(実施形態1)
(1)構成
(1.1)全体構成
本実施形態に係るインターホンシステム10は、図1に示すように、インターホン親機1及びインターホン子機2を備えている。本実施形態では、インターホンシステム10が、集合住宅用のインターホンシステムである場合を例として説明する。
インターホン親機1は、集合住宅の住戸内(室内)に設置される。インターホン子機2は、集合住宅の住戸の外玄関等の壁に設置されるドアホン子機である。インターホン親機1とインターホン子機2とは互いに通信可能に構成されている。これにより、インターホンシステムでは、インターホン親機1とインターホン子機2との間で通話可能となる。また、インターホン子機2には撮像部21が設けられ、インターホン親機1には表示部12が設けられている。これにより、インターホンシステム10では、撮像部21で撮像された来訪者等の画像をインターホン親機1の表示部12に表示することができる。
インターホン子機2は、図1に示すように、撮像部21と、子機通信部22と、画像補正部23と、呼出部24と、子機制御部41とを有している。
撮像部21は、撮像素子211と、露光制御部212とを有している。撮像部21は、来訪者等の被写体を撮像するためのカメラである。そのため、来訪者がインターホン子機2を操作する際に少なくとも来訪者の顔が画像に写り込むように、撮像部21の撮像エリア(視野)はインターホン子機2の前方に設定される。ここでは、撮像部21は動画を撮像するカメラであると仮定するが、撮像部21は静止画を撮像するカメラ(スチルカメラ)であってもよい。また、本実施形態では、撮像部21はカラー画像を撮像するカラーカメラであると仮定するが、撮像部21はモノクローム画像を撮像するモノクロームカメラであってもよい。
撮像素子211は、例えばCCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサ、又はCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の二次元イメージセンサである。撮像部21は、被写体からの光をレンズ等の光学系によって撮像素子211の撮像面(受光面)上に結像させ、撮像素子211にて被写体からの光を電気信号(画像信号)に変換する。そのため、撮像部21で撮像された画像は、撮像部21から画像信号として出力される。ここでは、撮像部21は、撮像素子211の出力信号からYUVフォーマットのデジタルの画像信号を生成し、デジタルの画像信号を出力するように構成されている。
露光制御部212は、例えば露光時間、又は画像信号のゲイン等を制御することで、撮像部21の露光制御を行う。具体的には、露光制御部212が、撮像素子211の電子シャッタのシャッタ速度(露光時間)を短くすることで、露光量が小さくなって、撮像部21から出力される画像は暗く、つまり画像の輝度値は低くなる。また、露光制御部212が画像信号のゲインを下げることで、露光量が小さくなって、撮像部21から出力される画像は暗く、つまり画像の輝度値は低くなる。画像信号のゲインは、撮像素子211から出力される信号を増幅する信号増幅部(AGC:Automatic Gain Control)等で調整可能である。
子機通信部22は、インターホン親機1と通信するための通信インタフェースである。子機通信部22は、例えばツイストペア線等からなる2線式の伝送路5(図1では1本の線で示す)を介して、インターホン親機1と電気的に接続されている。子機通信部22は、送信部221を含んでいる。送信部221は、撮像部21で撮像された画像の画像信号をインターホン親機1に送信する。さらに、インターホン子機2とインターホン親機1との間で音声信号及び制御信号が双方向に伝送可能となるよう、子機通信部22は、インターホン親機1との間で双方向に通信可能に構成されている。
画像補正部23は、撮像部21から出力される画像信号を受けて、信号処理により画像の補正を行う。子機通信部22には、画像補正部23から出力される画像(画像信号)が入力される。そのため、送信部221は、撮像部21から出力された状態の画像信号ではなく、画像補正部23で補正された画像信号をインターホン親機1に送信することになる。画像補正部23は、例えばDSP(Digital Signal Processor)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等で実現される。画像補正部23は、露光制御部212とプロセッサが共用されていてもよい。
ここで、画像補正部23は、均一変換部31を含んでいる。均一変換部31は、後述するインターホン親機1の不均一変換部32と共に、表示画像の輝度値についての階調変換処理を行う階調変換部3(図3参照)を構成する。ここでいう「表示画像」は、後述するインターホン親機1の表示部12に表示される画像を意味する。ただし、階調変換部3は、表示部12に表示される表示画像に対して、直接的に階調変換処理を行うのではなく、画像が撮像部21から出力され、表示部12に表示されるまでの間のどこかで、階調変換処理を行えばよい。これにより、結果的に、表示部12に表示される表示画像に階調変換処理が施されることになる。均一変換部31は、表示画像の全画素に対して均一の階調変換処理を行う。つまり、均一変換部31は、表示画像の全画素に対して共通の変換係数(γ値)を用いた階調変換処理、いわゆるガンマ(γ)変換を行う。均一変換部31での階調変換処理の詳細については、「(1.2)露光制御及び階調変換処理」の欄で説明する。
呼出部24は、来訪者から呼び出しのための操作を受け付ける。呼出部24に対して所定の操作(例えば押操作)がされると、インターホン子機2は、住戸内の居住者を呼び出すための制御信号を子機通信部22からインターホン親機1へ送信する。
子機制御部41は、インターホン子機2の各部を制御する。子機制御部41は、後述するインターホン親機1の親機制御部42と共に、露光制御部212及び階調変換部3を制御する制御部4(図3参照)を構成する。子機制御部41は、プロセッサ及びメモリを備えたマイクロコンピュータ(コンピュータ)を主構成とする。マイクロコンピュータは、メモリに記憶されているプログラムをプロセッサで実行することにより、子機制御部41として機能する。プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいし、電気通信回線を通じて、又はメモリカードなどの記録媒体に記録されて提供されてもよい。
一方、インターホン親機1は、図1に示すように、親機通信部11と、表示部12と、画像処理部13と、操作部14と、記憶部15と、親機制御部42とを有している。
親機通信部11は、インターホン子機2と通信するための通信インタフェースである。親機通信部11は、伝送路5を介して、インターホン子機2の子機通信部22と電気的に接続されている。親機通信部11は、受信部111を含んでいる。受信部111は、インターホン子機2の送信部221から送信された画像信号を受信する。さらに、インターホン子機2とインターホン親機1との間で音声信号及び制御信号が双方向に伝送可能となるよう、親機通信部11は、インターホン子機2(子機通信部22)との間で双方向に通信可能に構成されている。
表示部12は、画像信号に基づいて表示画像を表示する。表示部12は、例えば液晶ディスプレイである。また、インターホン親機1がタッチパネルディスプレイを備えている場合、タッチパネルディスプレイが表示部12と操作部14とを兼ねることになる。
画像処理部13は、受信部111から出力される画像信号を受けて、画像処理を行う。表示部12には、画像処理部13から出力される画像(画像信号)が入力される。そのため、表示部12は、受信部111が受信した状態の画像信号ではなく、画像処理部13で画像処理が施された画像信号を表示することになる。画像処理部13は、例えばDSP(Digital Signal Processor)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等で実現される。画像処理部13は、親機制御部42とプロセッサが共用されていてもよい。
ここで、画像処理部13は、不均一変換部32を含んでいる。不均一変換部32は、インターホン子機2の均一変換部31と共に、階調変換部3(図3参照)を構成する。不均一変換部32は、表示画像の全画素に対して不均一の階調変換処理を行う。つまり、不均一変換部32は、表示画像に対して局所的なトーンマッピング(ローカル・トーンマッピング)処理、いわゆるHDR(High Dynamic Range)処理を行う。これにより、表示画像の細部における明暗差が拡大される。不均一変換部32での階調変換処理の詳細については、「(1.2)露光制御及び階調変換処理」の欄で説明する。
操作部14は、住戸内の居住者の操作を受け付ける。親機通信部11が、居住者を呼び出すための制御信号をインターホン子機2から受信している状態で、操作部14に対して所定の操作(例えば押操作)がされると、インターホン親機1とインターホン子機2との間で音声通話可能な状態となる。さらに、操作部14は、後述する制御部4(図3参照)の動作モードを切り替えるための操作を受け付ける。
記憶部15は、データを書き換え可能なメモリであって、不揮発性メモリであることが好ましい。記憶部15は、少なくとも制御データ及び変換データを記憶する。ここでいう「制御データ」は、例えば露光時間及びゲインの収束値等、露光制御部212での露光制御に用いられるデータである。ここでいう「変換データ」は、例えばガンマ値及びトーンカーブ等、階調変換部3での階調変換処理に用いられるデータである。
親機制御部42は、インターホン親機1の各部を制御する。親機制御部42は、子機制御部41と共に、制御部4(図3参照)を構成する。親機制御部42は、プロセッサ及びメモリを備えたマイクロコンピュータ(コンピュータ)を主構成とする。マイクロコンピュータは、メモリに記憶されているプログラムをプロセッサで実行することにより、親機制御部42として機能する。プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいし、電気通信回線を通じて、又はメモリカードなどの記録媒体に記録されて提供されてもよい。
ところで、子機制御部41及び親機制御部42にて構成される制御部4は、露光制御部212及び階調変換部3(均一変換部31及び不均一変換部32)を制御する。制御部4は、第1モード及び第2モードを含む複数の動作モードを有している。本実施形態では、制御部4の動作モードは、第1モード及び第2モードの2つのみと仮定する。制御部4は、第1モードと第2モードとで、制御データ及び変換データの両方が変更されるように、動作モードに応じて露光制御部212及び階調変換部3(均一変換部31及び不均一変換部32)を制御する。
すなわち、制御部4の動作モードが第1モードである場合と、制御部4の動作モードが第2モードである場合とでは、露光制御部212での露光制御に用いられる制御データが異なり、階調変換部3での階調変換処理に用いられる変換データも異なることになる。言い換えれば、制御データと変換データとの組み合わせは、制御部4の複数の動作モードに一対一に対応付けられて、複数組存在する。記憶部15には、これら複数組の制御データ及び変換データが、制御部4の複数の動作モードに対応付けられて記憶される。そして、制御部4の動作モードが第1モードである場合には、制御部4は、第1モードに対応する制御データと変換データとの組み合わせを用いて、露光制御部212及び階調変換部3を制御する。一方、制御部4の動作モードが第2モードである場合には、制御部4は、第2モードに対応する制御データと変換データとの組み合わせを用いて、露光制御部212及び階調変換部3を制御する。
本実施形態では、制御部4は、インターホン子機2の子機制御部41と、インターホン親機1の親機制御部42とに分割されている。さらに、露光制御部212及び階調変換部3(均一変換部31及び不均一変換部32)についても、インターホン親機1とインターホン子機2とに分散して設けられている。そのため、インターホン子機2に設けられている露光制御部212及び均一変換部31については、制御部4のうち子機制御部41が制御する。また、インターホン親機1に設けられている不均一変換部32については、制御部4のうち親機制御部42が制御する。ただし、インターホン子機2とインターホン親機1とは、互いに通信可能に構成されている。よって、子機制御部41と親機制御部42とは、通信にて互いに同期することで、1つの制御部4と同様に動作可能である。
また、親機制御部42は、遅延処理部421としての機能を含んでいる。遅延処理部421は、制御部4の動作モードが切り替わるとき、制御データの変更に対して変換データの変更を遅延させる。遅延処理部421は、露光制御部212にて露光制御の内容が変更されるタイミングに、階調変換部3にて階調変換処理の内容が変更されるタイミングを合わせるように、制御データの変更に対して変換データの変更を遅延させる。
すなわち、露光制御部212は、例えば露光時間、又は画像信号のゲイン等を制御することで、撮像部21の露光制御を行うので、制御データが変更されてから、露光時間又はゲインが収束するまでにタイムラグが生じることがある。一方で、階調変換部3は、処理データが変更されると、すぐに階調変換処理の内容が変更されるため、制御データ及び変換データが同時に変更されると、階調変換処理の内容の変更タイミングと、露光制御の内容の変更タイミングとの間に時間差が生じる。そこで、遅延処理部421は、例えば、制御データの変更タイミングに対して変換データの変更タイミングを、上記タイムラグに相当する一定時間だけ遅延させることにより、上記時間差を小さくする。ただし、遅延処理部421は、制御データの変更に対して変換データの変更を遅延させればよく、露光制御部212にて露光制御の内容が変更されるタイミングに、階調変換部3にて階調変換処理の内容が変更されるタイミングが一致することは必須ではない。
また、図1では図示を省略しているが、インターホン親機1及びインターホン子機2の各々は、音声通話のための通話機能部を有している。通話機能部は、音声を電気信号(音声信号)に変換するマイクロフォン、音声信号を音声に変換するスピーカ、及び通話処理部を含む。
(1.2)露光制御及び階調変換処理
次に、露光制御部212及び階調変換部3(均一変換部31及び不均一変換部32)での露光制御及び階調変換処理について、図2A〜図2Cを参照して説明する。
図2Aは、露光制御部212での露光制御の特性を示すグラフである。図2Aでは、横軸を被写体の明るさとし、縦軸を輝度値として、撮像部21の入力(被写体の明るさ)−出力(輝度値)の特性を表している。ここでいう「輝度値」は、撮像部21から出力される画像における各画素の輝度値(画素値)を意味する。また、図2A中の、「Da1」(破線で示す)は、制御部4の動作モードが第1モードであるときの制御データを適用した場合の特性を表している。図2A中の、「Da2」(実線で示す)は、制御部4の動作モードが第2モードであるときの制御データを適用した場合の特性を表している。図2Aの例では、「Da1」よりも「Da2」の方が、グラフの傾き、つまり撮像部21の入力(被写体の明るさ)に対する出力(輝度値)の変化量が小さい。そのため、制御部4の動作モードが第1モードであるとき(Da1)よりも、制御部4の動作モードが第2モードであるとき(Da2)の方が、撮像部21での露光量が低くなる。
すなわち、露光制御部212は、図2Aに示すように、制御データを用いて、撮像部21の露光制御を行うことにより、被写体の明るさに対して、撮像部21から出力される画像の明るさ、つまり画像の各画素の輝度値を決定する。このとき、輝度値が飽和レベルV1に達すると「白とび」が生じることになる。したがって、撮像部21から出力される画像に「白とび」が生じる場合に、露光制御部212が、グラフの傾きを小さくすることで、撮像部21から出力される画像の「白とび」が低減される。よって、図2Aの例では、制御部4の動作モードが第1モードであるとき(Da1)よりも、制御部4の動作モードが第2モードであるとき(Da2)の方が、撮像部21から出力される画像に「白とび」が生じにくい。
図2Bは、均一変換部31での階調変換処理の特性を示すグラフである。図2Bでは、横軸を入力値とし、縦軸を出力値として、均一変換部31の入力−出力の特性を表している。ここでいう「入力値」及び「出力値」は、表示画像における各画素の輝度値を意味する。一例として、均一変換部31の入力値は12bit(4096階調)、均一変換部31の出力値は8bit(256階調)である。また、図2B中の、「Db1」(破線で示す)は、制御部4の動作モードが第1モードであるときの変換データを適用した均一変換部31の特性(トーンカーブ)を表している。図2B中の、「Db2」(実線で示す)は、制御部4の動作モードが第2モードであるときの変換データを適用した均一変換部31の特性(トーンカーブ)を表している。図2Bの例では、「Db1」よりも「Db2」の方が、入力値と出力値とが比例関係となる基準線L1(γ=1)からの乖離が大きく、中間領域(中間輝度域)で入力値に対する出力値が大きい。そのため、制御部4の動作モードが第1モードであるとき(Db1)よりも、制御部4の動作モードが第2モードであるとき(Db2)の方が、均一変換部31での階調変換処理が強調される。
すなわち、均一変換部31は、図2Bに示すように、変換データを用いて、表示画像の階調変換処理を行うことにより、入力値に対する出力値、つまり表示画像の各画素の輝度値を決定する。このとき、中間領域(中間輝度域)で入力値に対する出力値が小さいと、実際に表示部12に表示される表示画像において、例えば来訪者の顔部分が暗く(輝度値が低く)なり、来訪者の顔部分が見づらくなることがある。したがって、表示画像において来訪者の顔部分が暗い場合に、均一変換部31が、中間領域(中間輝度域)で入力値に対する出力値を大きくすることで、表示画像における来訪者の顔部分が明るくなる。よって、図2Bの例では、制御部4の動作モードが第1モードであるとき(トーンカーブDb1)よりも、制御部4の動作モードが第2モードであるとき(トーンカーブDb2)の方が、表示画像における来訪者の顔が明るくなる。
図2Cは、不均一変換部32での階調変換処理の特性を示すグラフである。図2Cでは、横軸を入力値とし、縦軸を出力値として、不均一変換部32の入力−出力の特性を表している。ここでいう「入力値」及び「出力値」は、表示画像における各画素の輝度値を意味する。一例として、不均一変換部32の入力値は12bit(4096階調)、不均一変換部32の出力値は8bit(256階調)である。また、図2C中の、「Dc1」(破線で示す)は、制御部4の動作モードが第1モードであるときの変換データを適用した不均一変換部32の特性(トーンカーブ)を表している。図2C中の、「Dc2」(実線で示す)は、制御部4の動作モードが第2モードであるときの変換データを適用した不均一変換部32の特性(トーンカーブ)を表している。図2Cの例では、「Dc1」よりも「Dc2」の方が、入力値と出力値とが比例関係となる基準線L2からの乖離が大きく、出力値の階調拡大(明暗拡大)幅が大きい。つまり、基準線L2と各トーンカーブDc1,Dc2との交点を基準値V2として、基準値V2を中心に出力値の階調(明暗)が拡大される。不均一変換部32は、例えば、表示画像において連続する複数画素の輝度値の平均(移動平均等)である平均輝度値を求め、この平均輝度値が基準値V2となるようなトーンカーブDc1,Dc2を用いて、階調変換処理を行う。そのため、制御部4の動作モードが第1モードであるとき(Dc1)よりも、制御部4の動作モードが第2モードであるとき(Dc2)の方が、不均一変換部32での階調変換処理が強調される。
すなわち、不均一変換部32は、図2Cに示すように、変換データを用いて、表示画像の階調変換処理を行うことにより、入力値に対する出力値、つまり表示画像の各画素の輝度値を決定する。このとき、表示画像において来訪者の顔部分のダイナミックレンジが低い(狭い)と、実際に表示部12に表示される表示画像において、例えば来訪者の顔部分の明暗差が小さく、来訪者の顔部分が見づらくなることがある。したがって、表示画像において来訪者の顔部分の明暗差が小さい場合に、不均一変換部32が、基準値V2を中心にした出力値の階調(明暗)を拡大することで、表示画像における来訪者の顔部分の明暗差が大きくなる。よって、図2Cの例では、制御部4の動作モードが第1モードであるとき(トーンカーブDc1)よりも、制御部4の動作モードが第2モードであるとき(トーンカーブDc2)の方が、表示画像における来訪者の顔部分の明暗差が大きくなる。
(2)動作
次に、本実施形態のインターホンシステム10の動作について、図3、図4A及び図4Bを参照して説明する。図3は、制御部4の動作モードが第1モード及び第2モードのそれぞれの場合について、露光制御部212での露光制御、及び階調変換部3(均一変換部31及び不均一変換部32)での階調変換処理を模式的に表した概念図である。
本実施形態では、インターホンシステム10は、例えば、デフォルトでは制御部4は第1モードで動作し、逆光により表示画像において来訪者の顔部分が見づらい場合などに、制御部4の動作モードが第2モードに切り替えられる。つまり、第1モードが「通常モード」に相当し、第2モードは「逆光モード」に相当する。
例えば、インターホン子機2の起動時、つまりインターホン子機2の呼出部24に対して所定の操作があると、親機制御部42は、第1モードに対応する制御データ及び変換データの組み合わせを、記憶部15から読み出す。親機制御部42は、読み出した第1モードに対応する変換データのうちの不均一変換部32用の変換データを、不均一変換部32に適用する。また、親機制御部42は、読み出した第1モードに対応する変換データのうちの均一変換部31用の変換データ、及び制御データを、親機通信部11からインターホン子機2に送信する。これにより、子機制御部41は、インターホン親機1から第1モードに対応する制御データ及び変換データを受信する。子機制御部41は、受信した制御データを露光制御部212に適用し、受信した変換データを均一変換部31に適用する。
また、制御部4の動作モードは、表示部12に表示画像が表示されている状態で、インターホン親機1の操作部14に対して所定の操作があると、第1モードと第2モードとの間で切り替えられる。例えば、制御部4の動作モードが第1モードである場合に、操作部14に対して所定の操作があると、親機制御部42は、第2モードに対応する制御データ及び変換データの組み合わせを、記憶部15から読み出す。親機制御部42は、読み出した第2モードに対応する変換データのうちの不均一変換部32用の変換データを、不均一変換部32に適用する。また、親機制御部42は、読み出した第2モードに対応する変換データのうちの均一変換部31用の変換データ、及び制御データを、親機通信部11からインターホン子機2に送信する。これにより、子機制御部41は、インターホン親機1から第2モードに対応する制御データ及び変換データを受信する。子機制御部41は、受信した制御データを露光制御部212に適用し、受信した変換データを均一変換部31に適用する。このとき、遅延処理部421は、制御データの変更に対して変換データの変更を遅延させる。
また、インターホンシステム10では、制御部4の動作モードによって、手動逆光補正時のインターホン子機2又はインターホン親機1の動作が異なることが好ましい。すなわち、本実施形態のインターホンシステム10は、例えば操作部14の操作によって表示画像の全体の明るさの調整などを行う、手動逆光補正の機能を有している。ここで、操作部14に対して同じ操作がなされた場合でも、制御部4が第1モードか第2モードかで、インターホン子機2又はインターホン親機1における逆光補正の処理内容が異なる。
(2.1)第1モード
以下、制御部4の動作モードが第1モードである場合について説明する。この場合、制御部4は、第1モードに対応する制御データと変換データとの組み合わせを用いて、露光制御部212及び階調変換部3を制御する。これにより、図3の上段に示すように、露光制御部212では「Da1」を用いた露光制御が行われ、均一変換部31では「Db1」を用いた階調変換処理が行われ、不均一変換部32では「Dc1」を用いた階調変換処理が行われる。その結果、来訪者の正面に光が当たる順光の環境下であれば、表示部12に表示される表示画像において、来訪者の顔が判別可能となる。
一方、例えばタワーマンション等で内廊下にインターホン子機2が設置されているような環境下では、照明器具等の局所的な光源による逆光状態が生じることがある。このような逆光状態では、例えば、図4に示すように、表示部12に表示される表示画像100Aでの来訪者101の顔の判別が困難になることがある。図4Aの例では、表示画像100Aにおいて、照明器具102から撮像部21に入射した直接光によって生じるフレア103が、来訪者101の顔部分に重なった状態にある。このとき、表示画像100Aにおけるフレア103が生じる範囲において、輝度値が飽和した「白とび」が生じている。そのため、表示部12に表示される表示画像100Aからでは、来訪者101の顔の判別が困難である。
(2.2)第2モード
次に、制御部4の動作モードが第2モードである場合について説明する。この場合、制御部4は、第2モードに対応する制御データと変換データとの組み合わせを用いて、露光制御部212及び階調変換部3を制御する。これにより、図3の下段に示すように、露光制御部212では「Da2」を用いた露光制御が行われ、均一変換部31では「Db2」を用いた階調変換処理が行われ、不均一変換部32では「Dc2」を用いた階調変換処理が行われる。したがって、制御部4の動作モードが第1モードである場合に比べて、撮像部21での露光量は低くなり、かつ均一変換部31及び不均一変換部32での階調変換処理が強調される。言い換えれば、制御部4は、第2モードでは第1モードに比べて、撮像部21での露光量が低くなり、かつ階調変換部3での階調変換処理が強調されるように、露光制御部212及び階調変換部3を制御する。
その結果、図4Aと同じ状況、照明器具等の局所的な光源による逆光状態が生じていても、図4Bに示すように、表示部12に表示される表示画像100Bでの来訪者101の顔の判別が容易になる。すなわち、照明器具102から撮像部21に入射した直接光によって生じるフレア103が、来訪者101の顔部分に重なった状態であっても、表示部12に表示される表示画像100Bでは、図4Bに示すようにフレア103の影響が抑制される。このとき、表示画像100Bにおいては、フレア103の影響で輝度値が飽和した「白とび」が生じる範囲が狭くなり、かつ来訪者101の顔部分の明暗が強調されている。そのため、表示部12に表示される表示画像100Bから、来訪者101の顔の判別が容易になる。
(2.3)マルチ画面モード
また、本実施形態のインターホンシステム10には、表示部12が、制御部4の動作モードが第1モードである場合の表示画像と、制御部4の動作モードが第2モードである場合の表示画像とを同時に表示する、マルチ画面モードがある。マルチ画面モードでは、露光制御部212での露光制御、及び階調変換部3(均一変換部31及び不均一変換部32)での階調変換処理が、制御部4の動作モードが第1モード及び第2モードの両方の場合について並行して行われる。
表示部12は、例えば、画面を左右方向に並ぶ2つの領域に分割して、一方の領域に第1モードにおける表示画像、他方の領域に第2モードにおける表示画像を表示する。この状態では、表示部12は、操作部14にて、いずれかの表示画像が選択されることにより、選択された表示画像を拡大表示するように構成されていてもよい。
(3)利点
以上説明したように、本実施形態に係るインターホンシステム10は、互いに通信可能に構成されたインターホン親機1及びインターホン子機2を備える。インターホン子機2は、画像を撮像する撮像部21と、画像の画像信号をインターホン親機1に送信する送信部221と、を有する。インターホン親機1は、画像信号を受信する受信部111と、画像信号に基づいて表示画像を表示する表示部12と、を有する。インターホンシステム10は、露光制御部212と、階調変換部3と、制御部4と、を更に備える。露光制御部212は、制御データを用いて、撮像部の露光制御を行う。階調変換部3は、変換データを用いて、表示画像の輝度値についての階調変換処理を行う。制御部4は、第1モード及び第2モードを含む複数の動作モードを有する。制御部4は、第1モードと第2モードとで制御データ及び変換データの両方が変更されるように、動作モードに応じて露光制御部212及び階調変換部3を制御する。
この構成によれば、制御部4の動作モードが第1モードであるか第2モードであるかによって、露光制御部212での露光制御に用いられる制御データが異なり、階調変換部3での階調変換処理に用いられる変換データも異なることになる。したがって、インターホンシステム10では、動作モードに応じて、露光制御と階調変換処理とを組み合わせた、きめ細やかな表示画像の調整(補正)を行うことができる。その結果、例えば照明器具等の局所的な光源による逆光状態においても、画像にて来訪者の顔が判別しやすい、という利点がある。
また、本実施形態のように、制御部4は、第2モードでは第1モードに比べて、撮像部21での露光量が低くなり、かつ階調変換部3での階調変換処理が強調されるように、露光制御部212及び階調変換部3を制御することが好ましい。この構成によれば、第2モードにおいては、例えば照明器具等の局所的な光源による逆光状態において、フレアの影響で輝度値が飽和した「白とび」が生じる範囲が狭くなり、かつ来訪者の顔部分の明暗を強調することが可能となる。ただし、この構成はインターホンシステム10に必須の構成ではなく、例えば、制御部4は、第2モードでは第1モードに比べて、撮像部21での露光量が高くなるように露光制御部212を制御してもよい。
また、本実施形態のように、階調変換部3は、表示画像の全画素に対して均一の階調変換処理を行う均一変換部31を有することが好ましい。この構成によれば、均一変換部31が、表示画像の全画素に対して共通の変換係数(γ値)を用いた階調変換処理、いわゆるガンマ(γ)変換を施すことで、例えば表示画像における来訪者の顔部分を明るくできる。ただし、この構成はインターホンシステム10に必須の構成ではなく、階調変換部3は均一変換部31を有さなくてもよい。
また、本実施形態のように、階調変換部3は、表示画像の全画素に対して不均一の階調変換処理を行う不均一変換部32を有することが好ましい。この構成によれば、不均一変換部32が、表示画像に対して局所的なトーンマッピング処理、いわゆるHDR(High Dynamic Range)処理を行うことで、例えば表示画像における来訪者の顔部分の明暗差を拡大できる。ただし、この構成はインターホンシステム10に必須の構成ではなく、階調変換部3は不均一変換部32を有さなくてもよい。
また、本実施形態のように、階調変換部3の少なくとも一部は、インターホン親機1に設けられていることが好ましい。本実施形態では、階調変換部3のうち、とくに処理負荷の大きい不均一変換部32がインターホン親機1に設けられている。この構成によれば、処理負荷の比較的大きな階調変換処理を、インターホン親機1で行うことにより、インターホン子機2の小型化を図ることができる。ただし、この構成はインターホンシステム10に必須の構成ではなく、階調変換部3の全体がインターホン子機2に設けられていてもよい。
また、本実施形態のように、インターホンシステム10は、遅延処理部421を更に備えることが好ましい。遅延処理部421は、制御部4の動作モードが切り替わるとき、制御データの変更に対して変換データの変更を遅延させる。遅延処理部421は、露光制御部212にて露光制御の内容が変更されるタイミングに、階調変換部3にて階調変換処理の内容が変更されるタイミングを合わせるように、制御データの変更に対して変換データの変更を遅延させる。この構成によれば、階調変換処理の内容の変更タイミングと、露光制御の内容の変更タイミングとの時間差を小さくできる。結果的に、制御部4の動作モードが切り替わるときの表示画像の乱れを抑制することができる。ただし、この構成はインターホンシステム10に必須の構成ではなく、遅延処理部421は省略されていてもよい。
また、本実施形態のように、インターホン親機1は、制御データ及び変換データを記憶する記憶部15を更に有することが好ましい。この構成によれば、インターホン子機2には制御データ及び変換データを記憶する機能が不要であり、インターホン子機2に不揮発性メモリを追加する必要が無い。ただし、この構成はインターホンシステム10に必須の構成ではなく、記憶部15はインターホン子機2に設けられていてもよい。
また、本実施形態のように、インターホン親機1は、制御部4の動作モードを切り替えるための操作を受け付ける操作部14を更に有することが好ましい。この構成によれば、ユーザは、表示部12に表示される表示画面を見ながら、操作部14を操作して制御部4の動作モードを切り替えることができる。ただし、この構成はインターホンシステム10に必須の構成ではなく、操作部14は省略されていてもよい。
また、本実施形態のように、表示部12は、制御部4の動作モードが第1モードである場合の表示画像と、制御部4の動作モードが第2モードである場合の表示画像とを同時に表示することが好ましい。この構成によれば、ユーザ(住戸の居住者)は、表示部12に同時に表示される2つの表示画像のうち、見やすい方の表示画像で来訪者を確認することができる。さらに、インターホン親機1が操作部14を有する場合には、ユーザは、表示部12で実際に表示画像を見比べて、制御部4の動作モードを選択することができる。ただし、この構成はインターホンシステム10に必須の構成ではなく、表示部12は、1つの表示画像のみを表示する構成であってもよい。
また、本実施形態のように、子機制御部41及び親機制御部42がマイクロコンピュータ(コンピュータ)を主構成とする場合、プログラムによって、上記制御部4の機能を実現可能である。すなわち、本実施形態に係る画像処理用プログラムは、コンピュータを、インターホンシステム10における制御部4として機能させるためのプログラムである。この画像処理用プログラムによれば、例えば照明器具等の局所的な光源による逆光状態においても、画像にて来訪者の顔が判別しやすい、という利点がある。
(4)変形例
実施形態1に係るインターホンシステム10は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、実施形態1に限定されることはなく、実施形態1以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、実施形態1の変形例を列挙する。
インターホン子機2は、集合住宅の住戸ごとに設置されるドアホン子機ではなく、例えば集合住宅の共用スペース(ロビー)等に設置されたロビーインターホン等であってもよい。この場合、1台のインターホン子機2に対して、複数の住戸にそれぞれ設置されている複数台のインターホン親機1が接続されることになる。この場合において、インターホン親機1が制御データ及び変換データを記憶する記憶部15を有していれば、例えば、住戸ごとにユーザ(居住者)の好みに合わせた露光制御及び階調変換処理を適用できる。すなわち、インターホンシステム10によれば、ある住戸のインターホン親機1では制御部4を第1モードとし、別の住戸のインターホン親機1では制御部4を第2モードとする、といった使い方が可能になる。
また、インターホンシステム10は、集合住宅用に限らず、例えば戸建住宅用、又は事務所、店舗及び工場等の非住宅用であってもよい。
また、露光制御部212は、撮像部21の露光制御を行うことで撮像部21から出力される画像の明るさ(輝度値)を調節する構成であればよく、露光時間又はゲインに限らず、例えば絞り値等を制御することによって、露光制御を行ってもよい。
また、インターホン子機2とインターホン親機1との間の通信方式は、有線通信に限らず、例えば電波を媒体とする無線通信であってもよい。この場合、送信部221は、画像信号を無線通信によって受信部111に送信する。
また、制御部4は、インターホン子機2の子機制御部41とインターホン親機1の親機制御部42とに分かれていなくてもよく、1つの制御部4が、インターホン子機2又はインターホン親機1に設けられていてもよい。さらに、遅延処理部421としての機能は、親機制御部42に限らず、子機制御部41に含まれていてもよい。インターホン子機2又はインターホン親機1に1つの制御部4が設けられている場合には、遅延処理部421としての機能は1つの制御部4に含まれていてもよい。さらに、遅延処理部421は、制御部4とは別に設けられていてもよく、例えば、階調変換部3(均一変換部31及び不均一変換部32)に遅延処理部421としての機能が含まれていてもよい。
また、制御部4は、第1モード及び第2モードを含む複数の動作モードを有していればよく、例えば第3モード及び第4モード等、第1モード及び第2モード以外の動作モードがあってもよい。
また、露光制御部212、均一変換部31及び不均一変換部32は、インターホン子機2とインターホン親機1とに分かれていなくてもよく、インターホン子機2又はインターホン親機1にまとめて設けられていてもよい。さらに、均一変換部31と不均一変換部32との関係は逆であってもよく、不均一変換部32での階調変換処理の後、均一変換部31での階調変換処理が行われてもよい。
また、均一変換部31及び不均一変換部32での階調変換処理は実施形態1で説明した処理に限らず、例えば不均一変換部32が、複数フレーム分の画像からHDR(High Dynamic Range)処理を行ってもよい。
また、例えば内廊下にインターホン子機2が設置される場合など、撮像部21の撮像エリアにおける照明環境が変化しにくい場合には、インターホンシステム10の施工時に、施工者が操作部14を操作して制御部4の動作モードを設定してもよい。この場合、施工者は、例えば施工設定メニュー画面上で、制御部4の動作モードを第1モードと第2モードとから択一的に選択する。
(実施形態2)
本実施形態に係るインターホンシステム10Aは、図5に示すように、自動切替部6を更に備える点で、実施形態1のインターホンシステム10と相違する。自動切替部6は、表示画像の輝度ヒストグラムに基づいて制御部4の動作モードを切り替える。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
ここでいう「輝度ヒストグラム」は、表示画像中の画素の輝度値の分布を表すグラフであって、表示画像について、例えば横軸に輝度値、縦軸にその輝度値を持つ画素数をとったグラフである。本実施形態では、自動切替部6は、インターホン親機1に設けられている。自動切替部6は、輝度ヒストグラムから、例えば表示画像の状態が順光状態か逆光状態かを判別し、順光状態であれば第1モードを選択し、逆光状態であれば第2モードを選択する。つまり、自動切替部6は、操作部14の操作によらずに制御部4の動作モードを自動的に切り替える。
本実施形態に係るインターホンシステム10Aによれば、自動切替部6を備えることにより、ユーザが切り替えなくても、制御部4の動作モードが自動的に切り替わるので、表示部12には、常に最適な表示画像を表示することができる。自動切替部6は、インターホン親機1に限らず、インターホン子機2に設けられていてもよい。
実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。