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JP2017114923A - ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法 Download PDF

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JP2017114923A JP2015248210A JP2015248210A JP2017114923A JP 2017114923 A JP2017114923 A JP 2017114923A JP 2015248210 A JP2015248210 A JP 2015248210A JP 2015248210 A JP2015248210 A JP 2015248210A JP 2017114923 A JP2017114923 A JP 2017114923A
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Abstract

【課題】 ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程で排出される極性有機溶媒を、生産性良く、新たなポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程に再利用する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供することにある。【解決手段】 ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応後、固液分離により固相成分を除去して、有機極性溶媒(a)を得、反応容器内に、当該有機極性溶媒(a)を、固液分離時の温度から80℃以内の範囲のうちに供給した上で、少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、有機極性溶媒とを反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に関する。より詳しくは、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程で排出される極性有機溶媒を、新たなポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程に再利用する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(PAS樹脂)は、耐熱性、耐薬品性等に優れ、電気電子部品、自動車部品、給湯機部品、繊維、フィルム用途等に幅広く利用されている。特に、リチウムイオン電池用パッキンやガスケット部材といった用途では、近年、特に高分子量ポリアリーレンスルフィド樹脂が、靭性および成形性に優れることから広く用いられている。
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略すことがある)などの極性有機溶媒中で、スルフィド化剤と、ポリハロ芳香族化合物とを重合反応させる方法等により得られるが、目的物質のポリアリーレンスルフィド樹脂と共に、溶媒、塩化ナトリウムなどの副生成物を含有する粗反応生成物が得られる。
製品として有用なポリアリーレンスルフィド樹脂は種々の後処理工程を経て生成されるが、当該後処理工程で排出される成分は、産業廃棄物として廃棄処理されてきたのが実情で、有効活用されてこなかった。
特に、固液分離して得られる液相成分については、産業廃棄物として廃棄処理されてきたのが実情であった。
特開2014−005207号公報 特開2014−005208号公報 特開2014−005317号公報
そこで本発明者らは、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程で排出される極性有機溶媒を、新たなポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程に再利用することを試みたものの、固液分離で排出された有機極性溶媒が室温まで冷却されうるため、再度重合反応に供しようとした場合に、重合反応温度まで昇温する時間とエネルギーが必要となり、生産性に改善の余地があった。
そこで本発明が解決しようとする課題は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程で排出される極性有機溶媒を、生産性良く、新たなポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程に再利用する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供することにある。
本願発明者らは種々の検討を行った結果、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応後の粗反応生成物を固液分離して得られる有機極性溶媒は、固液分離直後に高温であることから、高温を維持したまま新たなポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応に再利用すれば、原料の昇温工程を短縮でき、時間とエネルギーを低減でき、生産性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、工程(1):ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応後、固液分離により固相成分を除去して、有機極性溶媒(a)を得る工程、
工程(2):反応容器内に、前記工程(1)で得られた有機極性溶媒(a)を、工程(1)における固液分離時の温度から80℃以内の範囲のうちに供給する工程、
工程(3):反応容器内に、少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、有機極性溶媒とを供給する工程、
工程(4):前記工程(2)および(3)を経て得られた反応容器内で、少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを原料として、有機極性溶媒中で重合反応させる工程、を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法、に関する。
本発明によれば、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程で排出される極性有機溶媒を、生産性良く、新たなポリアリーレンスルフィド樹脂の製造工程に再利用する、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供することができる。
本発明の実施に当たって使用可能な反応装置の一例の模式図(実施例2で用 いた反応装置の模式図)である。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、工程(1):ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応後、固液分離により固相成分を除去して、有機極性溶媒(a)を得る工程、
工程(2):反応容器内に、前記工程(1)で得られた前記有機極性溶媒(a)を、固液分離時の温度から80℃以内の範囲のうちに供給する工程、
工程(3):反応容器内に、少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、有機極性溶媒とを供給する工程、
工程(4):前記工程(2)および(3)を経て得られた反応容器内で、少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを原料として、有機極性溶媒中で重合反応させる工程、を特徴とする。
本発明は、工程(1)として、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応後、固液分離により固相成分を除去して、有機極性溶媒(a)を得る工程を有する。
より具体的には、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを原料として極性有機溶媒中で反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂とアルカリ金属含有無機塩と前記極性有機溶媒を含む粗反応混合物を得(重合工程)、その後、粗反応混合物から前記極性有機溶媒を固液分離により固相成分を除去する工程(固液分離工程)を例示することができる。
重合工程は、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを原料として極性有機溶媒中で反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂とアルカリ金属含有無機塩と前記極性有機溶媒を含む粗反応混合物を得る工程である。
ここで、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合工程で用いられるポリハロ芳香族化合物としては、例えば、芳香族環に直接結合した2個以上のハロゲン原子を有するハロゲン化芳香族化合物であり、具体的には、p−ジクロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、m−ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、テトラクロルベンゼン、ジブロムベンゼン、ジヨードベンゼン、トリブロムベンゼン、ジブロムナフタレン、トリヨードベンゼン、ジクロルジフェニルベンゼン、ジブロムジフェニルベンゼン、ジクロルベンゾフェノン、ジブロムベンゾフェノン、ジクロルジフェニルエーテル、ジブロムジフェニルエーテル、ジクロルジフェニルスルフィド、ジブロムジフェニルスルフィド、ジクロルビフェニル、ジブロムビフェニル等のジハロ芳香族化合物及びこれらの混合物が挙げられ、これらの化合物をブロック共重合してもよい。これらの中でも好ましいのはジハロゲン化ベンゼン類であり、特に好ましいのはp−ジクロルベンゼンを80モル%以上含むものである。
また、枝分かれ構造とすることによってポリアリーレンスルフィド樹脂の粘度増大を図る目的で、1分子中に3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を分岐剤として所望に応じて用いてもよい。このようなポリハロ芳香族化合物としては、例えば、1,2,4−トリクロルベンゼン、1,3,5−トリクロルベンゼン、1,4,6−トリクロルナフタレン等が挙げられる。
更に、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基等の活性水素を持つ官能基を有するポリハロ芳香族化合物を挙げることが出来、具体的には、2,6−ジクロルアニリン、2,5−ジクロルアニリン、2,4−ジクロルアニリン、2,3−ジクロルアニリン等のジハロアニリン類;2,3,4−トリクロルアニリン、2,3,5−トリクロルアニリン、2,4,6−トリクロルアニリン、3,4,5−トリクロルアニリン等のトリハロアニリン類;2,2’−ジアミノ−4,4’−ジクロルジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノ−2’,4−ジクロルジフェニルエーテル等のジハロアミノジフェニルエーテル類およびこれらの混合物においてアミノ基がチオール基やヒドロキシル基に置き換えられた化合物などが例示される。
また、これらの活性水素含有ポリハロ芳香族化合物中の芳香族環を形成する炭素原子に結合した水素原子が他の不活性基、例えばアルキル基などの炭化水素基に置換している活性水素含有ポリハロ芳香族化合物も使用できる。
これらの各種活性水素含有ポリハロ芳香族化合物の中でも、好ましいのは活性水素含有ジハロ芳香族化合物であり、特に好ましいのはジクロルアニリンである。
ニトロ基を有するポリハロ芳香族化合物としては、例えば、2,4−ジニトロクロルベンゼン、2,5−ジクロルニトロベンゼン等のモノまたはジハロニトロベンゼン類;2−ニトロ−4,4’−ジクロルジフェニルエーテル等のジハロニトロジフェニルエーテル類;3,3’−ジニトロ−4,4’−ジクロルジフェニルスルホン等のジハロニトロジフェニルスルホン類;2,5−ジクロル−3−ニトロピリジン、2−クロル−3,5−ジニトロピリジン等のモノまたはジハロニトロピリジン類;あるいは各種ジハロニトロナフタレン類などが挙げられる。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合工程で用いられるアルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物が含まれる。かかるアルカリ金属硫化物は、水和物あるいは水性混合物あるいは無水物として使用することができる。また、アルカリ金属硫化物はアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物との反応によっても導くことができる。尚、通常、アルカリ金属硫化物中に微量存在するアルカリ金属水硫化物、チオ硫酸アルカリ金属と反応させるために、少量のアルカリ金属水酸化物を加えても差し支えない。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合工程で用いられるアルカリ金属水硫化物としては、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム及びこれらの混合物が含まれる。かかるアルカリ金属水硫化物は、水和物あるいは水性混合物あるいは無水物として使用することができる。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合工程で用いられるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。これらの中でも、入手が容易なことから水酸化リチウムと水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、固形のアルカリ金属硫化物の生成が促進される点から、アルカリ金属水硫化物1モル当たり、0.8〜1.2モルの範囲が好ましく、特に0.9〜1.1モルの範囲がより好ましい。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合工程で用いられる極性有機溶媒としては、ホルムアミド、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、ε−カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、N−ジメチルプロピレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン酸などのアミド、尿素及びラクタム類;スルホラン、ジメチルスルホラン等のスルホラン類;ベンゾニトリル等のニトリル類;メチルフェニルケトン等のケトン類及びこれらの混合物を挙げることができ、これらの中でもN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、ε−カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、N−ジメチルプロピレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン酸の脂肪族系環状構造を有するアミドが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応は、これらの極性有機溶媒の存在下、スルフィド化剤として上記アルカリ金属硫化物と、ポリハロ芳香族化合物とを反応させる。または、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応は、これらの極性有機溶媒の存在下、スルフィド化剤として上記アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、ポリハロ芳香族化合物とを反応させる。重合条件は一般に、温度200〜330℃の範囲であり、圧力は重合溶媒及び重合モノマーであるポリハロ芳香族化合物を実質的に液相に保持するような範囲であるべきであり、一般には0.1〜20MPaの範囲、好ましくは0.1〜2MPaの範囲より選択される。ポリハロ芳香族化合物の仕込み量は、前記スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、0.2モル〜5.0モルの範囲が挙げられる。また、極性有機溶媒の仕込み量は、使用する化合物の種類及び系内の水分割合によっても異なり、一概に規定することはできないものの、均一な重合反応が可能な反応系の粘度を保持すること、また、ある程度の生産性を維持するため、その量が、前記スルフィド化剤の硫黄原子1モル当り1.0〜6.0モルとなる範囲であることが好ましく、さらに、生産性を更に高める観点から、1.2〜5.0モルの範囲がより好ましく、更に1.5〜4.5モルなる範囲が最も好ましい。
上記した極性有機溶媒の存在下、スルフィド化剤とポリハロ芳香族化合物とを重合させる具体的態様としては、例えば、
1)アルカリ金属カルボン酸塩またはハロゲン化リチウム等の重合助剤を使用する方法、
2)芳香族ポリハロゲン化合物等の架橋剤を使用する方法、
3)少量の水の存在下に重合反応を行い次いで水を追加してさらに重合する方法、
4)アルカリ金属硫化物と芳香族ジハロゲン化合物との反応中に、反応釜の気相部分を冷却して反応釜内の気相の一部を凝縮させ液相に還流させる方法、などが挙げられる。
5)ポリハロ芳香族化合物の存在下、アルカリ金属硫化物、又は、含水アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、脂肪族環状構造を有するアミド、尿素またはラクタムとを、脱水させながら反応させて固形のアルカリ金属硫化物を含むスラリーを製造する工程、該スラリーを製造した後、更にNMPなどの極性有機溶媒を加え、水を留去して脱水を行う工程、次いで、脱水工程を経て得られたスラリー中で、ポリハロ芳香族化合物と、アルカリ金属水硫化物と、前記脂肪族環状構造を有するアミド、尿素またはラクタムの加水分解物のアルカリ金属塩とを、NMPなどの極性有機溶媒1モルに対して反応系内に現存する水分量が0.02モル以下で反応させて重合を行う工程を必須の製造工程として有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法が挙げられる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合終了後に、ポリアリーレンスルフィド樹脂とアルカリ金属含有無機塩と前記極性有機溶媒を含む粗反応混合物を得ることができる。このとき、粗反応混合物中には、カルボキシアルキルアミノ基含有化合物が含まれていても良い。
次に、固液分離工程は、得られた粗反応混合物から極性有機溶媒を固液分離させて、極性有機溶媒を主成分とする液相成分と、ポリアリーレンスルフィド樹脂およびアルカリ金属含有無機塩とを含む反応混合物からなる固相成分とを分離し、固相成分を除去して、極性有機溶媒を主成分とする液相成分を得る。該固液分離には大きく分けて、後述するフラッシュ法とクウェンチ法の2種類がある。フラッシュ法は、溶媒を蒸発させて溶媒回収し、同時に固形物を回収する方法であり、一般的に、減圧下に130〜200℃に加熱して溶媒を留去することにより行われる。フラッシュ法で溶媒回収した直後の溶媒温度はおおむね130〜200℃の範囲であるが、通常、室温(例えば、20℃。以下同じ。)環境下での作業のため、後述する保温対策を行っても90〜190℃の範囲まで冷却される傾向にある。
一方、クウェンチ法は、重合反応物を、除冷して粒子状のポリアリーレンスルフィド樹脂を回収する方法であり、一般的に、反応釜内で反応スラリーを必要に応じて貧溶媒を加えながら冷却し、ポリアリーレンスルフィド樹脂を晶析させた後に固液分離する方法が挙げられる。クウェンチ法における固液分離は、濾過やスクリューデカンター等の遠心分離機を用いて分離した後、得られた濾過残渣に直接水を加えスラリー化したのち、固液分離を繰り返し行う方法や、得られた濾過残渣を非酸化性雰囲気下で加熱して、残存する溶媒を除去する方法などが挙げられる。クエンチ法で溶媒回収した直後の溶媒温度は130〜200℃の範囲であるが、通常、室温環境下での作業のため、後述する保温対策を行っても90〜190℃の範囲まで冷却される傾向にある。フラッシュ法は、固形物を比較的簡便に回収することができる点で好ましく、クウェンチ法は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の粒度を制御しやすい点や晶析時にポリマー粒子にアルカリ金属含有無機塩やその他の不純物を取り込みにくくなるため、高純度のポリマーが得られる点で好ましい。
こうして得られた液相成分には、極性有機溶媒を主成分としており、その他副成分として、少なくともカルボキシアルキルアミノ基含有化合物が含まれていても良く、さらに水や線状ないし環状のPASオリゴマーなどが含まれていてもよい。極性有機溶媒中に含まれていてもよいカルボキシアルキルアミノ基含有化合物やその他に含まれる水やオリゴマーの含有濃度は重合条件や固液分離条件によって大きく異なるため一概にその範囲を決めることはできないが、得られた液相成分の一部を公知の分析方法で測定することで、容易に知ることができる。
前記カルボキシアルキルアミノ基含有化合物としては下記一般式(1)
(式中、nは0〜2であり、Yはハロゲン原子を、Yは水素原子又はハロゲン原子を、Rは水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基又はシクロヘキシル基を表し、Rは炭素原子数3〜5のアルキレン基を、Xは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)で表されるカルボキシアルキルアミノ基含有化合物が挙げられる。このうち、Xのアルカリ金属原子は、重合工程で原料として用いたアルカリ金属硫化物またはアルカリ金属水硫化物のアルカリ金属と同様である。
さらに、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造時に、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造原料として、例えば、極性有機溶媒がN−メチル−2−ピロリドン、ポリハロ芳香族化合物がp−ジクロロベンゼンである場合には前記カルボキシアルキルアミノ基含有化合物として、下記一般式(2)
(式中、Xは水素原子又はアルカリ金属原子を表す。)で表されるものが得られる(この化合物を“CP−MABA”と略記し、特にXが水素原子の場合を“CP−MABA(水素型)”、アルカリ金属原子の場合を“CP−MABA(アルカリ金属塩型)”、特にXがナトリウム原子の場合は“CP−MABA(Na塩型)”と略記することがある)。
このようにして得られた極性有機溶媒は、ポリアリーレンスフィド樹脂の原料に混ぜて、新たなポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に使用(再利用)することができる。新たなポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に使用(再利用)する場合であって、より高分子量体のポリアリーレンスルフィド樹脂を得ようとする目的の場合には、原料に対する前記カルボキシアルキルアミノ基含有化合物の割合が、硫黄原子1モルに対して、好ましくは0.004モル以下の範囲、より好ましくは0.003モル以下の範囲となるように調整することが望まれる。
本発明は、続いて工程(2)として、反応容器内に、前記工程(1)で得られた前記有機極性溶媒(a)を、固液分離時の温度から80℃以内、好ましくは50℃以内の範囲のうちに供給する工程を有する。工程(1)で得られた有機極性溶媒(a)は、固液分離の液相側の貯蔵漕から反応容器へ移動させる必要がある。その際、固液分離直後の高温状態をできる限り維持したまま新たなポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応を行う反応容器に供給することが好ましい。固液分離時の液相側の有機極性溶媒の温度は、重合反応の温度設定に左右されるため特に限定されるものではないが、目安として90〜190℃の範囲である。このため工程(1)において、得られた有機極性溶媒(a)は、断熱材および必要に応じてヒーターを備えたジャケットなどの保温機構を取り付けた容器内に供給して保管しておき、必要に応じて移動し、工程(2)において当該貯蔵漕より前記有機極性溶媒(a)を反応容器へ供給するか、または、前記工程(2)において、前記工程(1)で得られた前記有機極性溶媒(a)を、固液分離の液相側の貯蔵漕から反応容器に連通している配管を通じて、当該反応容器に供給すればよい。なお、配管を通じて直接供給する方が、外気に触れる機会を必要最小限にとどめ、より高温状態を維持することが容易であるため好ましい。前記配管にも、断熱材および必要に応じてヒーターを備えたジャケットなどの保温機構を取り付けることが好ましい。
反応容器内に供給する際の前記有機極性溶媒(a)の温度は、固液分離時の液相側の有機極性溶媒の温度にも左右されるため、特に限定されるものではないが、目安として80〜190℃の範囲であることが好ましい。
本発明は、工程(3)として、反応容器内に、少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、有機極性溶媒とを供給する工程、を有する。当該工程(2)と工程(3)はどちらか一方の工程を先に行っても、また、同時に行っても、いずれでも良い。
本発明は、さらに、工程(4)として、反応容器内に、少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物と、有機極性溶媒とを供給する工程を有する。当該工程(3)と工程(4)はどちらか一方の工程を先に行っても、また、同時に行っても、いずれでも良い。
次に、本発明は、工程(4)として、前記工程(2)および(3)を経て得られた反応容器内で、少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを原料として、有機極性溶媒中で重合反応させる工程を有する。すなわち、前記工程(1)で得られた極性有機溶媒を原料に混ぜて、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応を行う。
工程(3)および工程(4)は、反応溶媒として用いる有機極性溶媒の一部に、工程(1)および(2)を経て得られた有機極性溶媒を用いること以外は、基本的に、前記工程(1)で説明したポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応と同様である。したがって、工程(4)として重合反応を行った後、固液分離工程を行い、固液分離工程後の固相成分からは、その後必要な後処理工程を施して、ポリアリーレンスルフィド樹脂を製造することができるし、一方の、液相成分からは、極性有機溶媒を再度得ることができ、この物は、さらに、新規のポリアリーレンスフィド樹脂の原料に混ぜて使用(再利用)することができる。
その後必要な後処理工程としては、特に制限されるものではないが、例えば、(a)重合反応終了後、先ず反応混合物をそのまま、あるいは酸または塩基を加えた後、減圧下または常圧下で溶媒を留去し、次いで溶媒留去後の固形物を水、反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に中和、水洗、濾過および乾燥する方法、或いは、(b)重合反応終了後、反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した重合溶媒に可溶であり、かつ少なくともポリアリーレンスルフィドに対しては貧溶媒である溶媒)を沈降剤として添加して、ポリアリーレンスルフィドや無機塩等の固体状生成物を沈降させ、これらを濾別、洗浄、乾燥する方法、或いは、(c)重合反応終了後、反応混合物に反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)を加えて撹拌した後、濾過して低分子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、その後中和、水洗、濾過および乾燥をする方法、(d)重合反応終了後、反応混合物に水を加えて水洗浄、濾過、必要に応じて水洗浄の時に酸を加えて酸処理し、乾燥をする方法、(e)重合反応終了後、反応混合物を濾過し、必要に応じ、反応溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に水洗浄、濾過および乾燥する方法、等が挙げられる。
尚、上記(a)〜(e)に例示したような後処理方法において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の乾燥は真空中で行なってもよいし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。
このようにして得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、機械的強度を更に改善するために、充填材を含有することができる。本発明で用いる充填剤は必須成分ではないが、添加する場合は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0質量部より多く、通常は1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、かつ600質量部以下の範囲で加えることによって、目的に応じた各種性能を向上させることができる。
該充填材としては、本発明の効果を損なうものでなければ公知慣用の材料を用いることもでき、例えば、繊維状のものや、粒状や板状などの非繊維状のものなど、さまざまな形状の充填材等が挙げられる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、シランガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、炭化珪素、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等の繊維、ウォラストナイト等の天然繊維等の繊維状充填材が使用でき、またガラスビーズ、ガラスフレーク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、アタパルジャイト、フェライト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ等の非繊維状充填剤も使用できる。
更に、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂は、さらに用途に応じて、適宜、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアリーレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ四弗化エチレン樹脂、ポリ二弗化エチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等の合成樹脂、或いは、弗素ゴム等のエラストマーなどを配合したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物として使用してもよい。また、これらの樹脂の使用量は、それぞれの目的に応じて異なり、一概に規定することはできないが、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.01〜1000質量部の範囲で、本発明の効果を損なわないよう目的や用途に応じて適宜調整して用いればよい。
更に、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂は、本発明の効果を損ねない範囲であれば、成形加工の際に添加剤として、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤、滑剤、カップリング剤等の各種添加剤を含有させることができる。これらの添加剤の使用量は、それぞれの目的に応じて異なり、一概に規定することはできないが、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.01〜1000質量部の範囲で、本発明の効果を損なわないよう目的や用途に応じて適宜調整して用いればよい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法としては特に制限なく、本発明の製造方法で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂と、上記の必要に応じて加える充填材等のその他の添加剤を、粉末、ベレット、細片など様々な形態でリボンブレンター、ヘンシェルミキサー、Vブレンターなどに投入してドライブレンドした後、バンバリーミキサーミキシングロール、単軸または2軸の押出機およびニーターなどを用いて溶融混練する方法などが挙げられる。なかでも十分な混練力を有する単軸または2軸の押出機を用いて溶融混練する方法が代表的である。
このようにして得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、コンポジット、シート、パイプなどの押出成形、引抜成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に離形性に優れるため射出成形用途に適している。 得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品は、シリコーン樹脂との接着性に優れる。このため、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる板状、箱型の成形品にシリコーン樹脂で封止または接合した後、当該硬化性樹脂を硬化することにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる成形体と、硬化性樹脂からなる硬化物とが接着して得られる複合成形品が得られる。
複合成形品の主な用途例として箱型の電気・電子部品集積モジュール用保護・支持部材・複数の個別半導体またはモジュール、センサ、LEDランプ、コネクタ、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサ、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナ、スピーカ、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モータ、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、端子台、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダ、パラボラアンテナ、コンピュータ関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤ、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザディスク・コンパクトディスク・DVDディスク・ブルーレイディスク等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライタ部品、ワードプロセッサ部品、あるいは給湯機や風呂の湯量、温度センサなどの水回り機器部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピュータ関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライタ、タイプライタなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクタ、ICレギュレータ、ライトディヤ用ポテンシオメーターベース、リレーブロック、インヒビタースイッチ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディ、キャブレタースペーサ、排気ガスセンサ、冷却水センサ、油温センサ、ブレーキパットウェアーセンサ、スロットルポジションセンサ、クランクシャフトポジションセンサ、エアーフローメータ、ブレーキパッド摩耗センサ、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダ、ウォーターポンプインペラ、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュータ、スタータースイッチ、イグニッションコイルおよびそのボビン、モーターインシュレータ、モーターロータ、モーターコア、スターターリレ、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクタ、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターロータ、ランプソケット、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルタ、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品、その他各種用途にも適用可能である。












以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
〔溶融粘度の測定法〕
得られたポリマーの溶融粘度(η)は、島津製作所製フローテスターを用い、300℃、20kgf/cm、L/D=10で6分間保持した後に測定した値である。
〔ろ液中の組成の測定法:NMP〕
NMPは、アセトンで10倍希釈してGCで定量した。GC測定条件は以下の通り。
装置名:株式会社島津製作所社製「ガスクロマトグラフ GC‐2014」
カラム:財団法人化学物質評価研究機構製「Gカラム G−300」
キャリアガス:He(76kPa)
分析温度:140℃(5分)→3℃/分昇温→200℃(20分) 計45分
注入口温度:250℃
検出器:FID(250℃)
1.参考例1 ポリアリーレンスルフォド樹脂製造
オートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.75wt%NaS)205.5kgと、NMP358.7kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら212℃まで昇温して、水49.10kgを留出させた。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、パラジクロロベンゼン(以下、p−DCBと略すことがある)230.2kgとNMP228.0kgを仕込んだ。液温165℃で窒素ガスを用いて108,000Paに加圧して昇温を開始した。液温240℃まで135分かけて昇温し30分保持した。その後40分かけて液温250℃まで昇温し73分保持して反応を完結させ、その後、冷却してスラリー(1)を得た。
得られたスラリー(1)100.0kgをろ過して溶媒を除去し、次に、ろ過残渣に残ったNMPと副生成物の塩化ナトリウムを溶解するため、60℃の温水400kgに分散し10分間撹拌した後、さらにろ過し、ろ過ケーキに60℃の温水400kgを通過させた。この操作を3回繰り返した後、含水ろ過ケーキは、120℃において3時間熱風循環乾燥機中で乾燥し、白色粉末状のポリマー(1)を得た。溶融粘度を測定したところ、40Pa・sであった。
2.実施例1
参考例1と同様にしてスラリー(1)を得た。得られたスラリー(1)をろ過して溶媒を含むろ液(1)を得た。このろ液(1)の主な組成は、NMP94.71wt%であった。固液分離時のろ液(1)の温度は150℃であった。ろ液(1)は、容器外側に保温ジャケットを取り付けた、テンション締付け型ロック機構付き容器に収容して密閉し、10分間放置した。
オートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.75wt%NaS)202.4kgと、NMP196.1kgおよび前記容器から取り出した上記ろ液(1)183.0kgを仕込んだ。オートクレーブに供給する際のろ液(1)温度は130℃であった。窒素気流下攪拌しながら212℃まで昇温して、水54.00kgを留出させた。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、p−DCB227.3kgとNMP238.0質量部を仕込んだ。液温165℃で窒素ガスを用いて108,000Paに加圧して昇温を開始した。液温240℃まで135分かけて昇温し30分保持した。その後40分かけて液温250℃まで昇温し73分保持して反応を完結させ、その後、3時間かけて120℃まで冷却してスラリー(2)を得た。
次に、得られたスラリー(2)100.0kgをろ過(桐山ロートに保留粒子1μmのセルロースろ紙を引き、スラリーを入れたビーカーをウォーターバスにかけ、スラリー温度が50℃になってから、ロートに投入し、水流ポンプでの減圧ろ過)して溶媒を除去し、ろ過残渣に残ったNMPと副生成物の塩化ナトリウムを溶解するため60℃の温水400質量部に分散し10分間撹拌した後、さらにろ過し、ろ過ケーキに60℃の温水400質量部を通過させた。この操作を3回繰り返した後、含水ろ過ケーキは、120℃において3時間熱風循環乾燥機中で乾燥し、白色粉末状のポリマー(2)を得た。溶融粘度を測定したところ、46Pa・sであった。
3.実施例2
図1に示す装置も用いて、実験を行った。
オートクレーブ1に、フレーク状硫化ソーダ(60.75wt%NaS)205.5kgと、NMP358.7kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら212℃まで昇温して、水49.10kgを留出させた。その後、オートクレーブ1を密閉して180℃まで冷却し、パラジクロロベンゼン(以下、p−DCBと略すことがある)230.2kgとNMP228.0kgを仕込んだ。液温165℃で窒素ガスを用いて108,000Paに加圧して昇温を開始した。液温240℃まで135分かけて昇温し30分保持した。その後40分かけて液温250℃まで昇温し73分保持して反応を完結させ、その後、冷却してスラリー(1)を得た。
得られたスラリー(1)を固液分離装置19でろ過して溶媒を含むろ液(1)を得た。このろ液(1)の主な組成は、NMP94.71wt%であった。固液分離時のろ液(1)の温度は150℃であった。ろ液(1)は、配管22を通じて直接、オートクレーブ1に連通する貯蔵漕25に収容した。なお、貯蔵漕24および配管22は、貯蔵漕および配管外部に保温ジャケットを取り付けたものを用いた。
次に、オートクレーブ1内を洗浄した上で空の状態とした。さらに、38.41質量%NaS水溶液を貯留漕11に、NMPを貯留漕14に、p−DCBを貯留漕17に仕込んだ。
オートクレーブ1に、配管9を通じて貯留漕11から38.41質量%NaS水溶液320.2kg(NaS1576モル)と、配管12を通じて貯留漕14からNMP196.1kgおよび配管23を通じて貯留漕25からろ液(1)183.0kgを仕込んだ。オートクレーブへ供給する際のろ液(1)温度は135℃であった。窒素気流下攪拌しながら212℃まで昇温して、水54.00kgを留出させた。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、配管15を通じて貯留漕17からp−DCB227.3kgと、配管12を通じて貯留漕14からNMP238.0質量部をオートクレーブ1に仕込んだ。液温165℃で窒素ガスを用いて108,000Paに加圧して昇温を開始した。液温240℃まで135分かけて昇温し30分保持した。その後40分かけて液温250℃まで昇温し73分保持して反応を完結させ、その後、3時間かけて120℃まで冷却してスラリー(2)を得た。
次に、得られたスラリー(2)100.0kgをろ過(桐山ロートに保留粒子1μmのセルロースろ紙を引き、スラリーを入れたビーカーをウォーターバスにかけ、スラリー温度が50℃になってから、ロートに投入し、水流ポンプでの減圧ろ過)して溶媒を除去し、ろ過残渣に残ったNMPと副生成物の塩化ナトリウムを溶解するため60℃の温水400kgに分散し10分間撹拌した後、さらにろ過し、ろ過ケーキに60℃の温水400kgを通過させた。この操作を3回繰り返した後、含水ろ過ケーキは、120℃において3時間熱風循環乾燥機中で乾燥し、白色粉末状のポリマー(2)を得た。溶融粘度を測定したところ、48Pa・sであった。
1 反応容器
2 撹拌翼
3 精留塔
4 コンデンサ(凝縮器)
5 凝縮器からの液体成分を静置分離するためのデカンタ
6 デカンタ下層部の液体を精留塔に戻す還流ポンプ
7 バルブ(精留塔及びコンデンサ内部のガス成分の圧力を調製する圧力制御弁)
8 バルブ
9 NaSを反応容器へ供給するための配管
10 NaSを反応容器へ供給するためのポンプ
11 NaSの貯留漕
12 NMPを反応容器へ供給するための配管
13 NMPを反応容器へ供給するためのポンプ
14 NMPの貯留漕
15 p−DCBを反応容器へ供給するための配管
16 p−DCBを反応容器へ供給するためのポンプ
17 p−DCBの貯留漕
18 反応容器内容物を固液分離装置へ供給するための配管
19 固液分離装置
20 固相成分を移送するための配管
21、24 液相成分を移送するためのポンプ
22、23 液相成分を移送するための配管
25 液相成分の貯留漕

Claims (5)

  1. 工程(1):ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応後、固液分離により固相成分を除去して、有機極性溶媒(a)を得る工程、
    工程(2):反応容器内に、前記工程(1)で得られた有機極性溶媒(a)を、工程(1)における固液分離時の温度から80℃以内の範囲のうちに供給する工程、
    工程(3):反応容器内に、少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを供給する工程、
    工程(4):前記工程(2)および(3)を経て得られた反応容器内で、少なくとも、ポリハロ芳香族化合物と、(i)アルカリ金属硫化物とを、または、(ii)アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物とを原料として、有機極性溶媒中で重合反応させる工程、を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  2. 前記工程(2)において、反応容器内に供給する際の前記有機極性溶媒(a)の温度が90〜190℃の範囲である請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  3. 前記工程(1)を経て得られた前記有機極性溶媒(a)が、ポリアリーレンスルフィド樹脂オリゴマーを含むものである請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記工程(2)において、前記工程(1)で得られた前記有機極性溶媒(a)を、固液分離の液相側の貯蔵漕から反応容器に連通している配管を通じて、当該反応容器に供給する請求項1〜3の何れか一項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  5. 前記工程(1)において、得られた有機極性溶媒(a)を、保温機構を備えた貯蔵漕に供給し、前記工程(2)において当該貯蔵漕より前記有機極性溶媒(a)を反応容器へ供給する、請求項1〜4の何れか一項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
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