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JP2018048061A - ガラス物品の製造方法およびガラス物品 - Google Patents

ガラス物品の製造方法およびガラス物品 Download PDF

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JP2018048061A JP2017158181A JP2017158181A JP2018048061A JP 2018048061 A JP2018048061 A JP 2018048061A JP 2017158181 A JP2017158181 A JP 2017158181A JP 2017158181 A JP2017158181 A JP 2017158181A JP 2018048061 A JP2018048061 A JP 2018048061A
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匠 御法川
Takumi Minorikawa
匠 御法川
高野 智弘
Toshihiro Takano
智弘 高野
愛知 井上
Yoshitomo Inoue
愛知 井上
雨生 郎
Yusheng Lang
雨生 郎
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Abstract

【課題】容易なプロセスにて短時間に、防汚層が形成されたガラス物品を加工する加工方法を提供すること。【解決手段】相互に対向する第1主面および第2主面を有するガラス板の、前記第1主面上に防汚層が形成されたガラス物品の前記第1主面側からレーザー光を照射して前記防汚層を選択的に除去することを特徴とするガラス物品の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、表面に防汚層を有するガラス物品の製造方法およびガラス物品に関する。
タッチパネル付きディスプレイは最表面にカバーガラスが配設されることがある。該カバーガラスは使用時に人間の指が触れるため、指紋、皮脂、汗等による汚れが付着しやすい。そのため、前記カバーガラスは、人間の指が触れる部分(操作する側)に、撥水・撥油性を備える防汚層が形成される。
さらに、ディスプレイが表示する画像の視認性を向上する目的で前記カバーガラスに反射防止層が形成されることがある。
カバーガラスの用途によっては、最表面に部材を取り付けることが要求される。例えば、クラスタ用のカバーガラスでは、使用時に人間の指が触れる側の表面にスピードメーター等の部材を取り付けが必要になる。このとき、カバーガラス最表面の防汚層上に部材を取り付けると十分な接着性が確保できないため、部材が取り付けられない、もしくは外れやすくなる。このため、カバーガラス上の部材を取り付ける領域には、防汚層が形成されていないことが望ましい。
また、部材を取り付ける領域には、反射防止層が形成されていてもよいが、されてなくてもよい。
カバーガラス上の部材を取り付ける領域に、防汚層を形成しない方法としては、防汚層を成膜する際、カバーガラス上の部材を取り付ける領域に、マスキングして、防汚層をその領域につけない方法がある。しかしながら、マスキングの位置精度を出すことは困難であり、工程も煩雑となる。したがって、防汚層を成膜後、不要な部分の防汚層を除去することが望ましい。
特許文献1では、防汚層が形成された対象部材を、相対湿度が50%以上の水蒸気雰囲気に配置し、この状態で、防汚層に対して、真空紫外線光を照射することにより防汚層を除去し得ることが記載されている。
しかしながら、上記した方法では、防汚層を除去するために、除去すべき領域に相当する寸法形状の開口を有するマスクを使用する必要がある。このため、マスクとガラスの位置合わせをする工程を伴い、そのための時間を要することとなる。加えて、防汚層を除去する際の工程では、相対湿度を制御する必要があり、プロセスが煩雑となるという課題が存在した。さらに、真空紫外線光では、出力が小さいため、防汚層の除去には、時間を要するといった課題も存在した。
特開2014−100634号公報
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであって、防汚層が形成されたガラス物品から前記防汚層を容易かつ短時間に除去する製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、防汚層を有する領域と防汚層を有さない領域を有するガラス物品の提供を目的とする。
[1]
相互に対向する第1主面および第2主面を有するガラス板の、前記第1主面上に防汚層が形成されたガラス物品の前記第1主面側からレーザー光を照射して前記防汚層を選択的に除去することを特徴とするガラス物品の製造方法。
[2]
前記レーザー光を発振するレーザー装置が、COレーザー装置、YVOレーザー装置またはYAGレーザー装置である[1]に記載のガラス物品の製造方法。
[3]
前記レーザー装置の出力が1〜1000Wである[1]または[2]に記載のガラス物品の製造方法。
[4]
前記ガラス板の前記第1主面と、前記防汚層の間にさらに反射防止層が形成された[1]〜[3]のいずれか1に記載のガラス物品の製造方法。
[5]
相互に対向する第1主面および第2主面を有するガラス板の、前記第1主面上に防汚層が形成されたガラス物品の第1主面側からレーザー光を照射して前記防汚層を選択的に除去した後、前記防汚層が除去された領域に、部材を接着することを特徴とする、部材を有するガラス物品の製造方法。
[6]
前記ガラス板の前記第1主面と、前記防汚層の間にさらに反射防止層が形成された[5]に記載の部材を有するガラス物品の製造方法。
[7]
前記部材が樹脂、金属またはゴムの少なくとも一つ以上を含む[5]または[6]に記載の部材を有するガラス物品の製造方法。
[8]
相互に対向する第1主面および第2主面を有するガラス板と、
前記第1主面に防汚層からなる防汚部と、防汚層を有さず微細な凹凸を有する開口部と、を含むガラス物品。
[9]
前記開口部の表面粗さRaが5nm以上である、[8]に記載のガラス物品。
[10]
前記開口部の十点平均粗さRzが17nm以上である、[8]または[9]に記載のガラス物品。
[11]
前記開口部において、蛍光X線分析法で得られるフッ素(F)成分由来のKα特性X線強度が0.15kcps以下である、[8]〜[10]のいずれか1に記載のガラス物品。
[12]
前記第2主面においてガラス板の周縁部に印刷層を有し、
前記第1主面において前記開口部が、対向する第2主面に前記印刷層が有する領域の中に形成される[8]〜[11]のいずれか1に記載のガラス物品。
[13]
前記防汚部において、ガラス板の第1主面と防汚層との間に反射防止層を有する、[8]〜[12]のいずれか1に記載のガラス物品。
[14]
前記開口部の水接触角が105°以下である、[8]〜[12]のいずれか1に記載のガラス物品。
本発明の製造方法によれば、容易かつ短時間に、防汚層が形成されたガラス物品を製造することができる。
本発明のガラス物品は、防汚層を有する領域と、防汚層を有さない領域を有し、防汚層を有さない領域の表面粗さが所定の範囲であるため、当該領域に部材を強固に取り付けることができる。
図1(a)、(b)および(c)は本発明の第一の実施形態に係るガラス物品の製造方法の説明図である。 図2(a)、(b)、(c)および(d)は本発明の第二の実施形態に係るガラス物品の製造方法の説明図である。 図3(a)および(b)は本発明の第一の実施形態に係るガラス物品への部材の取り付け方法の説明図である。 図4(a)および(b)は本発明の第二の実施形態に係るガラス物品への部材の取り付け方法の説明図である。 図5は本発明の開口部を有するガラス物品の模式断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態は、相互に対向する第1主面および第2主面を有するガラス板の、前記第1主面上に防汚層が形成されたガラス物品の製造方法であって、前記ガラス物品の第1主面側からレーザー光を照射することにより前記防汚層を選択的に除去することを特徴とする。
なお、本明細書において、特に断りのない場合「ガラス物品」とは、相互に対向する第1主面および第2主面を有するガラス板の、前記第1主面上に防汚層が形成されたものをいう。
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態は、相互に対向する第1主面および第2主面を有するガラス板の、前記第1主面上に反射防止層と防汚層が形成されたガラス物品の製造方法であって、前記ガラス物品の第1主面側からレーザー光を照射することにより前記反射防止層と前記防汚層の少なくとも一つを選択的に除去することを特徴とする。
[ガラス物品の製造方法]
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係るガラス物品の製造方法の説明図であり、具体的にはガラス物品表面の防汚層5を除去する方法の説明図である。
図1(a)はガラス物品9の断面図であり、上述の通りガラス板1が第1主面2と第2主面3を有しており、前記第1主面2上に防汚層5が形成されている。ガラス板1の第1主面2と第2主面3は、相互に対向する。
そして、図1(b)は、レーザー光8によるガラス物品9の加工方法、具体的には防汚層5を除去する工程の説明図である。
さらに、図1(c)は、防汚層5が選択的に除去されたガラス物品の断面を示す説明図である。
(第二の実施形態)
図2は、本発明の第二の実施形態に係るガラス物品の製造方法の説明図であり、具体的にはガラス物品表面の反射防止層6と防汚層5の少なくとも一つを除去する方法の説明図である。
図2(a)はガラス物品9の断面図であり、上述の通りガラス板1が第1主面2と第2主面3を有しており、前記第1主面2上に反射防止層6と防汚層5が形成されている。ガラス板1の第1主面2と第2主面3は、相互に対向する。
そして、図2(b)は、レーザー光8によるガラス物品9の加工方法、具体的には反射防止層6と防汚層5の少なくとも一つを除去する工程の説明図である。
さらに、図2(c)は、反射防止層6と防汚層5が選択的に除去されたガラス物品の断面を示す説明図、図2(d)は、防汚層5のみが選択的に除去されたガラス物品の断面を示す説明図である。
[反射防止層と防汚層の除去方法]
防汚層5、または、反射防止層6と防汚層5の少なくとも一つを除去するため、前記ガラス物品9の第1主面2にレーザー光8を照射する。
前記レーザー光8を照射するレーザーは、CO、YAG、YVO等のレーザーを用いることができる。すなわち、これらのレーザーを発振するレーザー装置を使用できる。金属に付着したコーティング剤を、YAGレーザーを使用して除去することはよく知られているが、ガラス板が母材となる場合、YAGレーザーの波長はガラス板を透過してしまうので、ガラス界面でレーザー光を吸収できるCOレーザーを用いることが効率の面から好ましい。また、ガラス板の損傷を低減できる点においては、YAGレーザーが好ましい。
前記レーザー装置の出力は、1〜1000W、好ましくは、5〜500W、より好ましくは10〜500W、さらに好ましくは50〜200Wである。出力が1W以上であると、スポット径を大きくすることができ作業効率の観点での観点で好ましく、出力が1000W以下であると、ガラス板の温度が高温にならず、板上の反射防止層6や防汚層5や印刷に影響を及ぼさない観点で好ましい。
なお、スポット径は、除去する範囲に合わせて選択するものとする。
前記レーザーは、CWレーザーおよびパルスレーザーのいずれを選択してもよい。
前記レーザー光により除去される反射防止層6や防汚層5の領域は、ガラス板上の内部(周囲がすべて反射防止層6や防汚層5に囲まれている)、外周部のいずれであってもよく、除去される箇所の数は単数でも複数でもよく、除去される形状は、線状、四角形状、三角形状、円形状等のいずれであってもよい。前記除去される領域、箇所、形状は、取り付ける部材の形状によって任意に選択することができる。
[ガラス物品への部材の取り付け方法]
(第一の実施形態)
図3は、第一の実施形態に係るガラス物品への部材の取り付け方法の説明図である。
図3(a)は、防汚層5が除去されたガラス物品の断面を示す図である。
図3(b)は、防汚層5が除去された領域に部材が取り付けられたガラス物品の断面を示す説明図である。
(第二の実施形態)
図4は、第二の実施形態に係るガラス物品への部材の取り付け方法の説明図である。
図4(a)は、反射防止層6と防汚層5が除去されたガラス物品の断面を示す図である。
図4(b)は、反射防止層6と防汚層5が除去された領域に部材が取り付けられたガラス物品の断面を示す説明図である。
(ガラス物品への部材の取り付け方法)
ガラス物品への部材の取り付け方法としては、エポキシ系、シアノアクリル系、熱硬化性樹脂、エラストマー系の接着剤を用いる方法が挙げられる。なお、接着剤は、ガラス物品と部材が接着でき、耐久性に優れているものであれば特定はされない。
(部材)
ガラス物品へ取り付ける部材としては、押しボタン、スイッチ、ダイヤル、メーター等のフレーム、ロゴ、マーク等加飾部材等であり、樹脂材料、金属材料、またはゴム材料が挙げられる。
つづいて、本発明のガラス物品12の各構成について、図5を用いて説明する。本発明のガラス物品12は、ガラス板1の第1主面2に、防汚層5からなる防汚部と、防汚層5を有さず、微細な凹凸を有する開口部13(以下の説明では、単に開口部13ともいう。)を有する。なお、以下の説明は、本発明のガラス物品12の説明であるが、開口部13以外の説明は、ガラス物品9においても同様である。特に説明をしない場合は、ガラス物品は、ガラス物品9とガラス物品12の両方を意味する。
(ガラス板1)
ガラス物品に含まれるガラス板1において、ガラス板1の形状は、第1主面2と、第2主面3と、端面4とを有するものであれば特に限定されない。例えばガラス板1の第1主面2の形状は、四角形状の他、円状、楕円状等の形状であってもよく、目的に応じて所望の形状に成形されていてもよい。また、平面であってもよいが、3次元形状でもよい。
本発明に用いられるガラス板1は、二酸化ケイ素を主成分とする一般的なガラス、例えばソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等からなるガラス板1を用いることができる。
ガラス板1のガラスの組成は、成形、化学強化処理による強化が可能な組成であることが好ましく、ナトリウムを含んでいることが好ましい。このようなガラスとして、具体的に例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等を用いることが好ましい。
ガラス板1の製造方法は特に限定されず、所望のガラス原料を連続溶融炉に投入し、ガラス原料を好ましくは1500〜1650℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを板状に成形し、徐冷することにより製造することができる。
なお、ガラス板1の成形方法についても特に限定されず、例えば、ダウンドロー法(例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、リドロー法等)、フロート法、ロールアウト法、プレス法等の成形方法を用いることができる。
ガラス板1の厚さは、用途に応じて適宜選択することができる。ガラス板1の厚さは、0.1〜5mmであることが好ましく、0.2〜2mmであることがより好ましく、0.5mm〜2mmであることがさらに好ましい。ガラス板1の厚さが5mm以下であれば、ガラス板1に、後述する化学強化処理を行う場合に、これを効果的に行うことができ、軽量化と強度とを両立できる。
(防汚層)
防汚層5は、撥水性や撥油性を有することで防汚性を発揮するものであり、ガラス板1に防汚性を付与できるものであれば、それを構成する材料は、特に限定されないが、含フッ素有機ケイ素化合物を硬化させて得られる、含フッ素有機ケイ素化合物被膜からなることが好ましい。本明細書において、含フッ素加水分解性ケイ素化合物とは、ケイ素原子に加水分解可能な基または原子が結合した加水分解性シリル基を有し、さらにそのケイ素原子に結合する含フッ素有機基を有する化合物をいう。なお、前記ケイ素原子に結合して加水分解性シリル基を構成する加水分解可能な基または原子を併せて、「加水分解性基」という。
被膜形成用組成物は、含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含有する組成物であって、具体的には、KP−801(商品名、信越化学工業社製)、X−71(商品名、信越化学工業社製)、KY−130(商品名、信越化学工業社製)、KY−178(商品名、信越化学工業社製)、KY−185(商品名、信越化学工業社製)、オプツ−ル(登録商標)DSX(商品名、ダイキン工業社製)などが好ましく使用できる。
このような含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含む被膜形成用組成物を、反射防止層6表面に付着させ反応させて成膜することで、含フッ素有機ケイ素化合物被膜が得られる。
防汚層5は、反射防止層6の表面に形成される。防汚層5の厚さは、特に限定されないが、第1主面2上の膜厚で、2〜20nmであることが好ましく、2〜15nmであることがより好ましく、2〜10nmであることがさらに好ましい。第1主面2上の膜厚が2nm以上であれば、防汚層5によってガラス板1の第1主面2上が均一に覆われた状態となり、耐擦り性の観点で実用に耐えるものとなる。また、第1主面2上の膜厚が20nm以下であれば、防汚層5が形成された状態での反射防止層、防汚層付きガラス板1のヘイズ値等の光学特性が良好である。
(防汚層5の成膜方法)
防汚層5の成膜方法としては、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレーコート法等の湿式方法、または蒸着法等が挙げられる。反射防止層6に対する密着性の高い被膜を得るには、真空蒸着法により形成することが好ましい。
(反射防止層)
反射防止層6は、反射防止層形成材料を用いて形成され、防汚層5とガラス板1との間に形成される。反射防止層6は、単一の層で構成されていてもよく、複数の層からなる多層構造であってもよい。
反射防止層6は、第1主面2と防汚層5の間に高屈折率層と低屈折率層を積層することで形成される。構成としては光の反射を抑制できる構成であれば特に限定されず、例えば、波長550nmでの屈折率が1.9以上の高屈折率層と、波長550nmでの屈折率が1.6以下の低屈折率層とを積層した構成とすることができる。それぞれ1層ずつ含む形態であってもよいが、それぞれ2層以上含む構成であってもよい。高屈折率層と低屈折率層とをそれぞれ2層以上含む場合には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した形態であることが好ましい。
高屈折率層、低屈折率層の材料は特に限定されず、要求される低反射性の程度や生産性等を考慮して適宜選択することができる。高屈折率層を構成する材料としては、例えば酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、窒化ケイ素(SiN)から選択された1種以上を好ましく使用できる。低屈折率層を構成する材料としては、酸化ケイ素(SiO)、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化物を含む材料から選択された1種以上を好ましく使用できる。
生産性や、屈折率の観点から、高屈折率層が酸化ニオブ、酸化チタン、窒化ケイ素から選択される1種からなり、低屈折率層が酸化ケイ素からなる層である構成が好ましい。
(反射防止層6の成膜方法)
反射防止層6を成膜する方法は特に限定されず、各種成膜方法を用いることが可能である。例えば、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法、スパッタリング法、プラズマCVD法等を用いることができる。これらの成膜方法のなかでも、緻密で耐久性の高い膜を形成できる観点で、スパッタリング法を用いることが好ましい。特に、パルススパッタリング法、ACスパッタリング法、デジタルスパッタリング法等のスパッタリング法により成膜することが好ましい。
例えば、パルススパッタリング法により成膜する場合は、不活性ガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気のチャンバ内に、ガラス板を配置し、所望の組成となるようにターゲットを選択して成膜する。このとき、チャンバ内の不活性ガスのガス種は特に限定されるものではなく、アルゴンやヘリウム等、各種不活性ガスを使用できる。
不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスによるチャンバ内の圧力は、特に限定されるものではないが、0.5Pa以下の範囲とすることにより、形成される膜の表面粗さを好ましい範囲とすることが容易である。不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスによるチャンバ内の圧力の下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1Pa以上であることが好ましい。
(防眩処理)
本実施形態に用いられるガラス板1の第1主面2は、図5に図示しないが、ガラス板1に防眩性を付与するための凹凸形状を有することが好ましい。
凹凸形状を形成する方法としては、公知の方法を利用でき、防眩性を付与し得る凹凸形状を形成できる方法であれば特に限定されず、例えば、ガラス板1の第1主面2に化学的な方法、あるいは物理的な方法を適用して表面処理を施し、所望の表面粗さの凹凸形状を形成できる。
化学的な方法による防眩処理として具体的には、フロスト処理を施す方法が挙げられる。フロスト処理は、例えば、フッ化水素とフッ化アンモニウムの混合溶液に、被処理体であるガラス板1を浸漬することで行われる。
また、物理的方法による防眩処理として例えば、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を加圧空気でガラス板1の表面に吹きつけるいわゆるサンドブラスト処理や、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を付着させたブラシを水で湿らせて、これを用いてガラス板1表面を研磨する方法等で行われる。
なかでも、化学的表面処理であるフロスト処理は、被処理体表面における割れの起点となりうるマイクロクラックが生じ難く、ガラス板1の強度の低下が生じ難いため、好ましく利用できる。
さらに、防眩処理を施したガラス板1の第1主面2に対して、その表面形状を整えるためのエッチング処理を行うことが好ましい。エッチング処理としては、例えば、ガラス板1を、フッ化水素の水溶液であるエッチング溶液に浸漬して、化学的にエッチングする方法を利用できる。エッチング溶液は、フッ化水素以外にも、塩酸、硝酸、クエン酸などの酸を含有してもよい。エッチング溶液に、これらの酸を含有させることで、ガラス板1に含有されるNaイオン、Kイオン等の陽イオン成分とフッ化水素との反応による、析出物の局所的な発生を抑制することができるほか、エッチングを処理面内で均一に進行させることができる。
エッチング処理を行う場合、エッチング溶液の濃度や、エッチング溶液へのガラス板1の浸漬時間等を調節することで、エッチング量を調節し、これによりガラス板1の防眩処理面のヘイズ値を所望の値に調整することができる。また、防眩処理を、サンドブラスト処理等の物理的表面処理で行った場合、クラックが生じることがあるが、エッチング処理によってこのようなクラックを除去できる。また、エッチング処理によって、防汚層付きガラス板1のギラツキを抑えるという効果も得ることができる。
(化学強化処理)
ガラス板1の強度を高めるために、ガラス板1に対して化学強化処理が施されることが好ましい。化学強化処理は、必要に応じて所望の大きさに切断された後に行われることが好ましい。
化学強化処理方法としては、特に限定されず、ガラス板1の第1主面2、第2主面3および端面4をイオン交換し、圧縮応力が残留する表面層を形成する。具体的には、ガラス転移点以下の温度で、ガラス板1の表面のガラスに含まれるイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を、イオン半径がより大きなアルカリ金属イオン(例えば、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオン)に置換する。これにより、ガラス板1の主面に圧縮応力が残留し、ガラス板1の強度を向上させる。
(印刷層7)
本実施形態のガラス物品12においては、印刷層7が形成されていてもよい。印刷層7は、第2主面3の周縁部に形成されている。印刷層7は、例えば、表示の視認性と美観を高める目的で、携帯機器の表示装置の外周近傍に配置された配線回路や、携帯機器の筺体と密着層と防汚層付きガラス板1の接着部等を隠ぺいするように設けられる。ここで、周縁部とは、外周から中央部に向かって、所定の幅を有する帯状領域を意味する。印刷層7は、第2主面3の周縁全周に設けられていてもよく、周縁一部に設けられていてもよい。
印刷層7は、インクを印刷して形成される。インクは、特に限定されず、形成する印刷層7の色に応じて選択できる。インクとして例えば、セラミックス焼成体等を含む無機系インク、染料または顔料のような色料と有機樹脂を含む有機系インクのいずれを用いてもよい。インクを印刷する方法としては、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、スクリーン法等があるが、簡便に印刷できるうえ、種々の基材に印刷することができ、またガラス板1のサイズに合わせて印刷可能であることから、スクリーン印刷法が好ましい。印刷層7は複数の層を積層した複層でもよく、単一の層でもよい。印刷層7が複層からなる場合、印刷層7は、上記インクの印刷、乾燥を繰り返すことで形成できる。
本実施形態のガラス物品12は、ガラス板1の第1主面2に、防汚層5を有さず、微細な凹凸を有する開口部13を有する。開口部13は、本発明のガラス物品12の加工方法で形成されることが好ましい。防汚層5を有さないとは、開口部13に、開口部13以外の部と同一の材料で同一の膜厚の層を有さないことを意味している。したがって、開口部13は、防汚層5を構成する材料が、開口部13以外の部よりも薄い膜厚で形成されてもよく、または、防汚層5を構成する材料が変質して存在していてもよい。さらに、開口部13に防汚層5を構成する材料が変質して存在している場合、その形態は、層状でなくてもよく、ガラス板1の第1主面2に点在していてもよい。
前記開口部13の微細な凹凸の表面粗さRaは、5nm以上が好ましい。表面粗さRaが前記範囲にあれば、開口部13に、部材を取り付ける際の接着力を高くできる。
前記表面粗さRaは、以下のようにして算出する。
ガラス物品12の開口部13を含む第1主面2を断面切断および鏡面研磨を行い、開口部13における断面のSEM像(走査型電子顕微鏡像)を得る。このSEM像から、ガラス物品12の平面方向2500nmの基準長に対して、反射防止層6の厚みを20nmごとに計測し、反射防止層厚み分布を取得する。この反射防止層厚み分布は、前述の防眩処理により得られる凹凸に比べ十分に微細なため表面粗さとして評価できる。得られる反射防止層厚みの平均値からの差分をガラス物品12の平面方向の距離Xに対する関数(f(X))とし、JIS B 0601−2013に従い、以下の計算式から表面粗さRaを算出する。
Figure 2018048061
ここで、Lは基準長であり、2500nmである。
前記表面粗さRaは、5nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。表面粗さRaを高くすることにより、開口部13での部材の接着力を高くできる。一方、前記表面粗さRaは、50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましい。表面粗さRaを低くすることにより、開口部13が微細な凹凸により目立ちにくくなり、開口部13の外観の意匠性を高くできる。
前記開口部13の微細な凹凸の十点平均粗さ(最大高さ)Rzは、17nm以上が好ましい。十点平均粗さ(最大高さ)Rzが前記範囲にあれば、開口部13での部材の接着力を高くできる。
前記十点平均粗さ(最大高さ)Rzは、以下のようにして算出する。
ガラス物品12の開口部13を含む第1主面2を断面切断および鏡面研磨を行い、開口部13における断面のSEM像(走査型電子顕微鏡像)を得る。このSEM像から、ガラス物品12の平面方向2500nmの基準長に対して、反射防止層6の厚みを20nmごとに計測し、反射防止層厚み分布を取得する。この反射防止層厚み分布は、前述防眩処理により得られる凹凸に比べ十分に微細なため表面粗さとして評価できる。得られる反射防止層厚みの平均値からの差分値のうち、最大5点(Yp1、Yp2、Yp3、Yp4、Yp5)および最小5点(Yv1、Yv2、Yv3、Yv4、Yv5)の厚みを採用し、JIS B 0601−2013に従い、以下の計算式から十点平均粗さRzを算出する。
Figure 2018048061
前記十点平均粗さ(最大高さ)Rzは、17nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましい。十点平均粗さ(最大高さ)Rzを高くすることにより、開口部13での部材の接着力を高くできる。一方、前記十点平均粗さ(最大高さ)Rzは、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下がさらに好ましい。十点平均粗さ(最大高さ)Rzを低くすることにより、開口部13が微細な凹凸により目立ちにくくなり、開口部13の外観の意匠性を高くできる。
開口部13は、フッ素(F)原子の濃度が低いことが好ましい。フッ素原子の濃度を低くすることで、開口部13での部材の接着力を高くできる。開口部13におけるフッ素(F)濃度は、蛍光X線分析装置(XRF)により得られるF成分由来の特性X線強度に比例する。本実施形態においては、実施例に記載の詳細な方法でF成分由来のKα線強度を取得した値である。
開口部13での部材の接着力を高める点で、開口部13において、蛍光X線分析法で得られるフッ素(F)成分由来のKα特性X線強度は0.15kcps以下が好ましく、0.05kcps以下がより好ましい。一方で、ガラス物品12への部材の接着力を担保するためには、フッ素(F)成分由来のKα特性X線強度は、0.01kcps以上でもよい。なお、開口部13の、フッ素(F)成分由来のKα特性X線強度は0(ゼロ)であることが特に好ましい。
開口部13における部材の接着力は、実施例に記載の方法で評価できる。
開口部13の正面形状、すなわち、ガラス物品12の防汚層5を有する面側から見た形状は、様々に設計することができる。例えば、矩形、円形であり、その大きさ(面積)は自由に変更できる。開口部13に部材を取り付ける場合、部材の大きさや形に応じて、開口部13の形状が設計されることが好ましい。
また、開口部は、第1主面のいずれの場所に形成されてもよい。中でも、対向する第2主面に前記印刷層が有する領域の中で第1主面に開口部を有することが好ましい。この領域に、部材を取り付ける場合が多いためであり、部材を有するガラス物品の意匠性を十分に担保できる。
開口部13の水接触角は、105°以下が好ましい。水接触角が105°以下であれば、開口部13における部材の接着力を高くできる。本実施形態においては。水接触角は、実施例に記載の方法で測定した値である。
前記水接触角は、103°以下がより好ましく、100°以下がさらに好ましい。一方で水接触角の下限は特に限定されないが、5°以上であればよく、10°以上がより好ましい。
次に、本発明の実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。例1〜4と例7は本発明の実施例、例5および6は比較例である。また、例8〜10は実施例である。
ガラス板として厚さ1.3mmの、対向する主面が四角形の板状ガラス(ドラゴントレイル(登録商標)、旭硝子製)を用い、以下の各例の手順で、それぞれ防汚層付きガラス板を得た。以下、当該ガラス板の一方の主面を第1主面、他方の主面を第2主面、厚さ方向の面を端面と称する。
(例1)
ガラス板に(1)防眩処理、(2)面取り、(3)化学強化処理およびアルカリ処理、(4)印刷層の形成、(5)反射防止層の形成、(6)防汚層の成膜、(7)レーザーによる反射防止層と防汚層の除去、(8)部材のとりつけをこの順に以下の手順で行った。
(1)防眩処理
ガラス板の第1主面に以下の手順により、フロスト処理による防眩処理を施した。
まず、耐酸性の保護フィルム(以下、単に「保護フィルム」ともいう)を、ガラス板の防眩処理を施さない側の主面(第2主面)に貼合した。ついで、ガラス板を、3質量%のフッ化水素水溶液に3分間浸漬し、ガラス板をエッチングすることでガラス板の第1主面の表面に付着した汚れを除去した。次いでガラス板を15質量%フッ化水素、15質量%フッ化カリウムの混合水溶液に3分間浸漬し、ガラス板の第1主面にフロスト処理を施した。その後、ガラス板を10質量%フッ化水素水溶液に6分間浸漬することで、防眩処理を施した第1面のヘイズ値を25%に調整した。なお、ヘイズ値は、JIS K 7136に拠り、ヘイズメータ(商品名:HZ−V3、スガ試験機社製)を用いて測定した。
(2)面取り
防眩処理を施したガラス板を150mm×250mmの大きさに切断した。その後、ガラス板の全周にわたって0.2mmの寸法でC面取りを行った。面取りは600番の砥石(東京ダイア社製)を用い、砥石の回転数が6500rpm、砥石の移動速度が5000mm/minで行った。
(3)化学強化処理およびアルカリ処理
上記でガラス板の第2主面に貼付した保護フィルムを除去し、ガラス板を、450℃に加熱して溶解させた硝酸カリウム塩に2時間浸漬した。その後、ガラス板を溶融塩より引き上げ、1時間で室温まで徐冷することで化学強化処理を行った。これにより、表面圧縮応力(CS)が730MPa、応力層の深さ(DOL)が30μmの化学強化されたガラス板を得た。さらに、このガラス板を、アルカリ溶液(サンウォッシュTL−75、ライオン社製)に4時間浸漬してアルカリ処理を施した。
(4)印刷層の形成
ガラス板の第2主面の外側周辺部の四辺に、2cm幅の黒枠状に印刷を施し、印刷層を形成した。まず、スクリーン印刷機により、黒色インク(商品名:GLSHF、帝国インキ社製)を5μmの厚さに塗布した後、150℃で10分間保持して乾燥させ、第1の印刷層を形成した。次いで、第1の印刷層の上に、上と同じ手順で、黒色インクを5μmの厚さに塗布した後、150℃で40分間保持して乾燥させ、第2の印刷層を形成した。こうして、第1の印刷層と第2の印刷層とが積層された印刷層を形成し、ガラス板の第2主面の外側周辺部に印刷層を備えたガラス板を得た。
(5)反射防止層の形成
次いで、ガラス板の防眩処理の施された第1主面に、次のように、高屈折率層を形成した。真空チャンバ内で、アルゴンガスに10体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、酸化ニオブターゲット(商品名:NBOターゲット、(AGCセラミックス社製)を用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、ガラス板の第1主面に、第1主面上での厚さが13nmの酸化ニオブ(ニオビア)からなる第1層の高屈折率層を形成した。
次いで、アルゴンガスに40体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、シリコンターゲットを用いて、圧力0.3Pa、周波数20kHz、電力密度3.8W/cm、反転パルス幅5μsecの条件でパルススパッタリングを行い、前記高屈折率層上にガラス板の第1主面上での厚さが35nmの酸化ケイ素(シリカ)からなる第1層の低屈折率層を形成した。
次いで、第1層の高屈折率層と同様にして、第1層の低屈折率層上にガラス板の第1主面上での厚さが115nmの酸化ニオブ(ニオビア)からなる第2層の高屈折率層を形成した。さらに、第1層の低屈折率層と同様にして、第2層の高屈折率層上に、ガラス板の第1面上での厚さが80nmの酸化ケイ素(シリカ)からなる低屈折率層を形成した。
このようにして、酸化ニオブ(ニオビア)と酸化ケイ素(シリカ)が交互に合計4層積層された低反射膜を形成した。
(6)防汚層の成膜
まず、防汚層の材料として、フッ素含有有機ケイ素化合物膜の形成材料(KY−185、信越化学製)を、加熱容器内に導入した。その後、加熱容器内を真空ポンプで10時間以上脱気して溶液中の溶媒除去を行い、加熱容器内でフッ素含有有機ケイ素化合物膜の形成用組成物(以下、防汚層形成用組成物という。)を得た。なお、ガラス板はキャリア基板に貼りつけたまま用い、第1主面および端面に同時に防汚層を効率的に真空蒸着法にて成膜した。
次いで、防汚層形成用組成物が入った加熱容器を、270℃まで加熱した。容器温度が270℃に到達した後、温度が安定するまで10分間その状態を保持した。次に、キャリア基板に貼りつけたガラス板を真空チャンバ内に設置した。その後、防汚層形成用組成物が入った加熱容器と接続されたノズルから、ガラス板の第1主面の最表面に向けて防汚層形成用組成物を供給し、成膜を行った。
成膜は、真空チャンバ内に設置した水晶振動子モニタにより膜厚を測定しながら行い、防汚層の膜厚が4nmになるまで行った。次いで、真空チャンバから取り出されたガラス板を、フッ素含有有機ケイ素化合物膜面を上向きにしてホットプレートに設置し、大気中150℃で60分間加熱処理を行った。
このようにして、ガラス板の第1主面上に反射防止層と防汚層を有するガラス板を得た。
(7)レーザーによる反射防止層と防汚層の除去
ガラス板の第1主面から防汚層を除去するためのレーザー発振器は、最大出力1500WのCOレーザー発振器を使用した。レーザーのスポット径をφ3mm、出力を70Wとし、ガラス板の第1主面上の反射防止層と防汚層のうち、裏面に印刷部がある個所に連続照射することにより、約φ30mmの円状の部分の防汚層の除去を行い、開口部を形成した。
これにより、開口部を有するガラス物品を得た。
(8)部材のとりつけ
ガラス物品において、ガラス板の防汚層を除去した部分(開口部)に樹脂製のボタンをエポキシ系の接着剤を用いて接着した。
(例2)
レーザーの出力を90Wとした以外は例1と同様の手順として、ガラス物品を得た。
(例3)
レーザーの出力を500Wとした以外は例1と同様の手順として、ガラス物品を得た。
(例4)
レーザーの出力を1Wとした以外は例1と同様の手順として、ガラス物品を得た。
(例5)
レーザーのかわりに真空紫外光を用いた以外は例1と同様の手順として、ガラス物品を得た。
(例6)
レーザーのかわりにカッターを用いた以外は例1と同様の手順として、ガラス物品を得た。
(例7)
レーザーの出力を30Wとし、防汚層のみを成膜した以外は例1と同様の手順として、ガラス物品を得た。
(例8)
防汚層を除去するためのレーザー発振器として、波長532nmのYAGレーザー発振器(ハイブリットレーザ-マーカーMD−T1010W、株式会社キーエンス製)を用いたこと以外は例1と同様の手順としてガラス物品を得た。
なお、最大出力4Wの60%の出力で、スキャンスピード400mm/secとした
(例9)
スキャンスピード600mm/secとした以外は例8と同様の手順として、ガラス物品を得た。
(例10)
スキャンスピード800mm/secとした以外は例8と同様の手順として、ガラス物品を得た。
(水接触角)
レーザー照射後に、反射防止層、防汚層が除去されているかの確認を行うため、水接触角の測定を行った。反射防止層、防汚層付きガラス板のレーザー照射面に約1μLの純水の水滴を着滴させ、接触角計(型式;DM−51、協和界面科学社製)を用いて、水に対する接触角を測定した。
A: 水接触角が60°未満。反射防止層、防汚層とも除去されている。
B: 水接触角が60°〜100°。反射防止層が残っている。
C: 水接触角が100°〜130°。防汚層が残っている。
(開口部の表面粗さ及び十点平均粗さ)
ガラス物品の開口部の表面粗さおよび十点平均粗さの測定を行った。上記で得られたガラス物品について、集束イオンビーム加工観察装置(セイコーインスツル株式会社製、装置名:SIINT−SMI3200SE)により断面切断および研磨を実施した。研磨後の断面組織をFE−SEM(株式会社日立製作所製、製品名:S4800)を用いて、加速電圧2kVで観察し、SEM像を取得した。
ガラス板の第1主面から法線方向に対して、FIB加工用保護膜(白金)までの領域を成膜部とし、成膜部の厚みとした。この厚みを基板水平方向に対して計測し、膜厚分布を取得した。この際、基準長さ:2500nm、計測間隔:20nm、計測誤差:2nmとした。以下の式1および2を用いて、表面粗さRa及び十点平均粗さRzを算出した。
Figure 2018048061
(フッ素量の測定)
開口部13を、蛍光X線分析(株式会社リガク社製、商品名:ZSX100e)を用いて、F成分由来の特性X線強度を測定した。20mmφのマスクを施した開口部13に対して、表1に記載の条件で分析を行い、F成分由来のKα線強度を取得した。
Figure 2018048061
(部材接着性)
ガラス物品に部材を取り付けた後、チャンバーサイクル内に入れ、40±2℃で0.5時間、95±2℃で0.5時間を1サイクルとし、これを100サイクル実施した。その後ガラス板からの部材の剥がれの有無を目視にて確認した。
○: ガラス板から部材が外れない。
×: ガラス板から部材が外れる。
(接着強度試験)
各ガラス物品の開口部に、アルミ金属製の治具(φ20mm)を接着剤(横浜ゴム株式会社製、商品名:ハマタイトSS−310)で取り付けた。治具を取り付けて20時間置いて、接着した。試験装置(DeFelsko社製、製品名:PosiTest AT−A)を用いて、引張速度0.2MPa/secで、治具を引っ張り、接着強度を測定した。接着強度の値を表2に示す。
例1〜10における評価結果を表2に示す。
Figure 2018048061
表2に示されるように、例1〜4、7〜10は、膜が除去できかつ外観不良もなく、膜を除去した部分への部材接着後に部材の外れもなかった。例5は、防汚層は除去できたものの反射防止層残りがあり、部材接着後に部材が外れた。例6は、防汚層残りがあり、部材接着後に部材が外れた。
1…ガラス板、2…第1主面、3…第2主面、4…端面、5…防汚層、6…反射防止層、7…印刷層、8…レーザー光、9…ガラス物品、10…部材、11…部材を有するガラス物品、12…ガラス物品、13…開口部。

Claims (14)

  1. 相互に対向する第1主面および第2主面を有するガラス板の、前記第1主面上に防汚層が形成されたガラス物品の前記第1主面側からレーザー光を照射して前記防汚層を選択的に除去することを特徴とするガラス物品の製造方法。
  2. 前記レーザー光を発振するレーザー装置が、COレーザー装置、YVOレーザー装置またはYAGレーザー装置である請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
  3. 前記レーザー装置の出力が1〜1000Wである請求項1または2に記載のガラス物品の製造方法。
  4. 前記ガラス板の前記第1主面と、前記防汚層の間にさらに反射防止層が形成された請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス物品の製造方法。
  5. 相互に対向する第1主面および第2主面を有するガラス板の、前記第1主面上に防汚層が形成されたガラス物品の第1主面側からレーザー光を照射して前記防汚層を選択的に除去した後、前記防汚層が除去された領域に、部材を接着することを特徴とする、部材を有するガラス物品の製造方法。
  6. 前記ガラス板の前記第1主面と、前記防汚層の間にさらに反射防止層が形成された請求項5に記載の部材を有するガラス物品の製造方法。
  7. 前記部材が樹脂、金属またはゴムの少なくとも一つ以上を含む請求項5または6に記載の部材を有するガラス物品の製造方法。
  8. 相互に対向する第1主面および第2主面を有するガラス板と、
    前記第1主面に防汚層からなる防汚部と、防汚層を有さず微細な凹凸を有する開口部と、を含むガラス物品。
  9. 前記開口部の表面粗さRaが5nm以上である、請求項8に記載のガラス物品。
  10. 前記開口部の十点平均粗さRzが17nm以上である、請求項8または9に記載のガラス物品。
  11. 前記開口部において、蛍光X線分析法で得られるフッ素(F)成分由来のKα特性X線強度が0.15kcps以下である、請求項8〜10のいずれか1項に記載のガラス物品。
  12. 前記第2主面においてガラス板の周縁部に印刷層を有し、
    前記第1主面において前記開口部が、対向する第2主面に前記印刷層が有する領域の中に形成される請求項8〜11のいずれか1項に記載のガラス物品。
  13. 前記防汚部において、ガラス板の第1主面と防汚層との間に反射防止層を有する、請求項8〜12のいずれか1項に記載のガラス物品。
  14. 前記開口部の水接触角が105°以下である、請求項8〜12のいずれか1項に記載のガラス物品。
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