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JP2018137851A - 電動機制御装置及び電動機制御方法 - Google Patents

電動機制御装置及び電動機制御方法 Download PDF

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JP2018137851A JP2017029515A JP2017029515A JP2018137851A JP 2018137851 A JP2018137851 A JP 2018137851A JP 2017029515 A JP2017029515 A JP 2017029515A JP 2017029515 A JP2017029515 A JP 2017029515A JP 2018137851 A JP2018137851 A JP 2018137851A
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Abstract

【課題】電動機の速度変動を抑制する際に、速度変動を抑制する割合を正確に制御し、制御装置効率の低下を抑制する。【解決手段】電動機制御装置は、速度指令に基づいて、トルク指令を出力する速度制御器と、補償係数Kとして、0〜1の任意の値を設定する補償係数設定部と、電動機の回転速度の周期的な変動を抑制するトルク補償値ΔTに、前記補償係数Kを乗じて前記トルク指令に加算して補償後トルク指令を得る構成と、前記補償後トルク指令に基づいて、電動機に出力する電流を制御する電流制御器と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、電動機制御装置及び電動機制御方法に関する。
電動機をインバータなどの電動機制御装置を用いて速度制御する際には、フィードバック制御により、電動機の回転速度を指令速度に追従させる制御が一般に行われている。この時、電動機が圧縮機など、周期的に負荷が変動する用途に用いられていると、かかる負荷変動に伴い、周期的に電動機の速度変動が生じ、振動や騒音の原因となる。
特許文献1には、負荷トルクの変動に合わせた補償電圧パターンを予め電動機の所定回転角度毎に求めて当該制御手段の内部メモリに記憶して、その所定回転角度毎に内部メモリから読み出した加算データを基準電圧に加算した値を電動機の印可電圧にすることにより、その電動機の出力トルクを変化させて1回転中の回転速度の変動を抑制する電動機の制御方法が記載されている。
特許文献2には、電動機の速度変動の1次成分をトルク制御により抑制する際に、速度変動の平均の大きさに応じて、ヒステリシス特性を持たせて、1次成分補償部への入力及び、1次成分補償部における信号モデルを切り替え制御し、速度変動を所定値近傍に保つことが記載されている。
特開2002−247878号公報 特開平10−174488号公報
本発明は、電動機の速度変動を抑制する際に、速度変動抑制の割合を正確に制御し、制御装置効率の低下を抑制することをその課題とする。
本発明の一の側面による電動機制御装置は、速度指令に基づいて、トルク指令を出力する速度制御器と、補償係数Kとして、0〜1の任意の値を設定する補償係数設定部と、電動機の回転速度の周期的な変動を抑制するトルク補償値ΔTに、前記補償係数Kを乗じて前記トルク指令に加算して補償後トルク指令を得る構成と、前記補償後トルク指令に基づいて、電動機に出力する電流を制御する電流制御器と、を有する。
また、本発明の別の一側面による電動機制御装置は、前記トルク補償値ΔTに、(1−K)を乗じて得たトルク補償値の残余分(1−K)ΔTに基づいて、速度補償値を得るトルク−速度変換部を有し、前記速度制御器は、さらに前記速度補償値に基づいて、トルク指令を出力してよい。
また、本発明の別の一側面による電動機制御装置は、前記トルク補償値ΔTと前記補償係数Kの積があらかじめ設定した値より小さい場合に、前記トルク指令への加算を制限してよい。
また、本発明の別の一側面による電動機制御装置は、前記トルク補償値ΔTと前記補償係数Kの積があらかじめ設定した値より小さい場合に、前記トルク指令への加算を制限するとともに、前記トルク補償値ΔTを前記トルク補償値の残余分として前記速度補償値を得てよい。
また、本発明の別の一側面による電動機制御装置では、前記補正係数Kは、時刻、電動機の回転速度、負荷及び、外部からの指令の少なくともいずれかに関する条件に基づいて変更されてよい。
また、本発明の一側面による電動機制御方法は、速度指令に基づいて、トルク指令を算出し、補償係数Kとして、0〜1の任意の値を設定し、電動機の回転速度の周期的な変動を抑制するトルク補償値ΔTに、前記補償係数Kを乗じて前記トルク指令に加算して補償後トルク指令を得、前記補償後トルク指令に基づいて、電動機に出力する電流を制御する。
また、本発明の別の一側面による電動機制御方法は、前記トルク補償値ΔTに、(1−K)を乗じて得たトルク補償値の残余分(1−K)ΔTに基づいて、速度補償値を得、さらに前記速度補償値に基づいてトルク指令を算出してよい。
また、本発明の別の一側面による電動機制御方法は、前記補償係数Kを0とした場合の前記電動機に対するトルク指令又は、前記電動機に生じる負荷トルクを測定し、前記補償係数Kを0とした場合の前記電動機の回転速度の周期的な変動のピークを測定し、測定された前記トルク指令又は前記負荷トルク並びに前記回転速度の周期的な変動のピークに基づいて、前記速度補償値を得るための換算計数を演算してよい。
本発明の一実施形態に係る電動機制御装置と、電動機及び負荷からなる電動機制御システムの構成を示すブロック図である。 本発明の一実施形態に係る電動機制御装置と、電動機及び負荷からなる電動機制御システムにおいて、騒音及び振動抑制をしながら運転する動作の一例を示すフロー図である。 KΔTの値がある一定よりも小さい場合に電動機の回転速度の周期的な変動の抑制を行わないようにするためにリミッタを設けた1例を示す図である。 KΔTの値がある一定よりも小さい場合に電動機の回転速度の周期的な変動の抑制を行わないようにするためにリミッタを設けた別の例を示す図である。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動機制御装置1と、電動機2及び負荷3からなる電動機制御システムの構成を示すブロック図である。
電動機制御装置1は、入力された速度指令ωrに基づき、電動機2が所望の速度で回転するよう電力を供給する装置である。ここでは、電動機制御装置1は、いわゆるインバータ制御装置であるが、必ずしもこれに限定されず、例えば、サーボ制御装置やサイクロコンバータなどの制御装置であってもよい。電動機2は、交流電動機であるが、その形式は特に限定されず、各種の誘導機であっても、同期機であってもよい。ここでは、電動機2は一例として、3相永久磁石同期電動機である。負荷3は、電動機2により動力を受け作動する何らかの機構であり、特に制限はされないが、ここでは、電動機2の一回転中にトルク変動の大きい機構として、圧縮機を例示する。
電動機制御装置1の基本的な構成は、速度指令ωrと速度推定器14により推定された電動機2の回転速度ωrの差分である速度偏差Δωを速度制御器10に入力してトルク指令Tを得る。電流制御器11は、かかるトルク指令Tと図示していない電流指令Id(励磁分電流指令)とから電流指令Iq(トルク分電流指令)を得て、後述の電流Iq(トルク分電流)及びId(励磁分電流)との差分であるd−q座標における電圧指令vq(トルク分電圧指令)及びvd(励磁分電圧指令値)を得る。電圧指令vq及びvdは、座標変換器12によりd−q座標系からuvw座標系へと座標変換され(逆d−q変換)、u相、v相、w相それぞれの電圧指令vu、vv、vwへと変換される。
インバータ13は、電圧指令vu、vv、vwに従って、電源14からの電力を電動機2の3相各相に印可し、負荷3を駆動する。
また、インバータ13から電動機2に出力された電流の値は、座標変換器15へと入力され、uvw座標系からd−q座標系へと座標変換され(d−q変換)、電流Iq及びIdへと変換される。
また、電圧指令vq及びvd、並びに電流Iq及びIdは速度推定器16に入力され、電動機2の回転子の位置θ及び回転速度ωrの推定に用いられる。位置θは座標変換器12及び座標変換器15に入力されて、逆d−q変換及びd−q変換に用いられ、回転速度ωrは速度指令ωrから差し引かれる、いわゆる速度フィードバックを構成している。
なお、ここまでの説明で、速度制御器10、電流制御器11、速度推定器16の具体的な構成としては、公知のいかなるものを用いても差し支えない。また、本実施形態では、位置θ及び回転速度ωrは、速度推定器16により、電圧指令vq及びvd、並びに電流Iq及びIdより推定するものとしたが、これに変え、電動機2にロータリエンコーダもしくはリゾルバなどの回転位置検出センサを設け、直接に回転位置θを測定し、得られた回転位置θより回転速度ωrを求めるようにしてもよい。あるいは、回転位置θ及び回転速度ωrを推定可能な他の方法を用いてもよい。
以上説明した構成では、負荷3の特性等により生じる電動機2のトルク変動については、速度制御器10の追従性能の範囲での速度補償はなされる。しかし、速度検出や速度推定によるフィードバック値に検出遅れあるいは推定遅れがあると、速度制御器10での補償は、定常的な速度変動には効果的であるものの、急峻なトルク変動には効果がなかったり、かえって変動を増長する場合があることが知られている。そのため、急峻で周期的なトルク変動が生じると、電動機2の回転速度ωrに周期的な変動が生じて、振動や騒音の原因となる。そこで、本実施形態では、さらに、電流制御器11に入力されるトルク指令Tにフィードフォワード補償を行い、電動機2の回転速度ωrの周期的な変動を抑制する構成をとっている。
このフィードフォワード補償に用いられるトルク補償値ΔTは、電動機2の回転速度ωr及び回転位置θに応じて与えられる。トルク補償値ΔTを得る方法は特に限定されず、公知のいかなる方法によっても差し支えない。例えば、上述の特許文献1に記載されたものと同様にして、あらかじめトルク補償値ΔTを電動機2の回転速度ωr及び回転位置θに応じてテーブルとして定めておき、かかるテーブルを参照してトルク補償値ΔTを得るようにしてもよい。あるいは、上述の特許文献2に記載されたものと同様にして、電動機2及び負荷3のモデルからトルク補償値ΔTを得るようにしてもよく、さらに他の方法によってもよい。
本実施形態では、トルク補償値ΔTは、ブロック17にて、補償係数Kと乗算されてトルク指令Tに加算される。したがって、実際に電流制御器11に入力されるのは、トルク指令Tそのものではなく、トルク指令Tにトルク補償値ΔTと補償係数Kの積KΔTを加算して得られた補償後トルク指令Tcである。
補償係数Kは、0〜1の範囲の任意の値として、補償係数設定部21により適切な値に設定される。補償係数設定部21は、オペレータの操作により補償係数Kを設定してもよいし、また、後述するように、自動的に補償係数Kを設定する構成であってもよい。そして、補償係数Kを適切な値に設定することにより、回転速度ωrの周期的な変動をどれくらいの割合で抑制するかを任意に設定することができる。すなわち、トルク補償値ΔTを単純にトルク指令Tに加算した場合に、回転速度ωrの周期的な変動を実質的に零にできる値に設定した場合、K=1とすると、回転速度ωrの周期的な変動を実質的に零にでき、K=0.5とすると回転速度ωrの周期的な変動を50%に抑制できる。K=0とした場合には、回転速度ωrの周期的な変動の抑制は行われない。
補償係数Kは、電動機2を運転する際の条件により任意の値として設定してよい。例えば、トルク補償(フィードフォワード補償)を行うと電動機に印可する電流値が上昇するため、電動機制御装置1の効率が低下する。効率の低下を抑制、つまり電流値の上昇を抑制するため補償係数Kを適当な値に設定してよい。あるいは、夜間など騒音や振動を抑制すべき条件や、電力価格が安い条件では補償係数Kを1に近い高い値に設定し、電動機2の騒音や振動を抑制し、日中など騒音や振動がある程度許容される条件や、電力価格が高い条件では補償係数Kを0に近い低い値に設定し、騒音や振動をある程度許容しつつ消費電流を抑制することができる。
ところで、単純にKΔTをトルク指令Tに加算するのみでは、回転速度ωrの周期的な変動をどれくらいの割合で抑制するかを正確に制御することはできない。なぜなら、補償後トルク指令Tcにより変動した電動機2の回転速度ωrが速度制御器10にフィードバックされ、速度制御器10でのフィードバック制御の影響がトルク指令Tに反映されてしまうからである。
そこで、本実施形態では、速度制御器10に入力される速度偏差Δωから、KΔTの影響を除去するための構成を有している。すなわち、KΔTは、ブロック18にて(1−K)/Kと乗算され、トルク補償(フィードフォワード補償)に用いられなかったトルク補償値の残余分(1−K)ΔTを得る。さらにトルク−速度変換19により、トルク補償値の残余分(1−K)ΔTは、かかる残余分によって生じたであろう速度である、速度補償値Δωに変換される。
そして、最終的に速度制御器に入力される補償後速度指令ωcは、速度指令ωrに加え、さらに速度補償値Δωに基くことで、補償がなされる。具体的には、速度指令ωrからは、あらかじめ速度補償値Δωが差し引かれ、補償後速度指令ωcに変換される。したがって、本実施形態では、速度偏差Δωは、速度指令ωrと回転速度ωrの差分ではなく、実際には補償後速度指令ωcと回転速度ωrの差分である。
こうすることにより、速度制御器10には、見かけ上、あたかもKΔTによるトルク補償がトルク指令Tになされた場合における速度偏差Δωが入力されることになる。これにより、速度制御器10は、トルク補償値の残余分(1−K)ΔTにより生じる電動機2の回転速度ωrの変動分がフィードバックされてしまう影響を排除し、回転速度ωrの周期的な変動の割合を補償係数Kにより正確に定めることができるようになる。
なお、速度補償値Δωに基く速度指令ωrの補償をするための構成は、上述したような、速度指令ωrから直接速度補償値Δωを減算する構成には限定されず、計算上、結果的に速度指令ωrから速度補償値Δωが減算されている値として補償後速度指令ωcが得られていればよい。そのような別の構成としては、例えば、速度指令ωrから回転速度ωrとの差分から、速度補償値Δωを減算する構成があげられる。あるいは、回転速度ωrに速度補償値Δωを加算しておき、その和を速度指令ωrから減算する構成などであってもよい。
図2は、本実施形態に係る電動機制御装置1と、電動機2及び負荷3からなる電動機制御システムにおいて、騒音及び振動抑制をしながら運転する動作の一例を示すフロー図である。なお、同フロー図において、ステップST1〜ST4は運転前準備の動作、ステップST5〜ST8は運転時の動作である。
まず、ステップST1にて、電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制を行わない場合の電動機2に対するトルク指令T又は、電動機2に生じる負荷トルクを測定する。負荷トルクの測定は、電動機2に適宜の測定器を取り付けて直接測定したり、外乱トルクオブザーバの出力から得たりしてよい。そして、電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制を行わない場合とは、補償係数Kが0である場合に他ならないから、この測定は、K=0において実施してよい。そして、得られたトルク指令T又は負荷トルクから、電動機2の回転子の位置によらない定常成分を除いた脈動成分が、トルク補償値ΔTに相当するから、これを電動機2の回転子の回転位置θに応じて設定し、あらかじめテーブルを作成する。これを(A)とする。
さらに、ステップST2にて、同じく電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制を行わない場合の、かかる周期的な変動のピークを測定する。この測定もまた、電動機2に適宜の測定器を取り付けて直接測定したり、速度推定器16から出力される回転速度ωrから得たりしてよい。ただし、速度推定器16による速度検出に遅れがある場合には、回転速度ωrの周期的な変動の測定に速度推定器16の出力を用いるのは好ましくない。電動機2がロータリエンコーダなどの回転位置検出センサを持つ場合には、その出力から測定してよい。これを(B)とする。
次に、ステップST3にて、ステップST1により得られたトルク補償値ΔTとステップST2より得られた周期的な変動のピークから、(A)/(B)により、トルクと速度との換算計数を演算する。
なお、以上のステップST1〜ST3は、電動機制御システムを電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制しつつ運転する前の準備段階としてあらかじめ行っておくべき手順であり、また、使用が予定されている電動機2の種々の回転速度毎に実行して、各回転速度に対応したトルク補償値ΔT、周期的な変動のピーク及びトルクと速度との換算計数を求めておく。
さらに、ステップST4にて、電動機2の運転状況に照らし、適切な補償係数Kを設定する。これで運転前準備は完了である。
ステップST5では、ステップST1で得られたトルク保障値ΔTとステップST4で設定した補償係数Kから、KΔTを求め、トルク指令Tに加算する。これにより、保障係数Kに等しい割合だけ電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制がなされる。
さらにステップST6で、トルク補償値の残余分(1−K)ΔTをステップST3で求めた換算計数で割り、トルク−速度変換を行って、速度補償値Δωを導出する。
そしてステップST7で、速度補償値Δωを速度指令ωrから減算し、補償後速度指令ωcを得る。これにより、速度制御器10に補償後トルク指令Tcにより変動した電動機2の回転速度ωrがフィードバックされることによる影響が排除される。
なお、ステップST6及びST7による補償後トルク指令Tcによる影響の排除は、速度補償値Δωを速度指令ωrから減算する手法によらず、他の手法を用いてもよい。他の手法としては、例えば、補償後トルク指令Tcによる影響は、電動機2の回転速度ωrの周期的な変動を抑制するために生じるものであるから、かかる影響は電動機2の回転速度ωrにおおむね等しい周期で発生すると考えられるところ、適宜の周波数フィルタ、例えばローパスフィルタやバンドパスフィルタにより、速度制御器10からの出力や速度推定器14の出力から、回転速度ωrにおおむね等しい周期の周波数成分をカットする手法が挙げられる。
さらにステップST8で、電動機2の動作を継続する場合(ST8:Y)にはステップST5へと戻り、電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制を継続し、電動機2の動作を継続しない場合(ST8:N)には動作を終了する。
なお、トルク指令Tに加算するKΔTの値がある一定よりも小さい場合には、そもそも騒音・振動の大きさが小さく、補償の必要性に乏しいため、KΔTの値がある一定よりも小さい場合に電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制を行わないこととしてもよい。すなわち、トルク補償値ΔTや、検出される値には実用上の誤差があるところ、この誤差を含む推定値に基づいて電動機2の回転速度ωrの周期的な変動を0または0に近いレベルまで抑制しようとすると、かえって変動を増大させる可能性もあるからである。
図3は、KΔTの値がある一定よりも小さい場合に電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制を行わないようにするためにリミッタを設けた1例を示す図である。図3は、図1に示したブロック図の一部分を構成する。
図3に示すように、ブロック15からKΔTがトルク指令Tに加算するまでの間に、リミッタ18が設けられている。このリミッタ20は、KΔTが閾値トルクTth以上である場合には、KΔTをそのまま出力し、KΔTが閾値トルクTth未満である場合には、出力は0となる。これにより、KΔTの値が閾値トルクTth未満である場合には、トルク指令Tに加算される値はK=0とした場合と同様に0となり、電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制は行なわれない。
図4は、KΔTの値がある一定よりも小さい場合に電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制を行わないようにするためにリミッタ20を設けた別の例を示す図である。図4もまた、図1に示したブロック図の一部分を構成する。
図4の例では、トルク補償値ΔTはブロック15に入力され、さらにブロック17から出力されるKΔTはリミッタ20に入力される。リミッタ20の動作は先の例と同じであり、KΔTが閾値トルクTth以上である場合には、KΔTをそのまま出力し、KΔTが閾値トルクTth未満である場合には、出力は0となる。そして、このKΔT又は0がトルク指令Tに加算されるから、KΔTの値が閾値トルクTth未満である場合には、K=0とした場合と同様となり、電動機2の回転速度ωrの周期的な変動の抑制は行なわれない。
さらに、この例では、トルク補償値ΔTから、リミッタ20から出力されるKΔT又は0を減算し、トルク−速度変換19に入力している。ここで、KΔTが閾値Tth以上であり、リミッタ20からKΔTが出力されている場合には、トルク−速度変換19には、ΔT−KΔT=(1−K)ΔTが入力され、図1で示したものと等しい結果が得られる。
そして、KΔTが閾値Tth未満であり、リミッタ20から0が出力されている場合には、トルク−速度変換19には、ΔT−0=ΔTが出力される。したがって、この例では、トルク−速度変換19に対しても、図1に示した場合において、K=0とした場合と同様の結果が得られる。
また、ブロック17及びブロック18で用いられるKの値は、電動機2の運転中に変更してもよい。かかる変更は、先に述べたように、電動機2を運転する際の条件に応じてオペレータがあらかじめ設定するようにしてもよいが、電動機制御装置1自体が、かかる条件を検出して自動で設定するようにしてもよい。このようにすることで、電動機2の騒音・振動の抑制を必要に応じてきめ細かく制御することができる。
そのような条件としては種々のものを挙げることができるが、以下にその例を示す。
(1)時刻に応じて補償係数Kを変更する。例えば、日中は騒音・振動抑制を行わないか、抑制の割合を低いものとして、夜間は騒音・振動抑制を強くする。
(2)電動機2の回転速度ωrに応じて補償係数Kを変更する。例えば、電動機2と負荷3からなる振動系の共振周波数を予め測定しておき、かかる共振周波数に等しいかその近辺となる回転速度ωrでは、補償係数Kを1かまたは1に近い大きい値とし、他の回転速度ωrではそれより小さい値とする。あるいは、一般に電動機2の回転速度ωrが小さい場合に振動が大きくなる傾向があるため、回転速度ωrが小さくなるにしたがって、補償係数Kを大きな値とする。
(3)インバータ13又は電動機2の負荷に応じて補償係数Kを変更する。例えば、インバータ13から電動機2に出力される電流のピーク電流値が所定値を超えたり、インバータ13から電動機2に出力される電力が所定値を超えるなど、インバータ13又は電動機2の過負荷が予想される場合に、補償係数Kを小さい値に変更して過負荷による故障や異常停止を事前に防止する。あるいは、インバータ13又は電動機2の負荷により生じる事象を検出してもよい。例えば、インバータ13自体や、インバータ13に用いるスイッチング素子の温度、電動機2の温度が所定値を超えた場合に、インバータ13又は電動機2の過負荷が予想されるとして、補償係数Kを小さい値に変更してよい。
(4)外部からの指令に応じて補償係数Kを変更する。外部からの指令には、例えば、オペレータによる運転モードの指示が挙げられる。すなわち、オペレータが適宜の操作端末を操作して、電動機制御装置1に低騒音(低振動)運転モードを指示した場合には補償係数Kを1かまたは1に近い大きい値とし、省エネモードを指示した場合には補償係数Kを0かまたは0に近い小さい値とするなどである。この中間のモードを設けておき、補償係数Kとして、低騒音(低振動)運転モードと省エネモードの中間的な値を設定するようにしてもよい。
さらに、上の(1)〜(4)で上げた条件は、任意に組み合わせて使用してよい。組み合わせる際には、各条件ごとに優先順位を設けて補償係数Kを設定してもよく、または各条件から導かれる補償係数Kの積を最終的に用いる補償係数Kの値としてもよい。
以上説明した実施形態の構成は具体例として示したものであり、本明細書にて開示される発明をこれら具体例の構成そのものに限定することは意図されていない。当業者はこれら開示された実施形態に種々の変形を加えてもよく、また、フロー図に示した制御は、同等の機能を奏する他の制御に置き換えてもよい。本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
1 電動機制御装置、2 電動機、3 負荷、10 速度制御器、11 電流制御器、12 座標変換器、13 インバータ、14 電源、15 座標変換器、16 速度推定器、17 ブロック、18 ブロック、19 トルク−速度変換、20 リミッタ、21 補償係数設定部。

Claims (8)

  1. 速度指令に基づいて、トルク指令を出力する速度制御器と、
    補償係数Kとして、0〜1の任意の値を設定する補償係数設定部と、
    電動機の回転速度の周期的な変動を抑制するトルク補償値ΔTに、前記補償係数Kを乗じて前記トルク指令に加算して補償後トルク指令を得る構成と、
    前記補償後トルク指令に基づいて、電動機に出力する電流を制御する電流制御器と、
    を有する
    電動機制御装置。
  2. 前記トルク補償値ΔTに、(1−K)を乗じて得たトルク補償値の残余分(1−K)ΔTに基づいて、速度補償値を得るトルク−速度変換部を有し、
    前記速度制御器は、さらに前記速度補償値に基づいて、トルク指令を出力する、
    請求項1に記載の電動機制御装置。
  3. 前記トルク補償値ΔTと前記補償係数Kの積があらかじめ設定した値より小さい場合に、前記トルク指令への加算を制限する
    請求項1又は2に記載の電動機制御装置。
  4. 前記トルク補償値ΔTと前記補償係数Kの積があらかじめ設定した値より小さい場合に、前記トルク指令への加算を制限するとともに、前記トルク補償値ΔTを前記トルク補償値の残余分として前記速度補償値を得る
    請求項2に記載の電動機制御装置。
  5. 前記補正係数Kは、時刻、電動機の回転速度、負荷及び、外部からの指令の少なくともいずれかに関する条件に基づいて変更される請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動機制御装置。
  6. 速度指令に基づいて、トルク指令を算出し、
    補償係数Kとして、0〜1の任意の値を設定し、
    電動機の回転速度の周期的な変動を抑制するトルク補償値ΔTに、前記補償係数Kを乗じて前記トルク指令に加算して補償後トルク指令を得、
    前記補償後トルク指令に基づいて、電動機に出力する電流を制御する、
    電動機制御方法。
  7. 前記トルク補償値ΔTに、(1−K)を乗じて得たトルク補償値の残余分(1−K)ΔTに基づいて、速度補償値を得、
    さらに前記速度補償値に基づいてトルク指令を算出する、
    請求項6に記載の電動機制御方法。
  8. 前記補償係数Kを0とした場合の前記電動機に対するトルク指令又は、前記電動機に生じる負荷トルクを測定し、
    前記補償係数Kを0とした場合の前記電動機の回転速度の周期的な変動のピークを測定し、
    測定された前記トルク指令又は前記負荷トルク並びに前記回転速度の周期的な変動のピークに基づいて、前記速度補償値を得るための換算計数を演算する、
    請求項7に記載の電動機制御方法。
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