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JP2018044082A - 化合物又はその塩、及びインク - Google Patents

化合物又はその塩、及びインク Download PDF

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JP2018044082A JP2016180458A JP2016180458A JP2018044082A JP 2018044082 A JP2018044082 A JP 2018044082A JP 2016180458 A JP2016180458 A JP 2016180458A JP 2016180458 A JP2016180458 A JP 2016180458A JP 2018044082 A JP2018044082 A JP 2018044082A
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陵太郎 森田
真也 永塚
Shinya Nagatsuka
真也 永塚
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Abstract

【課題】耐光性に優れる記録画像が得られる水溶性の化合物、及びそれを含有する各種の記録用、特にインクジェット記録用のイエローインクの提供。【解決手段】下記式(101)で表される化合物又はその塩。【化101】(式中、Q1及びQ2はハロゲン原子を表す。基Aは、それぞれ置換基を有することができるアルキルアミノ基、アリールアミノ基、含窒素複素環基、アルキルチオ基、及びアリールチオ基を表す。R1及びR2はそれぞれ独立にイオン性親水性で置換されたアルキル基を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は水溶性のアゾ化合物又はその塩、これを含有するインク及びこれらが付着した記録メディアに関する。
各種カラー記録方法の中で、その代表的方法の1つであるインクジェットプリンタによる記録方法は、インクの吐出方式が各種開発されている。これらは、いずれもインクの小液滴を発生させ、これを種々の記録メディア(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行う方法である。この方法は、記録ヘッドと記録メディアとが直接接触しないため、音の発生がなく静かである。また、小型化、高速化、カラー化が容易であるという特徴を有するため、近年急速に普及し、今後とも大きな伸長が期待されている。
従来、万年筆、フェルトペン及びインクジェット等の各種の記録用インクに使用される色素は、水溶性と水不溶性の2種類の色素に大別される。水溶性の色素としては直接染料、酸性染料、及び反応染料等が挙げられる。また、水不溶性の染料としては顔料、分散染料、及び溶剤染料等が挙げられる。これらの色素のうち染料は、顔料と比較して彩度等に優れ、高画質な記録画像が得られるとされている。しかし、例えば耐光性等の記録画像の堅牢性は、顔料に対して劣るとされている。
ここで耐光性とは、記録画像に含有される色素が太陽光、及び蛍光灯等の各種の光に暴露されることにより分解し、記録画像を変退色させるという現象に対する耐性のことである。
インクジェット記録の特徴の1つとして、写真画質の記録画像が得られることが挙げられる。写真画質の記録画像を得る方法の1つとして、インク受容層を有する記録メディアの使用が挙げられる。そのようなインク受容層は、インクの乾燥を早め、また色にじみの少ない高画質な画像を得るために、一般には多孔性白色無機物を含有する。しかしながら、そのような記録メディアにおいて、光による変退色現象が顕著に観察される。この理由から記録画像の耐光性の向上は、インクジェット記録の分野における重要が技術課題の1つとされている。
水溶性及び鮮明性に優れる公知のインクジェット用のイエロー色素として、特許文献1〜3には、C.I.ダイレクト・イエロー132が開示されている。また、特許文献4には、各種の堅牢性に優れたインクジェット用のイエロー色素が開示されている。
特開平11−70729号公報 特許第3346755号公報 特許第4100880号公報 国際公開第2011/122427号
本発明は、耐光性に優れる記録画像が得られる水溶性の化合物、及びそれを含有する各種の記録用、特にインクジェット記録用のイエローインクの提供を目的とする。
本発明者等は前記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、特定の下記式(101)で表される水溶性アゾ化合物又はその塩、及びそれを含有するインクが前記の課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、以下の1)〜13)に関する。
1)
下記式(101)で表される化合物又はその塩。
Figure 2018044082
(式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立にハロゲン原子を表す。基Aは、それぞれ置換基を有することができるアルキルアミノ基、アリールアミノ基、含窒素複素環基、アルキルチオ基、及びアリールチオ基を表す。R1及びR2はそれぞれ独立にイオン性親水性で置換されたアルキル基を表す。)
2)
前記式(101)が、下記式(1)で表される前記1)に記載の化合物又はその塩。
Figure 2018044082
(式中、Q1、Q2及び基Aは、前記式(101)におけるのと同じ意味を表し、xは2〜4の整数を表す。)
3)
式(1)において、Q1及びQ2が塩素原子である前記1)又は2)に記載の化合物又はその塩。
4)
式(1)において、xが3である前記2)に記載の化合物又はその塩。
5)
式(1)において、Q1及びQ2が塩素原子であり、xが3であり、基Aが下記式(A−1)で表される基である前記2)に記載の化合物又はその塩。
Figure 2018044082
(式中、nは2〜5の整数を表し、*はトリアジン環との結合手を表す。)
6)
式(1)において、Q1及びQ2が塩素原子であり、xが3であり、基Aが下記式(A−2)で表される基である前記2)に記載の化合物又はその塩。
Figure 2018044082
(式中、*はトリアジン環との結合手を表す。)
7)
前記1)〜6)のいずれか一項に記載の化合物又はその塩を含有するインク。
8)
水溶性有機溶剤をさらに含有する前記7)に記載のインク。
9)
前記7)又は8)に記載のインクのインクジェット記録における使用。
10)
前記7)又は8)に記載のインクの液滴を、記録信号に応じて吐出させて記録メディアに付着させる、インクジェット記録方法。
11)
記録メディアが、普通紙又はインク受容層を有するシ−トである前記10)に記載のインクジェット記録方法。
12)
(a)前記1)〜6)のいずれか一項に記載の化合物又はその塩、若しくは、
(b)前記7)又は8)に記載のインク、
のいずれかが付着した記録メディア。
13)
前記7)に記載のインクを含む容器が装填されたインクジェットプリンタ。
本発明により、耐光性に優れる記録画像が得られる水溶性の化合物、及びそれを含有する各種の記録用、特にインクジェット記録用のイエローインクが提供できた。
前記式(101)で表される化合物又はその塩は、水溶性のイエロー色素である。本明細書においては特に断りがない限り、イオン性親水性基のうち酸性官能基は、実施例等を含めて遊離酸の形で表す。
また、本明細書においては特に断りがない限り、イオン性親水性基を有する「化合物」は、「化合物又はその塩」の両方を含む意味として用いる。
また、本明細書においては特に断りがない限り、「%」及び「部」は、実施例等も含めて質量基準である。
前記式(101)で表される化合物中、Q1及びQ2におけるハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。これらの中ではフッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
式(101)中、基Aにおけるアルキルアミノ基としては、炭素数の範囲が通常1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6のアルキル基を1つ又は2つ有する、モノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基が挙げられる。アルキル部分としては直鎖、分岐鎖、及び環状のものが挙げられる。その具体例としては、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノ、n−ヘキシルアミノ、イソプロピルアミノ、イソブチルアミノ、t−ブチルアミノ、イソペンチルアミノ、イソヘキシルアミノ、シクロプロピルアミノ、シクロブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、メチルエチルアミノ等が挙げられる。
基Aにおけるアリールアミノ基としては、炭素数の範囲が通常6〜14、好ましくは6〜10、より好ましくは6のアリール基を1つ又は2つ有する、モノアリールアミノ基又はジアリールアミノ基が挙げられる。その具体例としては、例えば、フェニルアミノ、1−ナフチルアミノ、2−ナフチルアミノ、アントラセニルアミノ、フェナントレニルアミノ、ジフェニルアミノ等が挙げられる。
基Aにおける含窒素複素環基としては、5員環又は6員環の基が挙げられる。これらの環は、窒素原子でトリアジン環と結合するのが好ましい。また、前記トリアジン環と結合する窒素原子以外に、環構成元素として1つ又は2つのヘテロ原子を含有することができる。このときのヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択される原子が挙げられる。
その具体例としては、例えば、アジリジン−1−イル、ピロリジン−1−イル、3−ヒドロキシピロリジン−1−イル、ピペリジン−1−イル、4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イル、4−ピペリジノピペリジン−1−イル、4−(1−ピロリジニル)ピペリジン−1−イル、1,4−ピペラジン−1−イル、4−メチルピペラジン−1−イル、モルホリン−4−イル等の脂環式含窒素複素環基;ピロール−1−イル、イミダゾール−1−イル、インドール−1−イル、プリン−1−イル、フェノチアジン−10−イル(10H−フェノチアジン−10−イル)、フェノキサジン−10−イル(10H−フェノキサジン−10−イル)、カルバゾール−9−イル(9H−カルバゾール−9−イル)、7−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン−7−イル等が挙げられる。
基Aにおけるアルキルチオ基としては、炭素数の範囲が通常1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6のアルキルチオ基が挙げられる。その具体例としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、n−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、n−ヘキシルチオ、イソプロピルチオ、イソブチルチオ、t−ブチルチオ、イソペンチルチオ、イソヘキシルチオ、シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ等が挙げられる。
基Aにおけるアリールチオ基としては、炭素数の範囲が通常6〜14、好ましくは6〜10、より好ましくは6のアリールチオ基が挙げられる。その具体例としては、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、アントラセニルチオ、フェナントレニルチオ、ジフェニルチオ等が挙げられる。
前記の基Aは通常1つ〜5つ、好ましくは1つ〜4つ、より好ましくは1つ〜3つ、さらに好ましくは1つ又は2つ、特に好ましくは1つの置換基を有することができる。
置換基としては特に制限されず、例えば、以下の基が挙げられる。
すなわち、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等が挙げられる。
基Aがアルキルアミノ基、又はアルキルチオ基のとき、その置換基としてはアルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、及びアミノ基よりなる群から選択される基が好ましい。
アルコキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルコキシ基が挙げられる。これらの中では直鎖又は分岐鎖アルコキシ基が好ましく、直鎖アルコキシ基がさらに好ましい。その炭素数の範囲は通常1〜12、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4である。その具体例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシロキシ、へプチロキシ、オクチロキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、イソペントキシ、イソヘキシロキシ、イソへプチロキシ、イソオクチロキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペントキシ、シクロヘキシロキシ、シクロプロピルメトキシ、2−シクロプロピルエトキシ、3−シクロプロピルプロポキシ等が挙げられる。
アリール基としては炭素数の範囲が通常6〜14、好ましくは6〜10、より好ましくは6のアリール基が挙げられる。その具体例としては、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル等が挙げられる。
アミノ基としては非置換アミノ基又はアルキルアミノ基が挙げられる。これらの中ではアルキルアミノ基が好ましい。アルキルアミノ基としては、前記式(101)中の基Aにおけるアルキルアミノ基と、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
これらの置換基の中ではヒドロキシ基、及びアルコキシ基から選択される基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
前記のうち、基Aとしてはヒドロキシ基を置換基として有するアルキルアミノ基、又は6員環の含窒素複素環基が好ましい。
ヒドロキシ基を置換基として有するアルキルアミノ基としては、モノアルキルアミノ基がより好ましく、前記式(A−1)で表される基がさらに好ましい。
6員環の含窒素複素環基としては、トリアジン環と結合する窒素原子以外に、環構成元素としてさらに1つのヘテロ原子(好ましくは酸素原子)を含有する含窒素複素環基がより好ましい。それらの中では、前記式(A−2)で表される基がさらに好ましい。
1及びR2におけるアルキル基部分としては、直鎖、分岐鎖又は環状のものが挙げられる。これらの中では直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖のモノがより好ましい。その炭素数の範囲は通常1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは3である。イオン性親水性基の置換数は特に制限されないが、通常1つ〜5つ、好ましくは1つ〜4つ、より好ましくは1つ〜3つ、さらに好ましくは1つ又は2つ、特に好ましくは1つである。
1及びR2の置換基であるイオン性親水性基としては、スルホ基、カルボキシ基、ホスホ基、及び4級アンモニウム基から選択される基が挙げられる。
これらの中ではスルホ基、カルボキシ基、及びホスホ基から選択される基が好ましく、
スルホ基、及びカルボキシ基から選択される基がより好ましく、
スルホ基がさらに好ましい。
1及びR2におけるイオン性親水性基で置換されたアルキル基の具体例としては、例えば、スルホメチル、スルホエチル、2,3−ジスルホプロピル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、5−スルホペンチル、6−スルホヘキシル、7−スルホヘプチル、8−スルホオクチル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、5−カルボキシペンチル、6−カルボキシヘキシル、7−カルボキシヘプチル、8−カルボキシオクチル、ホスホメチル、ホスホエチル、3−ホスホプロピル、4−ホスホブチル、5−ホスホペンチル、6−ホスホヘキシル、7−ホスホヘプチル、8−ホスホオクチル、トリメチルアンモニウムメチル、トリメチルアンモニウムエチル、3−トリメチルアンモニウムプロピル、4−トリメチルアンモニウムブチル、5−トリメチルアンモニウムペンチル、6−トリメチルアンモニウムヘキシル、7−トリメチルアンモニウムヘプチル、8−トリメチルアンモニウムオクチル、2−メチル−3−スルホプロピル、2,2−ジメチル−3−スルホプロピル、4−スルホシクロヘキシル、2,5−ジスルホシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
式(101)で表される化合物のうち、好ましい化合物が前記式(1)で表される化合物である。
式(1)中、Q1、Q2、及び基Aは、好ましいもの等を含めて式(101)と同じ意味を表す。
xは2〜4の整数を表し、3が好ましい。
前記インクの総質量に対する前記式(101)で表される化合物の総含有量は通常0.1〜20%、好ましくは1〜10%、より好ましくは2〜8%である。
前記式(101)で表される化合物は、例えば次のようにして製造することができる。なお下記式(2)から(7)において適宜使用されるQ1、Q2、R1及びR2は、それぞれ前記式(101)におけるのと同じ意味を表す。
特開2004−75719号公報に記載の方法に準じて、2−アミノ−4−ハロゲノフェノールを原料として得られる下記式(2−1)で表される化合物を、重亜硫酸ナトリウム及びホルマリンを用いて下記式(3)で表されるメチル−ω−スルホン酸誘導体に変換する。次いで、常法により、下記式(4)で表される3−アミノスルホン酸をジアゾ化し、先に得られた式(3)のメチル−ω−スルホン酸誘導体と、反応温度0〜15℃、pH4〜6でカップリング反応を行い、引き続き、反応温度80〜95℃、pH10.5〜11.5で加水分解反応を行うことにより、下記式(5−1)で表される化合物が得られる。
また、式(2−1)の代わりに、式(2−2)で表される化合物を用いる以外は前記と同様にして、式(5−2)で表される化合物を得ることができる。
Figure 2018044082
Figure 2018044082
Figure 2018044082
Figure 2018044082
前記式(5−1)の化合物(1当量)、式(5−2)の化合物(1当量)及びハロゲン化シアヌル(例えば塩化シアヌル、1当量)とを、反応温度15〜45℃、pH5〜8で縮合することにより、下記式(6)の化合物が得られる。この反応は、例えば、前記式(5−1)又は式(5−2)の化合物の一方の1当量とハロゲン化シアヌル(1当量)とを反応させた後、得られた反応物に、残りの一方の1当量をさらに反応させることもできる。
Figure 2018044082
前記式(6)で表される化合物と、「H−A」で表される化合物とを、反応温度55〜95℃、pH6〜9で反応させることにより、前記式(101)で表される化合物を得ることができる。
前記式(101)で表される化合物の具体例を下記表1〜7に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されない。
表1〜7中の略号等は、以下の意味を表す。
SMe:スルホメチル。
2−SEt:2−スルホエチル。
3−SPr:3−スルホ−n−プロピル(3−スルホ−ノルマルプロピル)。
4−SBu:4−スルホ−n−ブチル(4−スルホ−ノルマルブチル)。
Figure 2018044082
Figure 2018044082
Figure 2018044082
Figure 2018044082
Figure 2018044082
Figure 2018044082
Figure 2018044082
前記式(101)で表される化合物の塩としては、無機又は有機陽イオンとの塩が挙げられる。無機陽イオンの塩の具体例としてはアルカリ金属塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩;及びアンモニウム塩(NH4 +)が挙げられる。また、有機陽イオンとしては、たとえば下記式(8)で表される4級アンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 2018044082
前記式(8)中、Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、C1−C4アルキル基、ヒドロキシC1−C4アルキル基、又はヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基を表し、Z1〜Z4の少なくとも1つは水素原子以外の基である。
1〜Z4におけるC1−C4アルキル基の具体例としてはメチル、エチル等が挙げられる。同様に、ヒドロキシC1−C4アルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等が挙げられる。同様に、ヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基の具体例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−(ヒドロキシエトキシ)プロピル、3−(ヒドロキシエトキシ)ブチル、2−(ヒドロキシエトキシ)ブチル等が挙げられる。
前記塩の中ではナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンの塩等の有機4級アンモニウム塩;アンモニウム塩;等が好ましい。より好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。
一般に化合物の塩は、その塩の種類により溶解性等の物理的な性質、及び/又は、その塩を含有するインクの性能が変化するときのあることが知られている。このため目的とするインクの性能等に応じて、塩の種類を選択することも好ましく行われる。
前記式(101)で表される化合物は、単一の塩;複数の塩の混合物;又は、遊離酸と、単一若しくは複数の塩の混合物;等のいずれとすることもできる。
前記インクは、前記式(101)で表される化合物を水性媒体(水、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶液)に溶解し、必要に応じインク調製剤を添加したものである。このインクをインクジェットインクとして使用するときは、無機不純物の含有量が少ないものを用いるのが好ましい。無機不純物とは、例えば、金属陽イオンの塩化物、例えば塩化ナトリウム;硫酸塩、例えば硫酸ナトリウム;等を意味する。式(101)で表される化合物の総質量に対して、無機不純物の総含有量は通常1質量%以下、下限値は0質量%、すなわち検出機器の検出限界以下とすることができる。色素中の無機不純物の含有量を減らす方法としては、例えば、逆浸透膜、晶析、及び懸濁精製等により、色素を精製する方法が挙げられる。
前記の水溶性有機溶剤は、染料の溶解;組成物の乾燥の防止(湿潤状態の保持);組成物の粘度の調整;色素の記録メディアへの浸透の促進;組成物の表面張力の調整;組成物の消泡;等の効果を有するときがある。このため、前記インクは水溶性有機溶剤を含有するのが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルコール;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(好ましくはトリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル;γ−ブチロラクトン;ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。
なお、前記の水溶性有機溶剤には、例えばトリメチロールプロパン等のように、常温で固体の物質も含まれている。すなわち、室温では固体であっても水溶性を示す物質であって、その物質を含有する水溶液が水溶性有機溶剤と同様の性質を示し、同じ効果を期待して使用することができる物質は、本明細書においては水溶性有機溶剤とする。そのような物質としては、例えば、固体の多価アルコール類、糖類、及びアミノ酸類等が挙げられる。
インク調製剤としては、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、表面張力調整剤、消泡剤等の公知の添加剤が挙げられる。
前記の防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。
ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤としては、酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製の商品名プロクセルシリーズ(例えば、プロクセルGXL(S)及びXL−2(S)等)が挙げられる。
pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム;あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;タウリン等のアミノスルホン酸;等が挙げられる。
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物が挙げられる。また、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤等も使用できる。
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物が挙げられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。
有機系としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及びヘテロ環類等が挙げられる。
金属錯体系としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。
表面張力調整剤としては、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、例えばアニオン、両性、カチオン、及びノニオン等に分類することができる。
アニオン界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、その他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;日信化学工業株式会社製の商品名サーフィノール104、同82、同465、オルフィンSTG;SIGMA−ALDRICH社製の商品名Tergitol15−S−7;等が挙げられる。
消泡剤としては、高酸化油系、グリセリン脂肪酸エステル系、フッ素系、シリコーン系化合物等が挙げられる。
前記インクの総質量に対して、水溶性有機溶剤の含有量は通常0〜60%、好ましくは10〜50%である。同様にインク調製剤の含有量は通常0〜20%、好ましくは0〜15%である。前記インクは、前記式(101)で表される化合物、必要に応じて水溶性有機溶剤、及びインク調製剤を含有し、これら以外の残部は水である。
前記インクの表面張力は通常25〜70mN/m、好ましくは25〜60mN/mであり、粘度は30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。
前記インクは、前記の各成分を必要に応じて混合することにより調製することができる。各成分を加える順序には特に制限はない。
インクの調製に用いる水は、イオン交換水、蒸留水等の不純物が少ないものが好ましい。
また、調製したインクに対してメンブランフィルター等を用いた精密濾過を行うことができる。前記インクをインクジェットインクとして使用するときは、ノズルの目詰まり等を防止する目的で、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過に使用するフィルターの孔径は通常1μm〜0.1μm、好ましくは0.8μm〜0.1μmである。
前記インクは、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、又は記録等の各種の用途に使用することができる。それらの用途の中でもインクジェット記録における使用に適する。
前記インクジェット記録方法は、前記インクの液滴を、記録信号に応じて吐出させて記録メディアに付着させて記録を行う方法である。インクジェット方式としては、例えば、ピエゾ方式;サーマルインクジェット方式等が挙げられる。前記インクは、いかなる方式のインクジェットインクとしても使用できる。
前記インクは、本発明により得られる効果を阻害しない範囲で、その色相を微調整する目的等からさらに公知のイエロー色素を含有することができる。
また、例えば、ブラック、レッド及びグリーン等の各色のインクを調製する目的で、前記式(101)で表される化合物と、公知のマゼンタ及びシアン等の色素とを、併用することもできる。
また、フルカラーの記録画像を得る目的で、前記インクと、マゼンタ、シアン、グリーン、ブルー(又はバイオレット)、レッド、ブラック等から選択される各色のインクとを併用することもできる。
前記の記録メディアは、インク受容層を有するものと、有さないものとに大別される。前記インクジェット記録方法に用いる記録メディアとしては、これらのいずれも好ましい。
具体的な記録メディアとしては、例えば、紙、フィルム、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。
インク受容層は、インクを吸収してその乾燥を早める等の作用を目的として、記録メディアに設置される。インク受容層は、例えば前記の記録メディアにカチオン系ポリマーを含浸又は塗工する方法;インク中の色素を吸収できる無機微粒子を、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に、記録メディアの表面に塗工する方法;等により設置される。前記インク中の色素を吸収し得る無機微粒子としては、多孔質シリカ、アルミナゾル、及び特殊セラミックス等が挙げられる。
このようなインク受容層を有する情報伝達用シートは、通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、光沢フィルム等と呼ばれる。インク受容層を有する情報伝達用シートの代表的な市販品の例としては、キヤノン株式会社製、商品名プロフェッショナルフォトペーパー、キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]、及び光沢ゴールド;セイコーエプソン株式会社製、商品名写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢);日本ヒューレット・パッカード株式会社製、商品名アドバンスフォト用紙(光沢);富士フイルム株式会社製、商品名画彩 写真仕上げPro;ブラザー工業株式会社製、商品名:写真光沢紙BP71G;等が挙げられる。
また、インク受容層を有さない紙としては普通紙等が挙げられる。市販されている普通紙のうち、インクジェット記録用としては、両面上質普通紙(セイコーエプソン株式会社製);PB PAPER GF−500(キヤノン株式会社製);Multipurpose Paper、All−in−one Printing Paper(Hewlett Packard社製)等が挙げられる。また、プレーンペーパーコピー(PPC)用紙等も普通紙である。
前記のうち、
(a)前記式(101)で表される化合物、若しくは、
(b)前記式(101)で表される化合物を含有するインクが付着した記録メディアは、本発明の範囲に含まれる。
また、前記式(101)で表される化合物を含有するインクを含む容器が装填されたインクジェットプリンタも、本発明の範囲に含まれる。
前記した全ての成分、及び事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものと、より好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
本発明の前記式(101)で表される化合物は、水、及び水と水溶性有機溶剤との混合液に対する溶解性に優れる。
また、本発明の前記インクは、例えばメンブランフィルターに対する濾過性が良好であるという特徴を有する。
本発明の前記インクは、各種の記録メディアに記録したときに、非常に鮮明で、彩度及び印字濃度が高く、理想的な色相のイエロー色の画像を与える。このため、写真画質のカラー画像を、記録メディアに忠実に再現させることもできる。
本発明の前記インクは、長期間保存後の固体析出、物性変化、色相変化等もなく、貯蔵安定性が極めて良好である。
本発明のインクは、乾燥による固体の析出が非常に起こりにくい。このため、本発明のインクは、インクジェットプリンタの噴射器(記録ヘッド)の目詰まりを生じることがない。
本発明のインクは、比較的長い時間間隔においてインクを再循環させて使用する連続式インクジェットプリンタにおいても、オンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても、物理的性質の変化を起こさない。
本発明のインクを使用して、インク受容層を有する記録メディアに記録した画像は耐水性、耐湿性、耐オゾンガス性、耐擦性及び耐光性等の各種堅牢性、特に耐光性が良好である。この理由から、写真画質で記録した画像の長期保存安定性も優れる。
本発明のインクを使用して、インク受容層を有さない記録メディアに記録した画像は彩度、明度、及び印字濃度等の発色性も優れる。
以下に本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
実施例中、反応温度は反応系内の温度である。特に断りの無い限り、反応等の各種の操作は、いずれも攪拌下に行った。
また、λmax(最大吸収波長)は、pH7〜8の水溶液中での測定値であり、小数点以下1桁目を四捨五入して記載した。
なお、実施例で得られた本発明の化合物の水に対する溶解度は、室温において100g/L以上であった。
[実施例1]
(工程1)
3−アミノベンゼンスルホン酸17.3部を水酸化ナトリウムでpH7に調整しながら水200部に溶解し、次いで亜硝酸ナトリウム7.2部を加えて溶液とした。この溶液を0〜10℃で、5%塩酸200部中に30分間かけて滴下した後、10℃以下で1時間反応させてジアゾ反応液を得た。
一方、2−(3−スルホプロポキシ)−5−クロロアニリン26.6部を、水酸化ナトリウムでpH7に調整しながら水130部に溶解し、10.4部の重亜硫酸ナトリウム及び8.6部の35%ホルマリンを用いて、常法によりメチル−ω−スルホン酸誘導体とした。得られたメチル−ω−スルホン酸誘導体を、先に得たジアゾ反応液中に加え、0〜15℃、pH4〜6で24時間反応させた。得られた反応液を水酸化ナトリウムでpH11とした。このpHを維持しながら反応液を80〜95℃に加熱してさらに5時間反応させた。得られた液に塩化ナトリウム100部を加え、析出した固体をろ過分離することにより、下記式(9)で表される化合物100部をウェットケーキとして得た。
Figure 2018044082
(工程2)
氷水250部中にレオコールTD90(ライオン株式会社製の界面活性剤)0.1部を加えて激しく撹拌しながら塩化シアヌル3.6部をさらに加え、0〜5℃で30分間撹拌することにより懸濁液を得た。
一方、実施例1の工程1で得た式(9)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、溶液を得た。この溶液を先に得た懸濁液に30分間で滴下した後、pH6〜8、25〜45℃で6時間反応させて液を得た。得られた液に、2−アミノエタノール7.3部を加え、pH7〜9、75〜90℃で2時間反応させた。得られた反応液を20〜25℃に冷却した後、この反応液に2−プロパノール2000部を加え、20〜25℃で2時間撹拌することにより液を得た。得られた液から析出した固体をろ過分離することによりウェットケーキ92.1部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより下記式(10)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:410nm)12.0部を得た。
Figure 2018044082
[実施例2]
実施例1(工程2)において、2−アミノエタノール7.6部を使用する代わりにモルホリン5.2部を使用する以外は実施例1と同様にして、下記式(11)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:398nm)11.0部を得た。
Figure 2018044082
[インクの調製]
下記表6に示した各成分を混合して溶液とした後、0.45μmのメンブランフィルターで精密濾過することにより、試験用のインクを調製した。表中の数値は「部」である。
下記表6中、「aq.NaOH」が「残部」とは、各成分の混合液に25%水酸化ナトリウム水溶液と水とを加え、各液のpHを8.0〜9.5に、且つ液の総量を100部に調製したことを意味する。
下記表5中の略号等は、以下の意味を表す。
式(10):前記式(10)で表される化合物。
式(11):前記式(11)で表される化合物。
式(12):下記式(12)で表される化合物。
DY132:C.I.ダイレクトイエロー132。
EDTA2Na:エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム。
104PG50:サーフィノール104PG50。
Figure 2018044082
比較例1のインクが含有する式(12)の色素化合物の構造を以下に示す。
Figure 2018044082
[インクジェット記録]
各実施例、及び比較例のインクを、インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、下記の光沢紙1〜4にインクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記する試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT−201)。
光沢紙2:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア。
光沢紙3:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G。
光沢紙4:富士フィルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro。
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X−rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は濃度基準にANSI A、視野角2度、光源D50の条件で行った。
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ−を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の70%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記4段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものが、より優れる。評価結果を下記表6に示す。
[耐光性評価基準]
色素残存率が90%以上:A。
色素残存率が85%以上90%未満:B。
色素残存率が81%以上85%未満:C。
色素残存率が80%以下:D。
[色素残存率の算出式]
色素残存率=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100(%)。
Figure 2018044082
表7から明らかなように、耐光性試験において、何れの光沢紙においても各実施例は各比較例より優れる結果を示した。
イエロー色素である本発明の化合物、及びこれを含有する本発明のインクは、耐光性が極めて優れた記録画像を与える。従って、本発明の化合物、及びこれを含有するインクは、各種の記録用途、特にインクジェット記録用途に非常に有用である。

Claims (13)

  1. 下記式(101)で表される化合物又はその塩。
    Figure 2018044082
    (式中、Q1及びQ2はハロゲン原子を表す。基Aは、それぞれ置換基を有することができるアルキルアミノ基、アリールアミノ基、含窒素複素環基、アルキルチオ基、及びアリールチオ基を表す。R1及びR2はそれぞれ独立にイオン性親水性で置換されたアルキル基を表す。)
  2. 前記式(101)が、下記式(1)で表される請求項1に記載の化合物又はその塩。
    Figure 2018044082
    (式中、Q1、Q2及び基Aは、前記式(101)におけるのと同じ意味を表し、xは2〜4の整数を表す。)
  3. 式(1)において、Q1及びQ2が塩素原子である請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
  4. 式(1)において、xが3である請求項2に記載の化合物又はその塩。
  5. 式(1)において、Q1及びQ2が塩素原子であり、xが3であり、基Aが下記式(A−1)で表される基である請求項2に記載の化合物又はその塩。
    Figure 2018044082
    (式中、nは2〜5の整数を表し、*はトリアジン環との結合手を表す。)
  6. 式(1)において、Q1及びQ2が塩素原子であり、xが3であり、基Aが下記式(A−2)で表される基である請求項2に記載の化合物又はその塩。
    Figure 2018044082
    (式中、*はトリアジン環との結合手を表す。)
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物又はその塩を含有するインク。
  8. 水溶性有機溶剤をさらに含有する請求項7に記載のインク。
  9. 請求項7又は8に記載のインクのインクジェット記録における使用。
  10. 請求項7又は8に記載のインクの液滴を、記録信号に応じて吐出させて記録メディアに付着させる、インクジェット記録方法。
  11. 記録メディアが、普通紙又はインク受容層を有するシ−トである請求項10に記載のインクジェット記録方法。
  12. (a)請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物又はその塩、若しくは、
    (b)請求項7又は8に記載のインク、
    のいずれかが付着した記録メディア。
  13. 請求項7に記載のインクを含む容器が装填されたインクジェットプリンタ。
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