しかしながら、特許文献1のような従来の切断具では、刀身の切っ先が常に露出しているため、持ち歩きの際、切っ先に触れて怪我をする虞があった。すなわち、従来の切断具は、安全性に十分に配慮されていないことが問題であった。これに対し、刃体にキャップなどを着脱することが一般的に行われているが、キャップの紛失や着脱の手間を踏まえると、作業性が低下することが考えられる。よって、その作業性を犠牲にせずに、作業上の安全性を高めた切断具が求められている。
本発明の目的は、安全に使い易いナイフ装置、及び、ナイフ(切断具)の作業上の安全性を高める安全装置を提供することにある。
請求項1に記載のナイフ装置は、長手方向に沿って基端から先端まで延在する刃体と、
前記刃体先端を少なくとも被覆する被覆部を有し、長手方向に沿ってスライド式に前記刃体に外装支持され、前記被覆部で前記刃体先端を被覆する先端被覆位置と、前記被覆部から前記刃体先端が突出した先端露出位置との間を移動可能に構成されたカバー体と、を備え、
前記カバー体が前記先端被覆位置に位置する際、前記カバー体は、前記カバー体の前記先端露出位置へ移動が規制された第1の姿勢、及び、前記カバー体の前記先端露出位置へ移動が許容された第2の姿勢に相互に変位可能であり、前記カバー体を前記刃体側に押圧することによって前記カバー体が前記第1の姿勢から前記第2の姿勢に変位することを特徴とする。
請求項2に記載のナイフ装置は、請求項1に記載のナイフ装置において、前記カバー体には、前記刃体先端と当接して、前記第1の姿勢の前記カバー体の前記先端露出位置への移動を規制する規制当接部が形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載のナイフ装置は、請求項2に記載のナイフ装置において、前記カバー体には、前記刃体先端が通過可能な通口が設けられているとともに、前記通口に隣接して前記規制当接部が形成されており、
前記カバー体が前記第1の姿勢をなすときに前記規制当接部が前記刃体先端に対向して位置し、前記カバー体が前記第2の姿勢をなすときに前記通口が前記刃体先端に対向して位置することを特徴とする。
請求項4に記載のナイフ装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載のナイフ装置において、前記カバー体を前記先端被覆位置に留めるべく、前記カバー体を前記第1の姿勢に維持する維持手段を備えることを特徴とする。
請求項5に記載のナイフ装置は、請求項4に記載のナイフ装置において、前記維持手段は、前記カバー体を前記刃体の一方の側面に近接又は離間させるように作用することで前記カバー体を前記第1の姿勢に維持することを特徴とする。
請求項6に記載のナイフ装置は、請求項5に記載のナイフ装置において、前記維持手段は、前記カバー体の側壁に配置され、前記刃体の一方の側面に磁着可能な磁着部を備えることを特徴とする。
請求項7に記載のナイフ装置は、請求項1から6のいずれか一項に記載のナイフ装置において、前記カバー体の被覆部は、前記刃体の基端側を覆う基端側部位と、前記刃体の先端を覆う先端側部位と、前記基端側部位と前記先端側部位との間で前記刃体の刃先を露出させる窓部を有することを特徴とする。
請求項8に記載のナイフ装置は、請求項7に記載のナイフ装置において、前記窓部は、電線管を切断可能な幅で前記刃先を部分的に露出させ、
前記カバー体の基端と前記刃体の基端とが、前記カバー体のスライド移動のストローク量を構成するように離間していることを特徴とする。
請求項9に記載のナイフ装置は、長手方向に沿って基端から先端まで延在する刃体と、
前記刃体先端を少なくとも被覆する被覆部を有し、長手方向に沿ってスライド式に前記刃体に外装支持され、前記被覆部で前記刃体先端を被覆する先端被覆位置と、前記被覆部から前記刃体先端が突出した先端露出位置との間を移動可能に構成されたカバー体と、を備え、
前記カバー体の基端と前記刃体の基端とが、前記カバー体のスライド移動のストローク量を構成するように離間し、前記カバー体が前記刃体の基端に近接移動することで前記カバー体が前記先端露出位置に移動可能であり、
前記カバー体の前記先端被覆位置において、前記被覆部と前記刃体基端との間で前記刃体の刃先の一部が露出していることを特徴とする。
請求項10に記載のナイフ装置は、請求項9に記載のナイフ装置において、前記ナイフ装置は、前記先端被覆位置にカバー体を留める制止手段と、前記制止手段による制止を解除して前記カバー体をスライド移動可能とする制止解除手段とを備えることを特徴とする。
請求項11に記載のナイフ装置は、請求項1から10のいずれか一項に記載のナイフ装置において、前記カバー体には、前記カバー体が前記刃体の先端から離脱することを防止する抜け止め手段が設けられていることを特徴とする。
請求項12に記載のナイフ装置は、請求項1から11のいずれか一項に記載のナイフ装置において、前記カバー体を前記刃体の先端側へと付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする。
請求項13に記載の安全装置は、長手方向に沿って基端から先端まで延在する刃体を備えるナイフに外装支持される安全装置であって、
前記刃体先端を少なくとも被覆する被覆部、及び、長手方向に沿ってスライド式に前記刃体を内装支持するための支持部を有するカバー体を備えてなり、
前記カバー体は、前記ナイフを内装支持した状態で、前記被覆部で前記刃体先端を被覆する先端被覆位置と、前記被覆部から前記刃体先端が突出した先端露出位置との間を移動可能に構成され、
前記カバー体が前記先端被覆位置に位置する際、前記カバー体は、前記カバー体の前記先端露出位置への移動が規制された第1の姿勢、及び、前記カバー体の前記先端露出位置への移動が許容された第2の姿勢に相互に変位可能であり、前記カバー体を前記刃体側に押圧することによって前記カバー体が前記第1の姿勢から前記第2の姿勢に変位することを特徴とする。
請求項1に記載のナイフ装置によれば、カバー体がスライド式に刃体に外装支持され、カバー体の被覆部が刃体先端を少なくとも被覆可能である。該カバー体は、被覆部で刃体先端を被覆する先端被覆位置と、被覆部から刃体先端が突出した先端露出位置との間を移動可能に構成されている。そして、カバー体が第1の姿勢で先端被覆位置に位置する場合、カバー体の先端露出位置へ移動が規制される。すなわち、カバー体が第1の姿勢をなすと、カバー体により刃体先端が被覆及び保護された状態が維持される。これにより、当該ナイフ装置を携帯する際、刃体先端が原因となって怪我をすることが抑えられる。他方、カバー体を刃体側に押圧することによってカバー体が第1の姿勢から第2の姿勢に変位する。該カバー体が第2の姿勢で先端被覆位置に位置する場合、カバー体の先端露出位置へ移動が許容される。すなわち、カバー体の押圧操作によってカバー体を第1の姿勢から第2の姿勢へと簡単に切り替えることができる。そして、第2の姿勢のカバー体を刃体の基端側にスライドさせることで、刃体先端をカバー体から露出させて切断作業に使用可能な形態に迅速且つ簡単に変更することができる。したがって、本発明のナイフ装置は、その作業性を犠牲にせずに、作業上の安全性を高めたものである。
請求項2に記載のナイフ装置によれば、請求項1の発明の効果に加えて、カバー体の規制当接部と刃体先端との当接によって、カバー体のスライドを簡易な構造で規制することができる。
請求項3に記載のナイフ装置によれば、請求項2の発明の効果に加えて、第2の姿勢をなすカバー体の通口を介して刃体先端をカバー体から相対的に前進移動させることにより、刃体先端を露出させることができる。そして、第1の姿勢のカバー体に規制当接部が刃体先端に対向して位置し、且つ、第2姿勢のカバー体に通口が刃体先端に対向して位置する(規制当接部が刃体先端に対向しない)ように、通口に隣接して規制当接部を形成したことにより、カバー体のスライドを簡易な構造で規制することができる。
請求項4に記載のナイフ装置によれば、請求項1から3のいずれかの発明の効果に加えて、維持手段によってカバー体を第1の姿勢に維持し、カバー体を先端被覆位置に留めることが可能である。すなわち、刃体先端をカバー体で被覆した状態を安定的に維持し、不意に刃体先端が突出することを抑えることができる。
請求項5に記載のナイフ装置によれば、請求項4の発明の効果に加えて、カバー体を刃体の一方の側面に近接又は離間させるように付勢することでカバー体が第1の姿勢に維持される。そして、この付勢力に抗して、カバー体を刃体の一方又は他方の側面に押圧することにより、カバー体を第2の姿勢に簡単に変位させることができる。
請求項6に記載のナイフ装置によれば、請求項5の発明の効果に加えて、磁着部の磁力によってカバー体側壁が刃体の一方の側面に吸着されることにより、カバー体が第1の姿勢に維持される。そして、この磁気的な引力に抗して、カバー体の側壁を刃体の他方の側面に押圧することにより、刃体と磁着部とを引き離し、カバー体を第2の姿勢に簡単に変位させることができる。
請求項7に記載のナイフ装置によれば、請求項1から6のいずれかの発明の効果に加えて、被覆部の先端側部位及び基端側部位が、刃体先端とともに基端側を覆うことにより、刃先をより安全に保護することができる。そして、被覆部の基端側部位と先端側部位の間で窓部を介して刃先が露出していることから、カバー体を先端被覆位置に配置した状態であっても、窓部を介して対象を安全に切断することができる。
請求項8に記載のナイフ装置によれば、請求項7の発明の効果に加えて、該窓部から部分的に露出した刃先によって電線管を切断することが可能である。また、カバー体の基端と刃体の基端とが離隔していることから、被覆部の基端側部位によってカバー体のスライド移動が妨げられることがない。したがって、刃体先端と基端側とがカバー体で被覆された状態で、電線管を安全に切断することが可能である。
請求項9に記載のナイフ装置によれば、カバー体がスライド式に刃体に外装支持され、カバー体の被覆部が刃体先端を少なくとも被覆可能である。該カバー体は、被覆部で刃体先端を被覆する先端被覆位置と、被覆部から刃体先端が突出した先端露出位置との間を所定のストローク量で移動可能に構成されている。よって、所定のストローク量の範囲内で、カバー体を刃体の基端側にスライドさせることで、刃体先端をカバー体から露出させて切断作業に使用可能な形態に迅速且つ簡単に変更することができる。さらに、カバー体の先端被覆位置において、被覆部と刃体基端との間で刃体の刃先の一部が露出していることにより、刃体の先端を露出させないまま、対象を切断することが可能である。したがって、本発明のナイフ装置は、その作業性を犠牲にせずに、作業上の安全性を高めたものである。
請求項10に記載のナイフ装置によれば、請求項9の発明の効果に加えて、制止手段によって、カバー体を先端被覆位置に安全に留めることができる。他方、刃体先端を先端露出位置に移動させるには、制止解除手段を操作してカバー体をスライド移動可能とすることができる。すなわち、制止手段及び制止解除手段の操作により、カバー体が不意に移動して刃体先端が露出することが抑えられるので、より高い安全性を発揮することが可能である。
請求項11に記載のナイフ装置によれば、請求項1から10のいずれかの発明の効果に加えて、抜け止め手段によって、カバー体が刃体の先端から離脱することが防止される。
請求項12に記載のナイフ装置によれば、請求項1から11のいずれかの発明の効果に加えて、カバー体を刃体の先端側に付勢する付勢手段によって、先端露出位置に位置するカバー体を先端被覆位置に自動的に移動させることができる。これにより、刃体先端が露出したままとなることを防ぎ、より高い安全性を提供する。
請求項13に記載の安全装置によれば、カバー体が支持部によってスライド式にナイフの刃体を内装支持し、カバー体の被覆部が刃体先端を少なくとも被覆するように構成されている。該カバー体は、ナイフを内装支持した状態で、被覆部で刃体先端を被覆する先端被覆位置と、被覆部から刃体先端が突出した先端露出位置との間を移動可能に構成されている。そして、カバー体が第1の姿勢で先端被覆位置に位置する場合、カバー体の先端露出位置へ移動が規制される。すなわち、カバー体が第1の姿勢をなすと、カバー体により刃体先端が被覆及び保護された状態が維持される。これにより、安全装置によって、ナイフを携帯する際、刃体先端が原因となって怪我をすることが抑えられる。他方、カバー体を刃体側に押圧することによってカバー体が第1の姿勢から第2の姿勢に変位する。該カバー体が第2の姿勢で先端被覆位置に位置する場合、カバー体の先端露出位置へ移動が許容される。すなわち、カバー体の押圧操作によってカバー体を第1の姿勢から第2の姿勢へと簡単に切り替えることができる。そして、第2の姿勢のカバー体を刃体の基端側にスライドさせることで、刃体先端をカバー体から露出させて切断作業に使用可能な形態に迅速且つ簡単に変更することができる。したがって、本発明の安全装置は、ナイフの作業性を犠牲にせずに、作業上の安全性を高めたものである。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態のナイフ装置100の分解斜視図である。図1に示すとおり、ナイフ装置100は、ナイフ110と、該ナイフ110の刃体111に可動式に取り付けられた安全装置としてのカバー体130とを備えてなる。以下、図2乃至図5を参照して、ナイフ装置100の各構成部材について詳細に説明する。
図2(a),(b)は、本実施形態のナイフ装置100の一構成部材であるナイフ110の正面図及び背面図である。図2に示すとおり、ナイフ110は、長手状のハンドル119と、該ハンドル119から延びる平板状の刃体111とを備えてなる。ハンドル119は、使用者がグリップし易いように、所定の長さ及び太さを有し、その上側面及び下側面に凹凸を有している。刃体111は、基端113から先端(切っ先114)まで長手方向に延在し、その基端113でハンドル119に接合されている。本実施形態では、図11に示すように、刃体111の端片がハンドル119内部に埋め込まれて結合されているが、本明細書において「刃体の基端」とは、ハンドル119から露出している部分の基端を意味する。
当該ナイフ110の刃体111は、所定の長さ及び幅を有している。また、刃体111は、磁性金属(本実施形態では鋼材)で形成されてなる。該刃体111の下端縁には、対象を切断するための鋭利な刃先(又はエッジ)112が長手方向に沿って延在している。刃先112は、基端113近傍から先端までの範囲で延在している。そして、刃体111の先端縁が下端側で突出するように傾斜していることで、刃体111の先端に尖った切っ先114が形成されている。該切っ先114は、鋭利なポイントであり、対象を切断又は突き刺し可能である。また、該刃体111の略中央から下端縁にかけて、刃先112を接合する刃付け傾斜部116が形成されている。刃付け傾斜部116は、刃体111の厚みが幅方向下方に向けて連続的に薄くなるようにテーパー形状を有する。つまり、該刃付け傾斜部116により、刃体111の両側面には、刃体111が延在する平面から傾いた傾斜面が形成されている。
また、図2(a)に示すように、刃体111の一方の側面の峰(上端縁)近傍には、目盛りが表示されている。使用者が当該目盛りを読み込むことで対象を切断する長さを簡単に決定することができる。図2(b)に示すように、刃体111の他方の側面の峰(上端縁)近傍には、案内溝115が凹設されている。案内溝115は、基端113近傍から先端側に長手方向に沿って直線的に延在し、先端近傍で終端している。案内溝115は、後述するカバー体130の支持部137のビス137bの軸を収容可能であり、案内溝115の幅はビス137bの軸径とほぼ等しい。つまり、案内溝115は、支持部137を介してカバー体130の刃体111に対する直線的なスライド移動を案内するように機能する。また、案内溝115は、支持部136と協働して、カバー体130がナイフ110から抜け出ることを防止する抜け止め手段としても機能する。
次に、図3乃至図6を参照して、カバー体130について説明する。カバー体130は、ナイフ110の刃体111に外装支持される安全装置として構成されている。換言すると、本発明の安全装置はカバー体130を備えてなる。
カバー体130は、内部に刃体111を貫通配置するための中空の本体と、該カバー体130にナイフ110に内装(内挿)支持するための支持部(抜け止め手段の一部)136と、該カバー体130を刃体111側面に磁着するための磁着部(維持手段)137と、該カバー体130を刃体111に対して変位させるために操作される操作部138と、該カバー体130を刃体111の先端側に付勢する付勢手段139とを備えてなる。本実施形態では、カバー体130は合成樹脂からなるが、例えば、金属等の他の材料で形成してもよい。
図3に示すとおり、カバー体130本体は、長手方向に延びる薄い矩形状の筐体である。該カバー体130は、略水平方向に延在する底壁130aと、該底壁130aから略直角に立設し、略垂直方向に延在する一対の側壁130bと、該一対の側壁130bを連結するとともに底壁130aと略平行に延在する頂壁130cとから構成されている。該カバー体130では、頂壁130cにより上方が閉塞されている。これに対し、該カバー体130の長手方向の先端側の端面が通口133によって開口し、その反対の基端側の端面が基端側開口135によって開口している。
図3及び図4に示すとおり、一対の側壁130bには、下方に開放した半円形状の窓部132が切り欠き形成されている。つまり、一対の底壁130aが長手方向の先端側近傍及び基端側近傍の2箇所において延在し、該一対の底壁130aの間で、カバー体130が窓部132を介して下方に開口している。この窓部132は、電線管Pの少なくとも一部を内挿(切断)可能な幅又は径で構成されている(図16参照)。
すなわち、カバー体130が刃体111に外装支持されたとき、底壁130aが刃体111の刃先112に対向し、一対の側壁130bが刃体111の両側面に対向し、且つ、頂壁130cが刃体111の峰に対向するように延在している。そして、底壁130a及び側壁130bで、刃体111の刃先112の一部とともに切っ先114を側方及び下方から覆う被覆部131が形成されている。該被覆部131は、窓部132を挟んで先端側部位131a及び基端側部位131bに区分けされる。換言すると、先端側部位131a及び基端側部位131bの間に窓部132が位置している。
また、図4(e)、図5(c)及び図6に示すように、カバー体130の先端側端面において、刃体111先端が通過可能な通口133が設けられているとともに、該通口133に隣接して規制当接部134が形成されている。
通口133は、刃体111が通過可能な幅を有するとともに、底壁130aと頂壁130cとの間で延びるスリットであり、略三角形状の下側部位と略矩形状の上側部位を組み合わせた形状を有する。側面視において、底壁130aに隣接する下側部位は略直角三角形状(又はそれに近似する台形状)を有する。そして、その鋭角部が底壁130a側に位置するとともに、長い方の底辺が側壁130bと平行に延在している。すなわち、通口133の下側部位は、片方の側壁130b側に偏って配置されている。換言すると、略直角三角形状の規制当接部134が反対側の側壁130bから張り出し、矩形状の通口133の一部を塞いでいる。他方、上側部位において、その上端が狭まるように(規制当接部134の反対側の)片方の側壁130bが若干張り出して傾斜している。
規制当接部134は、側面視において、通口133を部分的に塞ぐようにカバー体130の先端で片方の側壁130b及び底壁130aに一体的に形成された略直角三角形状の張り出しであり、その下端側に向けて張り出し幅が大きい(図4(e)及び図5(c)参照)。また、規制当接部134は、正面視において、上端側に向けて幅広となるように、略直角三角形状に構成されている(図6参照)。すなわち、該規制当接部134は、カバー体130内部で刃体111が一方の側壁130b側に偏って位置するとき(第1の姿勢)に長手方向において刃体111(切っ先114)に対向し、他方、刃体111が他方の側壁130b側に偏って位置するとき(第2の姿勢)に長手方向において刃体111に対向しない形状で構成されている。
図4(a)及び図5(b)に示すように、カバー体130の一方(正面側)の側壁130bには、抜け止め手段の一部として支持部136が設けられている。該支持部136は、窓部132の先端側斜め上で側壁130bに穿設されたビス孔136aと、該ビス孔136aに取着され、軸部が側壁130bを貫通可能なビス136bとから構成されている。図10で後述するとおり、支持部136のビス136bが刃体112の細幅の案内溝115に進入することにより、カバー体130が刃体112にスライド可能且つ抜け止め防止に外装支持される。
図4(a)及び図5(b)に示すように、カバー体130の一方(正面側)の側壁130bには、維持手段として磁着部137が設けられている。該磁着部137は、窓部132の基端側で側壁130b外面の下端近傍に形成された保持ケース137aと、該保持ケース137aに収納及び保持された磁石137bとから構成されている。保持ケース137aは、中空の半球状の外殻であり、磁石137bを内包した状態で側壁130bに接合されている。つまり、磁石137bはカバー体130の側壁130bに一体的に結合されてなる。本実施形態では、磁石137bは、側壁130bを介してカバー体130内部に配置された刃体111に磁着可能な磁力を有する永久磁石からなる。
図4(b),(c),(e)に示すように、カバー体130の他方(背面側)の側壁130bには、使用者が操作するための操作部138が設けられている。該操作部138は、弧状の突条であり、側壁130bの基端縁の一部に突設されている。該操作部138は、使用者の指が引っ掛かり易い凸形状を有している。すなわち、該操作部138は、使用者がカバー体130を押圧することを補助し、且つ、カバー体130を長手方向にスライド移動させることを補助する。
図6に示すように、カバー体130の上端近傍には、カバー体130を刃体111の先端側に付勢する付勢手段139が設けられている。カバー体130内部の上端近傍には、頂壁130cと略平行に隔壁130dが延在している。この隔壁130dは、その略中央部分において開口し、前後に分断されている。そして、頂壁130cと隔壁130dとの間に、付勢手段139を収容するための空間が定められている。該付勢手段139のための収容空間は、カバー体130の長手方向先端側(図6の左側)で閉塞され、基端側(図6の右側)で開放されている。付勢手段139は、カバー体130の収容空間で伸縮可能に配置されたバネ139aと、当該バネ139aの一端(基端側端部)に結合された棒状の長尺部材139bとから構成されている。バネ139aの伸縮運動によって、長尺部材139bは、カバー体130内部に後退移動可能であり、且つ、カバー体130の基端側に突出移動可能である。この長尺部材139bの突出端は、ナイフ110のハンドル119の先端側端面に係合するように下方に屈折し、鉤爪部139dを形成している。また、該長尺部材139bは、カバー体130の先端側の端部で下方に膨出した段差部139cを有している。該段差部139cは、隔壁130dを分断する開口に収容されて、隔壁130dの対向する端面に係合可能に配置されている。つまり、隔壁130d間の開口幅によって、長尺部材139bの可動域が定められている。すなわち、バネ139aの伸縮に伴って、長尺部材139bは長手方向に沿って所定の範囲で移動可能である。そして、バネ139aは、自然長から常に収縮した状態で保持されていることから、長尺部材139bを突出させる方向に常に付勢している。
以上の各構成部材の説明を踏まえて、本実施形態のナイフ装置100の構成をより詳細に説明する。
本実施形態のナイフ装置100では、図7に示すとおり、カバー体130がナイフ110の刃体111に外装支持されている。詳細には、支持部136のビス136bが刃体111の案内溝115内に収容されている(図10(b)参照)。このビス136bの軸部先端は、案内溝115底面に圧接しない程度に案内溝115の内方に突出している。その結果、ビス136bの軸部は、所定長の案内溝115内で長手方向に沿って自由に相対移動可能であるが、ビス136bが案内溝115から離脱することなく、その移動が案内溝115内のみに制限されている。また、ビス136bが案内溝115の先端側の端縁に係止されることにより、ビス136bが案内溝115から離脱して、カバー体130が刃体111の先端から抜け落ちることが防止されている。換言すると、支持部136及び案内溝115が協働して抜け止め手段をなしている。すなわち、支持部136及び案内溝115によって、カバー体130が長手方向に沿ってスライド式且つ抜け止め式に刃体111に支持されている。そして、カバー体130は、被覆部131で刃先112の先端114を被覆する先端被覆位置と、被覆部131から刃先112の先端114が突出した先端露出位置との間を相互に移動可能に構成されている。
図8に示すように、カバー体130は、被覆部131で刃先112の先端114を被覆する先端被覆位置に配置され、その状態が維持されている。すなわち、カバー体130の先端縁がナイフ110の切っ先114よりも前方に位置していることにより、切っ先114が側壁130bによって側方から覆われて安全に保護されている。具体的には、刃先112の先端が被覆部131の先端側部位131aに被覆され、刃先112の基端側部分が被覆部131の基端側部位131bに被覆されている。他方、半円状の窓部132から、刃先112及び刃体111側面の一部が下方及び側方に露出している。窓部132から露出した刃先112は、カバー体130の底壁130aよりも(上方に)後退した位置にある。なお、該窓部132を介した刃先112の露出幅は、電線管P(図16参照)を切断可能であるように定められることが好ましい。さらに、カバー体130の基端と刃体111の基端113(ハンドル119先端面)とが、カバー体130のスライド移動のストローク量(可動域)を構成するように離間している。換言すると、カバー体130は、その基端がハンドル119先端面に当接するまで刃体111に対して後退可能である。本実施形態では、付勢手段139の長尺部材139bの可動域と、上記ストローク量とが対応している。
図11に示すように、当該ナイフ装置100において、付勢手段139のバネ139aが最大限伸張した状態にあり、且つ、さらなる弾性復帰力により長尺部材139bの突出端がナイフ110のハンドル119の先端面を押圧している。すなわち、付勢手段139によって、被覆部131(先端側部位131a)が切っ先114よりも先端側に位置する先端被覆位置にカバー体130が維持(又は付勢)されている。そして、カバー体130が先端側に押圧されているが、ビス136bが案内溝115の先端側の端縁に係止されることにより、カバー体130が刃体111の先端から抜け落ちることが防止されている。
また、図10(a)に示すように、磁着部137が刃体111側面に磁着し、一方の側壁130b内面が刃付け傾斜部116に添って傾斜している。すなわち、カバー体130は、その内部空間における一方の側壁130b側に偏った位置に刃体111を配置することで第1の姿勢をなしている。この第1の姿勢では、図10及び図11に示すように、規制当接部134が切っ先114に対向して位置していることから、カバー体130が基端側に移動すると、規制当接部134及び切っ先114が互いに係合(当接)し、刃体111がカバー体130を係止する。このように、カバー体130が刃体111の基端側に相対移動することが規制されている。換言すると、第1の姿勢では、カバー体130の先端被覆位置から先端露出位置へ移動が規制されている。そして、磁着部137の磁力による牽引力によって、カバー体130の第1の姿勢が維持されている。すなわち、磁着部137は、カバー体130を先端被覆位置に留めるべく、カバー体130を第1の姿勢に維持する維持手段として機能している。
他方、維持手段を解除してカバー体130をスライド可能な状態にするには、使用者がカバー体130を側面(好ましくは操作部138)から押圧すればよい。特には、図9(b)に示すように、ビス136bを回動軸として、磁着部137を刃体111側面から離隔させるようにカバー体130を傾動させ、カバー体130の姿勢を第1の姿勢から第2の姿勢に変位させる。第2の姿勢では、切っ先114が規制当接部134を避けて通孔133に対向するため、刃体111が通孔133を通過可能である。その結果、第2姿勢のカバー体130が基端側にスライド移動可能となる。そして、カバー体130の通口133を介して刃体111先端をカバー体130から相対的に前進移動させるように、操作部138を介してカバー体130を操作することにより、カバー体130を先端露出位置に移動させ、切っ先114を露出させることができる。
続いて、被覆部131から切っ先114が突出し、カバー体130が先端露出位置にある形態のナイフ装置100について説明する。この形態は、切っ先114で対象を切断したり、突き刺したりする際に選択され得る。
図12及び図13(a)に示すように、刃体111がカバー体130の通孔133を通過した状態でカバー体130が基端側に位置することで、刃体111の切っ先114とともに刃先112の先端部位がカバー体130先端縁(被覆部131)から突出して外部に露出している。
より詳細には、支持部136のビス136bが案内溝115に収容された状態(図14(b)参照)でカバー体130が刃体111の基端側にスライドし、付勢手段139のバネ139aが収縮している(図15参照)。図15に示すように、切っ先114が最大限突出した状態(すなわち、バネ139aが最大限収縮した状態)では、付勢手段139の長尺部材139bの突出端の鉤爪部139dが隔壁130dの基端側端面に当接するとともに、長尺部材139の先端側の段差部139cが隔壁130dの先端側端面に当接する。このようにカバー体130が先端露出位置にあるとき、バネ139aが大きく弾性収縮し、付勢手段139によってカバー体130が先端側に復帰するように付勢されている。
また、図13(b)に示すように、カバー体130は、刃体111に対して第1の姿勢とは逆側に傾斜し、第2の姿勢をとっている。具体的には、図14(a)に示すように、磁着部137が刃体111側面から離隔し、他方(磁着部137の反対側)の側壁130b内面が刃付け傾斜部116に添って傾斜している。すなわち、カバー体130は、その内部空間における他方の側壁130b側に偏った位置に刃体111を配置することで第2の姿勢をなしている。この第2の姿勢では、刃体111が規制当接部134の反対側に傾いて、規制当接部134に干渉せずに通孔133を通過した位置(又は通過可能な位置)に配置されている。これにより、カバー体130が刃体111に対して長手方向に相対移動することが許容されている。そして、図14(c)に示すように、通孔133を通過する刃体111の側面と、規制当接部134の側面とが当接又は近接している。つまり、磁着部137によって刃体111が牽引されても、刃体111側面が規制当接部134側面に係止されるため、カバー体130が反対側に傾動することが規制されている。すなわち、刃体111が通孔133を通過した状態では、規制当接部134によって、カバー体130が第1の姿勢に変位することが規制され、第2の姿勢が維持されている。
このように、切っ先114がカバー体130から突出した状態では、刃体111及びカバー体130が相対的にスライド可能であり、且つ、付勢手段139によって、カバー体130が先端露出位置に維持されることなく自然に先端被覆位置に移動するように構成されている。すなわち、本実施形態のナイフ装置100では、使用者がカバー体130を手で押さえることで先端露出位置に維持し、露出した切っ先114で対象を切断及び/又は突き刺し可能となる。
他方、カバー体130を先端露出位置から先端被覆位置に復帰させるには、使用者がカバー体130から手を離すこと(又はカバー体130を保持する力を緩めること)で、付勢手段139の弾性復帰力によってカバー体130が刃体111の先端を越えてスライド移動し、磁着部137の磁気牽引力によってカバー体130が第2の姿勢から第1の姿勢へと自動的に変位する。特には、カバー体130の前進により刃体111が通孔133から離脱して刃体111が規制当接部134から離れると、磁着部137の磁気牽引力によって、カバー体130が第2の姿勢から第1の姿勢へと自然に復帰する。すなわち、使用者がカバー体130から手を離すことにより、ナイフ装置100を簡単に図7の当初形態(切っ先114が被覆された安全な形態)に簡単に復帰させることが可能である。
続いて、図16を参照して、本実施形態のナイフ装置100を用いて電線管Pを安全に切断する方法を説明する。作業現場に机等の作業台がない場合、作業者は電線管Pを太腿の上に置いてカッターやナイフで切断することが一般に行われている。このような場合、従来の切断具では、切断時に勢い余って、電線管を切断した刃体の切っ先が太腿に食い込んで、作業者が大怪我を負ってしまう虞があった。本実施形態では、窓部132から露出した刃先112を効果的に利用することにより、電線管Pを太腿の上でも安全に切断することが可能である。なお、ここで例示する電線管Pは一般的な波付き可撓管である。
具体的には、まず、電線管Pを太腿の上に載置し、ナイフ装置100のハンドル119を把持しつつ、窓部132から露出した刃先112を電線管Pに近づける(図16(a)参照)。次に、窓部132に電線管Pを内挿するように、刃先112を電線管Pに強く押し宛てる。そして、図16(b)に示すように、窓部132の端縁に電線管Pが当接するまで、強い力で刃先112を電線管Pに押し入れる。このとき、切っ先114がカバー体130によって被覆されているとともに刃先112がカバー体130(底壁130a)から上方に後退していることから、使用者がナイフ110で太腿などを傷付けることはほとんどない。そして、図16(c)に示すように、電線管Pを刃先112に対して回転させるように、電線管P又はナイフ110を操作することにより、電線管Pを完全に切断することができる。この回転工程において、窓部132の端縁が円弧状になっていることにより、電線管Pは刃先112に対してスムーズに回転可能である。
また、本実施形態のナイフ装置100の第2の使用方法として、刃体110の根元の刃先112を用いる方法が挙げられる。具体的には、カバー体130が先端被覆位置にあるときに、カバー体130の基端側部位131bとハンドル119先端との間で露出した刃先112を利用して、ケーブルの切断、引き裂き、被覆材の剥ぎ取り等の作業を安全且つ簡単に行うことができる。例えば、この作業に適したケーブルとして、VVF(ビニル絶縁ビニルシースケーブル平形)ケーブルが挙げられる。
なお、本発明のナイフ装置(及び安全装置)は、上記使用方法によって限定されるものではないことは言うまでもない。また、ナイフ110の切っ先114の使用が必要な場合には、カバー体130が先端露出位置にスライド移動されるように当該ナイフ装置100が使用される。
以下、本発明に係る一実施形態のナイフ装置100の作用効果について説明する。
本実施形態のナイフ装置100によれば、安全装置としてのカバー体130がスライド式にナイフ110の刃体111に外装支持され、カバー体130の被覆部131が切っ先114を被覆可能である。該カバー体130は、被覆部131で切っ先114を被覆する先端被覆位置と、被覆部131から切っ先114が突出した先端露出位置との間を移動可能に構成されている。そして、カバー体130が第1の姿勢で先端被覆位置に位置する場合、切っ先114と規制当接部134とが長手方向において対向配置されていることから、カバー体130の先端露出位置へ移動が規制される。また、維持手段(磁着部137)がカバー体130を第1の姿勢に維持することにより、カバー体130が第1の姿勢をなすと、カバー体130により切っ先114が被覆及び保護された状態が安全に維持される。さらに、カバー体130の窓部132を介して露出した刃先112を用いて、電線管P等の対象を安全に切断することが可能である。これにより、当該ナイフ装置100を携帯する際又は対象を切断する際に、刃先112の先端が原因となって怪我をすることが抑えられる。
他方、カバー体130を刃体111側に押圧することによって、維持手段による維持を解除し、カバー体130が第1の姿勢から第2の姿勢に変位する。該カバー体130が第2の姿勢で先端被覆位置に位置する場合、カバー体130の先端露出位置へ移動が許容される。すなわち、カバー体130の押圧操作によってカバー体130を第1の姿勢から第2の姿勢へと簡単に切り替えることができる。そして、第2の姿勢のカバー体130を刃体111の基端側にスライドさせることで、切っ先114をカバー体130から露出させて切断作業に使用可能な形態に迅速且つ簡単に変更することができる。さらに、カバー体130は付勢手段139により先端被覆位置に付勢されていることにより、カバー体130から手を離すと先端被覆位置へと自動的に復帰し、切っ先114がカバー体130によって安全に保護される。
例えば、従来式のキャップで刃先を保護するような製品では、キャップの脱着が面倒であったり、キャップをなくしたりする虞があった。これに対し、本実施形態のナイフ装置100では、カバー体130を押圧・スライド操作することで、切っ先114を簡単に露出及び被覆させることが可能であることから、従来と比べて、その使い易さを追求したものである。
したがって、本実施形態のナイフ装置100は、その作業性を犠牲にせずに、作業上の安全性を高めたものである。
[変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。なお、各変形例において、三桁で示される構成要素において下二桁が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
(1)上記実施形態のナイフ装置100には、抜け止め手段136、維持手段磁着部137、付勢手段139が設けられているが、本発明はこれに限定されず、各手段の一部又は全部が省略されてもよい。
(2)上記実施形態のナイフ装置100では、カバー体130に窓部132が形成されているが、本発明はこれに限定されず、窓部132が省略されてもよい。この場合、カバー体が先端被覆位置にある場合、刃先の外部に露出する部分がより少なくなるため、より高い安全を発揮することができる。そして、対象を切断する際には、カバー体を先端露出位置に移動させることが必須となる。また、本発明の通口及び規制当接部の形状は、上記実施形態に限定されない。すなわち、通口は、少なくとも切っ先が通過可能な幅及び長さを有せばよく、その形状は任意に選択され得る。また、規制当接部は、カバー体が第1姿勢にあるときに、少なくとも刃体の一部を係止可能であればよく、その形状は任意に選択され得る。例えば、規制当接部が刃体の側方から当接し、高い摩擦力によって刃体の移動を規制してもよい。
(3)上記実施形態のナイフ装置100では、カバー体130がナイフ110の刃体111の側面、底面及び頂面を覆う筐体状に形成されているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の「被覆部」は、切っ先により使用者が怪我をする虞を軽減すべく、刃先先端(切っ先)を少なくとも側方又は下方のいずれかから覆うことができればよい。例えば、本発明において、カバー体の頂壁を省略したり、窓部をより大きくしたり、又は、刃体先端のみを被覆可能な短い帯状にカバー体を構成してもよい。
(4)上記実施形態のナイフ装置100では、維持手段として磁性金属である刃体111を牽引する磁着部137が用いられたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、維持手段は、カバー体を第1の姿勢に維持するように付勢(作用)可能であれば、種々の手段から選択され得る。
例えば、図17に示すナイフ装置200は、磁石の反発力を利用した維持手段237を備える。維持手段237は、カバー体230の側壁230b外面に形成された中空の保持ケース237aと、該保持ケース237の内部に収容及び保持された第1の磁石237bと、刃体211の側面に埋め込まれた第2の磁石237cとを備えている。図17(a)に示すように、カバー体230が先端被覆位置にあるとき、第1の磁石237bと第2の磁石237cとが互いに反発するように対向配置されている。そして、第1の磁石237bと第2の磁石237cとの間の斥力が、カバー体230の(維持手段が形成された)一方の側壁230bを刃体211側面から離反するように作用(付勢)している。これにより、カバー体230が第1の姿勢に維持されている。このとき、規制当接部234は刃体211の切っ先214に対向し、カバー体230の基端側へのスライド移動が規制されている。そして、図17(b)に示すように、使用者がカバー体230を側方から押圧すると、斥力に抗して第1の磁石237bと第2の磁石237cとが近接して、カバー体230が第2の姿勢に変位する。この第2の姿勢では、長手方向において刃体211が通口233を通過可能に位置していることから、カバー体230は先端露出位置に自由に移動することができる。
例えば、図18に示すナイフ装置300は、弾性部材の弾性力を利用した維持手段337を備える。維持手段337は、カバー体330の側壁330b外面に形成された中空の保持ケース337aと、該保持ケース337の内部に弾性収縮した状態で収容及び保持された弾性体337bとを備えている。図18(a)に示すように、カバー体330が先端被覆位置にあるとき、弾性体337bが刃体311の側面に作用し、刃体311を(維持手段が形成された)一方の側壁330bから離反するように付勢している。これにより、カバー体330が第1の姿勢に維持されている。このとき、規制当接部334は刃体311の切っ先314に対向し、カバー体330の基端側へのスライド移動が規制されている。そして、図18(b)に示すように、使用者がカバー体330を側方から押圧すると、弾性体337が収縮して、一方の側壁330bが対向する刃体311側面に近接して、カバー体330が第2の姿勢に変位する。この第2の姿勢では、長手方向において刃体311が通口333を通過可能に位置していることから、カバー体330は先端露出位置に移動することができる。
(5)本発明のナイフ装置は、カバー体が先端被覆位置及び先端露出位置の間をスライド移動し、先端被覆位置で刃体先端を被覆可能であればよく、上記実施形態のナイフ装置100の構成を全て備えていなくてもよい。例えば、本発明の技術範囲には、カバー体が第1の姿勢及び第2の姿勢に傾動しない形態をも含まれ得る。また、ナイフ装置は、規制当接部のかわりに又は規制当接部に追加して、先端被覆位置にカバー体を留める制止手段と、制止手段による静止を解除してカバー体をスライド移動可能とする制止解除手段とを備えてもよい。例えば、制止手段及び制止解除手段は、上記実施形態のビス136bの代わりに用いた長尺ビスであってもよい。すなわち、該長尺ビスの軸先端が案内溝の底面に圧接するまで該長尺ビスを強く締めることにより、制止手段としてカバー体を先端被覆位置に安全に制止することが可能である。他方、制止解除手段として、長尺ビスを緩めることによって、長尺ビスの軸先端と案内溝の底面とを離隔させ、制止を解除することができる。あるいは、上記実施形態の長尺部材139bを、最大突出位置で固定及び固定解除可能な形態とし、長尺部材で突っ張ってカバー体を制止させるように、該長尺部材を制止手段及び制止解除手段として機能させてもよい。
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。