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JP2018008919A - アゾ化合物の製造方法 - Google Patents

アゾ化合物の製造方法 Download PDF

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JP2018008919A
JP2018008919A JP2016140952A JP2016140952A JP2018008919A JP 2018008919 A JP2018008919 A JP 2018008919A JP 2016140952 A JP2016140952 A JP 2016140952A JP 2016140952 A JP2016140952 A JP 2016140952A JP 2018008919 A JP2018008919 A JP 2018008919A
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充生 赤田
Atsuo Akata
充生 赤田
山本 俊一
Shunichi Yamamoto
俊一 山本
勇太 仁科
Yuta Nishina
勇太 仁科
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Nisina Materials Co Ltd
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Nisina Mat Co Ltd
Nisina Materials Co Ltd
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Abstract

【課題】ヒドラゾ化合物のヒドラゾ基を酸化的に脱水素する際に、これに酸素もしくは酸素を含むガスを作用させることで収率良くアゾ化合物が製造できる方法を提供する。【解決手段】ヒドラゾ化合物に、バナジウム化合物またはセリウム化合物、および溶媒の存在下で、これに酸素もしくは酸素を含むガスを作用させることでアゾ化合物を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は、アゾ化合物の製造方法に関する。
アゾジカルボキサミドや2,2’−アゾビスイソブチロニトリルに代表されるアゾ化合物は、合成樹脂やゴムの化学発泡剤、もしくはポリマー製造におけるラジカル重合反応の開始剤として従来から大量に使用され、人々が豊かな生活を営むのを広く支えてきた。また、芳香族アゾ化合物の中には、例えばp−フェニルアゾフェノールをはじめアゾ染料として有用な化合物が多い。さらには、アゾジカルボン酸ジエチル等のアゾエステル類はいわゆる光延反応の反応剤として、近年、有機ファインケミカルの製造分野において用途が拡大しているアゾ化合物である。
アゾ化合物の製造においては、主要な工程が対応するヒドラゾ化合物のヒドラゾ基を酸化的に脱水素する方法に基づく。当初は、重クロム酸塩や過マンガン酸塩を化学量論的に使用する酸化方法が採用されていたが、製品中への重金属イオンの残留や、使用後における有害な金属塩廃棄物を大量に処理しなければならないことが避けられず、その後、当該酸化的脱水素の方法の改良が営々となされてきた。
例えば、アゾジカルボキサミドや2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが最も大規模に製造されるアゾ化合物と見なされる。これらはそれぞれ、ヒドラゾジカルボキサミドまたは2,2’−ヒドラゾビスイソブチロニトリルを触媒量の金属臭素化合物を存在させた水もしくは低級アルコールなどの溶媒中で、これに化学量論的に塩素ガスを吹き込むことで製造される(例えば特許文献1参照)。これが最も工業的とされて今日に至っている方法であるが、劇物である塩素を化学量論的に必要とすることに加え、塩素を酸化剤に用いるその必然として、塩化水素が化学量論的に副生する。そのため、実際の製造工程では、これを排出するために大規模な中和設備と大量の中和剤を必要とする上に、副生する塩を含む廃水が目的物の幾重量倍も環境に排出される欠点がある。
一方、上記欠点の解決を試みる技術提案が多数なされているが、その中の一部に、酸素を酸化剤とする例がある。すなわち、バナジウムとモリブデンを金属イオンとして持つヘテロポリ酸塩触媒を存在させた希硫酸中で、ヒドラゾジカルボキサミドを酸素で酸化したとするものであるが(例えば非特許文献1参照)、アゾジカルボキサミドが「ある量(some)」生成したと記すのみで、反応の収率、選択性あるいは物質収支などについては一切示されていない。
また、ヒドラゾベンゼンをピリジン存在下のトルエン溶媒中で臭化銅を触媒としてアゾベンゼンに酸素酸化した例が示されている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら本例は、電子供与性の基として典型的なフェニル基が窒素原子に直接置換した、即ち、酸化され易さが増したヒドラゾ基をアゾ基に変換する例に限定されたものであって、適用化合物の広がりの観点で極めて狭く限定的である。
また、ヒドラゾジカルボン酸ジエチルを溶媒中で活性炭担持パラジウム触媒を用いてアゾジカルボン酸ジエチルに酸素酸化した例が示されている(例えば、非特許文献3参照)。しかし、触媒として高価で希少な貴金属を用いなければならないことに加えて、触媒が反応系に不溶であることは時に製造プロセスを煩雑にする欠点がある。目的物が系に溶け難い場合には、これと触媒を分離するための工程がさらに必要となるからである。
また、特許文献2では、2,2’−ヒドラゾビスイソブチロニトリルおよびその類縁体を、水性溶媒中で酸素を酸化剤の一つとして用いて対応する2,2’−アゾビスカーボニトリルに変換する方法を請求している。しかしながら、当該文献には前記した塩素ガスを酸化剤とする開示はあるものの、酸素を用いる発明の詳細については説明も例示も一切なされていない。即ち、酸素をどのように用いるか、さらには、鍵となる酸素の活性化手段がどのようかも含めて、当業者にとって発明の要件と認識されるべき情報は全くもって未開示である。
さらには、窒素原子上にフェニル基が置換した、いわゆるヒドラゾベンゼン誘導体を、塩基性アルミナ触媒の存在下に酸素で酸化してアゾベンゼン誘導体を得る製造方法において、酸化工程を無溶媒で行う方法が提案されている(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、本例も先例と同様に酸化され易いヒドラゾ化合物がアゾ化合物に変換できることを示したに過ぎないものであって、技術の適用可能性において極めて限定的である。
特公昭38−22567号公報 特表2004−533472号公報
Journal of Molecular Catalysis,80(1993) L13-L17. Angew. Chem. Int. Ed.,49, 6174(2010). Synth. Commun., 45, 1068(2015). SYNLETT,2124(2007).
前記したように、アゾ化合物の製造において、ヒドラゾ化合物を酸化的に脱水素するプロセスにおいて、工業的には、酸化剤としてもっぱら塩素が用いられているとされる。しかしながら、劇物である塩素は入手と貯蔵・取り扱いに特段の注意を要し、また、塩化水素が化学量論的に副生する。これもまた劇物であって環境への無害化の制約まで含めると、当該方法は解決するべき課題が多い。即ち、環境保全が強く求められ、グリーンで持続可能な製造方法が希求される時代にあって、現行の方法は工業規模で実施し続けるためには改善しなければならない課題が多い。
また、ヒドラゾ化合物の酸化的脱水素において酸素を酸化剤とする例は在るものの、高価な希少金属を触媒とする技術であるか、あるいは、ヒドラゾベンゼンをアゾベンゼンに変換する類の、電子供与性に富んだ置換基を少なくとも一方の窒素原子上に持つ、極めて酸化され易いヒドラゾ基に限定的なものであって、公知の技術は未だ実用性や適用化合物の広がりの観点で限定的であり、解決するべき課題が多い。
そこで、本発明は先の背景技術とその課題認識を基になされたものである。即ち、ヒドラゾ化合物を酸化的に脱水素してアゾ化合物を製造する方法を検討するに際して、酸素もしくは酸素を含むガスを作用させて、高収率でしかも適用対象化合物が広く、かつ、高度に効率的な酸化方法を確立することを目的としてなされた。その結果、広範なヒドラゾ化合物に適用可能で、反応の収率、選択性や効率を損なうことがなく、有害な副生物を生じないためにこれの処理に困ることもない製造方法を見出して本発明を完成した。
前記した課題を解決するために、アゾ化合物の製造方法として、下記式(1)または下記式(2)のヒドラゾ化合物を、バナジウム化合物またはセリウム化合物、および溶媒の存在下で、これに酸素または酸素を含むガスを作用させることで下記式(3)または下記式(4)で表されるアゾ化合物を製造する方法とした。
Figure 2018008919
[式中、RおよびR'は、それぞれ下記の(a)〜(g)のいずれかである。
(a)カルバモイル基、
(b)アルコキシ基が置換しているものも含むアルコキシカルボニル基、
(c)水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミド基、もしくは窒素原子を含む複素環基によって置換されているものも含む直鎖または分岐のアルキル基、
(d)水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、もしくはアミド基によって置換されているものも含むシクロアルキル基、
(e)水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基、またはアルコキシカルボニル基によって置換されているものを含むアリール基、
(f)水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基によって置換されているものを含むアラルキル基、
(g)それらが結合する炭素原子とともに形成するシクロアルキル基。]
さらに、
アルキル基は、C1〜C6の直鎖または分岐のアルキル基、
シクロアルキル基が、C3〜C6のシクロアルキル基、
アリール基が、水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基、またはアルコキシカルボニル基によって置換されているものを含むフェニルまたはナフチル基、
アラルキル基が、水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基によって置換されていているものも含むベンジルまたはフェネチル基、
のいずれかであることが望ましい。
さらには、以下の点にも特徴を有するものである。
1)式(3)の化合物が、アゾジカルボキサミド、アゾジカルボン酸ジメチル、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、アゾジカルボン酸ジ(2−メトキシエチル)、アゾジカルボン酸ジベンジル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチルであること。
2)式(4)の化合物が、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、または4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)であること。
3)バナジウム化合物が、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸アンモニウム、バナジン酸ナトリウム、バナジン酸カリウム、オキシ硫酸バナジウム、または結晶水を含むこれらのバナジウム化合物の少なくともいずれか1種であること。
4)セリウム化合物が、塩化セリウム、臭化セリウム、硫酸セリウム、酢酸セリウム、硝酸セリウム、硝酸セリウムアンモニウム、または結晶水を含むこれらのセリウム化合物の少なくともいずれか1種であること。
5)酸素または酸素を含むガスを作用させる際に、N-オキシル化合物、鉄化合物もしくは銅化合物を加えていること。
6)N-オキシル化合物が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、フタルイミド−N−オキシル、2−アザアダマンタン−N−オキシルもしくは1−メチル−2−アザアダマンタン−N−オキシルであること。
7)鉄化合物が、二価もしくは三価の塩化物塩、臭化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、及び結晶水を含むこれらの鉄化合物から選ばれる一以上の化合物であること。
7)銅化合物が、一価もしくは二価の塩化物塩、臭化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、及び結晶水を含むこれらの銅化合物から選ばれる一以上の化合物であること。
8)溶媒が、有機溶媒もしくは有機溶媒を含んでいてもよい水であること。
9)有機溶媒が、カルボン酸系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ニトリル系有機溶媒もしくはアミド系有機溶媒であること。
10)有機溶媒が、酢酸、プロピオン酸、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドもしくはジメチルアセトアミドの少なくとも何れか一種であること。
本発明によれば、ヒドラゾ化合物のヒドラゾ基を、酸化的に脱水素する際に、これに酸素もしくは酸素を含むガスを作用させることで効率良くアゾ化合物が製造できる方法が提供される。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ヒドラゾ化合物を酸化的に脱水素してアゾ化合物を製造する方法において、これに触媒量のバナジウム化合物またはセリウム化合物を触媒として存在させて、酸素を含むガスを酸化剤として反応させることにより、予期に反して温和な反応条件で収率良く目的の反応が進行することを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、ヒドラゾ化合物を、触媒量のバナジウム化合物またはセリウム化合物を存在させた溶媒中で、酸化剤として酸素もしくは酸素を含むガスを用いて酸化することを特徴とするアゾ化合物の製造方法である。
本発明によれば、酸化剤は酸素もしくは酸素を含むガスでよい。しかも、電子供与性のみならず、通常、酸化が進みにくくなるとされる電子吸引性置換基を両方の窒素原子上に持つヒドラゾ化合物であっても対応するアゾ化合物が効率良く得られる。酸素は地上に無尽蔵に存在して経済的である。また、副生物は水であるがゆえに廃液の処理コストも革新的に削減することができる。加えて、本発明の反応条件は温和であるために特殊な装置を必要とすることもない。本発明によれば、汎用の化学反応設備さえあれば、特別な設備も製造場所も選ぶ必要がなく、広い範囲のアゾ化合物を経済的にも環境負荷の観点からも極めて有利に製造することができる。
すなわち、本発明のアゾ化合物の製造方法では、アゾ化合物の製造方法として、下記式(1)または下記式(2)のヒドラゾ化合物を、バナジウム化合物またはセリウム化合物、および溶媒の存在下で、これに酸素または酸素を含むガスを作用させることで下記式(3)または下記式(4)で表されるアゾ化合物を製造する方法である。
Figure 2018008919
[式中、RおよびR'は、それぞれ下記の(a)〜(g)のいずれかである。
(a)カルバモイル基、
(b)アルコキシ基が置換しているものも含むアルコキシカルボニル基、
(c)水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミド基、もしくは窒素原子を含む複素環基によって置換されているものも含む直鎖または分岐のアルキル基、
(d)水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、もしくはアミド基によって置換されているものも含むシクロアルキル基、
(e)水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基、またはアルコキシカルボニル基によって置換されているものを含むアリール基、
(f)水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基によって置換されているものを含むアラルキル基、
(g)それらが結合する炭素原子とともに形成するシクロアルキル基。]
さらに、
アルキル基は、C1〜C6の直鎖または分岐のアルキル基、
シクロアルキル基が、C3〜C6のシクロアルキル基、
アリール基が、水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基、またはアルコキシカルボニル基によって置換されているものを含むフェニルまたはナフチル基、
アラルキル基が、水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基によって置換されていているものも含むベンジルまたはフェネチル基、
のいずれかであることが望ましい。
上記式(3)の化合物としては、例えばアゾベンゼン、p−フェニルアゾフェノール、アゾジカルボキサミド、アゾジカルボン酸ジメチル、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、アゾジカルボン酸ジ(2−メトキシエチル)、アゾジカルボン酸ジベンジル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸アミド]または2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオン酸アミドなどを挙ることができる。
また、上記式(4)の化合物としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)または4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)などを挙ることができる。
また、本発明に係るアゾ化合物の製造方法においては、バナジウム化合物またはセリウム化合物の存在で行うこととしている。
バナジウム化合物としては、原子価が3価、4価もしくは5価の化合物を広く使用することができる。例えば、酸化バナジウム、三塩化バナジウム、四塩化バナジウム、オキシ硫酸バナジウム、五酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸カリウム、バナジン酸ナトリウムあるいはバナジン酸カリウム等々、広範なバナジウム化合物が選択できる。これらは結晶水を含んでいても良い。また、これらは単独で用いてもよいし、二以上の化合物を混合して用いてもよい。
セリウム化合物としては、原子価が3価、もしくは4価の化合物を広く使用することができる。例えば酢酸セリウム、硝酸セリウム、硝酸セリウムアンモニウム、塩化セリウム、臭化セリウム、フッ化セリウム、炭酸セリウム、過塩素酸セリウム、酸化セリウム等々、広範なセリウム化合物が選択できる。これらは結晶水を含んでいてもよい。また、これらは単独で用いても良いし、二以上の化合物を混合して用いても良い。
バナジウム化合物またはセリウム化合物の量は、ヒドラゾ化合物1モルに対して0.0001モル〜10モルが好ましく、ヒドラゾ化合物1モルに対して0.01モル~0.2モルが特に好ましい。
また、本発明に係るアゾ化合物の製造方法において、上記のバナジウム化合物またはセリウム化合物にさらに必要に応じてN-オキシル化合物、鉄化合物もしくは銅化合物を加えてもよい。
N−オキシル化合物としては、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、フタルイミド−N−オキシル、2−アザアダマンタン−N−オキシルもしくは1−メチル−2−アザアダマンタン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−N−オキシルまたは4−カルボアルコキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−N−オキシルなどを挙げることができる。
鉄化合物としては、原子価が2価、もしくは3価の化合物を広く使用することができる。例えば、塩化鉄、臭化鉄、酢酸鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、過塩素酸鉄、酸化鉄、ヘキサシアニド鉄酸カリウム等々、広範な鉄化合物の中から選択できる。これらは結晶水を含んでいてもよい。また、これらは単独で用いてもよいし、二以上の化合物を混合して用いてもよい。
銅化合物としては、原子価が1価、もしくは2価の化合物を広く使用することができる。例えば、塩化銅、臭化銅、酢酸銅、硝酸銅、硫酸銅、過塩素酸銅、酸化銅、ヘキサシアニド鉄酸銅等々、広範な銅化合物の中から選択できる。これらは結晶水を含んでいても良い。また、これらは単独で用いてもよいし、二以上の化合物を混合して用いてもよい。
上記のN−オキシル化合物、鉄化合物もしくは銅化合物の量は、ヒドラゾ化合物1モルに対して0.0001モル〜1モルが好ましく、ヒドラゾ化合物1モルに対して0.01モル~0.2モルが特に好ましい。
また、本発明に係るアゾ化合物の製造方法は、溶媒の存在下で行うとしている。さらには、本発明は、溶媒として、有機溶媒もしくは有機溶媒を含んでいてもよい水の存在下で行うとしている。
有機溶媒としては、広く選択可能であるが、中でも、水と相溶する有機溶媒が好ましい。さらにその中でも、ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のニトリル系もしくはアミド系有機溶媒もしくは酢酸、プロピオン酸等の低級カルボン酸から選ばれる一以上の溶媒が特に好ましい。
上記の有機溶媒は水を含んでいてもよい。含水の程度は、有機溶媒100容量部に対して水2容量部〜100容量部含むものが好ましく、有機溶媒100容量部に対して水5容量部〜50容量部含むものがさらに好ましい。これより含水の程度が小さいと添加した触媒が溶け残ることがある。また、これより含水の程度が大きいと、溶媒を用いる必要性が見出せなくなる。
上記の溶媒の量は、ヒドラゾ化合物1重量部に対して0.1重量部〜500重量部が好ましく、ヒドラゾ化合物1モルに対して2重量部~50重量部が特に好ましい。
酸素または酸素を含むガスを作用させる反応を行う際には、原料および生成物を必ずしも完全に溶解させる必要はなく、これらが結晶状態で析出している状態で行ってもよい。
本発明に係るアゾ化合物の製造方法において、用いる酸素もしくは酸素を含むガスとしては、酸素ガス、空気、または酸素ガスもしくは空気を窒素、二酸化炭素、ヘリウム等の反応に不活性なガスで希釈したものを用いることができる。
ヒドラゾ化合物と酸素の接触は、例えば、ヒドラゾ化合物と触媒および有機溶媒もしくは有機溶媒を含んでいてもよい水の混合物を、酸素雰囲気化に置くことにより行ってもよいし、この液中に酸素を吹き込むことで行ってもよい。液中に酸素を吹き込む場合は、ガス導入管の先端を液中に挿入する形式が最も簡便でよいが、マイクロバブル発生ノズルやナノバブル発生ノズルなどを用いて、酸素もしくは酸素を含むガスを微細な気泡として仕込むこともできる。
上記の酸素もしくは酸素を含むガスを供給する際の反応系の圧力については、特に限定されず、常圧で行うことができるし、加圧下で行うこともできる。反応圧力が過度に低いと反応速度が低下するので、また、反応圧力が過度に高い場合には、耐圧性を高めた特殊な反応装置が必要ともなるので、通常、常圧で行えばよいが、必要に応じて0.1MPa〜2.0MPaで行うことが好ましい。
本発明に係るアゾ化合物の製造方法において、反応温度は目的とするアゾ化合物の熱安定性を考慮して設定すればよいが、一般にアゾ化合物は熱安定性が高くない物質が多い。反応温度が100℃より高い時は生成物が熱分解して収率が低下することが無視できなくなる恐れがあるので、0℃〜100℃で行うことが好ましく、常温~80℃で行うことがより好ましい。
本発明に係るアゾ化合物の製造方法において、反応時間は、原料であるヒドラゾ化合物の反応性や目的とするアゾ化合物の熱安定性を考慮して設定すればよい。具体的には、前記した反応温度や反応圧力などの条件を制御することで、通常は1~24時間で行えばよく、2〜12時間で行うことがより好ましい。
本発明の製造方法によれば、広範な種類のアゾ化合物を高度に選択的かつ効率よく製造することができる。そのため、反応終了後の生成物の単離には、特別な方法は必要としない。その内、アゾジカルボキサミドをはじめ反応系に結晶として析出し易いアゾ化合物は、反応終了後の反応混合物を濾過や遠心分離に供するだけで容易に目的物を単離できる。その後、得られた結晶を必要に応じて水洗し、乾燥に供すればよい。このとき、生成物の結晶を分離後に回収された金属塩を含む溶液層は、これに次バッチの原料を仕込むことで簡単に酸化反応に再使用できることも利点である。
一方、生成したアゾ化合物が反応溶媒系に溶解する場合でも、反応混合物に水などの貧溶媒をさらに添加することで目的物を結晶として析出させて、これを前述の濾過などに供すればよい。他方、目的物が結晶として析出し難い場合には、これが溶解する溶媒で一旦抽出したのち、当該溶媒を留去する等の常法に従って目的物を単離すればよい。
以下、実施例で本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(実施例1)
スクリュー付きガラス製試験管(15 ml)にヒドラゾジカルボキサミド(1.0 mmol)、硝酸セリウム(III)アンモニウム4水和物 (0.1mmol)、および酢酸(2 mL)を加え、これに常圧で空気を充填したゴム風船を設置して系を閉じた。これを室温で12時間攪拌した後、得られた生成物を濾過し、水で洗浄して黄色結晶を得た。このものを、内部標準物質を用いた高速液体クロマトグラフィー分析することにより、アゾジカルボキサミドが収率88%で生成していた。別途、このものの水分散液にヨウ化カリウムを作用させて、遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する方法でもこの収率が確認された。
(実施例2)
実施例1において、原料として臭化第二銅(0.1mmol)を新たに加えたほかは実施例1と同様に酸化反応と後処理および分析を行うと、アゾジカルボキサミドが収率99%で生成していた。
(実施例3〜9)
実施例2において、用いた硝酸セリウム(III)アンモニウム4水和物 に替えて、下記の表1に示す化合物(触媒と記載)をそれぞれ0.1mmol用いたほかは実施例2と同様に実施した。得られたアゾジカルボキサミドの収率を合わせて表1に記載した。
Figure 2018008919
(実施例10〜18)
実施例3において、用いた臭化第二銅に替えて、下記の表2に示す化合物(助触媒と記載)をそれぞれ0.1mmol用いたほかは実施例3と同様に実施した。得られたアゾジカルボキサミドの収率を合わせて表2に記載した。
Figure 2018008919
(実施例19)
実施例8において、用いた酢酸をジメチルアセトアミド(2ml)に替えたほかは実施例8と同様に酸化反応と後処理および分析を行うと、アゾジカルボキサミドが収率92%で生成していた。
(実施例20)
実施例8において、用いた酢酸をジオキサン (2ml)に替えたほかは実施例8と同様に酸化反応と後処理および分析を行うと、アゾジカルボキサミドが収率80%で生成していた。
(実施例21)
実施例19において、用いた臭化第二銅を2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(0.1mmol)に替えたほかは実施例19と同様に酸化反応と後処理および分析を行うと、アゾジカルボキサミドが収率98%で生成していた。
(実施例22)
ガラス製スクリュー付き試験管(15 ml)にヒドラゾジカルボキサミド(1.0 mmol)、硝酸セリウム(IV)アンモニウム(0.2mmol)、臭化第二銅(0.2mmol)、酢酸(0.28ml)および水(0.28ml)を加え、これに常圧で酸素を充填したゴム風船を設置して系を閉じた。これを60℃で6時間攪拌した後、得られた生成物を濾過し、水で洗浄して黄色結晶を得た。このものは、実施例1と同様の後処理および分析を行うと、アゾジカルボキサミドが収率98%で生成していた。
(比較例1)
ガラス製スクリュー付き試験管(15 ml)にヒドラゾジカルボキサミド(1.0 mmol)、臭化ナトリウム、(0.2mmol)、酢酸(0.28ml)および水(0.28ml)を加え、これに常圧で酸素を充填したゴム風船を設置して系を閉じた。これを60℃で6時間攪拌した後、得られた生成物を濾過し、水で洗浄して白色結晶を得た。このものは、実施例21と同様の後処理および分析を行うと、ヒドラゾジカルボキサミドがほぼ定量的に回収されて、アゾジカルボキサミドの生成は全く確認されなかった。
従って、水性溶媒であっても、その上、塩素酸化で有効とされる臭化ナトリウムを加えても、目的とする酸化は酸素単独では進まなかった。このことから、この反応は酸素の活性化触媒が必要であることを確認した。
(実施例23)
実施例22において、酢酸のみ仕込むことなく、そのほかの条件は実施例22と同様に酸化反応と後処理および分析を行うと、アゾジカルボキサミドが収率45%で生成していた。
(実施例24)
ガラス製スクリュー付き試験管(15 ml)に2,2’−ヒドラゾビスイソブチロニトリル(1.0 mmol)、硝酸セリウム(IV)アンモニウム(0.1mmol)、臭化第二銅(0.025mmol)および酢酸(2ml)を加え、これに常圧で酸素を充填したゴム風船を設置して系を閉じた。これを50℃で6時間攪拌した後、得られた混合物を濃縮し、酢酸エチルで抽出を含む後処理を行って粗成性物結晶を得た。このものは、内部標準物質を用いたガスクロマトグラフィー分析に供することにより、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルが収率78%で生成していた。
(比較例2)
比較例1において、ヒドラゾジカルボキサミドに替えて2,2’−ヒドラゾビスイソブチロニトリルを用いたほかは比較例1と同様に反応および後処理をおこなった。実施例23と同様に分析を行うと、ヒドラゾジカルボキサミドの回収が確認されたが、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルの生成は全く確認されなかった。
従って、水性溶媒であっても、その上、塩素酸化で有効とされる臭化ナトリウムを加えても、目的とする酸化は酸素単独では進まなかった。ことから、この反応では酸素の活性化触媒が必要であることが確認された。
(実施例25〜30)
実施例23において、用いた2,2'−ヒドラゾビスイソブチロニトリルに替えて、表3に示したそれぞれヒドラゾ化合物(1mmol)をそれぞれ用い、また、反応温度と時間も下記の表3に示した条件に変更した以外は実施例23と同様に反応と後処理を行ってそれぞれの粗生成物を得た。その後、これらを高速液体クロマトグラフィーもしくはガスクロマトグラフィー分析に供した。それぞれの収率は、純度既知の市販品もしくは合成品との比較により粗生成物の純度を定量する方法で算出した。結果を表3に示す。
Figure 2018008919

Claims (13)

  1. 下記式(1)または下記式(2)のヒドラゾ化合物を、バナジウム化合物またはセリウム化合物、および溶媒の存在下で、これに酸素または酸素を含むガスを作用させることで下記式(3)または下記式(4)で表されるアゾ化合物を製造する製造方法。
    Figure 2018008919
    [式中、RおよびR'は、それぞれ下記の(a)〜(g)のいずれかである。
    (a)カルバモイル基、
    (b)アルコキシ基が置換しているものも含むアルコキシカルボニル基、
    (c)水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミド基、もしくは窒素原子を含む複素環基によって置換されているものも含む直鎖または分岐のアルキル基、
    (d)水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、もしくはアミド基によって置換されているものも含むシクロアルキル基、
    (e)水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基、またはアルコキシカルボニル基によって置換されているものを含むアリール基、
    (f)水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基によって置換されているものを含むアラルキル基、
    (g)それらが結合する炭素原子とともに形成するシクロアルキル基。]
  2. 請求項1に記載のアゾ化合物の製造方法において、下記の(c’)〜(f’)のいずれかであるアゾ化合物の製造方法。
    (c’)前記アルキル基が、C1〜C6の直鎖または分岐のアルキル基である。
    (d’)前記シクロアルキル基が、C3〜C6のシクロアルキル基である。
    (e’)前記アリール基が、水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基、またはアルコキシカルボニル基によって置換されているものを含むフェニルまたはナフチル基である。
    (f’)前記アラルキル基が、水酸基、アルコキシ基もしくはカルボキシル基によって置換されていているものも含むベンジルまたはフェネチル基である。
  3. 前記式(3)の化合物が、アゾジカルボキサミド、アゾジカルボン酸ジメチル、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、アゾジカルボン酸ジ(2−メトキシエチル)、アゾジカルボン酸ジベンジル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチルである請求項1に記載のアゾ化合物の製造方法。
  4. 前記式(4)の化合物が、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、または4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)である請求項1に記載のアゾ化合物の製造方法。
  5. 前記バナジウム化合物が、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸アンモニウム、バナジン酸ナトリウム、バナジン酸カリウム、オキシ硫酸バナジウム、または結晶水を含むこれらのバナジウム化合物の少なくともいずれか1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載のアゾ化合物の製造方法。
  6. 前記セリウム化合物が、塩化セリウム、臭化セリウム、硫酸セリウム、酢酸セリウム、硝酸セリウム、硝酸セリウムアンモニウム、または結晶水を含むこれらのセリウム化合物の少なくともいずれか1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載のアゾ化合物の製造方法。
  7. 酸素または酸素を含むガスを作用させる際に、N-オキシル化合物、鉄化合物もしくは銅化合物を加えている請求項1〜6のいずれか1項に記載のアゾ化合物の製造方法。
  8. 前記N-オキシル化合物が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、フタルイミド−N−オキシル、2−アザアダマンタン−N−オキシルもしくは1−メチル−2−アザアダマンタン−N−オキシルである請求項7に記載のアゾ化合物の製造方法。
  9. 前記鉄化合物が、二価もしくは三価の塩化物塩、臭化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、及び結晶水を含むこれらの鉄化合物から選ばれる一以上の化合物である請求項7に記載のアゾ化合物の製造方法。
  10. 前記銅化合物が、一価もしくは二価の塩化物塩、臭化物塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、及び結晶水を含むこれらの銅化合物から選ばれる一以上の化合物である請求項7に記載のアゾ化合物の製造方法。
  11. 前記溶媒が、有機溶媒もしくは有機溶媒を含んでいてもよい水である請求項1〜10のいずれか1項に記載のアゾ化合物の製造方法。
  12. 前記有機溶媒が、カルボン酸系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ニトリル系有機溶媒もしくはアミド系有機溶媒である請求項11に記載のアゾ化合物の製造方法。
  13. 前記有機溶媒が、酢酸、プロピオン酸、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドもしくはジメチルアセトアミドである請求項11および12に記載のアゾ化合物の製造方法。
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