JP2017177121A - 高温用Pbフリーはんだペースト及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 濡れ広がり性、接合性、接合信頼性等に優れる高温用のBiを主成分とするPbフリーはんだペースト及びその製造方法を提供する。【解決手段】 はんだ合金粉末、フラックス、および高級脂肪族アミンから構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、高級脂肪族アミンを0.01質量%以上2.0質量%以下含有し、残部のはんだ合金粉末がBi系はんだ合金粉末からなる。【選択図】なし
Description
本発明は、Si、SiC、GaNなどの半導体素子の接合用、ペルチェ素子接合用などに使用されるPbを含有せず、Biを主成分とする高温用Pbフリーはんだペースト及びその製造方法に関する。
はんだペーストは、様々な半導体装置において半導体素子や電子部品を基板等に接合するために使用される。例えば、プリント基板印刷用のはんだペーストは、基板へ塗布・印刷され、電子部品を搭載した後、リフロー炉ではんだ合金粉末を加熱・溶融させて部品等を基板上に実装するリフローはんだ付けに用いられる。はんだペーストの典型的な例としては、はんだ合金粉末をロジン、活性剤、有機溶剤などの成分からなるフラックスと混合した材料であり、とくにSn−Ag−Cu系のはんだ合金が多用されている。
はんだ合金材料は古くからPbが主成分として使われ続けてきたが、Pbは環境に有害な物質であるので、例えば廃棄された電子機器から溶け出したPbが、地下水等を経由して人体に悪い影響を及ぼすことが懸念され、すでにRoHS指令などで規制対象物質となっている。このため、Pbを含まない、はんだ(Pbフリーはんだ)の開発が盛んに行われている。最近ではPbフリーはんだ合金として、組成がSn−3.0Ag−0.5Cuで表されるAgを3.0質量%、Cuを0.5質量%含んだSn−Ag−Cu系の合金が広く実用化されている。しかし、上記のSn−Ag−Cu系のはんだ合金は中温用(融点が約230℃)のもので、高温用(融点が約260℃〜400℃)のPbフリー化に関しては様々な機関で開発が行われているが、未だ実用化されていない。
例えば、特許文献1には、実質的に固相線温度が260℃以上の高温用として使用できるZnを0.4質量%以上13.5質量%以下、Cuを0.01質量%以上2.0質量%以下及び/またはAlを0.03質量%以上0.7質量%以下含有し、残部がBiからなるはんだ合金粉末とロジンを主成分とするフラックスを混合してなるはんだペーストが開示されている。
また、還元性の強い元素が含まれるはんだ合金粉末とフラックスの反応を抑える方法に対し、例えば、特許文献2には、リフロー時はんだペーストの不具合を防止するために、はんだ合金粉体の製造方法として、はんだ合金粉体の表面に、有機酸と有機溶剤よりなる処理液の薄膜を被覆し、その後、有機溶剤を加熱乾燥または自然乾燥による蒸発させるはんだ合金粉体の製造方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、フラックス中の活性成分と合金成分との反応を抑制するために、Sn−Zn合金、さらにBi等を含むはんだ合金粉末の表面に、ステアリン酸銅等の有機酸塩の飽和した溶液を連続的に落下するはんだ合金粉末に吹き付けるまたはこの溶液にはんだ合金粉末を浸漬させることにより、はんだ合金粉末の表面を被覆する製造方法が開示されている。
上述のように、高温用Pbフリーはんだ、とくにBi系はんだペーストに関しては、様々な機関で開発されているものの、未だ実用化の面で十分に満足できる特性を有するはんだ材料は量産化されてないのが実情である。
例えば、特許文献1に開示されている、実質的に固相線温度が260℃以上で高温用として使用できるBi系はんだ合金は、金属Biに起因する脆弱な機械的特性や、低い濡れ性、そして基板の接合表面にめっき層などによりNiが存在する場合に、Bi系はんだ合金中へNiが拡散することにより脆弱なBi−Ni合金相を形成するといった問題は解決できるが、リフロー中に酸素の量が多くなった場合、試料をリフロー炉で加熱する時、加熱時間が長い程はんだ母相中のBiが酸化され、チップや電子部品の接合界面と反応できる前に、はんだ層の酸化膜が先に生成されて、界面での接合を妨害する場合がある。
また、はんだペーストを製作する際、還元性の強いZnやAlをはんだ合金に含むため、保管中にZnやAlがフラックス中の活性剤と反応し、ペーストの粘度が変化し、基板への印刷性や、はんだ合金粉末の濡れ性が極端に劣化し、印刷不良、濡れ不良を生じる問題が起きる場合もある。
このように、リフロー炉で電子部品を接合する際、はんだ合金の酸化膜や、Zn、Alの反応生成物が接合界面に存在することにより、接合性が低下するおそれがある。
また、はんだペーストを製作する際、還元性の強いZnやAlをはんだ合金に含むため、保管中にZnやAlがフラックス中の活性剤と反応し、ペーストの粘度が変化し、基板への印刷性や、はんだ合金粉末の濡れ性が極端に劣化し、印刷不良、濡れ不良を生じる問題が起きる場合もある。
このように、リフロー炉で電子部品を接合する際、はんだ合金の酸化膜や、Zn、Alの反応生成物が接合界面に存在することにより、接合性が低下するおそれがある。
また、特許文献2には、はんだ合金粉末の表面に有機酸と有機溶剤よりなる処理液の薄膜を被覆し、その後、有機溶剤を加熱乾燥または自然乾燥により蒸発させるはんだ合金粉体の製造方法であって、有機酸をステアリン酸とし、リフロー法ではんだペーストの濡れ性確保及びはんだボールの発生を防止するはんだ合金粉体の製造方法の実施例が開示されている。しかしながら、有機酸とはんだ合金の組合せにより密着挙動は異なるため、実施例のないステアリン酸以外の有機酸の挙動は推測が困難であり、かつ、Bi系合金のように高温用として実用化されていない合金に対する効果は容易に推測できない。
また、特許文献3には、Sn−Znはんだ合金粉末を主に含むはんだペーストに対して、はんだ粉末表面に有機酸塩を付着させることで、フラックス中の活性成分と合金成分との反応を抑制できるとの記載がある。ステアリン酸銅等の有機酸塩の飽和した溶液はSn−Zn合金に付着しやすく、Sn−Zn系はんだ合金のように融点が199℃と低いはんだ合金に用いる場合は、リフロー中にステアリン酸銅等の有機酸塩が失活することなく濡れ性が向上する効果があるとされている。しかし、Bi−Zn系はんだ合金のように融点が高いはんだ合金に用いた場合もリフロー中の効果が発揮できるかは推測できず、また、Bi系合金のように高温用として実用化されていない合金に対する効果は付着のしやすさも含め容易に推測することはできない。
さらに、上述の方法に対し、はんだ合金粉末もしくは活性剤をコーティングする方法はペースト作製時における作業の煩雑さ並びに製造コストの増加や、ペースト中での還元性の異なる様々なはんだ合金粉末や活性剤の凝集による濃度の不均一化が懸念される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、諸特性に優れた実用性のあるPbフリーBi系はんだペースト及びその製造方法の提供を目的とする。すなわち電子部品等と基板との接合に十分な強度を有し、ボイドの発生が少なく、濡れ性や接合信頼性に優れ、かつ高温用として好適な融点を有するPbフリーBi系はんだペースト及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するため、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、はんだ合金粉末、フラックス、および高級脂肪族アミンから構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、高級脂肪族アミンを0.01質量%以上2.0質量%以下含有し、はんだ合金粉末としてBi系はんだ合金粉末を用いることによって、高温用として好適な融点を有し、かつボイドが発生しづらく、濡れ性や接合信頼性に優れるはんだペーストが得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明による高温用Pbフリーはんだペーストは、はんだ合金粉末、フラックス、および高級脂肪族アミンから構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、高級脂肪族アミンを0.01質量%以上2.0質量%以下含有し、残部のはんだ合金粉末がBi系はんだ合金粉末であることを特徴とする。
また、本発明による高温用Pbフリーはんだペーストは、前記Bi系はんだ合金粉末が、AgもしくはZnを必須成分として含有し、更にAl、Cu、Ge、Sb、SnおよびPを含有することができ、Bi系はんだ合金粉末の合計を100質量%とした際に、
Agを0.1質量%以上12.0質量%以下含有し、または/及びZnを0.4質量%以上13.5質量%以下含有し、
更にAlを含有する場合は0.03質量%以上1.0質量%以下含有し、
Cuを含有する場合は0.05質量%以上2.0質量%以下含有し、
Geを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Sbを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Snを含有する場合は0.01質量%以上5.0質量%以下含有し、
Pを含有する場合は0.0005質量%以上0.5質量%以下含有
することを特徴とする。
Agを0.1質量%以上12.0質量%以下含有し、または/及びZnを0.4質量%以上13.5質量%以下含有し、
更にAlを含有する場合は0.03質量%以上1.0質量%以下含有し、
Cuを含有する場合は0.05質量%以上2.0質量%以下含有し、
Geを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Sbを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Snを含有する場合は0.01質量%以上5.0質量%以下含有し、
Pを含有する場合は0.0005質量%以上0.5質量%以下含有
することを特徴とする。
また、本発明による高温用Pbフリーはんだペーストは、前記高級脂肪族アミンが、飽和モノアミン、不飽和モノアミン、ジアミンから選ばれる1種以上であることを特徴とする。
また、本発明による高温用Pbフリーはんだペーストの製造方法は、前記高級脂肪族アミンとフラックスを混合した後に、該フラックス混合液と前記はんだ合金粉末を混合することによって上記本発明のいずれかの高温用Pbフリーはんだペーストを製造することを特徴とする。
また、本発明による高温用Pbフリーはんだペーストの製造方法は、前記はんだ合金粉末の表面に前記高級脂肪族アミンをコーティングした後に、該はんだ合金粉末とフラックスを混合することによって上記本発明のいずれかの高温用Pbフリーはんだペーストを製造することを特徴とする。
本発明によれば、Si、SiC、GaNなどの半導体素子の接合用、ペルチェ素子接合用などに用いることにより、ボイドの発生が少なく電子部品等と基板との接合に十分な強度を有し、濡れ性や接合信頼性に優れ、かつ高温用として好適な融点を有する、Pbを含有せず、Biを主成分とする高温用はんだペースト及びその製造方法が得られる。
実施例の説明に先立ち、本発明の作用効果について詳細に説明する。本発明の高温用Pbフリーはんだペーストは、はんだ合金粉末、フラックス、および高級脂肪族アミンから構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、高級脂肪族アミンを0.01質量%以上2.0質量%以下含有し、残部のはんだ合金粉末がBi系はんだ合金粉末からなる。
以下、更に詳しく説明する。
以下、更に詳しく説明する。
<フラックス>
本発明のはんだペーストに用いるフラックスに関してはとくに限定がなく、例えば、樹脂系、無機塩化物系、有機ハロゲン化物系などを用いることができる。また、各種の不飽和脂肪酸を含有させてもよい。本発明のはんだペーストに含有させるフラックスの含有量は、はんだペーストの合計を100質量%として、5.0質量%以上20.0質量%以下である。5.0質量%未満では、はんだ合金粉末との混合で好ましいペースト状態を保つことができず、液体状態を維持できないか、液体状態であっても粘度が高くなりすぎて、はんだ接合部に適切な量のはんだペーストを精度よく供給できない場合がある。20.0質量%を超えて添加すると、リフロー時にフラックスをはんだ合金内から十分除去することができず、はんだ合金内や接合部界面にフラックス残渣を生じさせ、接合性や長期の接合信頼性を悪化させる場合がある。
以下に、一例として、最も一般的なフラックスである、ベース材にロジンを使用してこれに活性剤および溶剤を添加したフラックスについて述べる。
本発明のはんだペーストに用いるフラックスに関してはとくに限定がなく、例えば、樹脂系、無機塩化物系、有機ハロゲン化物系などを用いることができる。また、各種の不飽和脂肪酸を含有させてもよい。本発明のはんだペーストに含有させるフラックスの含有量は、はんだペーストの合計を100質量%として、5.0質量%以上20.0質量%以下である。5.0質量%未満では、はんだ合金粉末との混合で好ましいペースト状態を保つことができず、液体状態を維持できないか、液体状態であっても粘度が高くなりすぎて、はんだ接合部に適切な量のはんだペーストを精度よく供給できない場合がある。20.0質量%を超えて添加すると、リフロー時にフラックスをはんだ合金内から十分除去することができず、はんだ合金内や接合部界面にフラックス残渣を生じさせ、接合性や長期の接合信頼性を悪化させる場合がある。
以下に、一例として、最も一般的なフラックスである、ベース材にロジンを使用してこれに活性剤および溶剤を添加したフラックスについて述べる。
一例にかかるフラックスは、フラックス全量を100質量%とした場合、ベース材であるロジンが20〜30質量%、活性剤が0.2〜1質量%、溶剤が70〜80質量%程度となるように配合することが好ましく、これにより良好な濡れ性および接合性を有するはんだペーストを得ることができる。また、チキソ剤を含有させチキソ性を調整するとより一層使い易いはんだペーストとなり得る。ベース材としてのロジンには、例えばウッドレジンロジン、ガムロジン、トール油ロジンなどの天然の未変性なロジンを使用してもよいし、ロジンエステル、水素添加ロジン、ロジン変性樹脂、重合ロジンなどの変性ロジンを使用してもよい。
溶剤には、アセトン、アミルベンゼン、n−アミンアルコール、ベンゼン、四塩化炭素、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、トルエン、テレピン油、キシレン、シクロヘキサン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、四塩化炭素、トリクロロエタン、アルカンジオール、アルキレングリコール、ブタジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラデカンなどを使用することができる。
活性剤には、リン酸、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化第一錫、アニリン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩、臭化セチルピリジン、フェニルヒドラジン塩酸塩、テトラクロルナフタレン、メチルヒドラジン塩酸塩、メチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、ブチルアミン塩酸塩、安息香酸、ステアリン酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ヒバシン酸、トリエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンHBr、エリトリトール、キシリトリトール、ソルボトール、リビトール、スルフォン酸エステル、ターシャリーブチルカルボン酸エステル、イソブチルカルボン酸エステル及びイソプロピルカルボン酸エステルなどを使用することができる。
またチキソ剤を含有させてチキソ性を調整するとより一層使い易いはんだペーストになり得る。例えば、チキソ剤として、ひまし油、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ステアリン酸アミド、N.N−ジステアリルアジピン酸アミド等を用いることができる。
またチキソ剤を含有させてチキソ性を調整するとより一層使い易いはんだペーストになり得る。例えば、チキソ剤として、ひまし油、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ステアリン酸アミド、N.N−ジステアリルアジピン酸アミド等を用いることができる。
これらの溶剤および活性剤の中から目的に合った物質を選択し、それらの添加量を適宜調整することによって好適なフラックスが得られる。例えば、はんだ合金や基板等の接合面の酸化膜が強固である場合は、ロジンや活性剤を多めに添加し、溶剤で粘性や流動性を調整するのが好ましい。
また、濡れ性や接合性の調整等を行う目的で不飽和脂肪酸を含有させてもよい。含有させる不飽和脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸、及び、ペンタ不飽和脂肪酸から選択すればよい。
<高級脂肪族アミン>
本発明のはんだペーストに高級脂肪族アミンを含有させることは必須の条件である。高級脂肪族アミンは、飽和モノアミン、不飽和モノアミン、ジアミンから選ばれる1種以上であることが好ましい。高級脂肪族アミンは、はんだ合金粉末が酸化して生成される酸化物を抑制でき、これによってカルボキシル基と酸化物との反応により生成する水蒸気ガスの発生を抑制できる。そのため、前記水蒸気ガスに起因するボイドの生成が抑制でき、水蒸気ガス生成時に一緒に生じるフラックス残渣やはんだ合金の酸化物を低減でき、接合強度や接合信頼性が向上する。
高級脂肪族アミンは主に分散剤として働き、疏水性となっているフラックス側にアルキル鎖を向けた状態で、親水性の官能基がはんだ合金粉末の表面に吸着する。また、高級脂肪族アミンは、はんだペースト中でその一部がプラスイオン化する。一方でフラックス内のロジンに含まれるアビエチン酸や活性剤に含まれるカルボン酸はマイナスイオン化しているため、高級脂肪族アミンとアミド結合することではんだ合金粉末の表面に付着すると考えられる。そしてアミド結合した高級脂肪族アミンによって覆われたはんだ合金粉末は鎖状炭化水素の影響により、はんだ合金粉末同士が凝集しづらくなり、よってペースト中に均一に分散する。このようにはんだ合金粉末が高級脂肪族アミンで覆われ、凝集部分が少なくはんだ金属表面の露出が少ないことなどにより、保管時や接合時の酸化が抑制でき、酸化物の生成が抑えられ、濡れ性等が向上する。さらに、フラックスとはんだ合金酸化物との反応も抑制でき、反応時のガス生成も抑えられボイドの発生も減少する。このように、高級脂肪族アミンをはんだペーストに含有させることにより特性向上に寄与する様々な現象が複合的に起き、かつ相乗効果を成してはんだペーストの特性を格段に向上させる。
本発明のはんだペーストに含有させる高級脂肪族アミンは、飽和モノアミン、不飽和モノアミン、ジアミンから選ばれる1種以上であって、その含有量は、はんだペーストの合計100質量%に対して0.01質量%以上2.0質量%以下である。とくに高級脂肪族アミンの含有量が0.1質量%以上1.0質量%以下であると、適度なはんだペーストの粘度が得られなどして上記効果がより一層現われて好ましい。0.01質量%未満だと、高級脂肪族アミンの添加効果が全く現れない。2.0質量%を超えて添加すると、はんだペースト内に残留する高級脂肪族アミンの量が多くなり過ぎ、粘度が大幅に低下するので好ましくない。
また、飽和モノアミン、不飽和モノアミン、ジアミンは、ステアリルアミン、パルミチルアミン、ベヘニルアミン、セチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、ステアリルプロピレンジアミン、オレイルプロピレンジアミンであることが好ましい。これらの高級脂肪族アミンを使用することにより、はんだ合金粉末の酸化をより一層抑制でき、また、はんだ合金粉末とフラックスが均一に混ざり易くなる。
本発明のはんだペーストに高級脂肪族アミンを含有させることは必須の条件である。高級脂肪族アミンは、飽和モノアミン、不飽和モノアミン、ジアミンから選ばれる1種以上であることが好ましい。高級脂肪族アミンは、はんだ合金粉末が酸化して生成される酸化物を抑制でき、これによってカルボキシル基と酸化物との反応により生成する水蒸気ガスの発生を抑制できる。そのため、前記水蒸気ガスに起因するボイドの生成が抑制でき、水蒸気ガス生成時に一緒に生じるフラックス残渣やはんだ合金の酸化物を低減でき、接合強度や接合信頼性が向上する。
高級脂肪族アミンは主に分散剤として働き、疏水性となっているフラックス側にアルキル鎖を向けた状態で、親水性の官能基がはんだ合金粉末の表面に吸着する。また、高級脂肪族アミンは、はんだペースト中でその一部がプラスイオン化する。一方でフラックス内のロジンに含まれるアビエチン酸や活性剤に含まれるカルボン酸はマイナスイオン化しているため、高級脂肪族アミンとアミド結合することではんだ合金粉末の表面に付着すると考えられる。そしてアミド結合した高級脂肪族アミンによって覆われたはんだ合金粉末は鎖状炭化水素の影響により、はんだ合金粉末同士が凝集しづらくなり、よってペースト中に均一に分散する。このようにはんだ合金粉末が高級脂肪族アミンで覆われ、凝集部分が少なくはんだ金属表面の露出が少ないことなどにより、保管時や接合時の酸化が抑制でき、酸化物の生成が抑えられ、濡れ性等が向上する。さらに、フラックスとはんだ合金酸化物との反応も抑制でき、反応時のガス生成も抑えられボイドの発生も減少する。このように、高級脂肪族アミンをはんだペーストに含有させることにより特性向上に寄与する様々な現象が複合的に起き、かつ相乗効果を成してはんだペーストの特性を格段に向上させる。
本発明のはんだペーストに含有させる高級脂肪族アミンは、飽和モノアミン、不飽和モノアミン、ジアミンから選ばれる1種以上であって、その含有量は、はんだペーストの合計100質量%に対して0.01質量%以上2.0質量%以下である。とくに高級脂肪族アミンの含有量が0.1質量%以上1.0質量%以下であると、適度なはんだペーストの粘度が得られなどして上記効果がより一層現われて好ましい。0.01質量%未満だと、高級脂肪族アミンの添加効果が全く現れない。2.0質量%を超えて添加すると、はんだペースト内に残留する高級脂肪族アミンの量が多くなり過ぎ、粘度が大幅に低下するので好ましくない。
また、飽和モノアミン、不飽和モノアミン、ジアミンは、ステアリルアミン、パルミチルアミン、ベヘニルアミン、セチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、ステアリルプロピレンジアミン、オレイルプロピレンジアミンであることが好ましい。これらの高級脂肪族アミンを使用することにより、はんだ合金粉末の酸化をより一層抑制でき、また、はんだ合金粉末とフラックスが均一に混ざり易くなる。
<はんだ合金粉末>
本発明の高温用Pbフリーはんだペーストに用いるBi系はんだ合金粉末は、AgもしくはZnを必須成分として含有し、はんだ合金粉の総量100質量%に対し、Agを0.1質量%以上12.0質量%以下含有し、または/及びZnを0.4質量%以上13.5質量%以下含有することが好ましい。
また、更に、Al、Cu、Ge、Sb、SnおよびPを含有することができ、前記元素を含有する場合は、Alは0.03質量%以上1.0質量%以下、Cuは0.05質量%以上2.0質量%以下、Geは0.01質量%以上1.0質量%以下、Sbは0.01質量%以上1.0質量%以下、Snは0.01質量%以上5.0質量%以下、Pは0.0005質量%以上0.5質量%以下含有するのが好ましい。
以下、本発明におけるはんだ合金粉末に使用できる元素について詳しく説明する。
本発明の高温用Pbフリーはんだペーストに用いるBi系はんだ合金粉末は、AgもしくはZnを必須成分として含有し、はんだ合金粉の総量100質量%に対し、Agを0.1質量%以上12.0質量%以下含有し、または/及びZnを0.4質量%以上13.5質量%以下含有することが好ましい。
また、更に、Al、Cu、Ge、Sb、SnおよびPを含有することができ、前記元素を含有する場合は、Alは0.03質量%以上1.0質量%以下、Cuは0.05質量%以上2.0質量%以下、Geは0.01質量%以上1.0質量%以下、Sbは0.01質量%以上1.0質量%以下、Snは0.01質量%以上5.0質量%以下、Pは0.0005質量%以上0.5質量%以下含有するのが好ましい。
以下、本発明におけるはんだ合金粉末に使用できる元素について詳しく説明する。
<Ag>
Agは、本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金における主成分の一つである。Bi−Ag二元型を基本とする場合のAgの含有量は0.1質量%以上12.0質量%以下である。Bi−Ag合金はAgが2.6質量%の組成で共晶点となり、共晶点温度は262℃であり、この付近の組成とすることにより結晶が微細化して柔軟性が増し接合信頼性等が向上し、はんだ合金として適した材料となる。また、Agは、はんだ合金に少量含有させることにより、各種効果を発揮する。すなわち、Agは基板等のメタライズ層に使用されることからも分かるように各種金属と合金化し易く、濡れ性向上に大きく寄与する。基板等の最上面によく使用されるCu、Niなどとは特に反応性がよく、濡れ性に優れ、高い接合強度を得ることができる。当然、半導体素子の接合面によく使用されるAgやAuなどのメタライズ層との反応性に優れることは言うまでもない。このようにAgを含有させることによって良好な接合ができ、高い接合信頼性を得ることができる。
Agの含有量が0.1質量%未満だとBiの持つ脆性や濡れ性を改善できないので好ましくない。12.0質量%を超えて含有すると液相線温度が高くなりすぎ、はんだ接合する際に溶け残り部分を生じて十分な接合ができない場合があるので好ましくない。
Agは、本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金における主成分の一つである。Bi−Ag二元型を基本とする場合のAgの含有量は0.1質量%以上12.0質量%以下である。Bi−Ag合金はAgが2.6質量%の組成で共晶点となり、共晶点温度は262℃であり、この付近の組成とすることにより結晶が微細化して柔軟性が増し接合信頼性等が向上し、はんだ合金として適した材料となる。また、Agは、はんだ合金に少量含有させることにより、各種効果を発揮する。すなわち、Agは基板等のメタライズ層に使用されることからも分かるように各種金属と合金化し易く、濡れ性向上に大きく寄与する。基板等の最上面によく使用されるCu、Niなどとは特に反応性がよく、濡れ性に優れ、高い接合強度を得ることができる。当然、半導体素子の接合面によく使用されるAgやAuなどのメタライズ層との反応性に優れることは言うまでもない。このようにAgを含有させることによって良好な接合ができ、高い接合信頼性を得ることができる。
Agの含有量が0.1質量%未満だとBiの持つ脆性や濡れ性を改善できないので好ましくない。12.0質量%を超えて含有すると液相線温度が高くなりすぎ、はんだ接合する際に溶け残り部分を生じて十分な接合ができない場合があるので好ましくない。
<Zn>
Znも本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金における主成分の一つである。Bi−Zn二元型を基本とする場合のZnの含有量は0.4質量%以上13.5質量%以下である。Bi−Zn合金はZn=2.7質量%の組成で共晶点となり共晶点温度は254℃であり、この付近の組成とすることにより結晶が微細化して柔軟性が増し接合信頼性等が向上し、はんだ合金として適した材料となる。さらに、ZnはNiとBiの反応を抑制する効果を有する。すなわち、半導体素子や基板の接合面にNiが使用されている場合、NiとBiは非常に反応し易く、Bi−Ni金属間化合物を生成してしまう。そして、このBi−Ni金属間化合物は脆いため、クラックが発生し易く、十分な接合信頼性を得ることができない。Znは、このBiとNiの反応を抑える機能を有する。はんだ合金中にZnが存在することにより、接合時にNi相とZnが反応しNi相の上にNiZn相が生成され、BiとNiの反応、そしてBi−Ni金属間化合物の生成を抑える。
Znの含有量が0.4質量%未満だとBiの持つ脆性や濡れ性を改善できないので好ましくない。13.5質量%を超えて含有すると液相線温度が高くなりすぎ、はんだ接合する際に溶け残り部分を生じて十分な接合ができない場合があるので好ましくない。
Znも本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金における主成分の一つである。Bi−Zn二元型を基本とする場合のZnの含有量は0.4質量%以上13.5質量%以下である。Bi−Zn合金はZn=2.7質量%の組成で共晶点となり共晶点温度は254℃であり、この付近の組成とすることにより結晶が微細化して柔軟性が増し接合信頼性等が向上し、はんだ合金として適した材料となる。さらに、ZnはNiとBiの反応を抑制する効果を有する。すなわち、半導体素子や基板の接合面にNiが使用されている場合、NiとBiは非常に反応し易く、Bi−Ni金属間化合物を生成してしまう。そして、このBi−Ni金属間化合物は脆いため、クラックが発生し易く、十分な接合信頼性を得ることができない。Znは、このBiとNiの反応を抑える機能を有する。はんだ合金中にZnが存在することにより、接合時にNi相とZnが反応しNi相の上にNiZn相が生成され、BiとNiの反応、そしてBi−Ni金属間化合物の生成を抑える。
Znの含有量が0.4質量%未満だとBiの持つ脆性や濡れ性を改善できないので好ましくない。13.5質量%を超えて含有すると液相線温度が高くなりすぎ、はんだ接合する際に溶け残り部分を生じて十分な接合ができない場合があるので好ましくない。
また、ZnとAlを両方とも添加すると、これらの元素で構成される合金が部分的に電池的な作用を起し、腐食する場合がある。そのため、Zn及びAlの合計の含有量が8.0質量%を超えないようにするのが好ましい。
<Al>
Alは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Alを含有させる場合のAlの含有量は0.03質量%以上1.0質量%以下である。酸化し易いAlを含有させることによって得られる主な効果は、はんだ接合時にはんだ母相より優先的にAlが酸化することにより、生成する酸化物層が薄くなり、濡れ性を阻害する酸化物層を薄く少なく生成させることによって、濡れ性を向上させることにある。1.0質量%を超えて含有すると、Alが偏析しBi系はんだ合金の加工性を阻害するため好ましくない。
Alは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Alを含有させる場合のAlの含有量は0.03質量%以上1.0質量%以下である。酸化し易いAlを含有させることによって得られる主な効果は、はんだ接合時にはんだ母相より優先的にAlが酸化することにより、生成する酸化物層が薄くなり、濡れ性を阻害する酸化物層を薄く少なく生成させることによって、濡れ性を向上させることにある。1.0質量%を超えて含有すると、Alが偏析しBi系はんだ合金の加工性を阻害するため好ましくない。
<Cu>
Cuは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Cuを含有させる場合のCuの含有量は0.05質量%以上2.0質量%以下である。Cuを含有させることによって得られる効果は固溶強化である。Cuを少量含有させることによって強度が増し、熱応力等によってもクラックが発生、進展しづらくなり接合信頼性が向上する。2.0質量%を超えて含有すると、はんだ合金が必要以上に硬くなったり、液相線温度が高くなり過ぎてしまったりするため好ましくない。
Cuは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Cuを含有させる場合のCuの含有量は0.05質量%以上2.0質量%以下である。Cuを含有させることによって得られる効果は固溶強化である。Cuを少量含有させることによって強度が増し、熱応力等によってもクラックが発生、進展しづらくなり接合信頼性が向上する。2.0質量%を超えて含有すると、はんだ合金が必要以上に硬くなったり、液相線温度が高くなり過ぎてしまったりするため好ましくない。
<Ge>
Geは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Geを含有させる場合のGeの含有量は0.01質量%以上1.0質量%以下である。Geを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性の向上にある。GeはBiに僅かにしか固溶せず、また比重が小さいため、はんだ接合時に溶融した状態において、溶融はんだ合金の表面に浮いてきて、はんだ合金の酸化の進行を抑制し、濡れ性を向上させる。また、Geは固溶強化の効果も有している。このように優れるGeの含有量は少量が好ましく、その上限値は1.0質量%である。これ以上含有させると半金属のGeの脆さが顕著に現れはじめてしまうので好ましくない。
Geは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Geを含有させる場合のGeの含有量は0.01質量%以上1.0質量%以下である。Geを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性の向上にある。GeはBiに僅かにしか固溶せず、また比重が小さいため、はんだ接合時に溶融した状態において、溶融はんだ合金の表面に浮いてきて、はんだ合金の酸化の進行を抑制し、濡れ性を向上させる。また、Geは固溶強化の効果も有している。このように優れるGeの含有量は少量が好ましく、その上限値は1.0質量%である。これ以上含有させると半金属のGeの脆さが顕著に現れはじめてしまうので好ましくない。
<Sb>
Sbは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Sbを含有させる場合のSbの含有量は0.01質量%以上1.0質量%以下である。Sbを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性向上と固溶強化にある。SbはGe同様に半金属であり、はんだ合金に含有させることによって得られる効果もGeと似ている。Sbを含有させる場合の上限値は1.0質量%である。これ以上含有させると脆くなってしまうので好ましくない。
Sbは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Sbを含有させる場合のSbの含有量は0.01質量%以上1.0質量%以下である。Sbを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性向上と固溶強化にある。SbはGe同様に半金属であり、はんだ合金に含有させることによって得られる効果もGeと似ている。Sbを含有させる場合の上限値は1.0質量%である。これ以上含有させると脆くなってしまうので好ましくない。
<Sn>
Snは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Snを含有させる場合のSnの含有量は0.01質量%以上5.0質量%以下である。Snを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性、接合性の向上にある。SnはCuやNiなどとの反応性に優れるため、Pb系はんだ合金などでも接合性向上を一つの目的として含有される。Bi系はんだ合金においてもPb系はんだ合金と同様であるが、Bi系はんだ合金の場合はその含有量に十分配慮する必要がある。すなわち、SnはBiと共晶組成を生成するが、その共晶点温度は139℃であり、Sn−Bi共晶組成が多く存在すると、固相線温度が低くなり過ぎてしまうので好ましくない。従って、目的に合わせて実質的にこの固相線温度が問題とならない程度の量をはんだ合金に含有させればよく、その上限が5.0質量%である。
Snは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Snを含有させる場合のSnの含有量は0.01質量%以上5.0質量%以下である。Snを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性、接合性の向上にある。SnはCuやNiなどとの反応性に優れるため、Pb系はんだ合金などでも接合性向上を一つの目的として含有される。Bi系はんだ合金においてもPb系はんだ合金と同様であるが、Bi系はんだ合金の場合はその含有量に十分配慮する必要がある。すなわち、SnはBiと共晶組成を生成するが、その共晶点温度は139℃であり、Sn−Bi共晶組成が多く存在すると、固相線温度が低くなり過ぎてしまうので好ましくない。従って、目的に合わせて実質的にこの固相線温度が問題とならない程度の量をはんだ合金に含有させればよく、その上限が5.0質量%である。
<P>
Pは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、必要に応じて含有する元素であり、Pを含有させる場合のPの含有量は0.0005質量%以上0.5質量%以下である。Pを含有することによって、はんだ合金の濡れ性および接合性をさらに向上させることができる。この効果は、Ag、Ge、Snなどが含有されている場合においても同様に発揮される。Pは還元性が強く、接合時にはんだ表面や接合面を還元して濡れ性を向上させる。P含有量の上限値は0.5質量%である。0.5質量%を超えてPを含有させると、はんだ合金が脆くなってしまい、十分な接合信頼性を得ることは難しくなってしまうので好ましくない。
Pは本発明のPbフリーはんだペーストのBi系はんだ合金において、必要に応じて含有する元素であり、Pを含有させる場合のPの含有量は0.0005質量%以上0.5質量%以下である。Pを含有することによって、はんだ合金の濡れ性および接合性をさらに向上させることができる。この効果は、Ag、Ge、Snなどが含有されている場合においても同様に発揮される。Pは還元性が強く、接合時にはんだ表面や接合面を還元して濡れ性を向上させる。P含有量の上限値は0.5質量%である。0.5質量%を超えてPを含有させると、はんだ合金が脆くなってしまい、十分な接合信頼性を得ることは難しくなってしまうので好ましくない。
なお、はんだ合金粉末の平均粒径は、10μm〜90μmとすることが好ましい。平均粒径が小さくなればなるほど、表面積が増加し、酸化しやすくなり、接合する時にはんだ合金粉末の溶け残りが多く発生する傾向があるので10μm以上とするのが好ましい。また、電子部品の小型化が進んでいるため、接合に使用されるはんだ合金量も少なくなってきており、平均粒径が大きくなりすぎると、はんだ合金量の調整が困難となったり、分散状態による溶融時のはんだ合金量の場所によるばらつきが大きくなったりするので、90μm以下とするのが好ましい。
上述したはんだ合金粉末、フラックス、および高級脂肪族アミンを混合することによって得られるはんだペーストは、フラックスの作用によって非常に優れた濡れ性を備えている上、はんだ合金については加工に困難を伴うシート形状等に加工する必要がなく、加工しやすい粉末状で使用することができる。
<はんだペーストの製造方法>
本発明のはんだペーストの製造方法はとくに限定されない。
高級脂肪族アミンとフラックスを混合機で混合後、はんだ合金粉末と混合してはんだペーストを製造すると、フラックス混合液中に均一に分布している高級脂肪族アミンの分散効果により、はんだ合金粉末をはんだペースト内に分散させることができ、そのためはんだ接合時に、電子部品等と基板との接合に十分な強度を有し、かつ、濡れ性や接合信頼性に優れたはんだペーストを得ることができ好ましい。
また、高級脂肪族アミンを有機溶剤等と混合して、その溶液とはんだ合金粉末と混合・乾燥して高級脂肪族アミンをはんだ合金粉末表面にコーティングをした後、フラックスと混合してはんだペーストを製造すると、はんだ合金粉末同士の凝集が防止され、かつ、はんだ合金粉末をはんだペースト内に分散させることができ、そのためはんだ接合時に、凝集粉の空隙に起因するボイドの発生が少なく、電子部品等と基板との接合に十分な強度を有し、濡れ性や接合信頼性に優れたはんだペーストを得ることができるため好ましい。
このように、高級脂肪族アミンをはんだ合金粉末の表面に付着させると、はんだ合金粉末の酸化を抑制し、かつはんだ合金粉末同士の凝集を防止することにより分散性を向上させることができる。
本発明のはんだペーストの製造方法はとくに限定されない。
高級脂肪族アミンとフラックスを混合機で混合後、はんだ合金粉末と混合してはんだペーストを製造すると、フラックス混合液中に均一に分布している高級脂肪族アミンの分散効果により、はんだ合金粉末をはんだペースト内に分散させることができ、そのためはんだ接合時に、電子部品等と基板との接合に十分な強度を有し、かつ、濡れ性や接合信頼性に優れたはんだペーストを得ることができ好ましい。
また、高級脂肪族アミンを有機溶剤等と混合して、その溶液とはんだ合金粉末と混合・乾燥して高級脂肪族アミンをはんだ合金粉末表面にコーティングをした後、フラックスと混合してはんだペーストを製造すると、はんだ合金粉末同士の凝集が防止され、かつ、はんだ合金粉末をはんだペースト内に分散させることができ、そのためはんだ接合時に、凝集粉の空隙に起因するボイドの発生が少なく、電子部品等と基板との接合に十分な強度を有し、濡れ性や接合信頼性に優れたはんだペーストを得ることができるため好ましい。
このように、高級脂肪族アミンをはんだ合金粉末の表面に付着させると、はんだ合金粉末の酸化を抑制し、かつはんだ合金粉末同士の凝集を防止することにより分散性を向上させることができる。
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
<はんだ母合金の製造>
まず、原料としてそれぞれ純度99.99質量%以上の、Bi、Ag、Al、Cu、Ge、Sb、Sn、Zn、およびPを準備した。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく均一になるように留意しながら切断、粉砕等を行い、3mm以下の大きさに細かくした。次に、高周波溶解炉用グラファイトるつぼに、これら原料から所定量を秤量して入れた。
原料の入ったるつぼを高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7L/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融しはじめたら混合棒でよく攪拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混ぜた。十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかにるつぼを取り出し、るつぼ内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。鋳型には、はんだ合金粉末を製造するためのアトマイズ用に直径140mmの円柱形状のものを使用した。
このようにして、原料の混合比率を変えた以外は上記と同様にして、試料1〜23のはんだ母合金を作製した。これらの試料1〜23の各はんだ母合金について、ICP発光分光分析器を用いて組成分析を行った。得られた分析結果を下記表1に示す。なお、試料1〜17は本発明の実施例、試料18〜23は本発明の比較例である。
まず、原料としてそれぞれ純度99.99質量%以上の、Bi、Ag、Al、Cu、Ge、Sb、Sn、Zn、およびPを準備した。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく均一になるように留意しながら切断、粉砕等を行い、3mm以下の大きさに細かくした。次に、高周波溶解炉用グラファイトるつぼに、これら原料から所定量を秤量して入れた。
原料の入ったるつぼを高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7L/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融しはじめたら混合棒でよく攪拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混ぜた。十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかにるつぼを取り出し、るつぼ内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。鋳型には、はんだ合金粉末を製造するためのアトマイズ用に直径140mmの円柱形状のものを使用した。
このようにして、原料の混合比率を変えた以外は上記と同様にして、試料1〜23のはんだ母合金を作製した。これらの試料1〜23の各はんだ母合金について、ICP発光分光分析器を用いて組成分析を行った。得られた分析結果を下記表1に示す。なお、試料1〜17は本発明の実施例、試料18〜23は本発明の比較例である。
<はんだ合金粉末の製造>
はんだペースト用合金粉末の製造方法はとくに限定されないが、アトマイズ法により製造するのが一般的である。アトマイズ法は気相中、液相中どちらで行ってもよく、目的とするはんだ合金粉末の粒径や粒度分布等を考慮し選定すればよい。本実施例及び比較例に用いるはんだ合金粉末は、生産性が高く、比較的細かいはんだ合金粉末の製造ができる気相中アトマイズ法によりを作製した。
具体的には、気相中アトマイズ装置を用いて、高周波溶解方式によって気相中アトマイズを行った。まず、上記した試料1〜23のはんだ母合金をそれぞれ個別に投入した高周波溶解るつぼを気相中アトマイズ装置に設置し、蓋をして密閉した後、窒素フローし、実質的に酸素が無い状態にした。気相中アトマイズ装置の試料排出口や回収容器部分も同様に窒素フローして酸素が無い状態にした。
この状態で高周波電源のスイッチを入れ、はんだ母合金を400℃以上に加熱し、はんだ母合金が十分溶融した状態で溶融したはんだ母合金に窒素で圧力を加え、アトマイズし粉末に加工した。このようにして作製されたはんだ合金粉末を回収容器に集め、この容器中で十分に冷却してから大気中に取り出した。十分に冷却してから取り出す理由は、高温状態で取り出すと発火したり、はんだ合金粉末が酸化して濡れ性等の効果を下げてしまったりするからである。
このように製造した各はんだ合金粉末をそれぞれ目開きが20μmと50μmの篩で分級して、直径が20〜50μmのはんだ合金粉末試料を得た。
はんだペースト用合金粉末の製造方法はとくに限定されないが、アトマイズ法により製造するのが一般的である。アトマイズ法は気相中、液相中どちらで行ってもよく、目的とするはんだ合金粉末の粒径や粒度分布等を考慮し選定すればよい。本実施例及び比較例に用いるはんだ合金粉末は、生産性が高く、比較的細かいはんだ合金粉末の製造ができる気相中アトマイズ法によりを作製した。
具体的には、気相中アトマイズ装置を用いて、高周波溶解方式によって気相中アトマイズを行った。まず、上記した試料1〜23のはんだ母合金をそれぞれ個別に投入した高周波溶解るつぼを気相中アトマイズ装置に設置し、蓋をして密閉した後、窒素フローし、実質的に酸素が無い状態にした。気相中アトマイズ装置の試料排出口や回収容器部分も同様に窒素フローして酸素が無い状態にした。
この状態で高周波電源のスイッチを入れ、はんだ母合金を400℃以上に加熱し、はんだ母合金が十分溶融した状態で溶融したはんだ母合金に窒素で圧力を加え、アトマイズし粉末に加工した。このようにして作製されたはんだ合金粉末を回収容器に集め、この容器中で十分に冷却してから大気中に取り出した。十分に冷却してから取り出す理由は、高温状態で取り出すと発火したり、はんだ合金粉末が酸化して濡れ性等の効果を下げてしまったりするからである。
このように製造した各はんだ合金粉末をそれぞれ目開きが20μmと50μmの篩で分級して、直径が20〜50μmのはんだ合金粉末試料を得た。
<はんだペーストの製造>
次に、それぞれのはんだ母合金から作製したはんだ合金粉末を、それぞれ所定のフラックスおよび高級脂肪族アミンと混合し、はんだペーストを作製した。本発明においてフラックスは特に限定されるものではないが、本実施例においてはフラックスには、ベース材としてロジンを、活性剤としてカルボン酸を、溶剤として高沸点のアルコールを用いた。高級脂肪族アミンにはオレイルアミンを用いた。まず、はんだペースト全体100質量%に対して、オレイルアミンを表1に示す量準備した。次に、ロジンと活性剤を合わせたものと、高沸点アルコールを2:1(質量比)で混合した溶液を作製し、その溶液を表1に示すフラックス量準備した。また、はんだペースト全体100質量%から表1に示すフラックス量および高級脂肪族アミン量を除いた量のはんだ合金粉末を準備した。
[製法1]
試料1〜15、18〜22については、準備したオレイルアミンとフラックスを小型ブレンダーで混合してフラックス混合液を作製し、その後、準備したはんだ合金粉末を小型ブレンダーに追加投入して混合し、はんだペーストを製造した。
[製法2]
また、試料16については、オレイルアミンをメタノールと混合し5倍(質量比)に希釈した混合液を、小型ブレンダーではんだ合金粉末と混合し、その後、真空中40℃で2時間乾燥しメタノールを揮発させた該はんだ合金粉末を得た。得た合金粉末を、フラックスと共に小型ブレンダーで混合して、はんだペーストを製造した。本試料においては、オレイルアミンの塗布量は、はんだ合金粉末のオレイルアミン塗布前後の質量差から求めた。
[製法3]
また、試料17については、オレイルアミン、フラックス、およびはんだ合金粉末を小型ブレンダーで同時に混合して、はんだペーストを製造した。
[製法4]
また、試料23については、オレイルアミンを用いず、フラックスとはんだ合金粉末を小型ブレンダーで混合し、はんだペーストを製造した。
次に、それぞれのはんだ母合金から作製したはんだ合金粉末を、それぞれ所定のフラックスおよび高級脂肪族アミンと混合し、はんだペーストを作製した。本発明においてフラックスは特に限定されるものではないが、本実施例においてはフラックスには、ベース材としてロジンを、活性剤としてカルボン酸を、溶剤として高沸点のアルコールを用いた。高級脂肪族アミンにはオレイルアミンを用いた。まず、はんだペースト全体100質量%に対して、オレイルアミンを表1に示す量準備した。次に、ロジンと活性剤を合わせたものと、高沸点アルコールを2:1(質量比)で混合した溶液を作製し、その溶液を表1に示すフラックス量準備した。また、はんだペースト全体100質量%から表1に示すフラックス量および高級脂肪族アミン量を除いた量のはんだ合金粉末を準備した。
[製法1]
試料1〜15、18〜22については、準備したオレイルアミンとフラックスを小型ブレンダーで混合してフラックス混合液を作製し、その後、準備したはんだ合金粉末を小型ブレンダーに追加投入して混合し、はんだペーストを製造した。
[製法2]
また、試料16については、オレイルアミンをメタノールと混合し5倍(質量比)に希釈した混合液を、小型ブレンダーではんだ合金粉末と混合し、その後、真空中40℃で2時間乾燥しメタノールを揮発させた該はんだ合金粉末を得た。得た合金粉末を、フラックスと共に小型ブレンダーで混合して、はんだペーストを製造した。本試料においては、オレイルアミンの塗布量は、はんだ合金粉末のオレイルアミン塗布前後の質量差から求めた。
[製法3]
また、試料17については、オレイルアミン、フラックス、およびはんだ合金粉末を小型ブレンダーで同時に混合して、はんだペーストを製造した。
[製法4]
また、試料23については、オレイルアミンを用いず、フラックスとはんだ合金粉末を小型ブレンダーで混合し、はんだペーストを製造した。
このようにして、上記表1に示す試料1〜23のはんだペーストを作製した。そして、これら試料1〜23のはんだペーストの各々に対して、下記に示す評価を行った。すなわち、濡れ性評価1として粉末のはんだ溶け残りの確認を行い、濡れ性評価2として縦横比の測定を行い、接合性評価1としてボイド率の測定を行い、接合性評価2としてシェア強度の測定を行い、信頼性評価としてヒートサイクル試験を行った。
<濡れ性評価1(はんだ合金粉末の溶け残りの確認)>
濡れ性評価1として、Cu基板(板厚:約0.70mm)上にマスクを使ってはんだペーストを直径2.0mm、厚さ150μmの円盤形状に印刷した。そのはんだペーストが印刷された基板を以下のように加熱、接合して接合体を作り、光学顕微鏡ではんだ合金粉末の溶け残りの有無を確認した。まず、濡れ性試験機を起動し、加熱されるヒーター部分に2重のカバーをしてヒーター部の周囲4箇所から窒素を流した(窒素流量:各12L/分)。その後、ヒーター設定温度を各試料の融点より50℃高く設定して加熱した。ヒーター温度が設定温度で安定した後、はんだペーストを塗布したCu基板をヒーター部にセッティングし、25秒加熱した。その後、Cu基板をヒーター部から取り上げて、その横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦移して冷却した。十分に冷却した後、大気中に取り出した。はんだ合金粉末の溶け残りを確認するため接合体の洗浄等はあえて行わなかった。このようにして作った各接合体をはんだが接合された面と直角の方向で、はんだが接合された面側から光学顕微鏡ではんだ合金粉末の溶け残りの有無を確認した。はんだ合金粉末が残っていた場合を「×」、はんだ合金粉末が残っておらずはんだ合金粉末が溶けてきれいな金属光沢のあるはんだが基板に濡れ広がっていた場合を「○」とした。
濡れ性評価1として、Cu基板(板厚:約0.70mm)上にマスクを使ってはんだペーストを直径2.0mm、厚さ150μmの円盤形状に印刷した。そのはんだペーストが印刷された基板を以下のように加熱、接合して接合体を作り、光学顕微鏡ではんだ合金粉末の溶け残りの有無を確認した。まず、濡れ性試験機を起動し、加熱されるヒーター部分に2重のカバーをしてヒーター部の周囲4箇所から窒素を流した(窒素流量:各12L/分)。その後、ヒーター設定温度を各試料の融点より50℃高く設定して加熱した。ヒーター温度が設定温度で安定した後、はんだペーストを塗布したCu基板をヒーター部にセッティングし、25秒加熱した。その後、Cu基板をヒーター部から取り上げて、その横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦移して冷却した。十分に冷却した後、大気中に取り出した。はんだ合金粉末の溶け残りを確認するため接合体の洗浄等はあえて行わなかった。このようにして作った各接合体をはんだが接合された面と直角の方向で、はんだが接合された面側から光学顕微鏡ではんだ合金粉末の溶け残りの有無を確認した。はんだ合金粉末が残っていた場合を「×」、はんだ合金粉末が残っておらずはんだ合金粉末が溶けてきれいな金属光沢のあるはんだが基板に濡れ広がっていた場合を「○」とした。
<濡れ性評価2(縦横比の測定)>
濡れ性評価2として、はんだ合金粉末の溶け残りの確認の際に作った接合体と同様の接合体を作り、その接合体をアルコールで洗浄、その後真空乾燥して、その基板に濡れ広がったはんだの縦横比を測定した。得られた接合体、即ち図1に示すようにCu基板1上にはんだ合金2が接合された接合体について、濡れ広がったはんだ合金の縦横比を求めた。具体的には、図2に示す最大のはんだ濡れ広がり長さである長径X1、最小のはんだ濡れ広がり長さである短径X2を測定し、下記計算式1により縦横比を算出した。計算式1の縦横比が1に近いほど基板上に円形状に濡れ広がっており、濡れ広がり性がよいと判断できる。計算式1の縦横比が1より大きくなるに従い、濡れ広がり形状が円形からずれていき、溶融はんだ合金の移動距離にバラつきがでている状態を表しており、このような状態になった場合、合金層の厚みや成分バラつきが大きくなり、場所により接合挙動が不均一になることで、均一で良好な接合ができなくなってしまう。さらに、ある方向にはんだ合金が偏って流れ、濡れ広がってしまった場合、はんだ量が過剰な箇所とはんだが無い箇所が出現し、接合不良や場合よっては接合できなかったりしてしまう。接合体の縦横比の測定結果を表2に示す。
[計算式1]
縦横比=長径÷短径
濡れ性評価2として、はんだ合金粉末の溶け残りの確認の際に作った接合体と同様の接合体を作り、その接合体をアルコールで洗浄、その後真空乾燥して、その基板に濡れ広がったはんだの縦横比を測定した。得られた接合体、即ち図1に示すようにCu基板1上にはんだ合金2が接合された接合体について、濡れ広がったはんだ合金の縦横比を求めた。具体的には、図2に示す最大のはんだ濡れ広がり長さである長径X1、最小のはんだ濡れ広がり長さである短径X2を測定し、下記計算式1により縦横比を算出した。計算式1の縦横比が1に近いほど基板上に円形状に濡れ広がっており、濡れ広がり性がよいと判断できる。計算式1の縦横比が1より大きくなるに従い、濡れ広がり形状が円形からずれていき、溶融はんだ合金の移動距離にバラつきがでている状態を表しており、このような状態になった場合、合金層の厚みや成分バラつきが大きくなり、場所により接合挙動が不均一になることで、均一で良好な接合ができなくなってしまう。さらに、ある方向にはんだ合金が偏って流れ、濡れ広がってしまった場合、はんだ量が過剰な箇所とはんだが無い箇所が出現し、接合不良や場合よっては接合できなかったりしてしまう。接合体の縦横比の測定結果を表2に示す。
[計算式1]
縦横比=長径÷短径
<接合性評価1(ボイド率の測定)>
接合性評価1として、はんだペースト試料を用いて図3に示すようなSiチップ3とCu基板1(板厚:0.7mm)との接合体を作り、ボイド率を測定した。すなわち、Cu基板1にマスクを使ってはんだペーストを2.0mm×2.0mm、厚さ120μmの形状に印刷し、基板を加熱後、そのはんだペーストの上に2.0mm×2.0mmのSiチップ3を置き、その基板を以下のように加熱、接合してSiチップ接合体を作り、そのボイド率を測定した。
このようにして作製した、図3に示す接合体について、はんだ合金2が接合されたCu基板1のボイド率を、X線透過装置を用いて測定した。具体的には、はんだ合金2とCu基板1の接合面をはんだ合金2の接合された面の方向で、はんだ合金2の接合された面側から垂直にX線を透過し、下記計算式2を用いてボイド率を算出した。接合体のボイド率の測定結果を表2に示す。
[計算式2]
ボイド率(%)=ボイド面積÷(ボイド面積+はんだ合金とCu基板の接合面積)×100
接合性評価1として、はんだペースト試料を用いて図3に示すようなSiチップ3とCu基板1(板厚:0.7mm)との接合体を作り、ボイド率を測定した。すなわち、Cu基板1にマスクを使ってはんだペーストを2.0mm×2.0mm、厚さ120μmの形状に印刷し、基板を加熱後、そのはんだペーストの上に2.0mm×2.0mmのSiチップ3を置き、その基板を以下のように加熱、接合してSiチップ接合体を作り、そのボイド率を測定した。
このようにして作製した、図3に示す接合体について、はんだ合金2が接合されたCu基板1のボイド率を、X線透過装置を用いて測定した。具体的には、はんだ合金2とCu基板1の接合面をはんだ合金2の接合された面の方向で、はんだ合金2の接合された面側から垂直にX線を透過し、下記計算式2を用いてボイド率を算出した。接合体のボイド率の測定結果を表2に示す。
[計算式2]
ボイド率(%)=ボイド面積÷(ボイド面積+はんだ合金とCu基板の接合面積)×100
<接合性評価2(シェア強度の相対評価)>
はんだの接合性を確認するため、ボイド率の測定の際に作ったSiチップ接合体と同様の接合体を作り、そのシェア強度を測定した。
接合体はダイボンダーを用いて作製した。まず装置のヒーター部に窒素ガスを流しながら各はんだ試料の融点より40℃高い温度になるようにした後、ヒーター部にはんだペーストを塗布してCu基板を載置し35秒加熱し、溶融したはんだの上にSiチップを載置しスクラブを5秒かけた。スクラブ終了後、接合体を速やかに窒素ガスの流れている冷却部に移し、室温まで冷却後、大気中に取り出した。このようにして準備したSiチップ接合体に関してシェア強度試験を用いてシェア強度を測定した。具体的には接合体を装置に固定してSiチップを治具によって横方向から押してシェア強度を測定した。接合性評価2は、本発明の半田ペーストを構成する材料である各種添加元素の含有量を規定する各種範囲の略中央値を用いて作製され、十分な接合強度が確認された試料2のシェア強度の値を100%とした場合の相対評価で行った。評価結果を表2に示す。
はんだの接合性を確認するため、ボイド率の測定の際に作ったSiチップ接合体と同様の接合体を作り、そのシェア強度を測定した。
接合体はダイボンダーを用いて作製した。まず装置のヒーター部に窒素ガスを流しながら各はんだ試料の融点より40℃高い温度になるようにした後、ヒーター部にはんだペーストを塗布してCu基板を載置し35秒加熱し、溶融したはんだの上にSiチップを載置しスクラブを5秒かけた。スクラブ終了後、接合体を速やかに窒素ガスの流れている冷却部に移し、室温まで冷却後、大気中に取り出した。このようにして準備したSiチップ接合体に関してシェア強度試験を用いてシェア強度を測定した。具体的には接合体を装置に固定してSiチップを治具によって横方向から押してシェア強度を測定した。接合性評価2は、本発明の半田ペーストを構成する材料である各種添加元素の含有量を規定する各種範囲の略中央値を用いて作製され、十分な接合強度が確認された試料2のシェア強度の値を100%とした場合の相対評価で行った。評価結果を表2に示す。
<信頼性評価(ヒートサイクル試験)>
はんだ接合の信頼性を評価するためにヒートサイクル試験を行った。なお、この試験は、ボイド率の測定の際に作ったSiチップ接合体と同様の接合体を作り、そのSiチップ接合体を用いて試験した。まず、接合体に対して、−40℃の冷却と250℃の加熱を1サイクルとして、これを所定のサイクル繰り返した。その後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により接合面の観察を行った。接合面のはがれや、はんだ接合体内部にクラックが観察された場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。評価結果を表2に示す。
はんだ接合の信頼性を評価するためにヒートサイクル試験を行った。なお、この試験は、ボイド率の測定の際に作ったSiチップ接合体と同様の接合体を作り、そのSiチップ接合体を用いて試験した。まず、接合体に対して、−40℃の冷却と250℃の加熱を1サイクルとして、これを所定のサイクル繰り返した。その後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により接合面の観察を行った。接合面のはがれや、はんだ接合体内部にクラックが観察された場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。評価結果を表2に示す。
上記表2から分かるように、本発明の実施例である試料1〜17のはんだペーストは、各評価項目において良好な特性を示している。即ち、濡れ性評価1のはんだ合金粉末の溶け残り観察では、全く溶け残りが観察されなかった。また、濡れ性評価2の縦横比の測定結果に関しては、縦横比が1.06以下で、円状に均一に濡れ広がることが確認できた。また、接合性評価1のボイド率の測定結果に関しては、ボイド率は0.7%以下でありほとんどボイドが発生しなかった。また、接合性評価2のシェア強度の相対評価では、92%以上の高い値を示した。また、信頼性評価のヒートサイクル試験に関しては、500サイクルまで不良は発生しなかった。
また、高級脂肪族アミンとはんだ合金粉末を混合してから残りのフラックスを混合する方法で製造した試料16は、材料が同じで高級脂肪族アミンを含有するフラックスを製造してからはんだ合金粉末と混合する方法で製造した試料2とほぼ同等の良好な結果が得られた。全ての材料を同時に混合する方法で製造した試料17は、試料2に比べると、縦横比やシェア強度が若干劣るものの、良好な結果が得られている。
以上、本発明の実施例である試料1〜17のはんだペーストは、はんだ合金粉末が適正な組成範囲内であり、かつ適正な量の高級脂肪族アミンを含有しているため、はんだ接合体に欠陥を生じることなく良好な結果が得られた。
一方、比較例である試料18〜23の各はんだペーストは、はんだ合金粉末に適切な組成の物を用いたため、濡れ性評価1のはんだ合金粉末の溶け残りは観察されなかったものの、その他のいずれかの特性において好ましくない結果となった。即ち、フラックスの添加量が本発明の範囲より少ない試料18、19は、フラックス不足によりはんだペーストの粘度が増加し過ぎて流動性の高いペースト状にならず、ボソボソの状態になってしまい、印刷後も形状を維持できずに一部崩れる箇所も生じた。このため、はんだ合金粉末の表面はフラックスで覆われていることから加熱により溶けて接合することはできるものの、溶融時も真円とならず縦横比が悪化した。また、溶融時に気泡を取り込んでしまい、ボイド率が上昇し、シェア強度、接合信頼性も低下した。フラックス量が減るに従い、接合性が悪化している。なお、試料1は、フラックスの添加量が試料18に近いが、試料18におけるフラックス不足により生じるボソボソの状態にまではならない。このため、試料1は、ボイド率において若干劣るものの、各評価項目において良好な範囲内の特性を示した。フラックスの添加量が本発明の範囲より多い試料20、21は、フラックスが多過ぎることにより、はんだ合金粉末が溶融して接合・固化するまでの間にフラックスが十分に抜けきらずにはんだ接合体内に取り込まれてしまい、残留フラックスによるボイドや異物により接合性が悪化した。高級脂肪族アミンの添加量が本発明の範囲より多い試料22は、粘度の低下により印刷形状が崩れてしまい、接合に必要なボリュームが十分に確保できないことでボイドを巻き込んだことにより接合性が悪化した。高級脂肪族アミンを添加していない試料23は、はんだ合金粉末同士が凝集し、印刷後の形状が歪となってしまい、溶融時に気泡を取り込んでボイド率が上昇し、シェア強度、接合信頼性も低下した。
また、高級脂肪族アミンとはんだ合金粉末を混合してから残りのフラックスを混合する方法で製造した試料16は、材料が同じで高級脂肪族アミンを含有するフラックスを製造してからはんだ合金粉末と混合する方法で製造した試料2とほぼ同等の良好な結果が得られた。全ての材料を同時に混合する方法で製造した試料17は、試料2に比べると、縦横比やシェア強度が若干劣るものの、良好な結果が得られている。
以上、本発明の実施例である試料1〜17のはんだペーストは、はんだ合金粉末が適正な組成範囲内であり、かつ適正な量の高級脂肪族アミンを含有しているため、はんだ接合体に欠陥を生じることなく良好な結果が得られた。
一方、比較例である試料18〜23の各はんだペーストは、はんだ合金粉末に適切な組成の物を用いたため、濡れ性評価1のはんだ合金粉末の溶け残りは観察されなかったものの、その他のいずれかの特性において好ましくない結果となった。即ち、フラックスの添加量が本発明の範囲より少ない試料18、19は、フラックス不足によりはんだペーストの粘度が増加し過ぎて流動性の高いペースト状にならず、ボソボソの状態になってしまい、印刷後も形状を維持できずに一部崩れる箇所も生じた。このため、はんだ合金粉末の表面はフラックスで覆われていることから加熱により溶けて接合することはできるものの、溶融時も真円とならず縦横比が悪化した。また、溶融時に気泡を取り込んでしまい、ボイド率が上昇し、シェア強度、接合信頼性も低下した。フラックス量が減るに従い、接合性が悪化している。なお、試料1は、フラックスの添加量が試料18に近いが、試料18におけるフラックス不足により生じるボソボソの状態にまではならない。このため、試料1は、ボイド率において若干劣るものの、各評価項目において良好な範囲内の特性を示した。フラックスの添加量が本発明の範囲より多い試料20、21は、フラックスが多過ぎることにより、はんだ合金粉末が溶融して接合・固化するまでの間にフラックスが十分に抜けきらずにはんだ接合体内に取り込まれてしまい、残留フラックスによるボイドや異物により接合性が悪化した。高級脂肪族アミンの添加量が本発明の範囲より多い試料22は、粘度の低下により印刷形状が崩れてしまい、接合に必要なボリュームが十分に確保できないことでボイドを巻き込んだことにより接合性が悪化した。高級脂肪族アミンを添加していない試料23は、はんだ合金粉末同士が凝集し、印刷後の形状が歪となってしまい、溶融時に気泡を取り込んでボイド率が上昇し、シェア強度、接合信頼性も低下した。
1 Cu基板
2 はんだ合金
3 Siチップ
2 はんだ合金
3 Siチップ
Claims (5)
- はんだ合金粉末、フラックス、および高級脂肪族アミンから構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、高級脂肪族アミンを0.01質量%以上2.0質量%以下含有し、残部のはんだ合金粉末がBi系はんだ合金粉末であることを特徴とする高温用Pbフリーはんだペースト。
- 前記Bi系はんだ合金粉末が、AgもしくはZnを必須成分として含有し、更に、Al、Cu、Ge、Sb、Sn、およびPを含有することができ、Bi系はんだ合金粉末の合計100質量%に対し、
Agを0.1質量%以上12.0質量%以下含有し、または/及びZnを0.4質量%以上13.5質量%以下含有し、
更にAlを含有する場合は0.03質量%以上1.0質量%以下含有し、
Cuを含有する場合は0.05質量%以上2.0質量%以下含有し、
Geを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Sbを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Snを含有する場合は0.01質量%以上5.0質量%以下含有し、
Pを含有する場合は0.0005質量%以上0.5質量%以下含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の高温用Pbフリーはんだペースト。 - 前記高級脂肪族アミンが、飽和モノアミン、不飽和モノアミン、ジアミンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の高温用Pbフリーはんだペースト。
- 請求項1〜3に記載の高温用Pbフリーはんだペーストを製造する方法であって、前記高級脂肪族アミンとフラックスを混合した後に、該フラックス混合液と前記はんだ合金粉末を混合することを特徴とする高温用Pbフリーはんだペーストの製造方法。
- 請求項1〜3に記載の高温用Pbフリーはんだペーストを製造する方法であって、前記はんだ合金粉末の表面に前記高級脂肪族アミンをコーティングした後に該はんだ合金粉とフラックスを混合することを特徴とする高温用Pbフリーはんだペーストの製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016064680A JP2017177121A (ja) | 2016-03-28 | 2016-03-28 | 高温用Pbフリーはんだペースト及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017177121A true JP2017177121A (ja) | 2017-10-05 |
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JP2016064680A Pending JP2017177121A (ja) | 2016-03-28 | 2016-03-28 | 高温用Pbフリーはんだペースト及びその製造方法 |
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Cited By (1)
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JP6338007B1 (ja) * | 2017-11-02 | 2018-06-06 | 千住金属工業株式会社 | フラックス及びソルダペースト |
-
2016
- 2016-03-28 JP JP2016064680A patent/JP2017177121A/ja active Pending
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JP6338007B1 (ja) * | 2017-11-02 | 2018-06-06 | 千住金属工業株式会社 | フラックス及びソルダペースト |
JP2019084549A (ja) * | 2017-11-02 | 2019-06-06 | 千住金属工業株式会社 | フラックス及びソルダペースト |
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