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JP2017531040A - 加水分解に対する合成の比が改善したスブチリシン変異体を使用するペプチド断片縮合及び環化 - Google Patents

加水分解に対する合成の比が改善したスブチリシン変異体を使用するペプチド断片縮合及び環化 Download PDF

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JP2017531040A JP2017538568A JP2017538568A JP2017531040A JP 2017531040 A JP2017531040 A JP 2017531040A JP 2017538568 A JP2017538568 A JP 2017538568A JP 2017538568 A JP2017538568 A JP 2017538568A JP 2017531040 A JP2017531040 A JP 2017531040A
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Abstract

【課題】(オリゴ)ペプチドを酵素的に合成するための方法に関する。【解決手段】本発明の方法は、(a)(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルと(b)N末端非保護アミンを有する(オリゴ)ペプチド求核試薬をカップリングすることを含み、カップリングは、水を含む流体中で実施され、カップリングは、配列番号2によって表されるスブチリシンBPN’又はその相同体配列と比較して、以下の突然変異:−位置75〜83に対応するアミノ酸の欠失、−S221に対応するアミノ酸位置での突然変異であって、S221C又はS221セレノシステインである突然変異、−好ましくは、P225に対応するアミノ酸位置での突然変異を含むスブチリシンBPN’変異体又はその相同体によって触媒され、アミノ酸位置は、配列番号2によって表されるスブチリシンBPN’の配列に従って定義される。【選択図】図1

Description

本発明は、(オリゴ)ペプチド(すなわち、ペプチド、特に、オリゴペプチド)を酵素的に合成するための方法、前記合成を触媒するのに適した酵素、前記酵素を機能的に発現可能な宿主細胞及び前記酵素を調製するための方法に関する。
ペプチド、特に、オリゴペプチドは、例えば、医薬、食品若しくは飼料成分又は化粧品成分として多数の適用を有する。
(オリゴ)ペプチドを合成するための方法は、一般に、当技術分野で公知である。
オリゴペプチドは、高度に最適化されたプロセスによって溶液中又は固相上で段階的に化学的に合成され得る。しかし、10〜15個のアミノ酸より長いペプチドは、副反応のために、また結果として、精製が面倒であるために、合成することが極めて困難であることが多い。したがって、10個のアミノ酸より長いペプチドは、例えば、20個のアミノ酸のオリゴペプチドを作製するための10+10縮合におけるように、その後、溶液中で化学的に縮合される、側鎖が保護されたオリゴペプチド断片の固相合成の組合せによって合成されることが多い。化学的側鎖保護オリゴペプチド断片縮合の主要な欠点は、アシルドナーのC末端アミノ酸残基の活性化の際に、ラセミ化が生じることである。対照的に、酵素によって触媒されるペプチドカップリングはラセミ化が完全になく、また側鎖官能基で副反応がないことなど、化学的ペプチド合成を上回るいくつかのその他の利点を有する。産業上の利用のためには、動力学的アプローチに基づいた、すなわち、アシルドナーC末端エステルを使用する酵素的ペプチド合成の概念は、最も魅力的である(例えば、N. Sewald and H.-D. Jakubke、in:「Peptides: Chemistry and Biology」、第1別刷、Wiley-VCH Verlag GmbH、Weinheim編 2002年を参照のこと)。
化学酵素的ペプチド合成は、化学合成、発酵を使用して、又は化学的及び酵素的カップリングステップの組合せによって個々に合成しておいたオリゴペプチド断片の酵素的カップリングを伴い得る。水溶液中でのオリゴペプチド断片の酵素的縮合に関していくつかの報告が公開されている(Kumaran et al. Protein Science, 2000, 9, 734; Bjorup et al. Bioorg. Med. Chem. 1998, 6, 891; Homandberg et al. Biochemistry, 1981, 21, 3387; Komoriya et al. Int. J. Pep. Prot. Res. 1980, 16, 433)。しかし、水溶液におけるこのような酵素的オリゴペプチド断片縮合の主要な欠点は、オリゴペプチド断片内のペプチド結合の、及びC末端エステル官能基が同時に加水分解され、低収率及び多数の副生成物につながることである。
プロテアーゼは、これまで主に、例えば、ペプチド結合がプロテアーゼによって加水分解されるクリーニングにおける加水分解適用のために商業的に製造されてきた。代表例として、スブチリシンがあり、これらは、界面活性剤としてのその使用にとって相当な重要性を有する酵素のクラスを形成する。したがって、スブチリシンは、多数のタンパク質エンジニアリング研究の対象であった。スブチリシンはまた、オリゴペプチドの合成のために使用されてきたが、これは、ほとんどの場合、加水分解性副反応を相当な程度に伴っていた。Wellsら(US5,403,737)によって、スブチリシンBPN’、B.アミロリケファシエンス(amyloliquefaciens)由来のスブチリシンの活性部位(配列番号2)を変更することによって、水溶液におけるオリゴペプチドの縮合が大幅に改善され得ることが見出された。2つの突然変異、すなわち、S221C及びP225Aが導入されると、野生型スブチリシンBPN’と比較して、500倍増大した加水分解に対する合成の比(S/H比)を有する、スブチリガーゼ(subtiligase)と呼ばれるスブチリシンBPN’変異体が得られた。しかし、平均ライゲーション率は、およそ66%であり、オリゴペプチドアシルドナーC末端エステルの加水分解は、依然として相当あった(Wells et al. Science, 1994, 266, 243)。ほとんどの場合、10当量のオリゴペプチドアシルドナーC末端エステルを使用して、妥当な反応収率が得られた。スブチリガーゼの別の欠点は、オリゴペプチド断片を可溶化するために必要である有機共溶媒に対する、高温に対する及びオリゴペプチド縮合の成功にとって必要とされることが多い変性剤に対する安定性が不十分であることであった。したがって、Wellsらは、スブチリガーゼに5つのさらなる突然変異、すなわち、M50F、N76D、N109S、K213R及びN218Sを加えて、より安定な酵素を作製した(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, 12544)。スタビリガーゼ(stabiligase)と呼ばれるこの新規突然変異体は、ドデカ硫酸ナトリウム及びグアニジン塩酸塩に対して中程度により耐性であると思われたが、加水分解が依然として主要な副反応であった。例えば、スタビリガーゼを使用してオリゴペプチドアミンにオリゴペプチドカルボキシアミドメチル−エステル(Cam−エステル)をライゲーションし、44%の収率であった。この例では、10当量のオリゴペプチドC末端エステルを使用し、したがって、9.56当量のオリゴペプチドC末端エステルは、C末端エステル官能基で加水分解され、0.44当量のみがオリゴペプチドアミンとライゲーションして、生成物を形成した。オリゴペプチド縮合反応を経済的に実行可能なプロセスにするには、より高いS/H比を有する改善された酵素が必要であることは明らかである。おそらくは、この理由のために、本発明者らの知る限り、過去20年、スブチリガーゼもスタビリガーゼも工業的に適用されていない。
注目を受けたスブチリシンBPN’の別の態様は、高温及び/又は金属キレート剤の存在下での界面活性剤としてのその使用のための(すなわち、ペプチド結合の加水分解のための)酵素の安定性の増大である。このような研究の代表例が、Bryanらによって開示され(WO02/22796)、彼らは、高親和性Ca2+結合部位を欠くスブチリシンBPN’変異体を、遺伝子操作により得た。スブチリシンBPN’中の高親和性Ca2+結合部位は、アミノ酸74〜82及びアミノ酸Gln2(Q2)及びAsp41(D41)を含むループによって構成される。スブチリシンBPN’の3D構造の、相同スブチリシンの構造との比較によって、高親和性Ca2+結合部位が高度に保存されていることが示される。この結合部位は、公知のスブチリシンにおけるその安定性にとって重要である。例えば、金属キレート剤によるCa2+イオンの除去は、公知のスブチリシンのアンフォールディング、したがって、不活性化につながる。Bryanら、スブチリシンBPN’のアミノ酸75〜83(Δ75−83)を欠失させ、さらに、突然変異Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、Y217L、N218S、T254A及びQ271Eを実行した場合に、Ca2+結合ドメインを欠き、金属キレート剤に対する安定性が大きく改善された(1000×)スブチリシンBPN’変異体が得られた(BS149と呼ばれ、Sbt149としても知られる)。しかし、この酵素は、加水分解活性しか持たないので、水溶液中でのペプチド断片縮合には使用され得ない。
(オリゴ)ペプチドを調製する既知方法の代替法として役立ち得る、第1及び第2の(オリゴ)ペプチド断片の縮合によって、又は(オリゴ)ペプチドの環化によって(オリゴ)ペプチドを調製するための酵素法を提供することが、本発明の目的である。一般に、特に、特定の(オリゴ)ペプチドを作製するためのツールのパレットを広げるために代替法が必要である。
特に、第1及び第2の(オリゴ)ペプチド断片の縮合によって、又は(オリゴ)ペプチドの環化によって(オリゴ)ペプチドを調製するための酵素法であって、少なくとも特定の反応条件下でスブチリシンBPN’と比較して、改善されたS/H比及び安定性を有する酵素が使用される酵素法を提供することが目的である。
さらに、第1及び第2の(オリゴ)ペプチド断片の縮合によって、又は(オリゴ)ペプチドの環化によって(オリゴ)ペプチドを調製するための酵素法であって、スブチリガーゼと比較して改善された安定性、特に、スブチリガーゼと比較して改善された安定性及びS/H比を有する酵素が使用される酵素法を提供することが目的である。
本発明のなおさらなる目的は、(オリゴ)ペプチドのタンパク質とのカップリングを提供することである。ペプチドのタンパク質とのカップリングを可能にする酵素的方法論を提供することは、特に、タンパク質の3次元構造の複雑性が加えられるために、とりわけ難題である。
なおさらなる目的は、2種の(オリゴ)ペプチドの縮合又は(オリゴ)ペプチドの環化を触媒可能な新規スブチリシンBPN’変異体、特に、少なくとも特定の反応条件下で、スブチリシンBPN’及び/又はスブチリガーゼなどの、このような縮合を触媒するのに適した既知酵素と比較して、改善された加水分解に対する合成の比及び/又は改善された安定性などの改善された特性を有するような酵素を提供することである。
本発明の主題であり得る1つ又は複数のその他の目的は、以下の説明から得られる。
ここで、驚くべきことに、アミノ酸75〜83に対応する位置のカルシウム結合ドメインが不活性化されている、すなわち、欠失によって、2つの(オリゴ)ペプチド断片の縮合又はペプチドの環化に関して触媒活性を有するスブチリシンBPN’変異体を提供すること、特に、位置75〜83に対応するアミノ酸の欠失に加えて、特定の突然変異、好ましくは、突然変異の特定の組合せを有するスブチリシンBPN’変異体を提供することによって、スブチリシンBPN’及び/又はスブチリガーゼと比較して、改善されたS/H比を有するような変異体を提供することが可能であることを見出した。
したがって、本発明は、(オリゴ)ペプチドを酵素的に合成する方法に関し、前記方法は、(a)(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルと(b)N末端非保護アミンを有する(オリゴ)ペプチド求核試薬をカップリングすることを含み、カップリングは、水を含む流体中で実施され、
カップリングは、配列番号2又はその相同配列によって表されるスブチリシンBPN’と比較して以下の突然変異:
i)位置75〜83に対応するアミノ酸の欠失
ii)S221に対応するアミノ酸位置での突然変異であって、S221C又はS221セレノシステイン(S221U)である突然変異、
iii)好ましくは、P225に対応するアミノ酸位置での突然変異
を含むスブチリシンBPN’変異体又はその相同体によって触媒され、
アミノ酸位置は、配列番号2によって表されるスブチリシンBPN’の配列に従って定義される。
さらに、本発明は、少なくとも12個のアミノ酸の環状(オリゴ)ペプチドを酵素的に合成するための方法に関し、前記方法は、N末端非保護アミンを有する(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルを、環化ステップに付すことを含み、前記環化が、水を含む流体中で実施され、
ここで、環化は、配列番号2又はその相同配列によって表されるスブチリシンBPN’と比較して、以下の突然変異:
i)位置75〜83に対応するアミノ酸の欠失
ii)S221に対応するアミノ酸位置での突然変異であって、S221C又はS221セレノシステインである突然変異、
iii)好ましくは、P225に対応するアミノ酸位置での突然変異
を含むスブチリシンBPN’変異体又はその相同体によって触媒され、
アミノ酸位置は、配列番号2によって表されるスブチリシンBPN’の配列に従って定義される。
さらに、本発明は、配列番号2又はその相同配列によって表されるスブチリシンBPN’と比較して以下の突然変異:
i)位置75〜83に対応するアミノ酸の欠失
ii)S221に対応するアミノ酸位置での突然変異であって、S221C又はS221セレノシステインである突然変異、
iii)P225に対応するアミノ酸位置での突然変異
を含むスブチリシンBPN’変異体又はその相同体である酵素に関し、
アミノ酸位置は、配列番号2によって表されるスブチリシンBPN’の配列に従って定義される。
さらに、本発明は、本発明の酵素を調製するための組換え方法に関し、前記方法は、
a)酵素をコードする遺伝子を機能的に発現する組換え宿主細胞を提供することと、
b)前記宿主細胞を、酵素的に活性な酵素の発現を提供する条件下で培養することと、
c)前記微生物宿主から発現された酵素を回収することと
を含む。
さらに、本発明は、本発明の酵素をコードする配列を含む組換えポリヌクレオチドに関する。
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。宿主細胞は、本発明の酵素を機能的に発現し得る。
さらに、本発明は、触媒としての本発明の酵素の使用に関する。このような使用は、一般に、酵素が、基質が関与する化学反応を触媒する条件下で、酵素の存在下で1種又は複数の基質(反応物)を接触させることを含む。酵素は、ペプチド合成における触媒として特に有用である。本発明の酵素は、既知スブチリシンが触媒的に活性であることが分かっている反応を触媒するのに有用であることが特に企図される。一実施形態では、合成されるペプチドは、タンパク質である。一実施形態では、合成されるペプチドは、オリゴペプチドである。さらなる実施形態では、合成されるペプチドは、少なくとも201のアミノ酸単位から構成される。
本発明は、(オリゴ)ペプチドで拡張されたタンパク質を含む(オリゴ)ペプチドを調製する既知方法の有用な代替法を提供する。
さらに、驚くべきことに、本発明の方法を用いて、加水分解に対する高い合成比で、2つの(オリゴ)ペプチド断片を酵素的に縮合すること又は水を含む液体中で(オリゴ)ペプチド環化することが可能であると分かった。本発明の方法は、相当な加水分解性副反応を伴わず、高収率で、水溶液中で種々のオリゴペプチド断片をカップリングする可能性を提供するという点で有利である。このような驚くべき発見は、本発明の方法は、二次及び三次タンパク質構造を欠く(オリゴ)ペプチドを合成するのに適しているだけではなく、断片の少なくとも一方がタンパク質である2つのペプチド断片のカップリング、それによる、アミノ酸単位のさらなる配列が提供された(伸長された)タンパク質の合成を可能にすることを示す実施例によって示される。タンパク質の二次及び三次構造を維持しながらこのようなタンパク質を合成することが可能であると分かった。
本発明の目的上、「加水分解に対する合成の比」(S/H比)とは、エステル又はチオエステル基が加水分解されている(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルの量によって除された、酵素的に合成された(オリゴ)ペプチド生成物の量を意味する。
本発明の酵素のS/H比の値は、種々の因子、例えば、基質((オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルの、及び(オリゴ)ペプチド求核試薬のアミノ酸配列)の性質並びに反応条件(例えば、温度、pH、ペプチド断片の濃度、酵素濃度)に応じて変わる。しかし、実施例に示されるように、種々の反応条件下で、種々の基質について、S/H比は、スブチリガーゼ及びスブチリシンBPN’などの既知スブチリシンよりも高いと分かった。したがって、本発明の酵素のS/H比は、一般に、同一反応条件下で、同一基質を使用して試験された場合には、スブチリガーゼ及びスブチリシンBPN’よりも大幅に高いS/H比を有することが企図され、特に、本発明の酵素は、実施例1(100mMリン酸バッファー、pH8.0、温度約20℃、(オリゴ)ペプチドC末端エステルの濃度0.83mM、(オリゴ)ペプチド求核試薬の濃度3.33mM、酵素濃度5.5mg/L)又はその他の実施例のうちの1つ若しくは複数において使用された条件下で大幅に高いS/H比を有することが企図される。したがって、特に、本発明は、少なくとも、実施例1又はその他の実施例のうちの1つ若しくは複数に記載される条件下での、スブチリガーゼのS/H比によって除した、スブチリシンBPN’変異体又はその相同体のS/H比が、1を超える、好ましくは、2以上、特に、5以上である、スブチリシンBPN’変異体又はその相同体に関する。この商の上限値は、重大なものではなく、実際には、例えば、100以下、特に、20以下であり得る。
少なくとも、実施例1又はその他の実施例のうちの1つ若しくは複数に記載される条件下での、スブチリシンBPN’のS/H比によって除された、本発明のスブチリシンBPN’変異体又はその相同体のS/H比は、通常、100を超える、好ましくは、250以上、より好ましくは、500以上、特に、1000以上である。この商の上限値は、重大なものではなく、少なくとも本明細書において明記された反応条件下での、スブチリシンBPN’のS/H比は、一般に、極めて低く、ゼロでさえあり得る(検出可能な合成なし)。したがって、スブチリシンBPN’のS/H比によって除された、本発明のスブチリシンBPN’変異体又はその相同体のS/H比は、およそ無限大であり得る。スブチリシンBPN’が、実質的なリガーゼ又はシクラーゼ活性を有する可能性のある状況では、本発明者らは、スブチリシンBPN’のS/H比によって除された、本発明のスブチリシンBPN’変異体又はその相同体のS/H比も高く、例えば、最大100000、特に、最大25000、さらに特に、最大10000であるということを考慮する。
さらに、本発明の方法を使用すると、(オリゴ)ペプチド生成物は、わずかな加水分解性副生成物しか形成されないので、反応混合物から精製することは極めて容易である。
本発明の別の利点は、縮合反応において、高収率(>80%)を達成するために、改善されたS/H比のために、わずかに過剰な又は過剰ではない(オリゴ)ペプチドC末端エステル若しくはチオエステル又は(オリゴ)ペプチド求核試薬しか必要とされないということである。したがって、有利な実施形態では、(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルと(オリゴ)ペプチド求核試薬は、わずかに過剰な前記(オリゴ)ペプチド断片のうちの1種で、又はおよそ化学量論比で接触されるが、以下に記載されるように、その他のものを上回って大過剰のものが使用されることもある。
実施例に示されるように、本発明の酵素はまた、スブチリガーゼより相当に高い収率で(スブチリガーゼの61%に対して78%)環状(オリゴ)ペプチドの合成を可能にする点で有利である。環状(オリゴ)ペプチドは、そのより拘束された3次元構造及びタンパク質分解に対するより高い耐性のために、より強力であることが多いので、特に興味深いクラスのペプチドである。
スブチリガーゼと比較した本発明の種々の酵素の酵素活性S/H比を示す図である。M222、Y104、I107及び/又はL135でのすべての示された突然変異は、BS149−DMのものに付加的なものである。名称「BS149−DM」は、本明細書において、スブチリシンBPN’(配列番号2)と比較して以下の突然変異を有するスブチリシンBPN’変異体に対して使用される:アミノ酸75〜83の欠失(Δ75−83)S221C、P225A、Y217L、Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271E。 スブチリガーゼと比較した本発明の種々の酵素の酵素活性S/H比を示す図である。M222、Y104、I107及び/又はL135でのすべての示された突然変異は、BS149−DMのものに付加的なものである。名称「BS149−DM」は、本明細書において、スブチリシンBPN’(配列番号2)と比較して以下の突然変異を有するスブチリシンBPN’変異体に対して使用される:アミノ酸75〜83の欠失(Δ75−83)S221C、P225A、Y217L、Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271E。 種々のBS149−DM+M222P+L217突然変異体の活性S/H比を示す図である。L217でのすべての示された突然変異は、BS149−DM+M222Pのものに付加的なものである。 種々のBS149−DM+M222P+L217突然変異体の活性S/H比を示す図である。L217でのすべての示された突然変異は、BS149−DM+M222Pのものに付加的なものである。 BS149−DM及びBS149−DM+Y104突然変異体のP4ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM及びBS149−DM+I107突然変異体のP4ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM及びBS149−DM+L135突然変異体のP4ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM及びBS149−DM+M222A、M222E及びM222Q突然変異体のP1’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM及びBS149−DM+M222A、M222E及びM222Q突然変異体のP2’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM及びBS149−DM+M222G、M222N及びM222P突然変異体のP1’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM及びBS149−DM+M222G、M222N及びM222P突然変異体のP2’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217N、L217T及びL217E突然変異体のP1’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217N、L217T及びL217E突然変異体のP2’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217I、L217V及びL217A突然変異体のP1’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217I、L217V及びL217A突然変異体のP2’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217M、L217K及びL217Q突然変異体のP1’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217M、L217K及びL217Q突然変異体のP2’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217S、L217G及びL217Y突然変異体のP1’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217S、L217G及びL217Y突然変異体のP2’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217F、L217H及びL217W突然変異体のP1’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217F、L217H及びL217W突然変異体のP2’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217R、L217C、L217D及びL217P突然変異体のP1’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222P+L217R、L217C、L217D及びL217P突然変異体のP2’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM+M222G+L217N、L217T及びL217E突然変異体のP1’ポケット基質特異性を示す図である。 BS149−DM+M222G+L217I、L217V及びL217A突然変異体のP1’ポケット基質特異性を示す図である。 BS149−DM+M222G+L217M、L217K及びL217Q突然変異体のP1’ポケット基質特異性を示す図である。 BS149−DM+M222G+L217S、L217G及びL217Y突然変異体のP1’ポケット基質特異性を示す図である。 BS149−DM+M222G+L217F、L217H及びL217R突然変異体のP1’ポケット基質特異性を示す図である。 BS149−DM+M222G+L217C、L217D及びL217P突然変異体のP1’ポケット基質特異性を示す図である。 BS149−DM、BS149−DM+M222G及びBS149−DM+I107V+M222G突然変異体のP1’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM、BS149−DM+M222G及びBS149−DM+I107V+M222G突然変異体のP2’ポケット特異性を示す図である。 BS149−DM、BS149−DM+I107V及びBS149−DM+I107V+M222G突然変異体のP4ポケット特異性を示す図である。 種々のpH値でのBS149−DM+M222G突然変異体のS/H比を示す図である。 図9Aは、種々の濃度のアシルドナー及びH−Glu−Leu−Arg−NH求核試薬を使用する、BS149−DM+M222G突然変異体のS/H比を示す図である。 種々の濃度のアシルドナー及びH−Ala−Leu−Arg−NH求核試薬を使用する、BS149−DM+M222G突然変異体のS/H比を示す図である。 スブチリガーゼと比較した、(オリゴ)ペプチド環化に使用される本発明の種々の酵素のS/H比を示す図である。 種々のpH値での(オリゴ)ペプチド環化に使用されるBS149−DM+M222G突然変異体のS/H比を示す図である。 BS149−DM遺伝子を有する、枯草菌(B.subtilis)/大腸菌(E.coli)シャトルベクターpBE−S(pBES DNA-BS149-DM HIStag)を示す図である。 スブチリガーゼ遺伝子を有する、枯草菌/大腸菌シャトルベクターベクターPBS42−S5を示す図である。 本発明のスブチリシンBPN’変異体の相同体の提供のための鋳型として使用され得るスブチリシンの一覧並びにスブチリシンBPN’(配列番号2)中の対応するループ及びBS149−DM(配列番号5)中のループの欠失を有するCa2+結合ループを含有する配列セグメントのアラインメントを示す図である。
本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖形態のいずれかであり得、別段の制限がない限り、天然に存在するヌクレオチドと類似の方法で一本鎖核酸とハイブリダイズするという点で天然ヌクレオチドの本質的な性質を有する既知類似体を包含する。ポリヌクレオチドは、天然又は異種構造又は調節遺伝子の全長又は部分配列であり得る。特に断りのない限り、この用語は、特定の配列並びにその相補配列への言及を含む。したがって、安定性のために、又はその他の理由で修飾された骨格を有するDNA又はRNAは、その用語が本明細書において意図される「ポリヌクレオチド」である。用語ポリヌクレオチドは、本明細書において使用されるように、ポリヌクレオチドのこのような化学的に、酵素的に又は代謝的に修飾された形態並びにウイルス及び中でも、単一及び複合細胞を含む細胞に特徴的なDNA及びRNAの化学的形態を包含する。
本発明の組換えポリヌクレオチドは、通常合成のものである。本発明は、特に、任意の生物から単離されたDNA又はRNAに及ぶ。特定の実施形態では、本発明は、本発明の組換えDNAを含む宿主細胞に及ぶ。宿主細胞は、通常、トランスジェニックである。
用語「組換え」とは、本明細書において、組換えDNA技術及び/又はその他の突然変異誘発技術を使用する1つ又は複数の遺伝子改変の結果であるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド又は細胞を指す。特に、組換え細胞は、対応する野生型細胞中に存在しないポリヌクレオチドを含み得、このポリヌクレオチドは、組換えDNA技術を使用してその細胞中に導入されているか(トランスジェニック細胞)、又は前記野生型細胞中に存在しないこのポリヌクレオチドは、前記野生型細胞中に存在するポリヌクレオチド配列(酵素などの野生型ポリペプチドをコードする遺伝子など)における、例えば、組換えDNA技術若しくはUV照射などの別の突然変異誘発技術を使用する、1つ若しくは複数の突然変異の結果であるか、又は遺伝子のポリヌクレオチド配列は、ポリペプチド産物(それをコードする)を別の細胞コンパートメントにターゲッティングするように改変されている。さらに、用語「組換え(細胞)」は、特に、DNA配列が、組換えDNA技術を使用して除去されている株(細胞)に関する。
特に、あるヌクレオチドを別のヌクレオチドと交換するための、ポリヌクレオチド配列への突然変異の導入は、当技術分野で公知の方法のいずれかを使用する部位特異的突然変異誘発によって達成され得る。さらに、突然変異された遺伝子は、アミノ酸レベルでの変化の導入とは別に遺伝子合成によって得ることができ、転写及び翻訳を改善するためにコード配列を最適化するためにも使用され得る(R. Carlson, Nature Biotechnology, 2009, 27, 1091; E. Angov et al., PLoS ONE 2008, 3(5): e2189)。
用語「トランスジェニック細胞」とは、本明細書において、その株(細胞)中に天然に存在せず、組換えDNA技術を使用してその株(細胞)、すなわち、組換え細胞)中に導入されているポリヌクレオチドを含有する株(細胞)を指す。
用語「又は」とは、本明細書において、別段に明記されるか又は「いずれか...又は...」を意味すると文脈から分かるのでない限り、「及び/又は」と定義される。
用語「1つの(a)」又は「1つの(an)」とは、本明細書において、別段に明記されない限り、「少なくとも1つの」と定義される、又は単数形のみを指すはずであるという文脈から分かる。
単数形の名詞(例えば、化合物、付加物など)を指す場合には、単数形のみを指すはずであるという文脈から分からない限り、複数形が含まれるものとする。
本発明の目的上、「ペプチド」とは、2個以上のアミノ酸から構成される任意の鎖を意味する。したがって、ペプチドは、一般に、水の形式上の喪失を伴う、あるもののカルボニル炭素から別のものの窒素原子への共有結合の形成による、少なくとも概念的に2個以上のアミノカルボン酸分子(すなわち、アミノ酸)から構成されるアミドである。用語は、通常、α−アミノ酸から形成される構造に適用される。ペプチドは、線形、分岐又は環状であり得る。ペプチドは、2個以上のアミノ酸から構成される一本鎖を有し得る、又はペプチドは、複数の鎖を有し得る。ペプチドが2つ以上の鎖から構成される場合には、各鎖は、一般に、3個以上のアミノ酸分子から構成される。ペプチドのアミノ酸配列は、一次構造と呼ばれる。
一実施形態では、ペプチドは、二次構造を本質的に含まず、三次構造を本質的に含まない。
さらなる実施形態では、ペプチドは、二次構造を有する。二次構造は、一般に、個々のアミノ酸とペプチド主鎖の間の相互作用による、α−へリックス及びβ−シート(又はβ鎖)などの高度に規則的な局所部分構造である。
一実施形態では、ペプチド(又は複数のペプチド)は、三次構造を有する。三次構造は、一般に、複数の相互作用、中でも、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、イオン性相互作用及びジスルフィド結合によって形成される。二次構造はまた、三次構造に寄与し得る。三次構造は、三次元形状(温度にが変化せず、ペプチドが存在する培地が変化しないなど、安定環境において本質的に固定される)を提供する。当業者は承知しているように、三次構造は、任意の固定された三次構造を欠くランダムコイルペプチド鎖とは異なる。タンパク質は、三次構造を有する(オリゴ)ペプチドである。三次構造の周知の例として、球状タンパク質の球状構造がある。一実施形態では、タンパク質は、医薬的に活性な(オリゴ)ペプチドの特定の部位への、例えば、腫瘍への、又は臓器組織への標的送達のためのタンパク質である。このような目的に適したタンパク質の周知の例として、免疫グロブリン又は免疫グロブリンの抗原結合断片(Fab)などのその一部がある。したがって、医薬的に活性な(オリゴ)ペプチドを、免疫グロブリンの抗原を含有する標的、例えば、腫瘍組織又は臓器組織へより効率的に送達するために、医薬的に活性な(オリゴ)ペプチドにカップリングされた免疫グロブリン(Immuglobulins)が使用され得る。一実施形態では、タンパク質は、生物における(オリゴ)ペプチド半減期、特に、血漿半減期を増大するのに適したタンパク質である。アルブミンは、半減期を増大するために(オリゴ)ペプチドにカップリングされ得るタンパク質の例である。
ジスルフィド結合(ジスルフィド橋)は、通常、2つのシステイン単位間の結合(酸化によって形成される)である。したがって、同一ペプチド鎖(アミノ酸配列)中の2個のアミノ酸は、アミノ酸配列中の隣接していないアミノ酸である場合には共有結合され得る。また、第1のペプチド鎖の第1のシステインと、同一又は異なるアミノ酸配列を有し得る第2のペプチド鎖の第2のシステイン間にジスルフィド結合が形成されて、ペプチドが形成され得る。このようなペプチドは、2つ以上のペプチド鎖を含む。種々の鎖がジスルフィド結合によって結合している2つ以上のペプチド鎖から構成されるペプチドの例として、インスリンがある。種々のペプチド鎖を結合するその他の結合は、一般に当技術分野で公知である。
一実施形態では、(オリゴ)ペプチドは、本質的に、アミノ酸単位からなる。さらなる実施形態では、(オリゴ)ペプチドは、本質的に、アミノ酸単位及び保護基からなる。一実施形態では、ペプチドは、2個以上のアミノ酸及び別の分子、特に、炭水化物(carobohydrate)又は脂質のペプチド鎖のコンジュゲートである。これらのペプチドは、それぞれ、グリコペプチド及びリポペプチドと呼ばれる。さらなる実施形態では、ペプチドコンジュゲートは、2個以上のアミノ酸及び蛍光、リン光、発色性又は放射活性基などの造影剤のコンジュゲートである。ペプチドコンジュゲートはまた、キレート化剤又は毒素を含有し得る。
通常、ペプチド−この用語は、オリゴペプチド、タンパク質及びペプチドコンジュゲートを含む−は、最大約35000個のアミノ酸単位、特に、3〜20000個のアミノ酸単位、さらに特に、4〜5000個のアミノ酸単位、好ましくは、5〜1000個のアミノ酸単位を含む。特に好ましい実施形態では、ペプチドは、500個のアミノ酸単位又はそれ未満、特に、200個又はそれ未満、さらに特に、100個又はそれ未満を含む。特に好ましい実施形態では、ペプチドは、少なくとも10個のアミノ酸単位、より詳しくは、少なくとも15個のアミノ酸、少なくとも25個のアミノ酸又は少なくとも40個のアミノ酸を含む。
「オリゴペプチド」とは、本発明の文脈の範囲内で、2〜200個のアミノ酸単位から構成される、特に、5〜100個のアミノ酸単位から構成される、さらに特に10〜50個のアミノ酸単位から構成されるペプチドを意味する。
用語「(オリゴ)ペプチド」とは、本明細書において、語句「ペプチド」、特に「オリゴペプチド」の略語として使用される。
合成される(オリゴ)ペプチドは、線形、分岐又は環状であり得る。線形又は環状オリゴペプチドの合成を用いて良好な結果が達成された。200個超のアミノ酸単位を有する、例えば、約800個のアミノ酸単位のペプチドの合成において、さらなる良好な結果が達成された。したがって、ペプチドは、少なくとも250個のアミノ酸単位又は少なくとも400個のアミノ酸単位を有し得る。二次及び三次タンパク質構造を維持しながらの、ペプチド断片の、インスリンなどのタンパク質とのカップリングを用いて、さらに、良好な結果が達成される。タンパク質は、200個以下のアミノ酸単位を有し得るか、又は、201個超のアミノ酸単位を有し得る。
非環状(オリゴ)ペプチドは、両方とも合成される(オリゴ)ペプチドよりも小さい、第1の(オリゴ)ペプチド及び第2の(オリゴ)ペプチドから合成される。第1の(オリゴ)ペプチドは、(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルであり、第2の(オリゴ)ペプチドは、N末端非保護アミンを含む。(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルはまた、(オリゴ)ペプチドアシルドナーとも呼ばれる。第2の(オリゴ)ペプチドはまた、(オリゴ)ペプチド求核試薬とも呼ばれる。それから合成される(オリゴ)ペプチドが形成されるこれらの(オリゴ)ペプチドは、本明細書において、「(オリゴ)ペプチド断片」と呼ばれる。これらの(オリゴ)ペプチド断片は、その番で、より小さい(オリゴ)ペプチドアシルドナー及び(オリゴ)ペプチド求核試薬から酵素的に、又は当業者によって公知の通常の化学溶液若しくは固相ペプチド合成によって合成され得る。
本発明の目的上、「ペプチド結合」とは、(i)1つのα−アミノ酸のα−アミノ末端又は1つのβ−アミノ酸のβ−アミノ酸末端のいずれかと、(ii)1つのその他のα−アミノ酸のα−カルボキシル末端又は1つのその他のβ−アミノ酸のβ−カルボキシル末端のいずれかの間のアミド結合を意味する。好ましくは、ペプチド結合は、1つのアミノ酸のα−アミノ末端と、別のアミノ酸のαーカルボキシルの間である。
本発明の目的上、「環状ペプチド」とは、分岐又は直鎖(オリゴ)ペプチドのα−アミノ末端及びα−カルボキシル末端が、ペプチド結合によって連結しており、それによって、少なくとも12個のアミノ酸単位の環構造を形成する(オリゴ)ペプチド鎖を意味する。環状ペプチドは、特に、12〜200個のアミノ酸単位から構成される、さらに特に、12〜100個のアミノ酸単位から構成される、好ましくは、12〜50個のアミノ酸単位から構成される。
本発明の目的上、「縮合」とは、(オリゴ)ペプチドのC末端カルボン酸官能基と、別の(オリゴ)ペプチドの、又は同一(オリゴ)ペプチドのN末端アミン官能基間の新規ペプチド結合の形成を意味する。
本願との関連において、用語「約」とは、所与の値からの10%以下の、さらに特に、5%以下の、さらにさらに特に、3%以下の逸脱を意味する。
Schechter及びBergerによって定義されるように、スブチリシンを含むプロテアーゼ中の活性部位残基は、サブサイトと呼ばれる隣接ポケットから構成される。各サブサイトポケットは、本明細書において配列位置と呼ばれる、ペプチド基質配列中の対応する残基と結合する。この定義によれば、基質配列中のアミノ酸残基は、...−P4−P3−P2−P1−P1’−P2’−P3’−P4’−...(切断される結合が、P1とP1’位置の間に位置する)として切断部位から外向きに連続して番号づけられ、活性部位中のサブサイトは、...−S4−S3−S2−S1−S1’−S2’−S3’−S4’−として対応する形で名前が付けられる(Schechter and Berger, Biochem Biophys Res Commun. 1967 Apr 20;27(2):157-62.))。
本発明の目的上、「S1、S2、S3及びS4ポケット」は、(オリゴ)ペプチドアシルドナーのアミノ酸と相互作用するプロテアーゼのアミノ酸を意味する。アシルドナー(オリゴ)ペプチドのC末端アミノ酸(第1のアミノ酸;P1)は、プロテアーゼのS1ポケット中のアミノ酸と相互作用する。アシルドナー(オリゴ)ペプチドの最後から2番目のアミノ酸(第2のアミノ酸;P2)は、プロテアーゼのS2ポケット中のアミノ酸と相互作用し、第3のアミノ酸(P3)は、S3と、第4のアミノ酸(P4)は、S4ポケットと相互作用する。プロテアーゼのS1〜S4結合ポケットは、プロテアーゼの一次構造では遠位にあり得るが、三次元空間では近接するいくつかのアミノ酸によって規定される。本発明の目的上、S1’及びS2’ポケットは、(オリゴ)ペプチド求核試薬のN末端アミノ酸と相互作用するプロテアーゼのアミノ酸を意味する。(オリゴ)ペプチド求核試薬のN末端アミノ酸は、プロテアーゼのS1’ポケット中のアミノ酸と相互作用する。(オリゴ)ペプチド求核試薬のN末端の最後から2番目のアミノ酸は、プロテアーゼのS2’ポケット中のアミノ酸と相互作用する。プロテアーゼのS1’及びS2’結合ポケットは、プロテアーゼの一次構造において遠位にあり得るが、三次元空間では近接するいくつかのアミノ酸によって規定される。
本発明の目的上、「変性剤」は、プロテアーゼの三次元構造を潜在的に破壊し得る、したがって、プロテアーゼを潜在的に不活性化し得る添加物を意味する。
本発明との関連において、「アミノ酸側鎖」とは、任意のタンパク新生又は非タンパク新生アミノ酸側鎖を意味する。
タンパク新生アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸である。タンパク新生アミノ酸として、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、メチオニン(Met)、システイン(Cys)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、グリシン(Gly)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、ヒスチジン(His)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)、プロリン(Pro)及びフェニルアラニン(Phe)が挙げられる。セレノシステイン(Sec、U)は、構造がシステインに対応するが、硫黄原子の代わりにセレンを含有するアミノ酸である。
非タンパク新生アミノ酸は、特に、D−アミノ酸、L−又はD−フェニルグリシン、DOPA(3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン)、β−アミノ酸、4−フルオロ−フェニルアラニン又はCα−アルキル化アミノ酸の中から選択され得る。
タンパク質又はポリペプチド、特に、酵素に関して、本明細書において用語「突然変異された」又は「突然変異」とは、野生型又は天然に存在するタンパク質又はポリペプチド配列中の少なくとも1個のアミノ酸が、これらのアミノ酸をコードする核酸の突然変異誘発によって、異なるアミノ酸で置換されている、配列中に挿入されている、配列に付加されている、又は配列から欠失されていることを意味する。突然変異誘発は、当技術分野で周知の方法であり、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual、第2版、1−3巻(1989)に記載されるような、PCRによる、又はオリゴヌクレオチド媒介性突然変異誘発による部位特異的突然変異誘発が挙げられる。遺伝子に関して、本明細書において用語「突然変異された」又は「突然変異」とは、その遺伝子の核酸配列又はその調節配列中の少なくとも1つのヌクレオチドが、突然変異誘発によって、異なるヌクレオチドで置換されている、配列中に挿入されている、配列に付加されている、又は配列から欠失しており、その結果、質的若しくは(of)量的に変更された機能を有するタンパク質配列が転写されるか、又はその遺伝子がノックアウトされることを意味する。
本明細書において、アミノ酸置換を意味する省略表現は、置換されるアミノ酸の一文字アミノ酸コードと、それに続く、置換が行われるタンパク質アミノ酸配列中の場所を指定する数字を使用する。この数字は、野生型アミノ酸配列のアミノ酸位置である(別に明記されない限り、通常、スブチリシンBPN’の)。したがって、突然変異されたアミノ酸配列について、野生型酵素においてその数字を有する位置に対応するアミノ酸位置である。より小さい位置での1つ又は複数のその他の突然変異(付加、挿入、欠失など)のために、実際の位置は同一である必要はない。当業者ならば、一般にNEEDLEなどの公知のアラインメント技術を使用して対応する位置を決定できるであろう。数字に、その中の野生型アミノ酸と置き換わるアミノ酸の一文字コードが続く。例えば、G166Sは、位置166に対応する位置のグリシンのセリンへの置換を意味する。Xは、置換されるべきアミノ酸よりも任意のその他のタンパク新生アミノ酸を示すために使用される。例えば、G166Xは、グリシン166の任意のその他のタンパク新生アミノ酸への置換を意味する。
立体異性体が存在する化合物に言及する場合には、化合物は、このような立体異性体のいずれか又はその混合物であり得る。したがって、例えば、エナンチオマーが存在するアミノ酸に言及する場合には、アミノ酸は、L−エナンチオマー、D−エナンチオマー又はその混合物であり得る。天然立体異性体が存在する場合には、化合物は、好ましくは、天然立体異性体である。
本明細書において用語「pH」は、見かけのpH、すなわち、標準の、較正されたpH電極を用いて測定されたようなpHについて使用される。
括弧の間の酵素クラス(EC)に関連して酵素が記載される場合には、酵素クラスは、国際生化学分子生物学連合の命名委員会(Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology)(NC-IUBMB)によって提供される酵素命名法に基づいて酵素が分類されるか、又は分類され得るクラスであり、この命名法は、http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzyme/で見ることができる。特定のクラスに(まだ)分類されていないが、そのように分類され得るその他の適した酵素も含まれるものとする。
相同体は、通常、それぞれ、同一反応を触媒可能である同一ペプチドをコードするなど、それぞれ、相同であるポリヌクレオチド、そのポリペプチド(酵素)と共通の意図された機能を有する。用語相同体はまた、遺伝暗号の縮重のために別の核酸配列とは異なり、同一ポリペプチド配列をコードする核酸配列(ポリヌクレオチド配列)を含むものとする。
アミノ酸又はヌクレオチド配列は、特定のレベルの類似性を示す場合に相同であるといわれる。相同である2つの配列は、共通の進化上の起源を示す。2種の相同配列が密接に関連しているか、より遠位に関連しているか否かは、それぞれ、高い又は低い「同一性パーセント」又は「類似性パーセント」によって示される。
用語「相同性」、「相同性パーセント」、「同一性パーセント」又は「類似性パーセント」は、本明細書において同義的に使用される。本発明の目的上、2種のアミノ酸配列の、又は2種の核酸配列の同一性パーセントを調べるためには、完全配列が、最適比較目的でアラインされることが本明細書において定義される。2種の配列間のアラインメントを最適化するために、比較される2種の配列のいずれかにギャップが導入され得る。このようなアラインメントは、比較されている配列の全長にわたって実施される。或いは、アラインメントは、より短い長さにわたって、例えば、約20個、約50個、約100個又はそれ以上の核酸又はアミノ酸にわたって実施され得る。同一性パーセンテージは、報告されたアラインされた領域にわたる2種の配列間の同一マッチのパーセンテージである。
2種の配列間の配列の比較及び同一性パーセントの決定は、数学アルゴリズムを使用して達成され得る。当業者ならば、2種の配列をアラインし、2種の配列間の相同性を決定するために、いくつかの異なるコンピュータプログラムが利用可能であるという事実を承知するであろう(Kruskal, J. B.(1983)An overview of sequence comparison In D. Sankoff and J. B. Kruskal,(ed.), Time warps, string edits and macromolecules: the theory and practice of sequence comparison, pp. 1-44 Addison Wesley)。2種のアミノ酸配列間の同一性パーセントは、2種の配列のアラインメントのためのNeedleman及びWunschアルゴリズムを使用して決定され得る(Needleman, S. B. and Wunsch, C. D.(1970) J. Mol. Biol. 48, 443-453)。アルゴリズムによって、アミノ酸配列並びにヌクレオチド配列がアラインされる。Needleman−Wunschアルゴリズムは、コンピュータプログラムNEEDLEにおいて実行された。本発明の目的上、EMBOSSパパッケージ由来のNEEDLEプログラムが使用された(2.8.0又はそれ以上のバージョン、EMBOSS: The European Molecular Biology Open ソフトウェアSuite (2000)Rice,P. Longden,I. and Bleasby,A. Trends in Genetics 16,(6)pp276-277、http://emboss. bioinformatics.nl/)。タンパク質配列については、EBLOSUM62が置換マトリックスのために使用される。ヌクレオチド配列については、EDNAFULLが使用される。その他のマトリックスが指定される場合もある。アミノ酸配列のアラインメントのために使用される任意選択のパラメータとして、10のギャップ開始ペナルティー及び0.5のギャップ伸長ペナルティーがある。当業者ならば、すべてのこれらの異なるパラメータがわずかに異なる結果をもたらすが、2種の配列の全体的な同一性パーセンテージは、異なるアルゴリズムを使用する場合に大幅に変更されないことを理解するであろう。
2種のアラインされた配列間の相同性又は同一性は、以下の通りに算出される:アラインメント中のギャップの総数を差し引いたのちのアラインメントの総長によって除された、両配列中の同一アミノ酸を示すアラインメント中の対応する位置の数。本明細書において定義される同一性は、NOBRIEFオプションを使用することによってNEEDLEから得ることができ、「最長−同一性」としてプログラムのアウトプットにおいて表示される。本発明の目的上、2種の配列(アミノ酸又はヌクレオチド)間の同一性(相同性)のレベルは、プログラムNEEDLEを使用することによって実施され得るように「最長−同一性」の定義に従って算出される。
本発明の酵素を表すポリペプチド配列は、配列データベースに対して検索を実施するために、例えば、その他のファミリーメンバー又は関連配列を同定するために「クエリー配列」としてさらに使用され得る。このような検索は、BLASTプログラムを使用して実施され得る。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)によって公的に入手可能である。アミノ酸配列にはBLASTPが使用され、ヌクレオチド配列にはBLASTNが使用される。BLASTプログラムは、デフォルトとして
− ギャップを開始するためのコスト:デフォルト=ヌクレオチドについて5/タンパク質について11
− ギャップを伸長するためのコスト:デフォルト=ヌクレオチドについて2/タンパク質について1
− ヌクレオチドミスマッチのペナルティー:デフォルト=−3
− ヌクレオチドマッチのリワード:デフォルト=1
− 期待値:デフォルト=10
− ワードワイズ:デフォルト=ヌクレオチドについて11/megablastについて28/タンパク質について3
を使用する。
さらに、アミノ酸配列クエリー又は核酸配列クエリーと検索された相同配列間の局所同一性(相同性)の程度が、BLASTプログラムによって決定される。しかし、特定の閾値を上回るマッチをもたらす配列セグメントのみが比較される。したがって、プログラムは、これらのマッチするセグメントのみの同一性を算出する。したがって、この方法で算出される同一性は、局所同一性と呼ばれる。
用語「相同体」は、本明細書において、特に、相同体ペプチドが比較されるポリペプチド(酵素)と、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチド(酵素)について使用される。配列同一性は、100%未満となることは明らかである。配列同一性のパーセンテージは、突然変異の数及び相同体が調製されるポリペプチドの長さに応じて変わる。特に、スブチリシンBPN’の変異体については、本発明における酵素の突然変異の数は、通常、少なくとも11となり、そのうちの少なくとも9つの突然変異は、欠失であり、少なくとも2つの突然変異は、別のアミノ酸との置換である。「最長同一性」アラインメントでは、欠失は考慮されない。これは、スブチリシンBPN’と比較された、本発明の酵素の配列同一性は、通常、99.25%(266個のアミノ酸を有するポリペプチド中の2つの置換)又はそれ未満であることを意味する。好ましくは、配列番号2と比較された、本発明の酵素の配列同一性は、98%又はそれ未満、より好ましくは、96%若しくはそれ未満、特に、94%若しくはそれ未満、さらに特に、92%若しくはそれ未満又は90%若しくはそれ未満である。
「発現」とは、構造RNA(rRNA、tRNA)又はメッセンジャーRNA(mRNA)への遺伝子の転写及びその後のタンパク質への翻訳を指す。
本明細書において、核酸又はタンパク質に関して「異種」とは、外来種に起因する核酸又はタンパク質であるか、又は同一種に由来する場合には、計画的なヒト介入によって組成及び/又はゲノム遺伝子座においてその天然形態から実質的に改変されている。例えば、異種構造遺伝子と作動可能に連結しているプロモーターは、構造遺伝子が由来するものと異なる種に由来するか、又は同一種に由来する場合には、一方又は両方が、その元の形態から実質的に改変されている。異種タンパク質は、外来種に起因し得るか、又は同一種に由来する場合は、計画的なヒト介入によってその元の形態から実質的に改変されている。
用語「異種発現」とは、宿主細胞における異種核酸の発現を指す。適した宿主細胞系における異種タンパク質の発現は、当業者に周知である。当業者ならば、共通の一般知識及び本明細書において開示される情報に基づいて、過度の負担を伴わずに種々の生物から本発明の酵素を製造するのに適した宿主細胞を提供できる。
本明細書において「プロモーター」とは、(構造)遺伝子の転写を指示するDNA配列である。通常、プロモーターは、(構造)遺伝子の転写開始部位の近位にある遺伝子の5’領域中に位置する。プロモーター配列は、構成性、誘導性又は抑制性であり得る。プロモーターが誘導プロモーターである場合には、転写率は、誘導剤に応じて増大する。
本明細書において用語「ベクター」とは、常染色体発現ベクター及び染色体への組込みのために使用される組込みベクターへの言及を含む。
用語「発現ベクター」とは、その転写を提供するさらなる核酸セグメントの制御下に対象のポリペプチド(酵素)をコードする(すなわち、それと作動可能に連結している)セグメントを含む線形又は環状のDNA分子を指す。このようなさらなるセグメントとして、プロモーター及び終結配列を挙げることができ、任意選択により、1種又は複数の複製起源、1種又は複数の選択用マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどを含み得る。発現ベクターは、一般に、プラスミド又はウイルスDNAに由来するか、又は両方のエレメントを含有し得る。
「プラスミド」とは、微生物のゲノム中に組み込まれず、通常、天然では環状である自己複製性染色体外DNAを指す。
「組込みベクター」とは、微生物のゲノム中に組み込まれ得、対象のポリペプチドをコードする遺伝子の安定な遺伝を提供する、線形又は環状DNA分子を指す。組込みベクターは、一般に、その転写を提供するさらなる核酸セグメントの制御下に対象のポリペプチドをコードする(すなわち、それと作動可能に連結している)遺伝子配列を含む1つ又は複数のセグメントを含む。このようなさらなるセグメントとして、プロモーター及び終結配列及び通常、相同組換えのプロセスによって、標的細胞のゲノム中に対象の遺伝子の組込みを指示する1種又は複数のセグメントを挙げることができる。通常は、組込みベクターは、標的細胞中に移され得るが、その生物において非機能的であるレプリコンを有するものとなる。そのセグメント内に適当なマーカーが含まれる場合には、対象の遺伝子を含むセグメントの組込みが選択され得る。
本明細書において、用語「作動可能に連結している」とは、そのように記載された成分が、それらがその意図される方法で機能することを可能にする関係にある近位を指す。別の制御配列と、及び/又はコード配列と「作動可能に連結している」制御配列は、制御配列と適合する条件下でコード配列の転写及び/又は発現が達成されるような形でライゲーションされる。一般に、作動可能に連結しているとは、連結している核酸配列が連続していること、2種のタンパク質コーディング領域を結合する必要がある場合には、連続しており、同一リーディングフレームにあることを意味する。
「宿主細胞」とは、ベクターを含有し、ベクターの複製及び/又は発現を支持する細胞を意味する。宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞又は酵母、植物、昆虫、両生類若しくは哺乳動物細胞などの真核細胞であり得る。
「形質転換」及び「形質転換性」は、本明細書において、挿入のために使用される方法、例えば、直接取り込み、形質導入、f−接合又はエレクトロポレーションであるかに関わらず、宿主細胞への外因性ポリヌクレオチドの挿入を指す。外因性ポリヌクレオチドは、組み込まれないベクター、例えば、プラスミドとして維持され得るか、或いは、宿主細胞ゲノム中に組み込まれ得る。
明確性及び簡潔な説明の目的上、特徴は、同一又は別個の実施形態の一部として本明細書において記載されるが、本発明の範囲は、記載される特徴のすべて又は一部の組合せを有する実施形態を含み得るということが認められよう。
用語「C末端保護」は、(オリゴ)ペプチドのC末端カルボン酸基に、一般に、カルボン酸基が、別の(オリゴ)ペプチドの又は同一(オリゴ)ペプチド分子のN末端アミン基とカップリングされないように実質的に保護する保護基が付与されることを示すために本明細書において使用される。C末端保護基は、よく使用される保護基であるt−アルキルエステル基、例えば、t−ブチルエステル基であり得る。C末端保護基はまた、C末端カルボキシ−アミドであり得る。一次カルボキシ−アミドは、よく使用される保護基である。
用語「N末端保護」は、(オリゴ)ペプチドのN末端アミン基に、一般に、N末端アミン基が別の(オリゴ)ペプチドの又は同一(オリゴ)ペプチド分子のC末端カルボン酸基とカップリングされないように、少なくとも実質的に保護する保護基が付与されることを示すために本明細書において使用される。
(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルは、通常、活性化された(チオ)エステルであり、すなわち、酵素カップリング反応に参加し得るカルボキシエステル又はカルボキシチオエステル基を含有する。原則として、任意の(置換又は非置換)アルキル又は(置換又は非置換)アリール(チオ)エステルが使用され得る。酵素カップリング反応に参加し得る(チオ)エステルの通常の例として、メチル−、エチル、プロピル−、イソプロピル−、フェニル−、ベンジル−、2,2,2−トリクロロエチル−、2,2,2−トリフルオロエチル−、シアノメチル−及びカルボキシアミドメチル−(チオ)エステルがある。
式ペプチド−(C=O)−O−CX−C(=O)N−Rによって表されるカルボキシアミドメチル型エステルを用いて、特に良好な結果が得られている。本明細書において、X及びXは各々、水素原子又はアルキル基を独立に表す。X及びXが両方とも水素原子である(ペプチド−(C=O)−O−CH−C(=O)N−R)の場合には、良好な結果が達成されている。本明細書において、Rは、水素原子又はアルキル基を表し、Rは、水素原子若しくはアルキル基、又はアミノ酸の側鎖官能基において若しくはアミノ酸の側鎖官能基のうちの1つ若しくは複数において任意選択により保護された、C末端カルボキシアミド若しくはカルボン酸官能基を有するアミノ酸又はペプチド残基を表す。本明細書において、各アルキル基は、(置換又は非置換)C1〜C7アルキル基、好ましくは、(置換又は非置換)直鎖C1〜C6アルキル基、より好ましくは、(置換又は非置換)直鎖C1〜C3アルキル基、最も好ましくは、メチル基を独立に表し得る。R及びRの両方が水素原子を表すか、又はRが水素原子を表し、Rが、アミノ酸の側鎖官能基において若しくはアミノ酸の側鎖官能基のうちの1つ若しくは複数において任意選択により保護された、C末端カルボキシアミド又はカルボン酸官能基を有するアミノ酸又はペプチド残基を表す本発明の方法において、良好な結果が特に達成されている。Cam−エステルを使用する場合に、X、X、R及びRが水素原子である場合に、特に良好な結果が達成されている。
(オリゴ)ペプチドC末端(チオ)エステルは、N末端が保護されていなくても、N末端が保護されていてもよい。一実施形態では、1つ又は複数の側鎖官能基(特に、カルボキシル基、アミン基)、例えば、すべての側鎖官能基に、保護基が付与される;別の実施形態では、すべての側鎖官能基は、保護されていない。好ましい実施形態では、(オリゴ)ペプチドアシルドナーのP4及びP1位置の、並びに(オリゴ)ペプチド求核試薬(特に、ヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミン基)のP1’又はP2’位置のアミノ酸の側鎖官能基のみに保護基が付与されている。適した保護基は、当業者に公知である。カルボン酸基は、例えば、シクロヘキシル、ベンジル又はアリル基で保護され得;アミン官能基は、例えば、アリルオキシカルボニル基又はトリフルオロアセチル基で保護され得る。
(オリゴ)ペプチドC末端(チオ)エステルの活性化されたC末端(チオ)エステル基は、ラセミ化を伴わずに高収率及び純度で固相合成を使用して合成され得る。Rが水素原子を表し、Rが、アミノ酸の側鎖官能基において若しくはアミノ酸の側鎖官能基のうちの1つ若しくは複数において任意選択により保護された、C末端カルボン酸官能基を有するアミノ酸又はペプチド残基を表す(チオ)エステルの使用のさらなる利点は、活性化されたC末端エステル又はチオエステル基が、安価な工業的に利用可能な2−クロロトリチルクロリド樹脂を使用して合成され得るということである。
(オリゴ)ペプチドC末端(チオ)エステルの活性化されたC末端(チオ)エステル基はまた、微生物を使用する発酵によって合成され得る。発酵を使用して(オリゴ)ペプチド(チオ)エステルを得るための信頼できる方法は、いわゆるインテイン発現による(例えば、E.K. Lee, Journal of Chemical Technology and Biotechnology, 2010, 9, 11-18を参照のこと)。種々のインテイン発現系キットが市販されている(例えば、IMPACT(商標)キット)。(オリゴ)ペプチド(チオ)エステルの発酵製造のためのその他の方法は、当技術分野で公知である。
(オリゴ)ペプチドC末端(チオ)エステルのC末端アミノ酸及び(オリゴ)ペプチドC末端(チオ)エステルのその他のアミノ酸は、原則として、任意のアミノ酸、タンパク新生又は非タンパク質新生であり得る。(オリゴ)ペプチドC末端(チオ)エステルのC末端部分のアミノ酸配列が、カップリング酵素によって不十分にしか認識されないか、又はカップリング酵素のアミノ酸優先度のために、及び/若しくは(オリゴ)ペプチドの二次若しくは三次構造のためにカップリング酵素に接近しにくい場合には、C末端で一次構造(アミノ酸配列)を伸長してもよい。本質的に、酵素カップリング反応のための酵素による良好な認識及び酵素への到達性を確実にするために、いくつかのアミノ酸を用いて(オリゴ)ペプチドC末端(チオ)エステルのC末端が伸長される。当業者ならば、本明細書において開示された情報及び共通の一般知識に基づいて、(オリゴ)ペプチドC末端(チオ)エステルを伸長する方法を承知しているであろう。伸長のためのアミノ酸の数は、原則としてより多いのものであってもよいが、通常は、1〜10の範囲にある。4個のアミノ酸残基、例えば、−Phe−Ser−Lys−Leu−(チオ)エステルを用いる(オリゴ)ペプチドC末端(チオ)エステルの伸長によって良好な結果が得られている。
特に、(任意選択により、N末端保護された)(オリゴ)ペプチドC末端(チオ)エステルは、式Iの化合物によって表される。
Figure 2017531040
本明細書において、Qは、OR又はSR部分を表す。Rは、(置換又は非置換)アルキル又は(置換又は非置換)アリール基を表し得る。
本明細書において、Pは、水素又はN末端保護基を示す。適したN末端保護基は、(オリゴ)ペプチドの合成に使用され得るN−保護基である。このような基は、当業者には公知である。適したN−保護基の例として、カルバミメート又はアシル型保護基、例えば、「Cbz」(ベンジルオキシカルボニル)、「Boc」(t−ブチルオキシカルボニル)、「For」(ホルミル)、「Fmoc」(9−フルオレニルメトキシカルボニル)、「PhAc」(フェナセチル)及び「Ac」(アセチル)が挙げられる。基For、PhAc及びAcはそれぞれ、酵素のペプチドデホルミラーゼ、PenGアシラーゼ又はアシラーゼを使用して酵素的に導入及び切断され得る。化学的切断法は、一般に、当技術分野で公知である。
本明細書において、nは、少なくとも2の整数である。nは、特に、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9又は少なくとも10であり得る。特に、100以下、75以下、50以下、25以下、20以下、15以下、例えば、10以下であり得る。
本明細書において、各R及び各Rは、水素原子又は有機部分、好ましくは、アミノ酸側鎖を独立に表す。したがって、Rが、n個のアミノ酸単位のすべてにおいて同一であることは必要ではない。同様に、Rが、n個のアミノ酸単位のすべてにおいて同一であることは必要ではない。任意選択により、側鎖官能基のうちの1つ又は複数が保護基を含有し得る。
(オリゴ)ペプチド求核試薬のアミノ酸単位は、原則として、任意のアミノ酸、タンパク新生又は非タンパク質新生から選択され得る。
特に、(オリゴ)ペプチド求核試薬は、式IIの化合物によって表され得る。
Figure 2017531040
本明細書において、n、R及びRは上記の通りである。
本明細書において、Pは、アミン部分又はOR部分を表す。
がアミン部分を表す場合には、アミン部分は、式NRによって表され得、式中R及びRは、各々独立に、任意の(置換又は非置換)アルキル又は(置換又は非置換)アリール基を表し得る。特に、R及びRのうち一方は、水素原子であり、もう一方は、(置換又は非置換)アルキル基である。両方とも水素原子であるR及びRを用いて、良好な結果が特に得られている。
が、OR部分を表す場合には、Rは、C末端保護基又はカチオン、例えば、三若しくは四置換アンモニウムイオンなどの一価のカチオン又はアルカリ金属カチオン又はHを表し得る。RがC末端保護基である場合には、これは、特に、任意選択により、置換アルキル基であり得る。当業者には公知のように、原則として、任意のその他の保護エステルであり得るが、好ましくは、t−アルキル基である。t−アルキルは、原則として、任意の保護第3級アルキル基であり得る。好ましくは、t−アルキルは、t−ブチル(2−メチル−2−プロピル)、t−ペンチル(2−メチル−2−ブチル)及びt−ヘキシル(2,3−ジメチル−2−ブチル)の基から選択される。
一実施形態では、(オリゴ)ペプチド求核試薬は、C末端保護されている。別の実施形態では、C末端保護されていない。
(オリゴ)ペプチド求核試薬は、固相合成、溶液相合成などの当技術分野で公知の方法を使用して、又は微生物を使用する発酵によって合成され得る。(オリゴ)ペプチド求核試薬のN末端アミノ酸及び(オリゴ)ペプチド求核試薬のその他のアミノ酸は、原則として、任意のアミノ酸、タンパク新生又は非タンパク質新生であり得る。(オリゴ)ペプチド求核試薬のN末端部分のアミノ酸配列が、カップリング酵素によって不十分にしか認識されないか、又はカップリング酵素のアミノ酸優先度のために、若しくは(オリゴ)ペプチド求核試薬の二次若しくは三次構造のためにカップリング酵素に接近しにくい場合には、N末端で一次構造(アミノ酸配列)を伸長してもよい。本質的に、酵素カップリング反応のための酵素による良好な認識及びカップリング酵素への到達性を確実にするために、いくつかのアミノ酸を用いて(オリゴ)ペプチド求核試薬のN末端が伸長される。当業者ならば、本明細書において開示された情報及び共通の一般知識に基づいて、(オリゴ)ペプチド求核試薬を伸長する方法を承知しているであろう。伸長のためのアミノ酸の数は、原則としてより多いのものであってもよいが、通常は、1〜10の範囲にある。3個のアミノ酸残基、例えば、H−Ser−Tyr−Argを用いる(オリゴ)ペプチド求核試薬の伸長によって良好な結果が得られている。
本発明は、ペプチド結合の形成に関して触媒活性(縮合活性)を有する酵素を提供し、それによって、高いS/H比で(オリゴ)ペプチドの合成において触媒活性を有する。特に、酵素は、(オリゴ)ペプチドのC末端及びN末端をカップリングすることによってペプチド結合の形成を触媒することによって、リガーゼ活性又はシクラーゼ活性、すなわち、(オリゴ)ペプチドの環化における触媒活性を有する。
特に、本発明は、単離された酵素(生物において製造された場合には、それが発現されていた生物(通常、組換え生物)から、又はそれが合成された反応培地から単離された)を提供する。
特に、本発明の酵素は、例えば、Smith及びJohnson、Gene67:31−40(1988)に開示される一段階精製法などの任意の適した技術によって実質的に精製されている場合には、本発明の目的のために単離されたと考えられる。
本発明の酵素は、少なくとも実質的に純粋な形態で(例えば、75重量%超、80重量%超)又は1種若しくは複数のその他の成分との混合物で、例えば、特に、水性バッファー溶液中の保存溶液の形態で提供され得る。
この酵素は、通常、スブチリシンBPN’の変異体又はその相同体である。本開示は、特に考慮されるスブチリシンBPN’の変異体である本発明の酵素の種々の例を提供する。上記ですでに記載されたように、本発明の酵素は、少なくとも:
− スブチリシンBPN’のL75、N76、N77、S78、I79、G80、V81、L82及びG83に対応するアミノ酸の欠失(Δ75〜83;したがって、一般に、対応するCa2+結合部位の欠失)
− スブチリシンBPN’中の位置221に対応する位置でのシステイン又はセレノシステイン
− 好ましくは、スブチリシンBPN’中の位置225に対応する位置でのプロリンとは異なるアミノ酸
を含まなくてはならない。
驚くべきことに、スブチリシンBPN’のΔ75〜83に対応する欠失及びスブチリシンBPN’中の位置221に対応するシステインへの突然変異の両方を有する突然変異体が十分な安定性及び1を超えるS/H比を有し、これは、例えば、スブチリガーゼと比較して改善されたS/H比であることが分かった。スブチリシン中のS221に対応する位置は、酵素の、及びアルカラーゼの安定性及び活性にとって重要であると考えられ、S221Cに対応する単一の突然変異が、事実上不活性の酵素をもたらすことが報告されている。この点において、位置221に対応する位置でのシステインへの突然変異を用いて良好な結果が達成されている。
本発明の酵素は、(オリゴ)ペプチドの調製において酵素断片縮合又は環化活性を有する限り、スブチリシンBPN’と比較してさらなる突然変異を、特に、本明細書において別の場所に記載されるような1つ又は複数のさらなる突然変異を有し得る。
突然変異誘発によって、本発明の酵素、特に、本発明のスブチリシンBPN’変異体の相同体が由来し得る鋳型酵素としてスブチリシンBPN’に代わるものには、その他のスブチリシン、特に、スブチリシンBPN’と少なくとも50%の相同性を有するスブチリシンがある。
適したスブチリシンの配列は、クエリーとしてスブチリシンBPN’(配列番号2)を用いてデータベースをBLASTにかけることによって、2014年8月11日に入手可能であるようなUNIPROT配列データベース(http://www.uniprot.org/)から検索され得る。しかし、配列検索は、UNIPROTに制限されず、日付にも制限されない。当業者ならば、代替配列保管場所を検索する方法又は配列決定することによってさらなる相同体配列を収集する方法を承知している(例えば、Zooming in on metagenomics: molecular microdiversity of Subtilisin Carlsberg in soil.,Gabor E, Niehaus F, Aehle W, Eck J.J Mol Biol. 2012 Apr 20;418(1-2):16-20を参照のこと)。特に、本発明は、図14中に記載されるスブチリシンのいずれかの、少なくとも、スブチリシンBPN’のL75からG83(G83を含む)までに対応するアミノ酸の前記欠失、スブチリシンBPN’中の位置221に対応する位置でのシステイン及びスブチリシンBPN’中の位置225に対応する位置でのアラニン又は別の突然変異(配列番号2のP225N、225D、P225S、P225C、P225G、P225A、P225T、P225V、P225I、P225L、P225H、P225Qに対応する突然変異など)を有する変異体にさらに関し、その全配列は、前記UNIPROT配列データベースから入手可能なものとしてであり、位置75〜83の周囲のそのアラインメントが示されている。
好ましくは、本発明のスブチリシンBPN’の変異体又は相同体は、P225に対応する位置に突然変異を含む。S/H比の改善のためには、突然変異は、通常、P225N、P225D、P225S、P225C、P225G、P225A、P225T、P225V、P225I、P225L、P225H、P225Q、P225F及びP225Eの群から選択されるP225に対応する突然変異である。例えば、スブチリガーゼと比較したS/H比の改善のためには、突然変異は、P225N、P225D、P225S、P225C、P225G、P225A、P225T、P225V、P225I、P225L、P225H及びP225Qの群から選択されるP225に好ましくは対応する。これらのうち、「Asx」と一般に呼ばれる群のアミノ酸、すなわち、アスパラギン(Asn/N)及びアスパラギン酸(Asp/D)のうちの1種への前記突然変異、すなわち、P225N又はP225Dに対応する突然変異を用いて、特に良好な結果が達成された。さらに、P225Sに対応する突然変異を用いて、特に良好な結果が達成された。さらに、P225Cに対応する突然変異を用いて、特に良好な結果が達成された。
さらに、P225Gに対応する突然変異を用いて、良好な結果が達成された。P225Aに対応する突然変異を用いて、さらに良好な結果が達成された。さらに、P225Tに対応する突然変異を用いて、良好な結果が達成された。さらに、P225に対応する位置での、分岐アミノ酸、すなわち、バリン(V)、イソロイシン(I)又はロイシン(L)への突然変異を用いて、良好な結果が達成された。
好ましくは、本発明のスブチリシンBPN’変異体又は相同体は、配列番号2のQ2、S3、P5、S9、I31、K43、M50、A73、E156、G166、G169、S188、Q206、N212、N218S、T254及びQ271に対応するアミノ酸位置に1つ又は複数の突然変異を含む。本発明者らは、以下の突然変異のうちの1つ又は複数が、本発明のスブチリシンBPN’変異体において有利である:Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271Eということを見出した。本発明者らは、特に、改善された活性、改善された安定性又は改善されたS/H比のために、Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271Eの群から選択される突然変異のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、より好ましくは4つ以上、より好ましくは5つ以上、より好ましくは6つ以上、より好ましくは、少なくとも8つ、より好ましくは、少なくとも12など、本発明の酵素中に複数の前記突然変異が存在することが好ましいということを見出した。本発明者らは、特に、突然変異N218S、S3C−Q206C、G169A、T254A、A73L、M50F及びQ2Kのうちの1つ又は複数の存在が、酵素安定性の改善に関して有利であると考える。さらに、本発明者らは、特に、突然変異I31L、E156S、G166S、G169Aのうちの1つ又は複数の存在が、活性及び/又はS/H比の改善に関して有利であると考える。
さらに、配列番号2のQ2、S3、P5、S9、I31、K43、M50、A73、E156、G166、G169、S188、Q206、N212、N218S、T254及びQ271に対応するアミノ酸位置に複数の突然変異を含む本発明のスブチリシンBPN’変異体又は相同体は、スブチリガーゼよりも製造及び精製することが容易である。
好ましい実施形態では、酵素は、N218に対応するアミノ酸位置での突然変異、特に、N218Sを含む。
好ましい実施形態では、酵素は、M50に対応するアミノ酸位置での突然変異、特に、M50Fを含む。
好ましい実施形態では、酵素は、Q2に対応するアミノ酸位置での突然変異、特に、Q2Kを含む。
好ましい実施形態では、酵素は、A73に対応するアミノ酸位置での突然変異、特に、A73Lを含む。
好ましい実施形態では、酵素は、P5に対応するアミノ酸位置での突然変異、特に、P5Sを含む。
好ましい実施形態では、酵素は、G166に対応するアミノ酸位置での突然変異、特に、G166Sを含む。
好ましい実施形態では、酵素は、S3及びQ206に対応するアミノ酸位置での突然変異、特に、S3C−Q206Cを含む。
改善されたS/H比のためには、酵素が、Q2、P5、M50、A73及びN218に対応する位置の各々に、さらに特に、Q2、P5、M50、A73、G166及びN218に対応する位置の各々に突然変異を含むことが特に好ましい。
特に、Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271Eに対応する突然変異の各々を含むスブチリシンBPN’変異体を用いて、良好な結果が達成された。
さらに、驚くべきことに、前記ポケットのアミノ酸位置のうちの1つ又は複数における部位特異的突然変異によりS1’ポケット又はS4ポケットを変更することによって、全体的に、又は特定の基質について、S/H比が改善されることを見出した。特に驚くべきことに、ポケット、特に、P1’ポケットにおける部位特異的突然変異は、別のポケット、特に、P2’ポケットにおいて効果を有する。本発明者らは、これは又は、本発明のペプチドを合成するための方法において有利に使用され得る基質の範囲を広げるために有利であると理解した。したがって、これは、本発明の酵素が高S/H比を提供する基質範囲を広げる。
S1’ポケットは、アミノ酸M222及びY217によって主に形成される(Strausberg L. et al. Biochemistry, 2005, 44, 3272; Estell D. A. et al. J. Biol. Chem., 1985, 260, 6518)。S1’結合ポケットの三次元構造はまた、より遠位のアミノ酸、例えば、N62、G100、S125、L126、G127、P129、N155及びN218によって変更され得る。少なくともいくつかのペプチド配列について、これらのアミノ酸のうちの1つ又は複数の置換は、スブチリシンBPN’変異体又は相同体のS/H比を大幅に変更し得る。有利な実施形態では、M222又はY217に対応するアミノ酸位置での置換は、(高度に)改善されたS/H比を示す酵素の活性、S/H比又は基質範囲を増大する。
好ましくは、突然変異は、M222に対応する位置に存在し、M222G、M222P、M222N、M222E、M222Q又はM222Aである。特に好ましい実施形態では、前記突然変異は、M222P又はM222Gに対応する。
好ましくは、Y217に対応する位置での突然変異は、Y217L、Y217N、Y217E、Y217G、Y217S、Y217F又はY217Hである。
少なくともいくつかのペプチド配列について、得られたスブチリシンBPN’変異体のS/H比及び/又は活性が大幅に増大するという点において、M222G、M222P及びY217Lの群から選択される突然変異を有する変異体を用いて特に良好な結果が得られた。
S4結合ポケットは、アミノ酸Y104、I107、L126、S101、G102、G127及びG128によって主に形成されるが、S4結合ポケットの三次元構造は、L135及びP168などのより遠位のアミノ酸によって決定される(Ruan et al. Biochemistry, 2008, 47, 6628; Rheinnecker et al. Biochemistry,1994,33, 221)。
好ましくは、酵素は、Y104、I107及びL135に対応する位置のうちの1つ、2つ又は各々に突然変異を含む。Y104F、Y104S、I107V、I107A、L135N、L135S、L135D及びL135Aの群から選択される突然変異を有するスブチリシンBPN’変異体を用いて、特に良好な結果が得られている。これらのアミノ酸の置換は、少なくとも特定の基質について、酵素のS/H比及び/又は活性を大幅に変更し、改善し得る。
特に、P4基質範囲、I107に対応するアミノ酸における置換(I107V)及びL135における置換(L135S又はL135N)を有するスブチリシンBPN’変異体を用いて、酵素活性及びS/H比に関する良好な結果が得られている。
好ましい実施形態では、本発明の酵素は、S1’結合ポケットにおける1つ又は複数の置換及びS4結合ポケットにおける1つ又は複数の置換、特に、S1’結合ポケットにおける2つ以上の置換及びS4結合ポケットにおける2つ以上の置換を有する。
前記突然変異のうちの1つのみを有する本発明の変異体と比較して活性及びS/H比が改善された酵素を提供するのに、M222及びI107に対応する両アミノ酸の置換が有利であると分かった。いずれかの突然変異単独はまた、酵素活性及びS/H比にとって有益であると分かった。特に、このような実施形態における良好な結果は、突然変異I107V及びM222Gによって達成された。特定の興味深い突然変異のその他の組合せの例は、突然変異L135N+M222Gを有する変異体及び突然変異I107V+M222Pを有する変異体である。さらに、I107及びM222に対応する位置での突然変異のこのような組合せは、P4及びP1’ポケットの両方について基質範囲に関して改善を提供する。
好ましい実施形態では、本発明のスブチリシンBPN’変異体又はその相同体は、M222に対応する位置での、及びY217に対応する位置でのS1’結合ポケットにおける置換を有する。この実施形態におけるM222突然変異は、好ましくは、M222G又はM222Pのいずれかである。Y217突然変異は、好ましくは、Y217F、Y217H及びY217Gの群から選択されるものである。本発明のこのような酵素は、広い基質範囲及び良好なS/H比を有すると分かった。特に良好な結果が、突然変異M222P及びY217H;突然変異M222P及びY217G;突然変異M222G及びY217F;又は突然変異M222G及びY217Gを含むスブチリシンBPN’変異体又はその相同体を用いて達成された。これらのうち、突然変異M222G及びY217Fを含むスブチリシンBPN’変異体又はその相同体が、基質の幅広さ及びS/H比に関して特に良好な結果をもたらした。
M222に対応する位置での及びY217に対応する位置でのS1’結合ポケットにおける置換を有し、S4結合ポケットにおける突然変異を有さない本発明のスブチリシンBPN’変異体又はその相同体を用いて、良好な結果が達成された。しかし、同様に良好な結果が達成された代替実施形態では、S4結合ポケットにおいて1つ又は複数の突然変異をさらに有する。特定の実施形態では、このスブチリシンBPN’変異体又はその相同体は、Y104、I107、L126、L135、S101、G102、G127及びG128に対応するS4結合ポケットの2つ以上の位置において置換を有する。S4結合ポケットにおける突然変異は、特に、I107V及び/又はL135N若しくはL135Sのいずれかを含み得る。
本発明の好ましい酵素は、特に、配列番号3、4若しくは5によって表される配列のうちいずれか1種又はその相同体を含むスブチリシンBPN’変異体又は相同体である。配列番号3は、S221Cに対応する好ましい突然変異を示すが、別の実施形態では、これは、セレノシステインであり得る。P225に対応する位置のXは、P又は異なるアミノ酸、好ましくは、本明細書において別の場所で同定される好ましい突然変異のもの(N/D/S/C/G/A/T/V/I/LH/Q)である。配列番号4は、配列番号3と比較して好ましい突然変異部位を示す。配列番号4では、各Xは独立に、任意のタンパク新生アミノ酸を表す。特に、任意のXは、そのXの位置に野生型スブチリシンBPN’において存在するアミノ酸又は本開示において別の場所に記載されるような突然変異であり得る。好ましくは、1つ又は複数のX’は、本明細書において別の場所に記載されたような突然変異を表す。
本発明の方法では、酵素的カップリング反応及び環化は、水を含む流体中で実施される。好ましくは、反応は、緩衝流体中で実施される。水含量は、通常、総液体に基づいて10〜100容積%、好ましくは、20容積%以上、好ましくは、40容積%以上、特に50容積%以上、特に60容積%以上である。
原則として、任意のバッファーが適している。良好なバッファーは、当業者に公知である。例えば、David Sheehan in Physical Biochemistry、第2版、Wiley−VCH Verlag GmbH、Weinheim2009;http://www.sigmaaldrich.com/life−science/core−bioreagents/biological−buffers/learning−center/buffer−calculator.htmlを参照のこと。
(オリゴ)ペプチド断片縮合のためのバッファーのpHは、少なくとも5、特に、少なくとも6、好ましくは、少なくとも7であり得る。所望の最大pHは、通常、11未満、特に、10未満、さらにより好ましくは、9未満である。通常、酵素反応の最適pHは、7から9の間である。環化反応のために、最適pHは、異なり得る。環化反応のためのpHは、少なくとも3、特に少なくとも4、好ましくは、少なくとも5であり得る。所望の最大pHは、通常、11未満、特に、10未満、好ましくは、9未満である。通常、酵素環化反応の最適pHは、5から9の間である。
高S/H比のために、大過剰の(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステル又は(オリゴ)ペプチド求核試薬は、全般的に、縮合反応において高い収率に到達するために必要ではない。通常、(a)(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステル対(b)(オリゴ)ペプチド求核試薬の比は、1:5から5:1の間、好ましくは、1:3〜3:1の範囲、より好ましくは、1.0:2.5〜2.5:1.0の範囲、特に、1:2〜2:1の範囲、さらに特に、1:1.5〜1.5:1の範囲にある。およその化学量論比は、特に有効であると分かった。
本発明の方法では、(オリゴ)ペプチド断片の溶解度を改善するために、又は反応収率を改善するために、反応が実施される流体に添加物を添加することが有利であり得る。このような添加物は、塩又は有機分子、例えば、グアニジン塩酸塩、尿素、ドデカ硫酸ナトリウム又はTweenであり得る。
反応は、完全水性溶液中で、又は水と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−ピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチル−テトラヒドロフラン(Me-THF)若しくは1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル又はメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールなどの(ハロゲン化)アルコール又はこれらの有機溶媒の混合物などの水と混合できる共溶媒との混合物で実施され得る。スブチリシンBPN’変異体の安定性及び(オリゴ)ペプチド基質の溶解度に応じて、共溶媒の量は、好ましくは、70容量%未満、より好ましくは、60容量%未満、さらにより好ましくは、50容量%未満、最も好ましくは、40%未満である。
原則として、酵素的断片縮合又は環化の際の温度は、使用されるスブチリシンBPN’変異体が十分な活性及び安定性を示す温度が選択される限り、重大ではない。使用されるべきスブチリシンBPN’変異体のこのような温度は、通常、公知であるか、又は既知反応条件下でスブチリシンBPN’変異体の既知基質を使用して日常的に決定することができる。一般に、温度は、少なくとも−10℃、特に少なくとも0℃又は少なくとも10℃であり得る。一般的に、温度は、70℃以下、特に60℃以下又は50℃以下であり得る。特定の酵素的断片縮合又は環化のための特定のスブチリシンBPN’変異体の最適温度条件は、当業者によって、共通の一般知識及び本明細書において開示される情報に基づいて日常的な実験によって容易に同定できる。一般に、温度は、有利には、20〜50℃の範囲にある。
本発明のスブチリシンBPN’変異体は、組換え方法によって、特に、発現の際に、酵素的に活性である本発明のスブチリシンBPN’変異体をもたらすように突然変異されているスブチリシンBPN’のDNAの発現によって、一般に製造される。
本発明のスブチリシンBPN’変異体及びその相同体のDNAの発現は、利用可能なベクター及び調節配列を使用して提供される。実際の選択は、大部分は、発現のために利用される特定の宿主細胞に左右される。例えば、スブチリシンBPN’突然変異体DNAがバチルス属(Bacillus)において発現される場合には、バチルス属プロモーターが、バチルス属由来ベクターと共に一般に利用される。
本発明の酵素を製造し、宿主細胞から培地中に分泌させるために、成熟酵素に先行するシグナル配列及びプレ−プロ配列を含有する前駆体ポリペプチド(酵素)をコードする遺伝子が、使用され得る。スブチリシンBPN’では、さらなるN末端配列は、107個のアミノ酸を含む。分泌の際、まずシグナル配列が除去され得、分泌後、プレ−プロ配列が除去されて、十分に活性な酵素をもたらし得る(James A.Wells, Nucleic Acids Research, Volume 11 Number 22 1983)。天然スブチリシンBPN’の場合には、成熟酵素は、275個のアミノ酸を含む。スブチリシンBPN’及びその相同体のポリペプチド鎖中の個々のアミノ酸の位置を記載するために、N末端(アミノ酸1)からC末端(アミノ酸275)まで行ういわゆるスブチリシンBPN’番号付けが使用されることが好都合である。相同酵素における対応する位置は、前記相同配列を、スブチリシンBPN’の配列とアラインすることによって決定され得る。
当業者に公知であるように、配列番号5内の1〜275に番号付けられた成熟ポリペプチドの、又は配列番号2、3若しくは4のアミノ酸配列での成熟酵素(アミノ酸1〜275で示されるような)のN及び/又はC末端は、成熟の際のプロセシングにおける変動のために不均一であり得ることがあり得る。特に、このようなプロセシング変動は、酵素の過剰発現の際に起こり得る。さらに、エキソプロテアーゼ活性は、不均一性を引き起こし得る。不均一性が生じる程度は、使用される宿主及び発酵プロトコールに応じても変わる。このようなC末端プロセシングアーチファクトは、成熟野生型スブチリシンBPN’(配列番号2)において、又は配列番号3若しくは4によって表される本発明の成熟酵素において示されるものよりも短いポリペプチド又は長いポリペプチドにつながり得る。このようなプロセシング変動の結果として、N末端もまた、不均一であり得る。N末端でのプロセシング変異体は、シグナルペプチダーゼによるシグナル配列の代替切断によるものであり得る。
本発明の酵素は、共通の一般知識及び本明細書において開示される情報に基づいて組換え技術によって製造され得る。翻訳された酵素の、小胞体の内腔への、原形質周辺空間への又は細胞外環境への分泌のために、適当な分泌シグナル配列が本発明の酵素をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。シグナルは、酵素にとって内因性であっても、それらが異種シグナルであってもよい。
本発明の酵素は、融合タンパク質などの改変された形態で製造され得、分泌シグナルだけでなく、さらなる異種機能的領域も含み得る。したがって、精製の際若しくはその後の取り扱い及び貯蔵の際に宿主細胞における安定性及び持続性を改善するために、又は精製を促進するために、例えば、さらなるアミノ酸の領域(いわゆるタグ)、特に、荷電アミノ酸が、酵素に、特に、酵素のC末端に添加され得る。適したタグの例は、例えば、「Current Protocols in Protein Science 9.9.1-9.9.23、August 2013」におけるM.E.Kimpleらによる総説に記載されている。有用なタグの周知の例として、いわゆるHisタグ、複数のヒスチジン単位を有するアミノ酸配列がある。本発明者らは、このようなタグは、本発明の酵素の製造及び精製において成功裏に使用され得ることを見出した。Hisタグを有する酵素とHisタグを有さない酵素の間に、機能的酵素特性には相当な相違は観察されなかった。
さらに、本発明の酵素は、適当なバッファー中でのリフォールディングを用いて封入体として製造され得る。
本発明の酵素は、天然に精製された生成物、化学合成手順の生成物、及び、例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫及び哺乳動物細胞を含む原核生物又は真核生物宿主から組換え技術によって製造された生成物を含む。組換え製造手順において使用される宿主に応じて、本発明の酵素は、グリコシル化されていても、グリコシル化されていなくてもよい。さらに、本発明の酵素はまた、最初の修飾されたメチオニン残基を、いくつかの場合には、宿主媒介性プロセスの結果として含み得る。
本発明のポリヌクレオチドは、クローニング及び発現ベクターを含むベクター中に組み込まれ得る。ベクターは、組換え複製可能ベクターであり得る。ベクターは、適合性宿主細胞において本発明のポリヌクレオチドを複製するために使用され得る。ベクターは、組換えDNA手順に付され得ることが好都合である。
本発明はまた、例えば、本発明の酵素の発現が起こる条件下で、適した宿主細胞中でこのようなベクターを増殖させ、形質転換又はトランスフェクトする方法に関係する。本発明は、本発明のポリヌクレオチドをベクター中に、一実施形態では発現ベクター中に導入すること、ベクターを適合性宿主細胞中に導入すること及びベクターの複製が起こる条件下で宿主細胞を増殖させることによって本発明の酵素を作製する方法を提供する。
ベクターは、宿主細胞から回収され得る。
本発明のベクターは、自己複製性ベクター、すなわち、染色体外実体として存在し、その複製が染色体複製と独立しているベクター、例えば、プラスミドであり得る。
或いは、ベクターは、宿主細胞中に導入された場合に、宿主細胞ゲノム中に組み込まれ、組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであり得る。
ある種のベクターは、「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントが挿入され得る環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターとして、ウイルスベクターがあり、これでは、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノム中に挿入され得る。
特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば、適した複製起点を有さない細菌組込みベクター又は非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。
本発明の組換え発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを宿主細胞におけるポリヌクレオチドの発現に適した形態で含み、これは、組換え発現ベクターが、発現に使用されるべき宿主細胞に基づいて選択される、発現されるべきポリヌクレオチド配列と作動可能に連結している1つ又は複数の調節配列を含むことを意味する。用語調節配列は、プロモーター、エンハンサー及びその他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。このような調節配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology185、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。
したがって、所与の宿主細胞のためのベクター又は発現構築物は、本発明の酵素をコードする配列のコーディング鎖に関して5’末端から3’末端に連続順序で、互いに作動可能に連結している以下のエレメントを含み得る:(1)所与の宿主細胞における酵素をコードするヌクレオチド配列の転写を指示可能であるプロモーター配列;(2)転写されたRNAの翻訳を容易にするためのリボソーム結合部位(3)任意選択により、所与の宿主細胞から培養培地への酵素の分泌を指示可能であるシグナル配列;(4)本発明のポリヌクレオチド配列;並びに好ましくは、また(5)酵素をコードするヌクレオチド配列の下流の転写を終結可能である転写終結領域(ターミネーター)。
本発明のヌクレオチド配列の下流には、1つ又は複数の転写終結部位(例えば、ターミネーター、本明細書において、停止コドンとも呼ばれる)を含有する3’非翻訳領域があり得る。ターミネーターの起源は、あまり重要ではない。ターミネーターは、例えば、酵素をコードするDNA配列にとって天然であり得る。しかし、好ましくは、細菌宿主細胞では、細菌ターミネーターが使用され、糸状菌宿主細胞では、糸状菌ターミネーターが使用される。より好ましくは、ターミネーターは、宿主細胞(酵素をコードするヌクレオチド配列が発現されるべきである)にとって内因性である。転写領域には、翻訳のためのリボソーム結合部位が存在し得る。構築物によって発現された成熟した転写物のコーディング部分は、開始コドンを含み、通常、AUG(又はATG)であるが、例えば、原核生物において使用される、GUG(又はGTG)及びUUG(又はTTG)などの代替開始コドンもある。また、停止又は翻訳終結コドンは、翻訳されるべきポリペプチドの末端に適当に配置される。
本発明のポリヌクレオチドの発現の増強はまた、発現宿主からの対象のタンパク質の発現及び必要に応じて分泌レベルを増大するように、及び/又は本発明の酵素の発現の誘導性制御を提供するように役立ち得る相同及び異種調節領域、例えば、プロモーター、分泌リーダー及び/又はターミネーター領域の選択によって達成され得る。
本発明の酵素は、大腸菌及びバチルス属(Bacilli)などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用する)、真菌細胞、酵母細胞又は哺乳動物細胞において製造され得る。適した宿主細胞は、本明細書において、さらに、Goeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology185、Academic Press、San Diego、CA(1990)において、及び「Production of Recombinant Proteins: Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems」、2004年、Wiley−Blackwell編(http://eu.wiley.com/WileyCDA/Section/id-302479.html?query=Gerd+Gellissen)において論じられる。或いは、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを使用してin vitroで転写及び翻訳され得る。
ほとんどの細菌、糸状菌及び酵母について、安定な形質転換体を得るためには、ベクター又は発現構築物が、宿主細胞のゲノム中に組み込まれることが好ましい。発現構築物が宿主細胞ゲノム中に組み込まれる場合には、構築物は、無作為にゲノム中の遺伝子座に、又は相同組換えを使用して所定の標的遺伝子座中のいずれかに組み込まれ、この場合には、標的遺伝子座は、好ましくは、高度に発現される遺伝子を含む。
本発明において、細菌、特に、バチルス属(Bacilli)が、本発明の酵素の発現のための宿主細胞として使用され得ることが好ましい。このような宿主細胞において有用な適した誘導プロモーターとして、レプレッサー又はアクチベーターなどの付属的な因子によって主に調節されるプロモーターが挙げられる。レプレッサーは、プロモーター活性を抑制する配列特異的DNA結合タンパク質である。転写は、このプロモーターから、レプレッサーのプロモーターのオペレーターとの結合を妨げるインデューサーの存在下で開始され得る。二次的σ因子の生成が、特定のプロモーターからの転写の主な原因であり得る。減弱及び抗転写終結も転写を調節する。
強力な構成プロモーターは、周知であり、適当なものは、宿主細胞において制御されるべき特定の配列に従って選択され得る。本発明の組換え宿主細胞において転写を指示可能である種々のプロモーターが使用され得る。好ましくは、プロモーター配列は、高度に発現された遺伝子に由来する。
ベクターDNAは、天然に適格性の従来の形質転換又はトランスフェクション技術によって原核生物又は真核生物中に導入され得る。本明細書において、用語「形質転換」及び「トランスフェクション」は、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、形質導入、感染、リポフェクション、カチオン性脂質媒介性トランスフェクション又はエレクトロポレーションを含む、外来ポリヌクレオチド(例えば、DNA)を宿主細胞中に導入するための種々の技術分野で認識された技術を指すものとする。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための適した方法は、Sambrookら(前掲)及びその他の実験マニュアルに見出すことができる。
ベクターを有する細胞を同定及び選択するために、選択用マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子は、一般に、本発明のポリヌクレオチドとともに宿主細胞中に導入される。好ましい選択用マーカーとして、それだけには限らないが、薬物に対して耐性を付与する又は宿主細胞における欠陥を補完するものが挙げられる。それらはまた、例えば、ほとんどの糸状菌及び酵母の形質転換のために使用され得る、アセトアミダーゼ遺伝子又はG418、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、メトトレキサート、フレオマイシンオルベノミル(orbenomyl)耐性(benA)のような抗生物質に対する耐性を提供する遺伝子などの、多目的のマーカー遺伝子を含む。或いは、対応する突然変異体宿主株を必要とする栄養要求性マーカー:例えば、D−アラニンラセマーゼ(バチルス属由来の)、URA3(S.セレビシエ(cerevisiae)由来の、又はその他の酵母由来の類似の遺伝子)、pyrG又はpyrA(偽巣性コウジ菌(A. nidulans)又はクロコウジカビ(A.niger)由来の)、argB(偽巣性コウジ菌又はクロコウジカビ由来の)又はtrpCなどの特定の選択マーカーが使用され得る。一実施形態では、選択マーカーは、選択マーカー遺伝子を含まない本発明の酵素を製造可能な形質転換宿主細胞を得るために、発現構築物の導入後に形質転換された宿主細胞から欠失される。
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合又は非融合タンパク質のいずれかの発現を支持する構成又は誘導プロモーターを含有するベクターを用いて実施されることが多い。融合ベクターは、それにコードされるタンパク質に、例えば、組換えタンパク質のアミノ末端にいくつかのアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは、通常、3つの目的に役立つ:1)組換えタンパク質の発現を増大するように;2)組換えタンパク質の溶解度を増大するように;3)アフィニティー精製においてリガンドとして作用することによって、組換えタンパク質の精製において補助するように。融合発現ベクターでは、融合タンパク質の精製後に融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にするように、融合部分と組換えタンパク質の接合点にタンパク質分解による切断部位が導入されることが多い。
細菌において使用するのに好ましいベクターは、例えば、参照により本明細書に包含されるWO−A1−2004/074468に開示されている。その他の適したベクターは、当業者には容易に明らかとなろう。
本発明のベクターは、本明細書において記載されるような適した宿主細胞中に形質転換されて、本発明のポリペプチドの発現を提供し得る。したがって、さらなる態様において、本発明は、酵素をコードする発現ベクターを用いて形質転換又は発現ベクターをトランスフェクトされた宿主細胞を培養することと、発現されたポリペプチドを回収することとを含む、本発明の酵素を調製するプロセスを提供する。
本発明のポリヌクレオチドは、適切な宿主細胞中に形質転換された場合に、本発明の酵素をコードする。本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むか、又は本発明のベクターを含む細胞、例えば、形質転換された宿主細胞又は組換え宿主細胞を特徴とする。「形質転換された宿主細胞」又は「組換え宿主細胞」とは、本発明のポリヌクレオチドが組換えDNA技術によって導入されている細胞である。
原核生物及び真核生物の両方、例えば、細菌、真菌、酵母、昆虫、哺乳動物などが含まれる。
適した宿主細胞として、エシェリキア属(Escherichia)、アナベナ属(Anabaena)、カウロバクター属(Caulobactert)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、パラコッカス属(Paracoccus)、バチルス属、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、リゾビウム属(Rhizobium)(シノリゾビウム属(Sinorhizobium))、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、クレブシエラ属(Klebsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトミセス属(Streptomyces)及びシュードモナス属を含む細菌が挙げられる。本発明のベクターの一態様では、宿主細胞は、枯草菌、B.プンチス(B.puntis)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.プミルス(B.pumilus)、G.オキシダンス(G.oxydans)、カウロバクター・クレセンタス(Caulobactert crescentus)CB15、メチロバクテリウム・エクストルクエンス(Methylobacterium extorquens)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、シュードモナス・ゼアキサンチニファシエンス(Pseudomonas zeaxanthinifaciens)、パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)、C.グルタミクム(C.glutamicum)、スタフィロコッカス・カルノスス(Staphylococcus carnosus)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium melioti)及びリゾビウム・ラジオバクター(Rhizobium radiobacter)からなる群から選択される細菌細胞である。
本発明のベクターのさらなる実施形態では、適した宿主細胞は、アスペルギルス属(Aspergillus)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、サッカロミセス属(Saccharomyces)又はタラロミセス属(Talaromyces)の種である。
好ましくは、宿主細胞は、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、大腸菌(Escherichia coli)、クロコウジカビ(Aspergillus Niger)又はコウジカビ(Aspergillus oryzae)の種である。
本発明の組換え宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチド又は本発明のベクターを含み得る。本発明の組換宿主細胞の一実施形態では、組換え宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチド又は本発明のベクターを発現又は過剰発現可能である。
本発明のポリヌクレオチド又は本発明のベクターを製造するための本発明の方法は、前記ポリヌクレオチド又は前記ベクターを用いて形質転換された宿主細胞を培養するステップと、前記宿主細胞から前記ポリヌクレオチド又は前記ベクターを単離するステップとを含む。
バチルス属の株、例えば、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ロータス(Bacillus lautus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌又はバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis);又はストレプトミセス属(Streptomyces)の株、例えば、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトミセス・ムリナス(Streptomyces murinus)の細胞;又はグラム陰性細菌、例えば、大腸菌又はシュードモナス属の種に由来する細胞が好ましい(Long Liu et a., Appl Microbiol Biotechnol (2013) 97:6113-6127及びKay Terpe, Appl Microbiol Biotechnol (2006) 72:211-222)。
別の態様によれば、宿主細胞は、真核生物の宿主細胞である。一実施形態では、真核細胞は、真菌細胞、すなわち、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クリベロミセス属、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)又はヤロウイア属(Yarrowia)の株などの酵母細胞である。好ましくは、酵母細胞は、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、S.セレベシエ(cerevisiae)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)又は糸状菌細胞である。
糸状菌は、真菌類(Eumycota)及び卵菌類(Oomycota)亜門のすべての糸状形態を含む(Hawksworth et al., In, Ainsworth and Bisby's Dictionary of The Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKによって定義されるように)。糸状菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン及びその他の複合多糖から構成される菌糸体壁を特徴とする。栄養成長は、菌糸の伸長により、炭素異化作用は、偏性好気性である。糸状菌株として、それだけには限らないが、アクレモニウム属(Acremonium)、アガリクス属(Agaricus)、アスペルギルス属、オーレオバシジウム属(Aureobasidium)、クリソスポリウム属、コプリナス属(Coprinus)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、フィリバジシウム属(Filibasidium)、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、マグナポルテ属(Magnaporthe)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、ネオカリマスティクス属(Neocallimastix)、アカパンカビ属(Neurospora)、ペシロミセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属、ピロミセス属(Piromyces)、ファネロケーテ属(Panerochaete)、ヒラタケ属(Pleurotus)、スエヒロタケ属(Schizophyllum)、タラロミセス属、サーモアスカス属(Thermoascus)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びトリコデルマ属(Trichoderma)が挙げられる。一実施形態では、アスペルギルス属、クリソスポリウム属、ペニシリウム属、タラロミセス属、フザリウム属又はトリコデルマ属の種、好ましくは、クロコウジカビ、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、タラロミセス・エメルソニイ(Talaromyces emersonii)、コウジカビ、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、ミセリオフィソーラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)又はペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)の種に属する糸状菌細胞が使用される。
コードされる酵素を、翻訳後に特定の望ましい様式で修飾及びプロセシングする宿主細胞が選択され得る。タンパク質産物のこのような翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質が最適に機能することを容易にし得る。種々の宿主細胞が、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的な、特定の機序を有する。分子生物学及び/又は微生物学の当業者が精通している適当な細胞株又は宿主系は、産生される外来タンパク質の所望の正確な修飾及びプロセシングを確実にするように選択され得る。例えば、一実施形態では、スブチリシンBPN’変異体又はその相同体は、最初に、プレプロ酵素として分泌され、77個のアミノ酸のプロ配列の存在は、成熟スブチリシンのin vivo産生のためには重要であるが、完全触媒活性を得るには切断除去されなくてはならない。
本発明の酵素を製造する方法は、通常、例えば、発現ベクターを用いて形質転換された又は発現ベクターをトランスフェクトされた組換え宿主細胞を、酵素をコードするコード配列の発現を提供する条件下で培養することと、回収することと、製造された酵素を細胞又は培養培地から精製することとを含む。本発明のポリヌクレオチドは、組換え複製可能ベクター、例えば、発現ベクター又は複製ベクター中に組み込まれ得る。その挿入部分を増幅するために、転写ベクターが使用される。
遺伝情報を別の細胞に移すベクターの目的は、通常、標的細胞において挿入部分を単離、増殖又は発現させることである。発現ベクター(発現構築物)と呼ばれるベクターは、具体的には、標的細胞における導入遺伝子の発現のためのものであり、一般に、導入遺伝子の発現を駆動するプロモーター配列を有する。転写ベクターと呼ばれるより単純なベクターは、発現ベクターとは異なり、転写されることだけが可能であり、翻訳されず、標的細胞において複製され得ず、発現され得ない。転写ベクターは、その挿入部分を増幅するために使用される。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを、複製可能ベクター中に導入することと、ベクターを適合性宿主細胞中に導入することと、宿主細胞をベクターの複製を引き起こす条件下で増殖させることとによって、本発明のポリヌクレオチドを作製する方法を提供する。ベクターは、宿主細胞から回収され得る。
好ましくは、本発明の酵素は、分泌タンパク質として製造され、この場合には、発現構築物中の酵素の成熟形態をコードするヌクレオチド配列は、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結している。好ましくは、シグナル配列は、酵素をコードするヌクレオチド配列にとって天然(相同)であり、本明細書において「野生型」とも呼ばれる。或いは、シグナル配列は、酵素をコードするヌクレオチド配列にとって外来(異種)であり、この場合には、シグナル配列は、好ましくは、本発明のヌクレオチド配列が発現される宿主細胞にとって内因性である。バチルス属(Bacilli)のための適したシグナル配列の例は、「van Dijl, J. M. et al. 2001. In: Sonenshein, A. L., Hoch, J. A. and Losick, R., eds. Bacillus subtilis and its closest relatives: from genes to cells. Washington, DC: ASM Press, pp. 337-355」及び「Degering C et al., Appl Environ Microbiol. 2010 Oct;76(19):6370-6」において見ることができる。
酵母における異種タンパク質の発現は、周知である。Sherman,Fら、Methods in Yeast Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory(1982)は、酵母においてタンパク質を発現するために利用可能な種々の方法を説明する、十分に認識された研究である。例えば、サッカロミセス属及びピキア属における発現のためのベクター、株及びプロトコールは、一般に、当技術分野で公知であり、市販の供給業者(例えば、Invitrogen)から入手可能である。適したベクターは、通常、必要に応じて、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ又はアルコール酸化酵素を含むプロモーター並びに複製起点、終結配列などといった発現制御配列を有する。より詳しくは、適した酵母シグナル配列は、酵母α因子遺伝子に由来するものである。同様に、糸状菌宿主細胞のための適したシグナル配列として、例えば、糸状菌アミログルコシダーゼ(AG)遺伝子、例えば、クロコウジカビg/aA遺伝子に由来するシグナル配列がある。これは、アミログルコシダーゼ((グルコ)アミラーゼとも呼ばれる)プロモーター自体と組み合わせて、並びにその他のプロモーターと組み合わせて使用され得る。ハイブリッドシグナル配列はまた、本発明との関連で使用され得る。好ましい異種分泌リーダー配列は、真菌アミログルコシダーゼ(AG)遺伝子(g/aA-例えば、アスペルギルス属由来の18及び24個のアミノ酸型の両方)、[α]因子遺伝子(酵母、例えば、サッカロミセス属及びクリベロミセス属)又は[α]−アミラーゼ(amyE、amyQ及びamyL)及びアルカリ性プロテアーゼaprE及び中性プロテアーゼ遺伝子(バチルス属)に起因するものである。
本発明の酵素が、適用を妨げ得る酵素活性を実質的に含まない、例えば、ペプチド分解性又は修飾酵素を含まない形態で製造される異種宿主細胞もまた、選択され得る。特に、製造性変異体の場合には、宿主細胞は、任意の野生型酵素を製造してはならない。これは、このような酵素を、通常、産生しない宿主細胞を選択することによって、又は当技術分野で公知の技術によって対応する遺伝子を計画的に除去することによって達成され得る。
本発明は、本発明の酵素をコードするDNA配列の組換え発現による本発明の酵素の製造プロセスを包含する。この目的のために、本発明のDNA配列は、適した相同又は異種宿主細胞における酵素の経済的な製造を可能にするための遺伝子増幅及び/又はプロモーター、分泌シグナル配列などの発現シグナルの交換のために使用され得る。相同宿主細胞は、DNA配列が由来する種と同一種の、又は同一種内の変異体である宿主細胞である。宿主細胞は、酵素を過剰発現し得、過剰発現を遺伝子操作する技術は周知である。したがって、宿主は、コードするポリヌクレオチドの2つ以上のコピーを有し得る(したがって、それに応じて、ベクターは、2つ以上のコピーを有し得る)。したがって、本発明の一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを発現又は過剰発現可能である。
本発明の別の態様は、(a)本発明の組換え宿主細胞を、本発明の酵素が製造されるような条件下で培養することと、(b)任意選択により、本発明の酵素を細胞培養培地から回収することとを含む、本発明の酵素を製造するための方法である。プロモーター及び宿主細胞の各組合せで、酵素をコードするDNA配列の発現を促す培養条件が利用可能である。所望の細胞密度又は酵素の力価に達した後、培養を停止し、酵素を回収する。用語「培養すること」は、本発明の生存している組換え宿主細胞、特に、本発明の組換え宿主細胞を維持すること及び/又は増殖させることを含む。
一態様では、本発明の組換え宿主細胞は、液体培地中で培養される。別の態様では、組換え宿主細胞は、固体培地又は半固体培地で培養される。好ましくは、本発明の組換え宿主細胞は、組換え宿主細胞の維持及び/若しくは増殖にとって必須であるか、又は有益である栄養素を含む液体培地中で培養される。組換え宿主細胞は、静置培養、試験管培養、振盪培養、通気撹拌培養又は発酵などの従来の培養法によって、液体培地中で連続的に又は断続的にのいずれかで培養され得る。好ましくは、組換え宿主細胞は、発酵槽において培養される。本発明の発酵プロセスは、バッチ、フェドバッチ及び連続発酵法を含む。種々のこのようなプロセスが開発されており、当技術分野で周知である。
組換え宿主細胞は、好ましくは、制御されたpH下で培養される。一実施形態では、組換え宿主細胞は、4.5から8.5の間、好ましくは、6.0から8.5のpHで、より好ましくは、約7のpHで培養され得る。所望のpHは、当業者に公知の任意の方法によって維持され得る。
好ましくは、組換え宿主細胞は、制御された通気下及び制御された温度下でさらに培養される。一実施形態では、制御された温度は、15から70℃の間の温度、好ましくは、20から55℃の間の温度、より好ましくは、30から50℃の間を含む。適当な条件は、通常、発現宿主及び製造されるべきタンパク質の選択に基づいて選択される。
特定の実施形態では、酵素は、バチルス属の株GX4935(実施例を参照のこと)におい発現される。この株は、適した発酵培地において好気性条件下で培養される。適した培地培地は、無機塩に加えて炭素及び窒素の同化可能な供給源を、任意選択により、酵母抽出物などの成長促進栄養素と一緒に含有し得る。発酵は、通常、好ましくは、自動手段によっておよそ一定に維持された、35〜40℃で、6.5〜7.5のpHで実施される。酵素は、培地中に排出される。発酵の最後に、必要に応じて、製造宿主は当業者に公知の手段によって死滅されることもある。結果として生じる発酵培養液は、例えば、濾過又は遠心分離によって、細菌細胞、それからの細片をその他の固形物と一緒に含まないものであり得る。酵素を含有する濾液又は上清を、例えば、濾過又は遠心分離によって、さらに清澄化し、次いで、限外濾過によって、又は減圧下でエバポレーター中で必要に応じて濃縮して、濃縮物を得てもよく、これを、必要に応じて、例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって乾固してもよい。
発酵後、必要に応じて、細胞を、遠心分離又は濾過によって発酵培養液から除去してもよい。発酵が停止した後、又は細胞を除去した後、それだけには限らないが、従来の樹脂を用いる処理、従来の吸着剤を用いる処理、pHの変更、溶媒抽出、透析、濾過、濃縮、結晶化、再結晶化、pH調整、凍結乾燥などを含む従来手段によって、本発明の酵素を回収し、必要に応じて、精製及び単離してもよい。例えば、本発明の酵素は、当技術分野で公知の方法によって組換え細胞培養物から回収及び精製することができる(Protein Purification Protocols, Methods in Molecular Biology series by Paul Cutler, Humana Press, 2004)。通常、化合物は、得られた調製物が、その他の成分を実質的に含まない場合に「単離される」。
一実施形態では、本発明の酵素の約80%(乾重で)以上の純度(すなわち、約20%未満の培地、成分又は発酵副生成物のすべて)を有する単離された酵素調製物が提供される。特定の実施形態では、本発明は、約90%以上の純度の、好ましくは、95%以上の純度の、特に、98%以上の純度の本発明の酵素を提供する。実際には、本発明の単離された酵素調製物中には微量のその他の成分が存在し得る。したがって、酵素の精製された調製物は、99%以下の酵素、特に、98%以下を含み得る。
或いは、しかし、本発明の酵素は、組換え宿主細胞又は培養物から精製されない。全培養物又は培養上清を、酵素の供給源として使用してもよい。特定の実施形態では、酵素を含む培養物又は培養上清が、実質的な修飾を行わずに使用される。
公知化学的タンパク質合成技術によって、例えば、固相ペプチド合成によっても、スブチリシンBPN’変異体などの本発明の酵素を作製可能であるということはさらに留意される。しかし、微生物宿主細胞におけるスブチリシン突然変異体の発現は、一般に、これが、微生物宿主細胞が、スブチリシンタンパク質を、酵素活性にとって適当なコンホメーションで製造することを可能にするので好ましいものとなる。しかし、不適切にフォールディングされたスブチリシンBPN’変異体又はその相同体を、活性コンホメーションに変換することが可能でなければならない。
本発明の酵素(スブチリシンBPN’変異体又はその相同体)は、化学的に又は生化学的に修飾され得る、例えば、翻訳後修飾され得る。例えば、それらは、グリコシル化されるか、又は修飾されたアミノ酸残基を含み得る。それらはまた、上記ですでに記載されたようなタグの付加によって修飾され得る。このような修飾されたポリペプチド及びタンパク質は、用語、本発明の「酵素」の範囲内にある。
本発明及びその利点をさらに示すために、以下の具体例を示すが、これは、単に例示として意図されるものであって、決して制限的なものではないということは理解されよう。
本発明に従う(使用するための)酵素の製造
突然変異誘発、クローニング及び発現
スブチリシンBS149(Ruan et al. 2008)の遺伝子コーディングをPhilip N.Bryan(University of Maryland Biotechnology Institute, 9600 Gudelsky Drive, Rockville、Maryland 20850)から入手した。天然プロモーターを使用する、又は代替としてaprEプロモーター及び任意選択により、C末端his−タグを使用するBS149遺伝子を有する、pUB110ベースの大腸菌−枯草菌(E.coli-B.subtilis)シャトルベクターを使用して突然変異誘発を実施した(pBE-S DNA、http://www.clontech.com/takara)。部位特異的突然変異誘発法(Sambrook et al.,1989)を使用して突然変異S221C及びP225AをBS149遺伝子中に導入することによって、本発明の酵素をコードする遺伝子を構築した。すべてのプライマーは、Agilentプライマー設計ツール(http://www.genomics.agilent.com)を使用して設計した。構築された配列は、枯草菌GX4935への形質転換の前にDNA塩基配列決定法によって検証した。
His−タグを用いずにBS149−DMを製造するために、BS149−DMの遺伝子コーディング及びその天然プロモーター配列を、pBS42シャトルベクター(DSMZ、Germany)中にEcoRI/BamHI部位でクローニングした。ライゲーション混合物を、コンピテント大腸菌中に形質転換し、形質転換体を、クロラムフェニコール(34μg/mL)を含有するLBプレート上にプレーティングした。プラスミドpBS42−S5を、大腸菌中で増殖させ、単離し、配列決定することによって確認した。配列が確認されたプラスミドを用いて、枯草菌宿主を形質転換した。
BS149−DMの遺伝子コーディングを、His−タグとともに、pUB−110ベースの大腸菌−枯草菌シャトルベクター(pBES)中に、MluI及びBamHI部位を使用してクローニングした(図12)。本発明の酵素(ポリペプチド)をコードする遺伝子(BS149-DM)のポリヌクレオチド配列及びコードされる酵素が、配列番号5に示されている。対応するアミノ酸配列は、スブチリシンBPN’番号付けスキームに従って番号づけられている。アミノ酸−107〜−1は、シグナル配列、プレ配列及びプロ配列を含み、これらは、完全成熟の際に切断除去される。アミノ酸1〜275は、完全触媒活性を示す成熟酵素を含む。迅速な、効率的な精製を可能にするために、配列番号5に示されるように、アミノ酸275の後ろに、C末端His−タグが付着されている。カルシウム結合部位の除去の結果として、BS149−DMは、スブチリシンBPN’中のL75、N76、N77、S78、I79、G80、V81、L82及びG83に対応するアミノ酸を含むスブチリシンBPN’と比較して、9個のアミノ酸の欠失を含有する。BS149−DMのスブチリシンBPN’番号付けを維持するために、番号付けは、74から83まで飛ぶ。シャトルベクター中で、遺伝子の発現は、aprEプロモーターの制御下にある。ベクターは、バチルス属の複製のpUB ori及びカナマイシン耐性マーカーを含有していた。ベクターはまた、大腸菌における維持のために複製のColE1 ori及びアンピシリン耐性マーカーを含有していた。得られたプラスミドpBES−BS149DMHISを、大腸菌TOP10において増殖させ、枯草菌GX4935(ΔnprEΔaprE)中に形質転換した。鋳型としてpBES−BS149DMHISを使用し、Quikchange法(Agilent)によって突然変異誘発を実施した。或いは、当技術分野で公知の部位特異的突然変異誘発のためのその他の方法も使用され得る(Sambrook et al.,1989.)。
スブチリガーゼの遺伝子(Abrahmsen et al. 1991)を、DNA2.0 pJ201クローニングベクター中でDNA2.0(https://www.dna20.com/)で注文し、大腸菌−枯草菌シャトルベクター(DSMZから入手したpBS42 DSM8748;pBS42-S5)中に再クローニングした。スブチリガーゼを有するpJ201ベクター(DNA 2.0)並びにpBS42シャトルベクター(DSMZ)をEcoRI及びBamHI(NEB)を用いて消化した。線形化したシャトルベクター並びにスブチリガーゼ挿入部分を、ゲルから単離し、ライゲーションした(LigaFast、Promega)。構築物を、大腸菌MM294株(DSMZ)に形質転換した。大腸菌中でプラスミドpBS42−S5を増殖させ、単離し、配列決定によって確認した(図13)。確認されたDNAを、枯草菌DB104又は枯草菌GX4935のいずれかの形質転換に使用した。枯草菌GX4935株は、細胞外タンパク質分解活性が低下している(Kawamura and Doi 1984; Fahnestock and Fisher 1987)。Abrahmsenら 1991によって報告されたような、成熟型の製造を促進するための野生型スブチリシンの付加は必要ではなかった。
スブチリガーゼ及び実施例23におけるHis−タグを有さないBS149−DMを除いて、すべての実験において、C末端His−タグを利用して酵素を調製した。
合成スブチリシンBPN’変異体の製造及び精製:
pBS42シャトルベクター中の形質転換体を選び出し、クロラムフェニコール10μg/mLを含有するLBプレート上で、37℃で16時間増殖させ、選び出して、クロラムフェニコール10μg/mLを含有するLB培養液5mL中に播種した。37℃で16時間インキュベートした後、1%(v/v)の培養物を1リットルのTB培地(terrific broth)(12g/lトリプトン、24g/l酵母抽出物、0.4%(v/v)グリセロール、17mM KHPO及び72mM KHPO、50mg/L Trp、50mg/L Lys、50mg/L Met)に播種した。培養物を激しく振盪しながら37℃で増殖させ、インキュベーションを48時間継続した。48時間発現させた後、6,000gで20分間、4℃での遠心分離によって細胞を培地から単離した。続いて、培地に5gのCaClを添加し、pHを調整して7.5に戻した。6,000gで20分間、4℃での遠心分離によって沈殿物をペレットにした。上清に硫酸アンモニウムを45%(w/v)の最終濃度まで添加して、酵素を沈殿させた。沈殿した酵素を、8,000gで40分間、4℃での遠心分離によって回収した。ペレットを、80%アセトンを用いて洗浄し、水15mLに再懸濁した。タンパク質サンプルを、バッファー(20mM トリシン、1mM CaCl pH7.5)中でHiPrep26/10脱塩カラム(GE healthcare)を使用して脱塩した。脱塩されたタンパク質を、HiTrap Q HPカラム(GE healthcare)にロードした。酵素を含有するフロースルーを集め、濃縮した。タンパク質の純度はSDS−PAGEによって分析し、酵素濃度は、例えば、NanoDrop分光光度計(Thermo Fisher Scientific Inc)によって、280nmでの吸収を測定することによって決定した(Stoscheck, CM. Quantitation of Protein. Methods in Enzymology 182: 50-69. 1990)。比吸光係数は、Gasteiger E.、Hoogland C.、Gattiker A.、Duvaud S.、Wilkins M.R.、Appel R.D.、Bairoch A.;Protein Identification and Analysis Tools on the ExPASy Server;(In)John M.Walker(編):The Proteomics Protocols Handbook、Humana Press(2005)に従って、http://web.expasy.org/protparam/で算出できる。約90%以上の純度が実現可能であった。得られた酵素は、20mMトリシン、1mM CaCl pH7.5中の水溶液中、約2mg/mLの濃度で提供された。この酵素溶液を、(オリゴ)ペプチド断片縮合及び環化のためにそれ自体で使用した。
His−タグを保持する合成スブチリシンBPN’変異体の製造及び精製:
対象のスブチリシン変異体遺伝子を有するプラスミドを含有する枯草菌の単一微生物コロニーを、37℃振盪インキュベーター中の、カナマイシン(10μg/mL)を有するLB5mLに播種した。抗生物質(カナマイシン10μg/mL)及びアミノ酸(100mg/L Trp、100mg/L Met及び100mg/L Lys)を補給したTB培地(Terrific Broth)30mLに、一晩培養物0.6mLを添加した。振盪インキュベーター(200rpm)中で、細胞を37℃で48時間増殖させた。細胞を遠心分離(15分、4,000rpm、4℃)によって回収した。培地(30mL)をデカントし、2回の遠心分離ステップ(15分、4000rpm、4℃)において、Amicon−centrifugalユニット(15ml、10kDa MWカットオフ)で濃縮した。次いで、3回の洗浄/濃縮ステップ(14mlバッファーA、10分、4,000rpm、4℃)において、濃縮された培地(0.5ml)をバッファーA(25mMトリシン、pH7.5、0.5M NaCl、20mMイミダゾール)と交換した。His−タグ精製のために、プラスチックカラムカートリッジに、Talon樹脂(2.5ml、Clonetech)を添加した。樹脂を、MilliQ水5mLで洗浄し、5mLのバッファーAを用いて平衡化した。粗酵素をカラムにロードし、5mLのバッファーAを用いて洗浄した。5mLのバッファーB(25mMトリシン、pH7.5、0.5M NaCl、200mMイミダゾール)を用いて酵素を溶出した。溶出物を、遠心分離(15分、4000rpm、4℃)によってAmicon−centrifugalユニット(5ml、10kDa MWカットオフ)で濃縮し、3回の洗浄/濃縮ステップ(5mlバッファー、10分、4,000rpm、4℃)においてバッファーを25mMトリシン、pH7.5に交換した。
純度及び酵素濃度は、上記のように調べた。純度は、90%超であった。約2mg/mlの得られた酵素を含有する得られた水溶液(25mMトリシン、pH7.5)を、(オリゴ)ペプチド断片縮合及び環化のためにそれ自体で使用した。
参考文献
Abrahmsen, L, J Tom, J Burnier, K A Butcher, A Kossiakoff, and J A Wells. 1991.「Engineering Subtilisin and Its Substrates for Efficient Ligation of Peptide Bonds in Aqueous Solution.」Biochemistry 30(17)(April 30): 4151-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2021606。
Fahnestock SR, Fisher KE : Expression of the staphylococcal protein A gene in Bacillus subtilis by gene fusions utilizing the promoter from a Bacillus amyloliquefaciens alpha-amylase gene. J Bacteriol. 1986 Mar;165(3):796-804
Kawamura, Fujio, and Roy H. Doi. Construction of a Bacillus subtilis double mutant deficient in extracellular alkaline and neutral proteases. J Bacteriol. 1984 Oct;160(1):442-4
Ruan, Biao, Viktoriya London, Kathryn E Fisher, D Travis Gallagher, and Philip N Bryan. Engineering substrate preference in subtilisin: structural and kinetic analysis of a specificity mutant. Biochemistry. 2008 Jun 24;47(25):6628-36.
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Wells, James A, Eugenio Ferrari, Dennis J Henner, David A Estell, and Ellson Y Chen.
Cloning, sequencing, and secretion of Bacillus amyloliquefaciens subtilisin in Bacillus subtilis.
Nucleic Acids Res. 1983 Nov 25;11(22):7911-25.
酵素的断片縮合及び環化実施例
材料及び方法
特に断りのない限り、化学物質は、商業的供給業者から入手し、さらなる精製を行わずに使用した。分析的HPLCは、40℃で逆相カラム(Phenomenex、C18、5μm粒径、150×4.6mm)を使用してHP1090 Liquid Chromatographで実施した。UV検出は、UV−VIS 204リニアスペクトロメーターを使用して220nmで実施した。勾配プログラムは、0〜25分の5%〜98%溶出剤Bの直線勾配傾斜及び25.1〜30分の5%溶出剤B(溶出剤A:H2O中の、0.5mL/Lメタンスルホン酸(MSA)、溶出剤Bアセトニトリル中の、0.5mL/L MSA)とした。フローは、0〜25.1分まで1mL/分及び25.2〜29.8分まで2mL/分とし、次いで、30分での停止まで1mL/分に戻した。注入容積は、20μLとした。分取HPLCは、固定相カラム(Pursuit XRs、C18、10μm 粒径、500×41.4mm)を使用してVarian PrepStarシステムで実施した。LC−MSは、40℃で逆相カラム(Phenomenex、C18、5μm 粒径、150×4.6mm)を使用してAgilent 1200シリーズ液体クロマトグラフで実施した。UV検出及び勾配プログラムは、分析用HPLCについて記載されたとおりとした。分子量は、Agilent 6130四重極LC/MSシステムを使用して決定した。
プロトコール1:N−Fmoc保護された(オリゴ)ペプチド−OCamエステルを、以下に記載されるように合成した:
1グラムのRink樹脂(4−((2,4−ジメトキシフェニル)(Fmocアミノ)メチル)フェノキシアルキルリンカー、0.64mmol/グラムのローディングを有する)を、ジクロロメタン(DCM、2×2分、10mL)及び1−メチル−2−ピロリドン(NMP、2×2分、10mL)を用いて洗浄し、ピペリジン/NMP(1/4、v/v、2×8分、10mL)を使用してFmoc脱保護した。NMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、DCM(45分、10mL)中でDCC(4当量)及びHOAt(4当量)を使用して、ヨード酢酸(4当量)を樹脂とカップリングした。NMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びTHF(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、50℃でDMF/THF(1/1、v/v、10mL)中で4当量のFmoc−Xxx−OH及び10当量のDiPEAを使用して、Fmoc保護されたアミノ酸を樹脂に20時間ローディングした。本開示におけるこの部分及びその他の部分において、「Xxx」は、1個のアミノ酸(以下の実施例に属する図中に示されるような変数)を表す。
DMF(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、標準SPPSプロトコールに従って、ペプチドを伸長した(Weng C. Chan and Peter White, OUP Oxford, 2000)。トリフルオロ酢酸(TFA)、トリイソプロピルシラン(TIS)及び水の混合物(95/2.5/2.5、v/v/v、15mL)を使用して樹脂からの切断及び側鎖脱保護を120分間実施した。メチルt−ブチルエーテル(MTBE)/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を使用して粗ペプチドを沈殿させた。沈殿したペプチドを遠心分離によって回収し、MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を用いて2回洗浄し、続いて、アセトニトリル/水(1/1、v/v、50mL)から凍結乾燥した。
プロトコール2:N−Fmoc保護された(オリゴ)ペプチド−OCam−Xxx−NHエステルを、以下に記載されるように合成した:
1グラムのRink樹脂を、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄し、ピペリジン/NMP(1/4、v/v、2×8分、10mL)を使用してFmoc脱保護した。NMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、NMP(45分、10mL)中でHBTU(4当量)、HOBt(4当量)及びDiPEA(8当量)を使用して、Fmoc−Xxx−OH(4当量)を樹脂とカップリングした。NMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、樹脂を、ピペリジン/NMP(1/4、v/v、2×8分、10mL)を使用してFmoc脱保護した。NMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、ヨード酢酸(4当量)を、DCM(45分、10mL)中でDCC(4当量)及びHOAt(4当量)を使用してカップリングした。NMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びTHF(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、Fmoc保護されたアミノ酸を、50℃でDMF/THF(1/1、v/v、10mL)中の4当量のFmoc−Xxx−OH及び10当量のDiPEAを使用して20時間カップリングした。DMF(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、標準SPPSプロトコールに従って、ペプチドを伸長した(Weng C. Chan and Peter White, OUP Oxford, 2000)。TFA/TIS/水の混合物(95/2.5/2.5、v/v/v、15mL)を使用して、樹脂からの切断及び側鎖脱保護を120分間実施した。MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を使用して粗ペプチドを沈殿させた。沈殿したペプチドを遠心分離によって回収し、MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を用いて2回洗浄し、続いて、アセトニトリル/水(1/1、v/v、50mL)から凍結乾燥した。
プロトコール3:N−Fmoc保護された(オリゴ)ペプチド−OCam−Xxx−OHエステルを以下に記載されるように合成した:
1グラムのトリチル樹脂(2−クロロ−クロロトリチルリンカー、1.0mmol/グラムのローディングを有する)を、DCM(2×2分、10mL)を用いて洗浄し、DCM(30分、10mL)中でDiPEA(5当量)を使用して、Fmoc−Xxx−OH(2当量)を樹脂とカップリングした。DMF(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、DCM/MeOH/DiPEA(80/15/5、v/v/v、2×10分、10mL)を使用して未反応のクロロトリチル基をキャップした。樹脂をNMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄し、ピペリジン/NMP(1/4、v/v、2×8分、10mL)を使用してFmoc脱保護した。NMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、DCM(45分、10mL)中でDCC(4当量)及びHOAt(4当量)を使用して、ヨード酢酸(4当量)をカップリングした。NMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びTHF(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、50℃でDMF/THF(1/1、v/v、10mL)中で4当量のFmoc−Xxx−OH及び10当量のDiPEAを使用して、Fmoc保護されたアミノ酸を20時間カップリングした。DMF(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、標準SPPSプロトコールに従って、ペプチドを伸長した(Weng C. Chan and Peter White, OUP Oxford, 2000)。TFA/TIS/水の混合物(95/2.5/2.5、v/v/v、15mL)を使用して、樹脂からの切断及び側鎖脱保護を120分間実施した。MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を使用して粗ペプチドを沈殿させた。沈殿したペプチドを遠心分離によって回収し、MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を用いて2回洗浄し、続いて、アセトニトリル/水(1/1、v/v、50mL)から凍結乾燥した。
プロトコール4:(オリゴ)ペプチドC末端アミド求核試薬を以下に記載されるように合成した:
1グラムのRink樹脂(4−((2,4−ジメトキシフェニル)(Fmoc−アミノ)メチル)−フェノキシアルキルリンカー、0.64mmol/グラムのローディングを有する)を、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて洗浄し、ピペリジン/NMP(1/4、v/v、2×8分、10mL)を使用してFmoc脱保護した。標準SPPSプロトコールに従って、ペプチドを伸長した(Weng C. Chan and Peter White, OUP Oxford, 2000)。TFA/TIS/水の混合物(95/2.5/2.5、v/v/v、15mL)を使用して樹脂からの切断及び側鎖脱保護を120分間実施した。MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を使用して粗ペプチドを沈殿させた。沈殿したペプチドを遠心分離によって回収し、MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を用いて洗浄し、続いて、アセトニトリル/水(1/1、v/v、50mL)から凍結乾燥した。
プロトコール5:N−アセチル保護(オリゴ)ペプチド活性化エステルを、以下に記載されるように合成した:
プロトコール1〜3のいずれか1種に従う所望の配列のSPPS後、ピペリジン/NMP(1/4、v/v、2×8分、10mL)を使用して樹脂が結合しているペプチドをFmoc脱保護した。NMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて樹脂を洗浄し、NMP(2×10分、10mL)中でAcO(10容量%)、DiPEA(5容量%)、HOBt(0.2重量%)の混合物を使用してペプチドN末端アミン基をアセチル化した。樹脂をNMP(3×2分、10mL)及びDCM(3×2分、10mL)を用いて洗浄した。TFA/TIS/水の混合物(95/2.5/2.5、v/v/v、15mL)を使用して、樹脂からの切断及び側鎖脱保護を120分間実施した。MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を使用して粗ペプチドを沈殿させた。沈殿したペプチドを遠心分離によって回収し、MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を用いて2回洗浄し、続いて、アセトニトリル/水(1/1、v/v、50mL)から凍結乾燥した。
プロトコール6:(オリゴ)ペプチドC末端酸を、以下に記載されるように合成した:
1グラムのトリチル樹脂(2−クロロ−クロロトリチルリンカー、1.0mmol/グラムのローディングを有する)を、DCM(2×2分、10mL)を用いて洗浄し、DCM(30分、10mL)中でDiPEA(5当量)を使用してFmoc−Xxx−OH(2当量)を樹脂とカップリングした。DMF(2×2分、10mL)を用いて洗浄した後、DCM/MeOH/DiPEA(80/15/5、v/v/v、2×10分、10mL)を使用して未反応のクロロトリチル基をキャップした。NMP(2×2分、10mL)、DCM(2×2分、10mL)及びNMP(2×2分、10mL)を用いて樹脂を洗浄し、標準SPPSプロトコールに従って、ペプチドを伸長した(Weng C. Chan and Peter White, OUP Oxford, 2000)。TFA/TIS/水の混合物(95/2.5/2.5、v/v/v、15mL)を使用して、樹脂からの切断及び側鎖脱保護を120分間実施した。MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を使用して粗ペプチドを沈殿させた。沈殿したペプチドを遠心分離によって回収し、MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を用いて2回洗浄し、続いて、アセトニトリル/水(1/1、v/v、50mL)から凍結乾燥した。
プロトコール7:合成部分保護された(オリゴ)ペプチド断片
所望の位置でのプロトコール1〜6のいずれか1種に従うペプチド配列のSPPSの際に、Fmoc−Asp(OcHex)−OH、Fmoc−Glu(OBn)−OH又はFmoc−Lys(Alloc)−OHなどの異なって(TFA安定)保護されたアミノ酸をカップリングした。TFA/TIS/水の混合物(95/2.5/2.5、v/v/v、15mL)を使用して、樹脂からの切断及び側鎖脱保護を、影響を受けていないままであるTFA安定cHex、Bn又はAlloc基を除いて、120分実施した。MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を使用して粗ペプチドを沈殿した。沈殿したペプチドを遠心分離によって回収し、MTBE/n−ヘプタン(1/1、v/v、50mL)を用いて2回洗浄し、続いて、アセトニトリル/水(1/1、v/v、50mL)から凍結乾燥した。
カップリング実施例
注記:BS149−DM(配列番号5)と示される酵素は、配列番号2と比較して、アミノ酸75〜83の欠失及び突然変異Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、Y217L、N218S、S221C、P225A、T254A及びQ271Eを含有する。本開示、共通の一般知識、及び任意選択により、制限された量のルート試験に基づいて、当業者は、スブチリガーゼと比較して大幅に改善された特性を依然として有しながら、突然変異Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、Y217L、N218S、T254A及びQ271Eのうちの1つ若しくは複数を元に戻してもよく、又は位置Q2、S3、P5、S9、I31、K43、M50、A73、E156、G166、G169、S188、Q206、N212、N218S、T254、Q271のうちの1つ若しくは複数で異なる置換を行ってもよい(例えば、実施例24を参照のこと)。
スブチリガーゼと示される酵素は、配列番号2と比較して、突然変異S221C及びP225Aを含有する。
実施例1〜23において使用される本発明の酵素は、BS149−DMの突然変異のすべて及び実施例に記載されるような任意選択のさらなる突然変異を有する。
以下に示されるように、上記の技術を使用して、さらなる突然変異を有する酵素を作製した。
実施例1
種々のBS149−DM突然変異体を使用する酵素的オリゴペプチド断片カップリング:
種々の突然変異体の活性及びS/H比を試験するために、以下の標準反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中の、0.01mmol H−Ala−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1200μLの水中の0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(100mM、pH8.0)800μLを添加した。この混合物に、酵素5.5μgを添加し、反応混合物を室温で振盪(150rpm)した。30分後、反応混合物のアリコート500μLを取り出し、MSA/水(1/99、v/v)500μLを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分された。
種々のBS149−DM突然変異体の活性は、指定の反応時間内の、生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するCam−エステルの量の合計によって除された、生成物の量及び加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量の合計として定義される。最も活性な突然変異体を100%に設定した(図1Aを参照のこと)。種々のBS149−DM突然変異体のS/H比は、指定の時間内の、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される(図1Bを参照のこと)。
その他の実施例における活性及びS/H比は、特に断りのない限り、同様の方法で決定した。
結論:明確に、BS149−DMは、スブチリガーゼと比較して、2倍高い活性及び改善されたS/H比(1.8対0.9)を有する。M222位置は、酵素のS/H比にとって極めて重要であると分かった。BS149−DMのM222G及びM222P突然変異体を用いた場合に、特に良好な結果が得られた。P4ポケット突然変異(位置Y104、I107及びL135)を含有するすべてのBS149−DM変異体が、BS149−DMに対して同等のS/H比を有する。しかし、特定の突然変異については、BS149−DM変異体の活性は、著しく改善された。突然変異Y104S、I107V、L135D、L135N及びL135Sを用いた場合に、特に良好な結果が得られた。P4ポケット突然変異を組み合わせた場合、すなわち、I107V+L135S及びI107V+L135Nには、さらに高い活性を有するBS149−DM変異体が得られた。P4ポケット突然変異をP1’ポケット突然変異と組み合わせた場合、例えば、I107V+M222Gには、BS149−DMと比較してS/H比が増大した極めて活性なBS149−DM変異体が得られた。
実施例2
種々のBS149−DM+M222P+L217突然変異体を使用する酵素的オリゴペプチド断片カップリング:
種々の突然変異体の活性及びS/H比を試験するために、実施例1に記載されるものと同一の反応を実施した。種々のBS149−DM+M222P+L217突然変異体の活性は、生成物、加水分解されたオリゴペプチドC末端Cam−エステル及び残存するCam−エステルの量の合計によって除された、生成物の量及び加水分解されたオリゴペプチドC末端Cam−エステルの量の合計と定義される。最も活性な突然変異体を100%に設定した(図2Aを参照のこと)。種々のBS149−DM+M222P+L217突然変異体のS/H比は、加水分解されたC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される(図2Bを参照のこと)。
結論:明確に、すべてのBS149−DM+M222P+L217突然変異体は、スブチリガーゼと比較して、改善したS/H及び同様又は改善された活性を有し、その一部は、BS149−DM+M222Pと比較して増大した活性を有する。突然変異L217N、L217T、L217E、L217I、L217V及びL217Aを用いた場合に、特に良好な結果が得られた。L217位置は、活性及びS/H比にとって極めて重要であると分かっただけでなく、実施例5に記載されるように、基質範囲にとってさらにより重要である。
実施例3
P4ポケット突然変異(位置Y104、I107及びL135)を含有する種々のBS149−DM突然変異体のP4ポケット基質特異性のマッピング
種々の突然変異体のP4ポケット基質特異性を調べるために、以下の標準反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中、0.01mmol H−Ala−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1.2mLの水+1mLのAcn中の、0.01mmol Ac−Asp−Xxx−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)200μLの混合物に、リン酸バッファー(100mM、pH8.0)800μLを添加した。図3A〜図3Cに示されるように、この位置のアミノ酸が異なるすべてのこれらのペプチドエステルを用いてカップリングを実施した。
この混合物に、酵素5.5μgを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、MSA/水(1/99、v/v)500μLを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分された。活性は、指定の反応時間内の、生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルの量の合計によって除された、生成物の量と定義される。最も活性な基質を100%に設定した、図3A〜図Cを参照のこと。
結論:図3A〜図Cから明らかなように、P4突然変異を有する(位置Y104、I107及び/又はL135に)BS149−DM突然変異体のP4基質範囲は、BS149−DMのものとは明確に異なり、これは、種々の個々のペプチド配列にとって有利であり得る。いくつかの突然変異体は、BS149−DMよりもかなり広いP4基質範囲を示す。これは、突然変異I107V、L135D、L135N及びL135Sを有する場合特にそうである。
実施例4
種々のBS149−DM+M222突然変異体のP1’及びP2’ポケット基質特異性のマッピング:
種々の突然変異体のP1’及びP2’ポケット基質特異性を調べるために、以下の2種の標準反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中、0.01mmolのP1’についてH−Xxx−Leu−Arg−NH.2TFA及びP2’についてH−Ala−Xxx−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1200μLの水中、0.01mmolのAc−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(100mM、pH8.0)800μLを添加した。この混合物に、酵素5.5μgを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、MSA/水(1/99、v/v)500μLを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分された。活性は、指定の反応時間内の、生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルの量の合計によって除された、生成物の量と定義される。最も活性な基質を100%に設定した。種々のBS149−DM+M222突然変異体のP1’及びP2’ポケット基質特異性が、図4A〜図Dに示されている。P1’位置におけるトリプトファンを用いるカップリングは、LC−MSピークにおける重複のために調べられなかった。
結論:図4A〜図Dから明らかなように、位置M222にP1’突然変異を有するBS149−DM突然変異体のP1’及びP2’基質範囲は、BS149−DMのものとは明確に異なり、これは、種々の個々のペプチド配列にとって有利であり得る。いくつかの突然変異体は、BS149−DMよりもかなり広いP1’及びP2’基質範囲を示す。これは、突然変異M222G及びM222Pを有する場合特にそうである。
実施例5
種々のBS149−DM+M222P+L217突然変異体のP1’及びP2’ポケット基質特異性のマッピング:
種々の突然変異体のP1’及びP2’ポケット基質特異性を調べるために、実施例4に記載されるものと同一の反応及び分析を実施した。種々のBS149−DM+M222P+L217突然変異体のP1’及びP2’ポケット基質特異性が、図5A〜図Lに示されている。
結論:図5A〜図Lから明らかなように、位置L217にP1’突然変異を有するBS149−DM+M222P突然変異体のP1’及びP2’基質範囲は、BS149−DM+M222Pのものとは明確に異なり、これは、種々の個々のペプチド配列にとって有利であり得る。いくつかの突然変異体は、BS149−DMよりもかなり広いP1’及びP2’基質範囲を示す。これは、突然変異L217G及びL217Hを有する場合特にそうである。いくつかの突然変異体は、特定の個々の基質について著しく改善された活性を示す。例えば、突然変異BS149−DM+M222P+L217N、E、G、Y、F又はHのP1’ポケット中のPheについての改善された活性。突然変異体BS149−DM+M222P+L217Hはまた、P1’ポケット中のAsnについてかなり増大された活性を示す。突然変異体BS149−DM+M222P+L217E及びAは、P1’ポケット中のLeu、Ile及びValについて改善された活性を有する。突然変異体BS149−DM+M222P+L217T及びSは、P1’ポケット中のAspについて改善された活性を有する。
実施例6
種々のBS149−DM+M222G+L217突然変異体のP1’ポケット基質特異性のマッピング:
種々の突然変異体のP1’ポケット基質特異性を調べるために、実施例4に記載されるものと同一の反応及び分析を実施した。種々のBS149−DM+M222G+L217突然変異体のP1’ポケット基質特異性が、図6A〜図Fに示されている。
結論:図6A〜図Fから明らかなように、位置L217にP1’突然変異を有するBS149−DM+M222G突然変異体のP1’基質範囲は、BS149−DM+M222Gのものとは明確に異なり、これは、種々の個々のペプチド配列にとって有利であり得る。いくつかの突然変異体は、BS149−DMよりもかなり広いP1’基質範囲を示す。これは、突然変異L217G及びL217Fを有する場合特にそうである。いくつかの突然変異体は、特定の個々の基質について著しく改善された活性を示す。例えば、突然変異BS149−DM+M222G+L217N、E、G、Y、F、I又はHのP1’ポケット中のPheについての改善された活性。突然変異体BS149−DM+M222G+L217Fはまた、P1’ポケット中のAsnについてかなり増大した活性を示す。突然変異体BS149−DM+M222G+L217F、G、A及びYは、P1’ポケット中のLeu、Ile及びValについて改善された活性を有する。突然変異体BS149−DM+M222G+L217R、T及びSは、P1’ポケット中のAspについて改善された活性を有する。
実施例7
BS149−DM+M222G+I107V突然変異体のP1’、P2’及びP4ポケット基質特異性のマッピング:
BS149−DM+M222G+I107VのP1’及びP2’ポケット基質特異性を調べるために、実施例4に記載されるものと同一の反応及び分析を実施した。BS149−DM+M222G+I107V突然変異体のP1’及びP2’ポケット基質特異性は、図67A及びBにそれぞれ示されている。BS149−DM+M222G+I107VのP4ポケット基質特異性を調べるために、実施例3に記載されるものと同一の反応及び分析を実施した。BS149−DM+M222G+I107V突然変異体のP4ポケット基質特異性は、図7Cに示されている。
結論:図7A〜図Cから明らかなように、BS149−DM+M222G+I107V突然変異体のP1’及びP2’基質範囲並びにP4基質範囲は、BS149−DMと比較して広い。基質の幅広さが、BS149−DM+M222G突然変異体と同等であるが、S/H比が大幅に高いので(実施例1を参照のこと)、P1’及びP2’ポケットの有利な突然変異(すなわち、M222G)及びP4ポケットの有利な突然変異(すなわち、I107V)は、成功裏に組み合され得ることは明確である。
実施例8
種々のN−アセチル保護されたオリゴペプチドC末端Cam−エステルアシルドナーを使用する酵素的カップリング反応
ペプチドライゲーション反応を、15μMのBS149−DM、10mMのペプチドC末端Cam−エステル(Ac−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−OCam.TFA、Ac−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−OCam.TFA、Ac−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−OCam.TFA又はAc−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−OCam.TFA)及び15mMのジペプチドC末端アミド(H−Ala−Phe−NH)を含有する100mMのトリシンバッファー(pH8.0)中、25℃で実施した。180分後、反応混合物をLC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたC末端Cam−エステル及び残存するCam−エステルピークが積分された。種々の反応のS/H比は、指定の反応時間内の、加水分解されたC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される。
Figure 2017531040
結論:種々の長さのオリゴペプチドアシルドナーを使用できる。S/H比は、オリゴペプチドアシルドナーの長さにつれて増大する。
実施例9
種々のオリゴペプチドC末端アミド求核試薬を使用する酵素的カップリング反応:
ペプチドライゲーション反応を、15μMのBS149−DM、1mMペンタペプチドC末端Cam−エステル(Ac−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−OCam)及び3mMペプチドアミン求核試薬(H−Ala−Phe−NH、H−Ala−Phe−Ala−NH又はH−Ala−Phe−Ala−Tyr−NH)を含有する100mMのトリシンバッファー(pH8.0)中、25℃で実施した。60分後、反応混合物をLC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分された。種々の反応のS/H比は、指定の反応時間内の、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される。
Figure 2017531040
結論:種々の長さのオリゴペプチド求核試薬を使用できる。S/H比は、オリゴペプチド求核試薬の長さにつれて増大する。
実施例10
BS149−DM+M222G突然変異体のS/H比に対するpHの効果:
BS149−DM+M222G突然変異体のS/H比に対するpHの効果を調べるために、以下の標準反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μL水中の、0.01mmol H−Ala−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1.2mLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(1M、pH7.0〜8.8)800μL又はトリシンバッファー(1M、pH7.9〜8.9)又は炭酸バッファー(1M、pH9.2〜10.6)を添加した。この混合物に、酵素5.5μgを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、MSA50μLを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分され、S/H比は、指定の反応時間内の、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される、図8を参照のこと。
結論:BS149−DM+M222GのS/H比は、pHに応じて変わり、pH8とpH9の間に明確な最適pHがあるが、オリゴペプチドの溶解度及び安定性特性に応じてより低い又はより高いpHも使用できる。
実施例11
BS149−DM+M222GのS/H比に対するアシルドナー及び求核試薬の濃度の効果:
突然変異体BS149−DM+M222GのS/H比に対する基質濃度の効果を調べるために、以下の反応を実施した。150μLの水中の、トリペプチドC末端アミドの保存溶液(12.9mgのH−Glu−Leu−Arg−NH.2TFA又は11.7mgのH−Ala−Leu−Arg−NH.2TFA)及びC末端ペンタペプチドCam−エステル(4.2mgのAc−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)を調製した。5.1μLのNaOH(水中の32重量%)を用いて、混合物を中性pHにした。種々の濃度の基質を用いて反応混合物を調製するために、上記の保存溶液のうちの1種の10μLを、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000及び10000μLのリン酸バッファー(1M、pH8.5)を用いて希釈した。これらの反応混合物に、11μgのBS149−DM+M222Gを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、MSA50μLを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分され、S/H比は、指定の反応時間内の、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される、図9A及び図9Bを参照のこと。
結論:S/H比は、基質濃度に応じて変わる。酵素に対する求核試薬の親和性に応じて、並びにオリゴペプチドの溶解度及び安定性特性に応じて、個々の基質各々の最適基質濃度がある。
実施例12
BS149−DM+M222Gを使用した場合のS/H比に対するアシルドナーの添加の効果:
突然変異体BS149−DM+M222GのS/H比に対するアシルドナーの添加の効果を調べるために、以下の2つの反応を実施した。二重で、トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中の、0.01mmol H−Ala−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及び5.5μgのBS149−DM+M222Gに、リン酸バッファー(100mM、pH8.0)800μLを添加した。これらの混合物のうち一方に、ペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1.2mLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。その他の混合物に、ペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1.2mLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLを、反応混合物を室温で振盪しながら(150rpm)、毎分3.5μLを少量ずつ添加した。30分後、両反応混合物のアリコート550μLを取り出し、50μLのMSAを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。両反応について、ペンタペプチドC末端Cam−エステル出発材料の変換は100%であった。生成物及び加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分され、S/H比は、指定の反応時間内の、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される。すべてのアシルドナーがt=0で添加される反応のS/H比は、2.45であり、アシルドナーが毎分添加される反応のS/H比は、2.73であった。
結論:オリゴペプチドC末端Cam−エステルをタイミング良く添加することによって、S/H比が改善され得る。
実施例13
種々の酵素を使用するオリゴペプチドC末端Camエステルの環化:
以下の実験を実施して、オリゴペプチドC末端Cam−エステルの環化のための、スブチリガーゼ、BS149−DM及びBS149−DM+M222GのS/H比を調べた。
5mg/mLジチオトレイトールを含有する、N末端遊離アミンを有するオリゴペプチドC末端Cam−エステルの保存溶液(1mLの水中の、0.01mmol H−Ala−Cys−Lys−Asn−Gly−Gln−Thr−Asn−Cys−Tyr−Gln−Ser−Tyr−OCam.2TFA)100μLに、リン酸バッファー(100mM、pH8.0)800μLを添加した。この混合物に、酵素5.5μgを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、500μLのMSA/水(1/99、v/v)を用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたC末端Camエステル及び残存するCam−エステル出発材料ピークが積分され、種々の酵素のS/H比は、指定の反応時間内の、加水分解されたC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される、図10を参照のこと。
結論:明らかに、ペプチド環化のためにも、BS149−DMは、スブチリガーゼと比較して改善されたS/H比を有する。BS−149−DM+M222G突然変異体は、さらに高いS/H比を有する。
実施例14
BS149−DM+M222Gを使用するオリゴペプチドC末端Cam−エステルの環化の際のS/H比に対するpHの効果:
オリゴペプチドC末端Cam−エステルの環化の際のBS149−DM+M222GのS/H比に対するpHの効果を調べるために、以下の標準反応を実施した。5mg/mLジチオトレイトールを含有する、N末端遊離アミンを有するトリデカペプチドC末端Cam−エステルの保存溶液(1mLの水中の、0.01mmol H−Ala−Cys−Lys−Asn−Gly−Gln−Thr−Asn−Cys−Tyr−Gln−Ser−Tyr−OCam.2TFA)100μLに、リン酸バッファー(1M、pH5、6、7、8及び9)800μLを添加した。この混合物に、5.5μgのBS149−DM+M222Gを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、50μLのMSAを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたC末端Cam−エステル及び残存するC末端Cam−エステル出発材料ピークが積分され、S/H比は、指定の反応時間内の、加水分解されたC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される、図11を参照のこと。
結論:酵素的オリゴペプチド環化に使用されるBS149−DM+M222GのS/H比は、酵素的オリゴペプチド断片縮合についてよりもより少ない程度にではあるが、pHに応じて変わる。
実施例15
10個を超えるアミノ酸長のオリゴペプチドを用いる断片縮合:
水溶液中での、より長いオリゴペプチドを用いる酵素的断片縮合が実現可能であるか否かを調べるために、以下の標準反応を実施した。デカペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中の、0.01mmol H−Ala−Leu−Met−Lys−Tyr−Asn−Ser−Thr−Glu−Val−NH.2TFA)100μL及びトリデカペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1.2mLの水+1mLのDMF中の、0.01mmol Fmoc−His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−OCam.2TFA)200μLの混合物に、リン酸バッファー(1M、pH8.0)800μLを添加した。この混合物に、5.5μgのBS149−DM+M222Gを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、50μLのMSAを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたC末端Cam−エステル及び残存するC末端Cam−エステルピークが積分された。指定の反応時間内の、生成物(Fmoc−His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Ala−Leu−Met−Lys−Tyr−Asn−Ser−Thr−Glu−Val−NH)の量は、68面積%であった。
結論:より長いペプチドを用いる断片縮合は十分に実現可能であった。
実施例16
N又はC末端保護基を有さないオリゴペプチドを使用する断片縮合:
N又はC末端保護基を有さない酵素的断片縮合が、相当な副生成物の形成を伴わずに実現可能であるか否かを調べるために、以下の標準反応を実施した。トリペプチドC末端カルボン酸保存溶液(300μLの水中、0.01mmol H−Ala−Leu−Arg−OH.2TFA)100μL及びN末端遊離アミンペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1.2mLの水中の、0.01mmol H−His−Ala−Glu−Gly−Thr−OCam.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(1M、pH8.0)800μLを添加した。この混合物に、5.5μgのBS149−DM+M222Gを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、50μLのMSAを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分された。指定の反応時間内の、生成物(H−His−Ala−Glu−Gly−Thr−Ala−Leu−Arg−OH)の量は、74面積%であった。副生成物は観察されず、これは、H−Ala−Leu−Arg−OH.2TFAのC末端カルボン酸官能基でも、H−His−Ala−Glu−Gly−Thr−OCamのN末端アミン官能基でも副反応がおこらなかったことを示した。
結論:N又はC末端保護基を使用せずに、いくつかのオリゴペプチド配列が成功裏に酵素的にライゲーションされ得る。
実施例17
オリゴペプチドC末端Cam−Xxx−NH又はCam−Xxx−OHエステルを使用する断片縮合:
Cam−Xxx−NH又はCam−Xxx−OHエステルを用いる酵素的断片縮合が実現可能であるか否かを調べるために、以下の標準反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中の、0.01mmol H−Ala−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1.2mLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam−Leu−OH.TFA、Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam−Leu−NH.TFA、Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam−Lys−NH.2TFA又はAc−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam−Glu−NH.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(1M、pH8.0)800μLを添加した。これら4種の混合物の各々に、5.5μgのBS149−DM+M222Gを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、50μLのMSAを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するテトラペプチドC末端Cam−エステルピークが積分された。指定の反応時間内の、生成物(Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−Ala−Leu−Arg−NH)の量は、Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam−Leu−OHについて86面積%、Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam−Leu−NHについて83面積%、Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam−Lys−NHについて78面積%及びAc−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam−Glu−NHについて83面積%であった。
結論:この実施例は、Cam−Xxx−NH及びCam−Xxx−OHエステルが、酵素的オリゴペプチド断片縮合のために成功裏に使用され得ることを示す。
実施例18
C末端オリゴペプチドチオエステル及びBS149DM+I107V+M222Gを使用する断片縮合:
C末端チオエステルを使用する酵素的オリゴペプチド断片縮合が実現可能であるか否かを調べるために、以下の標準反応を実施した。2.5mMペンタペプチドC末端チオエステル(Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-SBzl)、25mMジペプチドC末端アミド(H−Gly−Phe−NH)及び5μgのBS149−DM+L107V+M222Gを含有する、トリシンバッファー(100mM、pH7.5)1mLを25℃で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、50μLのMSAを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたテトラペプチドC末端チオエステル及び残存するテトラペプチドC末端チオエステルピークが積分された。指定の反応時間内の、生成物(Suc−Ala−Ala−Pro−Phe−Gly−Phe−NH)の量は、85面積%であった。
結論:この実施例は、オリゴペプチドC末端チオエステルが、酵素的オリゴペプチド断片縮合のために成功裏に使用され得ることを示す。
実施例19
C末端オリゴペプチドアルキルエステル及びBS149−DM+I107V+M222Gを使用する断片縮合:
C末端アルキルエステルを使用する酵素的オリゴペプチド断片縮合が実現可能であるか否かを調べるために、以下の標準反応を実施した。2.5mMのペンタペプチドC末端アルキルエステル(Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OTFE(TFE=2,2,2−トリフルオロエチル))、25mMトリペプチドC末端アミド(H−Ala−Leu−Arg−NH)及び5μgのBS149−DM+I107V+M222Gを含有するトリシンバッファー(100mM、pH7.5)1mLを25℃で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート550μLを取り出し、50μLのMSAを用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端アルキルエステル及び残存するペンタペプチドアルキルエステルピークが積分された。指定の反応時間内の、生成物(Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−Ala−Leu−Arg−NH)の量は、55面積%であった。
結論:この実施例は、オリゴペプチドC末端アルキルエステルが、酵素的オリゴペプチド断片縮合のために成功裏に使用され得ることを示す。
実施例20
部分側鎖保護を使用する酵素的オリゴペプチド断片縮合:
部分P1’側鎖保護が有益であり得ることを実証するために、以下の反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中の、0.01mmol H−Asp−Leu−Arg−NH.2TFA又は0.01mmol H−Asp(OcHex)−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1200μLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(100mM、pH8.0)800μLを添加した。この混合物に、5.5μgのBS149−DM+M222Gを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート500μLを取り出し、500μLのMSA/水(1/99、v/v)を用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペプタペプチドCam−エステルピークが積分された。指定の反応時間内の、非保護基質(H−Asp−Leu−Arg−NH)を使用する生成物の量は、18面積%であり、指定の反応時間内の、部分側鎖保護された基質(H−Asp(OcHex)−Leu−Arg−NH)を使用する生成物の量は、73面積%であった。
部分P2’側鎖保護が有益であり得ることを実証するために、以下の反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中の、0.01mmol H−Asp−Glu(OBn)−Arg−NH.2TFA又は0.01mmol H−Asp−Glu−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1200μLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(100mM、pH8.0)800μLを添加した。この混合物に、5.5μgのBS149−DM+M222Gを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート500μLを取り出し、500μLのMSA/水(1/99、v/v)を用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペプタペプチドCam−エステルピークが積分された。指定の反応時間内の、非保護基質(H−Asp−Glu−Arg−NH)を使用する生成物の量は、15面積%であり、指定の反応時間内の、部分側鎖保護された基質(H−Asp−Glu(OBn)−Arg−NH)を使用する生成物の量は、58面積%であった。
部分P1側鎖保護が有益であり得ることを実証するために、以下の反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(0.01mmol H−Asp−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1200μLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Leu−Lys−OCam.TFA又は0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Leu−Lys(Alloc)−OCam)100μLの混合物に、800μLのリン酸バッファー(100mM、pH8.0)を添加した。この混合物に、5.5μgのBS149−DM+M222Gを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート500μLを取り出し、500μLのMSA/水(1/99、v/v)を用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペプタペプチドCam−エステルピークが積分された。指定の反応時間内の、非保護基質(Ac−Asp−Phe−Ser−Leu−Lys−OCam.TFA)を使用する生成物の量は、5面積%であり、部分側鎖保護された基質(Ac−Asp−Phe−Ser−Leu−Lys(Alloc)−OCam)を使用する生成物の量は、84面積%であった。
部分P4側鎖保護が有益であり得ることを実証するために、以下の反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(0.01mmol H−Ala−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及びテトラペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1200μLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA又は0.01mmol Ac−Asp(OBn)−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(100mM、pH8.0) 800μLを添加した。この混合物に、5.5μgのBS149−DM+M222Gを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート500μLを取り出し、500μLのMSA/水(1/99、v/v)を用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたテトラペプチドC末端Cam−エステル及び残存するテトラペプチドCam−エステルピークが積分された。指定の反応時間内の、非保護基質(mmol Ac−Asp−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)を使用する生成物の量は、32面積%であり、部分側鎖保護された基質(Ac−Asp(OBn)−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)を使用する生成物の量は、78面積%であった。
結論:この実施例は、部分側鎖保護が、酵素的オリゴペプチド断片縮合の収率及び/又は反応速度を改善し得ることを示す。
実施例21
BS149−DMの熱安定性:
蛍光ベースの熱安定性アッセイを使用して、BS149−DM及びスブチリガーゼの見かけの融解温度を調べた。薄壁96ウェルPCRプレート中で、バッファー(20mMトリシンバッファー、pH7.5)中のタンパク質溶液のサンプル20μL及び金属イオン(10mM)又はEDTA(10mM)を、100倍希釈したSypro Orange(Molecular Probes、Life Technologies、USA)色素5μLと混合した。Optical−Quality Sealing Tapeを用いてプレートを密閉し、CFX96リアルタイムPCRシステム(BioRad、Hercules、CA、USA)中で、1.75℃/分の加熱速度で20〜99℃へ加熱した。蛍光変化は、電荷結合素子(CCD)カメラを用いてモニタリングした。励起及び発光の波長は、それぞれ、490及び575nmであった。精製されたBS149−DMの熱安定性は、上記のように調べた。熱安定性はまた、種々の金属イオン及びキレート化剤の添加後にも調べた、以下の表3を参照のこと。66℃の見かけの遷移温度(Tm)が観察され、酵素BS149−DMは、BS149からの熱安定性を十分に保つことを示した。スブチリガーゼのTm値は、59℃であると決定された。
Figure 2017531040
結論:明確に、BS149−DMは、スブチリガーゼと比較して改善された熱安定性を有する。酵素BS149−DMはまた、その存在下でTm値が事実上影響を受けないままであるので、金属イオン及びキレート化剤に対して耐性である。
実施例22
BS149−DM活性に対する有機溶媒及び種々の添加物の効果:
ペプチドライゲーション反応は、15μMのBS149−DM、1mMのペンタペプチドC末端Cam−エステル(Ac−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−OCam)及び3mMのジペプチドC末端アミド(H−Ala−Phe−NH)を含有する、100mMのトリシンバッファー(pH8.0)中、25℃で実施した。種々の量の金属イオン(10mM)、EDTA(10mM)又は有機溶媒を添加し、60分後、反応混合物をLC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペプタペプチドCam−エステルピークが積分された。BS149−DMの活性は、指定の反応時間内の、生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するCam−エステルの量の合計によって除された、生成物の量及び加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量の合計と定義される。最高活性を有する最高の反応を100%に設定した、表4〜8を参照のこと。
Figure 2017531040
Figure 2017531040
Figure 2017531040
Figure 2017531040
Figure 2017531040
実施例23
His−タグを有する及びHis−タグを有さないBS149−DMを使用する酵素的オリゴペプチド断片カップリング:
種々の酵素の活性及びS/H比を試験するために、以下の2種の標準反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中の、0.01mmol H−Ala−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1200μLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(100mM、pH8.0)800μLを添加した。この混合物に、5.5μgのHis−タグを有するか有さないBS149−DMを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート500μLを取り出し、500μLのMSA/水(1/99、v/v)を用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分された。
His−タグを有する及びHis−タグを有さないBS149−DMのS/H比は、それぞれ、指定の時間内の、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物(合成されたオリゴペプチド)の量と定義される。His−タグを有するBS149のS/H比は、1.91であり、His−タグを有さないBS149のS/H比は、1.98であった。
His−タグを有する及び有さないBS149−DMの活性は、指定の反応時間内の、生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するCam−エステルの量の合計によって除された、生成物の量及び加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量の合計と定義される。His−タグを有するBS149−DMの活性は、97.3%であり、His−タグを有さないBS149−DMの活性は、98.6%であった。
結論:His−タグの存在又は不在は、S/H比及び活性に対して大きな効果を有さない。
実施例24
種々の突然変異を有する配列番号3に対応する酵素のS/H比:
種々の突然変異体の活性及びS/H比を試験するために、以下の標準反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中の、0.01mmol H−Ala−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1200μLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(100mM、pH8.0)800μLを添加した。この混合物に、酵素5.5μgを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート500μLを取り出し、500μLのMSA/水(1/99、v/v)を用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分された。
種々の突然変異体のS/H比は、指定の時間内の、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される(表9を参照のこと)。
Figure 2017531040
結論:明確に、S221C突然変異を有する配列番号3(X=A)に対応するいくつかの酵素は、スブチリガーゼと比較して2倍に増大したS/H比を有する(S/Hスブチリガーゼ=0.9、実施例1を参照のこと)。X=P、G又はAを有する場合には、S/H比は、影響を受けないままである。
実施例25
BS149−DM+M222P+L217H+X225突然変異体のS/H比:
種々の突然変異体の活性及びS/H比を試験するために、以下の標準反応を実施した。トリペプチドC末端アミド保存溶液(300μLの水中の、0.01mmol H−Ser−Leu−Arg−NH.2TFA)100μL及びペンタペプチドC末端Cam−エステル保存溶液(1200μLの水中の、0.01mmol Ac−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam.TFA)100μLの混合物に、リン酸バッファー(100mM、pH8.0)800μLを添加した。この混合物に、酵素5.5μgを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。30分後、反応混合物のアリコート500μLを取り出し、500μLのMSA/水(1/99、v/v)を用いてクエンチし、LC−MSによって分析した。生成物、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステル及び残存するペンタペプチドC末端Cam−エステルピークが積分された。
種々の突然変異体のS/H比は、指定の時間内の、加水分解されたペンタペプチドC末端Cam−エステルの量によって除された、生成物の量と定義される(表10を参照のこと)。
Figure 2017531040
結論:明確に、X225位置の突然変異は、S/H比に対して大きな効果を有する。X=N、D、S、C、G及びAを用いる場合などの多数の突然変異は、素晴らしい効果を有する。X=L、I、V及びTを用いる場合など、いくつかのさらなる酵素は、スブチリガーゼと比較して3倍を超えて増大したS/H比を有する(S/Hスブチリガーゼ=0.9、実施例1を参照のこと)。また、X225のH、Q及びより少ない程度であるがF及びEへの突然変異は、X225がPである野生型酵素を上回る改善を示した。
実施例26
ペンタペプチドの、ヒトインスリンのA鎖のN末端との選択的カップリング
ヒトインスリン(CAS番号11061−68−0)5mg及びAc−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam−Leu−OH.TFA2.5mgを、200μLのDMFに溶解した。その後、リン酸バッファー(1M、pH8.0)200μL及び200μLの、BS149−DM+M222G突然変異体20μgを含有するHOを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。60分後、反応混合物のアリコート100μLを取り出し、500μLのMSA/水(1/99、v/v)を用いてクエンチし、LC−MSによって分析したところ、インスリン出発材料の92%が、単一生成物、すなわち、インスリンA鎖のN末端にカップリングされたAc−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−に変換されたことが示された。
実施例27
ペンタペプチドの、ヒトインスリンのA及びB鎖のN末端とのカップリング
ヒトインスリン(CAS番号11061−68−0)5mg及び5mgのAc−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−OCam−Leu−OH.TFAを、DMF200μLに溶解した。その後、リン酸バッファー(1M、pH8.0)200μL及び200μLの、BS149−DM+M222G+L217F突然変異体55μgを含有するHOを添加し、反応混合物を室温で振盪した(150rpm)。60分後、反応混合物のアリコート100μLを取り出し、500μLのMSA/水(1/99、v/v)を用いてクエンチし、LC−MSによって分析したところ、インスリン出発材料が完全に消費され、3種の生成物ピーク、すなわち、1)インスリンA鎖のN末端にカップリングされたAc−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−(22面積%)、2)インスリンB鎖のN末端にカップリングされたAc−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−(3面積%)及び3)インスリンA及びB鎖の両方のN末端にカップリングされたAc−Asp−Phe−Ser−Lys−Leu−(75面積%)に変換されたことが示された。
配列
配列番号1:スブチリシンBPN’アミノ酸−107〜275をコードする野生型遺伝子
ENA|K02496|K02496.1 B.スブチリシンBPN’バチルス・アミロリケファシエンス
Figure 2017531040
配列番号2:野生型スブチリシンBPN’(成熟)
>SUBT_BACAMスブチリシンBPN’バチルス・アミロリケファシエンス成熟1〜275
Figure 2017531040
配列番号3:Ca2+結合ループの欠失及びS221C及び好ましくは、P225突然変異(P225Xと示される)を有するスブチリシンBPN’変異体
Figure 2017531040
配列番号4:配列番号3と比較して、好ましい突然変異位置を有するスブチリシンBPN’変異体
Figure 2017531040
配列番号5:枯草菌由来スブチリシン(aprE)プロモーター領域(bp1〜197、Takara)、BPN’シグナル配列(bp198〜287)、BPN’プロドメイン(bp288〜518)、成熟BS149−DM、6xHistag、停止コドンを含有する、大腸菌/枯草菌シャトルベクターpBES:Ptl149DM Hisのセグメント。ヌクレオチド1590以降、配列は、Takara製のpBESに従う。
Figure 2017531040
Figure 2017531040
Figure 2017531040
*アミノ酸72〜80(Val-Ala-Ala-Leu-Asn-Asn-Ser-Ile-Gly);GTT GCG GCT CTT AAT AAC TCA ATC GGTのBPN’に関する欠失。

Claims (85)

  1. (オリゴ)ペプチドを酵素的に合成するための方法であって、(a)(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルと(b)N末端非保護アミンを有する(オリゴ)ペプチド求核試薬をカップリングすることを含み、
    ここで、前記カップリングが、水を含む流体中で実施され、
    前記カップリングが、配列番号2又はその相同配列によって表されるスブチリシンBPN’と比較して以下の突然変異:
    − 位置75〜83に対応するアミノ酸の欠失、
    − S221に対応するアミノ酸位置での突然変異であって、S221C又はS221セレノシステインである突然変異、
    − 好ましくは、P225に対応するアミノ酸位置での突然変異
    を含むスブチリシンBPN’変異体又はその相同体によって触媒され、
    前記アミノ酸位置が、配列番号2によって表されるスブチリシンBPN’の前記配列に従って定義される、方法。
  2. 前記S221に対応するアミノ酸位置での突然変異がS221Cである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記スブチリシンBPN’変異体又は相同体が、P225N、P225D、P225S、P225C、P225G、P225A、P225T、P225V、P225I、P225L、P225H及びP225Qからなる群から選択される、P225に対応するアミノ酸位置での突然変異を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記突然変異が、P225N又はP225Dである、請求項3に記載の方法。
  5. 前記突然変異が、P225Sである、請求項3に記載の方法。
  6. 前記突然変異が、P225Cである、請求項3に記載の方法。
  7. 前記突然変異が、P225Gである、請求項3に記載の方法。
  8. 前記突然変異が、P225Aである、請求項3に記載の方法。
  9. 前記突然変異が、P225Tである、請求項3に記載の方法。
  10. 前記突然変異が、P225V、P225I又はP225Lである、請求項3に記載の方法。
  11. 前記(オリゴ)ペプチドC末端エステル若しくはチオエステルのN末端及び/又は前記(オリゴ)ペプチドC末端エステル若しくはチオエステルの1種若しくは複数の側鎖官能基に保護基が付与される、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  12. 前記(オリゴ)ペプチド求核試薬のC末端に保護基が付与され、及び/又は前記(オリゴ)ペプチド求核試薬の1つ若しくは複数の側鎖官能基に保護基が付与される、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  13. 少なくとも12個のアミノ酸の環状(オリゴ)ペプチドを酵素的に合成する方法であって、N末端非保護アミンを有する(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルを、環化ステップに付すことを含み、前記環化が水を含む流体中で実施され、
    ここで、前記環化は、配列番号2又はその相同体配列によって表されるスブチリシンBPN’と比較して以下の突然変異:
    − 位置75〜83に対応するアミノ酸の欠失、
    − S221に対応するアミノ酸位置での突然変異であって、S221C又はS221セレノシステインである突然変異、
    − 好ましくは、P225に対応するアミノ酸位置での突然変異
    を含むスブチリシンBPN’変異体又はその相同体によって触媒され、
    前記アミノ酸位置は、配列番号2によって表されるスブチリシンBPN’の配列に従って定義される、方法。
  14. 前記S221に対応するアミノ酸での突然変異が、S221Cである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記スブチリシンBPN’変異体又は相同体が、P225N、P225D、P225S、P225C、P225G、P225A、P225T、P225V、P225I、P225L、P225H及びP225Qの群から選択される、P225に対応するアミノ酸位置の突然変異を含む、請求項13又は14に記載の方法。
  16. 前記突然変異が、P225N又はP225Dである、請求項15に記載の方法。
  17. 前記突然変異が、P225Sである、請求項15に記載の方法。
  18. 前記突然変異が、P225Cである、請求項15に記載の方法。
  19. 前記突然変異が、P225Gである、請求項15に記載の方法。
  20. 前記突然変異が、P225Aである、請求項15に記載の方法。
  21. 前記突然変異が、P225Tである、請求項15に記載の方法。
  22. 前記突然変異が、P225V、P225I又はP225Lである、請求項15に記載の方法。
  23. 前記(オリゴ)ペプチドC末端エステル又はチオエステルの1つ又は複数の側鎖官能基に、保護基が付与される、請求項13から22のいずれかに記載の方法。
  24. 前記スブチリシンBPN’変異体又はその相同体が、配列番号2のQ2、S3、P5、S9、I31、K43、M50、A73、E156、G166、G169、S188、Q206、N212、N218、T254又はQ271に対応するアミノ酸位置の突然変異の群から選択される1つ又は複数の突然変異を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
  25. 前記の1つ又は複数の突然変異が、群Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271Eから選択される、請求項24に記載の方法。
  26. 前記スブチリシンBPN’変異体又はその相同体が、Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271Eの群から選択される、少なくとも4、好ましくは、少なくとも6、より好ましくは、少なくとも8、より好ましくは、少なくとも12の前記突然変異を含む、請求項25に記載の方法。
  27. 前記スブチリシンBPN’変異体又はその相同体が、突然変異Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271Eを含む、請求項26に記載の方法。
  28. 前記スブチリシンBPN’変異体又はその相同体が、配列番号2のN62、G100、S125、L126、G127、P129、N155、Y217、N218又はM222に対応する位置のアミノ酸での突然変異の群から選択される1つ又は複数の突然変異を含む、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  29. 前記スブチリシンBPN’変異体又はその相同体が、配列番号2のM222に対応する位置に突然変異を含有する、請求項28に記載の方法。
  30. 前記M222に対応する位置の前記突然変異が、M222G、M222P、M222N、M222E、M222Q又はM222A、好ましくは、M222G又はM222Pである、請求項29に記載の方法。
  31. 前記スブチリシンBPN’変異体又はその相同体が、配列番号2のY217に対応するアミノ酸位置に突然変異を含む、請求項28から30のいずれかに記載の方法。
  32. 前記Y217の突然変異が、Y217L、Y217N、Y217E、Y217G、Y217F、Y217S、Y217A又はY217Hである、請求項31に記載の方法。
  33. 酵素、特に、前記スブチリシンBPN’変異体又はその相同体が、配列番号2のY104、I107、L126、S101、G102、G127、G128、L135又はP168に対応するアミノ酸位置の突然変異の群から選択される少なくとも1つの突然変異を含む、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  34. 前記突然変異が、Y104、I107及びL135の群から、好ましくは、Y104F、Y104S、I107V、I107A、L135N、L135S、L135D又はL135Aの群から選択される、請求項33に記載の方法。
  35. 前記(オリゴ)ペプチドC末端エステルが、式ペプチド−(C=O)O−CX−C(=O)N−Rによって定義され、各Xは独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Rは、水素原子又はアルキル基を表し、Rは、水素原子若しくはアルキル基、又はアミノ酸の側鎖官能基において若しくはアミノ酸の側鎖官能基のうちの1つ若しくは複数において任意選択により保護された、C末端カルボキシアミド若しくはカルボン酸官能基を有するアミノ酸若しくはペプチド残基を表す、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  36. 各Xが、水素原子を表す、請求項35に記載の方法。
  37. 及びRの両方が、水素原子を表す、請求項35又は36に記載の方法。
  38. が、水素原子を表し、Rが、アミノ酸の側鎖官能基において若しくはアミノ酸の側鎖官能基のうちの1つ若しくは複数において任意選択により保護されていてもよい、C末端カルボキシアミド又はカルボン酸官能基を有するアミノ酸又はペプチド残基を表す、請求項に35又は36に記載の方法。
  39. 前記(オリゴ)ペプチドエステルのC末端エステル基が、固相と結合している、請求項35から38のいずれかに記載の方法。
  40. 合成される前記(オリゴ)ペプチドが、最大200個のアミノ酸単位から構成されるオリゴペプチド、特に、5〜100個のアミノ酸単位から構成されるオリゴペプチド、特に、10〜50個のアミノ酸単位から構成されるオリゴペプチドである、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  41. 合成される前記(オリゴ)ペプチドが、200個超のアミノ酸単位、特に、201〜35000個のアミノ酸単位、さらに特に、201〜5000個のアミノ酸単位、好ましくは、201〜1000個のアミノ酸単位から構成されるペプチドである、請求項1から39のいずれかに記載の方法。
  42. 前記(オリゴ)ペプチドがタンパク質である、前記の請求項のいずれかに記載の方法。
  43. 前記(オリゴ)ペプチドが、二次及び三次タンパク質構造を含まない、請求項1から41のいずれかに記載の方法。
  44. 配列番号2又はその相同体配列によって表されるスブチリシンBPN’と比較して以下の突然変異:
    − 位置75〜83に対応するアミノ酸の欠失、
    − S221に対応するアミノ酸位置での突然変異であって、S221C又はS221セレノシステインである突然変異、
    − 好ましくは、P225に対応するアミノ酸位置での突然変異
    を含むスブチリシンBPN変異体又はその相同体である酵素であって、
    前記アミノ酸位置が、配列番号2によって表されるスブチリシンBPN’の配列に従って定義される、酵素。
  45. 前記S221に対応するアミノ酸位置の突然変異が、S221Cである、請求項44に記載の酵素。
  46. 前記スブチリシンBPN’変異体又は相同体が、P225N、P225D、P225S、P225C、P225G、P225A、P225T、P225V、P225I、P225L、P225H及びP225Qの群から選択される、P225に対応するアミノ酸位置での突然変異を含む、請求項44又は45に記載の酵素。
  47. 前記突然変異が、P225N又はP225Dである、請求項46に記載の酵素。
  48. 前記突然変異が、P225Sである、請求項46に記載の酵素。
  49. 前記突然変異が、P225Cである、請求項46に記載の酵素。
  50. 前記突然変異が、P225Gである、請求項46に記載の酵素。
  51. 前記突然変異が、P225Aである、請求項46に記載の酵素。
  52. 前記突然変異が、P225Tである、請求項46に記載の酵素。
  53. 前記突然変異が、P225V、P225I又はP225Lである、請求項46に記載の酵素。
  54. 配列番号2のQ2、S3、P5、S9、I31、K43、M50、A73、E156、G166、G169、S188、Q206、N212、N218、T254及びQ271に対応するアミノ酸位置の突然変異の群から選択される1つ又は複数の突然変異を含む、請求項44から53のいずれかに記載の酵素。
  55. N218に対応するアミノ酸位置に突然変異を含む、請求項54に記載の酵素
  56. M50に対応するアミノ酸位置に突然変異を含む、請求項54又は55に記載の酵素。
  57. Q2に対応するアミノ酸位置に突然変異を含む、請求項54から56のいずれかに記載の酵素。
  58. A73に対応するアミノ位置に突然変異を含む、請求項54から57のいずれかに記載の酵素。
  59. P5に対応するアミノ位置に突然変異を含む、請求項54から58のいずれかに記載の酵素。
  60. G166に対応するアミノ位置に突然変異を含む、請求項54から59のいずれかに記載の酵素。
  61. 前記の1つ又は複数の突然変異が、群Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271Eから選択される、請求項54から60のいずれかに記載の酵素。
  62. N218及びM50に対応する位置のいずれにも突然変異を含み、前記突然変異が、好ましくは、N218S及びM50Fである、請求項54から61のいずれかに記載の酵素。
  63. S3C及びQ206Cに対応するアミノ酸位置に突然変異を含む(ここで、位置3及び位置206に対応する位置のシステインが、二硫黄(disulphur)橋を形成する)、請求項54から62のいずれかに記載の酵素。
  64. N218、M50、Q2、A73及びP5に対応する位置の各々に突然変異をさらに含み、前記突然変異が、好ましくは、N218S、M50F、Q2K、A73L、P5Sである、請求項44から63のいずれかに記載の酵素。
  65. Q2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271Eの群から選択される、少なくとも6、好ましくは、少なくとも8、より好ましくは、少なくとも12の前記突然変異を含む、請求項54から64のいずれかに記載の酵素。
  66. 配列番号2のQ2K、S3C、P5S、S9A、I31L、K43N、M50F、A73L、E156S、G166S、G169A、S188P、Q206C、N212G、N218S、T254A及びQ271Eに対応する突然変異を含む、請求項65に記載の酵素。
  67. 配列番号2のN62、G100、S125、L126、G127、P129、N155、Y217、N218又はM222に対応するアミノ酸位置に1つ又は複数の突然変異を含む、請求項44から66のいずれかに記載の酵素。
  68. 配列番号2のM222に対応する位置に突然変異を含む、請求項67に記載の酵素。
  69. M222に対応する位置の前記突然変異が、M222G、M222P、M222N、M222E、M222Q又はM222A、好ましくは、M222G又はM222Pである、請求項68に記載の酵素。
  70. 配列番号2のY217に対応するアミノ酸位置に突然変異を含む、請求項44から69のいずれかに記載の酵素。
  71. Y217の突然変異が、Y217L、Y217N、Y217E、Y217G、Y217F、Y217A、Y217S又はY217Hである、請求項70に記載の酵素。
  72. Y217の突然変異が、Y217F、Y217G又はY217Hである、請求項71に記載の酵素。
  73. M222及びY217に対応するアミノ酸位置に突然変異を含み、前記突然変異が
    − M222P及びY217H、
    − M222P及びY217G、
    − M222G及びY217F、又は
    − M222G及びY217G
    である、請求項72に記載の酵素。
  74. 前記突然変異が、M222G及びY217Fである、請求項73に記載の酵素。
  75. 配列番号2のY104、I107、L126、S101、G102、G127、G128、L135及びP168に対応するアミノ酸位置の突然変異の群から選択される少なくとも1つの突然変異を含む、請求項44から74のいずれかに記載の酵素。
  76. 前記突然変異が、Y104F、Y104S、I107V、I107A、L135N、L135S、L135D又はL135Aの群から選択される、請求項75に記載の酵素。
  77. 50〜100%、好ましくは、少なくとも70%の、より好ましくは、少なくとも80%の、より好ましくは、少なくとも85%の、特に、少なくとも90%の、さらに特に、少なくとも95%の配列番号3、4又は5との配列同一性を有する、請求項44から76のいずれかに記載の酵素。
  78. 請求項44から77のいずれかに記載の酵素を調製するための組換え方法であって、
    a)酵素をコードする遺伝子を機能的に発現する組換え宿主細胞を提供することと、
    b)前記宿主細胞を、酵素的に活性な酵素の発現を提供する条件下で培養することと、
    c)前記微生物宿主から発現された酵素を回収することと
    を含む組換え方法。
  79. 請求項44から78のいずれかに記載の酵素をコードする配列を含む組換えポリヌクレオチド。
  80. 請求項79に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
  81. 請求項44から77のいずれかに記載の酵素の、触媒としての使用。
  82. 酵素が、ペプチド合成における触媒として使用される、請求項81に記載の使用。
  83. ペプチドが、オリゴペプチドである、請求項82に記載の使用。
  84. ペプチドが、少なくとも201個のアミノ酸単位から構成される、請求項82に記載の使用。
  85. ペプチドが、タンパク質である、請求項82から84のいずれかに記載の使用。
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