本発明の文脈において、コンジュゲーション反応は、一方では、官能基F1を含有する生体分子(BOI)、及び他方では、反応性基Q1を含有する標的分子(MOI)、又は本明細書において定義されている通りの「リンカー−コンジュゲート」を伴い、ここで、Q1はF1と反応することで、バイオコンジュゲートにおけるBOI及びMOIを繋ぐ接続基を形成する。本明細書において、反応性基Q1は、リンカーを介してMOIに繋がれ、上記リンカーは、式(1)に従ったスルファミド部分を含む。
反応性基Q1は、式(1)の部分のいずれの端部に結合していてもよく、この場合、MOIは、式(1)の部分の反対端部に結合している。一実施形態において、反応性基Q1は、カルボニル端部を介して式(1)の部分に結合しており、MOIは、式(1)の部分のスルファミド端部を介して結合している。一実施形態において、反応性基Q1は、スルファミド端部を介して式(1)の部分に結合しており、MOIは、式(1)の部分のカルボニル端部を介して結合している。
定義
「含むこと」という動詞、及びそれの活用は、本明細書及び請求項において使用される場合、上記単語に追従する項目が含まれるが、具体的に記述されてない項目が除かれないことを意味する非限定的な意味において使用される。
加えて、不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、要素のうちの1つ及び1つだけがあることを文脈が明確に必要としていない限り、要素のうちの1つ超が存在するという可能性を除かない。不定冠詞「a」又は「an」は、したがって「少なくとも1つ」を通常意味する。
本明細書及び請求項に開示されている化合物は、1つ又は複数の不斉中心を含むことができ、上記化合物の異なるジアステレオマー及び/又はエナンチオマーが存在し得る。本明細書及び請求項における任意の化合物の記載は、別段に明記されていない限り、全てのジアステレオマー及びその混合物が含まれると意味される。加えて、本明細書及び請求項における任意の化合物の記載は、別段に明記されていない限り、個々のエナンチオマー、並びにエナンチオマーの任意の混合物、ラセミ又はそうでないものの両方が含まれると意味される。化合物の構造が、特定のエナンチオマーとして図示されている場合、本出願の発明は、その特定のエナンチオマーに限定されないと理解されるべきである。
化合物は、異なる互変異性体形態であることがある。本発明による化合物は、別段に明記されていない限り、全ての互変異性体形態が含まれると意味される。化合物の構造が特定の互変異性体として図示されている場合、本出願の発明は、その特定の互変異性体に限定されないと理解されるべきである。
本明細書及び請求項に開示されている化合物は、エキソ及びエンドジアステレオ異性体としてさらに存在することがある。別段に明記されていない限り、本明細書及び請求項における任意の化合物の記載は、化合物個々のエキソ及び個々のエンドジアステレオ異性体の両方、並びにその混合物が含まれると意味される。化合物の構造が特定のエンド又はエキソジアステレオマーとして図示されている場合、本出願の発明は、その特定のエンド又はエキソジアステレオマーに限定されないと意味される。
さらに、本明細書及び請求項に開示されている化合物は、シス及びトランス異性体として存在することがある。別段に明記されていない限り、本明細書及び請求項における任意の化合物の記載は、化合物の個々のシス及び個々のトランス異性体の両方、並びにその混合物が含まれると意味される。例として、化合物の構造がシス異性体として図示されている場合、対応するトランス異性体又はシス及びトランス異性体の混合物は、本出願の発明から除かれないと理解されるべきである。化合物の構造が特定のシス又はトランス異性体として図示されている場合、本出願の発明は、その特定のシス又はトランス異性体に限定されないと理解されるべきである。
非置換アルキル基は一般式CnH2n+1を有し、直鎖又は分枝であり得る。任意選択で、アルキル基は、本文書においてさらに特定されている1個又は複数の置換基によって置換されている。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、t−ブチル、1−ヘキシル、1−ドデシルなどが挙げられる。
シクロアルキル基は環状アルキル基である。非置換シクロアルキル基は少なくとも3個の炭素原子を含み、一般式CnH2n−1を有する。任意選択で、シクロアルキル基は、本文書においてさらに特定されている1個又は複数の置換基によって置換されている。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
アルケニル基は、1個又は複数の炭素−炭素二重結合を含み、直鎖又は分枝であり得る。1個のC−C二重結合を含む非置換アルケニル基は、一般式CnH2n−1を有する。2個のC−C二重結合を含む非置換アルケニル基は、一般式CnH2n−3を有する。アルケニル基は、末端炭素−炭素二重結合及び/又は内部炭素−炭素二重結合を含むことがある。末端アルケニル基は、炭素−炭素二重結合が炭素鎖の末端位置に位置するアルケニル基である。アルケニル基は、2個以上の炭素−炭素二重結合を含むこともある。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、t−ブテニル、1,3−ブタジエニル、1,3−ペンタジエニルなどが挙げられる。別段に明記されていない限り、アルケニル基は、下記に定義されている通りの1個又は複数の独立して選択される置換基で任意選択で置換されていてもよい。別段に明記されていない限り、アルケニル基は、O、N及びSからなる群から独立して選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されることがある。
アルキニル基は、1個又は複数の炭素−炭素三重結合を含み、直鎖又は分枝であり得る。1個のC−C三重結合を含む非置換アルキニル基は、一般式CnH2n−3を有する。アルキニル基は、末端炭素−炭素三重結合及び/又は内部炭素−炭素三重結合を含むことがある。末端アルキニル基は、炭素−炭素三重結合が炭素鎖の末端位置に位置するアルキニル基である。アルキニル基は、2個以上の炭素−炭素三重結合を含むこともある。別段に明記されていない限り、アルキニル基は、下記に定義されている通りの1個又は複数の独立して選択される置換基で任意選択で置換されていてもよい。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、イソプロピニル、t−ブチニルなどが挙げられる。別段に明記されていない限り、アルキニル基は、O、N及びSからなる群から独立して選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されていることがある。
アリール基は、6〜12個の炭素原子を含み、単環式及び二環式構造が含まれ得る。任意選択で、アリール基は、本文書においてさらに特定されている1個又は複数の置換基によって置換されていてもよい。アリール基の例はフェニル及びナフチルである。
アリールアルキル基及びアルキルアリール基は、少なくとも7個の炭素原子を含み、単環式及び二環式構造が含まれ得る。任意選択で、アリールアルキル基及びアルキルアリールは、本文書においてさらに特定されている1個又は複数の置換基によって置換されていてもよい。アリールアルキル基は例えばベンジルである。アルキルアリール基は例えば4−t−ブチルフェニルである。
ヘテロアリール基は、少なくとも2個の炭素原子(即ち、少なくともC2)及び1個又は複数のヘテロ原子N、O、P又はSを含む。ヘテロアリール基は、単環式又は二環式構造を有することがある。任意選択で、ヘテロアリール基は、本文書においてさらに特定されている1個又は複数の置換基によって置換されていてもよい。適当なヘテロアリール基の例としては、ピリジニル、キノリニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピロリル、フラニル、トリアゾリル、ベンゾフラニル、インドリル、プリニル、ベンゾオキサゾリル、チエニル、ホスホリル及びオキサゾリルが挙げられる。
ヘテロアリールアルキル基及びアルキルヘテロアリール基は、少なくとも3個の炭素原子(即ち、少なくともC3)を含み、単環式及び二環式構造が含まれ得る。任意選択で、ヘテロアリール基は、本文書においてさらに特定されている1個又は複数の置換基によって置換されていてもよい。
アリール基が(ヘテロ)アリール基として示される場合、表記は、アリール基及びヘテロアリール基が含まれると意味される。同様に、アルキル(ヘテロ)アリール基は、アルキルアリール基及びアルキルヘテロアリール基が含まれると意味され、(ヘテロ)アリールアルキルは、アリールアルキル基及びヘテロアリールアルキル基が含まれると意味される。したがって、C2〜C24(ヘテロ)アリール基は、C2〜C24ヘテロアリール基及びC6〜C24アリール基を含むと解釈されるべきである。同様に、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基は、C7〜C24アルキルアリール基及びC3〜C24アルキルヘテロアリール基が含まれると意味され、C3〜C24(ヘテロ)アリールアルキルは、C7〜C24アリールアルキル基及びC3〜C24ヘテロアリールアルキル基が含まれると意味される。
シクロアルキニル基は環状アルキニル基である。1個の三重結合を含む非置換シクロアルキニル基は、一般式CnH2n−5を有する。任意選択で、シクロアルキニル基は、本文書においてさらに特定されている1個又は複数の置換基によって置換されている。シクロアルキニル基の例はシクロオクチニルである。
ヘテロシクロアルキニル基は、酸素、窒素及び硫黄の群から選択されるヘテロ原子によって中断されているシクロアルキニル基である。任意選択で、ヘテロシクロアルキニル基は、本文書においてさらに特定されている1個又は複数の置換基によって置換されている。ヘテロシクロアルキニル基の例はアザシクロオクチニルである。
(ヘテロ)アリール基は、アリール基及びヘテロアリール基を含む。アルキル(ヘテロ)アリール基は、アルキルアリール基及びアルキルヘテロアリール基を含む。(ヘテロ)アリールアルキル基は、アリールアルキル基及びヘテロアリールアルキル基を含む。(ヘテロ)アルキニル基は、アルキニル基及びヘテロアルキニル基を含む。(ヘテロ)シクロアルキニル基は、シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基を含む。
(ヘテロ)シクロアルキン化合物は、本明細書において、(ヘテロ)シクロアルキニル基を含む化合物として定義されている。
本明細書及び請求項に開示されている化合物のいくつかは、縮合(ヘテロ)シクロアルキン化合物、即ち、第2の環構造が(ヘテロ)シクロアルキニル基に縮合されている、即ち環状化されている(ヘテロ)シクロアルキン化合物として記載することができる。例えば、縮合(ヘテロ)シクロオクチン化合物において、シクロアルキル(例えばシクロプロピル)又はアレーン(例えばベンゼン)は、(ヘテロ)シクロオクチニル基に環状化され得る。縮合(ヘテロ)シクロオクチン化合物における(ヘテロ)シクロオクチニル基の三重結合は、3つの可能な位置、即ち、シクロオクチン部分の2位、3位又は4位(「IUPAC Nomenclature of Organic Chemistry」、Rule A31.2に従った番号付け)のうちのいずれか1つに位置し得る。本明細書及び請求項における任意の縮合(ヘテロ)シクロオクチン化合物の記載は、シクロオクチン部分の全ての3つの個々の位置異性体が含まれると意味される。
別段に明記されていない限り、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、(ヘテロ)アリール基、(ヘテロ)アリールアルキル基、アルキル(ヘテロ)アリール基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、(ヘテロ)アリーレン基、アルキル(ヘテロ)アリーレン基、(ヘテロ)アリールアルキレン基、(ヘテロ)アリールアルケニレン基、(ヘテロ)アリールアルキニレン基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、(ヘテロ)アリールオキシ基、アルキニルオキシ基及びシクロアルキルオキシ基は、C1〜C12アルキル基、C2〜C12アルケニル基、C2〜C12アルキニル基、C3〜C12シクロアルキル基、C5〜C12シクロアルケニル基、C8〜C12シクロアルキニル基、C1〜C12アルコキシ基、C2〜C12アルケニルオキシ基、C2〜C12アルキニルオキシ基、C3〜C12シクロアルキルオキシ基、ハロゲン、アミノ基、オキソ及びシリル基からなる群から独立して選択される1個又は複数の置換基で置換されていてもよく、ここでシリル基は、式(R20)3Si−によって表すことができ、ここでR20は、C1〜C12アルキル基、C2〜C12アルケニル基、C2〜C12アルキニル基、C3〜C12シクロアルキル基、C1〜C12アルコキシ基、C2〜C12アルケニルオキシ基、C2〜C12アルキニルオキシ基及びC3〜C12シクロアルキルオキシ基からなる群から独立して選択され、ここで、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基及びシクロアルキルオキシ基は、任意選択で置換されており、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基及びシクロアルコキシ基は、O、N及びSからなる群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されている。
「糖」という一般用語は、本明細書において、単糖、例えばグルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)及びフコース(Fuc)を示すために使用される。「糖誘導体」という用語は、本明細書において、単糖の糖の誘導体、即ち、置換基及び/又は官能基を含む単糖の糖を示すために使用される。糖誘導体の例としては、アミノ糖類及び糖酸、例えばグルコサミン(GlcNH2)、ガラクトサミン(GalNH2)N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルノイラミン酸(NeuNAc)及びN−アセチルムラミン酸(MurNAc)とも称されるシアル酸(Sia)、グルクロン酸(GlcA)並びにイズロン酸(IdoA)が挙げられる。糖誘導体の例としては、本明細書においてS(F1)xとして示される化合物も挙げられ、ここでSは糖又は糖誘導体であり、Sはx個の官能基F1を含む。
コアN−アセチルグルコサミン置換基(コア−GlcNAc置換基)又はコアN−アセチルグルコサミン部分は、本明細書において、抗体にC1を介して、好ましくは抗体のアスパラギンアミノ酸の側鎖におけるアミド窒素原子にN−グリコシド結合を介して結合しているGlcNAcとして定義されている。コア−GlcNAc置換基は、抗体の未変性グリコシル化部位に存在し得るが、コア−GlcNAc置換基は、抗体の異なる部位に導入することもできる。本明細書において、コア−N−アセチルグルコサミン置換基は単糖置換基であるか、又は上記コア−GlcNAc置換基がフコシル化されているならばGlcNAc(Fuc)とさらに称される二糖類コア−GlcNAc−(α1−6−Fuc)置換基である。本明細書において、「コア−GlcNAc置換基」は、「コア−GlcNAc」と混同されるべきでない。コア−GlcNAcは、本明細書において、ポリ糖又は2つ超の糖類を含むオリゴ糖の一部である内部GlcNAc、即ち、これを介してポリ又はオリゴ糖が抗体に結合しているGlcNAcとして定義されている。
したがって、本明細書において定義されている通りのコア−N−アセチルグルコサミン置換基を含む抗体は、上で定義されている通りの単糖コア−GlcNAc置換基を含む抗体であるか、又は上記コア−GlcNAc置換基がフコシル化されているならば二糖類コア−GlcNAc(Fuc)置換基を含む抗体である。コア−GlcNAc置換基又はGlcNAc−S(F1)x置換基におけるGlcNAcがフコシル化されているならば、フコースは、コア−GlcNAc置換基のO6にα−1,6で最も共通して連結されている。フコシル化コア−GlcNAc置換基はコア−GlcNAc(Fuc)と示され、フコシル化GlcNAc−S(F1)x置換基はGlcNAc(Fuc)−S(F1)xと示される。
「ヌクレオチド」という用語は、本明細書において、通常の科学的意味で使用される。「ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオベース、5炭素糖(リボース又は2−デオキシリボースのいずれか)、及び1個、2個又は3個のホスフェート基で構成される分子を指す。ホスフェート基なしで、ヌクレオベース及び糖がヌクレオシドを構成する。したがって、ヌクレオチドは、ヌクレオシド一リン酸、ヌクレオシド二リン酸又はヌクレオシド三リン酸と呼ぶこともできる。ヌクレオベースは、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル又はチミンであり得る。ヌクレオチドの例としては、ウリジン二リン酸(UDP)、グアノシン二リン酸(GDP)、チミジン二リン酸(TDP)、シチジン二リン酸(CDP)及びシチジン一リン酸(CMP)が挙げられる。
「タンパク質」という用語は、本明細書において、通常の科学的意味で使用される。本明細書において、約10以上のアミノ酸を含むポリペプチドは、タンパク質と考えられる。タンパク質は、天然だけでなく非天然のアミノ酸を含むことがある。
「糖タンパク質」という用語は、本明細書において、通常の科学的意味で使用され、タンパク質に共有結合した1種又は複数の単糖又はオリゴ糖鎖(「グリカン」)を含むタンパク質を指す。グリカンは、タンパク質のヒドロキシル基(O連結グリカン)に、例えばセリン、トレオニン、チロシン、ヒドロキシリシン若しくはヒドロキシプロリンのヒドロキシル基に、又はタンパク質(N−糖タンパク質)、例えばアスパラギン若しくはアルギニンのアミド官能基に、又はタンパク質(C−糖タンパク質)、例えばトリプトファンの炭素に結合していることがある。糖タンパク質は、1つ超のグリカンを含むことがあり、1種又は複数の単糖及び1種又は複数のオリゴ糖グリカンの組合せを含むことがあり、N連結グリカン、O連結グリカン及びC連結グリカンの組合せを含むことがある。全てのタンパク質の50%超は、グリコシル化のある形態を有し、そのため、糖タンパク質として認定されることが推定される。糖タンパク質の例としては、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、CAL(カンジダアンタルチリパーゼ)、gp41、gp120、EPO(エリスロポエチン)、不凍タンパク質及び抗体が挙げられる。
「グリカン」という用語は、本明細書において、通常の科学的意味で使用され、タンパク質に連結されている単糖鎖又はオリゴ糖鎖を指す。したがって、グリカンという用語は、糖タンパク質の炭水化物部分を指す。グリカンは、さらなる置換がないことがある(単糖)又は糖のヒドロキシル基のうちの1つ又は複数においてさらに置換されていてもよい(オリゴ糖)1種の糖のC−1炭素を介してタンパク質に結合している。自然発生グリカンは、1〜約10の糖類部分を典型的に含む。しかしながら、より長い多糖類鎖がタンパク質に連結されている場合、上記多糖類鎖は、本明細書においてグリカンとも考えられる。糖タンパク質のグリカンは単糖であり得る。典型的に、糖タンパク質の単糖グリカンは、タンパク質に共有結合している単一のN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、グルコース(Glc)、マンノース(Man)又はフコース(Fuc)からなる。グリカンはオリゴ糖でもあり得る。糖タンパク質のオリゴ糖鎖は、直鎖又は分枝であり得る。オリゴ糖において、タンパク質に直接結合している糖は、コア糖と呼ばれる。オリゴ糖において、タンパク質に直接結合しておらず、少なくとも2種の他の糖類に結合している糖は、内部糖と呼ばれる。オリゴ糖において、タンパク質に直接結合していないが単一の他の糖に直接結合している糖、即ちその糖の他のヒドロキシル基のうちの1個又は複数にさらなる糖置換基を保有しない糖は、末端糖と呼ばれる。疑いを回避するため、糖タンパク質のオリゴ糖において複数の末端糖類だが、ただ1つのコア糖が存在することがある。グリカンは、O連結グリカン、N連結グリカン又はC連結グリカンであり得る。O連結グリカンにおいて、単糖又はオリゴ糖グリカンは、典型的にセリン(Ser)又はトレオニン(Thr)のヒドロキシル基を介して、タンパク質のアミノ酸におけるO原子に結合している。N連結グリカンにおいて、単糖又はオリゴ糖グリカンは、タンパク質のアミノ酸におけるN原子を介して、典型的にはアスパラギン(Asn)又はアルギニン(Arg)の側鎖におけるアミド窒素を介して、タンパク質に結合している。C連結グリカンにおいて、単糖又はオリゴ糖グリカンは、タンパク質のアミノ酸におけるC原子に、典型的にはトリプトファン(Trp)のC原子に結合している。
「抗体」という用語は、本明細書において、通常の科学的意味で使用される。抗体は、特定の抗原を認識及び結合できる免疫系によって生成されたタンパク質である。抗体は糖タンパク質の例である。抗体という用語は、本明細書において、最も広い意味において使用され、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二量体、多量体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、抗体断片、並びに二重鎖抗体及び単鎖抗体が挙げられる。「抗体」という用語は、本明細書において、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び癌抗原を特異的に結合する抗体が含まれるとも意味される。「抗体」という用語は、抗体全体だけでなく抗体の抗原結合性断片、例えば抗体Fab断片、F(ab’)2、切断された抗体からのFv断片若しくはFc断片、scFv−Fc断片、ミニ体、二特異性抗体、二重特異性抗体又はscFvが含まれると意味される。さらに、上記用語には、遺伝的に改変された抗体及び抗体の誘導体が含まれる。抗体、抗体の断片及び遺伝的に改変された抗体は、当技術分野において知られている方法によって得ることができる。抗体の典型例としては、中でも、アブシキシマブ、リツキシマブ、バシリキシマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、アダリムマブ、トシツモマブ−I131、セツキシマブ、イブリツキシマブチウキセタン、オマリズマブ、ベバシズマブ、ナタリズマブ、ラニビズマブ、パニツムマブ、エクリズマブ、セルトリズマブペゴール、ゴリムマブ、カナキヌマブ、カツマキソマブ、ウステキヌマブ、トシリズマブ、オファツムマブ、デノスマブ、ベリムマブ、イピリムマブ及びブレンツキシマブが挙げられる。好ましい実施形態において、コア−N−アセチルグルコサミン置換基(コア−GlcNAc置換基)を含む糖タンパク質は、コア−N−アセチルグルコサミン置換基(コア−GlcNAc置換基)を含む抗体であり、好ましくはモノクローナル抗体(mAb)である。上記抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM抗体からなる群から選択されることが好ましい。上記抗体はIgG抗体であるのがより好ましく、上記抗体はIgG1抗体であるのが最も好ましい。上記抗体が抗体全体である場合、抗体は、好ましくは各重鎖に1個又は複数の、より好ましくは1個のコア−GlcNAc置換基を含み、上記コア−GlcNAc置換基は任意選択でフコシル化されている。したがって、上記抗体全体は、好ましくは、2個以上の、好ましくは2個の、任意選択でフコシル化されているコア−GlcNAc置換基を含む。上記抗体が単鎖抗体又は抗体断片、例えばFab断片である場合、抗体は、好ましくは、任意選択でフコシル化されている1個又は複数のコア−GlcNAc置換基を含む。コア−GlcNAc置換基を含む抗体において、上記コア−GlcNAc置換基は、抗体のどこにでも位置することができるが、ただし、上記置換基が抗体の抗原結合性部位を妨害しないことを条件とする。好ましい実施形態において、上記コアN−アセチルグルコサミン置換基は、抗体の未変性N−グリコシル化部位に存在する。
リンカーは、本明細書において、化合物の2つ以上の要素を接続する部分として定義されている。例えば、バイオコンジュゲートにおいて、生体分子及び標的分子は、リンカーを介して互いに共有結合的に接続されており;リンカー−コンジュゲートにおいて、反応性基Q1は、リンカーを介して標的分子に共有結合的に接続されており;リンカー−コンストラクトにおいて、反応性基Q1は、リンカーを介して反応性基Q2に共有結合的に接続されている。リンカーは、1つ又は複数のスペーサー部分を含むことができる。
スペーサー部分は、本明細書において、間隔をあける(即ち、間に距離を提供する)とともにリンカーの2つ(以上)の部分を一緒に共有結合的に連結する部分として定義されている。リンカーは、下記に定義されている通り、例えばリンカー−コンストラクト、上記リンカー−コンジュゲート又はバイオコンジュゲートの一部であり得る。
バイオコンジュゲートは、本明細書において、生体分子がリンカーを介して標的分子に共有結合的に接続されている化合物として定義されている。バイオコンジュゲートは、1つ若しくは複数の生体分子及び/又は1つ若しくは複数の標的分子を含む。リンカーは、1つ又は複数のスペーサー部分を含むことができる。抗体−コンジュゲートは、生体分子が抗体であるバイオコンジュゲートを指す。
生体分子は、本明細書において、自然から単離することができる任意の分子として、又は自然から誘導される巨大分子構造の構成要素、特に核酸、タンパク質、グリカン及び脂質である、より小さい分子構築ブロックで構成される任意の分子として定義されている。本明細書において、生体分子は、目的の生体分子(BOI)とも称することができる。生体分子の例としては、酵素、(非触媒)タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、オリゴヌクレオチド、単糖、オリゴ糖、多糖類、グリカン、脂質及びホルモンが挙げられる。
目的の分子(MOI)とも称される標的分子は、本明細書において、コンジュゲーションで生体分子に付与される所望の特性を有する分子構造として定義されている。
「その塩」という用語は、酸性プロトン、典型的には酸のプロトンが、金属カチオン又は有機カチオンなどのカチオンによって置き換えられる場合に形成される化合物を意味する。適用可能な場合、塩は薬学的に許容される塩であるが、これは患者への投与が意図されない塩には必要とされない。例えば、化合物の塩において、化合物は、無機酸又は有機酸によってプロトン化されることでカチオンを形成することができ、塩のアニオン性構成成分として無機酸又は有機酸の共役塩基を用いる。
「薬学的に認容されている」塩という用語は、哺乳動物などの患者への投与に許容される塩(所与の投与計画に対する許容される哺乳動物の安全性を有する対イオンとの塩)を意味する。こうした塩は、薬学的に許容される無機塩基又は有機塩基から及び薬学的に許容される無機酸又は有機酸から誘導することができる。「薬学的に許容される塩」は、化合物の薬学的に許容される塩を指し、上記塩は、当技術分野において知られている様々な有機及び無機の対イオンから誘導され、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど、及び分子が塩基性官能性基を含有する場合には有機酸又は無機酸の塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、ベシル酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などが挙げられる。
本明細書において、スルファミドリンカー及び上記スルファミドリンカーのコンジュゲートが開示されている。「スルファミドリンカー」という用語は、スルファミド基、より詳細にはアシルスルファミド基[−C(O)−N(H)−S(O)2−N(R1)−]及び/又はカルバモイルスルファミド基[−O−C(O)−N(H)−S(O)2−N(R1)−]を含むリンカーを指す。
本明細書において、「治療指数」(TI)という用語は、当業者によく知られている従来の意味を有し、集団の50%において所望の薬理効果に至る用量(有効量又はED50)によって割られた、集団の50%に毒性である(即ち、標的化される適応症と適合性のない発生率又は重症度で有害作用を引き起こす)薬物の用量(TD50)の比を指す。それゆえに、TI=TD50/ED50である。治療指数は、臨床試験によって又は例えば血漿曝露試験によって決定することができる。Mullerら、Nature Reviews Drug Discovery 2012、11、751〜761も参照されたい。
本明細書において、「治療的有効性」という用語は、ある特定の治療効果、例えば腫瘍体積の低減を達成するための物質の能力を示す。治療効果は、典型的には同じ状況下で別の物質との比較において物質が所望の効果を達成する範囲を決定して測定することができる。治療的有効性のための適当な基準は、例えば臨床試験中に又は血漿曝露試験によって決定することができるED50値である。前臨床的治療有効性決定の場合において、バイオコンジュゲート(例えばADC)の治療効果は、マウスにおける患者誘導腫瘍異種移植片によって検証することができ、この場合において、有効性は、有益な効果を提供するためのADCの能力を指す。代替として、げっ歯類安全性研究における上記ADCの耐容性は、治療効果の基準でもあり得る。
本明細書において、「耐容性」という用語は、標的化される適応症と適合性のない発生率又は重症度で有害作用を引き起こさない特定の物質の最大用量を指す。特定の物質のための耐容性の適当な基準は、例えば臨床試験中に又は血漿曝露試験によって決定することができるTD50値である。
コンジュゲーションのモード
本発明の文脈において、「コンジュゲーションのモード」は、標的分子Dを生体分子B、特に抗体ABにコンジュゲートするために使用されるプロセス、並びに結果として得られたバイオコンジュゲート、特に、コンジュゲーションのプロセスの直接的帰結である、標的分子を生体分子に接続するリンカーの構造的特色を指す。したがって、一実施形態において、コンジュゲーションのモードは、生体分子、特に抗体への標的分子のコンジュゲーションのためのプロセスを指す。代替実施形態において、コンジュゲーションのモードは、生体分子、特に抗体への標的分子のコンジュゲーションのためのプロセスの直接的帰結である、リンカーの構造的特色及び/又は生体分子へのリンカーの結合点を指す。
本発明の文脈において、コンジュゲーションのモードは、さらに下記で定義されている通りの「コア−GlcNAc官能化」及び「スルファミド連結」の少なくとも一方を含む。コンジュゲーションのモードは、さらに下記で定義されている通りの「コア−GlcNAc官能化」及び「スルファミド連結」の両方を含むのが好ましい。
コア−GlcNAc官能化
一実施形態において、本発明によるコンジュゲーションのモードは、以下を含むプロセスを指す「コア−GlcNAc官能化」と称される:
(i)1〜4つのコアN−アセチルグルコサミン部分を含む糖タンパク質を、触媒の存在下で式S(F1)x−Pの化合物と接触させるステップであって、S(F1)xは、官能基Q1と反応できるx個の官能基F1を含む糖誘導体であり、xは1又は2であり、Pはヌクレオシド一リン酸又は二リン酸であり、触媒は、S(F1)x部分をコア−GlcNAc部分に転移することで、式(24):
(式中、S(F1)x及びxは、上で定義されている通りであり;ABは抗体を表し;GlcNAcはN−アセチルグルコサミンであり;Fucはフコースであり;bは0又は1であり;yは1、2、3又は4である)に従った修飾抗体を得ることができる、ステップ;並びに
(ii)修飾抗体を、官能基F1と反応できる官能基Q1及びリンカーL2を介してQ1に接続されている標的分子Dを含むリンカー−コンジュゲートと反応させることで抗体−コンジュゲートを得るステップであって、リンカーLはS−Z3−L2を含み、Z3は、Q1とF1との間の反応から生じる接続基である、ステップ。
本実施形態において、抗体は、トリミングされているグリカンを介してコア−GlcNAc残基(フコースで任意選択で置換されている)にコンジュゲートされる。この残基は、1個又は2個の官能基F1を含む糖誘導体S(F1)xで官能化され、上記官能基F1は、引き続いて、標的分子Dを含むリンカー−コンジュゲートに存在する官能基Q1と反応させられる。抗体を標的分子と連結する、結果として得られたリンカーLの構造的特色は、コンジュゲーションプロセスの直接的帰結であり、以下が含まれる:
(a)抗体ABへのリンカーLの結合点は、自然発生抗体においてグリコシル化されている特定のアミノ酸残基であるか、又は抗体における特定のアミノ酸残基の突然変異によって、人工的に導入されたグリコシル化部位である。したがって、高度に予測可能な標的分子対抗体比(又はDAR:「薬物抗体比」)を与える抗体へのリンカーの結合点は、特異的に選択することができる。
(b)リンカーLは、抗体のコア−GlcNAc部分にコンジュゲートされており、一般構造−S−(M)pp−Z3−L2(D)rを有する。本明細書において、Sは、O4を介してコア−GlcNAc部分に、並びにC2、C3、C4及びC6のうちの任意の1つを介して、好ましくはC6を介してZ3に、任意選択でスペーサーMを介して(即ちpp=0又は1)典型的に接続されている糖誘導体である。Z3は、Q1とF1との間の反応によって得られる接続基である。Q1、F1及びZ3の選択肢は、当技術者に知られており、さらに詳細に下記で考察されている。Z3は、リンカーL2を介して少なくとも1つの標的分子Dに接続されている(即ちr≧1)。
(c)好ましい実施形態において、リンカーL、特にリンカーL2は、「スルファミド連結」と称されるコンジュゲーションのモードについて定義されている通りの式(1)に従った基又はその塩含む。本実施形態によるコンジュゲーションのモードがコンジュゲーションの「スルファミド連結」モードと組み合わされる場合、結果として得られたバイオコンジュゲートの治療指数を改善するという点で最良の結果が得られたことが見出された。
本発明者らは、驚くべきことに、標的分子を抗体にコンジュゲートするための上のプロセスを使用することは、抗体−コンジュゲートの治療指数に対して有益な効果を有することを見出した。言い換えると、本実施形態によるコンジュゲーションのモードを有する抗体−コンジュゲートの治療指数は、本実施形態によるコンジュゲーションのモードを有しない抗体−コンジュゲートよりも、改善された治療指数を有する。
本発明によるコンジュゲーションのモードの使用は、抗体−コンジュゲートを調製するプロセスと異なっており、ここでコンジュゲーションのモードは、抗体−コンジュゲートを調製するために使用される。抗体−コンジュゲートを調製するためのコンジュゲーションの多くのモードが存在するが、本発明者らは、コンジュゲーションの特定のモードを選択する一方で抗体及び標的分子(単数又は複数)を一定に保持することは、コンジュゲートの治療指数に有益に影響することを見出した。
「コア−GlcNAc官能化」と称されるコンジュゲーションの本モードの文脈内で、一実施形態において、コンジュゲーションのモードは、式(A):
B−L−D
(A)
(式中:
Bは、生体分子であり;
Lは、B及びDを連結するリンカーであり;
Dは、標的分子であり;
「−」の各出現は、独立して、結合又はスペーサー部分である)のバイオコンジュゲートを、標的分子(D)の反応性基Q1を生体分子(B)の官能基F1と反応させることによって、Lが、式(1)に従った基又はその塩:
(式中:
aは、0又は1であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S若しくはNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される、又はR1は、追加の標的分子Dであり、ここで標的分子は、スペーサー部分を介してNに任意選択で接続されている)を含むように調製するステップを含む。
「コア−GlcNAc官能化」と称されるコンジュゲーションの本モードの文脈内で、一実施形態において、コンジュゲーションのモードは、式(A):
B−L−D
(A)
(式中:
Bは、生体分子であり;
Lは、B及びDを連結するリンカーであり;
Dは、標的分子であり;
「−」の各出現は、独立して、結合又はスペーサー部分である)のバイオコンジュゲートを、標的分子(D)の反応性基Q1を生体分子(B)の官能基F1と反応させることによって、Lが、式(1)に従った基又はその塩:
(式中:
aは、0又は1であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S若しくはNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される、又はR1は、追加の標的分子Dであり、ここで標的分子は、スペーサー部分を介してNに任意選択で接続されている)を含むように調製するステップを含まない。
ステップ(i)
ステップ(i)において、1〜4つのコアN−アセチルグルコサミン部分を含む糖タンパク質は、触媒の存在下で式S(F1)x−Pの化合物と接触され、ここでS(F1)xは、官能基Q1と反応できるx個の官能基F1を含む糖誘導体であり、xは1又は2であり、Pはヌクレオシド一リン酸又は二リン酸であり、触媒は、S(F1)x部分をコア−GlcNAc部分に転移できる。本明細書において、糖タンパク質は典型的に、さらに下記に記載されている通り、コア−GlcNAc残基にトリミングされた抗体などの抗体である。
ステップ(i)は、式(24):
(式中、S(F1)x及びxは、上で定義されている通りであり;ABは抗体を表し;GlcNAcはN−アセチルグルコサミンであり;Fucはフコースであり;bは0又は1であり;yは1、2、3又は4である)に従った修飾抗体を与える。
好ましい実施形態において、y=1、2若しくは4、より好ましくはy=1若しくは2(例えば、ABが単鎖抗体である場合)であるか、又は代替としてy=2若しくは4(例えば、ABが二重鎖抗体である場合)である。最も好ましくはy=2である。
一実施形態において、任意選択でフコシル化されているコア−GlcNAc置換基を含む抗体は式(21)の抗体であり、ここでABは抗体を表し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンであり、Fucはフコースであり、bは0又は1であり、yは1〜4であり、yは1又は2であることが好ましい。
コア−GlcNAc置換基を含むこうした抗体は、当技術分野において知られており、当技術者によって知られている方法によって調製することができる。一実施形態において、本発明によるプロセスは、コアN−アセチルグルコサミン置換基を含む抗体を得るためにエンドグリコシダーゼの存在下でのコアN−アセチルグルコサミンを有する抗体グリカンの脱グリコシル化をさらに含み、ここで、上記コアN−アセチルグルコサミン及び上記コアN−アセチルグルコサミン置換基は、任意選択でフコシル化されている。グリカンの性質に依存して、適当なエンドグリコシダーゼが選択され得る。エンドグリコシダーゼは、EndoS、EndoA、EndoF、EndoM、EndoD、EndoH及びEndoSH酵素並びに/又はその組合せからなる群から好ましくは選択され、この選択はグリカンの性質に依存する。EndoSHは、本発明の第4の態様において下記でさらに定義されている。さらに好ましい実施形態において、エンドグリコシダーゼは、EndoS、EndoS49、EndoF、EndoSH又はその組合せである。さらに好ましい実施形態において、エンドグリコシダーゼは、EndoS、EndoF又はその組合せである。さらに好ましい実施形態において、エンドグリコシダーゼはEndoSである。別の好ましい実施形態において、エンドグリコシダーゼはEndoS49である。別の好ましい実施形態において、エンドグリコシダーゼはEndoSHである。
ステップ(i)において、y=1である抗体(21a)の修飾は、1個のGlcNAc−S(F1)x置換基を含む修飾抗体(22)に至り、y=2である抗体(21b)の修飾は、2個のGlcNAc−S(F1)x置換基を含む修飾抗体(23)に至る。一実施形態において、ABが二重鎖抗体である場合、y=2又は4であることが好ましい。一実施形態において、ABが単鎖抗体である場合、y=1又は2であることが好ましい。
好ましい実施形態において、抗体ABは、5T4(TPBG)、αv−インテグリン/ITGAV、BCMA、C4.4a、CA−IX、CD19、CD19b、CD22、CD25、CD30、CD33、CD37、CD40、CD56、CD70、CD74、CD79b、c−KIT(CD119)、CD138/SDC1、CEACAM5(CD66e)、クリプト、CS1、DLL3、EFNA4、EGFR、EGFRvIII、エンドセリンB受容体(ETBR)、ENPP3(AGS−16)、EpCAM、EphA2、FGFR2、FGFR3、FOLR1(葉酸受容体a)、gpNMB、グアニルシクラーゼC(GCC)、HER2、Erb−B2、Lamp−1、ルイスY抗原、LIV−1(SLC39A6、ZIP6)、メソテリン(MSLN)、MUC1(CA6、huDS6)、MUC16/EA−125、NaPi2b、ネクチン−4、Notch3、P−カドヘリン、PSMA/FOLH1、PTK7、SLITRK6(SLC44A4)、STEAP1、TF(CD142)、Trop−1、Trop−2/EGP−1、Trop−3、Trop−4から選択される抗原を発現する腫瘍、好ましくはHER2発現腫瘍を標的化できる。
好ましい実施形態において、抗体ABは、低HER2発現腫瘍を含むがこれに限定されないHER2発現腫瘍を標的化でき、より好ましくは、抗体ABは、トラスツズマブ、マパツムマブ、ペルツズマブ、HuMax−Her2、エルツマキソマブ、HB−008、ABP−980、BCD−022、CanMab、Herzuma、HD201、CT−P6、PF−05280014、COVA−208、FS−102、MCLA−128、CKD−10101、HT−19及びその官能性類似体からなる群から選択され、最も好ましくはトラスツズマブである。
S(F1)xは、x個の官能基F1を含む糖誘導体として定義されており、ここでxは1又は2であり、F1は、接続部分Z3を形成するためにリンカー−コンジュゲートに存在するQ1と反応できる官能基である。糖誘導体S(F1)xは、1個又は2個の官能基F1を含むことができる。S(F1)xが2個の官能基F1を含む場合、各官能基F1は独立して選択される、即ち、1つのS(F1)xは、異なる官能基F1を含むことができる。一実施形態において、x=1である。一実施形態において、x=2である。糖誘導体S(F1)xは、糖又は糖誘導体S、例えばアミノ糖又はその他の誘導体化糖から誘導される。糖類及び糖誘導体の例としては、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)、グルコース(Glc)、グルクロン酸(GlucA)及びフコース(Fuc)が挙げられる。アミノ糖は、ヒドロキシル(OH)基がアミノ基によって置き換えられている糖であり、例としては、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及びN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)が挙げられる。その他の誘導体化糖の例としては、グルクロン酸(GlucA)及びN−アセチルノイラミン酸(シアル酸)が挙げられる。糖誘導体S(F1)xは、好ましくはガラクトース(Gal)、マンノース(Man)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、グルコース(Glc)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、グルクロン酸(GlucA)、フコース(Fuc)及びN−アセチルノイラミン酸(シアル酸)から、好ましくはGlcNAc、Glc、Gal及びGalNAcからなる群から誘導される。S(F1)xは、Gal又はGalNAcから誘導されるのがより好ましく、S(F1)xは、GalNAcから誘導されるのが最も好ましい。
ヌクレオシド一リン酸又はヌクレオシド二リン酸Pが糖誘導体S(F1)xに連結されている式S(F1)x−Pの化合物は、当技術分野において知られている。例えば、全て参照により本明細書に組み込まれるWangら、Chem.Eur.J.2010、16、13343〜13345、Pillerら、ACS Chem.Biol.2012、7、753、Pillerら、Bioorg.Med.Chem.Lett.2005、15、5459〜5462及び国際公開第2009/102820号は、多数の化合物S(F1)x−P及びそれらの合成を開示している。好ましい実施形態において、S(F1)x−Pにおけるヌクレオシド一リン酸又は二リン酸Pは、ウリジン二リン酸(UDP)、グアノシン二リン酸(GDP)、チミジン二リン酸(TDP)、シチジン二リン酸(CDP)及びシチジン一リン酸(CMP)からなる群から選択され、Pは、ウリジン二リン酸(UDP)、グアノシン二リン酸(GDP)及びシチジン二リン酸(CDP)からなる群から選択されるのがより好ましく、P=UDPであるのが最も好ましい。
S(F1)xにおける1個又は2個の官能基F1は、いくつかの方法で糖又は糖誘導体Sに連結されていてもよい。1個又は2個の官能基F1は、ヒドロキシル(OH)基の代わりに、糖又は糖誘導体のC2、C3、C4及び/又はC6に結合していてもよい。フコースがC6にOH基を欠如しているので、F1がFucのC6に結合しているならば、F1は、H原子に取って代わることが留意されるべきである。F1がアジド基である場合、F1はC2、C4又はC6に結合していることが好ましい。上に記載された通り、S(F1)xにおける1個又は複数のアジド置換基は、ヒドロキシル(OH)基の代わりに、又は6−アジドフコース(6−AzFuc)の場合においては水素原子の代わりに、糖又は糖誘導体SのC2、C3、C4又はC6に結合していてもよい。代替として又は追加として、アミノ糖誘導体のN−アセチル置換基は、アジドアセチル置換基によって置換されていてもよい。好ましい実施形態においてS(F1)xは、2−アジドジアセトアミド−2−デオキシ−ガラクトース(GalNAz)、2−アジドジフルオロアセトアミド−2−デオキシ−ガラクトース(F2−GalNAz)、6−アジド−6−デオキシガラクトース(6−AzGal)、6−アジド−6−デオキシ−2−アセトアミドガラクトース(6−AzGalNAc又は6−N3−GalNAc)、4−アジド−4−デオキシ−2−アセトアミドガラクトース(4−AzGalNAc)、6−アジド−6−デオキシ−2−アジドジアセトアミド−2−デオキシ−ガラクトース(6−AzGalNAz)、2−アジドジアセトアミド−2−デオキシ−ガラクトース(GlcNAz)、6−アジド−6−デオキシグルコース(6−AzGlc)、6−アジド−6−デオキシ−2−アジドジアセトアミド−2−デオキシ−ガラクトース(6−AzGlcNAc)、4−アジド−4−デオキシ−2−アセトアミドグルコース(4−AzGlcNAc)及び6−アジド−6−デオキシ−2−アジドアセトアミドグルコース(6−AzGlcNAz)からなる群から、より好ましくはGalNAz、4−AzGalNAc及び6−AzGalNAcからなる群から選択される。F1がアジド基であるS(F1)x−Pの例は下記に示されている。F1がケト基である場合、F1は、SのOH基の代わりにC2に結合していることが好ましい。代替として、F1は、アミノ糖誘導体、好ましくは2−アミノ糖誘導体のN原子に結合していてもよい。糖誘導体は次いで−NC(O)R36置換基を含む。R36は、好ましくは、任意選択で置換されているC2〜C24アルキル基である。R36はエチル基であるのがより好ましい。好ましい実施形態において、S(F1)xは、2−デオキシ−(2−オキソプロピル)ガラクトース(2−ケトGal)、2−N−プロピオニルガラクトサミン(2−N−プロピオニルGalNAc)、2−N−(4−オキソペンタノイル)ガラクトサミン(2−N−LevGal)及び2−N−ブチリルガラクトサミン(2−N−ブチリルGalNAc)、より好ましくは2−ケトGalNAc及び2−N−プロピオニルGalNAcからなる群から選択される。F1がケト基であるS(F1)x−Pの例は下記に示されている。F1がアルキニル基、好ましくは末端アルキニル基又は(ヘテロ)シクロアルキニル基である場合、上記アルキニル基は2−アミノ糖誘導体に存在することが好ましい。F1がアルキニル基であるS(F1)xの例は、2−(ブタ−3−イオン酸アミド)−2−デオキシ−ガラクトースである。F1がアルキニル基であるS(F1)x−Pの例は、下記に示されている。
一実施形態において、F1は、アジド基、ケト基及びアルキニル基からなる群から選択される。アジド基はアジド官能基−N3である。ケト基は−[C(R37)2]oC(O)R36基であり、ここでR36はメチル基又は任意選択で置換されているC2〜C24アルキル基であり、R37は、水素、ハロゲン及びR36からなる群から独立して選択され、oは0〜24、好ましくは0〜10、及びより好ましくは0、1、2、3、4、5又は6である。R37は水素であることが好ましい。アルキニル基は、好ましくは、上で定義されている通りの末端アルキニル基又は(ヘテロ)シクロアルキニル基である。一実施形態において、アルキニル基は−[C(R37)2]oC≡C−R37基であり、ここでR37及びoは、上で定義されている通りであり;R37は、好ましくは水素である。
一実施形態において、F1はアジド又はアルキン部分である。F1はアジド基(−N3)であるのが最も好ましい。一実施形態において、F1はアジド部分であり、Q1は(シクロ)アルキン部分であり、Z3はトリアゾール部分である。
アジド又はアルキニル置換糖類及び糖誘導体に連結されているウリジン二リン酸であるS(F1)x−UDPのいくつかの実施例(25〜28)が、下記に示されている。
S(F1)x−Pは、GalNAz−UDP(25)、6−AzGal−UDP(26)、6−AzGalNAc−UDP(6−アジド−6−デオキシ−N−アセチルガラクトサミン−UDP)(27)、4−AzGalNAz−UDP、6−AzGalNAz−UDP、6−AzGlc−UDP、6−AzGlcNAz−UDP及び2−(ブタ−3−イオン酸アミド)−2−デオキシ−ガラクトース−UDP(28)からなる群から選択されることが好ましい。S(F1)x−PはGalNAz−UDP(25)又は6−AzGalNAc−UDP(27)であるのが最も好ましい。
S(F1)x部分をコア−GlcNAc部分に転移できる適当な触媒は、当技術分野において知られている。適当な触媒は、その特定のプロセスにおける特定の糖誘導体ヌクレオチドS(F1)x−Pが基質である触媒である。より具体的には、触媒は、β(1,4)−グリコシドの結合の形成を触媒する。触媒は、好ましくはガラクトシルトランスフェラーゼ及びN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼの群から、より好ましくはβ(1,4)−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(GalNAcT)及びβ(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)の群から、最も好ましくは突然変異体触媒ドメインを有するβ(1,4)−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼの群から選択される。適当な触媒及びその突然変異体は、全て参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/065661号、国際公開第2016/022027号及び国際出願PCT/EP2016/059194に開示されている。一実施形態において、触媒は、野生型ガラクトシルトランスフェラーゼ又はN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、好ましくはN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼである。代替実施形態において、触媒は、突然変異体ガラクトシルトランスフェラーゼ又はN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、好ましくは突然変異体N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼである。国際公開第2016/022027号及び国際出願PCT/EP2016/059194に記載されている突然変異体酵素が殊に好ましい。
これらのガラクトシルトランスフェラーゼ(突然変異体)酵素触媒は、内部糖類及び糖誘導体をアクセプターとして認識することができる。したがって、糖誘導体S(F1)xは、ステップ(i)におけるコア−GlcNAc置換基に連結されており、上記GlcNAcがフコシル化されているか又はいないかには関わらない。
ステップ(i)は、例えばホスフェート、緩衝生理食塩水(例えばホスフェート−緩衝生理食塩水、トリス−緩衝生理食塩水)、シトレート、HEPES、トリス及びグリシンなどの適当な緩衝溶液中で好ましくは実施される。適当な緩衝液は、当技術分野において知られている。緩衝溶液は、ホスフェート−緩衝生理食塩水(PBS)又はトリス緩衝液であることが好ましい。ステップ(i)は、好ましくは約4℃〜約50℃の範囲、より好ましくは約10℃〜45℃の範囲、いっそう好ましくは約20℃〜約40℃の範囲、及び最も好ましくは約30℃〜約37℃の範囲における温度で実施される。ステップ(i)は、約5〜約9の範囲、好ましくは約5.5〜約8.5の範囲、より好ましくは約6〜約8の範囲におけるpHで好ましくは実施される。ステップ(i)は、約7〜約8の範囲におけるpHで実施されるのが最も好ましい。
ステップ(ii)
ステップ(ii)において、修飾抗体は、官能基F1と反応できる官能基Q1及びリンカーL2を介してQ1に接続されている標的分子Dを含むリンカー−コンジュゲートと反応させることで、リンカーLがS−Z3−L2を含むとともにZ3がQ1とF1との間の反応から生じる接続基である抗体−コンジュゲートを得る。リンカー−コンジュゲート及びその好ましい実施形態は、さらに下記で定義されている。リンカーL2は、好ましくは、式(1)に従った基又はその塩を含み、上記リンカーは、下記でさらに定義されている。
修飾抗体の官能基F1の相補的官能基Q1は、当技術分野において知られている。例えば、F1がアジド基である場合、アジド−修飾抗体及びリンカー−コンジュゲートの連結は、好ましくは付加環化反応を介して行われる。次いで、官能基Q1は、アルキニル基、好ましくは末端アルキニル基、及び(ヘテロ)シクロアルキニル基からなる群から好ましくは選択される。例えば、F1がケト基である場合、リンカー−コンジュゲートとのケト−修飾抗体の連結は、ヒドロキシルアミン誘導体又はヒドラジンとの選択的コンジュゲーションを介して好ましくは行われ、それぞれオキシム又はヒドラゾンをもたらす。次いで、官能基Q1は、好ましくは第1級アミノ基、例えば−NH2基、アミノオキシ基、例えば−O−NH2、又はヒドラジニル基、例えば−N(H)NH2である。次いで、リンカー−コンジュゲートは、好ましくはそれぞれH2N−L2(D)r、H2N−O−L2(D)r又はH2N−N(H)−L2(D)rである。例えば、F1がアルキニル基である場合、リンカー−コンジュゲートとのアルキン−修飾抗体の連結は、付加環化反応、好ましくは1,3−二極性付加環化を介して好ましくは行われる。次いで、官能基Q1は、好ましくは、アジド、ニトロン又はニトリルオキシドなどの1,3−双極子である。次いで、リンカー−コンジュゲートは、好ましくはN3−L2(D)rである。
好ましい実施形態において、ステップ(ii)において、本発明によるアジド−修飾抗体のアジドは、付加環化反応を介してリンカー−コンジュゲートのアルキニル基、好ましくは末端アルキニル基、又は(ヘテロ)シクロアルキニル基と反応する。末端アルキニル基又は(ヘテロ)シクロアルキニル基を含む分子とのアジドを含む分子の上記付加環化反応は、当技術分野において「クリックケミストリー」として知られている反応のうちの1つである。末端アルキニル基を含むリンカー−コンジュゲートの場合において、上記付加環化反応は、適当な触媒、好ましくはCu(I)触媒の存在下で実施される必要がある。しかしながら、好ましい実施形態において、リンカー−コンジュゲートは、(ヘテロ)シクロアルキニル基、より好ましくは歪み(ヘテロ)シクロアルキニル基を含む。(ヘテロ)シクロアルキニルが歪み(ヘテロ)シクロアルキニル基である場合、触媒の存在は必要とされず、上記反応は、歪み促進アジド−アルキン付加環化(SPAAC)と呼ばれる反応によって自然発生的に起きることさえある。上記反応は、当技術分野において「金属フリークリックケミストリー」として知られている反応のうちの1つである。歪み(ヘテロ)シクロアルキニル基は、当技術分野において知られており、より詳細に下記で記載されている。
そのため、好ましい実施形態において、ステップ(ii)は、修飾抗体をリンカー−コンジュゲートと反応させることを含み、ここで、上記リンカー−コンジュゲートは、(ヘテロ)シクロアルキニル基及び目的のうちの1個又は複数の分子を含み、上記修飾抗体は、GlcNAc−S(F1)x置換基を含む抗体であり、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンであり、S(F1)xは、F1がアジド基であるとともにxが1又は2であるx個の官能基F1を含む糖誘導体であり、上記GlcNAc−S(F1)x置換基は、上記GlcNAc−S(F1)x置換基のN−アセチルグルコサミンのC1を介して抗体に結合しており、上記GlcNAcは、任意選択でフコシル化されている。さらに好ましい実施形態において、上記(ヘテロ)シクロアルキニル基は歪み(ヘテロ)シクロアルキニル基である。
標的分子Dは、活性物質、レポーター分子、ポリマー、固体表面、ヒドロゲル、ナノ粒子、微小粒子及び生体分子からなる群から選択することができる。
Dの文脈において、「活性物質」という用語は、薬理学的及び/又は生物学的物質、即ち、生物学的に及び/又は薬学的に活性である物質、例えば薬物、プロドラッグ、診断剤、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドタグ、アミノ酸、グリカン、脂質、ビタミン、ステロイド、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ポリヌクレオチド、RNA又はDNAに関する。ペプチドタグの例としては、ヒトのラクトフェリン又はポリアルギニンのような細胞透過性ペプチドが挙げられる。グリカンの例はオリゴマンノースである。アミノ酸の例はリシンである。
標的分子が活性物質である場合、活性物質は、薬物及びプロドラッグからなる群から好ましくは選択される。活性物質は、薬学的に活性な化合物、特に低〜中分子量化合物(例えば約200〜約2500Da、好ましくは約300〜約1750Da)からなる群から選択されるのがより好ましい。さらに好ましい実施形態において、活性物質は、細胞毒、抗ウイルス剤、抗細菌剤、ペプチド及びオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。細胞毒の例としては、コルヒチン、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、カンプトテシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキサン、カリケアマイシン、ツブリシン、イリノテカン、エンジイン、阻害性ペプチド、アマニチン、deBouganin、デュオカルマイシン、メイタンシン、オーリスタチン、インドリノベンゾジアゼピン又はピロロベンゾジアゼピン(PBD)が挙げられる。活性物質の難水溶性を勘案して、好ましい活性物質としては、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、カンプトテシン、タキサン、ツブリシン、アマニジン、デュオカルマイシン、メイタンシン、オーリスタチン、インドリノベンゾジアゼピン及びピロロベンゾジアゼピン、特にビンカアルカロイド、アントラサイクリン、カンプトテシン、タキサン、ツブリシン、アマニジン、メイタンシン、及びオーリスタチンが挙げられる。
「レポーター分子」という用語は、本明細書において、存在が容易に検出される分子、例えば診断剤、色素、フルオロフォア、放射性同位元素標識、コントラスト剤、磁気共鳴画像剤又は質量標識を指す。
蛍光プローブとも称される多種多様なフルオロフォアは、当業者に知られている。いくつかのフルオロフォアが、例えば、参照により組み込まれるG.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」、Elsevier、第3版、2013、10章:「Fluorescent probes」、395〜463ページにより詳細に記載されている。フルオロフォアの例としては、Alexa Fluorの全ての種類(例えばAlexa Fluor 555)、シアニン色素(例えばCy3又はCy5)及びシアニン色素誘導体、クマリン誘導体、フルオレセイン及びフルオレセイン誘導体、ローダミン及びローダミン誘導体、ホウ素ジピロメテン誘導体、ピレン誘導体、ナフタルイミド誘導体、フィコビリンタンパク質誘導体(例えばアロフィコシアニン)、クロモマイシン、ランタニドキレート、並びに量子ドットナノ結晶が挙げられる。フルオロフォアの難水溶性を勘案して、好ましいフルオロフォアとしては、シアニン色素、クマリン誘導体、フルオレセイン及びその誘導体、ピレン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クロモマイシン、ランタニドキレート、並びに量子ドットナノ結晶、特にクマリン誘導体、フルオレセイン、ピレン誘導体及びクロモマイシンが挙げられる。
放射性同位元素標識の例としては、例えばDTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸無水物)、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N’’’−四酢酸)、NOTA(1,4,7−トリアザシクロノナンN,N’,N”−三酢酸)、TETA(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N”,N’’’−四酢酸)、DTTA(N1−(p−イソチオシアナトベンジル)−ジエチレントリアミン−N1,N2,N3,N3−四酢酸)、デフェロキサミン又はDFA(N’−[5−[[4−[[5−(アセチルヒドロキシアミノ)ペンチル]アミノ]−1,4−ジオキソブチル]ヒドロキシアミノ]ペンチル]−N−(5−アミノペンチル)−N−ヒドロキシブタンジアミド)又はHYNIC(ヒドラジノニコチンアミド)などのキレート化性部分を介して任意選択で接続されている99mTc、111In、114mIn、115In、18F、14C、64Cu、131I、125I、123I、212Bi、88Y、90Y、67Cu、186Rh、188Rh、66Ga、67Ga及び10Bが挙げられる。同位体標識化技法は当業者に知られており、例えば、参照により組み込まれるG.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」、Elsevier、第3版、2013、12章:「Isotopic labelling techniques」、507〜534ページに、より詳細に記載されている。
本発明による化合物における標的分子Dとしての使用に適当なポリマーは、当業者に知られており、いくつかの例が、例えば、参照により組み込まれるG.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」、Elsevier、第3版、2013、18章:「PEGylation and synthetic polymer modification」、787〜838ページに、より詳細に記載されている。標的分子Dがポリマーである場合、標的分子Dは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、1,xx−ジアミノアルカンポリマー(ここでxxは、アルカンにおける炭素原子の数であり、好ましくは、xxは、2〜200、好ましくは2〜10の範囲における整数である)、(ポリ)エチレングリコールジアミン(例えば、1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン、及びより長いエチレングリコール鎖を含む同等物)、多糖類(例えばデキストラン)、ポリ(アミノ酸)(例えばポリ(L−リシン))及びポリ(ビニルアルコール)からなる群から好ましくは独立して選択される。ポリマーの難水溶性を勘案して、好ましいポリマーとしては、1,xx−ジアミノアルカンポリマー及びポリ(ビニルアルコール)が挙げられる。
標的分子Dとしての使用に適当な固体表面は、当業者に知られている。固体表面は、例えば官能性表面(例えば、ナノ物質、炭素ナノチューブ、フラーレン又はウイルスカプシドの表面)、金属表面(例えば、チタン、金、銀、銅、ニッケル、スズ、ロジウム又は亜鉛の表面)、金属合金表面(ここで合金は、例えばアルミニウム、ビスマス、クロミウム、コバルト、銅、ガリウム、金、インジウム、鉄、鉛、マグネシウム、水銀、ニッケル、カリウム、プルトニウム、ロジウム、スカンジウム、銀、ナトリウム、チタン、スズ、ウラン、亜鉛及び/又はジルコニウム由来である)、ポリマー表面(ここでポリマーは、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(ジメチルシロキサン)又はポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミドである)、ガラス表面、シリコーン表面、クロマトグラフィー支持体表面(ここでクロマトグラフィー支持体は、例えばシリカ支持体、アガロース支持体、セルロース支持体又はアルミナ支持体である)などである。標的分子Dが固体表面である場合、Dは、官能性表面又はポリマー表面からなる群から独立して選択されることが好ましい。
ヒドロゲルは当業者に知られている。ヒドロゲルは、ポリマー性構成要素間の架橋によって形成される水膨張ネットワークである。例えば、参照により組み込まれるA.S.Hoffman、Adv.Drug Delivery Rev.2012、64、18を参照されたい。標的分子がヒドロゲルである場合、ヒドロゲルは、ポリマー基準としてポリ(エチレン)グリコール(PEG)で構成されていることが好ましい。
標的分子Dとしての使用に適当なミクロ及びナノ粒子は、当業者に知られている。様々な適当なミクロ及びナノ粒子は、例えば、参照により組み込まれるG.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」、Elsevier、第3版、2013、14章:「Microparticles and nanoparticles」、549〜587ページに記載されている。ミクロ又はナノ粒子は、任意の形状、例えば球体、ロッド、チューブ、立方体、三角形及び円錐であり得る。ミクロ又はナノ粒子は球状形状であることが好ましい。ミクロ−及びナノ粒子の化学組成は変動し得る。標的分子Dがミクロ又はナノ粒子である場合、ミクロ又はナノ粒子は、例えば、ポリマー性ミクロ若しくはナノ粒子、シリカミクロ若しくはナノ粒子、又は金ミクロ若しくはナノ粒子である。粒子がポリマー性ミクロ又はナノ粒子である場合、ポリマーは、好ましくはポリスチレン、又はスチレンのコポリマー(例えば、スチレン及びジビニルベンゼン、ブタジエン、アクリレート及び/又はビニルトルエンのコポリマー)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルトルエン、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート(pHEMA)又はポリエチレングリコールジメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート)[ポリ(EDGMA/HEMA)]である。任意選択で、ミクロ又はナノ粒子の表面は、二次ポリマーのグラフト重合によって、又は別のポリマー若しくはスペーサー部分などの共有結合によって、例えば洗剤で修飾されている。
標的分子Dは生体分子でもあり得る。生体分子及びその好ましい実施形態は、より詳細に下記に記載されている。標的分子Dが生体分子である場合、生体分子は、タンパク質(糖タンパク質及び抗体を含む)、ポリペプチド、ペプチド、グリカン、脂質、核酸、オリゴヌクレオチド、多糖類、オリゴ糖類、酵素、ホルモン、アミノ酸及び単糖類からなる群から選択されることが好ましい。
Dのための好ましい選択肢は、第3の態様による抗体−コンジュゲートについてさらに下記で記載されている。本発明の文脈におけるバイオコンジュゲートは、同じ又は異なっていてもよい1つ超の標的分子Dを含有することができる。
リンカー−コンジュゲートは、(ヘテロ)シクロアルキニル基を含むことが好ましい。好ましい実施形態において、上記リンカー−コンジュゲートは、式(31):
(式中:
L2は、本明細書において定義されている通りのリンカーであり;
Dは、標的分子であり;
rは、1〜20であり;
R31は、水素、ハロゲン、−OR35、−NO2、−CN、−S(O)2R35、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択され、ここでアルキル基、(ヘテロ)アリール基、アルキル(ヘテロ)アリール基及び(ヘテロ)アリールアルキル基は任意選択で置換されており、2個の置換基R31は一緒に連結されて縮環シクロアルキル又は縮環(ヘテロ)アレーン置換基を形成することができ、R35は、水素、ハロゲン、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択され;
Xは、C(R31)2、O、S又はNR32であり、ここでR32は、R31又はL2(D)rであり、L2、D及びrは、上で定義されている通りであり;
qは、0又は1であるが、qが0であるならばXはNL2(D)rであることを条件とし;
aaは、0、1、2、3、4、5、6、7又は8である)を有する。
別の好ましい実施形態において、上記リンカー−コンジュゲートは、式(31b):
(式中:
L2は、本明細書において定義されている通りのリンカーであり;
Dは、標的分子であり;
rは、1〜20であり;
R31は、水素、ハロゲン、−OR35、−NO2、−CN、−S(O)2R35、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択され、ここでアルキル基、(ヘテロ)アリール基、アルキル(ヘテロ)アリール基及び(ヘテロ)アリールアルキル基は任意選択で置換されており、2個の置換基R31は一緒に連結されて縮環シクロアルキル又は縮環(ヘテロ)アレーン置換基を形成することができ、R35は、水素、ハロゲン、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択され;
Xは、C(R31)2、O、S又はNR32であり、ここでR32はR31又はL2(D)rであり、L2、D及びrは、上で定義されている通りであり;
qは、0又は1であるが、qが0であるならばXはNL2(D)rであることを条件とし;
aaは、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
aa’は、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
aa+aa’<10である)を有する。
さらに好ましい実施形態において、aa+aa’は、4、5、6又は7であり、aa+aa’は4、5又は6であるのがより好ましく、aa+aa’は5であるのが最も好ましい。
好ましい実施形態において、qが1であるならば、XはC(R31)2、O、S又はNR31である。
別の好ましい実施形態において、aは5であり、即ち、上記(ヘテロ)シクロアルキニル基は、好ましくは(ヘテロ)シクロオクチン基である。別の好ましい実施形態において、XはC(R32)2又はNR32である。XがC(R32)2である場合、R32は水素であることが好ましい。XがNR32である場合、R32はL2(D)rであることが好ましい。なお別の好ましい実施形態において、rは1〜10であり、rは1、2、3、4、5、67又は8であるのがより好ましく、rは1、2、3、4、5又は6であるのがより好ましく、rは1、2、3又は4であるのが最も好ましい。
L2(D)r置換基は、上記(ヘテロ)シクロアルキニル基におけるC原子上に、又はヘテロシクロアルキニル基の場合においては上記ヘテロシクロアルキニル基のヘテロ原子上に存在することができる。(ヘテロ)シクロアルキニル基が、置換基、例えば縮環シクロアルキルを含む場合、L2(D)r置換基は、上記置換基に存在することもできる。
リンカー−コンジュゲートを得るために、リンカーL2を一方の端部の(ヘテロ)シクロアルキニル基に及び他方の端部の標的分子に接続するための方法は、リンカー、(ヘテロ)シクロアルキニル基及び標的分子の正確にどのような性質を有するかに依存する。適当な方法は、当技術分野において知られている。
リンカー−コンジュゲートは、(ヘテロ)シクロオクチン基、より好ましくは歪み(ヘテロ)シクロオクチン基を含むことが好ましい。適当な(ヘテロ)シクロアルキニル部分は、当技術分野において知られている。例えばDIFO、DIFO2及びDIFO3は、参照により組み込まれる米国特許出願公開第2009/0068738号に開示されている。DIBOは、参照により組み込まれる国際公開第2009/067663号に開示されている。DIBOは、任意選択で、J.Am.Chem.Soc.2012、134、5381に開示されている通りの硫酸化(S−DIBO)であり得る。BARACは、全て参照により組み込まれるJ.Am.Chem.Soc.2010、132、3688〜3690及び米国特許出願公開第2011/0207147号に開示されている。
(ヘテロ)シクロオクチン基を含むリンカー−コンジュゲートの好ましい例は、下記に示されている。
当技術分野において知られている他のシクロオクチン部分は、DIBAC(ADIBO又はDBCOとしても知られている)及びBCNである。DIBACは、参照により組み込まれるChem.Commun.2010、46、97〜99に開示されている。BCNは、参照により組み込まれる国際公開第2011/136645号に開示されている。
好ましい実施形態において、上記リンカー−コンジュゲートは、式(32)、(33)、(34)、(35)又は(36)を有する。
別の好ましい実施形態において、上記リンカー−コンジュゲートは、式(37):
(式中:
R1、L2、D及びrは、上で定義されている通りであり;
Yは、O、S又はNR32であり、ここでR32は、上で定義されている通りであり;
R33は、水素、ハロゲン、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択され;
R34は、水素、Y−L2(D)r、−(CH2)nn−Y−L2(D)r、ハロゲン、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、アルキル基は、O、N及びSからなる群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アルキル(ヘテロ)アリール基及び(ヘテロ)アリールアルキル基は、独立して任意選択で置換されており;並びに
nnは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である)を有する。
さらに好ましい実施形態において、R31は水素である。別の好ましい実施形態において、R33は水素である。別の好ましい実施形態において、nは1又は2である。別の好ましい実施形態において、R34は水素、Y−L2(D)r又は−(CH2)nn−Y−L2(D)rである。別の好ましい実施形態において、R32は水素又はL2(D)rである。さらに好ましい実施形態において、リンカー−コンジュゲートは、式38:
(式中、Y、L2、D、nn及びrは、上で定義されている通りである)を有する。
別の好ましい実施形態において、上記リンカー−コンジュゲートは、式(39):
(式中、L2、D及びrは、上で定義されている通りである)を有する。
別の好ましい実施形態において、上記リンカー−コンジュゲートは、式(35):
(式中、L2、D及びrは、上で定義されている通りである)を有する。
ppの値及びMの性質は、リンカー−コンジュゲートに連結されている本発明によるアジド−修飾抗体に存在するアジド置換糖又は糖誘導体S(F1)xに依存する。S(F1)xにおけるアジドが、糖又は糖誘導体のC2位、C3位又はC4位(糖OH基の代わり)に存在するならば、ppは0である。S(F1)xがアジドアセトアミド−2−デオキシ−糖誘導体、S(F1)xが例えばGalNAz又はGlcNAzであるならば、ppは1であり、Mは−N(H)C(O)CH2−である。S(F1)xにおけるアジドが、糖又は糖誘導体のC6位に存在するならば、ppは0であり、Mは存在しない。
連結単位とも称されるリンカー(L2)は、当技術分野においてよく知られている。本明細書に記載されている通りのリンカー−コンジュゲートにおいて、Lは、標的分子及び官能基Q1に連結される。L2は、例えば、直鎖又は分枝のC1〜C200アルキレン基、C2〜C200アルケニレン基、C2〜C200アルキニレン基、C3〜C200シクロアルキレン基、C5〜C200シクロアルケニレン基、C8〜C200シクロアルキニレン基、C7〜C200アルキルアリーレン基、C7〜C200アリールアルキレン基、C8〜C200アリールアルケニレン基、C9〜C200アリールアルキニレン基からなる群から選択することができる。任意選択で、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、置換されていてもよく、任意選択で上記基は、1個又は複数のヘテロ原子、好ましくは1〜100個のヘテロ原子によって中断されていてもよく、上記ヘテロ原子は、O、S及びNR35からなる群から好ましくは選択され、ここでR35は、水素、ハロゲン、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択される。ヘテロ原子はOであるのが最も好ましい。適当な連結単位の例としては、(ポリ)エチレングリコールジアミン鎖(例えば、1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン、又はより長いエチレングリコール鎖を含む同等物)、ポリエチレングリコール鎖又はポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレングリコール鎖又はポリプロピレンオキシド鎖、及びxxがアルカンにおける炭素原子の数である1,xx−ジアミノアルカンが挙げられる。
適当なリンカーの別のクラスは、切断可能なリンカーを含む。切断可能なリンカーは、当技術分野においてよく知られている。例えば、参照により本明細書に組み込まれるShabatら、Soft Matter 2012、6、1073は、生物学的トリガー、例えば酵素的切断又は酸化事象で放出する自己犠牲部分を含む切断可能なリンカーを開示している。適当な切断可能なリンカーの一部の例は、プロテアーゼ、例えばカテプシン、プラスミン若しくはメタロプロテアーゼによる特異的認識で切断されるペプチド−リンカー、又はグリコシダーゼ、例えばグルクロニダーゼ、若しくは酸素の乏しい低酸素性部域で低減されるニトロ芳香族による特異的認識で切断されるグリコシドベースのリンカーである。
好ましいリンカーL2は、「スルファミド連結」の実施形態について、並びに第3の態様による抗体−コンジュゲートについてさらに下記に定義されている。好ましいリンカー−コンジュゲートは、さらに下記でも定義されている。
ステップ(ii)は、好ましくは、約20℃〜約50℃の範囲、より好ましくは約25℃〜約45℃の範囲、いっそう好ましくは約30℃〜40℃の範囲、及び最も好ましくは約32℃〜約37℃の範囲における温度で実施される。ステップ(ii)は、約5〜約9の範囲、好ましくは約5.5〜約8.5の範囲、より好ましくは約6〜約8の範囲におけるpHで好ましくは実施される。ステップ(ii)は、約7〜約8の範囲におけるpHで実施されるのが最も好ましい。ステップ(ii)は、好ましくは水中で実施される。上記水は、精製水であるのがより好ましい、いっそう好ましくは超純水、又はISO 3696に従って定義されている通りのI型の水である。適当な水は、例えばミリQ(milliQ)(登録商標)水である。上記水は、例えばホスフェート−緩衝生理食塩水又はトリスで好ましくは緩衝処理されている。適当な緩衝液は、当業者に知られている。好ましい実施形態において、ステップ(ii)は、ホスフェート−緩衝生理食塩水又はトリスで緩衝処理されているmilliQ水中で実施される。
一実施形態において、ステップ(ii)の反応は、
(式中、環Aは、7〜10員の(ヘテロ)環状部分である)によって表される(10e)、(10i)又は(10g)によって、好ましくは(10g)によって表される接続部分Z3を形成するための(シクロ)アルキン−アジドコンジュゲーションである。
コンジュゲーションの本モードを含む又はコンジュゲーションの本モードによって得られるバイオコンジュゲートは、式(40)又は(40b):
(式中:
ABは抗体であり、Sは、糖又は糖誘導体であり、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンであり;
R31は、水素、ハロゲン、−OR35、−NO2、−CN、−S(O)2R35、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択され、ここでアルキル基、(ヘテロ)アリール基、アルキル(ヘテロ)アリール基及び(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換されており、2個の置換基R31は一緒に連結されて縮環シクロアルキル又は縮環(ヘテロ)アレーン置換基を形成することができ、R35は、水素、ハロゲン、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択され;
Xは、C(R31)2、O、S又はNR32であり、ここでR32はR31又はL2(D)rであり、ここでL2はリンカーであり、Dは請求項1に定義されている通りであり;
rは、1〜20であり;
qは、0又は1であるが、qが0であるならばXはNL2(D)rであることを条件とし;
aaは、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
aa’は、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
aa+aa’<10であり;
bは、0又は1であり;
ppは、0又は1であり;
Mは、−N(H)C(O)CH2−、−N(H)C(O)CF2−、−CH2−、−CF2−、又は0〜4個のフッ素置換基、好ましくは、フェニレンのC2及びC6に又はC3及びC5に好ましくは位置する2個のフッ素置換基を含有する1,4−フェニレンであり;
yは、1〜4であり;
Fucは、フコースである)によって好ましくは表される。
好ましい実施形態において、本発明による抗体−コンジュゲートは、式(41):
(式中、AB、L2、D、Y、S、M、x、y、b、pp、R32、GlcNAc、R31、R33、R34、nn及びrは、上で定義されている通りであり、上記N−アセチルグルコサミンは、任意選択でフコシル化されている(bは0又は1である))
の抗体−コンジュゲートである。
さらに好ましい実施形態において、R31、R33及びR34は水素であり、nnは1又は2であり、いっそう好ましい実施形態において、xは1である。
別の好ましい実施形態において、抗体−コンジュゲートは、式(42):
(式中、AB、L2、D、X、S、b、pp、x、y、M及びGlcNAcは、上で定義されている通りであり、上記N−アセチルグルコサミンは任意選択でフコシル化されている(bは0又は1である))
の抗体−コンジュゲートであり;又は位置異性体(42b):
(式中、AB、L2、D、X、S、b、pp、x、y、M及びGlcNAcは、上で定義されている通りであり、上記N−アセチルグルコサミンは任意選択でフコシル化されている)に従っている。
別の好ましい実施形態において、抗体−コンジュゲートは、式(35b):
(式中、AB、L2、D、X、S、b、pp、x、y、M及びGlcNAcは、上で定義されている通りであり、上記N−アセチルグルコサミンは任意選択でフコシル化されている)の抗体−コンジュゲートである。
スルファミド連結
一実施形態において、本発明によるコンジュゲーションのモードは、生体分子B及び標的分子Dを連結する特定のリンカーLの存在を指す「スルファミド連結」と称される。本実施形態の文脈におけるリンカーLについて言われている全ては、コンジュゲーションのモードとしてのコア−GlcNAc官能化の実施形態によるリンカー、特にリンカーL2にも好ましくは当てはまる。リンカーLは、式(1)に従った基又はその塩:
(式中:
aは、0又は1であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択され、又はR1は、さらなる標的分子Dであり、ここでDは、スペーサー部分を介してNに任意選択で接続されている)を含む。
式(1)の基が塩を含む場合、塩は、好ましくは薬学的に許容される塩である。
好ましい実施形態において、本発明によるリンカーLは、aが0である式(1)に従った基、又はその塩を含む。この実施形態において、リンカーLは、したがって、式(2)に従った基又はその塩:
(式中、R1は、上で定義されている通りである)を含む。
別の好ましい実施形態において、本発明によるリンカーLは、aが1である式(1)に従った基又はその塩を含む。この実施形態において、リンカーLは、したがって、式(3)に従った基又はその塩:
(式中、R1は、上で定義されている通りである)を含む。
式(1)、(2)及び(3)に従った基において、R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される、又はR1は、さらなる標的分子Dであり、ここでDは、スペーサー部分を介してNに任意選択で接続されている;
好ましい実施形態において、R1は水素又はC1〜C20アルキル基であり、R1は水素又はC1〜C16アルキル基であるのがより好ましく、R1は水素又はC1〜C10アルキル基であるのがいっそう好ましく、ここでアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3、好ましくはOから選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される。好ましい実施形態において、R1は水素である。別の好ましい実施形態において、R1は、C1〜C20アルキル基、より好ましくはC1〜C16アルキル基、いっそう好ましくはC1〜C10アルキル基であり、ここでアルキル基は、1個又は複数のO原子によって任意選択で中断されており、アルキル基は、−OH基、好ましくは末端−OH基で任意選択で置換されている。この実施形態において、R1は、末端−OH基を含む(ポリ)エチレングリコール鎖であることがさらに好ましい。別の好ましい実施形態において、R1は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルからなる群から、より好ましくは水素、メチル、エチル、n−プロピル及びi−プロピルからなる群、並びにいっそう好ましくは水素、メチル及びエチルからなる群から選択される。R1は水素又はメチルであるのがなおいっそう好ましく、R1は水素であるのが最も好ましい。
別の好ましい実施形態において、R1はさらなる標的分子Dである。任意選択で、Dは、1つ又は複数のスペーサー部分を介してNに接続されている。スペーサー部分は、存在するならば、DとNとの間に間隔をあける部分、即ち、DとNとの間にある特定の距離を提供し、D及びNを共有結合的に連結する部分として定義されている。
標的分子D及びその好ましい実施形態は、より詳細に上で定義されている。
式(A)のバイオコンジュゲートを得るため、式(1)の基は、3つの選択肢のうちの1つに導入することができる。まず第1に、式(1)に従った基又はその塩を含むリンカーLは、Q1−Dによって表されるリンカー−コンジュゲートに存在することができ、ここでLは、Q1とDとの間のスペーサーである。第2に、式(1)に従った基又はその塩を含むリンカーLは、B−F1によって表される生体分子に存在することができ、ここでLは、BとF1との間のスペーサーである。第3に、式(1)に従った基又はその塩は、コンジュゲーション反応それ自体中に形成することができる。後者の選択肢において、Q1及びF1は、それらの反応生成物、即ち接続基Z3が、式(1)に従った基若しくはその塩を含有するか、又は式(1)に従った基若しくはその塩であるように選択される。式(1)に従った基又はその塩は、上に記述されている選択肢のうちの第1又は第2に従って導入されることが好ましく、最も好ましくは第1の選択肢に従って導入される。式(1)に従った基又はその塩が、コンジュゲーション反応中にそのままで、すでに存在する場合において、インプロセス凝集の可溶性及び非存在に対するプラス効果は、上で述べた通り、コンジュゲーション反応の効率を改善する。式(1)に従った基又はその塩がリンカー−コンジュゲートに存在する場合において、疎水性薬物さえコンジュゲーション反応に容易にかけられ得る。
リンカー−コンジュゲート
リンカー−コンジュゲートは、Q1−Dによって、好ましくはQ1−L−Dによって表され、ここで、Dは標的分子であり、Lは、上でさらに定義されている通りのQ1及びDを連結するリンカーであり、Q1は、生体分子の官能基F1と反応できる反応性基であり、「−」の各出現は、独立して、結合又はスペーサー部分である。一実施形態において、「−」は、本明細書において定義されている通りのスペーサー部分である。一実施形態において、「−」は、結合、典型的には共有結合である。リンカー−コンジュゲートは、標的分子が、好ましくはリンカー又はスペーサーを介して、最も好ましくは上で定義されている通りのリンカーLを介して、反応性基Q1に共有結合的に接続されている化合物である。リンカー−コンジュゲートは、リンカー−コンストラクトに存在する反応性基Q2と標的分子に存在する反応性基との反応を介して得ることができる。
式(1)に従った基又はその塩は、Q1とDとの間に位置することが好ましい。言い換えると、反応性基Q1は、式(1)に従った基の第1の端部に共有結合しており、標的分子Dは、式(1)に従った基の第2の端部に共有結合している。本明細書において、「第1の端部」及び「第2の端部」は両方とも、式(1)に従った基のカルボニル端部若しくはカルボキシ端部、又は式(1)に従った基のスルファミド端部のいずれかを指すが、論理的には同じ端部を指していない。
当業者によって理解される通り、本発明によるリンカー−コンジュゲートは、1つ超の標的分子D、例えば2つ、3つ、4つ、5つなどを含むことができる。その結果として、リンカー−コンジュゲートは、したがって、1つ超の「第2の端部」を含むことができる。同様に、リンカー−コンジュゲートは、1つ超の反応性基Q1を含むことができ、即ち、リンカー−コンジュゲートは、1つ超の第1の端部を含むことができる。1つ超の反応性基Q1が存在する場合、Q1基は同じ又は異なっていてもよく、1つ超の標的分子Dが存在する場合、標的分子Dは同じ又は異なっていてもよい。
本発明によるリンカー−コンジュゲートは、そのため、(Q1)y’Sp(D)zとして示すこともでき、ここでy’は1〜10の範囲における整数であり、zは1〜10の範囲における整数である。本明細書において:
y’は、1〜10の範囲における整数であり;
zは、1〜10の範囲における整数であり;
Q1は、生体分子に存在する官能基F1と反応できる反応性基であり;
Dは、標的分子であり;
Spは、スペーサー部分であり、ここでスペーサー部分は、反応性基Q1及び標的分子Dの間隔をあける(即ち、間にある特定の距離を提供する)とともに反応性基Q1及び標的分子Dを共有結合的に連結する部分として定義されており、好ましくはここで、上記スペーサー部分は、上で定義されている通りのリンカーLであり、したがって、式(1)に従った基又はその塩を含む。
y’は1、2、3又は4であることが好ましく、y’は1又は2であるのがより好ましく、y’は1であるのが最も好ましい。zは1、2、3、4、5又は6であることが好ましく、zは1、2、3又は4であるのがより好ましく、zは1、2又は3であるのがいっそう好ましく、zは1又は2であるのがなおいっそう好ましく、zは1であるのが最も好ましい。y’は1又は2、好ましくは1であり、zは1、2、3又は4であるのがより好ましく、y’は1又は2、好ましくは1であり、zは1、2又は3であるのがなおいっそう好ましく、y’は1又は2、好ましくは1であり、zは1又は2であるのがなおいっそう好ましく、y’は1であり、zは1であるのが最も好ましい。好ましい実施形態において、リンカー−コンジュゲートは、式Q1Sp(D)4、Q1Sp(D)3、Q1Sp(D)2又はQ1SpDに従っている。
Dは、好ましくは「活性物質」又は「薬学的に活性な物質」であり、薬理学的及び/又は生物学的物質、即ち、生物学的及び/又は薬学的に活性である物質、例えば薬物、プロドラッグ、診断剤を指す。活性物質は、薬物及びプロドラッグからなる群から選択されることが好ましい。活性物質は、薬学的に活性な化合物、特に低〜中分子量化合物(例えば約200〜約2500Da、好ましくは約300〜約1750Da)であるのがより好ましい。さらに好ましい実施形態において、活性物質は、細胞毒、抗ウイルス剤、抗細菌剤、ペプチド及びオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。細胞毒の例としては、コルヒチン、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、カンプトテシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキサン、カリケアマイシン、ツブリシン、イリノテカン、エンジイン、阻害性ペプチド、アマニチン、deBouganin、デュオカルマイシン、メイタンシン、オーリスタチン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)又はインドリノベンゾジアゼピン(IBD)が挙げられる。好ましい活性物質としては、エンジイン、アントラサイクリン、カンプトテシン、タキサン、ツブリシン、アマニチン、デュオカルマイシン、メイタンシン、オーリスタチン、ピロロベンゾジアゼピン又はインドリノベンゾジアゼピン、特にエンジイン、アントラサイクリン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)が挙げられる。
上記リンカー−コンジュゲートは、生体分子に存在する官能基F1と反応できる反応性基Q1を含む。官能基は当業者に知られており、官能基を持つ分子に特定の特性を付与する任意の分子的実体として定義することができる。例えば、生体分子における官能基は、アミノ基、チオール基、カルボン酸、アルコール基、カルボニル基、ホスフェート基又は芳香族基を構成することができる。生体分子における官能基は、天然に存在し得るか、又は特定の技法、例えば(生)化学若しくは遺伝子技法によって生体分子に入れることができる。生体分子に入れられる官能基は、本来天然に存在する官能基であり得るか、又は化学合成、例えばアジド、末端アルキン若しくはホスフィン部分によって調製される官能基であり得る。本明細書において、「反応性基」という用語は、官能基を含むある特定の基を指すが、官能基それ自体を指すこともできる。例えば、シクロオクチニル基は、官能基、すなわちC−C三重結合を含む反応性基である。同様に、N−マレイミジル基は、官能基としてC−C二重結合を含む反応性基である。しかしながら、官能基、例えばアジド官能基、チオール官能基又はアミノ官能基は、本明細書において、反応性基とも称することができる。
リンカー−コンジュゲートは、1個超の反応性基Q1を含むことができる。リンカー−コンジュゲートが2個以上の反応性基Q1を含む場合、反応性基Q1は、互いに異なっていてもよい。リンカー−コンジュゲートは、1個の反応性基Q1を含むことが好ましい。
リンカー−コンジュゲートに存在する反応性基Q1は、生体分子に存在する官能基F1と反応することで、接続基Z3を形成することができる。言い換えると、反応性基Q1は、生体分子に存在する官能基F1に相補的であることが必要である。本明細書において、反応性基は、任意選択で他の官能基の存在下で、接続基Z3を形成するために官能基と選択的に反応する場合、官能基に「相補的」と示される。相補的反応性基及び官能基は、当業者に知られており、より詳細に下で記載されている。
好ましい実施形態において、反応性基Q1は、任意選択で置換されている、N−マレイミジル基、ハロゲン化N−アルキルアミド基、スルホニルオキシN−アルキルアミド基、エステル基、カーボネート基、ハロゲン化スルホニル基、チオール基若しくはその誘導体、アルケニル基、アルキニル基、(ヘテロ)シクロアルキニル基、ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イル]基、シクロアルケニル基、テトラジニル基、アジド基、ホスフィン基、ニトリルオキシド基、ニトロン基、ニトリルイミン基、ジアゾ基、ケトン基、(O−アルキル)ヒドロキシルアミノ基、ヒドラジン基、ハロゲン化N−マレイミジル基、1,1−ビス(スルホニルメチル)メチルカルボニル基若しくはその脱離誘導体、ハロゲン化カルボニル基、アレンアミド基、1,2−キノン基、又はトリアジン基からなる群から選択される。
好ましい実施形態において、Q1はN−マレイミジル基である。Q1がN−マレイミジル基である場合、Q1は、好ましくは非置換である。Q1はしたがって、好ましくは下記に示されている通りの式(9a)に従っている。こうしたマレイミジル基の好ましい例は、カルボン酸部分を介してリンカー−コンジュゲートの残部に接続することができる2,3−ジアミノプロピオン酸(DPR)マレイミジルである。
別の好ましい実施形態において、Q1はハロゲン化N−アルキルアミド基である。Q1がハロゲン化N−アルキルアミド基である場合、Q1は、下記で示されている通りの式(9b)に従っていることが好ましく、ここでkは、1〜10の範囲における整数であり、R4は、−Cl、−Br及び−Iからなる群から選択される。kは、1、2、3又は4であることが好ましく、kは1又は2であるのがより好ましく、kは1であるのが最も好ましい。R4は−I又は−Brであることが好ましい。kは1又は2であり、R4は−I又は−Brであるのがより好ましく、kは1であり、R4は−I又はBrであるのが最も好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1はスルホニルオキシN−アルキルアミド基である。Q1がスルホニルオキシN−アルキルアミド基である場合、Q1は、下記で示されている通りの式(9b)に従っていることが好ましく、ここで、kは1〜10の範囲における整数であり、R4は、−O−メシル、−O−フェニルスルホニル及び−O−トシルからなる群から選択される。kは1、2、3又は4であることが好ましく、kは1又は2であるのがより好ましく、kは1であるのがいっそう好ましい。kは1であり、R4は、−O−メシル、−O−フェニルスルホニル及び−O−トシルからなる群から選択されるのが最も好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1はエステル基である。Q1がエステル基である場合、エステル基は活性化エステル基であることが好ましい。活性化エステル基は、当業者に知られている。活性化エステル基は、本明細書において、良好な脱離基を含むエステル基として定義されており、ここでエステルカルボニル基は、上記良好な脱離基に結合している。良好な脱離基は、当業者に知られている。活性化エステルは、下記で示されている通りの式(9c)に従っているのがさらに好ましく、ここでR5は、−N−スクシンイミジル(NHS)、−N−スルホ−スクシンイミジル(スルホ−NHS)、−(4−ニトロフェニル)、−ペンタフルオロフェニル又は−テトラフルオロフェニル(TFP)からなる群から選択される。
別の好ましい実施形態において、Q1はカーボネート基である。Q1がカーボネート基である場合、カーボネート基は活性化カーボネート基であることが好ましい。活性化カーボネート基は、当業者に知られている。活性化カーボネート基は、本明細書において、良好な脱離基を含むカーボネート基として定義されており、ここでカーボネートカルボニル基は、上記良好な脱離基に結合している。カーボネート基は、下記で示されている通りの式(9d)に従っているのがさらに好ましく、ここでR7は、−N−スクシンイミジル、−N−スルホ−スクシンイミジル、−(4−ニトロフェニル)、−ペンタフルオロフェニル又は−テトラフルオロフェニルからなる群から選択される。
別の好ましい実施形態において、Q1は、下記で示されている通りの式(9e)に従ったハロゲン化スルホニル基であり、ここでXは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される。XはCl又はBrであることが好ましく、Clであるのがより好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1は、チオール基(9f)又はチオール基の誘導体若しくは前駆体である。チオール基はメルカプト基とも称され得る。Q1がチオール基の誘導体又は前駆体である場合、チオール誘導体は、好ましくは、下記で示されている通りの式(9g)、(9h)又は(9zb)に従っており、ここでR8は、任意選択で置換されているC1〜C12アルキル基又はC2〜C12(ヘテロ)アリール基であり、VはO又はSであり、R16は、任意選択で置換されているC1〜C12アルキル基である。R8は、任意選択で置換されているC1〜C6アルキル基又はC2〜C6(ヘテロ)アリール基であるのがより好ましく、R8はメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル又はフェニルであるのがいっそう好ましい。R8は、メチル又はフェニルであるのがいっそう好ましく、メチルであるのが最も好ましい。R16は、任意選択で置換されているC1〜C6アルキル基であるのがより好ましく、R16は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル又はt−ブチルであるのがいっそう好ましく、メチルであるのが最も好ましい。Q1が式(9g)又は(9zb)に従ったチオール−誘導体であり、Q1が生体分子の反応性基F1と反応させる場合、上記チオール−誘導体は、プロセス中にチオール基に変換される。Q1が式(9h)に従っている場合、Q1は−SC(O)OR8又は−SC(S)OR8、好ましくはSC(O)OR8であり、ここで、R8及びその好ましい実施形態は、上で定義されている通りである。
別の好ましい実施形態において、Q1はアルケニル基であり、ここでアルケニル基は直鎖又は分枝であり、アルケニル基は任意選択で置換されている。アルケニル基は、末端又は内部アルケニル基であり得る。アルケニル基は、1個超のC−C二重結合を含むことができ、そうであるならば、2個のC−C二重結合を好ましくは含む。アルケニル基がジエニル基である場合、2個のC−C二重結合は1個のC−C単結合によって隔てられていることがさらに好ましい(即ち、ジエニル基は、コンジュゲートされたジエニル基であることが好ましい)。上記アルケニル基は、C2〜C24アルケニル基であることが好ましく、C2〜C12アルケニル基であるのがより好ましく、C2〜C6アルケニル基であるのがいっそう好ましい。アルケニル基は末端アルケニル基であることがさらに好ましい。アルケニル基は、下記で示されている通りの式(9i)に従っているのがより好ましく、ここでlは、0〜10の範囲、好ましくは0〜6の範囲における整数であり、pは、0〜10の範囲、好ましくは0〜6における整数である。lは0、1、2、3又は4であるのがより好ましく、lは0、1又は2であるのがより好ましく、lは0又は1であるのが最も好ましい。pは0、1、2、3又は4であるのがより好ましく、pは0、1又は2であるのがより好ましく、pは0又は1であるのが最も好ましい。pは0であり、lは0若しくは1であるのが、又はpは1であり、lは0若しくは1であることが特に好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1はアルキニル基であり、ここでアルキニル基は直鎖又は分枝であり、アルキニル基は任意選択で置換されている。アルキニル基は、末端又は内部アルキニル基であり得る。上記アルキニル基はC2〜C24アルキニル基であることが好ましく、C2〜C12アルキニル基であるのがより好ましく、C2〜C6アルキニル基であるのがいっそう好ましい。アルキニル基は末端アルキニル基であることがさらに好ましい。アルキニル基は、下記で示されている通りの式(9j)に従っているのがより好ましく、ここでlは、0〜10の範囲、好ましくは0〜6の範囲における整数である。lは0、1、2、3又は4であるのがより好ましく、lは0、1又は2であるのがより好ましく、lは0又は1であるのが最も好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1はシクロアルケニル基である。シクロアルケニル基は、任意選択で置換されている。上記シクロアルケニル基は、C3〜C24シクロアルケニル基であることが好ましく、C3〜C12シクロアルケニル基であるのがより好ましく、C3〜C8シクロアルケニル基であるのがいっそう好ましい。好ましい実施形態において、シクロアルケニル基はtrans−シクロアルケニル基、より好ましくはtrans−シクロオクテニル基(TCO基とも称される)であり、最も好ましくは下記で示されている通りの式(9zi)又は(9zj)に従ったtrans−シクロオクテニル基である。別の好ましい実施形態において、シクロアルケニル基はシクロプロペニル基であり、ここでシクロプロペニル基は、任意選択で置換されている。別の好ましい実施形態において、シクロアルケニル基はノルボルネニル基、オキサノルボルネニル基、ノルボルナジエニル基又はオキサノルボルナジエニル基であり、ここで、ノルボルネニル基、オキサノルボルネニル基、ノルボルナジエニル基又はオキサノルボルナジエニル基は、任意選択で置換されている。さらに好ましい実施形態において、シクロアルケニル基は、下記で示されている通りの式(9k)、(9l)、(9m)又は(9zc)に従っており、ここでTはCH2又はOであり、R9は、水素、直鎖若しくは分枝のC1〜C12アルキル基又はC4〜C12(ヘテロ)アリール基からなる群から独立して選択され、R19は、水素及びフッ素化炭化水素からなる群から選択される。R9は独立して水素又はaC1〜C6アルキル基であることが好ましく、R9は独立して水素又はC1〜C4アルキル基であるのがより好ましい。R9は独立して水素又はメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル又はt−ブチルであるのがいっそう好ましい。R9は独立して水素又はメチルであるのがなおいっそう好ましい。さらに好ましい実施形態において、R19は、水素並びに−CF3、−C2F5、−C3F7及び−C4F9、より好ましくは水素及び−CF3の群から選択される。さらに好ましい実施形態において、シクロアルケニル基は、式(9k)に従っており、ここで一方のR9は水素であり、他方のR9はメチル基である。別のさらに好ましい実施形態において、シクロアルケニル基は、式(9l)に従っており、ここで両R9は水素である。これらの実施形態において、lは0又は1であることがさらに好ましい。別のさらに好ましい実施形態において、シクロアルケニル基は、式(9m)に従ったノルボルネニル(TはCH2である)基若しくはオキサノルボルネニル(TはOである)基又は式(9zc)に従ったノルボルナジエニル(TはCH2である)基若しくはオキサノルボルナジエニル(TはOである)基であり、ここでR9は水素であり、R19は水素又は−CF3、好ましくは−CF3である。
別の好ましい実施形態において、Q1は(ヘテロ)シクロアルキニル基である。(ヘテロ)シクロアルキニル基は、任意選択で置換されている。(ヘテロ)シクロアルキニル基は、(ヘテロ)シクロオクチニル基、即ちヘテロシクロオクチニル基又はシクロオクチニル基であることが好ましく、ここで(ヘテロ)シクロオクチニル基は、任意選択で置換されている。さらに好ましい実施形態において、(ヘテロ)シクロオクチニル基は、DIBO基とも称される式(9n)、DIBAC基とも称される式(9o)、又はBARAC基とも称される(9p)、又はCOMBO基とも称される(9zk)に従っており、全て下記で示されている通りであり、ここでUはO又はNR9であり、及びR9の好ましい実施形態は、上で定義されている通りである。(9n)における芳香族環は、1つ又は複数の位置で任意選択でO−スルホニル化されており、一方で、(9o)及び(9p)の環は、1つ又は複数の位置でハロゲン化されていてもよい。
殊に好ましい実施形態において、化合物(4b)におけるR1に結合している窒素原子は、ヘテロシクロアルキン基の環の窒素原子、例えば(9o)における窒素原子である。言い換えると、c、d及びgは、化合物(4b)において0であり、R1及びQ1は、それらが結合している窒素原子と一緒に、ヘテロシクロアルキン基、好ましくはヘテロシクロオクチン基、最も好ましくは式(9o)又は(9p)に従ったヘテロシクロオクチン基を形成する。本明細書において、(9o)のカルボニル部分は、式(1)に従った基のスルホニル基によって置き換えられている。代替として、R1が結合している窒素原子は、式(9n)においてUと指定される原子と同じ原子である。言い換えると、Q1が式(9n)に従っている場合、Uは式(1)に従った基の右の窒素原子であり得るか、又はU=NR9であり、R9は式(1)に従った基の残部であり、R1はシクロオクチン部分である。
別の好ましい実施形態において、Q1は、BCN基とも称される、任意選択で置換されているビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イル]基である。ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イル]基は、下記で示されている通りの式(9q)に従っていることが好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1は、Diels−Alder反応において反応できるコンジュゲートされた(ヘテロ)ジエン基である。好ましい(ヘテロ)ジエン基としては、任意選択で置換されているテトラジニル基、任意選択で置換されている1,2−キノン基及び任意選択で置換されているトリアジン基が挙げられる。上記テトラジニル基は、下記で示されている通りの式(9r)に従っているのがより好ましく、ここでR9は、水素、直鎖又は分枝のC1〜C12アルキル基又はC4〜C12(ヘテロ)アリール基からなる群から選択される。R9は水素、C1〜C6アルキル基又はC4〜C10(ヘテロ)アリール基であることが好ましく、R9は水素、C1〜C4アルキル基又はC4〜C6(ヘテロ)アリール基であるのがより好ましい。R9は水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル又はピリジルであるのがいっそう好ましい。R9は水素、メチル又はピリジルであるのがなおいっそう好ましい。上記1,2−キノン基は、式(9zl)又は(9zm)に従っているのがより好ましい。上記トリアジン基は、任意の位置異性体であり得る。上記トリアジン基は、式(9zn)において示されている位置など、任意の可能な位置を介して結合することができる1,2,3−トリアジン基又は1,2,4−トリアジン基であるのがより好ましい。1,2,3−トリアジンはトリアジン基として最も好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1は、下記で示されている通りの式(9s)に従ったアジド基である。
別の好ましい実施形態において、Q1は、Staudingerライゲーション反応を受けるのに適当である、任意選択で置換されているトリアリールホスフィン基である。ホスフィン基は、下記で示されている通りの式(9t)に従っていることが好ましく、ここでR10は(チオ)エステル基である。R10が(チオ)エステル基である場合、R10は−C(O)−V−R11であることが好ましく、ここで、VはO又はSであり、R11はC1〜C12アルキル基である。R11は、C1〜C6アルキル基であることが好ましく、C1〜C4アルキル基であるのがより好ましい。R11は、メチル基であるのが最も好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1は、下記で示されている通りの式(9u)に従ったニトリルオキシド基である。
別の好ましい実施形態において、Q1はニトロン基である。ニトロン基は、下記で示されている通りの式(9v)に従っていることが好ましく、ここでR12は、直鎖又は分枝のC1〜C12アルキル基及びC6〜C12アリール基からなる群から選択される。R12はC1〜C6アルキル基であることが好ましく、R12はC1〜C4アルキル基であるのがより好ましい。R12はメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル又はt−ブチルであるのがいっそう好ましい。R12はメチルであるのがなおいっそう好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1はニトリルイミン基である。ニトリルイミン基は、下記で示されている通りの式(9w)又は(9zd)に従っていることが好ましく、ここでR13は、直鎖又は分枝のC1〜C12アルキル基及びC6〜C12アリール基からなる群から選択される。R13はC1〜C6アルキル基であることが好ましく、R13はC1〜C4アルキル基であるのがより好ましい。R13はメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル又はt−ブチルであるのがいっそう好ましい。R13はメチルであるのがなおいっそう好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1はジアゾ基である。ジアゾ基は、下記で示されている通りの式(9x)に従っていることが好ましく、R14は、水素又はカルボニル誘導体からなる群から選択される。R14は水素であるのがより好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1はケトン基である。ケトン基は、下記で示されている通りの式(9y)に従っているのがより好ましく、ここでR15は、直鎖又は分枝のC1〜C12アルキル基及びC6〜C12アリール基からなる群から選択される。R15はC1〜C6アルキル基であることが好ましく、R15はC1〜C4アルキル基であるのがより好ましい。R15はメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル又はt−ブチルであるのがいっそう好ましい。R15はメチルであるのがなおいっそう好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1は(O−アルキル)ヒドロキシルアミノ基である。(O−アルキル)ヒドロキシルアミノ基は、下記で示されている通りの式(9z)に従っているのがより好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1はヒドラジン基である。ヒドラジン基は、下記で示されている通りの式(9za)に従っていることが好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1はハロゲン化N−マレイミジル基又はスルホニル化N−マレイミジル基である。Q1がハロゲン化又はスルホニル化N−マレイミジル基である場合、Q1は、好ましくは下記で示されている通りの式(9ze)に従っており、ここでR6は、水素F、Cl、Br、I−SR18a及び−OS(O)2R18bからなる群から独立して選択され、ここでR18aは、任意選択で置換されているC4〜C12(ヘテロ)アリール基、好ましくはフェニル又はピリジルであり、R18bは、任意選択で置換されているC1〜C12アルキル基及びC4〜C12(ヘテロ)アリール基、好ましくはトリル又はメチルからなる群から選択されるが、少なくとも1つのR6が水素であることを条件とする。R6がハロゲンである場合(即ち、R6がF、Cl、Br又はIである場合)、R6はBrであることが好ましい。一実施形態において、ハロゲン化N−マレイミジル基は、カルボン酸部分を介してリンカー−コンジュゲートの残部に接続することができるハロゲン化2,3−ジアミノプロピオン酸(DPR)マレイミジルである。
別の好ましい実施形態において、Q1は、下記で示されている通りの式(9zf)に従ったハロゲン化カルボニル基であり、ここでXは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される。XはCl又はBrであることが好ましく、XはClであるのが最も好ましい。
別の好ましい実施形態において、Q1は、式(9zg)に従ったアレンアミド基である。
別の好ましい実施形態において、Q1は、式(9zh)に従った1,1−ビス(スルホニルメチル)メチルカルボニル基、又はその脱離誘導体であり、ここでR18は、任意選択で置換されているC1〜C12アルキル基及びC4〜C12(ヘテロ)アリール基からなる群から選択される。R18は、任意選択で置換されているC1〜C6アルキル基又はC4〜C6(ヘテロ)アリール基であるのがより好ましく、フェニル基であるのが最も好ましい。
(式中、k、l、X、T、U、V、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R18及びR19は、上で定義されている通りである。)
本明細書において下に記載されている通りの本発明によるコンジュゲーションプロセスの好ましい実施形態において、コンジュゲーションは、Diels−Alder反応又は1,3−二極性付加環化、好ましくは1,3−二極性付加環化などの付加環化を介して達成される。この実施形態によると、反応性基Q1(並びに生体分子のF1)は、付加環化反応において反応性の基から選択される。本明細書において、反応性基Q1及びF1は相補的であり、即ち、反応性基Q1及びF1は付加環化反応において互いと反応でき、得られる環状部分は接続基Z3である。
Diels−Alder反応について、F1及びQ1のうちの一方はジエンであり、F1及びQ1のうちの他方はジエノフィルである。当技術者によって理解されている通り、「ジエン」という用語は、Diels−Alder反応の文脈において、1,3−(ヘテロ)ジエンを指し、コンジュゲートされたジエン(R2C=CR−CR=CR2)、イミン(例えばR2C=CR−N=CR2又はR2C=CR−CR=NR、R2C=N−N=CR2)及びカルボニル(例えばR2C=CR−CR=O又はO=CR−CR=O)が含まれる。N及びO含有ジエンとのヘテロ−Diels−Alder反応は、当業者に知られている。Diels−Alder反応に適当であると当技術分野において知られている任意のジエンは、反応性基Q1又はF1として使用することができる。好ましいジエンとしては、上に記載されている通りのテトラジン、上に記載されている通りの1,2−キノン、及び上に記載されている通りのトリアジンが挙げられる。Diels−Alder反応に適当であると当技術分野において知られている任意のジエノフィルは、反応性基Q1又はF1として使用することができるが、ジエノフィルは、好ましくは、上に記載されている通りのアルケン基又はアルキン基、最も好ましくはアルキン基である。Diels−Alder反応を介するコンジュゲーションについて、F1はジエンであり、Q1はジエノフィルであることが好ましい。本明細書において、Q1がジエンである場合、F1はジエノフィルであり、Q1がジエノフィルである場合、F1はジエンである。Q1はジエノフィルであるのが最も好ましく、Q1はアルキニル基である又はアルキニル基を含むことが好ましく、F1はジエン、好ましくはテトラジン基、1,2−キノン基又はトリアジン基である。
1,3−二極性付加環化について、F1及びQ1のうちの一方は1,3−双極子であり、F1及びQ1のうちの他方は親双極子である。1,3−二極性付加環化に適当であると当技術分野において知られている任意の1,3−双極子は、反応性基Q1又はF1として使用することができる。好ましい1,3−双極子としては、アジド基、ニトロン基、ニトリルオキシド基、ニトリルイミン基及びジアゾ基が挙げられる。1,3−二極性付加環化に適当であると当技術分野において知られている任意の親双極子は、反応性基Q1又はF1として使用することができるが、親双極子は、好ましくは、アルケン基又はアルキン基、最も好ましくはアルキン基である。1,3−二極性付加環化を介するコンジュゲーションについて、F1は1,3−双極子であり、Q1は親双極子であることが好ましい。本明細書において、Q1が1,3−双極子である場合、F1は親双極子であり、Q1が場合親双極子であり、F1は1,3−双極子である。Q1は親双極子であるのが最も好ましく、Q1はアルキニル基である又はアルキニル基を含むことが好ましく、F1は1,3−双極子、好ましくはアジド基である。
したがって、好ましい実施形態において、Q1は、親双極子及びジエノフィルから選択される。Q1はアルケン又はアルキン基であることが好ましい。殊に好ましい実施形態において、Q1はアルキン基を含み、上に記載されている通りのアルキニル基、上に記載されている通りのシクロアルケニル基、上に記載されている通りの(ヘテロ)シクロアルキニル基、及びビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イル]基から選択されることが好ましく、Q1は、上で定義されているとともに下記に図示されている通りの式(9j)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)及び(9zk)から選択されるのがより好ましく、式(9n)、(9o)、(9p)、(9q)及び(9zk)から選択されるのがより好ましい。Q1は、好ましくは式(9q)のビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イル]基であるのが最も好ましい。これらの基は、本明細書に記載されている通りのアジド官能化生体分子とのコンジュゲーションにおいて高度に有効であると知られており、本発明によるスルファミドリンカーが、こうしたリンカー−コンジュゲートにおいて用いられる場合、任意の凝集は、有益には、最小に低減される。
リンカー−コンジュゲートにおいて、上に記載された通り、Q1は、生体分子に存在する反応性基F1と反応できる。反応性基Q1に対する相補的反応性基F1は、当業者に知られており、より詳細に下で記載されている。F1とQ1との間の反応、及び接続基Z3を含むその対応する生成物の一部の代表例は、図11に図示されている。
上に記載されている通り、D及びQ1は、好ましくは上で定義されている通りのリンカーLを介して、本発明によるリンカー−コンジュゲートにおいて共有結合している。リンカーへのDの共有結合は、例えば、Dに存在する官能基F2とリンカーに存在する反応性基Q2との反応を介して生じることができる。リンカーへのDの結合のための適当な有機反応は、反応性基Q2に相補的である官能基F2であるとして当業者に知られている。その結果として、Dは、接続基Zを介してリンカーに結合することができる。
「接続基」という用語は、本明細書において、化合物の1つの部分及び同じ化合物の別の部分を接続する構造要素を指す。当業者によって理解される通り、接続基の性質は、上記化合物の部分間の接続が得られた有機反応の型に依存する。例として、R−C(O)−OHのカルボキシル基をH2N−R’のアミノ基と反応させてR−C(O)−N(H)−R’を形成する場合、Rは接続基Zを介してR’に接続されており、Zは−C(O)−N(H)−基によって表すことができる。
反応性基Q1は、同様の方式でリンカーに結合することができる。その結果として、Q1は、接続基Zを介してスペーサー部分に結合することができる。
リンカーへの標的分子の結合について、及びリンカーへの反応性基Q1の結合について、多数の反応が当技術分野において知られている。その結果として、多種多様な接続基Zが上記リンカー−コンジュゲートに存在することができる。
一実施形態において、リンカー−コンジュゲートは、式:
(Q1)y’(Zw)Sp(Zx)(D)z
(式中:
y’は、1〜10の範囲における整数であり;
zは、1〜10の範囲における整数であり;
Q1は、生体分子に存在する官能基F1と反応できる反応性基であり;
Dは、標的分子であり;
Spは、間隔をあける(即ち、間にある特定の距離を提供する)とともにQ1及びDを共有結合的に連結する部分として定義されているスペーサー部分であり;
Zwは、上記スペーサー部分にQ1を接続する接続基であり;
Zxは、上記スペーサー部分にDを接続する接続基であり、並びに;
上記スペーサー部分はリンカーLであり、したがって、式(1)に従った基又はその塩を含み、ここで式(1)に従った基は、上で定義されている通りである)に従った化合物である。
好ましい実施形態において、式(1)に従った基におけるaは0である。別の好ましい実施形態において、式(1)に従った基におけるaは1である。
y’及びzについての好ましい実施形態は、(Q1)ySp(D)zについて上で定義されている通りである。上記化合物は、式Q1(Zw)Sp(Zx)(D)4、Q1(Zw)Sp(Zx)(D)3、Q1(Zw)Sp(Zx)(D)2又はQ1(Zw)Sp(Zx)D、より好ましくはQ1(Zw)Sp(Zx)(D)2又はQ1(Zw)Sp(Zx)D及び最も好ましくはQ1(Zw)Sp(Zx)Dに従っていることがさらに好ましく、ここでZw及びZxは、上で定義されている通りである。
Zw及びZxは、−O−、−S−、−NR2−、−N=N−、−C(O)−、−C(O)NR2−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)NR2、−NR2C(O)−、−NR2C(O)O−、−NR2C(O)NR2−、−SC(O)−、−SC(O)O−、−SC(O)NR2−、−S(O)−、−S(O)2−、−OS(O)2−、−OS(O)2O−、−OS(O)2NR2−、−OS(O)−、−OS(O)O−、−OS(O)NR2−、−ONR2C(O)−、−ONR2C(O)O−、−ONR2C(O)NR2−、−NR2OC(O)−、−NR2OC(O)O−、−NR2OC(O)NR2−、−ONR2C(S)−、−ONR2C(S)O−、−ONR2C(S)NR2−、−NR2OC(S)−、−NR2OC(S)O−、−NR2OC(S)NR2−、−OC(S)−、−OC(S)O−、−OC(S)NR2−、−NR2C(S)−、−NR2C(S)O−、−NR2C(S)NR2−、−SS(O)2−、−SS(O)2O−、−SS(O)2NR2−、−NR2OS(O)−、−NR2OS(O)O−、−NR2OS(O)NR2−、−NR2OS(O)2−、−NR2OS(O)2O−、−NR2OS(O)2NR2−、−ONR2S(O)−、−ONR2S(O)O−、−ONR2S(O)NR2−、−ONR2S(O)2O−、−ONR2S(O)2NR2−、−ONR2S(O)2−、−OP(O)(R2)2−、−SP(O)(R2)2−、−NR2P(O)(R2)2−及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から独立して選択されることが好ましく、ここでR2は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。
D及びQ1についての好ましい実施形態は、上で定義されている通りである。
一実施形態において、リンカー−コンジュゲートは、式(4a)又は(4b):
(式中:
aは、独立して0又は1であり;
bは、独立して0又は1であり;
cは、0又は1であり;
dは、0又は1であり;
eは、0又は1であり;
fは、1〜150の範囲における整数であり;
gは、0又は1であり;
iは、0又は1であり;
Dは、標的分子であり;
Q1は、生体分子に存在する官能基F1と反応できる反応性基であり;
Sp1は、スペーサー部分であり;
Sp2は、スペーサー部分であり;
Sp3は、スペーサー部分であり;
Sp4は、スペーサー部分であり;
Z1は、Q1又はSp3をSp2、O若しくはC(O)又はN(R1)に接続する接続基であり;
Z2は、D若しくはSp4をSp1、N(R1)、O若しくはC(O)に接続する接続基であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3−C24シクロアルキル基、C1〜C24(ヘテロ)アリール基、C1〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC1〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択されるか;又は
R1は、D、−[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]若しくは−[(Sp2)c(Z1)d(Sp3)gQ1]であり、ここでDは、さらなる標的分子であり、Sp1、Sp2、Sp3、Sp4、Z1、Z2、Q1、b、c、d、e、g及びiは、上で定義されている通りである)に従った化合物、又はその塩である。
好ましい実施形態において、aは、式(4a)又は(4b)に従った化合物において1である。別の好ましい実施形態において、aは、式(4a)又は(4b)に従った化合物において0である。
上で定義されている通り、Z1は、Q1又はSp3をSp2、O若しくはC(O)又はN(R1)に接続する接続基であり、Z2は、D又はSp4をSp1、N(R1)、O又はC(O)に接続する接続基である。より詳細に上で記載されている通り、「接続基」という用語は、化合物の1つの部分及び同じ化合物のうちの別の部分を接続する構造要素を指す。
式(4a)に従った化合物において、接続基Z1は、存在する場合(即ち、dが1である場合)、Q1を(任意選択でスペーサー部分Sp3を介する)、式(4a)に従った化合物のO原子又はC(O)基に、任意選択でスペーサー部分Sp2を介して接続する。より詳細には、Z1が存在する場合(即ち、dは1である)、並びにSp3及びSp2が存在しない場合(即ち、gは0であり、cは0である)、Z1は、Q1を、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのO原子(aは1である)に又はC(O)基(aは0である)に接続する。Z1が存在し(即ち、dが1である場合)、Sp3が存在し(即ち、gは1である)、Sp2が存在しない(即ち、cは0である)場合、Z1は、スペーサー部分Sp3を、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのO原子(aはである1)に又はC(O)基(aはである0)に接続する。Z1が存在する場合(即ち、dは1である)、並びにSp3及びSp2が存在する場合(即ち、gは1であり、cは1である)、Z1は、スペーサー部分Sp3を、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのスペーサー部分Sp2に接続する。Z1が存在し(即ち、dが1である場合)、Sp3が存在せず(即ち、gは0である)、Sp2が存在する(即ち、cは1である)場合、Z1は、Q1を、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのスペーサー部分Sp2に接続する。
式(4b)に従った化合物において、接続基Z1は、存在する場合(即ち、dが1である場合)、Q1を(任意選択でスペーサー部分Sp3を介する)、式(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートにおけるN(R1)基のN原子に、任意選択でスペーサー部分Sp2を介して接続する。より詳細には、Z1が存在する場合(即ち、dは1である)、並びにSp3及びSp2が存在しない場合(即ち、gは0であり、cは0である)、Z1は、Q1を、式(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートのN(R1)基のN原子に接続する。Z1が存在し(即ち、dが1である場合)、Sp3が存在し(即ち、gは1である)、Sp2が存在しない(即ち、cは0である)場合、Z1は、スペーサー部分Sp3を、式(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートN(R1)基のN原子に接続する。Z1が存在する場合(即ち、dは1である)、並びにSp3及びSp2が存在する場合(即ち、gは1であり、cは1である)、Z1は、スペーサー部分Sp3を、式(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートのスペーサー部分Sp2に接続する。Z1が存在し(即ち、dが1である場合)、Sp3が存在せず(即ち、gは0である)、Sp2が存在する(即ち、cは1である)場合、Z1は、Q1を、式(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートのスペーサー部分Sp2に接続する。
式(4a)に従った化合物において、c、d及びgが全て0である場合、Q1は、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのO原子に(aが1である場合)又はC(O)基に(aが0である場合)直接的に結合している。
式(4b)に従った化合物において、c、d及びgが全て0である場合、Q1は、式(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートのN(R1)基のN原子に直接的に結合している。
式(4a)に従った化合物において、接続基Z2は、存在する場合(即ち、eが1である場合)、Dを(任意選択でスペーサー部分Sp4を介する)、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのN(R1)基のN原子に、任意選択でスペーサー部分Sp1を介して接続する。より詳細には、Z2が存在する場合(即ち、eは1である)、並びにSp1及びSp4が存在しない場合(即ち、bは0であり、iは0である)、Z2は、Dを、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのN(R1)基のN原子に接続する。Z2が存在し(即ち、eが1である場合)、Sp4が存在し(即ち、iは1である)、Sp1が存在しない(即ち、bは0である)場合、Z2は、スペーサー部分Sp4を、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのN(R1)基のN原子に接続する。Z2が存在する場合(即ち、eは1である)、並びにSp1及びSp4が存在する場合(即ち、bは1であり、iは1である)、Z2は、スペーサー部分Sp1を、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのスペーサー部分Sp4に接続する。Z2が存在し(即ち、eが1である場合)、Sp4が存在しせず(即ち、iは0である)、Sp1が存在する(即ち、bは1である)場合、Z2は、Dを、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのスペーサー部分Sp1に接続する。
式(4a)に従った化合物において、b、e及びiが全て0である場合、Dは、式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートのN(R1)基のN原子に直接的に結合している。
式(4b)に従った化合物において、b、e及びiが全て0である場合、Dは、式(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートのO原子に(aが1である場合)又はC(O)基に(aが0である場合)直接的に結合している。
当業者によって理解される通り、接続基の性質は、上記化合物の特定の部分間の接続が得られた有機反応の型に依存する。多数の有機反応が、反応性基Q1をスペーサー部分に接続するのに、及び標的分子をスペーサー部分に接続するのに利用可能である。その結果として、多種多様な接続基Z1及びZ2がある。
式(4a)及び(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートの好ましい実施形態において、Z1及びZ2は、−O−、−S−、−SS−、−NR2−、−N=N−、−C(O)−、−C(O)NR2−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)NR2、−NR2C(O)−、−NR2C(O)O−、−NR2C(O)NR2−、−SC(O)−、−SC(O)O−、−S−C(O)NR2−、−S(O)−、−S(O)2−、−OS(O)2−、−OS(O)2O−、−OS(O)2NR2−、−OS(O)−、−OS(O)O−、−OS(O)NR2−、−ONR2C(O)−、−ONR2C(O)O−、−ONR2C(O)NR2−、−NR2OC(O)−、−NR2OC(O)O−、−NR2OC(O)NR2−、−ONR2C(S)−、−ONR2C(S)O−、−ONR2C(S)NR2−、−NR2OC(S)−、−NR2OC(S)O−、−NR2OC(S)NR2−、−OC(S)−、−OC(S)O−、−OC(S)NR2−、−NR2C(S)−、−NR2C(S)O−、−NR2C(S)NR2−、−SS(O)2−、−SS(O)2O−、−SS(O)2NR2−、−NR2OS(O)−、−NR2OS(O)O−、−NR2OS(O)NR2−、−NR2OS(O)2−、−NR2OS(O)2O−、−NR2OS(O)2NR2−、−ONR2S(O)−、−ONR2S(O)O−、−ONR2S(O)NR2−、−ONR2S(O)2O−、−ONR2S(O)2NR2−、−ONR2S(O)2−、−OP(O)(R2)2−、−SP(O)(R2)2−、−NR2P(O)(R2)2−及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から独立して選択され、ここでR2は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。
上に記載されている通り、式(4a)又は(4b)に従った化合物において、Sp1、Sp2、Sp3及びSp4はスペーサー部分である。Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、独立して、存在しない又は存在することがある(b、c、g及びiは、独立して、0又は1である)。存在するならばSp1は、存在するならばSp2と、存在するならばSp3及び/又はSp4と異なっていてもよい。
スペーサー部分は、当業者に知られている。適当なスペーサー部分の例としては、(ポリ)エチレングリコールジアミン(例えば、1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン、又はより長いエチレングリコール鎖を含む同等物)、ポリエチレングリコール鎖又はポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレングリコール鎖又はポリプロピレンオキシド鎖、及びxxがアルカンにおける炭素原子の数である1,xx−ジアミノアルカンが挙げられる。
適当なスペーサー部分の別のクラスは、切断可能なスペーサー部分、又は切断可能なリンカーを含む。切断可能なリンカーは、当技術分野においてよく知られている。例えば、参照により本明細書に組み込まれるShabatら、Soft Matter 2012、6、1073は、生物学的トリガー、例えば酵素的切断又は酸化事象で放出される自己犠牲部分を含む切断可能なリンカーを開示している。適当な切断可能なリンカーの一部の例は、還元で切断されるジスルフィド−リンカー、プロテアーゼ、例えばカテプシン、プラスミン若しくはメタロプロテアーゼによる特異的認識で切断されるペプチド−リンカー、又はグリコシダーゼ、例えばグルクロニダーゼ、若しくは酸素の乏しい低酸素性部域で低減されるニトロ芳香族による特異的認識で切断されるグリコシドベースのリンカーである。本明細書において、適当な切断可能なスペーサー部分としては、アミノ酸の特定の切断可能な配列を含むスペーサー部分も挙げられる。例としては、例えば、Val−Ala(バリン−アラニン)又はVal−Cit(バリン−シトルリン)部分を含むスペーサー部分が挙げられる。
式(4a)及び(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートの好ましい実施形態において、スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及び/又はSp4は、存在するならば、アミノ酸の配列を含む。アミノ酸の配列を含むスペーサー部分は、当技術分野において知られており、ペプチドリンカーと称することもできる。例としては、Val−Cit部分を含むスペーサー部分、例えばVal−Cit−PABC、Val−Cit−PAB、Fmoc−Val−Cit−PABなどが挙げられる。Val−Cit−PABC部分が、上記リンカー−コンジュゲートにおいて用いられることが好ましい。
式(4a)及び(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートの好ましい実施形態において、スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C200アルキレン基、C2〜C200アルケニレン基、C2〜C200アルキニレン基、C3〜C200シクロアルキレン基、C5〜C200シクロアルケニレン基、C8〜C200シクロアルキニレン基、C7〜C200アルキルアリーレン基、C7〜C200アリールアルキレン基、C8〜C200アリールアルケニレン基及びC9〜C200アリールアルキニレン基からなる群から独立して選択され、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基が、上で定義されている通りの1個又は複数のヘテロ原子によって中断されている場合、上記基は、1個若しくは複数のO原子によって、及び/又は1個若しくは複数のS−S基によって中断されていることが好ましい。
スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C100アルキレン基、C2〜C100アルケニレン基、C2〜C100アルキニレン基、C3〜C100シクロアルキレン基、C5〜C100シクロアルケニレン基、C8〜C100シクロアルキニレン基、C7〜C100アルキルアリーレン基、C7〜C100アリールアルキレン基、C8〜C100アリールアルケニレン基及びC9〜C100アリールアルキニレン基からなる群から独立して選択されるのがより好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3の群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は任意選択で置換されている。
スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C50アルキレン基、C2〜C50アルケニレン基、C2〜C50アルキニレン基、C3〜C50シクロアルキレン基、C5〜C50シクロアルケニレン基、C8〜C50シクロアルキニレン基、C7〜C50アルキルアリーレン基、C7〜C50アリールアルキレン基、C8〜C50アリールアルケニレン基及びC9〜C50アリールアルキニレン基からなる群から独立して選択されるのがいっそう好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3の群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。
スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C20アルキレン基、C2〜C20アルケニレン基、C2〜C20アルキニレン基、C3〜C20シクロアルキレン基、C5〜C20シクロアルケニレン基、C8〜C20シクロアルキニレン基、C7〜C20アルキルアリーレン基、C7〜C20アリールアルキレン基、C8〜C20アリールアルケニレン基及びC9〜C20アリールアルキニレン基からなる群から独立して選択されるのがなおいっそう好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3の群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。
これらの好ましい実施形態において、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、非置換であるとともにO、S及びNR3、好ましくはOの群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基、好ましくは水素又はメチルからなる群から独立して選択されるのがさらに好ましい。
スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C20アルキレン基からなる群から独立して選択されるのが最も好ましく、アルキレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3の群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。この実施形態において、アルキレン基は、非置換であるとともにO、S及びNR3、好ましくはO及び/又はSの群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基、好ましくは水素又はメチルからなる群から独立して選択されるのがさらに好ましい。
好ましいスペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4としては、したがって、−(CH2)n−、−(CH2CH2)n−、−(CH2CH2O)n−、−(OCH2CH2)n−、−(CH2CH2O)nCH2CH2−、−CH2CH2(OCH2CH2)n−、−(CH2CH2CH2O)n−、−(OCH2CH2CH2)n−、−(CH2CH2CH2O)nCH2CH2CH2−及び−CH2CH2CH2(OCH2CH2CH2)n−が挙げられ、ここでnは、1〜50の範囲、好ましくは1〜40の範囲、より好ましくは1〜30の範囲、いっそう好ましくは1〜20の範囲及びなおいっそう好ましくは1〜15の範囲における整数である。nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であるのがより好ましく、1、2、3、4、5、6、7又は8であるのがより好ましく、1、2、3、4、5又は6であるのがいっそう好ましく、1、2、3又は4であるのがなおいっそう好ましい。
Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は独立して選択されるので、Sp1は、存在するならば、存在するならばSp2と、存在するならばSp3及び/又はSp4と異なっていてもよい。
反応性基Q1は、より詳細に上で記載されている。式(4a)及び(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートにおいて、反応性基Q1は、任意選択で置換されているN−マレイミジル基、ハロゲン化N−アルキルアミド基、スルホニルオキシN−アルキルアミド基、エステル基、カーボネート基、ハロゲン化スルホニル基、チオール基又はその誘導体、アルケニル基、アルキニル基、(ヘテロ)シクロアルキニル基、ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イル]基、シクロアルケニル基、テトラジニル基、アジド基、ホスフィン基、ニトリルオキシド基、ニトロン基、ニトリルイミン基、ジアゾ基、ケトン基、(O−アルキル)ヒドロキシルアミノ基、ヒドラジン基、ハロゲン化N−マレイミジル基、ハロゲン化カルボニル基、アレンアミド基及び1,1−ビス(スルホニルメチル)メチルカルボニル基、又はそれらの脱離誘導体からなる群から選択されることが好ましい。さらに好ましい実施形態において、Q1は、式(9a)、(9b)、(9c)、(9d)、(9e)、(9f)、(9g)、(9h)、(9i)、(9j)、(9k)、(9l)、(9m)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9r)、(9s)、(9t)、(9u)、(9v)、(9w)、(9x)、(9y)、(9z)、(9za)、(9zb)、(9zc)、(9zd)、(9ze)、(9zf)、(9zg)、(9zh)、(9zi)、(9zj)又は(9zk)に従っており、ここで(9a)、(9b)、(9c)、(9d)、(9e)、(9f)、(9g)、(9h)、(9i)、(9j)、(9k)、(9l)、(9m)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9r)、(9s)、(9t)、(9u)、(9v)、(9w)、(9x)、(9y)、(9z)、(9za)、(9zb)、(9zc)、(9zd)、(9ze)、(9zf)、(9zg)、(9zh)、(9zi)、(9zj)、(9zk)及びそれらの好ましい実施形態は、上で定義されている通りである。好ましい実施形態において、Q1は、式(9a)、(9b)、(9c)、(9f)、(9j)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9s)、(9t)、(9zh)又は(9r)に従っている。いっそうさらに好ましい実施形態において、Q1は、式(9a)、(9n)、(9o)、(9q)、(9p)、(9t)、(9zh)又は(9s)に従っており、特に好ましい実施形態において、Q1は、式(9a)、(9q)、(9n)、(9o)、(9p)、(9t)又は(9zh)に従っており、それらの好ましい実施形態は、上で定義されている通りである。
式(4a)及び(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートにおける標的分子D及び標的分子Dのための好ましい実施形態は、上で定義されている通りである。
上に記載されている通り、R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される、又はR1は、D、−[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]若しくは−[(Sp2)c(Z1)d(Sp3)gQ1]であり、ここで、Dはさらなる標的分子であり、Sp1、Sp2、Sp3、Sp4、Z1、Z2、Q1、b、c、d、e、g及びiは、上で定義されている通りである。
好ましい実施形態において、R1は水素又はC1〜C20アルキル基であり、R1は水素又はC1〜C16アルキル基であるのがより好ましく、R1は水素又はC1〜C10アルキル基であるのがいっそう好ましく、ここでアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3、好ましくはOから選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される。さらに好ましい実施形態において、R1は水素である。別のさらに好ましい実施形態において、R1は、C1〜C20アルキル基、より好ましくはC1〜C16アルキル基、いっそう好ましくはC1〜C10アルキル基であり、ここでアルキル基は、1個又は複数のO原子によって任意選択で中断されており、アルキル基は、−OH基、好ましくは末端−OH基で任意選択で置換されている。この実施形態において、R1は、末端−OH基を含むポリエチレングリコール鎖であることがさらに好ましい。別のさらに好ましい実施形態において、R1は、C1〜C12アルキル基、より好ましくはC1〜C6アルキル基、いっそう好ましくはC1〜C4アルキル基であり、R1は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルからなる群から選択されるのがなおいっそう好ましい。
別の好ましい実施形態において、R1は、さらなる標的分子D、−[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]又は−[(Sp2)c(Z1)d(Sp3)gQ1]であり、ここでDは標的分子であり、Sp1、Sp2、Sp3、Sp4、Z1、Z2、Q1、b、c、d、e、g及びiは、上で定義されている通りである。R1がD又は−[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]である場合、リンカー−コンジュゲートは、式(4a)に従っていることがさらに好ましい。この実施形態において、リンカー−コンジュゲート(4a)は、同じ又は異なっていてもよい2個の標的分子Dを含む。R1が−[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]である場合、−[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]におけるSp1、b、Z2、e、Sp4、i及びDは、N(R1)のN原子に結合している[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]におけるSp1、b、Z2、e、Sp4、i及びDと同じ又は異なっていてもよい。好ましい実施形態において、N(R1)のN原子の−[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]及び−[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]の両方は同じである。
R1が−[(Sp2)c(Z1)d(Sp3)gQ1]である場合、リンカー−コンジュゲートは、式(4b)に従っていることがさらに好ましい。この実施形態において、リンカー−コンジュゲート(4b)は、同じ又は異なっていてもよい2個の標的分子Q1を含む。R1が−[(Sp2)c(Z1)d(Sp3)gQ1]である場合、−[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]におけるSp2、c、Z1、d、Sp3、g及びDは、N(R1)のN原子に結合している他の−[(Sp2)c(Z1)d(Sp3)gQ1]におけるSp1、b、Z2、e、Sp4、i及びQ1と同じ又は異なっていてもよい。好ましい実施形態において、N(R1)のN原子の−[(Sp2)c(Z1)d(Sp3)gQ1]基は同じである。
式(4a)及び(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートにおいて、fは1〜150の範囲における整数である。リンカー−コンジュゲートは、したがって、1つ超の式(1)に従った基を含むことができ、式(1)に従った基は、上で定義されている通りである。1つ超の式(1)に従った基が存在する場合、即ち、fが2以上である場合、a、b、Sp1及びR1は、独立して選択される。言い換えると、fが2以上である場合、各aは独立して0又は1であり、各bは独立して0又は1であり、各Sp1は同じ又は異なっていてもよく、各R1は同じ又は異なっていてもよい。好ましい実施形態において、fは、1〜100の範囲、好ましくは1〜50の範囲、より好ましくは1〜25の範囲、及びいっそう好ましくは1〜15の範囲における整数である。fは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であるのがより好ましく、fは1、2、3、4、5、6、7又は8であるのがいっそう好ましく、fは1、2、3、4、5又は6であるのがなおいっそう好ましく、fは1、2、3又は4であるのがなおいっそう好ましく、fは、この実施形態において1であるのが最も好ましい。別の好ましい実施形態において、fは、2〜150の範囲、好ましくは2〜100の範囲、より好ましくは2〜50の範囲、より好ましくは2〜25の範囲、及びいっそう好ましくは2〜15の範囲における整数である。fは2、3、4、5、6、7、8、9又は10であるのがより好ましく、fは2、3、4、5、6、7又は8であるのがいっそう好ましく、fは2、3、4、5又は6であるのがなおいっそう好ましく、fは2、3又は4であるのがなおいっそう好ましく、fは、この実施形態において2であるのが最も好ましい。
上に記載されている通り、好ましい実施形態において、aは、式(4a)又は(4b)に従った化合物において0である。リンカー−コンジュゲートは、そのため、式(6a)又は(6b)に従った化合物又はその塩:
(式中、a、b、c、d、e、f、g、i、D、Q1、Sp1、Sp2、Sp3、Sp4、Z1、Z2及びR1、並びにそれらの好ましい実施形態は、(4a)及び(4b)について上で定義されている通りである)でもあり得る。
上に記載されている通り、別の好ましい実施形態において、aは、式(4a)又は(4b)に従った化合物において1である。リンカー−コンジュゲートは、そのため、式(7a)又は(7b)に従った化合物、又はその塩:
(式中、a、b、c、d、e、f、g、i、D、Q1、Sp1、Sp2、Sp3、Sp4、Z1、Z2及びR1、並びにそれらの好ましい実施形態は、(4a)及び(4b)について上で定義されている通りである)でもあり得る。
Sp4が式(4a)に従ったリンカー−コンジュゲートに存在しない場合、即ち、iが0である場合、Dは、Z2(eが1である場合)、Sp1(eが0であり、bが1である場合)又はN(R1)(eが0であり、bが0である場合)に連結される。Sp4が式(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートに存在しない場合、即ち、iが0である場合、Dは、Z2(eが1である場合)、Sp1(eが0であり、bが1である場合)、O原子(aが1であり、b及びeが0である場合)又はC(O)基(aが0であり、b及びeが0である場合)に連結される。リンカー−コンジュゲートは、そのため、式(4c)又は(4d)に従った化合物、又はその塩:
(式中、a、b、c、d、e、f、g、D、Q1、Sp1、Sp2、Sp3、Z1、Z2及びR1、並びにそれらの好ましい実施形態は、(4a)及び(4b)について上で定義されている通りである)でもあり得る。
好ましい実施形態において、式(4c)又は(4d)に従ったリンカー−コンジュゲートにおいて、aは0である。別の好ましい実施形態において、式(4c)又は(4d)に従ったリンカー−コンジュゲートにおいて、aは1である。
リンカー−コンジュゲート、特に、式(4a)、(4b)、(4c)、(4d)、(6a)、(6b)、(7a)又は(7b)に従ったリンカー−コンジュゲートの特定の実施形態において、Sp1、Sp2Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C20アルキレン基からなる群から独立して選択され、アルキレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3からなる群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択され、Q1は、式(9a)、(9b)、(9c)、(9d)、(9e)、(9f)、(9g)、(9h)、(9i)、(9j)、(9k)、(9l)、(9m)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9r)、(9s)、(9t)、(9u)、(9v)、(9w)、(9x)、(9y)、(9z)、(9za)、(9zb)、(9zc)、(9zd)、(9ze)、(9zf)、(9zg)、(9zh)、(9zi)、(9zj)又は(9zk)に従っており、ここで(9a)、(9b)、(9c)、(9d)、(9e)、(9f)、(9g)、(9h)、(9i)、(9j)、(9k)、(9l)、(9m)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9r)、(9s)、(9t)、(9u)、(9v)、(9w)、(9x)、(9y)、(9z)、(9za)、(9zb)、(9zc)、(9zd)、(9ze)、(9zf)、(9zg)、(9zh)、(9zi)、(9zj)、(9zk)及びそれらの好ましい実施形態は、上で定義されている通りである。好ましい実施形態において、Q1は、式(9a)、(9b)、(9c)、(9f)、(9j)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9s)(9t)、(9zh)又は(9r)に従っている。いっそうさらに好ましい実施形態において、Q1は、式(9a)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9t)、(9zh)又は(9s)に従っており、特に好ましい実施形態において、Q1は、式(9a)、(9q)、(9n)、(9p)、(9t)、(9zh)又は(9o)に従っており、それらの好ましい実施形態は上で定義されている通りである。
上で定義されている通りの式(4a)、(4b)、(4c)、(4d)、(6a)、(6b)、(7a)又は(7b)に従ったリンカー−コンジュゲートに好ましくは含まれる通りのリンカーL、上で定義されている通りのリンカーは、それぞれ式(8a)及び(8b):
によって表すことができる。
当業者によって理解される通り、スペーサー部分(8a)及び(8b)の好ましい実施形態は、例えば、リンカー−コンジュゲートにおける反応性基Q1及びDの性質、リンカー−コンジュゲートを調製するための合成方法(例えば標的分子の相補的官能基F2の性質)、リンカー−コンジュゲートを使用して調製されるバイオコンジュゲートの性質(例えば、生体分子の相補的官能基F1の性質)に依存し得る。
Q1が、例えば、上で定義されている通りの式(9n)、(9o)、(9p)、(9q)又は(9zk)に従ったシクロオクチニル基である場合、Sp3は存在する(gは1である)ことが好ましい。
例えば、リンカー−コンジュゲートが、式(9n)、(9o)、(9p)、(9q)又は(9zk)に従ったシクロオクチニル基である反応性基Q2とアジド官能基F2との反応を介して調製された場合、Sp4は存在する(iは1である)ことが好ましい。
さらに、Sp1、Sp2、Sp3及びSp4のうちの少なくとも1つは存在する、即ち、b、c、g、及びiのうちの少なくとも1つは0でないことが好ましい。別の好ましい実施形態において、Sp1及びSp4のうちの少なくとも1つ並びにSp2及びSp3のうちの少なくとも1つは存在する。
fが2以上である場合、Sp1は存在することが好ましい(bは1である)。
リンカー部分(8a)及び(8b)のこれらの好ましい実施形態は、より詳細に下で記載されている通りの本発明によるバイオコンジュゲートに含まれる場合、リンカー−コンジュゲートにも成り立つ。
Sp1、Sp2、Sp3及びSp4の好ましい実施形態は、上で定義されている通りである。
生体分子
生体分子はB−F1によって表され、ここでBは生体分子であり、F1は、リンカー−コンジュゲートの反応性基Q1と反応できる官能基であり、「−」は結合又はスペーサー部分である。代替として、生体分子は、式(24)によって表される修飾抗体であり、ここでF1は、リンカー−コンジュゲートの反応性基Q1と反応できる官能基である。式(24)によって表される修飾抗体及びそれらの好ましい実施形態は、詳細に上で定義されている。
一実施形態において、「−」は、本明細書において定義されている通りのスペーサー部分である。一実施形態において、「−」は結合、典型的には共有結合である。生体分子は、「目的の生体分子」(BOI)と称することもできる。生体分子は、自然発生するような生体分子であってもよく、ここで官能基F1は、例えばチオール、アミン、アルコール又はヒドロキシフェノール単位など、目的の生体分子にすでに存在する。リンカー−コンジュゲートとのコンジュゲーションは、次いで、上で定義されている通りの第1の手法を介して生じる。代替として、生体分子は修飾生体分子であってもよく、ここで官能基F1は、目的の生体分子に特異的に組み込まれ、リンカー−コンジュゲートとのコンジュゲーションは、この改変官能性基、即ち上で定義されている通りのバイオコンジュゲーションの2段階手法を介して生じる。特定の官能性基を組み込むための生体分子のこうした修飾は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2014/065661号から知られている。
本発明によるバイオコンジュゲートにおいて、生体分子Bは、タンパク質(糖タンパク質及び抗体を含む)、ポリペプチド、ペプチド、グリカン、脂質、核酸、オリゴヌクレオチド、多糖類、オリゴ糖類、酵素、ホルモン、アミノ酸及び単糖類からなる群から好ましくは選択される。生体分子Bは、タンパク質(糖タンパク質及び抗体を含む)、ポリペプチド、ペプチド、グリカン、核酸、オリゴヌクレオチド、多糖類、オリゴ糖類及び酵素からなる群から選択されるのがより好ましい。生体分子Bは、糖タンパク質及び抗体を含むタンパク質、ポリペプチド、ペプチド及びグリカンからなる群から選択されるのがより好ましい。生体分子Bは、抗体又はその抗原結合性断片であるのが最も好ましい。
官能基F1は、リンカー−コンジュゲートの反応性基Q1と反応することで接続基Z3を形成できる。当業者には、官能基F1が相補的反応性基Q1と反応できることは明らかである。上で定義されているとともに当業者に知られている通りの反応性基Q1に相補的である官能基F1は、より詳細に下で記載されている。F1とQ1との間の反応、及び接続基Z3を含むそれらの対応する生成物の一部の代表例は、図11に図示されている。
本発明によるバイオコンジュゲートの調製のためのプロセスにおいて、リンカー−コンジュゲートに存在する反応性基Q1は、官能基F1と典型的に反応される。1つ超の官能基F1が生体分子に存在することができる。2個以上の官能基が存在する場合、上記基は同じ又は異なっていてもよい。別の好ましい実施形態において、生体分子は、同じ又は異なっていてもよい2個以上の官能基Fを含み、2個以上の官能基は、リンカー−コンジュゲートの相補的反応性基Qと反応する。例えば、2個の官能基F、即ちF1及びF2を含む生体分子は、同じ又は異なっていてもよい官能基Q1を含む2つのリンカー−コンジュゲートと反応することでバイオコンジュゲートを形成することができる。
生体分子における官能基F1の例は、アミノ基、チオール基、カルボン酸、アルコール基、カルボニル基、ホスフェート基、又は芳香族基を含む。生体分子における官能基は天然に存在することがあるか、又は特定の技法、例えば(生)化学的技法若しくは遺伝子的技法によって生体分子に入れることができる。生体分子に入れられた官能基は、本来天然に存在する官能基であり得るか、又は化学合成によって調製される官能基、例えばアジド、末端アルキン、シクロプロペン部分若しくはホスフィン部分であり得る。付加環化によるコンジュゲーションの好ましいモードを勘案して、F1は、ジエン、ジエノフィル、1,3−双極子又は親双極子など、付加環化において反応できる基であることが好ましく、F1は、1,3−双極子(典型的にはアジド基、ニトロン基、ニトリルオキシド基、ニトリルイミン基又はジアゾ基)又は親双極子(典型的にはアルケニル基又はアルキニル基)から選択されることが好ましい。本明細書において、F1は、Q1が親双極子である場合に1,3−双極子であり、F1は、Q1が1,3−双極子である場合に親双極子であり、又はF1は、Q1がジエノフィルである場合にジエンであり、F1は、Q1がジエンである場合にジエノフィルである。F1は1,3−双極子であるのが最も好ましく、F1はアジド基であるか又はアジド基を含むことが好ましい。
生体分子に入れられる官能基のいくつかの例は、図2に示されている。図2は、例えばチオプロピオニル基(11a)、アジドアセチル基(11b)若しくはアジドジフルオロアセチル基(11c)を用いて2位で、又はアジド基を用いてN−アセチルガラクトサミン(11d)の6位で修飾することができる、ガラクトサミンのUDP糖類の誘導体のいくつかの構造を示している。一実施形態において、官能基F1はチオプロピオニル基、アジドアセチル基、又はアジドジフルオロアセチル基である。
図3は、UDP−糖類11a〜dのうちのいずれかが、どのようにしてGlcNAc部分12(例えば、グリカンがエンドグリコシダーゼによってトリミングされるモノクローナル抗体)を含む糖タンパク質に、ガラクトシルトランスフェラーゼ突然変異体又はGalNAc−トランスフェラーゼの作用下で結合することができ、それによって、GalNAc誘導体とGlcNAc(それぞれ化合物13a〜d)との間にβ−グリコシドの1〜4連結を生ずるのかを概略的に表示している。
天然に存在する官能基F1の好ましい例としては、チオール基及びアミノ基が挙げられる。生体分子への組込みのための化学合成によって調製される官能基の好ましい例としては、ケトン基、末端アルキン基、アジド基、シクロ(ヘテロ)アルキン基、シクロプロペン基又はテトラジン基が挙げられる。
上に記載された通り、相補的反応性基Q1及び官能基F1は当業者に知られており、Q1及びF1のいくつかの適当な組合せは上に記載されており、図11に示されている。相補的基Q1及びF1のリストは、G.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」Elsevier、第3版、2013(ISBN:978−0−12−382239−0)の3章の230〜232ページ、表3.1に開示されており、この表の内容は参照により本明細書に明確に組み込まれる。
バイオコンジュゲート
バイオコンジュゲートは、本明細書において、生体分子がリンカーを介して標的分子Dに共有結合的に接続されている化合物として定義されている。バイオコンジュゲートは、1つ若しくは複数の生体分子及び/又は1つ若しくは複数の標的分子を含む。リンカーは、1つ又は複数のスペーサー部分を含むことができる。本発明によるバイオコンジュゲートは、本発明によるバイオコンジュゲートの調製のためのプロセスによって好都合にも調製され、ここで、反応性基Q1を含むリンカー−コンジュゲートは、官能基F1を含む生体分子にコンジュゲートされる。このコンジュゲーション反応において、Q1基及びF1基は、互いに反応することで、標的分子Dを生体分子Bと接続する接続基Z3を形成する。リンカー−コンジュゲート及び生体分子について本明細書に記載されている全ての好ましい実施形態は、したがって、Q1及びF1について言われている全てを除いて本発明によるバイオコンジュゲートに同様に当てはまり、ここで、本発明によるバイオコンジュゲートは、Q1及びF1、即ち接続基Z3の反応生成物を含有する。一態様において、本発明は、バイオコンジュゲート、好ましくは本明細書に記載されている抗体−コンジュゲートにも関する。
本発明によるバイオコンジュゲートは、式(A):
B−L−D
(A)
(式中:
Bは、生体分子、好ましくは抗体ABであり;
Lは、B及びDを連結するリンカーであり;
Dは、標的分子であり;
「−」の各出現は、独立して、結合又はスペーサー部分である)を有する。
第1の好ましい実施形態において、バイオコンジュゲートは、「コア−GlcNAc官能化」として定義されているコンジュゲーションのモードによって、即ち、上で定義されている通りのステップ(i)及び(ii)によって得ることができる。第2の好ましい実施形態において、式(A)に従ったバイオコンジュゲートは、式(1)に従った基又はその塩:
(式中:
aは、0又は1であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基らなる群から独立して選択される;又はR1は、標的分子Dであり、ここでDは、スペーサー部分を介してNに任意選択で接続されている)を含むリンカーLを有する。
一実施形態において、「−」は、本明細書において定義されている通りのスペーサー部分である。一実施形態において、「−」は結合、典型的には共有結合である。
好ましい実施形態において、バイオコンジュゲートは、B−Z3−L−Dによって表され、ここで、B、L、D及び「−」は、上で定義されている通りであり、Z3は、Q1とF1との反応によって得ることができる接続基である。部分Z3は、付加環化、好ましくは1,3−二極性付加環化反応によって得ることができることが好ましく、Z3は、スペーサー部分、好ましくはBとLとの間、最も好ましくはBと式(1)に従った基のカルボニル端部又はカルボキシル端部との間のスペーサー部分に位置する1,2,3−トリアゾール環であるのが最も好ましい。
本発明によるバイオコンジュゲートが式(1)に従った基の塩を含む場合、塩は、好ましくは薬学的に許容される塩である。
本発明によるバイオコンジュゲートは、1つ超の標的分子を含むことができる。同様に、バイオコンジュゲートは、1つ超の生体分子を含むことができる。生体分子B及び標的分子D並びにそれらの好ましい実施形態は、より詳細に上で記載されている。本発明によるバイオコンジュゲートにおけるDに関する好ましい実施形態は、より詳細に上で記載された通りの本発明によるリンカー−コンジュゲートにおけるDの好ましい実施形態に対応する。本発明によるバイオコンジュゲートにおけるリンカー(8a)又は(8b)に関する好ましい実施形態は、より詳細に上で記載された通りのリンカー−コンジュゲートにおけるリンカーの好ましい実施形態に対応する。本発明によるバイオコンジュゲートにおけるBに関する好ましい実施形態は、より詳細に上で記載された通りの本発明による生体分子におけるBの好ましい実施形態に対応する。
本発明によるバイオコンジュゲートは、生体分子がスペーサー部分を介して標的分子にコンジュゲートされているバイオコンジュゲートとして定義することもでき、ここでスペーサー部分は、式(1)に従った基又はその塩を含み、ここで式(1)に従った基は、上で定義されている通りである。
本発明によるバイオコンジュゲートは、(B)y’Sp(D)zとして示すこともでき、ここで、y’は1〜10の範囲における整数であり、zは1〜10の範囲における整数である。
本発明は、したがって、式:
(B)ySp(D)z
(式中:
y’は、1〜10の範囲における整数であり;
zは、1〜10の範囲における整数であり;
Bは、生体分子であり;
Dは、標的分子であり;
Spは、スペーサー部分であり、ここでスペーサー部分は、間隔をあける(即ち、間にある特定の距離を提供する)とともに生体分子B及び標的分子Dを共有結合的に連結する部分として定義されており;上記スペーサー部分は、式(1)に従った基又はその塩を含み、ここで式(1)に従った基は、上で定義されている通りである)に従ったバイオコンジュゲートにも関する。
好ましい実施形態において、上記スペーサー部分は、付加環化、好ましくは1,3−二極性付加環化反応、最も好ましくはBと式(1)に従った基との間に位置する1,2,3−トリアゾール環によって得ることができる部分をさらに含む。
y’は1、2、3又は4であることが好ましく、y’は1又は2であることがより好ましく、y’は1であることが最も好ましい。zは1、2、3、4、5又は6であることが好ましく、zは1、2、3又は4であることがより好ましく、zは1、2又は3であることがいっそう好ましく、zは1又は2であることがなおいっそう好ましく、zは1であることが最も好ましい。y’は1又は2、好ましくは1であり、zは1、2、3又は4であることがより好ましく、y’は1又は2、好ましくは1であり、zは1、2又は3であることがなおいっそう好ましく、y’は1又は2、好ましくは1であり、zは1又は2であることがなおいっそう好ましく、y’は1であり、zは1であることが最も好ましい。好ましい実施形態において、バイオコンジュゲートは、式BSp(D)4、BSp(D)3、BSp(D)2又はBSpDに従っている。
上に記載されている通り、本発明によるバイオコンジュゲートは、上で定義されている通りの式(1)に従った基又はその塩を含む。好ましい実施形態において、バイオコンジュゲートは、aが0である式(1)に従った基又はその塩を含む。この実施形態において、バイオコンジュゲートは、したがって、式(2)に従った基又はその塩を含み、ここで(2)は、上で定義されている通りである。
別の好ましい実施形態において、バイオコンジュゲートは、aが1である式(1)に従った基又はその塩を含む。この実施形態において、バイオコンジュゲートは、したがって、式(3)に従った基又はその塩を含み、ここで(3)は、上で定義されている通りである。
本発明によるバイオコンジュゲートにおいて、R1、スペーサー部分Sp、並びにR1及びSpの好ましい実施形態は、本発明によるリンカー−コンジュゲートについて上で定義されている通りである。
好ましい実施形態において、バイオコンジュゲートは、式(5a)若しくは(5b)又はその塩:
(式中、a、b、c、d、e、f、g、h、i、D、Sp1、Sp2、Sp3、Sp4、Z1、Z2、Z3及びR1、並びにそれらの好ましい実施形態は、リンカー−コンジュゲート(4a)及び(4b)について上で定義されている通りであり;
hは、0又は1であり;
Z3は、BをSp3、Z1、Sp2、O又はC(O)に接続する接続基であり;
Bは、生体分子である)に従っている。
hは1であることが好ましい。
生体分子Bの好ましい実施形態は、上で定義されている通りである。
本発明によるバイオコンジュゲートが(5a)又は(5b)の塩である場合、上記塩は、好ましくは薬学的に許容される塩である。
Z3は接続基である。上に記載されている通り、「接続基」という用語は、本明細書において、化合物の1つの部分及び同じ化合物の別の部分を接続する構造要素を指す。典型的に、バイオコンジュゲートは、リンカー−コンジュゲートに存在する反応性基Q1と生体分子に存在する官能基F1との反応を介して調製される。当業者によって理解される通り、接続基Z3の性質は、生体分子とリンカー−コンジュゲートとの間の接続を確立するために使用された有機反応の型に依存する。言い換えると、Z3の性質は、リンカー−コンジュゲートの反応性基Q1の性質及び生体分子における官能基F1の性質に依存する。生体分子とリンカー−コンジュゲートとの間の接続を確立するのに利用可能な多数の異なる化学反応があるので、その結果として、Z3について多数の可能性がある。
Q1を含むリンカー−コンジュゲートが相補的官能基F1を含む生体分子にコンジュゲートされている場合にバイオコンジュゲートに存在するF1及びQ1の適当な組合せ並びに接続基Z3のいくつかの例は、図11に示されている。
F1が例えばチオール基である場合、相補的基Q1としては、N−マレイミジル基及びアルケニル基が挙げられ、対応する接続基Z3は、図11に示されている通りである。F1がチオール基である場合、相補的基Q1としては、アレンアミド基も挙げられる。
F1が例えばアミノ基である場合、相補的基Q1としては、ケトン基及び活性化エステル基が挙げられ、対応する接続基Z3は、図11に示されている通りである。
F1が例えばケトン基である場合、相補的基Q1としては、(O−アルキル)ヒドロキシルアミノ基及びヒドラジン基が挙げられ、対応する接続基Z3は、図11に示されている通りである。
F1が例えばアルキニル基である場合、相補的基Q1としては、アジド基が挙げられ、対応する接続基Z3は、図11に示されている通りである。
F1が例えばアジド基である場合、相補的基Q1としては、アルキニル基が挙げられ、対応する接続基Z3は、図11に示されている通りである。
F1が例えばシクロプロペニル基、trans−シクロオクテン基又はシクロオクチン基である場合、相補的基Q1としては、テトラジニル基が挙げられ、対応する接続基Z3は、図11に示されている通りである。これらの特別な場合において、Z3は中間体構造だけであり、N2を排出し、それによって、ジヒドロピリダジン(アルケンとの反応から)又はピリダジン(アルキンとの反応から)を生ずる。
F1及びQ1の追加の適当な組合せ、並びに結果として得られる接続基Z3の性質は、当業者に知られており、例えば、参照により組み込まれるG.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」、Elsevier、第3版、2013(ISBN:978−0−12−382239−0)、特に3章、229〜258ページに記載されている。バイオコンジュゲーションプロセスに適当な相補的反応性基のリストは、G.T.Hermanson、「Bioconjugate Techniques」Elsevier、第3版、2013(ISBN:978−0−12−382239−0)の3章の230〜232ページ、表3.1に開示されており、この表の内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
(5a)及び(5b)に従ったバイオコンジュゲートにおいて、Z3、Sp3、Z1及びSp2のうちの少なくとも1つは存在すること、即ち、h、g、d及びcのうちの少なくとも1つは0でないことが好ましい。Sp1、Z2及びSp4のうちの少なくとも1つは存在すること、即ち、b、e及びiのうちの少なくとも1つは0でないことも好ましい。Z3、Sp3、Z1及びSp2のうちの少なくとも1つは存在し、Sp1、Z2及びSp4のうちの少なくとも1つは存在することがより好ましい、即ち、b、e及びiのうちの少なくとも1つは0でなく、h、g、d及びcのうちの少なくとも1つは0でないことが好ましい。
バイオコンジュゲートの調製のためのプロセス
本発明の様々な態様において、本発明によるバイオコンジュゲートは、本明細書において定義されている通りのバイオコンジュゲートの調製のためのプロセスによって典型的に得られる。バイオコンジュゲートのリンカーLにおける式(1)に従った基又はその塩の存在は、本発明の鍵であるので、バイオコンジュゲートを調製する任意の方法は、得られるバイオコンジュゲートが本明細書において定義されている通りのリンカーLを含む限り使用することができる。式(1)に従った基は、BとZ3との間のリンカーLに存在することができる、即ち、生体分子に由来する、若しくはZ3とDとの間、即ち、リンカー−コンジュゲートに由来する、又はZ3は式(1)に従った基であるか若しくは式(1)に従った基を含む、即ち、式(1)に従った基は、コンジュゲーションで形成される。式(1)に従った基は、BとZ3との間又はZ3とDとの間のリンカーLに存在することが好ましく、式(1)に従った基は、Z3とDとの間のリンカーLに存在するのが最も好ましい。同様に、Q1及びF1の性質を含めて、コンジュゲーションの正確なモードは、本発明の文脈において大きな柔軟性を有する。BOIをMOIへコンジュゲートするための多くの技法が当業者に知られており、本発明の文脈において使用することができる。一実施形態において、コンジュゲーション方法は、上で定義されている通りのステップ(i)及び(ii)を含む。
一実施形態において、コンジュゲーションのモードは、図11に図示されているコンジュゲーションモードのいずれかから、即ち、(10a)又は(10b)として表すことができる接続部分Z3を形成するためのチオール−アルケンコンジュゲーション(好ましくはシステイン−アルケンコンジュゲーション、好ましくはここで、アルケンはペンダントアルケン(−C=CH2)又はマレイミド部分、最も好ましくはマレイミド部分である)、(10c)として表すことができる接続部分Z3を形成するためのアミノ−(活性化)カルボン酸コンジュゲーション(ここで、(活性化)カルボン酸は−C(O)Xによって表され、ここでXは脱離基である)、Y=NHである(10d)として表すことができる接続部分Z3を形成するためのケトン−ヒドラジノコンジュゲーション(好ましくはアセチル−ヒドラジノコンジュゲーション)、Y=Oである(10d)として表すことができる接続部分Z3を形成するためのケトン−オキシアミノコンジュゲーション(好ましくはアセチル−オキシアミノコンジュゲーション)、(10e)、(10f)、(10i)又は(10g)として表すことができる接続部分Z3を形成するためのアルキン−アジドコンジュゲーション(好ましくはここで、アルキンはペンダントアルキン(−C≡CH)又はシクロオクチン部分、最も好ましくはシクロオクチン部分である)、N2が除去される(10h)として表すことができる接続部分Z3を形成するためのアルケン−1,2,4,5−テトラジンコンジュゲーション又はアルキン−1,2,4,5−テトラジンコンジュゲーションから選択される。殊に好ましいコンジュゲーションモードは、システイン−アルケンコンジュゲーション及びアルキン−アジドコンジュゲーション、より好ましくはシステイン−マレイミドコンジュゲーション及びシクロオクチン−アジドコンジュゲーションである。
本発明によるバイオコンジュゲートは、本明細書において定義されている通りのリンカー−コンジュゲートの反応性基Q1を、生体分子とも称される生体分子の官能基F1と反応させるステップを含むプロセスによって典型的に調製される。リンカー−コンジュゲート及び生体分子、並びにそれらの好ましい実施形態は、より詳細に上で記載されている。こうしたプロセスは、コンジュゲーション又はバイオコンジュゲーションとして当業者に知られている。図1は、生体分子のコンジュゲーションの一般概念を示している:1個又は複数の官能基F1を含む目的の生体分子(BOI)は、特定のリンカーを介して反応性基Q1に共有結合している(過剰の)標的分子D(目的の分子又はMOIとも称される)とともにインキュベートされる。バイオコンジュゲーションの上記プロセスにおいて、F1とQ1との間の化学反応が起き、それによって、BOIとMOIとの間の共有結合を含むバイオコンジュゲートを形成する。BOIは、例えば、ペプチド/タンパク質、グリカン又は核酸であり得る。
バイオコンジュゲーション反応は、リンカー−コンジュゲートの反応性基Q1を生体分子の官能基F1と反応させるステップを典型的に含み、ここで、式(A)のバイオコンジュゲートが形成され、ここでリンカーLは、式(1)に従った基又はその塩:
(式中:
aは、0又は1であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される、又はR1は、スペーサー部分を介してNに任意選択で接続されているさらなる標的分子Dである)を含む。
好ましい実施形態において、バイオコンジュゲートは、(4+2)−付加環化(例えばDiels−Alder反応)又は(3+2)−付加環化(例えば1,3−二極性付加環化)などの付加環化を介して調製される。コンジュゲーションは、Diels−Alder反応又は1,3−二極性付加環化であることが好ましい。好ましいDiels−Alder反応は、逆電子要請Diels−Alder付加環化である。別の好ましい実施形態において、1,3−二極性付加環化、より好ましくはアルキン−アジド付加環化が使用され、最も好ましくはここで、Q1はアルキン基であるか又はアルキン基を含み、F1はアジド基である。Diels−Alder反応及び1,3−二極性付加環化などの付加環化は、当技術分野において知られており、当技術者は、付加環化をどのように実施するかを知っている。
Q1がF1と反応する場合、リンカー−コンジュゲートに由来する生体分子と標的分子との間の共有結合接続が形成される。相補的反応性基Q1及び官能基F1は、より詳細に上及び下で記載されている。
バイオコンジュゲートを調製するためのプロセスの好ましい実施形態において、aは、式(1)に従った基において0である。この実施形態において、リンカー−コンジュゲートは、したがって、上で定義されている通りの式(2)に従った基を含む。バイオコンジュゲートを調製するためのプロセスの別の好ましい実施形態において、aは、式(1)に従った基において1である。この実施形態において、リンカー−コンジュゲートは、したがって、上で定義されている通りの式(3)に従った基を含む。
生体分子は、より詳細に上で記載されている。本発明によるプロセスにおいて、生体分子は、タンパク質(糖タンパク質及び抗体を含む)、ポリペプチド、ペプチド、グリカン、脂質、核酸、オリゴヌクレオチド、多糖類、オリゴ糖類、酵素、ホルモン、アミノ酸及び単糖類からなる群から選択されることが好ましい。生体分子Bは、タンパク質(糖タンパク質及び抗体を含む)、ポリペプチド、ペプチド、グリカン、核酸、オリゴヌクレオチド、多糖類、オリゴ糖類及び酵素からなる群から選択されるのがより好ましい。生体分子Bは、糖タンパク質及び抗体を含むタンパク質、ポリペプチド、ペプチド及びグリカンからなる群から選択されるのがより好ましい。Bは、抗体又はその抗原結合性断片であるのが最も好ましい。
バイオコンジュゲートを調製するためのプロセスにおいて、反応性基Q1は、任意選択で置換されているN−マレイミジル基、ハロゲン化N−アルキルアミド基、スルホニルオキシN−アルキルアミド基、エステル基、カーボネート基、ハロゲン化スルホニル基、チオール基又はその誘導体、アルケニル基、アルキニル基、(ヘテロ)シクロアルキニル基、ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イル]基、シクロアルケニル基、テトラジニル基、アジド基、ホスフィン基、ニトリルオキシド基、ニトロン基、ニトリルイミン基、ジアゾ基、ケトン基、(O−アルキル)ヒドロキシルアミノ基、ヒドラジン基、ハロゲン化N−マレイミジル基、1,1−ビス(スルホニルメチル)メチルカルボニル基又はその脱離誘導体、ハロゲン化カルボニル基及びアレンアミド基からなる群から選択されることが好ましい。
さらに好ましい実施形態において、Q1は、式(9a)、(9b)、(9c)、(9d)、(9e)、(9f)、(9g)、(9h)、(9i)、(9j)、(9k)、(9l)、(9m)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9r)、(9s)、(9t)、(9u)、(9v)、(9w)、(9x)、(9y)、(9z)、(9za)、(9zb)、(9zc)、(9zd)、(9ze)、(9zf)、(9zg)、(9zh)、(9zi)、(9zj)又は(9zk)に従っており、ここで、(9a)、(9b)、(9c)、(9d)、(9e)、(9f)、(9g)、(9h)、(9i)、(9j)、(9k)、(9l)、(9m)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9r)、(9s)、(9t)、(9u)、(9v)、(9w)、(9x)、(9y)、(9z)、(9za)、(9zb)、(9zc)、(9zd)、(9ze)、(9zf)、(9zg)、(9zh)、(9zi)、(9zj)、(9zk)及びそれらの好ましい実施形態は、本発明によるリンカー−コンジュゲートについて上で定義されている通りである。Q1は、式(9a)、(9b)、(9c)、(9f)、(9j)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9s)、(9t)、(9zh)又は(9r)に従っているのがより好ましい。Q1は、式(9a)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)、(9t)、(9zh)又は(9s)に従っているのがいっそう好ましく、Q1は、式(9a)、(9p),(9q)、(9n)、(9t)、(9zh)又は(9o)に従っているのが最も好ましく、それらの好ましい実施形態は、上で定義されている通りである。
殊に好ましい実施形態において、Q1は、上に記載されている通りのアルキニル基、上に記載されている通りのシクロアルケニル基、上に記載されている通り(ヘテロ)シクロアルキニル基及びビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イル]基から好ましくは選択されるアルキン基を含み、Q1は、上で定義されている通りの式(9j)、(9n)、(9o)、(9p)、(9q)及び(9zk)から選択されるのがより好ましい。Q1は、好ましくは式(9q)のビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イル]基であるのが最も好ましい。
バイオコンジュゲートを調製するためのプロセスのさらに好ましい実施形態において、リンカー−コンジュゲートは、式(4a)若しくは(4b)、又はその塩:
(式中:
aは、独立して0又は1であり;
bは、独立して0又は1であり;
cは、0又は1であり;
dは、0又は1であり;
eは、0又は1であり;
fは、1〜150の範囲における整数であり;
gは、0又は1であり;
iは、0又は1であり;
Dは、標的分子であり;
Q1は、生体分子に存在する官能基F1と反応できる反応性基であり;
Sp1は、スペーサー部分であり;
Sp2は、スペーサー部分であり;
Sp3は、スペーサー部分であり;
Sp4は、スペーサー部分であり;
Z1は、Q1又はSp3を、Sp2、O若しくはC(O)又はN(R1)に接続する接続基であり;
Z2は、D又はSp4を、Sp1、N(R1)、O又はC(O)に接続する接続基であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される;又はR1は、D、−[(Sp1)b(Z2)e(Sp4)iD]若しくは−[(Sp2)c(Z1)d(Sp3)gQ1]であり、ここでDは標的分子であり、Sp1、Sp2、Sp3、Sp4、Z1、Z2、Q1、b、c、d、e、g及びiは、上で定義されている通りである)に従っている。
Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、独立して、スペーサー部分であり、言い換えると、Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、互いに異なっていてもよい。Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在する又は存在しないことがある(b、c、g及びiは、独立して、0又は1である)。しかしながら、Sp1、Sp2、Sp3及びSp4のうちの少なくとも1つは存在することが好ましい、即ち、b、c、g及びiのうちの少なくとも1つが0でないことが好ましい。
存在するならば、Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、直鎖又は分枝のC1〜C200アルキレン基、C2〜C200アルケニレン基、C2〜C200アルキニレン基、C3〜C200シクロアルキレン基、C5〜C200シクロアルケニレン基、C8〜C200シクロアルキニレン基、C7〜C200アルキルアリーレン基、C7〜C200アリールアルキレン基、C8〜C200アリールアルケニレン基及びC9〜C200アリールアルキニレン基からなる群から独立して選択されることが好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3の群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基が、上で定義されている通りの1個又は複数のヘテロ原子によって中断されている場合、上記基は、1個若しくは複数のO原子によって及び/又は1個若しくは複数のS−S基によって中断されていることが好ましい。
スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C100アルキレン基、C2〜C100アルケニレン基、C2〜C100アルキニレン基、C3〜C100シクロアルキレン基、C5〜C100シクロアルケニレン基、C8〜C100シクロアルキニレン基、C7〜C100アルキルアリーレン基、C7〜C100アリールアルキレン基、C8〜C100アリールアルケニレン基及びC9〜C100アリールアルキニレン基からなる群から独立して選択されるのがより好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3の群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。
スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C50アルキレン基、C2〜C50アルケニレン基、C2〜C50アルキニレン基、C3〜C50シクロアルキレン基、C5〜C50シクロアルケニレン基、C8〜C50シクロアルキニレン基、C7〜C50アルキルアリーレン基、C7〜C50アリールアルキレン基、C8〜C50アリールアルケニレン基及びC9〜C50アリールアルキニレン基からなる群から独立して選択されるのがいっそう好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3の群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。
スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C20アルキレン基、C2〜C20アルケニレン基、C2〜C20アルキニレン基、C3〜C20シクロアルキレン基、C5〜C20シクロアルケニレン基、C8〜C20シクロアルキニレン基、C7〜C20アルキルアリーレン基、C7〜C20アリールアルキレン基、C8〜C20アリールアルケニレン基及びC9〜C20アリールアルキニレン基からなる群から独立して選択されるのがなおいっそう好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3の群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。
これらの好ましい実施形態において、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、非置換であるとともにO、S及びNR3、好ましくはOの群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されていることがさらに好ましく、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基、好ましくは水素又はメチルからなる群から独立して選択される。
スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C20アルキレン基からなる群から独立して選択されるのが最も好ましく、アルキレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3の群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。この実施形態において、アルキレン基は非置換であるとともにO、S及びNR3、好ましくはO及び/又はS−Sの群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されていることがさらに好ましく、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基、好ましくは水素又はメチルからなる群から独立して選択される。
特に好ましいスペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及びSp4としては、−(CH2)n−、−(CH2CH2)n−、−(CH2CH2O)n−、−(OCH2CH2)n−、−(CH2CH2O)nCH2CH2−、−CH2CH2(OCH2CH2)n−、−(CH2CH2CH2O)n−、−(OCH2CH2CH2)n−、−(CH2CH2CH2O)nCH2CH2CH2−及び−CH2CH2CH2(OCH2CH2CH2)n−が挙げられ、ここでnは、1〜50の範囲、好ましくは1〜40の範囲、より好ましくは1〜30の範囲、いっそう好ましくは1〜20の範囲及びなおいっそう好ましくは1〜15の範囲における整数である。nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であるのがより好ましく、1、2、3、4、5、6、7又は8であるのがより好ましく、1、2、3、4、5又は6であるのがいっそう好ましく、1、2、3又は4であるのがなおいっそう好ましい。
本発明によるプロセスの別の好ましい実施形態において、式(4a)及び(4b)に従ったリンカー−コンジュゲートにおいて、スペーサー部分Sp1、Sp2、Sp3及び/又はSp4は、存在するならば、アミノ酸の配列を含む。アミノ酸の配列を含むスペーサー部分は、当技術分野において知られており、ペプチドリンカーと称することもできる。例としては、Val−Ala部分又はVal−Cit部分を含むスペーサー部分、例えばVal−Cit−PABC、Val−Cit−PAB、Fmoc−Val−Cit−PABなどが挙げられる。
上に記載されている通り、Z1及びZ2は接続基である。本発明によるプロセスの好ましい実施形態において、Z1及びZ2は、−O−、−S−、−NR2−、−N=N−、−C(O)−、−C(O)NR2−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)NR2、−NR2C(O)−、−NR2C(O)O−、−NR2C(O)NR2−、−SC(O)−、−SC(O)O−、−SC(O)NR2−、−S(O)−、−S(O)2−、−OS(O)2−、−OS(O)2O−、−OS(O)2NR2−、−OS(O)−、−OS(O)O−、−OS(O)NR2−、−ONR2C(O)−、−ONR2C(O)O−、−ONR2C(O)NR2−、−NR2OC(O)−、−NR2OC(O)O−、−NR2OC(O)NR2−、−ONR2C(S)−、−ONR2C(S)O−、−ONR2C(S)NR2−、−NR2OC(S)−、−NR2OC(S)O−、−NR2OC(S)NR2−、−OC(S)−、−OC(S)O−、−OC(S)NR2−、−NR2C(S)−、−NR2C(S)O−、−NR2C(S)NR2−、−SS(O)2−、−SS(O)2O−、−SS(O)2NR2−、−NR2OS(O)−、−NR2OS(O)O−、−NR2OS(O)NR2−、−NR2OS(O)2−、−NR2OS(O)2O−、−NR2OS(O)2NR2−、−ONR2S(O)−、−ONR2S(O)O−、−ONR2S(O)NR2−、−ONR2S(O)2O−、−ONR2S(O)2NR2−、−ONR2S(O)2−、−OP(O)(R2)2−、−SP(O)(R2)2−、−NR2P(O)(R2)2−及びそれらの2つ以上の組合せからなる群から独立して選択され、ここでR2は、水素、C1〜C24アルキル基、C2〜C24アルケニル基、C2〜C24アルキニル基及びC3〜C24シクロアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキル基は、任意選択で置換されている。
本発明による特に好ましいプロセスにおいて、Sp1、Sp2、Sp3及びSp4は、存在するならば、直鎖又は分枝のC1〜C20アルキレン基からなる群から独立して選択され、アルキレン基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3からなる群から選択される1個又は複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択され、Q1は、式(9a)、(9p)、(9q)、(9n)、(9t)、(9zh)又は(9o):
(式中:
R10は、(チオ)エステル基であり;
R18は、任意選択で置換されている、C1〜C12アルキル基及びC4〜C12(ヘテロ)アリール基からなる群から選択される)に従っている。
バイオコンジュゲートを調製するためのプロセスの実施形態は、図4に図示されている。図4は、修飾抗体13a〜dが、マレイミドとの求核付加の手段によって(チオエーテルコンジュゲート14に至る3−メルカプトプロピオニル−ガラクトサミン修飾13aに関する、又はチオエーテルコンジュゲート17に至る改変システイン残基へのコンジュゲーションに関する)、又はシクロオクチン試薬との歪み促進付加環化で(それぞれトリアゾール15a、15b又は16に至る13b、13c又は13dに関する)、バイオコンジュゲーションプロセスをどのように受けるかを示している。
本発明によるバイオコンジュゲートの治療指数の増加に加えて、本明細書に記載されている通りのバイオコンジュゲート並びに本発明によるリンカー−コンジュゲート及びスルファミドリンカーの調製のためのプロセスのさらなる利点は、コンジュゲーション効率が、スルファミドリンカーが典型的なポリエチレングリコール(PEG)スペーサーの代わりに使用される場合において増加することである。スルファミド基、特にアシルスルファミド基又はカルバモイルスルファミド基の追加の利点は、こうした基を含むリンカーの可溶性に対して、並びにコンジュゲーションの前、最中及び後における全体としてのコンストラクトに対してプラス効果を付与するスルファミド基の高い極性である。この増加された極性を勘案して、本発明によるスルファミドリンカーを含有するリンカー−コンジュゲートを用いるコンジュゲーションは、疎水性標的化合物を生体分子にコンジュゲートするのに特に適当である。スルファミドの高い極性は、疎水性部分が、コンジュゲーション中に多量の有機共溶媒を必要とすること及び/又はバイオコンジュゲートの凝集を誘発することが知られている目的の生体分子にコンジュゲートされる場合においてもプラスの影響を持つ。共溶媒の高いレベル(DMFの最大25%又はDMA、プロピレングリコール若しくはDMSOの実に50%)は、コンジュゲーションプロセス中にタンパク質変性を誘発することがある、及び/又は製造プロセスにおいて特殊装置を必要とすることがある。したがって、バイオコンジュゲートにおける疎水性の連結する部分と関連する凝集の問題は、バイオコンジュゲートの形成において、リンカー−コンジュゲートにおける標的分子と反応性基Q1との間のスペーサーに、本発明によるスルファミドリンカーを使用することによって、効果的に解決される。本発明によるスルファミドリンカー及びバイオコンジュゲーションプロセスにおけるスルファミドリンカーの使用の追加の利点は、合成の簡便さ及び高収率である。
本発明によるスルファミドリンカーの使用のこれらの有益な効果の証拠について、国際出願PCT/NL2015/050697、特にその表1〜3、図11〜14、23及び24、並びに実施例57、58、60及び61が参照される。国際出願PCT/NL2015/050697のこれらの表、図及び実施例は、本明細書に組み込まれる。
適用
本発明は、したがって、第1の態様において、バイオコンジュゲートの治療指数を増加させるための、上で定義されている通りの「コア−GlcNAc官能化」及び「スルファミド連結」のうちの少なくとも1つを含むコンジュゲーションのモードの使用に関する。本態様による本発明は、バイオコンジュゲートの治療指数を増加させるための方法として表現することもできる。好ましい実施形態において、コンジュゲーションのモードは、リンカーLを介して生体分子Bを標的分子Dと接続するのに使用されており、ここでコンジュゲーションのモードは、以下を含む:
(i)1〜4つのコアN−アセチルグルコサミン部分を含む糖タンパク質を、触媒の存在下で式S(F1)x−Pの化合物と接触させるステップであって、S(F1)xは、官能基Q1と反応できるx個の官能基F1を含む糖誘導体であり、xは1又は2であり、Pはヌクレオシド一リン酸又は二リン酸であり、触媒は、S(F1)x部分をコア−GlcNAc部分に転移することで、式(24):
(式中、S(F1)x及びxは、上で定義されている通りであり;ABは抗体を表し;GlcNAcはN−アセチルグルコサミンであり;Fucはフコースであり;bは、0又は1であり;yは1、2、3又は4である)に従った修飾糖タンパク質を得ることができる、ステップ;並びに
(ii)修飾糖タンパク質を、官能基F1と反応できる官能基Q1及びリンカーL2を介してQ1に接続されている標的分子Dを含むリンカー−コンジュゲートと反応させることで抗体−コンジュゲートを得るステップであって、リンカーLはS−Z3−L2を含み、Z3は、Q1とF1との間の反応から生じる接続基である、ステップ。
本明細書において、生体分子は、好ましくは抗体であり、バイオコンジュゲートは、好ましくは抗体−コンジュゲートである。
本明細書において、治療指数は、本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートと比較して増加されているか、又は本発明によるコンジュゲーションのモードによって得ることができる。したがって、第1の実施形態において、治療指数は、上で定義されている通りのステップ(i)及び(ii)によって得ることができないバイオコンジュゲート、又は言い換えると、コンジュゲーションプロセスの直接的帰結である抗体を標的分子と連結する結果として得られるリンカーLの構造的特色を含有しないバイオコンジュゲートと比較して増加される。したがって、第2の実施形態において、治療指数は、リンカーLが式(1)に従った基又はその塩を含まない式(A)のバイオコンジュゲートと比較して増加される。
本発明者らは、驚くべきことに、本発明によるコンジュゲーションのモードが使用された場合、たとえ全ての他の因子、特に生体分子の型及び型及び生体分子−標的分子−比が一定に保たれていても、本発明によるバイオコンジュゲートの治療指数が顕著に増加されたことを見出した。治療指数の増加は、好ましくは、癌の処置における、特にHER2発現腫瘍の標的化における治療指数の増加である。
本発明の第1の態様による方法は、本発明によるコンジュゲーションのモードを有するバイオコンジュゲートを提供するステップを含む、バイオコンジュゲートの治療指数を増加させるための方法として表現することもできる。
本発明者らは、本発明によるコンジュゲーションのモードが、本発明によるバイオコンジュゲートに含まれている場合、治療指数の両態様に対して:(a)治療的有効性に対して及び(b)耐容性に対して効果を有することを見出した。したがって、治療指数を増加させるための本使用又は方法は、好ましくは、(a)治療的有効性を増加させるため、及び/又は(b)式(A)のバイオコンジュゲートの耐容性を増加させるためである。バイオコンジュゲートは、抗体−コンジュゲートであることが好ましく、本使用又は方法は、抗体−コンジュゲートの治療指数を増加させるため、好ましくは、(a)抗体−コンジュゲートの治療的有効性を増加させるため、及び/又は(b)抗体−コンジュゲートの耐容性を増加させるためである。一実施形態において、本方法又は使用は、バイオコンジュゲート、好ましくは抗体−コンジュゲートの治療的有効性を増加させるためである。一実施形態において、本方法又は使用は、バイオコンジュゲート、好ましくは抗体−コンジュゲートの耐容性を増加させるためである。
したがって、一実施形態において、第1の態様による使用又は方法は、式(A)のバイオコンジュゲートの治療的有効性を増加させるためである。本明細書において、「治療的有効性を増加させること」は、「有効量を低下させること」、「ED50値を低下させること」又は「保護指数を増加させること」として表現することもできる。同様に、一実施形態において、第1の態様による方法は、式(A)のバイオコンジュゲートの耐容性を増加させるためである。本明細書において、「耐容性を増加させること」は、「最大耐量(MTD)を増加させること」、「TD50値を増加させること」、「安全性を増加させること」又は「毒性を低減すること」として表現することもできる。殊に好ましい一実施形態において、第1の態様による方法は、(a)治療的有効性を増加させるため、及び(b)式(A)のバイオコンジュゲートの耐容性を増加させるためである。
第1の態様による方法は、非常に非医療的である。一実施形態において、方法は、バイオコンジュゲートの治療指数を増加させるための非医療的方法である。
本発明の第1の態様は、バイオコンジュゲートの治療指数(治療的有効性及び/又は耐容性)を改善することにおける使用のためのコンジュゲーションのモードとしても表現することができ、ここでコンジュゲーションのモードは、上で定義されている通りである。一実施形態において、本態様は、式(A)のバイオコンジュゲートの治療的有効性を改善することにおける使用のための、上で定義されている通りの「コア−GlcNAc官能化」に従ったコンジュゲーションのモードとしても表現され、ここでL及び(A)は、上で定義されている通りである。一実施形態において、本態様は、バイオコンジュゲート、好ましくは抗体−コンジュゲートの治療指数(治療的有効性及び/又は耐容性)を改善することにおける使用のためのコンジュゲーションのモードとしても表現される。言い換えると、第1の態様は、バイオコンジュゲートの治療指数(治療的有効性及び/又は耐容性)を改善するための、バイオコンジュゲート、好ましくは抗体−コンジュゲートの調製のためのコンジュゲーションのモードの使用に関する。第1の態様による本発明は、バイオコンジュゲートの治療指数(治療的有効性及び/又は耐容性)を増加させるための、バイオコンジュゲート、好ましくは抗体−コンジュゲートにおける、又はバイオコンジュゲート、好ましくは抗体−コンジュゲートの調製における、コンジュゲーションのモードの使用としても表現することができる。
一実施形態において、本発明の第1の態様による使用のためのコンジュゲーションの方法、使用又はモードは、それを必要とする対象、特に、例えば膵臓癌、膀胱癌、又は胃癌から選択される、HER2発現に関連する障害を患う患者への、本発明によるバイオコンジュゲートの投与をさらに含む。一実施形態において、対象は、癌患者、より適当にはHER2発現腫瘍を患う患者である。抗体−薬物−コンジュゲートなどのバイオコンジュゲートの使用は、癌処置の分野においてよく知られており、本発明によるバイオコンジュゲートは、この点において殊に適当である。
典型的に、バイオコンジュゲートは、治療有効量で投与される。投与は単回用量であり得るか、又は例えば月1〜4回、好ましくは月1〜2回行い得る。好ましい実施形態において、投与は、3週又は4週毎に、最も好ましくは4週毎に1回行う。治療的有効性の増加を勘案して、投与は、従来のバイオコンジュゲートを用いる処置中の場合よりも頻繁には行わないことがある。当業者によって理解される通り、本発明によるバイオコンジュゲートの用量は、多くの因子に依存することがあり、最適な投薬計画は、日常的実験法を介して当技術者によって決定することができる。バイオコンジュゲートは、0.01〜50mg/kg対象体重、より正確には0.03〜25mg/kg若しくは最も正確には0.05〜10mg/kg、又は代替として0.1〜25mg/kg若しくは0.5〜10mg/kgの用量で典型的に投与される。一実施形態において、投与は、静脈内注射を介して行う。
HER2発現細胞を標的化するための方法
本発明は、第2の態様において、本発明によるバイオコンジュゲートの投与を含む、低HER2発現細胞を含むがこれに限定されない、HER2発現細胞を標的化するための方法に関する。それを必要とする対象は、最も好ましくは癌患者である。抗体−薬物−コンジュゲートなどのバイオコンジュゲートの使用は、癌処置の分野においてよく知られており、本発明によるバイオコンジュゲートは、この点において殊に適当である。記載されている通りの方法は、癌の処置に典型的に適当である。本発明によるバイオコンジュゲートは、非常に詳細に上で記載されており、上記記載は、本発明の第2の態様において使用されるバイオコンジュゲートにも同様に当てはまる。本発明の第2の態様は、それを必要とする対象におけるHER2発現細胞を標的化することにおける使用のための本発明によるバイオコンジュゲートとしても表現することができる。言い換えると、第2の態様は、それを必要とする対象におけるHER2発現細胞を標的化することにおける使用のための医薬の調製のための、本発明によるバイオコンジュゲートの使用に関する。
本態様の文脈において、HER2発現細胞の標的化としては、HER2発現細胞、特にHER2発現腫瘍を処置すること、画像化すること、診断すること、その増殖を防止すること、封じ込めること及び低減することのうちの1つ又は複数が挙げられる。本態様は、HER2発現腫瘍の処置のためであるのが最も好ましい。
一実施形態において、本態様は、それを必要とする対象の処置のための方法に関する。本発明の第2の態様は、それを必要とする対象の処置における使用のための、好ましくは癌の処置のための本発明によるバイオコンジュゲートとしても表現することができる。言い換えると、第2の態様は、それを必要とする対象の処置における使用のための、好ましくは癌の処置における使用のための医薬の調製のための本発明によるバイオコンジュゲートの使用に関する。
本態様の文脈において、対象は、HER2発現に関連する障害、特に乳癌、膵臓癌、膀胱癌、又は胃癌から選択される障害を適当には患う。
本態様の文脈において、標的分子Dは抗癌剤、好ましくは細胞毒であることが好ましい。
第2の態様による方法において、バイオコンジュゲートは、治療有効量で典型的に投与される。投与は単回用量であり得るか、又は例えば月1〜4回、好ましくは月1〜2回行い得る。好ましい実施形態において、投与は、3週又は4週毎に、最も好ましくは4週毎に1回行う。当業者によって理解される通り、本発明によるバイオコンジュゲートの用量は、多くの因子に依存することがあり、最適な投薬計画は、日常的実験法を介して当技術者によって決定することができる。バイオコンジュゲートは、0.01〜50mg/kg対象体重、より正確には0.03〜25mg/kg若しくは最も正確には0.05〜10mg/kg、又は代替として0.1〜25mg/kg若しくは0.5〜10mg/kgの用量で典型的に投与される。一実施形態において、投与は、静脈内注射を介して行う。
治療的有効性の増加を勘案して、投与は、従来のバイオコンジュゲートを用いる処置におけるよりも頻繁に行わない及び/又はより低い用量で行うことがある。一実施形態において、本発明によるバイオコンジュゲートの投与は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートのTD50よりも低い用量であり、好ましくは、用量は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートのTD50の多くとも99〜90%、より好ましくは多くとも89〜60%、いっそう好ましくは多くとも59〜30%、最も好ましくは多くとも29〜10%である。一実施形態において、本発明によるバイオコンジュゲートの投与は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートのために行う投与よりも頻繁に行わず、好ましくは、投与事象の数は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートの投与事象の数の多くとも75%、より好ましくは多くとも50%である。代替として、耐容性の増加を勘案して、投与は、従来のバイオコンジュゲートを用いる処置よりも高い用量で行うことがある。一実施形態において、本発明によるバイオコンジュゲートの投与は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートのTD50よりも高い用量であり、好ましくは、用量は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートのTD50の多くとも25〜50%、より好ましくは多くとも50〜75%、最も好ましくは多くとも75〜100%である。
治療的有効性の増加を勘案して、投与は、従来のバイオコンジュゲートを用いる処置よりも頻繁に行わない及び/又はより低い用量で行うことがある。一実施形態において、本発明によるバイオコンジュゲートの投与は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートのED50よりも低い用量であり、好ましくは、用量は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートのED50の多くとも99〜90%、より好ましくは多くとも89〜60%、いっそう好ましくは多くとも59〜30%、最も好ましくは多くとも29〜10%である。一実施形態において、本発明によるバイオコンジュゲートの投与は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートのために行う投与よりも頻繁に行わず、好ましくは、投与事象の数は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートの投与事象の数の多くとも75%、より好ましくは多くとも50%である。代替として、耐容性の増加を勘案して、投与は、従来のバイオコンジュゲートを用いる処置におけるよりも高い用量で行うことがある。一実施形態において、本発明によるバイオコンジュゲートの投与は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートのTD50よりも高い用量であり、好ましくは、用量は、同じバイオコンジュゲートであるが本発明によるコンジュゲーションのモードを含まないバイオコンジュゲートのTD50の多くとも1.1〜1.49倍高く、より好ましくは多くとも1.5〜1.99倍高く、いっそう好ましくは2〜4.99倍高く、最も好ましくは多くとも5〜10倍高い。
一実施形態において、本態様による使用若しくは方法又は使用のためのコンジュゲーションモードは、それを必要とする対象の処置における使用のためのバイオコンジュゲートであり、ここでバイオコンジュゲートは、式(A):
B−L−D
(A)
[式中:
Bは、生体分子であり;
Lは、B及びDを連結するリンカーであり;
Dは、標的分子であり;
「−」の各出現は、独立して、結合又はスペーサー部分であり、
ここでLは、式(1)に従った基又はその塩:
(式中:
aは、0又は1であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される、又はR1は、追加の標的分子Dであり、ここで標的分子は、スペーサー部分を介してNに任意選択で接続されている)を含む]によって表される。
一実施形態において、本態様による使用若しくは方法又は使用のためのコンジュゲーションモードは、それを必要とする対象の処置における使用のためのバイオコンジュゲートではなく、ここでバイオコンジュゲートは、式(A):
B−L−D
(A)
[式中:
Bは、生体分子であり;
Lは、B及びDを連結するリンカーであり;
Dは、標的分子であり;
「−」の各出現は、独立して、結合又はスペーサー部分であり、
ここでLは、式(1)に従った基又はその塩:
(式中:
aは、0又は1であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される、又はR1は、追加の標的分子Dであり、ここで標的分子は、スペーサー部分を介してNに任意選択で接続されている)を含む]によって表される。
本発明による抗体−コンジュゲート
第3の態様において、本発明は、HER2発現腫瘍を標的化することに特に適当である抗体−コンジュゲートに関する。本発明による抗体−コンジュゲートは、リンカーLを介して標的分子Dに接続されている抗体ABを含み、ここで抗体−コンジュゲートは、本発明によるコンジュゲーションのモードを含むか、又は本発明によるコンジュゲーションのモードによって得ることができる。特に、本発明による抗体−コンジュゲートは、以下によって得ることができる:
(i)1〜4つのコアN−アセチルグルコサミン部分を含む糖タンパク質を、触媒の存在下で式S(F1)x−Pの化合物と接触させるステップであって、S(F1)xは、官能基Q1と反応できるx個の官能基F1を含む糖誘導体であり、xは1又は2であり、Pはヌクレオシド一リン酸又は二リン酸であり、触媒は、S(F1)x部分をコア−GlcNAc部分に転移することで、式(24):
(式中、S(F1)x及びxは、上で定義されている通りであり;ABは抗体を表し;GlcNAcはN−アセチルグルコサミンであり;Fucはフコースであり;bは0又は1であり;yは1、2、3又は4である)に従った修飾抗体を得ることができる、ステップ;並びに
(ii)修飾抗体を、官能基F1と反応できる官能基Q1及びリンカーL2を介してQ1に接続されている標的分子Dを含むリンカー−コンジュゲートと反応させることで抗体−コンジュゲートを得るステップであって、リンカーLは、S−Z3−L2を含み、Z3は、Q1とF1との間の反応から生じる接続基である、ステップ。
本明細書において、抗体ABはHER2発現腫瘍を標的化でき、標的分子Dは、タキサン、アントラサイクリン、カンプトテシン、エポシロン、マイトマイシン、コンブレタスタチン、ビンカアルカロイド、メイタンシノイド、カリケアマイシン及びエンジイン、デュオカルマイシン、ツブリシン、アマトキシン、ドラスタチン及びオーリスタチン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、インドリンo−ベンゾジアゼピン二量体、放射性同位体、治療用タンパク質及びペプチド及び毒素(又はそれらの断片)、キナーゼ阻害剤、MEK阻害剤、KSP阻害剤、並びにそれらの類似体又はプロドラッグからなる群から選択される。代替として、標的分子Dは細胞毒である。本態様による一実施形態において、標的分子Dは、メイタンシノイド、ピロロベンゾジアゼピン二量体、インドリンo−ベンゾジアゼピン二量体、エンジイン、オーリスタチン、及びアントラサイクリンからなる群から選択される。本態様による好ましい実施形態において、標的分子Dは、メイタンシノイド又はピロロベンゾジアゼピン二量体、より好ましくはDM1、DM3、DM4、及びAhx−May又はこれらの任意の機能性誘導体の群から選択されるメイタンシノイド、最も好ましくはD=Ahx−May又はその任意の機能性誘導体である。代替的に、Dはピロロベンゾジアゼピン二量体である。
ステップ(i)及び(ii)の好ましい実施形態は、上で定義されている通り、本発明による抗体−コンジュゲートに同様に当てはまる。当技術者は、これらの好ましい特色を本抗体−コンジュゲートの構造的特色にどのように翻訳するかを知っている。好ましい実施形態において、本態様による抗体−コンジュゲートは、式(A)に従っており、リンカーLは、式(1)に従った基又はその塩を含有することが好ましく、ここで(A)及び(1)は、上で定義されている通りである。
S(F1)xのための好ましい選択肢は、上に記載されている。好ましい一実施形態において、S(F1)xは6−アジド−6−デオキシ−N−アセチルガラクトサミン(6−AzGalNAc又は6−N3−GalNAc)である。
好ましい実施形態において、HER2発現腫瘍を標的化できる抗体ABは、トラスツズマブ、マパツムマブ、ペルツズマブ、HuMax−Her2、エルツマキソマブ、HB−008、ABP−980、BCD−022、CanMab、Herzuma、HD201、CT−P6、PF−05280014、COVA−208、FS−102、MCLA−128、CKD−10101、HT−19及びそれらの機能性類似体からなる群から選択される。HER2発現腫瘍を標的化できる抗体ABは、トラスツズマブ又はその機能性類似体であるのが最も好ましい。
殊に好ましい実施形態において、抗体ABは、トラスツズマブであり、標的分子Dは、メイタンシノイド、オーリスタチン、及びピロロベンゾジアゼピン二量体からなる群から選択され、より好ましくはDM1、DM3、DM4、及びAhx−May又はこれらの任意の機能性類似体からなる群から選択されるメイタンシノイドである。最も好ましくはD=Ahx−Mayである。
好ましい実施形態において、抗体−コンジュゲートは、式(40)又は(40b):
(式中:
R31は、水素、ハロゲン、−OR35、−NO2、−CN、−S(O)2R35、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択され、アルキル基、(ヘテロ)アリール基、アルキル(ヘテロ)アリール基及び(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換されており、ここで2個の置換基R31は、一緒に連結されて縮環シクロアルキル又は縮環(ヘテロ)アレーン置換基を形成することができ、R35は、水素、ハロゲン、C1〜C24アルキル基、C6〜C24(ヘテロ)アリール基、C7〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC7〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択され;
Xは、C(R31)2、O、S又はNR32であり、ここでR32は、R31又はL3(D)rであり、ここでL3はリンカーであり、Dは、請求項1に定義されている通りであり;
rは、1〜20であり;
qは、0又は1であるが、qが0であるならば、XはN−L2(D)rであることを条件とし;
aaは、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
aa’は、0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
aa+aa’<10であり;
bは、0又は1であり;
ppは、0又は1であり;
Mは、−N(H)C(O)CH2−、−N(H)C(O)CF2−、−CH2−、−CF2−、又は0〜4個のフッ素置換基、好ましくは、フェニレンのC2及びC6又はC3及びC5に好ましくは位置する2個のフッ素置換基を含有する1,4−フェニレンであり;
yは、1〜4であり;
Fucは、フコースである)によって表される。
a=2、a’=3、X=C(R31)2(即ち、縮合シクロオクテン環が存在する)であることが好ましく、ここで、1つのR31=Hであり、他のR31は式(20b)に従った構造に存在するさらなるR31置換基と一緒に連結されて、シクロオクテン部分の炭素原子5及び6(トリアゾール環と共有される炭素原子が1及び2と番号付けられている場合)を共有する縮環シクロプロピル環を形成する。
本発明による抗体−コンジュゲートの好ましい特色は、特に、コンジュゲーションのモードとしての「コア−GlcNAc官能化」のステップ(ii)及びその生成物の記載において上に記載されている。
一実施形態において、本態様による抗体−コンジュゲートは、式(A):
B−L−D
(A)
[式中:
Bは、生体分子であり;
Lは、B及びDを連結するリンカーであり;
Dは、標的分子であり;
「−」の各出現は、独立して、結合又はスペーサー部分であり、
ここでLは、式(1)に従った基又はその塩:
(式中:
aは、0又は1であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される、又はR1は、追加の標的分子Dであり、ここで標的分子は、スペーサー部分を介してNに任意選択で接続されている)を含む]によって表されるバイオコンジュゲートである。
一実施形態において、本態様による抗体−コンジュゲートは、式(A):
B−L−D
(A)
[式中:
Bは、生体分子であり;
Lは、B及びDを連結するリンカーであり;
Dは、標的分子であり;
「−」の各出現は、独立して、結合又はスペーサー部分であり、
ここでLは、式(1)に従った基又はその塩:
(式中:
aは、0又は1であり;
R1は、水素、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から選択され、C1〜C24アルキル基、C3〜C24シクロアルキル基、C2〜C24(ヘテロ)アリール基、C3〜C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC3〜C24(ヘテロ)アリールアルキル基は、任意選択で置換され、O、S及びNR3から選択される1個若しくは複数のヘテロ原子によって任意選択で中断されており、ここでR3は、水素及びC1〜C4アルキル基からなる群から独立して選択される、又はR1は、追加の標的分子Dであり、ここで標的分子は、スペーサー部分を介してNに任意選択で接続されている)を含む]によって表されるバイオコンジュゲートではない。
本態様による好ましい抗体−コンジュゲートは、ここで下記にコンジュゲート(I)〜(X)として列挙されている。一実施形態において、本態様による抗体−コンジュゲートは、ここで下記に(I)〜(X)として定義されているコンジュゲートから選択され、より好ましくはここで下記に(I)〜(VI)として定義されているコンジュゲートから選択される。一実施形態において、本態様による抗体−コンジュゲートは、ここで下記に(VII)〜(X)として定義されているコンジュゲートではなく、好ましくはここで下記に(I)〜(X)として定義されているコンジュゲートではない。
(I)AB=トラスツズマブであり、ここでS(F1)xは、アミノ酸N300に連結されているコア−GlcNAcに接続されており、S(F1)x=6−アジド−6−デオキシ−N−アセチルガラクトサミンであり、Q1は式(9q)に従っており、L2=−O−C(O)−NH−S(O)2−NH−(CH2−CH2−O)2−CO−Val−Cit−PABC−、D=Ahx−Mayである;
(II)AB=トラスツズマブであり、ここでS(F1)xは、アミノ酸N300に連結されているコア−GlcNAcに接続されており、S(F1)x=6−アジド−6−デオキシ−N−アセチルガラクトサミン、Q1は式(9q)に従っており、L2=−O−C(O)−NH−(CH2)3−CO−NH−S(O)2−NH−(CH2−CH2−O)2−CO−Val−Cit−PABC−であり、D=Ahx−Mayである;
(III)AB=トラスツズマブであり、ここでS(F1)xは、アミノ酸N300に連結されているコア−GlcNAcに接続されており、S(F1)x=6−アジド−6−デオキシ−N−アセチルガラクトサミンであり、Q1は式(9q)に従っており、L2=−O−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)4−CO−Val−Cit−PABC−、D=Ahx−Mayである;
(IV)AB=トラスツズマブであり、ここでS(F1)xは、アミノ酸N300に連結されているコア−GlcNAcに接続されており、S(F1)x=6−アジド−6−デオキシ−N−アセチルガラクトサミンであり、Q1は式(9q)に従っており、L2=−O−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)4−CO−N(CH2−CH2−O−CO−Val−Cit−PABC−D)2であり、Dの各出現=Ahx−Mayである;
(V)AB=トラスツズマブであり、ここでS(F1)xは、アミノ酸N300に連結されているコア−GlcNAcに接続されており、S(F1)x=6−アジド−6−デオキシ−N−アセチルガラクトサミンであり、Q1は式(9q)に従っており、L2=−O−C(O)−NH−S(O)2−NH−(CH2−CH2−O)2−CO−NH−S(O)2−NH−(CH2−CH2−O−CO−Val−Cit−PABC−D)2であり、Dの各出現=Ahx−Mayである;
(VI)AB=トラスツズマブであり、ここでS(F1)xは、アミノ酸N300に連結されているコア−GlcNAcに接続されており、S(F1)x=6−アジド−6−デオキシ−N−アセチルガラクトサミンであり、Q1は式(9q)に従っており、L2=−O−C(O)−NH−S(O)2−NH−(CH2−CH2−O)2−CO−Val−Ala−であり、D=PBDである;
(VII)AB=トラスツズマブであり、ここでS(F1)xは、アミノ酸N300に連結されているコア−GlcNAcに接続されており、S(F1)x=2−アジドジアセトアミド−2−デオキシ−ガラクトースであり、Q1は式(9q)に従っており、L2=−O−C(O)−NH−(CH2−CH2−O)4−CO−Val−Cit−PABC−であり、D=Ahx−Mayである(コンジュゲート96);
(VIII)AB=トラスツズマブであり、ここでS(F1)xは、アミノ酸N300に連結されているコア−GlcNAcに接続されており、S(F1)x=2−アジドジアセトアミド−2−デオキシ−ガラクトースであり、Q1は式(9q)に従っており、L2=−O−C(O)−NH−S(O)2−NH−(CH2−CH2−O)4−CO−Val−Cit−PABC−であり、D=Ahx−Mayである(コンジュゲート95)。
(IX)AB=トラスツズマブであり、ここでS(F1)xは、アミノ酸N300に連結されているコア−GlcNAcに接続されており、S(F1)x=2−アジドジフルオロアセトアミド−2−デオキシ−ガラクトースであり、Q1は式(9q)に従っており、L2=−O−C(O)−NH−S(O)2−NH−(CH2−CH2−O)4−CO−Val−Cit−PABC−であり、D=Ahx−Mayである(コンジュゲート97)。
(X)AB=トラスツズマブであり、ここでS(F1)xは、アミノ酸N300に連結されているコア−GlcNAcに接続されており、S(F1)x=2−アジドジフルオロアセトアミド−2−デオキシ−ガラクトースであり、Q1は式(9q)に従っており、L2=L2=−O−C(O)−NH−S(O)2−NH−(CH2−CH2−O)4−CO−Val−Cit−PABC−であり、D=Ahx−Mayである(コンジュゲート98)。
本明細書において、(9q)は、
によって表される。
当業者は、ここで(I)〜(X)として定義されている抗体−コンジュゲートが、F1=N3もQ1=(9q)も含有しないが、F1とQ1との間の反応から生じる接続基Z3を含有することを理解している。より具体的には、上で定義されている通りの抗体−コンジュゲートは式(40b)に従っており、ここで、S=GalNAc、y=2、x=1、b=0又は1、pp=0(即ち、Mは存在しない)、aa=2、aa’=3、X=C(R31)2であり、ここで、1つのR31=Hであり、他のR31は、式(40b)に従った構造に存在するさらなるR31置換基と一緒に連結されて、シクロオクテン部分の炭素原子5及び6(トリアゾール環と共有されている炭素原子が1及び2と番号付けられている場合、上の構造(9q)を参照)を共有する縮環シクロプロピル環を形成し、q=1、r=1又は2であり、D及びL2は、上で定義されている。より具体的には、上で定義されている通りの抗体−コンジュゲート(VII)及び(VIII)は、式(40b)に従っており、ここで、S=GalNAc、y=2、x=1、b=0又は1、pp=1、M=−N(H)C(O)CH2−、aa=2、aa’=3、X=C(R31)2であり、ここで、1つのR31=Hであり、他のR31は、式(40b)に従った構造に存在するさらなるR31置換基と一緒に連結されることで、シクロオクテン部分の炭素原子5及び6(トリアゾール環と共有されている炭素原子が、1及び2と番号付けられている場合、上の構造(9q)を参照)を共有する縮環シクロプロピル環を形成し、q=1、r=1又は2であり、D及びL2は、上で定義されている。より具体的には、上で定義されている通りの抗体−コンジュゲート(IX)及び(X)は、式(40b)に従っており、ここで、S=GalNAc、y=2、x=1、b=0又は1、pp=1、M=−N(H)C(O)CF2−、aa=2、aa’=3、X=C(R31)2であり、ここで、1つのR31=Hであり、他のR31は、式(40b)に従った構造に存在するさらなるR31置換基と一緒に連結されることで、シクロオクテン部分の炭素原子5及び6(トリアゾール環と共有されている炭素原子が、1及び2と番号付けられている場合、上の構造(9q)を参照)を共有する縮環シクロプロピル環を形成し、q=1、r=1又は2であり、D及びL2は、上で定義されている。
本態様による抗体−コンジュゲートは、公知の抗体−コンジュゲートと比較して治療指数の改善を有し、ここで治療指数は、好ましくは、HER2発現腫瘍の処置のためである。治療指数の改善は、治療的有効性の改善及び/又は耐容性の改善の形態をとり得る。一実施形態において、本態様による抗体−コンジュゲートは、HER2発現腫瘍の処置のための公知の抗体−コンジュゲートと比較して治療的有効性の改善を有する。一実施形態において、本態様による抗体−コンジュゲートは、HER2発現腫瘍の処置のための公知の抗体−コンジュゲートと比較して耐容性の改善を有する。
本発明による抗体−コンジュゲートは、他の態様においても、公知の抗体−コンジュゲートより性能がすぐれている。本発明者らは、本抗体−コンジュゲートが安定性の増加を呈する(即ち、本抗体−コンジュゲートは、時間の経過によるより少ない分解を呈する)ことを見出した。本発明者らは、本抗体−コンジュゲートが凝集課題の減少を呈する(即ち、本抗体−コンジュゲートは、時間の経過によるより少ない凝集を呈する)ことも見出した。本抗体−コンジュゲートの治療指数の改善、安定性の増加及び凝集の減少を勘案して、本抗体−コンジュゲートは、従来技術の抗体−コンジュゲートを超える際立った改善である。本発明は、したがって、バイオコンジュゲート、典型的には抗体−コンジュゲートの安定性を改善するための、本明細書において定義されている通りのコンジュゲーションのモードの使用にも関する。本発明は、したがって、バイオコンジュゲート、典型的には抗体−コンジュゲートの凝集を減少するための、本明細書において定義されている通りのコンジュゲーションのモードの使用にも関する。
エンドグリコシダーゼ融合酵素
第4の態様において、本発明は、2種のエンドグリコシダーゼを含む融合酵素に関する。特別な例において、2種のエンドグリコシダーゼEndoS及びEndoHは、リンカー、好ましくは−(Gly4Ser)3−(His)6−(Gly4Ser)3−リンカーを介して接続されている。本発明による融合酵素はEndoSHとも称される。本発明による酵素は、配列番号1と少なくとも50%の配列同一性、配列番号1と好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の配列同一性、例えば、配列番号1と少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。同一性は、公知の方法及び/又は当技術分野において知られているコンピュータープログラム方法、例えばNCBIから公に利用可能なBLASTP及び他の供給元(BLAST Manual、Altschul、S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、MD 20894;Altschul、S.ら、J.Mol.Biol.215:403〜410(1990)によって容易に算出することができる。配列番号1に対して上に示されている配列同一性を有する本発明の酵素は、EndoS及びEndoH活性を有することが好ましい。本発明による酵素は、配列番号1と100%の配列同一性を有するのが最も好ましい。
EndoS及びEndoHの融合酵素も包含され、ここでリンカーは、当技術分野において知られている別の適当なリンカーによって置き換えられており、ここで上記リンカーは、剛性又は可撓性であり得る。上記リンカーは、隣接するタンパク質ドメインが相対的に自由に互いに転移するのを可能にする可撓性リンカーであることが好ましい。上記可撓性リンカーは、グリシン、セリン、ヒスチジン及び/又はアラニンのようなアミノ残基で構成されるとともに3〜59のアミノ酸残基、好ましくは10〜45若しくは15〜40のアミノ酸残基、例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39若しくは40のアミノ酸残基、又は20〜38、25〜37若しくは30〜36のアミノ酸残基の長さを有することが好ましい。任意選択で、上記融合酵素は、Fc−タグ、FLAG−タグ、ポリ(His)−タグ、HA−タグ及びMyc−タグなど、当技術分野において知られている通りの精製及び/又は検出が簡便になるようにタグに共有結合的に連結されているか、又はタグを含む。
糖タンパク質のトリミングは、当技術分野において、例えば国際公開第2007/133855号又は国際公開第2014/065661号から知られている。本発明による酵素は、EndoS及びEndoH活性の両方を呈し、糖タンパク質(抗体など)のグリカンをコア−GlcNAc単位においてトリミングし、糖タンパク質(EndoS活性)のコア−GlcNAc残基だけを残すことができ、また高マンノースグリカン(EndoH活性)を除去することもできる。驚くべきことに、融合酵素の両活性は、pH約7〜8で円滑に機能し、一方、単量体EndoHは、最適に作動するために6のpHを必要とする。
本発明による融合酵素は、酵素コード配列を含む発現ベクター(例えばプラスミド)を宿主細胞(例えば大腸菌)に導入して発現させ、上記宿主細胞から酵素が単離され得るなど、当技術分野におけるルーチン的技法によって調製することができる。本発明による融合酵素の調製及び精製のための可能な手法は実施例3〜5で与えられており、本発明による融合酵素の機能は実施例6で実証されており、ここでトラスツズマブは、単一ステップで効果的にトリミングされる。
融合タンパク質EndoSHの配列同定(配列番号1):
1 MPSIDSLHYL SENSKKEFKEELSKAGQESQ KVKEILAKAQ QADKQAQELA
51 KMKIPEKIPM KPLHGPLYGG YFRTWHDKTSDPTEKDKVNS MGELPKEVDL
101 AFIFHDWTKD YSLFWKELAT KHVPKLNKQGTRVIRTIPWR FLAGGDNSGI
151 AEDTSKYPNT PEGNKALAKA IVDEYVYKYNLDGLDVDVEH DSIPKVDKKE
201 DTAGVERSIQ VFEEIGKLIG PKGVDKSRLFIMDSTYMADK NPLIERGAPY
251 INLLLVQVYG SQGEKGGWEP VSNRPEKTMEERWQGYSKYI RPEQYMIGFS
301 FYEENAQEGN LWYDINSRKD EDKANGINTDITGTRAERYA RWQPKTGGVK
351 GGIFSYAIDR DGVAHQPKKY AKQKEFKDATDNIFHSDYSV SKALKTVMLK
401 DKSYDLIDEK DFPDKALREA VMAQVGTRKGDLERFNGTLR LDNPAIQSLE
451 GLNKFKKLAQ LDLIGLSRIT KLDRSVLPANMKPGKDTLET VLETYKKDNK
501 EEPATIPPVS LKVSGLTGLK ELDLSGFDRETLAGLDAATL TSLEKVDISG
551 NKLDLAPGTE NRQIFDTMLS TISNHVGSNEQTVKFDKQKP TGHYPDTYGK
601 TSLRLPVANE KVDLQSQLLF GTVTNQGTLINSEADYKAYQ NHKIAGRSFV
651 DSNYHYNNFK VSYENYTVKV TDSTLGTTTDKTLATDKEET YKVDFFSPAD
701 KTKAVHTAKV IVGDEKTMMV NLAEGATVIGGSADPVNARK VFDGQLGSET
751 DNISLGWDSK QSIIFKLKED GLIKHWRFFNDSARNPETTN KPIQEASLQI
801 FNIKDYNLDN LLENPNKFDD EKYWITVDTYSAQGERATAF SNTLNNITSK
851 YWRVVFDTKG DRYSSPVVPE LQILGYPLPNADTIMKTVTT AKELSQQKDK
901 FSQKMLDELK IKEMALETSL NSKIFDVTAINANAGVLKDC IEKRQLLKKG
951 GGGSGGGGSG GGGSHHHHHHGGGGSGGGGS GGGGSAPAPV KQGPTSVAYV
1001 EVNNNSMLNV GKYTLADGGG NAFDVAVIFAANINYDTGTK TAYLHFNENV
1051 QRVLDNAVTQ IRPLQQQGIK VLLSVLGNHQGAGFANFPSQ QAASAFAKQL
1101 SDAVAKYGLD GVDFDDEYAE YGNNGTAQPNDSSFVHLVTA LRANMPDKII
1151 SLYNIGPAAS RLSYGGVDVS DKFDYAWNPYYGTWQVPGIA LPKAQLSPAA
1201 VEIGRTSRST VADLARRTVD EGYGVYLTYNLDGGDRTADV SAFTRELYGS
1251 EAVRTP
(リンカーは下線が引かれており、EndoH配列はイタリック体で示されている)
還元モノクローナル抗体のRP−HPLC分析:RP−HPLC分析の前に、10μgの(修飾)IgGの溶液を、15分間37℃で、10mMのDTT及び100mMのトリスpH8.0とともに50μLの総体積でインキュベートすることによって、試料を還元した。49%のACN、49%のMQ及び2%のギ酸(50μL)の溶液を還元した試料に添加した。Agilent 1100 HPLCで、1ml/minにて70℃で実行されるZORBAX Phoroshell 300SB−C8 1×75 5μm(Agilent Technologies)カラムを使用し、25〜50%緩衝液Bの16.9分直線勾配(緩衝液A=90%のMQ、10%のACN、0.1%のTFA及び緩衝液B=90%のACN、10%のMQ、0.1%のTFAを用いる)を使用して、逆相HPLCを実施した。
モノクローナル抗体の質量スペクトル分析:質量スペクトル分析の前に、IgGを、軽鎖及び重鎖の両方の分析を可能にするDTTで処理したか、又はFc/2断片の分析を可能にするファブリケーター(Fabricator)(商標)(Genovis、Lund、Swedenから市販されている)で処理した。軽鎖及び重鎖の両方の分析のため、20μgの(修飾)IgGの溶液を、5分間37℃で100mMのDTTとともに4μLの総体積でインキュベートした。存在するならば、アジド官能性基をこれらの条件下でアミンに還元する。Fc/2断片の分析のため、20μgの(修飾)IgGの溶液を、1時間の間37℃で、Fabricator(商標)(1.25U/μL)を用いて、ホスフェート−緩衝生理食塩水(PBS)pH6.6とともに10μLの総体積でインキュベートした。還元又はFabricator消化後、milliQを用いてAmicon Ultra−0.5、Ultracel−10 Membrane(Millipore)を使用して、試料を二回洗浄し、およそ40μLの最終サンプル体積をもたらした。次に、試料をエレクトロスプレーイオン化法飛行時間(ESI−TOF)によってJEOL AccuTOF上で分析した。Magtranソフトウェアを使用して、デコンボリューションされたスペクトルを得た。
タンパク質構成成分の調製:実施例1〜2:
実施例1:トラスツズマブの一過性発現及び精製
トラスツズマブをBioceros(Utrecht、Netherlands)によって安定なCHO細胞株から発現させた。50mLのタンパク質AセファロースでパッキングされたXK 26/20カラムを使用して、上澄み(2.5L)を精製した。単回の実行において、0.5Lの上澄みをカラムに負荷し、続いて、少なくとも10カラム体積の25mMのトリスpH7.5、150mMのNaClで洗浄した。保持されたタンパク質を0.1MのグリシンpH2.7で溶出した。溶出生成物を1.5Mのトリス−HCl pH8.8で直ちに中和し、25mMのトリスpH8.0に対して透析した。次に、Vivaspin Turbo 15限界濾過ユニット(Sartorius)を使用して、生成物をおよそ20mg/mLに濃縮し、さらなる使用の前に−80℃で貯蔵した。
実施例3:His−TnGalNAcT(33−421)の一過性発現及び精製
His−TnGalNAcT(33−421)(配列番号2によって同定される)をCHO K1細胞中にEvitria(Zurich、Switzerland)によって5Lスケールで一過性発現させた。25mLのNiセファロースエクセル(GE Healthcare)でパッキングされたXK 16/20カラムを使用して、上澄みを精製した。各実行で、およそ1.5Lの上澄みをカラムにロードし、続いて、少なくとも10カラム体積の緩衝液A(20mMのトリス緩衝液、5mMのイミダゾール、500mMのNaCl、pH7.5)で洗浄した。保持されたタンパク質を緩衝液B(20mMのトリス、500mMのNaCl、500mMのイミダゾール、pH7.5)で溶出した。HiPrep H26/10脱塩用カラム(GE Healthcare)を使用して、溶出画分の緩衝液を25mMのトリスpH8.0に交換した。Vivaspin Turbo 4限界濾過ユニット(Sartorius)を使用して、精製されたタンパク質を少なくとも3mg/mLに濃縮し、さらなる使用の前に−80℃で貯蔵した。
His−TnGalNAcT(33−421)の配列(配列番号2):
1 HHHHHHSPLR TYLYTPLYNATQPTLRNVER LAANWPKKIP SNYIEDSEEY
51 SIKNISLSNH TTRASVVHPP SSITETASKLDKNMTIQDGA FAMISPTPLL
101 ITKLMDSIKS YVTTEDGVKK AEAVVTLPLCDSMPPDLGPI TLNKTELELE
151 WVEKKFPEVE WGGRYSPPNC TARHRVAIIVPYRDRQQHLA IFLNHMHPFL
201 MKQQIEYGIF IVEQEGNKDF NRAKLMNVGFVESQKLVAEG WQCFVFHDID
251 LLPLDTRNLY SCPRQPRHMS ASIDKLHFKLPYEDIFGGVS AMTLEQFTRV
301 NGFSNKYWGW GGEDDDMSYR LKKINYHIARYKMSIARYAM LDHKKSTPNP
351 KRYQLLSQTS KTFQKDGLST LEYELVQVVQYHLYTHILVN IDERS
実施例3〜5:エンドグリコシダーゼEndoSHの生成
実施例3:pET22B発現ベクターへの融合タンパク質EndoSHのクローニング
NdeI−HindIII部位間にEndoS−(G4S)3−(His)6−(G4S)3−EndoH(EndoSH)コード配列(EndoSHは、配列番号1によって同定されている)を含有するpET22B−ベクターをGenscriptから得た。EndoSH融合タンパク質のためのDNA配列は、N末端連結グリシン−セリン(GS)リンカーを介してEndoHに融合されたEndoSのコード化する残基48〜995からなる。グリシン−セリン(GS)リンカーは、−(G4S)3−(His)6−(G4S)3−フォーマットを含み、2つの酵素のスペーシングを可能にし、同時にIMAC−精製タグを導入する。
実施例4:融合タンパク質EndoSHの大腸菌発現
EndoSH融合タンパク質(配列番号1によって同定される)の発現は、BL21細胞へのプラスミド(pET22b−EndoSH)の形質転換で開始する。次のステップは、BL21細胞を有する500mLの培養物(LB培地+Ampilicin)の接種である。OD600が0.7に達した時に、培養物を1mMのIPTG(500μLの1Mストック溶液)で誘発した。
実施例5:大腸菌からの融合タンパク質EndoSHの精製
37℃での終夜誘発後、培養物を遠心分離によってペレット化した。ペレットを40mLのPBS中に再懸濁し、氷上で5mlのリゾチーム(10mg/mL)とともに30分間インキュベートした。半時間後、5mlの10%Triton−X−100を添加し、氷上で(10分)超音波処理した。音波処理後、細胞デブリを遠心分離(10分8000xg)によって除去し、続いて、0,22μM−孔径フィルターを介して濾過した。可溶性抽出物をHisTrap HP 5mLカラム(GE Healthcare)にロードした。カラムを最初に緩衝液A(20mMのトリス緩衝液、20mMのイミダゾール、500mMのNaCl、pH7.5)で洗浄した。保持されたタンパク質を緩衝液B(20mMのトリス、500mMのNaCl、250mMのイミダゾール、pH7.5、10mL)で溶出した。画分をSDS−PAGEによってポリアクリルアミドゲル(12%)で分析した。精製標的タンパク質を含有した画分を合わせ、緩衝液を、終夜4℃で実施された透析によって20mMのトリスpH7.5及び150mMのNaClに対して交換した。Amicon Ultra−0.5、Ultracel−10 Membrane(Millipore)を使用して、精製されたタンパク質を少なくとも2mg/mLに濃縮した。生成物をさらなる使用の前に−80℃で貯蔵する。
トラスツズマブのリモデリング:実施例7〜8:
本発明による方法において使用されるべき生体分子として適当な以下の修飾生体分子の調製は、国際出願PCT/NL2015/050697に記載されている:
トラスツズマブ(GalNAz)2 13b(実施例12、13、15、16−1);
トラスツズマブ(F2−GalNAz)2 13c(実施例1、7〜13、16−2)
実施例6:融合タンパク質EndoSHの手段によるトリミングcAC10の調製
トラスツズマブ(Bioceros(Utrecht、Netherlands)によって実施されたCHO細胞における安定な発現を介して得られた)のグリカントリミングを、融合タンパク質EndoSHで実施した。したがって、トラスツズマブ(100.8mL、2g、25mMのトリスpH8.0中19.85mg/ml)を、EndoSH(5.26mL、20mg、25mMのトリスpH7.5中3.8mg/mL)とともにおよそ16時間の間37℃でインキュベートした。ファブリケーター消化試料の質量スペクトル分析は、コア−GlcNAc(Fuc)置換トラスツズマブに対応するFc/2−断片(観察質量24135Da、総Fc/2断片のおよそ90%)の1つの主要なピークを示した。
実施例7:トラスツズマブ(6−N3−GalNAz)2 13dの調製
実施例6において上に記載されている通りのトラスツズマブのEndoSH処理によって得られたトリミングトラスツズマブ(11.8mg/mL)を、10mMのMnCl2及び25mMのトリス−HCl pH8.0中の基質6−N3−GalNAc−UDP(3.3mM、GlycoHubから市販されている)及びHis−TnGalNAcT(33−421)(0.75mg/mL)とともに30℃でインキュベートした。反応物を終夜30℃でインキュベートした。生体分子13dを反応混合物から、50mLのタンパク質AセファロースでパッキングされたXK 26/20カラムを使用し、AKTA精製器10(GE Healthcare)を使用して精製した。溶出IgGを1.5Mのトリス−HCl pH8.8で直ちに中和し、PBS pH7.4に対して透析した。次に、Amicon Ultra−0.5、Ultracel−10 Membrane(Millipore)を使用して28.5mg/mLの濃度に、IgGを濃縮した。ファブリケーター消化試料の質量スペクトル分析は、コア6−N3−GalNAc−GlcNAc(Fuc)置換トラスツズマブに対応するFc/2−断片(観察質量24363Da、総Fc/2断片のおよそ90%)の1つの主要なピークを示した。
リンカー−コンジュゲート合成:実施例8〜23:
本発明による方法において使用されるべきリンカー−コンジュゲートとして適当である以下の化合物の合成、又はそのモデルについて、国際出願PCT/NL2015/050697が参照される:
化合物18(実施例20);
化合物20(実施例21、23〜25);
化合物21(実施例26〜27);
化合物23(実施例29〜31);
化合物26(実施例36〜38);
化合物30(実施例43−1、32);
化合物33(実施例36〜37、47);
化合物34(実施例36、37、48);
化合物35(実施例36〜37、49);
化合物36(実施例29、50);
化合物37(実施例51〜53);
化合物38(実施例29、54〜55);
化合物39(実施例29、54、56)。
実施例8:化合物101の調製
THF及び水(80mL/80mL)の混合物中のBCN−OSu(1.00g、3.43mmol)の溶液に、γ−アミノ酪酸(0.60g、5.12mmol)及びEt3N(1.43mL、1.04g、10.2mmol)を添加した。混合物を4時間の間撹拌し、続いて、DCM(200mL)、及びNH4Cl(80mL)の飽和水溶液を添加した。分離後、水層をDCM(2×200mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM中0→10%のMeOH)で精製した。生成物を無色の濃厚な油として得た(730mg、2.61mmol、76%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)4.81(bs,1H)、4.15(d,J=8.4Hz,2H)、3.30〜3.21(m,2H)、2.42(t,J=7.2Hz,2H)、2.35〜2.16(m,6H)、1.85(五重線,J=6.9Hz,2H)、1.64〜1.51(m,2H)、1.35(五重線,J=8.4Hz,1H)、1.00〜0.90(m,2H)
実施例9:化合物102の調製
イソシアン酸クロロスルホニル(CSI;0.91mL、1.48g、10mmol)を、Et2O(50mL)中のtert−ブタノール(5.0mL、3.88g、52mmol)の冷却(−78℃)溶液に添加した。反応混合物を室温に加温し、濃縮した。残渣をDCM(200mL)中に懸濁させ、引き続いて、Et3N(4.2mL、3.0g、30mmol)及び2−(2−アミノエトキシ)エタノール(1.0mL、1.05g;10mmol)を添加した。結果として得られた混合物を10分間撹拌し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM中0→10%のMeOH)で2回精製した。生成物を無色の濃厚な油として得た(2.9g、10mmol、100%)1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)5.75(bs,1H)、3.79〜3.74(m,2H)、3.67〜3.62(m,2H)、3.61〜3.57(m,2H)、3.35〜3.28(m,2H)、1.50(s,9H)。
実施例10:化合物103の調製
DCM(40mL)中の102(2.9g、10mmol)の溶液に、Ac2O(2.9mL、3.11g、30.5mmol)及びEt3N(12.8mL、9.29g、91.8mmol)を添加した。反応混合物を2時間の間撹拌し、NaHCO3(50mL)の飽和水溶液で洗浄し、乾燥させた(Na2SO4)。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中20%→100%のEtOAc)で2回精製した。生成物を無色の油として得た(2.5g、7.7mmol、77%)1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)5.48(bs,1H)、4.25〜4.20(m,2H)、3.70〜3.60(m,4H)、3.33〜3.23(m,2H)、2.10(s,3H)、1.50(s,9H)
実施例11:化合物104の調製
DCM(8mL)中の103(80mg、0.25mmol)の溶液に、TFA(2mL)を添加した。40分後、反応混合物を濃縮した。残渣をトルエン(30mL)中に溶かし、混合物を濃縮した。生成物を無色の油として得た(54mg、0.24mmol、95%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)5.15(bs,2H)、4.26〜4.18(m,2H)、3.71〜3.60(m,4H)、3.35〜3.27(m,2H)、2.08(s,3H)。
実施例12:化合物105の調製
DCM(20mL)中のBCN−GABA(101)(67mg、0.24mmol)及び104(54mg、0.24mmol)の混合物に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI.HCl;55mg、0.29mmol)及びDMAP(2.8mg、23μmol)を添加した。混合物を16の間撹拌し、NH4Clの飽和水溶液(20mL)で洗浄した。分離後、水層をDCM(20mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM中0→10%のMeOH)で精製した。生成物を無色の濃厚な油として得た(50mg、0.10mmol、42%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)5.83〜5.72(m,1H)、5.14〜5.04(m,1H)、4.23〜4.19(m,2H)、4.15(d,J=8.1Hz,2H)、3.67〜3.57(m,4H)、3.29〜3.18(m,4H)、2.41〜2.32(m,2H)、2.31〜2.15(m,6H)、2.10(s,3H)、1.85(五重線,J=6.6Hz,2H)、1.65〜1.49(m,2H)、1.38〜1.28
(m,1H)、1.00〜0.89(m,2H)
実施例13:化合物106の調製
MeOH(10mL)中の105(50mg、0.10mmol)の溶液に、K2CO3(43mg、0.31mmol)を添加した。混合物を3時間の間撹拌し、NH4Clの飽和水溶液(20mL)で希釈した。混合物をDCM(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。生成物を無色の膜として得た(39mg、0.09mmol、88%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)6.25(bs,1H)、5.26〜5.18(m,1H)、4.15(d,J=8.0Hz,2H)、3.77〜3.71(m,2H)、3.63〜3.53(m,4H)、3.33〜3.27(m,2H)、3.27〜3.17(m,2H)、2.45〜2.34(m,2H)、2.34〜2.14(m,6H)、1.85(五重線,J=6.7hz,2H)、1.65〜1.48(m,2H)、1.41〜1.28(m,1H)、1.01〜0.88(m,2H)。
実施例14:化合物107の調製
DCM(20mL)中の106(152mg、0.34mmol)の溶液に、p−ニトロフェニルクロロホルメート(PNP−COCl;69mg、0.34mmol)及びピリジン(28μL、27mg、0.34mmol)を添加した。混合物を1.5時間の間撹拌し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中50%→100%のEtOAc)で精製した。生成物を無色の濃厚な油として得た(98mg、0.16mmol、47%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)8.31〜8.26(m,2H)、7.46〜7.40(m,2H)、5.69〜5.59(m,1H)、4.98〜4.91(m,1H)、4.46〜4.42(m,2H)、4.18(d,J=8.1Hz,2H)、3.79〜3.75(m,2H)、3.69〜3.64(m,2H)、3.33〜3.24(m,4H)、2.39〜2.31(m,2H)、2.32〜2.18(m,6H)、1.84(五重線,J=6.3Hz 2H)、1.65〜1.50(m,2H)、1.35(五重線,J=8.5Hz,1H)、1.01〜0.91(m,2H)。
実施例15:リンカー−コンジュゲート80の調製
DMF(0.50mL)中のVal−Cit−PABC−Ahx−May.TFA(20mg;15.6μmol)の溶液に、トリエチルアミン(6.5μl;4.7mg;47μmol)、及びDMF(311μL)中の溶液107(19mg、31μmol)を添加した。混合物を20時間の間静置し、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(13.7μL、14mg、94μmol)を添加した。2時間後、追加の2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(13.7μL、14mg、94μmol)を添加した。1.5時間後、反応混合物をRP HPLC(C18、水(1%のAcOH)中30%→90%のMeCN(1%のAcOH)によって精製した。得られた生成物を、シリカカラムクロマトグラフィー(DCM→MeOH/DCM 1/4)によってさらに精製した。所望の生成物を白色の膜として得た(16mg、9.9μmol、63%)。LCMS(ESI+)C77H110ClN12O22S+(M−H2O+H+)の計算値1621.73 実測値1621.74。
実施例16:化合物109の調製
DCM(100mL)中の2−(2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール(539mg、2.79mmol)の溶液に、BCN−OSu(0.74g、2.54mmol)及びEt3N(1.06mL、771mg、7.62mmol)を添加した。結果として得られた溶液を2.5時間の間撹拌し、NH4Clの飽和水溶液(100mL)で洗浄した。分離後、水性相をDCM(100mL)で抽出した。合わせた有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(MeOHinDCM0→10%)で精製した。生成物を無色の油として得た(965mg、2.61mmolの量)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)5.93(bs,1H)、4.14(d,J=8.0Hz,2H)、3.77〜3.69(m,4H)、3.68〜3.59(m,8H)、3.58〜3.52(m,2H)、3.42〜3.32(m,2H)、2.35〜2.16(m,6H)、1.66〜1.51(m,2H)、1.36(五重線,J=8.7Hz,1H)、0.99〜0.87(m,2H)。
実施例17:化合物110の調製
DCM(50mL)中の109(0.96g、2.59mmol)の溶液に、p−ニトロフェニルクロロホルメート(680mg、3.37mmol)及びEt3N(1.08mL、784mg、7.75mmol)を添加した。混合物を16時間の間撹拌し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中20%→70%のEtOAc(カラム1)及びヘプタン中20%→100%のEtOAc(カラム2))で2回精製した。生成物をわずかに黄色の濃厚な油として得た(0.91g、1.70mmol、66%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)8.31〜8.26(m,2H)、7.42〜7.37(m,2H)、5.19(bs,1H)、4.47〜4.43(m,2H)、4.15(d,J=8.0Hz,2H)、3.84〜3.80(m,2H)、3.74〜3.61(m,8H)、3.59〜3.53(m,2H)、3.42〜3.32(m,2H)、2.35〜2.16(m,6H)、1.66〜1.50(m,2H)、1.40〜1.30(m,1H)、1.00〜0.85(m,2H)。
実施例18:リンカー−コンジュゲート77の調製
DMF(0.50mL)中のVal−Cit−PABC−Ahx−May.TFA(23.4mg;18.2μmol)の溶液に、トリエチルアミン(6.5μl;4.7mg;47μmol)、及びDMF(373μL)中の110(12.5mg、23.4μmol)の溶液を添加した。混合物を42時間の間静置し、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(13.7μL、14mg、94μmol)を添加した。4時間後、反応混合物をRP HPLC(C18、水(1%のAcOH)中30%→90%のMeCN(1%のAcOH)によって精製した。得られた生成物を、シリカカラムクロマトグラフィー(DCM→MeOH/DCM 1/4)によってさらに精製した。所望の生成物を無色の膜として得た(19.5mg、12.5μmol、68%)。LCMS(ESI+)C77H110ClN10O21S+(M−H2O+H+)の計算値1545.75 実測値1546.82。
実施例19:リンカー−コンジュゲート78の調製
DMF(0.50mL)中のVal−Cit−PABC−Ahx−May.TFA(20mg;15.6μmol)の溶液に、トリエチルアミン(6.5μl;4.7mg;47μmol)、及びDMF(293μL)中の化合物99(国際出願PCT/NL2015/050697の実施例50に開示され、国際出願PCT/NL2015/050697の実施例50に従って調製されている通りの化合物58の活性化を介して調製した;24mg、46μmol)の溶液を添加した。混合物を21時間の間静置し、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(14μL、14mg、96μmol)を添加した。2時間後、追加の2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(7μL、7.1mg、48μmol)を添加した。1時間後、反応混合物をRP HPLC(C18、水(1%のAcOH)中30%→90%のMeCN(1%のAcOH)によって精製した。得られた生成物を、シリカカラムクロマトグラフィー(DCM→MeOH/DCM 1/4)によってさらに精製した。所望の生成物を無色の膜として得た(16mg、10μmol、64%)。LCMS(ESI+)C73H103ClN11O21S+(M−H2O+H+)の計算値1536.67 実測値1536.75
実施例20−1:70の調製
DCM(200mL)中のBCN−OH(2.0g、13.31mmol)の溶液に、窒素雰囲気下で、イソシアン酸クロロスルホニル(1.16mL、13.31mmol)を添加し、結果として得られた溶液を室温で30分間撹拌した。次いで、Et3N(3.7mL、26.62mmol)を滴下により添加し、続いて、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(1.47mL、14.64mmol)を滴下により添加した。15分後、飽和NH4Cl水溶液(200mL)を添加し、層を分離させた。水相をDCM(2×150mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(DCM中0−10%のMeOH)で生成物が得られた(2.87g、7.96mmol、60%)。1H−NMR(400MHz,CD3OD):δ 4.30(d,J=8.4Hz,2H)、3.72〜3.67(m,2H)、3.61(t,J=5.2Hz,2H)、3.59〜3.55(m,2H)、3.25(t J=5.2Hz,2H)、2.38〜2.20(m,6H)、1.74〜1.58(m,2H)、1.45(五重線,J=8.8Hz,1H)、1.07〜0.95(m,2H)。
実施例20−2:72の調製
DCM(10mL)中の70(47mg、0.13mmol)の攪拌溶液に、CSI(11μL、18mg、0.13mmol)を添加した。30分後、Et3N(91μL、66mg、0.65mmol)、及びDMF(0.5mL)中のジエタノールアミン(16mg、0.16mmol)の溶液を添加した(中間体71を提供する)。30分後、p−ニトロフェニルクロロホルメート(52mg、0.26mmol)及びEt3N(54μL、39mg、0.39mmol)を添加した。さらに4.5時間後、反応混合物を濃縮し、残渣を勾配カラムクロマトグラフィー(33→66%のEtOAc/ヘプタン(1%のAcOH))によって精製することで、72が無色の油として得られた(88mg、0.098mmol、75%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)8.28〜8.23(m,4H)、7.42〜7.35(m,4H)、4.52(t,J=5.4Hz,4H)、4.30(d,J=8.3Hz,2H)、4.27〜4.22(m,2H)、3.86(t,J=5.3Hz,4H)、3.69〜3.65(m,2H)、3.64〜3.59(m,2H)、3.30〜3.22(m,2H)、2.34〜2.14(m,6H)、1.62〜1.46(m,2H)、1.38(五重線,J=8.7Hz,1H)、1.04〜0.92(m,2H)。
実施例21:リンカー−コンジュゲート73の調製
DMF(1mL)中の72(3.9mg、4.3μmol)及びEt3N(3.0μL、2.2mg、21.5μmol)の溶液を、DMF(100μL)中のVal−Cit−PABC−Ahx−May.TFA(10mg、8.6μmol)の溶液に添加した。混合物を反応させ、引き続いて濃縮した。残渣を逆相(C18)HPLCクロマトグラフィー(H2O(1%のAcOH)中30→90%のMeCN(1%のAcOH)を介して精製することで、生成物73を与えた(3.9mg、1.32μmol、31%)。LRMS(ESI+)m/z C136H196Cl2N22O43S2(M+2H+)/2の計算値=1480.13;実測値1480.35。LRMS(ESI+)m/z C85H119ClN14O31S2(M+2H+)/2の計算値=965.36;実測値965.54。副生成物として、73のモノ−Ahx−May置換誘導体を単離した(図示されていない)。LRMS(ESI+)C85H119ClN14O31S2 2+ m/zの計算値965.36 実測値965.54。
実施例22:75の調製
DMF(0.5mL)中のNH2−Val−Ala−OH(16mg、0.085mmol)の懸濁液に、DMF(0.5mL)中の99(22mg、0.042mmol)の溶液及びEt3N(21mg、29μL、0.21mmol)を添加した。結果として得られた反応混合物を26時間の間回転させ、DCM(10mL)及びリン酸カリウム緩衝液(pH3.0、10mL)の混合物中に注いだ。分離後、水性相をDCM(20mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン中50%のEtOAc→EtOAc(溶出液中1%のAcOH)によって精製した。生成物を無色の膜として得た(18mg、31μmol、75%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)7.02(d,J=7.1Hz,1H)、6.29(bs,1H)、5.92(d,J=9.0Hz,1H)、4.56(五重線,J=7.1Hz,1H)、4.42〜4.35(m,1H)、4.28(d,J=8.2Hz,2H)、4.10〜4.01(m,2H)、3.72〜3.55(m,4H)、3.35〜3.25(m,2H)、2.35〜2.10(m,6H)、1.63〜1.48(m,2H)、1.45(d,J=7.2Hz,3H)、1.39(五重線,J=8.9Hz,1H)、1.02〜0.94(m,2H)、0.97(d,J=6.8Hz,3H)、0.92(d,J=6.8Hz,3H)。
実施例23:リンカー−コンジュゲート76の調製
2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(2.6mg、11μmol)を含有するバイアルに、MeOH及びDCM(5/95、1.0mL)の混合物中の75(6.1mg、11μmol)の溶液を添加した。結果として得られた混合物を30分間放置した。反応混合物に、MeOH及びDCM(5/95、0.5mL)の混合物中のNH2−PBD(5.0mg、6.9μmol)を添加した。結果として得られた混合物を74時間の間静置し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM→MeOH/DCM 1/9)によって精製した。生成物を無色の膜として得た(2.6mg、2.03μmol)。LCMS(ESI+)C66H76N9O16S+(M+H+)の計算値1282.51 実測値1282.70
抗体−薬物−コンジュゲート生成:実施例24〜32:
実施例24:コンジュゲート96を得るための、30を用いる13bのコンジュゲーション
本発明によるバイオコンジュゲートを、生体分子としての修飾生体分子13bへのリンカー−コンジュゲートとしての化合物30のコンジュゲーションによって調製した。トラスツズマブ(アジド)2(13b)(15.5mL、255mg、PBS pH7.4中16.47mg/ml)の溶液に、DMA(1.45mL)及び化合物30(255μL、DMA中40mMの溶液)を添加した。反応物を終夜室温でインキュベートし、続いて、HiLoad 26/600 Superdex200 PGカラム(GE Healthcare)にてAKTA精製器10(GE Healthcare)で精製した。還元試料の質量スペクトル分析は、コンジュゲート重鎖に対応する1種の主要な重鎖生成物(観察質量50938Da、総重鎖断片のおよそ80%)を示す。
実施例25:コンジュゲート95を得るための、33を用いる13bのコンジュゲーション
本発明によるバイオコンジュゲートを、生体分子としての修飾生体分子13bへのリンカー−コンジュゲートとしての化合物33のコンジュゲーションによって調製した。トラスツズマブ(アジド)2(13b)(607μL、10mg、PBS pH7.4中16.47mg/ml)の溶液に、milliQ(50μL)及び化合物33(10μL、40mMの溶液DMA)を添加した。反応物を終夜室温でインキュベートし、続いて、Superdex200 10/300 GL(GE Healthcare)にてAKTA精製器10(GE Healthcare)で精製した。還元試料の質量スペクトル分析は、コンジュゲート重鎖に対応する1種の主要な重鎖生成物(観察質量50982Da、総重鎖断片のおよそ80%)を示した。
実施例26:コンジュゲート98を得るための、30を用いる13cのコンジュゲーション
本発明によるバイオコンジュゲートを、生体分子としての修飾生体分子13cへのリンカー−コンジュゲートとしての化合物30のコンジュゲーションによって調製した。トラスツズマブ(アジド)2(13c)(14.25mL、250mg、PBS pH7.4中17.55mg/ml)の溶液に、DMA(1.4mL)及び化合物30(250μL、40mMの溶液DMA)を添加した。反応物を終夜室温でインキュベートし、続いて、HiLoad 26/600 Superdex200 PGカラム(GE Healthcare)にてAKTA精製器10(GE Healthcare)で精製した。還元試料の質量スペクトル分析は、コンジュゲート重鎖に対応する1種の主要な重鎖生成物(観察質量50969Da、総重鎖断片のおよそ70%)を示した。
実施例27:コンジュゲート97を得るための、33を用いる13cのコンジュゲーション
本発明によるバイオコンジュゲートを、生体分子としての修飾生体分子13cへのリンカー−コンジュゲートとしての化合物33のコンジュゲーションによって調製した。トラスツズマブ(アジド)2(13c)(14.25mL、250mg、PBS pH7.4中17.55mg/ml)の溶液に、化合物33(188μL、40mMの溶液DMA)を添加した。反応物を終夜室温でインキュベートし、続いて、HiLoad 26/600 Superdex200 PGカラム(GE Healthcare)にてAKTA精製器10(GE Healthcare)で精製した。還元試料の質量スペクトル分析は、コンジュゲート重鎖に対応する1種の主要な重鎖生成物(観察質量51020Da、総重鎖断片のおよそ90%)を示した。
実施例28:コンジュゲート82を得るための、78を用いる13dのコンジュゲーション
本発明によるバイオコンジュゲートを、生体分子としてのアジド修飾トラスツズマブへのリンカー−コンジュゲートとして化合物78のコンジュゲーションによって調製した。トラスツズマブ−(6−N3−GalNAc)2(13d)(8.18mL、270mg、PBS pH7.4中33.0mg/ml)の溶液に、PBS pH7.4(7.12mL)、DMF(2.48mL)及び化合物78(225μL、DMF中40mMの溶液)を添加した。反応物を室温で終夜インキュベートし、続いて、HiLoad 26/600 Superdex200 PG(GE Healthcare)にてAKTA精製器10(GE Healthcare)で精製した。ファブリケーター消化試料の質量スペクトル分析は、コンジュゲートFc/2断片に対応する1種の主要な生成物(観察質量25921Da、総Fc/2断片のおよそ90%)を示した。還元試料のRP−HPLC分析は、1.90の平均DARを示した。
実施例29:コンジュゲート83を得るための、80を用いる13dのコンジュゲーション
本発明によるバイオコンジュゲートを、生体分子としてのアジド修飾トラスツズマブへのリンカー−コンジュゲートとしての化合物80のコンジュゲーションによって調製した。トラスツズマブ−(6−N3−GalNAc)2(13d)(8.18mL、270mg、PBS pH7.4中33.0mg/ml)の溶液に、PBS pH7.4(7.12mL)、DMF(2.49mL)及び化合物80(210μL、DMF中40mMの溶液)を添加した。反応物を室温でおよそ40時間の間インキュベートし、続いて、HiLoad 26/600 Superdex200 PG(GE Healthcare)にてAKTA精製器10(GE Healthcare)で精製した。ファブリケーター消化試料の質量スペクトル分析は、コンジュゲートFc/2断片に対応する1種の主要な生成物(観察質量26010Da、総Fc/2断片のおよそ90%)を示した。還元試料のRP−HPLC分析は、1.93の平均DARを示した。
実施例30:コンジュゲート81を得るための、77を用いる13dのコンジュゲーション
本発明によるバイオコンジュゲートを、生体分子としてのアジド修飾トラスツズマブへのリンカー−コンジュゲートとしての化合物77のコンジュゲーションによって調製した。トラスツズマブ−(6−N3−GalNAc)2(13d)(8.18mL、270mg、PBS pH7.4中33.0mg/ml)の溶液に、PBS pH7.4(5.328mL)、DMF(4.28mL)及び化合物77(225μL、DMF中40mMの溶液)を添加した。室温での終夜インキュベーション後、RP−HPLC分析は不完全な反応を示した。追加の化合物77(45μL、DMF中40mMの溶液)を、反応混合物に添加し、続いて、室温で終夜インキュベーションした。反応物をPBS pH7.4(0.5L)に対して透析し、HiLoad 26/600 Superdex200 PG(GE Healthcare)にてAKTA精製器10(GE Healthcare)で精製した。ファブリケーター消化試料の質量スペクトル分析は、コンジュゲートFc/2断片に対応する1種の主要な生成物(観察質量25931Da、総Fc/2断片のおよそ90%)を示した。還元試料のRP−HPLC分析は、1.91の平均DARを示した。
実施例31:コンジュゲート84を得るための、73を用いる13dのコンジュゲーション
本発明によるバイオコンジュゲートを、生体分子としてのアジド修飾トラスツズマブへのリンカー−コンジュゲートとしての化合物73のコンジュゲーションによって調製した。トラスツズマブ−(6−N3−GalNAc)2(13d)(4.09mL、135mg、PBS pH7.4中33.0mg/ml)の溶液に、PBS pH7.4(2.66mL)、DMF(2.14mL)及び化合物73(113μL、DMF中40mMの溶液)を添加した。反応物を室温で終夜インキュベートし、続いて、PBS pH7.4(0.5L)に対して透析し、HiLoad 26/600 Superdex200 PG(GE Healthcare)にてAKTA精製器10(GE Healthcare)で精製した。ファブリケーター消化試料の質量スペクトル分析は、コンジュゲートFc/2断片に対応する1種の主要な生成物(観察質量227331Da、総Fc/2断片のおよそ90%)を示した。還元試料のRP−HPLC分析は、3.78の平均DARを示した。
実施例32:コンジュゲート85を得るための、76を用いる13dのコンジュゲーション
本発明によるバイオコンジュゲートを、生体分子としての修飾生体分子13dへのリンカー−コンジュゲートとしての76のコンジュゲーションによって調製した。トラスツズマブ(6−N3−GalNAz)2(13d)(320μL、7.2mg、PBS pH7.4中22.5mg/ml)の溶液に、76(44.5μL、10mMの溶液DMF)及びDMF(66μL)を添加した。反応物を終夜室温で2回インキュベートし、続いて、PBS(1mL)で希釈し、Amicon Ultra−0.5、Ultracel−10 Membraneスピンフィルター(Millipore)を使用して濃縮した。次に、コンジュゲートをHiLoad 26/600 Superdex200 PGカラム(GE Healthcare)にてAKTA精製器10(GE Healthcare)で精製した。ファブリケーター(Fabricator)(商標)処理後の試料の質量スペクトル分析は、コンジュゲート85に対応する1つの主要なFc/2生成物(観察質量25649Da、総Fc/2のおよそ90%)を示した。
実施例33〜39:有効性、耐容性及び安定性の研究
実施例33a:HER2有効性研究[T226 PDXモデル]
15〜25グラムの体重の、Charles River Laboratories(France)から得られた、実験フェーズの開始時に6〜9週齢の雌性SHOマウス(Crl:SHO−Prkdcscid Hrhr)に、20mm3の腫瘍(T226)断片を皮下組織に移植した。少なくとも17gの体重の健康なマウスを移植手順に含めた。各処置アームにおいて腫瘍体積の平均値及び中央値が均一になるように、マウスをその腫瘍体積に従って異なる群に割り当てた。樹立された成長する腫瘍及び60〜200mm3の範囲の腫瘍体積を有する5匹のマウスの群に、ビヒクル、Kadcyla(1.3mg/kg(mpk))、ADC81、82、83及び84(9mg/kgで)のいずれかを静脈内注射した。腫瘍を60日の期間の間毎週2回測定した。腫瘍体積に対する結果は図8Aに図示されている(中央値データが図示されている)。
実施例33b:HER2有効性研究[HBCx−13b PDXモデル]
15〜25グラムの体重の、Charles River Laboratories(France)から得られた、実験フェーズの開始時に6〜9週齢の雌性SHOマウス(Crl:SHO−Prkdcscid Hrhr)に、20mm3の腫瘍(HBCx−13b)断片を皮下組織に移植した。腫瘍体積が62mm3及び256mm3の範囲であるとき、各処置アームにおいて腫瘍体積の平均値及び中央値が均一になるように、マウスをその腫瘍体積に従って割り当てた。5匹のマウスの群に、ビヒクル、ADC95、96、97又は98(6mg/kgで)のいずれかの用量を静脈内に2回(0日目及び8日目に)注射した。腫瘍を60日の期間の間毎週2回測定した。腫瘍体積に対する結果は図8Cに図示されている(中央値データが図示されている)。
実施例33c:HER2有効性研究[HBCx−15 PDXモデル]
15〜25グラムの体重の、Charles River Laboratories(France)から得られた、実験フェーズの開始時に6〜9週齢の雌性SHOマウス(Crl:SHO−Prkdcscid Hrhr)に、20mm3の腫瘍(HBCx−15)断片を皮下組織に移植した。腫瘍体積が62mm3及び256mm3の範囲であるとき、各処置アームにおいて腫瘍体積の平均値及び中央値が均一になるように、マウスをその腫瘍体積に従って割り当てた。5匹のマウスの群に、ビヒクル、Kadcyla(9mg/kg)又は85(0.5mg/kgで)のいずれかの単回用量を静脈内注射した。腫瘍を60日の期間の間毎週2回測定した。腫瘍体積に対する結果は図8Bに図示されている(平均データが図示されている)。
実施例34a:HER2耐容性研究
Charles River Laboratories、Saint−Germain−Nuelles、Franceから得られた、実験フェーズの開始時に6週齢の、Sprague Dawleyラット(1群当たり3匹の雄性及び3匹の雌性):OFA:SDを、尾静脈に導入されたマイクロフレックス注入セットを使用して97((1)20mg/kgで及び(2)40mg/kg)又は98((1)20mg/kgで及び(2)40mg/kg)の静脈内(ボーラス)注射で処置した(1mL/minで2mL/kg)。1つの動物群(対照)をビヒクルで処置した。投薬した後、全ての動物を5日の観察期間の間維持した。生存する動物を5日目に死亡させた。各動物を投薬の前に(0日目)並びに2日目及び4日目に無作為化/選択の時に秤量した。全ての動物(死亡が見出された動物又は瀕死で死亡させた動物を含む)を完全な剖検手順に供した。肝臓、脾臓及び坐骨神経の組織病理学的検査を、全ての動物について実施した。血液試料(瀕死で死亡させた動物を含む)を回収し、血液学的並びに血清臨床的化学パラメータの両方の決定にかけた。結果は、動物が、本発明によるコンジュゲート(97)及び従来技術のリンカー(98)を用いるコンジュゲートに同等に良好に耐容できたことを実証している。血小板数及び体重における有意な差異は観察されなかったが、両方のパラメータは、Kadcyla処置ラットにつては急速に減少した。
実施例34b:HER2耐容性研究
Charles River Laboratories、USAから得られた、実験フェーズの開始時に6週齢のSprague Dawleyラット(1群当たり2匹の雌性)を、尾静脈に導入されたマイクロフレックス注入セットを使用してADC84(20mg/kg(mpk)、35mpk、50mpk及び60mpkで)、又はADC81、82及び83(40mg/kg(mpk)、70mpk、100mpk及び120mpkで)の静脈内(ボーラス)注射で処置した(1mL/minで2mL/kg)。1つの動物群(対照)をビヒクルで処置し、別の群をKadcyla(20mg/kg(mpk)、35mpk、50mpk及び60mpkで)で処置した。投薬した後、全ての動物を12日の観察期間の間維持した。生存する動物を12日目に死亡させた。各動物を、投薬の前に(0日目)及び全ての連続した処置日に無作為化/選択の時に秤量した。全ての動物(死亡が見出された動物又は瀕死で死亡させた動物を含む)を完全な剖検手順に供した。肝臓、脾臓及び坐骨神経の肉眼的組織病理学的検査を全ての動物について実施した。血液試料(瀕死で死亡させた動物を含む)を回収し、両方の血液学的パラメータの決定にかけた。
ADC当たりの異なる用量計画についてのラットの百分率体重損失についての結果は、図7に図示されている。Kadcylaについての体重ベースのMTDは50mpk〜60mpkの間であることが、これらの結果から明確であったが、一方で、ADC84(DAR4)についての体重ベースのMTDは>60mpkであることが見出された。ADC81、82及び83(全てDAR2)について、体重ベースのMTDは>120mpkであることが見出され、最も高い用量レベルでのこれらのADCのいずれについても有意な体重損失は観察されなかった。