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JP2018172361A - 光安定性を改善した、デュロキセチンを含有する固形製剤 - Google Patents

光安定性を改善した、デュロキセチンを含有する固形製剤 Download PDF

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JP2018172361A
JP2018172361A JP2017199834A JP2017199834A JP2018172361A JP 2018172361 A JP2018172361 A JP 2018172361A JP 2017199834 A JP2017199834 A JP 2017199834A JP 2017199834 A JP2017199834 A JP 2017199834A JP 2018172361 A JP2018172361 A JP 2018172361A
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達矢 三明
Tatsuya Miake
達矢 三明
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Ohara Pharmaceutical Co Ltd
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Ohara Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

【課題】光照射前後の色差(ΔE)が顕著に低く、光に対する安定性に優れた、デュロキセチン塩酸塩を含有する錠剤等を提供すること。【解決手段】デュロキセチン塩酸塩を含有する錠剤であって、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄及び黒酸化鉄から選択される遮光剤を含有することを特徴とする錠剤等を提供する。当該遮光剤は、酸化チタンを含むことが特に好ましく、素錠の全重量に対して0.5重量%以上含有されることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、原薬としてデュロキセチン塩酸塩を含有する固形製剤に関するものであり、光に対する其の安定性(色彩変化の抑制)を改善するための詳細な方法を開示するものである。
デュロキセチン塩酸塩(一般名)は、化学名が(S)−N−メチル−3−(1−ナフチルオキシ)−3−(2−チエニル)プロピルアミン・塩酸塩と記されるセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤であり、うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛の治療に有用である(非特許文献1等参考)。
現在、デュロキセチン塩酸塩はカプセル剤の剤形で医療現場に提供されている。デュロキセチン塩酸塩は酸に不安定であり、胃酸で失活することがあることから、周囲に腸溶性のコーティング剤が被覆されている(非特許文献1の163ページ参照)。デュロキセチン塩酸塩の周囲に腸溶性のコーティング剤が被覆された、カプセル剤の処方及び製造方法は、特許文献1においても紹介されている。
固形製剤の剤形として最も一般的なものは錠剤であり、錠剤はフィルムコーティング錠とされる場合が多い。剤形を錠剤とすることには、調剤の際の計数の容易さや大量生産が可能等のメリットがあるが、更にフィルムコーティング錠とすることで遮光性、腸溶性及び印字性等の特性をより好ましいものにすることも可能である。但し、デュロキセチン塩酸塩については剤形が錠剤である場合の先行文献による示唆は現状では乏しい。
そこで本発明者は優れたデュロキセチン塩酸塩を含有する製剤(特に錠剤)を開発するために其の処方や製造方法について鋭意検討を重ねる必要があった。
特許第3707831号公報
「サインバルタ(登録商標)カプセル20mg サインバルタ(登録商標)カプセル30mg」医薬品インタビューフォーム 2016年4月改訂(改訂第9版)
本発明は、光による色彩変化を抑制する効果が優れた、デュロキセチン塩酸塩を含有する錠剤(又は顆粒)を製造するための技術的手段を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、デュロキセチン塩酸塩を含有する素錠をフィルムコーティング層で覆った錠剤において、酸化チタンを含むものは光照射前後の色差(ΔE)が顕著に低く、光に対する安定性が良好であることを見出した。本発明者はその知見に基づいて更に鋭意検討を重ね、下記の本発明を完成するに至った。
本発明はまず、デュロキセチン又は其の塩及び特定の遮光剤を含有する錠剤又は其の製造方法に関するものであり、その好ましい構成は以下(1)〜(6)において記述されるものである。
(1)デュロキセチン塩酸塩を含有する錠剤であって、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄及び黒酸化鉄から選択される遮光剤を含有することを特徴とする、錠剤。
(2)当該遮光剤が酸化チタンを含む、前記(1)に記載の錠剤。
(3)当該遮光剤が酸化チタン及び黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄を含む、前記(1)又は(2)に記載の錠剤。
(4)当該遮光剤を素錠の全重量に対して0.5重量%以上含有する、前記(2)又は(3)に記載の錠剤。
(5)デュロキセチン塩酸塩を含有する部分(例えば顆粒又は素錠)が、当該遮光剤を含むコーティング層で覆われている、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の錠剤。
(6)当該コーティング層100.0重量部に対して当該遮光剤が10.0重量部以上含有される、前記(5)に記載の錠剤。
また本発明者は、上記の課題を口腔内崩壊錠においてより十分に解決するべく鋭意検討した結果、口腔内崩壊錠の製造に用いる目的で製造されたデュロキセチン塩酸塩を含有する顆粒において黄色三二酸化鉄を含むものは光照射前後の色差(ΔE)が顕著に低く、光に対する安定性が良好であることを見出した。本発明者はその知見に基づいて更に鋭意検討を重ね、下記の本発明を完成するに至った。
本発明はさらに、デュロキセチン又は其の塩及び特定の遮光剤を含む顆粒又は其の製造方法に関するもの(当該顆粒を含有する口腔内崩壊錠又は其の製造方法を含む。)であり、その好ましい構成は以下(7)〜(13)において記述されるものである。
(7)デュロキセチン塩酸塩を含有する顆粒(特に酸化チタンも含有するもの)であって、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄及び黒酸化鉄から選択される遮光剤を含むことを特徴とする顆粒。
(8)当該遮光剤が黄色三二酸化鉄を含む、前記(7)に記載の顆粒。
(9)当該遮光剤を顆粒の全重量に対して0.01重量%以上含む、前記(7)又は(8)に記載の顆粒。
(10)酸化チタンを顆粒の全重量に対して0.5重量%以上含む、前記(7)〜(9)のいずれかに記載の顆粒。
(11)デュロキセチン塩酸塩を含む部分(核顆粒)が、当該遮光剤を含むコーティング層で覆われている、前記(7)〜(10)のいずれかに記載の顆粒。
(12)当該コーティング層100.0重量部に対して当該遮光剤が0.1重量部以上含まれる、前記(11)に記載の顆粒。
(13)前記(7)〜(12)のいずれかに記載の顆粒を含有する口腔内崩壊錠。
本発明は、光による色彩変化が顕著に抑制された効果を有する、デュロキセチン又は其の塩を含有する錠剤等を提供する。
以下で本発明の、デュロキセチン又は其の塩及び特定の遮光剤を含有する錠剤等(デュロキセチン又は其の塩及び特定の遮光剤を含む顆粒及び当該顆粒を含有する口腔内崩壊錠も含む。以下同じ。)の処方又は其の製造方法を詳細に説明する。但し、以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。尚、本明細書における“コーティング”という文言は、“フィルムコーティング”や“オーバーコーティング”等を意味する。“オーバーコーティング”とは、顆粒の表面に糖や糖アルコール(マンニトール等)等の低粘度の医薬添加物から主になるコーティング層を形成することを示す語句(本願明細書上でのみ、便宜的に用いられる。)である。
<デュロキセチン塩酸塩>
本発明の錠剤等は原薬としてデュロキセチン又は其の塩を含み、特に好ましくはデュロキセチン塩酸塩を含む。デュロキセチン塩酸塩のメディアン径(d50)は1.0〜50.0μmが好ましく、より好ましくは1.0〜10.0μmである。尚、メディアン径はレーザー回析・散乱法によって測定(体積基準)することが可能である。デュロキセチン塩酸塩は、必要に応じて適宜乾式又は湿式粉砕を行い、任意の粒子径に調整することも可能である。デュロキセチン塩酸塩は素錠(コーティング層で覆われていない錠剤を指す。以下同じ。)中又は顆粒中に含有される。前者の場合、デュロキセチン塩酸塩は素錠の全重量に対して1.0〜50.0重量%、好ましくは10.0〜35.0重量%の範囲で素錠中に含有される。後者の場合、デュロキセチン塩酸塩は顆粒の全重量に対して5.0〜60.0重量%、好ましくは15.0〜40.0重量%の範囲で顆粒中に含有される。本発明の錠剤等は、デュロキセチン20mg(デュロキセチン塩酸塩として22.4mg)又は30mg(デュロキセチン塩酸塩として33.7mg)を含有するものであることが特に望ましい。
<錠剤の形態等>
本発明の錠剤は、素錠のままであることも可能であるが、特定の遮光剤を含むコーティング層で素錠を被覆したコーティング錠であることが特に好ましい。素錠は打錠等により成形された圧縮成形錠剤である。本発明で得られる錠剤の形状は、円形錠、円形R錠、円形隅角錠、円形2段R錠や異形錠等のいずれの形状でもよい。本発明の錠剤の重量は、例えば、60.0〜300.0mgの範囲内にある。
<顆粒の形態等>
本発明の顆粒は、特定の遮光剤を含む1又は2以上のコーティング層でデュロキセチン塩酸塩を含む顆粒を被覆したコーティング顆粒であることが特に好ましい。例えば本発明の顆粒は、デュロキセチン塩酸塩を含む顆粒が、酸化チタンを含むコーティング層で覆われ、更に腸溶性のコーティング剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等)を含むコーティング層で覆われ、また更に黄色三二酸化鉄を含むコーティング層で覆われたものである。
また、本発明の顆粒は口腔内崩壊錠中に含有されることが強く望ましい。本発明に係る口腔内崩壊錠については、素錠であることが望ましいが、適宜検討の上、コーティング層で素錠を被覆してコーティング錠とすることが可能である。素錠は打錠等により成形された圧縮成形錠剤である。本発明で得られる口腔内崩壊錠の形状は、円形錠、円形R錠、円形隅角錠、円形2段R錠や異形錠等のいずれの形状でもよい。本発明の顆粒の重量は、例えば、60.0〜200.0mgの範囲内にある。
<特定の遮光剤>
本発明の錠剤等に含有される遮光剤は、酸化チタン及び酸化鉄(黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄等)から選択されるが、好ましくは酸化チタンを含むように選択され、より好ましくは酸化チタンと酸化鉄の両方である。本発明に係る酸化鉄は、好ましくは黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄であり、より好ましくは黄色三二酸化鉄である。遮光剤は、錠剤又は顆粒の全重量に対して0.01重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.5〜20.0重量%、更により好ましくは1.0〜10.0重量%の範囲で其々錠剤又は顆粒中に含有される。酸化チタンは、錠剤又は顆粒の全重量に対して好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上で其々錠剤又は顆粒中に含有される。酸化鉄は、錠剤又は顆粒の全重量に対して好ましくは0.02重量%以上、より好ましくは0.04重量%以上、更により好ましくは0.08重量%以上で其々錠剤又は顆粒中に含有される。
遮光剤は素錠部分又はコーティング層に含まれるが、特に好ましくはコーティング層に含まれる。コーティング層(遮光剤を含む均質な一又は二以上の層を意味し、遮光剤を含まない均質な一又は二以上の層は意味しない。)100.0重量部に対して当該遮光剤は0.1重量部以上、好ましくは10.0重量部以上、より好ましくは20.0〜60.0重量部の範囲で当該コーティング層中に含有される。酸化チタンは、コーティング層(酸化チタンを含む均質な一又は二以上の層を意味し、酸化チタンを含まない均質な一又は二以上の層は意味しない。)100.0重量部に対して好ましくは10.0重量部以上、より好ましくは20.0〜60.0重量部の範囲で当該コーティング層中に含有される。酸化鉄は、コーティング層(酸化鉄を含む均質な一又は二以上の層だけを意味し、酸化鉄を含まない均質な一又は二以上の層は意味しない。)100.0重量部に対して好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.2〜5.0重量部の範囲で当該コーティング層中に含有される。
本発明の錠剤等を製造するためには、上記の添加物に加えて、一般的に使用されている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤等の添加物を使用することができる。尚、本明細書において、各種添加剤(結合剤、可塑剤、コーティング剤等)の語句の解釈は其々、製剤化において其の添加剤としての役割を発揮することが必須に期待されて使用されるもので結果的にも其の添加剤としての役割が発揮されたもの、と解することが好ましい。
賦形剤として、具体的には乳糖水和物、結晶セルロース、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト、マルチトール、白糖、ショ糖、ブドウ糖、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、デキストリン等を挙げる事ができ、好ましくは乳糖水和物、結晶セルロース、マンニトール、トウモロコシデンプンから選択される。賦形剤は、素錠の全重量に対して10.0〜95.0重量%、好ましくは35.0〜85.0重量%の範囲で素錠中に含有される。
結合剤として、具体的にはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、メチルセルロース、ポビドン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレングリコール、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー等を挙げる事ができ、好ましくはヒプロメロースである。結合剤は、素錠の全重量に対して好ましくは0.1〜10.0重量%の範囲で素錠中に含有される。
崩壊剤として、具体的には低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、カンテン末等を挙げる事ができ、好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。崩壊剤は、素錠の全重量に対して1.0〜40.0重量%、好ましくは2.0〜10.0重量%の範囲で素錠中に含有される。
滑沢剤として、具体的には軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、硬化油等を挙げる事ができ、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。滑沢剤は、素錠の全重量に対して好ましくは0.1〜5.0重量%の範囲で素錠中に含有される。
コーティング剤として、具体的には糖(ブドウ糖、白糖、乳糖、トレハロース、デキストラン、デキストリン等)、糖アルコール(マンニトール、イソマルト、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、タルク等を挙げる事ができ、好ましくはマンニトール(オーバーコーティングの場合)、ヒプロメロース、メタクリル酸コポリマー、タルク、クエン酸トリエチルから選ばれる。コーティング剤は、素錠の全重量に対して1.0〜50.0重量%、好ましくは2.0〜10.0重量%の範囲で錠剤中に含有される。
本発明の顆粒の全重量に対して、賦形剤は好ましくは10.0〜50.0重量%、結合剤は好ましくは0.1〜10.0重量%、コーティング剤は30.0〜80.0重量%の範囲で当該顆粒中に含有される。
本発明の錠剤は、一般的な製造方法によって作成することが可能であり、例えば以下の製造方法によって作成することが可能である。
まず、原薬、賦形剤、崩壊剤等を混合した粉末に水に溶解した結合剤を加えて流動層造粒を行って顆粒を製造する。そして、得られた顆粒を整粒(乾式解砕等)した後に、滑沢剤等と混合して打錠機によって圧縮成形して錠剤(素錠)とする。更に所望によって、得られた素錠にコーティング層(腸溶性のコーティング剤を含まないことが望ましい。)を施すことが可能である。デュロキセチン塩酸塩を含有する錠剤においては、素錠又はコーティング錠に腸溶性のコーティング剤を含むフィルムコーティング層が施されている等の工夫があることが実用上望まれる。本発明の素錠を打錠して製造する際の打圧は、300〜1200kgf、好ましくは600〜1000kgfの範囲内の任意の数値から選ばれる。
本発明の顆粒は、一般的な製造方法によって作成することが可能であり、例えば以下の製造方法によって作成することが可能である。
まず、流動層造粒機中で賦形剤等の粉末を流動化させ、これに原薬及び結合剤を懸濁・溶解させた水溶液を噴霧し、乾燥させて顆粒(A)を製造する。次に、得られた顆粒(A)を流動化させ、これにコーティング剤(腸溶性のコーティング剤を含まないことが望ましい。)及び遮光剤等を懸濁・溶解させた水溶液を噴霧し、乾燥させてコーティング顆粒(B)を製造する。更に、得られたコーティング顆粒(B)を流動化させ、これに腸溶性のコーティング剤等を懸濁・溶解させた水溶液を噴霧し、乾燥させてコーティング顆粒(C)を製造する。そして、得られたコーティング顆粒(C)を流動化させ、糖アルコール(マンニトール等)及び遮光剤を懸濁・溶解させた水溶液を噴霧し、乾燥させてコーティング顆粒(D)を製造すること(オーバーコーティング)で本発明の顆粒は得られる。
本発明の顆粒は賦形剤及び滑沢剤等と混合して打錠機によって圧縮成形して錠剤(素錠)とすることで口腔内崩壊錠が得られる。更に所望によって、得られた素錠にコーティング層を施すことが可能である。本発明の素錠を打錠して製造する際の打圧は、300〜1200kgfの範囲内の任意の数値から選ばれる。
また、包装用シートとアルミ箔等で錠剤を挟んで覆い、加熱シールすることで、本発明の錠剤を含むPTPシート製品を得ることは可能である。其の包装用シートに使用される具体的な素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。尚、湿度に対する本発明の錠剤の安定性を改善するためには、乾燥機能を有した素材を用いてPTPシート製品を製造したり、PTPシート製品をアルミピロー包装したり、乾燥剤を錠剤と共に瓶に封入する等の周知の方法を行うことが可能である。
以下に実施例等により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
デュロキセチン塩酸塩168.5g、乳糖水和物539.5g、トウモロコシデンプン112.5g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース45.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、これに、ヒプロメロース30.0gを精製水570gに溶解した液を噴霧・乾燥(造粒)して顆粒を得た。得られた顆粒を乾燥し、JIS30メッシュの篩にて篩過(整粒)した。得られた整粒品の内895.5gにステアリン酸マグネシウム4.5gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所製:VELA5型)を用いて800kgfの打圧で打錠して1錠重量180.0mgの素錠(円形錠、直径8mm、厚さ3.4mm)を得た。
次いで素錠をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、これに、予めヒプロメロース65.0g、タルク5.0g及び酸化チタン30.0gを精製水810gに加えて均一分散させた液を噴霧・乾燥して1錠質量190.0mgのコーティング錠を得た。
実施例1で得られた1錠重量180.0mgの素錠をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、これに、予めヒプロメロース65.0g、タルク5.0g、酸化チタン30.0g及び黄色4号アルミニウムレーキ0.1gを精製水810gに加えて均一分散させた液を噴霧・乾燥して1錠質量190.1mgのコーティング錠を得た。
実施例1で得られた1錠重量180.0mgの素錠をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、これに、予めヒプロメロース65.0g、タルク5.0g、酸化チタン30.0g及び黄色5号アルミニウムレーキ0.1gを精製水810gに加えて均一分散させた液を噴霧・乾燥して1錠質量190.1mgのコーティング錠を得た。
デュロキセチン塩酸塩(d10=1.5,d50=7.3,d90=19.8)168.5g、D−マンニトール236.5g、トウモロコシデンプン100.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース20.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入し、これに、ヒドロキシプロピルセルロース40.0gを精製水530gに溶解した液を噴霧・乾燥(造粒)して顆粒を得た。得られた顆粒を乾燥し、JIS30メッシュの篩にて篩過(整粒)した。得られた整粒品の内565.0gにステアリン酸マグネシウム10.0gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所製:VELA5型)を用いて800kgfの打圧で打錠して1錠重量115.0mgの素錠(円形錠、直径6.5mm、厚さ3.5mm)を得た。
次いで素錠をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、これに、予めヒプロメロース65.0g、タルク5.0g及び酸化チタン30.0gを精製水810gに加えて均一分散させた液を噴霧・乾燥し、1錠質量125.0mgのコーティング錠を得た。引き続いてコーティング錠に、予めメタクリル酸コポリマーLD30%懸濁液100.0g(固形分:30.0g)、タルク14.0g、クエン酸トリエチル3.0g及び酸化チタン3.0gを精製水380gに加えて均一分散させた液を更に噴霧・乾燥し、1錠質量130.0mgの2層コーティング錠を得た。
[比較例1]
実施例1で得られた1錠重量180.0mgの素錠をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、これに、予めヒプロメロース90.0g、タルク10.0gを精製水810gに加え、均一分散させた液を噴霧し、1錠質量190.0mgになるまでコーティングし、乾燥してコーティング錠を得た。
実施例1〜4及び比較例1で得られた各々の錠剤の処方は下記の表1、2に一覧して示す。
Figure 2018172361
Figure 2018172361
〔試験例1〕光照射前後の色差測定
実施例1、2、3、4及び比較例1で得た錠剤について、白熱光15000lxを80時間、合計120万lx・hrの光照射の前後に、各錠剤の明度(L*)、色相と彩度を示す色度(a*およびb*)について分光色差計(日本電色工業社製:SE6000型)を用いて測定した。この結果から、各錠剤の光照射前後の色差(ΔE)を算出して表2に示した。色差は色度値としてCIELab1976に規定されるL*a*b*を用い、ΔEについて下記の式にて算出した。ΔE={(ΔL*)^2+(Δa*)^2(Δb*)^2}^1/2(日本電色工業株式会社、Spectrophotometer SE6000型、取扱説明書より)。
Figure 2018172361
表3において、酸化チタン(遮光剤)を含む実施例1〜4の錠剤はいずれも酸化チタン(遮光剤)を含まない比較例1に比べて光照射前後の色差が顕著に低かった。そのため、特定の遮光剤を含む本発明のデュロキセチン塩酸塩含有錠剤は、光に対する充分な安定性を備えた錠剤であることが示された。
デュロキセチン塩酸塩168.5g、D−マンニトール236.5g、トウモロコシデンプン100.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース20.0gを流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)に投入して流動化させ、これにヒドロキシプロピルセルロース40.0gを精製水530gに溶解した液を噴霧・乾燥(造粒)して顆粒を得た。得られた顆粒を乾燥し、JIS30メッシュの篩にて篩過(整粒)して整粒品Aを得た。
上記で得られた整粒品Aの内565.0gに黄色三二酸化鉄3.0g、ステアリン酸マグネシウム10.0gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所製:VELA5型)を用いて800kgfの打圧で打錠して1錠重量115.6mgの素錠(円形錠、直径6.5mm、厚さ3.5mm)を得た。
実施例5で得られた整粒品Aの内565.0gに三二酸化鉄3.0g、ステアリン酸マグネシウム10.0gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所製:VELA5型)を用いて800kgfの打圧で打錠して1錠重量115.6mgの素錠(円形錠、直径6.5mm、厚さ3.5mm)を得た。
[比較例2]
実施例5得られた整粒品Aの内565.0gにステアリン酸マグネシウム10.0gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所製:VELA5型)を用いて800kgfの打圧で打錠して1錠重量115.0mgの素錠(円形錠、直径6.5mm、厚さ3.5mm)を得た。
実施例5、6及び比較例2で得られた各々の錠剤の処方は下記の表4に一覧して示す。
Figure 2018172361
(A:核顆粒)結晶セルロース(セルフィアCP−102/旭化成社製;粒子径106〜212μm)500.0gを噴流流動層造粒機(MP−01−SPC型/パウレック社製)に投入して流動化させ、これにヒドロキシプロピルメチルセルロース250.0gを溶解し、デュロキセチン塩酸塩1120.0gを分散・懸濁させた精製水6250gを噴霧・乾燥し、顆粒Aを得た。
(B:バリア層)上記で得られた顆粒A748.0gを噴流流動層造粒機に投入して流動化させ、これにヒドロキシプロピルメチルセルロース75.0gを溶解し、タルク150.0g及び酸化チタン150.0gを分散・懸濁させた精製水1875gを噴霧・乾燥し、顆粒Bを得た。
(C:溶出制御層)上記で得られた顆粒B561.5gを噴流流動層造粒機に投入して流動化させ、これにヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート511.2g及び10%アンモニア水126.8gを溶解し、タルク163.2gを分散・懸濁させた精製水8750gを噴霧・乾燥し、顆粒Cを得た。
(D:フィニッシング層)上記で得られた顆粒C674.1gを噴流流動層造粒機に投入して流動化させ、これにマンニトール33.6gを溶解し、黄色三二酸化鉄0.672gを分散・懸濁させた精製水200gを噴霧・乾燥し、着色顆粒を得た。
(D:フィニッシング層)実施例7で得られた顆粒C674.1gを噴流流動層造粒機に投入して流動化させ、これにマンニトール33.6gを溶解し、黄色三二酸化鉄0.336gを分散・懸濁させた精製水200gを噴霧・乾燥し、着色顆粒を得た。
[比較例3]
(D:フィニッシング層)実施例7で得られた顆粒C674.1gを噴流流動層造粒機に投入して流動化させ、これにマンニトール33.6gを溶解した精製水200gを噴霧・乾燥し、顆粒を得た。
実施例7、8及び比較例3で得られた各々の錠剤の処方は下記の表5に一覧して示す。
Figure 2018172361
〔試験例2〕光照射前後の色差測定
実施例5〜8及び比較例2、3で得た錠剤について、白熱光3000lxを200時間又は400時間、其々、合計60万lx・hr又は120万lx・hrの光照射の前後に、各錠剤の明度(L*)、色相と彩度を示す色度(a*およびb*)について分光色差計(日本電色工業社製:SE6000型)を用いて測定した。この結果から、各錠剤の光照射前後の色差(ΔE)を算出して表6(実施例5,6、比較例2)、表7(実施例7、8、比較例3)に示した。色差は色度値としてCIELab1976に規定されるL*a*b*を用い、ΔEについて下記の式にて算出した。ΔE={(ΔL*)^2+(Δa*)^2(Δb*)^2}^1/2(日本電色工業株式会社、Spectrophotometer SE6000型、取扱説明書より)。
Figure 2018172361
表6において、黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄(遮光剤)を含む実施例5,6の錠剤はいずれもそれら遮光剤を含まない比較例2に比べて光照射前後の色差が顕著に低かった。そのため、特定の遮光剤を含む本発明のデュロキセチン塩酸塩含有錠剤は、光に対する安定性が顕著に改善された錠剤であることが示された。
Figure 2018172361
表7において、黄色三二酸化鉄(遮光剤)を含む実施例7,8の錠剤はいずれも其の遮光剤を含まない比較例3に比べて光照射前後の色差が顕著に低かった。そのため、特定の遮光剤を含む本発明のデュロキセチン塩酸塩含有顆粒は、光に対する充分な安定性を備えた顆粒であることが示された。
本発明によれば、光による色彩変化が顕著に抑制された、デュロキセチン塩酸塩を含有する錠剤等の医薬品製剤を製造することが可能となる。よって、其の高品質な医薬品製剤を医療現場に提供することも併せて可能となる。

Claims (13)

  1. デュロキセチン塩酸塩を含有する錠剤であって、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄及び黒酸化鉄から選択される遮光剤を含有することを特徴とする、錠剤。
  2. 遮光剤が酸化チタンを含む、請求項1に記載の錠剤。
  3. 遮光剤が酸化チタン及び黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄を含む、請求項1又は2に記載の錠剤。
  4. 遮光剤を素錠の全重量に対して0.5重量%以上含有する、請求項2又は3に記載の錠剤。
  5. デュロキセチン塩酸塩を含有する部分が、遮光剤を含むコーティング層で覆われている、請求項1〜4のいずれかに記載の錠剤。
  6. コーティング層100.0重量部に対して遮光剤が10.0重量部以上含有される、請求項5に記載の錠剤。
  7. デュロキセチン塩酸塩及び酸化チタンを含有する顆粒であって、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄及び黒酸化鉄から選択される遮光剤を含むことを特徴とする顆粒。
  8. 遮光剤が黄色三二酸化鉄を含む、請求項7に記載の顆粒。
  9. 遮光剤を顆粒の全重量に対して0.01重量%以上含む、請求項7又は8に記載の顆粒。
  10. 酸化チタンを顆粒の全重量に対して0.5重量%以上含む、請求項7〜9のいずれかに記載の顆粒。
  11. デュロキセチン塩酸塩を含む部分が、遮光剤を含むコーティング層で覆われている、請求項7〜10のいずれかに記載の顆粒。
  12. コーティング層100.0重量部に対して遮光剤が0.1重量部以上含まれる、請求項11に記載の顆粒。
  13. 請求項7〜12のいずれかに記載の顆粒を含有する口腔内崩壊錠。
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