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JP2018182301A - 複合磁性材料、およびモータ - Google Patents

複合磁性材料、およびモータ Download PDF

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JP2018182301A JP2018023553A JP2018023553A JP2018182301A JP 2018182301 A JP2018182301 A JP 2018182301A JP 2018023553 A JP2018023553 A JP 2018023553A JP 2018023553 A JP2018023553 A JP 2018023553A JP 2018182301 A JP2018182301 A JP 2018182301A
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笹栗 大助
Daisuke Sasakuri
大助 笹栗
西村 直樹
Naoki Nishimura
直樹 西村
達夫 岸川
Tatsuo KISHIKAWA
達夫 岸川
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Abstract

【課題】鉄元素を含む複合磁性材料であって、経時安定性の高い複合磁性材料を提供する。
【解決手段】軟質磁性材料Sと硬質磁性材料Hとを含有する複合磁性材料101であって、軟質磁性材料Sおよび硬質磁性材料Hが鉄元素をそれぞれ含み、軟質磁性材料Sに含まれる鉄元素の90原子%以上100原子%以下が第1の酸化物または第1の複合酸化物を形成しており、硬質磁性材料Hに含まれる鉄元素の90原子%以上100原子%以下が第2の酸化物または第2の複合酸化物を形成している。
【選択図】図1

Description

本発明は、複合磁性材料、およびモータに関する。
高性能な磁石として、ネオジム磁石(組成:NdFe14B等)が知られている。ネオジム磁石は残留磁束密度および保磁力がともに大きいため、広く利用されている。
ネオジム磁石は希土類元素であるネオジムを必須成分としている。希土類元素は高価であるとともに供給が不安定になる恐れがあるため、希土類元素の使用量を抑制したいという要請がある。そこで、希土類の使用量を抑制しつつ、高性能な磁石を作製する試みが行われている。
特許文献1には、イプシロン酸化鉄(ε−Fe)を含む硬質磁性相のコアと、アルファ鉄(α−Fe)を含み、かつコアの少なくとも一部を被覆する軟質磁性相のシェルと、を有する、コアシェル型の磁性材料が記載されている。特許文献1では、保磁力の高い硬質磁性相としてε−Fe、飽和磁束密度の高い軟質磁性相としてα−Fe、をそれぞれ用い、両者を交換結合作用によって磁気的に結合させたナノコンポジット磁石を作製している。
特開2011−35006号公報
鉄元素を含む鉄系材料を用いた磁性材料においては、鉄系材料が磁性材料の表面に露出する場合がある。これは、鉄系材料を特許文献1に記載のようにコアシェル型の磁性材料のシェルとして用いた場合に特に顕著になる。
鉄系材料として鉄や鉄合金を用いた場合、鉄や鉄合金は空気や水分によって酸化されやすい。そのため、磁性材料を構成する鉄や鉄合金が表面に露出していると空気や水分によって酸化され、磁性材料の磁気特性が低下してしまう。すなわち、鉄元素を含む複合磁性材料は、経時安定性が低いという課題があった。
そこで本発明では、上述の課題に鑑み、鉄元素を含む複合磁性材料であって、経時安定性の高い磁性材料を提供することを目的とする。
本発明の一側面としての複合磁性材料は、軟質磁性材料と硬質磁性材料とを含有する複合磁性材料であって、前記軟質磁性材料および前記硬質磁性材料が鉄元素をそれぞれ含み、前記軟質磁性材料に含まれる鉄元素の90原子%以上100原子%以下が第1の酸化物または第1の複合酸化物を形成しており、前記硬質磁性材料に含まれる鉄元素の90原子%以上100原子%以下が第2の酸化物または第2の複合酸化物を形成していることを特徴とする。
本発明によれば、鉄元素を含む複合磁性材料であって、経時安定性の高い複合磁性材料を提供することができる。
第1の実施形態に係る複合磁性材料の構造を模式的に示す図である。 第1の実施形態に係る複合磁性材料の構造を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれる。
(第1の実施形態)
本実施形態に係る複合磁性材料は、軟質磁性材料と硬質磁性材料とを含有する複合磁性材料であって、軟質磁性材料および硬質磁性材料が鉄元素をそれぞれ含んでいる。さらに、軟質磁性材料に含まれる鉄元素の90原子%以上100原子%以下が第1の酸化物または第1の複合酸化物を形成しており、硬質磁性材料に含まれる鉄元素の90原子%以上100原子%以下が第2の酸化鉄または第2の複合酸化物を形成している。
ここで、本明細書において「軟質磁性材料」とは、保磁力が小さく、飽和磁束密度が大きな材料を指す。また、本明細書において「硬質磁性材料」とは、保磁力が大きい材料を指す。
本実施形態に係る複合磁性材料は、軟質磁性材料の相(軟質磁性相)と硬質磁性材料の相(硬質磁性相)の2つの相がnm(ナノメートル)オーダーで隣接して存在する微細な混合構造を有する。このような微細な混合構造を有することで、軟質磁性相と硬質磁性相との間に交換結合作用を働かせることができる。軟質磁性相と硬質磁性相との間に交換結合作用が働いていると、反転磁場を与えたときに、交換結合している硬質磁性相の磁化によって軟質磁性相の磁化反転が抑制される。このとき磁化曲線は、交換結合作用により軟質磁性相と硬質磁性相とがあたかも単相磁石であるかのように振る舞う。そのため、軟質磁性相の大きな飽和磁束密度と、硬質磁性相の大きな保磁力を併せ持つ磁化曲線が実現されるようになる。その結果、高いエネルギー積(BH)maxを実現することができる。なお、このように軟質磁性相と硬質磁性相との間に交換結合作用を働かせた磁石は、ナノコンポジット磁石や交換スプリング磁石として知られている。
図1は、第1の実施形態に係る複合磁性材料の構造例を模式的に示す図である。本実施形態に係る複合磁性材料101は、図1(a)や図1(b)に示すように、軟質磁性材料Sを含む海部中に、硬質磁性材料Hを含む島部と、を有する海島構造を有する。
(軟質磁性材料S)
軟質磁性材料Sは、硬質磁性材料Hよりも飽和磁束密度が大きな材料である。軟質磁性材料Sの飽和磁束密度は特に限定されるものではないが、50emu/g以上であることが好ましく、70emu/g以上であることがより好ましい。
軟質磁性材料Sは鉄元素を含み、軟質磁性材料Sに含まれる鉄元素の90原子%以上100原子%以下が第1の酸化物または第1の複合酸化物を形成している。軟質磁性材料Sに含まれる鉄元素が鉄または鉄合金を形成している場合、当該鉄元素は酸化されやすく、軟質磁性材料Sの磁気特性の経時安定性が低くなる恐れがある。一方、本実施形態では軟質磁性材料Sに含まれる鉄元素の90原子%以上が第1の酸化物または第1の複合酸化物を形成しているため、当該鉄元素が酸化されにくく、軟質磁性材料Sの磁気特性が経時的に低下してしまうことを抑制することができる。
軟質磁性材料Sに含まれる鉄元素が形成している第1の酸化物または第1の複合酸化物は、FeまたはFeのFeの一部がGa、Al、Ni、Coからなる群から選択される少なくとも1つで置換された複合酸化物を含むことが好ましい。Fe(マグネタイト)は大気下での安定性が高く、軟質磁性材料SがFeを含むことで、複合磁性材料101の経時安定性をより効果的に向上させることができる。またFeは鉄系酸化物材料の中では特に高い飽和磁束密度を有しているため、軟質磁性材料SがFeを含むことで複合磁性材料101の飽和磁束密度を高くすることができ、エネルギー積(BH)maxをより高めることができる。
軟質磁性材料Sに含まれる鉄元素が形成している第1の酸化物または第1の複合酸化物は、γ−Feまたはγ−FeのFeの一部がGa、Al、Ni、Coからなる群から選択される少なくとも1つで置換された複合酸化物を含むことが好ましい。γ−Feは大気下での安定性が高く、軟質磁性材料Sがγ−Feを含むことで、複合磁性材料101の経時安定性をより効果的に向上させることができる。
また、軟質磁性材料Sに含まれる鉄元素が形成している第1の酸化物または第1の複合酸化物は、α−Feまたはα−FeのFeの一部がGa、Al、Ni、Coからなる群から選択される少なくとも1つで置換された複合酸化物を含んでいてもよい。
(硬質磁性材料H)
硬質磁性材料Hは、軟質磁性材料Sよりも保磁力が大きな材料である。硬質磁性材料Hの保磁力は特に限定されるものではないが、500Oe以上であることが好ましく、1000Oe以上であることがより好ましい。
硬質磁性材料Hは鉄元素を含み、硬質磁性材料Hに含まれる鉄元素の90原子%以上100原子%以下が第2の酸化物または第2の複合酸化物を形成している。硬質磁性材料Hに含まれる鉄元素が鉄または鉄合金を形成している場合、当該鉄元素は酸化されやすく、硬質磁性材料Hの磁気特性の経時安定性が低くなる恐れがある。一方、本実施形態では硬質磁性材料Hに含まれる鉄元素の90原子%以上が第2の酸化物または第2の複合酸化物を形成しているため、当該鉄元素が酸化されにくく、硬質磁性材料Hの磁気特性が経時的に低下してしまうことを抑制することができる。
硬質磁性材料Hに含まれる鉄元素が形成している第2の酸化物または第2の複合酸化物は、ε−Feまたはε−Feの一部がGa、Al、Ni、Coからなる群から選択される少なくとも1つで置換された複合酸化物を含むことが好ましい。ε−Feは大気下での安定性が高く、硬質磁性材料Hがε−Feを含むことで、複合磁性材料101の経時安定性をより効果的に向上させることができる。またε−Feは鉄系酸化物材料の中では特に高い保磁力を有しているため、硬質磁性材料Hがε−Feを含むことで、複合磁性材料101の保磁力を高くすることができ、エネルギー積(BH)maxをより高めることができる。
(複合磁性材料の構成元素)
本実施形態に係る複合磁性材料101は、複合磁性材料101の全量を100質量%としたときに、Nd元素の含有量が0質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。複合磁性材料101は、Nd元素を実質的に含まないことが特に好ましい。このように、複合磁性材料101中のNd元素の含有量を小さくすることで、複合磁性材料101のコストを低減させることができる。
本実施形態に係る複合磁性材料101に含まれる鉄元素は、複合磁性材料101に含まれる鉄元素の全量を100原子%としたときに、90原子%以上100原子%以下が酸化物または複合酸化物を形成していることが好ましい。
(構造)
本実施形態に係る複合磁性材料101は、軟質磁性材料Sを含む海部と、硬質磁性材料Hを含む島部と、を有する海島構造を有する。
なお、本実施形態では海部が軟質磁性材料Sを含み、島部が硬質磁性材料Hを含むものとしたが、海部が硬質磁性材料Hを含み、島部が軟質磁性材料Sを含んでいてもよい。
軟質磁性材料Sと硬質磁性材料Hとは、交換結合作用によって磁気的に結合していることが好ましい。そのため、島部と海部との間の界面から交換結合作用が働く距離(以下、「交換結合距離」と称する)をaとすると、複合磁性材料101において、隣接する2つの島部の間の平均距離dは、d≦2aを満たすことが好ましい。すなわち、隣接する2つの島部の間の平均距離は、交換結合距離の2倍以下であることが好ましい。
硬質磁性材料Hを含む粒子状の島部の平均粒径は、硬質磁性材料Hの保磁力が低下しない程度に大きいことが好ましい。また、硬質磁性材料Hがε−Feを含む場合、硬質磁性材料Hを含む粒子状の島部の平均粒径は、ε−Feがイプシロン構造を保つことができる程度に小さいことが好ましい。具体的には、硬質磁性材料Hを含む粒子状の島部の平均粒径は、5nm以上60nm以下であることが好ましく、10nm以上40nm以下であることがより好ましい。
(複合磁性材料の製造方法)
本実施形態に係る複合磁性材料101の製造方法は特に限定はされないが、例えば下記の方法が挙げられる。
第1の方法は、軟質磁性材料Sの粒子と、硬質磁性材料Hの粒子と、をそれぞれ準備して、これらを適当な混合比で混合する方法である。これらを混合して圧縮成型した後に、熱処理してもよい。
軟質磁性材料SとしてFeを用いる場合は、溶液中での化学的プロセスを用いて酸化鉄や水酸化鉄のナノ粒子を生成し、生成したナノ粒子を還元雰囲気下で熱処理することでFeナノ粒子を比較的容易に合成することができる。還元雰囲気下で熱処理を行う場合、熱処理の温度を高くしすぎたり時間を長くしすぎたりすると、還元が進行しすぎてα−Feなどが生成する可能性がある。そのため、熱処理の温度は200℃以上400℃以下とすることが好ましく、時間は2時間以上5時間以下とすることが好ましい。
軟質磁性材料Sとしてγ−Feを用いる場合は、溶液中での化学的プロセスを用いて酸化鉄や水酸化鉄のナノ粒子を生成し、生成したナノ粒子を酸化雰囲気下で熱処理することでγ−Feナノ粒子を比較的容易に合成することができる。例えば、熱処理の温度は200℃以上400℃以下とすることが好ましく、時間は2時間以上5時間以下とすることが好ましい。
硬質磁性材料Hとしてε−Feを用いる場合は、溶液中での化学的プロセスを用いて酸化鉄や水酸化鉄のナノ粒子を生成し、生成したナノ粒子を酸化雰囲気で加熱することで比較的容易にε−Fe粒子を合成することができる。溶液中での化学的プロセスとしては、例えば、硝酸鉄水和物を出発原料とした逆ミセル法やゾルゲル法等を用いることができる。なお、ε−Fe粒子を合成する工程においては、ε−Fe粒子の表面をシリカ(SiO)で被覆する工程を加えてもよい。
第2の方法は、軟質磁性材料Sの粒子、および硬質磁性材料Hの粒子のいずれかを準備して、軟質磁性材料Sの粒子または硬質磁性材料Hの粒子に対して処理を施すことで、一方の磁性材料の一部をもう一方の磁性材料に変化させる方法である。
例えば、軟質磁性材料SとしてFeを用い、硬質磁性材料Hとしてε−Feを用いる場合、上述の方法でε−Fe粒子を合成した後に、ε−Fe粒子を還元雰囲気下で熱処理する方法がある。これにより、ε−Feの一部が還元され、Feが生成される。この場合、後述する第2の実施形態のようなコアシェル型の複合磁性材料が生成される。
第3の方法は、軟質磁性材料Sおよび硬質磁性材料Hのうちの一方の材料の原料が溶解した溶液中にもう一方の材料の粒子を分散させた分散液を用意し、この分散液中で前記原料から磁性材料粒子またはその前駆体粒子を析出させる方法である。その後、得られた複合粒子の粉末を熱処理してもよい。
例えば、軟質磁性材料Sに含まれる少なくとも1種の遷移金属元素がイオン化して溶解した溶液中に硬質磁性材料Hの粒子(硬質磁性粒子)を分散させて分散液を得る。その後、分散液を撹拌しながら、分散液にpH調整剤等の添加剤を添加して、前記遷移金属を含有する粒子を析出させる。このとき、析出させる粒子は目的の軟質磁性材料Sの粒子であってもよいし、その後の熱処理等によって軟質磁性材料Sに変換可能な前駆体粒子であってもよい。分散液中には硬質磁性粒子が分散されているため、分散液中において、硬質磁性粒子の周りには、硬質磁性粒子を取り囲むように、上記イオンが存在している。この状態でイオンが反応し、イオン中の遷移金属元素を含む粒子または析出物が析出するため、硬質磁性粒子の周囲を囲む形で粒子または析出物が析出する。なお、軟質磁性材料Sと硬質磁性材料Hを入れ替えても、同様の方法で複合磁性材料を形成できる。
例えば、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、または硝酸鉄(III)等の3価の鉄を含む原料を水に溶解させて得られるFe3+イオンを含む水溶液にpH調整剤であるアンモニア水を添加してpHを変化させると、水酸化鉄(Fe(OH))を析出させることができる。この方法によれば、析出する水酸化鉄粒子の平均粒径は析出条件に依存するが、おおむね5nmから15nm程度になる。この水酸化鉄を第1の方法と同様に還元処理することで、軟質磁性材料SであるFeを得ることができる。
また、塩化鉄(II)等の2価の鉄を含む原料を水に溶解させて得られるFe2+イオンを含む水溶液にpH調整剤であるアンモニア水を添加してpHを変化させると、Fe粒子を析出させることができる。この方法によれば、析出するFe粒子の平均粒径は析出条件に依存するが、おおむね13nmから100nm程度になる。
(磁石)
本実施形態に係る複合磁性材料は、所望の形状に成形してナノコンポジット磁石とすることができる。本実施形態に係るナノコンポジット磁石は、軟質磁性材料と硬質磁性材料とを含有し、質磁性材料が鉄または鉄合金を含み、軟質磁性材料の表面が結晶性の酸化鉄で被覆されている。本実施形態に係るナノコンポジット磁石は、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
[1]焼結磁石
本実施形態に係る複合磁性材料を所望の形状に成形し、得られた成形体を不活性雰囲気下または真空下で熱処理することで、焼結磁石が得られる。また、プラズマ活性化焼結(PAS:Plasma Activated Sintering)、または放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)で成形体を焼結することによっても、焼結磁石を得ることができる。また、磁場中で成形することで、異方性焼結磁石が得られる。
[2]ボンド磁石
本実施形態に係る複合磁性材料と結合剤(バインダ)とを配合し、成形することによってボンド磁石が得られる。結合剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂材料、またはAl、Pb、Sn、Zn、Mg等の低融点金属、もしくはこれらの低融点金属からなる合金等を用いることができる。複合磁性材料と結合剤との混合物を圧縮成形したり射出成形したりすることによって、複合磁性材料を所望の形状に成形できる。また、複合磁性材料を磁場中で成形することで、異方性ボンド磁石が得られる。
(モータ)
本実施形態に係る複合磁性材料は、モータ中の回転子(ロータ)を形成する材料として好適に用いることができる。すなわち、本実施形態に係るモータは、磁石を有し、当該磁石が本実施形態に係る複合磁性材料を含有している。
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る複合磁性材料の構造例を模式的に示す図である。本実施形態に係る複合磁性材料201は、図2に示すように、硬質磁性材料Hを含むコア部と、コア部の少なくとも一部を被覆する軟質磁性材料Sを含むシェル部と、を有するコアシェル構造を有する。さらに、複合磁性材料201は、軟質磁性材料Sの表面の少なくとも一部を被覆する結晶性の酸化鉄Oを有する。複合磁性材料201が有する硬質磁性材料H、軟質磁性材料S、および結晶性の酸化鉄O等、第1の実施形態と同様である説明については、適宜省略する。
(構造)
本実施形態に係る複合磁性材料201は、硬質磁性材料Hを含むコア部と、コア部の少なくとも一部を被覆する軟質磁性材料Sを含むシェル部と、を有するコアシェル構造を有する。複合磁性材料201は、図2に示すように、複数のコアシェル粒子の集合体であってもよい。
軟質磁性材料Sと硬質磁性材料Hとは、交換結合作用によって磁気的に結合していることが好ましい。そのため、コア部とシェル部との間の界面から交換結合作用が働く距離(以下、「交換結合距離」と称する)をaとすると、シェル部の厚さtは、t≦aを満たすことが好ましい。すなわち、シェル部の厚さは交換結合距離以下であることが好ましい。
硬質磁性材料Hを含むコア部の平均粒径は、硬質磁性材料Hの保磁力が低下しない程度に大きいことが好ましい。また、硬質磁性材料Hがε−Feを含む場合、硬質磁性材料Hを含むコア部の平均粒径は、ε−Feがイプシロン構造を保つことができる程度に小さいことが好ましい。具体的には、硬質磁性材料Hを含むコア部の平均粒径は、5nm以上60nm以下であることが好ましく、10nm以上40nm以下であることがより好ましい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下に使用される「%」は、特に示さない限りすべて質量基準である。
[実施例1]
実施例1では、Feナノ粒子とε−Fe粒子とをそれぞれ作製し、これらを混合して熱処理することで、Feとε−Feとを含む複合磁性材料を作製した。
(Feナノ粒子の作製)
軟質磁性材料であるFeナノ粒子を、以下の手順で作製した。
まず、硝酸鉄水和物(Fe(NO・9HO)を6g秤量し、純水75mLに溶解させて、硝酸鉄水溶液を得た。28%アンモニア水75mLを撹拌しながら、アンモニア水に対して硝酸鉄水溶液を添加して、水酸化鉄(Fe(OH))を析出させた。析出させた水酸化鉄をフィルターろ過により回収し、純水で十分に洗浄した後に真空乾燥して、水酸化鉄ナノ粒子を得た。得られた水酸化鉄ナノ粒子の粒径を動的光散乱法(DLS)で測定した結果、体積基準の平均粒径は8nmであった。
次に、得られた水酸化鉄ナノ粒子をアルミナルツボに入れ、水酸化鉄ナノ粒子を還元雰囲気下で加熱処理することで、Feナノ粒子を得た。加熱処理の際の雰囲気ガスとして2%水素−98%窒素の混合ガスを用い、該混合ガスの流量は300sccmとした。加熱処理の際の温度は350℃とし、350℃で3時間保持した後、室温まで冷却した。得られたFeナノ粒子の粒径を動的光散乱法(DLS)で測定した結果、体積基準の平均粒径は18nmであった。また、得られたFeナノ粒子の結晶構造をX線回折(XRD)によって評価した結果、マグネタイト(Fe)の回折ピークが確認され、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
(ε−Fe粒子の作製)
硬質磁性材料であるε−Fe粒子を、以下の手順で作製した。
(1)まず、2種類のミセル溶液(ミセル溶液(A)およびミセル溶液(B))を、以下のように調製した。
(1−1)反応容器に、純水30mL、n−オクタン92mL、および1−ブタノール19mLを入れて混合した。そこに、硝酸鉄水和物(Fe(NO・9HO)を6g添加し、撹拌しながら十分に溶解させた。次に、界面活性剤としての臭化セチルトリメチルアンモニウムを、(純水のモル数)/(界面活性剤のモル数)で表されるモル比が30となるような量で添加し、撹拌により溶解させた。これにより、ミセル溶液(A)を得た。
(1−2)別の反応容器に、28%アンモニア水10mLを純水20mLに混ぜて撹拌し、その後、さらにn−オクタン92mLと1−ブタノール19mLを加え、よく撹拌した。その溶液に、界面活性剤として臭化セチルトリメチルアンモニウムを、((純水+アンモニア水中の水分)のモル数)/(界面活性剤のモル数)で表されるモル比が30となるような量で添加し、撹拌により溶解させた。これにより、ミセル溶液(B)を得た。
(2)ミセル溶液(A)をよく撹拌しながら、ミセル溶液(A)に対してミセル溶液(B)を滴下した。滴下が完了した後は、継続して30分間撹拌した。
(3)得られた混合液を撹拌しながら、当該混合液にテトラエトキシシラン(TEOS)7.5mLを加え、そのまま1日の間撹拌を継続した。この工程で、混合液中の鉄含有粒子の表面にシリカ層を形成した。
(4)得られた溶液を遠心分離機にセットして、4500rpmの回転数で30分間遠心分離処理し、沈殿物を回収した。回収された沈殿物をエタノールで複数回洗浄した。
(5)得られた沈殿物を乾燥させた後、大気雰囲気の焼成炉内に入れ、1150℃で4時間加熱処理を行った。
(6)加熱処理後の粉末を濃度2mol/LのNaOH水溶液中に分散させ、24時間撹拌して、粒子表面のシリカ層を除去した。その後、ろ過・水洗・乾燥して、ε−Fe粒子を得た。また、得られたε−Fe粒子の結晶構造をXRDによって評価した結果、ε−Feの回折ピークが確認され、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
(複合磁性材料の作製)
上述の方法によってそれぞれ作製したFeナノ粒子とε−Fe粒子を、それぞれ0.31g、0.2g秤量し、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で混合した。次に、この混合粉末を加圧成型機で加工し、成形体を得た。
得られた成型体を電気炉にセットし、水素と窒素の混合ガス(2%H−98%N)雰囲気下、270℃で5時間加熱処理した。室温まで冷却した後、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で粗粉砕した。粗粉砕によって得られた粉末を再度電気炉にセットし、水素と窒素の混合ガス(2%H−98%N)雰囲気下、270℃で3時間加熱処理して、複合磁性材料1を得た。
(複合磁性材料の構造分析)
得られた複合磁性材料1の結晶構造をXRDによって評価した結果、ε−Feの回折ピークとマグネタイト(Fe)の回折ピークがそれぞれ確認でき、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
また、粒子状の複合磁性材料1の断面をTEMで観察した結果、Feからなる海(連続相)中に、ε−Feからなる島が複数存在する海島構造が確認できた。
(複合磁性材料の磁気特性評価)
得られた複合磁性材料1について、磁気特性の経時安定性を評価した。複合磁性材料の作製直後に振動試料型磁力計を用いて残留磁束密度と保磁力を測定し、大気雰囲気下、室温で30日間保存した後、同様にしてもう一度残留磁束密度と保磁力を測定した。磁気特性の経時安定性は、30日経過後の残留磁束密度と保磁力の、作製直後の残留磁束密度と保磁力に対する比率(保持率)で評価した。結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例2では、ε−Fe粒子を還元雰囲気下で加熱処理することでε−Fe粒子の表面を還元し、ε−Fe粒子のコアと、該コアを覆うFeのシェルと、を有するコアシェル粒子状の複合磁性材料を作製した。
(ε−Fe粒子の作製)
実施例1と同様の方法で、ε−Fe粒子を作製した。
(複合磁性材料の作製)
作製したε−Fe粒子を電気炉にセットし、水素と窒素の混合ガス(2%H−98%N)雰囲気下、250℃で30分間加熱処理した。室温まで冷却した後、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で粗粉砕した。粗粉砕によって得られた粉末を再度電気炉にセットし、水素と窒素の混合ガス(2%H−98%N)雰囲気下、250℃で30分間加熱処理して、複合磁性材料2を得た。
(複合磁性材料の構造分析)
得られた複合磁性材料2の結晶構造をXRDによって評価した結果、ε−Feの回折ピークとマグネタイト(Fe)の回折ピークがそれぞれ確認でき、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
また、粒子状の複合磁性材料2の断面をTEMで観察した結果、ε−Fe粒子の表層にマグネタイト(Fe)層が形成されていることが確認できた。
(複合磁性材料の磁気特性評価)
実施例1と同様にして、複合磁性材料2の磁気特性の経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1の「Feナノ粒子の作製」の際の加熱処理の雰囲気ガスおよび「複合磁性材料の作製」の際の加熱処理の雰囲気ガスを2%水素−98%窒素の混合ガスから水素ガスに変えた以外は実施例1と同様にして、複合磁性材料3を作製した。
(複合磁性材料の構造分析)
得られた複合磁性材料3の結晶構造をXRDによって評価した結果、ε−Feの回折ピークとマグネタイト(Fe)の回折ピークがそれぞれ確認でき、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
また、粒子状の複合磁性材料3の断面をTEMで観察した結果、Feからなる海(連続相)中に、ε−Feからなる島が複数存在する海島構造が確認できた。
(複合磁性材料の磁気特性評価)
実施例1と同様にして、複合磁性材料3の磁気特性の経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例3の「Feナノ粒子の作製」の際の加熱処理の温度および「複合磁性材料の作製」の際の加熱処理の温度を350℃から370℃に変えた以外は実施例3と同様にして、複合磁性材料4を作製した。
(複合磁性材料の構造分析)
得られた複合磁性材料4の結晶構造をXRDによって評価した結果、ε−Feの回折ピークとマグネタイト(Fe)の回折ピークがそれぞれ確認でき、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
また、粒子状の複合磁性材料4の断面をTEMで観察した結果、Feからなる海(連続相)中に、ε−Feからなる島が複数存在する海島構造が確認できた。
(複合磁性材料の磁気特性評価)
実施例1と同様にして、複合磁性材料4の磁気特性の経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例5では、γ−Feナノ粒子とε−Fe粒子とをそれぞれ作製し、これらを混合して熱処理することで、γ−Feとε−Feとを含む複合磁性材料を作製した。
(γ−Feナノ粒子の作製)
軟質磁性材料であるγ−Feナノ粒子を、以下の手順で作製した。
まず、硝酸鉄水和物(Fe(NO・9HO)を6g秤量し、純水75mLに溶解させて、硝酸鉄水溶液を得た。28%アンモニア水75mLを撹拌しながら、アンモニア水に対して硝酸鉄水溶液を添加して、水酸化鉄(Fe(OH))を析出させた。析出させた水酸化鉄をフィルターろ過により回収し、純水で十分に洗浄した後に真空乾燥して、水酸化鉄ナノ粒子を得た。得られた水酸化鉄ナノ粒子の粒径を動的光散乱法(DLS)で測定した結果、体積基準の平均粒径は8nmであった。
次に、得られた水酸化鉄ナノ粒子をアルミナルツボに入れ、水酸化鉄ナノ粒子を酸化雰囲気下で加熱処理することで、γ−Feナノ粒子を得た。加熱処理の際の雰囲気ガスとして空気を用い、空気の流量は300sccmとした。加熱処理の際の温度は350℃とし、350℃で3時間保持した後、室温まで冷却した。得られたγ−Feナノ粒子の粒径を動的光散乱法(DLS)で測定した結果、体積基準の平均粒径は20nmであった。また、得られたγ−Feナノ粒子の結晶構造をX線回折(XRD)によって評価した結果、γ−Feの回折ピークが確認され、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
(ε−Fe粒子の作製)
実施例1と同様の方法で、ε−Fe粒子を作製した。
(複合磁性材料の作製)
上述の方法によってそれぞれ作製したγ−Feナノ粒子とε−Fe粒子を、それぞれ0.32g、0.2g秤量し、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で混合した。次に、この混合粉末を加圧成型機で加工し、成形体を得た。
得られた成型体を電気炉にセットし、空気雰囲気下、270℃で5時間加熱処理した。室温まで冷却した後、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で粗粉砕した。粗粉砕によって得られた粉末を再度電気炉にセットし、空気雰囲気下、270℃で3時間加熱処理して、複合磁性材料5を得た。
(複合磁性材料の構造分析)
得られた複合磁性材料5の結晶構造をXRDによって評価した結果、ε−Feの回折ピークとγ−Feの回折ピークがそれぞれ確認でき、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
また、粒子状の複合磁性材料5の断面をTEMで観察した結果、ε−Feとγ−Feの複合構造が確認できた。
(複合磁性材料の磁気特性評価)
実施例1と同様にして、複合磁性材料5の磁気特性の経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
比較例1では、αFeナノ粒子とε−Fe粒子とをそれぞれ作製し、これらを混合して熱処理することで、α鉄(α−Fe)とε−Feとを含む複合磁性材料を作製した。
(α−Feナノ粒子の作製)
軟質磁性材料であるα−Feナノ粒子を、以下の手順で作製した。
まず、実施例1と同様にして水酸化鉄ナノ粒子を得た。得られた水酸化鉄ナノ粒子の粒径を動的光散乱法(DLS)で測定した結果、体積基準の平均粒径は8nmであった。
次に、得られた水酸化鉄ナノ粒子をアルミナルツボに入れ、水酸化鉄ナノ粒子を還元雰囲気下で加熱処理することで、α−Feナノ粒子を得た。加熱処理の際の雰囲気ガスとして2%水素−98%窒素の混合ガスを用い、該混合ガスの流量は300sccmとした。加熱処理の際の温度は500℃とし、500℃で5時間保持した後、室温まで冷却した。得られたα−Feナノ粒子の粒径を動的光散乱法(DLS)で測定した結果、体積基準の平均粒径は25nmであった。また、得られたα−Feナノ粒子の結晶構造をXRDによって評価した結果、α−Fe(アルファ鉄)の回折ピークが確認され、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
(ε−Fe粒子の作製)
実施例1と同様の方法で、ε−Fe粒子を作製した。
(複合磁性材料の作製)
上述の方法によってそれぞれ作製したα−Feナノ粒子とε−Fe粒子を、それぞれ0.48g、0.2g秤量し、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で混合した。次に、この混合粉末を加圧成型機で加工し、成形体を得た。
得られた成型体を電気炉にセットし、水素と窒素の混合ガス(2%H−98%N)雰囲気下、260℃で5時間加熱処理した。室温まで冷却した後、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で粗粉砕した。粗粉砕によって得られた粉末を再度電気炉にセットし、水素と窒素の混合ガス(2%H−98%N)雰囲気下、260℃で3時間加熱処理して、複合磁性材料6を得た。
(複合磁性材料の構造分析)
得られた複合磁性材料6の結晶構造をXRDによって評価した結果、ε−Feの回折ピークとα−Feの回折ピークがそれぞれ確認でき、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
また、粒子状の複合磁性材料6の断面をTEMで観察した結果、ε−FeとαFeの複合構造が確認できた。また、粒子表面に露出したα−Feの表層には、約3nmの厚さで非晶質の酸化鉄が形成されていた。
(複合磁性材料の磁気特性評価)
実施例1と同様にして、複合磁性材料6の磁気特性の経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
比較例2では、ε−Fe粒子を還元雰囲気下で加熱処理することでε−Fe粒子の表面を還元し、ε−Fe粒子のコアと、該コアを覆うα−Feのシェルと、を有するコアシェル粒子状の複合磁性材料を作製した。
(ε−Fe粒子の作製)
実施例1と同様の方法で、ε−Fe粒子を作製した。
(複合磁性材料の作製)
作製したε−Fe粒子を電気炉にセットし、水素と窒素の混合ガス(2%H−98%N)雰囲気下、500℃で30分間加熱処理した。室温まで冷却した後、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で粗粉砕した。粗粉砕によって得られた粉末を再度電気炉にセットし、水素と窒素の混合ガス(2%H−98%N)雰囲気下、500℃で30分間加熱処理して、複合磁性材料7を得た。
(複合磁性材料の構造分析)
得られた複合磁性材料7の結晶構造をXRDで評価した結果、ε−FeとαFeの回折ピークがそれぞれ確認でき、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
また、粒子状の複合磁性材料7の断面をTEMで観察した結果、ε−Fe粒子を覆うようにしてα−Fe層が形成されていることが確認できた。さらに、粒子表面に露出したαFeの表層には、約3nmの厚さで非晶質の酸化鉄が形成されていた。
(複合磁性材料の磁気特性評価)
実施例1と同様にして、複合磁性材料7の磁気特性の経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例6では、ε−Fe粒子を分散した分散液中でFe(OH)粒子を析出させて、これを熱処理することで、Feとε−Feとを含む複合磁性材料を作製した。
(分散液の作製)
硝酸鉄水和物(Fe(NO・9HO)を6g秤量し、純水75mLに溶解させて、硝酸鉄水溶液を得た。次に、比較例1と同様にして得られたε−Fe粒子を0.36g秤量して硝酸鉄水溶液に添加し、超音波分散機で十分に分散させ、分散液を作製した。
(前駆体粒子の析出)
作製した分散液を撹拌しながら28%アンモニア水75mLを添加して、Feの前駆体粒子となるFe(OH)粒子を析出させ、Fe(OH)粒子とε−Fe粒子とを含む複合粒子を形成した。得られた複合粒子中のFe(OH)粒子の粒径をSEMで観察したところ、10nm〜20nmであった。
(複合磁性材料の作製)
Fe(OH)粒子を還元してFeに変換し、複合磁性材料を作製した。Fe(OH)粒子とε−Fe粒子の複合粒子の粉末1gを加圧成型機で加工し、成形体を作製した。
得られた成形体を電気炉にセットし、水素と窒素の混合ガス(2%H−98%N)雰囲気下、350℃で5時間加熱処理した。なお、混合ガスの流量は300sccmとした。室温まで冷却した後、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で粗粉砕した。粗粉砕によって得られた粉末を再度電気炉にセットし、空気雰囲気下、270℃で3時間加熱処理して、複合磁性材料8を得た。
(複合磁性材料の構造分析)
得られた複合磁性材料8の結晶構造をXRDによって評価した結果、ε−Feの回折ピークとマグネタイト(Fe)の回折ピークがそれぞれ確認でき、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
また、粒子状の複合磁性材料8の断面をTEMで観察した結果、Feからなる海(連続相)中に、ε−Feからなる島が複数存在する海島構造が確認できた。
(複合磁性材料の磁気特性評価)
実施例1と同様にして、複合磁性材料8の磁気特性の経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例7では、ε−Fe粒子を分散した分散液中でFe粒子を析出させて、Feとε−Feとを含む複合磁性材料を作製した。
(分散液の作製)
塩化鉄水和物(FeCl・4HO)を3g秤量し、純水75mLに溶解させて、塩化鉄水溶液を得た。次に、比較例1と同様にして得られたε−Fe粒子を0.36g秤量して塩化鉄水溶液に添加し、超音波分散機で十分に分散させ、分散液を作製した。
(前駆体粒子の析出)
作製した分散液を撹拌しながら28%アンモニア水75mLを添加して、Fe粒子を析出させ、Fe粒子とε−Fe粒子との複合粒子を形成した。得られた複合粒子中のFe粒子の粒径をSEMで観察したところ、50nm〜80nmであった。
(複合磁性材料の作製)
得られた複合粒子の粉末を加熱処理し、複合磁性材料を作製した。Fe粒子とε−Fe粒子の複合粒子の粉末1gを加圧成型機で加工し、成形体を作製した。
得られた成形体を電気炉にセットし、窒素ガス雰囲気下、410℃で5時間加熱処理した。なお、窒素ガスの流量は300sccmとした。室温まで冷却した後、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で粗粉砕した。粗粉砕によって得られた粉末を再度電気炉にセットし、空気雰囲気下、270℃で3時間加熱処理して、複合磁性材料9を得た。
(複合磁性材料の構造分析)
得られた複合磁性材料9の結晶構造をXRDによって評価した結果、ε−Feの回折ピークとマグネタイト(Fe)の回折ピークがそれぞれ確認でき、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
また、粒子状の複合磁性材料9の断面をTEMで観察した結果、Feからなる海(連続相)中に、ε−Feからなる島が複数存在する海島構造が確認できた。
(複合磁性材料の磁気特性評価)
実施例1と同様にして、複合磁性材料9の磁気特性の経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例8では、ε−Fe粒子を分散した分散液中でFe粒子を析出させて、Feとε−Feとを含む複合磁性材料を作製した。実施例8では、実施例7よりも析出させるFe粒子の粒径を小さくして、複合磁性材料を作製した。
(分散液の作製)
塩化鉄水和物(FeCl・4HO)を1.5g秤量し、純水150mLに溶解させて、塩化鉄水溶液を得た。次に、比較例1と同様にして得られたε−Fe粒子を0.18g秤量して塩化鉄水溶液に添加し、超音波分散機で十分に分散させ、分散液を作製した。
(前駆体粒子の析出)
作製した分散液を撹拌しながら28%アンモニア水75mLを添加して、Fe粒子を析出させ、Fe粒子とε−Fe粒子との複合粒子を形成した。得られた複合粒子中のFe粒子の粒径をSEMで観察したところ、10nm〜30nmであった。
(複合磁性材料の作製)
得られた複合粒子の粉末を加熱処理し、複合磁性材料を作製した。Fe粒子とε−Fe粒子の複合粒子の粉末1gを加圧成型機で加工し、成形体を作製した。
得られた成形体を電気炉にセットし、窒素ガス雰囲気下、400℃で5時間加熱処理した。なお、窒素ガスの流量は300sccmとした。室温まで冷却した後、遊星ボールミルを用いて窒素ガス雰囲気下で粗粉砕した。粗粉砕によって得られた粉末を再度電気炉にセットし、空気雰囲気下、270℃で3時間加熱処理して、複合磁性材料10を得た。
(複合磁性材料の構造分析)
得られた複合磁性材料10の結晶構造をXRDによって評価した結果、ε−Feの回折ピークとマグネタイト(Fe)の回折ピークがそれぞれ確認でき、それ以外の結晶構造に由来する回折ピークは確認されなかった。
また、粒子状の複合磁性材料10の断面をTEMで観察した結果、Feからなる海(連続相)中に、ε−Feからなる島が複数存在する海島構造が確認できた。
(複合磁性材料の磁気特性評価)
実施例1と同様にして、複合磁性材料10の磁気特性の経時安定性を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2018182301
表1に示すように、実施例1〜8の複合磁性材料はいずれも、残留磁束密度、保磁力の保持率が99%以上と高く、経時安定性が高かった。一方、比較例1〜2の複合磁性材料はいずれも、残留磁束密度、保磁力の保持率が80%程度と低く、経時安定性が低かった。
S 軟質磁性材料
H 硬質磁性材料

Claims (9)

  1. 軟質磁性材料と硬質磁性材料とを含有する複合磁性材料であって、
    前記軟質磁性材料および前記硬質磁性材料が鉄元素をそれぞれ含み、
    前記軟質磁性材料に含まれる鉄元素の90原子%以上100原子%以下が第1の酸化物または第1の複合酸化物を形成しており、
    前記硬質磁性材料に含まれる鉄元素の90原子%以上100原子%以下が第2の酸化物または第2の複合酸化物を形成していることを特徴とする複合磁性材料。
  2. 前記第2の酸化物または前記第2の複合酸化物が、ε−Feまたはε−FeのFeの一部がGa、Al、Ni、Coからなる群から選択される少なくとも1つで置換された複合酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合磁性材料。
  3. 前記第1の酸化物または前記第1の複合酸化物が、FeまたはFeのFeの一部がGa、Al、Ni、Coからなる群から選択される少なくとも1つで置換された複合酸化物を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合磁性材料。
  4. 前記第1の酸化物または前記第1の複合酸化物が、γ−Feまたはγ−FeのFeの一部がGa、Al、Ni、Coからなる群から選択される少なくとも1つで置換された複合酸化物を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の複合磁性材料。
  5. 前記軟質磁性材料を含む海部と、前記硬質磁性材料を含む島部と、を有する海島構造を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の複合磁性材料。
  6. 前記硬質磁性材料を含むコア部と、前記コア部の少なくとも一部を被覆する前記軟質磁性材料を有するシェル部と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の複合磁性材料。
  7. 前記軟質磁性材料と前記硬質磁性材料とが磁気的に結合していることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の複合磁性材料。
  8. Nd元素の含有量が3質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の複合磁性材料。
  9. 磁石を有するモータであって、
    前記磁石が請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の複合磁性材料を含有することを特徴とするモータ。
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