以下、図面を参照して、実施形態に係るロボットについて説明する。本実施形態のロボット1は、人型のロボットであり、二足歩行モードと四足歩行モードとを切り替えて移動可能に構成されたものである。
ただし、本発明におけるハンド装置は、このように構成された人型のロボットにのみ適用し得るものではなく、その他の工業用ロボット等、ハンド装置を有しているロボットアームを備えているロボットであれば、本実施形態のロボット1とは異なる形態のロボットも含まれるものである。
まず、図1を参照して、ロボット1の構成を説明する。
ロボット1の胴体は、上部基体10と、上部基体10の下方に配置された下部基体11と、上部基体10と下部基体11との間に設けられた腰関節機構12とで構成されている。上部基体10と下部基体11とは、人間の腰関節に対応する腰関節機構12を介して、相対的に回動可能に連結されている。
ロボット1の頭部は、周囲の環境を認識するための環境認識装置20の環境認識ユニット20aである。環境認識ユニット20aに搭載されている外部環境を撮像するためのカメラ及び外部環境までの距離を認識するためのセンサは、上部基体10の内部に配置された環境認識ユニット用制御回路20bによって制御されている。環境認識ユニット20aは、人間の首関節に対応する首関節機構21を介して、上部基体10に対して回動可能に連結されている。
なお、ロボット1は、人型のロボットであるので、人間の頭部に対応する環境認識ユニット20aを上部基体10の上部に設けている。しかし、本発明のロボットの環境認識ユニットは、このような構成に限定されるものではなく、ロボットの使用環境等に応じて、上部基体の上部以外の位置(例えば、上部基体の前方、下部基体等)に設けてもよい。
ロボット1の左右の腕体は、上部基体10の上部左右両側から延設された一対の腕リンク30(可動リンク)である。各々の腕リンク30は、人間の肩関節に対応する肩関節機構31を介して、上部基体10に対して回動可能に連結されている。
腕リンク30は、人間の上腕に対応する第1腕リンク部30aと、人間の前腕に対応する第2腕リンク部30bと、人間の肘関節に対応する肘関節機構30cとで構成されている。
第1腕リンク部30aは、肩関節機構31を介して、上部基体10に対して回動可能に連結されている。第2腕リンク部30bは、肘関節機構30cを介して、第1腕リンク部30aに対して回動可能に連結されている。第2腕リンク部30bの先端には、人間の手に対応するハンド部40(ハンド装置)が連結されている。
なお、ロボット1では、腕体である腕リンク30を、第1腕リンク部30aと、第2腕リンク部30bと、肘関節機構30cとで構成している。しかし、本発明のロボットの腕体は、このような構成に限定されるものではなく、単一のリンク部を有するものであってもよいし、3つ以上のリンク部及び各リンク部を連結する複数の関節部を有するものであってもよい。
ハンド部40は、エンドエフェクタの一例である。このハンド部40は、人間の手首関節に対応する手首関節機構41を介して、腕リンク30の第2腕リンク部30bに対して回動可能に連結されている。ロボット1では、ハンド部40と腕リンク30とで、マニピュレータとしてのロボットアームが構成されている。
ロボット1の左右の脚体は、下部基体11の下部から下方に延設された左右一対の脚リンク50(可動リンク)である。各々の脚リンク50は、人間の股関節に対応する股関節機構51を介して、下部基体11に対して回動可能に連結されている。
脚リンク50は、人間の大腿に対応する第1脚リンク部50aと、人間の下腿に対応する第2脚リンク部50bと、人間の膝関節に対応する膝関節機構50cとで構成されている。
第1脚リンク部50aは、股関節機構51を介して、下部基体11に対して回動可能に連結されている。第2脚リンク部50bは、膝関節機構50cを介して、第1脚リンク部50aに対して回動可能に連結されている。第2脚リンク部50bの先端には、人間の足に対応する足平部60が連結されている。
なお、ロボット1では、脚体である脚リンク50を、第1脚リンク部50aと、第2脚リンク部50bと、膝関節機構50cとで構成している。しかし、本発明のロボットの脚体は、このような構成に限定されるものではなく、単一のリンク部を有するものであってもよいし、3つ以上のリンク部及び各リンク部を連結する複数の関節部を有するものであってもよい。
足平部60は、人間の足首関節に対応する足首関節機構61を介して、脚リンク50の第2脚リンク部50bに対して、回動可能に連結されている。
次に、図2を参照して、ロボット1の関節機構の自由度について説明する。
なお、本実施形態では、各関節機構が各部材を回動させる方向は、特にことわらない限り、いずれの関節機構も連結された部材を回動させていない姿勢(以下、「基準姿勢」という。)を基準として説明する。ロボット1の場合、基準姿勢は、ロボット1が起立した状態(上部基体10、下部基体11、各腕リンク30及び各脚リンク50をほぼ鉛直方向に伸ばした状態)となる。
また、本実施形態では、ヨー軸、ピッチ軸、ロール軸は、それぞれ図2に示すように、ロボット1が基準姿勢のときにおけるロボット1の鉛直方向の軸(Z軸)、左右方向の軸(Y軸)、前後方向の軸(X軸)を意味する。この場合、ヨー軸は、上部基体10及び下部基体11の体幹軸である。
腰関節機構12は、上部基体10の下方に配置された第1腰関節機構12aと、第1腰関節機構12aと下部基体11との間に配置された第2腰関節機構12bとで構成されている。
第1腰関節機構12aは、上部基体10を、下部基体11及び第2腰関節機構12bに対してピッチ軸周りに回動可能に連結している。第2腰関節機構12bは、上部基体10及び第1腰関節機構12aを、下部基体11に対してヨー軸周りに回動可能に連結している。
首関節機構21は、環境認識ユニット20aを、上部基体10に対してピッチ軸周りに回動可能に連結している。
腕リンク30の肘関節機構30cは、人間の前腕に対応する第2腕リンク部30bを、人間の上腕に対応する第1腕リンク部30aに対してピッチ軸周りに回動可能に連結している。
肩関節機構31は、上部基体10の鉛直方向の幅及び水平方向の幅の範囲内に位置するように配置された第1肩関節機構31aと、第1肩関節機構31aの側方であって上部基体10の外側に配置された第2肩関節機構31bと、第2肩関節機構31b及び腕リンク30の第1腕リンク部30aの間に配置された第3肩関節機構31cとで構成されている。
第1肩関節機構31aは、第2肩関節機構31bを、上部基体10に対してヨー軸周りに回動可能に連結している。第2肩関節機構31bは、第3肩関節機構31cを、第1肩関節機構31aに対してピッチ軸周り及びロール軸周りに回動可能に連結している。第3肩関節機構31cは、腕リンク30を、第2肩関節機構31bに対してヨー軸周りに回動可能に連結している。
手首関節機構41は、腕リンク30の第2腕リンク部30bのハンド部40側に配置された第1手首関節機構41aと、第1手首関節機構41aとハンド部40との間に配置された第2手首関節機構41bとで構成されている。
第1手首関節機構41aは、第2手首関節機構41bを、第2腕リンク部30bに対してヨー軸周りに回動可能に連結している。第2手首関節機構41bは、ハンド部40を、第1手首関節機構41aに対してロール軸周り及びピッチ軸周りに回動可能に連結している。
脚リンク50の膝関節機構50cは、人間の下肢に対応する第2脚リンク部50bを、人間の大腿に対応する第1脚リンク部50aに対してピッチ軸周りに回動可能に連結している。
股関節機構51は、下部基体11の下方に配置された第1股関節機構51aと、第1股関節機構51aの脚リンク50側に配置された第2股関節機構51bとで構成されている。
第1股関節機構51aは、第2股関節機構51bを、下部基体11に対してヨー軸周りに回動可能に連結している。第2股関節機構51bは、脚リンク50を、第1股関節機構51aに対してピッチ軸周り及びロール軸周りに回動可能に連結している。
足首関節機構61は、足平部60を、第2脚リンク部50bに対してピッチ軸周り及びロール軸周りに回動可能に連結している。
なお、本発明のロボットにおける腰関節機構、首関節機構、肩関節機構、肘関節機構、膝関節機構、股関節機構、足首関節機構の構成は、上記の構成に限定されるものではなく、ロボットの用途、ロボット内の関節の配置スペース等に応じて、適宜変更してよい。例えば、いずれかの関節機構を省略してもよいし、上記以外の関節機構を追加してもよい。
次に、図3及び図4を参照して、ロボット1の2つの歩行モードについて説明する。なお、図3においては、理解を容易にするために、腕リンク30を図示省略している。
なお、本実施形態において、ハンド部40又は足平部60を「接地させる」とは、ハンド部40又は足平部60がロボット1に作用する力に抗する接触反力を受けるように、ハンド部40又は足平部60を外部環境に接触させることを意味する。
図3に示すように、二足歩行モードでは、一対の脚リンク50の一方の先端の足平部60を接地面Aに接地させた状態(その一方の脚リンク50を支持脚とした状態)で、他方の脚リンク50の先端の足平部60を空中移動させ、さらに接地させること(その他方の脚リンク50を遊脚として動作させること)が繰り返される。この場合、脚リンク50のそれぞれの遊脚としての動作は、交互に行われる。また、図示省略した腕リンク30は、非接地状態となっている。
図4に示すように、四足歩行モードでは、腕リンク30の先端のハンド部40及び脚リンク50の先端の足平部60のうちの2つ又は3つを接地面Aに接地させた状態(その2つ又は3つの腕リンク30及び脚リンク50を支持脚とした状態)で、残りの2つ又は1つのハンド部40又は足平部60を空中移動させ、さらに接地させること(その残りの2つ又は1つの腕リンク30又は脚リンク50を遊脚として動作させること)が繰り返される。この場合、遊脚として動作させる腕リンク30又は脚リンク50は、所定の規則で周期的に切り替えられる。
ただし、四足歩行モードの動作は、上記の動作に限定されるものではない。例えば、腕リンク30の先端のハンド部40及び脚リンク50の先端の足平部60のうちの1つを接地面Aに接地させた状態(その1つのハンド部40又は足平部60を支持脚とした状態)で、残りの3つのハンド部40及び足平部60を空中移動させ、さらに接地させること(その残りの3つのハンド部40又は足平部60を遊脚として動作させること)を繰り返すようにすることも可能である。
また、腕リンク30の先端のハンド部40及び脚リンク50の先端の足平部60を一斉に空中に移動させて(すなわち、ロボット1をジャンプさせて)、さらに接地させることを繰り返すようにすることも可能である。
以下、図5及び図6を参照して、ハンド部40について説明する。なお、図5及び図6におけるハンド部40は、基準姿勢時においてロボット1の右側に位置し、右手を構成するものである。
まず、図5を参照して、ハンド部40の構成について詳細に説明する。
ハンド部40は、人間の手の平及び手の甲に対応するハンド基部40aと、人間の人差し指、中指、薬指及び小指に対応する単一の部材である第1指部40b(固定指部)と、人間の親指に対応する第2指部40c(可動指部,リンク部)とを備えている。
第1指部40bは、ハンド基部40aの先端部から、そのハンド基部40aの基端部から先端部に向かう方向(図5AではZ方向(ハンド基部40aの長手方向))と交わる方向(図5AではX方向で左側)に延設されている。第1指部40bは、ハンド基部40aと一体的に構成され、ハンド基部40aに固定されている。第1指部40bのハンド基部40aとは反対側の面には、緩衝部材40dが取り付けられている。
このように構成された第1指部40bを備えるハンド部40では、押し動作の際には、第1指部40bは、そのハンド基部40aとは反対側の面(すなわち、緩衝部材40d)を介して対象物に荷重を加える。一方、引き動作の際には、第1指部40bのハンド基部40a側の面を介して対象物に荷重を加える。
ところで、従来のロボットでは、ハンド装置は、ハンド基部と第1指部とが関節機構を介して連結されたものであったので、その関節部分の強度がそれほど高いものではなかった。そのため、押し動作又は引き動作の際に対象物に大きな荷重を加えると(すなわち、第1指部に大きな力が加えると)、その関節機構に破損が生じてしまうおそれがあった。
これに対し、本実施形態のロボット1では、ハンド部40は、第1指部40bがハンド基部40aに固定されたものである(すなわち、従来のロボットのハンド装置のように関節機構を介して連結されたものではない)ので、従来のハンド装置に比べて全体としての強度が高くなっている。
そのため、ハンド部40では、押し動作又は引き動作の際に対象物に大きな荷重を加えても(すなわち、第1指部40bに大きな力が加えても)、ハンド基部40aと第1指部40bとの間に破損が生じにくい。また、押し動作の際には、緩衝部材40dが第1指部40bを保護するので、第1指部40bそのものにも破損が生じにくい。
また、ハンド部40は強度が十分に高いので、ロボット1の自重を支えるように対象物を保持しても破損が生じることがない。そのため、ハンド部40の動作と腕リンク30の回動とによって、梯子を上るような移動も行うことができる。さらに、ハンド部40の第1指部40b(本実施形態では、第1指部40bに取り付けられた緩衝部材40d)を接地させて移動することもできる。
図6に示すように、第2指部40cは、第1指部40bの先端部のハンド基部40a側の面と対向するように、ハンド基部40aに取り付けられている。第2指部40cは、ハンド基部40aの内部に設けられた駆動機構40eによって、第2指部40cの先端部と第1指部40bとが接近又は離間するように、ハンド基部40aの内部に位置する支点P周りに回動させられる。
このように第2指部40cが構成されているので、ハンド部40は、第1指部40bが固定されていても、ハンド基部40aと第1指部40bと第2指部40cとによって、対象物を把持する動作等を容易に行うことができる。
より具体的には、図6Aに示すように、第2指部40cの先端部を第1指部40bに接近させた状態(以下、「閉状態」という。)では、ハンド部40は、第1指部40bのハンド基部40a側の面と、第2指部40cのハンド基部40a側の面と、ハンド基部40aの第1指部40bが延びている側の面とで、対象物Oを3点接触によって把持することができる。
閉状態では、第2指部40cの先端部は、第1指部40bの先端部よりもハンド基部40aに近い位置に位置する。そのため、閉状態では、第2指部40cの先端部を第1指部40bの先端部から離間させた状態(以下、「開状態」という。図6B参照。)に比べて、ハンド部40全体が小型となる。
そのため、狭所で作業を行う際には、閉状態とすることで、エンドエフェクタであるハンド部40を容易に作業領域まで移動させることができる。その結果、ハンド部40と外部環境との接触を防止して、ハンド部40の破損を防止することができる。
一方、図6Bに示すように、開状態では、第2指部40cの先端部は、第1指部40bの先端部よりもハンド基部40aから離れた位置となる。そのため、開状態では、ハンド部40は、第2指部40cの先端部(具体的には、第2指部40cの先端部に設けられている爪部)でボタン等を押すという動作ができる。
第2指部40cを回動させるための駆動機構40eは、駆動力を発生する駆動源と、駆動力を減速して第2指部40cに伝達する減速機と、ハンド基部40aに対する第2指部40cの位置を保持する電磁ブレーキとで構成されている。すなわち、駆動機構40eは、ハンド基部40aに対する第2指部40cの位置を保持するためのブレーキ機構としても用いられる。
駆動機構40eの電磁ブレーキは、駆動源の非駆動時(すなわち、駆動力が第2指部40cに伝達さていないとき)に作動して、第2指部40cを固定する。一方、電磁ブレーキは、駆動源の駆動時(すなわち、駆動力が第2指部40cに伝達されているとき)には作動せず、第2指部40cを回動可能とする。そのため、動作中に駆動力の供給が停止した場合等には、ハンド基部40aに対する第2指部40cの位置は、電磁ブレーキによって保持される。
次に、図6及び図7を参照して、ハンド部40のハンド基部40a及び可動指部である第2指部40cとで構成されている関節構造体について説明する。
図6に示すように、第2指部40cは、ハンド基部40aに対して回動可能な第1リンク部材40c1と、第1リンク部材40c1とともに回動可能であり、対象物Oからの荷重が加わる第2リンク部材40c2とを備えている。
第1リンク部材40c1と第2リンク部材40c2とは、相互に回動可能に固定されており、軸a周りに相対回転可能となっている。また、第1リンク部材40c1と第2リンク部材40c2との間には、第1リンク部材40c1及び第2リンク部材40c2と一体に回動するバネ40c3(弾性部材)が配置されている。
バネ40c3は、第1リンク部材40c1に対する第2リンク部材40c2の位置を、所定の位置(図6A,図6Bに示す位置)で維持するように、対象物Oから第2リンク部材40c2に荷重が加わる方向(図7で矢印で示す方向)とは反対方向に、第2リンク部材40c2を付勢している。なお、第2リンク部材40c2を付勢できるものであれば、バネ40c3に代わり、ゴム等を用いてもよい。
また、第2リンク部材40c2には、第2リンク部材40c2と一体に回動する第2指部側係合部40c4が延設されている。この第2指部側係合部40c4は、ハンド基部40aに設けられているハンド基部側係合部40a1と係合可能となっている。すなわち、ハンド基部側係合部40a1と第2指部側係合部40c4とによって、関節構造体の係合機構が構成されている。
ここで、図7を参照して、係合機構の係合のタイミングについて説明する。
図7Aに示すように、第2リンク部材40c2にバネ40c3の付勢力を超えない程度の荷重F1しか加わっていない場合には、バネ40c3の付勢力によって第1リンク部材40c1に対する第2リンク部材40c2の位置は維持され(図6A,図6Bの状態が維持され)、ハンド基部側係合部40a1と第2指部側係合部40c4とは係合しない。
一方、図7Bに示すように、第2リンク部材40c2にバネ40c3の付勢力を超えるような大きな荷重F2が加わった場合には、バネ40c3の付勢力に抗して(バネ40c3が伸張して)第1リンク部材40c1に対する第2リンク部材40c2の位置が変化し(図6A状態から図6Cの状態に変化し)、ハンド基部側係合部40a1と第2指部側係合部40c4とが係合して、第2リンク部材40c2がハンド基部40aに固定される。
すなわち、ハンド部40では、バネ40c3の付勢力に基づいて、ハンド基部側係合部40a1と第2指部側係合部40c4とが係合する荷重の大きさが制御されている。そして、それらが係合した際には、第2リンク部材40c2を介して伝えられる荷重は、第2リンク部材40c2と回動可能に連結されている第1リンク部材40c1ではなく(すなわち、第2指部40cではなく)、第2リンク部材40c2が固定されたハンド基部40aで受け止められる。
これにより、例えば、図6Aに示す状態にあるときに、対象物Oから第2指部40cに対して、通常の使用範囲を超える大きな力が加わったとしても、バネ40c3の付勢力及びハンド基部側係合部40a1と第2指部側係合部40c4との係合によって、第2指部40cの回動は図6Cに示す状態で制限される。
具体的には、例えば、梯子(対象物O)を掴みつつ立っている状態にあるときに、ロボット1の姿勢が崩れたこと等によって、梯子にぶら下がるような状態となり、ハンド部40の把持動作のみでロボット1の全体重を支えなければならなくなったとしても、バネ40c3の付勢力及びハンド基部側係合部40a1と第2指部側係合部40c4との係合によって、梯子を把持した状態が維持される。
したがって、ハンド部40によってロボット1の姿勢の維持がなされている場合には、姿勢が崩れたとしてもハンド部40の動作状態が維持されるので、ロボット1が完全に転倒してしまうようなことがなく、ロボット1の上部基体10等のハンド部40以外の部分の破損を防止することができる。
ところで、ハンド部40の駆動機構40eは、電磁ブレーキを有している。すなわち、駆動機構40eは、その作動中には、第1リンク部材40c1に所定の値を超える荷重(すなわち、保証値を超える荷重)が加えられるまで、ハンド基部40aに対する第1リンク部材40c1の移動を制限するように構成されている。
ここで、電磁ブレーキの「保証値」とは、ハンド基部40aに対する第1リンク部材40c1の位置が電磁ブレーキにより確実に維持することができるトルクの値をいう。
そして、バネ40c3の付勢力は、駆動機構40eで制限可能な荷重(すなわち、保証値)よりも小さく、且つ、通常の使用範囲(例えば、通常の動作時にハンド部40に加わると想定される荷重の範囲)よりも大きい荷重が第2リンク部材40c2に加えられた際に、第1リンク部材40c1に対する第2リンク部材40c2の位置が移動するように設定されている。
すなわち、バネ40c3の付勢力は、保証値を超える荷重が第2リンク部材40c2に加わって駆動機構40eに滑りが生じる前に、ハンド基部側係合部40a1と第2指部側係合部40c4とが係合するように設定されている。
電磁ブレーキの保証値とバネ40c3の付勢力との関係をこのように設定すると、駆動機構40eに滑りが生じて第1リンク部材40c1のハンド基部40aに対する移動が開始される前の段階で、第2リンク部材40c2の第1リンク部材40c1に対する移動が開始されることになる。
これにより、保証値を超える荷重が第2リンク部材40c2に加えられて、駆動機構40eに滑りが生じた際には、既に係合機構が作動するように第2リンク部材40c2が移動させられていることになるので、その荷重がハンド基部40aに受け止められることになる。その結果、駆動機構40eに滑りが生じた場合であっても、タイムラグなく係合機構が作動して、ハンド部40の動作状態が維持される。
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態においては、ハンド装置に関節構造体を適用している。ここで、「関節構造体」とは、例えば、ロボットアームのハンド装置、二足歩行ロボットの腕リンク及び脚リンク等、基部と複数のリンク部材からなるリンク部とを備え、複数のリンク部材のうちの少なくとも1つを他のリンク部材に対して移動可能に連結したものをいう。なお、基部としては、複数のリンク部材のうちの1つを用いてもよい。
そのため、本発明の関節構造体は、ロボットのハンド装置以外のものに適用してもよい。例えば、上記実施形態におけるロボット1の上部基体10と肩関節機構31と第1腕リンク部30aとに、適用してもよい。また、人型ロボット以外の作業用ロボットのロボットアーム等に適用してもよい。
また、上記実施形態においては、関節構造体のリンク部は、ハンド基部40aに対して回動可能な第2指部40cとなっている。
しかし、本発明のリンク部は、基部に対して移動可能なものであればよい。例えば、基部に対して直線的に接近又は離間可能なものであってもよい。
また、上記実施形態においては、第1指部40bを固定指部とし、第2指部40cを可動指部としている。すなわち、関節を介して基部に接続された指部よりも大きな荷重を受け止められる固定指部、及び、上記のように過剰な荷重が加わった際に係合機構が作動する可動指部を採用することにより、把持状態で通常の使用範囲を超える大きな荷重が加わった際にも、動作状態を十分に維持することができるようになっている。
しかし、本発明のハンド装置は、固定指部と可動指部とを組み合わせたものに限定されるものではない。例えば、全ての指部を可動指部としてもよい。
また、上記実施形態においては、ハンド部40では、ハンド基部側係合部40a1及び第2指部側係合部40c4(すなわち、係合機構)を、支点Pよりも第1指部40b側に設けている。
しかし、本発明の係合機構を設ける位置は、そのような位置に限定されるものではなく、基部と第2リンク部材との間であればよい(すなわち、係合時に第2リンク部材を基部に固定できる位置であればよい)。
また、上記実施形態においては、駆動機構40eが電磁ブレーキを有するブレーキ機構として構成しており、バネ40c3の付勢力は、駆動機構40eで制限可能な荷重よりも小さく、且つ、通常の使用範囲よりも大きい荷重が第2リンク部材40c2に加えられた際に、第2リンク部材40c2の移動が開始するような値に設定されている。これは、ブレーキ機構である駆動機構40eに滑りが生じた場合であっても、タイムラグなく係合機構を作動させて、ハンド部40の動作状態を維持するためである。
しかし、本発明のハンド装置の弾性部材は、そのような大きさの付勢力を有するものに限定されるものではなく、第1リンク部材に対する第2リンク部材の位置を所定の位置で維持するように、第2リンク部材を付勢するものであればよい。
また、駆動機構は、電磁ブレーキを有するブレーキ機構に限定されるものではなく、基部に対する第1リンク部材の位置を固定するように、第1リンク部材に駆動力を伝達できるものであればよい。例えば、ハンド装置を把持状態とした後、手動でロックを行う係止機構であってもよい。