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JP2018058969A - ポリアミドイミド樹脂組成物 - Google Patents

ポリアミドイミド樹脂組成物 Download PDF

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JP2018058969A JP2016196494A JP2016196494A JP2018058969A JP 2018058969 A JP2018058969 A JP 2018058969A JP 2016196494 A JP2016196494 A JP 2016196494A JP 2016196494 A JP2016196494 A JP 2016196494A JP 2018058969 A JP2018058969 A JP 2018058969A
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夢人 福林
Yumeto FUKUBAYASHI
夢人 福林
昌志 藤田
Masashi Fujita
昌志 藤田
中井 誠
Makoto Nakai
誠 中井
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Abstract

【課題】従来のポリアミドイミドを用いたポリアミドイミド樹脂組成物よりも、優れた機械的特性を有するポリアミドイミド樹脂組成物の提供。【解決手段】式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミドと強化材とを含有するポリアミドイミド樹脂組成物。(R1及びR2は独立に芳香環、脂肪族環又は脂肪族炭化水素を有する二価の残基;R3又はR4は独立に芳香環、脂肪族環又は脂肪族炭化水素を有する三価の残基)【選択図】なし

Description

本発明は、機械的特性に優れたポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
ポリアミドイミドは、耐熱性や耐薬品性が高いことから、フィルム、電線被覆材、成形材、接着材等の用途に広く用いられている。
ポリアミドイミドの製造方法としては、従来から、イソシアネート法、酸クロライド法、直接重合法の3つの方法が知られている。
イソシアネート法とは、芳香族トリカルボン酸無水物または芳香族トリカルボン酸無水物/芳香族ジアミン(モル比率2/1)から合成されるイミドジカルボン酸と、芳香族ジイソシアネートを反応させる方法である(例えば、特許文献1〜3)。
酸クロライド法とは、実質的に等モル量の芳香族トリカルボン酸無水物クロライドと芳香族ジアミンを有機極性溶媒中で反応させる方法である(例えば、特許文献4)。
直接重合法とは、芳香族トリカルボン酸またはその誘導体(酸クロライド誘導体を除く)と芳香族ジアミンを、脱水触媒の存在下、直接反応させる方法である(例えば、特許文献5)。
特公昭44−19274号公報 特公昭45−2397号公報 特公昭50−33120号公報 特公昭42−15637号公報 特公昭49−4077号公報
イソシアネート法では、原料としてジイソシアネートを用いるために、反応初期において、アミド結合やイミド結合以外に、副反応により尿素結合を生成し高純度のポリアミドイミドが得られない、もしくは分岐構造を生成し、その結果、分岐構造に由来するゲル化現象が発生して高重合度の直鎖状ポリマーが得られないという問題があった。
また、酸クロライド法は、副反応が比較的少なく、架橋構造が少ない直線性の高いポリアミドイミドが得られるが、腐食性の高い塩化水素が副生し、ポリアミドイミド中に残存するという問題があった。また、酸クロライド法においては、ジアミンのアミン末端が、芳香族トリカルボン酸無水物クロライドのクロライド末端および無水基いずれにも反応するため、分子鎖中の規則性が低いという問題があった。
また、直接重合法は、ジイソシアネートや酸クロライドを用いないため、ゲル化の問題や塩化水素が発生する問題はないが、酸クロライド法と同様、ジアミンのアミン末端が、芳香族トリカルボン酸無水物のカルボキシル末端および無水基いずれにも反応するため、分子鎖中の規則性が低いという問題があった。
以上のような問題から、従来のポリアミドイミドを成形体に用いた場合、成形体の強度が十分ではなく、用いる用途が制限されていた。
本発明は、上記課題を解決するものであって、従来のポリアミドイミドを用いたポリアミドイミド樹脂組成物よりも、優れた機械的特性を有するポリアミドイミド樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、ジアミンとトリカルボン酸無水物からなるビスイミドジカルボン酸と、前記ジアミンと同一または異なるジアミンとから得られたポリアミドイミドを用いることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミドと強化材とを含有するポリアミドイミド樹脂組成物:
(式中、R、Rは、独立して、芳香環、脂肪族環または脂肪族炭化水素を有する二価の残基を示し、R、Rは、独立して、芳香環または脂肪族環を有する三価の残基を示し、それぞれの環に結合した水素原子は他の原子または原子団に置換されていてもよい。)。
(2)強化材が、ガラス繊維、炭素繊維およびステンレス繊維からなる群より選ばれた1種以上の繊維状強化材である(1)に記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
(3)さらに酸化防止剤を含有する(1)または(2)に記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
(4)ポリアミドイミドの繰り返し単位の数が4〜1000である(1)〜(3)いずれかに記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
(5)ポリアミドイミドが少なくとも100℃のガラス転移温度を有する(1)〜(4)いずれかに記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)いずれかに記載のポリアミドイミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明によれば、従来のポリアミドイミドを用いたポリアミドイミド樹脂組成物よりも、優れた機械的特性を有するポリアミドイミド樹脂組成物を提供することができる。
本発明に用いるポリアミドイミドは、ビスイミドジカルボン酸とジアミンから構成される一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミドである。
上記式中、R、Rは、独立して、芳香環、脂肪族環または脂肪族炭化水素を有する二価の残基を表し、R、Rは、独立して、芳香環または脂肪族環を有する三価の残基を表し、それぞれの環に結合した水素原子は他の原子または原子団に置換されていてもよい。繰り返し単位の数は、数平均分子量から得られる平均値として示され、2以上、好ましくは3〜1000、より好ましくは3〜500、さらにより好ましくは3〜30、最も好ましくは3〜25である。
ビスイミドジカルボン酸に用いるトリカルボン酸無水物は、芳香族または脂環式トリカルボン酸無水物である。トリカルボン酸の環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタリン環、アンタラセン環、ビフェニル環、シクロヘキサン環、好ましくは、ベンゼン環、ナフタリン環、ビフェニル環、シクロヘキサン環、より好ましくはベンゼン環、シクロヘキサン環、さらにより好ましくはベンゼン環が挙げられる。
トリカルボン酸には、環に結合した水素原子が他の原子または原子団に置換されたものも含まれる。
トリカルボン酸無水物の具体例としては、トリメリット酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−アントラセントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物等、好ましくは、トリメリット酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物、より好ましくはトリメリット酸無水物、または1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物、さらにより好ましくは、トリメリット酸無水物が挙げられる。トリカルボン酸無水物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
式(1)中、RおよびRは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、芳香環、脂肪族環または脂肪族炭化水素を有する二価の残基を表す。
は、好ましくは芳香族ジアミン、芳香族アミンエーテル、脂肪族環ジアミンまたは脂肪族炭化水素ジアミン由来の二価の残基、より好ましくは芳香族ジアミン、芳香族アミンエーテルまたは脂肪族ジアミン由来の二価の残基である。Rは、さらにより好ましくは、下記式(2)で示される芳香族ジアミンおよび下記式(3)で示される芳香族アミンエーテル由来の2価の残基である。前記ジアミンには、−O−、−S−が含まれてもよいし、水素原子の1つ以上がハロゲンに置換されていてもよいし、側鎖を有していてもよい。
式(2)中、nは、1または2、好ましくは1を表す。
が1の場合は、R、Rはオルト位、メタ位、またはパラ位、好ましくはメタ位またはパラ位の関係で結合している。
が2の場合は、2つのフェニレン基はパラ位の関係で結合していることが好ましい。2つのフェニレン基の間に、炭素数1〜3のアルキレン基またはスルフィド基が存在してもよい。
は、炭素数1〜3、好ましくは、炭素数1〜2、より好ましくは、炭素数1のアルキル基である。
は、0〜4、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2、さらにより好ましくは0〜1、最も好ましくは0を表す。
、Rは、それぞれ独立、好ましくは同一である、炭素数1〜3、好ましくは炭素数1〜2、より好ましくは炭素数1のアルキレン基である。
、nは、それぞれ独立、好ましくは同一である、0または1を表す。n、nが0のときは、アミノ基が、ベンゼン環に直接結合していることを表している。
一般式(2)で示されるジアミンの具体例としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミンから選ばれる芳香族ジアミンである。好ましくは、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ベンジジンから選ばれる芳香族ジアミンである。より好ましくは、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンから選ばれる芳香族ジアミンである。さらにより好ましくは、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、特に、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、p−フェニレンジアミンから選ばれる芳香族ジアミンである。
式(3)中、nは、1〜4、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2、さらにより好ましくは1の整数である。
、Rは同一でも、異なっていてもよく、炭素数1〜3、好ましくは、炭素数1〜2、より好ましくは、炭素数1のアルキル基である。
、nは、同一であっても、異なっていてもよく、好ましくは同一である、0〜4、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2、さらにより好ましくは0〜1、最も好ましくは0を表す。
式(3)中、両端のアミノ基は、エーテルの酸素原子に対して、オルト位、メタ位、またはパラ位、好ましくは、パラ位またはメタ位、より好ましくはパラ位で結合している。
一般式(3)で示される芳香族アミンエーテルジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、好ましくは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルである。
一般式(1)中、Rは、好ましくは芳香族ジアミン、芳香族アミンエーテル、脂肪族環ジアミンまたは脂肪族炭化水素ジアミン由来の二価の残基、より好ましくは芳香族ジアミン、芳香族アミンエーテルまたは脂肪族ジアミン由来の二価の残基である。Rは、さらにより好ましくは、下記式(4)で示される芳香族ジアミンおよび上記式(3)で示される芳香族アミンエーテル由来の2価の残基である。前記ジアミンには、−O−、−S−が含まれてもよいし、水素原子の1つ以上がハロゲンに置換されていてもよいし、側鎖を有していてもよい。
式(4)中、nは、1または2、好ましくは1を表す。
が1の場合は、R10、R11はオルト位、メタ位、またはパラ位、好ましくはメタ位またはパラ位、より好ましくはメタ位の関係で結合している。
が2の場合は、2つのフェニレン基はパラ位の関係で結合していることが好ましい。2つのフェニレン基の間に、炭素数1〜3のアルキレン基またはスルフィド基が存在してもよい。
12は、炭素数1〜3、好ましくは、炭素数1〜2、より好ましくは、炭素数1のアルキル基である。
11は、0〜4、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2、さらにより好ましくは0〜1、最も好ましくは0を表す。
10、R11は、それぞれ独立、好ましくは同一である、炭素数1〜3、好ましくは炭素数1〜2、より好ましくは炭素数1のアルキレン基である。
、n10は、それぞれ独立、好ましくは同一である、0または1を表す。n、n10が0のときは、アミノ基が、ベンゼン環に直接結合していることを表している。
一般式(4)で示されるジアミンの具体例としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3−ジアミノベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミンから選ばれる芳香族ジアミンである。好ましくは、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ベンジジンから選ばれる芳香族ジアミンである。より好ましくは、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンから選ばれる芳香族ジアミンである。さらにより好ましくは、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンから選ばれる芳香族ジアミンである。中でも、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンが好ましく、m−キシリレンジアミンが最も好ましい。
本発明において、RまたはRを含む芳香族ジアミンとして、縮合環を含む芳香族ジアミン、例えば、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジアミノナフタレン等も使用可能である。
本発明において、RまたはRを含む脂肪族炭化水素ジアミンの具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカンが挙げられる。
本発明において、RまたはRを含む脂肪族環のジアミンの具体例としては、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミンが挙げられる。
その他のRまたはRを含んで構成されるジアミンの具体例としては、ジアミノシロキサン、例えば、α,ω−ビスアミノポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビス(10−アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、ビス(3−アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリメチルフェニルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリ(ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン)コポリマーが挙げられる。
さらに、その他のRまたはRを含んで構成されるジアミンの具体例として、ベンゼン環を少なくとも2つおよびエーテル結合を有するジアミン、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを適用することも可能である。
さらにまた、RまたはRを含んで構成されるジアミンの具体例として、複素環を含むジアミン、例えば、ベンゾグアナミンを適用することも可能である。
式(2)および式(3)以外のジアミン化合物として、Rを含んで構成されるジアミンとしては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、3,3−ジアミノベンゾフェノン、2,4−トリレンジアミン(2,4−ジアミノトルエン)、2,6−トリレンジアミン(2,6−ジアミノトルエン)、ベンゾグアナミン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、イソホロンジアミンが好適に使用できる。
上記ジアミンは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
ポリアミドイミドを構成するジアミンは、ビスイミドカルボン酸に用いた同一または異なったジアミンを用いることができる。
本発明に用いるポリアミドイミドは(1)ビスイミドジカルボン酸とジアミンからなるポリアミドイミド原料塩を一旦合成し、次に、該ポリアミドイミド原料塩を重合させることにより合成(以下、「2段階合成法」という。)するか、または(2)ビスイミドジカルボン酸とジアミンとを直接反応させることにより1段階で合成(以下、「1段階合成法」という。)することができる。
まず、2段階合成法について説明する。
(2段階合成法)
2段階合成法においては、本発明に用いるポリアミドイミドは、ビスイミドジカルボン酸とジアミンから構成されるポリアミドイミド原料塩を一旦合成し、該原料塩を加熱し重合することにより製造することができる。
ビスイミドジカルボン酸は、公知のもの(例えば、市販品)を使用してもよいし、また、例えば、トリカルボン酸無水物とジアミンから合成したものを使用してもよい。
ビスイミドジカルボン酸を合成する場合は、トリカルボン酸無水物とジアミンとの反応は、溶液状態や溶融状態で行ってもよいし、固体(粉末)状態で行ってもよいが、溶媒の乾燥工程や粉砕工程等を必要とせずにポリアミドイミド原料塩粉末の合成に用いることができるといった観点から固体状態が好ましい。
ポリアミドイミド原料塩は、トリカルボン酸無水物とジアミンから合成されたビスイミドジカルボン酸と、前記ジアミンと同一または異なったジアミンと中和反応させることにより得ることができる。
ビスイミドジカルボン酸とジアミンとの反応によりポリアミドイミド原料塩を得る方法は、溶液状態や溶融状態で行ってもよいし、固体状態で行ってもよい。
以下、固体状態で、ビスイミドジカルボン酸とジアミンとの反応によりポリアミドイミド原料塩を得る方法を説明する。
本発明に用いるポリアミドイミド原料塩は、固体状のビスイミドジカルボン酸に、液体状のジアミンを反応させることにより達成することができ、具体的には、ビスイミドジカルボン酸を、その融点未満、ジアミンの融点以上で加熱し、ジアミンを添加することにより、達成することができる。
工程中、ビスイミドジカルボン酸および得られるポリアミドイミド原料塩がその固体状態を維持するようにするには、ジアミンの添加量、添加速度、添加方法、ビスイミドジカルボン酸の加熱温度、反応時間等の条件が適切に設定され、内容物が十分に撹拌されていることが好ましい。
なお、「融点」は、「融解点」ともいい、固体が融解する温度という一般的意味で使用している。融点は、キャピラリーに試料を詰めて加熱し、目視で融点を観察したり、示差走査熱量測定(DSC)等の測定装置により求めることができる。
本発明においては、上述のように、ビスイミドジカルボン酸がその固体状態を維持している。該ビスイミドジカルボン酸の平均粒径は、5μm〜1mmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。イミドジカルボン酸の粒径を5μm〜1mmとすることにより、ポリアミドイミド原料塩の反応の進行を早くすることができる。
平均粒径は沈降法やレーザー回折・散乱法により測定することができ、本発明においては、レーザー回折・散乱法により測定した値を使用している。
ジアミンは、固体状のビスイミドジカルボン酸との反応時に液状になっていれば特に限定されず、固体で添加してもよいし、加熱溶融して液体としてから添加してもよい。得られるポリアミドイミド原料塩の粒径をより小さくする観点から、加熱溶融して液体としてから添加することが好ましい。
ジアミンは加熱される時間が短いほど好ましいので、係る観点からは、ジアミンは、それ自体が加熱されていない粉体、粒状等の固体形態で添加されることが好ましい。
ジアミンを固体で添加する場合は、例えば、ダブルダンパー機構を備えた送粉装置が挙げられる。一方で、ジアミンを液体で添加する場合、反応容器とは異なる別の容器でジアミンを加熱溶融し液体としてから、反応容器に送液し、液体状のジアミンをビスイミドジカルボン酸に対して滴下またはスプレー状に噴霧することが好ましい。
本発明において、ビスイミドジカルボン酸の加熱は、ジアミンを添加した後に行ってよいし、ジアミンを添加する前に行ってもよいが、後者の方がより好ましい。
ビスイミドジカルボン酸を、ジアミンの添加前にあらかじめ加熱する際の加熱温度は、ジアミンの融点以上かつビスイミドジカルボン酸の融点未満とすることが好ましく、(ジアミンの融点+10℃)以上かつ(ビスイミドジカルボン酸の融点−5℃)以下とすることがより好ましい。上記加熱温度がビスイミドジカルボン酸の融点を超える場合、反応系全体が液状となり、ポリアミドイミド原料塩の生成に伴い全体が塊状化する場合がある。一方、上記加熱温度がジアミンの融点以下である場合、ビスイミドジカルボン酸およびジアミンのいずれもが固体状態となり、ポリアミドイミド原料塩の生成反応がほとんど進行しない場合がある。
上記の範囲の中でも、ビスイミドジカルボン酸の加熱温度は、100℃以上かつ210℃以下、好ましくは、100℃以上かつ200℃以下、より好ましくは、120℃以上かつ200℃以下である。上記加熱温度が210℃を超えると、ポリアミドイミド原料塩の生成反応の際に、重合反応が起こるため水分が発生し、その結果、発生した水に起因して、得られたポリアミドイミド原料塩が一部溶融して融着したり、反応系が高圧となったりする場合がある。一方、上記加熱温度が100℃未満であると、ポリアミドイミド原料塩の生成反応が不十分となる場合がある。
なお、ビスイミドジカルボン酸を予め加熱する際の加熱温度と、ポリアミドイミド原料塩の生成における反応温度は、同じ温度であってもよいし、異なる温度であってもよい。
ジアミンの添加方法は、反応中においてビスイミドジカルボン酸がその固体状態を維持しうるものであれば、特に限定されない。中でも、得られたポリアミドイミド原料塩が塊状となることを抑制し、効率よく生成反応を行う観点から、連続してジアミンを添加する方法や、分割して適量ずつ(例えば、添加されるジアミン全量のうちの1/10〜1/100の量ずつ)を間欠的に添加する方法が好ましい。ジアミンの添加速度は、ビスイミドジカルボン酸の固体状態を安定して維持する観点から、0.005〜2.00質量%/分であることが好ましく、0.01〜1.00質量%/分であることがより好ましい。なお、ここで、「質量%/分」とは、最終的に添加される低融点成分全量に対する、1分間に添加される低融点成分の割合である。また、ジアミンを適量ずつ間欠的に添加した後に、さらにジアミンを連続して添加する方法等、上記の方法を組み合わせた方法でもよい。
ジアミンとビスイミドジカルボン酸の反応が均一に進みにくい場合、ジアミンを希釈溶媒に溶解させて、ビスイミドジカルボン酸に添加してもよい。希釈溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコール等のエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。
得られるポリアミドイミド原料塩の平均粒径は、2mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。ポリアミドイミド原料塩の平均粒径を2mm以下とすることで、例えば、該ポリアミドイミド原料塩を固相重合させてポリアミドイミドを得る際に水分が発生したとしても、ポリアミドイミド原料塩内部の水分が抜けやすくなるため、重合反応の速度を早くすることができるという利点がある。
本発明に用いるポリアミドイミド原料塩の製造方法においては、ポリアミドイミド原料塩の生成反応を完全に遂行させるため、ジアミンの添加中や、ジアミンの添加終了後において、十分撹拌を行うことが好ましい。ビスイミドジカルボン酸とジアミンを反応させるための反応装置に設けられる撹拌機構としては、製造するポリアミドイミド原料塩の種類や生産量に合わせて適宜選択すればよく、パドル型、タンブラー型、リボン型等のブレンダー、ミキサー等が挙げられる。また、これらを組み合わせたものでもよい。
ビスイミドジカルボン酸とジアミンを反応させるための反応装置としては、ビスイミドジカルボン酸およびジアミンを十分に撹拌することができれば、特に限定されず、公知の反応装置を用いることができる。
上記の反応装置において、反応前のビスイミドジカルボン酸を加熱したり、生成反応の際に反応系を加熱したりする方法としては、特に限定されず、スチーム等の熱媒、ヒーター等を用いて加熱する方法が挙げられる。
本発明においては、ビスイミドジカルボン酸とジアミンとの反応は、空気雰囲気下、窒素等の不活性ガス雰囲気下、いずれの雰囲気下で行ってもよいが、副反応や着色を抑制するためには、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、反応は密閉状態、不活性ガス流通下いずれで行ってもよい。
ポリアミドイミド原料塩の重合方法は、溶融重合法、固相重合法いずれであってもよいが、ポリアミドイミドは流動開始温度と熱分解温度が近接している場合が多いので、固相重合法が好ましい。
固相重合法において、反応温度は、生成するポリアミドイミドの融点未満、あるいは分解温度未満であれば特に限定されないが、通常160〜350℃である。反応時間は、最終的に到達する分子量と生産性のバランスの観点から、反応温度に達してから0.5〜24時間の範囲であることが好ましく、0.5〜8時間の範囲であることがより好ましい。固相重合は、窒素等の不活性ガス気流中で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、静置して行ってもよく、撹拌しながら行ってもよい。
本発明に用いるポリアミドイミドのガラス転移温度は、下記「分析方法(1)ガラス転移温度」で測定されたガラス転移温度をいう。
固相重合法において、重合後の粉砕工程を省略する観点からは、ビスイミドジカルボン酸の融点未満、200℃を超える温度でポリアミドイミド原料塩加熱し、その固体状態を保つようにして重合を行うことが好ましい。(ビスイミドジカルボン酸の融点−5℃)以下とすることがより好ましい。ビスイミドジカルボン酸の固体状態を確実に維持できるからである。
溶融重合法において、反応温度は、生成するポリアミドイミドのガラス転移温度以上であれば特に限定されない。反応時間は、最終的に到達する分子量と生産性のバランスの観点から、反応温度に達してから0.5〜36時間の範囲であることが好ましく、1〜8時間の範囲であることがより好ましい。溶融重合は、窒素等の不活性ガス気流中で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。
本発明に用いるポリアミドイミドの製造方法においては、原料を反応容器に供給する際に、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアミドイミド原料塩以外に重合触媒、他の添加剤を加えてもよい。
重合触媒の具体例としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸およびそれらの塩が挙げられる。重合触媒の使用量は、製品の性能や加工性低下の原因となるため、ポリアミドイミド原料塩の総モル数に対して2モル%以下であることが好ましい。
他の添加剤の具体例としては、酸化防止剤等の安定剤が挙げられる。添加剤の使用量は、ビスイミドジカルボン酸塩の反応性の観点から、ポリアミドイミド原料塩の総質量に対して30質量%以下が好ましい。
次に1段階合成法について説明する。
(1段階合成法)
本発明に用いるポリアミドイミドは、ビスイミドジカルボン酸を、その融点未満、200℃を超える温度で加熱し、その固体状態を保つように、前記ジアミンを添加することにより製造することができる。
本合成において、ビスイミドジカルボン酸の加熱は、ジアミンを添加した後に行ってよいし、ジアミンを添加する前に行ってもよいが、後者の方がより好ましい。
ビスイミドジカルボン酸を、ジアミンの添加前にあらかじめ加熱する際の加熱温度は、(ビスイミドジカルボン酸の融点−5℃)以下とすることがより好ましい。ビスイミドジカルボン酸の固体状態を確実に維持できるからである。
ビスイミドジカルボン酸の具体的加熱温度は、上記温度範囲内で、ビスイミドカルボン酸、ジアミン、それらの組合せにより、適宜設定される。
その他の条件(ビスイミドジカルボン酸がその固体状態を維持する条件、方法、ジアミンの添加量、添加速度、添加方法等)は、上記2段階合成法で記載した条件を参考に行うことができる。
本発明に用いるポリアミドイミドの重合方法においては、ポリアミドイミド原料塩を用いることが好ましい。ポリアミドイミド原料塩を用いることにより、分子構造の規則性がより高く分岐構造のより少ないポリアミドイミドを得ることができる。
上記製造方法により、重合度(n)(繰り返し単位の数)が1000程度までのポリアミドイミドを合成することができる。
重合度は、ビスイミドジカルボン酸とジアミンの配合比、重合温度や重合時間等の条件を変えることにより2〜1000の範囲で調整することができる。
重合度は、一般に、ゲル・パーミション・クロマトグラフィ(GPC)や核磁気共鳴法(NMR)、溶液粘度法、溶融粘度法により推算することにより測定することができる。
本発明に用いるポリアミドイミドは、一般式(1)で示される繰り返し単位が直鎖状に規則正しく繋がった構造をしており、分岐、架橋構造が少ない。
本発明に用いるポリアミドイミドは、少なくとも100℃、より高くは、少なくとも150℃、さらに高くは、少なくとも250℃、さらにより高くは、少なくとも270℃のガラス転移温度を有することができる。
また、本発明に用いるポリアミドイミドは、結晶性を有する場合は、少なくとも150℃、より高くは、少なくとも250℃、さらに高くは、少なくとも300℃、さらにより高くは、少なくとも350℃の融点を有することができる。
また、本発明に用いるポリアミドイミドは、少なくとも300℃、より高くは、少なくとも350℃、さらに高くは、少なくとも380℃、さらにより高くは少なくとも480℃の5%重量減少温度を有することができる。
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物には、機械的特性を良好なものとするために、強化材を含有することが必要である。強化材としては、繊維状強化材、板状強化材が挙げられ、中でも繊維状強化材が好ましい。
繊維状強化材の具体例としては、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アスベスト繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、玄武岩繊維、セピオライト、パリゴルスカイトが挙げられる。中でも、耐熱性が高く、入手しやすいことからガラス繊維、炭素繊維、ステンレス繊維が好ましい。繊維状強化材は2種以上併用してもよい。繊維状強化材は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。シランカップリング剤の具体例としては、ビニルシラン系、アクリルシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系が挙げられ、ポリアミドイミドとの密着性が高いことから、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。
繊維状強化材の平均繊維長は、0.1〜7mmであることが好ましく、0.5〜6mmであることがより好ましい。繊維状強化材の平均繊維長が0.1〜7mmであることで、成形性に悪影響を及ぼすことなく、ポリアミドイミドの機械的特性を向上させることができる。また、平均繊維径は3〜20μmであることが好ましく、5〜13μmであることがより好ましい。平均繊維径が3〜20μmであることで、溶融混練時に折損を減らしながらも、ポリアミドイミドの機械的特性を向上させることができる。断面形状は、円形断面であることが好ましいが、必要に応じて、長方形、楕円(偏平)、それ以外の異形断面であってもよい。
繊維状強化材を用いる場合、その含有量は、ポリアミドイミド100質量部に対し、5〜200質量部とすることが好ましく、10〜180質量部とすることがより好ましく、20〜150質量部とすることがさらに好ましく、30〜130質量部とすることが最も好ましい。
板状強化材の具体例としては、タルク、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、板状炭酸カルシウム、板状水酸化アルミニウム、黒鉛、カオリン、膨潤性層状珪酸塩が挙げられる。板状強化材を添加することで、寸法安定性を向上させることができる。
板状強化材を用いる場合、その含有量は、ポリアミドイミド100質量部に対し、40質量部以下とすることが好ましく、20質量部以下とすることがより好ましい。
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物には、必要に応じて、強化材のほかに、他の添加剤を加えてもよい。他の添加剤の具体例としては、耐衝撃改良材、帯電防止剤、導電付与剤、熱伝導性充填材、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、非晶性ポリアミド、他の樹脂成分、熱安定剤、光安定剤、摺動性改良材、難燃剤、難燃助剤、顔料が挙げられる。他の添加剤は、2種以上を併用してもよい。
耐衝撃改良材の具体例としては、(エチレンおよび/またはプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、(エチレンおよび/またはプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等のオレフィン系重合体、スチレン系エラストマー等のエラストマーが挙げられる。耐衝撃改良材を添加することで、耐衝撃性やウェルド強度を向上させることができる。
帯電防止剤の具体例としては、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯電防止材、非イオン系帯電防止剤が挙げられ、導電付与剤の具体例としては、カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維が挙げられる。帯電防止剤や導電付与剤を添加することで、表面固有抵抗値や体積固有抵抗値を下げることができる。
熱伝導性充填材の具体例としては、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボン、黒鉛が挙げられる。熱伝導性充填材を添加することで、熱伝導性を向上させることができる。
脂肪族ポリアミドの具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12が挙げられる。脂肪族ポリアミドを添加することで、振動疲労強度を向上させることができる。
半芳香族ポリアミドの具体例としては、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド11T、ポリアミド12T、ポリアミド6T/6Iが挙げられる。
非晶性ポリアミドの具体例としては、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、テレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタムの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/1,6−ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン/2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタムの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/その他ジアミン成分の重縮合体が挙げられる。なお、非晶性ポリアミドとは、示差走査熱量計(DSC)を用いて窒素雰囲気下で16℃/分の昇温速度により測定される融解熱量が1cal/g以下のポリアミドのことを指す。非晶性ポリアミドを添加することで、表面光沢性等を向上させることができる。
非晶性ポリアミドを用いる場合、その含有量は、ポリアミドイミド100質量部に対し、10〜100質量部とすることが好ましく、10〜30質量部とすることがより好ましい。
他の樹脂成分の具体例としては、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリウレア系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。他の樹脂成分を添加することで、耐熱性、強度、柔軟性等を向上させることができる。
熱安定剤の具体例としては、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物、硫黄系化合物が挙げられる。熱安定剤を添加することで、ポリアミドイミドの分子量低下や色の退化を抑制することができる。
熱安定剤を用いる場合、その含有量は、ポリアミドイミド100質量部に対し、6質量部以下とすることが好ましく、3質量部以下とすることがより好ましい。
光安定剤の具体例としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリシレート系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物が挙げられる。光安定剤を添加することで、紫外線によるポリアミドイミドの分子量低下を抑制することができる。
光安定剤を用いる場合、その含有量は、ポリアミドイミド100質量部に対し、6質量部以下とすることが好ましく、3質量部以下とすることがより好ましい。
摺動性改良材の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン等のシリコーンが挙げられる。
難燃剤の具体例としては、臭素含有難燃剤、窒素含有難燃剤、リン含有難燃剤、窒素−リン含有難燃剤、水和金属系難燃剤、無機系難燃剤が挙げられる。
臭素含有難燃剤の具体例としては、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルが挙げられる。中でも、難燃性の向上効果が高い点で、臭素を40〜80質量%含有するものが好ましく、50〜70質量%含有するものがより好ましい。これらの臭素含有難燃剤は、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酸化スズ(IV)、酸化鉄(III)、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛等の難燃助剤を併用することが好ましい。
窒素含有難燃剤の具体例としては、メラミン系化合物、シアヌル酸またはイソシアヌル酸とメラミン化合物との塩、リン酸またはポリリン酸類とアンモニアまたはメラミン系化合物との塩が挙げられる。
リン含有難燃剤の具体例としては、リン酸エステル化合物、ホスフィン酸塩およびジホスフィン酸塩が挙げられる。
窒素−リン含有難燃剤の具体例としてはの具体例としては、メラミンまたはその縮合生成物とリン酸とから形成される付加物(メラミン付加物)を挙げられる。このメラミン付加物を構成するリン酸の具体例としては、オルトリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸が挙げられる。
水和金属系難燃剤の具体例としては、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウムが挙げられる。
無機系難燃剤の具体例としては、硼酸亜鉛、硼酸亜鉛と他の亜鉛塩との混合物が挙げられる。
難燃剤を用いる場合、その含有量は、ポリアミドイミド100質量部に対して、5〜100質量部とすることが好ましく、7.5〜40質量部とすることがより好ましく、10〜30質量部とすることがさらに好ましい。
顔料の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナが挙げられる。
顔料を用いる場合、その含有量は、ポリアミドイミド100質量部に対し、10〜60質量部とすることが好ましく、15〜50質量部とすることがより好ましく、20〜40質量部とすることがさらに好ましい。
なお、重合時に上記各種添加剤を含有させる場合は、それらの量を含めた量が樹脂組成物中における添加剤の量である。
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、射出成形や圧縮成形や押出成形することにより、成形体とすることができる。中でも、射出成形が好ましい。射出成形に用いる射出成形機としては、特に限定されないが、例えば、スクリューインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミドイミドは、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、ポリアミドイミドのガラス転移温度以上とすることが好ましく、重量減少開始温度未満とすることがより好ましい。さらに好ましくは、(ガラス転移温度+50℃)以上、(5%重量減少温度−10℃)以下の温度である。
なお、射出成形に用いるポリアミドイミドは十分に乾燥していることが好ましい。水分率が高いポリアミドイミドは、射出成形機のシリンダー内で発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いるポリアミドイミドの水分率は、0.3質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましい。
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、耐熱性、耐薬品性、機械強度、成形性に優れている。そのため、自動車部品、電気電子部品、摺動部品、チューブ関連部品、家庭用品、金属被覆剤、産業資材用品、コンピュータおよび関連機器の部品、光学機器部品、情報・通信機器部品、精密機器部品等の広範な用途に使用できる。
自動車部品の具体例としては、シフトレバー、ギアボックス等の台座に用いるベースプレート、シリンダーヘッドカバー、エンジンマウント、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ラジエータホース、ラジエータグリル、リアスポイラー、ホイールカバー、ホイールキャップ、カウルベントグリル、エアアウトレットルーバー、エアスクープ、フードバルジ、フェンダー、バックドア、フューエルセンダーモジュール、シフトレバーハウジング、プロペラシャフト、スタビライザーバーリンケージロッド、ウインドーレギュレータ、ドアロック、ドアハンドル、アウトサイドドアミラーステー、アクセルペダル、ペダルモジュール、シールリング、ベアリングリテーナー、ギア、ワイヤーハーネス、リレーブロック、センサーハウジング、エンキャプシュレーション、イグニッションコイル、ディストリビューター、ウォーターポンプレンレット、ウォーターポンプアウトレット、サーモスタットハウジング、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、タイミングベルトカバー、エンジンカバー、燃料タンク、燃料チューブ、フューエルカットオフバルブ、クイックコネクター、キャニスター、フューエルデリバリーパイプ、フューエルフィラーネック、燃料配管用継手、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプソケットが挙げられる。
電気電子部品の具体例としては、コネクタ、HDDランプレール、基板補強板、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、IC、LEDのハウジング、リチウム二次電池等の電極のバインダが挙げられる。
摺動部品の具体例としては、歯車、ギア、ワッシャー、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、軸受、スイッチ、ピストン、パッキン、ローラー、複写機用ベルト、ベルトが挙げられる。
チューブ関連部品の具体例としては、フィードチューブ、リターンチューブ、エバポチューブ、フューエルフィラーチューブ、リザーブチューブ、ベントチューブ、オイルチューブ、ブレーキチューブ、ウインドウォッシャー液用チューブ、冷却水・冷媒等用クーラーチューブ、エアコン冷媒用チューブ、床暖房用チューブ、消火器および消火設備用チューブ、医療用冷却機材用チューブ、塗料散布用チューブ、薬液輸送用チューブ、燃料輸送用チューブ、ディーゼルガソリン用チューブ、石油掘削用チューブ、含アルコールガソリン用チューブ、エンジン冷却液(LLC)用チューブ、リザーバータンクチューブ、ロードヒーティングチューブ、床暖房用チューブ、インフラ供給用チューブ、ガスチューブが挙げられる。
家庭用品の具体例としては、哺乳瓶、メガネフレーム、スポーツシューズ、スキー板の表面材が挙げられる。
金属被覆剤の具体例としては、液体金属配管、水槽タンク等水回り部品の金属被覆剤が挙げられる。
産業資材用品の具体例としては、タイヤコード、ベルト、防弾服、防護服、防炎服、作業服、コンクリート補強材、アスベスト代替材、ロープ、シューズ部材、釣り糸、漁網、セイルクロス、クッション材、風力発電用ブレード、抄紙用フェルト、複写機クリーナー、フィルター、中空糸膜が挙げられる。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.測定方法
(1)ポリアミドイミドの融点およびガラス転移温度
ポリアミドイミド5mgを、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、「DSC8500」)を用い、窒素雰囲気下で25℃から350℃まで20℃/分で昇温し(1st Scan)、350℃にて5分間保持した。その後、500℃/分で25℃まで降温し、25℃にて5分間保持後、350℃まで20℃/分でさらに昇温した(2nd Scan)。そして、1st Scanで観測される結晶融解ピークのピークトップ温度を融点とし、2nd Scanで観測されるガラス転移に由来する2つの折曲点の温度の中間点をガラス転移温度とした。
(2)ポリアミドイミドの5%重量減少温度
示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA「TG/DTA7200」)を用いて、200mL/分の窒素雰囲気下で、30℃から800℃まで10℃/分で昇温した。昇温前の重量に対して5重量%減少する温度を熱分解温度とした。
(3)ポリアミドイミド樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)
ポリアミドイミド樹脂組成物ペレットを用い、フローテスター(CFT−500D 島津製作所製)により、実施例1〜11および17〜22においては330℃、200kgf、実施例12〜16および23〜28においては355℃、300kgfの荷重で測定した。単位はg/10分である。
(4)ポリアミドイミド樹脂組成物の曲げ強度、曲げ弾性率
得られた試験片を用いて、ISO178に準拠して測定した。
2.原料
(1)強化材
・GF−1:ガラス繊維(旭ファイバーグラス社製、商品名「03JAFT692」)、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm
・GF−2:ガラス繊維(日東紡社製、商品名「CS3G225S」)、平均繊維径9.5μm、平均繊維長3mm
・偏平GF:偏平ガラス繊維(日東紡社製、商品名「CSG3PA820S」)、長径28μm×短径7μm、平均繊維長3mm
・CF:炭素繊維(東邦テナックス社製、商品名「HTA−C6−NR」)、平均繊維径7μm、平均繊維長6mm
・MF:ステンレス繊維(日本精線社製、商品名「ナスロンSUS304」)、平均繊維径8μm、平均繊維長6mm
(2)酸化防止剤
・PA−1:リン系酸化防止剤、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニリレンジフォスファイト(クラリアントジャパン社製、商品名「ホスタノックスP−EPQ」)
・PA−2:リン系酸化防止剤、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ社製、商品名「アデカスタブPEP−36」)
・PA−3:リン系酸化防止剤、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ社製、商品名「アデカスタブPEP−4C」)
・HPA:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド](チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「Irganox1098」)
(3)ポリアミドイミド
ポリアミドイミドの調製に用いたビスイミドジカルボン酸の一般式を下記に示す。
の構造を下記表1に示す。
製造例1
構造1に示したビスイミドジカルボン酸(融点:未検出 300℃以上)(平均粒径:310μm)668質量部、無水次亜リン酸ナトリウム1.02質量部からなる混合物をリボンブレンダー式の反応装置に供給し、窒素流通下、回転数70rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、25℃に加熱したm−キシリレンジアミン(融点:14℃)200質量部を1.00質量部/分(0.50質量%/分)の速度で、送液装置を用いて、3時間かけて、170℃に保った構造1のビスイミドジカルボン酸に添加した[ビスイミドジカルボン酸:m−キシレンジアミン=47:50(モル比)]。得られたポリアミドイミド原料塩は、粒状(平均粒径:283μm)であった。得られたポリアミドイミド原料塩を、再度リボンブレンダー式の反応装置に添加した。その後、窒素流通下、回転数50rpmで撹拌しながら180℃で2時間加熱した。その後、200℃に昇温して4時間加熱し、さらに220℃に昇温して4時間加熱し粒状(平均粒径:300μm)のポリアミドイミドを得た。
得られたポリアミドイミドのガラス転移温度は196℃、5%重量減少温度は359℃であった。また、数平均分子量は12270(重合度:20.4)であった。溶液粘度は、8.2Pa・sであった。
また、核磁気共鳴法(NMR)の測定において、試料10mgをDMSO−d6 1mLに溶解させ、120℃にてHMBC−二次元NMR測定を行ったところ、副反応に由来するピークは検出されず、アミド結合−イミド結合間にm−キシレンジアミンが存在する場合に検出される、アミド結合に隣接するメチレン基の1Hとイミド結合に隣接するにメチレン基の1Hの両者に相関を示すm−キシレンジアミンの2位の13Cに由来するピークが見られなかったことより、得られたポリアミドイミドは、式(1)で示される繰り返し単位が直鎖状に繋がった構造をしていることが確認された。
製造例2
構造2に示したビスイミドジカルボン酸(融点:未検出 300℃以上)(平均粒径:371μm)668質量部、無水次亜リン酸ナトリウム1.02質量部からなる混合物をリボンブレンダー式の反応装置に供給し、窒素流通下、回転数70rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、25℃に加熱したm−キシリレンジアミン(融点:14℃)200質量部を1.00質量部/分(0.50質量%/分)の速度で、送液装置を用いて、3時間かけて、170℃に保った構造1のビスイミドジカルボン酸に添加した[ビスイミドジカルボン酸:m−キシレンジアミン=47:50(モル比)]。得られたポリアミドイミド原料塩は、粒状(平均粒径:362μm)であった。得られたポリアミドイミド原料塩を、再度リボンブレンダー式の反応装置に添加した。その後、窒素流通下、回転数50rpmで撹拌しながら180℃で2時間加熱した。その後、200℃に昇温して4時間加熱し、さらに220℃に昇温して4時間加熱し粒状(平均粒径:331μm)のポリアミドイミドを得た。
得られたポリアミドイミドのガラス転移温度は195℃、5%重量減少温度は360℃であった。また、数平均分子量は11320(重合度:18.8)であった。溶液粘度は、7.9Pa・sであった。
また、核磁気共鳴法(NMR)の測定において、試料10mgをDMSO−d6 1mLに溶解させ、120℃にてHMBC−二次元NMR測定を行ったところ、副反応に由来するピークは検出されず、アミド結合−イミド結合間にm−キシレンジアミンが存在する場合に検出される、アミド結合に隣接するメチレン基の1Hとイミド結合に隣接するにメチレン基の1Hの両者に相関を示すm−キシレンジアミンの2位の13Cに由来するピークが見られなかったことより、得られたポリアミドイミドは、式(1)で示される繰り返し単位が直鎖状に繋がった構造をしていることが確認された。
製造例3
構造3に示したビスイミドジカルボン酸(融点:未検出 300℃以上)(平均粒径:397μm)630質量部、無水次亜リン酸ナトリウム1.02質量部からなる混合物をリボンブレンダー式の反応装置に供給し、窒素流通下、回転数70rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、25℃に加熱したm−キシリレンジアミン(融点:14℃)200質量部を1.00質量部/分(0.50質量%/分)の速度で、送液装置を用いて、3時間かけて、170℃に保った構造1のビスイミドジカルボン酸に添加した[ビスイミドジカルボン酸:m−キシレンジアミン=47:50(モル比)]。得られたポリアミドイミド原料塩は、粒状(平均粒径:389μm)であった。得られたポリアミドイミド原料塩を、再度リボンブレンダー式の反応装置に添加した。その後、窒素流通下、回転数50rpmで撹拌しながら180℃で2時間加熱した。その後、200℃に昇温して4時間加熱し、さらに240℃に昇温して4時間加熱し粒状(平均粒径:361μm)のポリアミドイミドを得た。
得られたポリアミドイミドのガラス転移温度は227℃、5%重量減少温度は396℃であった。また、数平均分子量は11000(重合度:19.1)であった。溶液粘度は、8.0Pa・sであった。
また、核磁気共鳴法(NMR)の測定において、試料10mgをDMSO−d6 1mLに溶解させ、120℃にてHMBC−二次元NMR測定を行ったところ、副反応に由来するピークは検出されず、アミド結合−イミド結合間にm−キシレンジアミンが存在する場合に検出される、アミド結合に隣接するメチレン基の1Hとイミド結合に隣接するにメチレン基の1Hの両者に相関を示すm−キシレンジアミンの2位の13Cに由来するピークが見られなかったことより、得られたポリアミドイミドは、式(1)で示される繰り返し単位が直鎖状に繋がった構造をしていることが確認された。
製造例4
構造4に示したビスイミドジカルボン酸(融点:未検出 300℃以上)(平均粒径:353μm)757質量部、無水次亜リン酸ナトリウム1.02質量部からなる混合物をリボンブレンダー式の反応装置に供給し、窒素流通下、回転数70rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、25℃に加熱したm−キシリレンジアミン(融点:14℃)200質量部を1.00質量部/分(0.50質量%/分)の速度で、送液装置を用いて、3時間かけて、120℃に保った構造1のビスイミドジカルボン酸に添加した[ビスイミドジカルボン酸:m−キシレンジアミン=47:50(モル比)]。得られたポリアミドイミド原料塩は、粒状(平均粒径:337μm)であった。得られたポリアミドイミド原料塩を、再度リボンブレンダー式の反応装置に添加した。その後、窒素流通下、回転数50rpmで撹拌しながら180℃で2時間加熱した。その後、200℃に昇温して4時間加熱し、さらに240℃に昇温して4時間加熱し粒状(平均粒径:301μm)のポリアミドイミドを得た。
得られたポリアミドイミドのガラス転移温度は231℃、5%重量減少温度は397℃であった。また、数平均分子量は12400(重合度:18.6)であった。溶液粘度は、8.3Pa・sであった。
また、核磁気共鳴法(NMR)の測定において、試料10mgをDMSO−d6 1mLに溶解させ、120℃にてHMBC−二次元NMR測定を行ったところ、副反応に由来するピークは検出されず、アミド結合−イミド結合間にm−キシレンジアミンが存在する場合に検出される、アミド結合に隣接するメチレン基の1Hとイミド結合に隣接するにメチレン基の1Hの両者に相関を示すm−キシレンジアミンの2位の13Cに由来するピークが見られなかったことより、得られたポリアミドイミドは、式(1)で示される繰り返し単位が直鎖状に繋がった構造をしていることが確認された。
製造例5
4,4−ビス(N−トリメリットイミドフェニル)エーテル515質量部をリボンブレンダー式の反応装置に添加した。その後、無水次亜リン酸ナトリウム0.69質量部を添加し、窒素流通下、250℃に加熱した。そこに4,4−ビス(N−トリメリットイミドフェニル)エーテルが形状を維持していることを確認しながら、固体の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(融点:188℃)200質量部を、ダブルダンパー機構を備えた送粉装置を用いて、0.67質量部/分の速度(0.333質量%/分)で添加した。添加終了後、250℃で4時間加熱を行い、粒状(平均粒径:380μm)のポリアミドイミドを得た。
得られたポリアミドイミドの融点は、ガラス転移温度は267℃、5%重量減少温度は487℃であった。また、数平均分子量は10900(重合度:14.9)であった。溶液粘度は、8.7Pa・sであった。
また、核磁気共鳴法(NMR)の測定において、試料10mgをDMSO−d6 1mLに溶解させ、120℃にて1H−NMR測定を行ったところ、副反応に由来するピークは検出されず、アミド結合−イミド結合間に4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが存在する場合に検出される7.86ppm(ダブレット)、7.55ppm(ダブレット)、7.15ppm(ダブレット+ダブレット)付近にピークが見られなかったことより、得られたポリアミドイミドは、式(1)で示される繰り返し単位が直鎖状に繋がった構造をしていることが確認された。
製造例6
無水トリメリット酸192質量部、m−キシレンジイソシアネート188質量部、N−メチル−2−ピロリドン887質量部を、撹拌翼と熱媒ジャケット加熱を備えた反応装置に入れ、窒素気流下で撹拌しながら、200℃に加熱し、6時間反応させた。反応溶液を3801質量部のメタノールで再沈殿させた。濾過後、さらに水で洗浄、乾燥し、ポリアミドイミドを得た。
得られたポリアミドイミドのガラス転移温度は188℃、5%重量減少温度は340℃であった。数平均分子量、重合度は、樹脂中にゲル化物が多く、測定できなかった。
実施例1
製造例1で得たポリアミドイミド(P−1)100質量部をクボタ製ロスインウェイト式連続定量供給装置CE−W−1を用いて計量し、スクリュー径37mm、L/D40の同方向二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS)の主供給口に供給した。押出機のバレル温度設定は、300℃〜340℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量35kg/時間として溶融混練を行い、サイドフィーダーより(GF−1)を30質量部供給しさらに混練を行った。最後にダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングしてポリアミドイミド樹脂組成物ペレットを得た。
得られたポリアミドイミド樹脂組成物を十分に乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製EC100)を用いて、シリンダー温度330℃、金型温度110℃の条件で、ISO178に準拠した試験片を作製した。
実施例2〜28
ポリアミドイミド樹脂組成物の樹脂組成、成形条件を変更する以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリアミドイミド樹脂組成物ペレットを得て射出成形を行い、試験片を作製した。
比較例1
ポリアミドイミド樹脂組成物の樹脂組成、成形条件を変更する以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリアミドイミド樹脂組成物ペレットを得て射出成形を行おうとしたが、溶融粘度が高すぎて、射出成形することができなかった。
実施例で得られたポリアミドイミド樹脂組成物の樹脂組成、成形条件、得られた試験片の特性値を表2、3に示す。
実施例1〜28で得られたポリアミドイミド樹脂組成物は、曲げ強度、曲げ弾性率に優れていた。

Claims (6)

  1. 一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミドと強化材とを含有するポリアミドイミド樹脂組成物:
    (式中、R、Rは、独立して、芳香環、脂肪族環または脂肪族炭化水素を有する二価の残基を示し、R、Rは、独立して、芳香環または脂肪族環を有する三価の残基を示し、それぞれの環に結合した水素原子は他の原子または原子団に置換されていてもよい。)。
  2. 強化材が、ガラス繊維、炭素繊維およびステンレス繊維からなる群より選ばれた1種以上の繊維状強化材である請求項1に記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
  3. さらに酸化防止剤を含有する請求項1または2に記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
  4. ポリアミドイミドの繰り返し単位の数が4〜1000である請求項1〜3いずれかに記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
  5. ポリアミドイミドが少なくとも100℃のガラス転移温度を有する請求項1〜4いずれかに記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5いずれかに記載のポリアミドイミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
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