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JP2017106150A - ナノ繊維含有植物材料の製造方法 - Google Patents

ナノ繊維含有植物材料の製造方法 Download PDF

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JP2017106150A
JP2017106150A JP2016227508A JP2016227508A JP2017106150A JP 2017106150 A JP2017106150 A JP 2017106150A JP 2016227508 A JP2016227508 A JP 2016227508A JP 2016227508 A JP2016227508 A JP 2016227508A JP 2017106150 A JP2017106150 A JP 2017106150A
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JP2016227508A
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北野 宏樹
Hiroki Kitano
宏樹 北野
山口 晃生
Akio Yamaguchi
晃生 山口
義尚 土本
Yoshinao Tsuchimoto
義尚 土本
浩介 松井
Kosuke Matsui
浩介 松井
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Kitagawa Industries Co Ltd
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Kitagawa Industries Co Ltd
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Abstract

【課題】植物残渣からナノ繊維を含有する材料(ナノ繊維含有植物材料)を製造する方法の提供。【解決手段】植物残渣の粉砕物に、フィブリル化剤を含む処理溶液を含浸させる含浸工程S12と、含浸工程後の粉砕物を乾燥させる乾燥工程S13とを有し、含浸工程において、処理溶液中のフィブリル化剤の濃度が、33質量%以上であり、処理溶液の温度が、25℃以上であり、粉砕物に対する処理溶液の割合(質量比)は、2.5以上であり、フィブリル化剤が、リン酸アンモニウムであり、乾燥工程において、粉砕物の乾燥温度が25℃以上であり、植物残渣が、ナス科植物由来である、ナノ繊維含有植物材料の製造方法。【選択図】図2

Description

本発明は、ナノ繊維含有植物材料の製造方法に関する。
野菜等の植物栽培において、収穫後に残る茎や葉等の植物残渣の取り扱いが問題となっている。植物残渣の一部は、堆肥や家畜の飼料等として再利用されることもあるが、その多くは、産業廃棄物として処分されているのが実情である。そのため、植物残渣を資源として有効活用することが望まれている。このような事情の下、有効活用の一環として、植物残渣から、繊維を取り出すことが試みられている。
例えば、特許文献1には、収穫後のバナナの茎(仮茎)から、物理的解繊により、繊維を製造する方法が示されている。また、特許文献2には、テンサイ(砂糖大根)の搾りかすとして残るビートパルプから、化学的解繊により、繊維を製造する方法が示されている。
特開2004−52176号公報 特表平11−501684号公報
ところで、近年、植物残渣からナノサイズの繊維を製造することが望まれている。しかしながら、従来の解繊方法では、植物残渣から容易にナノサイズの繊維を取得することができず、問題となっていた。
例えば、物理的解繊によって植物残渣をナノサイズの繊維に解繊する場合、植物残渣をナノレベルまで細かくするための工程数が非常に多くなってしまう。例えば、ディスクミルを用いて植物残渣を解繊する場合、ディスクミルの砥石の間隔を徐々に狭くするために何度も変更する必要があった。
また、化学的解繊によって植物残渣をナノサイズの繊維に解繊する場合、苛性ソーダ液等のアルカリ溶液を処理液として使用することになるが、アルカリ溶液の廃液処理(中和処理等)が問題となっていた。
本発明の目的は、植物残渣からナノ繊維を含有する材料(ナノ繊維含有植物材料)を製造する方法を提供することである。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、植物残渣の粉砕物に、フィブリル化剤(例えば、リン酸アンモニウム)を含む処理溶液を含浸させた後、その粉砕物を乾燥させると、フィブリル化して粉砕物の表面にナノ繊維が現れることを見出し、本発明の完成に至った。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 植物残渣の粉砕物に、フィブリル化剤を含む処理溶液を含浸させる含浸工程と、
含浸工程後の前記粉砕物を乾燥させる乾燥工程とを有するナノ繊維含有植物材料の製造方法。
<2> 前記含浸工程において、前記処理溶液中の前記フィブリル化剤の濃度が、33質量%以上である前記<1>に記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
<3> 前記含浸工程において、前記処理溶液の温度が、25℃以上である前記<1>又は<2>に記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
<4> 前記含浸工程において、前記粉砕物に対する前記処理溶液の割合(質量比)は、2.5以上である前記<1>〜<3>の何れか1つに記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
<5> 前記含浸工程において、前記フィブリル化剤が、リン酸アンモニウムである前記<1>〜<4>の何れか1つに記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
<6> 前記乾燥工程において、前記粉砕物の乾燥温度が25℃以上である前記<1>〜<5>の何れか1つに記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
<7> 前記植物残渣が、ナス科植物由来である前記<1>〜<6>の何れか一項に記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
本願発明によれば、植物残渣からナノ繊維を含有する材料(ナノ繊維含有植物材料)を製造する方法を提供することができる。
粉砕物の製造工程の一例を示すフロー図 ナノ繊維含有植物材料の製造方法の一例を示すフロー図 ドリップ装置の構成を模式的に表した説明図 実施例1のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図 比較例1の植物材料のSEM画像を示す図 比較例2の植物材料のSEM画像を示す図 比較例3の植物材料(未処理の粉砕物)のSEM画像を示す図 実施例2のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図 実施例3のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図 実施例4のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図 実施例5のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図 比較例4の植物材料のSEM画像を示す図 実施例6のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図 実施例7のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図 実施例8のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図 実施例9のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図 実施例10のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図 実施例11のナノ繊維含有植物材料のSEM画像を示す図
〔ナノ繊維含有植物材料〕
ナノ繊維含有植物材料は、ナノサイズの繊維を少なくとも表面に有する植物残渣由来の植物材料である。
ナノ繊維含有植物材料に利用される植物残渣は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、ナス科植物の残渣が好ましい。
ナス科植物は、果実等の有用な部分が収穫された後に残された状態のものであり、主として、茎、葉、根等からなる。そのような状態のナス科植物から、植物原料として、茎、葉が利用される。なお、ナノ繊維含有植物材に利用されるナス科植物の部位としては、茎のみでも良いし、葉のみでも良いし、茎と葉の双方であっても良い。ただし、ナノ繊維含有植物材料に利用されるナス科植物の部位としては、特に茎が好ましい。
ナス科植物に由来する茎等の植物原料(以下、単に「植物原料」と称する場合がある)としては、植物中に含まれる水溶性成分が除去されたものが好ましい。植物中には、糖類(単糖類、二糖類、多糖類等)、植物酵素、アミノ酸等の有機成分、カリウム等の無機成分等の各種水溶性成分が含まれている。このような水溶性成分は、ナノ繊維含有植物材料が添加されている材料の変色等の原因となる場合があるため、植物原料から、除去することが好ましい。
植物原料から水溶性成分を除去する方法としては、例えば、水、アルコール等の水系溶媒に植物原料を浸漬又は植物原料を前記水系溶媒で洗浄して、植物原料から水溶性成分を抽出除去する方法、凍結乾燥(フリーズドライ)法等が挙げられる。なお、水溶性成分を除去した後の植物原料は、適宜、乾燥される。
後述するように、植物原料を水系溶媒中に浸漬した状態で解砕(粉砕)することで、解砕と同時に水溶性成分の抽出除去を行ってもよい。
また、ナス科植物としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、ナス科ナス属の植物が好ましく、ナス、トマトがより好ましく、トマトが特に好ましい。
ナノ繊維含有植物材料は、以下に示される本発明のナノ繊維含有植物材料の製造方法によって製造される。
〔ナノ繊維含有植物材料の製造方法〕
ナノ繊維含有植物材料の製造方法は、少なくとも以下に示される含浸工程と、乾燥工程とを有する。
(含浸工程)
含浸工程は、植物残渣の粉砕物に、フィブリル化剤を含む処理溶液を含浸させる工程である。
植物残渣の粉砕物は、上述したナス科植物等の植物原料(植物残渣)が、粉末状に粉砕されたものからなる。植物原料の粉砕方法としては、例えば、機械的な方法で、圧縮力、せん断力、摩擦力、衝撃力等を加えて、植物原料を粉砕する方法(機械的粉砕方法)、爆砕等が挙げられる。
なお、機械的粉砕方法では、例えば、高速回転ミル、各種ボールミル(転動ボールミル,振動ボールミル、遊星ボールミル)、媒体撹拌式ミル、気流式粉砕機等が利用される。
また、植物原料を、水等の水系溶媒中に浸漬した状態で、水中解砕装置(例えば、ホモジナイザー)を利用して、粉砕(解砕)してもよい。
植物原料の粉砕は、徐々に粒径が小さくなるように、複数の段階に分けて行ってもよい。例えば、茎等の植物原料を、数センチ程度の大きさに粗粉砕し、その粗粉砕物を更に、数百ミクロン程度まで粉砕(微粉砕)してもよい。
また、植物原料の粉砕により得られた粉砕物は、篩等を利用して、適宜、分級されてもよい。
含浸工程で使用する粉砕物の形状、粒径等は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、粉砕物の粒径(最大直径)は、1000μm以下が好ましく、600μm以下がより好ましい。
なお、植物原料及びその粉砕物に対して、電磁波、温度、圧力及び薬品を利用した殺菌処理を施してもよい。
ここで、粉砕物の製造方法の一例を、図1を参照しつつ説明する。図1は、粉砕物の製造工程の一例を示すフロー図である。
図1のS1に示されるように、茎(植物原料)の粗粉砕が行われる。その後、図1のS2に示されるように、得られた粗粉砕物が水中解砕される。水中解砕後に得られた解砕物は、図1のS3に示されるように、ろ過装置を利用してろ過され、残渣が回収される。回収された残渣は、図1のS4に示されるように、乾燥される。なお、図1のS2〜S4の工程は、複数回繰り返して行ってもよい。乾燥されたろ過残渣は、図1のS5に示されるように、更に細かく粉砕(微粉砕)される。その後、得られた粉砕物を、図1のS6に示されるように、篩い分け(分級)して、目的の粒径範囲の粉砕物が得られる(図1のS7参照)。
フィブリル化剤は、溶液(処理溶液)の状態で、植物残渣(植物原料)の粉砕物に含浸され、植物残渣の表面に、ナノサイズの繊維を形成させる(露出させる)ものである。
フィブリル化剤としては、例えば、リン酸アンモニウム等のリン酸塩が好ましい。なお、本発明の目的を損なわない限り、リン酸アンモニウム等以外の物質も、フィブリル化剤として使用してもよい。
フィブリル化剤を含む処理溶液に利用される溶媒としては、水、アルコール等の水系溶媒、有機溶媒等が挙げられ、特に、取り扱い性等の観点から、水系溶媒が好ましい。前記溶媒が、水系溶媒の場合、フィブリル化剤としては、リン酸アンモニウム等のリン酸塩が好ましい。フィブリル化剤は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種以上のものを用いてもよい。また、フィブリル化剤は、本発明の目的を損なわない限り、溶媒に対して可溶性であってもよいし、不溶性であってもよい。フィブリル化剤が不溶性の場合、溶媒中に均一に分散されるものが好ましい。
処理溶液中のフィブリル化剤の濃度は、例えば、33質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%が更に好ましい。なお、フィブリル化剤の濃度の上限値としては、特に制限はないが、例えば、フィブリル化剤が可溶性の場合、処理溶液が飽和状態又は過飽和状態となるまで、フィブリル化剤が溶媒に添加されても良い。
処理溶液には、本発明の目的を損なわない限り、フィブリル化剤以外の各種添加剤が添加されてもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、防腐剤、カーボンナノ材料(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等)、セラミックス、金属粉等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記添加剤が不溶性の場合は、溶媒中に分散等させれば良い。なお、添加剤を分散させる際、溶液中に適宜、適当な添加剤を加えて、溶媒の比重や粘度を調節してもよい。
植物残渣の粉砕物に、処理溶液を含浸させる方法としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限されず、例えば、処理溶液中に前記粉砕物を浸漬する方法や、後述するドリップ装置を用いる方法で含浸させてもよい。
なお、含浸工程において、処理溶液の温度は、25℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。処理溶液の温度の上限値は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、60℃以下が好ましい。
また、含浸工程において、植物残渣の粉砕物に対する処理溶液の割合(質量比)は、2.5以上が好ましく、4.0以上がより好ましく、5.0以上が更に好ましい。なお、植物残渣の粉砕物に対する処理溶液の割合(質量比)の上限値としては、8.5以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、7.5以下が更に好ましい。
(乾燥工程)
乾燥工程は、含浸工程後の粉砕物を乾燥させる工程である。処理溶液を含浸した粉砕物は、ヒータや、乾燥室等の公知の乾燥設備を利用して乾燥される。なお、本発明の目的を損なわない限り、自然乾燥によって乾燥させてもよい。
乾燥工程において、粉砕物の乾燥温度は、25℃以上が好ましい。なお、粉砕物の乾燥温度の上限値は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、65℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
また、乾燥工程において、粉砕物の乾燥温度は、含浸工程で使用される処理溶液の温度と同等に設定されることが好ましい。
ここで、ナノ繊維含有植物材料の製造方法の一例を、図2を参照しつつ説明する。図2は、ナノ繊維含有植物材料の製造方法の一例を示すフロー図である。
図2のS11に示されるように、フィブリル化剤(リン酸アンモニウム)を溶媒に溶解させて処理溶液が作製される。次いで、図2のS12に示されるように、別途、用意された植物残渣の粉砕物(例えば、図1参照)を、処理溶液に含浸させる(含浸工程の一例)。含浸後の粉砕物は、図2のS13に示されるように、乾燥され(乾燥工程の一例)、溶媒が除去される。乾燥後、ナノ繊維含有植物材料が得られる(図2のS14参照)。
なお、本発明の目的を損なわない限り、他のナノ繊維含有植物材料の製造方法においては、粗粉砕の状態で、処理溶液を用いた含浸工程、乾燥工程を行い、その後、必要に応じて適宜、粉砕処理を施すことで、ナノ繊維含有植物材料を得ても良い。
以上のような、本発明の製造方法により得られたナノ繊維含有植物材料の表面には、ナノサイズの繊維が形成されている。これは、ナノ繊維含有植物材料の製造過程において、植物原料(植物残渣の粉砕物)の表面からナノサイズの繊維がせり出した)ものと推測される。
なお、最終的に得られるナノ繊維含有植物材料は、通常、粉末状であり、サブミクロンオーダー程度の粉末からなる。そのため、ナノ繊維含有植物材料は、例えば、完全にナノ化された植物材料と比べて、乾燥後の凝集が少なく、取扱性に優れると言える。なお、本発明の目的を損なわない限り、ナノ繊維含有植物材料の形態、大きさ等は、特に制限はない。
ナノ繊維含有植物材料は、例えば、プラスチック、セラミックス等の他の材料中に添加されて、様々な機能(例えば、機械的強度の向上)を付与するために利用される。ナノ繊維含有植物材料は、表面にナノ繊維が多数形成されているため、他の材料(例えば、樹脂)との混合時に、ナノ繊維がアンカー効果的に作用し、他の材料との混合性等を向上させることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<粉砕物の作製>
実の収穫を終えたトマト(ナス科植物の一例)の茎を、粗粉砕装置(スーパーミキサー、リョービ株式会社製)を利用して、1500rpm及び15分間の条件で、1cm程度の大きさに切断及び粉砕し、茎の粗粉砕物を得た。次いで、得られた粗粉砕物(500g)を、水(2リットル)中に入れ、ホモジナイザーを利用して2分間水中解砕した後、ろ過した。ろ過したもの(ろ過残渣)に対し再び同様に水中解砕処理を2回繰り返し、計3回の水中解砕を行った。
その後、最終的に得られた残渣に対して、乾燥処理を行った。なお、乾燥処理は、二段階で行った。先ず一段階目の乾燥処理は、温度を130℃、時間を8時間に設定して、殺菌も目的として行った。二段階目の乾燥処理は、温度を105℃、時間を12時間に設定して行った。
乾燥処理後のろ過残渣を、微粉砕装置(ホモジナイザー、大阪ケミカル株式会社製)を利用して、500μm程度に粉砕し、粉砕物を得た。その後、粉砕物を篩い分け装置により、篩い分けして、500μm以下の粉砕物を得た。
<リン酸アンモニウム溶液(処理溶液)の作製>
リン酸アンモニウムに水を加えて、リン酸アンモニウム水溶液(リン酸アンモニウム濃度:40質量%)を作製した。
<粉砕物のフィブリル化(ナノ繊維含有植物材料の製造)>
図3に示されるドリップ装置10を利用して、トマト残渣の粉砕物に、リン酸アンモニウム水溶液(40質量%)を含浸させた。ここで、先ずドリップ装置10について説明する。
ドリップ装置10は、所謂コーヒードリッパーとして市販されているものであり、主として、ホルダ部11、ドリップ部12、フィルタ13、及びろ液回収容器14より構成されている。ホルダ部11は、フィルタ13が設置される部分であり、円錐を逆さにしたような上方に開口した漏斗のような形をなしている。なお、フィルタ13は、円錐を逆さにしたような上方に開口したろ紙からなる。ドリップ部12は、ホルダ部11の下部に配置し、ホルダ部11内の液体を下方へ滴下させるための貫通孔(不図示)を備えている。ろ液回収容器14は、ドリップ部12より滴下する液体を下方から受ける形で回収する容器である。なお、ホルダ部11は、ろ液回収容器14の上部に図示されない固定部材を利用して固定される。
続いて、ドリップ装置10を利用して、粉砕物にリン酸アンモニウム水溶液を含浸させる方法を説明する。先ず、ホルダ部11内にフィルタ13を設置し、そのフィルタ13内に、粉砕物3(1.02g)を入れた。次いで、リン酸アンモニウム水溶液(40質量%)15(5.01g)を、フィルタ13内に注ぎ入れて、粉砕物3をリン酸アンモニウム水溶液15に浸漬させた。その後、リン酸アンモニウム水溶液15の滴下が終わるまで約3分間放置した。
滴下が終了した後、フィルタ13内の粉砕物3を回収し、乾燥温度30℃の条件で、粉砕物3を乾燥させた。このようにして、粉砕物3にリン酸アンモニウム水溶液を含浸させることで、実施例1のナノ繊維含有植物材料を得た。
(比較例1)
リン酸アンモニウム水溶液(リン酸アンモニウム濃度:40質量%)に代えて、純水を利用しつつ、含浸処理条件を表1に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、トマト残渣の粉砕物のフィブリル化(粉砕物を純水に含浸等)を行って、比較例1の植物材料を得た。
(比較例2)
リン酸アンモニウム水溶液(リン酸アンモニウム濃度:40質量%)に代えて、リン酸二ナトリウム水溶液(リン酸二ナトリウム濃度:40質量%)を用いつつ、含浸工程をドリップ工程に代えて、浸漬工程(5分間浸漬)に変更等すること以外は、実施例1と同様にして、トマト残渣の粉砕物のフィブリル化を行って、比較例2の植物材料を得た。
(ナノ繊維形成の確認(フィブリル化の確認))
実施例1及び比較例1,2で得られた各植物材料の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を利用して観察し、以下に示される評価基準(目視による6段階評価)に従って、各植物材料のフィブリル化(ナノ繊維の形成)を評価した。実施例1のSEM画像は、図4に示し、比較例1のSEM画像は、図5に示し、比較例2のSEM画像は、図6に示した。また、それらの評価結果は、表1に示した。なお、各SEM画像の拡大倍率は、5万倍である(以降の実施例、比較例のSEM画像も同様である)。
<評価基準>
「◎」:材料表面のフィブリル化が7割以上の場合
「○」:材料表面のフィブリル化が6割以上7割未満の場合
「△」:材料表面のフィブリル化が4割以上6割未満の場合
「×」:材料表面のフィブリル化が0〜3割の場合
(比較例3)
フィブリル化処理されていない状態の粉砕物についても、実施例1と同様に、表面をSEMで観察し、フィブリル化の評価を行った。比較例3のSEM画像は、図7に示し、評価結果は、表1に示した。
Figure 2017106150
図1のSEM画像に示されるように、実施例1のナノ繊維含有植物材料の表面には、ナノサイズの繊維が存在していることが確かめられた。これに対し、何も処理を施していないトマト残渣の粉砕物(比較例3)や、純水のみで処理を施した植物材料(比較例1)では、材料表面において、ナノサイズの繊維を殆ど確認することができなかった。また、処理溶液としてリン酸二ナトリウム溶液を用いた場合(比較例2)についても、植物材料の表面にナノサイズの繊維を殆ど確認することができなかった。
(実施例2〜5及び比較例4)
フィブリル化処理における含浸工程の室内温度、溶液温度、及び含浸工程後の乾燥工程の温度等を、表2に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、微粉砕物のフィブリル化を行って、実施例2〜5及び比較例4の植物材料を得た。
実施例2〜5及び比較例4の各植物由来材料の表面を、実施例1と同様にして、SEMで観察し、各植物材料のフィブリル化(ナノ繊維の形成)を評価した。実施例2のSEM画像は、図8に示し、実施例3のSEM画像は、図9に示し、実施例4のSEM画像は、図10に示し、実施例5のSEM画像は、図11に示し、比較例4のSEM画像は、図12に示した。評価結果は、表2に示した。なお、表2には、実施例1の内容及び結果も示した。
Figure 2017106150
図8〜12、及び表2に示されるように、含浸工程における溶液温度が30℃、40℃、49.2℃及び59.2℃の場合に、トマト残渣の粉砕物表面に、ナノサイズの繊維が形成されることが確かめられた。なお、含浸工程における溶液温度が25.3℃の場合、上述した30〜59.2℃の場合よりは少ないものの、トマト残渣の粉砕物表面に、ナノサイズの繊維が形成されることが確かめられた。これに対し、含浸工程における溶液温度が20.9℃の場合、植物材料の表面にナノサイズの繊維が形成されないことが確かめられた。
(実施例6,7及び比較例5)
フィブリル化処理におけるリン酸アンモニウム水溶液の使用量等を、表3に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、トマト残渣の粉砕物のフィブリル化を行って、実施例6,7及び比較例5の植物材料を得た。
実施例6,7及び比較例5の各植物材料の表面を、実施例1と同様にして、SEMで観察し、各植物材料のフィブリル化(ナノ繊維の形成)を評価した。評価結果は、表3に示した。実施例6のSEM画像は、図13に示し、実施例7のSEM画像は、図14に示した。なお、表3には、実施例1の内容及び結果も示した。
Figure 2017106150
表3に示されるように、含浸工程における処理溶液の使用量が2.50g(粉砕物に対する処理溶液の割合(質量比)が、約2.5)の場合、評価結果は「△」(目視で、材料表面のフィブリル化が4割以上6割未満の場合)であったものの、植物材料の表面の半分以上は、フィブリル化されることが確かめられた(図13参照)。なお、含浸工程における処理溶液の使用量が7.50g(粉砕物に対する処理溶液の割合(質量比)が、7.5)の場合(実施例7)は、植物材料の表面の7割以上がフィブリル化されている(図14参照)。
また、含浸工程における処理溶液の使用量が10.0g(粉砕物に対する処理溶液の割合(質量比)が、約10)の場合(比較例5)、植物材料の表面には、殆どナノサイズの繊維が現れない結果となった。
(実施例8及び比較例6,7)
リン酸アンモニウム水溶液の濃度、及びフィブリル化処理におけるリン酸アンモニウム水溶液の使用量等を、表4に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、トマト残渣の粉砕物のフィブリル化を行って、実施例8及び比較例5,6の植物材料を得た。
実施例8及び比較例6,7の各植物材料の表面を、実施例1と同様にして、SEMで観察し、各植物由来材料のフィブリル化(ナノ繊維の形成)を評価した。実施例8のSEM画像は、図15に示した。評価結果は、表4に示した。なお、表4には、実施例1の内容及び結果も示した。
Figure 2017106150
表4に示されるように、処理液の濃度が35.0質量%の場合(実施例8)、植物材料の表面の7割以上がフィブリル化されている(図15参照)。これに対し、処理液の濃度が20.0質量%、及び30.0質量%の場合(比較例6,7)、植物材料の表面に殆どナノレベルの繊維を確認することができなかった。
(実施例9〜11)
リン酸アンモニウム水溶液に使用する溶媒等を、表5に示されるものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、トマト残渣の粉砕物のフィブリル化を行って、実施例9〜11の植物材料を得た。
実施例9〜11の各植物材料の表面を、実施例1と同様にして、SEMで観察し、各植物材料のフィブリル化(ナノ繊維の形成)を評価した。実施例9のSEM画像は、図16に示し、実施例10のSEM画像は、図17に示し、実施例11のSEM画像は、図18に示した。評価結果は、表5に示した。なお、表5中の「水道水1」(実施例9)は、北川工業株式会社(愛知県春日井市明知町字頓明1423番地101)内に設置されている水道から採取した水であり、「水道水2」(実施例10)は、国立大学法人信州大学工学部(長野県長野市若里四丁目17番1号)内に設置されている水道から採取した水である。
Figure 2017106150
表5に示されるように、処理溶液(リン酸アンモニウム水溶液)の溶媒として、水道水1,2、及び純水の何れを使用しても、植物材料の表面に形成されるナノ繊維の量に違いがないことが確認された(図16〜18参照)。
3…植物材料、10…ドリップ装置、11…ホルダ部、12…ドリップ部、13…フィルタ、14…ろ液回収容器、15…リン酸アンモニウム水溶液(処理溶液)

Claims (7)

  1. 植物残渣の粉砕物に、フィブリル化剤を含む処理溶液を含浸させる含浸工程と、
    含浸工程後の前記粉砕物を乾燥させる乾燥工程とを有するナノ繊維含有植物材料の製造方法。
  2. 前記含浸工程において、前記処理溶液中の前記フィブリル化剤の濃度が、33質量%以上である請求項1に記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
  3. 前記含浸工程において、前記処理溶液の温度が、25℃以上である請求項1又は2に記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
  4. 前記含浸工程において、前記粉砕物に対する前記処理溶液の割合(質量比)は、2.5以上である請求項1〜3の何れか一項に記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
  5. 前記含浸工程において、前記フィブリル化剤が、リン酸アンモニウムである請求項1〜4の何れか一項に記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
  6. 前記乾燥工程において、前記粉砕物の乾燥温度が25℃以上である請求項1〜5の何れか一項に記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
  7. 前記植物残渣が、ナス科植物由来である請求項1〜6の何れか一項に記載のナノ繊維含有植物材料の製造方法。
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JPH11501684A (ja) * 1995-02-08 1999-02-09 ジェネラール スクリエール ミクロフィブリル化セルロース及び一次壁植物パルプ、特にビートパルプからのその製造方法
WO2010106844A1 (ja) * 2009-03-18 2010-09-23 コニカミノルタオプト株式会社 太陽熱発電用反射鏡

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