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JP2017112185A - 半導体デバイス、太陽電池、及び太陽電池モジュール - Google Patents

半導体デバイス、太陽電池、及び太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】半導体デバイスの性能を向上させる。
【解決手段】一対の電極と、前記一対の電極間に配置された半導体層と、を有する半導体デバイスであって、前記半導体層は、1価のカチオン、2価のカチオン及び1価のアニオンにより構成されるペロブスカイト半導体と、添加剤と、を含有し、前記添加剤は前記1価のカチオンのpKa値よりも低いpKa値を有する化合物であることを特徴とする、半導体デバイス。
【選択図】図3

Description

本発明は、半導体デバイス、太陽電池、及び太陽電池モジュールに関する。
電界効果トランジスタ、電界発光素子(LED)、及び光電変換素子のような半導体デバイスの性能は、半導体層の特性に大きい影響を受ける。このため、性能の高い半導体デバイスを製造するための研究において、半導体層の改善は主要なターゲットとなっている。例えば非特許文献1には、ペロブスカイト半導体を活性層として用いた太陽電池が開示されている。とりわけ非特許文献1には、ヨウ化鉛とヨウ化メチルアミンとから得られるペロブスカイト塗布液に対して、ヨウ化メチルアミンを製造するための原料であるヨウ化水素酸を追加することが記載されている。非特許文献1によれば、ヨウ化水素酸の追加によりペロブスカイトの溶解性が向上するため、ペロブスカイト半導体層の塗布成膜時にヨウ化鉛が析出することを防ぐことができるとされている。
Heo et al. Energy and Environmental Science, 2015, 8, 1602-1608.
半導体デバイスのさらなる性能向上のために、半導体層にさらなる工夫を加えることが求められている。
本発明は、半導体デバイスの性能を向上させることを目的とする。
本発明者らは、ペロブスカイト半導体層に添加剤を添加することによりペロブスカイト半導体層を有する半導体デバイスの性能が向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は、以下に存する。
[1]一対の電極と、前記一対の電極間に配置された半導体層と、を有する半導体デバイスであって、前記半導体層は、1価のカチオン、2価のカチオン及び1価のアニオンにより構成されるペロブスカイト半導体と、添加剤と、を含有し、前記添加剤は前記1価のカチオンのpKa値よりも低いpKa値を有する化合物であることを特徴とする、半導体デバイス。
[2]前記化合物のpKa値が−5以上7以下であることを特徴とする[1]に記載の半導体デバイス。
[3]前記化合物が、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基又は無水カルボン酸基を有する化合物であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の半導体デバイス。
[4]前記化合物の沸点が100℃以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の半導体デバイス。
[5]前記化合物の融点が100℃以上であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の半導体デバイス。
[6]光電変換素子であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の半導体デバイス。
[7][6]に記載の半導体デバイスを備える太陽電池。
[8][7]に記載の太陽電池を備える太陽電池モジュール。
半導体デバイスの性能を向上させることができる。
一実施形態に係る電界効果トランジスタ素子を模式的に表す断面図である。 一実施形態に係る電界発光素子を模式的に表す断面図である。 一実施形態としての光電変換素子を模式的に表す断面図である。 一実施形態としての太陽電池を模式的に表す断面図である。 一実施形態としての太陽電池モジュールを模式的に表す断面図である。
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定はされない。
<1.半導体デバイス>
本発明に係る半導体デバイスは、一対の電極と、一対の電極間に配置されたペロブスカイト半導体層と、を有する。また、ペロブスカイト半導体層は、特定の添加剤を含有している。以下、ペロブスカイト半導体層のことを単に半導体層と呼ぶことがある。
本明細書において半導体デバイスとは、半導体化合物を含有する半導体層を備える電子デバイスのことを指す。電子デバイスとは、2個以上の電極とを有し、その電極間に流れる電流若しくは生じる電圧を、電気、光、磁気若しくは化学物質等により制御するデバイス、又は、その電極間に印加した電圧若しくは電流により、光、電場若しくは磁場等を発生させるデバイスのことを指す。具体例としては、電圧若しくは電流の印加により電流若しくは電圧を制御する素子、磁場の印加により電圧若しくは電流を制御する素子、又は化学物質を作用させて電圧若しくは電流を制御する素子等が挙げられる。制御の具体例としては、整流、スイッチング、増幅又は発振等が挙げられる。
なお、本明細書において「半導体」とは、固体状態におけるキャリア移動度の大きさによって定義される。キャリア移動度とは、周知であるように、電荷(電子又は正孔)がどれだけ速く(又は多く)移動されうるかを示す指標となるものである。具体的には、本明細書における「半導体」は、室温におけるキャリア移動度が好ましくは1.0x10−6cm/V・s以上、より好ましくは1.0x10−5cm/V・s以上、さらに好ましくは5.0x10−5cm/V・s以上、特に好ましくは1.0x10−4cm/V・s以上である。なお、キャリア移動度は、例えば電界効果トランジスタのIV特性の測定、又はタイムオブフライト法等により測定できる。
半導体デバイスの例としては、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子若しくは化学センサー等、又はこれらの素子を組み合わせ若しくは集積化して得られたデバイスが挙げられる。また、半導体デバイスのさらなる例としては光素子が挙げられ、光素子には光電流を生じるフォトダイオード若しくはフォトトランジスタ、電界を印加することにより発光する電界発光素子、又は光により起電力を生じる光電変換素子若しくは太陽電池等が含まれる。
半導体デバイスのより具体的な例としては、S.M.Sze著、Physics of Semiconductor Devices、2nd Edition(Wiley Interscience 1981)に記載されているものを挙げることができる。なかでも、一実施形態に係る半導体デバイスの好ましい例としては、電界効果トランジスタ素子(FET)、電界発光素子(LED)、光電変換素子又は太陽電池が挙げられる。
電極の種類は特に限定さない。半導体デバイスの種類に応じて、適切な材料を用いて電極を作製することができる。電極の具体例は、いくつかの半導体デバイスに関して後に説明する。
ペロブスカイト半導体層とは、半導体特性を有する層であって、ペロプスカイト半導体化合物を含んでいる。ペロブスカイト半導体化合物とは、ペロブスカイト構造を有する半導体化合物のことを指す。ペロブスカイト半導体化合物としては、特段の制限はないが、例えば、Galasso et al. Structure and Properties of Inorganic Solids, Chapter 7 - Perovskite type and related structuresで挙げられているものから選ぶことができる。例えば、ペロブスカイト半導体化合物としては、一般式AMXで表されるもの又は一般式AMXで表されるものが挙げられる。ここで、Mは2価のカチオンを、Aは1価のカチオンを、Xは1価のアニオンを指す。ペロブスカイト半導体化合物としては、半導体デバイスの種類に応じて適切なものを選択することができる。
1価のカチオンAに特段の制限はないが、例えば、上記Galassoの著書に記載されているものを用いることができる。より具体的な例としては、周期表第1族及び第13族〜第16族元素を含むカチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン又は置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン又は2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基にも特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン又はアリールアンモニウムイオンが挙げられる。特に、立体障害を避けるために、3次元の結晶構造となるモノアルキルアンモニウムイオンが好ましく、安定性向上の観点からは、一つ以上のフッ素基を置換したアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。また、カチオンAとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。
1価のカチオンAの具体例としては、メチルアンモニウムイオン、モノフッ化メチルアンモニウムイオン、ジフッ化メチルアンモニウムイオン、トリフッ化メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、n−プロピルアンモニウムイオン、イソブチルアンモニウムイオン、n−ブチルアンモニウムイオン、t−ブチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、フェネチルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、アセトアミジニウムイオン又はイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
2価のカチオンMにも特段の制限はないが、2価の金属カチオン又は半金属カチオンであることが好ましい。具体的な例としては周期表第14族元素のカチオンが挙げられ、より具体的な例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、ゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、カチオンMとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。なお、安定な光電変換素子を得る観点からは、鉛カチオン又は鉛カチオンを含む2種以上のカチオンを用いることが特に好ましい。
1価のアニオンXの例としては、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、クエン酸イオン、硫黄イオン、テルルイオン、チオシアン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、2,4−ペンタンジオナトイオン又はケイフッ素イオン等が挙げられる。バンドギャップを調整するためには、Xは1種類のアニオンであってもよいし、2種類以上のアニオンの組み合わせであってもよい。なかでも、Xとしてはハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせを用いることが好ましい。ハロゲン化物イオンXの例としては、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン等が挙げられる。半導体のバンドギャップを広げすぎない観点から、ヨウ化物イオンを用いることが好ましい。
ペロブスカイト半導体化合物の好ましい例としては、有機−無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられ、特にハライド系有機−無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられる。ペロブスカイト半導体化合物の具体例としては、CHNHPbI、CHNHPbBr、CHNHPbCl、CHNHSnI、CHNHSnBr、CHNHSnCl、CHNHPbI(3−x)Cl、CHNHPbI(3−x)Br、CHNHPbBr(3−x)Cl、CHNHPb(1−y)Sn、CHNHPb(1−y)SnBr、CHNHPb(1−y)SnCl、CHNHPb(1−y)Sn(3−x)Cl、CHNHPb(1−y)Sn(3−x)Br、及びCHNHPb(1−y)SnBr(3−x)Cl、並びに、上記の化合物においてCHNHの代わりにCFHNH、CFHNH、又はCFNHを用いたもの、等が挙げられる。なお、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
半導体層は、2種類以上のペロブスカイト半導体化合物を含有していてもよい。例えば、A、B及びXのうちの少なくとも1つが異なる2種類以上のペロブスカイト半導体化合物が半導体層に含まれていてもよい。
半導体層に含まれるペロブスカイト半導体化合物の量は、良好な半導体特性が得られるように、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上限に特に制限はない。
半導体層は、さらに添加剤を含んでいる。添加剤としては、ペロブスカイト半導体化合物を構成する1価のカチオンAのpKa値(1価のカチオンAからプロトンが脱離する際のpKa値)よりも低いpKa値を有する化合物が挙げられる。なお、本明細書において、pKa値は、水中での25℃における値を指し、各化合物のpKa値は、日本化学会編「改訂5版化学便覧」に記載の値に従うものとする。但し、日本化学会編「改訂5版化学便覧」にpKa値が記載されていない化合物に関しては、全自動物性パラメータ測定装置(Sirius analytical T3、CTCライフサイエンス株式会社製)を用いて算出することができる。
なお、添加剤の化合物が、複数のpKaを有する場合、1段階目の電離(最初にプロトンが脱離する際)のpKa値を参照するものとする。添加剤は、2種類以上の物質の混合物であってもよい。
本発明者らによれば、半導体層が上記の化合物を含んでいることにより、半導体デバイスの性能が向上すること、例えば光電変換素子において短絡電流密度及び光電変換効率が向上することが見出された。その理由は明確ではないが、以下の理由が考えられる。例えば、ペロブスカイト化合物は後述するように、例えば、AX(Aは1価のカチオン、Xは1価のアニオン)及びMX(Mは2価のカチオン、Xは1価のアニオン)を前駆体として形成することができる。この際に、ペロブスカイト半導体化合物を構成する1価のカチオンAが1価のアニオンXに配位することが重要になるが、該1価のカチオンAのpKaよりも低いpKa値を有する化合物を添加することにより、1価のカチオン塩の活性化を促進することができるものと考えられる。そのため、該ペロブスカイト半導体を構成する(MX)との反応性を高めることができ、ペロブスカイト半導体の結晶化を促進することができて結晶サイズの大きなペロブスカイト半導体が得られるものと考えられる。この結果、短絡電流密度及び光電変換効率が向上したものと考えられる。
上記のなかでも、1価のカチオン塩をより活性化させるために、添加剤は、pKa値が7以下の化合物であることが好ましく、6以下の化合物であることがさらに好ましく、5以下の化合物であることが特に好ましい。一方、半導体デバイスの性能向上のために、添加剤は、pKa値が−5以上の化合物であることが好ましい。また、pKa値が−5以上の化合物を用いることは、溶液プロセスを用いて半導体層を形成する際に、よく用いられるN,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒と添加剤が反応しにくい点でも好ましい。より好ましくは、添加剤はpKaが−2以上の化合物であり、さらに好ましくは0以上の化合物である。
上記化合物としては、特段の制限はないが、ペロブスカイト前駆体溶液への溶解性向上のためにオキソ基(X=O、Xは第14族、第15族、第16族の元素から選ばれる原子)及び水酸基を有する有機化合物であることが好ましい。なかでも、ペロブスカイト半導体との相互作用を促進するために上記化合物は、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、又は無水カルボン酸基を有する化合物が好ましい。また、上記化合物の分子量は50以上であることが好ましく、80以上であることがさらに好ましく、一方、半導体層中において絶縁性を高めないために、当該分子量は500以下であることが好ましく、300以下であることがさらに好ましい。
カルボキシル基を有する化合物としては、特段の制限はないが、例えば、酒石酸、L−アスコルビン酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、o−クロロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、又はフタル酸が挙げられる。
カルボキシル基には、L−アスコルビン酸が有するような、ビニル性カルボン酸基(C(=O)−C=C−OH)も含まれる。
リン酸基を有する化合物としては、特段の制限はないが、例えば、グリホサート、2−アミノプロピルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、又はメチレンジホスホン酸が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物としては、特段の制限はないが、例えば、スルファミン酸、アミノエチルスルホン酸、4−モルホリンエタンスルホン酸、又はアミノメチルスルホン酸が挙げられる。
無水カルボン酸基を有する化合物としては、特段の制限はないが、L−アスコルビン酸、コハク酸無水物、又はフタル酸無水物が挙げられる。
無水カルボン酸基を有する化合物としては、水和して得られる化合物のpKa値が、1価のカチオンAのpKa値よりも低くなるような化合物であってもよい。
上記のなかでも、添加剤としては不揮発性の化合物又は難揮発性の化合物を用いることが好ましい。例えば非特許文献1に記載されているように添加剤としてヨウ化水素を用いる場合、半導体層の成膜中にヨウ化水素が揮発してしまうため、半導体層中に添加剤は残らない。そのため、ペロブスカイト半導体化合物の結晶サイズを大きくすることができないために効率を向上させることができない。そのため、添加剤の揮発を防ぐ観点から、添加剤は25℃1気圧において固体であることが好ましい。なお、半導体層を形成する際に揮発するのを防ぎ半導体層中に化合物を残存させるという観点からは、該化合物の1気圧における沸点は100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。また、該化合物は半導体層中において固体酸として存在することが好ましいために、該化合物の25℃1気圧における融点は100℃以上であることが好ましい。
添加剤としては、ペロブスカイト半導体の構成成分以外の材料を用いることができ、例えば、半導体層が上記のようにAMX又はAMXで表されるペロブスカイト半導体を含有している場合、AMX、AMX、AX又はMX以外の添加剤を用いることができる。また、一実施形態においては、HX又はXの塩ではない添加剤が用いられ、さらなる実施形態においては、A又はMの塩ではない添加剤が用いられる。また、ペロブスカイト半導体の構成成分とは性質の異なる添加剤を用いることができる。例えば、半導体層がハライド系有機−無機ペロブスカイト半導体化合物を含有する場合、ハロゲン化水素又はハロゲン化物塩ではない添加剤を用いることができる。
半導体層中に含まれる添加剤の量は、効果が得られるのであれば特に限定されない。添加剤の効果がよりよく発揮されるように、半導体層中に含まれる添加剤の量は、半導体層中に含まれるペロブスカイト半導体化合物を構成する2価のカチオンMの量に対して1.0mol%以上であることが好ましく、2.0mol%以上であることがより好ましく、5.0mol%以上であることがさらに好ましく、10mol%以上であってもよい。一方で、半導体特性を良好に維持できるように、半導体層中に含まれる添加剤の量は、半導体層中に含まれるペロブスカイト半導体化合物を構成する2価のカチオンMの量に対して100mol%以下であることが好ましく、75mol%以下であることがより好ましく、50mol%以下であることがさらに好ましい。
半導体層には、ペロブスカイト半導体化合物及び添加剤以外に、他の化合物が添加されていてもよい。他の化合物の例としては、ハロゲン化物、酸化物、又は硫化物、硫酸塩、硝酸塩若しくはアンモニウム塩等の無機塩のような、無機化合物が挙げられる。この場合、半導体層の半導体特性がよく発揮されるように、半導体層中のペロブスカイト半導体化合物及び上述の添加剤の割合は、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。また半導体層は、異なる材料を含み又は異なる成分を有する複数の層で形成される積層構造を有していてもよい。
半導体層の厚さは特に限定されず、半導体層の用途に応じて適宜選択することができる。一例としては、半導体層の厚さは0.5nm以上500nm以下であってもよい。
半導体層の形成方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、上記の添加剤を含有する塗布液を用いて塗布法により半導体層を形成することができる。特にこのように塗布法を用いて半導体層を形成する場合、上述の通り、添加剤のpKaは、7以下の化合物であることが好ましく、6以下であることがさらに好ましく、5以下であることが特に好ましく、一方、−5以上であることが好ましく、−2以上であることがより好ましく、0以上であることがさらに好ましい。具体例としては、具体例としては、ペロブスカイト半導体化合物又はその前駆体と、添加剤と、を含有する塗布液を塗布することにより半導体層を形成する方法が挙げられる。
ペロブスカイト半導体化合物前駆体とは、塗布液を塗布した後にペロブスカイト半導体化合物へと変換可能な材料のことを指す。具体的な例としては、加熱することによりペロブスカイト半導体化合物へと変換可能なペロブスカイト半導体化合物前駆体がある。例えば、塗布液を塗布することにより得られた膜を加熱することにより、ペロブスカイト半導体化合物前駆体をペロブスカイト半導体化合物へと変換し、ペロブスカイト半導体化合物及び添加剤を含有する半導体層を形成することができる。ペロブスカイト半導体化合物前駆体の具体例としては、加熱により下記(1)で表されるペロブスカイト半導体化合物へと変換可能である、下記式(2)で表される化合物及び/又は下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
一例としては、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表わされる化合物と、添加剤と、溶媒と、を含有する塗布液を作製し、この塗布液を塗布する方法が挙げられる。このような塗布液は、化合物を溶液中で加熱攪拌することにより作製することができる。この方法によれば、下記式(1)で表される化合物と添加剤とを含有する活性層103を作製することができる。
AMX ・・・(1)
AX ・・・(2)
MX ・・・(3)
A、M及びXの定義は上述の通りである。AXの具体例としてはハロゲン化アルキルアンモニウム塩が挙げられ、MXの具体例としては金属ハロゲン化物が挙げられる。AX及びMXは、ベロブスカイト半導体化合物AMXの前駆体である。
加熱攪拌又は加熱アニールの際の加熱温度は、化合物の反応を十分に促進する観点から、60℃以上であることが好ましく、一方、副反応を避ける観点から、80℃以下であることが好ましい。また、加熱攪拌時間は、化合物の反応を十分に促進する観点から、2時間以上であることが好ましく、生産効率を向上させる観点から、24時間以下であることが好ましい。加熱攪拌温度は、60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがさらに好ましい。なお、アニールの方法は、特段の制限はなく、常圧下、または、減圧下、ホットプレートにより行ってもよいし、近赤外線加熱装置(NIR)により行ってもよい。
式(3)で表される化合物に対する式(2)で表される化合物のモル分率(2/3)は、特段の制限はない。しかしながら、活性層中に式(3)で表される化合物が残存すると光電変換素子の変換効率が低下する傾向がある。また、後述する加熱処理により式(2)で表される化合物を除去できても、式(3)で表される化合物は加熱により除去することが困難であることが多い。そのため、式(3)で表される化合物が層中に残存しないように活性層103を形成することが好ましい。この点から、式(3)で表される化合物に対する式(2)で表される化合物のモル分率(2/3)は100モル%以上であることが好ましく、一方、600モル%以下であることが好ましく、400モル%以下であることが特に好ましい。
塗布法に用いられる塗布液は、ペロブスカイト半導体化合物又はその前駆体と、添加剤と、を溶媒に溶解させることにより作製することができる。溶媒としては、ペロブスカイト半導体化合物及び添加剤が溶解するのであれば特に限定されない。溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン若しくはデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン若しくはオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、テトラリン若しくはデカリン等の脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール若しくはプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、ジメチルスルホキシド、若しくはシクロヘキサノン等の脂肪族ケトン類;アセトフェノン若しくはプロピオフェノン等の芳香族ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、若しくは乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン若しくはトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン等のエーテル類;又は、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
ペロブスカイト半導体化合物を使用する場合、塗布液の溶媒としては、Brandrup,J.ら編「Polymer Handbook, 4th Ed.」に記載の溶解度パラメータ(SP値)が、9以上であるものが好ましく、10以上であるものが特に好ましい。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。溶媒としては、2種類以上の溶媒の混合溶媒を用いてもよい。なお、混合溶媒を用いる場合も、混合溶媒のうち少なくとも1種の溶媒の溶解度パラメータは10以上であることが好ましい。
このような、ペロブスカイト半導体化合物又はペロブスカイト半導体化合物前駆体と、上記の添加剤と、を含有する組成物は、半導体層形成用の組成物として用いることができる。上記の例では、ペロブスカイト半導体化合物又はその前駆体、添加剤、及び溶媒を含有する塗布液が、半導体層形成用の組成物として用いられる。組成物はさらなる化合物を含有していてもよいが、組成物中のペロブスカイト半導体化合物又はその前駆体及び上述の添加剤の割合(溶媒を除く)は、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
組成物中に含まれるペロブスカイト半導体化合物又はその前駆体と添加剤との比率は、特に限定されない。添加剤の効果がよりよく発揮されるように、組成物中に含まれる添加剤の量は、組成物中に含まれるペロブスカイト半導体化合物の材料となる2価のカチオンMの量に対して1.0mol%以上であることが好ましく、2.0mol%以上であることがより好ましく、5.0mol%以上であることがさらに好ましく、10mol%以上であってもよい。一方で、半導体特性を良好に維持できるように、半導体層中に含まれる添加剤の量は、半導体層中に含まれるペロブスカイト半導体化合物を構成する2価のカチオンMの量に対して100mol%以下であることが好ましく、75mol%以下であることがより好ましく、50mol%以下であることがさらに好ましい。
また、組成物中に含まれるペロブスカイト半導体化合物の前駆体の濃度も、特に限定されず、適切な厚さの半導体層が形成されるように適宜選択することができる。塗布成膜が円滑に進むように、ペロブスカイト半導体化合物の前駆体の濃度は好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは15重量%以上であり、一方で好ましくは60重量%以下であり、さらに好ましくは45重量%以下である。
塗布液の塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
塗布液を塗布した後に乾燥を行うとともに、必要に応じてペロブスカイト半導体化合物前駆体をペロブスカイト半導体化合物へと変換する処理を行うことにより、半導体層を形成することができる。乾燥方法は特に限定されず、例えば加熱乾燥を行ってもよい。
ここまで、上記式(2)で表される化合物と、上記式(3)で表わされる化合物と、添加剤と、溶媒と、を含有する塗布液を用いて半導体層を形成する場合について説明したが、塗布法による半導体層の形成方法はこれに限られない。例えば、上記式(2)で表されるペロブスカイト半導体化合物前駆体を含有する塗布液と、上記式(3)で表されるペロブスカイト半導体化合物前駆体を含有する塗布液とのうち、一方を塗布した後に、さらに他方を塗布してもよい。その後、ペロブスカイト半導体化合物前駆体をペロブスカイト半導体化合物へと変換する処理を行うことにより、半導体層を形成することができる。この場合、添加剤は上記式(2)で表される化合物を含有する塗布液と、上記式(3)で表される化合物を含有する塗布液とのうちの少なくとも一方に含まれていればよい。また、上記式(2)で表される化合物を含有する塗布液、及び上記式(3)で表される化合物を含有する塗布液に加えて、添加剤を含有する塗布液が塗布されてもよい。このように、上記の添加剤を含有する塗布液を用いて、様々な方法により半導体層を形成することができる。
本発明に係る半導体デバイスの製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法で製造することができる。すなわち、電極が形成された基材上に半導体層を形成する工程と、半導体層上に電極を形成する工程と、により半導体デバイスを製造することができる。半導体層を形成する工程においては、前述した方法により半導体層を形成することができる。
以下、本発明に係る半導体デバイスの例として、電界効果トランジスタ素子、電界発光素子、光電変換素子、及び太陽電池について詳細に説明する。
<2.電界効果トランジスタ(FET)>
本発明に係る電界効果トランジスタ(FET)素子は、半導体層と、一対の電極であるソース電極及びドレイン電極と、ゲート電極とを有する。この半導体層は、上述のようにペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有している。
以下、一実施形態に係るFET素子について詳細に説明する。図1は、本発明に係るFET素子の構造例を模式的に表す図である。図1において、51が半導体層、52が絶縁体層、53及び54がソース電極及びドレイン電極、55がゲート電極、56が基材をそれぞれ示す。半導体層51は、ペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有している。もっとも、別の実施形態において、FET素子は、ソース電極53とドレイン電極54との間のチャネルとして働く半導体層51とは異なる、ペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有する半導体層を有していてもよい。図1(A)〜(D)にはそれぞれ異なる構造のFET素子が記載されているが、どれも本発明に係るFET素子の構造例を示している。FET素子を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
一実施形態に係るFET素子において、半導体層51は、基材56上に直接又は他の層を介して半導体を膜状に形成することにより作製される。半導体層51の膜厚に制限は無く、例えば横型の電界効果トランジスタ素子の場合、所定の膜厚以上であれば素子の特性は半導体層51の膜厚には依存しない。ただし、膜厚が厚くなりすぎると漏れ電流が増加してくることが多いため、半導体層の膜厚は、好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり、コストの観点から好ましくは1μm以下、さらに好ましくは200nm以下である。
半導体層51の特性としては、室温におけるキャリア移動度が好ましくは1.0x10−6cm/V・s以上、さらに好ましくは1.0x10−5cm/V・s以上、より好ましくは5.0x10−5cm/V・s以上、特に好ましくは1.0x10−4cm/V・s以上である。
<3.電界発光素子(LED)>
本発明に係る電界発光素子(LED)は、一対の電極である陽極及び陰極と、電極間に配置された半導体層である発光層と、を有する。電界発光素子は、電界を印加することにより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子との再結合エネルギーによって蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。一実施形態において、この発光層は、上述のようにペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有している。しかしながら、別の実施形態において、電界発光素子が、発光層とは異なる、ペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有する半導体層を有していてもよい。例えば、電子輸送層又は正孔輸送層等が、ペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有する半導体層であってもよい。
図2は、本発明に係る電界発光素子の一実施形態を模式的に示す断面図である。図2において、符号31は基材、32は陽極、33は正孔注入層、34は正孔輸送層、35は発光層、36は電子輸送層、37は電子注入層、38は陰極、39は電界発光素子を示している。発光層35は、ペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有している。なお、電界発光素子がこれらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。例えば、必ずしも、正孔注入層33、正孔輸送層34、電子輸送層36、及び電子注入層37を設ける必要はない。電界発光素子を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
発光層35の形成方法に制限はない。例えば、湿式成膜法又は乾式成膜法を用いることができる。また、素子の発光効率を向上させる目的、発光色を変える目的、及び素子の駆動寿命を改善する目的等で、ホスト材料に蛍光色素や燐光性金属錯体等の別の化合物をドープすることにより発光層35を作製してもよい。例えば、蛍光色素をドープすることで、
1)高効率の蛍光色素による発光効率の向上
2)蛍光色素の選択による発光波長の可変化
3)濃度消光を起こす蛍光色素が使用可能となる
4)薄膜性の悪い蛍光色素も使用可能となる
5)電荷トラップ解消により駆動安定性が向上する、等の効果が期待される。
また、発光層35中に正孔輸送材料を混合することも、特に素子の駆動安定性を向上させる目的のために有効である。発光層35中に混合される正孔輸送材料の量は、5〜50質量%の範囲であることが好ましい。
発光層35の膜厚に制限はなく、発光層35に望まれる条件を満たしながら発光量を確保できるように、好ましくは3nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
なお、図2は本発明に係る電界発光素子の一実施形態を示すものにすぎず、本発明に係る電界発光素子が図示された構成に限定されるわけではない。例えば、図2とは逆の積層構造とすること、すなわち、基板31上に陰極38、電子注入層37、電子輸送層36、発光層35、正孔輸送層34、正孔注入層33及び陽極32をこの順に積層することも可能である。
本発明に係る電界発光素子の構成は特に限定されず、単一の素子であっても、アレイ状に配置された構造からなる素子であっても、陽極と陰極とがX−Yマトリックス状に配置された構造の素子であってもよい。
<4.光電変換素子>
本発明に係る光電変換素子は、一対の電極であるカソード及びアノードと、電極間に配置された半導体層である活性層と、を有する。また、一実施形態に係る光電変換素子は、基材、電子取り出し層、及び正孔取り出し層を含むその他の構成要素を有していてもよい。一実施形態において、活性層は、上述のようにペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有している。しかしながら、別の実施形態において、光電変換素子が、活性層とは異なる、ペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有する半導体層を有していてもよい。例えば、電子取り出し層又は正孔取り出し層等が、ペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有する半導体層であってもよい。
図3は、本発明に係る光電変換素子の一実施形態を模式的に表す断面図である。図3に示される光電変換素子は、一般的な薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子であるが、本発明に係る光電変換素子が図3に示されるものに限られるわけではない。本発明の一実施形態に係る光電変換素子100は、基材108、アノード(電極)101、正孔取り出し層(バッファ層)102、活性層103、絶縁体層104、電子取り出し層(バッファ層)105、仕事関数チューニング層106及びカソード(電極)107がこの順に形成された層構造を有する。活性層103は、ペロブスカイト半導体化合物と添加剤とを含有している。なお、必ずしも正孔取り出し層102、絶縁体層104、電子取り出し層105及び仕事関数チューニング層106を設ける必要はない。また、仕事関数チューニング層がアノード101と正孔取り出し層102との間に存在してもよい。
本発明に係る光電変換素子の構成は、図3に示されるものには限られない。例えば、光電変換素子100は、基材108、カソード107、活性層103、及びアノード101がこの順に形成された層構造を有していてもよく、さらに仕事関数チューニング層106、電子取り出し層105、絶縁体層104、及び正孔取り出し層102等を有していてもよい。また、光電変換素子100は、図3に示す構成要素以外の構成要素を有していてもよい。
<4−1.活性層(103)>
活性層103は光電変換が行われる層である。光電変換素子100が光を受けると、光が活性層103に吸収されてキャリアが発生し、発生したキャリアはアノード101及びカソード107から取り出される。
本実施形態において、活性層103としては上記の半導体層を用いることができ、具体的にはペロブスカイト半導体化合物及び添加剤を含有する半導体層を活性層103として用いることができる。このような活性層103を有する太陽電池はペロブスカイト太陽電池として知られている。ペロブスカイト半導体においては、ペロブスカイト構造を有するペロブスカイト半導体化合物が結晶を形成している。このような結晶においては速い電荷分離が起こるとともに正孔及び電子の拡散距離が長いため、効率のよい電荷分離が起こる。ペロブスカイト半導体化合物としては、特段の制限はなく、上述したものを用いることができる。光電変換効率を向上させる観点から、ペロブスカイト半導体化合物としては、1.0eV以上3.5eV以下のエネルギーバンドギャップを有する半導体化合物を用いることが好ましい。
もっとも、活性層103以外の層がペロブスカイト半導体化合物及び添加剤を含有する層である場合、活性層103の構造は特に限定されない。例えば、活性層103は、p型半導体化合物を含有する層とn型半導体化合物を含有する層とを含むヘテロ接合型の活性層、又はp型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層(i層)を有するバルクヘテロ型の活性層でありうる。
活性層103の厚さに特段の制限はない。より多くの光を吸収できる点で、活性層103の厚さは、好ましくは5nm以上、さらに好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、特に好ましくは120nm以上である。一方で、直列抵抗が下がる点で、活性層103の厚さは、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下である。
活性層103の形成方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。具体例としては、塗布法及び蒸着法(又は共蒸着法)が挙げられる。簡易に活性層103を形成できる点で、塗布法を用いることは好ましい。塗布法により活性層103を形成する方法としては、上述の半導体層を形成する方法と同様の方法を用いることができる。
塗布液を塗布した後には加熱乾燥を行うことが好ましい。加熱により配位している溶媒及び残存する式(2)で表わされる化合物が層中から除去されて結晶化が促進され、光電変換効率が向上する傾向にある。結晶化の進行は塗布液の濃度に依存するため、塗布液の濃度が薄い場合又は溶媒の含有量が少ない場合には、加熱時間を短くすることが好ましい。
この際の加熱温度は、特段の制限はないが、十分に結晶化を促進する観点から、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、一方、ペロブスカイト半導体化合物の分解及び副反応を抑制するために、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。加熱する時間にも特段の制限はないが、十分に結晶化を促進する観点から、好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、一方、生産効率を向上させる観点から、好ましくは3時間以下、さらに好ましくは2時間以下である。これらの加熱は、常圧下、または、減圧下、で行ってよい。
<4−2.バッファ層(102,105)>
バッファ層は通常、電子取り出し層と正孔取り出し層とに分類することができる。一実施形態において、光電変換素子100は、アノード101と活性層103との間に正孔取り出し層102を有し、活性層103とカソード107との間に電子取り出し層105を有する。もっとも、光電変換素子100は、正孔取り出し層102と電子取り出し層105との一方のみを有していてもよいし、正孔取り出し層102と電子取り出し層105とのどちらも有さなくてもよい。
正孔取り出し層102と電子取り出し層105とは、一対の電極(101,107)間に、活性層103を挟むように配置されることが好ましい。すなわち、光電変換素子100が正孔取り出し層102と電子取り出し層105の両者を含む場合、アノード(電極)101、正孔取り出し層102、活性層103、電子取り出し層105、及びカソード(電極)107をこの順に配置することができる。光電変換素子100が正孔取り出し層102を含み電子取り出し層105を含まない場合は、アノード(電極)101、正孔取り出し層102、活性層103、及びカソード(電極)107をこの順に配置することができる。また、正孔取り出し層102と電子取り出し層105の少なくとも一方が異なる複数の膜により構成されていてもよい。
(正孔取り出し層)
正孔取り出し層102の材料に特に限定は無く、活性層103からアノード101への正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は本発明に係る有機無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物が挙げられる。また、有機化合物としては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及びヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー(例えば、PEDOT:PSS又はドーピングされたP3HT)、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、ナフィオン、又はリチウムドーピングされたspiro−OMeTADが挙げられる。
正孔取り出し層102の全体の膜厚に特に限定はないが、好ましくは0.5nm以上である。一方、好ましくは400nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。正孔取り出し層102の膜厚が0.5nm以上であることでバッファ材料としての機能をよく果たすことになり、正孔取り出し層102の膜厚が400nm以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上しうる。
正孔取り出し層102の形成方法に制限はない。昇華性を有する化合物を用いる場合は真空蒸着法等の乾式成膜法により形成することができる。また、溶媒に可溶な化合物を用いる場合は、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法により形成することができる。なお、溶媒としては、活性層103の形成方法の説明において挙げた溶媒を用いることができる。
(電子取り出し層)
電子取り出し層105の材料に特に限定は無く、活性層103からカソード107への電子の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は本発明に係る有機無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウム等のアルカリ金属の塩、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化インジウム等の金属酸化物が挙げられる。有機化合物としては、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、フラーレン化合物、又はホスフィンオキシド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の周期表第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。
電子取り出し層105の形成方法に特に制限はない。昇華性を有する化合物を材料として用いる場合は、真空蒸着法等の乾式成膜法により形成することができる。また、溶媒に可溶な化合物を材料として用いる場合は、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法により形成することができる。なお、溶媒としては、活性層103の形成方法の説明において挙げた溶媒を用いることができる。湿式成膜法を用いる場合の、電子取り出し層105の材料を含有する塗布液の塗布方法としては、任意の方法を用いることができる。例えば、スピンコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法及びカーテンコート法が挙げられる。また、塗布法として1種の方法のみを用いてもよいし、2種以上の方法を組み合わせて用いることもできる。
電子取り出し層105の全体の膜厚に特に限定はないが、好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。一方、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは700nm以下、より好ましくは400nm以下、特に好ましくは200nm以下である。電子取り出し層105の膜厚が上記の範囲内にあることで、均一な塗布が容易となり、電子取り出し機能もよく発揮されうる。
<4−3.電極(101,107)>
電極は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。したがって、一対の電極としては、正孔の捕集に適したアノード101と、電子の捕集に適したカソード107とを用いることが好ましい。一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、より多くの光が透明電極を透過して活性層103に到達するために好ましい。光の透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製U−4100)で測定できる。
アノード101及びカソード107の構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の部材及びその製造方法を使用することができる。
<4−4.仕事関数チューニング層(106)>
仕事関数チューニング層106は、アノード101又はカソード107の仕事関数を調整する。しかしながら、アノード101又はカソード107が適切に機能しうるのであれば、仕事関数チューニング層106を設ける必要はない。
仕事関数チューニング層106の種類は特に限定されず、公知のものを使用することができる。仕事関数チューニング層106の材料の例としては、ポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE)若しくは分岐ポリエチレンイミン(PEI)等のアミン系ポリマー若しくはオリゴマーが、塗布による成膜が容易な点で好ましい。この場合、有機溶媒への溶解性を上げる観点から、仕事関数チューニング層106の材料の分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは1000以上、特に好ましくは10000であり、一方で、好ましくは1000000以下、好ましくは500000以下であり、特に好ましくは200000以下である。
仕事関数チューニング層106の形成方法に制限はない。昇華性を有する化合物を用いる場合は真空蒸着法等の乾式成膜法により形成することができる。また、溶媒に可溶な化合物を用いる場合は、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法により形成することができる。なお、溶媒としては、活性層103の形成方法の説明において挙げた溶媒を用いることができる。
<4−5.絶縁体層(104)>
絶縁体層104は、直流電流を通さない絶縁体を含有する層のことを指す。このような絶縁体層を設けることにより、水分等の物質が活性層103に到達することを効果的に抑制することができる。その一方で、薄い絶縁体層を設けても光電変換素子100の機能は保たれる。これは、トンネル効果のために電子又は正孔であるキャリアが絶縁体層を透過するためであると考えられる。
絶縁体層104の位置は、活性層103と電子取り出し層105との間に限られるわけではない。光電変換素子100は、活性層103と電極(101,107)との間の別の位置に絶縁体層を有していてもよい。例えば、水分等が活性層103に到達することを抑制するように、活性層103と、水分が侵入しやすい面(例えばカソード107)との間に絶縁体層104を設けることができる。
絶縁体層104の材料に特に制限はないが、例えばフッ素樹脂又はケイ素樹脂を用いることができる。絶縁体層による防湿性を向上させる観点から、絶縁体層の厚さは、1.0nm以上であることが好ましく、5.0nm以上であることがさらに好ましく、10nm以上であることが特に好ましい。また、トンネル効果によるキャリアの移動を促進する観点から、絶縁体層の厚さは、30nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがさらに好ましく、20nm以下であることが特に好ましい。
<4−6.基材(108)>
光電変換素子100は、通常は支持体となる基材108を有する。もっとも、本発明に係る光電変換素子は基材108を有さなくてもよい。基材108の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されず、例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の材料を使用することができる。
<4−7.光電変換素子の作製方法>
上述の方法に従って、光電変換素子100を構成する各層を形成することにより、光電変換素子100を作製することができる。光電変換素子100を構成する各層の形成方法に特段の制限はなく、シートツゥーシート(万葉)方式、又はロールツゥーロール方式で形成することができる。
なお、ロールツゥーロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。ロールツゥーロール方式によれば、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、ロールツゥーロール方式はシートツゥーシート方式に比べて量産化に適している。一方、ロールツゥーロール方式で各層を成膜しようとすると、その構造上、成膜面とロールとが接触することにより膜に傷がついたり、部分的に剥がれてしまったりする場合がある。
ロールツゥーロール方式に用いることのできるロールの大きさは、ロールツゥーロール方式の製造装置で扱える限り特に限定されないが、外径の上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは1m以下である。一方、下限は好ましくは10cm以上、さらに好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。ロール芯の外径の上限は、好ましくは4m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは0.5m以下である。一方、下限は好ましくは1cm以上、さらに好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、特に好ましくは20cm以上である。これらの径が上記上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは各工程で成膜される層が曲げ応力により破壊される可能性が低くなる点で好ましい。ロールの幅の下限は、好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上である。一方、上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下である。幅が上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは光電変換素子100の大きさの自由度が高くなるため好ましい。
また、アノード101又はカソード107を積層した後に、光電変換素子100を好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上、一方、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことにより、光電変換素子100の各層間の密着性、例えば正孔取り出し層102とアノード101、正孔取り出し層102と活性層103等の層間の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。各層間の密着性が向上することにより、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、光電変換素子100に含まれる有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内において異なる温度を用いた段階的な加熱を行ってもよい。
加熱時間としては、熱分解を抑えながら密着性を向上させるために、好ましくは1分以上、さらに好ましくは3分以上、一方、好ましくは180分以下、さらに好ましくは60分以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、構成材料の熱酸化を防ぐ上でも、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。加熱方法としては、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に光電変換素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
<4−8.光電変換特性>
光電変換素子100の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子100にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cmで照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
光電変換素子100の光電変換効率は、特段の制限はないが、好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。また、光電変換素子100のフィルファクターは、特段の制限はないが、好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
また、光電変換素子を実用化するには、製造が簡便かつ安価であること以外に、高い光電変換効率及び高い耐久性を有することが重要である。この観点から、光電変換素子100を1週間大気暴露する前後での光電変換効率の耐久性は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、高ければ高いほどよい。光電変換効率の耐久性は、光電変換素子100を大気暴露する前後での光電変換効率に基づいて、以下のように算出することができる。
耐久性(%)=((大気暴露N時間後の光電変換効率)/(大気暴露直前の光電変換効率))×100
<5.太陽電池>
本発明に係る光電変換素子100は、太陽電池、なかでも薄膜太陽電池の太陽電池素子として使用されることが好ましい。図4は本発明の一実施形態に係る太陽電池の構成を模式的に表す断面図であり、図4には本発明の一実施形態に係る太陽電池である薄膜太陽電池が示されている。図4に表すように、本実施形態に係る薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10と、をこの順に備える。本実施形態に係る薄膜太陽電池14は、太陽電池素子6として、本発明に係る光電変換素子を有している。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図4中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、薄膜太陽電池14は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。
薄膜太陽電池を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
本発明に係る太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。例えば、一実施形態に係る太陽電池は、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池として用いることができる。
本発明に係る太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14はそのまま用いてもよいし、太陽電池モジュールの構成要素として用いられてもよい。例えば、図5に示すように、本発明に係る太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池14を基材12上に備える太陽電池モジュール13を作製し、この太陽電池モジュール13を使用場所に設置して用いることができる。基材12としては周知技術を用いることができ、例えば、基材12の材料としては国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012−191194号公報等に記載の材料を用いることができる。例えば、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に薄膜太陽電池14を設けることにより、太陽電池モジュール13として、建物の外壁用太陽電池パネルを作製することができる。
以下に、実施例により本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例には限定されない。
[実施例1]
(活性層塗布液の調製)
モル比が1:1:4となるようにヨウ化鉛(II)(211mg)、塩化鉛(II)(127mg)及びヨウ化メチルアンモニウム(CHNHI,291mg)をバイアルに量りとり、スルファミン酸(鉛化合物の総量(ヨウ化鉛(II)と塩化鉛(II)の合計量)に対して13mol%)及びN,N−ジメチルホルムアミド(2mL)を加えて混合液を得た。なお、メチルアンモニウムイオンのpKa値は10.6であった。次に、得られた混合液を70℃で2時間加熱撹拌した。その後、得られた溶液をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルター(孔径0.2μm)で濾過することにより、活性層塗布液を作製した。得られた活性層塗布液中での、ヨウ化鉛(II)、塩化鉛(II)とヨウ化メチルアンモニウムとの合計濃度は、25質量%であった。こうして作製された活性層塗布液を用いることにより、モル比1:1:2のヨウ化鉛(II)、塩化鉛(II)、及びヨウ化メチルアンモニウムで構成されるペロブスカイト半導体化合物(484mg)及びスルファミン酸を含む半導体層を形成できると考えられた。
(光電変換素子の作製)
パターニングされた酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜を備えるガラス基板(ジオマテック社製)に対して、洗浄剤(横浜油脂工業社製,精密ガラス基板用洗浄剤セミクリーンM−LO,15mL)を用いた超音波洗浄、超純水を用いた超音波洗浄、窒素ブローによる乾燥、及びUV−オゾン処理を行った。
次に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)分散液(PEDOT:PSS,ヘレウス社製)をオートバイアル(孔径0.45μm)でろ過した後、室温で、上記の基板上に3000rpmの速度でスピンコートすることにより、厚さ約35nmの正孔取り出し層を形成した。得られた基板を120℃で30分間加熱した。
次に、基板をグローブボックスに導入し、窒素雰囲気下115℃で20分間加熱処理した。冷却後、基板上に活性層塗布液(130μL)を4000rpmの速度でスピンコートすることにより、厚さ約120nmの層を形成し、さらにホットプレート上100℃で25分間加熱アニールした。以上のようにして、活性層を形成した。
次に、活性層上に、アモルファスフッ素樹脂ポリマー溶液CYTOP(旭硝子社製,0.4質量%に調製,0.05mL)を、6000rpmの回転下で添加することにより、絶縁体層を形成した。絶縁体層の厚さは5nmであった。
なお、CYTOPの特性は、体積抵抗率:>1017Ωcm(JIS K6911)、比誘電率:2.0〜2.1(100Hz〜1MHz,室温,JEC−6150)、屈折率:1.34(JIS K7142,25℃〜)、水接触角:110°、ガラス転移温度:108℃である。また200μm厚のCYTOPフィルムの可視光線透過率は95%である。さらに、100μm厚のCYTOPフィルムの水蒸気透過率は、0.2g/m(24時間)であった。
次に、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM,フロンティアカーボン社製,20mg)をクロロベンゼン(1mL)に溶解させた溶液を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルター(孔径0.2μm)で濾過した。得られた溶液(100μL)を活性層上に1000rpmの速度でスピンコートすることにより、厚さ約80nmの電子取り出し層を形成した。
次に、電子取り出し層上に、ポリエチレンイミンエトキシレート(PEIE)のメタノール溶液(0.2質量%,0.1mL)を、6000rpmの回転下で添加することにより、厚さ約10nmの仕事関数チューニング層を形成した。
次に、仕事関数チューニング層上に、抵抗加熱型真空蒸着法によりパターニングマスクを用いて厚さ約150nmの銀膜を蒸着させ、電極を形成した。こうして、25×30mm角の光電変換素子を作製した。
[実施例2]
活性層塗布液を調製する際に用いたスルファミン酸の量を鉛化合物の総量に対して17mol%としたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例3]
活性層塗布液を調製する際に用いたスルファミン酸の量を鉛化合物の総量に対して26mol%としたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例4]
活性層塗布液を調製する際に用いたスルファミン酸の量を鉛化合物の総量に対して34mol%としたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例5]
活性層塗布液を調製する際に用いたスルファミン酸の量を鉛化合物の総量に対して43mol%としたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例6]
活性層塗布液を調製する際に、スルファミン酸の代わりに酒石酸(鉛化合物の総量に対して8.3mol%)用いたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例7]
活性層塗布液を調製する際に、スルファミン酸の代わりにL−アルコルビン酸(鉛化合物の総量に対して17.6mol%)用いたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例8]
活性層塗布液を調製する際に、スルファミン酸の代わりにリンゴ酸(鉛化合物の総量に対して9.3mol%)用いたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例9]
活性層塗布液を調製する際に、スルファミン酸の代わりにクエン酸(鉛化合物の総量に対して16.1mol%)用いたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例10]
活性層塗布液を調製する際に、スルファミン酸の代わりにクエン酸(鉛化合物の総量に対して21.6mol%)用いたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[実施例11]
活性層塗布液を調整する際に、スルファミン酸の代わりにクエン酸(鉛化合物の層量に対して35.2mol%)を用いたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[比較例1]
活性層塗布液を調製する際に、スルファミン酸を加えなかったことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。
[比較例2]
活性層塗布液を調製する際に、スルファミン酸の代わりにヨウ化水素酸水溶液(54.0mol%水溶液,200μL)を加えたことを除き、実施例1と同様に光電変換素子を作製した。なお、ヨウ化水素酸の沸点は約−35℃であることを考慮すると、加熱の際にヨウ化水素酸は揮発してしまい、成膜後の活性層中には残らなかったものと考えられる。
[光電変換素子の評価]
実施例1〜11及び比較例1〜2で得られた光電変換素子に1mm角のメタルマスクを付け、ITO電極と銀電極との間における電流−電圧特性を測定した。測定にはソースメーター(ケイスレー社製,2400型)を用い、照射光源としてはエアマス(AM)1.5G、放射照度100mW/cmのソーラシミュレータを用いた。この測定結果から、開放電圧Voc(V)、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、形状因子FF、及び光電変換効率PCE(%)を算出した。光電変換素子を作製した直後の測定結果に基づいて算出されたこれらの値を表1に示す。
Figure 2017112185
表1において、pKaは、添加した化合物(中性化合物)からの1段階目の電離のpKa値を表す。
ここで、開放電圧Vocとは電流値=0(mA/cm)の際の電圧値であり、短絡電流密度Jscとは電圧値=0(V)の際の電流密度である。形状因子FFとは内部抵抗を表すファクターであり、最大出力をPmaxとすると次式で表される。
FF = Pmax/(Voc×Jsc)
また、光電変換効率PCEは、入射エネルギーをPinとすると次式で与えられる。
PCE = (Pmax/Pin)×100
= (Voc×Jsc×FF/Pin)×100
表1に示すように、活性層に添加剤が加えられている実施例1〜11では、短絡電流密度Jsc及び光電変換効率PCEが向上することが見いだされた。
なお、実施例11により得られた活性層の走査型電子顕微鏡により測定すると、比較例1により得られた活性層の結晶サイズよりも大きいことが確認できた。また、二次元X線回折により、実施例11の活性層は高い結晶配向を有していることが確認できた。この結果、添加剤を加えることで高い変換効率が得られていると考えられる。また、TOF−SIMSにより実施例11の活性層を測定すると、添加剤が一方に偏っていることが確認できた。この結果から、結晶成長中に添加剤が寄与していることと考えられる。
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 太陽電池素子
10 バックシート
12 基材
13 太陽電池モジュール
14 薄膜太陽電池
31 基材
32 陽極
33 正孔注入層
34 正孔輸送層
35 発光層
36 電子輸送層
37 電子注入層
38 陰極
39 電界発光素子
51 半導体層
52 絶縁体層
53,54 ソース電極及びドレイン電極
55 ゲート電極
56 基材
100 光電変換素子
101 アノード
102 正孔取り出し層
103 活性層
104 絶縁体層
105 電子取り出し層
106 仕事関数チューニング層
107 カソード
108 基材

Claims (8)

  1. 一対の電極と、前記一対の電極間に配置された半導体層と、を有する半導体デバイスであって、前記半導体層は、1価のカチオン、2価のカチオン及び1価のアニオンにより構成されるペロブスカイト半導体と、添加剤と、を含有し、前記添加剤は前記1価のカチオンのpKa値よりも低いpKa値を有する化合物であることを特徴とする、半導体デバイス。
  2. 前記化合物のpKa値が−5以上7以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
  3. 前記化合物が、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基又は無水カルボン酸基を有する化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体デバイス。
  4. 前記化合物の沸点が100℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
  5. 前記化合物の融点が100℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
  6. 光電変換素子であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体デバイス。
  7. 請求項6に記載の半導体デバイスを備える太陽電池。
  8. 請求項7に記載の太陽電池を備える太陽電池モジュール。
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