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JP2017102107A - 光ファイバ装置及びセンサシステム - Google Patents

光ファイバ装置及びセンサシステム Download PDF

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Abstract

【課題】コンパクトなセンサ部を備えた光ファイバ装置及びこの光ファイバ装置を備えたセンサシステムを提供する。【解決手段】光ファイバ装置は、シングルモードのレーザ光を伝搬させる光ファイバ(21)と、この光ファイバ(21)の端部に設けて光ファイバ内を伝搬されてきたレーザ光を反射させるセンサ部(22)とを有し、センサ部(22)は、光ファイバ(21)のコアと同一材料であって、光ファイバ(21)のコアよりも太径の円柱状とし、センサ部(22)の先端側には、光ファイバ(21)からセンサ部(22)に入射されて入射方向に伝搬する第1の光を反射させて第1の反射光を生じさせる第1の反射面(22a)と、光ファイバ(21)からセンサ部(22)に入射された際に入射方向から所定の角度の方向に伝搬する第2の光を反射させて第2の反射光を生じさせる第2の反射面(22b)を設ける。【選択図】図1

Description

本発明は、光ファイバ装置及びセンサシステムに関する。
本発明者は、光ファイバをセンサとして用いたセンサシステムとして、クラッドを設けないことで光ファイバのコアをむき出しとしてセンサ部を形成し、このセンサ部の一方端には入射光用の第1の光ファイバを接続し、センサ部の他方端には出射光用の第2の光ファイバを接続して使用するセンサシステムを提案した。このセンサシステムでは、第1の光ファイバからセンサ部に入射された光のうち、センサ部の外周面で全反射させた後に第2の光ファイバに入射させる光と、センサ部で全反射させることなくそのまま第2の光ファイバに入射させる光とで干渉光を生じさせ、光の波長を変えながら干渉光の変動を検出することでセンサ部に接触した被検体の屈折率を測定可能としている(例えば、特許文献1参照。)。
上記のセンサシステムでは、センサ部を通過した光を受光するためには、第2の光ファイバで受光器まで導く必要があり、2本の光ファイバの取り回しが必要であって、使用形態によっては光ファイバの取り回しが困難なことがあった。
そこで、センサ部において第1の光ファイバから入射された光を反射させて、第1の光ファイバに出射させることを検討した。すなわち、通常では第2の光ファイバを接続するセンサ部の端部に金膜を形成して反射鏡とし、この反射鏡でセンサ部に入射された光を反射させて第1の光ファイバに出射させることした(例えば、非特許文献1参照。)。
特開2012−251963号公報
Jpn. J. Appl. Phys. 53 04EG05, 1-4, 2014
上述したセンサ部に反射鏡を設けたセンサシステムは、センサ部への入射光とセンサ部からの出射光とを同一の光ファイバを介して導けるため、取り扱い性が極めて高いセンサシステムとすることができたが、屈折率の計測が可能な干渉光を得るためには、センサ部を比較的長くする必要があった。具体的には、センサ部の長さは、125μmのファイバ径に対して36.3mmとする必要があり、センサ部はファイバ径の寸法と比較して極めて長い形状とする必要があった。ここで、センサ部に入射させる光はマルチモードであって、光ファイバもマルチモード用のファイバを用いている。
本発明者は、センサ部をより短くすることができないか検討し、研究を重ねた結果、本発明を成すに至ったものである。
本発明の光ファイバ装置は、シングルモードのレーザ光を伝搬させる光ファイバと、この光ファイバの端部に設けて光ファイバ内を伝搬されてきたレーザ光を反射させるセンサ部とを有する光ファイバ装置であって、センサ部は、光ファイバのコアと同一材料であって、光ファイバのコアよりも太径の円柱状とし、センサ部の先端側には、光ファイバからセンサ部に入射されて入射方向に伝搬する第1の光を反射させる第1の反射面と、光ファイバからセンサ部に入射された際に入射方向から所定の角度の方向に伝搬する第2の光を反射させる第2の反射面を設けている光ファイバ装置とした。
さらに、本発明の光ファイバ装置では、以下の点にも特徴を有するものである。
(1)第2の反射面で反射するまたは反射した第2の光は、センサ部の外周面で少なくとも1回以上全反射していること。
(2)センサ部の先端側の中央部分に平面状の第1の反射面を設け、この第1の反射面の周囲に第2の反射面を設けていること。
(3)センサ部の入射方向の長さを1mm以下としていること。
(4)センサ部の外側を金属膜で被覆していること。
(5)金属膜がチタン製または酸化チタン製であること。
(6)金属膜の厚さが300 nm以下であること。
(7)センサ部の外側を誘電性膜または有機膜で被覆していること。
(8)センサ部と、このセンサ部を被覆した膜の屈折率が異なり、かつ、センサ部を被覆した膜は、第1の反射面近傍でのレーザ光に対する膜の垂直成分の反射率を、第1の反射面でのレーザ光の反射によって生成される干渉信号を消失させない反射率としていること。
(9)センサ部を被覆した膜の屈折率を、この膜と接する物質の屈折率と等しくしていること。
(10)センサ部を被覆した膜をフッ素樹脂またはフッ素化アクリル樹脂で形成していること。
(11)センサ部に入射させるレーザ光の波長を、センサ部の先端を透過する波長として、透過したレーザ光による発熱を生じさせること。
(12)センサ部に、センサ部の先端を透過する波長のレーザ光と、このレーザ光と異なる波長であって、第1と第2の反射面でそれぞれ反射するレーザ光とを入射させていること。
また、本発明のセンサシステムでは、シングルモードのレーザ光を出射する投光器と、レーザ光が入射されることで第1の反射光と第2の反射光を生じさせる光ファイバ装置と、光ファイバ装置から出射された第1の反射光と第2の反射光の干渉光を受光する受光器と、受光器から出力された信号を解析する解析器とを備えたとしているものである。
特に、光ファイバ装置は、シングルモードのレーザ光を伝搬させる光ファイバと、この光ファイバの端部に設けて光ファイバ内を伝搬されてきたレーザ光を反射させるセンサ部とを有し、センサ部は、光ファイバのコアと同一材料であって、光ファイバのコアよりも太径の円柱状とし、センサ部の先端側には、光ファイバからセンサ部に入射されて入射方向に伝搬する第1の光を反射させて第1の反射光を生じさせる第1の反射面と、光ファイバからセンサ部に入射された際に入射方向から所定の角度の方向に伝搬する第2の光を反射させて第2の反射光を生じさせる第2の反射面を設けているものである。
本発明によれば、シングルモードのレーザ光を伝搬させる光ファイバと、この光ファイバの端部に設けて光ファイバ内を伝搬されてきたレーザ光を反射させるセンサ部とを有する光ファイバ装置として、光ファイバからセンサ部に入射されることにより所定の広がり角をもって伝搬する光のうち、入射方向に伝搬する第1の光を反射させて第1の反射光を生じさせる第1の反射面と、入射方向から所定の角度の方向に伝搬する第2の光を反射させて第2の反射光を生じさせる第2の反射面を設けていることで、入射光の広がり角を利用して2種類の反射光を生じさせることができ、この二種類の反射光を利用して干渉光を生じさせることができる。
しかも、第2の反射光は、第2の反射面の向きを調整することで、効果的にセンサ部の外周面で全反射させる光路を設定しやすく、センサ部の入射方向の長さを短くすることができ、よりコンパクトなセンサ部を備えた光ファイバ装置とすることができる。
本発明に係るセンサシステムの概略模式図である。 本発明に係る光ファイバ装置の概略模式図である。 空気と接したファイバ装置から得られた干渉スペクトルのグラフである。 水とエタノールの混合液に接したファイバ装置から得られた干渉スペクトルのグラフである。 水とエタノールの混合液の屈折率と波長シフト量との関係を示すグラフである。 水とエタノールの混合液に接したファイバ装置から得られた干渉スペクトルのグラフである。 水とエタノールの混合液の屈折率と波長シフト量との関係を示すグラフである。 水中での温度における波長シフトを示すグラフである。 ディップ波長の温度依存性を示すグラフである。 ディップ波長の温度依存性を示すグラフである。 センサ部をヒーターとして用い、入射光パワーに対する温度上昇のグラフである。
<第1実施形態>
以下において、本発明の第1実施形態について説明する。
本発明のセンサシステムでは、図1に概略模式図で示すように、シングルモードのレーザ光を出射する投光器10と、レーザ光が入射されることで第1の反射光と第2の反射光を生じさせる光ファイバ装置20と、光ファイバ装置20から出射された第1の反射光と第2の反射光の干渉光を受光する受光器30と、受光器30から出力された信号を解析する解析器40とを備えたとしているものである。
投光器10では、出射する光の波長を調整可能としており、解析器40による制御に基づいて所定の波長の光を出射することとしている。
光ファイバ装置20は、後述するように、光ファイバ21とセンサ部22とで構成している。特に、光ファイバ21の中途部分には、光の進行方向によって結合するポートが異なるファイバ型光サーキュレータ23を設けている。光サーキュレータ23は、投光器10から出射されたレーザ光を光ファイバ装置20へ導光し、光ファイバ装置20で生じさせた第1の反射光と第2の反射光の干渉光を、光サーキュレータ23を介して受光器30に入射させている。
受光器30は、光ファイバ装置20で生じさせた第1の反射光と第2の反射光の干渉光を受光して、干渉光の明度を検出し、所定の検出信号として解析器40に入力している。
解析器40は、本実施形態ではパーソナルコンピュータで構成し、投光器10から照射する光の波長を変えながら受光器30の出力信号を検出して、後述するように波長シフト量を検出することで屈折率を計測することとしている。本実施形態では、解析器40はパーソナルコンピュータで構成しているが、専用の処理を実行する装置を構築してもよい。また、投光器10からの照射光は広波長帯域の光とし、受光器30を波長に分解(分光)して各波長における光強度を計測できる光スペクトラムアナライザとしても同様に波長シフト量を検出することができる。
本発明の光ファイバ装置20は、図2に示すように、シングルモードのレーザ光を伝搬させる光ファイバ21と、この光ファイバ21の端部に設けて光ファイバ内を伝搬されてきたレーザ光を反射させるセンサ部22とで構成している。
センサ部22は、光ファイバ21のコアと同一材料であって、光ファイバ21のコアよりも太径の円柱状としている。本実施形態では、光ファイバ21は、コア径が8.2μmで、クラッド径が125μmであり、センサ部22は、直径125μmの円柱状としている。
センサ部22の先端側には、光ファイバ21からセンサ部22に入射されて入射方向に伝搬する第1の光を反射させて第1の反射光を生じさせる第1の反射面22aと、光ファイバ21からセンサ部22に入射された際に入射方向から所定の角度の方向に伝搬する第2の光を反射させて第2の反射光を生じさせる第2の反射面22bを設けている。
第1の反射面22aは、光ファイバ21からセンサ部22に入射された光の入射方向と直行する平面として、センサ部22の先端側の中央部分に設けている。
第2の反射面22bは、第1の反射面22aの周囲に設けており、本実施形態では、丸みを帯びた略球面形状としている。この略球面形状は、センサ部22の先端側端部を融解させることで形成している。なお、第2の反射面22bは略球面形状に限定するものではなく、後述する光学的条件を満たすように形状を調整可能であれば、第1の反射面22aと所定の角度を成す傾斜面としてもよい。
ここで、センサ部22には、以下のような光学的条件がある。
まず、光ファイバ21からセンサ部22に入射されたシングルモードの光は広がり角をもってセンサ部22内を伝搬し、1mm程度以下の伝搬長でセンサ部22の径寸法よりも広がることとなっている。このセンサ部22内での光の広がりは、波長λにおける光のスポットサイズw0のガウシアンビームで近似でき、センサ部22の屈折率をnとすると、広がり角θは、
θ=tan-1(λ/nπw0
として表される。
光ファイバ21からセンサ部22に入射された光であって、広がり角をもってセンサ部22内を伝搬する光は、図2に示すように、第2の反射面22bに到達する前に少なくとも1回はセンサ部22において反射した光としている。説明の便宜上、第2の反射面22bに到達する前にセンサ部22で生じる反射の反射面を「第3の反射面」と呼ぶ。
さらに、第2の反射面22bで反射した後に、再度、第3の反射面で反射させて、光ファイバ21のコア部分に集光させることとしている。第3の反射面での反射は、全反射となっている。
本実施例では、センサ部22を直径125μmの円柱状としていることから、センサ部22の入射方向の長さL=0.81 mmとしている。センサ部22の長さLと、そのときの第2の反射面22bの形状は、第2の反射面22bからの反射成分がちょうど光ファイバ21のコア部分に戻る条件とすることが重要である。
上述したように、光ファイバ21のコアからの垂直反射成分が生じるように、センサ部22の先端部分に設けた第1の反射面22aは、先端部分の中央であって、平坦としているため、センサ部22の先端部分は単純な先球構造とはしていない。
このように、第2の反射面22bで反射した光は、第1の反射面22aで反射した光とは異なり、センサ部22の外周面である第3の反射面で全反射するが、全反射点においてエバネッセント波となっている。したがって、第2の反射面22bで反射した光は、第3の反射面の周囲の外部物質の屈折率の影響を受けて位相が変化するため、第1の反射面22aで反射した光との位相差が生じることで干渉を起すこととなっている。
図3は、センサ部22が空気と接した状態での干渉スペクトルのグラフである。2光波による周期的な干渉が見られている。
純水とエタノールとの混合液は、純水とエタノールの混合比を調整することで屈折率が変わることが知られており、具体的には、純水に対するエタノールの重量混合比を0〜99.5%まで9.95%刻みで変えることで、屈折率は1.3326〜1.3643まで変化する。
図4は、エタノール混合比を約20%づつ増大させた時のスペクトルの変化を示している。スペクトルがエタノールの濃度増大(屈折率の増大)と共に、長波長側にシフトしていることがわかる。
この屈折率変化に対するスペクトルのディップ波長の変化量を、周囲が純水の場合を基準(0)とし、縦軸に波長シフト量としてプロットしたものを図5に示す。屈折率変化に対して波長が線形的に増大しており、この傾きで与えられる感度は139 nm/RIU(RIUはRefractive Index Unitの略)であった。非特許文献1に示されている金膜の反射鏡を用いた場合では147 nm/RIUであって、遜色ない値が得られている。特に、非特許文献1に示されている金膜の反射鏡を用いた場合ではセンサ長が36.3 mmであり、本実施例では、約45分の1の0.81 mmのセンサ長で同等の感度が得られている。
上述した実施形態では、センサ部22には何の被覆も施していないが、各種の被覆を施すことで性能向上を果たすことができる。
図6は、センサ部22に100 nmのチタン膜を形成した場合において、エタノール混合比を約20%づつ増大させた際のスペクトルの変化を示している。
注目すべき点の1つは、チタン膜の無い場合では、図4に示したように、屈折率の増大と共に、スペクトルの山谷の深さが顕著に浅くなっていくが、チタン膜がある場合は、図6に示すように、屈折率が増大しても、スペクトルの山谷の深さが十分大きな状況に維持できることである。このことは、センサ部22をチタン膜等の適宜の金属膜で被覆することで、さらに大きな屈折率の測定まで可能となることを意味する。
この金属膜による被覆の効果は、金属膜の形成によって垂直成分の光の反射率が増大できているためと考えられる。
注目すべき2つ目の点は、チタン膜の形成により波長のシフト量が大きくなることである。
図7は、センサ部22に100 nmのチタン膜を形成した場合と、センサ部22に150 nmのチタン膜を形成した場合のエタノールの濃度増大(屈折率の増大)に対する波長のシフト量をプロットしたものである。比較のために,チタン膜を設けていない場合も表示している。
図7に示すように、チタン膜が厚くなると共に、波長のシフト量が明瞭に大きくなっている。図7において、各データの示す傾きで与えられる感度は、チタン膜が無い場合に139 nm/RIUであるのに対して、100 nmのチタン膜を形成した場合は229 nm/RIU、150 nmのチタン膜を形成した場合は312 nm/RIUであり、チタン膜の増大と共に感度が大幅に大きくなっている。
チタン薄膜を150 nmとした場合の感度は、チタン薄膜が無い場合の感度より2.2倍増大しており、非特許文献1に示されている金膜の反射鏡を用いた場合の感度(147 nm/RIU)と比べても2倍以上となっている。
このようなチタン膜による感度の向上効果は、チタン膜により全反射時のエバネッセント波の浸み出しが大きくなって、外部の屈折率変化に対して光路長の変化が大きくなるためと考えているが、詳細は今後の研究で明らかにする必要がある。
なお、センサ部22はチタン膜で被覆する場合だけでなく、Si,Ni,Auなどの他の金属膜や、SiNx,TiO2,Al2O3などの窒化膜や酸化膜などの薄膜の他、有機薄膜などでも同様の効果が得られる。
上述した実施形態は、屈折率センサとして利用することを想定しているが、例えば、後述するようにセンサ部22を温度によって屈折率が変化する材料で被覆することで、屈折率変化と温度変化を関連づけることが可能であり、温度センサとして利用できる。
また、被覆材の屈折率が圧力によって変化するものとすれば、屈折率変化と圧力変化を関連づけることが可能であり、圧力センサとして利用できる。同様に、屈折率と物理量が関連する材料を被覆することにより、各種センサとして応用できることが可能である。
なお、上述した第1実施形態では、センサ部22は、光ファイバ21のコアと同一材料としているが、一方の材料中に多少の不純物が添加されていても上述の特性への影響はほぼなく、上述した特性を損なわない程度の不純物の添加は許容範囲であって、その場合も同一材料と見なす。
<第2実施形態>
以下において、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、センサ部22を温度によって屈折率が変化する材料で被覆することで、屈折率変化と温度変化を関連づけ、温度センサとして利用するものである。
その一例として、センサ部22の表面にチタン皮膜を形成し、さらにフッ素化アクリル樹脂で被覆して、温度センサとするものである。チタン皮膜の厚さは150 nmとし、水中において温度を変化させた時の測定結果を図8に示す。
ここで、センサ部22を被覆する被覆膜は、以下の3つの要件を満たすことが望ましい。
第1の要件は、センサ部22のファイバの屈折率と、被覆膜の屈折率の差が適度な大きさで異なっていることである。ここで、適度な大きさとは、センサ部22のファイバと被覆膜との界面でのレーザ光の透過率が10%以下となる屈折率の組み合わせをすることである。
さらに、第2の要件は、センサ部22の第1の反射面22a近傍での垂直成分の被覆膜のレーザ光に対する反射率が、第1の反射面22aでのレーザ光の反射によって生成される干渉信号を消失させない反射率とすることである。すなわち、被覆膜のレーザ光に対する反射率が大きい場合には、干渉信号が得られなくなることで温度の計測が困難となるおそれがあるためである。
さらに、第3の要件は,被覆膜の屈折率が、その外側で被腹膜と接している物質の屈折率とほぼ等しいことである。ここで、「ほぼ等しい」とは、屈折率の差が、10%以内ということである。
例えば、被腹膜をフッ素化アクリル樹脂で形成した場合には、上記の要件を満たし、被腹膜として好適な材料となっている。特に、温度センサとしてのみの動作を要求する時は、センサ部22は被覆膜で十分厚く被覆された状態としてもよく、最表面からの反射光が、センサ部22へ戻らないように最表面に凹凸があるような構造とすることが望ましい。また、フッ素化アクリル樹脂の屈折率は水の屈折率とほぼ一致するため、ディップ波長は水中においても波形が変形することなく、図8に示すように、温度上昇と共にスムースに短波長側にシフトしている。
一方、被覆膜の屈折率が、その外側の物質の屈折率と大きく異なって、屈折率の差が大きい場合には、その界面での反射成分が発生するため、スペクトル波形の変形が起こるが、本実施形態ではそのようなことが起きていない。
すなわち、水分がほとんどである人体などの動物の温度測定には、被覆膜としてフッ素化アクリル樹脂を用いることで、測定精度の向上にも大変有効である。ディップ波長の温度依存性を図9に示す。図9に示すように、30〜50℃の範囲で線形性に優れ、温度分解能が0.065 ℃と高分解能で測定できることがわかった。
なお、フッ素化アクリル樹脂の代わりとして、溶剤が揮発することで被覆膜が形成されるタイプであるフッ素樹脂を用いて被覆膜を形成した場合の測定も行った。フッ素樹脂も屈折率が水に近いため、スペクトル波形の変形がほぼ起こらなかった。この場合のディップ波長の温度依存性を図10に示す。図10に示すように、温度に対する波長シフト量は小さいが、0.63 ℃の分解能で測定できることがわかった。
<第3実施形態>
以下において、第3実施形態について説明する。
上述した第2実施形態のように、センサ部22をフッ素化アクリル樹脂で被覆した光ファイバ装置を用い、水における光吸収が大きい波長1.48μmの半導体レーザ光をセンサ部22の入力端から入射すると、センサ部22の先端部を透過して、センサ部22の外に光を射出させることができる。しかも、センサ部22を水に浸漬させた状態で光を射出させると、射出された光によりセンサ部22の周囲の水を発熱させて暖めることができた。すなわち、センサ部22をヒーターとして用いるものである。
図11は、入射光パワーに対する水の温度上昇幅の関係をプロットしたグラフである。約43 mWの比較的低い光パワーで14℃の昇温が実現できることわかった。
人体の体温を36 ℃とした場合、50 ℃にするには、14 ℃の温度上昇幅があればよく、センサ部22をヒーターとして比較的低い光パワーで50 ℃まで昇温できることになる。
さらには、センサ部22の先端を融解して、端面を適宜の曲面構造とすることで集光効果を生じさせることができ、センサ部22の先端部が平坦なものと比べて温度上昇幅を10%向上させることができた。
上述した第2実施形態の温度センサでは、感度向上のためにチタン膜が形成されているが、150 nmと極めて薄く、このようなチタン膜が存在する状況であっても、波長1.48 μmの光は95%透過することを確認した。
また、センサ部22に入射させる光として波長1577μm付近の光を波長多重装置を用いて合波して入射し、1577μm付近の波長成分を有する光の先端表面からの反射光のスペクトル変化を計測すると、先端部の温度を測定することができた。すなわち、加熱用の光と、温度計測用の光とを重ね合わせた2波長の光入射により、先端部の昇温とその温度計測を同時に光のみで実現できる。
10 投光器
20 光ファイバ装置
21 光ファイバ
22 センサ部
22a 第1の反射面
22b 第2の反射面
23 光サーキュレータ
30 受光器
40 解析器

Claims (14)

  1. シングルモードのレーザ光を伝搬させる光ファイバと、
    この光ファイバの端部に設けて前記光ファイバ内を伝搬されてきたレーザ光を反射させるセンサ部と
    を有する光ファイバ装置であって、
    前記センサ部は、前記光ファイバのコアと同一材料であって、前記光ファイバのコアよりも太径の円柱状とし、
    前記センサ部の先端側には、前記光ファイバから前記センサ部に入射されて入射方向に伝搬する第1の光を反射させる第1の反射面と、前記光ファイバから前記センサ部に入射された際に入射方向から所定の角度の方向に伝搬する第2の光を反射させる第2の反射面を設けている光ファイバ装置。
  2. 請求項1に記載の光ファイバ装置において、前記第2の反射面で反射するまたは反射した第2の光は、前記センサ部の外周面で少なくとも1回以上全反射させている光ファイバ装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の光ファイバ装置において、前記センサ部の先端側の中央部分に平面状の前記第1の反射面を設け、この第1の反射面の周囲に前記第2の反射面を設けている光ファイバ装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバ装置において、前記センサ部の前記入射方向の長さを1mm以下としている光ファイバ装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバ装置において、前記センサ部の外側を金属膜で被覆している光ファイバ装置。
  6. 請求項5記載の光ファイバ装置において、前記金属膜がチタン製または酸化チタン製である光ファイバ装置。
  7. 請求項5または請求項6に記載の光ファイバ装置において、前記金属膜の厚さが300 nm以下である光ファイバ装置。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバ装置において、前記センサ部の外側を誘電性膜または有機膜で被覆している光ファイバ装置。
  9. 請求項8に記載の光ファイバ装置において、前記センサ部と、このセンサ部を被覆した膜の屈折率が異なり、かつ、前記膜は、前記第1の反射面近傍での前記レーザ光に対する前記膜の垂直成分の反射率を、前記第1の反射面での前記レーザ光の反射によって生成される干渉信号を消失させない反射率としている光ファイバ装置。
  10. 請求項9に記載の光ファイバ装置において、前記膜の屈折率を、前記膜と接する物質の屈折率と等しくしている光ファイバ装置。
  11. 請求項9または請求項10に記載の光ファイバ装置において、前記膜をフッ素樹脂またはフッ素化アクリル樹脂で形成している光ファイバ装置。
  12. 請求項8〜11のいずれか1項に記載の光ファイバ装置において、前記センサ部に入射させるレーザ光の波長を前記センサ部の先端を透過する波長として、透過したレーザ光による発熱を生じさせる光ファイバ装置。
  13. 請求項12に記載の光ファイバ装置において、前記センサ部に、前記センサ部の先端を透過する波長のレーザ光と、このレーザ光と異なる波長であって、前記第1と第2の反射面でそれぞれ反射するレーザ光とを入射させている光ファイバ装置。
  14. シングルモードのレーザ光を出射する投光器と、
    前記レーザ光が入射されることで第1の反射光と第2の反射光を生じさせる光ファイバ装置と、
    前記光ファイバ装置から出射された前記第1の反射光と前記第2の反射光の干渉光を受光する受光器と、
    前記受光器から出力された信号を解析する解析器と
    を備えたセンサシステムであって、
    前記光ファイバ装置は、
    前記シングルモードのレーザ光を伝搬させる光ファイバと、
    この光ファイバの端部に設けて前記光ファイバ内を伝搬されてきたレーザ光を反射させるセンサ部と
    を有し、
    前記センサ部は、前記光ファイバのコアと同一材料であって、前記光ファイバのコアよりも太径の円柱状とし、
    前記センサ部の先端側には、前記光ファイバから前記センサ部に入射されて入射方向に伝搬する第1の光を反射させて前記第1の反射光を生じさせる第1の反射面と、前記光ファイバから前記センサ部に入射された際に入射方向から所定の角度の方向に伝搬する第2の光を反射させて前記第2の反射光を生じさせる第2の反射面を設けているセンサシステム。
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