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JP2018027992A - コーティング組成物、及び該コーティング組成物よりなるコート層を有する光学物品 - Google Patents

コーティング組成物、及び該コーティング組成物よりなるコート層を有する光学物品 Download PDF

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Abstract

【課題】プラスチック製光学基材の表面に、外観、耐擦傷性、煮沸密着性、耐候密着性に優れたコート層を形成するコーティング組成物を提供する。
【解決手段】無機酸化物微粒子(A)、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)、水又は酸水溶液(C)、硬化触媒(D)、有機溶剤(E)、及び芳香族アルコール類(F)を含むコーティング組成物を提供する。
該コーティング組成物において、前記芳香族アルコール類(F)が、前記無機酸化物微粒子(A)と前記加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)との合計量100質量部に対して、3〜100質量部の量で含むことが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なコーティング組成物および、該コーティング組成物より形成されるハードコート層(硬化物層)を有する新規な積層体に関する。具体的には、屈折率1.50を超える高屈折率樹脂基材(レンズ)の表面或いはフォトクロミックプラスチックレンズ等のフォトクロミック光学基材の表面に最適なハードコート層を形成するためのコーティング組成物に関する。
プラスチックレンズは、軽さ、安全性、易加工性、ファッション性などガラスレンズにはない特徴を有し、現在、眼鏡レンズ分野では主流となっている。しかし、一般に使われる、例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂レンズは、屈折率が1.50とガラスより低く、レンズの外周が厚くなるという欠点を有している。このため樹脂レンズの分野では、より高い屈折率を有する合成樹脂レンズによって薄型化が行われている。また、プラスチックレンズを染色することにより、防舷性を付与したレンズ(以下、染色レンズともいう)も使用されている。
一方で、プラスチックレンズは、傷が付きやすい欠点があるために、シリコーン系のハードコート層を表面に設けることにより、かかる欠点を改善している。上記ハードコート層を形成するハードコート膜は、通常、無機酸化物微粒子、重合性を有する有機シラン化合物(加水分解性有機ケイ素化合物)、重合触媒、水および有機溶媒を主成分とするコーティング組成物をプラスチックレンズ表面に塗布し、加熱して、有機溶媒の除去と重合硬化を行うことにより形成されている(特許文献1)。また、このようなコーティング組成物においては、高屈折率化や保存安定性の向上等を目的に様々な改良が行われているが(特許文献2)、基本的な組成は、上記特許文献1で提案されているものと変わりがない。更には、プラスチックレンズへの密着性を向上させるために、N−メチルピロリドンなどを添加したコーティング組成物も提案されている(特許文献3)。
特公昭57−2735号公報 国際公開第01/42381号パンフレット 国際公開第2010/122912号パンフレット
ところで、上記のようなハードコート膜は、無機酸化物微粒子を多く含んでいるため、本質的にプラスチックレンズ等の光学基材に対する密着性が乏しいという欠点がある。さらに、ハードコート膜の熱膨張係数が上記基材と大きく異なるため、コーティング組成物の硬化時の加熱(通常、120℃程度)によってハードコート膜にクラックが発生しやすいという問題もある。
上記課題の解決手段として従来は、より密着性を向上させるためプラスチックレンズ等の基材表面に、単純なアルカリ溶液による化学処理に加え、研磨処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理及びUVオゾン処理等の物理的な表面処理を行ったり、或いはプライマー処理などの化学的表面処理を行ったりしてきた。しかしながら、このような表面処理工程を行うことにより、生産性の低下や生産コストの増大をもたらすため、できるだけ工程を簡略化することが望まれていた。
さらに、プラスチックレンズは、その使用用途により温水と接触する場合があるが、ハードコート膜は、耐温水性が低く、温水と接触するとプラスチック製基材から一部剥れるものと考えられる、外観不良を生じる場合があった。
また、染色レンズにハードコート膜を積層した場合には、短期間でハードコート膜が剥離してしまう場合があり、なお改善の余地があった。
従って、本発明の目的は、それ自体で染色レンズも含めたプラスチックレンズ等の光学基材に対する密着性が良好であり、耐温水性も高く、且つ硬化時等の熱履歴に起因するクラックの発生などが有効に防止されたハードコート膜を形成するためのコーティング組成物を提供することにある。
また、フォトクロミック化合物がプラスチック製の基材内部に分散されたもの、または、基材表面にフォトクロミック化合物が分散されたフォトクロミックコート層が形成されたもののハードコート膜として、有効に使用できるコーティング組成物を提供することにある。
本発明によれば、無機酸化物微粒子(A)、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)、水又は酸水溶液(C)、硬化触媒(D)、有機溶媒(E)及び、芳香族アルコール類(F)を必須成分として含むハードコート膜形成用コーティング組成物が提供される。
本発明のコーティング組成物においては、
(1)芳香族アルコール類(F1)が、前記無機酸化物微粒子(A)と加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)との合計量100質量部当り、3〜100質量部の量で含有していること、
(2)前記芳香族アルコール類(F)が、少なくとも1つの芳香族環と、少なくとも1つの水酸基を含む化合物であること、
(3)前記加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)を、前記無機酸化物微粒子(A)と加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)との合計量100質量部当たり、40〜90質量部の量で含有していること、
が好適である。
本発明によれば、プラスチック製光学基材上に、上記コーティング組成物を硬化させて得られるハードコート層を有する光学物品が提供される。
上記光学物品の発明において、前記プラスチック製光学基材が、フォトクロミック光学基材である場合に、優れた効果を発揮する。その中でも、前記フォトクロミック光学基材が、プラスチック製光学基材上に、重合性単量体、及びフォトクロミック化合物を含む重合硬化性組成物を硬化させて得られるフォトクロミックコート層を有するものであり、該フォトクロミックコート層上にハードコート層が形成されてなる光学物品である場合に、特に優れた効果を発揮する。
また、同じく、この光学物品は、前記プラスチック製光学基材が、染料を含む光学基材である場合にも、優れた効果を発揮する。
本発明のコーティング剤組成物は、芳香族アルコール類(F)が配合されていることが重要な特徴であり、このような芳香族アルコール類(F)の配合により、プラスチックレンズ等のプラスチック製光学基材に対して優れた密着性を有するハードコート膜を形成することができ、しかもこのハードコート膜は、熱履歴に対する耐性にも優れ、硬化などの熱履歴に起因するクラックの発生も有効に防止することができる。
このコーティング組成物によれば、従来から汎用的に使用されているアルカリ溶液による化学処理のみでも、基材に対する密着性の良好なハードコート膜を形成することができる。さらに、耐温水性も向上しており、温水と接触させても、密着性の低下が少なく、工業的有用性が極めて高い。
尚、芳香族アルコール類(F)の配合によって上記のような特性を有するハードコート膜が形成される理由については、明確に解明された訳ではないが、本発明者等は次のように推定している。
即ち、芳香族アルコール類(F)は、高沸点であり、蒸気圧が低いばかりか、プラスチックレンズ等のプラスチック製光学基材を形成しているポリマー、例えば、ポリ(メタ)アクリレート((メタ)アクリレート系樹脂)やポリ(チオ)ウレタン((チオ)ウレタン系樹脂)などに対して親和性が高く、これらポリマーを溶解もしくは膨潤し得る化合物である。従って、このコーティング組成物を基材に塗布し、加熱して硬化を行う際に、芳香族アルコール類(F)は全てが蒸発して揮散するのではなく、その一部が基材の表面部分に浸透し、基材表面部分が膨潤した状態でハードコート膜が形成され、且つハードコート膜内部にも芳香族アルコール類(F)が残存することとなる。従って、形成されるハードコート膜はプラスチック製光学基材に対して優れた密着性、耐温水性を示すものと考えられる。さらに、形成されるハードコート膜は、その内部に芳香族アルコール類(F)が残存しているため、このハードコート膜には適度な柔軟性が付与され、基材表面に対して高い追随性を示し、この結果、熱履歴(熱膨張差)に対して高い耐性を示すものと考えられる。
本発明のコーティング組成物は、無機酸化物微粒子(A)、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)、水又は酸水溶液(C)、硬化触媒(D)、有機溶媒(E)、及び芳香族アルコール類(F)を必須成分として含有している。このように、前記(A)〜(F)成分、特に芳香族アルコール類(F)を含有することにより、本発明の優れた効果(特に密着性)を発揮することができる。
以下、本発明のコーティング組成物を構成する各成分について説明する。
<無機酸化物微粒子(A)>
本発明のコーティング組成物における無機酸化物微粒子としては、従来の低屈折率あるいは高屈折率コーティング剤に使用されている公知の無機酸化物微粒子が何ら制限無く使用できる。低屈折率コーティング剤においては、シリカ微粒子を主成分とする無機酸化物微粒子を使用するのが好適である。また、高屈折率コーティング剤においては、Si、Al、Ti、Fe、In、Zr、Au、Sn、Sb、W及びCeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物または複合無機酸化物からなる微粒子、特にSi、Al、Ti、Fe、Zr、Sn、Sb及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物又は複合無機酸化物微粒子を使用するのが好適である。上記無機酸化物微粒子としては、上記の元素群から選ばれる元素の酸化物を1種以上含んでいればよく、上記元素を含む複合酸化物微粒子を使用しても良いし、複数の上記無機酸化物粒子を混合して使用しても良い。
さらに、このような無機酸化物微粒子の一部として酸化セリウム微粒子が含まれている場合には、形成されるハードコート層の耐久性や外観を向上させることができる。
また、無機酸化物微粒子の粒子径も従来のコーティング剤で使用されるものと特に変わらず、電子顕微鏡(TEM)により観察される1次粒子径が1〜300nm程度のものが好適に使用できる。このような粒子径の微粒子は、通常、分散媒として水または後述する有機溶媒の一部(特にアルコール系溶媒)に分散させた形で使用に供され、一般にはコロイド分散させることにより粒子が凝集するのを防止している。例えば、本発明においては、上記の無機酸化物微粒子としては、ハードコート膜中に緻密に均一に分散させ得るという観点から、水溶性の有機溶媒或いは水に分散させたゾルの形態でコーティング組成物中に配合されるシリカ微粒子(即ち、シリカゾル)または、複合無機酸化物微粒子が好適である。
なお、ゾルの形態で無機酸化物微粒子を使用する場合、操作性をさらに改善するためには、ゾルに含まれる無機酸化物微粒子の濃度(固形分濃度)が10〜50質量%のものを使用することが好ましい。
本発明における無機酸化物微粒子の分散媒に用いる有機溶媒を具体的に例示すると、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、エチレングリコールなどのアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのセルソルブ類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用しても良く、あるいは複数の有機溶媒の混合溶媒として使用しても良く、或いは有機溶媒と水の混合溶媒として使用しても良い。上記分散媒の中でも、水、アルコール類、または水とアルコール類の混合溶媒を使用することが好ましい。
低屈折率コーティング剤に使用されるシリカゾルは工業的に入手でき、例えば水を分散媒とするゾルは、日産化学工業(株)より、スノーテックスOXS、スノーテックスOS、スノーテックスO、スノーテックスO−40等の商品名で市販されている。有機溶媒を分散媒とするゾルは、日産化学工業(株)より、メタノールシリカゾル、MA−ST−MS(分散媒;メタノール)、IPA−ST(分散媒;イソプロパノール)等として市販されている。
また、高屈折率コーティング剤に使用される複合無機酸化物微粒子は、2種類以上の無機酸化物を含むものであるが、具体的には、Si、Al、Ti、Fe、In、Zr、Au、Sn、Sb、W及びCeから選ばれる少なくとも2種類以上の無機酸化物を含む複合無機酸化物微粒子であることが好ましい。
上記本発明における無機酸化物微粒子として複合酸化物微粒子を使用する場合における酸化物の配合量は、その使用用途に応じて適宜決定すればよい。その中でも、本発明で使用する複合無機酸化物微粒子は、酸化ジルコニウムを含むものが好ましく、具体的には、酸化チタン0〜80質量%、酸化ジルコニウムが1〜25質量%、酸化スズが0〜80質量%、五酸化アンチモンが0〜20質量%、酸化タングステンが0〜10質量%、二酸化珪素が0〜25質量%の範囲であることが好ましい。
上記のような複合無機酸化物微粒子は、シリカゾルと同じように有機溶媒を分散媒としたゾルの状態で市販されており、例えば、日産化学工業(株)製HXシリーズ、HITシリーズ、HTシリーズ及び日揮触媒化成(株)製オプトレイクシリーズなどが挙げられる。
また、高屈折率コーティング剤に使用される無機酸化物微粒子は、その入手のし易さの観点から、五酸化アンチモンの微粒子を使用することもできる。五酸化アンチモン微粒子を使用する場合も、水溶性の有機溶媒或いは水に分散させたゾルの形態でコーティング組成物に使用することが好ましい。また、固形分濃度が10〜50質量%の五酸化アンチモンゾルを使用することが好ましい。このような五酸化アンチモン微粒子は、シリカゾルと同じように有機溶媒を分散媒としたゾルの状態で市販されており、例えば、日産化学工業(株)製サンコロイドAMT−330S、及びAMT−332S・NVなどのAMTシリーズが挙げられる。
上記本発明のコーティング組成物における無機酸化物微粒子の配合量としては、無機酸化物の種類、最終的に得られるハードコート層の硬度、耐熱性、及び柔軟性の観点から、後述する加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)との合計量100質量部として、20.0質量部〜60.0質量部、特に30.0質量部〜50.0質量部であることが好ましい。なお、この質量部は、分散媒を除いた固形分(無機酸化物微粒子)の配合量である。
なお、一般的には、最終的に形成されるハードコート層に占める無機酸化物微粒子の割合が30質量%〜70質量%、好ましくは40質量%〜60質量%となるような量に、他の成分の使用量に合わせて設定するのがよい。なお、当該ハードコート層の質量は、下記の加水分解性基含有有機ケイ素化合物を加水分解させた後、得られたコーティング組成物を120℃で3時間加熱した後に残った固体成分の質量を秤量することにより求めることが出来る。
前記配合割合において、複数種類の無機酸化物微粒子を使用する場合には、それらの合計質量が無機酸化物微粒子の配合量に該当する。また、複数種類の加水分解性有機ケイ素化合物を使用する場合には、それらの合計質量が加水分解性基含有有機ケイ素化合物の配合量に該当する。
また、本発明においては、ハードコート層の耐久性及び外観をさらに向上させるために、酸化セリウム微粒子を使用する場合には、その使用量は無機酸化物微粒子の1〜20質量%とするのがよい。
次に、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)について説明する。
<加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)>
本発明のコーティング組成物における、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(以下、単に有機ケイ素化合物ともいう。)は、コーティング組成物を硬化してハードコート層を形成した時にマトリックスとなる透明硬化体を形成する成分であり、前記無機酸化物微粒子のバインダーとしての機能を有するものである。
上記有機ケイ素化合物としては、公知の有機ケイ素化合物を何ら制限なく使用することが可能であるが、加水分解性基としてアルコキシ基を有している化合物が好ましく、アルコキシ基が2個以上、ケイ素原子に結合している化合物がより好ましい。
この(B)成分を具体例に例示すれば、以下のものを例示することができる。
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン
β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
テトラエトキシシラン
テトラメトキシシランの4量体
テトラエトキシシランの5量体
ビニルトリメトキシシシラン
ビニルトリエトキシシラン
ビニルトリアセトキシシラン
メチルトリメトキシシラン
メチルトリエトキシシラン
メチルトリフェノキシシラン
ジメチルジメトキシシラン
トリメチルメトキシシラン
フェニルトリメトキシシラン
ジフェニルジメトキシシラン
シクロヘキシルメチルジメトキシシラン
1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン
1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン
1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン
1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン
1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン
1,6−ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン
n−プロピルトリメトキシシラン
n−ブチルトリメトキシシラン
イソブチルトリメトキシシラン
イソブチルトリエトキシシラン
n−ヘキシルトリメトキシシラン
n−ヘキシルトリエトキシシラン
n−オクチルトリエトキシシラン
n−デシルトリメトキシシラン
3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン
ビス[3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル]カーボネート
トリフルオロプロピルトリメトキシシラン
パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン
γ-クロロプロピルトリメトキシシラン
ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン
アリルトリメトキシシラン
γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン
γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン
γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン
N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン
p−スチリルトリメトキシシラン
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン
上記の有機ケイ素化合物中の加水分解性基の一部或いは全部が加水分解したもの又は一部縮合したもの。
本発明においては、上記の中でも、プラスチック製光学基材との密着性、架橋性をより向上させる有機ケイ素化合物として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが好適に使用される。
また、形成されるハードコート膜を緻密にし、プラスチック製光学基材の耐擦傷性をより向上させる有機ケイ素化合物として、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等の加水分解が可能なアルコキシ基が4つ存在するもの、テトラエトキシシラン、またはテトラメトキシシランの2〜4量体(4量体の場合は、1分子にアルコキシ基が10個存在する)、メチルトリエトキシシラン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタンなどが好適に使用される。
なお、上記有機ケイ素化合物は、1種類のみを使用することもできるし、2種類以上のものを併用して使用することもできる。特に、これらの中でも、上記密着性、架橋性を向上させる好ましい有機ケイ素化合物として例示した化合物と、耐擦傷性を向上させる好ましい有機ケイ素化合物として例示した化合物とを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、芳香族アルコールを使用する効果を高め、より優れた性能を発揮するハードコート層を形成するためには、架橋性の向上に効果的な前記有機ケイ素化合物を、耐擦傷性の向上に効果的な前記有機ケイ素化合物に対して2.0〜7.0質量倍の量で用いることが好適である。
本発明において、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)の配合量は、前記酸化物微粒子(A)との合計量を100質量部として、40.0質量部〜90.0質量部の範囲で用いることが好ましい。なお、この(B)の配合量は、加水分解されていない加水分解性基含有有機ケイ素化合物の量である。加水分解性基含有有機ケイ素化合物の配合量が少ないとハードコート層の耐熱性、及び柔軟性が低下する傾向にあり、ハードコート層自身が脆くなりやすい傾向にある。一方、加水分解性基含有有機ケイ素化合物の配合量が多くなると、ハードコート層の硬度が低下する傾向にある。得られるハードコート層の硬度、耐熱性、柔軟性等を考慮すると、加水分解性基含有有機ケイ素化合物の配合量は、前記酸化物微粒子(A)との合計量を100質量部として、50.0質量部〜70.0質量部の範囲で用いることが特に好ましい。
次に、水又は酸水溶液(C)について説明する。
<水又は酸水溶液(C)>
本発明のコーティング組成物では、前記加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)が加水分解し、この加水分解物が前記無機酸化物微粒子(A)を取り込んだ形で重合硬化(重縮合)してマトリックスとなる硬化体を形成し、無機酸化物微粒子(A)が緻密にマトリックス中に分散したハードコート層を形成される。この硬化体形成の、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)の加水分解を促進させるために、水又は酸水溶液の配合が必要となる。
このような水又は酸水溶液(C)の使用量は、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)の加水分解を効率良く行うという観点から、前記無機酸化物微粒子(A)と加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)の合計質量100質量部当り、1.0質量部〜50.0質量部、好ましくは5.0質量部〜30.0質量部、さらに好ましくは15.0質量部〜25.0質量部の量とすることが好ましい。即ち、水の量が少量であると、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)の加水分解が十分に進行せず、得られるハードコート層の耐擦傷性が低下したり、得られるコーティング剤の保存安定等の特性が低下するおそれがある。また、水の量が多くなりすぎると、均一な厚みのハードコート層の形成が困難となり、外観に悪影響を与えるおそれがある。なお、前記水の配合量は、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)が加水分解されていない状態のものを基準とする。
尚、既に述べた通り、前記無機酸化物微粒子(A)は、水に分散させた分散液(ゾル)の形態で使用されることがある。このような場合には、前記水の配合量は、この分散媒に使用されている水の量を含むものとする。例えば、無機酸化物微粒子(A)を使用する際に、分散液に含まれる水の量が、前記水の量の範囲を満足している場合には、さらに水をコーティング組成物に混合する必要ない。また、前記水の量の範囲に満たない場合には、さらに水を混合してやればよい。
また、本発明において酸水溶液を用いた場合には、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)の加水分解をさらに促進することができる。この場合、酸分は少ないため、配合量は酸水溶液の量とする。酸分を具体的に例示すれば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸、または酢酸、プロピオン酸等の有機酸の水溶液を使用できる。これらの中でも、コーティング組成物の保存安定性、加水分解性の観点から、塩酸及び酢酸が好適に使用される。また、酸水溶液の濃度は、0.001〜0.5N、特に0.01〜0.1Nであるのが好適である。
次に、硬化触媒(D)について説明する。
<硬化触媒(D)>
本発明のコーティング組成物における硬化触媒(D)は、前記加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)の加水分解物の縮合(重合硬化)を促進させるために使用される。硬化触媒として具体的には、アセチルアセトナート錯体、過塩素酸塩、有機金属塩、各種ルイス酸等が挙げられる。これらは1種の硬化触媒を単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。これら硬化触媒を使用することにより、コート層をより硬くすることができる。
アセチルアセトナート錯体として具体的には、
アルミニウムアセチルアセトナート、
リチウムアセチルアセトナート、
インジウムアセチルアセトナート、
クロムアセチルアセトナート、
ニッケルアセチルアセトナート、
チタニウムアセチルアセトナート、
鉄アセチルアセトナート、
亜鉛アセチルアセトナート、
コバルトアセチルアセトナート、
銅アセチルアセトナート、
ジルコニウムアセチルアセトナート
等を例示することができる。これらの中では、アルミニウムアセチルアセトナート、チタニウムアセチルアセトナートが好適である。
過塩素酸塩としては、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アルミニウム、過塩素酸亜鉛、過塩素酸アンモニウム等を例示することができる。
有機金属塩としては、酢酸ナトリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛等を例示することができる。
ルイス酸としては、塩化第二錫、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化チタン、塩化亜鉛、塩化アンチモン等を例示することができる。
本発明においては、比較的低温でも短時間で耐擦傷性の高いハードコート層が得られ、コーティング組成物の保存安定性が優れるという観点から、硬化触媒としてアセチルアセトナート錯体、過塩素酸塩を使用することが好ましい。中でも、硬化触媒の50質量%以上、特に70質量%以上、最適には硬化触媒の全量が、アセチルアセトナート錯体、または過塩素酸塩であることが好ましい。
前記硬化触媒は、硬いコート層を得るという観点から、前記無機酸化物微粒子(A)、及び加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)の合計量100質量部当たり、0.10質量部〜5.00質量部、特に1.50質量部〜3.50質量部の範囲の量で使用されることが好ましい。なお、前記硬化触媒の配合量は(B)成分が加水分解されていない状態のものを基準とする。
次に、有機溶媒(E)について説明する。
<有機溶媒(E)>
本発明のコーティング組成物において、有機溶媒(E)は、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)の溶剤となり且つ無機酸化物微粒子(A)の分散媒となるものであるが、このような機能を有していると同時に、揮発性を有するものであれば芳香族アルコール類(F)以外の公知の有機溶媒が使用できる。なお、後述するとおり、芳香族アルコール類(F)は、有機溶媒(E)とは別に配合されるものであり、芳香族アルコール類は本発明における有機溶媒には含まれない。このような有機溶媒の具体例としては、
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−
タノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;
酢酸メチル等の低級カルボン酸エステル類;
ジオキサン、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ
メチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類;
メチレンクロライド、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;
ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;
等が挙げられる。これら有機溶媒は単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
これら有機溶媒(E)の中でも、コーティング剤を塗布して硬化させる際に、容易に蒸発し、平滑なハードコート層が形成されるという観点から、特にメタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセチルアセトンを使用するのが好ましい。また、このような有機溶媒の一部は、先に述べたように、無機酸化物微粒子(A)の分散媒として、予め無機酸化物微粒子(A)と混合しておくこともできる。
有機溶媒(E)の使用量は、特に限定されないが、良好な保存安定性、外観などを得るために、前記無機酸化物微粒子(A)と加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)の合計量100質量部当たり、好ましくは50質量部〜500質量部、より好ましくは120質量部〜250質量部の範囲とすることが好ましい。なお、前記有機溶媒(E)の配合量は、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)が加水分解していない状態のものを基準とするものであり、該加水分解性基含有有機ケイ素化合物が加水分解して生じたアルコールは含まないものとする。
次に、芳香族アルコール類(F)について説明する。
<芳香族アルコール類(F)>
本発明のコーティング組成物において、上記(A)〜(E)成分に加えて、芳香族アルコール類(F)が使用される。芳香族アルコール類は、分子中に少なくとも1つの芳香族環と、少なくとも1つの水酸基を含む化合物であり、特にプラスチックレンズへのハードコート層の密着性を高めるために使用される。
前述のとおり、本発明の芳香族アルコール類(F)は、高沸点であり、蒸気圧が小さい。従って、推定ではあるが、硬化の際の加熱によって揮散せず、ハードコート膜中に一部が残存し、この結果として該膜のプラスチック基材に対する追随性が高められ、熱履歴(ハードコート膜と基材との熱膨張係数差)に起因するハードコート膜のクラックの発生が防止されると考えられる。また、ハードコート膜が施される基材を形成するプラスチックに対する親和性が高いという性質も有しているため、硬化時にプラスチック製光学基材の表面部分を膨潤させるという機能を示し、この結果として、得られるハードコート膜とプラスチック製光学基材に対する密着性を著しく高めることが可能になると考えられる。そして、ハードコート膜の密着性を高めることができるため、耐温水性も向上し、温水と接触しても、その密着性があまり低下しないものと考えられる。
このような芳香族アルコール類(F)としては、上述した有機溶媒(E)と均一に混合するものであれば特に制限されないが、ハードコート膜への残留の観点から、沸点は100〜300℃であることが好ましく、160〜240℃であることがより好ましく、200〜210℃であることが最も好ましい。芳香族アルコール(F)の沸点が100℃未満の場合には、本発明のコーティング組成物をプラスチック基材に塗布後に、乾燥、及び硬化のために加熱する際に、プラスチック基材へ浸透する前に揮発してしまうために、密着性の向上効果が低い傾向にある。また、芳香族アルコール(F)の沸点が300℃を超える場合には、最終的に得られるハードコート膜中へ残存する量が増加するために、膜硬度(擦傷性)が低下する傾向にある。
上記芳香族アルコール類(F)の具体例としては、4−メトキシベンジルアルコール、4−イソプロピルベンジルアルコール、α,α,4−トリメチルベンゼンメタノール、2−メチル−3−フェニルプロパノール、3−フェニルプロパノール、2,4−ジメチルベンジルアルコール、1−フェニル−2−メチル−2−プロパノール、1−(4−メチルフェニル)エタノール、2−エトキシベンジルアルコール、4−エトキシベンジルアルコール、フルフリルアルコール、2−フェニルプロパノール、4−メチル−1−フェニル−2−ペンタノール、2−メトキシベンジルアルコール、3−(4−メトキシフェニル)プロパノール、4−メチル−2−フェニルペンタノール、2−メチル−4−フェニル−2−ブタノール、4−メチルベンジルアルコール、5−メチルフルフリルアルコール、フェネチルアルコール、3−メチル−1−フェニル−3−ペンタノール、2−フェノキシエタノール、1−フェニルプロパノール、2−フェニル−2−プロパノール、4−フェニルブタン−2−オール、ピペロニルアルコール、1−フェニルエタノール、2−(4−メチル−5−チアゾリル)エタノール、2−チエニルメタノール、3,4−ジメトキシベンジルアルコール、2,3−ジメトキシベンジルアルコール、4−フェニル−3−ブテン−2−オール、1−フェニル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、2−ヒドロキシベンジルアルコール、3−ヒドロキシベンジルアルコール、4−ニトロフェニルエタノール、3−クロロベンジルアルコール、3,4−ジクロロベンジルアルコール、2,3,5,6−テトラフルオロフェニルエタノール、3−メトキシベンジルアルコール、3−フェノキシベンジルアルコール、2−クロロベンジルアルコール、o−クロロベンジルアルコール、イソプロピルベンジルアルコール、3,4,5−トリメトキシベンジルアルコールなどが挙げられる。
これらの中でも、特にプラスチックよりなる光学基材に対する親和性が高く、ハードコート膜とプラスチック製光学基材との密着性を大きく向上させるという観点から、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フルフリルアルコール、2−フェニル−2−プロパノール、1−フェニル−2−メチル−2−プロパノール、4−メチルベンジルアルコールを使用することが好ましく、その中でも特にベンジルアルコールを使用することが最も好ましい。
上記の説明から理解されるように、上記の芳香族アルコール類は、高沸点であり、更にはプラスチック製光学基材に一部浸透させるという観点で使用されるものであり、一般的な有機溶媒として使用されるものではない。芳香族アルコールの使用量は、分散媒として使用される有機溶媒と比較すると少量であり、具体的には、無機酸化物微粒子(A)と加水分解性有機ケイ素化合物(B)との合計量100質量部当り、3〜100質量部の範囲で使用するのが好ましく、より好ましくは9〜60質量部の範囲で、最も好ましくは20〜45質量部の範囲で使用するのが良い。なお、芳香族アルコールの使用量は、加水分解性有機ケイ素化合物(B)が加水分解していない状態のものを基準とする。使用量が100質量部を超える場合には、耐擦傷性が低下する傾向にある。一方、使用量が3質量部未満の場合には、ハードコート膜とプラスチック製光学基材との密着性が低下する傾向にある。
また、下記に詳述するが、例えば、フォトクロミック化合物を含むプラスチック製光学基材(フォトクロミック光学基材)においては、耐候性を付与するためにヒンダードアミン系の耐候剤を含み、フォトクロミック化合物がその効果を発揮するため(分子運動するため)に、自由空間を多く有するプラスチック製光学基材が使用される。この場合、該耐候剤がプラスチック製光学基材の表面に移動し易く、ハードコート膜の形成に影響を与えることがある。このフォトクロミック光学基材は、練り込み法により得られるフォトクロミック光学基材とコート法により得られるフォトクロミック光学基材とがある。
なお、フォトクロミック化合物、及び重合性単量体を含む重合硬化性組成物をそのまま硬化させて得られるプラスチック製光学基材(練り込み法による得られるフォトクロミック光学基材)は、通常、重合性単量体100質量部に対して、フォトクロミック化合物が0.005質量部以上1.00質量部以下、該耐候剤が0.01質量部以上2.00質量部以下配合されて製造される。一方、プラスチック製光学基材上に、フォトクロミック化合物、及び重合性単量体を含む重合硬化性組成物を塗布し、塗膜を硬化させて得られるフォトクロミックコート層を有する光学基材(コート法により得られるフォトクロミック光学基材)は、通常、重合性単量体100質量部に対して、フォトクロミック化合物が1.00質量部を超え10.00質量部以下、該耐候剤が2.00質量部を超え15.00質量部以下配合されて製造される。
また、後述する染料や顔料などにより着色されたプラスチック製光学基材(着色光学基材)においても、本発明のコーティング組成物は密着性の観点で効果的である。 上記の様なフォトクロミック光学基材にハードコート膜を形成する場合には、芳香族アルコールの使用量が多くなると耐擦傷性が低下する傾向にあり、使用量が少ないと密着性が低下する傾向にある。また、前述の着色光学基材にハードコート膜を形成した場合には、長期間使用すると、未着色の光学基材と比較して容易に密着性が低下するという現象が見られる。この原因は定かではないが、着色光学基材とハードコート層の界面に染料や顔料がブリードアウトしてくるか、また界面近傍の染料や顔料が紫外線等により劣化するために、ハードコート膜の密着性が低下すると推定している。
前記の通り、この芳香族アルコールは、有機溶媒(分散媒)として使用するものではない。そのため、上記範囲を満足し、形成されるハードコート膜が優れた耐擦傷性を維持するためには、前記水又は酸水溶液(C)、及び前記有機溶媒(E)の合計量100質量部当たり、50質量部以下となることが好ましく、さらに、20質量部以下となることが好ましい。なお、前記有機溶媒(E)は、加水分解性有機ケイ素化合物(B)が加水分解して生じた有機溶媒を含まないものとする。
<その他の添加剤>
本発明のコーティング組成物は、上記の各種成分に加え、任意的に公知の添加剤を配合することが可能である。
本発明のコーティング剤組成物においては、本発明の目的を損なわない限り、それ自体公知の添加剤を任意的に配合することができる。このような添加剤の例としては、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等を挙げることができる。
例えば、界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、プラスチックレンズ基材への濡れ性の観点からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン系界面活性剤を具体的に挙げると、
ソルビタン脂肪酸エステル、
グリセリン脂肪酸エステル、
デカグリセリン脂肪酸エステル、
プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、
ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、
ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、
ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、
ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、
ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、
単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル、
等を挙げることができる。
界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用しても良い。界面活性剤の添加量は、前述した必須成分の合計量(無機酸化物微粒子(A)と加水分解性有機ケイ素化合物(B)との合計量)100質量部当たり、0.001〜1質量部の範囲が好ましい。
また、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードフェーノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル捕捉剤、イオウ系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これらの配合剤の添加量は、前述した必須成分の合計量(無機酸化物微粒子(A)と加水分解性有機ケイ素化合物(B)との合計量)100質量部当たり、0.1〜20質量部の範囲が好ましい。
染料、顔料は、着色のために使用されるものであり、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンゾアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン染料、ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン染料、インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン染料、オキシケトン染料、アントラキノン染料、ペリノン系染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料、アゾ系顔料、アントラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴイド系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キサンテン系顔料等を挙げることができる。染料、顔料の使用に当たっては、着色すべき基材の色濃度によって、適宜決定される。
<コーティング剤の調製>
本発明において上記コーティング組成物より、コーティング剤を製造し、該コーティング剤をプラスチックレンズ等のプラスチック製光学基材の表面に塗布し、乾燥後、硬化することによりハードコート層を形成する。本発明において、前記コーティング組成物から得られるコーティング剤は、所定量の各成分を秤取り混合することにより製造することができる。各成分の混合順序は、特に限定されず、全ての成分を同時に混合することもできるが、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)に水又は酸水溶液(C)を添加し、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)を加水分解した後に、無機酸化物微粒子(A)を混合することが、無機酸化物微粒子(A)の分散安定性の観点から好ましい。
硬化触媒(D)、有機溶媒(E)及び、芳香族アルコール類(F)の混合順序は、特に限定されず、前記(A)、(B)及び(C)と合わせて全ての成分を同時に混合することも可能であるが、その中でも、好ましい態様としては、前記(B)を前記(C)で加水分解する際に、前記(B)と合わせて(E)及び(F)を秤量して混合した後、前記(C)で加水分解を行い、その後に前記(A)、及び前記(D)を順に添加・混合する方法が挙げられる。この場合において、加水分解は、ハードコート膜の物性に悪影響を与えず且つ保存安定性を低下させないようにするために10〜40℃の温度で行うことが好ましい。
このように混合して得られるコーティング剤は、特に制限されるものではないが、前記(A)、および前記(B)の加水分解物からなる固形分濃度が、コーティング剤の全質量中、15〜50質量%、特に20〜40質量%の範囲であることが好ましい。
次に、得られたコーティング剤を塗布するプラスチック製光学基材について説明する。
<プラスチック製光学基材>
本発明のコーティング組成物は、眼鏡レンズ、カメラレンズ、液晶ディスプレー、家屋や自動車の窓等のプラスチック製光学基材の表面へのハードコート層の形成に適用されるが、中でも眼鏡レンズの用途に好適に使用される。また、光学基材を形成するプラスチックの種類も制限されず、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂およびチオエポキシ系樹脂等、公知の樹脂からなる光学基材表面へのハードコート膜の形成になんら制限なく適用できる。
本発明のコーティング組成物より得られるコーティング剤は、特に、(メタ)アクリル系樹脂との密着性がより高い。そのため、フォトクロミック化合物を含む(メタ)アクリル系樹脂よりなる光学基材上のハードコート層に好適に使用できる。中でも、自由空間が多く存在し、特に、フォトクロミック化合物、及びハードコート層の形成に影響を与えるヒンダードアミン系の耐候剤を含む(メタ)アクリル系樹脂よりなる光学基材 (フォトクロミック光学基材)のハードコート層を形成する場合に好適に使用できる。この自由空間を多く有する(メタ)アクリル系樹脂は、特に、3官能以上の(メタ)アクリレート基を有する多官能アクリレート、及び繰り返し単位が2〜15のアルキレングリコール鎖を有するジ(メタ)アクリレートを含む組成物を硬化させた(メタ)アクリル系樹脂であることが好適である。
このような3官能以上の(メタ)アクリレート基を有する多官能アクリレートを具体的に例示すれば、
トリメチロールプロパントリメタクリレート、
トリメチロールプロパントリアクリレート、
テトラメチロールメタントリメタクリレート、
テトラメチロールメタントリアクリレート、
が挙げられる。
また、繰り返し単位が2〜15のアルキレングリコール鎖を有するジ(メタ)アクリレートとしては、
平均分子量536のポリエチレングリコールジメタクリレート、
平均分子量736のポリテトラメチレングリコールジメタアクリレート、
平均分子量536のポリプロピレングリコールジメタクリレート、
平均分子量258のポリエチレングリコールジアクリレート、
平均分子量308のポリエチレングリコールジアクリレート、
平均分子量522のポリエチレングリコールジアクリレート、
平均分子量272のポリエチレングリコールメタクリレートアクリレート、
平均分子量536のポリエチレングリコールメタクリレートアクリレート、
2,2−ビス[4−メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[4−アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、
2,2−ビス[4−アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、
が挙げられる。
さらに、3官能以上の(メタ)アクリレート基を有する多官能アクリレート、及び繰り返し単位が2〜15のアルキレングリコール鎖を有するジ(メタ)アクリレートを含む組成物には、他の重合性単量体を加えてもよく、たとえば、グリシジルメタクリレート、ウレタンアクリレート等の(メタ)アクリレートを加えることもできる。
上記のフォトクロミック化合物を含むプラスチック製光学基材(以下、フォトクロミック光学基材と称する)は、フォトクロミック化合物が基材内部に分散され、或いは基材表面にフォトクロミック化合物が分散されたフォトクロミックコート層が形成されたものであってもよい。より具体的には、本発明のコーティング組成物は、上記(メタ)アクレート系モノマーとフォトクロミック化合物とを含む硬化性組成物を重合させてフォトクロミック光学基材としたもの、プラスチック製光学基材の表面に、上記(メタ)アクレート系モノマーとフォトクロミック化合物とを含む硬化性組成物を塗布し、次いで、硬化させてフォトクロミックコート層を形成しフォトクロミック光学基材としたものに対するハードコート層の形成に好適に使用できる。上記フォトクロミックコート層中には、通常、多量のフォトクロミック化合物を含まれる。従って、フォトクロミックコート層が形成されたフォトクロミック光学基材は、長時間の使用によって、フォトクロミック化合物の劣化によってハードコート層の密着性が低下する場合があったが、本発明のコーティング組成物を用いて該フォトクロミックコート層上にハードコート層を形成することにより、初期のハードコート層の密着性が向上するため、フォトクロミック光学基材上のハードコート層の密着性をも改善することができる。
さらに、本発明のコーティング組成物が有用な基材として、染色レンズが挙げられる。特に、チオウレタン系樹脂、やチオエポキシ系樹脂といった高屈折率プラスチックレンズの染色レンズに対して好適である。染色レンズには、通常、前述の染料が含まれているが、この染料は紫外線により劣化する。そのため、染料の劣化により、ハードコート層とプラスチックレンズ基材界面の密着性が著しく低下しやすいという問題が生じるが、本発明のコーティング組成物を用いて染色レンズ表面にハードコート層を積層することで、初期の密着性が向上することにより、長期間使用による密着性の低下の問題を抑制することが可能となる。
なお、下記の実施例に示すが、上記の理由により、染色レンズやフォトクロミック光学基材は、染料やフォトクロミック化合物が劣化しやすい。そのため、これらの光学基材においては、ハードコート層とプラスチックレンズ基材界面との耐候密着性が低下する傾向にある。そのため、該光学基材を使用した場合、本発明のコーティング組成物とそれ以外のコーティング組成物との耐候密着性の差が顕著になる。中でも、特に、染色レンズ(染料を含むレンズ)を対象とする場合に、上記効果が顕著に発揮される。
次に、プラスチック製光学基材上に、本発明のコーティング組成物から得られるコーティング剤を用いてハードコート層を積層し、ハードコート層を有する光学物品を製造する方法について説明する。
<光学物品の製造方法、光学物品>
上記のようにして製造されるコーティング剤は、必要に応じて異物を取り除くための濾過を行った後、プラスチックレンズ等のプラスチック製光学基材の表面に塗布し、乾燥後、硬化することによりハードコート層を形成する。このプラスチック製光学基材は、前記の光学基材が使用される。
コーティング剤の塗布は、ディッピング法、スピンコート法、ディップスピンコーティング法、スプレー法、刷毛塗りあるいはローラー塗りなど公知の塗布方法が採用できる。コーティング剤を塗布後の乾燥は、コーティング剤中の溶媒を除去できる条件で適宜行えば良い。乾燥後の硬化については、形成されるコーティング層が十分な強度を有するまで行えば良いが、急激な収縮を防ぎ外観良好なハードコート層を積層する点から最初に60〜80℃で5〜30分程度の予備硬化を行い、その後、基材によって異なるが、90℃〜120℃の温度で1〜3時間程度の硬化を行うのがよい。特に、本発明のコーティング組成物より得られるコーティング剤は、優れた密着性を発揮するため、予備硬化後の温度を比較的低温にすることもできる。具体的には、予備硬化後の温度を95〜115℃、さらに100〜110℃とすることも可能である。このように比較的低温で硬化させることができるため、プラスチックレンズの黄変や、熱変形を防止することが可能である。
上記のようにして形成されるハードコート層は、0.1〜10μm程度の厚みとすればよく、一般に、メガネレンズでは1〜5μmの厚みが好適である。上記方法を採用することにより、プラスチック製光学基材上に、ハードコート層が形成された光学物品を得ることができる。
本発明のコーティング組成物によれば、優れた耐擦傷性を有するハードコート層を与えるばかりでなく、長期間使用してもクラックやハードコート層の剥離といった光劣化に起因する外観不良を防止することができる。更には、硬化時等の熱履歴に由来するハードコート層のクラック、具体的には、ハードコート層の収縮とプラスチック製光学基材の膨張により生じるハードコート層のクラックの発生も防止できる。また、耐熱水性にも優れ、温水と接触させても、クラックが発生したり、密着性が低下したりするのを改善することができる。
以下、本発明を説明するために、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で使用したプラスチック製光学基材(レンズ基材)、各成分については以下のとおりである。
(1)プラスチック製光学基材(レンズ基材)
MRA:チオウレタン系樹脂プラスチックレンズ、屈折率=1.60。
MRB:チオウレタン系樹脂プラスチックレンズ、屈折率=1.67。
MRC:視感透過率が約75%の茶色に染色されたチオウレタン系樹脂プラスチック
レンズ、屈折率=1.67。
MRD:視感透過率が約15%の茶色に染色されたチオウレタン系樹脂プラスチック
レンズ、屈折率=1.67。
PC1:プラスチックレンズMRA表面にメタクリル系樹脂からなるコーティング層
を有するレンズ(フォトクロミック光学基材)。
〔PC1の作製方法〕
ラジカル重合性単量体である平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン/ポリエチレングリコールジアクリレート 平均分子量532)/トリメチロールプロパントリメタクリレート/ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート/グリシジルメタクリレートを、それぞれ40質量部/15質量部/25質量部/10質量部/10質量部の配合割合で配合した。次に、このラジカル重合性単量体の混合物100質量部に対して、下記フォトクロミック化合物を3重量部加え、70℃で30分間の超音波溶解を実施した。
Figure 2018027992
その後、得られた組成物に重合開始剤であるBASF株式会社製 Irgacure1870:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルーペンチルフォスフィンオキサイドの混合物(重量比3:7)を0.35質量部、安定剤であるビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを5質量部、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを3質量部、シランカップリング剤であるγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを7質量部、及びレベリング剤である東レ・ダウコーニング株式会社製シリコーン系界面活性剤 L−7001を0.1質量部添加し、十分に混合することによりフォトクロミック硬化性組成物を調製した。
プラスチック製光学基材として、MRA(チオウレタン系樹脂プラスチックレンズ、屈折率=1.60)を用い、このプラスチック製光学基材をアセトンで十分に脱脂し、50℃の5%水酸化ナトリウム水溶液で4分間処理、4分間の流水洗浄、そして40℃の蒸留水で4分間洗浄した後、70℃で乾燥させた。
次いで、プライマーコート液として、竹林化学工業株式会社製湿気硬化型プライマー タケシールPFR402TP−4及び酢酸エチルをそれぞれ50質量部となるように調合し、更にこの混合液に対して東レ・ダウコーニング株式会社製レベリング剤 FZ−2104を0.03質量部添加し、窒素雰囲気下で均一になるまで充分に撹拌した液を用いた。
このプライマー液を、MIKASA製スピンコーター1H−DX2を用いて、レンズMRA表面にスピンコートした。このレンズを室温で15分間放置することにより、膜厚7μmのプライマー層を有するレンズ基材を作成した。
次いで、前述のフォトクロミック硬化性組成物 約1gを、前記プライマー層を有するレンズ基材の表面にスピンコートした。前記フォトクロミック硬化性組成物よりなる塗膜が表面にコートされたレンズに、窒素ガス雰囲気中で、レンズ表面の405nmにおける出力が150mW/cmになるように調整したフュージョンUVシステムズ社製のDバルブを搭載したF3000SQを用いて、3分間光照射し、塗膜を硬化させた。その後、さらに110℃の恒温器にて、1時間の加熱処理を行うことでフォトクロミックコート層を形成した。得られるフォトクロミックコート層の膜厚はスピンコートの条件によって調整が可能である。該フォトクロミックコート層の膜厚は、40±1μmとなるように調整した。
(2)コーティング組成物用成分
〔無機酸化物微粒子(A)〕
A1:五酸化アンチモンのメタノール分散ゾル。固形分濃度(五酸化アンチモン微粒
子の濃度) 30.5質量%。pH(1+1)5.3。
A2:酸化スズ17.7質量%、酸化ジルコニウム12.7質量%、二酸化ケイ素1
5.4質量%、酸化チタン(ルチル型)54.2質量%を含む複合無機酸化物微粒子の
メタノール分散ゾル。固形分濃度(複合無機酸化物微粒子の濃度)30.0質量%。p
H(1+1)5.0。
A3:酸化スズ77.6質量%、酸化ジルコニウム11.7質量%、五酸化アンチモ
ン7.0質量%、二酸化ケイ素3.7質量%を含む複合無機酸化物微粒子のメタノール
分散ゾル。固形分濃度(複合無機酸化物微粒子の濃度)30.6質量%。pH(1+1
)8.3。
A4:酸化スズ14.2質量%、酸化ジルコニウム74.6質量%、二酸化ケイ素1
1.1質量%を含む複合無機酸化物微粒子のメタノール分散ゾル。固形分濃度(複合無
機酸化物微粒子の濃度)38.5質量%。pH(1+1)5.0。
A5:二酸化ケイ素のみからなる微粒子のメタノール分散ゾル。固形分濃度(二酸化
ケイ素微粒子の濃度)30.0質量%。pH(1+1)4.8。
A6:水分散酸化セリウム微粒子(多木化学製ニードラールU−15)。固形分濃度
(酸化セリウム微粒子の濃度)15.0質量%(酢酸2質量%、水83質量%含有)。
pH(1+1)3.0。
〔加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)〕
BSE:1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン。
GTS:γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
GDS:γ―グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン。
TEOS:テトラエトキシシラン
〔水又は酸水溶液(C)〕
C1;0.05N塩酸水溶液。
C2;蒸留水。
〔硬化触媒(D)〕
アルミニウムを中心金属とする錯体
D1:トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)(アセチルアセト
ナート錯体)。
〔有機溶媒(E)〕
E1:メタノール。
E2:t−ブタノール。
E3:ジアセトンアルコール。
E4:エチレングリコールイソプロピルエーテル。
E5:プロピレングリコールモノメチルエーテル。
E6:アセチルアセトン。
〔芳香族アルコール(F)〕
F1:2−メチル−4−フェニル−2−ブタノール(沸点;121℃)
F2:3,4−ジクロロベンジルアルコール(沸点;148−151℃)
F3:フルフリルアルコール(沸点;170℃)
F4:2−フェニル−2−プロパノール(沸点;202℃)
F5:ベンジルアルコール(沸点;204.7℃)
F6:1−フェニル−2−メチル−2−プロパノール(沸点;215℃)
F7:4−メチルベンジルアルコール(沸点;217℃)
F8:フェネチルアルコール(沸点;219−221℃)
F9:2−クロロベンジルアルコール(沸点;230℃)
F10:o−クロロベンジルアルコール(沸点;230℃)
F11:2−フェノキシエタノール(沸点;245.2℃)
F12:4−メトキシベンジルアルコール(沸点;259℃)
実施例1
〔コーティング剤1の製造〕
加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)としてGTS 56.3質量部、有機溶媒(E)としてE2 17.0質量部、E3 56.0質量部、芳香族アルコール(F)としてF1 30.0質量部、さらにシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング株式会社製L7001)0.16質量部を加え撹拌混合した。得られた溶液を撹拌しながら、水又は酸水溶液(C)としてC1 13.0質量部、C2 8.0質量部を液温が50℃を超えないように注意しながら加え、添加終了後、継続して3時間撹拌した。その後、硬化触媒(D)としてD1 3.0質量部を加え、1時間撹拌混合した。次いで、無機酸化物微粒子(A)としてA1 150質量部(五酸化アンチモン微粒子45.8質量部、メタノール104.2質量部)を加え、室温で24時間撹拌混合した。
実施例2〜31、比較例1
〔コーティング剤2〜32の製造〕
表1、及び表2に示す無機酸化物微粒子(A)、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)、水又は酸水溶液(C)、硬化触媒(D)、有機溶媒(E)、芳香族アルコール(F)を用いた以外は、コーティング剤1と同様な方法で製造した。配合の組成を表1、及び表2に示した。なおコーティング剤2〜31が実施例2〜31に、コーティング剤32が比較例1に各々該当する。
Figure 2018027992
Figure 2018027992
実施例32
厚さが約2mmの光学基材(レンズ基材)MRAを、50℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、超音波洗浄器を用いて、5分間アルカリエッチングを行った。アルカリエッチング後、水道水、及び50℃の蒸留水で順次洗浄し、残余のアルカリ分を取り除いた後、室温になるまで約10分間放置した。このレンズ基材に、コーティング剤1を25℃で、引き上げ速度15cm/分の速さで、ディップコートした。この後、70℃のオーブンにて15分間予備硬化した後、110℃で2時間の硬化を行い、光学基材(レンズ基材)MRAの両面に、それぞれ2.1μmの厚みでハードコート層が形成された光学物品(ハードコートレンズ)を得た。ハードコート層の屈折率は、1.57であった。
〔光学物品の評価結果〕
この光学物品(ハードコートレンズ)について、外観、煮沸密着性試験、スチールウール耐擦傷性、耐候密着性について評価を行ったところ、外観A、煮沸密着性:5時間以上、スチールウール耐擦傷性:A、耐候密着性:288時間以上であった。この結果を表6に示した。各評価については、下記の方法で行った。
(外観)
コーティング液をプラスチックレンズにディップコートした際に生じる、レンズ下部の液溜り、及びレンズとレンズ保持治具との接触部に見られるはじきを、目視により評価した。レンズ保持治具は、レンズ最下端を中心に左右に1箇所ずつ、さらに上部に1箇所の保持部を有する3点固定式の治具を用いた。評価基準は、以下の通りである。
A:液溜り、及びはじきがほとんど見られない。
B:液溜り、及びはじきが、レンズエッジから0.5mm以内に見られる。
C:液溜り、及びはじきが、レンズエッジから1.0mm以内に見られる。
D:液溜り、及びはじきが、レンズエッジから1.5mm以内に見られる。
E:液溜り、及びはじきが、レンズエッジから1.5mmを超える部分に見られる。
(煮沸密着性試験)
得られた光学物品(ハードコートレンズ)を沸騰させた蒸留水に入れ、1時間毎にハードコートレンズの密着性を評価した。試験評価は、試験前と試験1時間毎にハードコート膜とレンズの密着性をJISD−0202に準じてクロスカットテープ試験によって行った。即ち、カッターナイフを使い、ハードコート膜面に約1mm間隔に切れ目を入れ、マス目を100個形成させる。その上にセロファン粘着テープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標))を強く貼り付け、次いで、表面から90°方向へ一気に引っ張り剥離した後、ハードコート膜が残っているマス目を測定した。評価結果は、残っているマス目が90未満時の試験時間を記載した。例えば、3時間と表記されている場合、促進3時間後のクロスカットテープ試験で残っているマス目が90未満となったことを意味する。また、促進5時間でも残っているマス目が90以上だった場合は、5時間以上と記載した。
(スチールウール耐擦傷性)
スチールウール(日本スチールウール株式会社製ボンスター#0000番)を用い、3kgの荷重を加えながら、10往復、光学物品表面(ハードコート膜表面)を擦り、傷ついた程度を目視で評価した。評価基準は次の通りである。
A:傷が付かなかい(目視で傷が確認できなかった場合)。
B:ほとんど傷が付かない(目視で1以上5本未満の擦傷がある場合)。
C:極わずかに傷が付く(目視で5本以上10本未満の擦傷がある場合)。
D:傷が付く(目視で10本以上の擦傷がある場合)。
E:ハードコート膜の剥離が生じている。
(耐候密着性試験)
得られた光学物品(ハードコートレンズ)を、Q−LAB製QUV Accelerated Weathering Testersを用い、放射強度が0.89W/cm2(340nm)下で8時間放置し(レンズ表面温度約60℃)、その後加湿下で4時間放置し(レンズ表面温度約60℃)、この試験を2サイクル(計24時間)毎に評価を行い、最大288時間試験を行った。試験評価は、試験前と試験24時間毎にハードコート膜とレンズの密着性をJISD−0202に準じてクロスカットテープ試験によって行った。即ち、カッターナイフを使い、ハードコート膜面に約1mm間隔に切れ目を入れ、マス目を100個形成させる。その上にセロファン粘着テープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標))を強く貼り付け、次いで、表面から90°方向へ一気に引っ張り剥離した後、ハードコート膜が残っているマス目を測定した。評価結果は、残っているマス目が90未満時の試験時間を記載した。例えば、100時間と表記されている場合、促進100時間後のクロスカットテープ試験で残っているマス目が90未満となったことを意味する。また、促進288時間でも残っているマス目が90以上だった場合は、288時間以上と記載した。
以上の結果を表3に示した。
実施例33〜186
表1、及び表2に示す組成物から得られたコーティング剤2〜31、および光学基材(レンズ基材)を使用して、実施例1と同様の方法でハードコート層を有するハードコートレンズを作製し、その評価を行った。評価結果を表3〜表7に示した。
Figure 2018027992
Figure 2018027992
Figure 2018027992
Figure 2018027992
Figure 2018027992
比較例2〜6
表2に示すコーティング剤32、および光学基材(レンズ基材)を使用して、実施例1と同様の方法でハードコート層を有するハードコートレンズを作製し、その評価を行った。評価結果を表8に示した。
Figure 2018027992
前記実施例から明らかなように、本発明の無機酸化物微粒子(A)、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)、水又は酸水溶液(C)、硬化触媒(D)、水溶性有機溶剤(E)、及び芳香族アルコール(F)を配合させることにより、外観、煮沸密着性、耐擦傷性、及び耐候密着性に優れたハードコート層を形成することができた。それに対し、比較例1〜5においては芳香族アルコール(F)を含まないため、十分な耐候密着性を得ることが出来なかった。

Claims (10)

  1. 無機酸化物微粒子(A)、加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)、水又は酸水溶液(C)、硬化触媒(D)、有機溶剤(E)、及び芳香族アルコール類(F)を含むコーティング組成物。
  2. 前記芳香族アルコール類(F)が、前記無機酸化物微粒子(A)と前記加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)との合計量100質量部に対して、3〜100質量部の量で含んでいることを特徴とする請求項1記載のコーティング組成物。
  3. 前記芳香族アルコール類(F)の沸点が、100〜300℃である請求項1記載のコーティング組成物。
  4. 前記芳香族アルコール類(F)がベンジルアルコール、もしくは2−フェニル−2−プロパノールである請求項1記載のコーティング組成物。
  5. 前記無機酸化物微粒子(A)が、Ti、Zr、Sn、及びSbからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含む無機酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のコーティング組成物。
  6. 前記無機酸化物微粒子(A)と前記加水分解性基含有有機ケイ素化合物(B)との合計量100質量部当たり、水又は酸水溶液(C)を1〜50質量部、硬化触媒(D)を0.1〜5.0質量部、有機溶媒(E)を50〜500質量部、芳香族アルコール類(F)を3〜100質量部含むことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のコーティング組成物。
  7. 硫黄を含有するプラスチック製光学基材上に、請求項1〜6の何れかに記載のコーティング組成物を硬化させて得られるハードコート層を有する光学物品。
  8. 前記プラスチック製光学基材が、フォトクロミック光学基材である請求項7に記載の光学物品。
  9. 前記フォトクロミック光学基材が、プラスチック製光学基材上に、重合性単量体、及びフォトクロミック化合物を含む重合硬化性組成物を硬化させて得られるフォトクロミックコート層を有するものであり、該フォトクロミックコート層上にハードコート層が形成されてなる請求項8に記載の光学物品。
  10. 前記プラスチック製光学基材が、染料を含む光学基材である請求項7に記載の光学物品。
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