明する。
前述の通り、本実施形態では4パス印刷であり、ノズル1/4を用いて1パスを記録する。走査番号k=1の場合は、ノズル上端座標に相当する色分解後画像データ切り出し位置Ycut=−12となる。
上述した色分解後画像データ切り出し位置Ycut(k)を一般化すると、ノズル列数:Nzzl、パス数:Pass、走査番号:k、として次式で与えられる。
Ycut(k)=−Nzzl+(Nzzl/Pass)×k ・・・(1)
以上のようにYcut(k)が設定されると、次に記録データ設定部105は取得した閾値マトリクス特性LUTと各色に対応する色分解後画像データとに基づき、走査ごとの記録データを設定する。記録データの設定処理の詳細は後述する。
次にS307において、ハーフトーン処理部107は各記録走査の記録データに対して、閾値マトリクスを用いてディザ処理を行う。本実施形態におけるハーフトーン処理は、256階調で表された記録データ(8ビット)を2値に変換する。ハーフトーン処理の詳細は後述する。
S309において、ハーフトーン画像格納バッファ109に蓄えられた、縦方向がノズル数(Nzzl)、横方向が画像のXサイズ(W)に相当するバンドデータが、画像出力端子110より出力される。
S310において、ハーフトーン画像データを受けた画像形成装置2は、ハーフトーン画像データに適合するインク色が選択され、印字動作が開始される。具体的には、記録ヘッド201が記録媒体に対して左から右に移動しながら、一定の駆動間隔で各ノズルを駆動して記録媒体上に画像を記録する主走査を1回行う。さらに該主走査が終了すると、記録媒体の紙送りが1回行なわれる。
S311において、全ての走査が終了したか否かの判定を行う。全ての操作が終了した場合には一連の画像形成処理が完了し、終了していない場合にはS312において走査番号kを更新し(S312)、S305に戻る。以上により、処理の全てが終了する。
ここで、ディザ処理の特性と閾値マトリクス特性LUTについて詳細に説明する。図5(a)は入力画像の一例を示す。入力画像は、4画素×4画素からなり、各画素には画素値153が格納されている。図5(b)は、閾値マトリクスの一例を示す。閾値マトリクスには、各画素に対応する閾値として、異なる値が格納されている。ディザ処理においては、各画素の画素値と、各画素に対応する閾値とを比較する。画素値の方が閾値よりも大きい場合は1、画素値の方が閾値よりも小さい場合は0が出力される。図5(c)は、入力画像をディザ処理して得られる出力画像を示している。図5(c)が示す出力画像は、階調153のときに得られるドットパターンを表す。このように、閾値マトリクスにおける閾値の配置により、ドットパターンの分散性が決定する。
図5(d)が示すグラフは、閾値マトリクスの各階調に対する分散性の一例を示している。横軸は階調(画素値)、縦軸は分散性評価値を示す。ある階調からなる画像に対して閾値マトリクスを用いてディザ処理をした場合に、ディザ処理の結果得られるドットパターンをフーリエ変換してパワーの重みづけ和Pを分散性評価値として算出している。分散性評価値は、その値が大きいほど低分散であり、値が小さいほど高分散である。図5(d)が示す通り、閾値マトリクスの各階調に対する分散性は、階調に対して細かく変動する。閾値マトリクスを用いたディザ処理は、全ての階調に対して分散性を高くドットパターンを実現することは困難である。これは、ある階調におけるドットパターンにドットを追加または削除して、ある階調近傍のドットパターンを決定することで、閾値マトリクスを設計するためである。
たとえば公知のVoid−and−Cluster法を用いる場合、初期に設定した階調のドットパターンを決定した後、所定のルールに従ってドットを順次追加する位置を決定し、初期階調よりもシャドウ側の階調のドットパターンを決定する。また初期階調のドットパターンのドットを順次削除していくことでハイライト側の階調のドットパターンを決定する。従って、初期階調のドットパターンはドット配置に制約がなく、高分散なドット配置を任意に選択できる。しかしながら、初期階調のドットパターン以外のドット配置は、初期階調のドットパターンの制約を受けてしまう。以上の通り、上述のVoid−and−Cluster法に限らず、閾値マトリクスを設計する際には、ある入力値のドットパターンは既に決定されたドットパターンの制約を受けるため、常に高分散なドットパターンを得ることはできない。
そこで本実施形態では、図5(d)に示す閾値マトリクスの階調毎のドットパターンの分散性評価値を、閾値マトリクス特性LUTとして保持しておく。そして、閾値マトリクスを用いてディザ処理をした場合に、できるだけ高分散なドットパターンに変換できる階調になるように、色分解後の画像データを各記録走査に分割する。
以下、記録データ設定処理について詳細を説明する。本実施形態では、色分解後の画像データを記録走査毎に均等に分割したのち、閾値マトリクスの特性に基づいて記録走査毎の記録データを更新する。
図6は、画像処理装置1が実行する記録データ設定の処理のフローチャートである。CPU1001が、図6に示すフローチャートを実現可能なプログラムを読み出し実行することで、各構成(機能)が実現される。なお図6に示す処理においては、注目ノズル位置nyと画像Xアドレスを繰り返し変数として、ノズル数(Nzzl)×画像のXサイズ(W)に相当するバンドに含まれる各画素に対して記録データを設定する。
まず、S601において、記録データ設定部105は記録データの設定処理の対象とする注目ノズル位置nyを初期化する。具体的にはny=0とする。S602において記録データ設定部105は、ノズル位置nyからパス番号pを取得する。パス番号pの取得は、以下の式(2)を用いる。ただし、式(2)中、Passは印字パス数、int(x)はxを超えない最大の整数を返す関数、また、ノズル数Nzzlは印字パス数の整数倍とする。
p=int(ny/(Nzzl/Pass))+1 ・・・(2)
S603において記録データ設定部105は、注目ノズル位置nyが画像Yアドレスの領域内か否かを判断する。具体的には、Ycut(k)+nyが0以上かつ画像のYサイズH未満であるか否かを判断する。注目ノズル位置nyが、画像Yアドレスの領域内である場合には、S605に進む。一方で、画像Yアドレスの領域外である場合には、S604に進み、記録データM=0と設定した後、S611へ進む。
S605において記録データ設定部105は、記録データの設定処理の対象とする画像のXアドレスを初期化する。具体的にはX=0とする。
S606において、記録データ設定部105は、画像アドレス(X,Ycut(k)+ny)に対応する色分解後の画像データDを取得する。つまりここでは注目ノズルに対応する1ライン分に含まれる画素の画素値を取得する。
S607において記録データ設定部105は、パス番号p、印字パス数Pass、色分解後の画像データDに基づいて、画素値を均等に分配した場合の記録データMを算出する。具体的には、以下の式(3)に従って、記録データMを算出する。
M=int(D×p/Pass) ・・・(3)
ここでは印字パス数Passは4である。またパス番号は、4パスのうち何パス目の記録走査であるかを示す番号であり、1〜4の何れかの値をとる。
S608において記録データ設定部105は、パス番号pと印字パス数Passが等しいか否かを判断する。すなわち、注目ノズルに割り当てられているパス番号が、最終パスに相当するパス番号であるか否かを判定する。本実施系多いでは4パス印刷なので、パス番号が4であるかどうかを判定することとする。最終パスに相当しない場合、S609に進み、閾値マトリクスの特性に基づいて記録データを更新する。S609の処理の詳細は後述する。一方、最終パスに相当する場合、S609での更新処理をおこなわず、S610へ進む。すなわち、P=Passの場合には、色分解後の画像データDを記録データMとする。その理由についても後述する。
S610において記録データ設定部105は、画像Xアドレスが画像端を示しているか否かを判断する。具体的には、XがW−1に等しいか否かを判断する。X=W−1でない場合、S612にて画像アドレスXをX+1に更新し、S606に戻る。X=W−1である場合、S611に進む。
S611において記録データ設定部105は、ノズル位置nyがノズル端を示しているか否かを判断する。具体的には、nyがNzzl−1に等しいか否かを判断する。ny=Nzzl−1でない場合、S613にてノズル位置nyをny+1に更新し、S602に戻る。ny=Nzzl−1である場合、ノズル数(Nzzl)×画像のXサイズ(W)に相当するバンドデータの各画素に対して記録データを設定済みとして、処理を終了する。
次に、S609において記録データ設定部105が実行する記録データMの更新処理について、詳細に説明する。記録データMの更新処理では、閾値マトリクスの特性に基づいて、記録データMよりも高分散なドットパターンが得られる記録データM´が探索範囲内にあれば、MをM´へ更新する。
図7はS609における記録データMの更新処理の流れを示すフローチャートである。CPU1001が、図7に示すフローチャートを実現可能なプログラムを読み出し実行することで、各構成(機能)が実現される。
S701において、暫定記録データtmp_Mを初期化する。暫定記録データtmp_Mは、後述のS704〜S709におけるループ処理において、高分散なドットパターンが得られる記録データの候補を保持しておくための変数である。ループ処理後のS710において、最終的にtmp_Mとして保持された記録データが更新後の記録データM´として設定される。
S702において、M´の探索範囲を規定する変数limを取得する。本実施形態ではlim=16とする。図5(d)に記録データMと変数limの関係を示す。更新後の記録データM’は、下限値M−limから上限値M+limの範囲内において最も高分散な(分散性評価値の小さい)記録データを探索することで設定される。なお、変数limは入力値によって変動することが望ましい。例えば画像データDの5〜10%程度とすることにより、ハイライト領域等の低濃度における探索範囲の重複を避けることができる。
S703において、記録データの探索範囲における注目記録データを示すための変数Δmを初期化する。ここでは、変数Δmの初期値はΔm=−limとする。
S704において、上述のS303にて取得した閾値マトリクス特性LUT106を参照し、暫定記録データtmp_Mに対する分散性評価値Pを取得する。同様にS705において、閾値マトリクス特性LUT106を参照して、記録データM+Δmに対応する分散性評価値P´を取得する。
S706において、P´がPより小さいか否かを判断する。P´がPより小さい場合、S707に進み、暫定記録データtmp_MをM+Δmに更新し、S708に進む。一方で、P´がP以上の場合、S707をスキップし、S708に進む。
S708では、探索範囲であるM−limからM+limのすべての記録データについて、S704〜707までの処理をおこなったか否かを判定する。具体的には、Δmがlimに等しいか否かを判断する。Δmがlimと等しくない場合、S709にて変数ΔmをΔm+1に更新し、S704に戻る。Δmがlimと等しい場合、すべての記録データについて処理をおこなったと判断し、S710に進む。
S710では、前述の通り、最終的にtmp_Mとして保持された記録データを更新後の記録データM´として設定した後、処理を終了する。
以下、S307におけるハーフトーン処理について、詳細に説明する。本実施形態では、前の記録走査(走査番号k=2であれば、k=1)での記録データを、制約情報Cとして保持しておく。制約情報Cは、処理対象の記録走査の直前の記録走査において、既に同じ位置にドットが打たれている可能性と相関のある情報となる。制約情報Cは、その値が大きいと既にドットを打たれている可能性高く、値が小さいと前回ドットを打たなかった可能性が高い。そして閾値マトリクスから得られる閾値Th、S306にて設定された記録データMに加え、制約情報Cを用いて走査番号ごとのハーフトーン画像データを生成する。
図8はハーフトーン処理部107におけるハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。CPU1001が、図8に示すフローチャートを実現可能なプログラムを読み出し実行することで、各構成(機能)が実現される。図8に示すハーフトーン処理においても、図6に示す記録データの設定と同様に、ノズル数(Nzzl)×画像のXサイズ(W)に相当するバンドにおける各画素に対して処理をおこなう。ただし、繰り返し変数には画像アドレス(X,Y)を用いる。
まず、S801においてハーフトーン処理部107は処理の対象とする画像アドレス(X,Y)を初期化する。具体的にはX=0、Y=Ycut(k)とする。
S802においてハーフトーン処理部107は、閾値マトリクス108を参照し、画像アドレス(X,Y)に対応する閾値Th(X,Y)を取得する。同様に、S803において、ハーフトーン処理部107は、画像アドレス(X,Y)に対応する制約情報C(X,Y)を取得する。なお、処理開始時の走査番号k=1には、制約情報C(X,Y)に初期値として全て0を代入しておく。そのため、実質的には走査番号k≧2の時に、有意な情報に更新されていくことになる。
S804においてハーフトーン処理部107は、制約情報C(X,Y)が閾値Th(X,Y)より大きいか否かを判断する。
制約情報C(X,Y)が閾値Th(X,Y)より大きい場合、S805へ進み、画像アドレス(X,Y)のドットをOFFとする。ドットが同じ位置に連続して打たれることにより累積したドットパターンの粒状性が悪くなってしまう。そこで制約情報Cによれば直前にドットが打たれている可能性が高いため、画像アドレス(X,Y)にドットを配置しない。
一方で、制約情報C(X,Y)が閾値Th(X,Y)以下である場合、S806へ進む。S806では、画像アドレス(X,Y)に対応する記録データM(X,Y)を取得する。S807において、ハーフトーン処理部107は、記録データM(X,Y)が閾値Th(X,Y)より大きいか否かを判断する。
記録データM(X,Y)が閾値Th(X,Y)より大きい場合、S808へ進み、画像アドレス(X,Y)のドットをONとする。つまり、閾値Th(X,Y)が前回の記録走査の記録データより大きく、処理対象の記録走査において記録データよりも小さい場合に、ドットが打たれる。
一方で、記録データM(X,Y)が閾値Th(X,Y)以下である場合、S805へ進み、画像アドレス(X,Y)のドットをOFFとする。
次に、S809にて、S801〜S808までの処理をバンド内のアドレス(0,0)〜(W−1,Nzzl−1)に対して実行したか否かを判断する。すなわち、図4で示すノズル0〜15に対応するハーフトーンデータを作成済みであるか否かを判断する。
バンド内の処理が終了していないと判断した場合には、画像アドレス(X,Y)を更新し、S802に戻る。一方、バンド内の処理が終了していると判断した場合には、S811に進む。以上S801〜810により、全てのアドレス(画素)を表す画素値が決定され、各記録走査によって形成されるドットパターンが決定される。ハーフトーン画像データはハーフトーン画像格納バッファに格納される。
S811において、制約情報Cを更新する。記録データM(X,Y)を更新後の制約情報C(X,Y)として、不図示の制約情報バッファに格納する。S812において、制約情報CをLF(紙送り量)だけシフトする。データを紙送り量LF分だけシフトさせる理由は、次の走査番号にて形成されるハーフトーン画像データが、記録媒体上で相対的に紙送り量LF分ずれるためである。ただし、シフト後の下端LFノズル分(16ノズル、4パスの場合4ノズル分)の制約情報Cには0を代入する。
S811、S812にて更新、シフトされた制約情報Cは、次の走査番号(走査番号k=1の次の走査番号k=2)に対応する記録データをハーフトーン処理する際に用いられる。つまり、走査番号kのハーフトーン画像データに基づいて生成された制約情報は、走査番号k+1に対応する記録データをハーフトーン処理する際に用いられる制約情報として保持される。
従来、記録走査ごとの記録データは、ノズルの使用率の均一化やドットのヨレによるムラを少なくするため、画像を各記録走査に均等に分割することにより生成されていた。例えば、画像におけるある画素の画素値が96、印字パス数が4であれば、各パスの記録データは均等にM=96/4=24が割り当てられていた。これは例えば、1パス目の記録走査により記録されるドットパターンは、閾値マトリクスの階調24に対応する分散性評価値に対応することを意味する。閾値マトリクスの特性を考慮せずに画素値を分割しているため、必ずしも各記録走査の分散性評価値は高くない。しかしながら、各記録走査において位置ズレが発生した場合、各記録走査のドットパターンの分散性が低いと、粒状性の悪化や濃度むらが発生してしまう。そのためマルチパス印刷においては、重畳する各記録走査のドットパターンは、できるだけ高分散であることが望ましい。そこで本実施形態では前述の通り、各記録走査のドットパターンの分散性をより高くするため、閾値マトリクスの特性に基づいて、画像を各記録走査に分割する。
図9(a)は、図5(d)の一部を抜き出し、拡大した図である。たとえばパス番号1に割り当てられた記録データM=24のドットパターンに対応する分散性評価値に比べ、記録データM=21のドットパターンから得られる分散性評価値の方が小さい。すなわち、パス番号1に記録データM=24を割り当てるより、記録データM=21を割り当てたほうが、高分散なドットパターンを形成できる。本実施形態では、色分解後の画像データを記録走査ごとに均等に分割された記録データを中心とする所定の探索範囲内でより高分散なドットパターンが得られる記録データM´があれば、記録データを更新する。図9(b)は、各記録走査に割り当てられた記録データと探索範囲、および更新される記録データを示す図である。閾値マトリクスの特性に基づいて、パス番号1の記録走査はM=21、パス番号2の記録走査はM=44、パス番号3の記録走査はM=77に更新される。ただし本実施形態では、記録データの更新により濃度が変動してしまうことを防ぐため、最終パスであるパス番号4の記録走査については、閾値マトリクスの特性に基づいた記録データの更新は行わない。
このように、本実施形態によれば、閾値マトリクス特性LUTに基づいて各色に対応する色分解後画像データを複数の記録走査に分割することで、記録走査ごとの記録データを設定する。これにより最後の走査を除き、記録走査毎のドットパターンをより高分散に形成できる。これにより、ドットの位置ずれによる濃度や粒状性の変動の少ない画像形成が可能となる。なお、上記実施形態1では、閾値マトリクス特性をLUTとして保持し、閾値マトリクス特性を参照することで、記録データMを更新した。しかしながら、色分解後の画像データと各記録走査の記録データM´とが対応付けられたLUTを参照することで、記録データを設定してもよい。色分解後の画像データと記録データM´とが対応付けられたLUTは、あらかじめ0〜255までの色分解後の画像データについて、S606とS607における処理をおこなうことで作成できる。
また、実施形態1では、前の記録走査の記録データを制約情報として用いて、記録データに対するハーフトーン処理した。これにより、各記録走査の記録データに対して同じ閾値マトリクスを用いてディザ処理しても、ドットの重複が発生せず、累積のドットパターンも分散性が高くなるように、各記録走査のドットパターンを生成できる。しかしながら、記録パス毎単体のドットパターンの分散性を考慮して記録データを更新してもよい。たとえば、各パス番号における累積のドットパターンと単体のドットパターンの分散性評価値をそれぞれ算出し、さらにそれらの重みづけ和P_allを求める。そしてS809において、P_allが小さくなるように記録データMをM´に更新してもよい
また、本実施形態では説明を簡単にするため記録媒体を搬送する方向(主走査方向)に対して、ノズルが一列に配置された構成を示しているが、ノズルの数、配置はこの例に限られるものではない。例えば、同一濃度の同一色でも吐出量が異なるノズルを有しても良いし、同一吐出量のノズルが複数列あっても良い。さらにノズルがジグザグに配置されているような構成であっても良い。また、本実施形態では、記録ヘッド201の構成として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクを備える例を示したが、インクの種類は限定されない。淡シアンや淡マゼンタなどの低濃度インク、レッドやグリーン等の特色インク、白色インクを用いてもよい。また、無色透明のクリアインクや、金属調のメタリックインクを用いても良い。
また、入力画像データはRGBごとの画像としたが、画像種類は限定されず、モノクロやCMYKごとの画像データであってもよい。また色以外の情報を含んでもよく、例えば光沢情報を含む画像であってもよい。また、色分解LUTのビット数はこれに限定されない。あるいはLUT以外の方法を用いてもよく、例えば行列演算や任意の数式を用いてもよい。
また、本実施形態において画像処理装置1は、CPU1001が所定のプログラムを実行することで処理を実現するソフトウェアの場合を例に説明した。しかしながら画像処理装置1の構成の一部またはその全てを、専用の画像処理回路で実現してもよい。また、画像処理装置1は、画像形成装置2に内蔵する構成でもよい。
<実施形態2>
前述の実施形態1では、均等に分割された記録データを中心とする記録データの幅内でより高分散なドット配置が得られる記録データM´へ更新する方法を説明した。実施形態2ではさらに、記録走査ごとの記録データを設定する際に参照されることを想定して、閾値マトリクスを設計する方法について説明する。
図10は、実施形態2が作成する閾値マトリクスの階調毎の分散性評価値を示す。この閾値マトリクス特性1101に示すように、ドットパターンが相対的に高分散となる記録データが特定の階調範囲に集中しないように閾値マトリクスを作成する。また、実施形態2に説明する方法により作成された閾値マトリクスを用いる際の、変数limの決定方法について説明する。なお、実施形態1と共通の部分については説明を簡易化または省略する。
以下、図10に示すような特性を有する閾値マトリクスの作成処理について説明する。
図11は、本実施形態における閾値マトリクスの作成の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、図1に示す画像処理装置1が閾値マトリクスを作成するものとし、CPU1001が、図11に示すフローチャートを実現可能なプログラムを読み出し実行する。ただし、閾値マトリクスの作成処理は、記録データの設定やハーフトーン処理を行う画像処理装置とは別の画像処理装置が実行してもよい。S1201において、不図示のマトリクス作成部は、高分散となるドットパターンを作成したい複数の階調M1〜Mnを高分散階調として取得する。ただし、nは高分散となる階調数である。ここで特定される複数の階調M1〜Mnは、所定の間隔おきの階調であることが望ましい。上述の図11に示す特性を有する閾値マトリクスを作成する場合は、n=7、M1=32、M2=64、M3=96、M4=128、M5=160、M6=192、M7=224が設定される。また、階調のとりうる最小値M_min、最大値M_maxを、それぞれM0=M_min、M8=M_maxとする。なお翻字し形態では、記録データが256階調(8ビット)で表されるので、M_max=255である。
S1202において、高分散階調M1〜Mnに対応するドット数d1〜dnをそれぞれ取得する。たとえば、ドット数dx(xは1〜n)は階調Mxから、以下の式(4)より、算出できる。ただし、wは閾値マトリクスのXサイズ、hは閾値マトリクスのYサイズである。
dx=w×h×Mx/M_max ・・・(4)
S1203において、各高分散階調M1〜Mnに対応するドットパターンA1〜Anを生成する。生成方法の詳細は後述する。
S1204において、各高分散階調のドットパターンA1〜Anに基づいて、高分散階調以外の全ての階調に対応するドットパターンを決定する。そして、閾値マトリクスにおける各位置(マトリクス内アドレス)に対応する閾値を決定し、閾値マトリクスを生成する。生成方法の詳細は後述する。
以下、S1203における高分階調M1〜Mnに対応するドットパターンA1〜Anの生成方法について、詳細に説明する。なお、M0=M_minに対応するドットパターンA0は下記の方法で生成する必要はなく、ドット数が0のデータとすればよい。同様に、M8=M_maxに対応するドットパターンA8は、全画素にドットが配置されたデータとする。
図12はS1203における高分散階調M1〜Mnに対応するドットパターンA1〜Anの生成方法を示すフローチャートである。図12に示す処理フローでは、繰り返し変数xをx=1からx=nまで変化させ、ドットパターンA1〜Anを生成する。
まず、S1301においてマトリクス作成部は、繰り返し変数xを初期化する。具体的にはl=1とする。
S1302において、既にいずれかの高分散階調Mに対応するドットパターンを決定済であるか否かを判断する。具体的には、繰り返し変数xが初期化された値に等しい(本実施形態ではx=1)であるか否かを判断する。
x=1である場合、S1303へ進み、dx=d1=w×h×M1/M_max個のドットを高分散に配置する。たとえば、公知のVoid−and−Cluster法における初期パターンの作成法に従ってドット数dx個分のドットを高分散に配置する。あるいは、dx個のドット数が配置されるように定めた階調に対し、公知の誤差拡散法を用いてドット配置を決定してもよい。S1302においてx=1でないと判定された場合、S1304へ進み、S1304およびS1305にて、決定済のドットパターンの制約下で高分散なドットパターンを決定する。詳細は後述する。
S1306では、決定されたドットパターンを、高分散階調Mxに対応するドットパターンAxとして、不図示のドットパターンバッファに格納する。
次にS1307において、x=nであるか否かを判断する。l=nである場合、S1201にて取得した高分散となる高分散階調M1〜Mnに対応するドットパターンA1〜Anを全て生成済であるため、処理を終了する。x=nでない場合、繰り返し変数xをx+1に更新し、S1302に戻る。
図14に示す概念図を用いて、S1304およびS1305における処理の概要を説明する。図14(a)は、S1303において、高分散に配置されたドットを黒丸として示す図である。S1304においては、1つ前の繰り返し変数x´(x=2であれば、x´=1)にて配置されたドット配置Ax´に対し、dx−dx´個のドットを新たに配置する。このとき、dx=18、dx´=9とすると、S1304では、dx−dx´=18−9=9個のドットを、図14(b)に白丸で示すようにランダムな位置に配置する。
次にS1305では、S1304にて新たに配置されたドットを再配置し、高分散なドットパターンとする。すなわち、図14(b)に示すドットパターンから、白丸のみを再配置し、図14(c)に示すような高分散なドットパターンとする。再配置の方法としては、公知のVoid−and−Cluster法と同様に、ガウスフィルタを用いてドット密度が疎であるVoid領域と最もドット密度が密であるClusterドットを探索し、ClusterドットをVoid領域に移動させる。ただし、このとき、ClusterドットはS1304にて新たに配置されたドット位置、すなわち図14中白丸で示すドット位置のみを探索、移動する。
従来のVoid−and−Cluster法では、初期パターンから各階調のドットパターンを順次決定していく。そのため、初期パターンの階調以外は、1ドット分しか配置の自由度がなく、特定階調におけるドットパターンの分散性をコントロールすることはでない。
一方、上記の方法では、特定の高分散階調M1〜Mnのドットパターンを決める。そのため、高分散階調M1〜Mnのドットパターンを決める際には、dx−dx´個分のドット配置の自由度があるため、従来よりもドット配置の自由度が高くなり、高分散なドットパターンを生成できる。以下、S1204おける、閾値決定処理について、詳細に説明する。前述の通り、処理対象となる注目階調におけるドットパターンは、既に決定している階調のドットパターンの制約を受ける。具体的には、ドット数dとドット数d´(ただしd+1<d´)におけるドットパターンが決定されている場合、d+1において新たに配置されるドットは、d´にて配置されているドットのいずれかである。
図14を用いて、より具体的に説明すると、d=10個におけるドット配置は、図14(c)にて黒丸で示すドットパターン(9個)に、白丸で示すドットのうちいずれか1つを加えたドットパターンとなる。
本実施形態における閾値決定処理では、総ドット数sを繰り返し変数とし、総ドット数s=1からs=w×hまで変化させ、閾値マトリクスのw×hの全ての画素位置(マトリクス内アドレス)にドットが配置されるまでのドット配置を決定する。
図14は、S1204における閾値決定処理の流れを示すフローチャートである。まず、S1501において、マトリクス作成部は、総ドット数sを初期化する。具体的にはs=1とする。
次に、S1502において、ドットパターンA´とAとを取得する。ドットパターンA´は、総ドット数s−1におけるドットパターンである。また、ドットパターンAは、S1203で生成したドットパターンA0〜A8から、ドット数がs以上となるドットパターンを抽出し、その中でドット数が最小となるものをドットパターンAとして取得する。
次に、S1503において、ドットパターンAでドットON、かつドットパターンA´でドットOFFであるドット位置のうち、いずれか1つを選択しドットONとする。たとえば、公知のVoid−and−Cluster法と同様に、ガウスフィルタを用いて、ドットパターンAでドットONかつドットパターンA´でドットOFFであるドット位置のうち、もっともドット密度が疎である位置を探索し、ドットONとする。
S1504において、S1503でドットONとなったドット位置に対応するマトリクス内アドレスに閾値sを割り当てる。
次に、S1505において、s=w×hであるか否かを判定する。s=w×hである場合、S1506へ進み、閾値を正規化し、閾値マトリクスとする。具体的には、各マトリクス内アドレスに割り当てられた閾値Thから、以下の式(5)により正規化後の閾値Th´を算出し、閾値マトリクス108として格納する。
Th´=int(M_max×Th/(w×h)) ・・・(5)
一方、s=w×hでない場合、S1507に進み、sをs+1に更新し、S1502へ戻る。
上述のS1201〜1204に従うことで、各入力階調に対して図11に示すような分散性の特性を有する閾値マトリクスを作成できる。
このとき、記録データの探索範囲内に高分散階調のいずれかが含まれるように変数limを決定すれば、記録走査毎の累積ドットパターンを高分散に形成できる。ここでは、n=7、M0=0、M1=32、M2=64、M3=96、M4=128、M5=160、M6=192、M7=224、M8=255であった。この場合には、lim=16とすれば、色分解後画像データの大きさによらず、記録データの探索範囲内に高分散階調のいずれかが含まれる。すなわち、ドットパターンが高分散となる特定の記録データが一定の間隔ΔM(上記例ではΔM=32)である場合には、lim=ΔM/2とすることで、色分解後画像データによらず、記録データの検索範囲内に特定の記録データのいずれかを含むことができる。
本実施形態によれば、従来のVoid−and−Cluster法のように1ドットずつ決める場合に比べ、特定の階調に対してドットパターンが高分散化された閾値マトリクスを作成できる。また、M−limからM+limの探索範囲内に上記特定の階調のいずれかが含まれるようにlimを定めることで、記録走査毎の累積ドットパターンを高分散に形成できる。
なお、特定の記録データの閾値マトリクスのサイズW×Hの約数の場合に高分散なドットパターンを形成しやすいことを考慮し、S1201で取得される特定の記録データM1〜Mnは閾値マトリクスのサイズW×Hの約数であることが好ましい。たとえば、閾値マトリクスのサイズW×Hが256×256であれば、16や64、256など、2のべき乗であることが好ましい。
なお、上記実施形態では、記録データM´をM−limからM+limの範囲内から定める方法について説明したが、M´の定め方はこれに限定されない。例えば、M−αからM+βのように非対称な範囲から定めてもよい。また、階調によって探索範囲を可変にしてもよい。また、探索範囲を限定せず、M1〜Mnのうち、画像データDのうちわで記録データMに最も近い特定の記録データをM´としてもよい(但し、異なるパスで同じ記録データM´が選択されないようにすることが望ましい)。
また、閾値マトリクス特性LUT106として、各入力階調に対するドットパターンの分散性の評価値を保持したLUTを用いる例について説明したが、閾値マトリクス特性LUTに保持する情報はこれに限定されない。例えば、本実施形態においては、相対的に高分散となるM1〜Mnの値だけを格納するようにしてもよい。この場合、M1〜Mnのうち、画像データDのうちわで記録データMに最も近い特定の記録データをM´とすればよい。
<実施形態3>
実施形態1および2では、記録走査ごとの記録データに対して同じ閾値マトリクスを用いてディザ処理を実行する場合を例に、説明した。実施形態3では、記録走査ごとに異なる閾値マトリクスを用いる場合を例に説明する。
図15は、実施形態3で用いる複数の閾値マトリクスそれぞれについて、階調毎の分散性特性を示している。図15(a)、(b)、(c)はそれぞれ、特定の階調が高分散なドットパターンになるように設計されている。図15(a)は、パス番号1の記録走査の記録データに、図15(b)は、パス番号2の記録走査の記録データに、図15(c)はパス番号3の記録走査の記録データに対するディザ処理に用いられる。一方、図15(d)は、特定の階調に対して最適化処理をせず、全階調が同程度の分散性になるように作成している。図15(d)に示す特性を有する閾値マトリクスは、最後の記録走査となるn回目の記録データに対するディザ処理において用いられる。また、各閾値マトリクスは、互いに低周波領域では排他なドットパターンを出力し、高周波領域では無相関となるドットパターンを出力する関係であることが望ましい。
このように複数の閾値マトリクスを利用する場合、S303において取得する閾値マトリクス特性LUTも複数取得することになる。実施形態3の場合、n回目の記録走査に対応する閾値マトリクスを除く3つの閾値マトリクスに対応する閾値マトリクス特性LUTを取得する。
図16は、実施形態3における記録データ設定処理のフローチャートである。S1601において、1回目の記録走査からn−1回目の記録走査それぞれに対応する閾値マトリクス特性LUTを取得する。ここでは、図15(a)、(b)、(c)に示すように、各記録走査用の閾値マトリクスにおいて、高分散となるようにドットパターンを設定された複数の階調を保持する。
S1602において、色分解後の画像データを各記録走査に均等に分割することで、記録走査ごとの記録データを設定する。ここでは、画像データを構成する各画素の画素値に1/4を乗じることで、色分解後の画像データを分割する。
S1603において、S1602において取得した閾値マトリクス特性LUTを参照して、パス番号1からパス番号3の記録走査に対応する記録データを更新する。これは、図7における処理と同様の方法で実行する。
S1604において、パス番号4の記録データを算出する。ここでは、色分解後の画像データから各記録走査の記録データを引いた値を、パス番号4の記録データM4´として算出する。
以上のように、記録走査ごとに異なる閾値マトリクスを用いてディザ処理してもよい。各記録走査において、対応する閾値マトリクスの特性を参照して、各記録走査の記録データを設定することで、各記録走査のドットパターンをより分散性高いドットパターンにできる。
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
105 記録データ設定部
106 閾値マトリクス特性LUT
107 ハーフトーン処理部
108 閾値マトリクス

Claims (9)

  1. 記録媒体の同一領域に対してn(≧2)回の記録を重ねることで画像を形成するための画像処理装置であって、
    閾値マトリクスを用いてディザ処理した場合に得られる各階調のドットパターンの分散性を示す閾値マトリクス特性を保持する保持手段と、
    前記閾値マトリクス特性に基づいて、画像データを前記n回の記録走査に分割することにより、前記n回の記録走査ごとの記録量を表す記録データを設定する設定手段と、
    前記n回の記録それぞれの記録データに対して、前記閾値マトリクスを用いてディザ処理するハーフトーン処理手段と、
    を有することを特徴とする画像処理装置。
  2. 前記設定手段は、前記画像データが表す画像において、各画素の画素値をn回に均等に分割した後、前記n回の記録走査のうち少なくとも1つの記録データを前記閾値マトリクス特性に基づいて更新することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  3. 前記設定手段は、前記n回の記録走査のうち処理対象とする記録走査の記録データに対して探索範囲を設定し、前記閾値マトリクス特性において前記探索範囲で最も分散性が高い階調があるかどうかを判定し、最も分散性が高い階調がある場合は、前記処理対象とする記録走査の記録データを、最も分散性が高い階調により更新することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
  4. 前記設定手段は、n回目を除くn−1回目までの各記録走査に対し、前記閾値マトリクス特性に基づいて記録データを更新することを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。
  5. 前記設定手段は、前記閾値マトリクスの階調毎の分散性評価値を参照することにより、前記記録データを設定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像処理装置。
  6. 前記閾値マトリクスは、所定の間隔おきの複数の階調に対して高分散なドットパターンを実現できるように、値の異なる閾値を配置されたマトリクスであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像処理装置。
  7. 前記閾値マトリクスは、ブルーノイズ特性を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の画像処理装置。
  8. コンピュータを請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
  9. 記録媒体の同一領域に対してn(≧2)回の記録を重ねることで画像を形成するための画像処理方法であって、
    閾値マトリクスを用いてディザ処理した場合に得られる各階調のドットパターンの分散性を示す閾値マトリクス特性を保持し、
    前記閾値マトリクス特性に基づいて、画像データを前記n回の記録走査に分割することにより、前記n回の記録走査ごとの記録データを設定し、
    前記n回の記録それぞれの記録データに対して、前記閾値マトリクスを用いてディザ処理することを特徴とする画像処理方法。
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