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JP2018521276A - ピストンリング - Google Patents

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Abstract

本発明の往復動内燃機関用のピストンリングは、開放合口、半径方向外側の摺動面、半径方向内側の周面、並びに軸線方向において対向する2つの側面を有する環状本体と、摺動面の少なくとも一部に施されたコーティング(B)と、合口領域の前で終端すると共に、摺動面下部領域に設けられた周方向凹部(A)とを備える。摺動面は、ピストンリングにおける軸線方向高さhの55%〜80%に相当する高さh2に配置されたピボット点を含む球面状プロファイルを有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、往復動内燃機関用に改良されたピストンリング、特に最適化された構成を有するトップリングに関する。
ピストン溝及びピストンリング側面には、トップリングに対するエンジン由来の圧力負荷と、点火圧力に起因するピストンの撓みにより、軸線方向摩耗が生じる。このような摩耗は、外径における摩耗の増加で特徴付けられる。この場合、ピストンリング及びシリンダ内面間における接触点は、摺動面の上部領域に向けて徐々に変位する。従って、流体力学的影響が及んだ場合、ピストンの下降行程時にトップリングの掻き落とし効果が、掻き落としエッジがシリンダ内壁から持ち上げられるために低下し、潤滑油がシリンダ壁に残留し、従って潤滑油の消費量が増加する。
従来技術においては、ピストンリングの摺動面上における非対称的な球面形状又は微小形状が既知である。従来技術のピストンリングにおける頂点(ピボット点とも称される)の位置はISO 6623:2004に規定され、その規定によれば、ピストンリングの重心よりも下方に位置するものとされている。即ち、ピストンリングの上側面から頂点までの距離は、ピストンリングの高さの半分よりも大きい。換言すれば、頂点は、ピストンリングの垂直方向の中央部よりも下方に位置する。
本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する往復動内燃機関用のピストンリングが提供される。好適な実施形態は、従属請求項に記載したとおりである。本発明の第1態様によれば、往復動内燃機関用のピストンリングが提供される。本発明に係るピストンリングは、開放合口、半径方向外側の摺動面、半径方向内側の周面、並びに軸線方向において対向する2つの側面を有する環状本体と、摺動面の少なくとも一部に施されたコーティングと、合口領域の前で終端すると共に、摺動面下部領域に設けられた周方向凹部とを備え、摺動面が、ピストンリングにおける軸線方向高さの55%〜80%の高さに配置されたピボット点を含む球面状プロファイルを有する。
このように、ピボット点は、ピストンリングにおける(軸線方向)の中央部よりも上方に配置されている。頂点又はピボット点の位置を環状の上側面(頂側面)方向に向けて意図的にずらせることにより、中央部よりも下方にピボット点が配置された既知のピストンリングとは異なり、ピストンリング下側面の外径に対する負荷を低下させることができる。本発明に係るピストンリングにおいては、エンジン作動時における力の作用によって時計回り方向へのねじれが生じるのに対して、中央部よりも下方に配置されたピボット点を備える従来のピストンリングにおいては、反時計回り方向にねじれを生じる傾向がある。従って、本発明に係るピストンリングであれば、潤滑油掻き落とし効果を向上させることができるのみならず、摩耗を低減することができる。
頂点よりも下方において、潤滑油掻き落としエッジをシリンダ壁から持ち上げる流体力学的圧力の発生を回避するため、特殊な形状を有する周方向凹部が設けられている。ブローバイ損失を可及的に僅かに抑えるため、周方向凹部は合口の前で終端している。即ち、合口領域には凹部が設けられていない。
本発明の実施形態によれば、合口領域は、ピストンリングにおける周方向長さの0.003%〜0.2%の範囲に亘って合口から延在している。換言すれば、凹部は、合口に対して、ピストンリングにおける周方向長さの0.003%〜0.2%に相当する距離を隔てた箇所から延在している。
本発明の実施形態によれば、球面状の摺動面プロファイルにおけるピボット点は、ピストンリングにおける軸線方向高さの60%〜70%の高さに配置されている。この実施形態は、軸線方向高さが小さいピストンリング、即ち高さが3mm未満のピストンリングに特に適している。
本発明の実施形態によれば、半径方向内周面は、軸線方向中央部に対して、対称的なプロファイルを有する。単純な実施形態において、半径方向内周面は、ほぼ平坦な断面を有する。
本発明の実施形態によれば、軸線方向高さは少なくとも3mmである。
本発明の実施形態によれば、凹部の半径方向深さは、合口領域の前で終端している。
本発明の実施形態によれば、摺動面におけるコーティングは、ピボット点に施されているか又は施されていない。従って、ピストンリングは、コーティングが施された頂点がシリンダ面と接触しているか、又は代替的にコーティングが施されていない頂点がシリンダ面と接触している。コーティングは、物理的又はガルバニック的に堆積させることができる。
従来のピストンリングを示す断面図である。 本発明に係るピストンリングの第1実施形態を示す概略断面図である。 本発明に係るピストンリングの第1領域を示す断面図である。 本発明に係るピストンリングの第2領域を示す断面図である。 本発明に係るピストンリングの更なる実施形態における第1領域を示す断面図である。 図5のピストンリングにおける第2領域を示す断面図である。 本発明に係るピストンリングの合口領域を示す平面斜視図である。
図1は、従来技術によるピストンリングの断面図を示す。この場合、エンジンの燃焼行程時におけるピストンの下降状態を表している。力F1は、ピストンリングの主に外径に対する燃焼ガスの作用に起因する。その力F1により、反時計回り方向にモーメントM1が生じる。
燃料の燃焼によって発生したガス力F2は、ピストンリング後方、即ち半径方向内周面に作用している。物理的観点から述べるなら、その表面力は、内面が平坦であれば、リング軸線方向高さの重心(F2を参照)、即ちリング軸線方向高さのほぼ中央部に単一の力として作用する。やはり燃焼ガスに由来する更なる力F3は、ピストンリングの内径に作用すると共に、反時計回り方向にモーメントM3を生じさせる。
従来技術においては、ピボット点が下部領域に位置しているため、外力F4は、重心X5よりも下方に作用する。その結果、反時計回り方向にモーメントM5が生じるため、ピストン溝下側面との接触点にてピストンリングが反力Fkにより付加的に負荷される。これにより、ピストン溝の外径及びピストンリング側面の外径における摩耗がより顕著に生じる。
反時計回り方向におけるモーメントM5により、一方では、実効頂点が燃焼室方向に向けて変位し、他方では、掻き落としエッジがシリンダ内壁から持ち上げられる。これにより、ピストンリングの潤滑油掻き落とし効果が低下し、シリンダ壁に残留した潤滑油による油膜が厚くなる。燃焼室に残留した潤滑油は燃焼サイクル中に燃焼するため、潤滑油の消費量が増加するのみならず排気ガス値が悪化する。
以上の記載を要約すれば、従来のピストンリングの欠点は、ピストンリングに対する負荷がより大きく、摩耗がより顕著であり、潤滑油の消費量が増加することである。
図2は、本発明に係るピストンリングの第1実施形態の断面図を示す。本発明に係るピストンリングにおいては、頂点又はピボット点の位置を環状の上側面(頂側面)方向に向けて意図的にずらせてあるため、ピストンリング下側面の外径に対する負荷が低下する。図示のピストンリングにおいては、ピボット点が摺動面の中央部よりも上方に位置している。
図1に示す従来のピストンリングと同様、本発明に係るピストンリングにおいても、力F1は主にピストンリングの外径に作用し、反時計回り方向にモーメントM1が生じる。更に、ガス力F2がリング内面の中央部に作用する点や、ガス力F3がリング下側の内径に作用する点についても従来のピストンリングと同様である。
しかしながら、図1に示す状況とは異なり、この場合の外力4‘は、ピボット点がピストンリングにおける摺動面の上側半部に配置されていることにより、摺動面の中央部よりも上方に作用する。その結果、重心X5周りで反時計回り方向にモーメント5Uが生じる。これにより、反力Fkの低下に起因し、ピストンリング下側面及び隣接するピストンリング溝下側面における摩耗が低減される。
更に、これによりピストンリングの掻き落としエッジがシリンダ内面から持ち上げられることが回避されるため、潤滑油掻き落とし効果の低下が回避される。従って、反時計回り方向にねじれを生じる従来のピストンリングとは異なり、作動時間に亘って潤滑油の消費量が低下する。
しかしながら、ピストンリングの潤滑油掻き落としエッジは、シリンダ内面から持ち上げられることがないため、掻き落としエッジに蓄積する潤滑油О(図1参照)に起因して流体力学的圧力が生じる可能性があり、従って反時計回り方向にモーメントが生じる可能性がある。従って、本発明によれば、この現象を回避するためにピストンリングに特殊な形状が付与されている。即ち、本発明に係るピストンリングにおいては、図2に示すように、摺動面下部領域に周方向凹部が設けられている。
ただし、周方向凹部が設けられれば合口におけるブローバイガス量がより増加するため、本発明によれば、周方向凹部は、合口の前で終端するか、又は合口に向けて従来の非凹部形状に移行するよう設けられている。以下、この点を図面に基づいて説明する。
図3は、本発明に係るピストンリングの第1領域の断面図を示す。図示の第1領域は、合口領域から離間した領域、例えば合口に対して対向するリング後部領域を表している。当該領域には、凹部Aが設けられている。この場合に摺動面における凹部Aの寸法は、リングにおける軸線方向高さの20%〜40%とするのが好適である。ただし、凹部Aの寸法は、10%〜60%であってもよい。図示の摺動面には、ガルバニック的又は物理的に堆積させたコーティング(図2には明示せず)が施されている。図示の実施形態において、頂点自体にはコーティングが施されていないが、代替的な実施形態(例えば図5及び図6参照)では、コーティングが頂点を覆うように施されていてもよい。
理想的には、(F4が作用する)頂点は、リングにおける軸線方向高さhの60%〜70%の高さ範囲h2(h2=hの60%〜70%)に配置されるのが好適ではあるが、特にリング高さが3 mmを超える場合には、55%〜80%の高さ範囲に配置されていてもよい。このように、頂点は、重心Sよりも上方に位置している。
図4は、本発明に係るピストンリングの第2領域の断面図を示す。図示の第2領域は、合口領域を表している。ブローバイガスの漏出を最小化するため、(破線で示す)凹部Aは、合口領域前で既に終端している。即ち、図示のピストンリングの断面図は、合口領域に向けて従来の非凹部形状に移行している。
図5及び図6は、図3及び図4における実施形態の代替的な実施形態を示す。この場合、図3及び図4における実施形態とは異なり、頂点はコーティングに覆われている。即ち、頂点は、コーティング内にあるか、又はコーティングを介してシリンダ摺動面に対して接触している。これに対して、図3及び図4の実施形態においては、コーティングが施されていない頂点がシリンダ摺動面に対して接触している。
図7は、本発明に係るピストンリングの合口領域において、凹部が如何にして形成可能であるかを平面斜視図で例示する。本発明によれば、合口自体と、その合口に直接に隣接する領域Cには凹部が設けられていない。即ち、凹部は、合口に対して離間した領域を起点として設けられている。合口領域と完全な凹部領域との間の移行領域においては、深さが連続的なプロファイルとして増減しており、その深さの傾斜度合い及び/又は丸み度合いは、要求に応じて形成することができる。

Claims (7)

  1. 往復動内燃機関用のピストンリングであって、
    ・開放合口、半径方向外側の摺動面、半径方向内側の周面、並びに軸線方向において対向する2つの側面を有する環状本体と、
    ・前記摺動面の少なくとも一部に施されたコーティング(B)と、
    ・前記合口領域(C)の前で終端すると共に、前記摺動面下部領域に設けられた周方向凹部(A)とを備えるピストンリングにおいて、
    前記摺動面が、前記ピストンリングにおける軸線方向高さhの55%〜80%に相当する高さh2に配置されたピボット点を含む球面状プロファイルを有し、
    前記摺動面における前記凹部(A)が、前記ピストンリングにおける前記軸線方向高さの20%〜40%に相当する寸法を有するピストンリング。
  2. 請求項1に記載のピストンリングであって、前記合口領域(C)が、前記ピストンリングにおける周方向長さの0.003%〜0.2%の範囲に亘って、前記合口から延在しているピストンリング。
  3. 請求項1又は2に記載のピストンリングであって、前記球面状の摺動面プロファイルにおける前記ピボット点が、前記ピストンリングにおける前記軸線方向高さhの60%〜70%に相当する高さに配置されているピストンリング。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載のピストンリングであって、前記半径方向内側の周面が、軸線方向中央部に対して対称的なプロファイルを有するピストンリング。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載のピストンリングであって、前記リングにおける前記軸線方向高さhが、少なくとも3mmであるピストンリング。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載のピストンリングであって、前記凹部(A)の半径方向深さが、前記合口領域の前で終端しているピストンリング。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載のピストンリングであって、前記摺動面における前記コーティング(B)が、前記ピボット点又はそれ以外の部位に施されているピストンリング。
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