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JP2018051610A - 溶接継手の製造方法、及び溶接継手 - Google Patents

溶接継手の製造方法、及び溶接継手 Download PDF

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JP2018051610A JP2016192093A JP2016192093A JP2018051610A JP 2018051610 A JP2018051610 A JP 2018051610A JP 2016192093 A JP2016192093 A JP 2016192093A JP 2016192093 A JP2016192093 A JP 2016192093A JP 2018051610 A JP2018051610 A JP 2018051610A
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Abstract

【課題】ナゲット内部の欠陥が少ない溶接継手を得る。【解決手段】溶接継手の製造方法は、少なくとも片面にアルミニウムめっき層のある鋼板と前記鋼板に密着して配置された他の鋼板とのラップシーム溶接をする第一工程と、第一工程でラップシーム溶接をした経路の少なくとも一部を、電極輪を用いて加圧及び通電する第二工程と、を備える。また、本発明に係る溶接継手10は、少なくとも片面にアルミニウムめっき層のある鋼板と前記鋼板に密着して配置された他の鋼板とが重ね合わされた溶接継手10であって、連続的に形成されたナゲット12を含んでおり、ナゲット12内部には、鋼板に平行な平面状の圧接部30が存在する。【選択図】図1

Description

本発明は、溶接継手の製造方法、及び溶接継手に関する。
鋼板同士を重ね合わせて接合するための技術として、ラップシーム溶接が知られている。ラップシーム溶接は、ナゲットを連続的に形成させることが出来るため、気密性や防水性が必要な部品の製造に好適であり、例えば車両用燃料タンクの製造に用いられている(特許文献1参照)。
特開2002−144066号公報
本発明者は、アルミニウムめっき鋼板同士のラップシーム溶接をすると、図6に示すようにナゲット12内部に穴状の欠陥40(以下、単に「欠陥」という。)が残ることが多い事実に気が付いた。さらに調査すると、この欠陥はアルミニウムめっき鋼板と非めっき鋼板とのラップシーム溶接でも生じることに気がついた。
本発明者は、2枚の鋼板をラップシーム溶接する場合において、少なくとも片方の鋼板がアルミニウムめっき鋼板である場合には、ナゲット内部に欠陥が生じ、その欠陥が溶接継手における疲労強度の低下を懸念させると考えた。
そこで、本発明の目的は、ナゲット内部の欠陥が少ない溶接継手を得ることが出来る溶接継手の製造方法、及び、ナゲット内部の欠陥が少ない溶接継手を提供することである。
本発明者は、ナゲット内部にガスが発生する要因がないため、ナゲット内部にできる欠陥は真空状態であると推測した。
そこで、本発明者は、溶接した部分を軟化させつつ加圧する工程を設けることで、欠陥を潰せるのではないかと考えた。さらに、本発明者は、電極輪を用いてこの工程を行えると考えた。
そして、本発明者は、実験を行い、効果の程度を確認した。
本発明は、以上の検討及び実験を重ねることにより完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)少なくとも片面にアルミニウムめっき層のある鋼板と前記鋼板に密着して配置された他の鋼板とのラップシーム溶接をする第一工程と、
前記第一工程でラップシーム溶接をした経路の少なくとも一部を、電極輪を用いて加圧及び通電する第二工程と、
を備える溶接継手の製造方法。
(作用効果)
第一工程で、少なくとも片面にアルミニウムめっき層のある鋼板とこの鋼板に密着して配置された他の鋼板とをラップシーム溶接すると、ラップシーム溶接した経路に沿って、連続的にナゲットが形成される。なお、この連続的とは、ナゲットが切れ目なく延在していることを意味する。なぜなら、切れ目がある(断続的)と、継手の機械特性が低下し、また部品によっては気密性が保てなくなることでその要求を満たさなくなる。このように連続的にナゲットを形成させたとき、上述したとおり、ナゲット内部に欠陥が残る場合がある。
次に、第二工程で、第一工程でラップシーム溶接をした経路の少なくとも一部を、電極輪を用いて加圧及び通電する。すると、第一工程後にナゲット内部に欠陥が残っていた場合、その欠陥は、電極輪を用いて加圧及び通電することにより潰されて減る。具体的には、通電により第一工程でラップシーム溶接された部分が軟化し、加圧によりナゲット内部の欠陥が潰れる。
よって、この製造方法によれば、ナゲット内部の欠陥が少ない溶接継手を製造することができ、その結果、溶接継手の機械特性が向上する。
(2)前記第二工程での電流値は、前記第一工程での電流値より低い、
(1)に記載の溶接継手の製造方法。
(3)前記第二工程での加圧力は、前記第一工程での加圧力よりも高い、
(1)に記載の溶接継手の製造方法。
(4)前記第二工程での加圧力は、前記第一工程での加圧力よりも高い、
(2)に記載の溶接継手の製造方法。
(5)前記第二工程では、前記第一工程で生成されたナゲットを再溶融させない、
(1)〜(4)のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
(6) 前記第一工程では、閉じた経路のラップシーム溶接をし、
前記第二工程では、前記第一工程で用いた電極輪をそのままを用いて前記第一工程でラップシーム溶接をした経路を加圧及び通電する、 (1)〜(5)のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
(7)少なくとも片面にアルミニウムめっき層のある鋼板と前記鋼板に密着して配置された他の鋼板とを重ね合わせた溶接継手であって、
前記溶接継手は、連続的に形成されたナゲットを含んでおり、
前記ナゲット内部には、前記鋼板に平行な平面状の圧接部が存在する、
溶接継手。
以上説明したように、本発明に係る溶接継手の製造方法によれば、ナゲット内部の欠陥が少ない溶接継手を得ることが出来る。
図1は、本発明に係る溶接継手を示す模式的な断面図である。 図2は、第二工程を行わなかった場合の溶接継手を示す模式的な断面図である。 図3は、第二工程においてナゲットの再溶融が起きた場合の溶接継手を示す模式的な断面図である。 図4は、シーム溶接する経路の一例を示す図である。 図5は、実験例1〜6における溶接継手を観察したX線透過写真である。 図6は、アルミニウムめっき鋼板同士のラップシーム溶接をして得られた溶接継手の断面写真であって、ナゲット内部に欠陥が残っている様子を示すものである。
以下、本発明の実施形態について説明する。
<溶接継手の製造方法>
本発明の溶接継手の製造方法は、少なくとも片方がアルミニウムめっき鋼板である2枚の鋼板が重ね合わされた状態で接合された溶接継手を得る方法である。言い換えると、少なくとも片面にアルミニウムめっき層のある鋼板とこの鋼板に密着して配置された他の鋼板とを重ね合わせた溶接継手を得る方法である。
本発明の溶接継手の製造方法は、例えば、車両用燃料タンクの製造過程において使用できる。具体的には、最中型燃料タンクを構成する上殻部及び下殻部を、互いのフランジ部同士を重ね合わせた状態で接合する際に使用できる。
(被加工材)
被加工材としての2枚の鋼板は、少なくとも片方がアルミニウムめっき鋼板である。つまり、被加工材としての2枚の鋼板は、片方がアルミニウムめっき鋼板、もう片方が非めっき鋼板であってもよいし、両方がアルミニウムめっき鋼板であってもよい。アルミニウムめっき鋼板は、少なくともその片面にアルミニウムめっき処理が施された鋼板である。つまり、アルミニウムめっき鋼板は、片面にアルミニウムめっき層のある鋼板、または、両面にアルミニウムめっき層のある鋼板である。
(被めっき材)
被めっき材は、軟鋼であってもよいし硬鋼であってもよい。つまり、被めっき材の引張強さや炭素の含有量などは、特に限定されない。
(めっき皮膜)
めっき皮膜は、アルミニウムめっき皮膜(アルミニウムめっき層)であれば特に限定されない。アルミニウムめっき層とは、特に断らない限り、めっき層に含まれるアルミニウムの割合が50質量%以上のめっき皮膜を意味する。したがって、アルミニウムめっき層は、例えば、ケイ素(Si)が添加されたAl−Si合金浴によって得られたものであってもよい。例えば、10質量%のケイ素が添付されたアルミニウムとケイ素の合金浴によって得られたものであってもよい(Al−10Si%)。勿論、めっき皮膜に含まれるアルミニウムの割合は、70質量%以上であってもよいし、80質量%以上であってもよいし、90質量%以上であってもよい。
<第一工程と第二工程>
本発明の溶接継手の製造方法は、第一工程と、その後に行う第二工程と、を備える。以下、第一工程と第二工程について順番に説明する。
<第一工程>
第一工程は、少なくとも片方の鋼板がアルミニウムめっき鋼板である鋼板同士のラップシーム溶接をする工程である。
なお、ラップシーム溶接とは、重ね合わせた継手に適用されるシーム溶接を意味する(JIS Z 30D1−6:2013)。シーム溶接とは、円板電極(ローラ電極、電極輪)を用いて母材への加圧及び通電を行い、電極を回転しながら継手に沿って連続的に行う抵抗溶接を意味する(JIS Z 30D1−6:2013)。
(シーム溶接をする経路、シーム溶接線)
シーム溶接をする経路(以下、単に「経路」という。また「シーム溶接線」ということもある。)は、特に限定されない。例えば、開いた経路であってもよいし、閉じた経路であってもよい。
最中型燃料タンクを製造する場合を例にとると、上殻と下殻とに形成されたフランジにおいて一周の経路をシーム溶接することになるので、閉じた経路となる。
(電極輪:電極端面形状)
シーム溶接に用いる電極輪の形状は、特に限定されず、ベベル形であってもよいし、ラジアス形であってもよい。
ラジアス形の場合の電極先端の曲率半径は、特に限定されず、例えば8mm程のものが用いられる。
電極輪の駆動方式は、特に限定されず、モータによる直動でもよいし、ワークによる従動でもよい。直動の方式の場合、例えば、電極軸を直接駆動するものであってもよいし、電極輪の円周上を駆動するナール駆動のものであってもよい。
電極輪の材質は、特に限定されないが銅合金であることが好ましい。例えばCr−Cu製のものが用いられる。
なお、アルミニウムめっき鋼板のラップシーム溶接をした場合にナゲット内部に欠陥が残る理由の1つとして、本発明者は、アルミニウムが亜鉛よりも電極輪を構成する銅との付着性が高いことがあると考えた。すなわち、めっき皮膜を構成するアルミニウムの電極輪に対する付着力が高いため、重ね合わされたアルミニウムめっき鋼板が剥がされる方向の力を受けて欠陥が出来やすいということである。しかしながら、電極に接触する面にアルミニウムめっきが存在しない場合においても欠陥が生じることから、これのみでは現象を説明できない。
このようにアルミニウムめっき鋼板のラップシーム溶接で欠陥が多くなる原因は完全には解明されていない。
(通電方法)
第一工程での通電方法は、特に限定されない。本実施形態の説明では、基本的に断続通電をする場合を例にとるが、連続通電であってもよい。
(溶接条件:電流値、加圧力、溶接速度)
第一工程のシーム溶接の溶接条件である電流値、加圧力及び溶接速度は、特に限定されない。
所望の強度から、必要なナゲット幅(シーム溶接線方向に対して直角な面で切断して断面試験したときの接合界面で測定したナゲットの幅)やナゲット厚さ(接合界面に対して垂直方向に計測する。2枚又はそれ以上の板にわたって形成されたナゲットの総厚さ)を求め、求めたナゲット幅やナゲット厚さを得るための条件を適宜決定すればよい。
(電流値)
電流値は、交流の場合は設定値を意味する。
(加圧力)
加圧力は、一対の電極輪により被加工材に加えられる加圧力を意味する。
(溶接速度)
溶接速度は、経路(シーム溶接線)に沿って、一対の電極輪を溶接対象の鋼板に対して相対的に移動させる速度を意味する。
なお、経路(シーム溶接線)に沿って、常に一定の溶接速度である必要はない。例えば、経路のうち直線状の区間では溶接速度を早くし、曲がった区間では溶接速度を遅くするなどしてもよい。
<第二工程>
第二工程は、一対の電極輪を用いて、第一工程でシーム溶接をした経路の少なくとも一部を加圧及び通電する工程である。
(経路)
第二工程で加圧及び通電する経路、すなわち第二工程の経路は、第一工程の経路の少なくとも一部である。
つまり、先にシーム溶接した経路のうちの全ての経路を、電極輪を用いて加圧及び通電することは、必ずしも必要ない。電極輪を用いて加圧及び通電する経路は、先にシーム溶接した経路のうちの一部であってもよい。但し、第二工程の経路は、第一工程の経路の全部であることが好ましい。
(進行方向)
第二工程で経路に沿って電極輪を相対的に進める方向(以下、「進行方向」ということがある。)は、特に限定されず、第一工程と同じ方向であってもよいし、逆の方向であってもよい。
シーム溶接した経路が開いた経路の場合は、第二工程の進行方向が逆方向であると、第一工程終了時の位置から第二工程を開始できるので生産性の観点から好ましい。
シーム溶接した経路が閉じた経路の場合は、同じ方向であっても、第一工程終了時の位置から第二工程を開始できる。この場合、第一工程によって加熱された部分の温度低下を待つ必要性が少なく、生産性が高い。
(電極輪)
第二工程で用いる電極輪は、第一工程で用いた電極輪をそのまま用いてもよいし、また、第一工程で用いた電極輪とは異なる電極輪を用いてもよい。換言すると、第二工程で用いる電極輪は、第一工程で用いる電極輪と同じでもよいし、違ってもよい。
第二工程で用いる電極輪が第一工程で用いる電極輪と同じであると、装置コストの観点から好ましい。
(通電方法)
第二工程での通電方法は、特に限定されない。第一工程での通電方法と同じでもよいし、異なっていてもよい。第一工程と同じ通電方法とすることで、第二工程を簡易に実施できる。
(ナゲットの再溶融について)
第二工程では、第一工程で生成されたナゲットを極力再溶融させないことが好ましい。
なぜならば、ナゲットを再溶融させると、第二工程で新たなナゲットが生成され、第二工程によるナゲット内部に新たに欠陥が発生する可能性があるためである。また、第二工程で通電をすることの意義は、第一工程で生成された欠陥を加圧により潰すために、被加工材における第一工程でシーム溶接を行った部分を軟化させ、欠陥部の圧接を確実に実施することにあるためである。
(再溶融させないようにするための条件)
第一工程で生成されたナゲットを再溶融させないための制御は、電流値、加圧力、進行速度などの条件を調整することで行うことができる。
電流値は、上げると再溶融されやすくなり、下げると再溶融されにくくなる。
加圧力は、上げると再溶融されにくくなり、下げると再溶融されやすくなる。
進行速度は、上げると再溶融されにくくなり、下げると再溶融されやすくなる。
第一工程で生成されたナゲットを再溶融させないための条件は、被加工材の条件(例えば、鋼板の組成、鋼板の厚み及びその組み合わせ、アルミニウムめっきの付着量など)により変化するため、一概に基準を示すことはできない。
しかし、第二工程でナゲットが再溶融したか否かは、第二工程の後、被加工材を切断して断面を観察することで確認できる。そのため、上述の条件を変えて数回の試行を行うことにより、特定の被加工材について、ナゲットを再溶融させないための条件を得ることは当業者にとって容易である。
なお、図3に、第二工程で再溶融した場合の溶接継手の断面図を示す。この図における再溶融ナゲット14(再溶融凝固部)が存在する場合、第二工程でナゲットが再溶融したと判る。
(加熱通電条件のパターン)
以下、第二工程の条件について、代表的な複数のパターン1〜4を説明する。
(パターン1:電流値のみ変える)
パターン1は、第二工程の加圧力及び進行速度を第一工程から変化させず、第二工程の電流値を、第一工程よりも低くする。つまり、第二工程は、電流値のみを、第一工程から変化させる。
この場合、電流値のみを第一工程から変化させればよいので、第二工程を簡易に実施できる。
(パターン2:加圧力のみ変える)
パターン2は、第二工程の電流値及び進行速度を第一工程から変化させず、第二工程の加圧力を、第一工程よりも高くする。つまり、第二工程では、加圧力のみを、第一工程から変化させる。
この場合、加圧力のみを第一工程から変化させればよいので、第二工程が簡易に実施できる。また、加圧力を高めることは、欠陥を潰す力を高めることになる。したがって、この方法によれば、第一工程から加圧力を高くするだけで、ナゲットの再溶融を抑制しつつ、第一工程により生成された欠陥を効率よく潰して減らすことができる。
(パターン3:電流値と加圧力を変える。)
パターン3は、第二工程の進行速度を第一工程から変化させず、第二工程の電流値を第一工程よりも低くすると共に、第二工程の加圧力を第一工程よりも高くする。つまり、第二工程は、電流値及び加圧力を、第一工程から変化させる。
ただし、鋼板の組成や強度によっては、鋼板が溶融しやすい場合があり、そういった場合、パターン2のように電流値を第一工程から変化させずに加圧力を高めるだけでナゲットの再溶融を防止することは困難である。この点、パターン3によれば、ナゲットの再溶融を防止することが容易である。すなわち、電流値を下げかつ加圧力を高めることでナゲットの再溶融を防止すると共に、加圧力を高めることで第一工程により生成された欠陥を効率よく潰して減らすことができる。
なお、生産効率の観点から、第一工程の進行速度は、可能な限り高い速度が採用されることが多い。そのため、第二工程の進行速度を第一工程の進行速度よりも上げることが困難な場合がある。この点からも、進行速度以外の条件である電流値及び加圧力を第一工程と異ならせることで第二工程を行うパターン3は有効である。
(パターン4:電流値、加圧力、進行速度のすべてを変える。)
パターン4は、第二工程の電流値を第一工程よりも低くし、第二工程の加圧力を第一工程よりも高くし、第二工程の進行速度を第一工程よりも高くする。つまり、第二工程は、電流値、加圧力及び進行速度のすべてを、第一工程から変化させる。
なお、上述したとおり、第二工程の進行速度を第一工程の進行速度よりも上げることは、困難な場合が多い。しかし、第一工程ではナゲットを連続的に形成する必要があるのに対し、第二工程ではその必要がない。そのため、第一工程では、ナゲットが非連続となることを避けるために溶接速度(進行速度)を抑える必要があるのに対し、第二工程にはこのような事情がない。したがって、第二工程の進行速度を第一工程の進行速度よりも高くすることができることがあり、このような場合にパターン4を採用できる。パターン4によれば、第二工程の作業時間が短縮されるので、生産性の観点から好ましい。
以上、第二工程の条件(電流値、加圧力及び進行速度)について、第一工程の電流値、加圧力及び進行速度との比較を用いて説明したが、この比較は、経路における同一の部分に着目したときの比較である。
具体例で説明する。図4に示すように、第一工程の経路Rが曲がった区間を含んでいる場合などでは、経路のうち曲がった区間をシーム溶接するときは、進行速度を落としつつ、電流値を下げることがある。例えば、図4の区間Aでは、電流値を10kAとし、区間Bでは、電流値を8kAとして進行速度を下げる場合である。
このような第一工程を行った後、第二工程の電流値を第一工程の電流値よりも低くするとは、第二工程の区間Aでの電流値を10kAよりも低い値(例えば9kA)とし、第二工程の区間Bでの電流値を8kAよりも低い値(例えば7kA)とするということを意味する。
電流値以外の条件である加圧力及び進行速度についても同様である。
(結果物:ラップシーム溶接継手)
図1は、本発明の溶接継手の製造方法により製造される溶接継手10、すなわち本発明に係る溶接継手10を示す。図2は、第一工程の後、第二工程を行わなかった場合に得られる溶接継手100を示す。図3は、第二工程で、第一工程で得られたナゲットが再溶融した場合の溶接継手200を示す。
なお、いずれの溶接継手も、シーム溶接によって製造された溶接継手であり、連続的に形成されたナゲット12を含む。すなわち、経路に沿ってナゲットが連続的に形成されている。ナゲット(溶融凝固部)とは、溶接した部分に生じた、溶融してその後凝固した部分を意味する。
図1に示すように、本発明に係る溶接継手10は、第一工程で生成されたナゲット12が第二工程で再溶融されて凝固した部分、すなわち再溶融ナゲット14(図3参照)を含まない。
また、本発明に係る溶接継手10は、ナゲット12の内部に、面状(断面視の場合は線状)の圧接部30が存在する。圧接部30は、図2に示す欠陥が、第二工程によって板圧方向に押し潰されてできた部分である。
ナゲット内部に面状の圧接部が存在するか否かは、以下の方法により確認することが出来る。
即ち、ナゲット部をシーム溶接線方向に対して並行な面で切断し、断面観察を行うことで、断面方向から観察した時に線状の圧接部の有無を確認することができる。
なお、本発明に係る第二工程は、第一工程による欠陥のすべてを潰して減らすものに限定されないため、本発明に係る溶接継手10は、ナゲット12の内部に欠陥が存在してもよい。
最後に、実施例によって本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
(被加工材)
被加工材(供試材)には、表1に示すアルミニウムめっき鋼板を用いた。
ここで、機械的特性値のうち、YPは降伏応力を意味し、TSは引張強さを意味し、ELは伸びを意味する。
(経路)
被加工材の大きさは、幅100mm、長さ240mmである。経路は、重ね合わせた被加工材の幅方向中央部を長さ方向に延びる約180mm長(長さ方向で30〜210mmの範囲)の経路とした。
(電極輪)
電極輪は、直径350mm、厚み8mm、先端曲率半径R=8mmのCr−Cu製のものを用いた。駆動方式は、ナール駆動とした。
表2に実験条件及び実験結果を示す。
(通電)
単相交流(50Hz)を用い、通電サイクルを3−2cycle(on−off)とする断続通電とした。
電流値(実効値)は、第一工程では16kAとし、第二工程では表1のとおり変化させた。
(加圧力)
第一工程の加圧力は、500kgf(4.9kN)とした。他方、第二工程の加圧力は、実験例2〜4では第一工程と同じ500kgとし、実験例5、6では第一工程よりも高い800kgfとした。
(進行速度)
進行速度は、第一工程及び第二工程共に全ての実験例で2.0m/minとした。
以上の条件で実験を行い、得られた溶接継手について調査をした。具体的には、X線透過写真を用いて観察し、180m長のシーム溶接部のうち中央100mm(長さ方向位置で40〜140mmの範囲)の欠陥の数を調べた。
図5に、ぞれぞれの実験例についてのX線写真を示す。表1に、ぞれぞれの実験例について欠陥の数(X線観察結果)を示す。
実験例1(比較例)は、第二工程を行わない例であり、図5に示すようにシーム溶接部に沿って多数の欠陥が残っており、表1に示すように100m長の範囲の欠陥の数は34個である。
実験例2〜6(実施例)は、第二工程を行った例である。
このうち実験例2〜4は、加圧力を第一工程と同じ500kgfとし、電流値を第一工程よりも低くした実験例である。
実験例2,3では、欠陥が減少していた。実験例4では、比較例と比べて減少していたが、実験例2,3の比べて欠陥が多かった。実験例4では第二工程の電流値が高いために、第一工程で生成されたナゲットの再溶融が起きたためと考えられる。
また、実験例5、6は、電流値を第一工程よりも低い10kA、12kAとし、かつ、加圧力を第一工程よりも大きな800kgfとした実験例である。
図5及び表1に示すように、実験例5、6では、欠陥がほぼなくなっていた。
以上の実験例から、以下のことがわかる。
すなわち、アルミニウムめっき鋼板同士のラップシーム溶接をし(第一工程)、その後ラップシーム溶接をした経路と同じ経路を電極輪を用いて加圧及び通電する(第二工程)ことで、ナゲット内部の欠陥を減らすことが出来る。また、第二工程での電流値を第一工程での電流値より低くすることで、ナゲット内部の欠陥を効率的に減らすことが出来る。さらに、第二工程での加圧力を第一工程よりも高くすることを組み合わせることで、より一層効率的にナゲット内部の欠陥を減らすことが出来る。
本発明によれば、ナゲット内部の欠陥が少ないラップシーム溶接継手を得ることが出来る。そのため、軟鋼板にアルミニウムめっき処理を施した材料で製造されるトラック用燃料タンクの製造過程に用いる方法として有用である。また、母材(被めっき材)の強度に対して溶接継手の強度の低下が顕著になりやすい、高強度鋼板のアルミニウムめっき鋼板同士の接合にも有用である。
10 溶接継手
12 ナゲット
14 再溶融ナゲット
30 圧接部

Claims (7)

  1. 少なくとも片面にアルミニウムめっき層のある鋼板と前記鋼板に密着して配置された他の鋼板とのラップシーム溶接をする第一工程と、
    前記第一工程でラップシーム溶接をした経路の少なくとも一部を、電極輪を用いて加圧及び通電する第二工程と、
    を備える溶接継手の製造方法。
  2. 前記第二工程での電流値は、前記第一工程での電流値より低い、
    請求項1に記載の溶接継手の製造方法。
  3. 前記第二工程での加圧力は、前記第一工程での加圧力よりも高い、
    請求項1に記載の溶接継手の製造方法。
  4. 前記第二工程での加圧力は、前記第一工程での加圧力よりも高い、
    請求項2に記載の溶接継手の製造方法。
  5. 前記第二工程では、第一工程で生成されたナゲットを再溶融させない、
    請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法。
  6. 前記第一工程では、閉じた経路のラップシーム溶接をし、
    前記第二工程では、前記第一工程で用いた電極輪をそのままを用いて前記第一工程でラップシーム溶接をした進行方向と同じ経路で加圧及び通電する、
    請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法。
  7. 少なくとも片面にアルミニウムめっき層のある鋼板と前記鋼板に密着して配置された他の鋼板とを重ね合わせた溶接継手であって、
    前記溶接継手は、連続的に形成されたナゲットを含んでおり、
    前記ナゲット内部には、前記鋼板に平行な平面状の圧接部が存在する、
    溶接継手。
JP2016192093A 2016-09-29 2016-09-29 溶接継手の製造方法、及び溶接継手 Active JP6780417B2 (ja)

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WO2019181607A1 (ja) 2018-03-19 2019-09-26 三菱重工業株式会社 複合材組立体
WO2023107907A1 (en) * 2021-12-06 2023-06-15 Arconic Technologies Llc Methods for resistance spot welding, resistance spot welding systems and apparatus, and parts formed using resistance spot welding

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