以下、本発明の一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係る自動運転装置の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、自動運転装置100は、自動車等の車両Vに搭載される。自動運転装置100は、外部センサ1、GPS[Global Positioning System]受信部2、内部センサ3、地図データベース4、ナビゲーションシステム5、アクチュエータ6、HMI[Human Machine Interface]7、及びECU[Electronic Control Unit]10を備えている。
外部センサ1は、車両Vの周辺情報である外部状況を検出する検出機器である。外部センサ1は、カメラ及びレーダセンサの少なくとも何れか一方を含む。カメラは、車両Vの外部状況を撮像する撮像機器である。
カメラは、例えば、車両Vのフロントガラスの裏側に設けられている。カメラは、車両Vの外部状況に関する撮像情報をECU10へ送信する。カメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。ステレオカメラは、両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有している。ステレオカメラの撮像情報には、奥行き方向の情報も含まれている。
レーダセンサは、電波(例えばミリ波)又は光を利用して車両Vの周辺の障害物を検出する検出機器である。レーダセンサには、例えば、ミリ波レーダ[Radar]又はライダー[LIDAR:Light Detection and Ranging]が含まれる。レーダセンサは、電波又は光を車両Vの周辺に送信し、障害物で反射された電波又は光を受信することで障害物を検出する。レーダセンサは、検出した障害物情報をECU10へ送信する。障害物には、ガードレール、建物等の固定障害物の他、歩行者、自転車、他車両等の移動障害物が含まれる。
GPS受信部2は、3個以上のGPS衛星から信号を受信することにより、車両Vの位置(例えば車両Vの緯度及び経度)を測定する。GPS受信部2は、測定した車両Vの位置情報をECU10へ送信する。なお、GPS受信部2に代えて、車両Vの緯度及び経度が特定できる他の手段を用いてもよい。また、車両Vの方位を測定する機能を持たせることは、センサの測定結果と後述する地図情報との照合のために好ましい。
内部センサ3は、車両Vの走行状態を検出する検出機器である。内部センサ3は、車速センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサのうち少なくとも一つを含む。車速センサは、車両Vの速度を検出する検出器である。車速センサとしては、例えば、車両Vの車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフト等に対して設けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが用いられる。車速センサは、検出した車速情報(車輪速情報)をECU10に送信する。
加速度センサは、車両Vの加速度を検出する検出器である。加速度センサは、例えば、車両Vの前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、車両Vの横加速度を検出する横加速度センサと、車両Vの縦加速度を検出する縦加速度センサと、を含んでいる。加速度センサは、車両Vの上下方向の加速度を検出する上下加速度センサを含んでいてもよい。加速度センサは、例えば、車両Vの加速度情報をECU10に送信する。ヨーレートセンサは、車両Vの重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、例えばジャイロセンサを用いることができる。ヨーレートセンサは、検出した車両Vのヨーレート情報をECU10へ送信する。
地図データベース4は、地図情報を備えたデータベースである。地図データベースは、例えば、車両に搭載されたHDD[Hard disk drive]内に形成されている。地図情報には、例えば、道路の位置情報、道路形状の情報(例えばカーブ、直線部の種別、カーブの曲率等)、交差点及び分岐点の位置情報が含まれる。さらに、建物や壁等の遮蔽構造物の位置情報、SLAM[Simultaneous Localization and Mapping]技術を使用するために、地図情報に外部センサ1の出力信号を含ませることが好ましい。なお、地図データベースは、車両Vと通信可能な情報処理センタ等の施設のコンピュータに記憶されていてもよい。
ナビゲーションシステム5は、車両Vの運転者によって設定された目的地まで、車両Vの運転者に対して案内を行う装置である。ナビゲーションシステム5は、GPS受信部2の測定した車両Vの位置情報と地図データベース4の地図情報とに基づいて、車両Vが走行するルート(走行経路)を算出する。ルートは、複数車線の区間において好適な車線を特定したものであってもよい。ナビゲーションシステム5は、例えば、車両Vの位置から目的地に至るまでの目標ルートを演算し、ディスプレイの表示及びスピーカの音声出力により運転者に対して目標ルートの報知を行う。ナビゲーションシステム5は、例えば、車両Vの目標ルートの情報をECU10へ送信する。なお、ナビゲーションシステム5は、車両Vと通信可能な情報処理センタ等の施設のコンピュータに構成されていてもよい。
アクチュエータ6は、車両Vの走行制御を実行する装置である。アクチュエータ6は、スロットルアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。スロットルアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を制御し、車両Vの駆動力を制御する。なお、車両Vがハイブリッド車又は電気自動車である場合には、スロットルアクチュエータを含まず、動力源としてのモータにECU10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。
ブレーキアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、車両Vの車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を、ECU10からの制御信号に応じて制御する。これにより、操舵アクチュエータは、車両Vの操舵トルクを制御する。
HMI7は、車両Vの乗員(運転者を含む)と自動運転装置100との間で情報の出力及び入力をするためのインターフェイスである。HMI7は、例えば、乗員に画像情報を表示するためのディスプレイパネル、音声出力のためのスピーカ、及び乗員が入力操作を行うための操作ボタン又はタッチパネル等を備えている。
ECU10は、車両Vの走行を自動で制御する自動運転制御を実行する。ECU10は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read OnlyMemory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。ECU10では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、各種の制御を実行する。ECU10は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。以下に説明するECU10の機能は、車両Vと通信可能なサーバ上で実行される態様であってもよい。
ECU10は、車両位置認識部11、外部状況認識部12、走行状態認識部13、走行計画生成部14、走行制御部15、予測データ算出部16及び判定部17を有している。
車両位置認識部11は、GPS受信部2で受信した車両Vの位置情報、及び地図データベース4の地図情報に基づいて、地図上における車両Vの位置(以下、「車両位置」という)を認識する。なお、車両位置認識部11は、ナビゲーションシステム5で用いられる車両位置を該ナビゲーションシステム5から取得して認識してもよい。
外部状況認識部12は、外部センサ1の検出結果(例えばカメラの撮像情報及びレーダセンサの障害物情報等)に基づいて、車両Vの外部状況を認識する。外部状況は、例えば、車両Vに対する走行車線の白線の位置もしくは車線中心の位置及び道路幅、道路の形状(例えば走行車線の曲率、路面の勾配変化、うねり、路面の凹凸等)、車両Vの周辺の障害物の状況(例えば、固定障害物と移動障害物を区別する情報、車両Vに対する障害物の位置、車両Vに対する障害物の移動方向、車両Vに対する障害物の相対速度等)を含む。また、外部センサ1の検出結果と地図情報とを照合することにより、GPS受信部2等で取得される車両Vの位置及び方向の精度を補うことは好適である。
走行状態認識部13は、内部センサ3の検出結果(例えば車速センサの車速情報、加速度センサの加速度情報、ヨーレートセンサのヨーレート情報等)に基づいて、車両Vの走行状態を認識する。
走行計画生成部14は、例えば、ナビゲーションシステム5で演算された目標ルート、車両位置認識部11で認識された車両位置、及び、外部状況認識部12で認識された車両Vの外部状況(車両位置、方位を含む)に基づいて、走行計画を生成する。走行計画は、車両Vの現在の位置から目的地まで至る目標ルートに沿って車両Vを走行させる計画である。走行計画には、車両Vの目標ルート上の位置に応じた車両Vの制御目標値が含まれている。目標ルート上の位置とは、地図上で目標ルートの延在方向における位置である。目標ルート上の位置は、目標ルートの延在方向において所定間隔(例えば1m)毎に設定された設定縦位置を意味する。
制御目標値とは、走行計画において車両Vの制御目標となる値である。制御目標値は、目標ルート上の設定縦位置毎に関連付けて設定される。制御目標値には、車両Vの目標横位置、車両Vの目標舵角、車両Vの目標車速、及び車両Vの目標加速度が含まれる。
目標横位置とは、走行計画において制御目標となる車両Vの横位置である。車両Vの横位置とは、車両Vの走行する道路の道路幅方向(車線幅方向)における車両Vの位置である。車線幅方向とは、道路の車線を形成する白線に対して道路の路面上で直交する方向である。また、道路の延在方向(道路幅方向と直交する方向)における車両Vの位置を車両Vの縦位置とする。車両Vの縦位置は、目標ルートの延在方向における車両Vの位置である。目標舵角とは、走行計画において制御目標となる車両Vの舵角である。目標車速とは、走行計画において制御目標となる車両Vの車速である。目標加速度とは、走行計画において制御目標となる車両Vの加速度である。
走行計画生成部14は、後述する判定部17により、走行計画に沿う自動運転制御の実行中に車両Vの乗員が車に酔うリスクがあると判定された場合、乗員が車に酔うリスクを抑制するように走行計画を変更する。この点について詳しくは後述する。
走行制御部15は、車両位置認識部11の認識した車両位置、外部状況認識部12の認識した外部状況、走行状態認識部13の認識した走行状態、及び走行計画生成部14で生成した走行計画に基づいて、車両Vの走行を自動で制御する自動運転制御を実行する。走行制御部15は、走行計画に応じた制御信号をアクチュエータ6に出力する。これにより、走行制御部15は、走行計画に沿って車両Vが自動走行するように、車両Vの走行を制御する。
予測データ算出部16は、走行計画生成部14で走行計画が生成された場合、走行計画に基づいて、走行計画に沿う自動運転制御の実行中における車両Vの状態量の予測データを算出する。車両Vの状態量は、車両Vの走行状態を示す物理的な量である。車両Vの状態量には、例えばヨーレートが含まれる。車両Vの状態量には、加速度(前後加速度)が含まれていてもよい。
車両Vの状態量の予測データとは、車両Vが走行計画に沿って自動運転制御を実行した場合における車両Vの状態量を予測したデータ(一連の状態量の値の集合体)である。車両Vの状態量の予測データには、例えば、車両Vが走行計画に沿って自動運転制御を実行した場合における車両Vのヨーレートを予測したデータが含まれる。
具体的に、車両Vの状態量の予測データは、例えば、目標ルート上に設定された設定縦位置のそれぞれにおけるヨーレートの予測値である予測ヨーレートとすることができる。予測データ算出部16は、例えば、一つの設定縦位置における目標操舵角と目標ルート上でその一つ前の設定縦位置における目標操舵角とに基づいて、周知の手法により、当該一つの設定縦位置における予測ヨーレートを算出する。
同様に、車両Vの状態量の予測データには、目標ルート上に設定された設定縦位置のそれぞれにおける予測加速度が含まれていてもよい。予測データ算出部16は、例えば、設定縦位置における目標加速度に基づいて、当該設定縦位置における予測加速度を算出する。予測データ算出部16は、その他の周知の手法により、走行計画に基づいて車両Vの状態量の予測データを算出してもよい。
図2は、車両の状態量の予測データの例を示す図である。図中において、横軸は、車両Vの現在位置を0とした場合の走行計画の進路上の走行距離を示し、縦軸は、予測ヨーレートを示す。縦軸の正の方向(上方向)は、車両Vの重心の鉛直軸時計回りに予測ヨーレートが発生することを意味し、縦軸の負の方向(下方向)は、車両Vの重心の鉛直軸反時計回りに予測ヨーレートが発生することを意味する。予測データ算出部16は、例えば、図2に示すような予測ヨーレートを算出することができる。
予測データ算出部16は、算出した予測データに基づいて、車両Vの乗員が車に酔うリスクを評価するためのリスク評価量を算出する。予測データ算出部16は、一例として、算出した予測データに対して第1及び第2フィルタ処理を行うことで、リスク評価量を算出する。
図3の(a)は、第1フィルタ処理で用いるフィルタの特性の例を示す図である。図中において、横軸は、第1フィルタ処理を行う対象の周波数を示し、縦軸は、当該対象に乗算されるゲインを示す。第1フィルタ処理は、例えば、ISO2631で規定されている人間の振動感度特性を模擬するためのフィルタ処理である。第1フィルタ処理では、周波数領域に変換された予測ヨーレートに対して、図3の(a)に示されるゲインが乗算される。
第1フィルタ処理を行う対象がヨーレートの場合、図3の(a)の曲線C1に示されるフィルタの特性が第1フィルタ処理に用いられる。第1フィルタ処理を行う対象がピッチレート、ロールレート等、車両Vの重心軸周りの回転方向速度成分を有する状態量の場合には、図3の(a)の曲線C1のフィルタの特性が第1フィルタ処理に使用可能である。第1フィルタ処理を行う対象が前後方向の加速度(前後G)、車両Vの幅方向の加速度(横G)等、水平方向加速度成分を有する状態量の場合には、曲線C2aのフィルタの特性が第1フィルタ処理に使用可能である。第1フィルタ処理を行う対象が上下方向の加速度(上下G)等、上下方向加速度成分を有する状態量の場合には、曲線C2bのフィルタの特性が第1フィルタ処理に使用可能である。なお、ここでの水平方向とは、例えば車両Vの前後方向及び幅方向を含む平面に沿う方向に相当し、上下方向とは、例えば鉛直方向に相当する。
第2フィルタ処理は、人間が乗り物酔いをし易いとされる周波数領域を抽出するためのバンドパスフィルタ処理である。図3の(b)は、乗り物酔いの周波数感度の例を示す図である。図中において、横軸は、周波数を示し、縦軸は、乗り物酔いのし易さを示す。つまり、図3の(b)の曲線C3は、人間が乗り物酔いをし易いとされる乗り物酔いの周波数感度を示す。図3の(b)に示されるように、乗り物酔いの周波数感度は、0.25Hz付近で大きくなる。そこで、第2フィルタ処理では、人間が乗り物酔いをし易いとされる周波数領域として0.25Hz付近を抽出する。0.25Hz付近とは、例えば、0.1Hz〜0.5Hzの範囲内の周波数帯であってもよい。
図4は、リスク評価量の例を示す図である。図中において、横軸は、車両Vの現在位置を0とした場合の走行計画の進路上の走行距離を示し、縦軸は、予測ヨーレートに基づいて算出されたリスク評価量を示す。
図4は、図2の予測ヨーレートに基づいて算出されたリスク評価量を示しており、図2の予測ヨーレートがマイナス値の場合に図4のリスク評価量もマイナス値になっている。なお、リスク評価量は絶対値としてもよい。また、リスク評価量は、算出の根拠となる車両Vの状態量と同じ次元(単位)であってもよいし、無次元化した値であってもよい。予測データ算出部16は、車両Vの状態量の種類(ヨーレート、加速度など)ごとにリスク評価量を算出することができる。以下では、車両Vの状態量の種類のうち一つのリスク評価量を用いた場合について説明する。
予測データ算出部16は、算出したリスク評価量に基づいて、乗員が車に酔うリスクの有無を判定するために用いる演算値を算出する。予測データ算出部16は、演算値として、例えば下記の第1演算値、第2演算値及び第3演算値を算出する。
第1演算値は、一定距離(一定区間)におけるリスク評価量の累積値V1である。図4の例では、累積値V1は、符号A1で示されるハッチングが付された領域の面積と、符号A2で示されるハッチングが付された領域の面積との和で表される。
第2演算値は、リスク評価量が所定の閾値を超えている区間Δtの一定距離内における累積値V2である。図4の例では、所定の閾値として、閾値R1,R2が破線の直線で示されている。図中においては、累積値V2は、リスク評価量が閾値R1を超えている区間(区間Δt1,Δt2,Δt4)、及び、リスク評価量が閾値R2を下回っている区間(区間Δt3,Δt5)、の総和で表される。なお、ここでの閾値R1,R2は、等しい絶対値を有する正の値の閾値と負の値の閾値である。閾値R1,R2は、それらの絶対値が必ずしも一致する必要はなく異なる値であってもよい。
第3演算値は、リスク評価量が所定の閾値R1,R2を超えている超過分の一定距離内における累積値V3である。累積値V3は、例えば、リスク評価量が閾値R1を超えている超過分、及び、リスク評価量が閾値R2を下回っているマイナス超過分、を一定距離内において累積した値である。図4の例では、累積値V3は、符号A2で示されるハッチングが付された領域の面積の和で表される。
判定部17は、予測データ算出部16により算出された演算値に基づいて、走行計画に沿う自動運転制御の実行中において車両Vの乗員が車に酔うリスクがあるか否かを判定する。
具体的には、判定部17は、例えば、第1演算値が第1判定閾値を超えていると判定した場合、乗員が車に酔うリスクがあると判定する。第1判定閾値は、第1演算値(上記累積値V1)に着目した場合に乗員が車に酔うリスクがあると判定するための累積リスク評価量の判定閾値である。
判定部17は、第2演算値が第2判定閾値を超えていると判定した場合、乗員が車に酔うリスクがあると判定する。第2判定閾値は、第2演算値(上記累積値V2)に着目した場合に乗員が車に酔うリスクがあると判定するための累積時間の判定閾値である。
判定部17は、第3演算値が第3判定閾値を超えていると判定した場合、乗員が車に酔うリスクがあると判定する。第3判定閾値は、第3演算値(上記累積値V3)に着目した場合に乗員が車に酔うリスクがあると判定するためのリスク評価量の累積超過量の判定閾値である。
判定部17は、第1演算値が第1判定閾値を超えておらず、且つ、第2演算値が第2判定閾値を超えておらず、且つ、第3演算値が第3判定閾値を超えていないと判定した場合、乗員が車に酔うリスクがないと判定する。
次に、走行計画生成部14による走行計画の変更について詳述する。
走行計画生成部14は、判定部17により、走行計画に沿う自動運転制御の実行中において車両Vの乗員が車に酔うリスクがあると判定された場合、乗員が車に酔うリスクを抑制するように走行計画を変更する。走行計画生成部14は、生成した走行計画に基づいて予測データ算出部16により算出される車両Vの状態量を用いて、乗員が車に酔うリスクを抑制するように走行計画を変更する。
具体的に、走行計画生成部14は、目標ルートを見直す第1見直し処理を実行する。
走行計画生成部14は、第1見直し処理に先立って、ナビゲーションシステム5から予め設定された目的地に至る複数の目標ルートを取得する。走行計画生成部14は、複数の目標ルートを車両Vが通る場合の複数の走行計画を生成する。このとき、走行計画生成部14は、生成した複数の走行計画のそれぞれについて、目的地に到達するまでの所要時間を算出する。また、走行計画生成部14は、各走行計画での乗員が車に酔うリスクを予測データ算出部16に算出させると共に、走行計画に沿う自動運転制御の実行中において車両Vの乗員が車に酔うリスクがあるか否かを判定部17に判定させる。なお、複数の目標ルートは、互いに重複する部分を有していてもよい。
走行計画生成部14は、複数の目標ルートに対応する複数の走行計画の中に、乗員が車に酔うリスクがないと判定された走行計画が含まれる場合、乗員が車に酔うリスクがないと判定された走行計画における目的地に到達するまでの所要時間の変化が所定範囲内であるか否かを判定する。走行計画生成部14は、乗員が車に酔うリスクがないと判定される走行計画であって目的地に到達するまでの所要時間の変化が所定範囲内である走行計画になるように、走行計画の変更(第1見直し処理)を行う。所定範囲は、例えば、乗員が許容できる範囲である。所定範囲は、乗員の入力により設定されてもよい。なお、走行計画生成部14は、予測データ算出部16の算出したリスク評価量に基づいて、乗員が車に酔うリスクがあると判定された走行計画の目標ルートのうち乗員が車に酔うリスクが高い区間を避けるように当該目標ルートを部分的に変更(部分回避)することで第1見直し処理を実行してもよい。
走行計画生成部14は、複数の目標ルートに対応する複数の走行計画の中に、乗員が車に酔うリスクがないと判定される走行計画であって目的地に到達するまでの所要時間の変化が所定範囲内である走行計画が存在しない場合、目標ルートではなく車速を見直す第2見直し処理を実行する。走行計画生成部14は、走行計画における目標車速を低くすることにより、乗員が車に酔うリスクがないと判定される走行計画であって目的地に到達するまでの所要時間の変化が所定範囲内である走行計画になるように走行計画の変更(第2見直し処理)を行う。
走行計画生成部14は、上述した第2見直し処理を行っても、乗員が車に酔うリスクがないと判定される走行計画であって目的地に到達するまでの所要時間の変化が所定範囲内である走行計画が存在しない場合、カーブ中の進路(軌跡)を見直す第3見直し処理を実行する。第3見直し処理は、少なくとも1つのカーブにおいて乗員が車に酔うリスクを低減させるように、車両Vの進路の曲率(車両Vの曲がり方)を変えることで走行計画を変更する処理である。走行計画生成部14は、走行計画のカーブにおける目標操舵角を変更することで、乗員が車に酔うリスクがないと判定され、且つ、目的地に到達するまでの所要時間の変化が所定範囲内である走行計画になるように走行計画の変更(第3見直し処理)を行う。走行計画生成部14は、第3見直し処理として、走行計画のカーブにおける目標操舵角の変更と走行計画における目標車速の低下を併せて行ってもよい。
走行計画生成部14は、第3見直し処理として、カーブの初期において曲率の増加(立ち上がり)が早くなると共にカーブの後半において曲率の減少がゆるやかとなるように、カーブ中の進路(軌跡)を見直す。ここで、第3見直し処理に関して図5の(a)〜(c)を参照して説明する。図5の(a)は、第3見直し処理前の進路の曲率を例示する図である。図5の(b)は、周波数領域における曲率の変更を説明するための図である。図5の(c)は、第3見直し処理後の進路の曲率を例示する図である。
図5の(a)及び(c)において、横軸は、車両Vの現在位置を0とした場合の走行計画の進路上における走行距離を示し、縦軸は、曲率を示す。図5の(b)において、横軸は、車両Vの進路の曲率の周波数を示し、縦軸は、周波数領域に変換された曲率(曲率の周波数特性)を示す。図5の(a)〜(c)において、の曲線C4は、カーブ中の車両Vの進路の曲率を示す。曲線C5は、曲線C4の曲率を周波数領域に変換することで得られる周波数特性を示す。曲線C6は、曲線C5の周波数特性に第3見直し処理を行って得られる周波数特性を示す。曲線C7は、曲線C6の周波数特性を距離領域に逆変換することで得られる車両Vの進路の曲率を示す。
走行計画生成部14は、例えば図5の(a)に示されるように、第2見直し処理が行われた走行計画に基づいて、カーブにおける車両Vの進路の曲率(曲線C4)を取得する。続いて、走行計画生成部14は、例えば図5の(b)に示されるように、取得した進路の曲率を周波数領域に変換することで、曲率の周波数特性(曲線C5)を取得する。走行計画生成部14は、取得した曲率の周波数特性に対して周波数特性を調整する第3見直し処理を行うことで、第3見直し処理後の周波数特性(曲線C6)を取得する。図5の(b)の例では、走行計画生成部14は、第3見直し処理として、0.25Hz付近における周波数特性を小さくすると共に、小さくした0.25Hz付近の周囲の周波数帯における周波数特性を大きくする。続いて、図5の(c)に示されるように、走行計画生成部14は、第3見直し処理後の周波数特性(曲線C6)を距離領域に逆変換することで、第3見直し処理後の進路の曲率(曲線C7)を取得する。
上述した周波数特性の調整により得られた曲線C7と曲線C4とを比較すると、進路の曲率は、1つのカーブの初期において増加(立ち上がり)が早くなると共に、1つのカーブの後半において減少がゆるやかとなっていることがわかる。曲線C7で示される進路の曲率は、人間が乗り物酔いをし易いとされる0.25Hz付近が減少されている。すなわち、第3見直し処理により、カーブにおいて乗員が車に酔うリスクが抑制される。
なお、走行計画生成部14は、車両Vの自動運転制御の実行中に、乗員が車に酔うリスクが抑制されるように走行計画におけるカーブ中の進路を変更してもよい。
次に、自動運転装置100で実行される処理について、図6のフローチャートを参照しつつ具体的に説明する。
図6は、走行計画の変更処理を例示するフローチャートである。自動運転装置100では、例えば、走行計画生成部14によって、走行計画が生成された場合、ECU10において以下の走行計画の変更処理が行われる。
まず、予測データ算出部16により、車両Vの状態量の予測データ(ここでは予測ヨーレート)が算出される(ステップS1)。続いて、予測データ算出部16により第1フィルタ処理が実施される(ステップS2)。ステップS2では、例えば、算出された予測ヨーレートに対して図3の(a)の曲線C1に示される特性を有する第1フィルタが適用される。続いて、予測データ算出部16により、第2フィルタ処理が実施される(ステップS3)。ステップS3により、第1フィルタが適用された予測ヨーレートにおける0.25Hz付近の周波数領域が抽出されたリスク評価量が得られる。
続いて、予測データ算出部16により、得られたリスク評価量に基づいて、乗員が車に酔うリスクの有無を判定するために用いる演算値が算出される(ステップS4)。ステップS4では、例えば、上述した第1演算値、第2演算値及び第3演算値が算出される。続いて、判定部17により、算出された第1演算値、第2演算値及び第3演算値に基づいて、乗員が車に酔うリスクがあるか否かが判定される(ステップS5)。
ステップS5において、判定部17により乗員が車に酔うリスクがあると判定された場合、走行計画生成部14により、乗員が車に酔うリスクが抑制されるように走行計画が変更される(ステップS6)。一方、ステップS5において、判定部17により乗員が車に酔うリスクがないと判定された場合、そのまま処理が終了される。
なお、上記ステップS1〜S6の処理が終了されると、走行制御部15により、上記ステップS1〜S6の処理に基づく走行計画に沿って、車両Vの走行を自動で制御する自動運転制御が適切なタイミングで実行される。
以上、自動運転装置100では、予測データ算出部16により、走行計画に沿う自動運転制御の実行中における車両Vの状態量の予測データが算出される。当該予測データに基づいて乗員が車に酔うリスクがあると判定部17により判定された場合、走行計画生成部14により、乗員が車に酔うリスクを抑制するように走行計画が変更される。したがって、自動運転装置100では、乗員が車に酔うリスクがある走行計画が未然に変更されるため、乗員が車に酔うリスクを低下させることが可能となる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
上記実施形態では、車両Vの状態量の予測データからリスク評価量及び演算値の算出を行ったが、必ずしもリスク評価量及び演算値の算出を行う必要はない。また、リスク評価量の算出に必ずしもフィルタ処理を用いる必要はない。すなわち、自動運転装置100の判定部17は、車両Vの状態量の予測データに基づいて、直接、走行計画に沿った自動運転制御の実行中において車両Vの乗員が車に酔うリスクがあるか否かを判定してもよい。
例えば、自動運転装置100の判定部17は、周波数領域に変換された予測データと予め用意された車酔い判定用の周波数分布とを比較してもよい。この場合、判定部17は、予測データと車酔い判定用の周波数分布との比較結果に基づいて、走行計画に沿った自動運転制御の実行中において車両Vの乗員が車に酔うリスクがあるか否かを判定する。判定部17は、例えば、予測データと車酔い判定用の周波数分布との相関が大きい場合(車酔い判定用の周波数分布と類似度が所定値以上の予測データが含まれる場合)に、乗員が車に酔うリスクがあると判定する。
走行計画生成部14は、判定部17により、走行計画に沿った自動運転制御の実行中において車両Vの乗員が車に酔うリスクがあると判定された場合、走行計画から算出される予測データ(周波数領域に変換された予測データ)と車酔い判定用の周波数分布とが乖離するように走行計画を変更することで、乗員が車に酔うリスクを抑制するように走行計画を変更する。
上記実施形態では、車両Vの状態量として予測ヨーレートのみを示しているが、車両Vの複数の状態量(ヨーレート、加速度など)に基づいて、それぞれについて複数のリスク評価量を求めると共にリスクの有無を判定してもよい。この場合、走行計画生成部14は、それぞれのリスク評価量からリスクの有無を判定し、一つでも乗員が車に酔うリスクがあると判定された場合には、乗員が車に酔うリスクを抑制するように走行計画を変更する。なお、走行計画生成部14は、必ずしも判定部17により乗員が車に酔うリスクがないと判定される走行計画に変更する必要はない。走行計画生成部14は、乗員が車に酔うリスクがあると判定された走行計画より、少しでも乗員が車に酔うリスクを抑制する走行計画に変更すればよい。
上記実施形態では、判定部17は、第1演算値が第1判定閾値を超えていると判定(第1判定)した場合、第2演算値が第2判定閾値を超えていると判定(第2判定)した場合、及び、第3演算値が第3判定閾値を超えていると判定(第3判定)した場合、乗員が車に酔うリスクがあると判定したが、これに限定されない。例えば、判定部17は、第1判定、第2判定及び第3判定の少なくとも何れか一つを判定した場合、乗員が車に酔うリスクがあると判定してもよいし、他の判定手法を適宜採用してもよい。要は、走行計画生成部14は、判定部17により乗員が車に酔うリスクがあると判定された場合、乗員が車に酔うリスクを抑制するように走行計画を変更すればよい。
上記実施形態では、図2に示すように、距離を基準として走行計画における予測データを表わしたが、距離ではなく時間を基準として予測データを表わしてもよい。このとき、距離から時間基準へ変換するために走行計画における車速を一定と仮定してもよい。この場合には、例えば、予測データとして一定時間ごとの予測ヨーレートが用いられる。自動運転装置100の予測データ算出部16は、時間を基準として予測データを算出した場合、時間を基準としてリスク評価量を算出する。
上記実施形態において、閾値R1,R2及び第1〜第3判定閾値は、乗員の要求に応じて可変としてもよい。乗員の要求は、例えば、乗員によるHMI7の操作であってもよい。この場合、判定部17による乗員が車に酔うリスクの有無の判定における感度を調整するための感度スイッチをHMI7のディスプレイパネルに表示させてもよい。乗員により感度の調整に係る入力操作がHMI7に対してなされると、閾値R1,R2及び第1〜第3判定閾値は、HMI7からECU10に信号が出力されることで変更される。
閾値R1,R2及び第1〜第3判定閾値は、複数の段階(例えば5段階)に変更可能であってもよい。例えば、乗員が車に酔うリスクの低下よりも所要時間増加の回避を優先したい場合、乗員が感度を低下させる旨の入力操作をHMI7に対して行うことで、閾値R1,R2及び第1〜第3判定閾値が大きくされる。これにより、判定部17によって乗員が車に酔うリスクがないと判定され易くなる。一方、乗り物酔いしやすい乗員が乗車している場合、乗員の体調が不良である場合、又は、より快適な自動運転で移動したい場合等には、乗員が感度を増加させる旨の入力操作をHMI7に対して行うことで、閾値R1,R2及び第1〜第3判定閾値が小さくされる。これにより、判定部17によって乗員が車に酔うリスクがあると判定され易くなる。
上記実施形態において、判定部17により乗員が車に酔うリスクがないと判定された走行計画の情報を車両Vと通信可能な情報処理センタ等の施設のコンピュータに記憶(蓄積)してもよい。走行計画生成部14は、情報処理センタ等に記憶された走行計画の情報を利用して、走行計画の生成又は変更を行ってもよい。
上記実施形態において、車両Vの状態量には、車両Vのロールレート、車両Vのピッチレート、及び車両Vの横加速度のうち少なくとも一つが含まれていてもよい。この場合、車両Vの状態量の予測データにも、車両Vが走行計画に沿って自動運転制御を実行した場合における、ロールレートの予測値、ピッチレートの予測値、及び横加速度の予測値のうち少なくとも一つが含まれる。予測データ算出部16は、周知の手法により、走行計画に基づいて、ロールレートの予測値、ピッチレートの予測値、及び横加速度の予測値を算出することができる。
上記実施形態において、更に、自動運転制御の実行中に、車両Vの姿勢を制御することで、乗員の車酔いを引き起こしにくい車両姿勢を維持することを図ってもよい。例えば、自動運転装置100は、ECU10からの制御信号に応じて車両Vの姿勢を制御する制御サスペンション又は4輪独立駆動力制御システムを更に備えてもよい。制御サスペンション又は4輪独立駆動力制御システムの構成は、周知のものを用いることができる。制御サスペンション又は4輪独立駆動力制御システムは、周知の手法により車両Vのヒーブ、ロール及びピッチのバランスを最適化する乗心地制御を実行する。制御サスペンション又は4輪独立駆動力制御システムは、周知の手法によりピッチ角速度及びロール角速度を制御することで、車両Vの姿勢を制御する姿勢制御を実行する。
また、判定部17は、自動運転制御の実行中に、カメラにより検出された路面凹凸に基づいて、良路判定を行ってもよい。良路判定は、周知の方法を用いることができる。判定部17は、良路判定の結果に応じて、制御サスペンション又は4輪独立駆動力制御システムを制御する制御信号を送信する。例えば、良路判定の結果が悪路である場合には、車両Vの乗心地制御を優先させるように、制御サスペンション又は4輪独立駆動力制御システムを制御する。一方、良路判定の結果が良路である場合には、車両Vの実際のピッチ角速度及びロール角速度を抑制する姿勢制御を優先するように、制御サスペンション又は4輪独立駆動力制御システムを制御する。これにより、乗員の車酔いを引き起こしにくい車両姿勢を維持することが可能となる。
なお、上記実施形態において説明した技術は、乗員が車に酔うリスクを抑制するものであったが、例えば、下記のように乗員が車に酔うリスクに代えて積荷のリスクを抑制するものに応用してもよい。積荷のリスクとは、車両Vの走行によって車両Vの荷室又は荷台において積荷に力が加わるリスクを意味する。積荷の破損については、積荷の特質により荷室又は荷台において積荷が動き易くなるような固有の周期(固有振動数となる周波数に対応する周期)が存在する。この固有の周期において、積荷のリスクが高くなる。したがって、走行計画に沿う自動運転制御の実行中における車両Vの状態量の予測データに対して、固有の周期に対応する周波数を抽出するフィルタ処理を行うことにより、積荷の破損リスク評価量が算出される。そして、この積荷のリスク評価量に基づいて、走行計画に沿う自動運転制御の実行中において積荷のリスクがあるか否かを判定し、積荷のリスクがあると判定された場合、積荷の破損を抑制するように走行計画を変更してもよい。これにより、積荷のリスクが抑制されるように乗員がルートを選択したり、外部状況(通行環境)に応じて車速や進路を調整したりすることが不要となる。その結果、無人による自動運転での運搬を行う配送車両であっても、積荷のリスクを抑制した自動運転制御を実行することが可能となる。